革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会(第6回) 議事録

1.日時

令和3年3月3日(水曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 革新的将来宇宙輸送システムロードマップ検討会の議論の整理と検討の進め方
  2. 革新的将来宇宙輸送システム案について
  3. その他

4.出席者

委員

遠藤 守 【主査】
青木 一彦
渥美 正博
石田 真康
稲谷 芳文
大貫 美鈴
小川 厚
新谷 美保子
竹森 祐樹
津田 佳明
中須賀 真一
永田 晴紀
福島 康仁
牧野 隆
武者 智宏

文部科学省

研究開発局長  生川 浩史
大臣官房審議官  長野 裕子
宇宙開発利用課課長  福井 俊英
宇宙開発利用課企画官  笠谷 圭吾
宇宙開発利用課課長補佐  渡邉 真人
宇宙開発利用課課長補佐  岡屋 俊一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事  張替 正敏
 研究開発部門
  第四研究ユニット ユニット長  沖田 耕一

5.議事録

【遠藤主査】皆さん、こんにちは。遠藤です。ただ今から文科省の革新的宇宙輸送システムロードマップ検討会の第6回会合を開催させていただきます。委員の皆さんには御多忙のところ、たくさんの方にお集まりいただき誠にありがとうございます。それでは、まず事務局から本日の会議に関する確認事項等をお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。本日は「革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会」に御所属いただいている16名の委員のうち15名の委員に御出席いただく予定でございます。
 次に本日の資料ですが、お手元の議事次第4ポツのとおりです。オンライン状況について音声がつながらない等の問題等がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。オンラインシステムの運用上の注意事項等は、事前送付いたしました運用の手引を御参照ください。事務連絡は以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。それでは、議事次第のとおりに、最初の議題に入りたいと思います。議題は御覧いただいていますように、「革新的将来宇宙輸送システムロードマップ検討会の議論の整理と検討の進め方」ということでございます。
 これは、これまで皆さんに5回のロードマップ検討会で御意見等を頂いております。この内容を事務局において、まず整理をしていただきました。それと、本日の議論及びその後の議論の進め方に関する提案についても用意をしておりますので、これをまずお聞きいただきまして御意見を賜りたいと思います。それでは、事務局、お願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。
(資料6-1について説明)
 
【遠藤主査】ありがとうございます。それでは、今御説明いただいた内容について、取りあえず今の段階では御質問があればお受けしたいと思いますが、どなたか御質問がある方は挙手をお願いいたします。渥美委員、お願いします。
 
【渥美委員】渥美です。この3項目目で出された試算のところで、結局日本の中で達成しようと思っているのは、世界で10兆円だとすると日本の中では幾らの規模だということになるのでしょうか。
 
【笠谷企画官(事務局)】そこは非常に難しい議論なのですが、これは世界全体では10兆円というところはあります。それで、日本がどれぐらい取るかというところは正直言っていろいろ議論があるのかなと思うのですが、例えば10%か30%かによっても相当金額も違ってきますし、また打ち上げ回数でいっても結構違ってきます。ただ、直近日本は例えば2019年ですと、世界全体では102回ぐらい打ち上げはあったのですが、日本の打ち上げ回数は数回ぐらいしかありませんでした。
 もちろん2019年以降どんどんキャッチアップというか、どんどん追い付け、追い越せでやっていくので、2019年と現状の比率が同じというところはありませんが、日本のシェアで例えば10%ぐらいを目指すのか、それとも高く30%を目標にするのかというところは、なかなか御議論があると思います。したがいまして、事務局として、申し上げありませんが日本として何%取るのだというところまでは本日は御提示ができておりません。
 
【遠藤主査】よろしいでしょうか。
 
【渥美委員】分かりました。
 
【遠藤主査】希望的数値は言えても、なかなか現実は難しいかと思いますが。
 それでは、もうお一方手を挙げておられたような気がしましたが、福島委員、お願いします。
 
【福島委員】ありがとうございます。2点質問したいのですが、一つは3ページ目の「深宇宙」については「月・火星経済圏」というふうに書いてあると思うのですが、9ページの方では「商業月経済圏」というふうに月に絞って今回試算をされていると思うのです。なかなかこれは難しいところがあるとは思うのですが、月より遠い深宇宙を2040年代としてどういうふうな利用を想定するのかということを少しお伺いできればと思います。
 というのは、そもそも月の開発・利用がどのくらい進むのかということを考える際にも、中継基地としての役割が大きいとすれば、やはり月よりも遠い深宇宙の開発・利用がどういうふうになるのかということをある程度考えないと、月の開発・利用の規模ということも実際には出てこないのではないかというふうに思いますので伺います。
 もう一つは、抜本的低コスト化ということが深宇宙にも関わってくるのかどうかということで、関わってくると想定するべきなのかどうかということもお伺いできればというふうに思います。
 
