革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会(第12回) 議事録

1.日時

令和3年12月24日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 前回の議論の整理について
  2. 「技術ロードマップ」検討状況について
  3. 「高頻度往還飛行型」の段階的な事業化について
  4. 研究開発を支える環境整備について

4.出席者

委員

遠藤 守 【主査】
青木 一彦
渥美 正博
石田 真康
稲谷 芳文
大貫 美鈴
鬼塚 慎一郎
重枝 和冨
新谷 美保子
竹森 祐樹
永井 敬彦
中須賀 真一
永田 晴紀
牧野 隆

文部科学省

研究開発局長  生川 浩史
大臣官房審議官  原 克彦
宇宙開発利用課課長  福井 俊英
宇宙開発利用課企画官  笠谷 圭吾
宇宙開発利用課課長補佐  横井 奈央
宇宙開発利用課課長補佐  木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事  張替 正敏
 研究開発部門 第四研究ユニット ユニット長  沖田 耕一
一般社団法人宇宙旅客輸送推進協議会(SLA)
 理事  岩本 裕之
 

5.議事録

【遠藤主査】それでは、皆さん、時間になりましたので、ただいまから文部科学省研究開発局主催の革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会、第12回になりますが、開催させていただきます。
 まだまだコロナが騒々しいようですので、オンラインということでお願いをいたします。
 それでは、事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。
 本日は革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会に御所属いただいている委員のうち、14名の委員に御出席いただいております。
 また、本日は発表者といたしまして、稲谷委員が代表理事を務めている宇宙旅客輸送推進協議会(SLA)から、理事の岩本様にも議題4で御説明いただく予定です。
 次に、本日の資料ですが、お手元の議事次第4ポツのとおりでございますので、御確認ください。
 また、オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら事務局へメール、電話等で御連絡ください。
 事務連絡は以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。それでは、議事に従って始めたいと思います。
 一つ目の議題は、前回の議論の整理についてということで、前回、事務局から官民の協議体制や官による試案方策等の説明がありましたけれども、それに関して委員の皆様から御意見いただいております。その中で、主な意見を事務局側で整理をしていただいておりますので、御説明を事務局からお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文科省事務局でございます。
 では、資料12-1を御覧ください。
 こちらの方で、前回、第11回の各委員から頂いた意見の方を取りまとめております。それでは、その御意見と、それぞれどのように事務局の方で考えているかについて御説明させていただきたいと思います。
 まず、政府がプログラムをどう位置づけるかによって、どれぐらい政府が関与するかの判断ポイントになる。また、高頻度往還飛行型宇宙輸送システムは、技術的なクリティカルパスがあるはず。政府がどのステージからプログラムとして支援するか明細度を上げて運営すべきということでございます。
 こちらの方は、例えば高頻度往還飛行型が政府にとってどのぐらい重要かによって、政府の支援方策というのも変わるのではないかという御意見だったかと思います。それで、文部科学省事務局といたしましては、これまで検討会においてもロードマップの方を議論させていただきまして、基幹ロケット発展型と高頻度往還飛行型、こちらの方は、それぞれが官向けにやるとかそれぞれが民間向けにやるということではなくて、二つでもって革新的将来宇宙輸送システムロードマップとして位置づけております。高頻度往還飛行型の成功がなければ、基幹ロケット発展型の方も完全再使用になって、さらにコストをH3の2分の1から更に10分の1まで下げていくというところにはおぼつかない、つまり、最終的な施策の目的である抜本的な低コスト化ということが立ち行かないと思っておりますので、基幹ロケット発展型のコストを抜本的に下げるためにも、高頻度往還飛行型がしっかり市場を取っていくためにも、これはどちらも必要でございまして、例えば要素技術等の展開とかを通して、高頻度往還飛行型に対しても早期から関与していく必要があると思っております。
 また、具体的にどのような技術的クリティカルパスがあるのかということについては、どの段階から支援するかについては、本検討会の議論を踏まえて検討すると思いますが、いずれにしましても、高頻度型が成功すればいいということではなくて、基幹ロケット発展型にとりましても、全体的にコストを下げるために高頻度往還飛行型の成功がなければおぼつかないというふうに考えております。
 続きまして、事業としてフェーズ分けを政府が提示するのは難しいかもしれないが、技術の面でフェーズ分けをして、どんな政府の関与ができるのか議論を具体化すべき。それから、アンカーテナンシーとして政府が調達することによって、市場に出回るエビデンスを出す必要があり、支援の在り方と時系列の整理が必要というコメントを頂きました。
 こちらの方には、夏の議論の際とかにもありました2040年代前半というのが、今から見て20年後ということで、なかなか長いというところがあって、その長い期間、リスクを取って対応するのはなかなか難しいということで、例えば20年間を何段階かに分けて、支援方策なり民間事業を行うということを想定したらいいのではないかという御意見かと思っております。
 本日は、後段の議題の方でも、それについての一つ提案はしたいとは思いますが、段階ごとに技術的な達成の目標というか、技術的な達成度というものを段階的に設けるということはあり得るのかなと思います。
 また、どの段階で民間事業者が事業を行うかというのは、これは正に民間事業者のお考え次第のため、政府の方から、こういう事業をやるべき、やったらいいのではないかと案を出すのは難しいと思っております。ただ、事業を民間が考えるにしても、どのようなところで、例えば何年後にはこれぐらいの技術レベルに到達しているとか、そのような何かメルクマールとなるようなものを出せるかどうかについては、本日議論していきたいと思っております。
 また、その一助として、本日、次の議題で、JAXAの方から技術ロードマップについても御説明させていただきます。20年間ではなくて、もう少し短い期間で、文科省としてどういう支援が考えられるのかについて具体的に検討していきたいと考えております。
 次に、透明性を持たせながら民間事業者を選定する観点を決めていくことが重要ですとか、どのレベルでどういう形で投資回収を見せていくか、それらによってもう一歩大きな投資を呼び込めるかは事業者が考えるところだが、そのビジネス的な成立性についてどのように評価は議論すべき。高頻度往還飛行型のシステム開発に対して、事業自体の成立性や経済性の検討をどのタイミングでどの深度で進めていくか、技術的な成立性と並行して考えるべきという御意見を頂きました。
 そもそも、この高頻度往還飛行型の支援対象というか、民間事業者の支援の対象を絞り込む必要があるのかという点については、そもそもの議論が必要と考えております。ただ、もし民間事業者を何かしら絞り込む必要があるということになった場合、それらについては、単に技術の話だけではなく、事業が成立するのかという観点も重要であるとは考えております。
 その際、文科省、JAXAだけでは、正直、事業性というところを評価することは難しいと考えております。しかしながら、例えばJAXAにおいては、今、要素技術の公募とかをやっておりますが、その際、外部有識者、金融ですとかコンサル関係の外部有識者の方にも加わってもらって、要素技術の採用の際には、それらが宇宙だけではなく、例えば地上でもちゃんとマーケットが取れるのか、そういう経済的な観点も見て評価されていると聞いております。文科省だけでは事業性を見るのは難しいかもしれませんが、何かしら外部有識者みたいな方も加えて、そういう事業性を見るということはできるのではないだろうかと考えております。また引き続きロードマップ検討会での議論を踏まえて、民間事業者の絞り込みが必要だというふうになれば、そのような観点も検討していきたいと考えております。
 次に、制度的な課題は有人旅客飛行だけではなく、実験機を飛ばす際に必要な事項等も検討すべきという御意見を頂きました。
 確かに、制度的なものとか地上系の対応というのは、特に2040年代前半のP2Pということになるのは当然念頭には置いていたのですが、確かに有人に至らずとも、研究開発段階等、事業化より手前の部分について、何かしら環境を整備すべき事項があれば御意見いただきたいと考えております。
 そのため、本日の検討会における二つ目の論点に設定させていただいておりますが、段階的な技術レベルの進展から考えられる法令事項や地上等の課題等について御議論いただき、整理していければと思います。
 例えば実験段階でも再使用ということを行うとなれば、今までは宇宙に向けて飛ばすと。ロケットも衛星も基本的には宇宙に向けて飛ばすということですから、再使用ということは戻ってくるということでございますので、これは今のロケットの打ち上げでは想定していないことが発生し得るということでございますので、正に2040年代とか、2030年代とか、P2Pとかの前の試験段階とか、再使用型を造る過程においても、いろいろ必要な事項というのは出てくる可能性が高いと考えております。
 次に、うまく既存の事業もしっかり生かしながら新しいものに取り組んでいく開発展開を考えるべきということでございます。
 従来の基幹ロケットや基幹ロケット発展型における開発運用で培われた技術を継承して開発を進めていくことは当然でございますが、高頻度往還飛行型においても、実証された新たな技術は、逆に基幹ロケット発展型に生かすことができると考えております。
 先ほど私、冒頭申し上げましたが、基幹ロケット発展型が2030年代に打ち上がり始めまして、そのときは当初、H3の半分のコスト、2分の1のコストでありますが、これは最終的に1回当たりH3の10分の1の打ち上げコストを目指すということでございますので、高頻度往還飛行型で実証された技術成果についても基幹ロケット発展型に生かしていく、そのような相乗効果を得るように研究開発を進めていく必要があると考えております。
 最後に、将来宇宙輸送の技術開発には安全保障に絡む技術開発があるため、研究開発の進め方を考えるべきという御意見を頂きました。
 まず、御意見いただいたとおり、技術によっては安全保障に関係するものがある可能性はあるとは承知しておりますが、高頻度往還飛行型では、まずは民間事業者が市場に適用したという宇宙機を造れるかだというふうに考えております。そのような中で、例えば、前回のコメントでは安全保障に関わるという点でコメントは頂きましたが、これに限らず、文部科学省が今、研究開発ということで将来輸送形ということをやっておりますが、P2Pということになりましたら、正に有人旅客ということになりまして、文部科学省の研究開発だけにはとどまらない、その他関係する省庁との施策とのリンクということが発生してくるかと思います。
