第16回北極域研究推進プロジェクト推進委員会議事録

1.日時

令和6年6月5日(水曜日)15時00分~17時00分

2.議題

  1. オンライン開催

3.出席者

委員

池島委員長、窪川委員、合田委員、坂野井委員、中田委員

文部科学省

山之内海洋地球課長、山口極域科学企画官、岡田海洋地球課課長補佐

4.議事録

【池島委員長】 定刻となりましたので、ただいまより第16回「北極域研究推進プロジェクト」推進委員会を開催します。
 本日の委員会では、前回に引き続きまして、次期北極域研究プロジェクトの方向性(案)について委員から意見をいただき、本委員会としての意見を取りまとめたいと存じます。
 また、本委員会は、審査などの個別利害関係がある場合を除いて原則公開となっていますので、前回に引き続き今回も公開とします。
 まずは、事務局より、本日の出席者、配付資料の確認をお願いします。
【岡田海洋地球課課長補佐】 本日は、5名の委員に出席いただいており、委員会の定足数を満たしております。御欠席は、三枝委員、瀧澤委員でございます。
 続いて、本日の配付資料につきまして、お手元の議事次第のとおり、資料1から4、参考資料1から5となっております。資料に不備等がございましたら、事務局までお申しつけください。
 本日は、オンラインで委員会を開催しておりますので、御質問等ある際には、「手をあげる」機能を使用していただくとともに、最初にお名前を言っていただいてから御発言いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 また、音声のハウリング等の原因となりますので、御発言のときを除いて、必ずマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 なお、本日の傍聴登録は、22名となっております。以上でございます。
【池島委員長】 それでは、議事に入ります。議題1「次期北極域研究プロジェクトの方向性(案)について」です。
 前回の委員会後、3月25日に開催されました海洋開発分科会におきまして、事務局から次期北極域研究プロジェクトの方向性(案)について説明し、分科会からも御意見をいただきました。その御意見なども踏まえて更新された方向性(案)について、事務局より御説明をお願いします。
【山口極域科学企画官】 それでは、次期北極域研究プロジェクトの方向性(案)につきまして、前回の本委員会での御議論や、3月25日開催の海洋開発分科会での御議論などを御紹介しつつ、資料1から4を用いて御説明させていただきます。
 まず、資料1を御覧いただけますでしょうか。
 これは、前回、3月8日の本委員会で用いた資料でございます。前回会議の振り返りとなりますが、この次期北極域研究プロジェクトの検討の進め方でございます。1ページの左側にございますように、3月8日、第15回委員会で御議論いただきました。その結果を3月25日開催の第71回海洋開発分科会で報告し、御意見をいただいたところです。その結果を踏まえ、本日の委員会で方向性(案)の取りまとめを御議論いただくこととしております。
 その後の予定ですが、7月から8月に開催予定の海洋開発分科会で、プロジェクトの事前評価をしていただく予定としております。
 2ページを御覧いただけますでしょうか。これは、前回3月8日の会議でお示しして御議論いただいた方向性(案)の資料となっております。これに対して御意見をいただきました。3ページを御覧いただけますでしょうか、3月8日の本委員会でいただいた主な意見としてまとめております。
 観測・研究につきましては、継続的に観測する重要性の明示が必要、科学的に進捗が期待できる部分の明示が必要、また、国際貢献も重要であるという御意見をいただきました。
 研究基盤につきましては、人材育成について、若手のキャリアパスがイメージできるような人材育成を期待する、「みらいⅡ」の着実な運航とともに国際研究プラットフォームとしての国際連携をこれまで以上に密にする、社会に向けてさらなる情報発信を行うことが必要などの御意見をいただいたところです。
 次に、資料2を御覧いただけますでしょうか。
 これは、事務局で3月8日の本委員会で御議論いただいた結果を3月25日に開催された海洋開発分科会に御報告し、いただきました主な御意見をまとめたものとなっております。
