第2回国際教育協力懇談会議事要旨 |
第2回国際教育協力懇談会議事要旨 日 時 平成12年7月6日(木)14:00〜15:30 場 所 学術総合センター「特別会議室」 出席者 (委員)小林,篠沢,高久,遠山,内藤,中川,中根,平野,藤田の各委員 (説明者) 清水康敬東京工業大学教授 (文部省) 遠藤学術国際局長,井上大臣官房審議官,大木大臣官房審議官,木曽国際企画課長,岡本学習情報課長,小山内国際企画課教育文化交流室長 (橘淹洌舗 (文部省) 樋口生涯学習振興課長,芝田留学生課長,今里企画官,他関係官 (外務省) 大部経済協力局技術協力課長,他関係官 (法務省) 入国管理局入国在留課関係官 (厚生省) 遠藤大臣官房国際課国際協力室長 (農林水産省) 長岡経済局国際部技術協力課課長補佐 (通商産業省) 折山通商政策局経済協力部経済協力課経済協力専門職 (郵政省) 木本大臣官房国際部国際協力課企画官 (国際協力事業団) 高橋企画・評価部長,他 (国際協力銀行) 大竹開発審査部業務課副参事役,鈴木秘書室調査役 議事(座長は◎,委員は○,説明者は□,事務局は△) 1 事務局人事異動の紹介 2 前回議事要旨(案)の確認 3 事務局から,ITを他の事項に先駆けて検討していただくことについて,説明及び依頼があった。 ◎ ITに関する事柄を先に進めたいので,ご承認いただきたい。東京工業大学の清水教授から15分程度ご説明をいただきたい。 (1) 東京工業大学の清水教授から,資料2に基づき「ITと国際教育協力」について説明があった後,質疑応答がなされた。 ○ ITを活用した国際教育協力を具体的に実行するにあたって,コストとベネフィットの問題が起こってくると思われる。21世紀に向けての発展を考えるとトライしていかなければならないということはわかるが,例えば衛星を打ち上げる必要があるのなら膨大な金がかかるであろう。このことについて伺いたい。 □ 衛星回線料金がそれほど高いということは想定していない。また,相手国に受信設備を100万円のオーダーで設置できる。最も大変なのはコンテンツ開発である。 ○ アメリカと比較すると,日本が遅れているというのはよく分かるが,コンピューター1台あたりの人数や学校のインターネット接続等の,数字で見る英独仏などヨーロッパとの比較はどのようになっているか。 □ イギリスは日本と比べるとほぼ同じ状況,ただ教育のコンテンツ,コンセプトが非常に優れている。インフラ整備は日本並。アメリカはインフラ整備は優れているが,中身に関しては日本の方が進んでいる。カナダはインターネット接続に関しては進んでいて,すべての学校がインターネットに接続されている。東南アジアについては,シンガポール,韓国は日本よりも進んでおり,インドネシア,マレーシア,タイは日本よりも遅れている。 ○ ITを活用した教育を実施する際に必要な人材のレベルについてお聞きしたい。 □ 人材というと目的によって考え方が変わると思うが,大学が行う遠隔授業という観点で考えると,大学には人材がおり,支援体制が整えば実施可能である。 (2)事務局より資料3の1から資料4について説明があった後,提言案について討議が行われた。 ○ 国連社会経済委員会の会合において,世界の2人に1人,30億人は電話に対するアクセスがなく,またアフリカでは10人のうち4人は文字が読めないという現状があるということをきちんと認識した上で,協力を実施しないとますますデジタルデバイドが拡がってしまうという話が出た。どこから始めるのかがポイント。日本の役割はコンテンツの開発と人材育成というところに集約されていくと思う。 ○ JICAの協力をおおざっぱにいうと,年間8000人くらいの研修生のうち,電気通信分野や放送分野を含めたIT関連というのは500人ぐらいである。世界に派遣している専門家3000人のうち情報関係は70名から80名である。どういう分野が日本に期待されかつ強いのかというと,第一はハードウエア,学校を作ってコンピュータを入れたり,放送局にカメラその他の番組制作機材を入れたりすること,それから機材の動かし方やメンテナンスである。ソフトの分野では,番組制作のノウハウだと思う。 ○ グローバルスタンダード,極端なことをいうとアメリカンスタンダード優勢の時代にアジアのローカルな文化が,ITを利用して何か打ち出せるかどうか。日本語教育とか専門基礎教育だけに限らず「日本の教育」が打ち出せることを考えていかないことには,特色がないまま終わってしまうのではないか。例えば,東南アジアなどを考えてみると,専門技術については,現地で習得することが比較的容易であるが,総合管理能力のようなものもインターネット教育だけで十分やり得るのかどうかについて,可能性を考えていく方がよい。もし可能だとすれば,留学してくる必要はないということにもなる。このあたりは基本的な議論をする必要がある。 ○ ITについて,いかに日本が色々な形で支援ができるかという点に絞っていえば,日本人の英語力不足は,特に遠隔教育を行うとなると相当なハンディキャップになるのではないかという気がする。長い目で見れば英語力を全般的に上げるとともに,英語力を持った人を活用していくべきではないかと思う。 △ 語学の問題は,遠隔教育の場合重要なポイントだと認識している。我が国の大学でも,例えば短期留学コースでは,英語で授業を提供するということも始まっている。大学の国際化ということで,教員もインターナショナルなチームにしなければいけないということが指摘されている。インターナショナルなチームを作って英語でやる必要があるかもしれないが,遠隔教育プログラムの提供を通じて,このような課題に立ち向かっていく必要があると思う。 ○ コンテンツと人材に重点を置いてというのは正しい方向であると思う。日本の限られた人的物的な資源を活用しながら国内の遅れた体制をしっかり進めるということをまず前提として,全体の計画を立てないといけないと思う。