資料3
我が国で培われた教育経験と今後の協力可能性について
・No.1 就学前教育、初等中等教育、工業などの職業教育
・No.2 ノンフォーマル教育
・No.3 高等教育
・No.4 IT
我が国で培われた教育経験と今後の協力の可能性について No.1
(就学前教育、初等中等教育、工業などの職業教育)
分野 | 我が国における成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
(就学前教育) | ||||
幼稚園教育 |
・我が国における幼稚園教育は、集団生活のなかで、幼児一人一人の発達に応じながら、遊びを通じた総合的な指導を行うことにより、社会生活を営むために必要な力(集団生活の経験等)や学習の基盤(絵本等への関心や絵画等の創作的表現への興味等)を培う点に特徴がある。 ・幼稚園教諭の一定の水準を担保するため、大学や短期大学等において養成が行われている。 |
・途上国では、幼稚園教諭の養成に関する制度やカリキュラムが整備されていない場合が多い。我が国としては、国内における幼稚園教職員の養成の経験に基づきながら、途上国における教員の養成などに協力することが可能であると考えられる。 | ・青年海外協力隊員(幼児教育)として、マレーシア、ニジェール、中国、スリランカなどへ累計約 250 名の派遣実績がある。 | ・現職教員 |
(教科指導) | ||||
理数科教育 |
・算数・数学では、計算練習など基礎的・基本的事項の繰り返し指導を行い、児童生徒に確実に定着させている。 ・理科では、児童生徒が予め見通しを立てた上で、それを実験・観察などにより 確かめていく教育方法を重視している。 |
・発達段階等に応じたカリキュラムや指導方法等の開発への支援が考えられる。 |
・JICA プロジェクト方式技術協力(実施中も含めて理数科教育プロジェクトの実績は5件) ・青年海外協力隊では、累計で約1,400 名(理数科教師を含む)の派遣実績。 |
・広島大学教育開発国際協力研究センター ・教員養成系大学 ・現職教員 |
分野 | 我が国における成功例・経験等 | 今後協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
環境教育 |
・児童生徒が環境についての正しい理解を深め、責任をもって環境を守るための行動がとれるよう、学校教育では、理科、社会科、家庭科などの教科を通じて指導。 ・「総合的な学習の時間」において、体験的・問題解決的な学習を通じて環境問題について教科横断的・総合的に学習を深めることが可能となっている。 |
・我が国の環境教育の特質等を踏まえた指導内容や指導方法等の開発への支援が考えられる。 | ・青年海外協力隊において「環境教育」分野の派遣実績がある。 | ・現職教員(理科、社会科、家庭科等) |
家庭科教育 |
・小中高等学校を通して全ての児童生徒が発達段階に応じた家庭科を学んでいる。 ・よりよい家庭生活を営むために必要な衣食住、家族・保育、消費生活などに関する知識・技術の習得と実践的な態度の育成を目標としている。 ・中学校・高等学校において、乳幼児の保育について学習し、人間の発達、子育てにかかわる親の役割を考える学習を行っているのは特徴的。 ・高等学校では、生徒が課題を見つけて課題解決する「ホームプロジェクト」(家庭における減塩食の工夫など)や「学校家庭クラブ活動」(クラス単位でバザー、料理講習会など)として、家庭生活や地域の生活の改善充実に大きな成果を上げている。 |
・「食生活」「衣生活」「住生活」「保育」などに必要な専門的知識・技術の教育に関して協力が考えられる。 ・女性の経済的な自立のために、裁縫や手芸などの技術に関する指導が考えられる。 |
・青年海外協力隊では、「婦人子供服」や「家政」などの指導科目で派遣の実績がある。 | ・現職教員、大学(家政科)関係者など |
分野 | 我が国における成功例・経験等 | 今後協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
(生徒指導) | ||||
生徒指導 |
