第15回北極域研究推進プロジェクト推進委員会議事録

1.日時

令和6年3月8日(金曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. オンライン開催

3.出席者

委員

池島委員長、窪川委員、合田委員、三枝委員、坂野井委員、瀧澤委員、中田委員

文部科学省

山之内海洋地球課長、山口極域科学企画官、細野海洋地球課課長補佐

オブザーバー

国立極地研究所 榎本プログラムディレクター

4.議事録

【細野海洋地球課課長補佐】  定刻になりましたので、ただいまより第15回北極域研究推進プロジェクト推進委員会を開催します。会議の冒頭は、事務局から進行をさせていただきます。私は研究開発局海洋地球課の細野と申します。よろしくお願いいたします。
 本委員会は審査などの個別利害関係がある場合を除いて原則公開とし、会議資料、議事録についても公表いたします。本日の傍聴登録は18名でございます。
 続いて、本日の配付資料について確認をさせていただきます。お手元の議事次第にありますとおり、配付資料につきましては資料1から4、参考資料1から2となっております。
 それでは、議題1、北極域研究推進プロジェクト推進委員会の設置について、御説明をいたします。本委員会は、文部科学省の北極域研究事業を推進するに当たり、専門的な見地から検討を行うとともに、公募要領の策定及び審査、研究計画への助言等を行うため、研究開発局長裁定で設けられた委員会となっております。今回は、令和6年度終了予定の北極域研究加速プロジェクト(ArCSⅡ)の次期プロジェクトについて、御議論をお願いしたいと考えております。
 次のページでございますが、こちらは本委員会の委員構成でございます。前期から変更なく、皆様に御就任いただいております。本日は全委員に御出席いただく予定でございますので、御紹介をさせていただきます。一言いただく際に、カメラをオンにしていただきますと幸いでございます。
 池島大策委員でございます。
【池島委員長】  おはようございます。池島大策でございます。今会期も委員長を仰せつかりました。甚だ微力ではございますが、皆様の御助言、御指導、御鞭撻によりまして、さらに頑張らせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【細野海洋地球課課長補佐】  窪川かおる委員でございます。
【窪川委員】  窪川でございます。継続して委員をさせていただくことになりましたけれども、北極に関してどのような状況になっているのか、ぜひこの委員会でもお伺いしたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
【細野海洋地球課課長補佐】  合田浩之委員でございます。
【合田委員】  改めまして、合田でございます。よろしくお願いします。今期もお世話になりますが、どうぞ皆様、御指導のほどよろしくお願いいたします。
【細野海洋地球課課長補佐】  三枝信子委員は遅れての御出席になります。
 続きまして、坂野井和代委員でございます。
【坂野井委員】  どうも、坂野井です。引き続き務めさせていただきます。微力ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
【細野海洋地球課課長補佐】  瀧澤美奈子委員でございます。
【瀧澤委員】  どうもおはようございます。瀧澤でございます。前期に続き務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【細野海洋地球課課長補佐】  中田薫委員でございます。
【中田委員】  中田でございます。引き続きとなりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
【細野海洋地球課課長補佐】  ありがとうございました。
 委員長につきましては、規程で研究開発局長が指名するとなっており、前回に引き続き、池島委員を指名させていただいております。
 なお、本日の議題ではArCSⅡの成果や取組状況について扱うことから、発表者として、ArCSⅡのプログラムディレクターである国立極地研究所の榎本先生と、質疑応答者として東京大学の羽角先生、国立極地研究所の猪上先生に御参加いただいております。
 続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。
 海洋地球課長の山之内でございます。
【山之内海洋地球課長】  よろしくお願いいたします。
【細野海洋地球課課長補佐】  極域科学企画官、山口でございます。
【山口極域科学企画官】  山口でございます。よろしくお願いいたします。
【細野海洋地球課課長補佐】  本委員会の開催に当たって、海洋地球課長の山之内から一言、御挨拶を申し上げます。
【山之内海洋地球課長】  海洋地球課の山之内でございます。皆様におかれましては、お忙しい中、昨年度実施しましたArCSⅡの中間評価を取りまとめていただき、本当にありがとうございます。開催に当たり一言、御挨拶申し上げます。
 文部科学省では北極域の研究プロジェクト、2011年度のGRENE開始以降、現在のArCSⅡまで10年以上継続して実施しております。これまでの研究により、北極域の環境変化の実態とか海氷融解メカニズムなどを一定程度解明することができたと思っております。しかし、北極域には、いまだ観測の空白域が存在しており、その実態や社会への影響を解明するためには、様々な課題が残っていると思います。本日は、先ほど紹介がありましたとおり、来年度で終了するArCSⅡの次のプロジェクトの方向性などについて、御議論いただきたいと思っております。
 文科省では現在、ArCSⅡでも活躍しております「みらい」の後継として、「みらいⅡ」を建造しております。次のプロジェクトではこの「みらいⅡ」を国際研究プラットフォームとして、ぜひ活用していただければと思っております。次の北極域研究プロジェクトをさらに実りのあるものにできるよう、皆様から忌憚のない御意見を伺えればと思いますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。
【細野海洋地球課課長補佐】  遅れて御参加予定の三枝先生が入室されましたので、御紹介をさせていただきます。三枝信子委員でございます。
【三枝委員】  どうぞよろしくお願いいたします。三枝です。
【細野海洋地球課課長補佐】  それでは、以降の議事進行については、池島委員長にお願いいたします。
【池島委員長】  それでは、議事進行をさせていただきます。
 議題2、次期北極域研究プロジェクト検討の進め方について、事務局より説明をお願いいたします。
【細野海洋地球課課長補佐】  それでは資料2、次期北極域研究プロジェクトの検討の進め方について、御説明をいたします。
 本日の本委員会で御議論いただく事項としては大きく2つございまして、1つ目は現在実施中のArCSⅡの実施責任者である極地研の榎本先生から、ArCSⅡのおさらい、総括をしていただくため、成果及び中間評価における留意事項への対応状況を御報告いただきます。2つ目は、事務局から次期北極域研究プロジェクトの方向性について御説明し、意見交換をお願いできればと思います。なお、本日の会議では何か結論を出すというものではなく、まずは方向性等について御議論をいただき、次回以降の議論に反映させていくということが趣旨となります。
 次に、右側の青で囲った吹き出し部分でございますが、3月25日の海洋開発分科会においても、ArCSⅡの総括と次期プロジェクトの方向性について御議論いただきまして、そこでの意見も踏まえて、4月から5月に開催される本委員会で、次期プロジェクトの方向性について意見のまとめをお願いしたいと考えているところでございます。その後、令和7年度概算要求に向けて、海洋開発分科会で次期プロジェクトに関し事前評価を行った上で予算が認められた際には、その下にありますとおり、年明けの1月以降に本委員会で公募要領、審査要領を策定し、その後公募、4月頃に書類審査、ヒアリング審査、6月から7月頃に事業開始を目指す流れになると考えているところでございます。スケジュールに関する説明は以上でございます。
【池島委員長】  ただいまの説明につきまして御質問等がございましたら、挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。
 なければ、続きまして議題3に移らせていただきます。次期北極域研究プロジェクトの検討についてであります。まずは、今後の後継事業の検討に入る前に、ArCSⅡのおさらいとしまして、(1)北極域研究加速プロジェクトの成果及び中間評価における留意事項への対応状況につきまして、ArCSⅡのプロジェクトディレクターであります国立極地研究所の榎本先生から、資料の御説明をお願いいたします。