 今、文部科学省を中心に、研究開発ということだけで考えておりますが、これらが実際に実用化とか実社会で生かされるとなったときに、政策の広がりというものが考えられると思いますので、そのような関係省庁との政策とのリンクというか、そのようなものも意識して、今後慎重に検討していくべきかと考えております。
 事務局からは以上でございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明について、皆様の御意見をお伺いします。例によりまして、発言の方は挙手でお願いをいたします。ございませんか。
 それでは、よろしいでしょうか。それでは、2番目の議題に行きたいと思います。
 2番目は、JAXAにおいて、将来宇宙輸送システムを実現するために必要な革新的な技術をいつまでに獲得するかについての技術ロードマップを策定するということになっておりますが、本日は検討状況について、JAXAより御説明いただきたいと思っております。
 JAXAの沖田ユニット長、お願いをいたします。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】お時間を頂きまして、ありがとうございます。技術ロードマップの検討状況というところで、本日は御説明したいかと思います。
 次のページをお願いします。
 これは中間まとめで示されたシステムロードマップです。
 まず上段、基幹ロケット発展型宇宙輸送システムと高頻度往還飛行型宇宙輸送システム、この2本立てで進めるといったところで、これに対応してどういう技術ロードマップを構築するかを検討して参ってございます。特に高頻度往還飛行型については、段階的事業化構築A、B、Cといった段階を踏んで進めていくとして、ロードマップは設定されてございます。
 次のページをお願いします。
 この2本立ての技術ロードマップは、このシステムを実現していく上で、性能向上、低コスト化、についてはほぼ共通的な技術としております。一方、高頻度往還飛行型システムの実現では、いわゆる高頻度輸送技術には、有翼のものも含めて考えるべきということで、技術を識別しております。旅客輸送技術に係る、エアブリージングエンジン、熱防御、完全再使用化に関わる技術などは、高頻度往還飛行型宇宙輸送システムだけでなく、完全再使用に向けた共通技術として、JAXAの中で現在検討しているところです。
 次のページをお願いします。
 この技術ロードマップ構築の目的は、このシステムロードマップを着実に実現していく上で、オープンイノベーション共創体制の中で基幹ロケット発展型及び高頻度往還飛行型宇宙輸送システムの技術ロードマップを様々な事業者と共有することとしております。いわゆる産業界、事業者の方々と共有することで、出口の戦略を共有し、スピード感を持って推進する道しるべの役割を果たすものと考えてございます。
 技術ロードマップを宇宙分野、非宇宙分野の事業者と共有することで、オープン、それからクローズイノベーションの共創体制を活用しながら、より差別化された技術のSEEDS創出に向けた研究開発が促進されていくものと考えております。
 さらに、SEEDSから効率的かつスピード感を持って出口戦略を共有し、スピード感を持った技術実証立案及び実施、事業の掘り起こし等へ拡大促進させるといったところを大きな目的としてございます。
 最後に、この技術ロードマップを広く産業界と共有し、宇宙輸送産業に対して新たな民間事業者、スタートアップ事業者、投資家等の新規参入の促進を期待するものと考えてございます。
 次のページをお願いします。
 これは共創体制の全体像です。JAXAにおいては、新規事業者に対してJ-SPARCという枠組みがございまして、ここが窓口になっています。一方、基幹ロケット事業者は、従来セキュリティーを確保したクローズイノベーションの枠組みで技術ロードマップの構築に協力していただいているところであります。この技術ロードマップを、オープンイノベーションの枠組みを活用しながら、共創体制を進めていくこととしております。
 次、お願いします。
 この技術ロードマップを軸にした研究開発・システム実証の推進・加速です。基幹ロケット発展型は、2030年頃の国際競争力のある大幅な低コスト化と打ち上げ能力増強、さらに2040年までを見据えた完全再使用化による抜本的低コスト化を加速、実現させることとしており、システムの詳細化検討を行い、ボトルネックとなる技術を見極め、技術ロードマップしてまとめてございます。この後、御説明したいと思います。
 この技術ロードマップによって技術獲得を加速させて、今後、システム実証、飛行実証など技術実証を実施し、より競争力のあるシステム及び技術ロードマップの充実、詳細化、絞り込みを図っていくこととしております。
 二つ目として、顧客要求や民間主導での活動は多岐にわたり、国際的な市場状況、政府の要望など、システムの要求は日々ダイナミックな変化をしております。この状況、要望の変化に柔軟、迅速に対応できるよう、競合分析、市場調査分析、さらに研究開発による技術獲得状況を踏まえつつ、1年に2回程度の頻度でこのシステム検討及び技術ロードマップを更新していくこととしております。
 現在、3年程度の技術ロードマップしか描けていませんが、ゆくゆくは5年、10年といった技術ロードマップに仕上げていき、様々な事業者と共有していくことが大事かと考えてございます。
 三つ目として、高頻度往還飛行型宇宙輸送システムについては、民間主導での活動といったところがございます。必要になる技術の見極め、実証飛行に必要な技術レベルまで高める技術ロードマップの策定に現在着手しているところでございます。これについても後で御説明します。
 四つ目です。技術ロードマップに基づくオープンイノベーションの共創体制における課題設定、それから第1回技術情報提供要請(RFI)、共同研究提案募集(RFP)を年度当初に実施し、既に21件のテーマを設定し、着手してございます。第2回RFI/RFPについても、12月から1月上旬までRFIを実施し、さらに技術獲得の加速を目指した課題解決研究を含むRFPを3月に予定してございます。
 このオープンイノベーションの活動で、非宇宙事業者の方々と我々どのような対話をしているか紹介しますと、やはり非宇宙事業者ですから、宇宙輸送のことを全く御存じございません。なので、我々の方からいろいろな知見、課題、必要検討などを共有しながら、宇宙輸送、宇宙技術について理解を深めていただいているという状況でございます。
 それから五つ目として、オープンイノベーションを含む研究開発データや知財については、機微な安全保障技術の管理については外為法に基づく管理を行うとともに、創出された重要技術全般については適正に管理することとしてございます。知財獲得後については、広く活用できるよう、利用権の扱いなどを踏まえた共有といったものを推進していきたいと考えてございます。
 次のページをお願いします。
 これが技術ロードマップ活用の全体の流れです。システムロードマップも5年程度に1回程度見直していくと伺ってございます。これに基づいて、この2本立ての両方のシステムを具体化し、ボトルネック技術を識別していくこととしております。このボトルネック技術を技術ロードマップ化しまして、様々な事業者と共有しながら、オープンイノベーション、クローズイノベーションの枠組みに活用していくこととしております。最終的にはシステム実証の実施までつなげていき、システムに反映するなどのサイクルを早く回していくというのが重要と考えてございます。
 次のページお願いします。
 具体的に、技術ロードマップはどのように作成しているか、について、基幹ロケット発展型の例で説明します。
 まず、基幹ロケット発展型のミッション要求を仮設定し、システム構想を仮設定しております。このシステム構想を基にサブシステム及び必要な機構を識別し、構成要素レベルまで機構の細分化をしております。
 次のページお願いします。
 一方、その機構が実現すべき機能要求の識別について説明します。この機構に対する機能要求というのは、これまでの使い切りロケットの知見・経験を最大限流用しつつも、新たな運用シーケンスである再使用・再整備も含めた適切な機能要求を識別する必要があるため、製造から再整備までの各状態遷移をもとに、具体的には、打ち上げ、コースティング、帰還、再着火、それから回収、再整備などのフェーズごとに細分化し、機能要求を詳細化してございます。
 次のページをお願いします。
 このシステム構想を基にした機構及び、製造、再整備までを詳細化した機能要求について、それぞれ機構と機能の関係性に着目したマトリックス展開を実施し、ボトルネック技術をここに示したとおり識別してございます。システム仕様を適正化するための技術、それからシステム全体に影響する技術、部品展開と対応する必要要素技術に注目してボトルネック技術を識別してございます。
 現在は技術ロードマップとして、ボトルネック技術ごとにTRL4まで向上させることを計画しております。この3年間でTRL4まで向上させ、今後、市場動向や研究開発の進捗などを踏まえて、TRL5、6に向けたシステム実証やシステム構想の見直しを継続して実施し、技術ロードマップを更新する予定としてございます。
 次のページをお願いします。
 高頻度往還飛行型宇宙輸送システムの技術ロードマップの検討状況です。これは、民間主導であることから、民間事業者が最終的にシステムを決定すると考えております。JAXAにおいては、ここに示す6つのシステムを仮置きして、検討を進めております。当面の間、JAXAは、これらのシステムに対して、TRLが低いシステム・技術を中心に技術獲得を進め、技術支援に対応していきたいと考えております。これらについては、事業者の求めに応じ、見直しを実施していくことを考えてございます。
 現在の検討は、TRLが低い、有翼システム技術、空力制御技術、熱防御技術、さらに空気吸い込みエンジン技術をボトルネック技術として技術ロードマップを検討してございます。
 そのほか、軽量化、低コスト化、液体ロケットエンジン技術などのボトルネック技術については、基幹ロケット発展型技術と共通技術として、このような技術を活用することを想定してございます。
 民間主導の事業支援に応じて、今後ボトルネック技術のテーマの調整、それからシステム検討の精度を図ってまいりたいと考えてございます。
 次のページをお願いします。
 これは典型的な飛行条件です。宇宙空間まで到達した弾道飛行だとマッハ30ぐらい必要となりますが、これは、日本からアメリカに30分程度で到達することになります。そうすると、ほぼ低軌道に投入できるぐらいの増速量になるということで、宇宙輸送との両立を考えると、この(4)ぐらいが望ましいですが、事業者の意向と市場動向を決定すべきものと考えてございます。
 次のページをお願いします。
 今後の計画です。技術ロードマップについては引き続き検討を進めます。第11回のロードマップ検討委員会でもございましたが、この2021年度末頃に、事業に関心のある企業、スタートアップ企業などを対象としまして、JAXAで実施している要素技術開発の進捗状況、技術ロードマップの進捗状況、これらの共有を目指したフォーラム等を実施しまして、事業者の意見を聴取するだけでなく、国、JAXA側から情報発信を行う準備を現在進めているところでございます。
 最後のページは、説明の中で、TRLといったキーワードが出てございます。その定義について、参考で添付してございます。
 説明は以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明について、皆さん御意見があればお願いいたします。
 永田先生、お願いします。
 