ITを利用した教育の効果的なやり方についてコンテンツを固めるという場合に,国際的な英語利用を前提として始めようとしても,今はまだ国内のIT利用のコンテンツが十分でないという状況の中では,段階的に追っていくよりほかはない。コンテンツの開発に当たっては,近い将来の国際的な利用を前提としながらやっていただきたいと思う。人材養成の場合も,まず日本の国内の先生方の研修に力を入れてやっていただきたい。それを前提にした上で専門家を海外に派遣する,あるいは呼んできて研修するというような,日本国自体のIT問題に対する力強さ,教育面での力強さを付けながら,国際的な協力をしていかなければいけない。その意味で本当は国内のもっと低廉で利用しやすいインフラを早く実現してもらいたい。 ○ 確かに日本語,英語,現地語のソフトは必要とは思うが,インターネットの世界はほとんどが英語であり,そういう点を考えると,かなり近い将来英語中心にせざるを得ない。三重の県立大学が,アメリカの大学と単位の互換を行っている。もちろん全部英語である。医療に関しては,遠隔教育はかなり有効だが,これも当然英語となる。エビデンスベイスメントメディシン(EBM)ということが言われていて,これは,インターネットを使って情報を集めてどんな田舎にいても,技術があれば最新の情報で最新の医療ができるとか,患者の問題に対してインターネットで情報を教えてくれるということである。医療の世界では,インターネットによる情報の収集と,現場への応用が現実に行われている。 ○ 教育協力の「協力」は,持てる国である日本がまだ持っていない国に技術なりを提供する協力だと思っていたが,そうではなくてもいいのではないかという気になった。イギリスの学校が行っている,インターネットを使った国際理解,異文化理解という意味で効果を上げている実験的な教室を見たことがある。中学校レベルでスペインのある学校とテレビ電話方式で結んで,イギリスの子供は英語で話しかけ,それを聞くスペインの子供は,英語がよく理解できないが,だいたいこういうことを言っているだろうと思ってスペイン語で反応する。そういうことが,日本と韓国,中国,あるいはシンガポールとの間でできるのではないか。 ○ 英語が事実上の国際公用語であって,インターネットがアメリカ主導で行われているのは事実であるので,日本人が国際コミュニケーション能力としての英語力を高めることは大前提であると考える。しかし言語というのは考え方の基本でもあるし,文化に密着しているので,日本のデジタルコンテンツは日本語で開発する必要がある。各国には各国の言語があるので,それぞれの国がそれぞれの言語でコンテンツを開発するのを日本が支援することが使命ではないかと考える。 ○ 英語の重要性は全くそのとおりで,日本人は英語が下手であるのは事実だが,それに加えて,日本人は往々にして抽象的な思考ができない。しかし,理工系の分野について英語で表現することはかなりレベルが高い。この提言案の文章は,重複が多いのではないか。整理すれば分量的に半分くらいになるのではないかという気がした。日本もかつて援助を受けながらまわりの国に援助を行いだした。アメリカより遅れているといっても,ITの分野で近隣のより貧しい遅れている国を助けることは矛盾しないのではないかと思う。このペーパーで抜けているのは,相手国のニーズである。こちら側の都合ではなく,相手国側が必要としているものを必要としている形で協力するんだというトーンを,強く打ち出していただいたらよいのではないか。 ○ デジタルデバイドの状況下において,どのようなニーズがあるのかということをきちんと把握することが大切である。ITの教育利用に関する国際シンポジウムの実施はニーズの把握のためにも非常に重要かつ現実的な方策である。途上国が日本の現状を知りつつ日本に何を期待するのか見えてくる。具体的方策の最初のところに書いておくのが良い。また,ITに注力した経済・社会的発展は工業中心の発展と比較して自然環境にかかる負荷が少ないので,ITを産業として推薦したいともとれる内容が資料に記載されているが,IT革命に対応する教育協力は行えば良いが,各途上国がIT産業で身を立てるかどうかまでは,ここで書くべきことでもなかろう。 ○ 情報インフラについてのニーズは依然としてあり,日本が役に立つ部分はある。コンテンツについては,基本的に日本語を含めたそれぞれのカルチャーに基づいたローカルな言葉で作られなけれなければいけないというのはそのとおりだと思う。ただ,現実問題として,どうやってローカルランゲージのローカルコンテンツを作るかということを考えた場合,日本語でノウハウを提供するわけにはいかないし,ローカルランゲージでやるわけにもいかない。やっぱり共通語としては英語しかないから,英語のニーズは高い。ITそのものは,比較的クリーンであると同時に,経済発展という観点からも重要で効果が大きいので,日本など先進国よりも開発途上国にとって相対的にはより重要なんだというメッセージは掲げておいても良いのではないかと思う。 △ コンピューターやインターネットを使うといってもいろいろ使い方がある。したがってコンテンツもいろいろある。アメリカは,5.7人に1台,イギリス,フランスがそれぞれ12人に1台,日本は15人に1台。ただしアメリカの5.7人というのは5.7人の子供が1台のパソコンを囲んでいるのではない。どこの国でも1人1台体制のパソコン教室をつくり,その後他の教室にどれだけあるかをならすと,5.7人になる。イギリス,フランス,日本の数字はどういう水準かというと,各学校に1人1台体制のパソコン教室があるということである。このパソコン教室の使い方については,日本はコンテンツも豊富にある。各教室に2台ずつパソコンを入れてプロジェクターを使って授業を展開していくといったようなことがアメリカより遅れている。 △ 次回懇談会は7月17日(月)の午後2時から今回と同じ場所で開催する。 |