【榎本PD】  国立極地研究所の榎本です。資料3に基づきまして、北極域研究加速プロジェクトの成果及び中間評価における留意事項への対応状況ということで、御説明させていただきます。
 まず、この事業の復習ということで事業概要を簡単に、御説明させていただきます。目的としては持続可能な社会の実現ということで、北極をテーマに、急激な環境変化に対して我が国を含む人間社会に与える影響の評価と社会実装を目指すとともに、北極における国際的なルール形成のための法政策的な対応、その基礎となる科学的知見を国内外のステークホルダーに提供するところであります。4つの戦略目標を設定しまして、真ん中にボックスが4つありますけれども、観測、予測、社会への影響評価、社会実装ですとか法政策への対応などを盛り込んだ構造になっております。2つの重点課題ということで、人材育成・研究力強化、あと戦略的情報発信を行ってきました。あと、そこを支える研究基盤があります。
 次のページをお願いします。ここからは幾つかArCSⅡの成果を御説明します。詳細は時間の関係からお話できませんので、概要をお話ししていきます。左側にはブラックカーボン、これは北極評議会の環境ワーキンググループなどでも成果が提出されています。右側は寒冷渦を使って、今日も東京地方は雪ですけれども、こういった気象を北極との関連から調べるための指標を作成して、これが気象庁の予報業務などにも使われるといった社会実装につながる、そういった活動をしてきました。
 次のページをお願いします。これは新しい観測センサーの開発、それが日本の気象庁はもとより、国際気象機関であるWMOの求める新しい観測手法につながる提言に持っていくといったところで、産官学連携で実証実験を実施して社会実装につながるようなことをやっております。具体的には、気象観測、地上気象、、タワーでの気象、高層観測などがありますが、そういったものの間をつなぐ、ドローンによる鉛直繰り返し観測が可能な観測機を開発するといったことで、活動を進めてきました。こういった観測機は気象観測だけではなくて観測船などでも使えるものがありまして、これからの開発が期待されているものです。こういったものを進めてきました。
 右側は、海氷情報をより精密に出すといったところで、海氷厚、海氷の厚さを衛星から出すことを行ってきております。次のページお願いします。
 左は氷塊、氷で覆われている海を航行する船に関するいろいろな実験、あるいはシミュレーションで、船体構造ですとか氷と船との相互作用、そういったものを行ってきておりまして、これは研究船での実証実験にも今後、期待ができるところがあります。右側は、今までのところは自然科学、技術開発、海氷情報、船舶に関する工学などですけれども、そういったところから法政策的、あるいは経済的とか、そういった人文社会科学への貢献といったところで取り組んできたものを紹介しております。
 様々な場面でアピールしたり、情報を届けたり、戦略的情報発信というのは先ほどありましたけれども、いろいろな国際会議や国内外の会議においてこういった情報提供をしております。こういったものが科学技術外交や中央北極海の漁業協定に関する研究など、そういったところで自然科学と社会科学をつなぐ、あるいは法政策をつなぐといったところに向かって活動してきました。ここまでが、簡単ですけれども、ArCSⅡの概要と成果の紹介にさせていただきます。次の3ページをお願いします。
 ここから3ページほど、中間評価における、今後の事業を推進する上での留意事項としていただいた指摘に対して行ってきた活動を御紹介します。留意事項の1ですけれども、国際法規制の議論への貢献は北極域研究の重要な目的の一つであり、法学者の参画が提言にとって重要であるといったことで、社会への情報発信を考慮した法律、政治などの社会科学の専門家の意見を取り入れる場として機能するよう、今後の方針を検討すべきといったことを意見としていただいています。学術研究の内部に留まることなく、社会への情報発信など、のコメントもいただきました。
 それで、このプロジェクトの中の国際法、国際政治、文化人類学の研究者への参加も呼びかけて、いろいろな研究会を行ってきました。下のところに書いていますけれども、国際法勉強会、あるいはInternational Law Seminar、国際法のセミナー、といったものを各種開催してきました。また、北極海のガバナンスと海洋法をテーマに、2番目のところですけれども、世界中から国際法の専門家を集めて、オンライン国際ワークショップの実施なども、去年の今頃ですが、行っています。
 あと、定期的に開催されている、北極関係省庁関係機関連絡会、これは北極担当大使、外務省が主催していますが、各省庁がここに集まります。そういったところで、プロジェクトから活動状況、あるいは御紹介できる情報を提供しまして、それを北極担当大使がいろいろな国際会議に持っていって御紹介されるといったことの、ステップのつながりもありました。海洋プラスチックの問題などの紹介も、プロジェクトから外務省を通じて国際会議へというふうに届けていただいています。あと、YouTubeなどを使って一般にも、上記のようなシンポジウムの紹介をしています。次のページをお願いします。
 留意事項の2ですけれども、ここでは若手の育成、研究支援や人材育成といったところがあります。これはプロジェクトの中でも力を入れているところですけれども、研究分野のみならずその他多様な海洋管理分野の参画実態など、フォローアップという言葉をいただきました。それが、ArCSⅡで育成した若手人材の姿が外からも分かるようにといったところの指摘をいただいています。下でそれに関係する活動について御紹介しています。
 まず、若手派遣を担当している北海道大学では、ArCSⅡの前のプロジェクト、ArCS、その前のGRENEプロジェクト、若手が育っていくには時間がかかるので、そういったところまでも見ながら5年、10年、15年とありますけれども、そういった中でフォローアップする場を進めて、その一環としてウェブで公開の報告の場を設けています。ここにURLが書いてあります。プログラムに参加した者が、研究分野以外での参画状況、活動状況についてもフォローアップできる体制を、これは構築中といったところがあります。
 若手が研究者となった場合には追いかけやすいのですが、GRENE、ArCSに大学院生や特に研究に参加していた者が、ArCSⅡ、その後のプロジェクトですね、中心的な役割を担う関係者として参加しているところもあります。下の3つの項目では、「おしょろ丸」、あるいは「みらい」の航海に対して日本の学生、分野を問わず10名の学生が「おしょろ丸」の航海に参加した。これは水産とか海洋学を専門にしている学生以外にも、政治経済、芸術、そういった学生も入っています。「みらい」のほうには海外からの参加を可能にしたといったところがあります。国際交流の一つのモデルができました。あと、そういったものを一般の方にも見ていただくようなシンポジウムで紹介しています。次のページをお願いします。
 留意事項の3ですけれども、社会実装といったところで、学際的な研究でしか解決できない社会課題を把握し、ArCSⅡという取組だからこそできたという成果を期待するといったところがあります。先ほど成果の中で御紹介しましたけれども、寒冷渦指標、これは研究会といった専門家から新潟県という地方自治、あと気象庁の異常気象・天候に関する早期警戒情報の創出といった活動に向けての情報提供、あるいは技術提供というものを行っておりまして、そういった業務にも取り組まれつつあります。
 2番目のところでは、雪氷微生物による氷床表面の変化というところで、そういった中でつくられてきた新しい技術が気象庁の天気予報モデル、実況解析モデルに組み込まれて、現状に利用が開始されたということがあります。雪の変化に対する様々な情報が取り込める。北極航路に関する活動も、民間企業とも連携しながら、工学のみならず国際法規制や気象予測、海洋研究などにつながっています。最後のところでは、天気予報に関するといったところで、先ほどのドローンの話、そういったものの社会での利用といったところを行ってきました。次のページをお願いします。
 これまでの成果を踏まえた今後の課題等ということで、今まで全部振り返りまして、あと成果例、課題、今後望まれる方向ということで、御紹介させていただきます。まず、北極域に注目しているということで、地球温暖化の影響が最も顕著に表れている、そういったところに焦点を当てて見ていると。ただし、元来、観測データが乏しいということで、新たな観測手法ですとか取組が必要。あと、そこで出てくるものを北極域という地域の科学、あるいは課題解決だけではなくて、グローバルな視点から社会活動に与える影響の把握、対応策といったところを考えています。