・生徒指導は、学習指導と並ぶ重要な学校の機能であり、非行対策の側面のみならず、生徒それぞれの人格のよりよき発達を目指す積極的な教育活動である。 ・我が国における生徒指導の特徴は、個々の指導テクニックにではなく、むしろ儀式的行事、全校朝会、遠足、運動会、清掃活動などの集団活動を重視する教育システム自体にあるものと考えられる。 ・また、平成7年度から「臨床心理士」等を「スクールカウンセラー」として学校に配置(平成12年度は小中高2,250校)するなど、児童生徒、教員、保護者が抱える学校教育への不安や悩みを受けて留めるための相談体制を強化している。 |
・生徒指導は、教育制度や運営システムと深く係わっており、我が国の経験を途上国に直ちに適用できるとは言えない側面がある。 ・ただし、途上国の個々の状況に合わせて、我が国の経験を応用できる可能性は考えられる。また生徒指導の体制などについては、国を問わず参考になる可能性がある。 ・「スクールカウンセラー」の専門性や経験を活用した教育相談への協力が可能であると考えられる。 |
・いじめ問題について国際シンポジウム(先進国中心)を開催するなど研究面での連携は進められている。 |
・国立教育政策研究所・生徒指導研究センター、 ・生徒指導学会 |
(学校保健・学校給食) | ||||
学校保健 |
・養護教諭は、看護や健康に関する知識・技能を持つ教員職員であることに特徴がある。我が国固有の制度。 ・学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、それぞれ医師、歯科医、薬剤師のなかから委嘱され、児童生徒の健康診断や学校環境衛生検査等に従事している。 ・これら職員は、学校全体の健康管理に大きく貢献している。 ・なお、養護教諭は現在、身体的な問題に留まらず、心のケア(カウンセリング)までをカバーしており、生徒、親を含めた学校において心と体の健康の保持増進に機能している。 |
・子どもの健康は、教育のベースとなるものであり、学校での予防教育や衛生教育などに協力できる可能性がある。 ・また、養護教諭や保健室は、子どもたちの健康づくりや管理を通して学校と保護者を結ぶ接点の一つとしても重要な役割を果たしており、途上国からの関心もある。 |
・青年海外協力隊で、「養護教諭」隊員の派遣実績がある。 | ・日本学校保健会 |
分野 | 我が国における成功例・経験等 | 今後協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係機関等 |
学校給食 |
・我が国の学校給食は、戦後、ララ、ガリオア、ユニセフなどの援助物資により開始(S22)。同支援の終了後も、継続を希望する国民の声に応え続けられてきた(現在は、食材料費を保護者負担、その他経費は自治体が負担)。 ・栄養や食習慣の改善のみならず、食事についての正しい理解やマナー等も含む幅広い教育活動として学校給食が位置づけられていることが特徴。 ・学校給食の実施には、学校給食用の物資を児童生徒のもとまで届けるためのシステムづくりが不可欠。我が国では、給食導入時に、県、市町村、流通業界などが一体となって物資の供給を可能としてきた実践的な経験がある。 |
・(1)学校給食用物資の供給システムづくりや(2)学校における健康管理・栄養教育の両面から途上国に協力することが可能であると考えられる。 ・学校給食は、就学のインセンティブとしても大きな効果が期待されるものであり、体位の向上や栄養改善による健康の保持増進という相乗効果の高い協力になるものと思われる。 |
― | ・関連団体として、全国学校給食会連合会、日本体育・学校健康センターなどがある。 |
(学校環境整備) | ||||
学校施設 |
・我が国では、各学校種別ごとに「学校施設整備指針」を定め、子どもたちが生き生きと学習できる施設環境を整備。 ・近年は、地域コミュニティの拠点としての開かれた学校づくりを進めるため、学校建設においても、社会教育施設との複合化や、地域住民の利用を考慮した施設(音楽教室、図書室、体育館等)の整備を進めていることに大きな特徴がある。 ・また、環境に配慮したエコスクールや防災機能の強化にも取り組んでいる。 |
・地域コミュニティとの連携を進めてきた我が国文教施設の経験や、環境、安全に配慮した建設ノウハウは、今後のODA協力にも大いに生かしうるものと考えられる。 | ・無償資金協力、有償資金協力による学校建設案件は多数。 | ・文部科学省文教施設部 |