 少し御紹介させていただきますと、まず、目標に関するところでは、ArCSⅡで明らかになった課題があり、それを解決するための観測の強化が必要といったストーリーにすると分かりやすいのではないかということや、2つ目のポツですが、社会課題解決型の研究ということであるが、対象を北極圏に特化した社会影響評価を行うとしたほうが、目標が明確になるのではないか。また、国際連携の中で観測を行い新たな知見を得られると思うが、「空白域の解消」が観測研究の第一の目的であるというのは、そこは少し違和感があるのではないか、というような御意見をいただきました。また、ArCSⅡでは、中央北極海漁業協定や北極海航路への貢献というものがあるので、次期プロジェクトでも、例えば水産庁や国交省の人たち、また現業の人たちに役立つ情報を提供することを明確な目標として入れておくべきではないか。 また、国際連携に関して言えば、北極域の研究は、北極圏国との人脈形成や連携を進めていかないと北極研究を前に進めていけないのではないかということや、ArCSⅡ自体、海外から高い評価を得ており、首脳会談等でも北極研究の重要性に言及されるなど、2国間協力や外交の場面でも非常に期待されているということを国内で理解してもらえるよう、しっかりと記載する必要があるのではないか。また、G7でも北極域研究は議論に上がっており、国際的にしっかり協力を行っていく必要があるのではないか、というような御議論をいただいたところでございます。
 次、資料3を御覧いただけますでしょうか。
 これは、本年の4月26日に、政府の総合海洋政策本部会合で決定されました海洋開発等重要戦略の資料です。海洋開発等重要戦略というのは、この中頃に赤字で書いてございますが、「海洋基本計画に掲げられている施策のうち、国益の観点から特に重要であって、府省横断で取り組むべき重要ミッション(海洋開発等重点施策)を実現するための戦略」とされております。
 6ページを御覧いただけますでしょうか。この重要ミッションとして、1)から6)までの6つが選定されております。この6つ目に、北極政策における国際連携の推進等が取り上げられております。「我が国の北極政策」を踏まえ、国際シンポジウム等の開催、北極域研究船「みらいⅡ」の国際研究プラットフォーム化に取り組むとされております。
 7ページを御覧いただけますでしょうか。重要ミッションごとに工程表が作成されておりますが、北極部分の工程表となっております。中ほどの緑のところで取組の方向性が書かれており、「みらいⅡ」を活用した北極域研究の加速、「みらいⅡ」の国際研究プラットフォームとしての活用等が記載されております。
 その下に関係者の役割という記載がございます。文部科学省としては、「北極域における研究開発の推進、『みらい』の運用及び『みらいⅡ』の建造・運用等の研究基盤の国際プラットフォーム化の推進」というものが記載されております。また、一番最後に、主な成果指標として、「みらいⅡ」の国際研究プラットフォーム化や、国際プラットフォームとして、国内外の若手の研究者等を乗船させるというようなことが記載されております。
 資料4を御覧いただけますでしょうか。これまで、資料1から3で御説明してきたことを踏まえまして、次期北極域研究プロジェクトの方向性(案)として作成したものがこの資料4となっております。
 1ポツでは、北極域研究の重要性ということを述べておりまして、北極域の観測や研究は、一時も休止することのできない極めて重要で喫緊の課題であるということを記載しております。
 2ポツは、北極に関する情勢として、これまでの取組等を記載しております。前回の本委員会での資料に加えて、先ほど御紹介させていただきました海洋開発重点戦略の話を3つ目のポツとして加えているところでございます。
 9ページを御覧いただけますでしょうか。北極域研究におけるこれまでの取組、成果、課題として記載しております。文部科学省では、2011年開始のGRENE事業以来、ArCSⅡまで、北極域を観測・研究するプロジェクトを継続的に実施してきたところです。これまでの成果として、北極域の環境変化の実態や海氷融解メカニズムの一定程度の解明などの成果を上げてきたというところですが、課題としては、観測の空白域や観測の乏しい領域(特に海氷域)が存在し、気象気候予測を大きく制約することや、地球規模課題への対処や国際貢献、人材育成の観点から、国際連携の強化が必要。また、日本への遠隔影響を含む災害の防止など、社会課題解決型の研究が必要。北極域研究に携わる研究者がいまだ少ないなどが課題として挙げられておりますので、「『みらい』や北極域研究船『みらいⅡ』を活用した北極域における高精度の観測・研究等を実施し、北極域研究の継続した推進が必要」と記載しているところでございます。
