基幹ロケット開発に係る有識者検討会(第1回) 議事録

1.日時

令和7年3月26日(水曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 検討会の開催について
  2. H3ロケットの開発状況等について
  3. その他

4.出席者

委員

(構成員)
三菱重工株式会社 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 事業部長 五十嵐 巖
一般社団法人SPACETIDE 代表理事 兼 CEO 石田 真康
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 理事 宇宙輸送技術部門 部門長  岡田 匡史
東海国立大学機構名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授 笠原 次郎
日本文理大学 工学部航空宇宙工学科 教授 丹生 謙一
株式会社IHIエアロスペース 宇宙輸送事業推進部 部長 矢木 一博
東京海上日動火災保険株式会社 航空宇宙・旅行産業部 宇宙保険専門部長 吉井 信雄
アクシオム・スペース 宇宙飛行士 兼 アジア太平洋地域担当最高技術責任者  若田 光一

文部科学省

   研究開発局長 堀内 義規
   研究開発局宇宙開発利用課 課長 嶋崎 政一
   研究開発局宇宙開発利用課 宇宙科学技術推進企画官 阿部 陽一
   研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 木元 健一 

   (説明者)
   国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
    宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有田 誠
    宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム ファンクションマネージャ 寺島 啓太
 

5.議事録

【阿部企画官(事務局)】
それでは、基幹ロケットの開発に係る有識者検討会を開催いたします。
事務局で本日の検討会の進行を務めます文部科学省宇宙開発利用課の阿部でございます。よろしくお願いいたします。本日は、構成員のうち中須賀様がご欠席と伺っており、全体8名の構成員の方にご出席いただいております。本日の資料は、議事次第のとおりです。オンライン状況について、音声がつながらない等問題がございましたら、事務局へメール、電話等ご連絡いただければと思います。本日、当検討会の最初の会合となりますので、会議に先立ちまして研究開発局長の堀内より一言ごあいさつさせていただければと思います。
 
【堀内局長】
研究開発局長をしております堀内です。よろしくお願いいたします。
本日は、基幹ロケット開発に係る有識者検討会の開会ということで、一言ごあいさつ申し上げたいと思っております。今日お集まりの委員の皆さまにおかれましては、日ごろより我が国の宇宙分野のさまざまな観点からのご協力を賜り、ありがとうございます。今回もお忙しい中、本検討会の参加をご承諾いただき、心から感謝申し上げます。文部科学省は、我が国の宇宙開発を支える輸送システムの開発をJAXAと共に進めてまいりました。H-ⅡA ロケットにつきましては、来年度50号機で引退ということになります。ISS補給ミッションを果たしたH-IIBロケットも実績をしっかり挙げております。現在は、後継のH3ロケット1号機でつまずきましたが、その後、4号機連続で打上げを成功させることができました。固体ロケットにつきましても、イプシロン、イプシロンSなど研究開発の歩みを止めることなく推進しております。我が国の宇宙開発という点からは、ISSの日本人宇宙飛行士の活躍であるとか、はやぶさなど宇宙科学、それからロケットの打上げというものが宇宙分野における我が国の期待を受ける柱というふうに考えております。中でもロケットというものは宇宙に行く、宇宙に物を持っていくということで、宇宙活動の最初の一歩ということになりまして、その重要性は誰しも理解されていることかと思っております。我が国の宇宙活動の自立性を確保する上で非常に重要な検討になると思っております。近年の宇宙開発の変革のスピードが急速に高まっている中で、自立性というものを懸命に取り組んでいかなければならないと思っております。このような状況を踏まえまして、昨年11月の宇宙開発利用部会においても、我が国の宇宙システムの在り方に関する議論を行いました。基幹ロケットにつきましては、さらなる高度化ならびに高頻度化を求めております。その推進方策につきましても、さまざまな方策が考えられ、本検討会におきまして、我が国の基幹ロケット開発の方向性などに関しまして、有識者の方々からご議論いただき、基幹ロケットの開発の方向性の具体化を図ってまいりたいと考えております。ただ単に性能の向上ということで技術論をしていくということではなく、世界に遅れず、国際競争力を上げていくこともしっかりと考えていきたいと思っております。イプシロンについても同様でございます。我が国の基幹ロケットが安全保障や宇宙探査を含めさまざまなミッションを確実にこなし、国際的な商業打上げ市場におきましても、高い競争力を持つものとなるよう、忌憚のないご意見を頂戴しながら、検討を進めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】
堀内局長、ありがとうございました。最初の会合となりますので、事務局から構成員お一人お一人をご紹介の後、皆さまから簡単なごあいさつをお願いしたいと思います。それではまず、一般社団法人SPACETIDE代表理事兼CEO、石田様、お願いいたします。
 
【石田構成員】
お世話になっております。SPACETIDEの石田でございます。今回は、貴重な有識者検討会にお呼びいただきまして、ありがとうございます。基幹ロケットに関する議論、今後に向けてとても大事なことだと思いますし、非常に強い輸送システムを持っていくといったことは、自立性の観点でもあるいは産業競争力の観点でも大変重要なことだと思いますので、検討会を通じて議論に貢献できればと思っております。よろしくお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。次に、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構理事、宇宙輸送技術部門長、岡田様、お願いいたします。
 
【岡田構成員】
岡田でございます。私は、昨年度までH3ロケットの開発に携わらせていただいておりましたけれども、現在JAXAの経営をサポートする役割と、それから基幹ロケットの開発と運用全般を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。続きまして、東海国立大学機構名古屋大学未来材料・システム研究所教授、笠原様、お願いいたします。
 
【笠原構成員】
初めまして。名古屋大学の笠原と申します。名古屋大学のほうで主に推進系の研究に携わらせていただいております。本基幹ロケットに係る有識者検討会にて少しでも貢献できますよう努力させていただきたいと思います。皆さま、ぜひよろしくお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。次に、本日ご欠席となっておりますが、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授、中須賀様がメンバーとしてご参加いただいております。 次に、日本文理大学工学部航空宇宙工学科教授、丹生様、お願いいたします。
 
【丹生構成員】
日本文理大学航空宇宙工学科の丹生と申します。昨年まで36年間、三菱重工でロケット、エンジンを中心に宇宙開発に携わってきました。現在は、大分県にある日本文理大学で教職に就いています。大分県では、大分空港が宇宙港に指定されたものの、バージンオービット社の破綻もあり、地元の関心が薄まっています。また、若年層の人口減少、また理系離れもあって、学生数が減ってきています。ということで、今は若い人に宇宙への関心を持ってもらうために、当大学で何ができるかというのを考えており、ロケットエンジンの要素技術研究に日々取り組んでいるところです。この会では、企業での経験や地方大学での現状を踏まえてお話しさせていただければと思います。よろしくお願いします。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。次に、株式会社IHIエアロスペース宇宙輸送事業推進部部長、矢木様、お願いいたします。
 
【矢木構成員】
よろしくお願いいたします。私、IHIエアロスペースの宇宙輸送事業推進部部長の矢木と申します。よろしくお願いいたします。私どもは、われわれの部署でH3ロケットの固体ロケットブースターの開発、運用も製造等行っておりますし、あと基幹ロケットであるイプシロンロケットの開発、運用も担っております。今回、基幹ロケットの有識者検討会参加させていただきまして、誠にありがとうございます。有識者様のご意見等を現場に伝えるのも私の役割だと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 以上です。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。次に、東京海上日動火災保険株式会社航空宇宙・旅行産業部宇宙保険専門部長、吉井様、お願いいたします。
 
【吉井構成員】
東京海上の吉井でございます。私、国際宇宙保険市場で20年以上にわたって世界の商業宇宙プレーヤーのロケットですとか、人工衛星の保険を引き受けてきておりまして、そうした活動を経て、いろいろな世界の商業プレーヤーと交流を図ってきておりますので、そうしたところで得たお話をベースに、いろいろなお話をさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。次に、アクシオム・スペース宇宙飛行士兼アジア太平洋地域担当最高技術責任者、若田様、お願いいたします。
 
