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資料1

国際教育協力懇談会(第8回)議事録(案)
平成14年6月20日(木)15:00〜17:00
文部科学省 分館201・202特別会議室


1 開会
  中根座長による開会の挨拶の後、事務局より、資料1の第7回国際教育協力懇談会議事録確認及びその他の配付資料の確認を行った。

2 議事
(1) 最近の教育支援の動きについての報告
  事務局より、配付資料2及び3に基づいて、「岸田文部科学副大臣アフガニスタン出張」及び「学校給食等を通じた健康教育に関する我が国の経験活用」についての報告を行った。
   
(2) 大学における国際開発協力促進について
  事務局より、配付資料4、5及び6に基づいて、「これまでの論点」及び「大学における国際開発協力の促進に必要な活動と実施体制(案)」についての説明を行った。
   
(3) 意見交換
  座長より、本日の報告及び説明について、質問と併せて各委員の自由な意見が求められた。

篠沢委員)大変よくまとめておられるし、建設的にいわば提案の第一歩を作っておられると思う。国立大学の場合は、これから法人化の問題がある。私立大学の場合は特別にそういう新しい大きな制度的な大学基盤の改変があるわけではないと思う。ご提案になられたことは、特に国立大学のことを考えた場合に、全て、現在の制度下において実現にもっていけるということなのか。それとも法人化した後に実現できるもので、今は実現できない、ということなのか。例示的でいいので、その辺のところを教えていただきたい。

事務局)2回ほど前の懇談会の資料にあったが、日本の国立大学においては、いくつか、例えば契約上あるいは定員管理上という観点でいくつかの制約があるので、法人化を念頭において、どういうことができるのかを検討していくという話だったと思う。ただ私立大学に関しては、契約上の問題、あるいは定員管理の問題ないため、現時点においてこういう活動、あるいはサービスを常備していくということは可能であると思われる。結論としては、国立大学においては、2年後の法人化後すぐに話が立ち上がるように準備を整えていく。私立大学については早い段階からサービスが提供できるのであれば、それが可能であると思われる。

篠沢委員)今その質問をした趣旨は、現在私たちが自分たちの仕事を通じて、大学というよりはむしろ、大学に所属しておられる方にいろいろな調査委嘱を行っていくような場合に感じている問題点がいくつかあるからである。国立大学の教官がコンサルタント企業チームに専門家として参加するというのは、当然コンサルの専門性を高度なものにするという大きなメリットがあるが、現段階では国立大学の教官には、兼業許可はこの面ではおりない。兼業許可がおりないので、それでは、どれくらい本格的にこのコンサル企業チームに専門家として参加できるかといえば、大変難しい。法人化の仕組みを整えるときに、これは人事院の問題にもなるのかと思うが、そういうところを思い切って中身を整えていくことができるだろう。それから、もう一つ、国立大学には現在受託制度が制度としてあるが、受託制度でうまく大学の国立大学の方に国際協力事業の分野を受託させられるのかと考えると、案外そうでも無いらしい。というのは、受託制度というのは産学連携の趣旨から出てきているので、理工系・薬学というような理工系を中心に受託制度が設定されているので、なかなか受託制度を国際協力分野に応用しにくいという声がある。どういうことかというと、例えば、特許についての契約条項はあるけれども、著作権についての契約条項はないという、いろいろな問題があるらしいので、そういう点も、細々した点まで実際国際協力事業に応用できるのかという目をもって法人化の時には色々な仕組みをあらっていただきたいと思う。今日の提案というか整理は建設的だと思うが、法人化した際には、日本の大学が国際標準に近づいた活動ができるようにするという、色々なそういうソフトウェアを整えていく努力をしていただきたい。

佐藤委員)関連して。私もまとめのファンクションというかこういう機能が必要であるということに関しては賛同する。今の篠沢委員の発言と関連するが、多分法人化すると非公務員型であるので、今のいくつかの心配は氷解するかと思われる。ただ、この資料は国立大学を中心に書かれているが、私立大学の中にもこういう気持ちをもっているところもあると思われる。国公私立大学全部を頭に入れたとすると、共同してやる、例えばさっきコンソーシアムという言葉が出たが、実際には国公私立大学のコンソーシアムを作るというのは、現状では大変難しい。そういう制約をはずしてしまう工夫も盛り込んでいかなければならないのではないかと思う。簡単な話ではないが、コンソーシアムをもう少しうまく出来るようになれば、弾力的に活動が出来るようになるのかなという気がする。それが一つ。
  もう一つは、資料6の例示にあがっているのは、今までも例えば、政策研究大学院大学は開発のプロジェクトをもってずっとやってこられたし、そこではFASIDとの連携もなっているわけだし、それから記憶はしてないが、横浜国立大学その他、開発大学機構みたいなものが既にあって、今まで取り組んできた機構があると思うので、そのアセットをうまく使えばいいと思う。

