宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合 (令和5年4月27日開催)議事録

1.日時

令和5年4月27日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. H3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況について(一部非公開)
  2. その他

4.出席者

委員

木村 真一 委員(主査)
柿沼 志津子 委員
笠原 次郎 委員
門脇 直人 委員
熊崎 美枝子 委員
神武 直彦 委員
中西 美和 委員

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 永井 雅規 
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史

5.議事録

【木村主査】 それでは定刻になりましたので、宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合を開催いたします。今回はH3ロケット試験機1号機の打上げ失敗に関する第3回目の議論になります。本日も前回同様にオンラインで開催になっております。ご多用のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局の竹上でございます。事務局よりご連絡をいたします。本日、所属委員のうち、遅れて参加される方を含めて7名にご出席いただく予定です。
 次に本日の資料は議事次第に記載の通りです。オンライン状況について音声がつながらない等の問題などがございましたら事務局へメール・電話等でご連絡ください。事務連絡は以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。それではH3の原因究明については前回の会合から約1か月が経ちました。この間、JAXAにおいてはFTAに基づいてフライトデータの解析、再現試験等について、鋭意に進めていただき、製造検査データの確認等を含め、原因究明活動を進められてきたと伺っております。本日はそれらを踏まえて、原因究明の進捗状況について確認していきたいと思います。なお、ロケットに関する技術的であって機微な技術情報を取り扱う部分については参考資料1-2の運営方針に基づき、そのような情報に基づく議論は非公開とさせていただくことをご了承ください。
 さて、それでは議題に入りたいと、前回から試験いただいた結果等をまとめていただけているのだと思います。またH-ⅡAとの連携もあると思いますので、そのあたりの切り分けが非常に重要なポイントかなと思っております。
 資料の説明をまずJAXAの宇宙輸送技術部門 事業推進部の佐藤部長、ならびにH3ロケットプロジェクトチームの岡田プロジェクトマネージャー、よろしくお願いいたします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 本日もよろしくお願いいたします。ご紹介ありましたように、この1か月鋭意原因究明を進めてまいりました。FTAもかなり詳細化して、今詳細な試験での確認という段階に入っているところですので、その状況について全般報告をさせていただきたいと思います。一応、岡田の方から全般説明しまして、水平展開の部分は私の方で説明するという形で進めさせていただければと思います。では岡田さんよろしくお願いいたします。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 H3プロジェクトチームの岡田でございます。どうぞよろしくお願いします。それではお手元の資料1「打上げ失敗原因調査状況」をご確認いただきたいと思います。まず1ページをお開きいただきまして、本日の目次でございますけれども、1項、2項と大きく章立てしておりますけれども、1項のところは前回ご説明済みが大半ですのでここはスキップさせていただくつもりでおります。
 原因究明の状況ですけれども、先ほど木村先生からご紹介ありましたFTAを中心に排除できるものは排除するという活動を試験とかフライトデータ等に基づきまして実施してきました。2-2項ではまずFTAに基づいて絞り込みをどう行ってきたかということ、その内容についてご説明いたします。そして2-3項、この1ページの右半分ですけれども、焦点が絞られてきた部分について少しフォーカスをしてご説明する、つまり2段階でご説明したいと思います。2ページには本日のご報告の内容、赤枠で囲んでございますけれども、この赤字で書いてありますような試験、製造の記録等を通しまして発生要因の検討をしてございます。
 それでは少し間があいてしまいましたので、10ページに飛ばさせていただきますけれども、これは前回ご説明部分の少しおさらいをさせていただこうと思っております。10ページでございますが、今回は基本動作ということで1段分離の検知のあとに、2段の着火信号(SEIG)が出力したあとに、事象が起きているということで、このページにはそのSEIGという信号を送出して駆動電源を用いてエンジンバルブ通過点火器のエキサイタスパークプラグを駆動するという一連の動作の原理を載せてございますのでご確認いただきたいと思います。
 そして11ページですけれども、それに基づきまして事象のご説明、これも再掲ですけれどもご説明したいと思います。まず、PSC2という機器がECBに対しましてSEIGの信号を送信すると、SEIGを受信したことをECBが確認した、ここまでが正常の動作でした。ECBがSEIGを受信したあとで機器BITの異常をPSC2内で検知して、これはA系、B系に順次切り替わりましてそれぞれの供給電圧が下降しました、ということでその結果として電源が供給されるべきエンジンが動作しなかったという流れでございます。12ページにはそのデータを載せてございますのでご確認いただきたいと思います。ここまでが前回のご説明内容でございました。
 14ページですけれども、ここはまずFTAをご説明したいと思います。前回のご報告からの更新部分を赤字で載せてございますが、FTA自体を、構成を若干見直した部分がございまして、そのご説明を右下に載せてございますけれども、構成を見直しまして短絡と地絡というのは、前回は2つに分けていたのですけれども、それを統合しました。それから前回はニューマティックパッケージの駆動不良というものを載せておったのですけれども、ニューマティックパッケージの系統に含めることとしたということと、ニューマティックパッケージの系統とそれからRCSというガスジェット装置、ここの系統を分割したというのが構成上の変更点でございます。
 14ページの内容ですけれども、3-2項の推進系コントローラからニューマティックパッケージへの電源遮断、ここの下流について現在疑わしきが残っているということで、その他の部分については前回からすでに排除しております。その中がいくつかに分かれておりまして、これは3次要因として分けておりますけれども、変化分については矢印で示してございまして、どう変化したかをこれからご説明したいと思います。まず3.2.1項のPSC2の中で過電流を誤検知したのではないかということが、前回も△だったのを、少し追い込みをかけまして、「△-」にしております。内容については後ほどご説明いたしますけれども、各種の追加の試験等を行った結果といたしまして、遮断機能そのものは設計意図通りに機能することを確認した一方で、蓋然性(確からしさ)をかなり加味しますといくつかの偶然と言いますか、確率的には低いような事象が重なり合わさると可能性としてはまだ残っているということでこれも後ほどご説明したいと思います。それからPSC2の中で通常の動作を行った上での消費電流が一時的に過大になったと、ノーマルな動作の中で電流が過大になった、ここにつきましては地上試験等を行った結果として排除することができましたので「×」にしております。それから3.2.3項の下流の短絡または地絡、これにつきましてはいくつかの再現を地上でしておりまして、可能性があるというふうに考えておりまして、これは後ほどご説明いたします。それから3.2.4項でPSC2の下流にRCS系統がぶら下がっているのですけれど、これにつきましては原因としてはないと、原因ではないということを後ほどご説明して、これは「×」としております。
 それでは少しずつ内容に入らせていただきます。15ページをお開きいただきまして、15ページは再現試験のサマリでございます。サマリの中で大事なポイントについてはこの後にFTAの評価という形で、中でご説明していきたいと思いますけれど、このサマリとしてだいたいどのような、主に電気系の試験を行ってきたかということなのですけれども、前回は試験がだいたい実施中というのが多かったです。ほぼそれが一通り終わったという状況でございます。いくつかのカテゴリに分かれるのですけれども、まずはNo.1としてはSEIGの時に機器単品がどう動作するかということでございまして、機器単品どうしをつなぎ合わせた状態でどう動作するかということでございまして、これは(1)、(2)と分かれておりますけれども、(1)と(2)の関係は、(2)に関しては中の波形まで詳しく測定したいということで概ね同じような試験です。これで通常の動作がどのように行われるか。それから2番目は機体全体を、工場にあります3号機の機体を用いましてシステム全体としての挙動について確認をしたものでございます。No.3の試験というのは、短絡を模擬的に発生させて、検知動作等がどう行われるか、それが実際のフライトと突き合わせた時にどうであるかということをいくつかのレベルで行いました。この3-1と3-2は先ほどのご説明と同じように回路の中までのデータを取ったものが3-1に対して3-2なのですけれども、内容的には同じような試験を行っております。一方で3-3の試験は、短絡・地絡の該当の可能性のある個所でありますニューマティックパッケージとエキサイタそれぞれの内部の中で短絡の模擬を行いまして、実際に全体が系としてどう動作するかということを試験したものでございます。そのあらましにつきましては下の方の図に載せてございますのでご確認いただきたいと思います。
