令和5年8月4日(金曜日)13時00分~15時00分
オンライン会議にて開催
足立正之主査、吉田善章主査代理、出雲充委員、宇藤裕康委員、加藤之貴委員、近藤寛子委員、武田秀太郎委員、飛田健次委員、豊田祐介委員、村木風海委員
千原由幸研究開発局長、稲田剛毅研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐
【足立主査】 定刻となりましたので核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会(以下、検討会)(第3回)を開催します。
まずは、議事に入る前に、事務局の方から出席及び配布資料の確認をお願いいたします。
【髙橋補佐】 文部科学省研究開発戦略官付の髙橋でございます。
本日は、委員10名に御出席いただいておりまして、奥本委員、竹永委員は御欠席となっております。
また、本日は約80名の方に傍聴登録いただいているところでございます。
続きまして、本日の配布資料です。議事次第の配布資料一覧に示しております通り、資料1-1から資料3の計7点を配布させていただいております。
会議中は、画面共有システムを使いまして、事務局から資料を表示させていただきます。
また、各委員につきましては、御発言いただく際には、ミュートを解除の上、画面の下にあります手を挙げるボタンを押して、御発言いただくなど、意思表示をいただければと思います。事務局からは以上です。
【足立主査】 ありがとうございました。
本日は、文部科学省の千原研究開発局長にも御参加いただいておりますので、御紹介申し上げます。
【千原局長】 御紹介ありがとうございます。
今日も暑い中、先生方には御参加をいただきましてありがとうございます。御紹介がありましたように、読売新聞の方にも出ているということで注目も集まっているところかと存じますが、先生方には、今日も中間取りまとめ案を御議論いただくということで、御指摘、御指導のほどよろしくお願いいたします。
簡単ですが、以上です。
【足立主査】 ありがとうございます。
また、この検討会につきましては、原則公開をされているということでありまして、御発言は議事録に掲載されて、ホームページ等で公開されます。
それでは、議題1「フュージョンエネルギーが実現した未来社会及び達成目標について」に入りたいと思います。今回、4人の委員の方々に御発表いただいたあと、これまでの議論も踏まえて、中間とりまとめ案について議論するところまでいきたいと思っています。
議論を始める前に、まず議論の方向性について、皆様と認識を共有させていただきたいと思いますので、まずは事務局の方から、今後の本検討会のスケジュール及び目標案の方向性についての御説明をお願いします。
【稲田戦略官】 資料の1-1を御覧ください。
ムーンショット目標(以下、MS目標)設定の考え方・基準に関しましては、ムーンショット型研究開発制度(以下、MS型研究開発制度)に係るビジョナリー会議という会議第4回目に資料が示されており以下の3点について、求められています。
1点目が、わくわく感です。目的や緊急性が明確に示され、困難だけども、実現すれば社会に大きなインパクトがあること。あるいは、多くの国民や海外と価値観を共有できるものであること。それから、我が国の国益や産業競争力の確保に向けて、科学者の英知を結集して行うことが求められます。
次が、イメージの湧くものであるというところのポイントであります。端的に言うと、多くの国民がエネルギー、テクノロジーを切り開く、未来の可能性を明確にイメージできる目標が求められます
最後が、信頼に値するというところでございまして、野心的であるけれども、科学的に実現可能性を語り得るもの、即ち、夢だけではなくて、実現可能性のある技術的なアイディアが複数存在すること。達成状況が検証可能であるものということ。また、既存の戦略や施策の方向性と整合的であり、それらの成果も統合的に活用できること。この3点が求められています。
新目標の設定にあたって、論点と議論の方向性ですが、本日も議論に関しては、資料2ページ目の中間のところのポツに出ている、1番から7番について御議論いただくのですけれども、今後、パブリックコメントを踏まえた上で、さらに詳細な議論を行います。この議論については、4番目から7番目というものが想定されまして、そこから比較にすることを考えますので、まずは1番から3番目の社会像にフォーカスして議論をし、それを国民に問うということを行いたいと思います。
したがいまして、本日は、1番から3番目の議論を中心に行っていただけるとありがたいと思います。今回のその議論は、事務方でとりまとめるにあたりまして、いくつか議論が分かれているところについて、仮置きしたところです。
一つは、目標年の設定の部分です。目標年を2060年とし仮置きしていますが、ここが適切なのかは、議論の対象です。
最後に目標案の名称です、人々の生活や価値観がどう変わるかというところが表現できているかが重要です。
3ページ目を御覧ください。こちら、どのようなかたちのものが最終的な仕上がりになるのかということについて、ある程度のかたちがないと、イメージが湧かないということもあろうかと思います。これは事務方として、皆様の議論を始める前に仮置きして作ったものです。目標案として、単なるエネルギーではなくて、どのような社会を実現するかというところが目標に設定されていること。人々の生活や価値観がどう変わるかというところがどのように表現されているかということ。3番目として、得られた先進的な研究成果をどのように反映していくのか、他のところとの整合性というところは、議論として求められますので、これを一つの参考にしていただけるとありがたいと思います。
最後に資料の1-2ですが、スケジュールです。本日、中間とりまとめをいただきましたあと、パブリックコメントを行う予定です。パブリックコメントと並行して、専門家の判断が非常に重要であるということから、科学技術・学術審議会の研究計画・評価分科会の核融合科学技術委員会(以下、委員会)、これは核融合に関すること全般を議論する委員会ですが、こちらにも、書面にて意見を求めます。その結果については、9月にパブリックコメントと委員会からの意見の両方をとりまとめた上で、パブリックコメントの結果を踏まえた御議論をいただきまして、それを踏まえまして、10月の第5回の検討会にて新目標案について議論いただくということになります。
MS型研究開発制度の新目標案の決定自身は、ここで御議論いただいたビジョンをもとに、内閣府の手続きを踏む必要がございますので、以降に関しましては、総合科学技術・イノベーション会議(以下、CSTI)有識者議員懇談会において、我々として説明をしていくということを考えています。以上です。
【足立主査】 ありがとうございます。皆様、よろしいでしょうか。
まさに、この資料1-1の1ページ目に示された、「Inspiring」と「Credible」というものが、相反する要素ではあるのですけども、これをどうバランスをとるのかというところがポイントではないかというように思いますけども、他に何か御意見なければ、この御説明を踏まえて、検討を進めていきたいと思います。
それでは、前回に引き続きまして、目標案やターゲット、そして目標達成によりもたらされる社会、産業構造の変化などについて、皆様に議論していただきたいと思います。
野心的な目標を掲げるために、核融合の専門家たちとは違った、様々な視点での意見を伺いたいと思いますので、今回は、まず地球を守り、火星を開くというビジョンを掲げて、二酸化炭素を空気中から回収して、資源として有効活用する研究に取り組まれておられます、村木委員に御発表をお願いしております。
それでは、村木委員の方から御発表をお願いしたいと思います。
【村木委員】 御紹介にあずかりました、村木と申します。
私は、一般社団法人炭素回収技術研究機構(CRRA)の機構長を務めております。
今御紹介いただきました通り、専門に関しましては、Direct Air Capture、二酸化炭素の直接空気回収と、そこからC1ケミストリー、二酸化炭素から燃料合成や化成品合成などを行うという研究を普段は行っております。
個人的には、内閣府の方でムーンショットアンバサダーを務めておりますとともに、元々研究を始めたきっかけが、総務省の「異能vation」というプロジェクトに採択いただいたのがきっかけだったりして、そういうイノベーションをどうやって芽を育てていくか、ということに、長く携わらせていただきました。その観点から、本日は、核融合に関する科学的なところに関しては、後ほど他の委員の先生方からあるのではないかと思うのですけれども、その周りのどうやって目標案を設定して、ゴールに向けて牽引していくかというところに関して、私の主観を述べさせていただきたいと思います。
まず、MS目標案の名称について考えてまいりました。基本的に今回の私の資料は、元々いただいておりました、中間とりまとめ案を参考にしておりまして、もっとこう変えたらより良くなるのではないかなというふうに個人的に考えた部分を太字のところで示しております。
まず、MS目標案についてです。元々は2060年までに尽きることのない地上の太陽を作り出し、以下略というかたちで資料をいただいておりましたが、私の方は2058年までにというところで案を持ってまいりました。
この、一見中途半端な数字に思える理由についてですけれども、2023年現在の線形回帰の予測が+35年ということが以前あったと思うのですけれども、そして単純に足すと2058年となるためです。切りを良くするために2060年とするのも一案ではあるとは思うのですが、敢えて10年単位の区切りが良い目標よりも、2058年という、まるで小説のタイトルでありそうな、極めて具体的な年数を提示することで、厳密に未来から逆算して、この2058年までに達成するんだと、研究者も国民の皆様も強く感じることができるのではないかというふうに考えて2058年としました。
さらには、やはりざっくり2060年と目標にしていると、もちろんそこを目指して研究が進むものとは思うのですが、1、2年前後してしまう恐れもあるのではないかなと思っております。ただし2058年という、急に具体的な数字になった時に、臨場感を感じることができるので、そうすると遅れないという強いメッセージにもなるのではないかなというふうに考えました。
また、気候変動の対策が、やはり2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにして、カーボンニュートラルを達成しないと物理的に気候変動が止まらないというような予測が多数出ているような現状においては、目標達成はたった2年とはいえ、1年でも早く現実的かつ野心的な両方を取った時に、2058年とするのが良いのではないかなと個人的には考えまして、このような目標を考えてまいりました。
先ほど戦略官よりもありました通り、わくわくすることと、イメージが湧くことという臨場感がとても重要なのだと考えまして、このような目標案を持ってまいりました。
次に、実現したい2060年の社会像についてです。こちらも太字で示してあるところが主に私が付け加えたところです。
人類が消費するエネルギーを持続可能に供給し続けるエネルギーシステムの中心に核融合が位置する社会を実現させるというところに関しては、変わらぬ皆様の共通認識として実現したい2060年の社会像なのではないかと推察するのですけれども、その後に、CO2直接空気回収やカーボンリサイクルにおける主電源として核融合を位置づけることで、完全に気候変動を抑止することができると考えております。さらには、地球にとどまらず、宇宙機の推進方式として、核融合の推進方式を実用化することによって、人類が地球だけでなく、火星やその他の惑星・衛星と気軽に行き来ができる未来になると考えております。人口爆発の問題はエネルギー問題を解決するだけでは解決できないので、多くなってしまった人口が、やはり地球の外に住まなければならない時がいずれは来るのだと思います。その時に、人類が火星やその他の惑星・衛星と気軽に旅行・出張・定住できる社会を実現することが肝心だと考えております。科学推進のロケットでも、もちろん惑星探査はできるのですけれども、例えば、火星までの片道ロケットでも大体9か月かかってしまうのが現状であり、その間に放射線の被曝の問題などもあります。ただし、核融合や、現在核融合の一歩手前で核熱推進という方式もNASAの方で検討されていたりもしますけれども、そうやって核融合を使った方式を使えば、最終的には、火星までの片道が、例えば90日で抑えられるなど、そのように時間を短くして、放射能の問題も宇宙放射線の問題も低減して、気軽に旅行・出張・定住できる社会が実現できるのではないかと考えております。
