宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合 (令和5年4月18日開催)議事録

1.日時

令和5年4月18日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. イプシロンロケット6号機打上げ失敗原因調査状況について(一部非公開)
  2. その他

4.出席者

委員

木村 真一 委員(主査)
柿沼 志津子 委員
笠原 次郎 委員
熊崎 美枝子 委員
神武 直彦 委員
辻村 厚 委員
中西 美和 委員

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行

 

5.議事録

【木村主査】 定刻となりましたので、宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合を開催いたします。今回の会合は、イプシロンロケット6号機の打上げ失敗に関する7回目の会合になります。今回も前回同様、オンラインでの開催となっております。委員の皆さまには、ご多用のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
 それでは、事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局の宇宙開発利用課の竹上です。本日は、遅れて参加される方を含め、7名にご出席いただくこととなっております。本日の資料は議事次第に記載のとおりです。
 オンライン状況について、音声が繋がらない等の問題がございましたら、事務局へメール・電話等でご連絡ください。事務連絡は以上です
 
【木村主査】 それでは、審議の方に入りたいと思いますが、その前に、これまでの経緯を簡単に振り返ってみたいと思います。
 昨年10月の打上げ失敗以降、早い段階から第2段RCSが原因箇所として特定されまして、フライトデータ、それから製造検査データの分析調査により、パイロ弁の動作不良とダイアフラムによる閉塞の2つの推定故障シナリオが抽出されていました。
 その上で、前回の2月3日に開催された小委員会において6回目の調査がありましたが、そちらではパイロ弁の動作不良という可能性が消えまして、ダイアフラムによる閉塞に絞り込まれたということです。この後JAXAにおいては、追加の地上試験を数多く実施していただき、詳細な原因の特定作業を進めてこられたと伺っております。本日はその結果を報告いただけると思っております。
 本日はこれらについて確認させていただきます。なお、ロケットに関する技術であって、機密情報を取り扱う部分については、参考資料1-2の運営方針に基づきまして、そのような情報に基づく議論は非公開とさせていただくことをご了承ください。今回も非常に生のデータ等がありますが、委員が非公開の場で確認をさせていただくという形で進めてさせて頂きたいと思っています。
 それでは議題に入りたいと思います。資料の説明を、JAXA宇宙輸送技術部門事業推進部の佐藤部長ならびにイプシロンロケットプロジェクトチームの井元プロジェクトマネージャーにお願いします。
 よろしくお願いします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 佐藤です。本日もよろしくお願いいたします。今、木村先生からもお話がありましたが、前回2月3日の報告以降、ダイアフラムの閉塞に関して、かなり詳細な試験を行いまして、今回原因の特定に至ったというところで、ご報告をさせていただきたいと思います。資料はご紹介ありましたとおり、公開と非公開に分けて本日も説明をさせていただきます。
 また、衛星等への水平展開を行いました。イプシロンそのものの直接原因のみならず、背後要因についての分析等も行いましたので、全体として報告をさせていただきたいと思います。説明は、井元プロマネの方からお願いします。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 JAXAイプシロンの井元です。資料に基づきまして説明いたします。まず、めくっていただきまして、2ページが目次になります。3ページが、本日ご報告する内容全体になっております。
 まず製造検査データですけれども、これに基づいて、要因の更なる絞り込みを実施しました。それから、追加検証結果等を踏まえ、原因の特定に至りました。それから是正処置と背後要因の方向性の検討をしておりまして、さらに、類似機器を搭載した衛星への水平展開は、後ほどご説明いたします。
 4、5、6ページについては、これまでと同様ですので説明は割愛させていただきまして、7ページ目をご覧ください。これまでFTAを展開して要因の絞り込みを進めてきましたが、前回の報告の中で、パイロ弁については要因ではないというふうに絞り込みました。
 その中で、推進薬供給配管の閉塞ということで、ダイアフラムによる閉塞、ここのところに関しまして追加検証等を多数実施しましたので、今日ご報告いたします。
 8ページ、9ページ、10ページも飛ばさせて頂きまして、早速11ページから内容の説明に移ります。まず、ダイアフラムによる閉塞というFTAに対して、詳細FTAを展開し、追加検証等を実施して、ダイアフラムシール部からの漏洩が原因であるというふうに特定しました。
 FTAの説明に移りますが、まずダイアフラムが正常ケースについては、2つに分けておりまして、まず1つ目、加速度による変形ですけども、以下の確認結果により、要因である可能性は極めて低いというふうに判断しています。まず、加速度環境下、ダイアフラムは液ポートに近接しないことを確認しております。それから、閉塞に至る条件であるダイアフラムが液ポートを覆って安定する可能性も極めて低いというふうに考えています。
 それから振動・衝撃による変形ですが、フライト中の振動・衝撃による変形というものは、ダイアフラムの弾性範囲内であって、液ポートに近接することはないことが確認されていますので、要因ではないというふうに判断しています。
 それからダイアフラムが異常ケースのうち、ダイアフラムの脱落については、以下の確認結果により、要因ではないと判断しています。
