核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会(第2回)議事録

1.日時

令和5年7月7日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. ムーンショット型研究開発制度について
  2. 核融合エネルギーが実現した未来社会及び達成目標について
  3. その他

4.出席者

委員

足立正之主査、吉田善章主査代理、宇藤裕康委員、奥本素子委員、近藤寛子委員、武田秀太郎委員、竹永秀信委員、豊田祐介委員

文部科学省

千原由幸研究開発局長、稲田剛毅研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐

5.議事録

【足立主査】 定刻となりましたので核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会(以下、検討会)(第2回)を開催します。
 議事に入る前に、事務局より、出欠状況及び配付資料の確認をお願いします。
 
【髙橋補佐】 文部科学省研究開発戦略官付課長補佐の高橋でございます。本日は、委員8名に御出席いただいております。出雲委員、加藤委員、村木委員は御欠席との御連絡いただいております。
 続きまして、本日の配付資料でございます。議事次第の配付資料一覧に示しております資料1から資料2-3となります。また、前回の検討会において、中国における研究開発の状況についてご質問ありましたので、参考資料として、配付させていただいております。
 会議中は、Zoomの画面共有システムを使って、事務局より、資料を表示させていただきます。
 また、各委員におかれましては、発言いただく際には、ミュートを解除の上、画面の下にあります「手を挙げる」ボタンを押して発言いただきますようお願いいたします。
 なお、御参画いただいている委員の選任理由について、多数の方からお問い合わせをいただいておりますので、改めて、戦略官の稲田より、本検討会の趣旨も踏まえて御説明させていただきます。
 
【稲田戦略官】 文部科学省研究開発戦略官の稲田でございます。本検討会の目的は、フュージョンエネルギーが実現した未来社会を考え、そのビジョンを実現するために必要な研究開発をバックキャストで検討いただくこととなります。そのため、本検討会には、核融合の専門家に加えて、エネルギー問題に明るい方、野心的なビジョンを掲げて活動されている方、国民目線で御助言いただける方など、幅広い分野で活躍されている方に御意見をいただきたいと考え、事務局から委員の皆様にお願いをし、御参画いただいているところでございます。
 
【髙橋補佐】 ありがとうございます。事務局からは以上でございます。
 
【足立主査】 ありがとうございました。本日は、文部科学省の千原研究開発局長、林大臣官房審議官に御参加いただいておりますので、御紹介申し上げます。
 本検討会は、原則公開としております。御発言は、議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。
 それでは、議題1「ムーンショット型研究開発制度(以下、MS型研究開発制度)ついて」に入ります。前回の検討会においては核融合の挑戦的な研究の支援方策について、御議論いただきました。その結果を踏まえ、将来の実用炉との技術ギャップを埋める技術的革新を引き起こすため、挑戦的な研究について、失敗を恐れずに支援していく必要があるという観点から、支援方策としてMS型研究開発制度を活用するのがよいのではないかと複数の委員より御提案がありました。私から、委員の御意見を踏まえて事務局にて更に検討を行うよう指示しておりました。
 それでは、まず、事務局より、支援策についての検討結果について、御説明をお願いできますでしょうか。
 
【稲田戦略官】 それでは事務局よりご説明いたします。
 核融合の挑戦的な研究の支援方策について前回の検討会での御議論を踏まえて、事務局としてはMS型研究開発制度を活用するのが良いのではないかと考えています。前回の検討会では制度について簡単な紹介のみ差し上げたところです。今回は、改めてMS型研究開発制度の概要について御説明差し上げ、議論をお願いしたいと思います。資料2-1をご覧ください。
 世界各国では破壊的イノベーションの先導を狙い、より野心的な構想や解決困難な社会課題等を掲げて研究開発投資が急速に拡大しています。我が国でも、様々な困難な課題の解決を目指し、MS型研究開発制度が創設されました。
 MS型研究開発制度においては、困難ではあるが実現すれば大きなインパクトが期待される野心的な目標を国が策定し、最先端研究をリードするトップ研究者等の指揮の下、世界中から研究者の英知を結集すること、挑戦的な研究開発を積極的に推進し、失敗も許容しながら革新的な研究成果を発掘、育成することがポイントとなっています。このように、基礎研究領域の独創的な知見・アイデアを取り入れた挑戦的な研究開発を推進することで、イノベーションを生み出し、困難な社会課題を解決するとともに次なる基礎研究投資を呼び込む好循環を目指すものとなっています。
 次のページはMS型研究開発制度の特徴についてです。
 1つ目は、先ほど申し上げました通り、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を対象とした野心的な目標及び構想を国が策定することとなっています。
 2つ目は以下の図の通り、複数のプロジェクトを統括するPDの下に、国内外のトップ研究者をPMとして公募することです。
 3つ目は研究全体を俯瞰したポートフォリオを構築し「失敗を許容」しながら挑戦的な研究開発を推進する体制です。
 4つ目は、途中でステージゲートを設けてポートフォリオを柔軟に見直し、スピンアウトを奨励すること、また最先端の研究支援システムを構築することとなっています。
 これまで、平成30年度補正予算で1,000億円を計上し基金を造成しています。そして令和元年度補正予算で150億円、令和3年度補正で800億円を計上しています。
 次のページをご覧ください。これまで、目標設定に向けた3つの領域、社会、環境、経済とありますが、これらの諸課題を解決するべく9つのムーンショット目標(以下、MS目標)が決定され、研究開発が行われています。次のページから各目標について簡単に紹介します。
 目標1は2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現、ということで、誰もが多様な社会活動に参画できるサイバネティック・アバター基盤の構築などにより、誰もが場所や能力の制約を超えて社会に参画できる技術を開発することを目標としています。
 目標2は2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現ということで、脳と腸等、臓器間ネットワークを解明、利用することで、認知症やがん等の深刻な病気が起こる前に防ぐ技術を開発することを目標としています。
 目標3は2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現ということで、人と同じ感性、同等以上の身体能力を持ち、人生に寄り添って一緒に成長するAIロボットを開発することを目標としています。
 目標4は2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現ということで、大気中のCO2の直接回収・資源転換や、プラスチックごみの分解・無害化技術等を社会実装することを目標としています。
 目標5については、2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出というもので、未利用の生物機能等をフル活用することにより、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食糧供給産業を創出することが目標です。
 目標6については、2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現というもので、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる大規模で多用途な量子コンピュータを実現することを目標として掲げています。
 目標7は2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現するということで、主要な疾患を予防・克服し、100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現することとしています。
 目標8は2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現するというもので、台風や豪雨の強度・タイミング・発生範囲などを変化させ制御することで、被害を軽減し、幅広く便益を得るというものになっています。
 目標9は2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現というもので、心の安らぎや活力を増大する技術の確立及びサービスの普及により人々の対立や孤独、うつを低減し、こころの安らぎや活力を増大するという目標になっています。
 最後にムーンショット型研究開発制度の運用や評価指針の概要についてです。
 これから御議論いただくMS目標は、総合科学技術・イノベーション会議(以下、CSTI)に提案され、CSTIにおいて決定されます。決定された目標達成に向け、各省庁が研究開発構想を策定します。策定された研究開発構想を研究推進法人に提示し、研究推進法人はPDの任命及びPMの募集・採択を行います。PDはポートフォリオ案を作成し、研究推進法人が最終決定します。またPDの指揮の下、各PMがプロジェクト計画書を策定した上で、研究開発を戦略的に実施することとなります。
 研究推進法人は、3,5年目及び、8,10年目に外部評価を原則的に行うほか、毎年自己評価を実施することとなります。また、5年目にCSTIがMS目標達成に向けた研究開発の継続・終了を決定することとなります。
 事務局からは以上になります。
 
【足立主査】 ありがとうございます。ただ今の事務局からの説明に対してご質問のある方はいらっしゃいますか。私から一点よろしいですか。MS目標の数はこれからも増え続けていくのですか。
 
【稲田戦略官】 MS目標というのは、解決しなければいけない社会の課題が発生し、それに対してMS型研究開発制度を研究開発に使えば解決できる見込みが得られましたらこれを増やすということが検討されます。
 実際に目標の8、9というのはコロナ禍においてこの状況を打破するためにどういうふうなことを行った方がいいかということを検討した結果、設定された目標です。
 核融合の挑戦的な研究の支援方策をこの制度で新しく行う場合については御指摘の通り10個目の課題になります。以降、いくつ増やすかというところについてはまさに課題がどれだけ勃興してくるか、あるいは課題ができたとしてもそれを解決できるという科学的裏付けができるか、この辺りのバランスになってくると考えております。
 
【足立主査】 例えば他の目標との縄張りであるとか緩衝であるとか、そういうことというのはあまり意識されないのですか。今回の場合、目標4と少し絡んでいるような気がしなくもないのですが、その辺りはいかがですか。
 