團野委員)事務局は全体をよくまとめていただいたと感心する。サポートセンターによる円滑な実施のための環境整備、それと、分野別の大学センターの具体的実施、こういう組み合わせでやっていくことになると思われるが、これは、例示にでている代表窓口大学が中心になって、パートナーを他の大学に求め、場合によっては企業に求め、あるいはNGOに求めるというような形で具体的に動いていくのではないかと思う。そういう理解で良いか。そこで、3つ申し上げたい。
  代表窓口大学をどのようにして選ぶのか。つまり、実力と意欲のある大学センターをどのようにして選ぶのか。ここのところを決めておかなければならないのではないか。
  2つめは、佐藤委員からもご指摘があったが、中央の中核サポートセンターと地方の分野別の大学センター双方に、最初から私学を組み入れた方が長期的に考えれば良いのではないかと考える。
  3つめは、これを実現するためには予算が必要だ。そして、その予算は、あまりたくさん選んで広く薄く実行するやり方では効果が上がらないので、重点的に絞る方がよい。この点についてどのようにお考えか。

事務局)窓口についてであるが、代表窓口では業務量が相当多くなり、特にロジスティカルなことが多くなってくる。このため代表窓口を特定の大学に押しつけるというのは、フィージブルではないのではないか。例えば教官組織に押しつけてしまうのは難しいのではないか。できれば、こういうところはある程度事務的な組織に任せた方が良いのではないかと思っている。ただ、組織論の前に、まず、どういう活動をするのか、ということについてご議論いただき、その後組織についてご議論いただくという気がしている。
  2点目については、既に教育であれば広島大学・筑波大学が中心となって、農業であれば名古屋大学が中心となって、国際教育協力研究センターを設置しているが、これは、国公私に関係なく教官同士のネットワークを通して連携しているので、そういう意味では既に私立大学を含めた形で連携が図られている。
  3点目の予算については、業務量がどのくらいになるのか、組織がどうなるのか等と関連した議論であると思われ、今の段階でどの程度だという議論は念頭にはない。

宮田委員)先程事務局より報告があった副大臣の出張の際に、私の大学から4名同行させていただき、アフガニスタンに行ってきた。それぞれ、乾燥地農業・農業土木・獣医学・機械工学の専門家の4名である。先方のカブール大学ではいろんな意味で是非連携をしたいという話があり、交流協定を結んできた。大学には国際交流委員会があるが、それでは動きが悪いので、学長の下にアフガニスタンの特別委員会を設置し機動的に動けるようにしている。それと同時に、アメリカのパデュー大学と交流協定を結んでいる。パデュー大学はカブール大学に対して高等教育協力をやろうとしており、パデュー大学と組んでコンソーシアムを作ろうと進めているところである。
  具体的なことになると教育分野のODAの援助システムを考え直していただけるとより効率的に動くのではないかと思う点がある。
  例えば、岸田副大臣が、10名の留学生の受入れを現地で表明し、私どもの大学が主として担当するということで準備していたが、国費留学生の今年の受入れ枠はもうないと言われた。大学としてはやる意欲と能力を持った先生方がやろうと思っても、実際的なものはある種お金ということになってしまう。また、コピー機や顕微鏡等、簡単な学生の実験ができる機器がほしいという要請があっても、大学の備品を外国に持っていけないという法律がある等、会計上の問題がいろいろとあり、私たちに意欲があっても結果的に出来ないということがおこってしまう。
   即ち、現行のODAの援助システムは機動性・弾力性に欠けるところがある。できれば、文部科学省内部に教育関係の資材供与のセクションを作った方がいいと思う。

中根座長)法人化の問題も出ていたが、大学の方は法人化の進展と共に相当いろいろなことができるのではないか、という期待が一方にある。それに対して文部科学省の方も少し法人化に対応して、予算等を弾力的に出来るようになるのではないか。大学だけが法人化しても文部科学省の組織が対応して新しい方向に向かっていかないと、今言われたように難しい問題が随分あると思われるが、事務局側ではいかがか。

