革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会(第7回) 議事録

1.日時

令和3年3月24日(水曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 革新的将来宇宙輸送システムロードマップ検討会のこれまでの議論の整理と検討の進め方
  2. 革新的将来宇宙輸送システム実現に向けた課題について
  3. その他

4.出席者

委員

遠藤 守 【主査】
青木 一彦
渥美 正博
稲谷 芳文
大貫 美鈴
小川 厚
新谷 美保子
竹森 祐樹
津田 佳明
中須賀 真一
永田 晴紀
福島 康仁
牧野 隆
武者 智宏

文部科学省

研究開発局長  生川 浩史
大臣官房審議官  長野 裕子
宇宙開発利用課課長  福井 俊英
宇宙開発利用課企画官  笠谷 圭吾
宇宙開発利用課課長補佐  渡邉 真人
宇宙開発利用課課長補佐  岡屋 俊一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事  張替 正敏
 研究開発部門
  第四研究ユニット ユニット長  沖田 耕一

5.議事録

【遠藤主査】遠藤です。定刻になりましたので、ただいまから文科省研究開発局が主催します革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会の第7回の会合を開催させていただきます。皆様お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。
 それでは、まず事務局から事務的な確認事項等ありましたらお願いします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局です。
 本日は、革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会に御所属いただいております16名の委員のうち、14名の委員に御出席いただいております。
 次に、本日の資料ですが、お手元の議事次第4ポツのとおりです。
 オンライン状況について、音声がつながらない等の問題等がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。オンラインシステムの運用上の注意事項等は、事前送付いたしました運用の手引を御参照ください。
 事務局連絡は以上でございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございました。
 それでは、議事次第に従いまして、最初の議題に入りたいと思います。1番目は、革新的将来宇宙輸送システムロードマップ検討会におけるこれまでの議論の整理と検討の進め方でございます。
 これまでの検討会の中で皆様に御議論いただいた内容を事務局で整理をしていただいております。それと、本日以降の進め方についても御提案をさせていただいておりますので、それについて、まず事務局から説明をお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局です。
(資料7-1について説明)
 
【遠藤主査】ありがとうございました。今事務局から御説明いただきましたが、本日の議論のポイントにつきましては、それ以外の点についても後ほど皆様の御意見を伺おうと思っておりますので、今の説明の内容について何か御質問等ございましたらお願いをいたします。よろしいでしょうか。
 
【渥美委員】すみません、渥美ですが、よろしいでしょうか。
 
【遠藤主査】はい、どうぞ。
 
【渥美委員】1ページ目のところで確認だけをさせていただきたいのですが、輸送のニーズのところに政府のニーズというものがあって、今回目指そうとしているものは、政府のニーズも満足しながら、民間としての活動を盛り上げていくような形の輸送系を考えるということだと認識するのですが、それでよろしいですか。
 なぜそういうことを質問するかというと、P2Pの議論のときに、規模が、ややもすると政府のニーズに見合うようなものを打ち上げられないようなサイズになってしまう議論をしても意味がなくなってしまうだろうし、その立ち位置だけを確認したいのですが、いかがでしょうか。
 
【遠藤主査】どうしましょうか。
 
【笠谷企画官(事務局)】遠藤主査、私からよろしいでしょうか。文科省でございます。お答えいたします。
将来輸送システム全体として、政府ニーズをちゃんと担保することが大事だと思います。先ほどのP2Pは、官の主導というか、官需の方が大きいので、なかなか前回の議論でも、例えば水平打ち上げで全てのニーズを満たせるかということはありました。いずれこのシステム全体で、きちんと官需も満たし、全体を安くするために民需で使えるようなものもつくることを考えております。
 
【渥美委員】分かりました。ありがとうございます。
 
【遠藤主査】よろしいですか。
 
【渥美委員】それから、もう1点、このページの中で、本日議論する議論のポイントと書かれているところですが、ここで飛行管制に関するところが地上システムだけになっていますが、航空機本体にも重要な管制機能は必要になるだろうということと、それから、再使用の話が主体になっているのに、再使用するための整備に関する概念的な言葉がないので、追加された方がいいのではないかなと思います。以上です。
 
【遠藤主査】そこのところは正に今日の議論だと思いますので、また後ほど渥美委員の問題意識を言っていただければと思います。
 
【渥美委員】分かりました。ありがとうございます。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。そのほかございますか。
 
【稲谷委員】少し手を挙げていますが。稲谷ですが。
 
【遠藤主査】ああ、失礼しました。はい、稲谷先生。
 
【稲谷委員】今日どこで議論されるか分からないのですが、議論の全体のスコープというか、範囲のことを申し上げておこうかと思いますが、将来のマーケットが、P2Pとか、宇宙旅行とか、そういう人を運ぶということがゴールになっています。今の議論では、低コスト化だとか、再使用とか、そういう機能をつくるということに関する議論があったと思うのですが、人を運ぶということについてどういうふうに取り組むか、あるいは、我々の中でも議論するならば、人を運ぶことを誰が責任を持ってこれからやっていくのか、果たしてそのボディはどうするのか、国なのか民間なのか、そういう議論を避けて通っていると、将来人を運ぶという話になかなか近づかないかなと思います。その点の議論が議論全体のスコープとして必ず必要だと私は思っているので、その点についてはどうお考えなのかについていつ触れるのか、今日この時点なのか、この後の議論か、あるいは中間まとめなどでそのことはどう触れるかというようなことについて是非議論していただきたいと思います。
 