 これまでの成果というところでは、観測データの乏しい北極域における船舶、衛星などの多様な研究基盤、これはArCSⅡでしたが、そういった観測研究を実施しました。このプロジェクト中にコロナ蔓延の時期と重なってしまい、観測になかなか出かけられなくなりましたが、海洋地球研究船「みらい」を使って北極航海を毎年、行うことができました。これは、国際的な同時観測計画、Synoptic Arctic Survey、これは各国が参加して行いますが、日本はその現場を欠かすことなく観測活動を実施しまして、また先ほどの汎用ドローンを用いた気象観測といったものも行っています。
 課題としては、まだまだデータの少ない地域や期間、あるいは要素といったものがありますけれども、そういったところに取り組んでいます。あと、さらにそういったものを一国だけではなくて、観測活動、あるいは人材育成の観点からも、国際連携を目指す必要があるといったところが、活動しながら課題として見えてきました。あと、日本への遠隔影響というのは、先ほどの寒冷渦などとも関係しますが、社会課題解決型研究を積極的に行うことが必要であると、認識を新たにしています。それに対しても、分野を横断した一体的な取組が必要であるところは、改めて認識しています。
 今後望まれる方向として、下に4つほどまとめさせていただきました。観測の空白域、これは北極海という場所、あるいはいろいろな地域、あと時期、観測要素といったものに対する取組が必要で、北極域観測研究船などの活用というところが一つ方向としてあります。国際共同研究や人材育成の国際研究プラットフォームとしての研究船の利用といったところも、これから期待できるところです。あと、このようにして得られた観測データから、予測の高度化、将来予測の不確定性を軽減させていく。
 さらに、最後にこれらによって得られた知見を用いた、北極から日本への影響の解明、あと地域社会や気候変動への適応に資する社会課題解決型研究といったものにつないでいくということで、それぞれの要素から連鎖するもの、あるいは複合的に起きるもの、そういったものを捉えるようなことが、今後、望まれる方向性としてあります。分野を横断した一体的な研究などに取り組むといったところが、強化していく必要があるだろうと考えられるところです。以上で、御報告を終わります。
【池島委員長】  どうもありがとうございました。
 それでは、御質問のある方は挙手ボタンでお知らせください。
 三枝委員、よろしくお願いします。
【三枝委員】  詳しい御説明、ありがとうございました。北極の観測域に空白域があるというのが、今ロシアが関係する国際共同研究がほぼストップし、新しい研究計画を立てるということもほぼ見込みがない状態にある中で、日本を含む各国の協力を進めて空白域を埋めていく仕事は、とても重要だと思っております。質問は、日本からも「みらいⅡ」を出す、あるいはドローンを使った観測手法を開発するなど、大変活発にやっていただいておりますけれども、気象観測、気象予報の精度を上げるとなると、ルーチン的に観測データを得るということが非常に大事だと思います。研究船もとても重要ですけれども、ルーチン的に観測データを得るという点について、例えば既に定期的に運航されている船があるのであれば、定期的な観測に持っていけるような要素への発展というのは、どのようにありますでしょうか。以上です。
【榎本PD】  ルーチン観測ですが、まず国際的な気象の現状機関でありますWMOですけれども、これはロシアの中でも活動して、GTSを使ってジュネーブにデータを流してくる国際データ流通を現在も維持しておりまして、GTSを使ってのデータの流れは現在も確保されて、それが客観解析とかにもつながっていくところがあります。
 御紹介しましたSynoptic Arctic Surveyという活動が、スナップショット的ですけれども、全地域を同時期に見てみるといったことをやっていまして、それで空間的な空白域を埋めるということをやりました。これは一国ではできなくて、日本も入っていくといったところで、これからもそれが計画されているところです。そういったところでステップが進んでいると。
 あと、ルーチン的なところでは、長期の連続した観測というところが必要になってくると思いますが、これは国際的なプランが今、検討中といったところがありまして、これから日本ができる能力を示しながら、国際相談をしていくといったところかと思います。残念ながら北極海での連続観測というものは、まだ試行段階にあると。それぞれの国が少しずつやっていますけれども、まだ定常的にこの形でいこうといったところには達していないというところです。日本も船を使えるといったところで、自由な場所が選べる機動性がありますので、これまでの内容だけではなくてどこにでも売り込んでいく、そういったチームづくりに参加できるというところがあると思います。以上が現状です。
【三枝委員】  分かりました。ありがとうございます。
【池島委員長】  次に、合田委員、よろしくお願いします。
【合田委員】  合田でございます。御報告ありがとうございました。大体中間報告などであるとか、それから今後の課題等については、満足いく対応がされていると思っております。それで注文と、それからこれはもしかしたら事務局に、文科省にお願いするべき話なのかという気がしますが、何点かございまして、まず注文でございますけれども、先ほどから指摘がございますロシアの件、これらはどっちに転ぶのかという問題もあるんですけれども、少なくとも扉だけは開けて、いつでもつながりだけは維持していただくということは、お願いしたほうがいいのかと思っております。
 というのは、こういうセカンドトラック、外交官とか政府ではなくて、専門家の領域ではつながり合うことができることによって、関係を良好に維持するという機能がArCSにはございますものですから、こちらから扉を塞ぐのではなくて、先方が来ないというのはしょうがないと思いますけれども、呼びかけだけは続けていただきたいという御注文が第1点であります。
 第2点、「みらいⅡ」が出来上がって観測がという話でございます。前の委員会でも申し上げたと思いますが、結局船の運航費の予算をしっかり確保していただかないと、思うような観測ができないという問題が起こり得ると思います。その辺のことも踏まえていただけることは、これはもしくは事務局の問題かと思いますが、大事なことなのかと思っていますので、その点は事務局からでも、榎本先生からでも、御見解を賜りたいと思います。
 もう1点、若手の研究が進んでいます。よかったことと思います。それから文系へのアプローチ、これも結構だと思います。それでなんですが、研究者はいずれきちんとしたポジションについて生活していくということが必要になってまいります。民間企業なり何なりに入って北極のことを続ける、それでもいいのですが、ここで私が気になるのは、各大学などで今北極の研究をやっている方々が、例えば特任みたいな形で任期が切られているだとか、要はプロジェクトがずっとArCS2、3、4と続いていくのはいいのですけれども、5年ごととかに切られているとなると、生活設計だとかいろいろな問題が出てくると思います。そういった方面というのは大丈夫なのだろうか。
 つまり、せっかく北極のことを行う若手とかを育てていったはいいものの、海外で活躍されても構わないんだけれども、日本でちゃんとした受皿がないとか不安があるとなっては、本当に若手がアプライしてくれるんだろうかという、この点を心配に思っていて、この点、事務局、あるいは榎本先生あたりからお話を伺えればと思っております。
【榎本PD】  3つのポイント、ありがとうございました。まず、最初の研究者、あるいは研究プロジェクトとしてできるところに限界がありますので、解決策まではいかないかもしれないですけれども、取組や現状を御紹介します。まず、最初のロシアに関するような観測データの取得に関するところですけれども、先ほどWMOはという話をしました。WMOは現在もロシアと観測を維持してもらっています。これは条約で活動が守られているところがあります。
 北極評議会はモニタリングなどを行っていますけれども、そこは条約ではなくて、それぞれの国のボランティア的な活動、コンソーシアムなので、停滞していたんですけれども、この2月から、去年から呼びかけが始まりまして、活動再開に向けて今、動きつつある、一応ここから呼びかけられまして、動きつつあるといったところで、今後を見守っているところです。
 あと、研究者個人では一緒に論文を書いたり、あと古いデータを使って作業したりということはできていますが、新しい観測というのはできない状況なので、これを改良するには個人では無理で、あるいはプロジェクトから働きかけることも難しく、国としての方針ですとか、それも一国という単位では難しいということで、いろいろなところで議論されているところでは、例えばIPCCはUNの下にありますので、そういったところからはきちんと号令をロシアにもかけられているのだろうかということで、今週の月曜日にIPCCの理事長と会う機会があったんですけれども、ロシアにも呼びかけをしている、執筆者にも入ってきている、そういったところはお聞きすることができました。