 次、10ページを御覧いただけますでしょうか。ここで4ポツ、次期北極域研究プロジェクトの方向性(案)と主な取組を記載しております。まずは、北極域の観測・研究を継続的に進めるとともに、さらに戦略的かつ強力に進めることが必要と述べた後で、ArCSⅡの成果やArCSⅡから見えてきた課題などを踏まえ、次期の研究プロジェクトで考えられる方向性と主な取組として、次の点を記載しております。
 まず、1つ目の方向性としまして、観測データの空白域・空白時期の解消に向けた観測の着実な継続・強化とし、主な取組としては、国際連携拠点などにおける継続的な観測データの取得、「みらいⅡ」などによる北極海観測空白域・空白時期の観測の実施、氷床融解、森林火災、永久凍土融解など、環境変動の解明等に資する多様な観測の実施などを記載しております。
 また、期待される成果として、「気候変動予測の高度化、未解明事象に関するデータの取得・発信による国内外への貢献」としております。
 2つ目といたしまして、社会課題の解決に資する研究の実施、情報創出としております。ここでの主な取組といたしましては、北極域の環境変動が中緯度地域などに及ぼす影響の研究、災害等の早期警戒につながる情報の創出、分野横断的な研究による社会課題の解決に資する情報創出、北極海の海氷分布予想など、利活用の対象が明快な研究などにも資する基礎的な観測・研究の結果の提供などを記載しております。
 期待される成果として、「北極域の気候変動などが日本に与える影響の解明など、我が国社会が裨益する課題の解決に資する情報の創出」と記載しております。
 11ページを御覧いただけますでしょうか。3つ目の方向性として、「みらいⅡ」の国際研究プラットフォームとしての活用や人材育成等による研究基盤の強化としております。主な取組として、「みらいⅡ」を国際研究プラットフォームとして、若手研究者、技術者、船員、学生など、多様な人材の乗船機会を確保し、共同研究などを実施する。また、首脳会談等を踏まえた戦略的な国際連携の促進。幅広い国際場裡で活躍できる多様な人材の育成等を記載しております。
 期待される成果としては、「我が国が強みを有する科学力に基づいた国内外社会への貢献、我が国のプレゼンスの向上、首脳会談等で言及される政府間の連携に対する貢献」などと記載しております。
 最後に、これらの方向性に基づき、「『みらいⅡ』を国際研究プラットフォームとした活用なども含め、プロジェクトの具体的内容の検討を進め、ArCSⅡから途切れることなく次期北極域研究プロジェクトを着実に継続し、更に取組を加速することが不可欠」であると記載しているところでございます。
 以上、次期北極域研究プロジェクトの方向性(案)について御説明させていただきました。皆様方の忌憚のない御意見、お考えをいただけますよう、よろしくお願いいたします。以上です。
【池島委員長】 ありがとうございました。
 本日は、ただいま説明がありました資料4の次期北極域研究プロジェクトの方向性(案)につきまして、意見の取りまとめを行うため、全委員から御意見を頂きたいと存じます。
 名簿順で御発言いただければと存じますが、まずはその前に、本日御欠席の三枝委員、瀧澤委員より事前に頂きました御意見等を事務局から御紹介のほど、よろしくお願いします。
【山口極域科学企画官】 まず三枝委員の御意見を御紹介させていただきます。
 「以前の発言とも重なりますが、北極域においては、この後、温暖化の影響が自然及び社会の各過程に顕在化してくる可能性がある重要な地域であることから、観測空白域をカバーするということに加え、新たなモニタリングやデータ解析手法の開発により、重要な要素について長期連続的にモニタリングしていくことが極めて重要と考えます」。以上が三枝委員の御意見でございました。
 続きまして、瀧澤委員の御意見を御紹介させていただきます。