【永田委員】ありがとうございます。まず確認させていただきたいのですけれど、基幹ロケット発展型とそれから高頻度往還飛行型という二本立てになっている、それぞれの切り分けの意味というのは、前者が国主導、国のプロジェクトとして行うもので、後者が民間主導として行うものという、そういう分け方と理解してよろしいでしょうか。
 というのは、基幹ロケット発展型というのは高頻度往還飛行を目指すのではないかと思うので、それを目指さないというふうに理解すると少し間違っているのかなと思ったので、確認させてください。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省でございます。基幹ロケット発展型は、開発というのは国主導で、高頻度往還飛行型は民間主導で開発というところはそうなのですが、もっと言いますと、使用するミッションの考え方からそういうことになっておりまして、高頻度往還型というのは、正に民間事業者がP2Pとかそういう大規模な民間市場を狙えるところをやるということで、特に高頻度というのが必要になってくるということで、そういう飛行タイプのものが必要ということで、民間主導で開発しているところでございます。
 他方、基幹ロケット発展型は、アルテミス計画とかも見据えまして、月とか火星とか、そのようなところにもちゃんと到達できるというか、ちゃんとそれなりのペイロードを輸送することができるというところで、確実に今後必要となる月・火星に物が届くということがまず官ミッションとして重要になってくるということがあるかと思います。月とか火星ということを考えていると、なかなか高頻度のP2Pと同じような機体でやるというのは難しいのかなと思って、こういう2本立てとなっているところでございます。
 
【永田委員】なるほど、ミッションターゲットが違うということですね、理解できました。ありがとうございます。
 
【遠藤主査】私も永田先生の懸念点と同様なことを実は若干思っておりまして、先ほどのJAXAさんからの御説明を見ると、基幹ロケット発展型で現在具体的になっている姿は、1段の再使用化あるいは打ち上げ能力の増強というようなレベルで、言わば直近の目標が掲げられているだけであって、高頻度と同じタイムスケールで考えると、当然のことながら上段の再使用化とか、既に海外ではそういうことも検討実用化に向けてやっているわけですから、そういうことがあるのではないかと思うのですね。
 そうしますと、技術のロードマップが、若干、表現ぶりだと思うのですが、誤解を生むのではないかと少し懸念をしております。再使用のところの技術は専ら高頻度側だと、実はこれは将来の技術を考えると、基幹ロケット発展型についても、文科省からも冒頭の議題で説明があったように、個々の技術は、当然のことながら基幹ロケットにも当然波及していく、逆に使えるものであるということだと思います。この辺りが今の永田先生の御質問にもあるように、少し誤解を生むというか、将来のこの取組、国としての取組に、飽くまでも事業としては民間かもしれませんが、技術としては国として共通のものがきちっとやりますよというようなメッセージが必要なのかなという気がしました。
 すみません、しゃべり過ぎましたが、石田さんお願いします。
 
