宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合 (令和5年2月22日開催)議事録

1.日時

令和5年2月22日(水曜日)17時30分~19時30分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. H3ロケット試験機1号機の打上げ中止の原因調査について(一部非公開)

4.出席者

委員

木村 真一 委員(主査)
柿沼 志津子 委員
笠原 次郎 委員
門脇 直人 委員
熊崎 美枝子 委員
神武 直彦 委員
辻村 厚 委員
中西 美和 委員

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 原 克彦 
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 横井 奈央
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史

5.議事録

【竹上企画官(事務局)】 定刻になりましたので、宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合を開催させていただきます。
 本日は、冒頭、事務局にて進行させていただきます。文科省宇宙開発利用課企画官の竹上でございます。
 本有識者会合でございますが、先日2月3日の第45回調査・安全小委員会において御報告させていただきましたとおり、第11期の科学技術・学術審議会調査・安全小委員会の任期が2月14日付で切れることを受けまして、その機能及び役割を第12期の小委員会が設置されるまで継続することを目的に、参考資料1のとおり2月15日付で研究開発局長の下、同一メンバーによる会議体を置かせていただきました。
 本会合の主査につきましても、小委員会の主査である東京理科大学の木村教授に引き続きお願いしております。
 また、本日の開催趣旨について一言申し上げます。
 皆様御案内のとおり、2月17日に打ち上げ予定であったH3ロケット試験機1号機につきましては、打ち上げに向けたカウントダウンにおいて、固体ロケットブースターへの着火信号が自動的に停止し、打ち上げが中止され、その後、JAXAが原因調査を進めているところです。
 今回、多くの国民の皆様に打ち上げを見守っていただいている中で打ち上げが中止となり、その後の状況に対する皆様の関心も非常に高いものと考えております。
 原因調査はJAXAが行い、打ち上げ判断もJAXAが行うものでございますが、今回皆様に状況をお伝えする場も重要であろうと思われます。
 こうした観点から、常設の調査・安全小委員会――この一瞬は、手続の関係上、有識者会合の形を取っておりますけれども、この会合におきましてJAXAから原因調査の状況を報告いただき、また、委員の皆様から必要に応じて専門的見地からの御助言をいただくことを目的としまして、本日アドホック的に会議を開催することといたしました。
 委員の皆様におかれましては、急な御案内にもかかわらず御参集いただきましたこと、誠にありがとうございます。
 それでは、ここからの進行は、主査である木村先生にお願いしたいと思います。
 木村先生、よろしくお願いします。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 委員の皆様もお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 今回につきましても主査を務めさせていただきます、東京理科大学の木村でございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 本日の議題は、先ほどありましたように、H3ロケット試験機1号機の打上げ中止の原因調査について、でございます。
 本日も、これまでの小委員会と同様、オンラインでの開催となっております。
 事務局から、先に事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。
 本日の出席者ですが、遅れて参加される方を含めて、8名全員に御出席いただく予定となっております。
 次に、本日の資料は議事次第に記載のとおりです。
 オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。
 事務連絡は以上でございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 それでは、早速議題に入りたいと思います。
 H3ロケット試験機1号機の先日の打ち上げ中止の原因調査について、まず、JAXAから御説明をいただきたいと思います。
 なお、今回もロケットに関する技術であって、機微な技術情報を取り扱う部分については、参考資料2の運営方針に基づき、そのように情報に基づく議論は非公開とすることを御了承いただければと思います。
 それでは、御説明お願いできますでしょうか。
 
