国際教育協力懇談会
2002/04/24 議事録国際教育協力懇談会(第5回)議事録 |
2 議事
(1)アフガニスタン教育支援について
資料1−1のアフガニスタン教育支援の動向について事務局より説明があった後、以下のように大阪大学大学院人間環境学研究科 内海成治教授より報告があった。
(2)タスクフォース等による検討結果
事務局より、タスクフォースにご協力いただいたNGO及び地方自治体の方々等へのお礼が述べられた後、資料2、資料3−1及び資料4に基づいて検討結果が報告された。
続いて、広島大学教育開発国際協力研究センター 長尾眞文教授より「拠点システム」について以下のとおり説明があった。
長尾教授)10分間で拠点システムとCICE等の役割について説明させていただきたい。
資料5に基づいて、簡単にCICEのプロフィール、
拠点機能、
結びの3点について説明させていただきたい。
設置年度は平成9年度であり、これは、平成8年度に当時の文部大臣が「時代に即応した国際教育協力の在り方に関する懇談会」を設置され、そこで、教育協力を推進していくための研究サポートセンターが必要であろうという答申に従い、設置されたものである。今年度4月より筑波大学にも同様のセンターができている。定員は教授2名、助教授2名、客員教授1名その他サポートスタッフを含め約9名のセンターであり、教員の給与を入れない運営経費が年間約1,700万円くらいあり、科学研究費補助金が2,000万円、民間財団からの助成も併せると、約4,000万円くらいで活動している。
使命は、我が国の国際教育協力のための実践的・開発的研究の実施であり、これは日本の教育援助をより効果的に、より効率的にするための研究と考えている。活動は大別すると3つあり、研究、国際協力事業の実施支援、国際教育協力推進イニシャティブである。資料に記載しているように、我々の研究は学問的なものにとどまらず、実践的、開発的な研究で、できるだけ援助の現場で意味のある研究を志している。国際協力事業団あるいは国際協力銀行の方々と話をしながら、実践プロジェクトの枠の中で研究活動を進めている。大きく分けると、教育行政と理数科教育であり、アジアにも関心を持っているが、事業として大きいのは資料に書いているようなアフリカの国々に対してである。我々は、こういう研究活動、実践との関わりに加え、日本の教育援助の効果をいろいろなところで情報発信していくということが必要なのではないかと考える。先般の外務省のODA改革懇談会でも、日本の援助は現場では非常に評価されるものの、それが、その国の政府には届かない等の批判があるということが言われていたが、我々は資料に記載しているとおり、いろいろなフォーラムやシンポジウムを開催することにより、国内や国際的な発信を心がけている。このうち、「国際協力の新時代」に関しては中根座長にもパネリストとしてご参加いただいたし、ラウンドテーブルにおられる数名にもこれまでの会議にご協力いただいた。
以上が、簡単なプロフィールであるが、そのようなセンターが、では、今、この懇談会で検討しておられる現職教員を発展途上国の教育協力に派遣するということに関して、どのような拠点のバックアップが可能であるのかということについて、資料にあるように、「協力の蓄積・分析・共有化」「派遣教員の支援」「協力経験の浅い分野の活用促進」について、簡単に述べさせていただきたい。拠点機能だが、第一は「協力の蓄積・分析・共有化」の機能だと考える。具体的には、資料に記載しているとおり、「教育分野の協力のプロジェクトの分析と結果のデータベース化」、「援助関連研修活動のための活動実例集・教材作成、協力活動モデル策定」、「国際教育協力の評価システム・手法研究」になる。1点目は教育分野の協力プロジェクトの分析であるが、先程プロフィールの中でセンターが理数科教育あるいは地方教育行政あるいは教員研修の分野で研究を続けてきたと申し上げたように、これらについて体系的にしかも、現職教員を派遣する可能性との関連で研究していく。この関連で、研究に値する2事例に言及しておきたい。