【笠谷企画官(事務局)】月は正にispaceの袴田さんのプレゼン等により、この間我々が理解しているところは、月を更なる深宇宙を目指すための中継基地としても使うという話もありますし、また月自体で価値があるということで月にも相当の人数の方が定住して開発を進めていくという話もあります。
 そういう中で、確かに2040年頃に火星というか、深宇宙・火星にどの程度の民間の市場があるかというところまでは、我々としては情報を持ち合わせていないところでございます。また、官需ミッションについては、もちろんアメリカのアルテミス計画というのは月だけではなくて、更にその遠い所を目指すということはあるのですが、まだそこについても具体的に火星についてはどうだというところまでは想定が明らかになっておりませんので、火星とか深宇宙についての経済規模というところもお示しできない状況です。
 正直、月にしましても、20年後に輸送だけで2兆円ということは、これの数十倍の月自体に価値というか、月を利用したサービスとか月を利用した開発等でそれ自体の価値があるということでございますので、それは単純に1,000人ということを考えると、1,000人で数十兆円のGDPというのは相当高いということになります。それ自体も結構チャレンジングな目標だとは思っておりますので、正直深宇宙とか火星とかその先まで経済的な試算というのは残念ながら持ち合わせてはおりません。
 また抜本的低コスト化というところに深宇宙という所がかかるのかというところですが、それはかかります。文部科学省といたしましては、冒頭に抜本的低コスト化のロケットを造る目標として、やはり国としての自立性ということを考えさせていただきました。もちろん民間の需要でもろもろのサービスが展開されるために必要だというところもありますが、国としては例えば防災ですとか、正に福島さんの御専門である安全保障ですとか、そういうようなところを含めて、官としても必要な分野はあります。
 当然、深宇宙というのは、もちろん今後経済的な発展というのを伴いますが、官のミッションとして、それは国際協力的なものもあるかもしれませんし、日本独自に「はやぶさ2」の更に応用・発展みたいな形であるかもしれませんが、それはもろもろあると思います。引き続きそういうところにも自立的に日本としてちゃんと打ち上げ手段を持っているということが大事でございますので、深宇宙という所にも抜本的低コスト化というのはかかっていきます。少し答えに不十分なところはありますが、取りあえず以上でございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。なかなか答えが難しいところでございます。まだ御質問があるかもしれませんが、先へ進めさせていただいて、また後ほどお受けしたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、2番目の議題に入りたいと思います。2番目の議題は「革新的将来宇宙輸送システム案について」ということですが、先ほど事務局からいろいろな想定、仮定を含めて、規模の予想をさせていただきましたが、そのような状況の中で将来の宇宙利用ニーズを満足できるような革新的な将来宇宙輸送システムというものはどういうものであるべきかという、システムとしての要件は何かとか、あるいはシステムを実現する上でのプロセスで必要なこと、あるいは重要なポイントは何かというようなことについて、今後議論を進めさせていただきたいと思っております。
 それを始めるに当たって、先ほど事務局からも御紹介がありましたが、JAXAがこれまで検討している内容の中から、参考例としてシステム案等について紹介を頂きます。そういうものも踏まえながら、この後議論を進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。それでは、JAXAの沖田第四研究ユニット長から御説明をお願いいたします。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】沖田でございます。先ほど遠藤主査、それから笠谷企画官の方からお話があったとおり、JAXAの方で準備しているものは議論のための参考例でございます。今後ロードマップ検討会の委員の議論を基に更に検討を進めていくものですが、きょうは本日の議論のために準備したものでございます。
(資料6-2について説明)
 
【遠藤主査】ありがとうございます。ここからは先ほど申し上げましたように、委員の皆さまで御議論をお願いしたいと思っております。ポイントとしてお願いしたいのは、システムの形態を決める考え方、要件といいますか、今も幾つかメリット・デメリット等々出ておりましたけれども、幾つかの形態を選択するのか、あるいは官需と民需との関係とか役割分担、そういうことも含めて、今後の実現に向けたプロセス、そしてシステムを選ぶ上での要件は何かというようなこと、そして今もJAXAからありましたが、抜本的低コストというのも大きな命題でございますので、これについての御意見とその他ということでお願いをしたいと思います。
 それと、2040年を目標の議論を進めるわけですが、やはり私は2030年の中間段階のポイントで留意すべき点というようなことも併せて御議論いただけるといいかなと思っておりますのでよろしくお願いします。
 それでは、御意見のある方は挙手をお願いしたいのですが、まず永田先生、手が挙がっておりますのでお願いします。
 