【遠藤主査】今、渥美委員からもありましたが、政策の問題意識のところは正に今日の議論だと思います。
 
【稲谷委員】議論があるということですね。
 
【遠藤主査】はい。
 
【稲谷委員】分かりました。
 
【遠藤主査】永田先生も手を挙げていただいていますか。
 
【永田委員】いろいろな議論があったものをこのようにまとめていただいてありがとうございます。よくまとめていただいたと思うのですが、もう一つ入れていただきたいことが、地球の表面から深宇宙までカバーするような輸送のネットワークをどうつないでいくのかという議論があった中で、例えば地球から深宇宙に行くことを考えた場合、地球から月周回軌道に行くまでで、デルタV(速度増分)の7割ぐらいを食ってしまうのですね。さらに、その間、空気層も抜けなくてはいけなくて、実は地球周回軌道までというのがかなり遠く、そこまで行ければ、深宇宙というのは残り3割ぐらいしかないのだという議論もあったと記憶しています。
 更に言うと、地球周回軌道に必要な軌道速度と、P2Pで数千キロメートルを結ぶのに必要な速度というのは余り変わりがないということもあって、実はP2Pという内容はその後の技術につなげていく際にも非常に大事で、かつ、有人となると必然的に再使用になるわけです。最終的に月、火星までつなぐときにこの技術は生きてくるのだという議論もあった気がしますので、いかに空気層を抜けるところを安くするのかが実はすごく大事であることをもう少し強調していただきたいと思いました。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。今後のまとめの議論で、先生の御意見等を反映した形にできればと思います。
 それでは、2番目の議題に入りたいと思います。
2番目は、革新的将来宇宙輸送システム実現に向けた課題についてでございます。
先ほど、事務局からも本日の議論について説明をいたしましたが、これまで御議論いただいたことから、本日は、革新的将来宇宙輸送システムを実現するための幾つかの課題で、まず、先ほど事務局が整理してくれましたが、四つの観点として、「オープンイノベーションでの共創体制」、「システム技術実証の進め方」、それから「官民の役割分担」、そして「国際認証等における制度障壁」という四つに分けていただきましたので、この四つの一つ一つについて文科省とJAXAから議論の材料を説明いただいて、個別に一つずつ議論を進めていきたいと思います。その後で、委員の皆さんから、これ以外の観点でこういうことも大切だよということがありましたら、それについてお伺いして議論に加えていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず1番目の「オープンイノベーションの共創体制」について、これはJAXAさんからですかね。お願いいたします。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】JAXA沖田から御説明したいと思います。
(資料7-2(1)について説明)
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
それでは、今JAXAさんから、共創体制の考え方について御説明いただきましたので、皆様の御意見を頂きたいと思います。御意見のある方、お願いいたします。渥美委員、お願いします。
 
【渥美委員】よろしくお願いします。御説明ありがとうございました。
 7ページ目のところですが、ここは知的財産の考え方などをひっくるめての話がベースだとは思うのですが、ファンドの流れとしては、地上の市場へ何らかの波及効果を出して、そこのファンドが全体の活動へうまく回ってくるような形には少なくともこの絵はなっていなくて、宇宙輸送の事業は宇宙輸送の市場の中だけでお金を取らなければいけないようになっているように思います。地上の市場にいろいろな波及効果を出しながら、そこのファンドがこういった宇宙の輸送にも流れてくる図である方が、共創体制を持続的に進めていくときには重要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】沖田です。ありがとうございます。いみじくもJAXAで考えている狙いを整理いただいたと思います。次の5ページを開いてもらえますか。おっしゃるとおり、市場展開のところで、オープンイノベーションの共創体制で投資家がそういったところに投資していくということがあると思います。そこをうまく民間の宇宙輸送事業者の運用段階につなげていくことが一つの肝だと思っています。今渥美委員の話された御意見を踏まえまして、少し説明、図等を工夫してまいりたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
 
【渥美委員】よろしくお願いいたします。初期の投資もそうですが、恐らく運用段階になってからも、ファンドがある程度うまく回るような形にして、双方の事業がうまく成長していく形にしないといけないと思います。そのあたりが分かるような絵にされるといいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 竹森委員、関連するお話ですよね。
 
【竹森委員】少しずれますが。関連しないとまずいですか。
 
【遠藤主査】いえ、ずれてもいいのですが、渥美委員の問題意識について何かサジェスチョンがありましたら、それも併せてお願いします。
 
【竹森委員】正に今の話はそうなのですが、オープンイノベーション共創体制ということで、この考え方は非常に重要で賛同いたします。我々も、非宇宙部門とはいえ、金融からこういうことを支援できるような仕組みに入っていきたいなということで今活動しているのですが、例えば5ページとか7ページの絵を見せていただき、また、9ページの話を見ていると、いろいろ私自身もお世話になっているほかの非宇宙部門からの技術等を使って宇宙事業でコスト低減とか新しいアイデアを利用するためのいろいろなプログラムが既にあるような気がします。つまりもともと文科省さんとかJAXAのプログラムに既にある気がして、オープンイノベーションでこういうものをやろうということには賛同ですが、非宇宙部門から良いものをいろいろ取り入れて、これを使っていこうではないかということは、既にプログラムとして存在するのではないかと思います。今回の説明内容がそういう既存のプログラムと何が違うのか、教えていただいてもよろしいですか。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】4ページをお願いできるでしょうか。竹森委員のおっしゃるとおり、既に「探査ハブ」でそういったオープンイノベーションの取組を実施してございます。我々もそこでリストアップされている内容については一通りレビューをしまして、宇宙輸送に使えるものはないかという視点で一旦考えてございます。
 問題は、宇宙輸送に使おうとしたときに、こういうオープンイノベーションで技術を仕上げていく中で、どういうふうに使うかというイメージについて技術を持っている事業者と共有しないと、技術内容が少し足りないとか、少しオーバースペックになっているとかといったこともありまして、なかなかそのままで使用ということにはなっていません。今回我々が考えているものは、宇宙輸送といった具体的な出口を示しながらオープンイノベーションを回していくといったことで、これまでこういった事業については既にやっている、技術も幾つかあるということは承知している中で、宇宙輸送に関してこういったところがまだ十分足りていないところについて、今回本格的にやろうと考えているところでございます。
 