 まず、シール部のすっぽ抜けに関してですが、シール部の寸法と引っ張り加重の関係からは脱落しないということ。それから溶接のところ、ここが取れた可能性に関しても、固定リング溶接部に十分な強度余裕があるため、固定リングは脱落しないというふうに判断しました。
 それからダイアフラムシール部からの漏洩に関してですが、これが6号機打ち上げ失敗の原因というふうに特定しました。メカニズムは以下になります。
 まず、ダイアフラムがリング間隙間、固定リングと赤道リングの間に噛み込んで、その後の溶接工程等で一部が破断・損傷すると。ダイアフラムが破断したことにより推進薬が液側からガス側に漏洩し、ダイアフラムが液ポートに覆いかぶさると。その後、パイロ弁開動作時にダイアフラムが液ポートに入り込んで閉塞するというように特定しております。
 その下のダイアフラムの破断、これはシール部以外の一般部の破断になりますけれども、こちらの一般部の破断に関しては要因ではないというふうに判断しています。まずヒドラジン充填前の製造工程では、ダイアフラムが破断に至る差圧は印加されていません。それからヒドラジン充填後の輸送やフライト環境では、破断に至ることはないというふうに判断しています。
 これがまとめになりますけども、12、13、14ページで、これまでに実施してきました試験の内容の説明になります。
 (a)閉塞試験と(b)漏洩試験については、前回までにご報告しております。 (b)については、後ほどメカニズムでまた出てきますが、説明は割愛します。(c)開発供試体による追加検証について、前回からの更新箇所は赤字で示しており、確認した結果はこちらに示しております。後ほどまた本文で説明します。(d)組込溶接検証試験ということで、別の供試体を使用してダイアフラムを組み込んで溶接して検証した試験になります。丸4におきましてテストピースによる保証をしておりますが、この工程保証は適切であるということが確認できました。それから(e)輸送模擬試験は前回ご報告したとおり、振動・衝撃等も模擬できますけども、弾性範囲であり、液ポートには全然近づかないという状況です。
 それから13ページは、前回のご報告以降に実施した試験です。まずシール性確認試験です。実際にダイアフラムを赤道リングと固定リングを模擬したものに組み込みまして、その寸法がどの程度変わるかといった検証を実施しました。それから、漏れがあるか無いのかの確認も実施しました。その結果、丸1ダイアフラムのシール部に傷等がなく、ダイアフラムの組み込みが正常であれば、シール部がかなり潰し量が小さくても漏洩はしないという結果になりました。一方で、ダイアフラムのシール部に傷があり、シール部の潰し量が小さければ、潰し量がほぼ0%とか、マイナスもしくはプラスでも非常に小さい潰し量であれば漏洩してしまうということが確認できました。
 それから、ダイアフラムのシール部全周のうち8分の7程度が赤道リングと固定リングの間に噛み込んだ状態になりましたけども、この噛み込んだ状態では、ダイアフラムの破損や損傷等がなければ、シール部の潰し量が小さくても漏洩はしないという結果になりました。それから(g)ヒドラジン浸漬試験を実施しまして、シール部のところが潰れるんですけども、この潰れた量ですが、ヒドラジン浸漬による圧縮永久歪が発生いたします。その結果、設計条件よりも大きいということが分かりました。つまり、ヒドラジン浸漬によって漏れやすくなるという形になります。それからヒドラジン浸漬によって膨潤したり、引張荷重がありますけれども、そういったものがずっとかかっていますと、ダイアフラムは伸びるということまで確認しています。(h)旋回腕試験では、フライト中の加速度は3.5Gになるんですけれども、そういった加速度を模擬して、さらに1Gまで戻すという試験を実施しました。これは回転させてGをかけるという試験になります。ヒドラジンに浸漬させたもの、未浸漬のものの2つのダイアフラムを使って、JAXAの施設を使いまして試験を実施したところ、丸1フライト中の最大加速度(これは3.5Gに相当)を印加しても、ダイアフラムは少し液側に近づくんですけれども、かなり離れた状態になるという結果になりました。それから最大加速度3.5Gから1Gまで除荷しても、ダイアフラムは液ポートから少し離れる側に移動すると、最初の試験状態に戻る側に移動して、大きな形状変更はないということで、こういったところでも近接しないということが分かりました。また、水を充填して試験するのですが、Gの影響があるかどうかについて確認したところ、初期状態は結果には影響しないということまで確認しております。それから(i)ダイアフラム形状確認試験ということで、こちらはガスを充填して、人為的にどこまでダイアフラムが液ポートに近づくかという確認を実施しました。充填推進薬量は約9Lになりますが、これと同容積のガスを充填いたしました。その結果、液ポートに近づけると最小5ミリ程度まで近づくというところまで確認しましたが、接するまでには至らないと。少し力を入れると液ポートに着く程度のところまでは確認いたしました。それから丸2といたしまして、人為的に変形させてもダイアフラムは液ポートの直上からずれることが多いということで、真上になることは滅多にないという状況です。最後の丸3ですが、人為的に近づけた形状について、自然にこういった形状になったことは一度もないということになります。さらに(j)ダイアフラム近接状態での閉塞確認試験も実施しました。(i)と同じような形状を人為的に手で作り、水9Lを充填させ、液ポートに近接するように強制的に変形させた状態で模擬のパイロ弁を開にするという閉塞試験、これは前回ご報告しているような試験になりますが、そういった試験を実施しても閉塞する気配は一切ないということ。それから、水の充填量をかなり落としていき、ダイアフラムを液ポートに近づけようと思ったのですが、結局5ミリ程度しか近づかなかったのですけれども、このような状態で模擬パイロ弁を開にしても閉塞しないということを確認しました。最後に水充填量0.3Lと、極めて水を空に近い状態にしてダイアフラムが液ポートを覆いかぶさる状態にして模擬パイロ弁を開にすると閉塞が発生するということで、前回までにお示ししたデータ、それからフライトデータ1ビット上昇するというものといったフライトデータを再現することが確認できました。
