宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合 (令和5年3月16日開催)議事録

1.日時

令和5年3月16日(木曜日)15時30分~17時30分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. H3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況について(一部非公開)

4.出席者

委員

木村 真一 委員(主査)
柿沼 志津子 委員
笠原 次郎 委員
熊崎 美枝子 委員
神武 直彦 委員
辻村 厚 委員
中西 美和 委員

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当) 原 克彦 
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史

5.議事録

【木村主査】 それでは、定刻になりましたので、宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合を開催させていただきます。
 前回に引き続き、H3ロケット試験機1号機の打上げ失敗に関する第2回目の議論ということになります。
 さて、本日も前回同様オンラインでの開催となっております。委員の皆様には御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局の竹上です、本日もよろしくお願いいたします。
 本日は、調査・安全有識者会合に御所属いただいている委員のうち、遅れて参加される方を含めて、7名に御出席いただくことになっております。本日の資料は議事次第に記載のとおりです。オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール・電話等で御連絡ください。
 事務連絡は以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 それでは、今回の議事に入っていこうと思いますけれども、前回の会合は打ち上げ翌日に開催され、そこから1週間経ちましたので、この間、JAXAの方でフライトデータの解析などを鋭意進めていたのだと思います。本日それらを踏まえた原因究明の進捗状況について確認していきたいと思っております。
 また、ロケットに関する技術であって、機微な技術情報を取り扱う部分については参考資料1-2の運営方針に基づきまして、そのような情報に基づく議論は非公開とさせていただくことを御了承いただければと思います。私たち委員の方で代わりに確認させていただくという形で取らせていただこうと思っております。
 さて、それでは、議題に入ります。資料の説明をまず、JAXA宇宙輸送技術部門事業推進部の佐藤部長、並びにH3ロケットプロジェクトチームの岡田プロジェクトマネージャー、よろしくお願いいたします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 本日はよろしくお願いいたします。佐藤と岡田で対応をさせていただきたいと思います。
 先ほど御紹介ありましたけれども、資料につきましては、公開資料と後ほど非公開ということで少し機微な情報を入れた形で2部構成にしてございますので、よろしくお願いいたします。
 まず、公開の方は岡田プロマネの方から一気通貫で説明させていただきますので、よろしくお願いいたします。では、岡田さん、よろしくお願いします。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 H3プロジェクトチーム岡田でございます。よろしくお願いいたします。
 お手元の資料1に基づきまして、御説明していきます。
 H3ロケット試験機1号機打ち上げ失敗原因調査状況でございます。
 1ページを御覧いただきますと、本日の目次でございますけれども、まず、1章で1号機の概要を載せてございますが、このうちの1-3の打ち上げ結果までは前回で御報告済みですので、ここは説明としてはスキップさせていただきます。
 1-4の発生事象の内容ということで、1・2段分離後の2段エンジン着火シーケンスをまず御説明した上で、これまでにその近辺で確認された事象を述べます。それのデータになりますテレメーターのデータの確認状況につきまして、これはエッセンスだけですけれども載せてございます。
 そして2章で原因究明の状況、これはFTA、故障の木解析を中心として、今、原因究明を進めておりますので、その状況を御説明いたします。
 最後に今後の進め方でございます。
 2ページに参りまして、本日の御報告の内容ですけれども、この赤の四角に囲ってある部分、データに基づく原因究明、これは全て完了というわけではありませんので、現状の進捗を述べさせていただきます。今後、原因の特定、そしてそれに応じた対応を進めていく予定でございます。
 3ページから9ページまでスキップさせていただきまして、9ページは少しおさらいということで御説明いたします。