「国際協力の下で、北極域の観測・研究を行い、多国間でその科学的知見を共有することで、日本としての北極の利用に関する国際的ルール形成に貢献することが何より重要と考えます。「みらいⅡ」を象徴的にも実質的にも、国際的な人的交流の拠点として機能させることを期待しています。急激な環境変化の下で、鉱物資源や漁業資源など、開発への関心が高まっていることに対し、開発に対する回復力を予測する研究や、持続的な開発に資する研究も期待します。また、観測データの扱いを国際間で健全に保つことや、国際ルール形成の場で、自然科学の視点のみならず、法・政治・政策の視点からも議論に参加できる北極に通じた高度な人材育成も期待します。北極の自然環境の変化や国際ルール形成の状況など、包括的な情報を広く情報発信する活動もこれまで以上に強化されることを期待しています」。以上でございます。
【池島委員長】 ありがとうございました。それでは、御出席の委員の方から、名簿順でよろしくお願いします。
 まずは、合田委員、よろしくお願いいたします。
【合田委員】 承知しました。名簿順ということですから、私、先に話させていただきます。
 おおむね方向性につきましては、カバーしていただきたいことは大体カバーしてあるという理解でおりますので、あまり付け加えることはないのですが、北極海研究が海洋基本計画に組み込まれていて、ある意味参与会議等で尻をたたかれることもあり得る仕組みの中で動いていますから、くぎを刺すべきことはくぎを刺しておかないといけないのかなということから、若干申し上げておくことがあります。
 北極海航路とか北極の資源開発という視点で、いろいろ親委員会、海洋分科会のほうでいろいろ書かれているのですけれども、このカーボンニュートラルだとか脱炭素という流れの中で我々は生きていて、その流れの中で北極をもし活用すると、それは持続可能で使っていくと。そういう理解でないと、実は、この研究というのは足元をすくわれることになります。ですので、この鉱物資源開発と書いてあるものの中に、例えば、石油、ガスですとか、あるいは、陸域からの石炭の採掘という話が念頭に置かれているというのであれば、それはわざわざArCSⅡ及びその後継の科学研究でやることではなくて、それは民間会社の判断でリスクを取ってやる話なのかなと僕は実は思っていて、そこの部分というのは、明示的に書くかどうかは別として、脱炭素なのだ、カーボンニュートラルの方向性なのだということを踏まえて、それでも必要な資源として、例えば北極圏のレアアースだとか、要はその再生可能発電の中で必要になってくるそのレアアースだとか、場合によってはウランだとか、そういうような話が理解されているのだということを少し確認しておく必要があるのかなと。
 それから、その資源の中に生物資源、要するに水産物ということだろうと思いますけれども、これへの期待、これはあっておかしくはないと思うけれども、僕の理解では、その研究空白域における海域での漁獲というのは、当分の間商業的には考えられないという理解であって、だけれど、もし可能性があるとすれば、日本人、日本社会が必要としている魚種がだんだん北上していくという中で、北極圏の排他的経済水域程度のところでの商業漁業というのがあり得るかもしれないと。だとすると、そこで問題になってくるのは、外地域というのは、先住民族の生活だとか、権利だとかといったものとの抵触というのも出てくるはずなのですね。その辺についての知見というのは、産業界がそんなに持っていると私は思わないので、ここは、それこそ人文社会系の学者先生が、そういう産業界が過ちを起こさない、あるいはつまらない軋轢を外地域と起こさないという意味において、先導的にこの生物資源との、先住民社会との交錯するところをやってほしいと。
 要は、人類、それから脱炭素、カーボンニュートラルという方向性という大前提がある中での資源であり、この航路利用なのだということを、どういう形で書くかは別として、これはくぎを刺しておいてほしい。そうでないと、海洋基本計画のほかのものと同じような扱いで、要はその参与会議等で尻をたたかれてそっちに行ってしまったでは困る。これは、どうしても申し上げておかなければいけないことだと思います。
 2点目、これもしつこい話なのですけれども、この「みらい」が、「みらいⅡ」がきちんと稼働するための、要は船としての経常予算というものは、これはこれでしっかりやっていただかないと、船は造りました、でもそっちのほうの予算は別なので稼働率があまり上がってないのですというのはおかしな話になるので、ここの点は、ここで書くことかどうかは分かりませんが、くれぐれもよろしくお願いしますということを僕は申し上げたいと思います。