事務局)一つずつの問題に対してお答えする準備はしていないが、こういう問題は全体のプロセスの中の現在のシステムの中で、実際にやられていないから経験がないのだが、受託研究等でもそのような仕組みを準備すれば今のシステムの中でもそれなりにやれるということなので、それぞれ法人化になりながらやっていくという考えである。提言の中で文部科学省としても大学の新しい予算等の仕組みについてもご提言をうけ、同時にシステム全体として検討する、という提言内容に最終的にはさせていただければありがたい。宮田先生の個別の問題については個別にご相談させていただきたい。

川上委員)アカデミアの国際協力活動への参加ということに関して、この前からずっと議論が行われてきて、だんだん具体性が出てきて、このような形で今日立派な資料を作っていただき、大変結構なことだと思う。私は冒頭から申し上げていたように、アカデミアの国際協力への参加を拡充させるという方向で英知を絞るべきであるという考えであるので、JICAとしてもそういう方向で、組織としても協力していきたいと思う。
   先程から法人化の視点で、一体どうなるのかという話があるが、文部科学省の資料5の2頁に『第三者評価機関において、「国際開発協力活動」を大学評価の観点の一つとすることも考えられる』というくだりがあるが、私はここは、非常にクルーシャルなところではないかというふうに思う。やはり、大学がこのような活動を行うことが実際に大学としての活動の中に取り込まれていくという方向にならないと、実際問題としてなかなか大いなる形での国際協力というのが推進されていくという方向にはならないのではないか。従って、『観点の一つとすることも考えられる』というのは、役人的な文書というか、相当程度に慎重な文書を書いておられるようであるが、外国の例のようにきちんと評価の一つのポイントとすべきと思う。実際、ご参考までにJICAでやっていることをご紹介申し上げると、既に名古屋大学との間でネパールの農林水産業に関する技術協力の評価というものを委託してやっていただいているし、我々が大学と共同で何かをやってもいるし、共同して行う開発パートナー事業という、これも委託してやっていただいている事業もある。長崎大学熱帯医学研究所とインドネシアのマラリアコントロール、鳥取大学とメキシコの間で乾燥地域における農業及び農村振興を行っている。このような形で既にかなり委託事業は進んでいる。基本的に、先生方の公務との関係でこういうことが今の大学の下では難しいという話がさっきあったが、これがそんなに障害になっているのか。こういう受託事業が進んでいるところを見ると、そうでもないのか。質問であるが、今の制度の下でもかなりできるのか。法人化されるともっとできるのであろうと思うが、そのところを教えていただきたい。
   もう一つ、先程佐藤委員が言われたことだが、この前中部に出張した際に名古屋大学の総長以下とお話をする機会があった。先程のご説明の中にもあったが、いくつかの拠点を分野別に決めて、私学等も入ってネットワークにして、法学なら法学を名古屋がやるとかいう姿がだんだんできてきている。それが一種の拠点センター化して、私の聞いた範囲だと、後ろに文部科学省がいて、予算的な措置を講じておられるという話も伺った。そういう形で拠点化を進めるのは良いことだと思うが、先程の選択の問題がでてくるとも思われる。その辺りのことをもう少し聞かせていただきたい。

事務局)開発パートナーシップ事業についてであるが、名古屋大学にしても鳥取大学にしても、契約行為に至るまでに相当苦しんだというか、JICA側と大学との間で調整に苦労したという話を聞いた。例えば、精算行為の話であるとか、前払いの話であるとか。そういう受託研究制度をもっているいくつかの問題点との整合性において何らかの無理が発生している、ということが非常に難しい問題として存在している。このため、大きな事業・調査を組織として受けるのは、今の受託研究制度の枠組みのなかでやっていくのには限界があるのではないかと思う。

川上委員)そこで先程篠沢委員が言われたのは、現在の受託契約制度の下では、それしかない。それについて、もう少し柔軟にやるようなことを考えていただけないか。

事務局)例えば、我々の資料5の6頁に「研修の実施」と書いているが、この中に契約書の雛形だとか書いている。これは、ワールドスタンダードにおける一つの業務の受入れというのがどういうTORになっているのかということを、大学の法人化をにらんで、事務官の方々が熟知されていてそういう対応ができるような契約形態あるいは、その契約に応じた財務処理あるいは、アカウンティング等の処理方法について、単なる契約行為の問題だけではなく、事務処理そのものを変えていかないと、色々な問題が出てくると思われる。このためそこら辺も含めて国立大学の事務官の方々に勉強していただいて、法人化した暁には契約が結べるように、事務官がそれをサポートできるように、そのような準備をしていきたいと思っている次第である。