 これまでに確認された事象ということで、下にフローがありますけれども、メインエンジンのカットオフ、MECOと我々呼んでおりますけども、このイベントが後で約7秒後に1・2段分離、そしてさらに7秒後に2段エンジン着火の予定でした。ここまでの信号は出ているんですが、実際に2段のエンジンの着火に至らなかったということでございます。
 以降、この2段のエンジンの着火近辺につきまして、詳しく述べさせていただきます。
 10ページをお開きください。
 10ページですけれども、このページでは着火に至る基本動作を図と文章で述べております。文章の方は基本動作を五つに分けておりまして、丸1から丸5まで、それが下の2段エンジンの系統図の丸1から丸5と対応しておりますので、併せて御覧いただきたいと思います。
 そして、この中の登場人物ですけれども、まず一番上に電池、そしてV-CON、飛行制御のコントローラですね。そしてPSC2、2段の推進系のコントローラ、ECBから下、この点線から下はエンジン部分になりまして、ECBというエンジンのコントロールボックス、それ以降にPNPというニューマティックパッケージ。ニューマティックパッケージというのはちょっと特殊な装置でありまして、右下にありますけれども、エンジンバルブはヘリウムガスで駆動するんですが、そのヘリウムガスのオンオフをするための電磁弁が搭載されていたり、あるいはエンジンの点火を一番最初に行うためのスパークプラグを駆動するなどの制御を行うパッケージでございます。
 さらに最後の方でエキサイタ、これはエンジンの点火機のスパークプラグ、それから各バルブとつながっております。
 右の図は、それがどこに搭載されているかという図なんですけれども、まず、機体側としては2段の機器搭載エリア、これは大変分かりづらいんですけれども、この2段の機体を下から眺めて、エンジンを取り外して下から眺めたところです。このオレンジに見えるところが液体水素のタンク、グリーンに見えるところが液体酸素のタンク、そして、その液体酸素のタンクの下側にコーン状の機器搭載分がありまして、その上に先ほど述べましたV-CONであるとか、PSCが載せてあります。2段エンジンの中には、上半分がいろいろな機能品が載せてあるところで下半分がノズルなんですけれども、この中に、上半分のところにECBであるとかニューマティックパッケージが搭載されております。
 基本動作を述べさせていただきます。まず、V-CON2Aが1・2段分離を検知いたします。これが丸1です。丸2として、その後にV-CON2A・BからPSC2、これは点線で囲んである筐体としてワンボックスになっているものなんですけれど、そこに着火信号を送る、これが丸2、青矢印です。PSC2は、それを受けて2段のエンジンのコントロールボックス、ECBへSEIGを出力すると、これは丸3です。
 ここはちょっと申しそびれましたけど、2段の機体側は、このA系/B系ということで冗長構成されておりまして、突き合わせで信号が送られます。そして、丸4としてECBがその信号を受けた後に、エンジンの中のニューマティックテックパッケージに駆動を指示すると。ニューマティックパッケージは、各エンジンのバルブであるとか、点火機のエキサイタ、スパークプラグを駆動するという流れでございます。
 こういった動作の中で、何が起きたかというのを11ページ、それからその実証となります12ページにはデータが載せてございます。
 11ページを御覧いただきまして、右の図は先ほどの図と同じですが、丸の色が違いまして、この丸は左の文章と整合しています。
 まず、一番左側の上の文章の一番上ですけども、SEIGという2段エンジンの着火信号の喪失までは、このECBとニューマティックパッケージ経由の各バルブの制御は正常であったことが確認できています。つまり、ここまでは何ら問題がなかったということです。
 PSC2がECBに対してSEIGを送信する、これは丸1ですけれども、その後ECBは、それを受信したということを確認しています。ここまでが正常動作をしています。
 その後なんですけれども、ECBがSEIGを受信した直後に、PSC2で、この中には機器BITが仕込まれておりますので、この機器BITの中でA系/B系共にですけれども、エンジン駆動電圧・電流の異常を示す機器BITが異常を検知しました。同時に検知しております。
 下流機器への電源を予定どおりといいますか、検知した上での遮断をしている。同時にA系からB系に冗長切替えをしております。
 電源については、この赤の矢印で書いてありますけれども、ECB、それからPNPの中で付き合わせでA系/B系が供給されております。
 同時に、PNPに対して供給する駆動電圧が、A系/B系とも下降。この丸5の部分ですけども、これが下降しまして、一方でECBの制御電源、これは丸6ですけども、ここは正常でした。ですから、丸5が異常を示して丸6は正常であったと。
 その後エンジンのバルブの作動が確認されず、エンジンは着火しなかったという流れでございます。
 12ページに若干のデータでそれをお示ししていますが、このデータの見方ですけれども、上半分は状態を示しておりまして、立ち上がったところで何かこの状態が変わったというものです。
 上半分、三つがA系、下半分がB系でして、A系の中でエンジン駆動電圧・電流異常のBIT、そして着火信号の受信の信号、それから着火の送信の信号なども載せてございます。