 以上、2点でした。よろしくお願いします。
【池島委員長】 ありがとうございました。
 失礼しました。窪川委員、飛ばしてしまいました。次、窪川委員お願いいたします。
【窪川委員】 私、全く同感なので、付け足しみたいになりますけれども、まず、北極研究で何ができるかどうかを確認するための期間がArCSとArCSⅡだったと、このArCSⅢについて考えました。そうなると、今までの研究成果、継続性をどうやってArCSⅢに持っていくのか。今、その海洋開発等重点戦略にきちんと位置づけられ、また、基本計画にもかなりのページで具体的に書かれていると。それに取り組んでいって、それをバックアップする研究プロジェクトが、一番重要です。そのときに、いろいろなフォローアップ、あるいは評価が入ってきます。北極研究は、短期及び長期にわたる研究があると思います。あまりにも短期的な意見を加味することが難しいこともあると思います。特に科学研究だけではなく、国際的なインタラクション、あるいは実際に社会的に、国際的に変化が生じている現状で、どのように北極研究が、変更とまではいかなくても微調整があり得ると思います。そういったことが加味されることをきちんと了解してスタートを、次の方向性を決めるべきではないかと思います。
 それから、私も合田先生と似たような感じで気になったのは、資料を拝見すると、地域住民のお話が出てこないのです。1期、2期と、次第にその地域への貢献と、地域住民に対して気候変動がどう関わるのか、あるいはその生活や漁業も含めて、研究成果が何らかのフォローができればという印象を受けていたのですけれども、今回、「みらいⅡ」の新造に伴ってだと思うんですけれども、そういったところが見えていないですね。「みらいⅡ」の研究船としての運行に数年間は全力をかけるとしても今までの地域住民に対するフォローに関しての何らかの成果、あるいはまとまりというものをきちんとつけるべきであるし、それが次の方向性の中に若干でも含まれたほうが、よろしいのではないかと思いました。
 「みらいⅡ」に関しては、非常に大きなことなので、インターナショナルの日本の方向性を示す重要な機会になると思います。ただ、その準備が十分にできるかどうかは、このArCSのプロジェクトの運営にも大きく関わると思うので、その準備ができるのかどうか。これからいろいろ予算だとか計画とか出てくるわけですけれども、それが十分であるべきと思います。そのときに、人材が少ないと、それはこの北極研究に限らないのですけれども、多くの人に機会をというよりも、どういう人を育てたい、どういう人に国内外から加わってもらいたいかを明確にして、船ができるわけですから、人材育成の方向性もきちんとしたほうがいいと思います。
 瀧澤さんが既におっしゃったように、その際に、データですとか成果にアクセスできて、ある程度の広い範囲で、広い分野で意見を言える環境づくりが大事だと思います。それは法学だったり、政治学だったり、経済学だったり、いろいろあると思うのですけれども、実際にプロジェクトに入る入らないは別にして、意見を言える環境づくりが北極研究にとっては大事なのかと思いました。以上です。長くなりました。
【池島委員長】 ありがとうございました。
 続きまして、坂野井委員、よろしくお願いいたします。
【坂野井委員】 どうもありがとうございます。まず、私が前回に言ったものが、その主な意見の継続的観測の重要性ということを言ったのですけれども、それをもう一度改めて強調しておきたいと思います。
 提示された案の中で、最初に北極域研究の重要性というところがあるのですが、その中で、もちろん北極研究が、温暖化の影響が一番大きくて顕著に表れているので重要だ、それから中緯度に影響を与えるので重要だという、この2つは本当に重要なのですけれども、もう1個前の大前提として、要するにこれまで記録が残っている気象のデータにはないデータが取れる、新しい気候変動という時代になっている、これはもう北極に限らずなんですけれども、なっているのだと。だから空白域に限らず、とにかくデータを取り続けることが重要なのだということをどこかに書いていただきたいのです。その大前提があってこその、その後の重要性なのです。