【佐藤部長(JAXA)】 JAXA宇宙輸送技術部門の佐藤でございます。
 イプシロンに続き御心配をおかけしておりまして、申し訳ございません。
 本日は原因調査状況について、まだオンゴーイングですけれども、各種進めてきている状況についてお話しさせていただき、貴重な御意見をいただければと思っております。
 射場では、岡田プロマネが打ち上げ後も引き続き陣頭指揮を執って、原因調査を進めております。
 今日の説明は岡田プロマネから行いたいと思います。
 では、岡田さん、よろしくお願いいたします。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 JAXA、H3プロジェクトチームの岡田でございます。今日はよろしくお願いいたします。
 それでは、資料を投影させていただきます。
 それでは、現在の原因調査の状況について御説明したいと思います。
 まず、発生事象ですけれども、去る2月17日の10時37分55秒打ち上げ時刻を目標に、自動カウントダウンシーケンスを進めておりました。
 自動カウントダウンシーケンスのあらましについては後ほど御説明したいと思いますが、この中で、1段エンジンLE-9のエンジンスタートのステップまでは進行いたしまして、LE-9エンジンは着火しました。
 その後、そのLE-9エンジンは2機とも立ち上がりまして、次に述べます打ち上げ条件は成立しております。
 これは我々がフライトロックイン――FLIと呼んでいるのですけれども、その打ち上げ条件とは、LE-9の立ち上がりが推力相当で90%で、各機器の作動状態が正常であることを自動判定しております。
 打ち上げ条件成立後、リフトオフ直前までの異常監視は常に行っているのですけれども、その監視中に、今回の登場人物であります1段の機体制御コントローラー――これはプレスリリースでは1段の機体制御機器と御説明しておりましたが、それが異常信号を検知したことから、固体ロケットブースター――SRB-3への点火信号の送信を自動的に停止しまして、安全な状態に移行しました。
 したがいまして、SRB-3に異常はなく、全体的にはフェイルセーフの設計が機能したと考えております。
 現状ですけれども、H3ロケット、衛星ALOS-3及び地上設備に損傷は生じておりません。
 下のカウントダウンシーケンスですけれども、主だったところはこの最後のほうですけれども、全体のシーケンスはこのようになっております。
 まず、全系の準備が完了したところから、自動カウントダウンシーケンスが開始いたします。これは発射指揮者がこのときにボタンを押すというよりは、この10秒ほど前に、このゲートを通過してよいという最終的な判断をするボタンを押しまして、そうすると自動的にこのXマイナス240秒を通過していきます。
 その後、液体燃料などのタンクの加圧を開始しまして、設備系――主に水系や火工品のトーチが順次作動し、フライトモードオンというXマイナス18秒でロケットのほうに主導権が移っていき、その後、全システムの準備が完了したところで、LE-9のエンジンがXマイナス6.3秒でスタートいたします。
 予定で行きますと、Xマイナス0.4秒でSRB-3への点火が行われるところだったのですけれども、この間に打ち上げを中止しております。
 次のページはH3ロケットの電気系のシステムの構成イメージです。これはイメージで、必ずしも正確ではないですけれども、おおよそのところがこれで御覧いただけると思います。
 機器は幾つかの箱に分かれておりまして、左側が2段の機器、右側が1段の機器です。真ん中の線で区分けしてございます。機器同士は幾つかのネットワークでつながっておりまして、そのネットワークを色分けしてございます。
 黒線が地上制御系ネットワークで、地上設備から直接ロケットの充放電をするとか、カウントダウンの中でも地上からのコントロールをここからいたします。緑のところが制御系ネットワークで、これはロケットの飛行中の制御に使いますので、極めて重要なネットワークです。それ以外は計測系のネットワークで、細いオレンジの線で描いてございます。
 これらのネットワークを使い分けておりまして、特に制御系ネットワークにつきましては、共通ネットワークボードを介して各機器に接続しております。ほぼ同一のネットワークボードを使っています。
 今回の事象が起きた場所が、このオレンジで一つだけ色分けしてございます機体制御コントローラー――我々はV-CON1と呼んでいるのですけれども、1段のものです。ここにはFCSというソフトウエアが搭載されておりまして、そのほかを御覧いただきましても、幾つかの機器にこのソフトウエアが搭載されているのを御覧いただけると思います。
 このロケット全体の一番の頭脳はどこかと申しますと、この2段の機体制御コントローラーに搭載されているソフトウエアでして、2段はミッションタイムも長いこともありますので、これらが冗長構成になっております。
 下のほうには、ロケットのどの部分にこのアビオニクス――電気系の機器が搭載されているかということで、主な場所を赤で囲ってありますけれども、2段につきましては2段エンジンの直上に、1段につきましても1段エンジンの直上に、主立ったものを搭載してございます。
 3ページ、原因調査の状況でございますが、少し事象について、ここで深く御説明したいと思います。
 まず、先ほど申し上げましたとおり、打ち上げ条件が成立後、SRB点火信号の送信前に、異常信号を検知しております。
 飛行制御ソフトウエアが以降のシーケンスを停止しております。先ほどFCSと申したものです。それに関しては、図の3に動作フローを載せてございます。
 図の3の左半分が正常動作をする場合の流れで、LE-9が立ち上がり、打ち上げ条件が成立、フライトロックインしまして、SRB点火許可が出た後で、最終的に点火信号を送信して、ここでSRBに点火させるというものですけれども、今回の動作につきましては、打ち上げ条件が成立して、直後にSRB-3の点火許可までは出たのですけれども、その後に異常を発生し、それを1段のV-CON1が検知いたしまして、飛行制御ソフトウエアFCSで停止処理を行いました。
 そうしますと、この後は安全に停止させるシーケンスに入るのですけれども、まず、その直後に、LE-9の停止信号を送信しております。そして間もなく、全系のシーケンスの停止の動作に入っていくということで、結果、SRB-3の点火信号を送出しないという停止の仕方をしております。