 B系も同じでして、これを御覧いただきますと、まず丸1でSEIGの送信は正常に行われていると。それから丸2で受信も正常に行われていると。その直後に、先ほど申しました機器BITの異常が検知されているというものでございます。
 下の方は電圧のデータでございまして、凡例にございますように、赤がニューマティックパッケージの駆動電圧、それから青がECBの制御電圧です。これはA系からB系に切り替わるとA系のデータが取得されませんので、途中からB系のデータだけが示されておるんですけれども、この緑の部分ですね。左から見ていただきますと、6.3秒からずっとデータが並んでおりまして、SEIGの受信のタイミングで、丸5としてB系の電圧が落ちかけています。そして、A系の電圧はもう落ちております。
 それから、それ以降ですけれども、B系の電圧は落ちたままということで、ECBの電圧、青の白抜きの四角については維持されている、B系の電圧は維持されているというデータが載せてございます。
 それらに基づきまして、13ページにFault Tree Analysisを今実施中でございます。かなり細かくなりますので要点だけ述べさせていただきますけれども、事象としては、2段エンジンの不着火をトップ事象と置きまして、ここの一次要因の分け方は何が喪失されたかということで、制御電源、そして制御信号、駆動電源、この三つにまず分けました。
 制御信号に関しては、ではなぜ、仮にそれが信号を喪失するとしたら、何が原因であるかということで、ここに載せてあります3点、いろいろな部分の、信号が出力されなかったあるいは受信されなかったというようなもので、これは10ページで言いますと、青の矢印の部分を示しております。
 それから、駆動電源喪失につきましては、大きく分けて三つ、ここに枝分かれさせているんですけれども、一つは電池、もしくはV-CONからの駆動電源がそもそも喪失していると。PSCからすると一次側が落ちているということの可能性。次が、推進系コントローラからニューマティックパッケージへの駆動電源の喪失があったと。最後に2次要因の一番下ですけど、ニューマティックパッケージ本体の駆動不良。まず、このように分けました。
 3次要因としまして、この段階でフライトデータからの評価を行ってみますと、このバツが打ってあるところは、既にデータからしてこの要因は排除できるというふうに考えたものなんですけども、例えば、この制御信号喪失などを軒並みバツにしてありますけれども、これはECBが正常に動作しているなどの状況証拠がありますので、ここは原因からは排除しております。
 今残されているところが赤で示しているところなんですけれども、主には推進系コントローラからニューマティックパッケージへの流れでございます。これを3次要因として区分けしているんですけれども、まずPSC2の中で過電流を誤検知していると。つまり、何か設計上好ましくない状況があって、本来検知するべきではないレベルで検知しているということが1点。
 それから2点目が、何らかの理由での設計想定よりも大きな電流が、通常の動作として消費されたと、消費電力が大きくなったというものでございます。これは過渡的にそういう状況になり得るということも含めてこの中に入れております。
 そして3番目と4番目が、内容的には近い話なんですけども、この中にございますけど、フライト中に機器の内部の部品もしくはハーネスが短絡して過電流、4番目が地絡して過電流という区分けをしています。
 さらにその下、PSC2の中の電圧課題、これは状況からしてバツを打ってあります。
 それから、一番下のニューマティックパッケージの駆動不良につきましては、少し上と重複した考察になるんですけれども、ニューマティックパッケージ及びその下流機器の短絡・地絡の故障の場合には過電流を生じる可能性があるということで、上の評価と共通するような評価をしてございます。
 これらを総括して現時点での想定ですけれども、14ページに参りまして、テレメーターデータの分析、そして今御説明いたしましたFTAより、以下の特徴があると考えております。
 一つは、ECBは正常に受信して電源も正常であることを確認しています。SEIGのタイミングで突き合わせ供給しているエンジン駆動電源のA系/B系、両系統の電源でBIT異常を検知しているということから、これら両系に電源異常を発生させ得る共通因子が異常となった可能性が高いと考えます。
 両系統のエンジンの駆動電源とほぼ同時に異常検知するケースとして、先ほどFTAで述べました三つのケースが考えられます。
 一つは、過電流の誤検知。PSC2内部での過電流の誤検知。
 二つ目は、PSC2から電源供給している下流機器の消費電流が過大、これは正常動作の範囲内でという意味です。
 そして、同じく下流機器の短絡故障、またはワイヤハーネス等の地絡での過電流。
 現在、これらを突き詰めるために、いろいろな試験を行っております。少しずつ試験結果も出ておりますので、追って御説明させていただこうと思いますけれども、どのような試験かと言いますと、一つは、短絡が発生したときにどのような動作をするかということで、PSC2の駆動電源の電流検知動作というのをこのPSC2のレベルで、これは開発供試体を用いているんですけども、確認しております。