篠沢委員)今日の資料は、国立大学に関して言えば、法人化の後の問題として具体化されると思っているが、やはり大学の国際開発協力活動というのは、大学が組織として、敢えて言えば、一つのベンチャーみたいな格好で一つの企業的に活動するということを前提にしている訳ではなくて、これはあくまでも大学に属する先生方が中心になってそういう活動に入っていくということを前提とした資料だと考えて良いのか。それとも、例えば、一つのコンサルタント企業みたいにして、たくさんあるコンサルタント企業と競争上の立場に立つことも考えた上での資料なのか。

事務局)明らかに我々は、個人から組織へということを念頭においているので、大学が組織として仕事を受けていくことを想定している。例えば、国の評価をやるときに、何人かの教官の方々が、ピースワークかもしれないしコンサルタントと共同かもしれないが、国際開発協力活動を行っていく時に、そこに対して、人件費と間接経費をもらって仕事をしていくという形にしていかないといけない。そうでないと、大学にも穴があいてしまうので、実費ベースでは難しい。このため、本提案は、大学が組織として対応していくということを基盤として築き上げようというのが狙いである。そういう意味では、篠沢委員の言われる前者かもしれない。

篠沢委員)そうすると、新しく法人化される大学というのは、少し細かい議論になるが、人件費を国から運営費交付金でもらう。そうすると、その分だけ人件費のベースを持っている。普通の民間コンサルタント企業では、全て自分で稼いで人件費を出さないといけない。これは国際協力分野に限らないが、法人化される大学を考える場合には、国から運営費交付金がくるということを前提とすると、企業的に活動する場合の競争条件というのはどうなるのか。また、大学が組織として企業的に活動するのではなくて、大学人がコンサルタント企業のコンソーシアムに入り込んでやる場合でも人件費はそれだけ競争条件が優位になるということにならないか。

事務局)私どもはそういうことを内部で議論してきたが、大学の本分は教育であるので、例えば、ある先生が3カ月事業に参加されるというときに、初めに払われたお金だけだと、ぽっかり穴があいてしまう。補填がないとその分だけ授業があいてしまう。もしそこで、外に出ていく仕事はそれで人件費が補填されるのであれば、もとあったお金で本務の仕事を別の教官で代替していくことも可能ではないかと考えている。そういう意味では、競争というよりも、JICAの青年協力隊でいうところの人件費補填みたいな形で考えることができるのではないかと思う。

荒木委員)棲み分けというか、大学の国際開発協力とそれを受託方式でやっていくというのを考える必要がある。政策レベルのものとか大学教育に関する政策とか、いろいろなレベルがあると思うが、それは一般のコンサルタントの場合、例えば、医科大学を作れという発注があったとしても、実際は医科大学の先生方が集まらないとコンサルタント会社だけではなかなか出来ない。だから、これから大切なことは棲み分けのところの区分をきちんとやっていく。つまり、一般のコンサルタントと大学のコンサルタント業務とはどこがどう違うのか。民業圧迫という問題も出てきているので、そこは整理しておいた方が良いと思う。

篠沢委員)私も、ネガティブに言っているわけではなく、ポジティブにこれを作っていこうとする場合に、例えば民間から民業圧迫だといってつぶされてしまってはどうにもならないので、その点を十分慎重に設計をしていただく必要がある。

平野委員)違う意味で棲み分けという言葉を使って要望したい。資料5あるいは6が大変前向きなものだと拝見した。意欲が感じられる。もう少し思い切って前に出ることを考えてもいいのではないかと思う。もう少し前へでる勇気をはばむものは、おそらく縦割り行政であると思う。つまり、ここから先は文部科学省の権限でやってはいけないとか、我々はそこまでのマンデートまで与えられていないとかいう意識があるので、どうしてもそれから先へ進めないのではないか。これは当然のことであると思う。物事を考えるときにはもう少し踏み込んで良いのではないかと思う。例えば、アフガニスタン。日本から教育あるいは援助をもらう側の人から考えると、別に文部科学省を経由してもらう必要はない。それは、農水省からもらった方がいいのかもしれない。しかし、日本の場合は、サプライサイドから言うとそれぞれの役目があるから、どうしてもこぢんまりとしたものになってしまうのではないか。そこで、恐らく重要なポイントになるのは、サポートセンターの役割であろうと思っている。サポートセンターはもちろん文部科学省のサポートセンターであるが、日本政府全体のサポートセンターの一部という位置づけに恐らくなっていくであろうから、そういう視点というか見通しをどこかに据えて、文章をもう一度書き直してみると、また違う、もう少し進んだ文章が書けるのかなという気がする。役人としては難しすぎる仕事だという気はするが、そこのところを、もう少し知恵をだしてやっていただけるとありがたい。