そうすることで、地球や日本のみにとどまらない、太陽系規模での交易網ですとか、あるいは火星に街ができることによって、地球の外を超えた経済圏が構築できて、そうすると経済の市場というのは、日本だけにとどまらず、もっと枠が拡大するので、経済成長にも間接的に貢献できるのではないかと考えている次第です。これは、一見壮大な目標、社会像に思われてしまうかもしれないのですけれども、このように書いた理由としましては、やはりMS型研究開発制度自体が、もちろん少しずつ浸透してきてはいますけれども、まだ認知度が足りていないと感じているためです。私がムーンショットアンバサダーとして、普段、例えば、SNSなどで国民の皆様と交流したり、街中で様々なイベントで話したり、テレビで話したりしている中で、やはりまだまだ一般に広く認知されているとは言えないのではないかという現状があることを感じております。その一因として考えられるのは、実現したい社会像が、私達国民一人一人と少しかけ離れてしまっていたり、あるいは、すごく壮大な目標ではあるのだけれども、抽象的で、どう生活に身近に関わってくるのかがイメージしづらいことが一因なのではないかなというふうに考えております。
そこで、国民にとっても身近で、関心度の高い気候変動と、宇宙探査、移住などの話題が、核融合の技術によって間接的に実現可能性が高まるんだということまで意識させることで、研究の意義をより浸透させることができるのではないかと考えています。
次に、MS目標の達成シーンについてです。2060年の達成シーンについて、まずは申し上げます。いくつかの達成シーンが元々のとりまとめ案でもあると思うのですけれども、そのうちの二つほどピックアップして、そこからさらに付け加えたものを書いてまいりました。
一つ目は、フュージョンエネルギーにより幅広い産業の脱炭素化を達成というような文脈の達成シーンについてです。こちらに、現在の世界のCO2排出量の大体半分を占める、発電部門からのCO2排出量が、核融合を使うことによって、ほぼゼロになるということを記載しております。表現に関しては、今後詰める必要があるかもしれないのですけども、そのように、発電部門のCO2を削減できるからこそ、幅広い産業に対しても脱炭素化が達成できるという、この間の文脈を付け加えることによって、研究者でない多くの、科学に詳しくない方や、科学に苦手意識を持っていらっしゃる方でも、なぜ核融合によって脱炭素が実現できるのかという論理が明確になるのではないかなというふうに考えました。
さらに、大気中の二酸化炭素を回収する技術をフュージョンエネルギーで駆動というところも、間の文脈を補って、回収するDAC技術と、C1科学をフュージョンエネルギーで駆動することによって、産業革命以降、大気中に蓄積してしまった二酸化炭素、つまり、もはや二酸化炭素低減という文脈では回収ができない、既に大気中に出してしまった二酸化炭素なども回収することができるということを示したいと考えております。さらには、EV、水素化などもありますけれども、運輸業などで使われる大型トラック・船・飛行機などは脱内燃機関というものが難しい乗り物です。このような、脱内燃機関が難しい、運輸部門の脱炭素も、二酸化炭素からの燃料合成などによって、その電源を再生可能エネルギーで賄うことが全部は難しかったり、あるいは、火力発電で賄ってしまったら、トータルで見た時のLCAがマイナスに働くのが難しいというのがあるのですけれども、それをフュージョンエネルギーで駆動することによって、運輸部門の完全脱炭素を達成できるということを書き加えました。
次に、2035年に達成することに関してですけれども、核融合の多様な社会実装に向けた革新用途の実証を推進することについてです。革新用途の実証を推進するためには、もちろんMS型研究開発制度自体は、大学や大企業が進めていらっしゃる計画だと思うのですけれども、そこに、大学や大企業だけの実施にとどまらず、研究サイクル、開発のサイクルが早いベンチャー企業などに対する充実した研究支援の体制の構築を行ったり、あるいはこれは総務省の「異能vation」プロジェクトからの発想を持ってきているのですけれども、核融合に関する奇想天外でアンビシャスなアイディアを持った、研究者や実業家に対して、第1回の検討会でも申し上げた、学位等の応募要件がなく、かつ研究費が交付金や補助金のようなかたちで、後払いだと、やはりベンチャー企業にとっては、キャッシュフローの問題が常につきまとってしまうので、研究費が前払い、もしくは、研究に必要な資材を事務局側が立てかえて購入するといったような、キャッシュフローに負担がかからないような研究支援制度の創設によって、基盤的な革新技術を、そのアイディアの種を実現できるのではないかなというふうに考えております。
このように、どのようなシステム変革をもたらすことなのかを含めて、具体的な取り組みを記載することによって、発表した時により国民の皆様にもイメージを付けていただきやすいですし、研究者側もどうやって実現するんだということが、より明確になるのではないのかと考えて記載いたしました。
最後に、目標達成によりもたらされる社会・産業構造の変化についてです。この、「エネルギーは“地”政学から、“知”政学へ」、というところを拝見しまして、その後に、以下のような内容を書きました。
日本のエネルギー安全保障は、現政権でもすごく重要視しているところだと思うのですけれども、エネルギー安全保障がフュージョンエネルギーによって確立されるということを記載いたしました。このフュージョンエネルギーを研究することによって、エネルギー安全保障を確立して、そして世界情勢に左右されない日本社会と経済基盤を実現することにより、世界における存在感を維持することができると考えております。併せて、ここが重要だと考えているのですけれども、気候変動政策に携わる者として、他国の干渉、あるいは交渉に左右されずに、安心できるような独立性を担保するということは、非常に重要だと考えています。
やはり、いろいろなエネルギーを輸入に頼ってしまっている日本の現在において、例えば、脱炭素政策を強力に推進したくて、こういうものの輸入を止めますといった場合、あるいはサプライチェーンで、海外に対して、二酸化炭素をしっかりと考えて減らしてくださいといった場合、あるいはいろいろな原油価格が高騰した時などに交渉する際に、やはりエネルギーの事情や経済の事情を見られてしまって、なかなか日本の思った通りに気候変動政策を進めることが難しい場面も、どうしても出てきてしまうと思います。
ですので、やはりエネルギー需給を日本で確立するのは、非常に重要なことだと考えているので、そういった意味合いも、この最初の冒頭の「“地”政学から“知”政学へ」に含まれているのではないかなというふうに推察したのですけれども、このように明記することによって、強いメッセージを打ち出すことができるのではないかなと考えました。
また、カーボンデットを返済するということに関しましても、このように過去200年超にわたり、人類が蓄積させてきたという事実を、明記することと、そしてさらに気候変動を完全かつ永久的に解決するという強いメッセージを盛り込むことが、よりMS目標としての臨場感や実現するという強いビジョン、メッセージを打ち出すことができるのではないかなというふうに考えております。
また、既に採択されている目標4とも、このように絡めることで、よりMS型研究開発制度の新しい目標として採択されやすくなるのではないかと思います。他の目標も間接的に解決することができる新しい目標案なんだということが打ち出せると、MS目標の追加ということに対して、よりスムーズに進むのではないかなということを考えました。
私の発表は以上になります。ありがとうございました。
【足立主査】 それでは、この御発表に対しまして、皆様からのコメント、質問を承りたいと思いますが、まず私の方から、質問させていただきます。村木委員の方から2058年という提案がありました。村木委員はムーンショットアンバサダーということで、他のMS目標も御存知かと思いますけれども、多くのMS目標の年限は、2050年だったかと思います。それに対して、この事務局案の中では、2060という言葉も出てきております。それは、資料1-1で示された、MS目標設定の考え方・基準の「Credible」という要素を鑑みて、2060という言葉が出てきていると思います。また、一方では、その他の革新的閉じ込め方式という世界を見た時のスタートアップ企業が掲げている目標は、2035年というところにあるのですけれども、この数字はどこを選ぶかという単純な話ですけれども、そういった年限に関してどうお考えでしょうか。やはり2058年がよろしいですか。
【村木委員】 個人的には、本当は2050年がいいのではないかなと最初は思っていたところです。やはり、他のMS目標でも2050年としているものが多いですし、気候変動の対策を考えると、2050年から逆算して、バックキャストでやっていった方がいいというふうに、温暖化に携わる私自身の立場としては思うところです。一方で、やはり実現の、科学的な裏付けや実現性というものも大事だとは認識しております。しかしながら、2060年というのは、やはり2050年から考えると、核融合からすると、早いペースなのかもしれないのですけれども、他の気候変動などの観点からすると、少し遅いのではないかなというふうに、思っています。
そうすると、2055年にしてもいいのですけど、ただエビデンスを持ってということであれば、目標設定から+35ということで、お伺いしましたので、敢えて2058年というものがあったとしても、いいのではないかと考えました。数字遊びだと思うのですけれども、この2060年というのと、2058年という言葉の響きを聞いた時に、何でこのような年数なんだろうと印象に残るのではないかなというふうに思っているところです。ですので、印象に強く残す、臨場感を持つという意味で、敢えて中途半端な数字で、やはり2058年がいいだろうと個人的には考えた次第です。
【足立主査】 分かりました。
新聞の方にも、2035年にもう核融合で発電した電気をグリッドにといった報道がされていて、少し驚いたようなところです。他の委員の方、こういった観点で御意見は何かございますでしょうか。武田委員、お願いいたします。
【武田委員】 御発表ありがとうございました。特に私の第2回検討会での発表の足りない部分に、さらに夢を肉付けしてあげるような内容でございましたので、大変心強く感じております。
第2回での発表ののち、発表内容について魅了されたという御意見をいただいた一方で、やはり他のMS目標と比べて、核融合というものは、一つの技術開発に閉じているといったような御意見も頂戴していたところでございます。私なりにその理由というものを考えていましたけれども、やはり村木委員の御発表を見ていますと、私の第2回の発表や事務局案は、地球のリセットに主眼を置いているわけですが、そこに加えて、人類の活動圏の拡大といったところに、今回この目標といいますか、内容を広げていただいていると感じました。ですので、このリセットだけではなくて、人類の活動圏の拡大に主眼をいただいているというところで、非常に夢の部分の増強がなされているのではないかと感じた次第です。