 二つ目が、SEIG時の機器駆動の試験。これは実際にSEIGのときにどのような全体として作動するかということを、駆動電圧・電流の挙動という見方で見ます。それのコンポーネントレベルとシステムレベルですね。コンポーネントレベルというのはこのPSC2本体、システムレベルというのは、2段機体全体ということで今、確認をしつつあるところです。
 15ページに参りまして、今後の進め方として二つ述べさせていただいています。
 まずは現時点での評価です。PSC2、つまり機体側の電源遮断機能は設計想定どおりの動きをしているということが確認できています。現時点ではSEIG時に作動するPSC2の下流の負荷側、これは具体的には2段エンジンのニューマティックパッケージなどなんですけれども、何らかの要因で発生した過電流によりまして、電源遮断が行われていた可能性が高くなっております。
 なお、打ち上げは3月7日でしたが、打ち上げ前の3月2日の作業といたしまして、最終準備の状態の機体を用いまして、エンジンバルブ等を実際に作動させた試験を行っておりますが、このときには全てのシーケンスが正常に進むことを確認しております。
 なお、参考に載せてございますけれども、これらの評価からしまして、2月17日に打ち上げ中止をさせていただきました原因――これは後で御説明します、後ろの方につけておりますけれども――この事象とは異なるものであるということを確認しております。
 今後の進め方といたしましては、様々な試験を通じまして、推定原因の確度を高めること。そして、その先、負荷側の可能性がある箇所やその原因の特定を進めるというものでございます。
 また、2段エンジンの搭載機器につきましては、H2Aと共通的なものがありますので、詳細に影響を評価して、次の打ち上げに臨むということで取り組んでおるところです。
 ここから先は参考資料で、簡単に御説明したいと思います。
 まず17ページが、H3ロケットとH2Aロケットの電気系統の違いなんですけれども、H3ロケットは第2段の制御系を冗長構成、A系/B系にしております。これは先ほどの御説明のとおりです。H2Aロケットの機器はシングル構成ですが、右の図にございますように、機器間のラインを冗長にしているという特徴がございます。
 なお、一番上にありますPDB2という電力分配機につきましては、異常検知の機能は搭載されておりませんで、この緑の部分、ECB、PNP、あるいはエキサイタ、各バルブ、これらはH3とH2Aと同等の仕様となっておりまして、電気的には同一でございます。
 それから、18ページはもう少し全体としましてLE-5B-2と5B-3の違いでございますけれども、主には機械的な要素であるとか製造面での向上はありますが、折に触れて御説明しておるところで、性能の向上であるとか寿命の向上を図っております。
 ですが、これは機械的な話でございまして、今回の現象とは直接的には関係がないところであるかなと思っています。信頼性向上・部品枯渇の対策として、各コンポーネントの改良も施しておりますけれども、先ほど申しましたとおり、搭載機器については基本的に両者同等というものでございます。
 19ページ以降は、2月17日の打ち上げ中止の原因調査と対応について、これは一度御説明したものをA追記ということで、後半の部分だけ追記してございますので、そこを御説明したいと思いますけれども、24ページに参りまして、打ち上げ中止に至ったのは1段の電気的離脱時の電位変動が過大でした。したがいまして、その変動を抑制するための措置として、この24ページの真ん中の辺りにあります、信号なり電源の遮断のタイミングを変えることによりまして、かつそれを抑制する策を取りました。かつ、打ち上げの前日に射点における最終検証の試験を行いまして、有効性を確認して打ち上げております。一番下の方にございますけれども、フライトデータを見ましたところ、電気的な遮断が問題なく行われていることを確認いたしました。
 25ページには最後の御説明ですけれども、JAXAの原因究明体制ということで、1号機の対策本部、山川理事長をヘッドとしました対策本部の下で、布野理事をチームリーダーとした原因究明チーム、この中で現在の活動を行っております。
 なお、電気に関する部分が多いものですから、必要に応じて外部からの参加も要請を検討しながら、専門家が参加しながら今、全力で取り組んでいるところです。
 御説明は以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 打ち上げ失敗後1週間、テレメデータを基にして検討を進められたと思います。本当に御尽力、敬意を持ってお話を伺っておりました。
 ちょっと最初に重要なところも幾つかあるかと思うので、私の方でちょっと整理を少しさせていただいていいですか。
 11ページの下段の説明、これは極めて重要なのかなと思っているので確認させていただきたいのが、ECBがSEIGを受信した直後、PSCA系/B系に電流異常のBITが立ったとあります。それで、下流機器の電源供給を遮断したというのが今回の現象の骨子だろうと。今回、解明結果をもとに説明されているというふうに理解してよろしいですね。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、そのとおりです。
 