分野 | 我が国における成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
(障害児教育) | ||||
障害児教育 |
・我が国では、義務教育制度のもと、障害の種類や程度により、盲・聾学校、養護学校、特殊学級等によるきめの細かい指導が行われてきた(現在、全国に 992 の特殊教育学校がある)。 ・また、国立特殊教育総合研究所などによる研究や研修活動の中から、実践的な教育手法や教育機器などが開発されてきたことも特徴である。 ・さらに、障害者の社会的な自立を推進するために障害に応じた職業教育が実践されてきた。 |
・障害児教育に関する (1) カリキュラム、 の開発ノウハウを途上国に提供することが可能であると考えられる。 |
・国立特殊教育総合研究所では、ユネスコのアジア・太平洋地域教育開発計画 (APEID) に基づき、過去20年間に亘り、当該諸国から関係者が出席する会合を開催してきた実績がある。 ・青年海外協力隊、JICA 専門家等の派遣実績もある。 |
・国立特殊教育総合研究所 ・自治体の特殊学校教員 |
(教員研修) | ||||
教員研修制度 | ・教育水準の向上は,教員の資質によるところが大きい。我が国では,(1)初任者研修、新任校長研修等についは、任命権者である都道府県(教育センター)が実施、また(2)新たな教育分野や緊急な対応が必要な分野(総合的な学習の時間、情報化等)に関する研修は、国が実施する研修を総合的・一元的に実施している独立行政法人教員研修センターが行っており、それぞれが役割を分担しながら、体系的な教員研修体系を整備している。 |
・教員研修の体系的な制度づくりや研修実施方法等に関する助言を行うことにより、途上国における教員研修の充実に協力できるのではないかと考えられる。 (具体的な研修の内容に関する協力は、各教科等に関する協力のなかで実施。) |
・個別の学科(理数科教育)に関する教員研修については、JICAプロ技などによる協力実績がある(「理数科教育」の欄参照) | ・各都道府県等の教育センター等,独立行政法人教員研修センター |
分野 | 我が国の成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
(職業教育) | ||||
職業教育 |
・高等学校における職業教育は、農業、工業、商業、水産、家庭及び看護に関する学科をおく専門高校を中心に行われてきている。(なお、平成15年度から専門教科「情報」、「福祉」が新設される。) |
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(工業) ・基礎的・基本的な知識と技術を生かし、生徒各人のアイデアを実際の「形」に組み立てていく学習(課題コンテストなど)が、我が国の工業界における創造的なモノづくりの基盤となっている。 |
・工業教育に関する途上国への技術移転のみではなく、新技術が開発された場合などに、これを自ら教材化し、教育課程を編成し実施していけるような教官の育成を支援することが、我が国の工業教育の特徴を生かした協力であると考えられる。 ・また、我が国と途上国の生徒同士の交流が実現できれば、我が国生徒の技術向上にとっても有益である。 |
・JICAプロジェクト方式技術協力により、サウディ・アラビア、ジャマイカ、トルコなどで協力の実績がある。 | ・現職教員(工業高校約660校) | |
(農業) ・学校農場が校舎と併設されていることも、特徴として挙げられる。 |
・途上国と我が国における気候や作柄の違いに関係なく、教育手法については途上国に対する協力に適用することが可能である。 ・生徒同士の交流(途上国での農業体験)が実現できれば、我が国にとっても大きな刺激になり、国内の農業教育にも大きなメリットであると考えられる。 |
・JICA個別専門家(ウズベキスタン)、青年海外協力隊(アジア、アフリカ諸国)などの派遣実績がある。 | ・現職教員(農業高校約380校) |
我が国で培われた教育経験と今後の協力の可能性について No.2
(ノンフォーマル教育)
分野 | 我が国における成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