 今のような試験を通じまして、これから16ページ以降はFTAの1つずつについての評価の結果につきましてご説明したいと思います。まずFTAの3-2-1ということで、PSC2の内部の過電流の誤検知につきましての検討でございます。検討結果なのですけれども、電源遮断機能、過電流の検知および電源遮断機能はH3の基本的な冗長設計の考え方、これは後で述べさせていただきますけれども、に基づいた設計意図通りの動作でございまして、今回仮にこれで事象が何か発生するとすれば、二重冗長の検知回路の、両者の故障が起きたことのみであるということを確認しております。ただ少し根拠について述べさせていただきます。まず設計的にどうであったか、ということですけれども、この設計につきましては専門家を交えたレビューを行いまして回路設計あるいはFPGAの設計につきまして意図通りにこれが設計されているということを確認いたしました。確認の観点は下の丸1~丸5に載せてございますけれども、例えば閾値が正しく設定されているか、あるいは検知時間幅が正しいか、意図せずOFFされるような回路になっていないか、一時的な突入電流で誤動作することはないか、十分な余裕があるかという意味ですね、等々でございます。こういう設計的な確認、そして17ページにはその再現試験ということで、先ほどサマリの中で述べさせていただきましたけれども、再現試験を行った結果、実際に意図通りに検知が動作するということを確認しております。実際に実施した試験内容を今からご説明しますけれども、まず地上で1号機の状況と可能な限り同等な機器作動状態とした上で、2段のエンジンの着火、これは火はつきませんけれども電気的にですが着火を実施いたしまして、まず問題なく作動することを確認しました。この試験の中では着火の時にPSC2の中で誤動作するような電位の変動が起こらないということも合わせて確認しました。したがいまして我々2月17日に打ち上げのアボート、中止に至ったような電位変動と類似の事象ではないことをこの時点で確認してございます。それから丸3で、これは先ほどの試験のNo.3にあたるのですけれども、意図的に過電流が発生するような回路を仕掛けておきまして着火させましたところ、意図通りに過電流検知の機能が作動いたしました。その時のPSC2の動作ですけれども、これはフライト時に得られたようなデータと整合することも確認しております。その様子は下の方の図に載せてございますけれども、エンジン駆動電流、A系、B系と全体の電流のプロットなのですけれども、2段エンジンの着火を模擬してこの時点で過電流が発生しますので、ある時間をもって異常BITを検知します。A系がまずトリップしまして、次にB系にバトンタッチしてB系もだいたい同じような時間間隔でBIT異常を検知いたしましてトリップするということで、この全体の動きにつきましては12ページに全体のフライトの時の動作を載せてございますけれども、これと時間的にもだいたい整合するという結果が得られております。それから根拠の3番目なのですけれども、フライトの時にそれではその電圧とか電流の検知回路は正常に動作していたかどうかの証拠はあるのかということなのですけれども、まずこの左下の図にございますようにPSC2のA系、B系、電源の供給系で左側に電池がありまして、電圧変換下の後ろにスイッチがあって、ダイオードがあってと、こういう構成のスイッチの前段に電圧とか電流の計測のポイントがあると、ちょっとイメージ的なものなのですけれども、こういうふうにあります。このデータを使いまして、過電流、過電圧の検知を赤の四角のところでいたします。遮断を制御するという、こういう制御のもののデータそのものはテレメーターデータとして地上に降りてきておりまして、そのデータが右側に載せてございます電圧と電流、これは、縦軸はちょっと抜いておりますけれども、通常の動作をしております。真ん中の点線にSEIGがありますけれども、SEIG前につきましては電圧は正常に立っていると。電流も正常に流れておって、電流が赤の線でSEIGの前で一時的に上昇しますのは、SEIG前にシーケンスでバルブの動作をON/OFFする部分がございまして、それが意図通りに挙動しておりまして、電流値そのものも正常であったということから、このデータそのものが電圧電流検知に使われますので、その時点でもし何かそこに異常があればここのデータにも異常のデータが現れるということであります。それから最後のところですけれども、2段エンジン着火と同時に外部からノイズが混入して誤動作するという可能性につきましては先ほど述べました根拠丸2の再現試験によりまして実際に誤動作が起きないということを確認済みでございます。したがいまして、フライトデータから考えられますのは、これらの電流検知回路は正常であったであろうということでございます。
 それから19ページ以降3ページほどにわたりまして、H3の冗長設計の考え方について少し補足的にご説明したいと思います。H3ロケットなのですけれども、システム信頼度をH-ⅡAから向上させるということを目的に2段に限りまして電気系システムを独立の二重冗長で構成しております。二重冗長の考え方にはいろいろな構成の仕方があると思うのですけれども、ロケットにつきましてはかなりの高速でイベントを制御していくものでございますので、信号の取りこぼしができない、非常に時間的にはクリティカルなシステムでありますために、冗長構成そのものは両者が同時に計算をしているというアクティブ冗長をとっております。一方でニューマティックパッケージを含む2段エンジンのシステムはH-ⅡAで実績のありますLE-5Bのヘリテイジを活用しましてシングル系、この下の図で言いますと、黄色のハッチングの部分ですけれども、シングル系を継承しておりまして独立冗長とシングルとの組み合わせになっています。このシングルの部分につきましてはH-ⅡAロケットと同様に宇宙用部品を使っておりまして実績を有するもので構成しております。冗長系とシングルのインターフェースにつきましては、A系の故障後に制御系をB系に切り替えるというタイプの待機冗長、それからA系/B系をOR結合で出力して、故障が生じた場合には故障が生じた側の出力を抑制するという、並列冗長の2種類を組み合わせて使っております。組み合わせの仕方、選択の仕方につきましては下に2つ例も含めて載せてございますけれども、ちょっと繰り返しになる部分があるのですが、待機冗長につきましては制御信号が仮に抜けたとしてもその後の制御は制御周期で回復が可能なものです。フィードバック制御をしているようなもので、例としてはエンジンのジンバルあるいはスラスタによる姿勢制御等につきましてはこの待機冗長を採用しておりまして、基本的な選定としては並列冗長を設定している、これは制御信号に抜けがミッションフェイルにつながるようなイベント制御、エンジンの着火とか停止、まさに今回の関係のようなものは並列冗長で構成しております。
 20ページにまいりまして、仮にという話になるのですけれども、PSC2のB系電源の故障時も電力を供給し続けるというためには、以下に述べます2つの案が考えられます。ただいずれの案につきましても1つの故障で下流に過電圧を供給して下流を損傷させてしまうというケースがありますために、現在の設計を採用しているものでございます。1つ目はA系によらずB系は故障しても電力を供給し続けると、これはもしそういう設計をした場合には、B系が先に故障した場合には機能喪失に至ってしまうということが想定されます。それからA系の状況を見ながらB系故障時に電力供給を判断する案、これにつきましてはA系の状態をB系で監視しないといけないわけですけれども、仮にB系が故障しますとA系が故障しているかどうかが正しく判断できないということで丸1と同様に過電圧を印加するような可能性がございます。そのイメージにつきましては下の方の図で載せてございますのでご覧いただきたいと思います。
 21ページにそういうことでございまして、フライトデータに基づく原因の調査から今回の事象というのはシステム構成上シングルとなっております下流部分での短絡・地絡の可能性が高いというふうに考えておりまして、こういった場合には故障許容とすることが一般的にはできません。冗長設計というものに関しましては冗長化した範囲の中で故障を検知した場合に、それを相手の系、それから下流系に伝播させないと、その冗長設計の内部のものが中心というふうに考えておりますので、そういう面で言いますと今回は設計意図通りには動作しておるというふうに判断しております。ここまでがFTAの3.2.1についてのご説明です。
 それから次FTAの3.2.2、PSC2の消費電流が過大になったということについての検討でございますけれども、これは結論としましては機器の正常な範囲内での消費電流では、異常検知に至るような過電流は発生しないことを確認しております。根拠として下に試験データも載せてございますけれども、左下図は全体に電流負荷を、通常のようなものの、ワーストケースとしてシーケンスで電流を負荷していった時に過電流の判定閾値を超えるかという消費電流全体の合計についての若干静的な意味での試験結果なのですけれど、この過電流の判定閾値自体に対して十分小さいということを確認しました。それから一時的に突入電流が生じるということは回路的にはありまして、それについては仮に突入電流が出たと、閾値を超えたとしても時間的にはそれが検知し得るものよりも十分小さいかどうかということを右の下の図のようにデータを取りましたけれども、これはイメージなのですけれども、この過電流の検知時間幅は、下の長い矢印、十分長い矢印に対して得られた突入電流の時間幅は本当に一瞬ですので、こういったところで検知して停止に至るような動作には至らないということを確認いたしました。これでFTAの3.2.2を排除しております。
 それから23ページは3.2.4、RCS系統がPSC2の下にエンジン系統とは別にぶら下がっているのですけれども、これにつきましての動作についても検討を深めまして、左下にありますフライトデータから考えまして、RCSの電源のBIT異常検知が他の異常検知に先立って行われていないということがはっきりと確認できておりますので、このFTAについては排除いたしました。