その上で、先ほど足立主査からもございました、2058年について、もう一点申し上げますが、ここで、事務局案で、線形回帰で+35年というふうにあるのは、私の第1回での発表に関する言及ではございますが、私の発表というのは、線形的な予測と、多項式を使った非線形的な予測をした結果、線形ではなく核融合の期待値は、非線形であったということを結論づけるような、そういった発表でございます。
その観点から申し上げますと、この非線形な期待値は、今、35年後ではなく、25年後ということを指し示しておりますので、その観点からも+25年ということを考えますと、より2050年の方が近いというふうに、第1回の発表からは、私として結論をしたいというふうに思います。
以上、村木委員の発表に対するコメント2点でございます。
【村木委員】 補足いただきありがとうございます。
【足立主査】 他の委員はいかがでしょうか。
今の武田委員の御意見の前半の部分にもありましたけれども、やはり核融合が実現した時にどのような社会になるかというような、ポイントをどこまで、このMS目標に含めていくのかということ、また、数字というのは単純な議論かもしれませんけれども、実質上、このMS型研究開発制度のファンドが動く段階で、非常に重要なポイントになるのではないかと思います。
例えば、本当に無尽蔵でエネルギーを扱うことができればというようなことを考え出しますと、かなり広範囲で発散するのではないかというふうにも思います。
ですので、どこまでも入れるのか、あるいはどこかで線を引くのかということを、この検討会の中で議論すべきではないかと思いますがいかがでしょうか。
【武田委員】 今、足立主査から御指摘のあった、発散させる必要があるのかというような御指摘でございますけれども、村木委員からも、この地球温暖化の停止、気候変動の停止というのが、一つ大きな軸として挙げられるというふうに御意見がございまして、ここについては、私も同意をするところですが、私は、これは一つ意図的にスコープを絞っているところがございます。今まさに気候変動を含めた、エネルギーが解決するべき問題として、プラネタリー・バウンダリーということが広く言われているわけです。
このプラネタリー・バウンダリーというものは、これを越すと、人類の文明維持が極めて困難になるというラインのことでございますけれども、ここでは、気候変動は当然一つでございますけれども、あとは海洋の酸性化やオゾン層破壊、窒素リサイクル、淡水利用、土地変化、こういったバウンダリーが9つ設けられているわけでございます。
我々がもしスコープを広げるとすれば、これら全てを地球のリセットの原動として核融合で用いていくんだというようなところまでは、スコープの拡大が可能でしょうし、実際問題、気候変動よりも、生物多様性と窒素リサイクルの方が、バウンダリーを超えているというのが、今の結論でございますので、足立主査の先ほどの論点の、私なりの整理の仕方としまして、気候変動に閉じるのか、プラネタリー・バウンダリー全体を見るのかというような、一つ論点の方向性があろうかというふうに考えます。以上です。
【足立主査】 ありがとうございます。加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】 2058年の設定は、希望としては分かりました。村木先生から見ると、2058年にはもう核融合が実現しているということでよろしいでしょうか。発電や、核融合を利用したものを作っていることを、2058年を目指しているのでしょうか。
【村木委員】 実際の実現可能性の是非というのは、先生方の御発表をお聞きして、また皆様でお話ししてということだとは思いますので、実現可能性は別として、バックキャストとしては、やはり2060年や2058年、先ほど武田先生よりありました、2050年には、既に実用化しており、発電のメインソースの一つとして核融合が実現している未来というのが、最も良い未来像だというふうには個人的には考えております。
【加藤委員】 ですから、MS目標の中に2058年にどういうゴール設定をするかというものがあって、それを核融合の発電炉を作るのか、その前段階のものを作るのかではかなり違う気がします。
おそらく、今おっしゃっているのは、設定する年限までに核融合の発電炉は動いているということが、理想になるわけですね。
【村木委員】 そうですね、おっしゃる通りです。
【加藤委員】 分かりました。
一方で、核融合を使う場合には、トリチウムを大量に使うことになるかと思います。かつその前に、そのためのリチウム、それからベリリウムというものがあって、宇宙に持っていく時も、それを持っていかないと話が始まらないとなると、やはりいろいろ考えなければいけないかと思われます。
では、トリチウムの実験を日本で実施するのかということもかなり問題になってきますが、これについては、村木委員はどうお考えですか。
【村木委員】 トリチウムの実験を日本で実施するというのは、おっしゃる通り非常に難しい側面もあると思いますので、これに関しては、やはり日本のMS型研究開発制度ではあるのですけれども、海外と共同で実施するなど、地球規模で研究していかなければならない課題だと思うので、そういった国際協力のような文脈も、入れてもいいのではないかと思いました。
【加藤委員】 そうですね。一方で、今度は核融合に関しては、今までの検討会でも言及がありますように、米国、中国が核融合の研究開発を加速させているわけです。
米国で言えば、2030年にはもう試験炉を作って、2035年は原型炉を建設しますということで、日本の今の話し合いと25年間程ずれているということが課題になっていると思います。
ですから、2058年にこだわる必要があるのか、これで大丈夫かという懸念がございます。村木委員のように若い年齢層の方であれば、本当は2035年や2040年を迎えて何かをするということを提案した方が、より世界の現実にあっている気がしており、2058年に至った理由が少し分からなかったので、もう少し説明いただけますか。
それから、その2058年という年限で、本当に村木委員のように若い世代としては安心できるのでしょうか。おそらく、その頃には、もう中国や米国製の核融合炉が売り出されてきているかと思います。そのような状況の中で、我々が、この2058年を見据えたMS目標を策定し、研究開発を実施していますというのは、少し時間がずれてしまうような気がするのですけれども、いかがでしょうか。
【村木委員】 基本的に、私の個人的なスタンスとしては、早ければ早いほど良いというふうに思っていまして、やはり欲を言うのであれば、2030年代や2040年までに実現していることが本当に望ましいとは思うところです。
しかしながら、やはり国主導のMS型研究開発制度という性質もあると思いますので、なかなか海外のベンチャー企業のように、極めて実現可能性があるかどうかが分からない、野心的すぎる目標を設定するというのも、難しい側面があるのではないかなというふうに思っていますので、まず、今までの検討会をお聞きしていると、できれば2050年、あるいは2060年になってしまうのか、というところでのお話だと認識しておりました。
ですので、もっと早く実現できる可能性を核融合の専門家の先生方の皆様がお考えなのであれば、それは早い目標を設定するということは、私としても地球にとってもむしろ喜ばしいことなのではないか、というふうに思っております。
【加藤委員】 分かりました。ありがとうございました。
【足立主査】 事務局の方、お願いします。
【稲田戦略官】 事務局から1点ですが、いつ頃に実現可能かというのは、ビジョンの面もあるのですが、技術的な側面もあろうかと思います。
残り3名の専門家のプレゼンもございますので、目標をいつ設定するかというところに関しましては、そのプレゼンの後に、御議論いただいてはいかがかと存じます。
【足立主査】 ありがとうございます。他に何かコメント、御意見はございますでしょうか。村木委員、お願いします。
【村木委員】 今回の目標をどこまで広げるのかという議論は、また後ほどになるとは思うのですけれども、一つだけ、ここは入れた方がいいのではないかと感じているのは、宇宙への応用の文脈のところです。
やはり、私がサイエンスコミュニケーションの事業を長くやってきて、宇宙という言葉に対する、特に若い世代のわくわく感といいますか、興味の持ち方というのは、かなり格別なものがあるなと感じています。
ですので、発電とか革新的な技術という言葉だけではなくて、あるいは地球の問題を解決するためにメインでやっていることだとは思うのですけれども、今回の実現すべき技術の応用分野の中に、元々宇宙分野というものも書かれていたと思いますので、目標案といいますか、実現する、達成シーンや、世界構図のどこかに、はっきりと宇宙に船出することを支援する強力なツールになるということを、どこかに、もし盛り込めるのでしたら、特に若者世代への浸透の仕方というのは、強固なものになるのかなというふうに考えておりますということを一点最後に述べさせていただきたいと思っておりました。
【足立主査】 先ほど、武田委員の方からも、プラネタリー・バウンダリーという言葉が出ていましたけれども、ただそこまで広げてしまうと、宇宙移住や宇宙ということ自体が一つのMS目標に値するのではないかなというくらいの、大きなテーマになるのではないかなと思います。
宇宙に対する研究開発というものを、この核融合というMS目標の中で実施していくのかということが、私には少しイメージできないというふうには思ってしまいます。
他、何か御意見ありますでしょうか。近藤委員、お願いします。
【近藤委員】 村木委員、プレゼンテーション本当にありがとうございます。目標設定の「Inspiring」、「Imaginative」、「Credible」のバランスをどうするかという話だと思います。村木委員は、ムーンショットアンバサダーをされているということで、他の事例を御存知だと思います。
私は、他のMS目標については、詳しくは分かりませんが、核融合というのは、これまでずっと夢のエネルギーと言われていて、「Inspiring」、「Imaginative」というところに注目されてきたかと思います。
そのままの延線上で考えていくのか、「Credible」な部分は足りなかった部分があると思います。例えば、実現までの期間がずっと後ろに延びてきているといったことがありますが、むしろそういうところに着眼した目標設定にしていくということも重要ではないかと感じました。
【足立主査】 ありがとうございます。吉田主査代理、お願いいたします。
【吉田主査代理】 先ほどの足立主査のコメントについて、簡単にお話しいたします。宇宙と核融合の親和性についてですけれども、核融合エンジンという概念が、かなり前から提案されております。いわゆるプラズマ宇宙推進機ですけれども、そこに核融合エネルギーを使うというアイディアがあって、これは、米国にもそういうセンターもあるようですけれども、基礎研究も行われているので、宇宙空間への展開ということと、核融合エネルギーというのは、シンパシーがあり、関係があるということを申し上げます。
【足立主査】 分かりました。
そういう核融合に特異的に絡んでいることに関しては、おそらく、MS目標の中に入るのは明確だというふうに私も感じます。
他、いかがでしょうか。よろしければ、次の議題の方に移りたいと思います。
それでは、議題2「社会実現に向けて必要となる取組について」に入っていきたいと思います。
前回も議論をしたわけですけれども、理想的な未来像を見据えて、目標を達成するためには、どういったシナリオが必要か、また国際連携、分野、セクターを超えた連携はどうあるべきかということで、起こりうる倫理法的社会的課題およびその解決策など、バックキャストに基づき検討していただきたいというふうに思います。
ここでは、核融合の専門家である吉田主査代理、宇藤委員、飛田委員のお三方に連続して御発表いただきまして、その後また質疑応答、意見交換を行いたいと思います。
それではまず、吉田主査代理より御発表をよろしくお願いします。
