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国際教育協力懇談会議事要旨

2000/06/14 議事録

第1回国際教育協力懇談会議事要旨


 第1回国際教育協力懇談会議事要旨

日  時    平成12年6月14日(木)14:00〜15:30
場  所    霞が関東京會舘「エメラルドルーム」
出席者
(委員)小林,篠沢,高久,遠山,中川,中根,平野,藤田(途中退席)の各委員
(代理出席)森泉東工大副学長(内藤委員代理),高橋JICA企画・評価部長(藤田委員代理)
(文部省)中曽根文部大臣,佐藤文部事務次官,工藤学術国際局長,井上大臣官房審議官,大木大臣官房審議官,木曽国際企画課長,小山内国際企画課教育文化交流室長
(橘淹洌舗
(文部省) 芝田留学生課長,三谷同課課長補佐,樋口生涯学習振興課長,佐藤職業教育課教科調査官,吉野同課教科調査官,国際学術課及び大学課関係官
(外務省) 大部経済協力局技術協力課長,金子文化交流部文化第二課首席事務官,他経済協力局関係官
(厚生省) 大臣官房国際課国際協力室関係官
(農林水産省) 田中国際協力計画課海外技術協力官
(郵政省) 鈴木大臣官房国際協力課課長補佐,他同課の関係官
(経済企画庁) 経済協力第2課の関係官
(国際協力事業団)高橋企画・評価部長,他
(国際協力銀行)澤西開発審査部副参事役,大竹同部副参事役,他