【石田委員】遠藤先生ありがとうございます。沖田様ありがとうございます。
 今、遠藤さんがおっしゃったことに結構関連すると思っていて、高頻度往還飛行型のために、この技術ロードマップとこの技術ロードマップにひもづく機能要求というキーワードが出てきたと思うのですが、これをどう使うのかがかなり肝かなと思いました。というのは、基幹ロケットは政府主導、高頻度往還は民間主導という、ここまではいいと思うのですけれど、これを実際の開発プロセスに落としたときに、政府側が決めることを民間側から決めることのプロセスは、かなり違うものになってくると思いますと。
 政府の基幹ロケットであれば、これはある種、従来延長のやり方になってくるので、スケジュールと人の管理は政府がやる、予算も政府がつける、技術開発方針もある程度政府が決めていくと。契約したベンダーさんは恐らくコストプラス方式みたいな形で、かかったコストに対して一定の利益が上乗せされて最終的な値段は決まっていくみたいな感じなので、ほぼほぼ政府が主導してやっていくという従来のやり方になると思うのですよね。
 一方で、民間主導型のものというのは、アメリカでやったものが日本に当てはめられるかどうか少し分からないのですけれど、一つの事例としてやるとすると思うと、大分それとは違ったやり方にならなければいけないと。通常一番大きな違いは、コストプラス方式ではなくてファームフィックスドプライスコントラクトに多分アメリカの場合はなっていて、マイルストーンとお金だけ決まっていて、その間のスケジュールとかコスト管理は民間側がやるというふうになっていると思うのですけれど、前、政府との連携をされた方に聞いたときに、政府の要件を満たすことが一番難しかったと言っていました。
 アメリカの例だと、何社か最初応札をした後に、途中で企業が絞られていくと思うのですけれど、あれは一番いい企業が残るというのもあるのですけれど、大体、落ちてしまう企業の多くは、政府側の要求をファームフィックスドプライスコントラクトの中でもはや満たすことができなくて、予算をバーンアウトさせてしまってプロジェクトが継続できなくなるというのがどうも多いらしいのですね。
 何が肝かというと、結局、政府側が出してくる機能要求というものも、政府サイドも実はちゃんとプライオリティーをつけなきゃいけなくて、このシステムのこのサブシステムはこれをやってくださいというのが、アメリカの場合でも比較的全部ざっとまとめて出てくるらしいです。余りプライオリティーがつけられていないと。それに対して民間側がまともに全部やると、大体コストが回らなくなってプロジェクトが倒れるということがどうもあるらしいので、民主導の開発プロセスにおいては、お金の支払の仕方も変わってきますし、政府側が示す機能要求の出し方、それを受け止める民間企業側も含めて、プログラムマネージャー双方の仕事の仕方というのが従来の基幹ロケットとは抜本的に変わらないと、多分プログラムが破綻するのだと思っています。
 そういう意味で、技術項目としては、基幹ロケットと高頻度往還飛行型で共有化したいというものがあるのだとは思うのですけれど、その技術を実際プログラムに落とし込んでいくときに、このロードマップとその機能要求というものをどこまで政府側として全て踏まえなければいけないとするのか、そこにプライオリティーをどうつけていくのか、そこのやり方というのは恐らく基幹ロケットの開発プロセスとは変えていかなければいけないかなと思っています。
 その辺り、これを実際に民主導の開発プロセスで落とし込んでいくときに、このロードマップとその前提となる機能要求というのをどういうふうに使っていくか、現時点で何かもう既に御想定されているものがあるのか、それはこれからやはり議論されていかなければいけないのか、そこに関してはどのようにお考えでしょうか。
 
【笠谷企画官(事務局)】大変ありがとうございます。
 これは確かに、JAXAの方で技術ロードマップはつくってはいるのですが、実際、民間が何を選んでいくかというところがあるかと思います。
 技術ロードマップの考え方の整理としましては、技術ロードマップ全体は、例えばシステムのA、B、C、端的に申し上げますと、スペースプレーン型と縦打ちの大きく分けて二つありますけれど、それらをいずれもやるためにはこの技術が必要だと、この技術がいつまでに必要だというものの全体のマップは用意してあるのですが、実際、民間事業者が立ち上がったり、若しくは選定されて、それらがこれをやるとなったりしたときは、技術ロードマップは、最低限何年までにこれをやらないと間に合わない、だから何年までに少なくともこれは取っておきましょうという、ミニマムのロードマップというふうに考えておりますが、実際、民間事業者がスペースプレーンとか、開発を決めた場合というのは、そちらの方を中心にやっていくことになるのかなと思います。
 だから、技術ロードマップはあるのですけれど、民間事業者は技術ロードマップの順番どおりといいますか、それに沿ってやっていくというよりは、技術ロードマップで最低限必要な要素技術はちゃんと用意しておくということなのですけれど、開発段階というのはまた少し違った話になってくるかなと思っております。
 
【石田委員】分かりました、ありがとうございます。
 飽くまでまずは基礎研究のところから始めなければいけないので、ある程度、技術の方向性を知見のある国が示していくというのは、おっしゃるとおり必要なことだと思います。
 その上で、恐らく開発プロセスに入っていくと、高頻度往還飛行型に関して民主導でいくならば、多分、政府が示すべきは、機能要求は示すと思うのですが、技術の方向性ではなくて、ミッション要求を示していくことになると思うのですよね。政府がお客としてそれを使う場合に、どういう機能要求を満たしていないと政府としては使うことができないと。それがむしろ示していく、より大事なものになっていくと思うので、恐らく要素技術開発のフェーズと実際の開発プロセスのフェーズ、調達していくフェーズで民間に示していくものが変わっていくのかなと思うので、また、その辺りは議論させていただければと思います。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。そのほかございますか。
 永田さん、お願いします。
 
【永田委員】すみません、発言が重なっておりまして。
 先ほどの石田委員の、未来にわたってこういう技術開発が必要なのだという検討がとても大事だということに正に賛成でありまして、先ほどナショナルプロジェクトの後継としては、月とか火星とか、もっと遠いところも目指してという話を頂いたのですけれど、2040年代まで見たときに、果たして今と同じように地球の表面からダイレクトに月の表面とか火星周回軌道とかに行くのかというと、ここはかなり懐疑的であります。
 恐らく、その頃はポイント・ツー・ポイントではなくて、例えば地球表面から地球周回軌道までに必要な輸送系のシステムと、それから、地球周回軌道から月に向かうときに最適なシステムというのは大分違うので、だからそこを分担していくような輸送のネットワークみたいな方向になると思うのですよね。そういう輸送ネットワークを考えたときに、地球の表面から地球周回軌道に行くところが一番きついのだという話は以前にもさせていただいたと思うのですけれど、そこのところは、高頻度再使用の地球周回軌道まで運ぶシステムとの親和性がすごく高いというか、もうそのシステムそのものなので、だから、2番目の柱として掲げていただいた民間主導でやるのだというところとの連携を非常に取れるかなと思っています。
 ただ、いずれにしろ、2040年代の宇宙輸送機はどうなっているのだという絵を明確化して描いていくというところが非常に大事かなと思いました。
 以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 稲谷さん、何か挙手。
 