【竹森委員】なるほど。新たなもう少し大きいプラットフォームをつくって、枠組みは、会合なのか、組合なのか、いろいろな体系はあるにせよ、もう少し大きな範囲で絞り込むということですかね。「オープンイノベーション」のイメージが、多分皆さんも所属するところによって解釈が変わってくると思うのですが、どういうイメージでしょうか。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】どちらかというと広げる方向になります。
 
【竹森委員】広げるのですね。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】つまりこれまでの探査という宇宙利用の視点に加えて、今度は宇宙輸送という視点でもっと間口を広げ、いいものを見つけていくということになります。
 
【竹森委員】衛星とか、ロケットとか、今まではかなり狭い範囲というか、一部門の範囲だったところを、もう少し探索も含めてオープンに、範囲をもっと大きくするようなイメージですね。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】そういうイメージです。
 
【竹森委員】分かりました。ありがとうございます。
 
【遠藤主査】よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、青木委員、お願いします。
 
【青木委員】今の竹森委員の御指摘、御質問とほぼ重なるところがありますが。
多分昨年度から皆様で御議論された上でのオープンイノベーションということだと思いますが、少し私自身、この基幹ロケットあるいは宇宙輸送システムの開発という目的に対して、このオープンイノベーションというやり方は本当にうまく機能するのだろうかと思っていて、これは実はイメージが湧かないからだと思いますが、やや懐疑的です。
 このオープンイノベーションの枠組みというのは、ある意味、ビジネスをつくり上げるという段階においてはすごく有効に機能しますし、私どももそういった形で利用技術、あるいはサービスの展開ということでよく使っておりますが、今回議論の対象になっているような宇宙輸送システム、それも日本国として自立的なという目的意識も一つあるような開発において本当に機能するのだろうかと考えます。これはある意味、問題提起としてコメントさせていただきます。枠組みを大きくすることで本当に知財が共有化できるのかなということもありますし、宇宙輸送システムの開発に必要な新たな技術要素、地上も含めた非宇宙における技術要素があるのであれば、むしろそれの見当をつけて、そこにピンポイントでJAXAさんを中心に取り込んでいくというふうにした方が、より目的に早く到達できるのではないかと思います。オープンイノベーションというやり方は、時として様々な議論が生まれ、あちらに行きこちらに行く中で最適解を探すというようなプロセスになりがちですので、どうも私自身はそぐわないのではないかなと思います。コメントです。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。このオープンイノベーションというのは、私も、難しいけれど取り組み方によって、うまくこれが機能する分野と、宇宙輸送という特別な世界の中でやらなければいけないというような部分、恐らく両方出てくるような気がいたします。
 稲谷先生、手を挙げられていますか。
 
【稲谷委員】はい。
 
【遠藤主査】お願いします。
 
【稲谷委員】青木委員のおっしゃるのを聞く途中で手を挙げたので近いことを申し上げるかもしれませんが、私は、JAXA探査ハブで民間の非宇宙の方々とのいろいろな関係をつくるときに少し横で接するような状況もありましたので、それとの関連で申し上げたいと思います。ボトムアップ的に裾野を広げて、いろいろなショッピングリストといいますか、選択肢が増えるということはとてもいいことだし、宇宙に閉じこもっている我々のような人間が知らない世界に接するのはとてもいいと思っているのですが、一方で、前回も少し申し上げましたが、マーケットドライブでこういうシステムのリクワイアメントを満たすようなものをつくるのだとか、技術開発のゴール設定みたいなことは、輸送系の場合、割とはっきりさせる必要があるかと思っています。そこで、先ほど言ったP2Pとか宇宙旅行とかの大きなマーケットを満たすためにはこのような技術が要るぞと言って、逆にトップダウン的にハイスペックのものをつくろうと思うとかなり難しい技術開発になると思います。トップダウン的にマーケットにおけるリクワイアメントをまず出して、それを満たすようなものを集めるなら集める、ないならつくるという方向のアプローチがいいのかなと考えます。
 先ほど青木委員もそれに近いことをおっしゃったかなという気もするのですが、いずれにしても、ボトムアップ的なアプローチはいいとは思うのですが、それだけで何か物ができるかというと、例えば探査ハブのやっていることというものは、裾野が広がっているということでそれはそれでいいと思うのですが、何か物をつくるというところに収れんさせているかというと、プロモーション自身がそういうふうにはなっていないと思います。宇宙輸送の場合、あるいは、今ここで我々が議論しているような将来の宇宙輸送システムには、そういう方向のアプローチが要るのではないかと思ったので申し上げました。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 それでは、次に行かせていただきます。2番目は、「システム技術実証の進め方」についてということで、これについてもJAXAさんからお願いします。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】システム技術実証の進め方について、これは案でございます。
(資料7-2(2)について説明)
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 ここでは、案といいますか、アメリカの例も含めて御提示いただきましたが、皆さんの御意見いかがでしょうか。稲谷先生の挙手がついていますが。
 