 あとさらに日本の学術会議、あるいはそれをまた国際的にまとめる国際学術会議から、こういった科学への自由というものを、科学の必要性というものを、ロシアあるいはその周りにある国に呼びかけて、交流を維持してもらえないかといったところのアプローチも、いろいろと行われているところです。まだ、これは私たちでは結論を出せないのですけれども、働きかけだけはやっている。
 あと、「みらい」の運航予算とか運航計画ですけれども、これは後で「みらいⅡ」があると思いますけれども、しっかりした科学プランを立てるというところまでは研究者が責任を持ってできるような、そういった議論を進めたいと思っています。
 最後の若手、いずれどういったポジションにつけるだろうかといったところでは、このプロジェクトから働きかけられる育成といったところまではできていますが、その後どういった職に就けるかというところはなかなか難しいところがありまして、米国などの資料を見ますと、ドクターを取った4%だけはその分野といったところですけれども、ただ受皿として、その分野だけにとどまらず広い分野につながって活動しているといったようなところが米国などの例では見えていますので、北極で育った方が北極にそのまま残る、それはもちろん期待するところですけれども、その経験ですとか知識、あるいは人脈をいろいろなところで生かしてもらえるといったところにも、若手育成しながらそういったところの対話も進めていますし、あとこちらも呼びかけに応じて来てくださった方、学生たち、若手たちは、北極の専門にはならないけれども、何かのきっかけがあってこの北極のプロジェクトの若手育成に応募したというところがありまして、そういったところにインタラクション、まだこちらも探査しながらやっているところです。なかなか将来の活動先といったところは保障できないのですけれども、見守っている、対話している、そういったところです。以上です。
【池島委員長】 続きまして、中田委員、よろしくお願いいたします。
【中田委員】  どうもありがとうございます。私からも3点、コメントあるいは質問をさせてください。1つ目は、こういう調査・研究も含めて、これからますます人の活動というのは北極域で増えると思います。ですから、資源や環境をどうマネージしていくかということは非常に重要なターゲットになってくると思っています。そういうことを今後の課題として捉えて、多くの若手の研究者を育てていただけるといいなと思っています。先ほど研究分野、どういうふうに若い研究者が加入していくかということですけれども、私たちの機関は決して北極域の研究機関ではありませんけれども、外国経験、それから論文成果とかを上げてきた人たちをとっております。そういうことをアピールしていただければと思っております。
 それからあと、今回、ドローンを使った様々な技術の成果を紹介いただきましたけれども、今、文科省系でもかなり様々なデータを取る技術、観測技術というのを新たに開発するというようなプロジェクトが走っています。そういうものをどう実装する、観測で実装する、そういうことを含めて次のプロジェクトでは考えていただければと思っております。
 それから3点目ですけれども、観測の空白域という言葉をよく使われます。それはそのとおりなのですけれども、最も環境変化の大きい水域だ、大きい場所だということというのが非常に重要で、空白域じゃなくてもどんどん変化していくところだから、だからこそ重要なのだというアピールもしっかりしていただければと思いました。以上です。
【榎本PD】  御意見ありがとうございました。参考にさせていただきます。最後の空白域に関しましては、北極海、縁辺部は氷が減っている、真ん中は氷が残っているのですけれども、この下の環境が、水産資源というか海洋生態系がどうなっているかというところは、北極海中央部の漁業規制といったところでしっかりモニターするようにといったところが出ています。中央部の下を調べないといけないといったところが国際的な課題となっているということです。あと、北極海を取り囲む周りの陸域部も、海とインタラクションしながらいろいろなことが起きているといったところで、そういったところも見定めながら空白域、空白場所、空白時期、あるいは要素というところに取り組んでいくということは、今後のプロジェクトにも必要かと思います。
【池島委員長】  続きまして、窪川委員、よろしくお願いします。
【窪川委員】  ありがとうございます。私から、小さな質問ですけれども3点あります。まず皆様からの御質問にもコメントにもあった若手の人材育成です。重点の一つですので、これがきちんとなされているかどうかというのは非常に重要なことだと思います。それで、ただこのプロジェクトの内部だけ、あるいはアカデミアだけですとなかなか範囲を広げる、あるいは国際的な経験を積ませるとかいろいろなバックアップというのはなかなか大変だろうと想像します。人材育成にも長期間かかるということを先ほど榎本先生もおっしゃっていましたけれども、そうしますと民間の力ですとか、あるいはもうInternationalのより大きな力を借りるということが、協働するということが大変重要になってくると思います。そういったことに関して実際に今期になされたのか、あるいはそういうことを考えていらっしゃるのかということも、お伺いしたいと思います。2番目は、これも重点の一つの情報発信ですけれども、様々なデータ、調査の結果が非常にたくさん出ていて、これから次の研究への弾みもつけられるというようにお伺いしました。データ公開というのが情報発信としても重要になってくると思います。国際共同研究、あるいは国際的に発信するというところで、制約もかかってくると思いますが、どのぐらい、どういうアプローチをなされたかを簡単に教えていただければと思います。
 3番目ですけれども、今回、そういうお話がなかったので。簡単に予算がどこに一番使われているのか、教えていただければと思います。以上です。
【榎本PD】  御質問ありがとうございました。まず、最初の若手の育成の話ですけれども、北極の若手育成の応募をしまして、研究者、あるいは大学院生、大学の学生だけではなくて、民間からも応募可能としました。この機会を使って北極関係の会合などに行っていただいたケースがあります。そういったところでは産官学、あるいはいろいろなステークホルダーが集まって行なわれる国際会議が北極関係は結構たくさんありますので、そういった現場を見ていただくということで参加していただきました。
 情報発信のほうは、このプロジェクトの中に基盤として北極域データアーカイブというものを持っていまして、これはGRENEのプロジェクトからずっと継承して発展してきているのですけれども、観測データを一貫してそれに集めて、外部に公開するといったことを行っています。そこには、もともと自然科学情報だけだったのですけれども、人文社会科学、あるいは途中でありました北極科学大臣会合の各国の提案書みたいな、そういった情報もそこに収めまして、紹介できるようにしてきています。あと、観測者からのデータ提供、もらうといったところは、まずプロジェクトの中でできることです。
 予算としましては、コロナというところで、最初の頃予定していました現地への観測者の派遣、これは旅費が大変かかるのですけれども、それが最初の頃は使えなくなりました。ということで、プロジェクトを時期ごとに、機動的に予算編成を変えながら行ってきたところがあります。観測機材の調達、あと人の派遣も最初はできなかったのですけれども、後半にそれを盛り返すために、この2年間はどんどん人を送り込みました。一方、ロシアの影響もあって渡航費が高くなって、そこに予想外に費用がかかるといったところが生じています。
【窪川委員】  ありがとうございました。人の流れというのが一番重要ということで、今度「みらいⅡ」もできれば、よりそういったことへの費用もかかると思います。人材育成の民間との交流ということも今後、資源開発ですとか環境というところでも重要になってくると思いますので、期待しております。
【池島委員長】  続きまして、坂野井委員、よろしくお願いいたします。
【坂野井委員】  ありがとうございました。御説明よく分かりました。私も本当にもうこれは、大学さんとかのほうに言うのか、助成金をどう変えるべきなのかよく分からないのですが、若手の方の雇用にきちんとつなげる人材育成というところを、きちんと次期プロジェクトでは何か打ち出せないかというところがあります。アカデミアだけではなくて、ここで育った人たちがきちんとこういうところで雇用を得て活躍していますということが分からないと、言い方が悪いですけれども、いろいろなプロジェクトを見ていると、どうも使い捨てみたいな感じを若手の人が受けてしまうので、そういうところはなくしていただきたいというのが一つです。