事例の一つは、最近発展途上国の側から、日本の教員の授業研究(授業改善の研究)の開発について、非常に多くの関心が寄せられていること。コロンビア大学のティーチャーズカレッジではホームページを開くと、日本語で「授業研究」と出てくる。実際に、南アフリカのプロジェクトで授業研究をなんとか南アフリカ側で実践してもらえないだろうかという取組もしている。もう一つの事例は、JICAの研修にいろいろな形がある中で、今日本に招へいして行う研修が新しい注目を集めていること。これは懇談会の中で日本人の心の見える研修といっておられることの具現化で、日本の国内で、学校の現場で先生方がやっておられることを途上国からこちらにグループでみえた先生方が見て、日本の先生の熱心さを直接感じることによって、本から得られないものをつかんでもって行かれる。教育援助が教えるという訳にはいかないものなので、教育経験を提供していくような援助にもって行かないといけない訳だが国内研修のような形も考えられるのではないかと。我が国の協力経験を生かした協力モデルの開発というところは、教員派遣する援助の知的なインフラを国内で構築すると考えて頂ければよい。
2点目は新たな国、地域、新たな教育方法等に関する研究であり、これは、南アフリカ、ガーナ、ケニアで理数科教育をやっていると、だんだんとその話がアフリカの他の国に伝わっていく。そうすると、それらの他の国々からの要請が出てくる。その際に、これまでのモデルでそのまま行くわけにはいかない。その国の事情、日本側の最前の取組等について、研究する必要がある。資料に記載しているような「途上国の開発ニーズ調査と協力方法の研究」ということもやらなければならないし、分野的に我々のセンターでは、これまでの取組の中で、女子教育とかNGOとの連携とかそこでの高等教育の在り方とか評価の組み込み方とか、そのようなことをモデルとして研究している。これは新しい取組のためである。
3点目であるが、これは先述したとおり、国際的な発信機能が大事なのではないかと。これをやらないと国内で拠点を作ってもそれをサポートしきれないのではないか。これは、例えば、教育協力に関する国際的協議の場への参画であるとか、国際会議や政策フォーラム開催への協力とか、援助政策手法の比較研究というかたちで実施できると思う。当センターの考え方としては、国内の拠点が国際的な機能を持つと言うことを重要視して考えている。
次に、簡単だが、センターのこれまでの現職教員による教育協力に関連する事業の経験に基づき、一つの計画案を述べさせていただきたい。資料に記載しているとおり想定協力分野としては、これまでの経験を踏まえると、理数科教育とか学校運営、地方教育行政といったものが考えられる。今回は、理数科教員再訓練計画について話をさせていただきたい。この計画の意義は途上国側の評価が定着しておりニーズが高い、
日本の教育協力経験が比較的豊かな分野である、
既存の教育協力案件の延長線上に計画できる、ということである。例えば、JICAの言葉で言えば、プロジェクト技術協力であるとか、ミニプロジェクトとか言うが、それの延長線上にこういった現職教員の派遣が考えられる。次に、これは非常に重要な点なのだが、ここで我々が考えているのは、現職の教員をばらばらに一人ひとり送るのではなく、チームとして派遣し、そのチームを統合的に支援するということを派遣自治体が考えるということを念頭に置いてもらえればいい。例えば、3名の先生、数学・物理・化学・生物のこれらの分野から選べばいいが、そこに地域に詳しい社会の先生であるとか、コミュニケーションのとれる英語の先生であるとかを加えていくということも考えられる。それを途上国の地方教育委員会へ派遣して、次のような活動を考えればよいのではないか。活動内容の例であるが、資料に記載しているのは架空のことではなく、実際に南アフリカの理数科教育で実施していることである。これは、広島大学と鳴門教育大学の先生方がやっているが、そこにできるだけ、現職の教員の先生方にも入っていただけるよう工夫しようとしている。鳴門教育大学は教員養成系の大学であり、現職の教員が行き来するのでこのような先生がプロジェクトに参加することで、教員の資質を高めるという効果もあるので熱心に考えている。活動内容は、