【稲田戦略官】 MS目標に関しては基本的に目標を設定する段階において、いつまでに何を実施するというところを考えます。その時点で実現可能になるポートフォリオを組んでいくのです。そのポートフォリオの組み方というのは先ほど申し上げたようにPDが組んでいくということになるのですが、新しい課題が発生した際に、その課題があまりに大きい場合には、自分たちのMS目標の中に包含するのではなく、新しいMS目標として策定した方がいい場合もございます。その意味ですと、完全に同じものは排除してデマケーションは当然行われるのですけれども、中に内包するには課題のサイズがあまりに大きいというものがあった時については、隣接分野のMS目標が立ち上がり得ると理解しております。
 
【足立主査】 わかりました。私の方からは以上ですけれども、他にございますでしょうか。
 
【武田委員】 九州大学武田でございます。
 核融合というものの御支援を力強くいただけるということで、大変心強く思っておりますが、なにぶん長期の時間と多額の研究開発資金が必要になる、いわゆるディープテック領域でございますので、その観点から2つ御質問をしたいと思っております。
 1点目がMS目標でございますけれども、長期的に達成すべきというふうに書かれている中で、目標の1から9のうちほとんどが2050年でございます。目標7のみが2040年というふうに年代が少しだけぶれがございますが、ここについてはMS型研究開発制度について何年というターゲットについて何かしばりというものはございますでしょうか。
 
【稲田戦略官】 しばりというものは必ずしもありません。ただし、現実的には100年後の未来を想定して課題に対する目標を立ててもなかなか具体の策が出てこないものです。このため、目標はその課題を議論してから最長でも30年程度を念頭においています。これは2020年くらいに立ち上がった課題でありますので、それから30年ということで、2050年という目標が多いのですが、我々としては少し遅れてMS目標を策定しようとしていることを考えると、2055年あるいは2060年、もしくは、もう少し手前に達成できるというのであれば、もう少し手前の年代を設定するということも可能です。
 また、最終的な目標を考えるのは当然ですが、その途中段階でどのように社会を変えていくかとういうことも考えなければいけませんので、中間的な今後10年、15年を念頭とした目標も合わせて設定することになってございますので、その点を意識して御議論いただきたいと思います。
 
【武田委員】 ありがとうございます。
 次に基金についての御質問に移りたいと思いますが、MS型研究開発制度の非常に大きなメリットとして、いわゆる基金制度としてその中でポートフォリオの再編が柔軟に行えるところがあるというふうに理解しております。そういった中で、私としてはぜひ目標10を付け加えられるのであればそれに相応した予算措置と言いますか、そうしたところも要望をあげていきたいと考えておりますが、今回この委員会でそういったことのお願いを申し上げることは可能でしょうか。
 
【稲田戦略官】 この検討会においてはどのような目標を策定するかを御議論いただくことになっておりまして、逆にそれをもとに我々が財務当局と折衝いたしまして、必要な予算措置を確保するということになるかと思っています。従いまして予算折衝等々を考える時に、魅力的な目標であり、魅力的な研究課題をいかに組み立てられるかということが、我々がどれだけの予算を確保できるかというところにも直結してございますので、予算を確保できるだけの中身をしっかり御議論いただきたいと思います。
 
【武田委員】 承りました。ありがとうございます。私からは以上です。
 
【足立主査】 ありがとうございます。奥本委員、お願いします。
 
【奥本委員】 少しお伺いしたいのですが、他のMS目標はどちらかというと目的が主で技術的な部分の誓約というふうなものはかなり幅広に捉えられているような感じがしますが、今回核融合を想定したMS目標を立てるという時にどういうところまでを核融合研究の範囲にするのかであったり、そういう定義みたいなものを文科省は想定されているのでしょうか。
 
【稲田戦略官】 それはまず第一義的には委員の皆様の議論によるのですが、我々としての希望を申し上げると、核融合の利用・活用ということを考えるとこれはもう無限に広がります。従いまして利用を考えた時にそこからバックキャストして、核融合をこのように利用するのであれば、どのような技術が必要だということが決まってきます。例えば水素を作りたい場合には高温が必要です。核融合で高温が取り出せますが、いわゆる水冷却型の取り出し温度というものはそれほど高温にはできません。従ってこの場合はヘリウムや金属といった冷却系を研究開発しないといけないということにつながってきます。このように特定の目的を定めて、そのために必要な技術はどういうものなのかという議論をまとめた上で、次の第3回検討会で皆様に御提示しますので、その「目的」というところを本日は御検討いただければとありがたいと思います。
 
【足立主査】 近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】 質問させていただきます。内容はポートフォリオに関してです。ポートフォリオを構築し、マネジメントして柔軟に回していくということですけれども、よくあるのが、作ることはできるのですけれども、見直しは容易くない、と思っております。
 作成は国で行うということなのですけれども、マネジメントは国が行うのかということが1つ目の質問です。2つ目は、見直しに関わることです。失敗を許容すると書いてありますが、「どの程度の失敗を許容できるのか」という観点、何か目安的なものがこれまでの事例でありましたら教えてください。
 
【稲田戦略官】 まず第1点目のポートフォリオの構築、決定ですが、これは資料の14ページ目をご覧ください。研究推進法人がPD、これはこの分野における最高水準の研究者を代表に据えるのですが、このPDが自分自身の専門的知見に基づいてポートフォリオをまずは組むという形になります。
 その上で、評価もしっかりと行っていきます。評価方法は資料左下に書いてございますが、3年目、5年目、それから8年目、10年目に外部評価を行い、これに加えて内部的に進捗状況をPDが見ながら適宜の見直しをしていくということになります。その意味だと、外部評価のところにおいては評価を踏まえて、ステージゲートを確認するのですが、日々のチェック&レビュー(以下、CR)についてはPDがどのように考えるかというところが多く反映されるというような制度になっています。
 失敗を許容する範囲なのですけれども、多分に研究者あるいは国が主導で行う研究は、成功することが約束されているような、小さな目標しか立てないことが多く、その小さな目標に対してこれを行いますという傾向があるのですけれども、それだと大きな目標が達成されないことがあります。まずはそういう「失敗したら怖いから手を挙げるのはよしておこう」という心理的な壁を下げるということが主眼でありまして、そのあとのCRについては、専門家が専門的に目があるかどうかというところをチェックしていきますので、そこの判断によります。以上です。
 
【奥本委員】 よくわかりました。ありがとうございます。
 
【足立主査】 私も思い出しますと、目標8と9を設定する際の議論に加わっていたのですが、議論をしていると、プログラムレベルの話になることが多かったです。目標を設定するという作業をしているのに、個々の研究レベルの話に吸い込まれていくような形になっていくことを何度か経験しましたので、今回のこの作業、この検討会というのは基本的には目標を設定するというレベルの作業であるということは間違いないと、そこの認識はそろえていった方がいいような気がするのですけれど、いかがですか。
 
【稲田戦略官】 まず現在の作業としてはお見込みの通りだと思います。
 
【足立主査】 はい。そういうことで他になければ、議題2「核融合エネルギーが実現した未来社会及び達成目標について」に入りたいと思います。
 まずは本検討会の最終的なアウトプットについて資料2-1に基づいて、これも事務局の方から説明をお願いします。
 
【稲田戦略官】 それでは資料の2-1をご覧ください。この検討会というのは概算要求までに3回、次は8月4日を検討しておりますが、これまでの3回において未来社会像からのバックキャスト、中間とりまとめを実施する予定でございます。
 その中身については、今回社会像を議論した上で、次回においてはその積み残しの部分と、それからバックキャストした技術としてはどんな組み立てになるかというところを御提示させていただくことになると思います。
 中間とりまとめに関してはCSTIの有識者に付議して検討するとともに、社会課題をどのように解決するのかは、専門家だけが見ていればいいというものではありません。従いまして専門家も含めてですけれども、パブリックコメントという形で広く皆様の御意見をお伺いするということを8月中に行いたいと考えています。併せて、専門家としての実現可能性等々がどうなるのかということは当然気になるところだと思いますが、並行して科学技術・学術審議会に核融合科学技術委員会(以下、委員会)という、核融合のことを専門に議論している委員会において今までの計画との整合性等も含めて議論していただきます。その2つの潮流を合わせたものについて9月に第4回の検討会を開催しまして、中間とりまとめ案に対する世の中のフィードバックを皆様にお伝えし、それを踏まえて御議論いただきたいと考えております。その上で、第5回の検討会において新目標案等を御議論いただきまして、それをCSTIの有識者会議に、新目標として提案することを予定しております。予定は前後の都合で月をまたいだりすることはありますが基本的にはこの流れで進めていきます。
 この流れで進めるのですが、本検討会のアウトプットというところを明確にしておかないと議論が発散されるだろうという示唆、御指摘もありましたけれども、その御指摘を踏まえましてお作りしたのが資料の2ページ目でありまして、本検討会のアウトプットとして何を考えているかを記載しております。1番目は目標案であります。2番目は、その目標を達成するターゲットはどのようなものなのかということ。3番目は、目標達成によってどのように社会変化が行われるのかということ。また、4番目として、社会像実現に向けたシナリオはどのようなものなのかということ。5番目は、国際連携の在り方について、どこと連携して進めるのか、あるいは単独で進めるのかということ。6番目は、目標を達成するためには、例えば、核融合工学の分野の技術や人材だけでは達成できないはずですので、目標達成に向けた分野・セクターを越えた連携の在り方に関すること。7番目としては、安全規制も含めてELSIが大変重要ですので、こちらについても記載しております。これらを踏まえた議論をしていただき、その結果として人々を魅了する野心的な目標案を検討、御議論いただけるとありがたいと思っております。