 それから、「みらいⅡ」に関しまして、まだ計画段階にはあると思うのですが、「みらい」から大きくこういうところがよくなるというようなところがありましたら、教えていただけるとありがたいと思います。また「みらいⅡ」、多分次回の目玉になりそうな気がしますので、そういったところで計画の中にどう組み入れられていくのかとか、運航がきちんと確保されるのかといったところは、確かめていただきたいと思います。あと、もちろん北極の研究推進プロジェクトで北極なのですけれども、最近南極もまたどんどん知見が増えていますので、そういった両極域を合わせてどうなのかというようなところもあるといいのかと思いました。以上です。
【榎本PD】  最初の大学、若手育成からつながっているところは、プロジェクトの中では目の前にいる間はしっかり見ているのですけれども、後を追いかけて雇用につなぐところが、プロジェクト中ではなかなか難しいところがありますが、機会あるごとに、育てるというところは頑張っていきたいと思っています。
 あと、「みらいⅡ」に関しては、船そのものは、私は、ArCSⅡではあまり関わっていないので触れられないのですけれども、そこできっと使えるだろうといったところでは、汎用ドローンを使った新観測機能といったものがあります。そういった技術は「みらいⅡ」にも付加されるものだと思います。
 あと、国際プロジェクトへの参加というのが、ArCSⅡの中で例えばSASという、Synoptic Arctic Surveyということで、多くの国の船が入って同時期に観測するといったところで活動しています。これがより強くなって将来のSynoptic Arctic Survey、次の同時期多面観測に入っていけるかと思います。あと両極といったところでは、このドローンの開発などは北極に閉じず両極、南極でもテストみたいなことができていますので、そういった極地で使える技術は北極・南極を問わず開発して進めていくといったところは心がけているところです。以上です。
【池島委員長】  瀧澤委員、よろしくお願いします。
【瀧澤委員】  どうもありがとうございます。意見というかほとんど感想なのですけれども、実は11月18日に開催された国際ワークショップに伺いまして、各国の研究者や、あるいは先住民代表のような、いろいろなステークホルダーの方々が次の「みらいⅡ」の運航に非常に期待をしているということを肌で感じることができました。
 研究者のためのワークショップ、意見交換の場ですので、生の声を聞くことができ、非常に生々しいというか、それだけにこの船に対する期待というのをすごく感じたわけです。
ふだん国民の1人としてArCSⅡのようなプロジェクトは、どうも遠いところでやられている、地理的にももちろん遠いところでやられているのでということもあるかもしれないのですけれども、世界からの日本に対する熱い視線とか、そういったものがなかなか国民に伝わりにくいんじゃないかというのはつねづね感じていましたので、このようなワークショップの議論には私自身、とても鮮烈な印象を持ちました。
 もう一つ、その11月のワークショップに出席したときに新しい船が投入されることによって、日本の北極研究の地位というかプレゼンスが、大分変わるのではないかと感じたのです。そうすると、これまで参加という形だったと思うのですけれども、砕氷レベルの上がった船が入っていくことによって、むしろリーダーの一国としてかなり主導的な立場が期待されるのではないかと思います。したがって、ますます次のプロジェクトには期待したいと思いますし、これまで培ってきた皆さんの知見とか人的ネットワークに加えて、それにふさわしい新しい、例えば全然違う分野ですけれども、掘削の分野でのIODPがあって、国際連携の中でプロポーザルを決めていくみたいな、そんな仕組みになっていくのかなというようなイメージを持ちました。以上です。
【榎本PD】  御質問とコメント、あと感想、ありがとうございました。若手育成とか国際的なリーダー養成といったところに関してですが、11月18日の様子を御覧になっていただき、ありがとうございました。これは「みらい」に、世界から応募してもらって乗船するという機会をつくりました。そのときに各国から乗船された方が、報告としてこの18日のときにもしゃべってくださっていたのですけれども、そういった相互乗り入れというか、日本の研究者が海外に、海外の研究者を日本に呼ぶ、「みらいⅡ」のほうでは国際的なプラットフォームという言葉が使われていまして、これはそういった人の交流というところで、協働の場所で一緒に仕事をする場所になり得るところというのが期待されています。
 乗船期間は数週間から数か月ですけれども、研究者は下船後に、これは研究者の研究生命というか、何十年、数十年にわたってコネクションがそこから始まるといったところがありまして、その中で船の上での協働活動ではお互いの様子をよく見られますので、そういったところから海外に逆に招へいされる、あるいはリーダーとしての起用を身に付ける、あるいは見いだされて国際的に活動できる場としての船の使い方ということがあるかと思います。
 Synoptic Arctic Survey、このArCSⅡの期間中、日本からJAMSTECが頑張って「みらい」を毎回、出航させるということをやったのですけれども、ここでの活躍があって、それが「みらいⅡ」では氷の中にも入っていけるといったところで、いろいろデザインするところから、これから始まるのですけれども、そういったところにかかれると思います。JAMSTECでは新しく始まる次のSynoptic Arctic Surveyの事務局を引き受けたとも聞いておりますので、主導的な立場として、基幹として、あるいは乗船した若手がリーダーとなっていくといったところにも今後、期待したいと考えているところです。以上です。
【瀧澤委員】  ありがとうございます。すみませんもう1点、国民から見た距離の遠さというか、感覚的な距離の遠さを感じたのですけれども。
【榎本PD】  最近、いろいろメディアも興味を持ってくださいまして、科学番組ですとか北極の自然の紹介ですとか、あと研究者の活動なども、国際的に先端的な研究活動をしているといったところを取り上げていただくようになりました。プロジェクトとしては戦略的情報発信ということで、普通の情報発信はどこかに置いておくので持っていってくださいですけれども、積極的に拡大してくれるところに届けるというところで戦略的という言葉を使いました。これはこれからももっと力を入れていくものではないかと思うところです。
【池島委員長】  委員の先生方、御質問等ありがとうございました。ほかに先生方、追加等、特にございませんでしょうか。
 もしなければ私から質問、コメントを一つ、させていただきたいと思います。榎本先生、ありがとうございました。非常によく分かりました。私から一つ、社会実装の点につきまして詳細等、今の現時点でお分かりの範囲で教えていただければと思っています。一つ、社会実装を行うというのが大きなArCSⅡのテーマだったと承知しております。その中で、なかなかこれは難しい、すぐには成果が出るものでもないし、4年目が終わりつつあってまだ5年目があるということと、それから今まで先生方の御質問の中で触れられた点もあるかと思います。今現在の段階での社会実装というものがどの程度進んできているか、そして残りの1年でどのぐらいの成果というか、見通しがありそうかということを、教えていただければと思います。
【榎本PD】  社会実装については、私たちもいろいろと考えながら、急に進むところもありますし、なかなか留まってしまうといったところもありながら進めてきたところですけれども、まず観測技術といったところでは先ほどの新しいドローンのデザインから作成、利用といったところがあり、これが新しい技術として見通しがついてきました。国際的な提言の場所にもそれを持っていって見せるといったところもありますし、将来、気象現業にもこれは使われているのではないかと。
 あと、気象予測の解析技術では、先ほどの寒冷渦というものが日本の気象予測の現場に使える、そういったところも社会につながるものとなります。あと、そういった技術や物ではないのですけれども、法政策課題などで行ってきたいろいろな教育プログラム、こういったところも、これを聞いた人たち、あるいは社会が強くなるといったところでは社会実装につながる、いろいろなブリーフィングのペーパーなども出していますし、セミナーなども行ってきました。あと、民間からのニーズを調査するということは、この最後のこれからの期間ですけれども、民間とのやり取りで情報を収集するというところは、この中でまとめて今後の活動に引渡したいといったところもあります。そういった試みがありました。