【吉田主査代理】 ありがとうございます。私は、核融合、プラズマの専門家の立場ですから、むしろシナリオの部分ということが求められていると思いますけれども、まずそれに先立ちまして、先ほど稲田戦略官から、MS目標とはどういうものであるべきか、ということの説明があったことを受けて、これまでの議論で感じているというところを、最初に述べさせていただきたいと思います。
まず、目標と方法ということでありますけれども、今までの議論はどちらかというと、やや技術的、理論的、専門家的な方法論に偏っているような印象をもって聞いています。そういった中で、やはり核融合によって生み出されるものは何かということを、もう少し、豊かな未来像ということで述べるべきではないかということで、少し述べさせていただきます。
核融合によって生み出される安定的で豊富なエネルギーは、地球規模の危機を解決するエネルギー源であると言えます。エネルギーという、その言葉の原義は、様々な変化を起こす能力のことですけれども、積極的なアクションを可能にするエネルギー源を持つということ、これによって、高い自由度と安定性を持つ社会を実現したいということが目標だろうというふうに思います。
そういった中で、例えば、サイバー空間であるとか、先ほどもありました宇宙空間などの未知の空間への挑戦が展開しています。サイバー空間ということであれば、いわゆるDXとGXが両立するのかという議論があって、実はDXを進めようとすると、莫大な電気エネルギーが要ると予測されていまして、そういった中でGXと両立するエネルギーの可能性を考えるとなると、やはり核融合エネルギーが重要だと言えます。
それから、核融合は非常に豊富で安定的なエネルギーになるということが期待されるわけで、そういうポテンシャルを、気候変動に対する耐久力、あるいは回復力を持つ未来の実現につなげていくことが必要だと考えます。気候変動の転換点を超えつつあるということも指摘されている中で、人類の活動が縮小しないためには、多くのエネルギーが必要だということも重要なポイントだと思います。
それから、「“地”政学から“知”政学へ」というキャッチフレーズが提案されましたが、これについては、もう少し高い次元からものを考える必要があるのではないかと思います。紛争からの脱却へ向かうような社会、そういった概念そのものが変わってくるような、豊かさがある社会を実現したいというふうに思います。
方法ということに関しては、核融合の活用の多様性を引き出すということが、ここの議論のポイントかと思います。核融合で発電をしてエネルギーを出すというものが、今までの基本的な構想だったわけですけれども、実は核融合というのは、もう少し多様な活用の道があり、発電炉だけということではなくて、もっと違う形での核融合の活用ということを打ち出す中で、時間的にもう少し早い利用の可能性を示すようなプランを考えることが、基本的な戦略として重要ではないかと思っています。
多様な規模の,エネルギーとしても電力や水素、あるいは粒子のエネルギーという次元もあろうかと思います。そういった応用も想定することによって、ここに書きましたような、文明のグローバル化に飲み込まれないような、「文化」の継承を強靭化するというような取り組み方が方法論として必要ではないかと思います。
社会実装に向けたシナリオということでは、まずステークホルダーの関心を開発するということが大事で、このステークホルダーの中に産業界を含めて考えていくということが、内閣府から出されたフュージョンエネルギー・イノベーション戦略の重要なポイントではないかと思います。産業界の参画意識をどのように開発していくのかというと、やはり一本槍ではない螺旋的な発展ができるような構想が必要だと思います。
それから、社会、国民、世界に対してアピールするためには、果敢な挑戦の場として、分野を超えて、創造性を発揮できるようなシステムを作ることが必要で、そのためには核融合研究を学際化して、いろいろな分野の人が入ってこれるようにする、リカレント教育を充実させて、核融合研究の人的な広がりを大きくしていくことが必要ではないかと思います。それから、人類の置かれた状況に対する理解を深めていく中で、豊富で安定なエネルギーが必要だということを理解していただくことも必要です。
次に、実施すべき研究課題について。具体的にどういう研究課題を実施すべきかということは、MS型研究開発制度は公募研究でありますので、ここのところにあまり弾を詰めてしまうようなコメントを今すべきではないと思いますので、むしろ選定基準ということで申し上げます。先ほど実は戦略官から示されたMS目標設定の考え方・基準の説明の中にあったことの繰り返しになる部分が大きいですけれども、やはり明確な結論が導かれる客観性を持っている必要があり、学問的な水準が高いことが第一だろうと思います。失敗を恐れず挑戦するといっても、何があったのか分からないで終わるというのが一番いけないので、どのような結論として失敗なのかということも含めて、結論が新しく、かつ明確であることが非常に大事だと考えます。そのためには、方法論の妥当性とともに、新規性ということが重要なポイントになるのだと思っています。
それから、2035年のマイルストーンですけれども、実は核融合で電力を作るのは、ある意味最も難しいターゲットではないかと思います。ですから、もう少し多様な核融合の利用ということを2035年の目標とするのが良いのではないかと考えています。
具体的には、例えば核融合反応で生成される高エネルギーを持った粒子を利用した医療技術や環境技術というようなものをマイルストーンに持っていくのがいいのではないかと思います。
資料の4ページ目は、フュージョンエネルギーの利用可能性を高めるアプローチ・コア技術・インセンティブの例ということでまとめてみました。それぞれのアプローチ、そのコア技術まではリストすればいいのですけれども、研究開発のインセンティブ・他分野への波及効果がどのようにあるのかの分析をしないと、どのような産業界のインセンティブになるのかが見えてきません。他分野とどのような連携ができるのかということがポイントなので、その辺りを分析する必要があるかと思います。
資料の5ページ目は、目標達成に向けた、国際連携の在り方、ということでありますけれども、これも具体例というよりも、プリンシパルの部分を述べさせていただきました。国際連携のためには、「求心力」と「吸収力」、それから「持続力」が必要だと思います。
求心力を構成する要素はどういうものなのかというと、まず第1には、構想力が高くないといけないということです。これはMS型研究開発制度が契機になるべく、開かれた検討の場を構築するということが必要だと思います。それから、実行力も必要ですが、おそらく日本の場合は実行力については、国際的にも信頼があるところだと思っています。しかし、発信力というのはあまり強くないと言われています。発信力をどのように高めるのか、例えば、AIなどの最新技術によるゲームチェンジが必要ではないかと思います。
次に、国際連携から学ぶ力、吸収力が必要でありますけれども、そのためには、学際性を高めることが必要です。国際協力を通じて、表層的な結果だけ得るということではなくて、その深層にある普遍的な知を吸収すること、これが非常に大事です。そのためには、核融合科学という分野を学際的にきちんと捉えて、それを構成している様々な学問要素を十分分析して、協力をすることが必要だと思います。
それから持続力ということも大事でありますが、ここで特に述べたいのは、我が国の知的アセットを確立するためには、やはりしっかりと戦略を持って実施しなければいけないということです。オープンサイエンスを今後進めてゆく中で、知的なアセットを確立することにしっかりした戦略を持って臨む必要があると思っています。
今度は、分野・セクターを超えた連携の在り方ですが、これは先ほどの国際連携と学際連携は相似の関係にありますので、同じように「求心力」「吸収力」「持続力」が必要であります。求心力を実現するためには、「課題の分節化」、この分節化というのは、誤解を招きかねない言葉でありますが、言いたいことは、普遍性のある意味づけが必要であるということです。つまり、研究プロジェクトの内容を、一般的で、学際性が高いものとして、これを意味づけていくということが必要だと考えます。
最後の7ページ目には、分節化、学際化を進めていくということの実例で、私の在籍している核融合科学研究所で進めていることを少し紹介して、イメージ例として出させていただいています。核融合研究を構成している様々な要素的な学術の意味を一般化して他分野と共有することによって、様々な分野との連携が可能になると考えております。こういうことによって、他分野と協創的に発展できる連携を構築していく必要があると考えています。以上です。
【足立主査】 ありがとうございました。それでは、引き続きまして、宇藤委員の方から、御発表をお願いしたいと思います。
【宇藤委員】 私の方からは、社会像実現に向けたシナリオとそのための研究開発課題、またそれに向けた連携の在り方について発表したいと思います。
まず本発表で、社会像実現に向けたシナリオというところで、私はシナリオをお話ししますけれども、その時に、私の中で、まず前提としたターゲットとして、社会像について、まず最初に述べておきたいと思います。
MS目標、あるいは実現したい2050年(2060年)の社会像について、ここに記載されておりますのは、第2回検討会で武田委員の方から出されていたターゲット案を記載しています。私もここで示されている、特に社会像について、非常に共感する部分がありますので、まずは、ここをスタートとしたというところでございます。
特に実現したい社会像を、これをもう少し私なりに噛み砕いたものが矢印以降のところでございます。私のイメージする社会像としましては、再生可能エネルギーと共存しつつ、一つの基幹エネルギー源、これは、既存の火力等の、要はいわゆるベース電源となっているもの、それの代わりのものになりうるというところを記載しております。
もう一つは、分散型のエネルギー源です。これは少し幅広なイメージで書いてございますけれども、もう少しベース電源というよりは小規模になるのですけれども、機動性と申しますか、負荷追従性が良くて、あるいは熱源として様々な多様な利用が可能なような、こういったものに核融合が置き換わっているというような社会をイメージしてございます。この時の私のイメージといたしましては、1基だけ核融合が実現しているというのではなくて、より複数、核融合が1基とは言わず、2基、3基、様々な場所に、といったところに、もう既に発電し、エネルギー源として稼働しているというような社会をイメージしたところでございます。
資料3ページ目は、社会像実現に向けたシナリオですけれども、まず私が第1回のところでも紹介させていただきましたけれども、今、原型炉の設計をしているというところでございます。この資料に示した青の矢印、これは現在の日本としての戦略ですけれども、こういったところがまずベースにあるという考えのもとでございます。かつ、まずは炉のかたちとしては、今回扱っているのは革新的な炉というところがありますけれども、個人的には、DTでのトカマク炉、これが一番これまでの実績もありますし、ある意味で小型化できるかどうかは横に置いたとしても、非常に一番近道であろうというところもあって、そこをまずベースとして考えたというところで、この図を出してきてございます。ITERと原型炉のギャップ、これは特に技術的なところ、さらには開発期間としても、短く、要はなるべく早くこの原型炉、ITERが成功できるような、そういった位置づけで考えています。
もう一方で、この原型炉から実用炉、いわゆる社会に実装されているような、そういった実用炉を持った時に、理想的には、このバックキャストのところに書かれていますように、原型炉からの技術ギャップも小さくて、開発期間も短いというところが一番理想だと思っています。