【足立主査】 ありがとうございます。皆さん御質問はいかがでしょうか。
 まず最初に私の方からですけれども、今説明していただいた限りでは、この検討会は10月で使命を果たすのだと思うのですけれども、先ほどの資料で言うと、例えばPDあるいはPMが決まるのは大体どのくらいの時間的なビジョンを持っておられますか。そしてそれはどなたが主体となって決められるのでしょうか。
 
【稲田戦略官】 まず次の段階に移るのは予算が成立し、予算が執行できるというタイミングです。ですから予算要求のタイミングによって多少前後するのですが、最速で今年に概算要求するということであれば来年の初頭から次の段階に移ることになります。
 それをもとに具体の体制というのは右側の研究課題の実施のところになるのですが、研究推進法人がPDを任命した上でPM募集、採択という形になります。このPDを任命したあと、PDを先ほど議論いただくと言っていた目標案や社会実現案、これを実現することを使命として、自身の専門的で細かいポートフォリオを作成するということになりますので、これがなるべく早期に実施されるべく作業を進めていくということになろうかと思います。
 実際に予算的な裏付けができないとなかなか人を任命するというのは難しいところがありますので、早くて来年度の初頭からということになろうかと思います。以上です。
 
【足立主査】 わかりました。ありがとうございます。
 他、何か御質問ございますでしょうか。豊田委員、お願いします。
 
【豊田委員】 先ほど稲田戦略官から2050年や、期間について30年程度先に設定するという話があったと思うのですけれど、資料2では、実現したい2060年の社会像という、そこの期間についてそんなに明確な決まりはないというお話だったと思いますが、その辺りのゆらぎと言いますか、そこの数字について何かご意見があればお願いしたいです。
 
【稲田戦略官】 その意味ですと最長で2060年です。ここから先の年代で目標を設定することは避けてください。年代を手前に倒すことについては、問題ございません。
 
【豊田委員】 ありがとうございます。
 
【足立主査】 竹永委員、お願いします。
 
【竹永委員】 時期の話が出たので少し質問させていただければと思います。
 委員会との議論というのもスケジュールの中に入っておりましたが、委員会の方で原型炉研究開発ロードマップ(以下、ロードマップ)を作って、原型炉開発に向けたアクションプラン(以下、AP)も策定されているかと思うのですが、それとMS目標の少なくとも2060年までと仰っている整合性というのはどのように考えたらよろしいでしょうか。
 
【稲田戦略官】 竹永委員は核融合の専門家の委員ということもありますので、専門的な話をさせていただきますが、ロードマップというのはCRがいくつか設定されています。CR、建設の判断など、その時点での技術レベル等々を確認する場面があります。例えば、外の技術を入れた方がいいものについては組み換えをしたいということが考えられますが、そういったことを見越してもともと設定されているところです。MS型研究開発制度の研究課題の伸展に基づく技術レベルの進捗は、先ほど申し上げたロードマップのCRの中で当然のことながら検討される内容であって、そこのところで委員会の方が原型炉の設計などに反映させていくことになると理解しております。
 また原型炉の設計から建設までにはタイムラグがありますので、CRの段階での技術レベルを考えた上で、原型炉などへの反映は実施されるものと理解しております。
 
【竹永委員】 そういう意味では必ずしも厳格に委員会の方で出しているロードマップやAPにMS目標が合致していなくてもそこは許容範囲があると考えてよろしいでしょうか。
 
【稲田戦略官】 各々は独立のものでありまして、お互いにチェックをしながら直していくものでありますので、MS目標の設定段階でのスコープの違いというところは許容されます。一方で実際に実施していく中で同じフィールドで同じような研究を行うことになる場合もありますので、当然目標を設定したあとについては、お互いを見ながらお互いに修正していくということになろうかと思います。
 
【竹永委員】 了解しました。ありがとうございます。
 
【足立主査】 武田委員、お願いします。
 
【武田委員】 先ほど戦略官から御指摘、御説明いただいた内容に関してでございますが、前回の第1回の検討会でも民間の進め方、もしくは挑戦的な進め方と公的な原型炉の進め方についての御意見というものが委員の方々からたくさん出たと記憶をしております。もし可能でございましたら、こうした公的な、今までの原型炉というものがある、そこについて新しいものがあって、その2つがいわば切り分けられない形で両輪としてシェアされていると、すなわち前回の委員の方々からの御指摘には、なぜこうした挑戦的なことばかりを支援するのかといったような御指摘もあったように記憶をしておりますので、もし事務局の方でそうしたより大きな支援のピクチャーと言いますか、こうしたものもどこかのタイミングで御指摘をいただけますと、こうした議論がよりスムーズに進むのではないかというふうに考える次第です。
 
【稲田戦略官】 御指摘をいただきありがとうございます。今日は社会像を議論する話でありますけれども、次回は、具体的な技術にどう落とし込んでいくかというところにおいて、実証論、これはどちらかというとシステムを組み上げてきちんと動くというところを着実かつ安全に行っていくというものですが、それと挑戦的な研究というところがどのような補完関係にあるのかについて御説明差し上げようと思います。
 
【武田委員】 ありがとうございます。
 
【足立主査】 他にはおられませんでしょうか。よろしいですか。
 それでは説明がありましたアウトプットのうち、上から3つについて豊田委員及び武田委員に御発表をお願いしております。
 お二人から御発表をいただいたあとに、質疑応答・意見交換させていただきたいと思います。まず豊田委員の方から御発表をお願いします。
 