地方教育委員会による理数科教員再訓練ニーズの把握と計画作成支援、
現職理数科教員集団研修の支援(教材作成、実験指導)、
学校への巡回、
教員研修システムの構築と(現地側の)拠点形成の支援、である。
先述したチーム派遣が適当である理由だが、これは、経験と技能の補完性を生かすことができる。これは英語の先生や、社会科の先生も含めてと言ったが、これが第一点である。二点目に日本人教員の特徴であるチームワーク志向を生かすことができる。第三点目に現地側関係者のチームワーク推進の起爆剤とする事ができる。これは、現在、南アフリカで支援をしている。日本人がグループで金をかけないで授業を改善し、教室レベルでの理数科教育の質を高めていく、こういう取組に、南アフリカ側は興味を示しており、今日は時間が無いので詳しく話さないが、日本でやっているような、例えば毎週1回木曜日の午後に、先生方が集まって授業改善の自主研修をするというようなことを月に1回はどうかというので南アフリカで試している。プロジェクトでカバーしている135校のうち、協力の2年後には3分の1くらいはそういうことを自主的に一銭の追加的費用も無しに実施するようになっている。
以上のような取組を実現するために、どのようなサポートシステム、つまり拠点システムが、必要となるかであるが、2種類の支援体制、現職教員教育協力計画のパイロット支援、
派遣母体の教育委員会による支援、が考えられる。後者に関連するが、先日最終報告が出た外務省のODA改革懇談会の報告の中で、「国民参加の援助を考えよう」ということが提唱されている。派遣母体の教育委員会による支援は、国民参加の一つの形であり、しかも、先生、PTA、親、子どもという形で全員参加になるので、単に現職教員が行くとか行かないとかいうことではなしに、日本の社会全体がのっていくようなそういう事業の可能性を有しているのではないかと考える。
協力経験の浅い分野の活用促進機能については、筑波大学に新設された教育開発協力研究センターでも障害児教育分野における協力等ユニークな事業の可能性を考えており、これもかなりポテンシャルがあると思われる。途上国の協力ニーズの発掘調査とか我が国の教育経験の応用可能性調査とかワークショップ開催による途上国との対話とか、これらは拠点がするということよりも、それらを得意分野としている大学が実施し、拠点センターはそれを支援すると考えるのが適当であろう。
最後に、広島大学教育開発国際協力研究センターとしては、国際的連携の拡充により国内拠点機能を強化して、この懇談会の期待に応えられうるよう努力することを約束し、説明を終える。
(3)今後の懇談会の進め方
事務局より、資料6に基づいて今後の懇談会の進め方の説明があった。
(4)意見交換
座長より、タスクフォースの検討結果及び今後の懇談会の進め方の2点について、各委員等の自由な意見が求められた。
千野委員)内海先生に質問をさせていただきたい。先程ご報告の中で、日本の顔が見えなくて残念だと言われたが、それは、どこの国でも顔が見えていないと言うことなのか、とりわけ日本の顔が見えないと言うことなのか。もし、そうであれば、理由は何だと思われるのかお聞かせいただきたい。
内海教授)アミン教育大臣は、日本でユニセフ等のバックトゥスクールキャンペーン支援等への感謝をしたいという、強い意向で訪日されたわけだが、アフガニスタンの現場では、バックトゥスクールキャンペーンは、日本の事業ではなくユニセフの事業として評価されている。教材の中に、日本支援についての記載があっても良かったのではないかと思う。ただし、配布作業は日本のNGOが11人派遣されて行ったことから、全く顔が見えないということでなはい。しかし、アフガニスタン教育省やユニセフ内に、もっと日本人がいても良いのではないかという気がする。UNDP事業においても日本人スタッフがいないことを大使は嘆いている。
平野委員)バックトゥスクールがユニセフの活動と捉えられるのは仕方がない。言葉の問題や、歴史的にあまりつながりが無かったことが、日本からの援助にどれだけハードルとなっているのかお聞かせいただきたい。