【若田構成員】
アクシオム・スペースの若田でございます。基幹ロケットの有識者検討会に参加させていただいて、非常に光栄に思います。このロケットですけれども、今後ポストISSの時代も含めて、宇宙ステーションへの輸送サービス、そういったものも担うことになると思いますけれども、これまで米国スペースシャトル、ロシアソユーズ、そして米国のFalcon9、そういった有人ロケットに搭乗させていただいた経験も含めて、今回基幹ロケットに関する高度化のところで、宇宙飛行士の経験を踏まえて、微力ながら貢献できればなというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】
構成員の皆さま、ありがとうございました。
それでは、議題1に移りたいと思います。本検討会では、基幹ロケットの高度化や打上げの高頻度化について検討を行う予定であるところ、まず私からこれまでの政策的な流れについてご説明させていただきたいと思います。その後、JAXAからH3ロケットの開発状況およびH3高度化に向けた現状の課題認識についてご説明いただきます。JAXAからの説明の後、質疑応答、意見交換の時間とさせていただければと考えております。それでは、まず政策動向についてのご説明を始めたいと思います。
資料1をご覧ください。ページ1になりますが、基幹ロケットの概要になりますけれども、現役のものをここに並べてございます。H-IIAロケット、H3ロケット、イプシロンSロケットになってございますが、本検討会で議論していただきたいというのがH3ロケットでございます。
1枚めくっていただきまして、基幹ロケットの現状になります。ご参考になりますが、H-IIAロケットにつきましては、1996年度に開発を開始し、打上げは2001年から行われているところで、49機中48機が打上げ成功したところでございます。2025年度に最終号機となる50号機の打上げを予定している状況です。H3ロケットにつきましては、2014年度から開発を開始しており、打上げについては2022年度から進めているというところです。2023年3月に試験機1号機の打上げが失敗しましたが、対策を講じまして、2024年2月に試験機2号機の打上げに成功。その後、現在まで4機連続の成功という状況でございます。それから、固体ロケットのイプシロンのほうでございますが、2022年10月にイプシロンロケット6号機が打上げを失敗ということになりましたが、その後、原因究明、対策を講じまして、改良型であるイプシロンSロケットについて、2023年7月に第2段モータの地上燃焼試験中に異常燃焼が発生しました。それを踏まえまして、原因調査および対策を講じた上で、2024年11月に再地上燃焼試験を行いましたけれども、燃焼異常、爆発が再度発生したという状況でございまして、現在原因を調査中という状況になってございます。画面の右上から時系列で最近の動向についてまとめておりますので、ご参照いただければと思います。
次のページ、H3ロケットについてです。我が国の宇宙活動の自立性の確保、国際競争力強化に向けた開発ということで、開発を行ったロケットでございます。打上げニーズへの柔軟な対応、大幅な低コスト化を目指すということが目標に掲げられております。それから、下にあります絵のとおり、幾つかタイプがありますが、目指すべき姿として、コストの削減、それから衛星打上げニーズへの柔軟な対応ということで、中型から大型までいろいろな種類のサイズの衛星の効率的な打上げを可能としていくということで、複数の機体のラインアップを目指しているところです。また、信頼性の向上のところで、新型1段エンジン(LE-9)の開発を現在進めているというところでございます。2014年4月にH3ロケットの開発に着手しておりますが、その後、2023年の1号機失敗の後、さまざまな対策を講じた上で、2024年2月に試験機2号機の打上げに成功しているというのがこれまでの流れということでございます。
次に、予算の状況でございます。令和6年度の当初予算額につきましては、JAXAの運営費交付金の中で行っているものですが、基幹ロケットの開発、高度化として約45億円。多様なニーズに対応した国際競争力のある新型の基幹ロケットであるH3ロケットの開発ということで措置されております。また、令和6年度の補正予算におきまして、基幹ロケットの開発、高度化として59億、打上げの高頻度化への対応ということで4億円の措置を頂き、こういった予算の中で取り組みを進めているという状況でございます。
それから、政策文書になりますが、次のページ、宇宙基本計画、令和5年の6月に閣議決定されているものですが、第2章の目標と将来像という中に幾つか記載がございます。他国に依存することなく、宇宙へのアクセスを確保し、自立的な宇宙活動を可能とすることで、我が国の安全保障、国土強靱化、地球規模課題への対応、イノベーション、新たな知・産業の創造等を持続的に実現するという大きなものが掲げられた上で、H3ロケットの打上げ成功の実績を積み重ねた上で、2020年代後半には高頻度の打上げとより大きな輸送能力、より安価な打上げ価格を実現する宇宙輸送システムを、基幹ロケットと民間ロケットを通じて、我が国全体で構築していくということが記載されております。
さらに具体的なアプローチとして、次のページになりますが、第4章に宇宙政策に関する具体的アプローチがございまして、基幹ロケットの継続的な運用と強化という中で具体的な記載がございます。基幹ロケットについて、国内に保持し輸送システムの自立性を確保する上で不可欠な輸送システムであるとした上で、打上げの高頻度化と、安全保障上必要となる宇宙システムの打上げや国際市場に対応する打上げ能力の獲得を目指した高度化(輸送能力の強化・衛星搭載方式の多様化・打上げ価格の低減等)にスピード感を持って取り組むとされており、加えて、基幹ロケット、射場および試験設備の適切な維持、管理に向けて、老朽化対策等の必要な措置を実施するとともに、高頻度打上げ対応に向けた射場の在り方についての検討と取り組みを継続的、計画的に進めるとなっております。
また、宇宙基本計画には工程表というものが添付されておりまして、次のページになります。工程表の中では、宇宙輸送の中で一番下の記載になりますが、基幹ロケットの高度化、打上げの高頻度化というものが2030年代前半ごろまで矢印で引かれているところでございます。
次の8ページ目にありますが、宇宙輸送の技術ロードマップというものもございまして、この中でも基幹ロケットについて、運用と高度化というものが2032年ごろまで線表として書かれているという状況です。
その上で、9ページ目からになりますが、H3ロケットの高度化に向けて、文部科学省の審議会である宇宙開発利用部会で昨年の夏以降に議論してまいりました。2024年7月に行われた宇宙開発利用部会では、文部科学省から宇宙輸送分野における論点の整理、またJAXAから今後の基幹ロケットの開発方策について説明をいただいた上で、10月にも改めて議論し、11月に文科省で取り組み方策をまとめております。  
10ページ目、今後の基幹ロケットの開発の方策でございます。信頼性向上や事業環境整備、打上げ高頻度化、射場設備老朽化への対応等の基盤的活動の一貫性を持って実施することにより、基幹ロケットとしての成功実績を積み重ね、宇宙産業エコシステムの構築を継続して推進すること。また、基幹ロケットを総合システムとして、打上げニーズの変化等を踏まえた持続的かつ段階的な開発プロセスにより高度化するということ。それから、次期基幹ロケットの開発着手に向け、宇宙輸送系の事業、プロジェクト機能、研究機能を一体とした研究開発体制を構築するということ。それから1つ飛ばしまして、一番下になりますが、基幹ロケットの高度化、次期基幹ロケットの開発にも必要な次世代の宇宙輸送技術の獲得を目指して基盤的研究開発を継続し、民間等との連携を通じて、我が国全体の産業、人材基盤の底上げ等にも貢献するというところでまとめております。
こうした議論をしてきた上で、次のページになりますが、JAXAの次期第5期中長期目標の案にこの辺りの議論を踏まえた記載がございます。JAXAは国立研究開発法人ですので、7年間の目標を国が定めて、その中でJAXAとしての中長期計画をつくって事業をするという立て付けになってございまして、4月から次の7年間、第5期中長期目標が始まるというタイミングに来ております。その中でここに記載しているような事項がございまして、上から2段目のところ、「また」のところですが、基幹ロケットの開発機会や打上げ機会を通じて熟成してきた総合システムとしてのロケット技術を後世に確実に継承し、新たな技術革新を可能とする宇宙分野の裾野の拡大、次世代の人材の確保、育成を推進することで、我が国の宇宙活動を支える総合的基盤を強化するというものを最初に言った上で、その下に高度化しながら持続的かつ段階的な開発プロセス(ブロックアップグレード方式)を適用し、将来の需要変化に迅速に対応し国際競争力を強化しつつ、技術や人材、産業基盤を維持向上させるということ、また基幹ロケットとしての自立性を確保するため、高頻度打上げの実現に向けて射場等の基盤的な施設設備を維持、強化するとしております。また、一番下になりますが、基幹ロケットの高頻度化に当たっては、常に変化する需要動向、競合分析を踏まえた開発目標を設定する。開発リスクを十分評価し、適切な開発計画を設定することで、我が国の基幹ロケット開発に対する信頼性を高めることに留意するといった記載がございます。
これらを踏まえまして12ページ目、今回の有識者検討会になりますが、我が国の基幹ロケットについて、今後の開発の方向性等に関して議論、検討したいということです。ここの箱の枠の中は、今申し上げたところをまとめたものでございますが、検討事項として基幹ロケットの高度化等、それから打上げの高頻度化としています。
具体的にご検討いただきたい事項について、13ページ目、最後になりますが、まとめさせていただいております。当然ながら、本日のご議論を踏まえまして、いろいろ変化していくこともあるかと思いますが、事務局としてまずお示しさせていただいたものです。1つ目は、H3を持続的かつ段階的な開発プロセスにより高度化するということについて、まず高度化の目指すべきところは何なのかということがあるかと思います。多様な打上げ需要への対応であったり、国際競争力の強化があるかと思いますが、国際競争力の強化という中にもいろいろな意味合いが含まれてくると考えております。そうしたところ、目指すべきところが何なのかということを踏まえながら、アップグレードの具体的な内容ということをしっかりと検討していく必要があると思います。さらには、2030年代見据えて、開発を進める必要がある事項というものも、当然ながら基盤開発の必要なものもあるだろうと考えております。2つ目として、H3ロケットの高頻度打上げについてでございますが、こちら種子島から現在H3ロケットを打上げておりますけれども、打上げの高頻度化に向けた課題について取り得る方策の検討が必要と考えております。また、50号機で退役することになっておりますH-ⅡAロケット、その専用射点につきまして、その後どうするのかということについて、戦略的な取り扱いを考える必要があるかについても検討いただきたいと考えてございます。
事務局からの説明、少し長くなって恐縮ですが、以上になります。
 