【稲谷委員】石田さん、永田先生がおっしゃったことに近いのですが確認の意味で発言します。
 未来の輸送体系がいつのことを考えるかですけれど、私たちは、まず、結局、月へ行くとか何とかというのも、とにかく低軌道にどんどん上げるような仕掛けをつくれば、そこから先はまた別の仕掛けで低軌道以遠や、月・火星などに行く、というような輸送の分担に未来にはなっていくのだろうという図柄を描いています。そうすると、やはり地球周回軌道に非常に効率的に物を上げる仕掛けがあれば、月に行くのにも火星に行くのにも役に立つ仕掛けとなって、未来図としては、非常に大量に低軌道から先にもモノを運ぶ世界がつくられるのだという風に考えています。先ほどの基幹ロケットはアルテミス貢献で月だから、地球軌道は民間でという役割分担は、この先の5年、10年はそうかもしれないけれども、本来の理想的な未来の輸送体系の構図とは、違うのであると思うこと、それが1点目です。
 それから2点目は、これは石田さんがビジネスの言葉でいろいろおっしゃったのですけれど、民間主導の事業としては、マーケットの求める技術という観点が極めて重要であって、単に国が示す技術ロードマップができましたということと、その技術でマーケットから求められている要請に応える、というのは別のことであって、両者の接点の議論を十分にやらないといけないと思っています。技術ロードマップとは、それだけがあれば自動的にマーケットの要請に応えるビジネスができるということではなくて、マーケットの要請に応えるために作るものである、ということを認識すべき、と思うので確認のために発言しました。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 それでは、3番目の議題に行きたいと思います。
 前回、2040年代前半の事業化だけではなく、段階的な事業化があるのではないかと。段階的にということが今日も出ておりますけれども、具体的にどの段階でどのような民間事業が想定されるのか、また、事業化に必要な技術レベルはどの程度かということを議論させていただきたいと思います。
 本件につきましては事務局側で論点もまとめておりますので、説明をまずしていただきまして、議論をお願いしたいと思います。
 では、事務局からお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局です。
 それでは、資料12-3について御説明いたします。
 先ほど来、石田委員、永田委員、稲谷委員からも御意見がありましたが、また前回のロードマップ検討会におきましても、2040年代前半のP2Pというところまでを、今から見ると20年なので、取りあえずどうにも長いという話がありました。なかなかそういう長期間、民間の方でリスクを取るというのはしんどいという話がありました。
 また、これまでの議論で、段階的な事業化というのがあるのではないかとか、先ほどのJAXAの資料にも載っていましたけれど、それぞれの段階的な事業化に対してアンカーテナンシーを官が打つというふうな絵も6月のロードマップの中間取りまとめでは描かせていただいております。
 それらを具体的にどのように考えられるかということで、一つ提案させていただきたいと思います。
 まず、2040年代前半というのが非常に長いということがありますので、例えば5年ごとに政府として、例えばこのような能力、このような物を運べる、先ほど石田委員の言い方ですと、このような物をどこまでに運べるようなものを造れないかというものを政府が、例えば2026年頃までにこういうものとかを造れないか、2030年頃までにこういうものを造れないかと提示させていただくことはないのだろうかと。
 提示させていただいて、それで例えば、これは有人・無人と分かれていますが、必ずしも2026年に有人のものがというところではないわけでして、有人というのは、2040年のP2Pを考えると、2030年になるのか35年になるのかというのは皆様の御議論とか事務局でも更に検討が必要だと思いますが、こういうふうな形で、それぞれこういうものを2026年、2030年頃までに造れないかと提示させていただくと。それができた暁には、できた会社に対して、例えば官ミッションの一部を発注するということでございますね。例えば、2026年頃までにこういうスペック、能力を持ったものを造ると。
 ですから、ある程度、逆に民間事業者様から見たら、5年ごとに技術的な目標というか、そういうものを、いわゆるステージベース的なやり方になるのですけれど、そういうことがあるのではないかということを考えています。
 また、他方で、政府としてはこういう要件、こういう能力を持ったものがあると、そこはアンカーテナンシーで考えられますということですが、それは官からのアンカーテナンシーとしてはそうですが、それに対する法律的な要件とか、そういうものが政府には必要なのでしょうけれど、別途、民間事業者は自らの民間事業として、同じく弾道宇宙旅行をやるなりP2Pをやるとか、そういうことは民間の独自の商売としてやってもらっても構わないと思いますので、民間としてある程度の機体を造って、例えば宇宙旅行とかをやると。その一方で、政府が例えば5年ごとに、技術の到達点、こういうものを造れないかというものを提示して、ステージゲート的にアンカーテナンシーを打っていくというやり方はないのだろうかという御提案でございます。
 これは今、仮に5年と設定させていただいておりますけれど、特に5年ということにそれまで深い意味があるわけではありません。ただ、何刻みかということで考えて、5年というのはどうでしょうかということ。また、それぞれどのようなものがいいのかはまだこれから具体的な検討が必要でございますので、今の段階では何も必要な技術レベルは書いてありませんが、このような考え方で、何かしらアンカーテナンシーを打つとか、そういうことは、仮に民間事業者がやる際に検討の一助になるのかどうか、それとも、こういうことよりも早く、5年ごとではなくて最初から決めてほしいということなのか、いろいろ御議論あるかと思いますが、皆様の御意見を賜れればと思います。よろしくお願いいたします。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 文科省サイドも具体的にどうこうと、なかなかお悩みのような様子ですので、是非皆さん、こういう観点でこれを考えればいいのか、是非サジェスチョンをいただければと思いますが、御意見のある方、いらっしゃいますでしょうか。
 重枝さん、お願いします。
 
【重枝委員】重枝でございます。先ほど笠谷さんから御説明あったとおり、こういう形で段階的な事業化を検討するというのは、蓋然性を上げるためには非常に有益なのではないかなと認識しております。
 一方、5年ごとというのは飽くまで一例ということでございますので、2026年に事業にできる技術であったり、部分的な事業というのはなかなか難しいかもしれないので、スタートとしては2030年ぐらいからかなとは思いますけれども、やはり段階的に、どういう形で法整備が求められるかとか、あとは、予想される事業における市場規模に対してどれぐらいのマーケットシェアを狙いに行くかであったり、狙っていく収益の中でどれぐらいをアンカーテナンシーに頼っていくのか、そういったブレイクダウンを見ていくことで事業化の検証がより進んでいくのかなというふうに認識いたしました。
 正に予想される事業に関しては私もアイデアありませんので、皆様からこういった事業ができるとか、こういった要素技術が事業のためになるというのは、是非伺いたいと思った次第でございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 そのほかの方、御意見お願いします。
 渥美さんお願いします。
 
【渥美委員】渥美です。御説明ありがとうございました。
 少しスケジュール的なものの確認をしたいのですけれど、2040年以降は、実際に物が飛んで、ビジネスが始まっているということを想定しているのであれば、実機の開発に何年必要かというところの話がありますけれど、5年から7年ぐらいは、その前に実機開発ができるぐらいのフェーズにまで来ていなければいけない状態になるのだと思うのですね。
 そうすると、その前までに実験機が飛んで、その技術実証がされているレベルになければいけないだろうから、TRLのレベル1から4までの話がありましたけれど、1から4までの話と、4から6ぐらいの、いわゆる実験機で実証ができるレベルのものがどのタイミングまで一緒になるかというところを逆算していくと、5年サイクルというよりは、もう実験機のところに入ろうと思う段階は恐らく2030年よりもっと前のところでなければいけないでしょうし、TRLの1から4ぐらいまでの話は2026年までには出来上がっていなければいけない、そういう整理が必要だろうと思います。
 一方で、TRLのレベルの高さがファンドを集める大きな力になるというのは、先ほど石田さんが話されていたところの話にも関わってくるのですけれど、これをどのレベルまで上げて、どのタイミングで上げておくかというところが重要になるところで、特にTRLの4から6の実験機で、どの程度まで実証ができますかという点が、その後の大きなファンドを呼び込むときには極めて重要な話になります。
 今日の議論の中では、1から4までの話はあるけれど、4から6までの話をどうするかというところがなくて、ここをもう少し丁寧に議論して、どのタイミングで行くべきなのかということを考えておかないと、事業化のところの話になかなか結びつかないかなと思います。
 以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 続いて、手を挙げていらっしゃるので、連続して発言していただきます。
 石田さん、お願いします。
 
【石田委員】どうもありがとうございます。笠谷さん、ありがとうございます。
 全般として、やはりある程度、民間から見て予見性が示されるものを政府が示していくということは、私、非常に重要だと思います。
 2点、こうできるといいのかなと思ったのは、一つは、事業といったところがどこまで書き込むべきなのかなと。先週、私、SPACETIDEを主催させていただいて、そのランチャーのパネルの中で、ロケットラボとアストラとヴァージン・オービットとインターステラの4社の方々と集まって、正に議論をしたパネルがあったのですけれど、事業モデルの考え方もかなり各社ばらばらで、アストラはもう本当に使い倒し型のロケットで徹底的にコストダウンをしていって、再利用とかも余りしない、とにかく使い倒していくやり方だったのですけれど、ロケットラボは、御案内のとおり、どんどん大型化させていって、垂直統合モデルで、ロケットビジネスというよりはソリューションビジネスとして、衛星とかも含めて事業展開していきますというようなことを言っていました。
 かなりロケットの事業は今、事業の構築の仕方がプレーヤーの中でも結構分かれてきているので、どこまでここに事業というものを書き切った方がいいのかなというのは、少しその辺り、民間側の動きも含めた上で、余り狭いことだけ書いてしまうと逆に、今のロケット事業の大変革期に対応ができなくなってしまうと思うので、仮に書くとしても随時見直しをしていくとか、そういった形で事業のところは書いた方がいいのかなと思ったのが1点目でございます。
 もう一つは、先ほど笠谷さんも既におっしゃっていましたが、できればここの必要な技術レベル、要求レベルというものが、最終的に政府がお客としてこれを使いたいというときの具体的なミッションと可能な限りひもづいているというのは重要になってくるかなと思っております。これは当然、その翌年、1年後、2年後、3年後、4年後、10年後とかのミッションを全部ひもづけることは無理だと思うのですけれど、想定し得る政府のミッションと、ここに書かれていく期待する事業化レベル、あるいは期待する技術レベルといったものが可能な限りアライメントが取れているというのが多分、もう1個、これの説得性を増すという意味では重要かなと思いました。
 少しその辺り2点を踏まえた上で、うまく予見性があるものにできるといいのかなと思いました。
 以上でございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 それでは、お待たせしました、新谷さんお願いします。
 