ただ、なかなかこの両立が難しいというところがあって、まず私の考えのスタートといたしましては、今回のフュージョンエネルギー・イノベーション戦略、あるいはこのMS型研究開発制度、そういったところの一番のベースは、やはり先ほど社会像として示しましたように、早期に核融合が実装されている社会と思うと、今、主で進めております原型炉、ここからの技術ギャップ、あるいは、特に私はここで絵を描いていて思ったところですけれども、作り始めてからある程度、リードタイムといいますか、運転開始までの期間が短いといったところ、そういった観点なども解決しないと、ある程度原理実証してから、社会に実装していくまでの時間が非常に長くなるのではないかというところは、設計等、開発等に携わっていて感じている部分ですので、こういったところを特に中心に、実現に向けた、必要な研究開発ということで、このあとお示ししようと思っています挑戦的研究開発の分野、領域の課題として設定したというところでございます。
資料の4ページ目は、先ほど申しました挑戦的研究開発の分野・領域及び研究課題というところで、少し細かいところを記載しております。どうしても既存のDTトカマク炉等での実用というところを一番頭に置いて記載したところですので、かなり細かいところになってございますけれども、こういった課題があるのではないかというところです。
いくつか細かいところがありますけれども、特に炉システムの部分です。この部分の項目としては、革新的炉システム概念の構築というふうに書いていますけれども、ここは非常に重要だと思っています。もちろん、キーワードでよく聞きます超伝導の開発といったところももちろんありますけれども、原型炉の設計等に携わっている身としましては、一つだけが革新的なものができたとしても、実用まではいかないというふうに思っています。
実用までというのは、実際的に核融合炉として発電して、社会に還元、実装されるというところまでは、一つの技術を開発して、例えば、高温超電導が成功したから小型の炉が核融合として稼働できるかというと、私は難しいと思っています。ですので、そういったところをインテグレーションする部分も非常に重要だと思っていて、敢えてここで炉システムというふうに書かせていただいております。
この観点は、第1回検討会でも、東北大学の飛田先生が御指摘されたと記憶していますけれども、私も本当に同意するところでございます。
ですので、例えばですけれども、高性能な小型のプラズマが閉じ込められます、となったとしても、もちろんその時にはおそらく、高温超伝導等、今、世界のスタートアップ企業で設定されていますけれども、それだけではなくて、例えばしっかり遮蔽できるもの、あるいはダイバータ、要は熱をしっかり除熱できるもの等、あるいは、運転したはいいものの、もう交換できませんといったものですと、結局、稼働率の部分が問題になるかと思います。1回壊れてしまったらもうおしまいですとか、そういったところは最初は華々しく発電できるかもしれませんけれども、将来的に長いスパンで、しっかり核融合炉が社会に実装されるということを思うと、そういった技術、ここでは保守技術というかたちで書いていますけれども、そういったものも必要だろうということで書いています。
あとは製作技術のところです。こちらは、先ほどシナリオのところで申しましたけれども、概念が決まって、いざ作るとなった時には、少なからず核融合炉、今、小型化というところで、各国で作られていますけれども、とはいえ、大型の構造物だと思っています。ですので、そういった大型構造物を比較的簡易に作れるような、そういった製作技術というものも、幅広く、要は複数台、核融合炉を実装していくという時には必要だと思っています。
あとはプラント技術、こちらは革新的炉システムのところとも関係しますけれども、多様に、要は核融合を熱源として扱って、いろいろなところで多様な用途として使っていくという観点でも、こういったプラントの項目にあるような、そういったところの開発が必要かなということで書いています。
冒頭で、ここではDTのトカマク炉を前提としましたというお話をしましたけれども、この炉システムの革新的炉システムの概念というところで、トカマク炉あるいはDT炉とか、そういったものに限らず、何か実現性があるような概念が出た時には、こういったところの項目で、ある程度検討が進められるかなと思ってのところでした。
次に、もう少し具体的なタイムスパンについてです。2035年には、どういったマイルストーン、達成すべき目標を据えるべきかということを示したものがこの5ページ目になっています。
まず、2035年に達成すべき目標としまして、私の方で考えましたのは、革新的な閉じ込めの実証、原理実証かもしれませんけども、あとは革新的な要素技術の実証です。
特に、この2035年で重要となると思っていますが、研究開発のところで、先ほどの表の中では、太字で記載していた部分が、特に、革新的な閉じ込めの実証などが重要になると思っている部分でしたので、そういったところが特に研究開発項目として考えているところです。
その波及効果についてでございますけれども、例えばですが、先ほどあったような研究開発を進めることで、高温超伝導の技術応用により、既存の従来機器の置き換えで、例えば、航空機推進用の超伝導モーターですとか、発電機、あるいは洋上風力の全てを超伝導の発電機にするなど、そういったところでMS目標の一つの目標としてもありました、CO2の削減などにも寄与されうるかなというふうに考えているところです。
もう一つ、慣性力、あるいは同期力の確保というところで、冒頭の社会像のところで、再生可能エネルギーと共存してというところにも関係しますけれども、こういったところに高温超電導技術を応用することで、仮想同期発電用のSMESですとか、そういったところを組み合わせたようなエネルギー貯蔵システムにも応用は可能になっていくのではないかなというふうに考えたところです。
その他、先ほど挙げました、研究課題の中では、例えばダイバータと書いていた、いわゆる、高除熱機器などの技術、あるいは材料開発は、宇宙・ロケットへの応用も考えられますし、3Dプリンティング等の製作技術というところはもう少し複雑で、かつ大型の機器、航空機等への応用も期待できるかなと考えているところです。
最後になりますけれども、資料の6ページ目は目標達成に向けた連携の在り方についてです。特に求められておりましたものが、国際連携及び分野・セクターを超えた連携といった部分です。
まず国際連携に関してですけれども、こちらフュージョンエネルギー・イノベーション戦略にも記載されており、イノベーション拠点を国内に形成して、その利用というかたちで国際的な連携が良いのではないかと考えているところです。
ただその中で、日本が先んじて、こういったイノベーション拠点を形成することによって、日本が国際的な核イノベーションの開発の中心になり得るのではないかというふうに考えているところです。
分野・センター間の連携ですけれども、ここは、私は非常に難しくて、いろいろと考えて調べたところですけども、一つ見つけたところが、今内閣府で推奨されております、Society5.0というものを見つけて、非常に良いなと思って記載させていただいたところです。
と言いますのも、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の中にも、技術マップを活用して、様々な中小企業をはじめ、いろいろな企業の技術を活かして、という話がありましたけれども、まさにSociety5.0で提唱されているように、様々な分野のデータなどを、いわゆるビッグデータとして扱って、それを還元あるいは共有することで、新たな価値を生み出すということで、一分野に限らず、特に分野間で、こういったような考え方、あるいはシステムを利用して進めていくというのが良いのではないかなと思ったところです。私の方からは以上になります。
【足立主査】 ありがとうございました。それでは、続いて飛田委員の方から御発表をお願いいたします。
【飛田委員】 資料2-3「社会像の実現に向けたシナリオと課題」について説明してまいります。
MS目標を考える上で、冒頭稲田戦略官から御説明があったように、わくわくするというものがあるのですけど、一方で、クレディビリティとか、リアリティはどうなのかというのが、専門家の立場としてはあります。そこで、どこをターゲットにするかというのは、まず私のイメージを共有してから、こういう課題ではないでしょうかと提案した方がよかろうというふうに考えましたので、まずは、核融合の将来像というのをまとめてまいりました。
情緒的な言い方になりますけども、手を目いっぱい伸ばして、しかもジャンプして手が届くか届かないかくらいのターゲットとしては、このくらいではないかというような、核融合炉構成を考えたものです。
革新的な小型炉を目指すというところには全く異論はありませんで、その下の枠のところを説明してまいりますけども、現状の研究開発の進捗というものを考慮すると、閉じ込め方式としては、小型トカマク、あるいはレーザーが中心になるのではないかというふうに思います。
それから燃料ですが、これについては、私自身は重水素、それからトリチウムを使うD-Tの燃料というのが、やはりターゲットで、中性子が全く出ない、あるいは中性子の発生量が少ないという、いわゆる先進燃料と呼ばれる、D-D、プロトン-ボロン、それからD-ヘリウム3というのは、核融合のシステムとして考えると、もちろん反応としてはあるのですけど、桁違いに困難になります。そういう意味で、私はこういう先進燃料の技術というのは、次世代以降の技術で、まずはD-Tを目指すのが合理的であろうと考えております。どれくらいの距離感があるかというのを、少し具体例というと、おそらく、こういう先進燃料で核融合炉が実現できるのであれば、D-T燃料を使えば、おそらくテーブルトップで超小型の核融合炉というものができて、わざわざの増殖ブランケットという、非常に技術的に難しい機器を使わなくても、例えば、ボンベ、カセットを核融合炉に繋いで、超小型のテーブルトップの核融合炉に燃料供給して、使い終わったら、ボンベを替える、そのまま核融合炉自体は捨ててしまうなど、そういうふうにした方が、そういうものが実現になるくらいの距離感だと思っています。
次に考えるのは、小型の核融合炉を目指すとなると、では、電気を作るのが得かどうかというところが実は重要で、小型になると核融合炉は出力があまり出ません。核融合炉は、プラズマのボリュームで出力を稼ぐ装置でして、小さくするということは、出力が出ないということを意味します。別な言い方をすると、インプットパワーに対する出力のパワーが少ないので、要は電気を作ったとしても、他のエネルギー源と比べると非常に高価な電気になります。そういう意味では、発電という面で見ると、小型炉の場合、核融合は劣勢となります。では、どうするかですけど、電気ではなくて、発電以外の、例えば、水素製造など、また別な使い方、利用の仕方を考えた方がよろしいのではないかと思っています。
また別の側面から考えると、放射性の核種を使いますので、これをどうやって安全に閉じ込めるかという側面もあります。この点について言うと、安全性を担保するのは、トリチウムとかの燃料を閉じ込める、バリアになりますけども、冷却材として、例えば、加圧水を使うと、漏れた時に100気圧以上の圧力が真空容器というところにかかります。ヘリウムでも同じでして、ヘリウムの場合も、80気圧くらいの圧力がかかるので、バリアに対する極めて大きな脅威になります。こういう方法を使わないで冷却するというのが大事で、下に2つ挙げたことをまとめると、液体金属などを使って、直接冷却、それから燃料増殖を行うというのが核融合の魅力を上げていく上では非常に重要なことかなというふうに思います。
これが私の考える核融合の非常に魅力的な将来像で、ある程度リアリティのあるところでは、こういうところになるというふうに思っています。
そういう将来像を踏まえて、課題をブレークダウンするのですけど、まず大きく分けて、革新的核融合炉のプラントの概念ということがございます。おそらく、日本が目指すべきは、機器とか部品のサプライヤーになることではなくて、作ろうと思えば、いつでも核融合炉を作れますという技術を身につけることだと思います。そういう意味では、プラント全体のシステムインテグレーションができるように、概念を自分たちで構想できるということが重要かと思います。