 ということで現時点での評価といたしまして、24ページに総括しておりますけれども、過電流の検知および電源遮断機能につきましては設計意図通りであるということと、中には二重故障ケース等について評価を継続しないといけないものが残っているということをまず1番目に載せてございます。2番目、下流機器の消費電流、正常な範囲につきましてはこれは可能性はないということ、それからRCSの系統についても可能性はないということで2つ「×」を打ちました。一番下にございますようにPSC2から電源供給している下流機器の短絡・地絡の可能性が高いという評価は「△」のまま残してございます。
 25ページにはこれは再掲でございますけれども、今のFTAの結果、最新の結果を載せてございます。
 このFTAの結果に基づきまして少し優先度付けをして今後の検討を進める必要があるというふうに考えまして、26ページ以降をこれからご説明いたします。現時点で短絡・地絡に至った要因、可能性が高いとそこを考えているわけですけれども、至っておりません。したがってあらゆる可能性をまず排除せずに検討を継続する必要があるというふうに考えております。これを踏まえまして現在FTAに残っている故障モードの確からしさ、蓋然性です。これに基づきまして範囲の絞り込みと、絞り込んだうえでの優先度付けをしております。
 その考え方についてまず数ページでご説明したいと思います。27ページをご覧いただきまして、これはFTAに対しての網のかけ方と追い込み方と申しますか、そういった内容のご説明でございます。まず蓋然性(確からしさ)というのをどう考えるかということなのですけれども、この赤の四角の枠で囲んでありますような、否定根拠を分類いたしました。丸1が一番確実で信用できて、逆に丸5が根拠としては弱いのではないかと、否定の根拠としては弱いのではないかという意味でございます。真ん中のあたりはちょっとスキップさせていただくかもしれませんけれども、例えば丸1はその故障モードではなかったという明確な否定証拠がフライトデータ中に存在する、これは最も確からしい、信用できる話。それから故障モードがその故障モードであった場合に一部が説明できない。それから二重故障が同時に発生しないと説明できない。SEIGの瞬間であったことが説明できない。こういったことが真ん中のあたりで、順番で考えております。それから最後に製造時に検証されている等、その故障モードが発生しないよう製造時に検証されている等が丸5の最も弱い根拠でございます。こういった根拠の組み合わせで故障モードをランク分けしました。高いランクのものから優先的に検討を今進めていましてR5を中心に検討しているわけですけれども、並行してR4/R3の可能性も排除していないということでございます。R5は根拠の丸5でしか否定できないようなもの、製造時に検証されているというだけでは否定できないものをR5としております。順番にR4/R3は根拠の丸4、丸5でしか否定できないあるいは丸3~丸5でしか否定できない、こういったものを順番にランク付けしております。
 今のようなランクを28ページに具体的なシナリオと比較しまして整理をしているのが28ページです。左側にランク、それから今の評価が「△」から「×」になりますけれども、故障シナリオの例、それから否定する根拠があるかないか、故障の許容度、単一故障で発生する、二重故障で発生する等の識別、それからSEIGとの同時性、こういったものを表にしまして、R5ですと例えば短絡・地絡ですね、こういったところなのですけれども、エキサイタまたはソレノイド、これは単一故障点ですけれども、フライト中の環境等の影響によりまして短絡・地絡発生、そしてSEIGと同時に過電流に至ったというものであります。R4につきましては、ニューマティックの内部の回路やハーネス、これは単一故障点の部分がございますので、それが偶然SEIGと同じタイミングで短絡・地絡したというのがR4。それからR3につきましては二重故障が偶然発生していると、SEIGと同じタイミングで二重故障が発生したと、こういった順序でございます。R2/R1につきましては可能性としてはほぼ原因ではないというふうに判断しておりまして、ここについては判断可能ということで検討の対象から外しております。ですからR4とR3につきましては調査対象からは排除せずに今検討を並行して行っているということでございます。
 29、30はその対象の範囲について、R1~R5の対象の範囲につきまして少しイメージを載せてございます。システムの全体の系統図で言いますと、このグレーのハッチングにしてある部分はR2、R1に該当しておりまして、これは先にご説明した図なのですけれども、ここは検討の対象からは外しまして、R5~R3の紫の線で囲んでいる部分、ここを今ターゲットにしております。
 それから30ページにはその中でもR3、R4、R5もPSC2からニューマティックパッケージあるいはエキサイタに至るところでいくつかに区分できます。R5の故障モードというのはニューマティックパッケージ、それからエキサイタ、ワイヤーハーネスにのみ存在するものでして、この後でまた少し詳しくご説明するような、SEIG時に通電状態になる範囲、かつシングルの部分、これをR5にしております。そうしますと範囲が相当限られてくると。もう少し範囲を広げましてSEIG前から通電状態でかつシングルがR4。R3はSEIG前から通電状態で二重冗長の部分がR3。R5からR3に行くにしたがいまして、検討の優先度としては下げております。このような範囲の中で今一番可能性として高いと考えておりますR5についてこれから31ページ以降でご説明したいと思います。
 R5につきましてはPSC2から電源供給している下流機器の短絡・地絡でございます。これをトップ事象にしたFTAを32ページにお示ししております。FTAにつきましては機体での評価と同様にフライトデータ、工場での再現試験、製造記録等によって今絞り込みをかけておりまして、途中段階なのですけれども、この32ページにあるような状況になっております。このFTA3次要因が一番左側にありまして、下流機器の短絡・地絡から始まっていますけれども、4次要因はその短絡・地絡の場所で分けています。後ほどこれについてはご説明したいと思います。それから5次要因は一番考え得るというところについて5次要因にフローダウンしておりまして、その中ではフライト環境の影響があったもの、あるいは製造時に何らかの特異性があったもの、大きく分けてこの2つで整理しています。フライト環境の中ではいくつか「△」が残っているのですけれども、例えばあとでご説明しますが、機械的環境、衝撃レベルが少し高かったということが何らか影響していないかということで「△」を残しています。それから真空環境ですね、ニューマティックパッケージというのは電源をロケットの飛翔中にONにするのですけれども、その時またはSEIGの時にグロー放電が発生した可能性はないかと、それによって機器がダメージを受けた可能性がないかというのを真空環境3.2.3の1.1.4でマークしております。あるいは製造のばらつき、製造の特異性そのものについては通常の検査工程の不備はないということをレビューで確認しているのですけれども、それらと先ほどご説明したような環境あるいは仕様の複合的な要因で短絡・地絡に至った可能性があるのではないかということでこれらを「△」に残して現在検討を進めているところです。少しその中身、内容についてご説明を次のページからさせていただこうと思います。
 まず33ページ、フライト環境の影響なのですけれども、2段機体の衝撃環境について評価しております。これはなぜここを評価したかと言いますと、1/2段の分離の衝撃レベル、これは飛行データからも取れているのですけれども、分離面では規定値内であったのですけれど、2段の機体の各部で計測した衝撃レベルが一部規定値を超えていることがわかりました。したがいまして、何か衝撃が入ったことによって悪さをした可能性はないかという点で検討をいたしました。その結果なのですけれども、原因究明を行うために実際の2段機体については、左下の図にございますけれどこのような上に水素のタンク、下に酸素のタンク、一番下にエンジン、2段エンジンが付いておりまして、この1/2段分離面というところに火工品で、この部分を火工品で分離させますので火工品が作動しますと衝撃が入ります。この衝撃がエンジンにどう伝達するかというところの評価でございます。2段機体を実際に使いまして、火工品を作動させるわけにはいきませんので、部分的にハンマリング、ハンマーで叩くようなことを、検証試験を行いながら技術評価をして、結果以下の要因によって衝撃が想定を上回った理由がわかりました。まず1つ目が、丸1としてしまして、タンク間構造には上の水素のタンクと下の酸素のタンクをトラスで結んでいますけれども、このトラスの部材がある部分を叩いた時に衝撃が下のタンクに対して重ね合わせて入ってくるということの評価を改めていたしました。それから丸2としまして、酸素のタンクからエンジンに伝わる部分というのは円錐形になっているのですけれども、円錐形になって直径が小さくなる側に伝達する際にエネルギーが集中していくという効果、あるいはフライトデータとしましてはセンサーを実際に取り付けている位置で局所的に応答している部分があるということでそれら全体を加味しますと右下の図のようになります。右下の図の見方ですけれども、左側から1/2段分離部、タンク間構造、酸素のタンク、最後スラストコーン、このエンジンを取り付けている部分の三角のところ、円錐の部分ですけれども、ここに行くにしたがいまして、緑の部分が開発時の推算結果でこれに基づいて設計しています。タンク間構造の部分、それからスラストコーンの部分に緑の丸が打ってありますけれども、ここで環境条件を規定して機器の開発を行っています。それに対しましてフライトの結果というのが赤丸で示しているところで、約2倍から約4.5倍から掛ける1.3倍ですね。この実際の環境条件の規定を上回った値ですでに入っているというものでございます。ただこの結果を踏まえて実際にそれが何か大きなダメージを与えたかということに関しましては、本文の方に戻らせていただきまして、これらを踏まえましてエンジン電気系コンポーネントの衝撃レベルを評価した結果で実際に開発時の衝撃レベルを、開発時にも衝撃を与えて試験をしておりますけれども、あるいは今回また改めて大きな衝撃レベルをエンジンのコンポーネントに与えた試験を改めて行いましたけれども、それらを踏まえましてもフライトでの衝撃レベルは過去の開発時、あるいは今回の追加で行った衝撃レベルを下回っておりまして機能としても正常であることを確認しました。以上をもちまして1/2段の分離時の衝撃はそれ単独では短絡・地絡の原因となったとは現在考えにくいというふうに評価しております。