内海教授)"Education in Afghan" に、アフガニスタンにおいて "Japan Scientific Expedition"(日本学術探検隊) が行われたということが書かれており、日本の学術はアフガニスタンに広く伝わっている。また、日本のNGOが現地に立派な事務所を構えている。政府としての具体策が遅れているので、もっと専門家や人材を出し、もう少し顔が見える支援を行うべきだと思う。
川上委員)アフガニスタンの話が話題に上がっているので、(政府やJICAを弁護するつもりはないが)一般的な取組の姿勢、現状を参考までに申し上げたい。顔が見えないということは時々聞こえている。私の認識としては、「まだ、顔が十分見えてこない」ということであろうと思う。どの分野をやるにしても、若干の準備期間は必要であるので。日本の場合は、大使館自体1ヶ月前くらいにできたばかり。他の国については分からないが、それぞれ軍隊を出して、それに裏付けされた安全保障を確保しながら、援助をしているという体制にあるのに対して、日本は全くそういうことがない。全体的な人間の安全というものは常にあるわけで、展開する際には、そのあたりを慎重に見ていく必要がある。JICA自身も大使館に人は送っているが、オフィスを開くまでには至っていない。しかし、内海先生も参加された第二次調査団は、実際には調査に止まらず、開発協力のスキームを使って教育分野だけに限って言えば、5つの女子校を今まさに手がけて修復に入らんとしている訳である。これは、ある意味では、非常に早い援助だということで説明できるかもしれないが、まだ、建設に入っているわけではないのでそういう意味では、未だ十分見えてないというのが正しい言い方なのかもしれない。もちろん、地雷除去等は一定の時間が必要だし、今後いずれにしても、5億ドルを2年半で、今年中には少なくとも半分は使って援助すると言うことなので、これは、単に金を何らかの形でグラントで費やせばいいという考えは全く持っていない。これには、人的な裏打ちがあって、日本の顔がそれなりにはっきり見えるというやり方がどうやったらできるのかということを一生懸命検討している。その検討に若干の時間がかかっているのが現状である。
西尾委員)平野委員の質問の中にもあったかと思うが、言語の問題である。内海先生があちらで調査なさる場合、あるいは、長尾先生が広島大学で研究される場合、大学レベルでは、共通語は英語が可能であろうが、例えば、あちらの教員を日本に招へいして研修する場合には大学の教員ではなく、初等中等教育の教員かと思うが、この場合、このプロジェクトを通して、英語はどこまで媒体語となることができるのか、あるいは現地語及び日本語というものがどのような位置づけになるのかと言うことをおしえていただきたい。
内海教授)アフガニスタンではペルシア語系のダリ語とパシュトゥン語が公用語である。私は、両方とも全くできないので、通訳に同行してもらい現地調査を行った。アフガニスタンから日本へ研修に来た人たちをどうやって教えるかというご質問かと思うが、一部にはどうしても現地語の通訳の人を介しての教育ということにならざるをえないのではないか。ただし、日本国内に通訳できる人が少ない場合には、そういう研修コースで来る人の中に、現地語と英語ができる人を混ぜて、その人たちにも、一部業務を負担していただくことも考える必要があると思う。
佐藤委員)ユネスコ本部はアフガニスタンに対しては当初から熱心な活動をされていたと認識しているが、今、ユネスコ本部はどういう関わりをしているのかということと、今後タスクフォースを進める際にユネスコとの関わりを考えてやらなければいけない気がする。どういう姿勢であるのかを教えていただきたい。
事務局)ユネスコは教育を担当している国際機関であることより、アフガニスタンの教育復興については、多大な関心を持っていて、内海先生のご報告の中にもあったとおり、いち早く、カブールの中にも事務所を設けている。但し、全体的な印象として申し上げるべきは、ユニセフとの比較で申し上げる必要があるかと思うが、ユネスコは現場でいろいろな活動をすると言うことについて、ユニセフとの比較で申し上げると、手足が若干弱いということが正直なところであろうかと思う。従って、バックトゥスクールキャンペーンもユネスコではなくて、ユニセフが主導で行われている。現在考えているのは、逆にユニセフの方は、学校の運営や教育計画という分野については、貢献ができると計画づくりをしていると聞いている。また、先週アミン大臣が来日されたときに、識字教育については経験があるのでオファーをしたところである。ユニセフとの仕事との仕訳を現地で、調整しユネスコはユネスコとしての役目を果たしていく必要があると思う。