それでは、議題2、H3ロケットの開発状況等につきまして、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構H3プロジェクトチーム、有田プロジェクトマネージャ、よろしくお願いいたします。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】
JAXAの有田でございます。よろしくお願いいたします。
高度化の議論の前提ということで、H3ロケットの現在の開発状況についてご説明させていただきたいと思います。
資料2-1に基づいてご説明させていただきたいと思います。
1つ戻っていただきまして、本日のご説明の内容です。
H3ロケットの開発経緯、それからシステムの概要、開発体制、開発計画、そして開発の進捗の現在の全般の状況ということで進めさせていただきたいと思います。
次、お願いします。
H3ロケットの開発経緯でございますが、2014年2月から3月にかけまして、宇宙開発利用部会それから宇宙政策委員会におきまして、ミッション要求や運用要求といったものについてご審議いただきまして、4月3日の宇宙政策委員会で私ども政策文書と呼んでおります新型基幹ロケット、これは現在H3ロケットと名前を変えておりますけれども、この開発の進め方という文書がまとめられております。
これは次のページにまたご説明いたします。
こちらを踏まえまして、H3ロケットは我が国の宇宙輸送システムを自立的かつ持続可能な事業構造へ転換するということを目指して開発を進めてきております。
そして、H3ロケットでは自立性の確保を前提といたしまして、民間企業が開発の初期から参画して、主体性を持ってH-IIA・Bロケットの経験を踏まえて開発を進めておりまして、民間事業者が打上げサービスを自立的に展開して、産業基盤の維持・発展を目指すというところに至っております。
次のページお願いします。
こちらが政策文書で掲げられましたH3ロケット開発の進め方という中でうたわれているものです。
1つ目が自立性の確保、2つ目が国際競争力のあるロケットおよび打上げサービスという2本の柱でございます。これを3ポツの官需をベースロードとして、民需獲得によって打上げ機数を確保し、効果的に産業基盤を維持向上するということ。
そして、このためにも商業市場で競争力のあるシステムとするために、プロジェクトに民間事業者が主体的に参画するということを求めておりました。
次のページお願いします。
こちらがロケットの開発の経緯を図にしたところでございます。
上半分が液体燃料ロケットの系譜でございまして、1996年に開発を始めて、2001年に運用を開始しましたH-IIAロケット、これを20年ぶりに刷新いたしまして、2014年度から開発を始めたのがH3ロケットでございます。
先ほど申し上げましたように、開発の初期から民間に主体性を持たせた官民役割分担というものを取っておりまして、2023年度に試験機2号機の打上げを行いました。
下半分が固体ロケットの系譜でございまして、現在、イプシロンSロケットの開発を行っているというところでございます。
次のページお願いします。こちらがH3ロケットのシステムの概要でございます。
左半分がH-IIAロケットとH-IIBロケットになります。
これを真ん中にある3つの形態のH3ロケットで刷新をしたというものです。
一番左のH3-30Sという形態は、固体ロケットがない形態でございまして、一番シンプルな形態です。こちらで太陽同軌軌道へ4トン以上の打上げ能力を目指しております。
また、一番右は固体ロケットブースターが4基付いた一番強い形態でございまして、H3-24L、それと大型のフェアリングを搭載した24Lという形態でございます。
こちらは、静止トランスファ軌道に6.5トン以上の能力を目指しておりまして、真ん中の22Sが最も売れ筋というふうに考えられている固体ロケット2本のバージョンでおりまして、この3つの形態によりましてH-IIA・Bの時代よりもより広い打上げ能力の範囲をより低コストで打上げていくということをコンセプトとしております。
次のページお願いします。
こちら地上設備の様子です。
真ん中にあります整備組み立て塔ですけれども、こちらは建物そのものはH-IIA時代に建設されたものでございますけれども、整備方式は新たなものを採用しまして、大幅に点検、整備作業を削減しております。
また、真ん中の下にあります射座につきましては、H-IIBで用いておりました第2射点、こちらのほうを改修して使用しております。
一番大きく変わったところは、左上のほうにございますが、発射管制塔でございます。
こちら従来H-IIA・Bではこの発射台の近くに射点近傍に置かれておりまして、100名以上の人員がこちらで管制を行っておりましたけれども、デジタル通信技術等を多用しまして、総員待避の3キロの規制エリア外の竹崎エリアのほうに移設をいたしました。それと併せて人員の大幅な削減といったことも行っております。
また、右の上のほうには追尾局と書いておりますけれども、こちらのほうもアンテナの小型化を行うとともに、種子島から遠隔で運用できるようにして、集中して管制ができるようにといったことで効率化を進めております。
次のページお願いします。
先ほどの文科省からの説明の中にも何度か出てきた総合システムという概念についてこちらでご説明しております。
この概念は、後ほどご議論いただきます高度化におきましても非常に重要な観点になっておりますので、改めてご説明いたします。
ロケットといいますと、どうしても飛んでいくロケットシステムのところに注目しがちでありますけれども、ロケットを飛ばすためには左に示します打上げを支える地上施設設備、整備塔ですとか発射台ですとかこういった地上施設設備システム、それから飛んでいくロケットを追尾し、その安全を確保するための打上げ安全管理システム、こういった3つの大きな構成要素がございまして、これらのシステムを組み合わせたSystem of Systemsという大きなシステムで成り立っております。
総合システム設計においては、H3の時に特に意識いしましたけれども、各構成要素への要求をバランスよく配分するということが重要になってまいります。
次のページお願いします。ここからがH3の開発体制でございます。左側半分がロケットの総合システムの構成でございますけれども、ロケットシステム、こちらの取りまとめはプライムコントラクタとして選定をしました三菱重工に実施していただいております。
そして、液体ロケットエンジンですとか固体ロケットブースター、それから誘導制御に重要な役割を果たします管制センサーや誘導ソフトウェアといった屋内に維持する必要のあるロケットに関する基幹技術、これをキー技術と呼んでおりますけれども、これはJAXAが直接開発を行い、こちらに示しますような会社にお願いして、JAXAが直接開発の指揮を取るという形を取っております。
地上設備や宇宙安全管理システムにつきましては、JAXAが各設備メーカーのご協力を得て整備をしてまいっております。
これらをJAXAのH3プロジェクトチームが取りまとめるという体制で進めてまいりました。
次のページお願いします。こちらがH3ロケットの開発計画の全貌を示しております
2014年のSDRと書いてあるシステムデザインレビューのところから開発を本格的に着手いたしました。
全体として開発が順調に進んでおりましたけれども、一番大きな開発のチャレンジの要素となると当初から予定しておりました1段エンジンにおきまして、②、③、⑤というところに示しております各種の課題、特にFTP、液体水素のターボポンプへのクラックですとか、翼振動、こういった課題が顕在化してまいりました。
一方、それによって打上げを計2年の延期をするということになりまして、当初は2020年度の試験機1号機の打上げを目指しておりましたが、それを2022年度に行うという形になりました。
一方、その他のシステムにつきましては、おおむね順調に開発が進みまして、④のところに示しますように2020年度当初予定どおりサブシステムの開発は完了いたしまして、この年度の中でISTというふうに書いておりますけれども、総合システムの組み合わせた試験、実際の機体を種子島の射点に運び込んで、液体推進薬の充填を行うというところまでは完了することができました。
その後、1段エンジンにつきましては、タイプ1というエンジンにつきまして開発を完了いたしまして、2022年度に試験器の1号機の打上げに臨んだというところでございます。
次のページお願いします。10ページ目は、今ご説明をしてきた中身ですので、説明は割愛させていただきます。
次のページお願いします。
11ページ目の上半分につきましては、エンジンに関する課題について詳細に書いておりますけれども、説明は割愛させていただきまして、3つ目のポツについて、先ほど申し上げました2023年3月7日、試験機1号機、これはALOS-3という衛星を搭載した22形態でございましたけれども、これを打上げました。
しかしながら、第2段エンジンが着火しなかったことにより、ロケットに指令破壊信号を送出して、打上げに失敗しました。一方、1・2段の分離までは計画どおり飛行しておりました。
次のページお願いします。同じ年の8月、2段エンジンが着火しなかった故障原因を大きく3つに整理いたしました。こちらの下の①から④に書いてある内容でございます。
そして、2段の点火器でありますエキサイタ、それからそこに電源を供給しております2段の推進系コントローラ(PSC2)に対して対策を行って、全て処置するということを8月の利用部会でご報告いたしております。
そして、2024年2月17日、これらの対策を全て盛り込んだ試験機2号機を打上げまして、打上げに成功いたしました。
これに引き続きまして、2024年度にはALOS-4を搭載した3号機、防衛省のDSN-3を搭載した4号機、それから内閣府のQZS-6、こちらのほうを搭載したいずれも22形態の打上げに連続して成功しております。
2025年度には、30形態試験機、それからHTV-Xの初号機を搭載した24形態、それから内閣府の準天頂衛星2機の打上げを予定しております。
次のページお願いします。こちらが30形態の試験機の開発の状況でございます。
30形態の特徴でございますけれども、我が国としては初めてになります固体ロケットブースターを装着しないで、3基の液体ロケットエンジンの力のみでリフトオフするという大型の液体ロケットになります。
30形態の試験機につきましては、固体ロケットブースターなしというシステムレベルの刷新が行われるという試験機ですので、試験機2号機と同じように性能評価用のペイロード、VEPと称しておりますが、これを搭載して飛行実証することとしております。
また、貴重な打上げ機会を生かすために、小型衛星6機を搭載することにしております。現状のステータスといたしましては、新しいエンジン3基を搭載した形態ですので、1段の燃焼試験を種子島で行う準備を進めております。
実際にこの機体を種子島の射点に発射台と共に運びまして、そこで3基のエンジンを同時に燃焼させるということを実施する予定にしております。
また、超小型衛星アダプタにつきましては、こちらも開発をほぼ完了して、衛星とのフィットチェック等を順調に進めているところでございます。
次のページお願いします。こちらがLE-9エンジンのタイプ2開発状況でございます。
2023年度から現在の暫定対策仕様のタイプ1Aエンジンに対しまして、恒久対策エンジンということでタイプ2の開発を進めております。
こちらは、液体水素ターボポンプのタービンの設計を改良しまして、性能の向上ということと、課題になっておりましたタービン翼振動の抑制を両立させるということとともに、3D造形技術を多用するといったことで、製品コストの低減することを狙っております。
2025年度には燃焼試験を行って恒久対策仕様を確定しまして、認定試験を実施してまいる予定でございます。
右の下の表では、タイプ1Aとタイプ2の違いが書いてございますけれども、FTPのところと噴射器のところが恒久対策仕様というふうになってございます。
次のページお願いします。最後に、基幹ロケット打上げ高頻度化対応という活動についてご紹介いたします。
現在、基幹ロケット全体で1カ月間隔での連続打上げを実現して、H3ロケットの年間7機以上の打上げ機会を柔軟に提供するということを目指す活動を実施しております。
ただし、こちらの活動につきましては、年7機以上を定常的に行うというものではなくて、設備の拡充ですとか打上げ頻度が少ない年度にロケットの造りだめを行うことなどによりまして、打上げ需要が集中する特定の年度に対応するといった内容になってございます。
その主な取り組みですけれども、2つ挙げてございまして、打上げ間隔の制約緩和というところでございますけれども、現状はH3ロケットを3機以上連続の1カ月間隔で打上げることができない状況でございます。
また、H3とイプシロンSロケットを打上げる場合には、設備の切り替え作業が発生しておりまして、共用している設備があり、この切り替えが必要だということで、打上げ間隔の制約になってございます。
これらに対しまして各種設備の追加整備を行いまして、1カ月間隔での連続打上げを実現したいというふうに考えてございます。
 また、ロケットの製造能力の向上ということでございますが、現状は年間6機の打上げを想定しておりまして、約2カ月に1機の製造能力しかないという状況でございます。
こちらにつきましては、製造設備ですとか保管場所の整備、こういったものを行いまして、造りだめを行うことによって、年間7機以上の打上げを可能とすることを目指しています。
次のページお願いします。
こちらのページから2ページにわたりまして、H3ロケットの開発の各種の試験の様子を写真で示しておりますので、ご参考になさっていただければと思います。
私から以上でございます。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございました。
続いて、世界のロケット開発動向とH3高度化に向けた現状の課題認識について、JAXA宇宙輸送技術部門H3プロジェクトチーム、寺島ファンクションマネージャ、よろしくお願いいたします。
 