 それから14ページになりまして、今度は今までは正常ケースに関する確認をしてきましたが、シール部の漏洩、噛み込み部分に着目して3つの試験を実施しました。(k)組込検証試験では、ダイアフラムを赤道リングと固定リングに組み込み、寸法がどのように変化するのかといった試験を実施しました。丸1ですけれども、ダイアフラムの組み込みが正常であれば、赤道リングと固定リングに多少変形があって隙間があっても、組み込む過程で赤道リングと固定リングの隙間に偏りがなくなり、最終的にリング間隙間とシール部幅が均一になる、偏った状態がないということを確認しました。それから丸2ですけれども、赤道リングと固定リングの隙間にダイアフラムシール部が噛み込んでしまうと、噛み込んだ位相のリング間隙間とシール部幅が大きくなってしまい、偏りがあることが確認されました。丸3では、組み込み用治具を取り外すと、固定リングが少し上の方に上がっていくというところまで確認できました。
 こういった状況から、6号機の寸法検査結果を基に、(l)噛み込みによる損傷確認試験を実施しました。シール部を切り出してダイアフラムのテストピースを作り、あと、固定リングと赤道リングの形状を模擬した平板のテストピースを作りまして、そうした金属板に挟み込んで溶接すると、シール部の大部分が破断・損傷するということが分かりました。(l)の試験と6号機の製造検査データを基に、(m)噛み込み損傷模擬漏洩検証試験を実施しました。まず丸1ですけれども、シール部の噛み込みによる破断を模擬して、意図的に欠損・破断させたダイアフラムでは、シール部から漏洩することが分かりました。その欠損の深さについては、上の(l)のところ、約1ミリ程度欠損するんですけれども、噛み込みによる損傷確認試験の結果を反映しています。それから欠損部長さに関しては、6号機の製造検査データを反映したものです。この漏洩については、ダイアフラムを手で押して形状を変えると漏洩が発生するということが分かりました。具体的には、輸送環境などを模擬し、形状を変えると漏洩が発生することが確認できました。その漏洩した状態は、非常に差圧が低い状態での漏洩ですが、圧力を徐々に上げていくと漏洩しにくくなるという特性があります。また、0.01MPaGは製造検査段階での漏洩試験圧力に相当するもので、そういった圧力では漏洩しないことが確認できました。
 こういったような検証結果をもとに、それぞれ丁寧に確認された事実と結論というものを、15ページ以降に示しております。まずダイアフラム正常ケースに関して確認された事項ですけれども、丸1~丸3は前回までにご報告しておりますので、丸4以降の説明になります。
 丸4ヒドラジン浸漬/未浸漬によらず、ダイアフラムにフライト中の最大加速度相当を印加しても、ダイアフラムは液ポートに近接しないことを旋回腕試験で確認しました。丸5最大加速度から1Gまで除荷すると、ダイアフラムは液ポートから離れる側に移動して、形状は大きく変わらないことを確認しました。丸6ダイアフラムが閉塞する条件は、ダイアフラムが液ポートを覆いかぶさること。丸7ダイアフラムが閉塞に至る条件である液ポートを覆いかぶさって安定する可能性は極めて低いことは、人為的に確認したダイアフラム形状確認試験で検証されました。
 これらを基に、16ページにダイアフラムが正常に関しては、フライト中の加速度環境では、ダイアフラムが閉塞する状態まで液ポートに近接するということはないということ。また、正常な場合はダイアフラムが液ポートに覆いかぶさって安定する可能性は極めて低いということで、ダイアフラムが閉塞発生要因とは考えにくいというふうに判断しております。
 17ページはダイアフラムの脱落についてです。確認された事項ですが、丸1は前回ご報告しましたとおり、すっぽ抜けるケースです。このすっぽ抜けるケースについては、シールの寸法確認検査、脱落限界を別途確認しておりますので、その関係から脱落することはないと判断しております。
 丸2については、赤道リングと固定リングの溶接のところの脱落です。溶接のところが脱落すると、ダイアフラムが脱落するんですけれども、こちらにつきましては、脱落していないと判断しております。それは6号機に限らず、実機製造ではテストピース溶接というところで、溶接幅は同一溶接条件の組み込み検証試験のテストピースと同等以上であることが確認できております。このテストピースは地上に残っているのでこういった確認ができます。
 それから組込溶接検証供試体、新たに追加したものですが、このテストピース溶接と固定リング溶接は実物で検査できるので、この溶接幅は同等であり、このテストピースによる工程保証が適切であることまで確認しております。
 それから組込溶接検証試験の固定リングの溶接幅と、QTタンクという非常に厳しい試験を実施しましたタンクがありまして、そのタンクの固定リング溶接の溶接幅と比較したところ、組込溶接検証試験のほうがバラつきが小さく、溶接幅の最小値が大きいということで、6号機+Y軸側タンクの固定リング溶接は十分な強度を要するために脱落が要因ではないという判断をいたしました。
 続きまして18ページです。こちらは要因であると特定したものです。確認された事項丸1~丸3は飛ばしまして、丸4ダイアフラム組込み時に、赤道リングと固定リングの隙間にシール部が噛み込むと、組込み後の当該位相のシール間隙間とシール部幅というものが大きくなるということを組込検証試験で確認しています。それから丸5、6号機+Y軸側のリング間隙間とシール部幅は、製造検査データから大きい部分がある、今までのチャンピオンデータであるというところを確認しています。溶接幅や隙間、シール幅は右のポンチ絵に示したところです。丸6ダイアフラムシール部を噛み込ませて溶接すると、シール部噛み込み端部が部分的に破断・損傷することを確認しています。それから丸7、6号機+Y軸側の製造・検査データを基に、人為的にダイアフラムの欠損させたものでは、シール部から漏洩することを確認しています。