女性教育 |
・我が国では、明治の「学制」以降、1910年代には女子の小学校就学率が既に90%に達している。戦後の「教育基本法」等により、男女共学の達成、女子の高等教育機関への門戸解放がなされた。 ・独立行政法人国立女性教育会館をナショナルセンターとして、全国に公私の女性センター等が約200施設ある。女性教育指導者や女性団体のリーダー等を養成。 ・現在、男女共同参画社会を目指し女性のエンパワーメント(個々人が自らの意識と能力を高め、政治的、経済的、社会的及び文化的に力をつけていくこと)を図っている。 |
・独立行政法人国立女性教育会館を中心に全国各地の女性センター等とのネットワークを活用しながら、途上国の教育における男女格差の是正や女性教育を推進する国レベル・地域レベルの女性リーダーの育成などを支援することが考えられる。 |
・独立行政法人国立女性教育会館では、「女性の教育推進セミナー」(JICA委嘱)、「国際女性情報処理研修」を含め途上国を対象とした研修コースの実施実績がある。 ・JICA個別専門家派遣の実績(パキスタン)がある。 |
・独立行政法人国立女性教育会館及び全国の自治体等の女性センター等 ・女性教育団体 |
青少年教育 | ・「国立オリンピック記念青少年総合センター」、全国13ヶ所の「国立青年の家」、14ヶ所の「国立少年自然の家」等の青少年教育施設や各地域における体験活動などを通じて、青少年の「社会性」や「生きる力」の涵養を図っている。 | ・青少年活動が必要とされる社会的な背景は各国で異なっているが、それぞれの国の問題背景に即しながら、青少年教育指導者の育成など我が国としての技術や経験の活用について検討することは可能であると思われる。 |
・青年海外協力隊の「青少年活動」隊員が各種レクリエーション活動に従事。 ・「独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センター」では、「アジア地域青少年教育施設指導者セミナー」を実施。 |
・「国立オリンピック記念青少年総合センター」、「国立青年の家」、「国立少年自然の家」等の青少年教育施設 ・各種の青少年教育団体 |
分野 | 我が国の成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体 |
地域スポーツ |
・(財)日本体育協会、(財)日本レクリエーション協会と各競技を統括する団体が協力し、養成講習や技能審査を行い、文部大臣が認定する仕組みにより、地域スポーツを振興するための指導者養成事業を実施している。 ・地域スポーツ指導者等、これまでこの制度の下、約10万人のスポーツ指導者が養成され、活躍している。 |
・途上国におけるスポーツの振興を支援するため、我が国の制度を参考とした指導者育成システムの構築や、各競技(特に武道など)に関する技術向上のための専門家を派遣することが考えられる。 |
・日本体育協会では、アセアン及び東アジア諸国を対象として、青少年スポーツ指導員を受入れ、地域における青少年スポーツの実施状況等に関するプログラム等の提供を行っている。 ・青年海外協力隊では、累計で約1,700名以上のスポーツ隊員を派遣している。 |
・日本体育協会及び各種競技団体 |
科学館 |
・科学技術を普及・振興を図るため、日本科学未来館や自治体による科学館などが各地に整備されている。 ・日本科学未来館などのように、展示に留まらず、一流の研究者による対応や実験工房を備え、将来の科学技術を担う青少年の積極的な育成を目指すものもある。 |
・科学館は、公教育と社会教育の接点にもなりうる施設であり、途上国では理科実験の場などとしての機能も考えられる。 ・我が国としては、途上国の科学館からの研修員受入などに対して協力が可能と考えられる。 |
・世界科学館会議などで途上国関係者と交流の実績がある。 | ・日本科学未来館 |
我が国で培われた教育経験と今後の協力の可能性について No.3
(高等教育分野)
分野 | 我が国における成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
工学教育 |