【寺島ファンクションマネージャ(JAXA)】
それでは、資料2-2に沿って説明させていただきます。JAXA、H3プロジェクトチームの寺島と申します。
よろしくお願いいたします。
1枚めくっていただきたいと思います。
まず、この資料の構成です。
各国のロケットの開発状況をまずご説明した後に、それを踏まえて我が国の今後の基幹ロケットの開発方策と、昨年度、宇宙開発利用部会の中で議論した内容を主にひもときながら説明してまいります。
それを踏まえて最後3項で、H3ロケットの高度化に向けた現状の課題認識というところをサマライズさせていただこうと思います。
めくっていただきまして3ページ目です。
ここでは、世界の競合ロケットの状況をまとめております。
皆さんご存じかと思いますが、現在、ロケットの打上げ市場、Falcon9の寡占状態となっております。
Falcon9のところ、現在のステータスのところに書いておりますが、昨年度1年間で132回の打上げということで突出した打上げ実績を挙げております。
また、SpaceXはFalcon Heavy、Starshipとも昨年度回数打上げておりまして、精力的に打上げを繰り広げているという状況です。
また、表の下半分、2020年ごろにデビューを予定していた、ちょうどH3と同時期に開発をしておりましたその他の競合ロケット、これは米国のNew GlennでしたりVulcanや、あるいは欧州のAriane 6というもの、こちらがそれぞれ昨年度、令和それ以前に初フライトを終えて運用を開始しているという状況にあります。
ですので、この辺りが安定した運用を迎えることによって、ますます競争状況としては激しくなっていくということが予見されます。
次のページお願いいたします。
これらの競争力を有するロケットを持つ各国とも、どのようなロケットの開発をしてきたかというところを簡単にまとめたページになります。
古くはDelta、Atlasといったところから、Falcon、Arianeとも並行かつ間を置かずに新しいロケットの開発を開始しているということがこのページからは見て取れます。
それぞれのロケットに対してこのような新規ロケットの開発、あるいはアップグレードがどのようにされているかを次のページからさらに詳しく見ていきます。
5ページ目お願いいたします。
ここではFalcon9の段階開発を述べています。
Falcon9は、ブロックアップグレードを繰り広げながら、まず市場投入したものをどんどん競争力のあるものに高めていくという方法を取っておりまして、メインのエンジンであったり、あるいは液体燃料と酸化剤の過冷却であったり、そういった新しい機能を投入していくのと、構造の変更といったところに関しても積極的に行っているところです。
また、機能として自律飛行安全の適用ですとかアビオニクスの改良、あるいは再利用特性を有するためのグリッドフィンですとか着陸脚等の開発適用、こういうところもブロックアップグレードの中で段階的に獲得してきているという状況にあります。
次のページお願いいたします。
段階的な開発を行うことで、運用をし続けながら改良、実証していくということで、Test As You Flyという言葉を実践しているのと、さらにそのスピードに関してやはり特筆すべきものがありまして、2ポツ目に書いておりますようなFalcon9のバージョン1からバージョン1.1、3年間、さらにその次のバージョン2年間ということで、非常に短い間隔で新しい技術や改良を導入しているということで、あるバージョンの開発完了後、すぐに次のバージョン開発をする、また実機を使いながら各サブシステムを段階的に実証していきます。
その流れを持ちながら、再使用技術についても同じ流れで獲得しているのがFalcon9の状況にあります。
次のページお願いいたします。
1.3項、こちら米国のSpace Launch System、SLSの状況になります。
こちらに関しても、主要なサブシステムを段階的に適用・実証していくようなモデルで開発を組んでおりまして、メインエンジンの開発、固体ブースタ、上段ステージを分けて実装していくということで、開発のリスク分散をしているようなことが見て取れます。
2011年から開発が始まっておりまして、途中かなり大幅な開発遅延がありましたものの、最初のブロックの初号機、2022年11月に打上げられておりまして、今後段階的にアップグレードしていくだろうということが予測されているものです。
次のページお願いいたします。
8ページ、こちらはヨーロッパのAriane6です。
こちらも初号機が昨年度打上げられておりまして2025年ごろを目指したサブシステムやエンジンの性能向上を図っていくというような取り組みがこのように公開されているものです。
次のページお願いいたします。
ヨーロッパではAriane6をアップグレードしていくという開発と並行して、次世代のロケット、Ariane Nextと呼称しまして、それをロードマップに従って推進させていると、そういう状況にあります。
このように各国とも非常に精力的に段階的な開発という考え方を取り入れながら、開発したロケットを徐々に磨いていく、価値を高めていくと、そういう活動をしているということが分かります。
次のページお願いいたします。
ここからが2項として翻って、我が国の今後の基幹ロケット開発方策に関してご説明いたします。
まず10ページ目は、H3ロケットに至る我が国の液体ロケットの開発経緯です。
資料にもございまして、詳細割愛しますが、これまで初号機打上げ後に間を置かず、新規ロケットの開発を開始してきましたが、全体システムとしての刷新というのがH-IIAを開発したころからH3の開発着手というところまで、20年ほどの大きな間が空いたというのが特徴でございます。
この中で技術者の散逸、高齢化ですとか開発してきた技術の継承とか、そういうところに課題を感じてきたという経緯がございます。
次のページお願いいたします。
このような中で我々今後の輸送システムに関して何を目指していくかというところを11ページ以降述べています。
このページは、宇宙技術戦略等にも述べられている将来の話、どのような将来像を描いているかというところで、従来以上に多様な宇宙輸送のニーズがどんどん出てくる時代になっております。
これを実現するために、このようなニーズに確実に対応できるようにするということが、これからの輸送システムには求められていると考えております。
さらにそういうニーズが多様化していく中で、より高頻度にたくさんの輸送をしていきたいというところがございますので、より柔軟性が高く、高頻度な宇宙輸送を実現できるような輸送サービスへと進化していく必要があると考えております。
こういう変化の中で、基幹ロケットはどういう役割を果たすべきなのだろうかというところを次ページ以降でひもといてまいります。
次のページお願いいたします。
宇宙輸送の意義と基幹ロケットの役割について、まず宇宙輸送の意義というところでは、我が国の安全保障や重要な政策実現、そのためにやはり他国に依存しない宇宙輸送システムを我が国で持つということが政策の基本中の基本と考えております。
そのような自立的な宇宙へのアクセス手段を確保していくために、基幹ロケットはそれに必要な技術や人材、産業、そういう基盤を持続的に維持するという役割が1つ大きな役割として担っていると考えております。
そのような自立性確保ですとか国際競争力を強化していくための要件として考えていることを中ほどにまとめております。
特に技術や人材の基盤を維持するためには、継続的なロケット開発機会の確保ということが不可欠だと考えております。
先ほど見ていきましたように、我が国の大型ロケット開発は20年程度の間隔で立ち上げられているということで、H3の開発を立ち上げるまでにかなり技術、人材基盤の途絶リスクを抱えている状態でした。
今回、H3の開発でかなり本腰を入れてしっかりした技術、人材基盤を構築できたと考えております。
それを維持するとともに、その基盤を土台として民間ロケットとの共創等、活動を広げていくことによって、我が国全体の共通基盤としてこれを活用していくということが1つ必要と考えております。
また、産業基盤という観点では、このような自立的な打上げを続けるために、やはり基幹ロケットが事業として成立していくこと、これが重要です。
そのために必要な打上げ機会の確保や打上げ、試験設備等の更新、拡充、その辺りも不可欠となってきておりまして、現在課題としては整備後50年近く経過して、老朽化が激しい中、基盤的な課題にもしっかり対処していくことが必要となってきております。
以上を踏まえた基幹ロケットの在り方、下にサマリーとしてまとめておりますが、技術、人材、産業基盤の維持向上のために、継続的な開発機会を必要とします。
それを通して、これまで熟成してきた総合システムとしてのロケット開発技術を後世に確実に継承していく。
また、新たな技術革新に関しても今後必要になってくると考えております。
それを可能とする裾野の拡大ですとか次世代の人材の確保、育成、この辺りを推進していく1つ在り方としてここで位置付けております。
また、官需衛星、国の重要なミッションを着実に打上げながら、同時に商業衛星、民需も獲得していくために、基幹ロケットの強化によって社会的な要請に応えて信頼性をしっかり保ちながら、将来にわたって国際競争力を保持していくと。
そういうのが1つの在り方として考えられます。
次のページお願いします。
以上をまとめたのが13ページでございます。
今後の基本的な開発方策の考え方として、3つの柱を掲げました。
技術、人材、産業基盤の維持向上、それから官需衛星の着実な打上げに必要な打上げ能力と高い信頼性を持って応えていく。
3つ目が国際競争力の強化として、常に変化する需要動向ですとか競合分析を踏まえて、しっかり海外競合ロケットと比肩し得る打上げ能力ですとか能力単価、あるいは打上げ頻度、それから衛星動向、変化していく動向への対応等をしっかり柔軟性とスピード感を持って進める。
この3つの柱を持って、今後の基幹ロケットの開発を考えていくというものです。
次のページお願いいたします。
このような考え方の下、どのような基幹ロケット開発方針が適しているかということを考えた時に、ここで提案しているのが持続的かつ段階的な開発プロセスということで、ブロックアップグレード方式を取っていきたいと考えております。
将来的には再使用化等も考慮した次期基幹ロケットとして、より抜本的なコストダウンですとか打上げ頻度向上を目指していく。
並行して、基幹ロケットは総合システムとして下の図の階段状の絵がありますように、段階的にアップグレードしながら、各システムの性能を段階的に向上していくという取り組みを続けてまいりたいと思っています。
このような取り組みと並行して、課題となっている老朽化した射場設備、試験設備の革新、拡充ですとか、基幹ロケットの打上げ高頻度化に向けた取り組み、そういうところを着実に行っていく、そういうことが必要と考えております。
その一環として、一番下のところ、基幹ロケット高度化開発というものが位置付けられると考えております。
ブロックアップグレードの方針に対して、もう少し詳細に述べたのが次の15ページをお願いいたします。
ブロックアップグレードの全体構想、重要なことは、刻々の打上げ需要、ニーズ動向の動向ですとか、研究開発の技術成熟度、課題に対する対応の緊要性、そういうところを考慮して、柔軟にアップグレードの中身を検討して設定していくということが重要と考えています。
ですので、最初に全体の計画を設定して、10年後までにこういうことをやっていこうというのを決めるというよりは、今年度から段階的にアップグレードを立ち上げ、さらには並行してさらに先のアップグレードに関しては、動向を見ながら逐次設定していく、そういう流れがよいのではないか。
このアップグレードプロセス全体を、基幹ロケット高度化と呼んでいきたいと考えています。
各アップグレードの検討の方向性として示しておりますのが、下半分ページでございます。
まず、第1段階のアップグレードとしては、皆さんご存じのように宇宙戦略基金等を創設されて、非常に国内、国外含めて多様なミッションですとか複数衛星の搭載需要が出てきております。
このようなユーザー利用拡大を柔軟に実現していくことがまず喫緊に必要な課題と認識しております。
また、さらには手段としてアップグレードを取っていく際には、部分的に変化していくことによって、全体の信頼性を損ねてはならないというのが大きな命題になります。
そのために信頼性を保ちながらアップグレードしていくような開発の方法論、スキーム、そういうところを確立していくことも、同時にアップグレードの初期に行っていくことが重要と考えております。
また、次にアップグレード2として我々が考えているのは、特に再使用、使い切りを問わない低コストな製造・組み立て技術、あるいは運用技術ですとか、それを支える部品、コンポーネントの簡素化、量産化に関すること、あるいは運用効率化に資するための高頻度化技術、そういうところをしっかり携えていって、基盤の強化を図っていくというのがアップグレード2で考えているところでございます。
3段階目のアップグレードとして、将来的な国際協力ミッションですとか大型の輸送需要に対応できるような打上げ能力の向上、さらには将来再使用技術していくということになれば、それに橋渡しができるような技術の飛行実証、そういうところも打上げ能力を向上することによって取り組む幅が広がります。
そういうことをやることによって、今後は将来に向けた技術や人材基盤の橋渡しを担っていく。そういう辺りをアップグレード3の方向性として位置付けたいと考えております。
次のページがアップグレード1に関して先ほど喫緊に必要な課題と申し上げました。
そこに関して少し補足したページになります。
今までの小型衛星、相乗りで100キロ級以下の小さな衛星を載せるということが国内では主流でしたけれども、需要動向を踏まえると300キロ程度までの複数衛星の打上げですとかコンステレーション需要、さらに大きなものは500キロ級程度まで衛星の相乗り打上げ需要というところが国内、国外とも見込まれています。
そのような需要が増えることを見越して、特に増加していく国内需要、可能な限りやはり国内から打上げられるというのが、基幹ロケットとしてもそういう貢献をしたいことを考えると、方向性としてアップグレード1としては、以下の方向性を考えております。
1つは、要求軌道ですとか固有インタフェースで、小型、単独の衛星はイプシロンSですとか民間小型ロケットのほうで即応性、柔軟性を持って上げていきましょうと。
また、標準的な軌道やインタフェースを持つ衛星で、多数機同時に上げることで効率化していきたい、そういう要望に対しては、H3ロケットが多数機同時に相乗りさせるライドシェアというやり方で応えていきましょうと。
そういうふうなデマケーションを取ることによって、国内全体のラインアップでしっかり打上げ需要に対応していこうと。
そういう輸送サービスを目指していきたいと考えております。
そのためにアップグレード1としては、可能な限り共通的な搭載構造ですとかインタフェースで衛星搭載可能とすること、さらには将来的には環境条件ですとか剛性、検証要求等、どの国内のロケットに載るにしても、ある程度統一的な規格で衛星の設計、検証ができるように、そういう効率化も図っていきたいというのが狙いになっておりまして、このようなところも含めて、詳細な方向性ですとか実施すべき内容は、次回以降の委員会の中でも議論させていただきたいと思っております。
最後のページ、こちら現状課題認識、今までのご説明踏まえてサマリーとしたものです。
官需衛星の着実な打上げという観点では、宇宙活動の自立性を確保するために、基幹ロケットの着実な打上げと国際競争力の強化を進めていきます。
そのために需要、動向変化を捉えて、必要な打上げ能力と高い信頼性を維持するために、打上げの高頻度化、こちらに向けた取り組みも着実に進めていくということが重要という認識です。
また、2つ目の観点としては、国際競争力強化、こちらに関しては繰り返しになりますが、やはり競合の動向、技術動向の変化が激しいという中で、いかにロケットの性能目標を見直して最新化していけるか。
また、それに応えることができるような段階的なブロックアップグレードによる開発プロセスを構築していくということが必要と考えております。
最後になりますが、技術、人材、産業基盤維持向上ということで、このようなところを持続的にやっていくためにも、間を置かずにロケット開発を立ち上げていくということ。
また、それが運用と並行してできるように、必要な打上げ機会の確保ですとか打上げ、試験設備等の更新、拡充、こういうところの基盤的な課題にも取り組んでいく必要があるということが重要と考えております。
以上の大きな3つの観点の現状課題認識に沿って、今後H3高度化のやるべきこと、目指すべきところを議論させていただきたいと思っております。
説明は以上で終わりたいと思います。
 