【豊田委員】 ありがとうございます。改めまして、初めましての方も傍聴の方もいると思いますので、私がどういう人間で、なぜこの委員をやらせていただいて、どういう期待値かというところだけ御説明させていただきます。私は東京大学初のベンチャー企業デジタルグリッドという会社を経営しておりまして、今年で6年くらいになります。私の本業は電力のマネジメントです。主に需給管理や、生み出された電気を事業家に届けるというところの専門家になります。そのために送電線を予約したり、需要の予測をする、発電の予測をする、お客様に最適な電源というものを届けるというようなところを機器専門で仕事をさせていただいてございます。ですから正直、核融合の細かな専門的なところでいくと門外漢であり大変恐縮ですが、核融合でものができた時に電力グリッドに接続された暁にはどんな使い方がある、ないしはどういうふうな活用方法があると今の出力業界はハッピーになるのかという観点でお話ができるのではないかなというふうに思ってございます。
 ここでまず「2060年までに資源エネルギー制約からの解放」というふうに目標案を書かせていただいてございますけれども、お話を伺ったり私なりにいろいろと調べさせていただく中で核融合は持続可能でずっと続くことができるインフラとして非常に魅力的であるものだというふうに認識をしてございます。ですからこれを基本的にはエネルギー、熱を含む、電力を含むエネルギーの根源としていけたら非常に面白い世界が来るのではないかと思っています。
 その上でというところで、2点目、3点目のところに記載がありますけれども、系統に入ってくるようになってくるといろんな制約ができてきます。
 皆様も御存知の通りかもしれませんが、電源には大きく3つくらいの種類がありまして、水力ですとか石炭ないしは原子力といったようなベースの電源、これは出力の変動というものはなかなか機微にしづらい、ただし安定的に稼働することで非常にパワフルな力を持つような電源です。もう1つは石油とかLNGに代表されるようなミドルの電源です。 これはDSS、デイリースタートストップといって1日ごとに運用計画を立てられたり、ウィークリーストップというような形で需要に対応して発電するもの。最後にその時その時で周波数を調整するような電源です。これは足元だとそれこそ蓄電池といったものが出始めてきていますし、古くからは揚水発電ですとか、一部石油火力、一部高精度なLNGもこういったものを行っているようなところでございます。
 ぜひ専門家の皆様には核融合というものを実験炉でグリッドに接続する時に、電源としては3つの可能性がある中でどういった役割を果たせそうなのといったところは御議論の中に入れていただいてもいいのではないかなと思って2点目に書かせていただいています。
 3点目は基本的にまずは社会と連携しなくてはいけないというものを、この前の御議論でも私は勉強させていただきましたので、2035年程度のものかなと思っていますし、非常にエネルギーのインフラ電力の世界ではかなり接続する上での議論は時間がかかるケースがあるので、そこをいかに早めてできるかなというふうに思っています。
 先ほど私からも2050年なのか2060年なのかという質問をしながらすごく保守的に見えてしまうかもしれませんが、2060年と書かせていただいております。これは皆様と今後の議論なのですけれど、ひとつ私から申し上げられることがあるとすると、どんなに技術ができてベース電源やミドル電源の役割もできて、熱や電力のインフラとして使えるといった段階になったとしても、やはり実際に接続をするというところになった時の現場というのは結構時間がかかるものでして、一般的に広く普及している太陽光であったとしても環境アセスメントにかかると4、5年、洋上風力に至っては10年、どうしても他の生態系への影響、周りの既存の方々への影響等々の調査というものに時間がかかって、これが技術自体は出来上がって、それが活躍するというところでやはり5年から10年のバッファーがどうしてもあるのではないかなというところであえて2060という数字を掲げさせていただいております。これについては皆様方と御議論できればいいかなというふうに思っています。
 私からは今、日本の電力ないしはエネルギーの事情といったところで感じている課題感と、それが核融合では解決できる、解決し得るのではないかというところの切り口からいくつかお話を申し上げれればと思っています。御案内の通りで日本のエネルギー自給率は低いですし、8割近くがほぼ化石燃料の電源となっています。ですから資源エネルギー制約から解放して、エネルギーは核融合を使って担っていくのだということであれば、こういった8割の化石燃料の電源の代替というものが必要になってきますし、先ほどの通り化石燃料の電源といったとしても石炭は主にベース電源で使われますし、LNGといったミドル電源、一部周波数調整に使われるなどタイプも違うので、それぞれこの8割の電源をいかに代替していけるかという議論が必要になってくるのではないかなというふうに思ってございます。
 核融合発電ができないとどうなってしまうか、逆にできたらどうなるのか、これはエネルギーが無限に使えると非常にワクワクする世界がくるということは皆様も想像は容易いかなと思います。逆にできずに他国に依存するような状況かつ資源に限りがある化石燃料に依存するような状況の場合、どういうことがこの数年で起きてどんな影響があったかということを簡単に御説明させていただきます。まずコロナ禍が起きて移動需要が減ってWTIという原油先物市場が歴史上で初めてマイナス価格を突き抜けたことを2020年の4月に経験しました。その結果、日本の大手電力会社がとったこととしてはLNGの長期契約で期限がきたものは、更新を行わないといったことを行っていました。それは仕方がないというか、ロールポジション、その時のLNGのポジションを持てば持つほど赤字が出るというような、そのようなシチュエーションでもあったので、長期契約というものが解約されていっているというような状況で、我が国におけるLNGというものが基本的には7割、8割が、長期で確保できていたものから中長期的には2割そして1割というふうに減っていくような、ここからアクションをとらなければならないような状況になっております。
 ではその結果どうなっているかと言うと、今、日本ではJKM(Japan Korea Maker)というようなLNGのアジアのスポットマーケットがあるのですけれども、そこからLNGを買って需給を調整するというようなことをしています。なぜLNG、LNGと言うかというと、調整力がすごく柔軟だからです。資料2-2の3ページ目の円グラフは、2019年の数字なので古いのですけれども、再生可能エネルギー8.8%と書いてございます。再生可能エネルギーが増えてきているのは事実ですが、再生可能エネルギーの最大の弱点としては、蓄電池とかが入らない限りは調整することができないということで、今はLNGがその分を補っており、今調整が必要なのであればLNGをスポットで買ってこようという形で動いています。それは日本に限らず世界中同じような現象になっているので、世界的にLNGだったり調整電源の球の取り合いみたいな形になって世界的にLNGの価格が上がっている状況で日本もその影響を受けているというところでございます。
 これが日本の未来という意味でどういう影響かと言いますと、中長期的に見て日本で物づくりをしていくとか、きちんと製造業を立ち上げていくみたいな時になった時に、電力価格が1年で3倍、4倍になりますという国で製造というのはなかなかイメージがつきづらいかなと思っておりまして、例えば、これは公開情報ですけれども、SONYや京セラのような半導体を作られているような会社で、電力の使用量というのが大体10億から20億kW/h、巨大な工場を持っていると10億から20億kW/hで、ここに書いてある通り、電力価格が例えば20円上がりますというふうになるとそれだけで10億kW/h×20円で200億円がPLにリンクしてくるので、そういう環境下において長期安定的な製造とか物づくりみたいなものはなかなか難しいのかなと思っています。
 ですから大事なのはこの核融合という世界では初期費用は非常にお金がかかるという話ももちろんそうなのですけれども、ことエネルギーという観点においてで言うと、これを持続可能でより限界費用と言いますか、いかに低コストで運転できるかという観点も非常に大事になってきますし、それができるのであれば日本での製造、物づくりみたいなところの活性化に寄与するのではなかろうかなと思っています。
 3点目が先ほど少し申し上げた再生可能エネルギーが増えていますという話で、今後もますます調整力というものが求められるかなというふうに思っています。御存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、2012年にFITという再生可能エネルギーの補助金制度が始まりまして、この10年間で増えた再生可能エネルギーの量、とりわけ太陽光については世界で3位、国土面積に直してしまうと日本が世界で一番太陽光の導入が進んでいるというような状況になっています。
 それはどんな影響を与えているかということを6ページ目に示しております。これはある日における日本の電力の指標です。電力会社が調達をするような指標になっていますけれども、日中にすでに電気を使えなくなっていって、夜間、夕方以降に電気代が非常に上がるというような、こんな状況になってございます。だからこそ夜間だけ発動できる電源みたいなもののニーズが今電力の世界では高まっていて、それができるのがLNGだということで先ほどの通り、各国でLNGを取り合っているというような話になっています。
 これによっては核融合においてかもしれませんけれども、調整電源ということでLNGに限らず水素等々に変換して、この調整電源をして活躍させていくという未来が必要になってくるのではないかなというふうに私自身も考えているところでございます。
 あともうひとつ、今までの会合でどこまで論点になっていたかというところはあるのですけれども、倫理的なところというかルールメイクでしっかりしなくてはいけないというところで、関係者の方がいたら申し上げづらいのかもしれませんけれども、事実ベースとして今電力会社において、公正取引委員会の人たちが入って価格に対してのカルテルだとか、権限を持っているから市場操作をしたのではないかというような話とかが出てきているのも、これまた事実のお話です。
 私が、興味関心があるのは、こういった核融合の技術というものができた時に、その所有者が誰になるのかということと、所有した者が誰であったとして、その人が価格を全て決めきらないようなしくみなどがないとまたどうしても、電力の世界で一番強いのは電源や資源エネルギーを持っている人が強いので、そこに権利や権力、決定権というのが集中できないような世界観みたいなものも大事になってくるのではないかというふうに思ってございます。
 最後に、8ページ目ですけれども、一電力のマーケットでベンチャー企業を経営している身としてこの核融合がどのように活躍するのか、その上でどういうことを考えた方がいいのかということを、まとめて書かせていただいています。まず先ほどの通りで持続可能であり、かつ自給自足できることというのは非常に大事です。LNGのように買っているとか、そういう外部の経済に依存している状況ですと非常にエネルギー価格自体が高額になって、最悪、日本では物づくりとか電源に使うところというのがなかなか難しくなってくるところはございますので、そういったところの観点が1つ目。
 2つ目、3つ目はやはり電源の種類があるのでそもそもベースとしての供給というのができるのか、持続可能で稼働率が高い電源というのがどこまで見込めるのかというところになります。100%は無理だとしても、火力でも原発でも止まったりはするのですけれども、例えば稼働率最低6、7割とかは稼働できるのかどうかについては、私自身、非常に関心が高いところでございます。万一、それが難しいのだとしたら、おそらく系統に接続するというのがもしかしたら現実的ではなくて、電力としての供給というよりは、むしろすべて水素に変換してしまって、調整力としても利用する方がいいとは思うのですけれども、そういった活用の仕方もあり得るのではないかなというふうに思いますが、当然、物を変換する時にロスが発生しますので、その経済的な成立性についての議論も必要ではないかと考えております。
 最後、4点目に、強力な電源を持つとそこに対しての発言権、権力というものが集まってくるので、マーケットルールをきちんと作るというものも大事になってくるのではないかなと考えております。私からは以上となります。
 