・欧米諸国では、「手を汚す」工学を高等教育として位置づける発想がそもそも乏しかった。これに比べ、我が国では、早くも明治期に工部大学校(帝国大学工学部の前身)を置いており、実験・実習を重視した工学教育に伝統的な特徴がある。 ・大学レベルで工学教育を受けた技術者自らが工場などの現場に出て活動することにより、支援技術者・労働者にも工学教育の成果が伝達され、それぞれのレベルの者が自ら考え、工夫する能力を身につけたことが、我が国産業への大きな波及効果であると言える。 |
・途上国の産業発展のために、工学分野に求められている最大の課題の一つが品質管理技術の強化である。 ・我が国の工学教育には、徹底された品質管理の思想があり、これに基づき、例えば、部品の設計、製造段階での行程管理や、土木現場における測量の正確さなど、工学の各分野を横断した「品質管理」技術の向上に協力することができる。 |
・JICAプロ技、無償資金協力(施設・機材)などで多数の協力実績がある。現在、「アセアン工学系高等教育ネットワーク」を実施中(参加10ヶ国)。 ・日本学術振興会によるアジア諸国との拠点大学交流 |
・豊橋技術科学大学工学教育国際協力研究センター、その他の国立・私立大学 |
農学教育 |
・我が国の農学は、特に稲学で世界屈指の実績を上げており、また林業にみるスギ、ヒノキなど針葉樹の人工林施業技術体系の創出や、家禽(ニワトリ等)における育種飼養に係る体系化技術、さらには醸造・発酵など伝統技術を生かした機能性食品の開発等の分野で大きな業績を上げている。 ・我が国では、教官・研究者が自らフィールド(田・畑)に入って研究を行う手法がとられており、上記の業績を支える土台となっていると言える。 |
・途上国の大学では、理論面に留まらず、焼き畑耕作による地力の劣化など、地域に生起する農林業上の問題の解決に必要なフィールドでの研究・教育(例えば、地力回復に効果のある在来種の選定など)への関心が高くなっている。 ・我が国は、遺伝子導入や受精卵分割などの先端技術開発は勿論のこと、長年にわたり蓄積されてきたフィールドにおける研究・教育の経験を協力に応用することが可能。 |
・JICAプロ技などにより、インドネシア、タイ、ケニアなどで多数の協力実績がある。 ・日本学術振興会によるアジア諸国との拠点大学交流 |
・名古屋大学農学国際教育協力研究センター、及びその他の国立・私立大学 |
分野 | 我が国の成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体 |
医学・歯学教育 | ・我が国では医師・歯科医になるために最低限必要となる教育内容をまとめた「モデル・コア・カリキュラム」が策定されている。今後は、この内容に基づき各大学が共用試験を実施し、教育の質を担保することが予定されている。 |
・医学・歯学に関しては、地域の環境や国民の体格・体形等の特色に合わせた教育内容が求められる。この意味で、特にアジアにおいては、我が国の経験を直接生かしうる可能性が大きい。 ・また、「モデル・コア・カリキュラム」は、医学・歯学教育の質を一定水準以上に保つために策定された汎用性の高いプログラムであり、地域を問わず、途上国への協力に十分活用が可能である。具体的には、「モデル・コア・カリキュラム」をベースとした現地カリキュラムの作成、共用試験(問題のプールを含む)の導入による評価システムの構築等に対して支援することができる。 |
・無償資金協力による施設・機材整備、JICAプロ技など、協力実績は多い。 ・日本学術振興会によるアジア諸国との拠点大学交流 |
・東京大学医学教育国際協力研究センター、及び国立大学医・歯学部など |
法学教育 |
・我が国では、明治維新と第二次世界大戦の後に、それぞれヨーロッパ大陸法及び英米法を取り入れながら、我が国の社会的な状況や伝統的な法慣習等と融合させた法体系や法学教育を整備し、国の近代化・工業化に必要とされる土台の構築に成功した経験がある。 ・その一例として、「近代民法典と伝統的家族制度」が挙げられる。明治維新後の民法典は、ヨーロッパ近代法の枠組みのなかに伝統的な家族制度を残し、これを社会秩序の基盤とした。商取引などグローバルスタンダードを必要とする法と家族法など当該社会の秩序に固有の法の共存を図った我が国の経験である。 |