【阿部企画官(事務局)】
ご説明ありがとうございました。
それでは、ここからは質疑応答の時間としたいと思います。ただ今のご説明に対しまして、ご意見、ご質問おありのある方は、挙手機能を使って、手を挙げていただければと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、まず石田様、手が挙がっていますでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
【石田構成員】
どうもご説明ありがとうございました。
ご質問と若干の意見合わさって1つ申し上げたいと思います。
基幹ロケットの議論をしていく時に、H3だけではなくて、前のHⅡの時代もそうだと思うんですけども、まず何よりも一丁目一番地は、日本としての自立性を確保するというところが、これは変わらず最重要のポイントとしてある一方で、事業としての成立性というキーワードが必ず同時並行で出てくるのかなと思っていて、今日も今のご説明の中に、事業としての成立性というのが書かれていたと思いますが、事業としての成立性というのは一体何を指しているのかというのが、これからの時代、議論がとても大事と思っています。
というのは、今、世界を見渡して、打上げサービス事業だけで成立している民間事業者というのはほぼいないというのが私の認識でして、大きくいうと中国の状況分からないんですけども、欧米含めて、今、多分世界にある打上げ事業者の事業モデルというのは2つしかなくて、1つはあくまで官需を支える自立性のためにその事業をやっているというパターンで、これは今日ご紹介いただいたULAとかアリアンスペース、ここはやはり民間企業の事業として成立していますかというと、恐らく収益とか含めるとかなり厳しい。
しかし、アメリカとして、あるいはヨーロッパとして宇宙へのアクセスといったものを自立的に確保していくために官と民が連携していく。
何なら官が主体となって、そのプログラムを支えながらやっていくというのが1つのパターンかなと思います。
もう1つ、今日話が出たSpaceXとかロケットラボというのは、打上げサービスだけで事業はむしろやっていなくて、打上げサービスを軸に衛星事業とかも含めた垂直統合で事業をやっているというのが今の特徴だと思っています。
今日ご紹介いただいたSpaceXが130回打上げというのがありましたが、皆さまご案内のとおり、半分以上が自社のスターリンクの打上げになっているわけであって、そうなってくるとロケットというのは、実は自社の事業の中の経費にすぎないと。
打ち上がったスターリンクの衛星が収益を稼いでいくということなので、打上げ事業自体が収益を稼いでいるわけではなくて、あくまでコスト、内部経費になっているというのが事実上かなと思います。
もう一方、よく参考になるロケットラボの例もそうだと思うんですけども、ロケットラボも日本だと小型ロケットの打上げ事業者というイメージが大きいと思いますが、直近、彼らの売り上げ構成の中で打上げサービスというのは多分3割以下の構成になっていて、どんどん衛星関係のコンポーネントとか、ついこの間も光通信のMynaricの買収という話が出ましたけれども、やっぱり打上げ事業だけではなかなか事業規模が限られ儲からないので、自社のロケットの強みも生かした上で、衛星事業にもどんどん手を出し、事業を拡大して利益を出すというモデルをやっているので、そういう企業たちからすると、打上げ事業だけで事業を考えているわけではないというのがもう1つのパターンかなと。
したがって、世界を見渡しても準民間企業のモデルで、打上げ事業だけで成功している例というのは、今の時代多分あまりないパターンだと思いますので、この基幹ロケットの議論の中でも事業としての成立性という言葉が一体何を指していくのか。
先ほど申し上げた、あくまで官需をきっちり支えていくことをやっていく事業のイメージを持っていくのか、何なら民間事業者がそのロケットの強みを生かして、衛星事業とかも含めていろいろ広げていくような姿を想定するのか、この辺りのイメージというのが時代とともに変わってきていると思うので、議論の中に含めるとよろしいのではないかなと思いました。
以上でございます。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございました。
この点、JAXAからもしコメントがあれば。もしくは、全体一通りコメントいただいた上での質疑応答でも構いませんが、JAXAのほういかがでしょうか。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】
JAXAの有田でございます。
今、石田委員のおっしゃるご認識のとおりだと思っております。
現時点、日本の基幹ロケットは、おっしゃっていただいた全社の官需を支える形が出ていないというのが現状であると思います。
官需を支える産業基盤、これを維持するために何らかの開発行為を並行して続けていくということが必要だという、そういう側面もあるかに認識しております。
現状、私どもとしてはそう考えておりますけれども、事業について、三菱重工のほうから何か補足等ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
【阿部企画官(事務局)】
三菱重工の五十嵐様、ちょうど挙手も頂いていたかと思いますが、お願いいたします。
 