【足立主査】 豊田委員、ありがとうございました。引き続きまして資料2-3に基づきまして武田委員の方からの説明に移りたいと思います。よろしくお願いします。
 
【武田委員】 ありがとうございます。九州大学の武田から「MS目標ならびにターゲット案」について発表させていただきます。
 本日でございますけれども、先ほど事務局の方からいくつか今回のスコープについての御説明があったというふうに記憶をしておりますが、その中でも(1)の目標案、そしてターゲット、その上で当該目標達成によりもたらされる社会・産業構造の変化、この3つについてご提案を申し上げたいというふうに考えております。
 初めに、目標案、本MS目標の名称案でございますが、「2050年までに、尽きることのない地上の太陽を作り出し、エネルギー資源と温室効果ガスから解き放たれた社会を実現」というものを私からは御提案を申し上げます。なぜかと申し上げますと、この目標案というもの、そこには私としては3つの要素が含まれているべきであるというふうに考えております。
 1つ目が何の技術によりそれを実現するかの「What」の部分でありますし、なぜその技術であるのかの「Why」、さらにその技術が何の社会変革をもたらすのかの「How」、この3つを考えた際に、今核融合、フュージョンエネルギーであったりいろいろな呼ばれ方がございますけれども、地上の太陽、それが無尽蔵であって、それによってこうした解放がもたらされるというものを盛り込んだような、そういった目標案というものを、御提案を申し上げたことです。
 その上で実現をしたい2050年の社会像、いわゆるバックキャストのもとになるようなMS目標の社会像としては、ネットゼロ社会を実現する切り札としてエネルギーシステムのすべての中心に核融合が位置する、エネルギーシステムのすべてに核融合が貢献をしていく、そういった社会を御提案申し上げたいというふうに思っております。
 なぜならば、今回MS目標というものは、2050年までに核融合を実現することではないというふうに私は理解をしています。2050年までに核融合発電を実現する、これは今日本全国が掲げている原型炉計画にあたる部分でございます。それではなく、2050年までに核融合が社会を変えている、これを真剣に構想することが、我々検討会の大きな目標のひとつであるというふうに考えておりますので、この観点からいかに実現するのではなく、いかに社会にイノベーションを引き起こすかという観点から御説明を申し上げたいというふうに考えております。
 釈迦に説法ではございますが、核融合の実現による社会変革のポテンシャルは計り知れないということは委員の皆様も御承知おきの通りでございまして、特に温室効果ガスを排出しない、海水からほぼ無尽蔵に燃料を抽出可能である、核的暴走事故の可能性が原理的になく安全である等、いわゆる究極のクリーンエネルギーと呼ばれる核融合というものが実現をするということは、非常に社会にとってベネフィットが大きいわけでございますが、果たしてそれを、技術的に実現をするということ、それが社会変革なのでしょうか。
 なぜならば社会のエネルギーシステムは2050年のネットゼロ社会、温室効果ガスの実質排出ゼロ移行というものをすでに目指しているわけです。資料7ページ目の左の図が、IEAによる「Net Zero by 2050」ということで、2050年までにこの移行を成し遂げるということを考えた場合のシナリオ分析でございますが、御覧いただければわかります通り、国際社会が野心的な構想を打ち出す中で、こういった様々な方策の中で核融合というものはシナリオに織り込まれておりません。織り込まれていない状況の中で2040年までに発電セクターのネットゼロ排出量をゼロにする、2050年には発電の7割を自然エネルギーにする等、そういった様々な野心的な目標が打ち出されているわけです。これを考えますと、この織り込まれていないこと、この現状自体が最も核融合にとって本質的な問題を浮き彫りにしているということが言えるわけです。すなわち核融合が社会のゲームチェンジャーとなるためにはまずは早期の実現、これは小型化も含めてでございますが、もしくは多様な社会実装というもの、高度化というものが必要不可欠であるということがこうしたシナリオ分析からも明らかであるわけです。
 その観点から2050年までに核融合発電を始めるということ自体、それがニーズや今回のMS目標のビジョンに十分でしょうか。必要なタイミングで、必要な形で社会に実装するというビジョンを示すことがこの核融合業界の責務であるというふうに考えられます。8ページ目左のシナリオ分析でございますが、現在全世界が自らの誓約を遵守してなお、ネットゼロとはほど遠いような二酸化炭素ガスの排出量が推算されている中で、二酸化炭素の排出というものが一体どのセクターで行われているのかということを考えますと、28%がこの電力セクターで行われている、これは間違いないわけでございますが、18%が農林業、16%が運輸、31%が産業、そして7%が建設というふうに、それぞれ多様なセクターの中から二酸化炭素の排出が行われているわけです。従いましてMS目標で目指すべきはただ早い実現だけではなく、こうしたニーズからのバックキャストによる未来像というものを示したいというふうに考えております。
 その結果が9ページ目に示した未来像でございますが、先ほどのセクター1つ1つに基づきまして御説明申し上げますと、そもそも1つ目としてフュージョンエネルギーによる尽きることのない発電の達成、これは当然あるべきでございます。これにより28%の電力セクター、ここにおける二酸化炭素の排出というものの削減が見込まれるわけでございます。途上国の電化、都市化、さらに言えば先進国の脱炭素化、すべて新たな電力需要の上に成り立っております。電力セクターの脱炭素化に意味のある貢献を可能とするような早期の核融合発電の達成、これは必須であるというふうに考えられますし、さらに言えば16%を占める運輸のセクター、これは海水を、森林を、尽きることなくカーボンフリーの燃料へと生まれ変わらせる。先ほど豊田委員からも水素製造というものがございましたが、核融合を最初にまず電力にした上で電解というパスも当然あるかと存じますし、さらに言えば核融合熱というものはいわゆるIS法と呼ばれるような、直接の分解、熱分解に相当するもの、そして合成燃料、FT法を用いたバイオマスの液体燃料転換等が可能になるわけです。こうした尽きることのないゼロカーボンでの液体燃料の産出、これを核融合により可能とするということはこの運輸セクターの脱炭素化に非常に大きなメリットがございます。
 そして最も大きな排出を占めるような産業セクター、ここにおきましても高温というものはいわゆるプロセス熱として産業(鉄鋼・セメント・化学等)で幅広く脱炭素化が可能でございますし、ゼロカーボン水素というものが、供給ができるようになれば還元製鉄だけではなくゼロカーボンアンモニア合成等、幅広いセクターでの脱炭素化が可能になるものです。これによって最も大きな産業セクターの脱炭素化というものが可能になる可能性がございますし、さらに言えば都市部の家庭、遠く離れた山岳部を含めたいわゆる分散電源として核融合プラントというものを捉えているような企業もございます。
 小型で事故の危険を有さず、核不拡散の懸念が低いような核融合炉、これがオフグリッド電源としての活用ですとか、家庭・事業所の脱炭素化ですとか、これは熱の配給、水素の配給の両面でございますが、こうしたものが実現するとすればこの7%建設セクターの脱炭素化も可能です。
 そして最後に5番目といたしまして、大気中の二酸化炭素を回収する、産業革命以来のサイクル逆転というものをフュージョンエネルギーで駆動していくということが最も大きなビジョンとして挙げられます。核融合による熱生成、これはいわゆるBECCSと呼ばれるような森林による二酸化炭素回収、そこからエネルギーに転換をして得られたCO2については処理をしつつエネルギーを利用するといったような、こういった構想を駆動するようなエネルギー源に当然なり得ますし、さらに言えば昨今、話題になっておりますバイオ炭と呼ばれるようなもの、これは森林のようなバイオマス資源に熱を加えた上で固体のカーボンとして同定をしてやって、これを農地に配布をする、こういったようなスキームでございますが、こういったバイオマスCCSやバイオ炭、こういったものを駆動する尽きることないエネルギー、すなわち大気中から二酸化炭素を回収する尽きることのないエネルギーというものを核融合が提供可能であるわけです。
 従いまして、こうしたすべての5セクターにおいてフュージョンエネルギーの尽きることのない発電の達成のみならず、2060年、2050年には達成が可能であるということを考えております。
 以上がターゲットでございまして、このターゲットの観点からいかにこれに取り組んでいくかということについて2035年までバックキャストというものを書かせていただきますと、第1回検討会の資料では革新的な閉じ込めと、革新的な要素技術、革新的な社会実装、この3点からこうした取り組みが全世界で行われているということを示したわけですので、この観点から方向性について考えますと、この革新閉じ込め、革新的な要素技術、革新的な社会実装、これは大きく2つの方向性に分けられます。
 1つは核融合の早期実現に向けた革新閉じ込めの実証、これが2035年に実現するまで1つ目でございますし、もう1つがこちらの方向性、すなわち核融合の多様な社会実装に向けた革新用途の実証、これも2035年に実現をされるだけです。そしてそれらを可能とするような、調整を可能とするような基盤的な革新技術の実現、実証、これも2035年に当然実現をされるべきだというふうに考えております。さらに言えば第1回に飛田委員であると記憶しておりますが、システム総合の実証が重要であるといった、御意見がございました。それも当然実証は重要でございますし、さらに言えば核融合原型炉に向けた研究開発というものも進められるべきです。
 米国のARPA-Eというエネルギー省はこういった個別の部分というものを個別に支援してきたような、そういった経緯がございますが、今回のMS型研究開発制度、これはこういった米国の支援、これを一足飛びにすべてを包括して1プログラムで複数ターゲットとして実証していく、統合的に実証していくということが目的であるというふうに理解をしておりまして、まさに2015年のプログラムと第1の実証のターゲット、2020年と第2の実証のターゲットと、1:1対応ができるような、そういったような支援が米国でも行っているわけですが、我々はこのMS型研究開発制度によって俯瞰的な一貫したターゲット設定と目標設定によって2035年時点においては世界に先んじて、アメリカに先んじてこうした目的というもの、目標というもの、ターゲットというものを実現していきたいというふうに私としては要望を申し上げたいというふうに思っております。
 最後に産業・社会構造の変革について、発表をするように言われておりますので、いくつか御提供申し上げますと、まずエネルギーというものがいわゆる「地」政学から「知」の学問に、「知」政学へと移り変わっていくという可能性について御指摘を申し上げたいというふうに思っております。これからは地球の掘削でなく、知の探究によってエネルギーや燃料が産み出されるような社会が実現するはずです。そうなりますとこれまでエネルギーというものに乏しかった日本が産出国、さらに言えばエネルギーというものの中心地となるような初めての時代というものが到来できるはずです。その上で、先ほど豊田委員からございましたが、エネルギーの限界費用というものが今ゼロに近づきつつある中で、3年前から再生可能エネルギーではこの限界費用がマイナスになってしまったり、ゼロに近づけることは可能であっても、本当にゼロにすることはなかなか難しいというのが私の理解です。しかし核融合はそれを可能にするはずです。あたかもインターネットの現在がそうであるように、使い放題でどれだけ使っても従量課金がかからないわけですが、電力についても同様に従量課金の部分が消失する、それに合わせて温室効果ガスの排出も消失するということが起こりますと、世界の国々がエネルギー資源から解放された上で、紛争や飢餓の根本的な理由のひとつが消失をし得るというように考えております。
 そして最後に我々はカーボンというものを産業革命以降ずっと排出をしてまいったわけですが、いわゆる負債の部分を、返済をしようと思えば駆動するようなエネルギー源というものが必要になるわけでございますから、無尽蔵の大転換を起こすエネルギー源として核融合を打ち出していく、そして今このMS型研究開発制度でございますが、太陽系外への進出エネルギーとしてマーズショット、さらにその先を駆動していくようなそういったエネルギーとして打ち出しが可能ではないかというふうに考えているわけでございます。
 本日はこういった目標、ターゲット、社会・産業構造の変化ということでプレゼンの依頼を受けておりましたので、私の方からは以上を御提供させていただきました。以上で発表を終わります。
 