それから、この設計にも関係するのですけど、次に核融合要素技術についてです。核融合というのは、限られたデータから予測して、例えば、設計なり、応用なりを行っていくところですけど、そういう意味で、情報統合型のコンピューティングというのが非常に重要になります。ところが、これを担っているのは、研究機関であったり、アカデミアであったりして、実はせっかくものにした技術や知識、経験が、大体個人に属していて、大きなチームになっていないのが現状です。そういう意味では、この知識が日本の場合バラバラになっていて、非常に勿体ないことになっています。スーパーコンピュータも核融合は大口ユーザーですけど、残念ながら、それも個人か小さいグループの利用に限られていて、お互いがリンクしてないということが大きな問題です。
一方、日本の企業はというと、ゲームソフトの開発やその他いろいろな情報関係の技術を持っていて、おそらくどういうふうにまとめて商品にしていくかということは得意なはずです。ですから、この辺り、アカデミアの側面支援、あるいは後方支援を受けながら、もう少しコミュニティとして有効に活用できるような、情報統合型のコンピューティングというものが育っていくと核融合にとっては、大きな後押しになるのではないかなというふうに思います。
次にプラント技術についてです。先ほど申し上げたように、核融合で電気を大々的に売ろうとしたら、圧倒的に安いコストで電気を作らない限り、なかなか市場には入っていけないという側面がありますので、そうではなくて、強調するとしたら、電気でないエネルギー利用、水素製造、合成燃料、炭素固定、その他の熱利用、これは初回の時に武田委員から御紹介がありましたけども、そういうことに力を入れるのが重要ではないかと思います。
また、資源確保に関して、核融合ならではの資源というものがございます。リチウム、ベリリウム、トリチウムもそうですけど、こういうものについては、運転する上で必須の資源ですので、日本がきちんと技術を押さえるというのが戦略的に重要かと考えます。
では、これらについて、マイルストーン、2035年とそれから2060年の達成目標を考えるのですけども、横目で睨まないといけないのは、欧米の核融合ベンチャーの動向です。コンパクト炉の開発を2030年代の前半に計画していて、2030年代の後半には、発電とグリッド投入というのを構想しているということなので、ここと大幅に遅れがあっては、あまり競争力が保てないので、こういう目標設定をしてはどうかということで、それぞれについて、記載したものが、資料の3ページ目です。
核融合炉の概念については、少なくとも2035年には、日本独自のプラント概念というものを考案できないといけないだろうと考えております。それから、その他要素技術、細かいものについては、パイロットスケールで技術実証ができており、熱利用についても同様だと思います。
それから、2060年ということで見ると、革新的小型炉の実現ということで、これは達成されている必要がありますが、キーになる技術を日本が押さえているのであれば、ここについては、日本が割と良いポジションで国際協力で、外国の大型炉のプロジェクトに参画できるのであれば、そういうものも一つの方向かなというふうに思います。それから技術は、核融合炉に実装されている必要がありますし、あとプラント技術についても同様ですけども、プラント技術について重要なのは、要は熱をどうやって利用するかというところにありますので、実は熱源は核融合にこだわる必要ありません。そういうことで、このプラント技術が実証できれば、核融合以外にも転用していくことができるので、スピンオフの候補としては、割といい球になるかなというような気はします。資源については、量産化の他に、低コスト化というのが重要なテーマになろうかと思います。
4ページを御覧ください。連携の在り方ですけども、核融合炉というのは、先進技術の集合体であって、巨大なシステムです。ですから、これを、例えば2035年で達成しましょうと言っても、国内の技術を結集しても、おそらく全部をカバーすることはできないと思います。中短期になるのであれば、尚更で、国際連携というのは、かなり重視する必要があります。
そういう国際連携の中で、仲間に入れてもらうためには、技術的優位性というものをきちんと確保しておく必要があって、そのためのMS型研究開発制度を有効に活用しましょうということです。
2番目のところは、他国の規制・基準・標準化とありますけど、これは市場に入ってきた時のルール作りになるので、ここには、日本もしっかりと入れるような存在感を示しておくのが重要だと思います。
あとプロジェクトに具体的にどう参画するかですけども、おそらく企業としては、自分の技術を売れるのであれば、枠組みを特に用意しなくても、どんどんそういうものに入っていくと思うので、ここはあまり心配していないのですけども、知財をどう確保するかということが重要です。
あと核融合で重要なことは、これまで技術として確立していない資源というものを入手しなければなりませんので、金属資源の保有国と早い時期から連携しておくということが大事だと思います。
次に分野、それからセクターを超えた連携ですけども、nuclear techについては、これは企業というよりは、国や研究機関が主体となっていますので、ここも上手く分担することが大事だと思います。
それから安全性ですけども、核融合に関するMS目標が策定され、実際にこの制度を利用した研究開発が始まって、本当に上手く進んだ時には、今、幅広いアプローチ活動とかで行っている研究開発よりも、もっと早くの段階で核融合の安全性が問われるようになると考えられますので、ここについては、核融合以外の分野との協力が特に重要と思います。安全性のような、センシティブな問題については、開発主体がいくらこうだと言っても、なかなか社会は聞いてくれないので、開発主体でないコミュニティとの連携、支援が有効であろうと考えます。
それから、核融合のエネルギーをどういうふうに利用するかということについては、エネルギーの供給事業者を含む専門家と連携していくことが重要であるというふうに考えております。
また、核融合特有の金属資源、鉱物というものがございますので、備蓄の仕組みについても早期に考えていく必要があろうかと思います。以上で説明を終わります。
【足立主査】 ありがとうございました。3名の先生方からの御発表、非常に勉強になりました。皆様の方からコメント、あるいは質問はございますでしょうか。武田委員の方からお願いします。
【武田委員】 委員の皆様、御発表大変ありがとうございました。委員の各皆様からは、本当に私が若い頃から大変勉強させていただいておりますが、本日も大変勉強させていただきました。
その中で、この中間とりまとめのお話にも被ってくるかも分かりませんが、前半のこういったビジョンの一連の御発表、並びに今回の皆様方から御発表いただいた、研究の課題を含めたような内容には、まだやはり若干の距離感、齟齬があるということで、今回のようなバックキャスト型の設定の難しさと申し上げますか、足立主査、事務局の苦労がしのばれるなというところでございます。その中で一点、最も重要な論点としまして、やはり2035のこの課題設定の中で、発電という言葉が中間とりまとめで出てございますが、ここについてどういった考えをこの検討会として考えていくかというところがあろうかというふうに思っております。
委員の皆様方からは、研究者として、実現が難しいことを書きたくないといった御意見もございましたし、私個人の見解を申し上げますと、この2035年の発電開始というものは、欧米の民間では一般的に言われている目標でございます。それを事務局としておっしゃっていただけるということは、むしろそれを、後押しをするような、安全規制でございますとか、場合によっては、法整備基本法ですとか、そういったところについて、本腰を上げて前倒しに取り組んでいただけるというような意思表示であるというふうに、私としては考えております。そういった意味では、大変前向きに考えているところでございますが、その中で、吉田主査代理、宇藤委員、飛田委員からございましたのは、この2035年の核融合の実用化というものを、グリッドへの送電でなくて、それ以外の用途の実用化実証をもって、成功というふうに定義を変えるべきではないかといったような論点であったというふうに考えてございまして、こういった点について、もし委員の皆様、もしくは事務局から何か追加で論点があればというふうに考えてコメントさせていただいた次第でございます。以上です。
【足立主査】 吉田委員の方からお願いします。
【吉田主査代理】 繰り返しになりますけれども、核融合によって発電するというのは、実はハードルが高いことです。何をもって発電というか、そこの定義をすごく曖昧にして、入れた電力よりも、少ない電力を出しても発電だというのは、これはほとんど詐欺だという話になるので、私としては、やはりそういうことは避けるべきと思います。本当の意味で発電プラントを作るというのは、ものすごくハードルが高いわけです。そのため、様々な核融合の利用可能性というものを開発しつつ、最終的なターゲットとして、発電、とりわけ期待が高いベースロード電源を目指していくという戦略かと思います。例えば、宇宙開発にしても、まず近いところに到達し、だんだん遠いところまで行くということになっているかと思います。 リアリティということを考えると、そういったふうな考えで進めていくべきだと、私は思います。
【足立主査】 加藤委員、お願いします。
【加藤委員】 宇藤委員に質問です。スライドの中で、2045年までに原型炉を作るという話がありました。これを作るにあたっては、どうしてもD-T反応でいくとなりますと、トリチウムと重水素の反応、それから中性子に関わる反応をするわけです。そうすると、その研究はいつから始めるのでしょうか。2045年に、D-T反応するということは、D-T反応の基礎実験というものをその前にしなければいけないと思うのですけども、どこでその研究を始めるのでしょうか。
【宇藤委員】 D-T反応について、ここで前提としましたトカマク炉の場合には、今まさに建設中のITERで行うと現在の戦略ではそういうふうになっていますので、ここで示しております原型炉も、その前提になっています。
【加藤委員】 国産の技術はそこでは出てこないのですよね。ITERも今、研究を止めていると思います。ですので、ITERが倒れてしまうと、ここで検討しているMS目標にも間に合わないということになってしまうのでしょうか。
【宇藤委員】 現在の戦略の場合には、そういうふうにはなるかとは思います。
【加藤委員】 やはりトリチウムが出ますので、かなり置き場所も重要になるかと思われます。これは原型炉施設に少しだけ置くのですか。
【宇藤委員】 基本的には、プラント内には、トリチウム回収系の建屋等もありますので、既存の想定している原型炉のことを申しますと、そういったかたちになります。
【加藤委員】 分かりました。どうもありがとうございました。
【足立主査】 近藤委員、お願いします。
【近藤委員】 目標というか、実現する内容に関して、やはり核融合炉の発電で、ベース電源にしていくのは、私も全くイメージが浮かばなくて、火力発電の場合、7000億kW発電していますので、核融合で本当にそれに置き換えられるのかといった点が、どうしても疑念が拭えませんでした。
しかしながら、先ほどの先生方のお話を伺っていますと、そういうことではなくてということで、私なりに理解したところですと、水素と製造の効率化等によって、カーボンフリーに向け、解決的に核融合が寄与していくということなのかなと思い、そうであれば、非常に理解が進みます。