【木村主査】 つまり、PSC2が下流の電流異常を検出したので、能動的に下流側の電源を遮断したと、こういう理解ですよね。この遮断したという言葉を実は確認したくて、下流側を遮断したのであれば、遮断したというのが一瞬なのか、瞬断なのか、それとも定常的に切っているのかということが、まずここを確認する必要があると思っています。
 というのは、その次のステートメントとして、PNPに対して供給電力は下降したとなっていて、ECBについては正常どおり供給されていると述べられています。
 ということは、遮断すると正常に流れないと思うのですけれども、これは瞬断をして復帰しているという理解なんでしょうか。それとも、遮断をし続けているという理解なのでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 ちょっと説明が不十分だったかもしれません。PSC2の内部で、この制御電源と駆動電源というのはまず分かれています。
 今回、先生がおっしゃられた、瞬断かずっとオフにしたかということで申しますと、後者です。ずっと電源はオフにしています。それに関しては、駆動電源の方だけをオフにしております。
 
【木村主査】 なるほど。駆動電源だけをオフにしているから、PNPに電源が供給されないというのは現象的に理解ができる。動作としては、正しい動作がなされているという理解でしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 正しい動作と考えております。
 
【木村主査】 制御電源は切られていないので、ECBは独立して電源を供給され続けたという理解でよろしいですね。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そのとおりです。
 
【木村主査】 なるほど、分かりました。
 今回、電流値についても情報として提示いただいているので、恐らくこれは本当に電流が流れていなかったというところまでは確証が持てるのかなと思っております。
 過電流等のBITが立った原因について、現象としてテレメーターからまだ確認が取れていないわけですね。ここも確認したかったのですけれども、先ほどFTAの議論の中で、ここについてはどちらの可能性もあるというふうに、実際に過電流が発生したのかそうでなかったのかということについては、今の時点では確証が取れていないという理解でよろしいですね。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 このBITが立った動作そのものは正しく動作しておると考えておりまして、BITの回路のどこをどういうふうに見て、BITで異常を検知したということについて、どの部分をどういうふうに検知したのかというのは、少し設計の詳しい内容になりますので、改めて御説明をさせていただきたいと思います。
 
【木村主査】 分かりました。その辺りについては、ちょっと微妙な話になってくるかなと私も想像していたのですが、もう1点だけ、他の委員の皆さんの意見も聞いてからと思うのですけど、先ほど参考という形で挙げていただいたポイントについて、打ち上げ中止の原因と異なるという考察を述べられています。表層的には恐らく違うものであるということは分かるんですけれども、ちょっと今の時点で、ここまででなかなか判断としてはできないと思っていますので、これは一旦保留させていただきたいなと思っています。
 というのは、表面的な事象は明らかに異なるのですけれども、電源系の異常を検知して電源遮断に至るプロセスの中で、メカニズムのところで、打ち上げ中断の時にも議論になりましたが、電源系の揺動とかあるいは電磁環境とか、そういった脆弱性がある程度懸念されていたということを考えたときに、その階層での何か類似性というのは、最終的には否定される可能性もあると思うんですけども、今の時点ではなかなかそこまでは否定できないかなと思っています。この判断は今の時点では厳しいかなというふうに思っておりますが、こういう理解でよろしいですかね。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 今回のこの御説明の範囲ではそれで結構かと思います。後ほど少しその辺り、つまり電気的な電圧変動などにつきましても、どういうふうな情報を得ているかについて、御説明を差し上げたいと思っています。
 