【稲谷委員】少し質問は、今の沖田さんの話は、官民とはいえ、国が結構主導をするとか、補助をするとかいうことが前提のように見えたのと、前のページ、例1と例2というのは、進め方の話ではあるのだが、お金は誰が出すという前提でこの事例2はできているのですかという質問です。
 
【笠谷企画官(事務局)】事務局の文部科学省でございます。お答えいたします。 こちらのステージゲート方式では、もちろん官費の出せる割合はありますが、官が当然お金を出します。ただ、いわゆるフル開発費に対して100%官だけで払うということになるかは正に議論があるところではありますが、やはり官がそれなりに分担するといいますか、少しあやふやな言い方で申し訳ありませんが、官もちゃんと資金を出すという前提でございます。
 
【稲谷委員】どちらもゼロではないということで、そこがどのぐらいかの議論を抜きにはなかなか話が先に進まない気もしますが、おっしゃることは分かりました。
 
【遠藤主査】永田先生、どうぞ。
 
【永田委員】ありがとうございます。僕はステージゲート方式の方に賛成です。これはアメリカみたいに非常に分厚い民間企業がある中で機能したのであって、日本でこれが機能するのかという議論も一方ではあるのですが、ただ、ステージゲート方式でこの会社が選定されましたとか、あるいは技術開発プランとか、あるいは事業化のプランとかを競い合った結果、こちらに優位性がありますというような判断が下されることによって民間のお金が集まりやすくなる面があると思うのですね。いずれにしろ、民間の資金をどうやって集めていくかを考えないと、政府の予算だけで開発できるような話ではありません。民間資金をうまく有望なところに導いていくような仕掛けをつくる必要があって、そのためにこのステージゲート方式というやり方は有効なのではないかと思います。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。そのほかございますか。
 今、永田先生からもお話がありましたが、やはりアメリカのような防衛宇宙企業の厚みなり、そういうキャリアを持った人たちの厚み、集まる資金の厚みとかの状況が、大分日本と違うと思いますので、恐らくステージゲート方式が好ましいと皆さんはお思いだと考えますが、何か日本風の工夫がないとこれがうまく機能しない気がしております。その辺、日本ならではのこういう工夫が必要なのではないかというような御意見あれば是非お伺いしたいのですが。新谷委員お願いします。
 
【新谷委員】ありがとうございます。工夫というほどでもないし、日本ならではというわけでもないのですが、CCPとかCOTSとかというものは、御存じのように、民間側もかなりお金を集めてきているところがあります。それで、1段階目で選ばれても、2段階目までの間に資金調達ができなくて潰れてしまった会社もそれなりにあります。ここに出ている会社には残っている会社が多いですが。それについて別に政府は、それはそれでしようがないよねという感じで、特に手を差し伸べたりしてみんなで細く長く生きるみたいなことはしていません。アメリカとは数も違うし、お金の出方も違うのでなぞることはできないのですが、ある程度競争させると決めたのだったら、それしかないかと思います。
 もう一つあるのが、これをまねしようとしたときに、CRD2とかもそうだと思うのですが、その後も、打ち上げサービスを買っていくということを続けられるのだったら、こういう方式は機能すると思うのですね。つまり、こういったものに国がずっと人を送り続けるとか継続が可能であれば、官がロケットの打ち上げを買い続けるということが先に見えていれば、事業化もできるし、そのための資金調達もできるのですが、1回の実証とか1回の何かということだとその先には進みません。日本がもしこういったことをやるのだとすると、日本ならではというわけではないですが、まだ日本にないという意味で、またできるのではないかという意味であれば、国もこれを使っていくということをきちんと決めた上で、ステージゲート方式を採用されていかれるための工夫をされるのがいいのではないかなと思います。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。重要なポイントだと思います。
 そのほか御意見があればお伺いします。渥美委員、お願いします。
 
【渥美委員】はい。宇宙輸送系の話ではないのですが、例えば衛星関係等をやっていくとき、大きなメーカー同士で一緒にやりましょうというような形で話をしようとすると、独禁法に触れるような話になりやすく、そういう提案は受け入れられませんという類いの話が出やすいです。一方で、大きなお金を動かさなければいけないとすると、結構大きなメーカー同士がくっつかないといけないときも多々あるので、独禁法との兼ね合いをどのように整理するのかというところは、一つ仕組み上で考えておかないといけないと思います。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。そのほかございますか。
それでは、また後でまとめた議論をさせていただこうと思いますので、次に進ませていただきます。次は、官民の役割分担についてですね。これは文科省からですか。
 
【笠谷企画官(事務局)】文科省から、官民の役割分担と、引き続きましてその次の4ポツの国際認証をJAXAから説明させていただきます。
(資料7-2(3)、(4)について説明)
 