【永田委員】まず、簡単に確認させていただきたいのですけれども、5ページ目でメリット・デメリットが出ている中で、システムAでは「射点が限定的」とあったのですが、これは既存の飛行場がシステムBみたいに使えないという意味なのでしょうか。
 
【遠藤主査】沖田さん、いかがですか。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】システムAでは、今の既存の飛行場という意味では保安距離等の問題もございますので、すぐには使えるものではないというふうに考えてございます。
 
【永田委員】システムBでは、それが使えるということですね。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】使えることを考えてございますが、これも滑走路等の制約がございますので、そういったところを踏まえながら、最終的には検討する必要があるかと思います。
 
【永田委員】ありがとうございます。ということは、システムCも射点が限定的というのが入るということでしょうか。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】おっしゃるとおりでございます。
 
【永田委員】ありがとうございます。それで、意見ですけれども、どのシステムがいいのかということを検討する上で、特に有人の場合は前回もアボート飛行のノウハウを獲得することが大事だということを申し上げましたが、アボート飛行のやりやすさということがシステムによって全然違いますので、それをメリット・デメリットで是非検討要素に入れる必要があると思います。
 あと、それからもう一つ、アボート飛行が可能になって何か不具合が起こっても射場に戻ってくることができるということは、不具合を起こした機体を回収することができるという意味ですので、技術を成熟させる上で非常に重要です。ですので、何か不具合が起こっても戻ってきやすいかどうかということは、特に初期の開発段階においては重視すべきではないかなというふうに思います。以上です。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】ありがとうございます。
 
【遠藤主査】青木委員、お願いします。
 
【青木委員】ありがとうございます。リファレンスシステムを3つ提示していただきましたけれども、これを選ぶ考え方が先ほど御指摘もありましたが、私ももう一つ違う視点をお伝えしたいなと思いました。というのは、先ほどの市場規模の議論10兆円というのは、絶対値はともかくとして、10兆円のうち5兆円がP2Pであるという考え方がもし本当にリアリスティックだとすると、そこを追求するためのシステムを開発のロードマップの主眼として、要は開発の注力要素として考えるべきなのだというふうに思います。ですから、要は市場予測の中で、どれが確からしいと思えているのかによって、このリファレンスシステムをどれにするのか、あるいはどちらに注力を置いていくのかというのを決めるべきだと思います。
 私の個人的な感覚からいくと、実は先ほどの10兆円のうち、5兆円のP2Pというのは、本当にそんなにあるだろうかというのが正直なところです。要するに、航空機の需要の置き換えということが、そんなに積極的に起こるだろうか。ニーズとしては必ずあると思うのですけれども、要はロケットを使って移動するというようなニーズのお客さまというのは、かなりハイエンドな方々に限定されるかなと思いますので、市場規模としてそんなに大きくはならないのではないかなというのが私の感触です。したがって、開発のロードマップの中でもどちらに主眼を置くかというと、リファレンスシステムBよりもAに近いのではないかな、そしてAからCへの派生があった方がいいのではないかなというふうには感じました。私からは以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。やはり市場規模を考慮した選択というところが重要だろうなと思いました。それでは、稲谷先生、お願いします。
 
【稲谷委員】最初に、前回の議論で私と渥美委員との会話で、目標にすべき年間売上げの規模はどれぐらいだという議論で、10兆円とかいうことを目標にするのがよいのではないかという議論になって、半ば気楽に言ったところもあるのですが、前段の文科省の笠谷さんに御説明いただいた内容はかなり緻密に検討していただいて、10兆円に反応していただいて大変有り難いと思っています。
 一方で、私が前回少しお話しさせていただいた内容も大体同じような規模で、P2Pと私の場合は地球周回の宇宙旅行というのもマーケットがあるということでありましたけれども、それの規模感というのを象徴的な数字で言うと、年間輸送人数100万人。それは先ほどの笠谷さんのお示しになった大陸間旅行の乗客の1%とか10%がそれを希望する、そういうところでマーケットがあるということになります。それから、軌道周回の宇宙旅行も年間100万人というような根拠をつくることができます。したがって、年間100万人を運ぶということからすると、それは365で割れば1日に3,000人確保ということです。それは例えば飛行機の輸送で言うと、地方にある中程度の空港における1日の輸送量に極めて近いと、そんなこともこの間お話をしました。
 とはいうものの、やはりそういう大量の人数を運ぶということは、例えば今ある機体があって、この機体を1日何度も繰り返し運行することが前提になります・・・・・(音声不調のため一旦発言保留)
 