2点目ですけれども、これは目標に関わることでもあるのですが、「地上の太陽」という言葉が使われていて、すごく野心的でいいということではあるのですが、これは感覚論で恐縮ですけども、私は少し怖いなというふうに思いました。地上に人工物の太陽を作るというところが、少し怖い感じがしておりまして、やはりここに関しましては、軍事転換可能な研究を避けるべきといった言葉が入った方がいいのではないかと考えております。吉田主査代理のお話の中にも、社会福祉といった言葉もありましたし、そういったニュアンスを目標に入れるのか、達成するというところに入れるのか、検討されてはどうか、というふうに思いました。
それから3点目、何人かの委員の方からの発表に、研究内容が入っていたので。もちろん今後の第4回目以降ではあると思うのですけれども、1点重要だなと感じたことがございます。それは、やはり技術開発の技術だけの研究にしてはいけないということです。制度や人の意識が追いつかないまま、技術開発、他に間に合わないからやっていこうということだけにしてしまうと、社会でやはり置き去りにされてしまうなというふうに思いました。もちろん、危ない側面、危ないというのは何をもって危ないということにするのかという、そこの定義というのは難しいですし、研究の自由、創造の自由ということがありますので、そういった議論を、やはり今回の研究対象にしていくということも、ぜひ今後御検討いただけたらと思います。以上になります。
【足立主査】 ありがとうございます。事務局、お願いします。
【稲田戦略官】 先ほどの加藤委員からの御質問について、簡単に補足をさせていただきます。
核融合のD-T運転をするための要素技術というものは、実はもう既に始まってございまして、例えば、ITERのD-T運転のためのトリチウムの回収施設なんていうものが茨城県の東海村に実験施設があり、我が国でも、既に研究開発が進んでいるところです。一方、宇藤委員から御説明がありましたのは、実際に炉として燃やしてみるという実験でありまして、ここの部分に関して、既にEURATOMのJETというイギリスの炉で研究された結果、一定の知見を得ており、これは国際共同で行っているのですが、その次にITERで大きく燃やしてみるといったことを予定しております。その成果については、各極で共有した上で、次の運転というのは、各極の原型炉で実験を行う予定であります。また、これらの研究で得られた知見は、実はパブリックの利用だけではなくて、民間にも広く共有するということを予定しております。
したがいまして、突然大きなものを炉で燃やすというところに違和感を感じられたと思いますが、世界で連携しながら、取り扱い技術というところは、既に研究開発が進んでいるというところの文脈を御理解いただけるとありがたいと思います。
【足立主査】 ありがとうございます。豊田委員お願いします。
【豊田委員】 飛田委員と吉田主査代理の目標案のところで、明確に核融合を、というような文言があったと思っております。もちろん、今皆様に御議論いただいている革新的な閉じ込み方式等は、私個人としても非常に期待をしておりますが、この中に、例えば、常温の核融合や今議論しているようなD-T反応などではないものも、このMS目標で阻害するものではないという理解でいいのでしょうか。というのも、事務局のアイディアだと、例えば、フュージョンエネルギーなど、明確に核融合という言葉を使っていなかったりはするのですけども、その辺りは専門家の皆様はどのようにお考えになられているかをお聞かせいただければと思っています。
【足立主査】 吉田主査代理お願いします。
【吉田主査代理】 核融合というのは、物理学の概念で、様々な核融合反応がありますが、今、発電のシステムで考えられているのは、先ほどから話題になっているD-T反応を利用した核融合エネルギー発生です。しかし、他にいろいろな応用を考えるならば、様々な核融合反応が候補になります。それがどういう環境で起こるのかもバラエティがあり、例えばミュオンを触媒のように利用した核融合があります。これはサイエンスとして、精度の高い研究もあり、そういうふうなものも、私は十分核融合研究のスコープに入るのではないかと思います。
他方、昔話題になった、常温核融合というものもあります。この研究については、ポジティブな結論が出せない状態が長年続いています。そういうものがプロポーザルとして出てきたとするならば、限られた研究期間でどうやって確定的な結論を出す計画になっているかといったところを審査していく必要があると思います。そういった厳密な評価基準を持ちつつも、やはり核融合ということを、ある程度幅広に捉えて、様々な応用可能性ということを考えていくべきではないかと、私個人としては考えております。
【豊田委員】 ありがとうございます。
【足立主査】 他にいかがでしょうか。いろいろかなり興味深いポイントが議論されたというふうに思いますし、特に発電ということだけでないアウトプットというものもあるというのも、明確に議論されました。
それから、要素技術もさることながら、システムインテグレーションという言葉が皆様の方からも出て、私も企業に行っていると、こちらの方の技術というものは、非常に大切だなというふうに思いますし、要素技術のところは、やはり日本の非常に強いところではないかなと思うのですけども、それをしっかりまとめて、システム化して、そして社会実装していくというところの技術というものも、しっかり構築していかなければならないかなというふうに感じました。
あとは、本当にそのまま新しいMS目標として採択されるような、具体的な研究テーマなんかもいろいろと出てきたということで、非常にクリエイティビティの高いお話だったかなというふうに思います。
それでは、事務局の方から、議題3「中間とりまとめ案について」御説明をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。
【稲田戦略官】 それでは、資料3に基づいて、中間とりまとめ案について御説明させていただきます。
併せて、昨日は内閣府の木曜会合で、公開の場で、この概略について、CSTI有識者会議の議員に御説明を差し上げました。そのコメントもいただいておりますので、それも併せて御説明します。
まず、資料3についての御説明でございます。資料3の中間とりまとめ案に関しましては、これまでの御議論を全て記載し、それを論理秩序立てて、理論的に並べました。
即ち、第1に挑戦的な研究開発にあたるに関して、その設置の背景について説明した上で、その根拠となるところを武田委員のプレゼンから引用しておりますが、どのような状況の認識で検討したかを書いております。一方、この部分というところを、どういうふうに横に広げていくのかといった話についても記載しております。
それから研究開発に関しては、潜在的に取り組むべき、大きな課題を、幅広く募集し、専門家によるレビューを経て、全体を統括するPDの下で研究開発を実施することが有効という観点の中、支援の在り方について、4ページ目の(3)に示すようなところを踏まえつつ、MS型研究開発制度でやってはいかがだろうかということを記載しています。
そして、5ページ目以降が、今までの議論を定めたもので、ここから先が、本日の議論も含めてのフュージョンエネルギーに関する新しい目標案に対する内容です。目標の案の名称としては、先程来ございました、前半の議論及び後半の技術的なところを踏まえますと、事務方としては、前半で議論した観点から2060年くらいの年限を仮置きして議論することが適切だろうという判断のもと、こちらで一旦仮まとめをしてございます。
実現したい2060年の社会像については、総論として、このところについては御議論がなかったと思いますが、エネルギーシステムの実現を図ると共に、まず第1点目、カーボンの負債を、マイナスからゼロにするという概念のところで、社会像を示し、さらにその核融合によって、社会の活動の領域が広がる、ゼロからプラスにするという観点で、社会の部分について記載しています。併せて、そのターゲットとしまして、2060年の達成シーンとしましては、資料に目標4点を示しております。即ち、「安定的で豊富なフュージョンエネルギーによるエネルギーの自給自足を実現」すること。それから、「フュージョンエネルギーによる幅広い産業の炭素排出量の抜本改善を達成」すること。あるいは、小型のところについても言及がございましたけれども、「都市の家庭も、遠く離れた村落部も、フュージョンエネルギーで炭素排出量の抜本改善」をすること。最後は、今まで二酸化炭素は増える一方だったのですが、それを逆転させるという転換点を迎える、即ち「大気中の二酸化炭素を回収する、産業革命以来のサイクル逆転をフュージョンエネルギーで駆動」というところを書いています。
2035年の目標としましては、いろいろご議論ありましたけれども、発電をすべきだという議論と、それから発電は非常に難しいというところの議論がございましたので、ここに関しては、一番難しいところを実現するということを考えております。ただ一方、グリッドに接続というところに関しては、やや量的な議論もあって難しかろうということもありまして、電気エネルギーとしてのフュージョンエネルギーを実現しているというところまでを目標として書いてございます。
当該目標によりもたらされる社会・産業構造の変化としては、これも議論いただいております、「エネルギーは“地”政学から“知”政学へ」、「エネルギー限界費用“ゼロ”社会の実現」、「炭素負債(カーボンデット)の返済へ」というところをここに記載してございます。ここのところの書きぶりと全体を通してですが、詩的な表現で言葉足らずなところがありまして、例えば、「エネルギー限界費用“ゼロ”の社会の実現」、これはおそらく、核融合の発電所を作るのに、ランニングコストを一定程度と見た場合、そこからいくら電気を作ったって、燃料代は変わらないから、いくら電気を増やしても変わらないよというところではあると思うのですが、一方、電気代がゼロになるというわけでは、決してないと思います。この辺りについて、これからパブリックコメントをかけるに当たって分かりやすさを追求するかというところには、工夫が必要かというふうに考えてございます。
続きまして、社会実現に向けたシナリオですが、挑戦的な研究開発の分野を課題として、分野について2点、これは吉田主査代理のプレゼンから引用しておりますけれども、様々な分野において、産業界にとってのインセンティブや他分野の波及効果が高いコア技術を実現するとともに、これは宇藤委員の方から引用してきているのですけれども、原型炉の技術ギャップを小さくし、開発期間のギャップを短くするために必要な研究開発をきちんと進めていくというところを記載しております。
それから、研究課題に関しては、これは豊田委員の考え方を多分に引用しておりますけれども、その判断に関しては、吉田主査代理、飛田委員から引用しておりますけれども、明確な結論が決まる、導かれる客観性であるとか、学問の水準の高さ、あるいは方法論の妥当性等々を基に選定をするということを求めています。
続きまして、2035年、2060年における、それぞれのマイルストーンでございますが、ここについては、のちほど、パブリックコメント、専門家の判断のあとに、再度詳細に議論をさせていただくことになろうかと思いますが、マイルストーンとしては、革新的な小型炉を実現するということを記載しております。それから、熱利用の技術の実現が重要であるということは、今日の議論でもありましたので、そこを記載してございます。
そのために、実装する要素技術、あるいは資源確保、低コスト化についてどのようなことをするのか、あるいは波及効果の例として、プラント技術の核融合以外の熱源の応用についてどう考えるべきかというところを2060年では記載しています。
一方、2035年については、フュージョンエネルギーの早期実現に向けた、革新閉じ込めの実証、それから、要は上のところを達成するための要素技術等について記載をしております。マイルストーンに向けた研究開発としては、革新的小型炉・プラントの概念確立等を目指した上で、波及効果としては、炉ができないとしても、その途中段階でもいろいろな応用ができるということ、あるいは、要素技術は、電動飛行機あるいは発電機等の応用も考えますということ、あるいは、ダイバータの超高熱構造というところを、宇宙機、宇宙構造のロケットに応用する、あるいは、製造技術というのは、かなり高度なものがありますので、これを航空機に応用するなどのようなことを記載しています。