議    事
1.木曽課長より委員紹介があり,小山内室長から配付資料の確認があった。
2.中曽根文部大臣より開会のあいさつがあった。
3.中根委員を座長とすることが,了承された。
4.議事の公開方法について,了承された。
5.(1)小山内室長より資料に基づき,国際教育協力の現状について報告があった。
    (2)小山内室長より資料に基づき,主な課題について説明があった。
    (3)引き続き,自由討議が行われた。(座長は◎,委員は○,事務局は△)
○  医療の分野では,人材をプールして緊急派遣及び通常派遣に対応できるようにしている。長期専門家を派遣しようとするなら,教育分野についても,途上国に派遣する人材のプールを作って運営したらどうか。
○  議論に入る前に,本懇談会の位置づけをはっきりさせてもらいたい。縦と横の関係,すなわちこれまでの教育協力の歩みから見た今回の議論の位置づけと,今回、議論や提言を行うべき範囲はどのようになるのか。
  縦の関係で言うと,平成8年の懇談会報告書の中で,実行できなかった提言とその原因は何なのか。また,それ以外にもこれまでいろいろな場で,教育協力について議論がされてきているし,一方、その後、状況も変化している。今回の議論の位置づけをはっきりさせるためにも,これまでの議論の分析もあわせて事務局で行ってもらいたい。
  横の関係でいうと,文部省の教育協力というと,留学生交流や,教員派遣,大学における協力センターの設置だけというイメージがあったが,本懇談会では何処まで議論するのか。各省庁にまたがった,つまり,途上国からみた日本の教育協力の全体像をまず把握する必要があるのではないか。初めから文部省の守備範囲に限定して各論に入ってしまうと,全体の中での位置づけが見えにくくなるおそれがある。
  中曽根首相の時に「留学生受入10万人計画」が提言され,昨年もASEANプラス3か国首脳会議での小渕首相の教育協力に関する大きな発言があった。また,最近、通産大臣も,APEC貿易担当大臣会議の場において教育協力についての発言を行っている。いろいろな場で言われている,首相クラスによる教育協力関連の発言について整理してもらいたい。他省庁との関係,本懇談会の位置づけについて,教えてもらいたい。
△  外から見た場合,日本として何を協力しているかが問題である。ODA全体でも対外経済協力審議会でも顔の見える援助,人造り支援の必要性が言われている。教育協力についても各省の経験を踏まえ,オール・ジャパンとして検討したい。4月のG8教育大臣会合でも途上国協力を視野に入れたIT支援が議論されたところである。また,松浦前駐仏大使が事務局長に就任されたユネスコへの支援も含めて,顔の見えるODA支援を行っていきたい。昨今では,環境等の問題も取り上げられており,文部省の枠を超えて,関係省庁と調整しながら,協力を行っていきたい。
◎  ODAの中で文部省分はどうしても留学生が中心となっているが,文部省の所管にとらわれず,大きな視野で検討していくことができればよい。
○  海外での日本語教育については,国際交流基金が担当しているが,これは文部省のODAの範囲でもあるのか教えてもらいたい。また,医療分野では,医学教育は文部省で,現場での医療は厚生省であるとすると,医療協力分野で文部省はどう絡んでくるのか。先日のG8教育大臣会合の時,英国閣外相の発言で,パソコンやインターネットが上手く使えるかどうかにより,就業率が変わってくると言うことがあった。そうなると,インターネットについては労働省の行政の対象にもなりうる。今後の説明において,各省との役割分担についてふれていただきたい。
○  他の先進国,特に英・米が教育分野でODAとして具体的にどのような協力を行っているのか教えてもらいたい。現在,日本においても教育制度の見直しをしている時期であり,中古品を出すと言う訳にはいかない。グローバル化時代の高等教育について,日本の教育システムやコンテンツをどのようにして開発途上国に出すのか。新しい分野というと,IT協力が挙げられるが,日本として何が出来るのか。
  英国や米国の過去の例を見てみると,英国は旧宗主国として,教育インフラを残し,米国は,理念の輸出を行い,フルブライト制度などを残している。日本を評価して第二次世界大戦当時のものを残している地域もある。先方が必要とするものは強制しなくても残っていく。自信を持って,開発途上国に出せるコンテンツがあるはずだが,具体的にどのようなものが考えられるのか。
○  中進国を途上国と比べると,援助に対する期待が異なってくる。留学生交流や大学間交流も活発に行っており,特に工学分野の高等教育援助に対する期待が大きい。ただし,基礎教育については「自分たちで行う」という意識が強い。援助の仕方が過剰になってしまうと,逆効果になってしまう。相手国の事情やレベルに合った援助が必要である。
  また,留学生や研修員を国内でどのように受け入れるかという問題,派遣する人の語学力や指導能力等,本当にふさわしい人が出せるのかという問題もある。明日何をすれば良いかと考えるのではなく,日本の対外政策として,将来を見据えた人材養成のあり方を考えるのが必要ではないか。
○  教育協力に取り組むと,我々自身が教えられることが多いとの感がある。また,専門家派遣の制度についてコメントをすれば,日本人専門家の長期派遣の難しさが挙げられる。工学分野で言えば,日本の研究者が目を向けているのは欧米の最先端の研究で,そのような研究は途上国では使えない。また,途上国へ専門家が1年行って帰ってくると,浦島太郎のような状態となり,最先端の研究の現状から大きく遅れをとってしまうという問題がある。この点については,学会等で派遣専門家に対する情報提供等の配慮をすることが必要である。
  私の携わっていた途上国プロジェクトでは日本の31の大学から支援を得,50人に及ぶ当該途上国関係者が日本の大学から博士号を得ている。彼らの博士論文の研究対象は,母国ですぐに活用可能なものではないかも知れないが,日本の無階層社会の中で,ものの考え方,実践の仕方,日本の教育文化を学んだことこそ,協力の大きな成果の一つであると考えている。階層社会である欧米とは違う,まさに日本の価値ある協力コンテンツである。
  今後は,日本のポテンシャルと在地技術の融合を図り,現地に受け容れられる技術開発・研究協力を行っていく必要がある。
○  教育援助について,私は「足ながおじさん」のような印象を持っている。つまり,途上国の勉強したい人に対してお金を渡し,勉強してもらうというものであるが,行きたい国を自由に選んで良いとするか否かについては考えるべきであろう。良しとした場合,留学先として選ぶのはアメリカ,ヨーロッパ,日本の順となるだろう。
  援助の目的としては,親日派をつくるということがあるが,このためには日本への留学を希望している者に対してのみ援助をするのか,長期的に見てそれにはこだわらず援助するのかについては検討を要する。後者の場合ユネスコなどの国際機関を通じて協力していく方法も考えられる。また,現地に施設を造ると言うことも考えられるが,その場合には,日本から派遣された専門家が歓迎されるかどうか,検討しなければならない。
◎  私が以前スウェーデンから奨学金をもらって留学した際,自分が勉強したい内容は当時イギリスの大学が充実しているということで,イギリスを行きをすすめられたが,今でも奨学金を出してくれたスウェーデンが大好きである。このことから,必ずしも日本に来なければ親日派がつくれないとはいえないと思う。現在,ODAの世界でも南々協力といった形で1つの途上国に周辺国からの参加者を集め,人材養成を行うという協力形態が進んでいる。留学生の支援のあり方についても,もう少し広い視野で考えても良いのではないか。
○  事務局からは懇談会では幅広く議論しながらも,文部省関係分野でのこれまでの経験をさらに深く掘り下げていくという話であった。たとえば,留学生をより多く呼ぶ方法としては,日本の大学が,英語で講義を行うことにすれば,日本への留学志向を高め,留学生を増やすことができるのか。
  懇談会の議題として,外へ派遣する話と日本へ呼んでくる話がある。また,基礎教育と高等教育,技術教育の話があり,話が拡散してしまうこともあろうが,焦点を絞るのか,絞らず全体を鳥瞰する形にするのか。これからの議論で自ずと道が見えてくると思うが。
  海外における日本語教育について,国際交流基金等いろいろな所でそれぞれに取り組んでいるし,オーストラリアでは,初等中等教育レベルで日本語教育を行っているが,これは今回のテーマに入らないということなのか。また,アジア諸国の日本人学校に対する教員の派遣は,今回の議論には全く関係ないと言うことなのか。
△  議論が広がることは特に妨げない。他省庁の権限に及ぶ事項については,関係省庁と連携し,検討,協力したい。例えば,日本語教育については,国際交流基金等と連絡を取っていく。日本人学校については,日本人子女対象の教育施設であり,途上国への教育協力からは外れるが,そこを利用して現地の教育に協力するというようなご意見があれば伺いたい。
○  日本のODAの内,技術協力の1/2はJICAを通じたものである。教育分野については,「人造り,国造り,心のふれあい」という,JICAのキャッチフレーズと一致しており,JICAとしても重視している。近年、援助の傾向としては、ハードからソフト,すなわち施設建設から組織や制度の整備に対する支援へと重点が移りつつある。グローバル化やIT革命と言った新たな協力環境の下で,日本として比較優位のあるものについて今後の支援のあり方を本懇談会で議論していただきたい。教育協力実施にあたっての各種障害(文部省教員を専門家として派遣する場合の制約、留学生受入の場合の英語での指導等)を除去する方策についても議論していただきたい。