【五十嵐構成員】
本日は、こういう場に招いていただきまして、参加させていただける機会を設けさせていただきまして、大変ありがたく思います。
事業についてですが、長期スパンの事業の話と短期で事業を回していくという話といろいろな側面があります。
まず、そもそもの短期スパンで事業を回していくためにはどうなのかと。
それを維持していくということがどうなのか。
それを成長させていくのはどうなのかとブレークダウンして考えるのが、実際に現場で事業をやっている身からすると、そういうことを考えないといけないと思います。
まず、ロケット事業ということでいきますと、諸外国はともかくとして、まず20年ぐらい前、H-ⅡA ロケットの開発を行い、そのころというのは事業というような感覚は正直なかったかなというふうに思います。
H-ⅡA ロケットで三菱重工が打上げ輸送サービスをやっていくという中で、実際にお客さまと接して、お客さまというのは第一に国内のお客さまです。
それは、政府のお客さまということで、これはこれでれっきとしたお客さまでございまして、お客さまに対してきちんと打上げ輸送サービスをやっていくと。
その中で事業を回していくということが大事。
それが蓄積されてきたということと、それからH3ロケットを始めるということになり、H-ⅡA の中でも幾つかやったし、H3では開発の前から世界中のポテンシャル顧客と話をして、どういうふうなものだったら買っていただけるのかというようなことをずっと議論してきたわけです。
その中でH3ロケットが先ほど垂直統合じゃないととてもできないよねという話ございますけれども、まずH3ロケットは世に出せるタイミングにおいて、そこから数年のところについては事業として成り立つ。
すなわち収益を得て、コストでその分を賄って、利益のところで次をつないでいく、ないしは固定費のところを賄っていくことで回せるというところまで来ているかなと思います。
その時大事なのは、お客さまにとって何が大事なのかというところをちゃんとプロジェクトの中に盛り込んでいくことかなと思います。
その辺りで先ほど石田様からいろいろと解説いただきましたけれども、一つ一つが大変重要なアプローチになっていて、この辺りが短期的に、中期的に大事なところだと思います。 
まずそういう話が1つあります。
それと先ほど石田様からお話があったように、実際、諸外国の動きを見ていくと、垂直統合していかないと成功例はないよねということだと思います。
その辺は確かにそのとおりかなと思うんですけども、日本ならではとか仮に三菱重工が事業をやっていくということであるならば、どういうふうな事業で継続していくのかというのは、それはそれで個別に考えればいいのかなというふうに思います。
三菱重工の中で宇宙事業というのは、本当に比較的非常に小さなポーションなんですけれども、それはそれであっても、会社の中では1つの事業としてきちんと成立していないと、継続は許されないというのが大きな会社の中での1つの事業としてのありようであります。
そこをバランスというか生きるすべを模索しながら前に進めていくということが、結局は事業として維持して成長させていくということでございます。
なかなか簡単な言葉とか解といったところで説明することは難しいんですけども、一つ一つ目の前の課題と、それからお客さまがどういうふうに考えるのか、どういうところだったら解決があるのかというのを解決しながら、進めていくということに尽きるかなと思います。
そういう意味で、ブロックアップグレード開発というような形で、短いサイクルでいろいろな武器を身に付けていくというやり方で前に進んでいくというのは、大変大事なアプローチかなと思います。
まず、いったん以上でございます。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。
丹生様からも手が挙がっているところではございますが、まさにこれから高度化、高頻度化を議論するに当たりまして、何を目指すのかとか、事業の成立とは何を指しているのか、最初の立ち位置を決めるといいますか、しっかりそこをどういう立ち位置で物事を見るのかという点で非常に重要な視点だと思いますので、その点に関して追加でご意見やコメントございます方いらっしゃいましたら手を挙げていただけたらと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、後ほどまた戻ってきても問題ないと思っておりますけれども、まず手を挙げていただいております丹生様、お願いいたします。
 