 一方で、6号機の製造時に検査を合格した理由を下に書いております。まず一つ目ですけれども、丸7で示した漏洩は、ダイアフラムを変形させないと漏洩しないと。なおかつ加圧圧力を徐々に上げていくと漏洩しにくくなると。あと、半殻状態でのダイアフラム漏洩試験圧力(0.01MPaG相当)では漏洩が全くしないことを確認しています。2番目はシール特性上シール性が良いため、当該シール部以外でシールしている可能性があることも確認されています。それからヒドラジンを充填して過圧すると潰し量が小さくなるということで、検査時はヒドラジンを充填しておらず、過圧も微小で潰し量が大きいという状況ですので、漏洩しにくい状態であります。さらに輸送時の振動や射場作業時に上下反転する作業がありますので、そういった取り扱いでダイアフラムの状態やシール性が変わることの複合要因として、製造での検査をパスした可能性が高いと考えております。
 結論として、ダイアフラムがリング間隙間に噛み込み、その後の溶接工程等で噛み込んだ部分が破断・損傷すると推進薬が液側からガス側に漏洩すると。その場合、ダイアフラムが液ポートに覆いかぶさり、パイロ弁開動作時にダイアフラムにより閉塞するというシナリオ。したがって、6号機打上げ失敗の原因は「ダイアフラムシール部からの漏洩」であると特定しました。
 20ページに移って頂きまして、ダイアフラムの破断につきまして、確認された事項の丸3ですが、こちら厳しい試験ということで、往復輸送の2倍のところで、ダイアフラムの破断・損傷というものは一切なかったということで、「ダイアフラムの破断」、先ほどのシール部以外の一般部の破断に相当しますけれども、そういった破断は要因ではないと判断いたしました。ここまでが原因の特定状況になります。
 それから21ページには不具合要因への是正について記載しており、直接の対策をこのページに示しております。原因を「ダイアフラムシール部からの漏洩」に特定したことを踏まえ、現在開発中のイプシロンSロケットに対して対策を検討しています。まず大きな考え方として、開発リスクを抑えると、なおかつ信頼性を確保するという観点で、大幅な設計変更なく適用可能な国産の推進薬タンクを適用するということで、2案の検討を現在実施しているところです。今後、少しお時間をいただいてトレードオフを実施して、イプシロンSロケットの設計に反映します。まず1つ目ですけれども、現タンクの設計変更です。ダイアフラム式、容量が24Lになりますけれども、開発内容として、原因究明を踏まえた対策をしっかりと施すというものが一つの案です。それからH-ⅡAタンクを活用する案です。こちらは、※1に書いていますけれども、ダイアフラム組込時にシール部の噛み込みが発生しない設計製造工程となっており、出口ポートに閉塞防止用の機構を有するものですけれども、こういったものを活用すると。一方でこちらにつきましては、タンク置換えに伴う機体側の設計変更が必要になってきますので、大型化に伴う機体システム設計やブローダウンを実施するときの充填推進薬量の検討、こういったものを検討して、比較評価したいと。それから現タンクのところの※2についてですが、直接の対策として、シール部の噛み込みがない設計や製造工程、そしてシール部からの漏洩を確実に検知する方法を検討しております。さらにダイアフラム閉塞防止対策ということで、RCSタンクはもともとブローダウン方式であることから、推進薬消費に伴うガス圧低下の影響を押さえる観点から、充填量は大きくできないことではありますが、推進薬量を増加させたり、タンク液ポートに閉塞防止用の機構を追加するなどの対策も併せて検討しています。
 それから22ページでは背後要因を検討しました。背後要因に入る前に、このイプシロンロケットに関する経緯のおさらいになりますけれども、もともとM-ⅤとH-ⅡAで培った技術を最大限活用するということで始まったプロジェクトでありまして、第一段階ではこういったものを提供する、第二段階、今イプシロンSですけれども、抜本的な設計変更するというような経緯でありました。一部は機体仕様に応じて新規開発やフライト実績品を提供した開発を実施するというものです。サブシステムで分類しまして、例えばフェアリングでいいますと、H-ⅡA技術を活用しながら新規開発する、PBSはH-ⅡA技術を活用する、二段RCSはフライト実績品を適用するアビオニクスはH-ⅡA技術共通化やM-Ⅴの技術を適用する、構造はM-Ⅴと一部新規開発、SMSJはM-Ⅴの技術を活用して新規開発、三段モータと二段モータはM-Ⅴの技術を活用する、一段モータはH-ⅡA技術を活用する、こういったところで開発を進めてきたところです。二段RCSのところが特殊なものとなっています。
 23ページをお願いします。こういった背景の下、ダイアフラムシール部からの漏洩に対して、なぜなぜ分析という手法を実施した結果、背後要因はフライト実績に対する確認不足であると、特に、深く突っ込んだところの確認が不足していたというふうに考えております。M-ⅤとH-ⅡA技術を活用した範囲については、ロケットシステムにおいて実績のある技術をベースとしており、イプシロンの仕様に合わせた適応開発を行っています。開発段階では新規開発品と同様に、20年来実施しております基幹ロケットの信頼性向上の取り組みを踏まえた設計・製造工程・品質保証方法の確認を実施してきております。一方、2段RCSのダイアフラム式タンクは、元々は宇宙機で使用するということで開発されたものでありまして、このイプシロンに適用する際は使用条件や環境条件の違いを考慮しまして、機械環境試験や耐圧試験等のタンク構造としての確認、設計試験、こういったものは実施してきておりました。一方で、ダイアフラムシール部のタンク内部については、フライト実績を重視して、設計の考え方や作動原理等を十分理解した上での確認が不足していたというふうに反省しております。一歩踏み込んだ確認が不足していたというふうに判断しております。
 24ページが、そのなぜなぜ分析になりますけれども、ダイアフラムシール部からの漏洩が発生したことをトップ事象とし、「なぜ」を3つ重ねております。なぜ#1の上側ですけれども、故障モードが予測できていなかったということ。なぜ#1の下ですけれども、不具合発生リスクが排除できていなかったということ。なぜ#2ですけれども、なぜ故障モードが予測できていなかったかというと、基礎データを把握できていなかった、メカニズムや設計に関する基礎データを把握できていなかったということ。不具合発生リスクを排除できなかった理由としては、シール部噛み込みリスクを排除できない工程となっていたこと。寸法検査規格が不十分であって、寸法特異性を検出できなかったということ。メカニズムを含めて把握できておらず漏洩を検出できなかったこと。それらに共通する背後要因については、先ほどご説明したとおり、フライト実績品に対する一歩踏み込んだ確認が不足していたというふうに判断しております。