 34ページは、今度はフライト品の特異性に関しましてでございます。これに関しましてはエキサイタとニューマティックパッケージを中心に製造記録、製造検査データを確認いたしました。いくつかの特記点はあるのですけれども全般的に製造記録に異常はないというふうに判断しております。特記点をご説明いたしますと、エキサイタに関しましては過去にエキサイタ内の半導体チップの接合不良の不具合というのが別の供試体でありまして、それの水平展開でエンジンのAT後に対策品に交換をしております。これが1点。ただし、これについては良品であることを確認済みでございます。それから2019年の製造時に別途2回発生したエキサイタの中のコイルの収納方法の不具合、これは地絡に至っている不具合があるのですけれども、これは収納方法を改善したもので1号機用のエキサイタを組み立てております。改善した収納方法でのフライトはH-ⅡAでも3機行っているというものでございます。ニューマティックパッケージ、ワイヤーハーネスにつきましては製造記録に大きな異常はございません。ニューマティックパッケージにつきましては2018年の製造時にH-ⅡAの42号機用のソレノイドの作動不良の水平展開で交換しておりますけれども、これも別途フライト実績があるものでございます。
 それから35ページ真ん中のあたりですけれども、射場作業につきましては次の通り異常がないことを確認済みでございます。打上げは3月7日でありましたけれども、3月2日に総合機能点検として地上でニューマティックパッケージのソレノイドバルブとエキサイタを動作させていますけれども、それらは正常に作動したことを確認済みです。フライトではこの時の点検よりも同時に作動させるRCSの基数が多い点が若干の違いではございますが、基本的には同じような動作をしているというものです。それからその点検以降に打上げまでにエンジンの各部へのアクセスあるいはエンジンの点検で問題があったようなことはありませんでした。それから保管です。第2段エンジンの保管や作動実績につきましては次の通り異常がないことを確認しております。2段エンジンそのものは打ち上げ時点で製造開始後約3年半経過しておりますけれども、ということが1点。それからこれはH-ⅡA の2段エンジンと比較すると長期間保管されていたものでございます。それからニューマティックの作動寿命も実際よりも寿命が小さいということでございます。
 以上を持ちまして全体を再確認した結果として不具合の事象に直接つながるような異常は認められておりませんけれども、特記事項には着目して今後の故障シナリオの検討を継続したいと考えております。
 ここまででフライトデータ、再現試験等の結果を踏まえた評価のまとめをしたいと思います。FTAの評価ですけれども、製造記録上の異常は認められておりません。それから1/2段の分離時の衝撃が直接の原因とは考えにくいということ、それからフライト環境のうちランダム振動、真空環境については現在調査中ですが特定には至っておりません。この結果から現在1号機の電気系コンポーネントが今回の検証試験等に使用した製品と同じに製造されていればですけれども、フライト時に短絡・地絡が生じるとは考えにくい状況です。原因究明の観点でございますけれども、今のような状況から故障に至る要因の可能性検討を広げることといたしまして、たまたま製造のばらつきの範囲で短絡・地絡しやすい状況が作りこまれて、製造後の検査や地上試験では合格したものがフライト環境によって短絡・地絡に至るような複合的には故障シナリオについても検討することといたしました。
 37ページにまいりまして、故障シナリオの検討と原因究明の進め方をここで述べさせていただきたいと思います。まず3月2日の地上試験までは正常であったと、それからSEIGの時に過電流を生じているという特徴があります。このために要因として絞り込まれた全ての部品について複合要因で説明可能な故障シナリオをまず抽出いたしまして、それを1点1点検証していくというスタイルを取りたいと考えております。まず電気系、左下にありますように短絡・地絡の箇所をはっきりさせまして、部品レベルでその可能性があるものを絞り込みます。複合要因で説明可能な部品の故障シナリオを選び出しまして、1点1点確認していくということでございます。右にはその範囲を載せてございます。この紫のハッチングが該当部分です。
 それから38ページにまいりまして、ここではどのような部品レベルをどういう見方で絞り込んでいくかということをいくつか、その観点を載せてございます。まずa.としてフライトデータから否定できるものは排除しています。これは次のページでご説明しますけれどもある部分に追い込むことができます。それからその部品が故障で過電流に至るものを選んでいます。例えばコンデンサ等です。c.は製造上や寸法上、短絡・地絡の可能性があるものを選んでいます。これはハーネス類です。過去に不具合の事例があるものを抽出しております。これは先ほどご説明したものを含めまして、いくつかマークしたいというふうに考えております。
 39ページなのですけれども、これは少しこれまでもご説明済みのものも重複するのですけれど、フライトデータのタイミング的なことを考えますと、いくつかのバルブとエキサイタに絞り込まれます。そのタイミングというのはこの右の図にございますように、リフトオフそして1/2段分離、SEIG、これらのタイミングで丸1~丸5のようなグループ分けをしますとその時点までは正常に動作が確認していたけれども、ある時点で異常をきたしたというグループが存在しています。それは具体的にはSEIGのあとに丸2と丸4が動作するはずであったものが動作しないということで、丸2がエキサイタです、それから丸4がソレノイドバルブ、これは合計9個のソレノイドバルブのうちの4個がSEIGのあとで電源が入る予定だったのですけれども、ここで異常が生じているということからソレノイドバルブ4個とエキサイタをマークする必要があるというふうに考えております。それからその系統をマークする必要があると考えております。
 40ページですけれども、そういったニューマティックパッケージ、ハーネス、エキサイタにつきまして、部品レベルで該当するものを抽出して故障モード、短絡・地絡、それからその要因となる衝撃・振動・真空環境、あるいはその製造・組立全般に関してこのように丸印をつけたところに該当するものを1点1点必要な故障シナリオを抽出するという活動を今しております。
 41ページにまいりまして、製造時に内在する可能性のある短絡・地絡しやすい状況をいくつかここでお示ししております。例えば、ニューマティックパッケージの内部部品ですとMOS-FETは取扱い時にドレインピンが損傷するであるとか、シールドの結線部は製造時に入熱損傷する、あるいは低温劣化が起きる、エキサイタの中にもいくつか電子部品で可能性のあるものが、製造時に内在する可能性のあるものを抽出しております。
 そして42ページ以降3ページにわたりまして、ここから先は具体の説明はまだ検討中ですので割愛いたしますけれども、どのような考え方で今検討しているかということで言いますと、例えばニューマティックパッケージの中の一番上ですけれどもMOS-FET、これはシナリオとしては取扱不良でドレインピンの素線が外れかけたということで打上げ前までは地絡しかけていたものが打上げ時の環境等で接触という、部品が接触して地絡したというものでございます。こういったシナリオを考えた時に検証内容としてはドレインピンの素線が実際に接触し得る長さなっている、こういったことを検証していくというものでございます。今シナリオをして挙げているものは45ページまでの計17シナリオなのですけれども、このシナリオそれぞれを検討する中でまた別な考えも浮かんできており、実際に出てきておりますので、それらを追加して1つ1つ追加しては検証しながら潰していくという活動を今行っております。46ページ、47ページはその一例ですので説明は割愛させていただきますけれども、こういったシナリオの詳細それから検証を行っているというものでございます。
 説明が長くなってしまいましたけれど、48ページに今後の進め方ということでこれまでの総括と今後の進め方を載せてございます。まず、FTAの要因の絞り込みを行ったということで、過電流検知、電源遮断機能、ここは設計意図通りであるけれども、二重故障ケース等については評価継続中でございます。下流機器の正常な電流の消費に関しては可能性はないということと、RCS系統についてももう可能性はないということで繰り返しになりますけれども、下流機器の可能性が高いという評価でございます。現在特定には至っておりませんのであらゆる可能性について検討を継続しております。FTA上、「△」と「△-」が残っておりますので今後の検討範囲と優先度を設定しまして、2段エンジンの中の短絡・地絡について原因究明を優先して進めております。すでにご説明済みですけれども、並行してR4/R3の可能性も排除せずに検討を継続しております。特に原因究明の中ではH-ⅡAとH3の差異というのを通常の仕様とかインターフェースの概念を超えて細かな評価を常に行いながら評価をしていきたいというふうに考えております。今後の進め方でございますけれども、1号機の製造、射場作業そしてフライトでの取得データと整合するような故障シナリオにつきまして検証試験等で確認をして最終的な原因の絞り込みを行っていきたいと考えております。ご説明は以上です。
 