 この異常の内容ですけれども、右に簡単な図を載せてございます。これもポンチ絵でして、正確な図面ではないのですけれども、この1段機体制御コントローラーの中には、一番今回に関係するところだけを抜いているのですけれども、左側の1段エンジン用電池から電源が供給されて、半導体スイッチを介して1段のエンジンをコントロールするユニット、ここの間に電源を供給する系統がございますけれども、今回の異常に関しましては、この1段の電源供給の系統における異常を検知したというものでございます。
 この半導体スイッチを駆動させるためには、この制御用のFPGAが1段の機体制御コントローラーに搭載されておりまして、その先には、地上設備として電気系の地上設備がございます。
 この事象に対して、今までの原因調査の中で、機体や地上設備の電気的な挙動がこの系統に影響を与えた可能性が高いというところまで原因を絞り込んでいまして、現在、詳細な原因調査を行っております。調査結果に基づきまして、必要な対策を実施する予定でございます。
 今後のスケジュールでございますが、現在、種子島宇宙センターでは、大きく二つの取組を行っています。
 まず一つ目は、今回の発生事象に対する原因調査と、それに応じた対策と検証の計画を行っております。二つ目は、ロケットそのものはアボートしておりますので、ロケット本体あるいは設備についての点検、健全性の確認を一旦行いまして、次の打ち上げに備える準備をしているところです。
 我々は打ち上げ予備期間を3月10日までいただいておりますので、この中で打ち上げられるように、現在全力で取り組んでいるところです。
 御説明は以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。御説明ありがとうございました。
 審議に移る前に、本来こういうふうに司会があまり出しゃばるのはよくないのですけれども、共通的に恐らく皆さんが気にされるポイントとかがあると思います。私のほうで少しまとめて、最初に御議論させていただきたいと思います。
 まず、今回、異常を検知して、打ち上げを適切に止められた点を非常に私は評価しておりまして、メインエンジン燃焼まで行って、その後でも適切に止められるというのはすごいなと、私はある意味驚嘆しながら、ここまでちゃんと止められるんだということで評価しているところであります。
 その一方で、皆さんの心配は、なぜ異常を検知し、打ち上げを中断しなければならなかったのかというところだと思います。私自身もすごくそこを心配しているところです。先ほどの御説明の中で、「機体や地上設備の電気的な挙動が影響を与えた可能性が高い」というコメントがございましたが、これは非常にざくっとしたステートメントで、具体的によく分からないところがあります。
 このことに関連しまして、最初に少し私から7点ほど共通的な質問事項についてポイントアウトさせていただこうと思います。公開の場で回答が難しい場合とか、現状回答ができない場合もあるかと思いますので、もちろんそのような場合はその旨をおっしゃっていただければ良いですし、詳細データは非公開でしか出せないというのも事情としてはあり得ると思うので、それはその旨言っていただければいいと思います。
 まず第1点は、異常が検知されたときに、異常は実際にあったのか、どうかという確認ができていますか、ということです。その確認の根拠となるデータはありますかということが1点目です。これはどちらもあり得ると思って質問していまして、異常がないけれども、誤検知をしたというケースと、異常があって、それを適切に検知したというケース、両方あり得ると思ったのですけれども、それがどちらか、かつその根拠は何でしょうかということです。
 2番目に、異常を検出する条件は、具体的にどのようなものが設定されているのでしょうか。何を検出したら異常と判断されたか、今回のケースに限っていいと思うのですけれども、何を条件として判断されたのか。コンピューターが判断したと思うのですけれども、その根拠は何かということです。
 3つ目が、その条件の計測はどのように行われているかというところです。私は電気系なので、そのあたりが気になります。例えば、制御系が出した判断をもとにオープンで出しているのか、それともループバックを見ているのか、あるいは何らかの計測しているのかというような、どのような形でそれを計測されているかが気になります。
 これは実は何を並行して気にしているかというと、グランドの揺動やEMC的な影響があり得るだろうということを懸念しています。これは本来は、グランドの系統図など、相当詳細な情報を見せていただかないと、なかなか分からないところかもしれないのですけれども、そのようなところが気になります。
 4番目は、それに関連して、計測値というデータは現在お持ちですかということです。それについても確認させていただきたい。
 5番目は、どちらかというと素人の意見になってしまうかもしれないのですが、この電気系の計測値を1段エンジン燃焼中に確認された例はありますかということを伺いたいと思います。これは、燃焼という事象が、グランドやEMC的な影響を与え得るのかどうかを気にしての質問になります。
 6番目が、いわゆるCFTを含めた事前の評価試験と今回のフライトで、条件的に異なる点はどこでしょうかというところです。特に電気系的にはグランド等の点が気になります。
 7つ目は、この後の話になると思うのですけれども、リフトオフ後のシーケンスについては、こうした問題が発生し得ないのかというところを気にしております。
 この7点について、まず、簡単で結構ですけれども御意見いただければと思うのですが。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 先生、ありがとうございます。
 では、今お答えできるかどうかも含めまして、1点ずつ述べさせていただきます。
 まず最初の御質問の、異常が実際にあったのかということですけれども、我々の現在の調査の結果としましては、異状は実際に起きていると考えています。すなわち誤検知ではなく、実現象であったと考えています。
 1点ずつ先生のお返事をいただければ、その際にお答えします。
 