 25ページに移って頂きまして、このような背後要因を基に、イプシロンSロケット及び水平展開に反映させて、信頼性を一層向上させる計画でございます。フライト実績品を使用すること自体は特に問題ではないのですが、使用条件が想定と異なる場合はもちろん、20年来の信頼性向上に係る開発の目が入っていない場合につきましては、開発当時の設計の考え方や使用条件の根拠、製造工程、品質保証方法に立ち返った確認を実施していきます。それから過去の設計等に立ち返る場合には、2003年のH-ⅡA6号機打ち上げ失敗以降、基幹ロケットとして取り組んできた信頼性向上の観点を十分に考慮して、抜けのないように確認していきたいと考えております。まず不具合事象への対応、不具合も含めたメカニズムや動作余裕の確認、どこで限界なのかということ、製造・検査・整備作業の改善といったところを確認していく予定です。
 26ページに移って頂きまして、まとめになります。6号機の原因究明結果として「ダイアフラムシール部からの漏洩」と特定しました。この3つの説明は割愛いたします。
 それから直接要因の水平展開については、衛星については後ほど「参考2」でご説明いたします。
 今後の予定については、直接の是正ということで、現タンクの設計変更案とH-ⅡAタンク活用案を検討して、トレードオフを実施して処置を決定します。それから背後要因(間接的原因)の分析結果等をイプシロンSロケットの開発に反映して信頼性を一層向上させていきたいと考えております。
 それから27ページの(参考1)ですけれども、こちらは12月16日の時点で確認中としていたものに対する確認結果を示しておりまして、基本的に良好であって、検査規格に全て合格していることを確認しております。ただ、ダイアフラムの組付部の寸法については、リング間隙間とシール幅に大きい部分があることや、漏洩試験については検査規格に適合していることを確認していますが、シール部以外でシールされている可能性があることを整理しています。
 28ページが、実際の試験・規格と結果を示しておりまして、全殻を溶接する前の半殻状態での漏洩試験の模式図を示しております。水につけてガスで0.01MPaGに加圧して漏れの有無を確認するという試験です。
 29ページは全殻状態での漏洩試験の結果です。こちらも検査規格に合格していることを確認していますが、シール部以外でシールされている可能性を考慮しています。
 30ページに、全殻状態での漏洩試験の模式図を示しておりまして、ガス側加圧と液側加圧が行われていますが、先ほどの10倍程度の圧力での試験になりまして、いずれも検査結果としては合格になっております。
 (参考2)の説明をお願いします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 32ページの(参考2)をご説明いたします。こちらは直接対策の水平展開を行ったものです。昨年来、同じようなダイアフラム式タンクを使っているJAXA衛星、最終的には丸1と丸2に書いてある「XRISM」「SLIM」が、同一設計と類似設計として抽出されています。こちらに随時情報をインプットして、評価をしていただいてきたという状況です。下の四角に書いてあります、早い段階から情報を展開していましたので、前回までの情報ということで正常ケース、異常ケースの両方どちらでも大丈夫かということで評価を行ってきたものです。
 33ページに、これらのタンクとイプシロンとの違いを少し整理しております。真ん中の「XRISMタンク」は、イプシロンと同一設計のものになります。直径、容量等も同じになっていますが、推進薬の充填率がイプシロンよりも多いこと、実際の充填は射場に着いてからとなりますけれども、打ち上げまでに置いておく期間がイプシロンに比べて短いという違いがあります。「SLIM」についても、同一メーカーで類似設計になっていますが、タンクサイズがイプシロンよりも大きく、推進薬の充填率も大きいと。また、充填からの期間にも少し違いがあるということも考慮しつつ、点検をしたということです。点検自体は、それぞれ宇宙研の各プロジェクトで実施されたものを、34ページから概略としてご説明します。
 まず「XRISM」ですが、上はタンク正常ケースということでの評価になっております。今回は異常ケースに絞り込んでおりますが、この時点では両方展開したということで正常ケースです。正常であれば、推進薬充填量が非常に大きいということで、運用初期に遮断弁を開したときにダイアフラムが近づいていないという特性がありますので、閉塞は起こらないだろうと。それから、運用末期になってきた時に、容量が減ってきた時に、その時点ではスラスターが開いたときの微小な量が出ていく動圧では、今回の事象は起きないだろうという評価をされています。下が今回の異常ケースに対応した評価になりますけれども、イプシロンとの違いは、開発段階で実際に推進薬の模擬として水をタンクに入れまして、フライトより厳しい環境条件で振動試験を実施して水の漏洩がないことを確認しています。これは実機を使ってやっていることが一つの大きな違いになります。上の水を入れた試験では、現時点で破損はないと評価しておりますが、仮に工程の中で噛み込みがあったとしても、この試験以上の負荷は打ち上げ以降は印加されないということで、破損する可能性もないというような評価になっております。
 35ページは「SLIM」の方です。こちらは設計が類似しているということで、右の図のように違うところがございますけれども、正常ケースについては「XRISM」と同様推進薬充填量が多いということと、運用末期にはその動圧では今回のようなことは起きないという評価。異常ケースにつきましては、こちらも実機のダイフラム組込後にリーク試験を行っており、漏洩がないことを製造工程の中で確認しています。イプシロンでは、組み立てたときにシール部の隙間に特異的な寸法があることもありますが、「SLIM」の検査データとしては、ここには全く特異事象がないことから問題はないという評価になっております。説明としては以上になります。
 