 我々研究者から見て、北極の海氷の状態であるとか、日本の異常気象の状態であるとか、南極の今年の海氷の状態であるとか、いろいろな大気の現象であるというのは、本当にこれまで見たことがない現象が2000年代に入ってからぽんぽんぽんぽん起きるようになっていて、その新しい現象を取って、人類の知として積み上げなければいけないというのが本当に重要。人類がこれまで記録として経験していない気候変動というものを、今リアルタイムで計測しているという重要性をぜひ書いていただきたいというのがまず1つです。
 それを踏まえてなのですが、方向性(案)の1の空白域、空白時期、前回も言ったのですけれども、空白域、空白時期をもちろんやらなければいけないのですが、それが大事というよりは、今言ったように、そもそも人類が経験したことがないデータを取るので、空白域を含めて全てのデータを取らなければいけないということかなと思います。
 あと、人材育成に関してなのですが、もちろんプロジェクトで人材育成をやるというのは、プロジェクトの予算としては大事だと思うのですが、今度は社会に貢献するという意味だと、このプロジェクトが終わった後に、そのプロジェクトで得たスキルですとか知識を社会に還元するような人材として巣立っていくということが重要ですので、プロジェクトを終わった後の人がどういう場で活躍しているかみたいなものを何か評価指標に入れるとか。そういったことはできないでしょうか。安定的に職を得てきちんと社会に成果を還元していますと、還元し続けていますということをどこかで入れられるとうれしいかなと思っています。
 あと、「みらい」の国際研究プラットフォームとしての活用という意味においては、ロシアの沖ですかね、どこまで、私、近づけるのか、その辺の情勢がよく分からないのですけれども、今、データとしては、ロシアの領域のデータがもう全然国際的に出回らなくなってしまっているので、たとえ少し極側に行くとしても、ロシアがある経度の部分のデータが取れるというのは重要なので、そこは国際的な意味として強調してもいいのかなと思いました。以上です。
【池島委員長】 ありがとうございました。
 次に、中田委員、よろしくお願いします。
【中田委員】 ありがとうございます。これまで皆さんの発言を聞いてきまして、本当にそのとおりだなと思っておりますし、これまで発言してきた内容も、ほぼ方向性の中に取り込まれていると思っています。
 ただ、その中で、状況として、日本の経済状況とか、研究費の状況とか、非常に厳しい中で、どういうふうにこれを続けていくのかということをもう少し入れていく必要があるのかなと思っています。
 例えば、社会的貢献とか、そういうこともとても重要ですけれども、では、どういう方法で社会的に貢献するのか、あるいは一般の人に北極研究の存在を知ってもらうのかということをもう少し戦略的に考える必要がある。例えば、IPCCのサイクルで言えば、ちょうどこのプロジェクトの後半の期間が、IPCCのAR7とりまとめや公表と重なってくると思われ、そういうチャンスを意識して成果も発信していく。
 それから、あとデータにしても、オープンデータとか、オープンアクセスとか、そういうのは本当に進めていただきたいと思います。一方で、きちんとこれは北極域の研究でやったというクレジットがつくような仕組みというのもつくっていただきたいと思います。どれだけ貢献しているのかということを示していくということは重要だと思います。
それから、私自身は水産の出身で、漁業ということを考えると、漁業に役立つデータというのは、別にその北極域で漁業をするということを前提にしたデータというよりは、あそこで生態系がどう変化しているのか、より中緯度とか、もう少し南の海域からどういうふうに資源が移ってきているのかなど、漁業者が知りたいと考える海で何が起こっているのかということも分かりやすく発信していけるのではないかと期待しています。
 あとは、皆さんがおっしゃったとおりだと思っておりますので、付け加えるとしたらその辺のところを強調したいと思いました。以上です。
【池島委員長】 ありがとうございます。
 それぞれの委員の方々にご発言いただきましたけれども、さらに付け加えたり何かございますでしょうか。
坂野井委員、よろしくお願いいたします。
【坂野井委員】 私、合田委員の御発言ですごく共感したというか、疑問に思って聞きたいことがあるのですが、その「みらいⅡ」の予算というのは、本当にどこが管轄されて、どういうふうに運用されるのでしょうか。