【池島委員長】  ありがとうございました。なかなか4~5年の間で社会実装そのものが進むとは思っていなのですけれども、4年前にArCSⅡを始めた時点、またそれ以前から日本における北極観測、そして北極という地域に対する社会の認識、認知度とか、そのようなものを比べてこの4年で、またはこのArCSⅡが終わった時点でどれくらい広がっていてほしいとか、どれぐらい社会との関わりを持って今、ドローン技術や観測予測技術というものが増えることによって、教育プログラム等を通じた国民全体の北極への認知度、北極研究の重要性の向上というのでしょうか、そういうものが4~5年前よりも上がっているということが分かるような形というものを具体的に考えておられると、研究の成果も大事なんですけれども研究の意義というのも出てくるのかと考えた次第です。この点で、何かございましたらよろしくお願いします。
【榎本PD】  プロジェクトが始まってすぐのときに、日本の中ですけれども、1,000人無作為で選びまして、北極に関するアンケートを行いまして、興味、知識、関心といったものを調査しました。分野別に選ぶとか、あるいはどの知識がよく知られているか、皆さんが関わっているか、というところもアンケートをしたのですけれども、これを最終年度の間にもう1回、同じようなアンケートを行い、どう変わったかといったところも見ていきたいと思っています。
 特に年代別にそれを見て分かったのは、10代は知識欲がありまして、あるいはいろいろなネットワークをつなぐとかできていろいろと吸収できる。あと高年層、シニアはもうかなり関心が高いです。じっくり情報を見ているというところがあります。あいだの子育て世代の30、40のところがすっと減ってしまうというところがありまして、あとさらに高校生という10代に入る前の世代からつないでシームレスにどうやって知識の山を大きくしていくかと、集団の、といったところは見てきたところです。
 あと、ArCSⅡの前のArCSの中で開発したボードゲームというものがありまして、これは科学だけではなくていろいろなステークホルダーにというところも理解しながら、先住民がいます、外交官がいます、経済開発をやっている方、研究者、海洋行政、そういったものがありますというところをやりながら、いろいろなイベントで子どもたちから大人までそれを見ていただいて、参加していただいてというところで、実施してきました。かなり好評で、これは日本でつくったものですけれども、外国人も翻訳されて海外からも引きがあって、提供するといったことを行っています。
 こういったもので若い世代にどういったところを押せばアピールできるのかというところもいろいろ試行錯誤をやってきましたので、さらに今後の活動の中でもそれを生かしてもらえればと期待しているところです。以上です。
【池島委員長】  そのほかに先生方、御質問やコメントよろしいでしょうか。
 窪川委員、よろしくお願いします。
【窪川委員】  今の委員長のコメントと御質問を拝聴していて、一つ加えて質問させていただきたいのですけれども、北極といいますと一番の人々の関心事は環境だと思うのです。生物ということもあるかもしれませんけれども、環境に関して北極が報道されることも多いです。そういった観点での発信は大変重要だと、もちろんこのプロジェクト自体が北極の急激な環境変化に対して研究していくということが大きな柱ですけれども、そういう発信に関してはどういうことをなされていて、どういうふうにやっていきたいとお考えかをお伺いしたいと思います。
【榎本PD】  このArCSプロジェクトの中では戦略的情報発信というところで、ステークホルダーへ向けて政策決定者、あと企業、そういったところから始まって家族ですとか学生ですとか、もっと小さな小学生といったところまでへ発信を行ってきました。いろいろなイベントの開催、あるいはセミナーの開催、定期的な一般講演会といったところもありまして、だんだん参加している方々の幅が広くなってきました。
 以前は結構シニアな、年齢層が高かったのですけれども、最近の中では年齢層が若くなったりしまして、あと現地の方を呼ぶ、日本の研究者が日本でやったことを話すだけではなくて、北極圏に住んでいる先住民ですとか実際に生活している方を日本に呼んで話を聞いてもらうというイベントをやったところ、大変反応がよくて、あるいは先住民の方たちも自分たちの話がどう受け取られるかということが分かったといったところで、新しいコミュニケーションスタイルと、あと新しい情報発信というか、よく機能するスタイルというのが分かってきたところがあります。現地の生の声を日本に伝えるといったところが大変インパクトがありました。
【窪川委員】  ありがとうございます。研究はいろいろありますけれども、一つには環境問題に関して貢献しているということを大きく出されるとより認知度が上がるのかという印象を持ちました。ありがとうございます。
【池島委員長】そのほかに、さらにコメントや御意見等、ございますでしょうか。
ないようでしたら、榎本先生の御説明に対しましての質疑応答を終了とさせていただきます。榎本先生、ありがとうございました。
【榎本PD】  お時間とっていただき、ありがとうございました。
【池島委員長】 続きまして、3の(2)次期北極域研究プロジェクトの検討について、事務局より御説明をお願いいたします。
【山口極域科学企画官】  海洋地球課の山口と申します。資料4を用いまして、次期北極域研究プロジェクトの検討について、またその方向性等について、御説明させていただきます。先ほどの議題の榎本先生からの御報告、及び委員の方々とのやり取りの中で、次期プロジェクト等への御意見もいただいたところでございますが、若干重なるところもあるかと思いますが説明させていただきますので、その後で御意見いただければと思っております。
 まず、1ポツでございますが、北極域研究の重要性というところにつきましては、北極域は気候変動の影響が最も顕著に表れている地域であり、地球全体の環境や生態系に大きく影響しているようなこともありますので、その重要性はこれまでと変わらず重要なところであるという認識でございます。
 2ポツでございますが、これは令和2年度に開始したArCSⅡ以降に起こった主な出来事や成果などを記載していますが、先ほどから名前が出ております北極域研究船「みらいⅡ」が、令和3年度から建造に取りかかっておりまして、令和8年度の完成を目指して、現在建造中でございます。また、令和3年5月にはアイスランドと共催で、アジアで初めてとなる第3回北極科学大臣会合、ASM3を東京で開催し、北極における観測や研究、若手人材の育成など、国際協力のために必要な行動を具体化した共同声明の取りまとめを行ったところでございます。
 また、昨年5月に開催されましたG7仙台科学技術大臣会合におきましては、北極域研究船などの国際的な観測プラットフォームを活用して、観測を強化していくことが取りまとめられますなど、国内外において北極域研究に対する高い関心が示されているところでございます。
 また、榎本先生からの御説明にもございましたように、ArCSⅡでは、北極域の環境変化の実態や海洋メカニズムなどにつきましてある程度解明することができたと思いますが、その一方で海氷が厚い海域など、いまだ観測データの空白域が存在し、気候予測を制約するなどの課題が残っていると考えているところでございます。そのため、一番下のところでございますが、ArCSⅡの終了後も「みらいⅡ」などを活用した北極域における高精度の観測を実施するなど、北極域研究の継続した推進が必要であると考えているところでございます。次のページをお願いいたします。
 3.今後の課題として3点挙げてございますが、まず1つ目、研究・観測として、観測の空白域、観測データが乏しい領域などが存在し、それが気候変動予測を制約している。また、森林火災の全体像やその影響、温室効果ガスの収支などが未解明などの課題が残っていると考えているところでございます。
 2番目として、観測や研究で得られた知見を活用した防災や減災、また地域社会の環境変動への適応等の社会課題の解決に資する研究の実施、及びこれらを実施するための分野を横断した観測や研究の一体的な実施が必要であると考えているところでございます。
 3番目として、これらの観測や研究を継続的に実施していくためには、人的基盤の構築が必要でありますので、人材の裾野の拡大や国際共同研究などによる国際連携機能の強化が必要であると考えているところでございます。
 次、4ページ目ですが、次の北極域研究プロジェクトの方向性の案ということで書かせていただいていますが、前ページで御説明いたしました今後の課題を踏まえ、これらを解消するための取組を実施するためには、次の1から3の方向性で、次の北極域研究プロジェクトを実施することが考えられるのではないかということで、検討しているところでございます。