荒木委員)内海先生、長尾先生の話を聞いた感想である。「顔が見えない」ということであるが、日本の援助は、これまではハード志向だったので、多分にソフトというか知的なところが見えてこないことがある。お二人の話と拠点システムを併せ考えると、協力する前の段階での日本における知的インフラの整備を事前に行い、常にスタンバイしていないと、素早く対応ができないことになる。文科省が持っているノウハウをもう一度整理・再編していつでもスタンバイできる体制にすることが大切だ。そのことは、今の話と結びついてくるのではないか。日本の援助の一つのいい点であり、悪い点であるのは、要請を受けてから協力協定を結ぶことである。ただし、一定のスケジュールは事前に分かっているので、所用期間等を逆算し用意をしておく必要があるが、従来は、いろいろな分野において国内の知的インフラが整備されていないので、改めてやり直したり、場合によっては系統的に蓄積されたりしておらず、新たにやり直しをやっている。したがって二度手間、三度手間でコストもかかるということになる。今、文科省が進めている整備は、誰がお金を払うのか、要するに、ODAは外に対する援助なので国内で整備するのは誰がやるのか。国家予算でやるにしても、大変で、知的インフラ整備はだからこそこれまで手つかずで遅れてきたのではないかという気もする。
座長)具体的な教育分野についての意見は何かあるか。
荒木委員)教育分野においては、今、JICAはJICAで技術協力をやっており、文科省の蓄積と、JICAが先端的にやっているODAとしての教育協力とをどこでどういうように接合していくのかという仕組みが見えない。しかし、やっておく必要があるようには思う。当面は、ODAの項目を使いながらでも、JICAやJBICと協力しながらそういう蓄積をある程度やっていった方がいいという気はする。
川上委員)全体の流れとして、拠点大学という考え方については賛成する。これを、国際教育協力の一つの核にしていく(進行中のところがあるようであるが)、これとJICAとの関係を緊密に協力をしていくということで仕訳ができるのであろう。大学を国際協力にもっと活用すべきであると思う。アメリカ、イギリス、カナダ等はそういった意味では、非常に先端的で大学を活用してODAの資金の多くを支出している。そういう仕組みになっているが、日本の場合は、あまりにもやっていなさすぎるというところがある。JICAとしても、実施機関として国民参加を得た協力、国民の理解と支援が無ければこれからの協力は成り立たないということは、私はつとに言っているし、今後、そうあるべきだと思っている。そこで、例えば、NGO・地方公共団体・企業等が出されるが、私は、必ずアカデミアということも言っている。このアカデミアを通じる協力をできる限りうまいやり方で今後やっていくということについて、方向性としては賛成する。やり方はいろいろあるだろうが、先程から話が出ている拠点システムというものも一つの考え方として利用していくということもあり得る。この辺りをもうすこし詰めて議論していくと面白いと思う。また、タスクフォースは、そういう意味において、我が国の教育経験活用等に関するタスクフォースの検討結果であるし、拠点大学を使った、特に経験の深い分野についてのいろいろなデータの集積だとか、支援体制だとかをやっていくというのは、方向的には合っていると思う。教育経験の浅い分野を一生懸命やっても途上国のニーズとうまく合うのか若干の疑問を感じるところがあるが、これは、環境分野であるとかで是非やりたいということがあり、それが先方のニーズとうまくマッチすれば、排除すべき話ではないと思う。