【木村主査】 ありがとうございます。ダイアフラムシール部からの漏洩ということで、原因が特定されました。その間、非常に多くの検証作業を実施されたことだと思います。皆さんのご尽力に敬意を表したいと思います。また、実績品であるがゆえの盲点というのは、これもまたシステム設計上、あるいは信頼性向上の面からも非常に重要な教訓だと思います。
 最初にいくつか確認させてください。ダイアフラムシール部の噛み込みが発生するというリスクは、これまでも存在していたけれども想定されていなかったという理解でよろしいですか?実績に鑑みて検討する項目からは外れていたという理解ですね。この中で試されたのは追加検証という理解なのですが、製造時の検査で漏洩を検出できない可能性があるという表現がありました。これは製造データとして残っているけれども、そこから今回の事象に対する検証は難しいという理解でよろしいでしょうか?
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 噛み込みに関しては、一般論としてはあり得ることだと思います。今回のものに対しては、JAXA側では想定ができておりませんでした。漏洩に関してですが、0.01MPaGという圧力、今回損傷を与えた時のシール性の確認をしたのですが、そこでは漏洩が止まっているという事実がありました。(参考1)の28ページに検査結果を示しておりますが、実際の規格としては0.01MPaGですが、実際の圧力としては0.0065MPaGの圧力を加えたところ漏洩がないところまで確認しておりまして、こういったところで液側を過圧してガス側への漏洩というものが検出されていないということと、今回の検証の結果が整合していると判断しております。また、この圧力を高めると、右上の図のようにダイアフラムがパンパンに張っており、こういった状況の中で、シール部以外のところでもシールしてしまう可能性があります。これが全殻状態になったとしても、出口ポートにこのダイアフラムが吸い付いて漏洩が止まってしまう可能性も示唆できますので、もしかしたら、そういったところで検査をすり抜けたというふうに考えております。
 