荒木委員)全体を見て非常に良くできていると思う。しかし、全体の活動のプライオリティというか、どの順序でこれを成し遂げていくのか、その順序立てというか、流れを整理しておく必要がある。何を先にやるべきか、ということがこれを実現するときに非常に重要になってくるのではないか。一種の戦略マップのようなものが必要だと思う。民業圧迫の問題にしろ、棲み分けの問題にしろ、よく分からないのは教育協力に関する供給サイドの問題ということは、相手側にどういう類の教育協力に関する需要があるのか。その需要予測がよく分からない。それを分類していきながら、ここの部分は大学で十分でき、民業圧迫にもならない。あるいは、民間との協調もできる、という分類を、需要予測を踏まえて考えて行くことが必要かと思う。それをビジネスライクに考えていけばよい。一方では受注する側、その中で大学側の受注体制というのは大学改革の問題が出たが、強化するにはどうしたらいいのかというのが論じられてくる。つまり、受ける側である大学側の能力の整備と、どういう需要があるからこういうことができるということ。こういうことができるから何でもやると言っても、発注する側の要請もある訳なので、それをよく分析しておかないといけない。恐らくこれだけできるという、プロポーザル方式というのもあるが、その辺がどうなっているのか、需要と供給の関係をある程度明快にしておくということが必要である。
  もう一つは、JICAレベルというかODAレベルでは、ケニアの大学とタイの大学が大学ぐるみで、それぞれが広島大学、東海大学と、長年にわたって大学の先生が入れ替わり立ち替わり、一種のコンソーシアムを形成するような形でやってきていると思う。その辺の体験というか、これから高等教育を指導する時に非常に重要な体験がたくさんあるので、その辺もヒヤリングしてデータベース整備する必要があるのではないかと思う。その中で、世界の需要は初等教育であるので、それをどうしていくのか、という具体的な大学側の当面の目的に対する体制整備をどこまで整えられるのか。また、整えられる大学がどの程度あるのか。その辺の予測をきちんとしておくべきだと思う。

川上委員)今、荒木委員が言われたことは基本的にそのとおりだと思う。需要があって、それに対してどれだけ応えていけるのかというところの分析は当然必要だと思う。非常に雑ぱくな話で恐縮であるが、私の見るところ需要サイドは非常にある。つまり、大学というのはありとあらゆる分野を研究し、活動をおこなうことが可能である組織なので、そういう意味でも、途上国サイドからくる需要というのは、それこそ山ほどある。今やっている例を申し上げると、評価、これは常識的に考えても民業圧迫にはならない。開発パートナー事業であっても、これは民業圧迫といった類のものではなくて、ある特定の分野についてマラリアコントロールならマラリアコントロールという分野についてやるという話なので、常識的に考えてそれが民業云々というものではないのではないか。少なくとも、途上国のニーズサイドをいつも見ている我々からすると、大学が持っているリソースの活用余地というのは非常にあるのではないかと感じる。それ故に私は賛成ということを申し上げている。
  また、話がとんでしまったので先ほどした質問2点について戻らせていただくが、一つは職務専念義務との関係で今でもできていることなのか、あるいは、夏休みにやっている3週間程度の話として処理しているのか。もう一つ、拠点大学についての文部科学省の方針かいかがなものなのか。