【木村主査】 分かりました。非公開も含めてちょっと議論させていただくということでよろしいですか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 先生のおっしゃられることはよく分かりましたので、後ほど御説明させていただきたいと思います。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 ちょっとすいません、出だしのところで私の方で、お時間使わせていただきましたけれども、委員の先生方、御質問・御意見等ございましたら挙手にてお願いできますでしょうか。
 笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 御説明、本当にどうもありがとうございます。1点質問をさせていただきます。
 17ページに、H2Aロケットの場合とH3ロケットの場合の違いの図が大変分かりやすくお示しいただいておりまして、今回の事象がちょうど、私の目からECBよりも下の部分というのはやはり同じような系統に見えておりまして、その上が大きく変更がされているというふうに認識しております。今回の事象が、ちょうど新しくA系/B系として冗長系を持たせた部分と、それから、これまで実績のあるECB以降の下の部分、そのはざまで行われた可能性が高いというふうな御認識を持たれているというふうに理解いたしました。
 質問は、このECB以下の機器に関しまして、つまり、これまでずっと使われてきた機器と全く同じものを使われているのか、それとも、何か新しい変更を行ったり改良したりしているのかという点に関しまして、質問させていただきたいと思います。
 以上でございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 御質問ありがとうございます。
 まず、私たちが今注目しているところは、もちろん先生がおっしゃられるような旧来の設計と新しい部分とのはざまというインターフェースの部分もよく見ないといけないと思っておりますけれども、どちらかというと、この緑の範囲の内側について、よく今確認しているところです。
 つまり、その内側というのは、同等の仕様と載せてございますけれども、そういう範囲でございます。全くコピーかという意味で申しますと、18ページを御覧いただきますと、まず、機械的な部分というのは、LE-5B-3というH3に搭載している今回のエンジンとLE-5B-2は機械的な部分では異なっています。
 具体的には、この左上にございますような水素のターボポンプのタービンの周りの形状を少し変更しているであるとか、それから右上の高性能化というのは、2系統から入ってくる水素を混合させるミキサーというところの設計を変えていることで性能向上を図る、あるいはその右下の酸素のターボポンプの吸い込みの部分の羽根車を設計変更する、こういったところは変えておりますが、今注目しております搭載機器につきましては、基本的に同等と考えております。
 基本的にと申しますのは、一つはニューマティックパッケージというのは電磁弁、ソレノイドバルブがついているんですけども、これもちょっとメカ的な話なんですけれども、シールを変えているであるとか、そこが唯一違うところかと思います、ニューマティックパッケージにつきましては。
 そして、ECB、これは電気のシーケンサーみたいなものなんですけれども、このシーケンサーにつきましては、LE-5B-2の後期モデルというんでしょうか、もう2フライトぐらいフライトしているものとは全く同じものです。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。
 すいません、ちょっとこちらの通信環境がよくないせいだと思うんですが、肝心なところが聞き取れなかったんですが。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 申し訳ありません。電気的には同一品と申し上げました。
 
【笠原委員】 大体おっしゃっている内容は、おおよその検討がつきましたので、以上にしたいと思います。どうもありがとうございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 先生、申し訳ありません。もう一度だけ、大事なところを申し上げますと、電気的な部分は同一とお考えいただいて結構かと思います。
 
【笠原委員】 了解いたしました。
 
【木村主査】 笠原委員、いいですかね。すいません、ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。もし、すぐに次がないようでしたら、私、実はもう一つ気になるところがあります。
 これはちょっと、公開のところで議論できる内容かどうかも含めて、もし難しければそのように言っていただければと思うのですけれども、ここで過電流を検出して遮断というのは分からなくはないというか、電気系として分からなくはないんですけれども、これをすると多分、恐らく、運用できなくなる危険性が高いと思うんですが、これはどういう事象を避ける、あるいはどういう問題の回避を想定して組まれているFDIRなんでしょうか。
 先ほどの話だと、A系からB系に切り替わるということを想定されているというイメージですかね。A系の方でモニターしているところで過電流が出たとすると、そのまま運用すると危険なので、そこを遮断してB系に切り替えるというオペレーションを想定されているということでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 少し設計の中に入ってくる内容と思いますので、いろいろな冗長設計の考え方はあるというふうに理解しておりまして、その中のどういう策を取って、今回この設計をしているかというのは後ほど御説明させていただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 
【木村主査】 分かりました。ありがとうございます。
 ちょっとここは微妙な話だろうなと思いつつ、恐らく皆さんも関心を持たれるのは、ここのロジックがどうなっているのかというところは少し気になるところだと思うのですよね。それは後ほど私たちの方で責任を持ってお話を伺って、検討させていただこうと思います。ありがとうございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 よろしくお願いします。
 