・途上国にはそれぞれの伝統や歴史を背景とする固有の法文化、規範が存在する。これを無視し、欧米法などを直接移入することには問題が多い(例えば、カンボディアにおけるフランス民法典の移植など)。 ・我が国は、江戸末期に独自の発展を遂げていた商取引の慣行を会社法・手形法に導入するなど、固有の法文化と欧米法を融合させてきた独自の経験があり、途上国における法学教育、法整備にも活用することが十分にできる。 |
・旧社会主義国(ラオス、ヴィエトナム、カンボディア、モンゴル等)の市場経済化に伴う協力ニーズに対して、JICA個別専門家派遣、研修員受入などの協力実績がある。 | ・名古屋大学アジア法政情報交流センター等 |
分野 | 我が国の成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
工業高等専門学校 |
・我が国の高等専門学校は、発想力豊かな実践的技術者の養成を行っており、産業界からも高い評価を得ている。 ・具体的には、中学校卒業者を対象として、5年一貫教育による実験・実習を重視した実践的な専門教育を特徴としている。 ・課題を与えてグループでモノづくりにあたる創成科目やロボットコンテスト(課外活動)への参加などユニークな実践例もある。 |
・実験・実習を重視したカリキュラム構成や教育教材等は、途上国の教育プログラム開発等に対する協力にも十分に活用できるものと考えられる。 | ・タイ、サウディ・アラビア、インドネシアなどでJICAプロ技の実績がある。 | ・国立高等専門学校協会(留学生・海外協力専門部会)を窓口として、全国54校の国立高等専門学校が協力している。 |
我が国で培われた教育経験と今後の協力の可能性について No.4
(IT)
分野 | 我が国の成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
IT |
・国内においては,衛星通信を利用した 大学間衛星通信ネットワーク(スペース・コラボレーション・システム(SCS))を開発。 |
・遠隔授業のより効果的な実施方法等に関する研究開発を実施。また,遠隔による技術者養成教育や帰国留学生に対するフォローアップなどに関する研究開発を実施。 ・宇宙開発事業団が平成17年度に打ち上げる予定の超高速インターネット衛星を利用した実験(i―Space)に向け、既存の衛星を用いて、多地点間マルチメディア遠隔講義を効率よく複数同時に実施するシステムの実現可能性の検証と、その利用によるアジア地域の大学間におけるe-ラーニング実験を行う。 |
・国内の複数大学との共同による,アジア諸国の大学等との間での衛星通信実験 | ・メディア教育開発センター他 |
・「教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)」を活用して、全国の社会教育施設に対する大学公開講座の提供方法や、地上系回線との融合的な活用などについて実践的な調査研究を実施。 | ・遠隔教育における利用を想定して作成されたコンテンツ(大学の公開講座等)を各国の再利用(ビデオ等)に供する。 | ・高等教育情報化推進協議会 | ||
・放送大学は、放送局と大学の両者を設置しているユニークな特性を持っている遠隔教育の大学であり、テレビ・ラジオの放送を通じて、「いつでもどこでも学べる」生涯学習の理念を実現。 | ・標準的放送教材及び遠隔教育の手法の研究開発を行い、アジア諸国の拠点大学へ実験的な遠隔教育協力を推進(具体的方策や連携協力のあり方の枠組みについては、関係機関の実務者レベル検討会で検討中) | ・インドネシア、マレーシア及びタイにおける遠隔教育に関する要望調査 |
分野 | 我が国の成功例・経験等 | 今後の協力の可能性 | 国際協力の実績 | 関係団体等 |
IT |
・「日本語教育支援総合ネットワーク・システム」を活用し、日本語教育関係情報や多様な教材用素材を収集し、それらの情報をデータベース化し、国内外の日本語教師・学習者等に対して、インターネットを通じて情報を提供。 |
・システムの改善と提供するコンテンツの充実を図り、また、海外の日本語学習者等からの利用をさらにしやすくすることにより、海外の日本語教育の振興と国際協力の推進を図ることが考えられる。 |
・独立行政法人国立国語研究所 |