 まず1つ目の方向性ですが、「みらいⅡ」などを活用した北極海海氷域を中心とした観測空白域の観測・研究です。この方向性の中で実施する取組の例といたしましては、「みらいⅡ」等を活用した通年での北極海の環境変化を観測する総合的な研究観測や、ニーオルスン基地などの国際連携拠点や、新たな観測手法を活用した観測データ取得の強化などが考えられるのではと考えております。
 2つ目の方向性でございますが、「みらいⅡ」の国際研究プラットフォームとしての活用や、国際共同研究等による国際連携の推進です。実施する取組例といたしましては、「みらいⅡ」へ国内外から若手の研究者や学部学生、技術者、若手の船員など、多様な人々に乗船いただく機会を確保して、その中で国際共同研究の実施や北極での経験を積んでもらうことによって、北極域研究にかかる人材の裾野の拡大を図ること。また、ニーオルスン基地等の国際連携拠点を活用した共同研究や、研究者派遣の拡大等が考えられるのではと考えております。
 3つ目の方向性でございますが、分野横断的な観測と研究による社会課題の解決に貢献する研究開発の推進です。ArCSⅡでは大気、海洋、雪氷、陸域といったような各分野で、研究、観測を実施していたところでございますが、北極域の環境変動の、日本を含む全球への影響の把握や将来予測の精度の向上といった高度な情報を創出し、異常気象や災害、住環境や健康への影響といった社会課題の解決に向けては、分野を横断した観測と研究、シミュレーション研究といった、関係する分野を融合し、観測と研究を一体的に推進する研究開発が考えられるのではと考えております。
 次のページを御覧いただけますでしょうか。このページは、今説明させていただきました方向性を一枚の図としたイメージ図となっております。左の青い部分がArCSⅡでの実施体制となっております。先ほど方向性の3つ目のポツで御説明させていただきましたように、ArCSⅡでは大気、海洋、雪氷、陸域、遠隔影響等、11の分野で観測、研究を実施しているところでございます。真ん中に書いてある灰色の部分が、これまでArCSⅡを実施してきた中で課題と考えられる主なものとして、観測空白域の存在、国際連携の強化、分野横断的な観測と研究による社会課題の解決に資する研究開発の実施ということを記載しております。
 その右の部分のオレンジ色の右向きの矢印のところですが、これがこれらの課題を解決するため、次のプロジェクトとして新たに取り組む手法として考えられるものとして記載しております。観測の空白域の解消には、「みらいⅡ」などを活用した観測の実施、国際連携の強化には、国際研究プラットフォームなどを活用した国際連携の推進、社会課題の解決に資する研究には、分野横断による社会課題解決型の研究開発の実施ということを考えております。
 右半分が次期プロジェクトのイメージ図となっております。一番下から御覧いただきたいのですが、一番下に研究基盤として観測を支える基盤といたしまして、「みらいⅡ」等の観測船、ニーオルスン基地等の国際連携拠点、地球観測衛星データ、北極域データアーカイブシステムなどを記載しております。研究基盤は、ArCSⅡまでのものを拡大、強化していきたいと考えるとともに、我が国では北極地域のみならず南極地域においても長期間の観測や研究の実績がございますので、南極で得られた観測データ等も研究基盤として活用し、研究を効果的、効率的に進めるようなことも考えられるのではないかと考えているところでございます。
 これらの研究基盤を活用して、上の箱のところの記載でございますが、社会課題の解決への貢献を見据えて、大気、海洋、雪氷、人文社会科学等といった分野を横断した研究課題、研究テーマ、イメージとしてここでは気候変動、災害課題、ガバナンス課題、地域社会課題を記載しておりますが、このような研究テーマを設定した上で、その解決に資するための観測と研究を一体的に推進していくということが考えられ、これを実施することによって、一番上に記載しておりますが、北極域の観測データの充実、気候変動予測の高度化、精緻化、観測データや科学的知見の提供による国際貢献、社会課題の解決に資する情報の創出といった成果が期待できると考えているところでございます。
 次ページ以降は、北極に関する主要な政策や、政策文書における関連の記載部分の資料となっておりますので、詳細は御説明いたしませんが、御参考までに御覧いただければと思っております。
 以上、次期北極域研究プロジェクトの検討について、その方向性の案やイメージについて御説明させていただきました。委員の皆様の忌憚のない御意見、お考えをいただいた上で進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。以上です。
【池島委員長】  どうもありがとうございました。
 それでは、意見交換の時間といたします。なお、事務局からの説明のとおり、本日の委員会では結論等を出すということは必要なくて、委員の皆様からいただいた御意見をもって検討し、海洋開発分科会での御意見も踏まえ、4月以降の本委員会で事業の詳細について御審議いただくことを予定しております。
 御意見のある方は挙手ボタンでお知らせください。よろしくお願いいたします。
 それでは窪川委員、よろしくお願いします。
【窪川委員】  「みらいⅡ」の活用はすごく期待されるのですけれども、試験航海を経て令和8年にもう観測に使えるという、そういう日程も含め、そこまで細かくなくても、運航予定を含めて年度ごとに計画するということをお考えになっていらっしゃるということでよろしいでしょうか。
【山口極域科学企画官】  お答えいたします。「みらいⅡ」は令和8年度の完成予定ということで建造中でございます。実際の次の後継プロジェクトの研究のところにどのように投入できることになるのか、就航前の準備段階をどうしていくのか、就航後、どのような研究、観測をしていくのかというのも、全体を見ながら研究計画をつくっていくものと考えております。
【池島委員長】  中田委員、よろしくお願いします。
【中田委員】  北極域のデータアーカイブシステムというものが一番最後に書かれていますけれども、当然これはオープンデータになっていくのではないかと思っております。データを二次利用、三次利用できるように、そしてそういうデータを使って新たな研究もできるようにということで、ぜひデータ連携とかがやりやすいような様式、あるいはツールの整備等を考えていただければと思いました。以上です。
【山口極域科学企画官】  ありがとうございます。使いやすいデータ、公開する際に使いやすいようにしていきたいと思っております。
【池島委員長】  坂野井委員、よろしくお願いします。
【坂野井委員】  坂野井です。方向性としてはもちろん、先ほど私も言いましたが、「みらいⅡ」が割と目玉になって、それを活用した空白域の観測、研究という方向性にはなるかとは思うのですが、北極研究の重要性にも書かれているように、要するに気候変動を継続的に観測する重要性というのはきちんと書いておくほうがいいのかと思っています。空白データがあるから取らなきゃいけないではなくて、空白データがないところも多分人類が初めて経験する気候変動ですので、そのデータをきちんと取り続けて後世に伝えなければいけない、そういったところを書いていただけるといいのかと思いました。以上です。
【山口極域科学企画官】  ありがとうございます。御指摘を踏まえながら、検討していきたいと思います。
【池島委員長】三枝委員、お願いします。
【三枝委員】  お話を拝見して、日本が研究として入りやすいロシアの地上での観測拠点、および地域社会への普及というのが今、計画できないので、科学的にどこが新しいブレークスルーになるかというのを説明するのに非常に苦労されていると想像しております。
 そんな中でも、「みらい」ですとか「みらいⅡ」ですとか、観測とモデルの融合ですとか衛星データの新たな利活用で何とかすばらしい新規性を出そうとすると、今、坂野井さんがおっしゃったように、幾つかの視点でしっかりとした今の気候変動の、年々上がる地上気温の影響を長期連続的にとっていく観測システムをこれで確立できましたとか、あるいは所々に書いていただいていますけれども、森林火災の影響の検出ですとか温室効果ガスの収支のまだ定量化がうまくいっていないというところなどの辺りで、最適な観測データをこのように収集して、これこれのモデルで地上における温室効果ガスや、森林火災となるとブラックカーボンとかSLCFとかいろいろ出てくると思うので、そういうものの収支を今までになくオペレーショナルに監視できるようになりますとか、ちょうどIPCCのAR7のサイクルで、AR6のときからSLCFのエミッションインベントリーをちゃんとつくろうという話が始まって、AR7のサイクルでSLCFの排出排出インベントリーの方法論報告書なども編さんされると思うので、そこに成果を入れるような戦略を持つとか、なかなか厳しい中ですけれども、この次期プロジェクトをやることでここがまずは科学的に進むというのが幾つかあると思うので、少しそういうところを強調していただければと思いました。以上です。