【佐藤部長(JAXA)】 では参考の中で、52ページを説明したいと思います。今H3の原因究明状況をご説明しましたけれども、PNP系統で短絡・地絡というのが少し絞り込まれてきております。これを踏まえまして今後打上げを控えておりますH-ⅡAにつきまして並行して評価を進めております。基本的には2段エンジンのPNPの系統は電気的に同一仕様ということで、H-ⅡAの方の懸念は現状では排除できていないという状況でございます。先ほど最後の部分で岡田がふれましたがフライト環境の差、H3とH-ⅡAの差、あるいは仕様の共通性、こういったことに着目しながら影響評価をH-ⅡAの方でも継続をしていきたいと思っております。仕様の共通性等から懸念を排除できない状況が継続していく、あるいは確定に至る可能性を想定しまして、H-ⅡA側としても短絡・地絡に至る可能性を、懸念を全て排除できる対策を並行で検討を進めていきたいと思っています。H3側と連動してH-ⅡA側も並行しての影響評価を進めていますということになります。全体、公開部分の説明は以上になります。
 
【木村主査】 はい、ありがとうございます。大変詳しいご説明、ありがとうございます。私としてはやはり、最後のところの、今回の問題についてはH-ⅡAとの連携があり、H-ⅡAでも、今後影響を受けるのではないかというところを懸念しています。打上げシナリオを考えると、その切り分けについて、ぜひ進めていく必要があるのかなと思っていまして、非常に重要なのかなと思っています。うまく切り分けつつ、全体として信頼度を確保するというところを、ぜひお願いしたいなと思っております。今のご説明で結構分量が多かったものですから、簡単に私の方で振り返らせていただこうと思うのですけれど、14ページでこれまで4項目あったFTA上懸念される原因として4つあったもののうち、3.2.2のPSC2の消費電流過大であるとか、3.2.4のPSC2からの電源を供給している下流機器について、これについては外すことができたということですね。ここはまず大きな成果だと思います。
 そのあと28ページの議論に基づいて優先度を整理していただいてそのうち特に重要であると思われる項目3.2.3のPSC2からの電源供給している下流機器、これについてさらにここから深掘りする意味で、32ページでFTAを起こしていただいていると、そういう理解でよいですね。
 各FTA項目を今それぞれ潰せるところは潰していただいていると、まだ懸念されるところが残っていて、そこで同定していくあるいは先ほどの残っていた3.2.1も並行して検討されているという状況であるということですね。
 これは確認なのですけれども、先ほどのPSC2下流機器についての打上げ前での健全性は3月2日の総合機能点検で確認はされていて、特に問題がなかったということは確認ができているという、これはよろしいのですね。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、そうです。
 