【池島委員長】 事務局お願いいたします。
【山之内海洋地球課長】 文部科学省海洋地球課長の山之内でございます。
 「みらいⅡ」に係る予算は、海洋地球課で見ております。ただ、「みらいⅡ」の維持管理等については、JAMSTECの運営費交付金という形になります。よろしいですか。
【坂野井委員】 分かりました。ありがとうございます。私、南極観測隊の経験がありますので南極のほうの話等にもよく関わっていると、極域の研究というと、どうしても南極観測隊のほうが目立ってしまうのです。せっかく北極に砕氷能力のある船ができてものすごく観測に行っているのに、なかなか北極で観測をやっているということ自体が一般の方にあまりアピールできてないので、できれば南極観測隊のように、「北極研究観測隊が今回出発します」みたいな報道がなされるようになるとすごくいいのかなという、また違った別の話ですけれども、広報という観点からも思いました。以上です。
【池島委員長】 ありがとうございます。
 それでは、窪川委員、お願いします。
【窪川委員】 二重になってしまうのですけれども、坂野井委員がおっしゃっていた空白域、実際に資料の中にも空白域の観察に関する視点がところどころに出ていますが、未知のところを観測して、それを埋めることは、大変重要です。先ほど私が申し上げた、その短期のものと長期のものも含めて、その予算も関係してくるときに、それから、そのインターナショナルのリーダーシップをどう取るかという時に、5か年計画ぐらいの短い期間で、どこを日本が重点でやっていくのか、空白よりも重点を加味して、資料がないので具体的には言えないですが、重要だと思います。以上です。
【池島委員長】 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 私も委員長でありながらも委員の1人ですので、幾つか、若干ダブってしまいますけれども、以上に付加しまして、私も述べさせていただければと思います。
 既に委員の先生方からも御指摘がありますが、3点ほど考えたところです。
 1点目は、1つ大きな何らかの今度の5か年計画における共通テーマのような、何らかの大きな軸となりましょうか。それが幾つかに分かれても結構なのですけれども、また違う5年間なんだということを強調する意味でも、それを新しいプロジェクトの方々では、ぜひ考えた上で5年間を考えていただきたいと考えております。何らかの総合的なアプローチで北極域全体を考えるということでもありますので、なかなか難しいかもしれません。その共通のものを必ずしも取らなくてもいいという考え方もあるかもしれませんが、今回のこの5年間においては、継続性ということを踏まえながらも新しいところに目を配るという形での総合的な北極域研究という形で、ぜひ1つ共通テーマ的なものをお考えいただけたらと思っている次第です。
 そして2点目が、それと関連しまして、継続性ということで、データの収集その他、もうこれは絶対にやらなければいけないことだと私も全く同意見です。それで空白域だとか、そういうものがないようにしなければいけませんし、重点というところも当然必要になると思います。それに併せて、新規軸というのでしょうか、今度の5年間においては、何か新しい、言うなれば萌芽的というのでしょうか、そういうものもあるかもしれないし、今まで全く振り向いてこられなかった分野というのもあるのではないかなと思っています。それは、それぞれの分野の特性もありましょうし、科学の進歩によって違うところもあるかもしれませんが、そういうものを工夫して、そろそろ次の、さらに先も踏まえたような形、今まで見落とされていたか、また新たに見直されてきたような分野というものも考えて、新規的な側面というものも、ぜひ積極的に加えていただくということを期待している次第です。
 最後の3点目なのですが、これは社会還元型事業というのでしょうか、社会に何らかの形で裨益するということが、この税金を使った上での言わば国家プロジェクトの行き着く先かなと思っております。その意味では、社会的な連携というのを広い意味で必要だというのは、全くそのとおりだと思います。ですから、その点を踏まえた形で、もう既に海洋分科会のほうからも出ておりますような、場合によっては水産庁、国交省とか、その他関連する大きなところの部署、そこはどうしてもいろいろな権限を持っておりましょうし、そこが何らかの、現業という形での関わりというものもあるので、そことのつながりというものも踏まえると、ある程度視野に入れておくということが、研究とはいえ必要なのかもしれません。それをどうやってうまくつながりを持つかというのは、非常に工夫が要るところだということは承知しておりますので、これは先生方、プロジェクト中の委員だけでなく、実際に参加されるプロジェクトの委員の先生、研究者の皆様に知恵を絞っていただくということです。