【新谷委員】すみません。どうもありがとうございます。御説明ありがとうございました。
 前回が都合で出席できなかったので、もしそのときの議論とずれていたらあれなのですけれども、思っていることとして、いい点としては、今、有人宇宙飛行とかそういったところについて、国がどういうふうにしていくのかというメッセージがなかなか見えづらい中で、文科省さんがこういったものを出してくださるということはすばらしいことだと思っていて、他省庁が所管することになるとは思いますが、立法が必要だという議論につながっていくと思います。その点が1点、いいことだというふうに思っている点です。
 もう1点が、海外とのスピード感を少し合わせないといけないのかなと思っていて、なぜかというと、これは国の中だけで終わることではなくて、高頻度往還と言っているので、ほかからも来る、あるいは日本を飛ばして、ほかの国同士で往還し始めるということだというふうに思っています。
 2040年に日本としてビジネスがきちんとできるだろうということを一応のターゲットにして、5年刻みということなのだと思うのですけれども、渥美さんの話にもありましたが、かなりの前倒しが必要なのだろうなと思っています。
 日本が2040年で決めたからといって、海外はそのスケジュールに沿って待ってくれるわけではないので、2020年代の後半には二地点間の輸送というのは始まる可能性があるというぐらいのスピード感で今動いていると思っていますので、少なくとも実機の開発をしつつ、もちろん日本としてそれはやりつつ、技術開発をしつつなのだけれども、ここに出ている2026年頃の予想される事業とかということだとすると、外国機が日本に来るということを受け入れられなければいけないだろうし、そうすると、そのための有人飛行に対しての発着を受け入れるとすると、立法はもっと早く必要なのではないかとも思っているところです。
 その2点です。以上です。ありがとうございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 そのほかございますか。
 事務局どうでしょう、今、御意見いただいた点も考慮しながら、鬼塚さんお願いします。
 
【鬼塚委員】今、委員の皆様がおっしゃったことに賛同いたします。加えまして、時間軸の問題も正にそうかと思っていて、そういった中で、そのスピード感で技術開発を急速に進めていかなければいけないこの1点において、どういうやり方がいいのか、それはどういう事業者を使いながら技術開発していくべきなのか、いった方がいいのか。
 先ほど石田さんからもありました、ミッション要求みたいな話も含めて、何かトータルでもう少し練り込んだ方がいいのかなと思っています。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 事務局サイドとしてどうでしょう、このフォーマットをある想定の下で詰めて、議論のたたき台をつくるというのは。今日の御意見を踏まえてできますかね。
 
【笠谷企画官(事務局)】まず、この何年刻みというところもあります。あと、これだけでいいのかというのもありますが、これを一つのフォーマットとして考えていきたいと思っておりますということと、あと、石田委員からありました、予想される事業というところは、確かにおっしゃるとおり、民間事業者によっていろいろなやり方があると考えております。
 例えば政府としてここで提示したいのは、例えば必要な技術レベルはこうで、政府としてはこういうアンカーテナンシー、政府ミッションでこういうものを考えていますということは明示して御提言するのでしょうが、民間事業者がどのような事業をされるか、弾道宇宙旅行を並行してやるとか、そこは政府が技術要求として提示させていただいて、それを満たした上で、プラスアルファで何をやっておられるか、何を更にやるかというのは正に民間事業者様の独自性ということかなと思いますので、政府としては、技術レベルを示して、極力こういうものを打ち上げてほしいというのははっきりさせると。ただ、民間事業者が何をやるかというところは、そこは民間事業者の多様性ということで進めていくと。
 別に民間事業者も、政府がこうだからといって、政府の最適なミッションはこうですけれど、どんどん先に行ってもらっても全く構わないと思っておりますので、そういうふうに思っています。
 先ほどの新谷委員の外国勢うんぬんという話はおっしゃるとおりではございます。それは、引き続き今日の後半の議題にも少し関わってくるのかなと思っておりますので、またよろしくお願いいたします。
 
【遠藤主査】それでは、よろしくお願いします。
 
【渥美委員】すみません、渥美です。よろしいでしょうか。
 
【遠藤主査】どうぞ。
 
【渥美委員】先ほどTRLの話を言ったのは、通常、今までもそうですけれど、1から4ぐらいのところの話は、民間企業の中でもある程度研究開発はやれる話が多いのですが、4から6ぐらいになると、結構大がかりな知見や何かが必要になってくるので、ここが進む、進まないで非常に大きな違いが出てくると認識しています。
 それであるが故に、4から6までをどういうような形で進めるかというところをある程度クリアにしておかないといけない。4から6も例えば民間のところでやりますというと、それだけのファンドを集めて、技術開発をして、実験機を飛ばしてくれる民間企業が出てくるかどうかというところは、かなりハードルが上がる話になると思うのですよね。ここに対して国としてどういうサポートするかということの方が、実効性を決めるときには重要な話になると思います。
 前に何回の会議だったか覚えていませんけれど、牧野委員からもそのような意見が出ていたかと思います。一度その辺りを深く考えていただくべきじゃないかなと思います。
 以上です。
 
【遠藤主査】大変重要なポイントだと思います。今日のJAXAさんの技術ロードマップでも、個別の技術については記載があるのですが、いわゆる今言われたような、技術を大くくりにしてみると、私はシステム技術という言葉で一括されるのではないかと思うのですが、そういうシステム技術の成熟度を上げるという、まさしく実験とか実証機とかというレベルになるということだと思うのですけれど。
 そういうところをどういうふうに考えるのかというのを、更に渥美委員の御意見も踏まえて検討していただきたいと思います。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。
 渥美委員に少しお伺いしたいのですが、今、高頻度往還飛行型は2030年頃サブスケール飛行実証ということでロードマップには予定しておりますが、渥美委員が言うところの4から6とかのシステムを高めるというのは、正にサブスケール飛行実証の直前とか、その二、三年前ぐらいからやっていくとか、そういう意味でしょうか。
 
【渥美委員】2030年に飛行実証をしようとすると、その前までに機体開発をして物を造らなければいけない形になりますから、数年間かかるわけですよね。そのときには、もう技術レベルとしてはそこに到達していないと、そういうようなものを実際に造りますということを宣言して、そのためのファンドを集めることが難しくなるわけですよね、30年の数年前のところで。
 2030年のその前の実験機を造ろうということをスタートさせる段階では、技術レベルがこういうような形で実証されていますと言わないと、ファンド集めることが難しいということを申し上げました。
 実験機を実証させて飛ばして集めたお金は、その後、実機を開発するためのものになります。実験機を飛ばすためには、先ほど遠藤さんからもあったシステムレベルの実証の話としても、「その段階にまであるのです」ということを世の中に示してファンドを集める必要があります。
 したがって、TRLのレベルとファンドを集めて事業化するという話は非常に密接にリンクしてくるものだということを考えて、計画のところを議論すべきではないでしょうかということを申し上げました。
 以上です。
 
【笠谷企画官(事務局)】ありがとうございます。
 
【遠藤主査】よろしいでしょうか。
 それでは、次に開発体制を支える環境整備という観点でございます。
 開発環境に関しては技術レベルごとにどのような課題が想定されるかということを議論していきたいと思いますが、冒頭で紹介がございました、宇宙旅客輸送推進協議会(SLA)では、宇宙旅客輸送のための制度整備と環境整備について検討を始められております。議論の糸口として、SLAの岩本理事から、その検討内容につきまして御発表いただきたいと思います。
 それでは、岩本さんお願いします。
 