【遠藤主査】ありがとうございます。今の2点について、皆様の御意見をお伺いしたいと思います。牧野委員から手が挙がっていますかね。お願いします。
 
【牧野委員】1枚紙を共有したいのですが、いいですか。
 
【遠藤主査】どうぞ。
 
【牧野委員】これは、中須賀先生と稲谷先生の勉強会で使った資料ですが、国と産業界の役割というものをまとめています。
 国の役割のところに、将来の基幹産業になる可能性を秘めた有人宇宙輸送機の技術を育成すべきと書いてありますが、これは、今のコンテクストで読み替えると、国が、基幹産業となる可能性があると考え、育成する意思があるならばというふうに読んでいただければいいかと思います。そういう状態だと、リスクも高くて時間のかかるキー技術を選んで、国が主導でまずテクノロジーレディネスレベル(TRL)を上げることが必要ですとなります。その内容については専門家の組織で議論しないといけないと思っています。
 先ほどステージゲート方式の説明もありましたが、ビジネスが見通せるレベルというのは、TRLが6から7の段階になった状態なので、6から7以降の9に行くところ、ここに関してはステージゲート方式というのはきっと機能すると思います。ただし、多分今だと技術的なベーシックテクノロジーリサーチというのは1、2、3までのところですが、TRLが1、2、3から5というあたりというのは、少し実験機的ないろいろなことを国主導でやってもらって、それのフィードバックをしながら、技術レベルを上げて、グローバルなレピュテーションを得ていくということが要るかと思っています。
 得られた技術は、そのときに担当した会社のみならず、事業をするのが民間という前提でしゃべっていますから、民間へ素早く移管することが必要です。TRL6以降、7以降ぐらいですかね、デモンストレーションフェーズに移行することになります。そういう中では、国際共同開発ということを頭に入れて、そういう国際共同の仕掛け、民間事業者への支援の仕組みということを国は構築してほしいと思います。
 有人宇宙、P2P、先ほども出てきていますが、FAAやEASAといったインフォームドコンセントではない一般大衆向け宇宙旅行をやろうとすると、その認証制度が国際機関で決まるわけですから、そこへ積極的に国が参加する必要があると考えます。それに加えて、大規模な開発設備、これも大きな燃焼風洞が要るといった話になると民間で持てるものではないので、こういった大規模な試験設備、スペースポートもそうですし、是非そういうものを国がまず整備して、運用段階つまりお金を生み出す段階になって初めて民間でどうするかという議論をすべきで、最初は国にやってほしいと思います。
 産業界は、当然TRL1、2とかというところで会社のお金を使うかもしれないし、3、4、5では、いろいろなプログラムに手を挙げたりして技術的な投資をしていかなければいけない。そういう中で、P2Pとか大規模な有人宇宙輸送システムということになると、国際共同ですから、海外メーカーとの協力関係、ポジショニングをつくっていくという作業、そういう国際共同としてどういうふうにやっていくかというような事業化、そしてTRL8から9というと完成機を造るフェーズに近づきますけれども、それと同時に、MRL(マニュファクチャリングレディネスレベル)といって、7とか8は少数の機体を造る能力、10まで行くとフルプロダクションを造る能力ですが、こういったところへの投資は、当然民間の事業であるならば産業界もかなり出資する、投資することになります。それができた暁には、メンテナンスを含めたオペレーションを事業にしていくことが民間の役目だと思います。
 遠藤さん、ありがとうございました。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。大変重要な論点をありがとうございます。今の牧野委員のプレゼンテーションでまた最初の共創体制とかにフィードバックをしていくような議論になってくると思います。全体も含めた議論で結構でございますので、皆さん、御意見をお願いしたいと思います。
 
【笠谷企画官(事務局)】事務局でございますが、遠藤主査、少し補足的に発言してよろしいですか。
 
【遠藤主査】いいですよ。どうぞ。
 
【笠谷企画官(事務局)】すみません、事務局の文部科学省でございます。
本日、JAXAと文科省の方から、特に共創体制ですとかステージゲート方式について、役割分担を含めて説明させていただいたのですが、我々としては、共創体制でも地上関連事業の民間企業の方々にできるだけ参加してほしいですし、また2ポツでステージゲート方式というものを御提案させていただいたのは、もちろんアメリカと比べてどうなのかということはあるのですが、民間の方々に切磋琢磨(せっさたくま)してほしいというか、いろいろな御提案を持ち込んでいただいて、なるべく多くの方に参画してほしいということを考えております。
 ですから、特に御意見いただきたいのは、こういう形ではまだまだ民間は手を挙げるのが難しいとか、もっと知財のことを考えなければいけないとか、ステージゲートをやるにも、もう少しこういうところは国とかJAXAで、例えばJAXAの施設がもっと使いやすくなるとか、JAXAの専門家の方に技術的なアドバイスも得られるようにしてもらった方がいいとか、民間が参画しやすいように、我々の議論もまだこういう段階ではありますが、民間がより参画しやすくなるような仕組みというか、そういう御意見などを賜れれば幸いでございます。遠藤主査、ありがとうございました。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。今の文科省からの御提案も含めて、御意見をよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。渥美委員が前半に発言されていた問題意識については、今のこれまでのこの議論の中で大体含まれておりますか。
 
【渥美委員】一部これから議論なのかなと思っておりました。
その前に、一つ技術的な面で、再使用化の話に関する技術的な項目をちゃんと洗い出しておかないと駄目だということだと思います。航空機の場合には、どの部分を点検すればそのまますぐ飛ばせるという技術開発が行われるということと、それから、飛ばしている最中での損傷許容設計という概念があります。機体は損傷し続けていると考え、大きなハザードになる前に、当然、部品の交換をしなければいけないということになるのですが、今のロケットの設計には、そういう技術はエンジン設計の中に一部あるものの、機体の設計の仕方としてそういう思想は入っていません。
 その意味で、再使用に関わる技術開発がこのテーマの中には入っていないので、入れておかないと、将来運用して進めていこうとするときに怖いことになると思います。まずそこは入れた方がいいと思います。ビジネス的な観点の話は、少し頭を整理してからまた発言させてください。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。この場はロードマップということですが、そういう重要な技術をどう扱っていくのか、技術の中身というより、どう扱うのかという観点で、再使用に関わる技術について、将来宇宙のキーワードとして再使用というのは皆さん御異存のないところだと思いますので、再使用技術をどう捉えて取り組んでいくのかが、このロードマップの大きなポイントになるのではないかと思います。ありがとうございました。
 