【木村主査】 了解しました。ありがとうございます。
 現象的に、これは誤検知ではなくて異常事象であったという理解でよろしいですか。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、そのように考えております。
 
【木村主査】 了解しました。ありがとうございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 2点目の検出条件ですけれども、具体的にお伝えすることもできるのですが、かなり具体的な話になりますので、これは後ほどもう少し追加の御説明をさせていただきたいと思いますが、電気的なコンディションを見ている中で、その電気的な条件が不成立であったということまでは分かっておりますので、一体それがいかなるものであったのかというのは後ほど御説明させていただきたいと思います。
 
【木村主査】 了解しました。それは非公開のほうで議論いただけるということですね。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい。
 
【木村主査】 了解です。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 それから計測ですけれども、これも具体的にどのようなものを計測するか、先ほどの2番目の御質問とセットで、かなり具体的なものをお示ししたいと思っておりますので、申し訳ありませんけれども後ほどとさせていただけないでしょうか。
 
【木村主査】 了解しました。ありがとうございます。
 そういう意味では恐らく4も連動しますね。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そうですね、4も連動です。そのとおりです。
 
【木村主査】 了解です。分かりました。
 この辺は非常にディテールに関わるところなので、非公開のほうで、申し訳ないですけれども我々のほうで判断させていただくというか、お話を聞かせていただいて、助言をさせていただくという扱いにいたしましょう。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、よろしくお願いいたします。
 5番目の、1段の燃焼中にデータを取ったことがあるかということですけれども、ちょっとお待ちください。ちょっと考えてみます。
 1段の燃焼中に、具体的な動作は別にいたしまして、動作というか、この系統自体は1段の燃焼中にも生きておりますので、そういった意味で、先生がおっしゃられたようなEMCとかが突然に起きている感覚は今持っておりませんで、これも少しデータをお示ししながら、どういったところに我々が今目をつけているかは、後ほど御説明したいと思います。
 
【木村主査】 分かりました。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 すみません、このV-CONそのものは1段の燃焼中も動作しております。大半は動作しておりますので、それでもって通常の動作の範囲では計測できていると思っております。
 
【木村主査】 なるほど。分かりました。ありがとうございます。
 あと、5番と6番も恐らく連動しての話になるかと思うのですが、先ほどの何かの電気的な挙動が問題であるだろうと言われているディテールの中に含まれている、あるいは最初のところで誤検知等ではなくて、事象として発生したことが確認できましたので、そうすると計測系というよりは、実際の事象がどのような原因によってもたらされたかというところに視点は移るかなと思います。
 了解しました。ありがとうございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 1点だけ、先生、6番の御質問で述べさせていただきたいことは、我々のシステムズエンジニアリングのアプローチですけれども、一旦全体の設計を終えまして、各コンポーネントの試作なり実機を造りますと、どの世界でも同じなのかもしれませんけれども、大きくは、まず単品としての検証は主に設計製造メーカーさんで行っていただきます。
 それから、アビオニクス全体を模擬的に組み合わせた電気系のシステム試験は、システムメーカーさんで一通り行います。
 その後に、種子島の射場で実機を用いていろいろな総合的な試験がございますので、その試験の特性に応じて、ある部分を模擬的に行うとか、ある部分は動作させないで行うというような試験をこれまで積み上げて、打ち上げに臨んだというものでございます。
 