【木村主査】 わかりました、ありがとうございます。なかなか難しい現象だと思っています。一方で2点目ですが、フライト実績品を活用するという表現と、今後の対策のところでダイアフラム組み込み時にシール部の噛み込みが発生しない設計製造工程になっているという表現がありました。これは他のケースについては、このリスクについては検討されているという理解でよろしいでしょうか。それとも、方式は全く違うので、この方式であれば噛み込みは物理的に発生しないからということでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そうですね、後者になりまして、基本的にダイアフラムを固定する部分の設計と製造が全く違うものでして、原理的に噛み込みが発生しない設計になっています。
 
【木村主査】 噛み込みがリスクとして認識されて対策されたというよりは、製造的にそういうのが発生しづらい仕組みになっていたということでよろしいですね。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そもそもそうですね。そういう設計になっています。
 
【木村主査】 ありがとうございます。3つ目は確認なのですが、イプシロンSへの是正措置については、今まだ2案の対策を検討してトレードオフを実施しているというお話しで、結論はこの後に検討してから提示されるということでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、少しお時間をいただいて検討させていただきたいと考えております。
 
【木村主査】 わかりました、ありがとうございました。大変な検討をされてこられたと思います。それでは委員の皆さまから、何かご意見やご質問がありましたら、お願いいたします。
 笠原委員、よろしくお願いいたします。
 
【笠原委員】 笠原です。本当に詳細な分析をありがとうございました。
 すみませんが現象をきちんと理解していませんので、そういう角度の質問になります。噛み込みが存在しているので漏れがあるということなんですが、噛み込んだ部分は閉じていますが、噛み込んでいる部分から噛み込んでいないところに隙間みたいなのがあり、そこから漏れている、どこがリークパスなのか、今一つ理解できませんのが1点目です。そして28ページが分かりやすい図で、パンパンに張っているときは、きちんとリークパスがシールされているから漏れない状態になっており、圧力をかけたほうが漏れにくいということも理解できました。でいつどんな圧力の時に、つまり圧力がかかっていないときにリークが行われていると理解したのですが、そういうときはそもそも充填していない、充填操作があれば必ず圧力がかかってしまっているというイメージを持っているのですが、どういうときに本当にリークしたんだろうかというイメージが持てませんでした。要するに、具体的にどういう操作のときに、この場所から漏れたというイメージがつかめなかったので、教えて頂けないでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 一点目の御質問ですが、18ページをご覧ください。この左下の方に噛み込みということで、この赤道リングというのが赤で、固定リングというのが黄色なんですけれども、これに青のダイアフラムがその間に挟み込まれると。この挟み込んだ後に締め付けるのですが、さらに溶接をすると隙間がギュッと縮まります。縮まることによって、噛み込み部分の大部分が破断するという結果になります。後ほど非公開のほうで写真をご覧いただきますが、ある幅を持ってですね、ある長さをもってそこが噛み込んで破断、部分的に欠損するというようなイメージにして頂けるとお分かりいただけるのではと思います。
 そうすることによりまして、シール部が、潰し量がマイナスになってしまうというようなところで、漏れやすくなると。ある一定の幅だと漏れない、もうちょっと長くすると漏れるという非常に微妙な試験結果になっており、そういう噛み込んで破断した部分を経由して漏洩するといったイメージになります。1点目はよろしいでしょうか。
 
【笠原委員】 潰し量が減ってしまうということですね。承知いたしました。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 二点目ですが、少しイメージが湧きにくいのですが、28ページに示しているのは、片側に加圧した状態で膨れ上がっているものになります。それで31ページをご覧ください。右下の図で液ポートから、24Lあるタンク中に約9Lの推進薬を充填します。1/3になるのですが。その後にガスポートを加圧すると、このタンク中のガスも液体も一定の圧力になって、差圧が非常に小さい状態になります。ダイアフラムはどちらかというと水平状態になるのですが、実際に推進薬を充填した後の保管状態ではダイアフラムが縦方向になっておりまして、水頭圧の関係で下のほうが、液側の方が圧力が高くなります。その関係で、非常に微小な差圧によって漏れやすくなると。なおかつ、例えば輸送時の振動といったものが加わると、またダイアフラムのシール状態が変わって漏洩しやすくなるので、そういようなところで漏洩したのではないかというふうに推定しております。
 
【笠原委員】 了解しました。つまり、ダイアフラムの前後には圧力はあるけれども、ダイアフラムの前後の圧力差がほとんどゼロに近い状態というのが存在して、その時こそが漏洩する瞬間であったという理解でよろしいでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、その通りです。1G環境下ではヘッドが存在しますので、たぶん無重力では差圧はほとんどないと思いますが、1G環境下ではヘッドの関係で差圧が少し出るということです。
 
【笠原委員】 よく理解できました。あと一点だけ、今後の対策のところで、このような形にならないように「検知」という言葉が出てきたと思うのですけれども、実際はこういう透明ではない金属状の加圧容器の中で検知するのは、一見難しい技術のように思えるのですが、この辺りはどういう検知方法で確実に確認されようとしているのでしょうか。その辺りについてご説明いただくことは可能でしょうか?
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 おっしゃるとおり、漏洩の確認というのは、非常にシール性のいいダイアフラムですので、難しいものになります。かなり高い圧力で漏洩検査をしていますが、その圧力を下げることによって漏洩が検知できるのかというところは一つ考えられます。もう一つは先ほどXRISMのほうで説明したとおり、水を充填して振動試験を行なって検知する方法も考えられますので、そういった広い範囲で対策、どうやって検知するのかといったところを現在考えているところです。
 
【笠原委員】 理解いたしました。あくまでフライト前に検知を行うということで、フライト中に検知するわけではないということですね。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そうですね、フライト前に健全であることを確認して打ち上げるという趣旨です。
 
【笠原委員】 よく理解できました。質問は以上です。ありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。私も今のところ、最初の質問のところで関係して確認させて頂きたいのですが、18ページのところで、スライドしながら組み付けていくから、サイドの部分が上に引っ張られるというか、スライドの過程で上に噛み込むため、そこの部分の組み付けの部分の幅が実質的に狭くなり、噛み込まれてものがちょん切られて細くなったところを経由してリークするという理解でよろしいでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 組み込みの中ではおそらく破断しないんですが、噛み込んだ後の溶接による影響で、噛み込んだ部分が潰されて圧縮される形になるため、そこで破断したことはテストピースによるもので確認致しました。
 