【足立主査】 ありがとうございました。2つの発表ともに非常に密度の濃い重要な内容が示された資料であり、なかなかまとめることが難しいかと思いますけれども、まさに今武田委員がおっしゃった、ある意味御提案だと思うのですけれども、やはりこのMS目標として提案するとした時の、目標スコープの幅をどうするかという議論という部分はすでに始まってきたかなというふうにも思いますし、あと豊田委員の発表は現状がどうであるか、現状のエネルギー事情はどうであるかということの非常に統計的な、具体的な数字が示されたわけですけれども、これが例えば核融合が2050年に実現した時にこの統計はどのように変わるかというもののシミュレーションができたとすれば、武田委員が示されているような社会実装のところでどのような革新的な技術というものがうまれるべきであるかというところがより深く議論できるのではないかと感想を持ちました。
 皆様の方でいかがでしょう、御質問あるいは御議論、ぜひ忌憚のない意見を交わしていただければと思います。吉田委員、お願いします。
 
【吉田委員】 両委員から具体的なビジョンを示していただいたと思います。その中で、未来の社会像について、いくつかあったわけですけれども、やはり核融合という非常に強力で安定的であることが期待できるエネルギー源が可能にする未来は何かということを考えた時に、それが実現する未来というもの、核融合のエネルギーがもたらすアウトカムについて、もう少し定量的な分析も含めてアピールするものにしていくことが大事ではないかと思います。
 例えば、デジタルトランスフォーメーションDXということが言われている一方で、GXという目標がある。しかしながらDXを進めていくと必要な電力は倍増するという予測があり、両方の未来像の中でどういったエネルギー源が求められるのかということを、定量的な分析も含めて示す必要があります。
 それから、未来の社会像ということですから、国連のSDGsにあげられている大きな項目に対するアウトカムということを考える必要があります。気候変動の問題については、気候変動の要因を抑えるという議論があるわけですけれども、むしろ気候変動に対して耐久性あるいは回復性を持つような社会を実現できる技術を考える、そういった観点の議論も必要なフェーズになっているのではないかと思います。そういった観点から、核融合技術が持っているインパクトはどういうものかを示す必要があります。
 それから、資源争奪からの脱却ということはもちろん紛争のない社会ということにも資するわけですし、さらに宇宙空間へ展開していくという時に、核融合のエネルギーによるエンジンというようなプランもあろうかと思います。そういった未来の社会像について、核融合エネルギーがあったとすると、どういったアウトカムが生まれるかについても、具体的で定量性のあるビジョンが出せればと思います。
 
【足立主査】 他にはいかがでしょうか。竹永先生、お願いします。
 
【竹永委員】 お二人のプレゼンありがとうございました。非常にわかりやすくて理解できたところです。
 もう一方で、目標ということですので、人々の生活にどう影響するのかとか、あと人々の価値観がどう変わるのかとか、そういうところまでもう一歩踏み込んだ方がいいのかなというような印象は受けました。言葉の中には紛争や飢餓がなくなってということで平和や宇宙に出ていくといった、少し価値観の違いが打ち出されているかとは思うのですけれど、人々がどういうふうにメリットを利用できるのかというところがもう少し打ち出されていたらいいのかなというふうに思いました。
 それからあと武田委員のところで革新閉じ込めという話が出てきましたが、少し専門的な話にはなるかもしれませんが、今やっていないというところで革新的なものが並んでいるというようなイメージがありまして、トカマク方式の炉系の中でも革新的なことはあると思いますし、ヘリカル方式もレーザー方式もそうかもしれません。そういうところは少しまた議論が必要かなというふうには思いました。以上です。
 
【足立主査】 他いかがでしょうか。奥本委員、お願いします。
 
【奥本委員】 武田委員の意見だと町を作るみたいな話で私も先ほどの竹永委員の意見とも重なるのですが、やはり原子力の場合だとそのあとのリスクコミュニケーションだったりということにすごく今苦労しているところだと思います。それなので、こういうふうな形の町であったり、産業が近くなった時において核融合をどのような形で安全対策をしていくのかという、そういうところも一緒にMS目標の中に盛り込んでいかなければいけないと思います。今、本当は原子力の安全対策の人たちも人材不足ですし、こういうふうにアクセルとそれのハンドルの技術、双方をMS目標の中にきちんと入れ込むということ自体をアピールしていくことが、今後の核融合が安全で別電源として認められることのひとつ重要な鍵なのかなと思いました。
 
【足立主査】 ありがとうございます。近藤先生、お願いいたします。
 
【近藤委員】 「目標の自由度」という観点から伺いたいと思います。前回、武田委員のプレゼンテーション資料の中で「核融合が1990年代からあとX年」という予測がされていたということに絡めてなのですけれども、核融合はずっとあと何十年と言われていた技術です。「二千何十年に何々を解放する、実現する」とした場合には、(核融合が)実現しなくても、「野心的なのでそれはそれで問題がない」という話になるのか、それとも問題になるのかということが気になりました。
 少し一般目線かもしれませんけれども、ずっとあと何十年と言われてきた電源がまた二千何十年にすごく野心的でベース電源になり替わるといったようなMS目標を設定した場合、これはとても野心的ですねという話でいいのか、またそういうことを言って全然近づいていないではないかという議論にならないのだろうか、ということを少し懸念しております。その辺り、目標の自由度をどのように設定するのか、教えていただけたらと思います。
 
【稲田戦略官】 まず目標の設定とそれがどれだけ実現可能かというところに関しての信用性の話であります。MS型研究開発制度の多くの課題は非常に実現が困難だろうという課題が書かれています。ただし、実現が困難だろうとしてもそれに対してチャレンジングするということを非常に是としているというのがもともとのMS目標ではあります。
 ただ近藤委員が御指摘のように実現が困難と言ってもいろいろあって、その目標は達成されなかったとしてもここまでできたので、それは続けるべきかどうかというところの途中の評価でも当然判定されます。その観点からその目標が最初から実現不可能というところであればこれは信用性の問題になってきますので、論理的にかろうじて達成可能なところを狙っていくというのが極めて重要です。
 もう1点は途中目標の設定で最終目的の達成までの間にも世の中をどう変えていくという途中段階での実現する絵姿が魅力的かどうかというところもかなり途中の評価では重要になってきますので、この観点の2つをよく御議論いただいた上で「難しい、しかしながら達成可能である」という目標を立てていただくということが極めて重要です。
 
【近藤委員】 ありがとうございます。核融合は戦略策定の時から考えていたこととして、やはり2050年とか2060年というのは核融合にとっては極めて短いスパンに感じます。ですから2050年になったとしても2060年になったとしても、中間目標を設定していくということであれば問題ないのかなというふうには感じました。
 もうひとつが武田委員の内容についても、提案に関しましては理解しやすいものであったと同時に、今回目標設定で何年までにということを必ず加えなければならないのだろうかという点です。「何年までに」というのが、コミットメントにどうしても聞こえてしまうところがあります。もしそれがないとすると、ビジョンというか目標のように理解しやすいのかなと思いました。以上になります。
 
【武田委員】 ありがとうございます。今回私の方で2050年の社会像ならびに2060年の達成シーンということで年の方を示してございますが、これは必ずしも確定ではないというふうに考えております。さらに申し上げれば、今回、事務局の方から2060年ですとかという話がございましたので2060年と書いてございますが、むしろこの達成時期については委員の皆様方の御知見をお借りしたいというふうに考えているところでもございますので、そういった意味で近藤委員の方にもしこの私の書いた2050、2060ということで何かそうしたイメージがございましたら、ここについては今後ぜひ近藤委員の御知見のお借りしながら決めていく、もしくはオープンに考えていければというふうに思っております。私からは以上です。
 