目標の達成に向けた国際連携に関しては、やや分かりにくかった部分がありますので、この部分をどのように伝えるかについては、御議論賜れるとありがたいと思います。
最後にELSIでございますが、環境アセスメント、マーケットルール、フュージョンエネルギーの認知度の向上、それの規制基準の在り方について検討するというところを記載しています。本論点については、引き続きの検討課題と考えています。
併せて、この考えについて、内閣府に示した際のコメントとしてですが、アカデミアの方から、核融合というものは、かなり間口が広いところであって、どのようなところが申請して来るかは、よく分からないところがあるとのコメントをいただいております。したがって、あまり間口を狭めるということではなく、入口を少し広めにしたことが重要だろうという御指摘をいただいています。
一方、プロジェクトとして成果を出していくには、適切な現状認識のもと、適切なものについて取捨選択をしていくことが重要であります。これも、研究開発を始める前に1回決めて、それでおしまいというかたちではなく、時事で情報分析しつつ、その現状に合わせて取捨選択なり何なりを行う必要があります。要は、もう既に他のところで実現されているような技術を再度開発するようなことがないように、というような御指摘もいただいているところです。
併せて、達成時期に関して、これは大規模のプロジェクトに携わった先生からの御指摘ですけれども、国内にもしもこのMS型研究開発制度の研究開発で2035年に炉を作るということであれば、それはもう着手していなければいけないということを鑑みると、今日の議論にもありましたように、海外の炉を作ることをもって、2035年の実現と言っているのかもしれないけれども、これは研究開発費を炉にあてて、それを成果と言えるかどうかという御指摘もございました。また、信頼性の観点から、よく議論をした上で、誤解を招かないような書きぶりにした方がよろしいのではないかという御指摘もございました。
一方、高い目標を立てること自身については、否定はございませんでしたので、ここは誤解がないように、というコメントをいただいております。
また、今までのMS課題というのは、新しい研究分野を開いていくというところが多くありました。その観点から見たところ、核融合というものは、やもすると核融合の実現というところにフォーカスしがちであるのだけれども、MS型研究開発制度によって、どういう新しい学理などを開くかについては、具体的にプロジェクトを作っていく際に、よくよく認識するように考えてくださいという御指摘がございました。
【足立主査】 ありがとうございます。これについて御意見を伺えればというふうに思うのですけども、まずは、出雲委員、よろしくお願いします。
【出雲委員】 2035年に実現すること、それから、ここでは2060年になっていますが、私は2050年の方が良いと思います。2050年に達成するためのドライバー、これは結局誰が実現するのかというのを、もう少しはっきりさせた方がいいのではないかと思います。
私は、こういう新産業を実現する、新しい資本主義、経団連が提唱しているSociety5.0社会を実現するメインドライバーは、スタートアップだと思いますので、2035年に核融合ベンチャーを我が国で50社創出することが必要ではないかと考えております。
2050年は、核融合エコシステムを我が国に構築して、核融合技術を社会実装するということが、今回のMS目標で必要ではないかなと思っております。
大学発スタートアップにそんな力があるのかと、当然皆様そう思っていらっしゃるかと思うのですけど、大学発スタートアップというのは、今、日本に3782社あります。その3782社の大学発スタートアップの中から、64社IPOしました。大学発のスタートアップのマーケットキャップの合計というのは、1.7兆円であり、日本の社会に貢献しているのですけれども、3782社作って、64社IPOするということは、大体、大学発スタートアップというのは、50社作ると、1社大成功する計算です。
日本の新しい会社というのは、こんなに成功しないものです。日本の年間の新設の法人数というものが13万社あるのですけれども、13万社作って、50社に1社上場するのであったら、日本は毎年、2600社が上場しているはずですけれども、我が国の全上場企業は3800社ですから、日本の新しい会社が上手くいかないことが伺えます。
そのような中、大学の技術をバックグラウンドに持っているスタートアップは、社会実装にチャレンジすると、非常に大きな成果が出ます。核融合の世界で、大谷選手や藤井聡太名人のような、核融合スタートアップを我が国で1社創出すると、自然と核融合のエコシステムが創出されて、いろいろな分野で、発電だけではない社会実装をそれぞれ行うスタートアップが層のように積み重なって、2050年に核融合技術が我が国に社会実装されるというMS目標にたどり着くことができると考えております。
そのためには、まずボリュームが必要ですので、2035年までに核融合ベンチャーを50社創出することを目指して、そのための基礎的な研究開発投資をしっかり行うことが必要だと思います。日本の場合には、科研費と生み出される論文の数というのは、明確に比例関係にあって、そのR2乗は0.95です。ですから、たくさん良い論文を書いて、たくさん知財を確保していくことが必要です。今、日本の大学は780校あって、年間の知財を創出している件数が約7000件ですけれども、これを核融合分野で増やしていくと同時に、大学の知財をバックグラウンドとしたスタートアップを2035年までに50社創出して、核融合ベンチャーの大谷選手を2035年までに生み出せなかったら、2050年、2060年に、MS目標の実現は、到底できません。
ですので、自分がこの核融合社会を作り上げていくんだという大学発のスタートアップを創出することが重要です。そのための知財、研究に、最初の10年間、12年間、しっかり投資を政府と一体となって、大企業にもやっていただきたいと考えております。
その第2ステージは、1社の核となるメガベンチャーが生まれると、そこが中核となって、いろいろなベンチャーが生まれるのです。今、日本には、大学が作って、企業価値が1000億円を超えるスタートアップというのは3社あります。ペプチドリーム株式会社と株式会社ユーグレナと株式会社ispaceです。私はこの株式会社ユーグレナと株式会社ispaceを両方携わって分かったのですけれども、これらの会社は、MS目標で掲げるようなことを掲げております。例えば、ミドリムシで飛行機の燃料を作って、カーボンニュートラル社会を2050年に達成する。例えば、株式会社ispaceは、2040年に1000人月で暮らす社会を実現するということを頑張っていって、IPOまでこぎつけたスタートアップです。こういった会社が中核となって、ミドリムシの研究の周辺に、バイオ燃料や昆虫食、バイオインダストリーエコノミーというものがだんだん生まれてくるものです。また、株式会社ispaceを中核として、宇宙探査ロボットを開発したり、輸送ビジネスにトライしたりなど、そういういろいろなスタートアップが生まれてきて、エコシステムが構築されるようになります。
核融合も同じように、まず50社創出をして、1社その中核となるようなメガベンチャーを欧米のように、核融合のフィールドで、日本でも創出する必要があると考えております。その中核となるベンチャー企業の周りに、核融合エコシステムを創出して、水素を供給するベンチャーでもいいですし、素材を海外に販売するスタートアップでもいいですし、そういったいろいろなベンチャーを次々に創出して、大学の核融合というものを社会実装することが必要です。このブリッジを行うのが、スタートアップですので、この中間とりまとめに、スタートアップという文字が2回出てくるのですけれども、そんなに重要なプレイヤーだという認識ではないと思いますので、ぜひターゲットのところに、2030年までに50社を創出し、2050年に核融合技術を我が国の社会に実装していくメインドライバーとして、スタートアップ、エコシステムを核融合フィールドでも築き上げていくということは、ぜひ書いていただきたいなと思います。以上です。
【足立主査】 ありがとうございました。村木委員、お願いします。
【村木委員】 稲田戦略官に御質問させていただきたいのですけれども、本日、この検討会で新しく論点として出てきた点というのは、このとりまとめ案に反映はされるのでしょうか。
【稲田戦略官】 本日の議論に関しては、反映するつもりでございます。その反映について、のちほど主査一任でとりまとめるということになろうかと思いますが、具体の方法については、この議論を踏まえたあと、お決めになることだというふうに認識してございます。いずれにせよ、一定程度、今日の議論は、この中間とりまとめをまとめるための議論ですので、その議論は反映します。
【村木委員】 承知いたしました。ありがとうございます。
先ほどの出雲委員の御発言の中でも、ベンチャー企業のことをおっしゃっていたと思いますし、私の資料の中でも、ベンチャーの支援というところも書いており、また、武田委員によるプラネタリー・バウンダリーのお話や吉田主査代理による宇宙も核融合と密接に関連しているなどのお話もありましたので、その点を主査に御判断いただくことだと思うのですけれども、必要なところは検討会の内容をとりまとめ案に反映いただければ幸いだと思い、質問をさせていただきました。ありがとうございました。
【足立主査】 ありがとうございます。武田委員、お願いします。
【武田委員】 出雲委員の方から先ほどスタートアップのお話がございまして、私自身、核融合スタートアップエコシステムの中核となるような、大谷選手のスタートアップを目指して、創業した身でございますので、まさしく欧米においてスタートアップが革新的に取り組んでいるということ、全くおっしゃる通りでございますし、基金も当然でございますが、産学のマッチングなど、政府も含めて果たせる役割は大変大きなものがあるというふうに考えておりますので、ぜひそこは盛り込んでいただきたいなというふうに考えます。
最後に主査にお願いにはなりますが、最近「人新生」という言葉が、ここ5年ほど言われておりますが、それこそ、小惑星の衝突ですとか、それに匹敵するようなことが、人類の経済活動によって引き起こされているということを表す言葉でございますが、私としては、地質時代として、新しくフュージョンエネルギー新生というものが、未来の地質学者によって分かるくらいのインパクトを社会に与えたいと、人類活動を根本的に変えたいというふうに思っておりますので、ぜひそうした夢を売れるようなとりまとめをお願いしたいというふうに考えます。以上です。
【足立主査】 ありがとうございます。非常に勇気の出るコメントでございました。事務局との相談になると思うのですけども、この中間とりまとめ案については、十分議論ができていないと思います。時間の制限ということもありまして、事務局の方がおっしゃっていた、8月8日までに、ぜひ、この中間とりまとめ案に対して、もし追加の御意見、あるいは質問などがありましたら、事務局の方にメールをいただいて、御意見をいただくというかたちで、これを仕上げていきたいと考えております。それを踏まえて、事務局の方でまた案を作成いただいて、それをもう一度メールで各委員に問いかけるというスタイルでどうかというふうに思うのですけども、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、ぜひ8月8日までに、事務局の方に中間まとめ案についての意見をメールいただくということでお願いしたいと思います。
以上、これで終わらせていただきます。皆様大変ありがとうございました。今日は本当に有意義な議論ができたと思います。