【木村主査】 そこの固定リングの中に存在しているダイアフラムの端部が実質的に小さくなってしまうから、そこがリークの元になり得るのであるという考察の訳ですね。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、おっしゃるとおりです。
 
【木村主査】 わかりました。そうすると、この工程を使っている限りにおいては、これまでにもリスクは存在し得たのではないかなというふうに推察します。これはたまたまだったのでしょうかそれとも製造過程でここが引っかかるというか、噛み込まれてしまうというのは、ある種製造の時には分かりづらいものなのでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 これまでの検査では、なかなか分かりづらい検査になっておりまして、今回、地上側に残っていた検査データを全て整理したところ、18ページに書かれているリング間隙間とシール部幅の検査データがありましたので、その結果から特定の位相の所で隙間が大きくなっているとかですね、そういうのがわかったという状況です。そのようなトレンド評価が全てできていればもしかしたらわかったかもしれないというぐらいの微妙な寸法になっております。
 
【木村主査】 なるほど、わかりました。なかなか難しいところですし、先ほど笠原委員からもあったように、実は横から見えているわけではなく、金属の球の中で行われている作業だから、外から見てもわからないということですね。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、外から見ると全くわかりません。
 
【木村主査】 わかりました。ありがとうございます。他にご質問やご意見等如何でしょうか?大分、確信に迫っておられる気がします。また、これを受けて、今後の対策に観点が移っていくと思われますけれども。
 神武委員お願いします。
 
【神武委員】 今までの質問にも関係してくると思いますが、今までの検査ではわかり得なかった可能性があるということで、これからいくつか工程が追加されると思うのですけれども、それは、部品を出荷するところでの検査等、いくつかのところで追加の工程が発生するのではないかと思うのですけれども、その点をもう少し、できれば順を追って教えて頂ければと思うのですが如何でしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 わかりました。製造工程は(参考1)の方に示しており、31ページをご覧ください。基本的に、このタンクの製造、それからRCSそのものの製造工程の中で検出しないといけないものですので、まず、ダイアフラムのところから上の組み込みのところが矢印が上がっているかと思います。この組み込みの中でそもそも嚙み込みみたいなものが排除できる工程にしないといけないというのがまず1点になります。その後、溶接丸2で赤道リングと固定リングを溶接します。そういう半殻状態で漏洩試験が、青の線で囲まれているところで、行われますが、ここでどうやって検出するのかがまず一つ。それから溶接丸3で赤道リングとガス側反球を溶接した後に球状態になって見えなくなるのですが、そのような状態の中での漏洩試験、まず検出できるのかといったところです。例えば水を入れて振動試験を行うなど、確実に検出できるのかといった工程の追加ですとか、そういったことを考えているところです。
 
【神武委員】 わかりました。そうすると複数回、今回の不具合を消すチャンスが新たに追加されるということですね。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、そうです。
 
【神武委員】 わかりました。ありがとうございます。
 
【木村主査】 もう一点だけすみません。18ページの図のところで、破断に至ったという話の時に、ダイアフラムの物性が影響したというようなことはあり得ますか?要はフライトの時にここは問題になっていなくて、今回発生したと。リスクはこれまでもあったのかもしれませんが、今回なぜ?というところが一つ気になっています。物性的な何か違いが原因になり得ることはあるのでしょうか?
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 それはないというふうに考えております。他のダイアフラムをたくさん切り出してこの溶接試験等を実施しました。同様の工程で溶接すると、大きな破断や少し小さい破断などのばらつきはありましたが、基本的に破断・欠損みたいなのは出ると。特別、この6号機がという話ではないというふうに考えております。
 
【木村主査】 なるほど。製造上のばらつきから、リスクとしては存在はしていて、それが、今回顕在化したということですね。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、そうです。
 
【木村主査】 わかりました、ありがとうございます。他にいかがでしょうか?
 大量のデータがありましたし、考察も非常に多かったので、時間がかなり下がっていますけれども、ご意見やご質問がありましたら。大丈夫でしょうか。大変丁寧にご説明いただきまして、また深い考察から、これから先のことについてもご検討いただいてお話いただきまして、本当にありがとうございます。
 ここで一旦非公開のほう移りたいと思いますので、事務局より事務連絡をお願いします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局からの事務連絡です。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は文部科学省ホームページに既に掲載しています。また、議事録についても、ここまでの内容は公開されますので、委員の皆さまにご確認いただいた後、文部科学省ホームページに掲載させていただきます。本日の会合の後、事務局よりプレスの皆さま向けにフォローアップのためのブリーフィングを行う予定です。
 なお、次回会合でございますが、本日いただいたご意見等を踏まえ、「イプシロンロケット6号機打ち上げ失敗に係る報告書」を取りまとめていただく予定としており、5月の開催に向けて調整を進めたいと思います。また、H3ロケット試験機1号機打ち上げ失敗に関する会合につきましては、別途、今月の27日木曜日13時からの開催で調整中ですので、日程の確保をお願いいたします。事務連絡は以上です。
 
【木村主査】 今回の件が、今後のより信頼度の高いロケットにつながっていくことになっていけば良いと思います。
 それでは、以上で公開部分の会合を終了とさせていただきます。一般の方やプレスの方はここまでとなります。傍聴ありがとうございました。

―― 了 ――

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