【稲田戦略官】 MS型研究開発制度の制度設計的な観点から申し上げますと、MS目標というものは長期的に達成するべき目標を立てることが要求されています。
 従いまして何年までに何々をというところは、国民に対してわかりやすさを説明するという観点から、MS型研究開発制度の目標設定が要求されていると理解しています。 
 一方、その目標をどういうふうに立てるかというところに関しては先ほどより、武田委員も御指摘のように御議論いただいた上で、「難しい、だけど技術的には達成可能である」というところを立てていただくことが重要です。
 
【足立主査】 いくつかの御意見をいただいた中で、私も冒頭に述べさせていただいたのですけれども、少し共通点があるのは、やはり近藤委員は目標の自由度という言葉を使われたのかもしれませんし、吉田委員と、私が目標のスコープ、幅的なところをコメントさせていただいたのですけれども、武田委員の資料2-3の17ページ、かなり完成度の高いスコープが、ある意味スターターとしてここに示していただいているのではないかなというふうに思います。私の個人的な意見かもしれませんけれど、1は確実に関係がありますし、3もある意味一応実現するための、あるいは核融合発電というものを実現するために必要な技術としても確実だと思うのですけれども、2のところですけれど、革新的な社会実装というのが、目標の自由度ということを仰いましたけれども、どこまでMS目標10というものに何を含めるのかどうかについてはこれからこの検討会が議論すべきところだと思っているのですが、この辺りを事務局としてはどう思われておりますでしょうか。
 
【稲田戦略官】 目標の10の範囲をどのように設定するかというのはまさにこれから有識者の皆様で御議論いただく話なのですが、目標の10を核融合というふうに仮に観念しますと、革新的な社会実装とは、どのように使うかというところに関してはもちろん想定しなければいけないのですけれども、例えばオフグリッドや水素製造技術、工業用熱供給自身を研究するというよりも、これを実現するために核融合の機能として何を要求しないといけないのか、こちらの方に議論を集中させていく必要があるかと存じます。核融合の利用というのは無尽蔵のように何度も使えるということですので、可能性が無限に広がるということでありますので、これをどのように使っていくのかが、ひとつの考え方かとは思います。
 先ほど申し上げたように、水素の熱利用ということになると取り出し温度が高くなければいけませんので、その辺りに関する技術的な課題というところで引き戻せるのかなと思いますが、ここはまさに御議論いただくところだと思います。
 
【足立主査】 社会実装の例がいくつかここに武田委員の方から挙げていただいたと思うのですけれども、その中で核融合だからできること、火力・原子力では実現が難しいというようなものは、この目標10の中に入っていくという理解でいいということですね。
 
【稲田戦略官】 他のものに比べて核融合だからこそ圧倒的に有意性を持っていて社会を変え得る、これはもちろん対象になると理解しています。
 
【足立主査】 ありがとうございます。今回既に本当に完成度の高い御提案をされており、タイトルも御提案をいただいていますから、ここからどう議論を進めるのか、今2050年あるいは2060年をどうするかという議論はありましたが、2023年の時点で2050年か2060年という数字にどれほどの精度があるのかということ自体も疑問ではあるのですけれども、いかがいたしましょう。
 目標設定という意味での2050年か2060年かということを決めていくべきなのか、そして目標を今ここで武田委員の資料2-3の2ページ目のところでもう既に名称の御提案をいただいており、これも完成度が高いと思うのですけれども、いただいているということに対して、あるいはサブタイトル的なものを我々検討会としてこれから議論していくのかどうかについて、事務局としてのお考えを聞かせていただければと思います。
 
【稲田戦略官】 年限に関しては、仮に武田委員の提案が皆様に受け入れやすく、これが皆様の考えであるということであるなら、これはむしろ2050年なのか2060年なのかあるいはもう少し手前なのかというところは、これが本当に技術的に達成可能なのかどうかという専門的な判断に基づいて設定されるべきものかとは思います。要は、信頼性に関わるところでありますので、その辺りで御議論いただくというのはひとつ重要かと思います。
 その上で、仮にフレームワークが武田委員の御提案でもいいとして、例えば仕様の分でここの部分はおそらく足りないのではないか、社会実装のところで宇宙機や物のモビリティというところについて、武田委員はメインの課題としては内燃機関の燃料を核融合のエネルギーを転換して作るというところをメインに置かれていますが、考え方によっては宇宙機のもの自身の開発もスコープに入れるべきであるだとか、あるいは様々な革新的閉じ込めというところに関しても、今ある炉系だけでなく、学術的には、まだそれよりも先の研究課題はいろいろとありますので、この辺りを将来のさらなるゲームチェンジングを目的に入れるか入れないかといった観点は御議論いただく対象になり得るかと思います。
 
【足立主査】 普通の研究ファウンディングのように非常にピンポイントな研究に対してのファウンドを考えるということよりもMS目標というのはかなり広い意味での社会的なインパクトというものを考えていくということを前提とすると、学術的にここで言われている「核融合だからできる社会実装」というものはビジョンの中に含まれてくるだろうという気は、個人的にはしています。ただそれが火力でもできる、あるいは原子力でもできるというものと、どういうふうに住み分けていくのかというところはなかなか難しい線引きが要求されるだろうという気がします。
 また、2050年、2060年ということに対しては、これは私のように専門家でない委員がどちらかを選べというのはなかなか難しいと思いますので、専門にやられている委員の方から意見をいただければというふうに思います。吉田委員、お願いします。
 
【吉田委員】 2050年、2060年というのは、技術サイドからフィジビリティという観点から議論すべきことがひとつです。それと同時に、MS型研究開発制度の大きなテーマは、社会に対してどういうインパクトを与えるかということなので、技術開発のプロセスということだけではなくて、それを利用していく社会の変化ということも視点に入れつつ、どういう目標として示していくのかということなのだろうと理解しています。
 戦略官からも言葉が出ましたように、極めて大きなチャレンジだということがMS目標の大前提である中で、もちろんSFというわけではないので、何らかの技術的、科学的な根拠のあるものにしていくことが必要なのだろうと思います。
 そういった中で、提案の中身の技術的に踏み込んだ部分については、専門家のいろいろな意見があるので、そこの部分はあまり今の段階で形が前に出すぎないことが必要だろうと、むしろビジョンを提示することが必要なのではないかと思います。
 このMS目標のアウトカムとしてどのような未来の社会になっていくのかに対して、足立主査がおっしゃるように、核融合ならではの点ということを明確にしていくということが必要だというふうに思います。
 
【稲田戦略官】 ありがとうございます。竹永委員、プロジェクトとして実際に炉を組んでいらっしゃるという観点もあるかと思いますので、その辺りも含めてご発言いただけますでしょうか。
 
【竹永委員】 ありがとうございます。今日は社会からの要請という観点から2050年か2060年かという議論を聞かせていただいたという立場で聞いていました。
 確かに早期に実現して社会に変革を起こしていくということは必要な状況だとは理解しているところです。一方で専門家的な話をしますと、やはりかなり挑戦的、もともとMS型研究開発制度自体が挑戦的な研究を行うということですので、ある程度そういう目標を立てていかないといけないというふうな認識は持っているところです。
 ただ本当にそれが実現できるかどうかは、やはり相当研究を加速しないといけないというふうに思います。そのためには人と予算が必要になってくるのかなと思います。そういうところを踏まえて判断しないといけないと思いますので、今すぐに2050年か2060年かということに答えを出すのは難しいなというふうな感想です。
 委員会との関係を最初に質問しましたけれども、そこで考えているのと比べるとかなりこちらの方が挑戦的で目標も早くなっているというふうに思いますので、そことの関係も踏まえながら今後議論していくのかなというふうには思います。
 現状で2050年なのか2060年なのか、あるいはもっとかかるのかというところは全体を見ながら判断しないといけないので、明確なことは言えませんけれど、そういうところを踏まえて今後目標をどうするかは詳細について議論させていただければと思っているところです。
 
【稲田戦略官】 現実的には2060年はかなり難しい状況ということですね。
 
【足立主査】 奥本委員、お願いいたします。
 
【奥本委員】 先ほど出たように核融合業界では核融合研究で目標を立てて行っているのですけれど、MS型研究開発制度を利用しようとした経緯は核融合以外の研究者を取り込みたいというような話で始まったと思うのですが、実際に武田委員の目標、核融合以外の材料系だったりとか、物理の先生方が見られた時にどのように自分たちの情報系や自分たちの研究分野であるということを御理解いただけるのでしょうか。
 
【武田委員】 奥本先生ありがとうございます。本日はどちらかと言えば先ほど発表させていただいたビジョンを、お示しをするというような、あるいは議論をするというような会議だと伺っておりまして、技術的なことについては次回以降の議題なのかなというふうに考えておりますが、一方で先ほどおっしゃっていただきました通り、特に材料ですとか情報科学の分野からは海外では異分野と言いますか、隣接分野も含めた方々の参入ということが非常に活発に行われている状況でございます。
 我々が橋渡しを行っていくという意味でも先ほどおっしゃっていただきました通り、ビジョンはフュージョンエネルギーの実現かもしれませんが、そこへ至るような道筋や具体的な目標も含めていかに他領域の研究者の方々にこの分野を魅力的に見せていくかという観点は私の書き方も少し気をつけなければいけないというふうに今考えているところでございますし、ぜひ御意見を引き続き頂戴できればというふうに思っております。
 