【丹生構成員】
私もブロックアップグレードに関しては、非常に良いアプローチだと思っています。
ちょっと気になるのが、資料2-2の中でアップグレード1、2、3というのがあって、これを見ると1をまずやりましょうというふうに見えますが、2とか3も多分長期的に取り組まなきゃいけないないようなので、今からでも何をやるかという議論をしないといけないと思いますが、その認識は正しいでしょうかということと、もう1つH3の資料の中でやはり高頻度化というのが出てきて、年間7機以上打上げるためにはこんなことをしなきゃいけないよというのが書いてあって、これに取り組みますと書いてあるんですけども、これはブロックアップグレードとどういう関係にあるのかを教えてほしいと思います。
以上です。

【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。JAXAからいかがでしょうか。お願いします。
 
【寺島ファンクションマネージャ(JAXA)】
JAXAの寺島です。
まず、前半のご質問についてお答えします。
おっしゃっていただきましたとおり、アップグレード1を行い、終わってからアップグレード2、アップグレード3というふうに順番に立ち上げていくものではございません。
アップグレードの区切り方というのは、やはり投入していく技術の開発ですとか、それに向けた技術の成熟度向上にどれぐらい時間がかかっていくのかということと、それをいつごろまでに成し遂げることによって、基盤維持ですとか競争力を維持していけるか、その2つの要素があると思います。
そういう意味では、アップグレード2とかアップグレード3、後半のアップグレードに関しても並行でどういう準備をしていくべきか、我々フロントローディングという言葉を使いますが、どういうふうに技術を高めて、あるいは成立性を確認して、いざここで開発するぞとなったら、短期間で市場投入できるか、そういうところを目指していく必要があると考えておりますので、認識いただいているとおり、一つ一つというよりは、並行して取り組み、計画を決めて、それで取り組んでいくというような形で考えております。
 
【丹生構成員】
分かりました。ありがとうございます。
もう1つ、高頻度化についてお願いします。
 
【寺島ファンクションマネージャ(JAXA)】
2つ目の高頻度化につきましては、2-1の資料のほうでご説明したところ、まず喫緊に需要が見えてきている7機の打上げというところにある準備をして、特定の年に打てるようにすることが達成していくところでございます。
高度化のブロックアップグレード2というところで、さらなる高頻度化を考えていくのは、それに続くものとしてその打上げをさらにユーザーにとって利便性が高く、打上げ計画を設定できるとか、打上げの間隔、頻度に関しても、よりユーザーにとって使いやすいような形で設定できる。
それによって機数に関しても、事業継続に必要な機数7機ですとか、あるいはそれ以上というところを目指していくというのが、高度化のブロックアップグレードの中で高めているものです。
既に取り組んでいる取り組みというものがありまして、資料2-1のところでご説明しておりますので、その先、さらに目指していくところに関しては、高度化という中で全体で束ねて方向性を考えていこうというような関係にございます。
 
【丹生構成員】
ということは、今回検討していく中で高頻度化というのは、今表示していただいているものよりもさらに高頻度化にするためには、する必要があるかどうかも含めてどこまでやるべきかを検討していくということですかね。
 
【寺島ファンクションマネージャ(JAXA)】
はい、ご認識のとおりでございます。
 
【丹生構成員】
はい、分かりました。ありがとうございます。
 
【阿部企画官(事務局)】
はい、ありがとうございます。
JAXAの岡田様、お願いいたします。
 
【岡田構成員】
はい、ありがとうございます。
先ほどの丹生委員からの最初のご質問について、ちょっと補足的に私の考えを述べさせていただきますと、やはり今世界中で打上げの市場というのは激変しているわけで、それに対して先ほどのFalcon9の短いスパンで開発していくというところを日本としてどういうふうに取り組んでいくかというところは、方法論として非常に新しい概念が要るのではないかなと思っています。
その1つに、高度化というものをプログラム的に捉えまして、いわゆるH3との比較でいうと、H3というのは10年間かけてウォーターフォール型で開発をしてきたんですけども、そういうふうにしていては世の中の変化に追いつけないと。
変化に対応できないということで、今我々で考えているのは、大きなプログラムとして高度化全般を捉えて、幾つかのブロックに対しての助走期間であるフロントローディングというのをやりながら、あるところで決めを入れて、そこからは一気に本格的な開発に入るというふうにして、本格的に開発に入るところを短期間で済ませるという概念そのものを今試みようとしています。
もう少し温める時間が必要だと思いますけども、そういった方法論も含めて、新たな取り組みにしていきたいなというふうに考えています。
以上です。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。それでは、吉井様、お願いいたします。
 
【吉井構成員】
吉井でございます。
先ほどの立ち位置のところに関連して、保険業界の見方から一言意見を言わせていただきたいと思います。
もともと保険を引き受ける時に、通常、宇宙保険以外でいいますと保険料率で1%に届くような契約はほとんどないのが現状ですね。
0.5%でもかなり危険な事業というふうに業界の中では見ていたんですけど、そうした中、打上げ保険というのは大体10%から、本当に直近マーケット環境もありますけれども、20%を超えるようなケースも出てきているということを考えますと、非常にまだまだリスクが高い事業だということが言えると思います。
そうした中、ここ数年、打上げの失敗なんかがあった時に、JAXAの皆さまとか関連の方がマスコミに出て謝罪をするなんていうシーンがよくありますが、リスクの観点からいいますと、大きなチャレンジをしている中で、保険業界から見ると、統計を取ってみると初号機でも3割から5割ぐらい失敗して、3号機でもまだ7割以上の失敗率があるなんていう統計もありますが、大きなチャレンジをしているということを対外的にしっかりアピールしていかないと、開発に関わっている方々のプレッシャーというのは非常に大きなものになるということで、説明の仕方について工夫をしていく必要があるかなと思います。
以上でございます。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。
続きまして、若田様、お願いいたします。
 
【若田構成員】
ありがとうございます。
石田さんがおっしゃっていたように、官需、国のアンカーテナンシーというのは、非常に方向性を検討する中でも重要だと認識しております。
その中で例えば11ページのところに、宇宙基本計画とか宇宙技術戦略のところで次期基幹ロケットの完全最小化とか有人輸送への拡張といったことがうたわれているわけですけども、15ページのほう、アップグレード1、2、3というのが表記されていて、その前のページのところにアップグレードは1から4までありますが、アップグレード4がこの中でどういうふうに表記されるのかというのが、もしご説明いただいたのかもしれないのですが、私そこを逃しましたので、アップグレード4の構想があればお聞きしたいというのと、そうでなかったとしても、例えば宇宙基本計画とか技術戦略にうたわれているような形で、再使用技術だけにとどまらず、やはり有人輸送への拡張といったことを検討の中にきちんと入れておく。
そうするとやはりアボートの技術ですとかそういったものの検討まで含まれるのかなと思いまして、そういった有人への拡張に関して、アップグレードの具体的な文言として、アップグレード4についてどうお考えになっているのかというところを教えていただければなと思います。
世界各国を見てみても、これは米国のSpaceXだろうが、New Glennだろうが、ULAでも、中国、インド、ロシアも逆に有人をスコープに入れていないほうが特異なのかなと思いますので、信頼性を高めるということを高頻度化、そういったコストなども含めて、有人をスコープに入れておくというのは合理的なアプローチではなと思います。
以上です。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。JAXAからお願いできますでしょうか。
 