【渥美委員】よろしくお願いいたします。航空機の場合には、ともかく壊れる場所はそこで壊れるという形での設計をします。ただ、そこで壊れても大きなハザードには至らないというような形で設計をするという設計思想が入りますので、それを宇宙機の中に入れようとすると、今までのロケットのタンクを作っていたからそれは作れるよねというような概念とは違ってくるので、そのあたりはきちっと技術アイテムに入れておくべきではないかと思います。
 
【遠藤主査】そのほか御意見を賜りたいと思います。福島委員お願いします。
 
【福島委員】ありがとうございます。私の方からは、(3)国の役割の4ポツ官需ミッションと民事のミッションの間で、打ち上げ時期等にバッティングが生じた際の調整についてコメントさせていただければと思います。仮にこれから開発するシステムが即応打ち上げにも使える場合ですが、その場合、常に官需を優先するべきかどうかということは分からないのですが、場合によっては官需を優先する必要があると考えています。例えば、笠谷企画官が正におっしゃったとおり、一つは、防災であるとか、あるいは安全保障においては、場合によっては官需を優先するニーズがあるのではないかと考えています。具体的にどういったケースが考えられるのかというと、二つあり得ると思います。 一つはニーズが急に出てきたときでありまして、例えば大きな災害が起きて、それを宇宙から観測するために素早く追加で地球観測衛星を打ち上げるとか、あるいは、通信需要が上がったときに補完するための通信衛星を打ち上げるということが考えられると思います。もう一つの具体的なケースとしては、内閣府を中心に今具体的な取組が進み始めていますが、機能保障、ミッションアシュアランスということで、特にある衛星が何らかの理由で使えなくなった際に代替衛星を素早く打ち上げるといったことが考えられていて、場合によっては官需を優先する必要があると思います。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。稲谷先生、お願いします。
 
【稲谷委員】何度もありがとうございます。先ほどの渥美委員の話と今のお話とも絡むのですが、結局、再使用と言ってもいろいろな再使用があります。1年に1回しか飛ばない再使用もあれば、飛行機のように1回飛んで降りてきたら1時間後にはまた飛ぶというような再使用まであって、後段の方になってくると、即応性は、ある種自動的に満たされてしまう。フライトオンデマンドとかルーチンアクセスとかいうようなところまで行くような再使用もある。
 先日来、申し上げていますし、今日もお話があった最終的なマーケットのゴールイメージは何兆円というマーケットで、非常に大量の人を高頻度で運ぶという世界に必要な再使用というのは、シャトルみたいな再使用でも、ファルコン9のような再使用でもなくて、飛行機に近いようなものを造らなければいけないと私は考えています。
 ゴールに到達するには困難が伴うわけで、その意味で、先ほど来、笠谷さんがおっしゃっているリスクの高い技術開発は国が面倒を見るというような形で役割分担をしていく感じかと思います。再使用と言うときに、ただ繰り返し使えるということだけではなくて、非常に高頻度かつ大量に輸送できる再使用ということをここではゴールにしないと、先ほど来お話ししていたようなマーケットをキャプチャーすることはできないことを認識しておきたいと思って発言させていただきました。以上です。
 
【遠藤主査】さすがに1年に1度の再使用というものはないと思いますので、冒頭でP2Pを目標に掲げている以上は、先生のおっしゃるような再使用の概念だろうと思います。大体それは皆さん同意できるのではないかなと思いますが。
 
【渥美委員】渥美から少しよろしいでしょうか。
 
【遠藤主査】どうぞ。
 
【渥美委員】打ち上げ事業者として、正にこの話は毎度毎度ぶち当たっている話でありまして、官需ミッションと民需ミッションをどういう形で調整するかについては、内閣府にこの調整用のボードを今つくっていただいて、その場で調整をして、民需を優先させた方がいいか、官需を優先させた方がいいかというようなことを決めて打ち上げているという現状です。そこの間では、月単位での調整になりますし、今稲谷さんが言われていたような話というものも、再使用の頻度によって、どれぐらいの期間でリターンできるかによって変わってくるところがあると思います。
 実際に数分単位を争うといったときには、今の飛行機のように運用できれば解決できるでしょうし、数日単位なのか月単位なのかというところで議論をしていけばいいと思います。今のH3も、1か月の間に2機打てるという要求条件が出ていまして、それは別の意味でもう1機持っていないと駄目ですが、そういう打ち上げが可能なロケットにしろということが今のH3の状況ですから、どれぐらいの期間を考えてどれぐらいの時間で打つのかということを具体的に想定した上で議論されるといいかと思います。以上です。
 