【木村主査】 そうしましたら、他にいかがでしょうか。
神武委員、お願いいたします。
 
【神武委員】 どうもありがとうございます。ここまでの御説明、理解いたしました。
 これから再現の確認をされていくのだと思うんですが、ここまでで確認させていただきたいのは、今回の検討はインプットとしては、全てテレメトリーデータに基づくもので、これから実際に機器を使って行われるというところを一番上に書いてありますね。
 ということと、あともう1点は、開発の段階で、やはり類似のテストをされていて、過電流をかけるとか、あとは遮断してみるとか、そういうような事前の試験を何かしら電気系でされているのではないかなと思うんですが、今回の事象に関するもので、どこまでそういうことを事前にされていたのかという辺り、もし可能であればこの場で教えていただければと思いますし、難しければ非公開の場でも構いません。よろしくお願いします。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 まず、今回の事象に関しましては、PSC2がどのような動作をするかということについては、基本的にその単体の開発試験の中であるとか、それからシステムを構成した、全体のステージを構成した上での検証試験などを行っている中なんですけれども、今回の事象そのものを確認したかということにつきましては、ちょっと今お答えができないので、確認してお答えしたいと思います。
 
【神武委員】 分かりました。ありがとうございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 すいません、基本的にこういった冗長系の切替えなどは、H3というのはかなりいろんなことを考えて設計しておりますので、逆に言うと、しっかり検証しないとここは思わぬ動作をするという可能性もあるので、そこは丁寧にやってきたつもりではおります。
 ただ、このものずばりをやりましたかということについては、ちょっと今、お答えができない、私が承知していないので後ほど御説明させていただきたいと思います。
 
【神武委員】 分かりました。ありがとうございます。
 今までのお話の中ですと、H2Aの設計と比べて違う部分、つまりH3で新規に設計をした部分での問題になる可能性が高くて、そういう意味ではH2Aの今後の打ち上げに影響しない可能性が高いのではないかというふうに現段階では考えられているということでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 すいません、ちょっと説明がよろしくなかったのかもしれませんが、17ページで言いますと、この白抜きの部分を見ていただくと、この部分がH2AとH3と違うところです。そして、緑の部分が同等の仕様ということで、今、最後の方で15ページの青四角1番目の二つ目の赤丸で、現時点ではPSC2下流の負荷側、2段エンジンのニューマティックパッケージ等で何らかの要因で発生した過電流により、正しくPSC2の電源遮断が動作したというふうに考えておりまして、どちらかと言いますと、神武先生がおっしゃられたのと逆な方向で、今そこを重点的に確認しているところです。場所としてはですね。
 ただ、それがどうしてそういうことになったかというところに関しては、遠因も含めてちょっとよく考えないといけないなとは思っております。
 
【神武委員】 なるほど、分かりました。私も、すいません、ちょっと理解が追いついていませんでしたが理解いたしました。ありがとうございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 それでは、他にいかがでしょうか。今のポイントは、確かに心配なポイントでもございますし、恐らくJAXAさんの中でも中心的にここのところを見直そうと、ここで確証が得られれば、またH2Aの方がちゃんとスタートできるということで、多分、関心を持たれているところだと思います。
 他にいかがでしょうか。よろしいですかね。
 もしよろしいようでしたら、ここまでで一応公開部分については終了させていただこうかと思います。これ以降は非公開ということで、一旦ここで事務局の方から事務連絡をお願いできればと思います。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。会議資料と議事録の公開について申し上げます。
 本日の会議資料は、文科省ホームページに既に掲載させていただいております。
 また、議事録につきましても、ここまでの内容は公開となりますので、委員の皆様に御確認いただいた後、文部科学省ホームページに掲載させていただきます。
 また、本日の会合の後、事務局よりプレスの皆様向けにフォローアップのためのブリーフィングを行う予定でございます。
 なお、次回のH3ロケットに関する有識者会合につきましては、今後の原因究明状況に応じて、今月もしくは来月に開催予定です。
 また、イプシロンロケット6号機打ち上げに関する会合につきましても、開催を調整中でございます。委員の皆様には後日、日程調整の御連絡をいたします。
 事務連絡としては、以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。それでは、公開部分についてはここまでとさせていただきます。

―― 了 ――

お問合せ先

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