【木村主査】 なるほど。分かりました。了解いたしました。
 私が気にしていた最初のポイントが非常にまずは大きな分岐点かなと思いまして、そこの確認が得られました。私が不勉強で、その辺のフォローができてなかったかなと思いまして、そこが確認できたのは非常にありがたいと思います。
 さて、私から共通的な議論の最初のコメントとして出させていただきましたけれども、委員の皆様方、いかがでしょうか。御質問、御意見等ございましたら、まずお受けいたしたいと思いますけれども。いつものように挙手ボタンで御連絡いただければ助かります。
 
【木村主査】 笠原先生、お願いいたします。
 
【笠原委員】 まずは、非常に詳しい御説明を本当にどうもありがとうございます。
 また、これまでの準備から本日に至るまで、非常に多大な御尽力を、お力を割かれているところを、敬意をもって情報を聞いております。
 また、先ほど委員長からもお話がありましたが、極めて高エネルギーのエンジンを作動させつつ、またそれをストップさせて、エンジンや機体や周辺の設備が健全な状況にあるというのは、非常にその点に関して感銘を持って受け止めております。
 私のほうから2点質問させていただきます。
 今日の御説明で、事象が起こった場所や時刻が一体どこだったのかというのが、ある程度具体的に示されたと思います。ここで、エンジン近傍に配置されているという御説明がある機体制御コントローラーは、かなりエンジンに近い部分だという認識を持ちましたが、どの程度情報をこの段階でお示しいただけるのかということと、時刻も先ほどのマイナス0.4からマイナス6.3の間の中の、最後の3ページからすると、かなりマイナス0.4に近いところで異常発生をしたのかなというお話だったのですが、どの程度より詳細な時刻をお示しいただけるのかというのが、まず1点目。つまり、どの場所でどの時刻で発生したのかをなるべく特定することが原因追及の第一歩とお考えになられているのかなと認識しまして、その点この段階でより具体的にどこまでお話ししていただけるのかなというのが、一つ目の質問です。
 二つ目の質問は、先ほどの木村委員長からのお話ともかぶりますが、今回フライト直前というこれまでにない環境下で起こったと考えられますので、これは私の勝手な想像ですが、エンジンと周辺の水を流しながらの境界の壁があって、今回、全く新しい状況が出現したので、それによってこういう予期せぬことが起こったということは考えられるかと思いますので、そういう点でコメントがもし今の段階でいただけるようであれば、ぜひお願いしたいと思います。つまり、フライト特有の何らかの新規の原因が既にある程度想定されているのであれば、それを今お話しできる範囲で何かお示ししていただければ、大変ありがたいなと思っています。
 以上でございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 先生、どうもありがとうございます。では、幾つかに分けてお答えさせていただきます。
 まず、発生した時刻ですけれども、私も正確には今つかんでおりませんで、先ほどのシーケンス、1ページと3ページを併せて御覧いただきたいのですけれども、まず、1ページの時刻、Xマイナス6.3秒のLE-9エンジンスタートは、本当に正しい時刻です。つまり、リフトオフが10時37分55秒ですので、それマイナス6.3秒というところで、エンジンのスタートはしております。
 3ページに参りまして、ここからちょっとお答えしづらいところですけれども、このエンジンは、液体ロケットエンジンですので、数秒間、5秒ぐらいをかけて徐々に立ち上がるものです。固体ロケットブースターですと比較的インパルス的に立ち上がるのですけれども、LE-9エンジンは数秒かけてフルパワーに持っていきます。かなり立ち上がったところで、SRB-3に火をつけに行くというシーケンスです。
 今回で申しますと、そのうちの90%のところでこのフライトロックインが入りますので、ほぼほぼSRBの点火信号の本当に直前ぐらいまでシーケンスは進んでおります。打ち上げ条件が成立してからの動作は、このSRB-3に点火許可を出す本当にかなり短い、機体のコンピューターのサイクルで計算を回している中で瞬時に起きていくようなものなので、SRB-3の点火許可というのは、上のほうに書いてしまっておりますけれども、時間的には下のほうで起きております。
 すみません、3ページをお示ししないといけなかったですね。申し訳ございません。
 次に、機器の搭載箇所ですけれども、機器の搭載部というところの赤で囲んだ辺りです。ここには、エンジンの脇にドーナツ状の円盤が2段か3段か用意してありまして、その上に機器は搭載されています。このV-CON1という1段の機体制御コントローラーも、その上に載っております。
 それから、今回特有の現象かどうか、これはまさに、今、我々も原因究明の中でその要素がどのぐらい作用しているかを見極めているところで、排除すべきものではないと思っておりますので、まず、そこも視野に入れながら考えておりますけれども、フライト特有と言いますか、この実際の打ち上げ特有だったということについては、後ほど改めて御説明させていただきたいと思います。
 すみません、お答えになっておりましたでしょうか。
 