【岩本理事(SLA)】遠藤さん、ありがとうございます。
 宇宙旅客輸送推進協議会で理事をやっております岩本と申します。今日は貴重なお時間を頂いて、ありがとうございます。
 では、私の方からは、宇宙旅客輸送推進協議会(SLA)で検討している法制度、それから環境整備のお話をさせていただきたいと思います。
 特にタイトルのところにありますとおり、当協議会は高頻度かつ大量な宇宙旅客輸送の実現に向けた検討をしております。我々は三つのタスクフォースを協議会の中に持っておりまして、一つは2040のビジョン、どういう世界観、どういう世の中になっているかという全体図、それから、2040年の技術、どういう技術がそこまでに必要とされるか、今日の前半の議論でもあったと思いますが、そういった議論。それから、それを支える法整備、それから環境整備の検討を行っております。
 今日は、検討結果というよりは、我々としてこういう検討を進めていきます、こういう課題意識を持っていますというところを御紹介させていただきたいと思います。また、それに対していろいろと今日、皆さんからのコメント等をいただければ有り難いと思っております。
 では、ページをめくっていただけますでしょうか。
 こちらの絵は、以前、本検討会でのSLAの御紹介のときにも御説明させていただいたと思いますが、2040年に向けてどういうゴール設定されるか、どういうふうなマーケットになっているかという絵です。
 今、いろいろな有人宇宙機が日本でも開発されておりますが、それらの活動がより活発化して、将来的にP2Pとしては、1.5億人のうち、年間100万人から1,000万人が利用するような形、チケットも100万円から200万円ぐらい、年間売上げも1兆円から20兆円規模の市場ができていると想定しています。一般大衆の宇宙旅行についても、年間旅客100万人、切符が100万円から200万円ぐらいです。そういった世の中になったときにどういう制度が必要か、という検討を我々の方では進めております。
 次のページは、当面の法制度、それから環境整備の進め方になります。真ん中の水色で囲ってあるところ、これが我々のタスクフォースになります。繰り返しになりますが、2040年の大量輸送・低価格を前提とした法制度・環境整備の課題の識別・検討がタスクフォースの役割になります。
 法制度に関しましては、左下にありますJSLA(日本スペースロー研究会)さんと議論を協力しています。JSLAさんは日本の宇宙法制に関する勉強会を若手弁護士の方々中心に実施しておりまして、そのうちサブオービタルに関しても、10名程度の弁護士の先生方により、どういった法律が適当かですとか、どういう法を改正する必要があるか、そういったことをいろいろ議論されています。
 我々は、この弁護士の先生方による研究会と議論を進めることで、より法的な課題を明確化し、どういう法制度が必要かどうかということの具体化の検討を始めたところです。
 それから、右の方に宇宙旅客関連企業があります。レガシーの宇宙企業、ニュースペースの企業、それからものづくり、運用・サービス、地上関連、こういった企業さんたちがいますが、これらの企業さんたちにも我々の会員として入っていただいていますので、意見交換、情報共有をしたり、それから、環境整備に係る調整・連携についてはJAXAですとか、政府関係機関とお話したりさせていただいている状況です。
 もう一つ、サブオービタル法制度に対しては、サブオービタルの官民連携協議会がありますので、そこに対して我々が提案したり、そのための民間事業者の意見も集約したりできればと思います。
 アウトプットが左上の方になりますけれども、最初にお話ししました2040年の世界観、それから技術を合わせた形で、宇宙旅客輸送実現のための施策というのを我々提案して、これを立法府、行政府、関係機関にインプットしていければというのが、我々の今の進め方になります。
 次のページが、我々がどのような方向で課題を検討しているかの説明です。
 法制度、それから環境整備に関しては、既に多くの先人の方々がいろいろな検討されています。我々は後続になりますが、我々としては全体を俯瞰(ふかん)した形で進めることができないかという考えから、第1段階、第2段階、第3段階ということで、無人弾道飛行、有人弾道飛行事業、それから宇宙旅客輸送、実際に旅客が始まる、こういった発展した段階それぞれに対して、どういう法律が必要になっていくかということをまず検討しようと思っています。
 下に箱が三つあります。まず、無人弾道飛行事業の段階では、サブオービタル飛行に関する法整備、機体の安全性、スペースポート、再突入の許認可、そういった法律が議論される必要があります。
 第2段階においては、有人飛行に関する許認可ですとか安全性確認、旅客の位置づけ、航空交通管制等々のルールづくりが必要です。
 それから第3段階では、旅客運送事業としての許認可、そして、大量輸送に係るルールづくり、当然、国際機関との条約ですとか、取決めにも関わってくると思います。
 このように最初に第1段階、第2段階、第3段階で何が必要になるかということをまず検討して、これがどれだけ実現性があるかということで、TRL、先ほどもTRLという言葉が出ていましたが、法制度のTRLというような考え方で、それぞれの法律の成熟度を勘案しつつ、どういったことを考えていけば良いのか検討しようと思います。
 また、上のところに赤い字で、日本が国際ルール調整をリードするための必要通過点とありますが、単純に国内で法制度、環境整備だけではなくて、日本が国際ルール作り、国際調整の中にきちっとメインプレーヤーとして入っていけるように、どの時点で何をしておかなければいけないかというのも併せて検討しようとしております。
 そのほか、下に二つありますが、産業振興政策ですとか資金調達支援、国際議論等々についても議論していければと思っています。
 次はタスクフォースにおける議論になりますが、我々の中で出てきた議論を参考にお示ししております。
 現状認識としては、宇宙旅客に関する法制度が未整備であること、海外で既に、先ほど新谷さんからもお話ありましたけれども、P2P活動がどんどん出てきていて、そういったものは日本でも活用したいというような話も出ていること、宇宙旅客の管制ルールがないこと、今の法制度で大量輸送までは想定していないことなどを、認識をしています。
 次に今度どのようになれば良いかという観点から、日本をアジアのハブにできないか、P2Pにおいてハブにできないか、日本の機体を標準の一つとして運行させられないか、宇宙旅客スタンダードを日本が取れないかなど、我々がありたい姿というのも併せて議論しつつ、課題を挙げて進めるということを考えています。
 最後のページが検討の方向性です。今、具体的な進め方としましては3点考えております。
 まず一つが、高頻度大量有人輸送のための法制度検討ということで、御説明したことの繰り返しになりますが、JSLAさんと協力して、まず2040年においてどういう法制度が必要になるか、そのためには2030年はどうなっていなければいけないか、どうすればいいか、それを受けて、今、何を整備しなければいけないかという順番で検討しています。
 例えば今、宇宙活動法なのか航空法を改正すべきかという議論がありますが、2040年の時点でこの二つの法律のどちらかで動いているというよりは、いろいろな、これは両方とも勘案する必要があり、かつ、それだけではなくて、例えば有人輸送の許認可、旅客運送契約的な商法、民法、空港法等、いろいろなことを考えなければいけない。それを前提として考えた上で、今何をしなければいけないかと。
 さらに例の2で書いてありますが、インフォームドコンセント、これは重要な議論になってくると思うのですが、研究開発段階である最初の段階ではこれが必要なのですが、例えば今の電車とか飛行機の運用ではインフォームドコンセントというのは少し違う形になっていて、例えば規約ですとか約款みたいな形で実際は運用されています。こういうことも含めて、何を議論して、何を経過の議論にするか、何が恒常的なものかというものも、きちっと課題として検討していきたいと考えています。
 それから二つ目ですが、一つ目はどういう世の中かという前提で、何が最適でなければいけないかの検討ですが、二つ目は、日本の民間事業者が世界市場で世界マーケットの優位を確保するための施策は何かという検討をしています。
 そのためには、例えば国際的な会議において、条約・国際法調整で日本がイニシアチブを確保する施策、いつまでに何をすれば世界をちゃんとリードできるか、世界から信用してもらえるか、世界標準、これは技術も含めてですけれども、こういった会議に日本が参加して世界標準を定めるためにどうしたらいいか。世界標準になり得る技術開発、日本としての技術はどういうものを持てばよいか。さらに、宇宙旅客産業を国内で底支えするための施策や、スペースポートがアジアのハブとなるための戦略、こういったものを課題として挙げて議論をしていければと思っています。
 3ポツは環境整備になりますが、そのほか、これらを支える制度として、例えば、日本版COTSみたいなもの、政府需要の開拓、税制軽減、周波数調整、それから特区など、こういったものも考えていく必要がありますし、さらに国内に蓄積されている技術等の知財の利用・移転、技術利用の促進方策、これらはJAXAそれから既にいろいろやられているレガシーの企業さん、新しい技術を持っている企業も含めて、日本の技術の国内での共通化や利用など、そういった観点も考えていかなければいけない。さらに、民間が自由度を高く利用できる試験施設設備等、これらも環境整備の一つとして考えていかなければいけないと考えています。
 説明は以上になりますが、これは我々が今、課題として挙げていることで、これを早ければ年度内にはある程度、全てを実施することは難しいと思っているのですが、できるところから整備して、いろいろ御提案できればと思っております。
 私からの説明は以上になります、どうもありがとうございました。
 