事務局)教職兼業の問題は、これには教特法があり、本務に支障のない範囲で人事院の許可を得るということになっている。今現在の動きは、人事院が各省庁にこれを下ろそうとしている。文部科学省はそれを大学まで下ろしていこう、ということにしている。これはむしろ手続き面であり、今も現実は教職権限は本務に支障がない、というその判断をどうするのかという問題があるが、教特法の中でやっているということである。ただ問題は、いずれにしても各教官個人でお願いをされているということになると、あとの講座なり大学運営の手当をどうするのかというので、現実問題、非常に制約されてしまう。半年とか1年とか長期になってしまうと、講座の手当をするために相当前から他の代替教員をもってこないといけないということになるので、急に言われても急に何ヶ月もあてられないという現実問題がある。その辺のところを大学は大学という組織として、あるいはコンソーシアムとしてそういうシステムを融通できるようなそういう体制整備が今後必要になるのではないか。
  ここにたまたまあげている拠点大学は、前の懇談会の提言に基づいて国際教育協力センターという組織を各大学に手を挙げていただいて作ってきたものである。ここがどれだけ積極的にそれぞれの分野でやっているか、あるいは、こういう組織を持っていない大学でも前からの長い研究組織とのつながりの中で実績を上げている部分があるので、たまたまそういう形でこの例を挙げさせていただいているだけである。このため、ある意味ではこれからの大学の経営発想とイニシアチブというか、各大学がこういう面にどういう戦略的な対応をしてくるかという、国全体として今後の支援というような考え方も加えながら、各大学の中でも組織を戦略的にどう作っていくのかということを考える必要がある。その意味では競争社会の中で、ある種実力的なものがでてくると。同じ分野でも二つ三つ出てきてもおかしくはない。国の戦略としてどう支援していくのかという考え方を、どこにインセンティブを付けながらやっていくのか、ということをご議論いただきたい。

佐藤委員)前者は受託できるかどうかということころで、ごちゃごちゃはしているが、受託してしまうと本務なのではないか。兼職でも兼業でもない、大学の本務なのではないか。よそのコンサルタント会社に行って仕事をするとか、あるいはコンソーシアムを作ってそこで仕事をするというならば別であるが、今は受託してしまえば大学の仕事なので、服務上の問題は何もないと思う。本務であるので。そうでないと受託した意味がないのではないか。ただ、問題は今から色々な形で大学をアウトソーシングしていろいろな組織と仕事をするようになったときの服務の在り方をこれから設定していかなくてはならないが、幸い非公務員型であるので、柔軟に設定できると思うが、その時に「支障のないように」という注文を当委員会としては出しておけばいいのではないか。

中根座長)受託というは、割合ハードな面、例えば工学などの分野が多かったのではないか。そうでもないのか。そのようなケースは、本務としてやりやすいと思う。ソフトの面だと難しいと思う。

佐藤委員)ですから、先程の話にも出たが、そもそも受託できるかというところが大変争いがあって、そこは苦労してある部分は引き受けている訳であり、引き受けてしまえば大学の仕事なので問題ないと私は思うが。

事務局)実務には疎いが、佐藤委員が言われるように受託という研究自体はまさに言われるとおり、受託してしまえばそれは大学の本務となる。個人として専門家として協力をしていくような実態と、受託研究として大学の研究室なりで受け取った場合とでは、自ずと服務関係も変わってくる。

中根座長)受託の場合、受託研究は従来の学科の仕事としてアクセプトしているわけである。

宮田委員)なってしまえば言われるとおりなのであるが、なるまでがすごくバリアがあって、またやろうという気になれない。場合によっては、大学から「やめて行け」と言われているというような気さえする。過去に、そういうバリアが高いことがあったのは事実である。