 最終的には、それが国際協力における日本のイニシアチブという形に国を通じて広げていってほしいし、そういう中で、ある程度のリーダーシップを取れるような形というものを継続し、さらに発展していっていただきたいと私としては考えている次第ですので、さらに屋上屋を重ねるような形かもしれませんけれども、述べさせていただきました。ありがとうございました。
 それでは、中田委員、お願いします。
【中田委員】 ありがとうございます。
 今のお話も聞いていて思ったのですけれども、空白域というのと、空白域をなくすという言葉だけがすごく目立ってしまったんだけれども、その空白域と長期の蓄積データを連結させることによって、よりよく将来を予測するということが可能になると思うのです。だから、そういう表現を少しどこかに加えると分かりやすいかなと思いました。ありがとうございます。
【池島委員長】 ありがとうございます。ほかに先生方はいかがでしょうか。以上の議論を踏まえまして、何か先生方のほうでさらにございましたら、よろしくお願いします。
 それでは、窪川委員、よろしくお願いします。
【窪川委員】 今の委員長のお話を聞いていて、新機軸というお話を、そうだなと思ったのですけれども、盛りだくさんのプロジェクトの内容だと、どうなんだろうというのと、新機軸、あればそれにこしたことはないと私も大賛成なんですけれども、同時に、先ほど合田委員から意見もありました鉱物資源、生物資源の開発は、今後の課題として残ってくるわけです。多分そう簡単にすぐにできるものではないと思うのです。遠い目標としての着手という感じになると思うのですけれども、新規科学技術とか、先端科学技術とか、何かそういったところで、将来性のある言葉が入っていくといいのかと思いました。以上です。
【池島委員長】 御意見、ありがとうございます。よろしいかと思います。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、本日の委員会で頂きました御意見を踏まえまして、修正・追加等の必要があれば事務局で修正いただきまして、その扱いは、恐縮ですが、私、委員長に御一任いただければということでよろしゅうございましょうか。
 さらに先生方のほうで何かあれば、また回覧の上、御覧いただいてということがあるかと思いますけれども、そういうような段取りで、御一任いただくということでお願いできますでしょうか。
 それでは、私に一任させていただきたいと存じます。よろしくお願いします。
 それでは、この方向性を踏まえまして、文部科学省において、次期北極域研究プロジェクトの検討を進めていただくよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、最後に、議題2「その他」でございますが、委員の皆様から特に何かございますでしょうか。よろしいですか。
 なければ、最後に事務局より連絡事項をよろしくお願いします。
【岡田海洋地球課課長補佐】 委員の皆様、本日は御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。いただきました御意見を踏まえまして、文部科学省におきまして、次期北極域研究プロジェクトについて検討を進めさせていただきます。7月から8月頃に開催予定の海洋開発分科会におきまして、次期プロジェクトの事前評価が行われる予定となってございます。海洋開発分科会での評価結果につきましては、追って事務局からお知らせをさせていただきます。
 また、次回の委員会の開催日程につきましても、改めて御連絡をさせていただきます。以上でございます。
【池島委員長】 それでは、これで本日の委員会を終了させていただきたいと存じます。お忙しい中、誠にありがとうございました。次回以降、よろしくお願いします。
 
── 了 ──

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