【奥本委員】 そうですね、おそらく他の委員の先生方にはそういうふうな今武田委員が示していただいた目標を少し他分野の人に開く形でどういうふうな書きぶりにしたらいいのかというのをこれから話し合っていかなければいけないということですね。ありがとうございます。
 
【稲田戦略官】 少しだけ事務局から補足いたしますと、本日ビジョンについて議論をいただいているのですけれども、第3回の冒頭に今回御欠席の委員の方も何人かプレゼンいただいた上で、ビジョンをどうするかについての積み残しのところがございます。それも考えますと2060年か2050年かについては次回への引き続きの検討事項としていただいても構いません。
 その上で第3回においては、仮にこの大枠がこれでいいとした場合に、技術的にどんなことをすべきかというところに落とし込んだ議論をしていただくことになりますので、その点も踏まえて次の検討会に向けて事務局としても少し整理をさせていただこうかと思います。
 
【足立主査】 吉田委員、お願いいたします。
 
【吉田委員】 今の奥本委員からの御指摘は、非常に大事なポイントで、実はパッケージで核融合エネルギー開発と言っているのですけれども、中身がどういうふうになっているのか、他分野の人には分かりにくいというのが実情です。核融合科学研究所では、核融合科学技術というものが、どのようなサイエンス、どのようなテクノロジーを束ねていて、それぞれがどういうふうな横軸で他の分野とつながっていくのかを明示するために、核融合科学の分節化という議論を進めています。研究所の体制も、そういうふうな形にもっていく改革を行っています。MS型研究開発制度という事業を行う場合にも、広い分野とのつながりを作って核融合分野を広げていくことに取り組むことが重要になると思います。
 
【足立主査】 ありがとうございます。近藤委員、お願いいたします。
 
【近藤委員】 全体の議論がありましたけれども、先ほど主査の方からスコープの話もあったかと思います。技術的にどう成熟していくか、まだわからない状況にあって、社会にどう還元していくかという観点も無視できないというふうに思います。
 そういった場合、武田委員の資料2-3の18ページ、「2035年に実現すること」ということで非常にクリアに要点を示していただいています。このうちどれがどのように実現していくのかという議論もあるかもしれませんが、社会に還元していく、いわば国の予算を投入していくということを考えた時に、社会実装ということは非常に無視してはならないことではないかというふうに私自身は感じました。そのような観点で成立性だけではなくて社会に対して説明していくという観点でもスコープを議論していくことは重要かと思いましたので発言いたしました。以上になります。
 
【足立主査】 ありがとうございます。宇藤委員、お願いします。
 
【宇藤委員】 私の方からはまず今回の議題にありましたMS目標案という観点から、特に具体的に武田委員の方から御提示があったので、私の方からここでお示しいただいた案についての感想と申しますか、意見を述べさせていただきたいと思います。
 いつまでにというところは今後の議論になりますけれども、まず武田委員の方から出されたキーワードとして、特に核融合の研究開発に携わっている者としては非常に核融合独自のキーワードが入っていて非常に良い目標案かなと思ったというところが一番の第一印象です。
 また先ほど御指摘あった現在の火力ですとかあるいは原子力とどう切り分けるかという観点からも、例えば火力ですと温室効果ガスがゼロになる、そういったところかと思いますし、原子力という観点に立った時には、高レベルの放射能廃棄物がでないといったところがもう少しキーワードとしてあってもいいのかなと感じました。もう少し広い意味で言うと環境負荷とか、そういったキーワードになってもいいのかなと思って聞いていたところでした。
 あとは抽象的な話になってしまいますけれども、目標案に「太陽」という言葉が入っているのは、非常に私はいいかなと思っていたところです。核融合が実現することでエネルギーとして日本だけではなく、例えば世界にもそういうエネルギーが行き渡るということで、太陽で照らすというイメージもこの目標案の「太陽」という言葉でそういったニュアンスも非常に含んでいるかなというふうに感じました。「太陽」というキーワードも特に核融合を夢見て研究している者としては非常にいい言葉かなと思ったところでした。私の意見は以上となります。
 
【足立主査】 ありがとうございました。私はスコープという言葉を使いましたけれども、自由度であるとかそういったところの、要はまずはMS目標として提案するタイトルの部分というのは、武田委員の方から御提案がありましたけれども、そういったところをスターターとして考えていけばいいかなというふうに思います。また、何度も言いますけれども、3つに分けられた資料2-3の17ページ目の部分です。一番線が引きにくいというか定義がしにくいというところが社会実装に関してであり、この部分についてがこれからの議論のポイントになるかなというふうに思います。閉じ込め技術あるいは必要な要素技術というのはもう言うまでもないところで、このスコープの中には含まれているのかなと私は感じました。
 それと豊田委員が発表いただいたような全体シミュレーションは非常に大切なことで、私はいつも思うのですけれども、やはり個々の技術は、日本は本当に素晴らしいものが出てくるのですけれども、結果的にそれが本当に国を強くしているか、経済をどういうふうに強くしているかというところが日本としては弱いところなのではないかなと思っておりまして、全体シミュレーションというものが、核融合がある程度実現した時に我が国としてどのようなエネルギーバランスになっているのか、だからどういうふうな社会実装というものが必要であるのかというところの議論というのは本当に大切なことなのではないかなというふうに思います。
 それとこの辺りのブレイクダウンをしていって最終的にはPDやPMというものが指名されていって、プログラムされていくのではないかなというふうに思いました。
 それでは、事務局の方から参考資料の「中国における核融合開発について」を御説明いただきたいと思います。
 
【稲田戦略官】 それでは「中国における核融合開発について」であります。
 中国に関しては、民間企業、それから国でも研究開発が立ち上がっているのですが、やはりネオ・フュージョンが極めて大きいということ、あるいは新奥ENNというところの大きなところが立ち上がっているのですが、むしろ国として注目すべきはベンチャーも立ち上がっていることもさることながら、国のプロジェクトが非常に精力的に行われているということでおります。
 1ページ目が民間企業の一覧であり、それぞれ何を行っているかという内容の資料であります。
 注目すべきは2ページ目でありまして、国の計画に関してなのですが、2007年現在動いているEASTというプロジェクトから始まりまして、2050年代のCFETRまであるのですけれども、一貫してナショナルプロジェクトとして核融合を進めていくということを強力に国として打ち出しているというところが特徴です。
 さらに研究開発に関しても科学的に諸外国に劣らない結果を出しているということがここに示されてございまして、現にこの分野は今のところは国際協調の世界でありますので、EAST等の実験装置を我が国も利用しながら研究開発をしているというところがありますので、中国の技術力というのはかなり侮りがたいというところを示しているところであります。
 何か質問あるいは専門的なところがありましたら、竹永委員からも補足いただけるとありがたいと思いますが、以上が中国の状況に対する説明でございます。
 
【足立主査】 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 私もいろいろと科学技術に関係するビジネスを進める中、やはり中国は産官学というベクトルが非常に強くなっている国でございまして、日本としてそれを同じようにするのかどうか、そういう選択をするかどうかというのは別議論ではあるとは思いますけれども、非常に参考になる、勉強しなければならない、意識しなければならない動きかなというふうに私は思っております。竹永委員、お願いします。
 
【竹永委員】 確かに中国はかなり強力に核融合研究開発を進めているところではあります。中国としては国際協力も進めていきたいということで、どういうような協力の仕方があるのかについて、今後いろいろと議論があるのかなと思っております。
 その辺りは稲田戦略官とも相談させていただきながら我々として原型炉開発をどうやって進めていくのかということを、こういう世界の状況も踏まえながらしっかりと議論していきたいと思っているところです。以上です。
 
【稲田戦略官】 その意味だと、核融合は協調と競争がまさに共存している世界ですね。ですからその辺りを適切に御相談させていただきながら進めていこうと思っている状況です。以上です。
 
【足立主査】 ありがとうございました。議事は以上ということなのですけれども、残っていますのは2050年か2060年かという非常に細かい話ではあるのですけれども、これにつきましては他のMS目標との並びとも合わせて、これは事務局の宿題として検討いただければと思いますので、次回に事務局の御意見を伺えればなというふうに思います。
 また、次回は中間とりまとめを計画しておりますので、これまでのまとめを事務局にて作成願います。
 以上ですが、特に何か委員の皆様から今日の検討会において御意見、コメント等ございますか。ありがとうございます。
 本日の検討会はこれで閉会させていただくことになります。皆様、御多忙の中御出席ありがとうございました。
 
【稲田戦略官】 主査からの宿題事項については、事務局でまとめた上で皆様に事前に御案内させていただきますのでよろしく御対応お願いします。失礼いたします。
 
【全員】 ありがとうございました。

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