【木村主査】 ありがとうございます。あとここで気になるのはいくつかH-ⅡAからの差分というのがあり得るというふうに思っていまして、そこをちょっと整理したいと思うのですが、衝撃レベルがインターフェース点では正常だけれど、他の部分で規定値を超えているという話がありました。これはH-ⅡAとの関係で言うと差分にあたるのでしょうか。その差は大きいのでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 オーダーが違うほどの差にはなっておりませんで、倍半分というほどでもないですね。2割くらいの違いでしょうかね。
 
【木村主査】 なるほど。衝撃レベルはやはり気になる点ではあるのですけれども、電気的に見るとここがすごく大きいとも思いにくいなという感触を受けたものですから、それが差なのかどうかというところが気になりました。
 あともう1点、これも解説が必要かなと思うのですけれど、冗長設計の考え方を今回整理いただいて理解できました。ただ解説としては前提条件として過電流がずっと続いてしまうことによってより破局的な結果をもたらしてしまうと、それをまずは排除するために二重冗長を考えられているという、そういう前提でよろしいのですよね。要はどのような意図でこれを作られているかというところをちょっと整理しておいた方がいいのかなというふうに思います。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 その通りでございまして、上流からの電圧が供給電圧に対して高いところからレギュレートされていることもありまして、仮に高い電圧が印加された時に下流に影響を及ぼさないようにするためにはそちらをシャットダウンすると、それで健全な方を活かすという考え方です。
 
【木村主査】 ただ下流側で問題が起きていた場合にはこの冗長性の考え方だと、上流システムの考え方の外にあたるので、これはまた別の問題であるということで整理いただいたという点ですね。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そうですね。このシングルの系統に対して何か冗長的な考え方を持たせるための設計意図ではございません。
 
【木村主査】 わかりました。ありがとうございます。ちょっと説明資料が多かったものですから簡単にサマライズさせていただきました。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 説明の要領が悪くて申し訳ございません。
 
【木村主査】 いえいえ。この間だいぶ大変ご尽力されていたのはこの資料からもわかると思います。委員の皆さまご質問ご意見等ございましたら、挙手でお願いできますでしょうか。笠原委員お願いいたします。
 