【遠藤主査】少なくともミニマムは週単位で、日単位をターンアラウンドの前提とするのではないかなという気がいたしますが。
 津田委員、お願いします。
 
【津田委員】ANAの津田です。民間企業あるいはエアラインの立場から発言させていただきます。民間の役割は何か、民間がどうやったら参画しやすくなるかというお話がありましたが、恐らく民間企業によって得意・不得意な領域が変わってくると思うので、全体のシナリオやロードマップの中で、どういう領域だったら自分たちは入っていけるのか、あるいは興味があるなということがもう少し見えるようにできればいいと思います。
 市場規模のイメージができてきた中で、社会インフラ化していくにはポイントが五つあると思っています。これは飽くまでもエアラインという事業者から見たときのポイントですが、一点目は、当たり前ですが、機体です。機体がないと宇宙に飛んでいかないので、この機体開発にまつわるところが出てきます。安全で快適な機体を造っていくということです。二点目は、「場」が必要で、「ポート」になると思います。つまり「スペースポート」です。たまたまANAがやりたいことが「サブオービタル」や「空中発射」なので、滑走路から飛んでいくイメージで「ポート」と呼んでいますが、場合によっては「射場」になるかもしれません。そういう「場」にまつわる事業者も出てくるかと思います。
 三点目は、ルールが必要で、このルールづくりはどちらかというと民よりは官なのかもしれないですが、官主導の協議体などでルールづくりをしていくことが必要だと考えます。
 四点目はシステムです。システムは、全体のエコシステムみたいなものというよりは、主に管制あるいは運航システムなど、みんな共通して使うようなインフラとして必要なものです。この開発を得意とするような事業者が関われる領域があると思います。
 最後がオペレーションです。エアラインであるANAは正にここを目指しているわけですが、今の一から四点目までのポイントを全部満たしながら、安全な運航をしていくための運航管理・機体整備のような部分も含めたオペレーションをしていく必要があります。これらを手順書、マニュアルに落として、いかに運用や運航の再現性を高めていくかというところがポイントになってきます。
 「機体」、「ポート」、「ルール」、「システム」、「オペレーション」、エアラインの目線から見るとこの五つのポイントがあるので、この中のどこかに関われないかと考えてもらえば、民間企業もどんどん参画してくるのではないかと思います。そういう見せ方も一つありかなと思いました。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。現実に飛行機の運用をされている方の目線というのはクリアで、非常に参考になりますね。そのほかございますか。
 
【笠谷企画官(事務局)】すみません、文部科学省事務局でございます。発言してよろしいでしょうか。
 
【遠藤主査】どうぞ。
 
【笠谷企画官(事務局)】今ANAの津田委員から御発言いただいたのですが、正にオペレーターであるANA様から見て、ANAの戦略とかに関わってお話が難しかったらそれは構わないのですが、仮にもしANA様がこのP2Pをオペレーターとして参画されるとなった場合、例えば機体の開発とかが、先ほどオペレーションも含めて5点ということで、この5点がある程度進んでいないと駄目だとは思うのですが、機体の開発がどの程度見えてきたらANAは商売として考え始められるのでしょうか。
 例えば試験機が飛ぶ段階であるとか、ルールが制定されたとかいろいろあるので、もしかしたらそれが全部そろわないと駄目なのかもしれませんが、特に機体開発の面でどこぐらいまで来たら、民間企業様、特にオペレーションを考える民間企業様として何かこの分野で考えてみようと思われるのでしょうか。個別の話なのでお答えが難しかったら構いませんが、もしあれば御知見を御教示いただければ幸いでございます。
 
【遠藤主査】津田委員、いかがでしょうか。
 
【津田委員】参考になるかどうか分からないですが、考えているか考えていないかというと、現時点でも考えています。確かに機体はまだ開発フェーズなので、それがどうなっていくかによりますが。
 例えばANAは、以前にこの会で緒川社長が説明されたPDエアロスペースに出資をして、整備士も派遣をして機体開発をしており、私も取締役をさせていただいています。PDエアロスペースは、今はまだまだ機体開発の比較的初期段階のフェーズですが、無人の状態で遠隔リモート操縦する試験をしています。これを成功させたら、今度は無人機を100キロメートル圏まで到達させる。その後に、まだ商用ベースではないですが、今度は有人での飛行テストで宇宙空間に到達させていこうとしています。このように段階を踏みながら進めていこうとしており、その段階ごとに実現性が増していくので、仲間をどんどん増えていくのかなと思います。例えばサブオービタル機であれば、現時点でのロードマップを幾つかのステップやフェーズに分けた絵が描けていれば、いろいろな事業者が集まりやすいと考えます。ANAは初期から関わっているので、正に昨日も議論をしていたのですが、運用フェーズになったら、どういう値段で売ればいいのかとか、どういう顧客の集め方をすればいいのかというところも少し議論を始めています。
 ほかの事業者の参画を促すためには、実際に100キロメートル圏に機体が到達するのを目で見れば、宇宙輸送も大分現実味を帯びてくるので、そういう一つ一つステージをクリアするような見せ方もありかなと思います。そういう意味では、先ほど出ていたコンペ形式みたいなものもありですね。もともとXPRIZEがコンテストをやって、2週間以内に2回高度100キロメートル圏に到達するというミッションをクリアした優勝者があらわれたという経緯もあります。たまたま御縁があり、直接宇宙とは関係ないですが、遠隔操作型分身ロボットのアバターに関して、XPRIZEのコンペの中から優れた技術が出てくることを期待して、ANAがXPRIZEの冠スポンサーになっていますので、コンペ形式みたいなやり方もありかなと思います。
 用意できていなかったので、お答えになったかどうか。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 
【笠谷企画官(事務局)】文科省でございます。急な質問に対して、ありがとうございます。正に先ほどコンペ方式というのを我々も提案させていただきました。また、今、津田委員から話されましたように、ロケットメーカー様においても実績等、いろいろと状況があるかと思うのですが、コンペによって成功したということ、取りあえずそれが一つ実績になるということもありますので、オペレーター様とか、銀行様とか、ベンチャーキャピタル様とかにその結果お金を出してもらったり、オペレーター様に参画を考えてもらったりという一つの契機になるのかなと思います。津田委員ありがとうございました。
 
【遠藤主査】皆様まだ御意見があるのではないかと思いますが、一つ、今日は事務局サイドから課題として四つのポイントを上げさせていただいて、これまで御意見を賜ってきましたけれど、この四つのポイント以外に議論すべきポイントがあるという御意見ありましたら是非伺っておきたいのですが、ございますか。稲谷先生、お願いします。
 