○  一般に大学からの専門家の長期派遣は難しい。以前はJICAを通じて派遣していたが,長続きしなかったので,組織だった体制整備が是非必要と考える。但し,工学系教官も方法によっては,上手に長期派遣が出来るのではないか。
  途上国に対するIT支援が何故必要かという理由については,途上国では初期の設備ではなく最新の設備を当初から取り入れることが可能であり,投資の節約が可能である上に,将来的に大きな成果が得られる可能性が高いという点が挙げられる。
  日本自身,アメリカに比べるとIT分野では出遅れているが,途上国とともに学び発展していくという考え方もあるのではないか。例えば,途上国と日本の間で共同研究を進めることも可能である。日本ではやりづらい斬新で大規模な実験や研究を行うことも可能となり,双方に利するものである。かつて,途上国職員の勤務態度に問題がしばしばあると言われていたが,現時点で振り返ってみると途上国の方がやるべきIT対応策をやっていたのではないかと思うことすらある。
△  御多忙の委員の皆様方に恐縮ですが,次回会合は7月6日(木)の午後を予定。また,サミットの関係もあり懇談会としてITに関する提言も行いたいと考えており,このため,第3回会合は7月17日(月)の午後に開催することとしたい。場所は追って事務局より連絡。
○  サミットに盛り込む提言とは,ITに関することなのか,教育協力全般に係ることなのか。サミットで言われているITと本懇談会のITに関する提言の関連性について説明してもらいたい。本件に関し,関係省庁間で調整は行われているのか。また,第3回で出来上がる報告が官邸なり政府全体で受け止められるのか。
△  サミットとの関係については,関係省庁と連絡を取りつつ検討しているが,現段階では最終的な取扱いについては,はっきりしていないので,報告のタイミングを含めて事務局に一任していただけると有り難い。提言がITに限られるかどうかについては,今後の御議論の状況及び各省との調整による。
△  本懇談会はサミットのためだけではない。良いものは早く行った方がよい。文部省,日本としてどのような協力ができるのか,沖縄サミットでの参考になればありがたい。但し,本懇談会はそれだけのために,報告をまとめるものではない。
◎  懇談会としてやるべきことはやり,サミットの参考になれば良いと言うことでいいのか。
○  IT分野における教育協力では比較優位のある国が日本以外にあるのではないのか。そのようなことも含めて,報告書については,意味のないものであれば出さない方が良いのではないか。日本として何をすべきか議論することは重要であり,国際教育協力においてITが重要であるので,予め議論しておいて欲しいと言うことなのか。
○  先日,総理がIT支援策を出されている。サミットで何か使おうということだと思うが,その関係も考慮し,十分検討いただいて,整理していただきたい。
◎  以上の点を含めて,事務局には必要な資料は次回までに整理しておいていただきたい。

以上


(学術国際局国際企画課)

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