【山口極域科学企画官】  貴重な御意見、ありがとうございました。ご意見を踏まえながら検討を進めていきたいと思います。
【池島委員長】  合田委員、よろしくお願いします。
【合田委員】  ArCSの榎本先生からの御報告に対して申し上げたことの繰り返しになるかもしれませんけれども、船を持つ以上はちゃんと稼働できるようにきちんと準備しておくということと、それからあと人間の補充ですよね、育成した後のことということで、今は15年、3期目のプロジェクトになるのですから、この辺しっかり形になっていただければありがたいと思っております。
 それで、船も一旦つくってしまえば恐らくこの種の観測船だから貨物船なんかと違って30年、40年使う、そういうような船になるのだろうと思いますので、船をつくったから北極にコミットしたのだということは分かりやすいんですけれども、ただ本当かという部分ですよね。しっかりお金もかけているので、データをしっかりとって、これが日本の世界に対する貢献なのだということを明示していただきたい。
 もともと、北極に対する日本での世間の関心というのは、要は中国だのロシアだのというものが、どちらかというとミリタリー的な意味において、のし上がっていくということに対して、いやいや、国際社会におけるプレゼンスとして、日本はそういうことではなくて、本当の意味での国際的な貢献も北極でやってきているということで存在感を見せているのだというのは、平和的なものであり国際協調的なものであり学術的なものなのだということをしっかりとやるのが、基盤にはこの「みらい」なり、あるいはまた北大が割と最近つくった「おしょろ丸」はそういうものなんで、これでしっかりやっていきますよと、そして若い人たちの基盤となるにようにしっかりと、できれば日本の北極研究を支えている人たちになっているような受皿をつくっているんですよみたいなことを活動にしていただければと思います。以上です。
【山口極域科学企画官】  ありがとうございました。日本の特徴でもあります科学的知見に基づいた国際貢献というようなものについてしっかり取り組んでいきたいと思いますし、「みらいⅡ」の運航経費につきましても、実際に管理するJAMSTEC等と相談しながら検討を進めていきたいと思います。
【池島委員長】 中田委員、よろしくお願いします。
【中田委員】  今日、先に御紹介いただいたArCSⅡの成果の中で、寒冷渦という話がありましたけれども、それに関係する偏西風の蛇行というのは、多分いろいろなことに、地球の環境にいろいろ影響してくるし、先ほどの坂野井さんの話もありましたけれども、これまで起こってこなかったことが起こる可能性があるということで、北極域で起こっていることだけではなくて、それが地球環境全体、あるいは日本に及ぼす影響というのをさらに意識しながら、新たな知見と成果の発信というのをしっかりやっていただければと思いました。以上です。
【山口極域科学企画官】  ありがとうございました。その辺も踏まえながら検討を進めていきたいと思います。
【池島委員長】 瀧澤委員、お願いします。
【瀧澤委員】  「みらいⅡ」の運航自体は次期のプロジェクトの後半のほうということですけれども、前半の部分でしっかり国際研究プラットフォームとして国際的な連携がこれまで以上に密に、しかも先導的に進むように、ぜひお願いしたいと思います。ちょうど11月18日に極地研とJAMSTECが研究の連携協定を組まれたということで、先ほど海はJAMSTEC、陸は極地研というようなイメージがありましたけれども、より陸と海を相互に連携させて、また国際連携も密にしてということで、発展していくと期待しています。
 また同じになってしまうのですけれども、それにつけても非常に研究が国際的にアクティブで、日本の研究者もものすごく貢献しているし、若手も活躍しているという、その姿をぜひ積極的に国民に広めていただきたいと思っています。以上です。
【山口極域科学企画官】  ありがとうございます。陸域、海域、連携しながら、国際研究プラットフォームとしてしっかり活用できるようなことを考えていきたいと思いますし、また、この北極域研究に取り組んでいる日本の研究の姿をしっかり世の中に発信していけるようにしていきたいと思います。
【池島委員長】 窪川委員、お願いします。
【窪川委員】 先ほど質問されたので、皆さんがおっしゃっていることとほぼ同じなのですけれども、これから北極域の問題は、今まで以上に環境問題もさることながら国際的に、資源問題ですとか航路問題とかが世界の経済に、政治に関わる重要なところになってきます。この次期プロジェクトの中のテーマに気候変動、災害ガバナンス、地域社会とありますけれども、日本としてはこの気候変動、災害課題という2つを大きく取り上げて、もちろん国際経済、政治に関すること、あるいは社会、文化と関係するんですけれども、どれを重点でやっていくかということを鮮明に出して、その上で関わっていく道筋をつけられるプロジェクトになっていると思いました。以上です。
【山口極域科学企画官】  ありがとうございます。研究課題の設定などにつきましても、検討していきたいと思います。
【池島委員長】  ほかに御意見、コメント、御質問、ございますでしょうか。
 もしなければ、私の方から一言、大きめの質問というかプロジェクトに関するコメントを申し上げさせていただきたいと思います。一つは先生方から出ていますように、このプロジェクトがGRENEから数えると4つ目ぐらいになるのですかね、それでArCSⅢのような形に、事実上なっていくものだと考えております。それだけにある種、継続性というものが事実上生じますし、当然データをとったりする上での継続性は大事だと考えております。
 ただ、同時にマンネリ化してはいけませんし、新規的な新しいものをArCSⅢなり、この4つ目のプロジェクトとして新規性、継続性と新規性の双方(新しいもの、何か新しい視点とか新しい切り口)、そしてそういう新規なものをあえて導入しない限り緊張感というか、マンネリを打破できないのではないかと思っています。具体的に何かと言われても困りまして、先生方といろいろとお話の中で、我々の方でも考え出せればと思っています。
 ただ、そこを踏まえてこのプロジェクトのところにうまく入るようにさせて、プロジェクトをやっていただくという考えが必要かと思っています。観測船が入ってくるとかいろいろな個別の論点があると思うのすが、少し大きな、例えばArCSⅡにおいては一つのキーワード、先ほど私申し上げましたが、社会実装というのが大きく言われていまして、どうやって研究データや具体的な、研究した観測の成果を社会に還元して、生かせるかというところを、国民全体に見せるというところがあったと思います。
 それに相当するか、それに匹敵するような何か大きな4つ目の根源的なテーマに掲げるということが、こういう日本において北極というものの研究をやっていく上で、何か必要なのではないかと思っています。時期が時期だけにロシアとの関係ですとか、それからコロナ禍も我々経て、観測データその他を取るのは非常に大変だったということを経験した中で、それを踏まえた後でどうなっていくのかというのは、この大きなテーマに落とし込める何か方法があればと思って、コメントをさせていただきました。よろしくお願いします。
【山口極域科学企画官】  ありがとうございました。御指摘の新規性、大切な視点でございますので、検討を進めていきたいと思いますし、またそれを踏まえて先生方の御意見等をいただければと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【池島委員長】  ほかの委員の先生方、コメント、御質問等、よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 では最後に議題4、その他ですが、委員の皆様から特に何かございますか。よろしいですか。特になければ、では最後に事務局より連絡事項をお願いいたします。
【細野海洋地球課課長補佐】  ありがとうございました。本日いただいた御意見を踏まえまして、3月25日開催の海洋開発分科会において、事務局から次期北極域研究プロジェクトの方向性について発表する予定でございます。海洋開発分科会でいただいた御意見も含めて、改めて4月以降に開催予定の本委員会で、次期プロジェクトの方向性について事務局から御説明をさせていただきたいと思います。
 次回の委員会の開催日程については、改めて日程照会をさせていただきます。
 以上でございます。
【池島委員長】  ありがとうございます。
 それでは、これで本日の会議を終了いたします。お忙しい中、御審議いただき、皆様にはありがとうございました。今後とも引き続き、よろしくお願いします。
 
── 了 ──

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