また、先程の説明の中で、協力隊だとかシニアボランティアの現職参加の話、これは、制度として去年から打ち出されて、実現の運びとなって今、協力隊員が100人のうち63人、今年集まって、目標の3分の2であるが、今ちょうど4月から研修に入って、未だ派遣していないが、これが派遣されて、実績として出てくれば、非常に面白い制度で、今後システムとして伸ばしていきたいと思う。しかし、JICAの予算の関係もあるし、(自治体への所属先補填を)80%以上なかなか出せない、また、自治体に20%くらい負担してもらわなくてはならないということがあり、これがシニアになると、もっと自治体の負担が遙かに増える、一人につき、何百万円という負担ということになるので、実現は難しいという面があるが、ニーズとしても若い人の方が、多いというのがあるし、理数科の分野が日本は強いわけだが、そういう分野にシニアが入ってくると若い人が締め出されるという問題等がいろいろあり、シニアを大いに活用してプロジェクトを立ち上げるほどには、うまくいかない。その辺のプラクティカルなことをよく考える必要があるし、教育委員会としてはシニアを出す方が望ましいというご意向があるのかもしれないが、国際的なニーズは別だし、お金が絡んでくるとそう簡単ではないということがある。即ち、青年協力隊については大いに結構だが、シニアについては、ややリザベーションがある。これまで、既に1000人以上を超えたシニアボランティアのうち、理数科教育分野はこれまで1名のみであり、それは、非常に数字が物語っている。このあたりは、徐々にやった方がいいのではないかと思う。
座長)シニアが80%ではないのか。
川上委員)シニアに出しているお金(所属先補填)は正確には覚えていないが、(月額)30万円〜40万円であり、実際には、自治体の負担はもっと大きくなるということである。
團野委員)国際教育協力を考える際に、ハードウェアの援助からソフトウェアの援助へシフトすることにより、心が見える協力にしていくという一つの視点が読みとれるが、そういう意味で、現職教員の派遣というのは大変結構な展開であると思う。その場合教育協力の実を挙げるためには、派遣される方々の力が半分であるが、半分は日本からのサポートがどれだけやれるのかということで決まってくると思われる。特に、こういった分野でのパフォーマンスは、能力の保有度と発揮度のかけ算できまると思うので、その辺を考えると、日本からのサポートにおいて、支援機能を中途半端にすることが一番心配だと思う。拠点主義はよいし、そこに大学の知恵を借りるのは、これからの方向性として正しいと思うが、この拠点を分野ごとに(1校でなくても、コンソーシアムでもいいが)どこかの大学を選んで、人為的にも予算的にも大きくできないか。同じやるのであれば、中途半端なことをするのではなくて、きちんとしたことをやれるような体制を整えていくことが必要であると感じる。この点をこれから議論していただければよろしいかと思う。
また、経済協力だけではなく、教育協力においても「広く浅く」というよりも、「重点対象に十分に」と考えていくべきところに来ているのではないか。例えば、重点モデル国を考えていく。その場合の、一つのヒントとして、日本経済のアジア依存度は、貿易を見ても投融資を見ても4割を超えているのでアジア重視を考えたい。アフガニスタンも緊急の問題としてプロパガンダ効果はあると思うが、なかなか難しい。ハードウェアが先行しなければならないという面もある。アジアの政治的、経済的安定があってこそ、日本が、アジアの中で安定的に発展していけると考える。例えば、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミヤンマー、西へ行って、パキスタン、バングラデシュといったところにウエイトをかけられるべきだとかねがね思っており、この辺もこれから先生方に議論していただいてはどうかと思う。