【岡田構成員】
岡田です。私のほうからでよろしいですか。
 
【阿部企画官(事務局)】
はい、大丈夫です。
 
【岡田構成員】
今、若田委員おっしゃられたところはそのとおりだと我々も思っています。
アップグレードの4のところは、後で担当から説明してもらいますけれども、今、有人というところがどういうふうに我々として取り組んでいるかというのは、JAXA全体の取り組みとしましては、今投影いただいている革新的将来宇宙輸送プログラム研究開発の一番下のところですかね。
有人技術というのが書かれていると思います。
このフレームワークの中で、有人に関する安全性であるとかアボート技術も含めて、そういったことに対しての取り組みについて研究を進めているところと。
これと高度化というのは、今のところ並行で走らせています。
どこかで実装する時に合流させていくという考えで、JAXAとしては今取り組んでいるところです。
アップグレード4については、今から補足させていただきます。
 
【寺島ファンクションマネージャ(JAXA)】
寺島です。
アップグレード4に関しましては、今ここで点線で書いておりますように、現在JAXA内でもスコープですとか方向性を鋭意議論しているところでございます。
難しいのがやはり2030年代以降ということで、その時にどういうニーズですとか輸送需要が強いかというところも考えながら、例えば大型の探査に対する需要がここでは大きくなっているだろうとか、あるいはその他の国際協力ミッション等に対応していくという大型化の方向性ですとか、あとはアップグレード3というところまでに入らなかった、ただ時間はかかるけど、よりユーザーにとって価値が上がるような意義の高い技術というのをアップグレード4の中で取り組んでいくとか、そういう幾つかのアップグレードで負わせる役割というのがあると考えておりまして、その辺り整理をして、また次回以降、議論させていただけるようにしたいというふうには考えておるところです。
 
【若田構成員】
了解いたしました。現状よく分かりました。ありがとうございます。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。補足ですけど、文科省から説明させていただきました資料の5ページ目に、宇宙基本計画の抜粋を記載しておりましたが、その中で次期基幹ロケットではという記載の中で、機体の一部を再使用化したというような記載があり、将来的にはという記載の中で、完全再使用化や有人輸送にも対応できる拡張性を持つことが期待されるというような文言が政府文書としては書かれているというところです。一方で、H3のブロックアップグレードの中で何をどうしていくのかというところは、いろいろ議論があると思っているということで、一応現状のご紹介でございます。
 
【若田構成員】
了解いたしました。ありがとうございます。
 
【阿部企画官(事務局)】
それでは、手を挙げていただいております笠原様、お願いいたします。
 
【笠原構成員】
ご説明ありがとうございます。
まず申し上げたいことは、非常に現状をよくご認識されていて、私なんかが言うことではないのかもしれませんけど、非常に重要なところ、特に基盤というか設備が射場やあるいは人材育成といった本当に土台のところ、そこに力点がとてもしっかり置かれていて、基本的にとても良い内容だという印象をまず第一に持ちました。
その上で僭越ながら申し上げさせていただきますが、総合的な観点では国際的な競争というか、非常に諸外国の開発に遅れを取るまいとして、キャッチアップするようなイメージをもっております。
ブロックアップグレードという概念も非常に良いというか、フロントローディングをしながら技術をしっかり着実に立ち上げていくという考え方もとても共感するものでございます。
その上でさらにちょっと言わせていただきますと、私、大学におりますので、絶えず小規模、非常に小さい研究室でかなり大きな研究機関、例えばAir Force Research Laboratoryであったり、それ以外の巨大な大学集団であったり、そういうところと向き合わざるを得ないような状況が常時存在しております。
結局、そういう時に武器になっているのは、やっぱり非常に強烈なオリジナリティのあるということと、小回りの利く、どんどん手を次から次へと打っていく、非常に得意な分野に特化しながら、小さいことを積み上げていきながら、他がキャッチアップできないもので勝負するしか手がないというか、そういう印象を持っています。
これは単純に大学のやり方なので、そういうことが今回の国家的なプロジェクトと並び立てることはそもそも間違っているとは思うのですが、ただやはりそういう守るべきというか、大切にするべき大きなことと、それからしっかり着実に保ちながら、とはいえ競争だということなので、勝機を見いだすためには小さくかつ新規性、オリジナリティの先鋭化したものを組み合わせて、成果を挙げていかざるを得ないのかなというのが僭越ながら感じているところでございます。
したがいまして、多分このプログラムになくても、人材育成、長期的な基盤技術の中にそういうイメージのこともお入りになっているかとは思うのですが、ちょっと資料だけではそこまで細かい話は入っておりませんので、僭越ながらちょっとコメントさせていただきました。
要するに本当に勝つための手段、それの勝機を得るための何か方策というか、そういうところをやはりこれからもぜひ見いだしていただきたいなと思っております。
大変失礼なコメントかと思いますが、以上でございます。よろしくお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。
具体的なところは、第2回でJAXAから詳しく説明あるかと思いますが、現時点でJAXAから何か言えることありましたらお願いいたします。
 
【寺島ファンクションマネージャ(JAXA)】
ありがとうございます。
おっしゃるとおり、真正面から競争して勝てるというところと、差別化戦略といって彼らがやっていないところで顧客を拡大していくと。
そういう競争と差別化というところをしっかり考えながら、我々が将来目指していく立ち位置としてどういうところがあるかというのは重要と思っておりまして、次回以降、高度化の最終的な成果の目標ですとか、そういったところを議論する中で、ぜひまたご意見頂ければと思っております。
ご認識は一緒でございます。
 
【笠原構成員】
ありがとうございます。
よろしくお願いします。
 
【阿部企画官(事務局)】
それでは、手を挙げていただいている矢木様、お願いいたします。
 
【矢木構成員】
いろいろご説明、ご議論、共感できる部分が多く聞いておりました。
ブロックアップグレードについて非常に共感しますということをまず申し上げました人材とか技術維持という観点で、私たちも同じような課題を抱えていまして、非常に重要なことと思っています。
議論の中で石田様、それから五十嵐様がおっしゃっていた打上げ事業としての特性と事業モデルの件も、まさにそのとおりだと思って聞いておりました。
その中で、私たちも民間事業として同じような課題を抱えている中で、よく言われる話としてご発言させていただくのが、やはり宇宙も今まではフロンティア事業ということでしたけども、今後はやはり事業として成立して回していくために、やはりある程度の事業性に関して成長を見せていくことが必要だと考えています。
その中で例えば高頻度化の話がありましたけれども、ブロックアップグレード的に段階的に高頻度を進める、次は7機、次は8機とか、そういう考えはもちろん必要だし、共感するところなんですけども、一方で将来の目標というかありたい姿、事業として回していくために何機ぐらいにしたいという将来に目指す姿というのもあるはずで、そこからのバックキャスト的な考え方、そのためにはいつの時点でどういったことをやっていく必要があるかといったような、そういった思考パターンも必要なのかなと。
積み上げで考えるのと、目標から逆に考えていくところのすり合わせといったところも必要になってくると思っていまして、その辺りに関しても会合の中で議論していくような機会があるのでしょうかというのがご質問です。
以上です。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。私から補足させていただきますと、高度化の目指すべきところと、いわゆる目標的なところをしっかり議論しなければならないので、そういうものを意識しながら議論できればと思いますが、JAXAはいかがでしょうか。
 
【寺島ファンクションマネージャ(JAXA)】
同じ認識でございます。
高頻度の観点もそうですし、その他の観点も含めて目指すところは、そこからバックキャストしていった時に、目の前からどういうことをやっていかなければならないかという議論につなげられればと思っております。
 
【矢木構成員】
承知しました。
SpaceXが年間100機みたいなこともやっていますんで、そういった観点でどの辺り、日本としては目指していかないといけないのかという話もあるかなと思ってお話しいたしました。
よろしくお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】
ありがとうございます。他いかがでしょうか。今お手を挙げていただいている方はおりませんが、よろしいでしょうか。限られた時間の中でご発言いただいていることもございますので、追加のコメント等ございましたら、ぜひ事務局にメール等ご連絡いただけるとありがたいと思っております。頂きましたら、JAXAとも共有しながら、次回に向けた準備、しっかりと調整していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
追加コメント等、手も挙がっていないようですので、議題2としてはここまでとさせていただこうかと思います。ありがとうございました。
それでは、事務連絡となります。会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料につきましては、文部科学省のホームページに既に掲載させていただいております。また、議事録につきましても公開となりますので、構成員の皆さまにご確認を頂いた後、後日文科省のホームページに掲載をする予定でございます。
次回の開催につきましては、別途ご連絡をさせていただこうかと思います。
本日は、長時間のご議論、誠にありがとうございました。以上となります。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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