【笠原委員】 はい、どうもありがとうございます。十二分に理解いたしました。どうもありがとうございました。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 そうしましたら、他はいかがでしょうか。神武委員、お願いいたします。
 
【神武委員】 慶応の神武です。ちょっと遅れての参加で申し訳ございません。御説明を途中からお伺いしたところではあるのですが、どうもありがとうございます。
 今後の再現試験等々をやられることと、あとは打ち上げ前にやられてきたことがあると思うのですが、その中で、今後は実機で信号が出るところまで確認をされるのか、もうされているところも、例えば機器単体ではやられているとか、どこかまではやっていて、どこからはやってないというところがあるのではないかなと思うのですが、その辺りの現状と、これからの御計画、あとは実機で全部再現して、機体に問題はないのかという辺り、もしこの中で御説明いただけるようであればお願いできればと思いますし、これもまた後でということであれば後でも構いません。
 以上です。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 神武先生、ありがとうございます。
 今、全力を尽くして調査をしているところでして、そういう意味で言いますと、今取り組んでいることは、まず、製造工場での単体での調査、再現するかどうかも含めての調査。それから、システムメーカーさんでの電気系のサブシステムレベルでの調査、その機体そのものではないのですけれども、ある程度の模擬度を持った調査。それから、種子島宇宙センターでは、打ち上げる機体ですので、相当注意しながら、徐々に再現できないかということに取り組んでいます。
 このロケットには、強電といいますか、エンジンのジンバリング、1段のエンジンの首振りをするための電動アクチュエーターをかなりの電圧で動かしますので、そういったことが何らかの影響を与えているかというところまでを再現しようとすると、安全上または機体に対する損傷リスク上も、なかなか考えなければいけないところですので、こういったところはよく注意しながら、できないところはできないと、やれるところは全部やるということで識別しながら、少しずつ進んでいるところです。
 
【神武委員】 分かりました、ありがとうございます。了解しました。
 そうですね。機体が傷ついてしまうと本末転倒になるので、その辺りが注意すべき点かなと思いました。ありがとうございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャー(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【木村主査】 まさに大型のシステムで、非常にデリケートで、かつ組み上がった状態で初めて見つかる事象というのは、システム的に本当に悩ましいところで、そこはよく検討されていると思いますし、敬意を表したいと思います。ただ、皆さんは多分そこら辺に一番心配しているところがあるかなと思います。ありがとうございます。
 ほかは大丈夫でしょうか。
 もしよろしいようでしたら、公開の部分について、こちらで1回閉めさせていただきたいと思います。これ以降、非公開部分とさせていただきますので、非公開部分は今日のJAXAの説明のうち機微な技術情報を含む補足説明をいただき、技術的な議論を含めるという趣旨で行われます。
 一旦事務局から事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務連絡でございます。会議資料と議事録の公開について申し上げます。
 本日の会議資料は、文科省ホームページに既に掲載させていただいております。
 また、ここまでの議事録については公開となりますので、委員の皆様に御確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 また、本日、会合の後、事務局よりプレスの皆様向けにフォローアップのためのブリーフィングを行う予定としております。
 以上でございます。
 
【木村主査】 ありがとうございました。
 それでは、ここまでで公開部分の会合を終了といたします。
 一般プレスの方々、ここまでとなります。傍聴ありがとうございました。

(傍聴者退室)

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課