中根座長)ということは、そういうバリアを取り除くための新しい組織化が必要であるということであろう。

矢崎委員)送り出す側として問題点を議論していただいてありがたく思う。何点か申し上げたい。まず、アフガニスタンの件だが、私どもの調整官が視察を行いその報告を受けて驚いたのだが、カブール医科大学の教授が薬理学とかいう分野の教授が女性であった。語弊があるかもしれないが、パキスタンであるとかそういう国では考えられない。アフガニスタンは女性が教育に、しかも高等教育に貢献している実績があってそれが不幸な過去によって押さえられていただけなので、全くゼロからの出発ではない。その点は十分留意されて対策を練られた方がいいと感じた。
   また、協力活動をどういうふうに円滑に進めたらいいか、いくつかの問題点を議論されていたが、実務上、私どもの病院は400人くらいの医療従事者を抱えているが、1カ月でも医療協力で出て欲しいといった場合、一人ひとりが診療時間帯とか患者さんを受け持っているので、そんなにたくさんいるから2人くらい出してもいいのではないかと言われた際に、現場での調整が大変な仕事なので、そういうことも頭にいれて考えていただきたいと言うことがある。
   一番のポイントになるのは、中核となるサポートセンターが実態としてどういうものになるのかということがキーポイントではないかと思う。先程の窓口になる分野別の大学のセンターというのが果たしてサポートセンターとしての機能を持ちうるか、ということが問題かと思う。それは、予算上の問題とか人の問題、あるいは情報量の問題、または強力なリーダーシップをどれほどとれるかということもあるかもしれないが、効率化あるいはノウハウを蓄積する意味では、しっかりしたサポートセンターを設立していただきたいと思う。
  それと、川上委員が言われた評価の問題であるが、国際開発協力の貢献度が大学人としてどれほど評価されるのかというのが一つの問題であると思う。そこで高い評価を受けた方が大学人として発展できるようなシステムをつくって頂きたい。失礼な言葉で言えば、使い道の無い人をこちらに使うのではなく、意欲と能力を持った方がこの領域に足を踏み入れるということが重要で、少なくとも宮田委員の言われたことがおこらないようなサポートセンターができればと思う。恐らくサポートセンターができて、大学側が大きくコンソーシアムを組んで懐を深くして、良い人材を送り出すというシステムがいるのではないかと思う。
  それからもう一つ重要なのは、研修という項目があるが、これも極めて重要で、医療関係で言うと、いわゆる国際医療協力と、例えば災害時の医療協力とでは、ノウハウが全く違う。そういうある程度分野の中でのしっかりした研修システム、我々は災害時の医療協力とか国際医療協力とかを、インテンシブに1カ月とか2カ月とかのスケジュールを組んで、それを修了した場合に修了書を差し上げると同時にそういう方をデータベースに登録していただいて、ニーズが生じた場合に行っていただける人を確保している。これは広い範囲にわたると思うが、第一歩の網羅的な研修とそれからもう少し進んだニーズに対応した研修制度を築き上げる、これもやはりサポートセンターの指導の下で各大学の中核となる各大学がセンターを作ってそういう部分を行うということになると思うので、リーダーシップをとったサポートセンターの確立を願ってやまない。

中根座長)このサポートセンターというのは全国的なもので大学の外にあって、その下にそれぞれの中核的な大学ができるというものをイメージされているのか。サポートセンターは、どの大学がなるというのではなくて、全国的なもので大学の外に作った方がいいというご意見か。

矢崎委員)そうあるべきではないかと思う。

千野委員)全般的な感想であるが、過去2回欠席しているので紙で読んでいるのと、ここで実際にお話を伺うのとではいくらか温度差ができると思うが、非常に前向きにまとまっていることに関しては、私も同感であるし、そうあって欲しいと思うと同時に、果たして現在の大学がそういう状況にあるのか、という懐疑を持ってしまわざるを得ない。そういう基盤を醸成する、あるいはそういうムードを作るのは、紙ではきれいに書けるが、恐らく大変なことになると思う。サポートセンターの話もまだ具体的にイメージができないが、私の知っている個々のケースでは大学に意欲のある先生はいらっしゃるが、そういう先生は変わり者だということになりかねないムードがあって、それでは困る。例えば、学長がこう言ったから変わるという単純な話ではないと思うが、そういう風を吹かせるために学長のネットワークでこういうチームがあるということを強くアピールしていただく等の仕掛けが必要ではないのか。もう一つ川上委員がニーズがあると言われたが、本当にその通りだと思う。そのニーズに見合う大学の先生なり大学が日本のどこにあるのか、というとそれを探すのは大変であろうと思う。それにはデータベースの活用であるとか、情報を密にしてセンターに集めることも必要かと思う。

中根座長)言われるように果たして大学がそこまでいくかという感じは確かに受ける。大学によっても相当差があり、専門によっても相当な違いがある。だから、最初はできるとこから、実績のあるところから始めて行き、それがそのうちだんだんと全体に広がっていけばいいのかと思う。一斉に大学が国際協力をやっていくのは難しいと思う。これまでの実績を研究してどういうところがネックであったか、あるいはどれほどまでに貢献できたのかを調べる必要があると思う。また、予算的にはどうしたのか。受託研究以外ではみんな教官はある程度個人的に無理をしてやっているという状態なので、新しいシステムができると、今まで無理をしてやってきた教官が積極的に入っていけるのではないかと思っている。そういう意味で、できるところから始めれば良いと思う。

矢崎委員)その点、ここに書いてあるとおり、大学の特色としてこういう方面に力を入れているということを鮮明に打ち出せるということも一つの戦略ではないかと思う。前にもお話ししたが、私どもの病院は国際協力という旗印の下にやっており、オールジャパンで研修医が来る。結構激しい、レベルの高い人が来る。その人たちを面接すると、多くの人が国際協力に関心がある、あるいはエイズを中心とする感染症に興味があるという方が多い。だから、私の経験から見ても、座長の言われるように各大学がそういう特色をだして、ノウハウを蓄積しあるいは方針を立てられればそういう学生が来るし、それによって教官も意識が改革される。病院全体でも国際協力に熱心ということでは無い人が来るが、周りがそうだと、だんだんそういう気になって、私も次の機会は参加していこうかという自発的な意見も出てくるので、そういう戦略で行くのも、これからの大学が生きていく一つの道ではないか。