平野委員)拠点センターについて、若干リザベーションがある。根底にはナショナルセンターというものが必要なのだと思っているのであるが、そのナショナルセンターは文科省であって、文科省が仕事の一部を拠点センター等に委託しているという形を取っているのではないか。その見返りとして、科学研究費補助金を出している。他の役所で言うところの、下請けに仕事を委託するという形になる。ノウハウが蓄積される等、プラスの面ももちろんあるが、それが一つの既得権になってしまうとか、拠点センターのやり方・考え方が一人歩きをし始めかねない等、マイナスの面もある。それを、マイナスの面が出ないように、どうやってコントロールしていくのかというのが、一つの大きな問題である。先程の長尾先生のお話だと、広島大学のセンターの場合は全部で9人とおっしゃったが、これが、日本全国から集められた人たちなのか、それとも、ずっと広島大学にいた方で構成されているのか、私は後者であると推測するが、ナショナルセンターの場合は、そういうエキスパートを全国から集めてタスクフォースを作る、ということができるが、拠点センターを作ると、その方が仕事がしやすいということもあるが、ある意味セクショナリズムに陥りがちになる。よって、今なされていることは大変すばらしいことであると思うが、そのうち、組織の老朽化が出てくるとそのあたりが問題になってくることもあり得るかなという気が若干する。詳しいことを知らず、こういうことを言うのは申し分けないが。
座長)それに代わる方法として、どのようなものがいいと思われるか。
平野委員)ナショナルセンターができて、(それが東京にある必要はないが)ある種のマンデートが与えられていて、先程疑問を感じたのは今までの5年間これからの5年間、通算10年間、あそこの大学だけがそのことについて独占してしまうのかという気がした。そうではなく、もう少しその辺を柔軟にというか、タスクフォースをくむことが活性化のためには必要ではないかと思う。
千野委員)平野委員が指摘された点は、私自身よく分からない部分だったので長尾先生にお聞きしようと思っていた。また、筑波にもできたという話があったが、それは、西の拠点・東の拠点で、それをナショナルなものとしてやろうという位置づけがあって設置されたものなのか、そういう設置の方法になっているのかという疑問があった。(長尾先生へ)すでに5年たったわけだが、その中で、問題点、限界、可能性等について感じられた部分を伺いたい。それに関連して、自治体、教員、教職員組合からのアクセス等はあるのか。
長尾教授)4人の常勤教官のうち、広島大学出身者は一人もいない。私の私見で申し上げると、センターの創設は広島大学で尽力された先生がおり、バックグラウンドが違う4人が集まった。科学研究費補助金については、必ずしも見返りではないと思う。問題点等については、今のところ特に感じていないが、国立大学の中で仕事をしているので、財団からの助成金を取ってくると、委任経理金等の話になり、手続きが複雑になるので、共同研究を行う民間の財団に受けてもらって一緒に仕事をするという手法を用いている。地方教育委員会、地方自治体との仕事については、例えば南アフリカ等から研修員を受け入れて研修を実施する際に、JICAセンターとも協力しつつ、緊密な関係を作っている。拠点が特定の大学に限られるのに違和感があるということだが、これについては、(座長に対して)もし私的な提案をさせていただくことが可能であれば、一つは時限にしたらいいと思し、もう一つは、外部評価をいれればいいと思う。透明かつ公正なシステムを導入すれば問題ないのではないかと思う。可能性として、国内拠点だけではなくて、世界銀行とか、ユネスコ、ユニセフやアジア開発銀行等と一緒に仕事ができるような拠点になりたいと思っている。
事務局)ナショナルセンターとして考えていたのかというご質問があったが、考え方としては、ナショナルセンター的な機能を期待してそれぞれの分野ごとに設置してきているということであろうと思う。教育分野に限っては、今回、筑波が設置されたので2大学あるわけだが、いろんな意味で、教育分野における協力、特にODAの関係を政策的に重要視しているのも一つある。そういう意味で、筑波を新しく立ち上げて2つになっているわけだが、いずれにしても、この機能がうまく今後将来にわたっていくかというのは、外部評価や自立的な人事等、競争力を維持していくためのシステムを持ちうるかということであろうと思われるが、これからの大学そのものが競争的環境の中で、機能せざるを得ない状況になってきているので、また、科学研究費補助金についても競争的なルールが徹底してきているので、そういう意味で、今後大学にスポットを当てていろいろな提言をしていただく際には、そういう側面も併せて提言をするということには意味があると思っている。どういう組織にも、そういう危険はあると思う。これからますます、税金を投入していくということで、そういうことも併せて議論していただく必要があると考えている。