【遠藤主査】岩本さんありがとうございます。
 それでは、ただいまの御説明に対してですね、御質問等あればお願いをいたします。
 渥美さん、お願いします。
 
【渥美委員】どうも御説明ありがとうございます。
 今、打ち上げ輸送事業者で実際に事業をやっているものからいくと、現在はロケットというものの定義はなくて、衛星輸送をするときに航空法の特例上の扱いでロケットを打ち上げているのが現状になります。
 今言われている話は、ロケットだとか輸送機だとかというようなものを打ち上げるための新法をつくることを頭の中に描きながら言っておられるのか、場合によっては航空法の改定だとかというようなことを頭に置いておられるのか、若しくは今と同じような特例処置で何かが飛ばせる状態になるかというようなことを考えておられるのか、どの辺りをイメージされてのお話なのでしょうか。
 
【岩本理事(SLA)】ありがとうございます。
 今、我々の議論の中で、可能性は全て三つとも否定していないです。新法の可能性もありますし、法改正の可能性もありますし、特例というのもあると思います。例えば、新しい法律をつくったとしても、跳ね改正のような形でほかの法律を改正する可能性も出てくると思います。
 そういう意味では、今の時点は、技術ですとか、先ほどお話しした世界観、どういう世の中になっているかというのも併せて検討していますので、それらに沿った形で、今の段階ではそれぞれ並行して検討しつつ、どれが最適かということで今後考えていくものかと思っていますし、これまでの宇宙に関連した法制度整備の際も、想定したものと違うような話も出てきて、いろいろとその都度、最適なものをつくっているという印象がありますので、そういう意味では、引き続き柔軟性をもって議論していくことを考えております。
 
【渥美委員】ありがとうございます。TRLのレベル、それから時間軸の話をひっくるめて、その辺りを検討していこうということだと認識いたしました。
 一つですね、米国では航空法の中の改定で、宇宙のサブオービタルが研究されている話があって、国際的にいろいろなビジネスを進めていこうとすると、どうしても協調的な動きが重要な話になるかなと。そのときにどのように動くのかというのは、やはり少し注視しておかないといけないのかなと感じております。
 以上です。
 
【遠藤主査】渥美さん、ありがとうございます。
 鬼塚さん、お願いします。
 
【鬼塚委員】鬼塚です。
 現状、航空機を飛ばしておりますけれども、今、岩本さんがおっしゃったとおり、安全で快適なビジネスをやっていく、やれる、そういったことが実現できるような制度設計が必要かなと思いますし、一方で、国際競争力をいかにして担保していくか、つけていくかという観点から考えますと、許認可を維持するための人員体制のようなものも、ビジネスにおいてはある程度負担になってくるかもしれません。そこのバランスをどう取っていくかということを、正にこれから議論を深めていければなと。
 以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。そのほかございますか。
 重枝さん、お願いします。
 
【重枝委員】岩本さん、どうも御説明ありがとうございます。
 私、本業の方で、2030年以降の地球低軌道の在り方というか、そういった議論に割と入っていることがあるのですけれども、2030年以降、米国を中心に民間ステーションが地球低軌道に増えてくる中で、日本がどういう形でプレゼンスを発揮していくかというのは非常に重要なポイントだと思っています。
 その中で、私がふだん感じるのは、有人輸送機を日本が有していれば、本当に大きな武器になるかと。特に地球低軌道の将来の経済圏で、どうやって日本の宇宙産業にお金が落ちてくるかということを考えると、やはり有人輸送機を保有していく、開発していくことは非常に意義があると思っておりますので、すみません、ただの所感になってしまうのですが、このSLAの皆様の活動に本当に期待しておりますので、是非引き続きよろしくお願いいたします。
 以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 新谷さん、お願いします。
 
【新谷委員】ありがとうございます。
 私の認識では、技術開発については専門ではないので分からないのですが、制度とか環境とかいう状況でいうと、ものすごく遅れている状況だと認識しています。
 今の段階で、もう海外はこれだけ成功例が出ているわけですし、制度面でいっても、イギリスは2018年につくった法律で、もう日本の更に先を行くスペースポートと有人宇宙飛行ができる法律をつくって、今、詳細の分を詰めているところです。そういった中で有人が正面からはできないという状況にあって、これから制度整備というところですと、技術面だけでなく、制度的にもかなり遅れているという状況だと思っています。
 そういった中で、海外の動きの加速がすごく速いので、以前にこちらでもプレゼンさせていただいたスペースポートジャパンというものを立ち上げまして、せめて発着できるところのアジアのハブにならなきゃいけないというところを随分前から申し上げて活動してきているところです。せめてそこだけは取らなければいけないかなというのが私の認識です。
 もちろん時間がかかっても飛ばすところも日本でできればなとは思っていますが、制度の整備が重要というのは同じ認識です。
 以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 大変厳しい認識を示していただきましたが、本件、この環境整備等につきまして、文科省の事務局側でまとめられた論点資料がございます。それを少し説明していただいた後で、もう一度議論をさせていただきたいと思います。
 それでは、事務局からお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。岩本理事、御説明どうもありがとうございました。SLA様でも検討をされておられますが、我々文部科学省として、プロセスというほどではないのですが、先ほどの技術実証のレベルを5年刻みでできないかということを提示させていただきました。それに全て連動するわけではないですが、そうなると逆に、それぞれある段階で有人を始めるとか、ある段階で再使用を始めるとなれば、それにリンクして必要な法令とか整備すべき法というのもはっきり見えてくるのではないかと考えておりまして、必ずしも先ほどの技術レベルの話と全てが全てリンクするわけではないですが、たまにそこがリンクするところもあると思いますので、それらに合わせて、2040年よりもっと先に完了していなきゃいけないのかもしれませんけれど、そういうものを最終的にこちらに埋めていって、何年頃までにどういう課題が必要となるのか、技術実証に合わせてどういう課題が必要になるのかということを我々としてもまとめていきたいと思っております。
 そして、その点で少し留意しておかなくてはいけないのは、新谷委員がおっしゃっていたように、正に黒船来襲ではありませんが、これは我々の日本での研究開発、日本での事業化に間に合うようにというのはあるのですが、外国勢が来るということが大変遺憾というか、日本の方ももちろんやりたいのですが、そういうようなこともあり得るかもしれません。
 いずれにしましても、先ほどの議題3の方でも技術レベルを区切るということをしましたので、それに合わせて確実に間に合うように法制度を進めていくということを課題として整理していきたいと思っております。
 文科省からは以上でございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 それでは、この環境整備の観点、それ以前の議題についてでも結構ですが、全体として御意見があればお伺いしたいと思いますので、皆さんお願いをいたします。
 渥美さん、お願いします。
 
【渥美委員】今の法的な話、それからビジネスの話を考えたときに、宇宙の関係の話を安全保障上の観点からどう考えておくかという整理はやはりやっておかないといけないのかなと思っています。
 特に、ある企業をつくってファンドを集めるときに、海外ファンドを集めるというのは当然考えるべき話になろうと思いますけれど、それが安全保障に関わるとなると、当然のことながら、集められるファンドというのは狭まってきます。
 それから、途中で技術開発をしたものを、場合によっては製品や何かを売買するというビジネスにしていく場合、実際に宇宙の関係のものの輸出をやろうとしたときには、外為法の話がやはり常について回ってきて、ある制約を受ける中で、輸出ができるという状況にあると思っています。
 したがって、この安全保障に関するところの話の考え方は、無視していいという話ではなくて、その中で考えるべきであるというのが方針であるのだったら、その方針はちゃんとバウンダリーとして示しておくべきではないかなと。
 民間企業で、もし仮に進めようとすると、その辺りがもやもやしたまま「民間の判断で」というふうに言われてしまうのは、非常にハンドリングとして難しいものになると感じます。
 以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 そのほか御意見ございませんか。よろしいでしょうか。
 それでは、御議論ありがとうございました。
 本日の議論につきましては、次回までに事務局にて整理をお願いしたいと思います。また、次回は、この整理に基づいて、更に議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本日の議題、これで終了でございますので、最後に事務局から連絡事項ありましたらお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。本日も御議論のほどありがとうございました。
 本日の会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は公開となっていますので、既に文科省のホームページに掲載させていただいております。また、議事録についても公開となりますので、委員の皆様にまたメール等で確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 本日は暮れのお忙しいときにお集まりいただいて、ありがとうございます。これで今年は検討会、最後でございますので、皆様どうぞよいお年をお迎えいただいて、また、年が明けましたら、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、本日は閉会とさせていただきます。ありがとうございました。
 

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課