團野委員)対象としてアジアが大事だという主眼も必要なのではないか。技術協力の数値をみると、アメリカは中南米に、欧州はアフリカに特化している。そういうことをみても、アジア依存度の高い日本はアジア中心という絞り方があってもいいのではないか。

荒木委員)ニーズの度合いからして、アジアの場合、基本的には初等教育のレベルというのはどんどんやっているし、日本に期待しているのは、高等教育というか技術協力という側面なのかもしれない。アフリカ地域は初等教育を重視しているので国連でもそういう方針を打ち出している。教育にはいろいろなレベルがあるので、自ずとアジアのニーズに合ったものが日本から行っている。普通でも半分以上行っているので、それに比例して教育も行くだろうと思う。従って、限定をしなくても十分行くと思うが。

團野委員)初等教育を十分やっているところもあるけれども、例えばインドシナミャンマーやアフガンなど、まだまだというところもたくさんある。私は「アジア中心」という一言入れたいという気がする。

中根座長)全体のODAの協力という場合にほとんどがアジア中心になっている。だから、特別書かなくてもそれが一般の認識になっているかと思う。
  そろそろ時間になってきたので、この議事はこれで終了したい。最終報告に向けて議論をまとめていきたい。次回はもう少しまとまったものを出してもらいたいと思う。もう一つ、積み残したものがあり、それは現職教員のシニア海外ボランティア派遣で第5回懇談会から出た議論である。これに関する検討結果並びに最終報告の骨子をまとめてもらいたい。事務局において、次回会合までに説明していただけるようにしていただきたいと思う。

川上委員)私は、シニアボランティアの制度に現職の職員、つまり40歳以上の方が参加されることについて、門戸も開かれているので問題は無いと思う。今日は細かいところまで入らないが、ボランティア制度自体を運営してきた者の立場から言うと、実はいろいろなバッティングの問題であるとか、青年協力隊との関係とか自治体の財政負担の増大の問題だとか、そもそも自治体側に枠がある問題だとか、結構難しい。また、途上国からのニーズの問題もある。ある意味歳を取られた先生方が何を教えてくださるのか。今の時点では、理数科教育が多いが、そういうニーズが若い人との関係でいくとどうなのかとか、そういう調査を今やっているので、それを分析した上で考えた方がいい。あまり即席でやらない方がいいという感じがする。だから、門戸は開かれているし、一つひとつ課題を検討していかなければと思う。

中根座長)基本的には反対では無いのか。

川上委員)シニアボランティアに現職教員をどの程度入れようということを先に決めるやり方で運用はできない。今申し上げたように色々な問題があるわけで、お金も増えてくるし予算面からも制約があるとだけ申し上げておく。

中根座長)個人的に考えたときに、シニアボランティアで行きたいという人がいたら行けるような体制にあるのか。

川上委員)それは今でも行ける。

中根座長)協力隊の年齢層より上の年齢層でも、同様の条件で行けるようにするのが望ましい。

川上委員)だから、門戸を開いて少しずつ今言ったようないろいろなバッティングの問題であるとかニーズの問題とかお金の問題とか、それから教員をやめたOBの方に門戸を開く可能性がないかとかいろいろな観点から見ていかなければならない。他方、制度的に門は既に開かれている。よく研究する必要があると言うことを申し上げている。

團野委員)いずれにしても「現職教員の派遣」ということが大事である。

川上委員)今年は初めて訓練しているが、63名の現職教員を青年協力隊員として訓練をしており、あと1カ月もたたないうちに訓練が終わり、世界各地に散っていく。それで、2年間やられて帰ってこられて、教育の現場に入られて開発教育だとか国際理解教育に非常に大変なインパクトを与えるのではないかと期待している。それがシニアとの関係ではどうなのかということである。

中根座長)それでは、よく研究していただくということにして、一応その研究結果を次の会合にて報告していただきたいと思う。

3 閉会
  事務局より、次回は7月11日(木)10:30から12:30を予定しており、詳細については追ってお知らせする旨発言があった。また、川上委員が出席できないので、中根座長から事前に骨子の草案を作成し会議前に各委員に配布することが提案された。

 


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