【稲谷委員】冒頭に近いところで私が申し上げた点なのですが、有人のロケットか何か宇宙に出かけるものを造るというときに、制度整備とか、国が補助を出すとかいう議論があったのですが、そういう環境をつくったら、それを有人、人を乗せて飛ばす責任を民間事業者が全て負って、ルールにのっとっていれば国が許可を出すというシステム/制度をつくるだけでよいのか。あるいは、それをプロモートするために、民間だけに全部責任をかぶせる、あるいは責任を持ってやってもらうということでよいのか、そこに国が何かもう少し関与して一緒にやるみたいな点が、これから本当に事業をやるとすると大事な議論になってくるかという気がします。冒頭の発言はそういう意味で申し上げたものです。したがって制度整備をするとか、国が何か資金的な補助をするとかいう以上に、有人機を飛ばすという責任を民間に全部取らせるのか、国が何かもう少し責任を分担するのか。この責任分担というものがあるのかどうか分かりませんが、そこら辺を議論したいと思っていて、その点について皆さんどう思われるかも含めて議論していただければと思います。
 
【遠藤主査】恐らく、当然のことながら、人命に関わるような安全については航空機等と同様に国の認証が必要、認可が必要ということになると思うのですね。それでは具体的にどんな認証制度にするかということは、アメリカの例もあるのですが、ここの場ではなくて、それはそれだけを専門に議論するような大きな場が必要になるのではないかと思います。ここの場でどこまでそれを議論するかということは、また別途議論を整理させていただきたいと思います。重要な問題ですので。
 
【稲谷委員】この場で答えというよりも、そういうものがないと、なかなか民間だけでやれと言っても制度を整備するだけでは動かないのではないかということです。何か民間がやりやすくする仕掛けをどうつくるかという文脈かと思っています。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。
 
【遠藤主査】どうぞ。
 
【笠谷企画官(事務局)】今、稲谷先生がおっしゃったように、仮に民間が主体的にリスクを取って実証をやるのだという話になったとしても、遠藤主査が言われたように、正に国としては、法規制ですとか、安全審査ということの責任は少なくとも生じてくると思います。そして、これは少し私の意見でございますが、やはり国民の感情とかを考えたときに、民間だけがやって国が全く関与していないということは考えにくいのかなと思っておりまして、国がどう関与するかとか、これをやる場合に国がどういうふうに支援するかとか、共にやる体制をつくるかということについて、まさしく議論が必要なところかと思います。 当然P2Pをやるとなれば有人飛行ということになりますので、日本で有人飛行をどうやっていくかという話、それをどのように支援していくかという話は、遠藤主査が申し上げたように、議論を整理していく必要があるのではないかと我々も認識しております。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 それでは、時間も押してきましたが、あと2名の方から御意見賜りたいと思います。渥美委員、お願いします。
 
【渥美委員】今の関係の話と、それから牧野さんが先ほど言われていたTRLのレベルの話と二つあるのですが、航空機で機体を製造しているメーカーの観点からいくと、技術レベルがどの程度まで上がっているかが投資して事業を回すことを考えるときには重要になるので、TRLのレベルが6、7ぐらいのところまでは国が引っ張っていくというのでしたら、そのための指針が必要だということが1点。
 それから、今議論がありました「認定」に関わる制度の中で、日本の中に航空機そのものをこういう条件であれば飛ばしてよろしいということを認定する組織をつくる意思があるかどうかという話が極めて重要だと思っています。航空機の場合には部分的な話で、ボーイングなどに納めているものは、基本的には米国のルールに基づいて物を造っているだけで、向こうのレギュレーションを変えられると、日本で勝手にというか、こういう形で技術開発して新しくなったのでそれを適用しましょうと言っても、なかなか認めてもらえません。
 このレギュレーションに関する話というのは、バーゲニングパワーにものすごく大きな影響を与えるので、レギュレーションに日本の意思があるのであれば、ちゃんと国の中にそういうものをつくり上げるという話が重要だと思います。それを他国に依存してしまうことでバーゲニングパワーを失うということを、航空機の話に関わっている方々は大体みんな知っていると思いますので、その轍(てつ)を踏まないようにするためには、例えばJAXAが認証すればそれが国際的に認められるというような形のレベルにまで上げていくことが重要だろうと思います。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 
【渥美委員】牧野さん、補足があればよろしくお願いします。
 
【遠藤主査】牧野さん、最後になりましたけれど、お願いします。
 
【牧野委員】はい。渥美さんのおっしゃっているパターンで、先ほど、専門家の会議体というか、どんな技術を国がリードして引っ張らなければいけないかを述べました。自立性確保で、国は引き続き技術の必要があると思ったときにそれはどんな技術だということを議論する組織設計ということが、多分本日の1から4の論点には抜けているので、その組織設計みたいな話をすべきだと思います。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 そろそろ時間になりますので、まだ御意見あると思いますが、今日のところはこれでまとめたいと思います。
 大変重要なポイントですので、今日の議論の御意見、こういうポイントが重要ではないかというようなことも含めて、事務局の方で次回に御提案いただければ有り難いと思います。それで、これまでの議論を踏まえて、次回は中間まとめ案を事務局の方で整理をお願いします。それにもなるべく皆さんの意見を反映させたいと思いますので、御意見があればメール等で事務局へ提案いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から連絡事項等があったらお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。委員の皆様、御議論をありがとうございます。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は公開となります。資料については既に文科省のホームページに掲載させていただいております。また、議事録についても公開となりますので、委員の皆様に御確認いただいた後、文科省のホームページに掲載させていただきます。よろしくお願いいたします。以上となります。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は終了とさせていただきます。これで閉会とします。ありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。
 

―― 了 ――

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