【笠原委員】 どうもありがとうございます。非常に数多くの検証とそれから整理とまた非常に丁寧なご説明をいただきまして随分状況を理解させていただきました。
 質問は今木村委員長と同じ観点のところに関係することを2点ほどさせていただきたいかなと思っております。やはり並列冗長は上流に対して適応されるものであって、下流のこのシングル系に対する冗長というふうにはちょっと見えないというふうに理解いたしました。ただしかしながらそういうふうな状況で今回の打上げが行われている状況だというふうにも理解いたしましたので、その上で2点ほどお伺いしたいのは、やはりこういうふうな組み合わせの場合で、シングル系でこのような異常が発生することはおそらく想定はされていたのではないかなと思うのです。そうするとそういうことが起こった場合のテレメーターデータというのは十分な周波数があったのかというところが非常に気になります。こういうことが起こったとして、どこに原因があるのかというのを調査するためにはそれなりの高周波数のテレメーターで監視をしておかなくてはいけなかったのではないかなというのはちょっと気になっておりまして、それがまず1点目でございます。
 もう1つはやはりシングル系に対してA系がだめになった場合にB系を落としてしまうということはやはりかなり、確実に止まってしまうわけですので、B系の方をいかしておくという選択肢はやはり可能性としてはなかったのでしょうかと、もしB系を残していた場合に本当に破局的な何かがあるのかあるいはそのままフライトが継続できたのかといったところはどういうふうなご見解をお持ちなのかなというのはとても気になっております。以上2点でございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 先生ありがとうございます。データのサンプリング間隔といいますか、高周波のデータにつきましては、それはおっしゃる通りといいますか、我々もある限られた通信のキャパシティの中でどういうデータをどういう優先度で取っていくかということを常にシステム的に議論しながらこういったテレメトリーデータの設定をしております。やはり例えば今回は試験機ですので環境状態の計測であるとか、どうしても高周波でデータが欲しい部分については意図的にその部分だけ追加してデータを取っていることもあるのですけれども、通常のフライトに関しましてはやはり全体のシステムの中でどうしても見たいところ、必要な周波数、サンプリングタイムで優先度付けをしているのが現状でございまして、今回の現象につきましても本当に数ミリsecの事象を捉えないとおそらくいけないような話ですのでなかなかこの部分にフォーカスしてあらかじめテレメトリーデータを仕込んでおくというのはなかなか難しかったのではないかなというふうに個人的には今考えておりました。まず1つずつ先生のご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。状況を理解いたしました。ただやはり設計だと思われます、こういう故障を想定はされていればそのようなデータ取得の周波数であらかじめ設計されていたのではないかなと思ったものですから、ちょっとこういう質問になったわけなのですけれども、ではやはりまったく想定外の事象が発生しているのでこのような周波数になったというような理解でよろしいのでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい。我々としては今回の打上げ失敗につながった現象そのものは想定外のものでして、あらかじめどうしてもこの部分はマークしておかないといけないという類のものではなかったというふうに考えております。
 
【笠原委員】 はい。理解しました。
 
【木村主査】 私もそこの点はちょっと気になっていたところがあってですね、今回やはり現象的に値がどうだったかが見えないというところが今非常に悩ましいところですよね。皆さん、そこはもどかしく思っていると思います。とはいっても数ミリの刻みで取ってくるデータをすべて地上に下ろすのはたぶんおそらく無理だろうと、これも理解できるのです。
 後付けの知識なのですけれども、私もあとで考えた時に、問題が起きて機器異常BITがたった時にそれをその瞬間に何か情報として残すというような、そういう仕組みがあるとおそらく機器BITの根拠が情報として残るので、有効なのかもしれないとあとで思いました。これはあとで私も考えて気が付いた例なのですけれども、衛星とかだと異常検知した時にその情報を次の可視まで保持しないと情報として失われてしまうのでそういうのを、何らかのフレームを用意しておいて、そこに蓄積して、ダウンリンクすることで、判断の過程を検証するというような仕組みを作ったことがあります。ロケットの場合、時定数が非常に早いので、おそらく自動化せざるを得ないし、判断はFPGAかなり自動化してやらないとこのタイムラインだと追いつかないと思います。ですからそこはFPGAに任せるのですけれども、任せながら、彼が判断した根拠になった情報はどこかしらに残しておくというような工夫があるともう一歩判断基準がわかるのかなと思いました。例えば、ある異常を検出したときに、その前後の情報だけでも、何らか状況によって読み替えられる多型(ポリモルフィック)なテレメトリーフレームに入れてダウンリンクするなどの工夫が考えられるかなと思います。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 先生方どうもありがとうございます。確かにおっしゃる通り、今回異常を検知して止めたという、どう検知したのかという何らかの記録があればおっしゃる通り原因究明も進んでいるところがあるかもしれませんので、アドバイスを今後の開発に活かしていきたいと思います。ありがとうございます。
 それから2つ目の冗長設計に部分なのですけれども、20ページあるいは21ページに載せてありますように今回この系統が、基本ロケットというのはシングルでしっかりと作りこんで飛んでいくというのが基本だと考えておりまして、シングル系で、したがってLE-5Bもすべてシングル構成の中で動作しているわけです。その上流の冗長系に関しましては、その上流部分の信頼度を高めるための冗長設計ということで、下流の部分を救うための冗長設計ではないというのが基本の考え方ですので、先生のおっしゃられるようなところというのはH3の設計の中では想定しておらなかったというのがお答えなのですが。
 
【笠原委員】 承知いたしました。1つの可能性としてお伺いしたいのですけれど、もしB系の電源が落ちなかった場合、要するに過電流を放置した場合というのは、それはサバイブというか、どのようなことになったのかというのはちょっとご質問差し上げたい点なのですけれどもいかがでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 例えば短絡であるかと地絡の起き方によってお答えがいろいろと変わってきてしまうのではないかというふうに考えます。例えば短絡しっぱなしの状態に仮に下流がなっておれば、それはどのような状態でも救うことができなかったのではないかというふうに考えておりますし、本当にこれも仮になのですけれども、一瞬短絡が起きてそのあと解消するというようなモードが仮にあるとすれば、場合によっては、そこは救えたのかもしれませんが、すべてが想定のお答えになってしまいます。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。だからそのようなことと引き換えにミッションを喪失するというような設計になっているというふうな理解をしたものですから、そこらへんの深刻さというかそれとの引き換えとして両系が喪失したというふうに理解をいたしましたので、ちょっとこのような質問になりました。ありがとうございます。
 