篠沢委員)今後の懇談会の進め方にも関連するが、現職教員参加促進のタスクフォースの検討結果を伺って、この問題に関して言えば、かねて心配していた通りの分析が出ている。促進していこうという気持ちがあって、この前の中間報告を出し、タスクフォースをやっていただいたが、出てきた分析結果には現状から前へ大きく進んでいくエネルギーが感じられない。タスクフォースでは、これから先、分析されて出てきた結果をどのようにブレイクスルーして前へ進むのかということを引き続き議論していくのか。それとも、タスクフォースはこの分析結果が出たので、そこで終わりましたということになるのか。また、教員参加を促進するためには、JICAの予算の枠取りが必要になるが、文部科学省は外務省と掛け合うつもりがあるのか。
事務局)シニアのところは技術的に難しい面がある。枠組みについては、タクスフォース、具体的にはJICAの事業であるので、最終報告がまとまる7月末までの間に技術的な問題について、継続して議論をする必要があると思われる。しかし、この委員会の場では、大学に焦点を当てた形にし、その間、事務レベルで検討していきたいと思う。最終報告の段階では文章で整理してお示しするので、その際に全体で議論していただくということを考えている。
座長)タスクフォースは続いているのか、ピリオドを打ったのか。
事務局)これからの話であり、(外務省やJICAとも詰めるべき議論は、詰めて)柔軟に対応していきたい。
團野委員)シニア海外ボランティアについては、NPOの方々に取り込んでいただくような形でも検討していくのが良いと思われる。
西尾委員)資料2の第3項を見るとショックを受ける。この教員たちの不安はただごとではないという印象を受ける。調査されたときにプラス思考の回答はなかったのか。これだけをみると、絶望的になってしまう。シニアボランティアについて様々な困難があることは理解したが、これであきらめては、一歩も前へ進まないと思うので、これをバネにして進んで欲しい。それには何をしたらいいのかというと、先程、財源の問題がでたが、ODAは海外へ向けての財源であるので、国内の知的インフラ整備に是非、これから予算を付けていただきたい。今年の概算要求には、この点を是非盛り込んでいただきたいと思う。
川上委員)私は問題点を提示したにすぎず、うまい解決方法が見つかるのであれば、それに越したことはない。よって、引き続き検討するということについては、何ら問題はないし、いくつかのケースを作って、パイロットプロジェクト等テストケースで見ていって、今後につなげていくということもある。これはあくまでも、現職教員の参加というコンテクストでのシニアの活用なので、先述した問題を提示した。実際、シニアボランティアはこれまでも1000人以上おられるし、現在でも特に東南アジアでは大活躍されている方もおられる。
事務局)プラス思考のコメントはないかというご指摘に対し、文部科学省のメールボックスに長野県の現職の公立高校の先生より「私はちょうど40歳です。私は歯がゆい思いをしています。40歳での(若手海外協力隊現職特別参加への)応募は絶対に無理なのでしょうか。なぜ39歳という年齢制限を設けるのか非常に疑問です。このようなよい制度があるのであれば、全ての教員に対してチャンスを与えて欲しいと思います。」という意見が寄せられていた。
座長)今後の懇談会の進め方としては、タスクフォース、拠点システムのフォローアップをすること、議題としては、大学による国際協力の促進について検討を進めることとしたい。
3 閉会
次回は5月20日(月)14:00から16:00を予定しており、詳細については追ってお知らせする。
(大臣官房国際課国際協力政策室)