【木村主査】 おそらく議論になるかなと思っていて、先ほどそこに関連してコメントさせていただきました。電気系からいうと電源ラインがショートされている状態というのは非常に良くないというか、例えば過電流が流れて下手したらそれで発火するとかそういうような破局的な状態に陥り得るかなというふうに思っていて、そうした事態を恐れられているのだろうと私の方は解釈いたしました。そうなると指令破壊すらできなくなって、機体が完全にそこで無制御に破壊するというモードまで陥りかねないと、その様な事態を考えられて過電流はとんでもないことだと、だからこれは止めなければならないと判断された、と思います。ただ、ここのところが先ほどおっしゃったように過電流が一過的なものであったり、それに対して、現状はテレメトリー等の情報を取って判断しているのですけれども、電気系からいうと電子ヒューズみたいな考え方もあって、過電流が起きた時に自動的に落ちて解消されるとまた入ると言う仕組みも考えられる。ただ、その時に本当にショートしていたら何度もそれを繰り返すだけなので、やはりそれも危険な状態と言えますね。やはり「たられば」で我々はすぐ電源さえ残っていてくれたら何とかなったのではないかと思いたくなるのですけれども、この事象はそういう意味では難しい問題なのだなというふうに私自身は解釈しました。この解釈でよろしいですか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、先生ありがとうございます。やはりロケットのシーケンス制御というのが19ページにございますようにかなりタイムクリティカルな状態で現在のロケットは少なくともそういうふうに作りこまれているので、そういう動作の中で今先生方がおっしゃられたようなものを、どういうふうに盛り込むと最適な設計になるかというのは、今回のことを教訓に次の開発の時にはもう少し深めた議論をできるならば、してみたいと思っております。
 
【木村主査】 はい、ありがとうございます。今の点、いずれも重要なポイントだと思います。他どうでしょう。ご質問ご意見等ございましたら挙手いただければと思います。神武委員お願いいたします。
 
【神武委員】 どうもありがとうございます。非常に詳細な検討とご説明でなかなかやれることはすべてやられて検討されているということがよくわかりまして、やはりH-ⅡAと同一のところもあって、その影響というところは気になるのですが、今後の進め方というところでやはり短絡・地絡に至った要因特定に至っていないがあらゆる可能性について検討を継続しているということなのですが、なかなかやれることには限りがあると思うのですが、今後どういう形で検討を進めていかれるかというあたり、もし方向性が決まっているようであればその辺りも少し教えていただければと思いますがいかがでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 神武先生ありがとうございます。まずは私としましては、ここは網をかけたらその中に必ず魚がいる状態にしないといけないと思っておりますので、つまりは網羅性というのはすごく重要だと思っております。したがいまして、あまり早期に決め打ち的な故障シナリオに絞り込むべきではないと思っておりますので、40ページにありますようなもちろん短絡・地絡以外にもその可能性というのは排除しておりませんので、そこは並行して検討する部隊がいるわけですけれども、この中に関して言いますと短絡・地絡の箇所をまず明確に洗い出すということが1点です。それが40ページで言いますと縦の軸になります。それから短絡・地絡を起こし得る要因についてこれも洗い出さなければいけませんので、現在のところ我々はFTAベースで衝撃・振動・真空、それから複合的な意味での製造・組立、これらを洗っておりますので、まずこのマトリックスをしっかりとさせるということと、1個1個についてある程度の優先度、それから検証するのに時間が少しかかってしまうものもあるので、それは中間的にどういうアウトプットを出すか、そういったことを順次、常にこういう網をかけながらシナリオ化しているところです。ですからまだ完全にすべてのシナリオが完成しているわけではないので、そのシナリオの検証と潰しこみとともに、残ったシナリオの抽出を今平行して進めていてまだそれは途中段階にあります。ですからどこか集中的に議論しているという状況は、まだ少し早いのではないかなと思っています。現段階では。
 
【神武委員】 はい。そういう意味では今はできるだけ広く可能性を広げてというところのフェーズだということですね。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そうですね。かつその中で優先度、やはりエンジニアリングジャッジ的な優先度というのもございますので、そこは優先度の高いところは注力しながら進めているところです。
 
【神武委員】 わかりました。ありがとうございます。
 
【木村主査】 私も実は今後の展開のところは少し気にしているところがありまして、関連して先ほどのH-ⅡAへの影響とかそちらの方もやはり問題になってくるかなと。もちろんH3の Return To Flightも非常に重要なのですけれど、それと同時にH-ⅡAとの連携のところがどうしても気になるというところがあって、これは打上げシナリオとして非常に影響が大きいかなと思っています。ここのところをうまく切り分けながら進めると。なるべくここの、おそらくH-ⅡAのフライトについてはスケジュールも非常に厳しい部分もあるかと思いますし、スケジュールが非常に Launch windowとして決まっているものとかあるかと思いますので、その辺りをぜひ検討されながら、ここで議論されているのは非常に良いことだと思うのですけれども、その辺をぜひ留意されながら進めていただけるといいのかなと思っております。それと合わせて、先ほどのH3の信頼度を考慮する、問題点を抽出していくというプロセス、これが必要になのだろうと思っています。さらにちょっと今お話、神武委員のコメントに関連するのかもしれないですけれど、その上で情報が結局最後のところまでなかなか全部出そろうわけではない部分があって、ある種決断をしなければいけない部分もあるかもしれないですね。そこの切り分けと、どこでどう判断をしていくかという、その辺のシナリオも今後重要になっていくかなと思っています。他いかがでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 これらを技術的に検討しているチームは、メーカーさんも我々もほぼ同一でして、あとH3、H-ⅡAに向けて検討をまとめていくというところは少しずつ分化していくわけですけれども、ベースとなっている技術検討の部分はみんなで共同でやっているというか、全員参加でやっておりまして、やはり先生がおっしゃられる通りH-ⅡAも早期に打上げを実現するために例えばあるところで判断をして、ある部分についてはすべて対応できたと確信できる状態でその打上げに臨んでいくとか、そういったことを検討するチームは少し独立してありまして、そういう形で進めているところです。
 
【木村主査】 ありがとうございます。心強いです。とても今大変なところで、皆さん毎日大変だろうと思うのですけれども、ぜひここは踏ん張っていただいていただければと思っております。ありがとうございます。他いかがでしょうか。よろしいようでしたら、時間もちょっとだいぶ下がっておりますので、この辺りで今回のところは一回締めさせていただこうと思いますがよろしいですか。それではここから以降、非公開とさせていただこうと思います。それでは事務局の方から事務連絡お願いできますでしょうか。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は文科省HPにすでに掲載させていただいております。また議事録につきましてもここまでの内容は公開となりますので、委員の皆さまにご確認いただいたのち、文科省HPに掲載させていただきます。また本日の会合ののち事務局よりプレスの皆さま向けにフォローアップのためのブリーフィングを行う予定としております。なお、次回のH3ロケットに関する有識者会合につきましては来月の開催で調整予定です。またイプシロンロケット6号機打上げに関する会合についても来月に開催し報告書の取りまとめを行う予定です。委員の皆さまには後日日程調整のご連絡をいたします。事務連絡としては以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。それでは公開の分はここまでということにさせていただきます。一般の方やプレスの方はここまでになります。傍聴どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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