【遠藤主査】牧野委員、お願いします。
 
【牧野委員】事務局の方で配布した第1回の資料の長期ビジョンは出せますか。JAXAの今の資料はどの形態がいいかという議論ではないと理解してしゃべりますが、この資料は7年前に内閣府での委員会で議論したときに、どういうふうに進めていくかということを議論して書いた表になっていて、多分大事なことは2040年ぐらいの実機のところは国際協業になっているということです。
 例えば、今旅客機がボーイングとエアバスのほぼ2社で独占的にやっているというような状況を含めて、そこに行く道筋でということで、先ほど遠藤さんがおっしゃった2030年ぐらいというのは、実証機から試験機に行くようなところなのです。航空機の運航事業者もそうかもしれませんが、ある種のシステムで成り立っているものという意味で、要素研究だけではなくて、例えばここで言っていたのは実験機ということで物を飛ばしながら、研究課題に技術の要求を戻しながらやっていかなきゃいけないですよねというのが普通のやり方のはずなのです。
 そういう意味で、このときも言っていたのは、まず沖田さんの資料で言うと、AとB、1番と2番でというふうなことをイメージしながら実験機をやりつつ、少しずつ決めていきましょうということ。上の吹き出しにも書かれていますが、実験機から実証機に行く段階ぐらいで、どういう機体システムがいいかということを1回決めて、次に先ほどの空気を吸いながら行くか、宇宙にロケットのように上に上がるかというような選択をすることなのですが、こういうことを決めながらやっていこうということです。
 大事なことは、「国際協業」である種の大きなシステムを作ろうというときに、とんがった技術を国内に作っていくという意味で、この左側に書かれているのは国際協業の実用機開発という前に国内プロジェクトとして「実験機」、「実証機」として進めていってはいかがでしょうかということを当時も言いましたし、今回も言わせていただいて、また無視されるかもしれませんが、こういうことが大事だと思っております。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。大変重要な視点だと思います。
 その他、御意見がありましたら挙手をお願いいたします。稲谷先生は入り直されましたかね。それでは、稲谷先生、もう一度お願いします。
 
【稲谷委員】マーケットから決まる要求というのと、それを満たすようなシステムを考えるという順番で物を考えようということをいいたかったのです。あの10兆円のマーケットからスタートすると、年間に運ばれる人数とか目標が決まってきて、飛行機のようにぐるぐる回転する図式を作らない限り、時々飛ぶロケットとか何十日に1回しか飛ばないロケットとかいうようなものではその要求に整合しないので、そこの要求をまず議論するということをやったらどうかということが私の思うところです。
10兆円のマーケットとイコールかどうか分かりませんが、年間予想100万人とかいう規模の輸送をやるとすると、機体に対する要求はこういうことになると思います。これを実現するにはどうすればいいかという順番で物は考えたらどうかということが申し上げたいことで、今機体はこういうものが考えられるけれどもというところから出発するのも一つの考えで、それは沖田さんが先ほど説明されたと思いますが、マーケットから要求を決めていくという順番で物を考えたらどうかというのがこの話なので、そこをどういうふうにやるか、たたき台ですが、皆さんで議論していただけたらと、そういうふうに思います。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。青木委員からも先ほどありましたし、稲谷先生からも今御意見がありましたように、市場というか、需要をよく理解した上でどういうシステム、どういう要件が必要かという順序、プロセスではないかという、非常に重要なポイントではないかと私も思います。
 その他、御意見があれば挙手をお願いいたします。渥美委員、お願いします。
 
【渥美委員】渥美です。やはり今のところが重要な話になって、1回目のときからこの辺りでどのぐらいのマーケットのサイズにして、この辺りを発展させていくのかという議論だったと思うのです。そこのところの話が先ほどのP2Pで大体日本で取るのが1,000億円というふうに決めた段階でまずその辺りにしか成長しないことになりますし、結局ここの精査だとか、どういう世界に出ていきますかという議論が先にないといけないのかなと思います。
 前回の議論のときにまた組合の話があったのですが、その組合の話と今回の国の役割に関する話とが少し合っていないのかなと思います。それから、最後に沖田さんが説明されていた中身が、今稲谷さんが言われたように、マーケットの視点と合っていないのではないかと思います。これは何回目かのときに申し上げましたけれども、両方のスコープで見ていったときに、どことどこに行く場所があるのかというのをまずいったん整理しましょうということになっていたと思うので、その整理をすべきだと思います。それが一点です。
 それから、一つJAXAの資料の中で確認をしたいのですけれども、システムBのこの能力がSSOで350キログラム(TBD)というふうに書いてあったと思うのですが、これは間違いないですかね。トライスターを使っていたペガサスがLEOで443キログラムだったはずなので、今出している数値としては、だから、これは航空機で十分にできるぐらいの打ち上げ能力ではないかなというふうに思うのですけれども、この数値は間違っていませんか。
 
【遠藤主査】確かに。沖田さん、いかがですか。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】これは結構スモールな機体を想定しているので、機体サイズによってこの打ち上げ能力も大幅に変わっていくことになります。
 
【渥美委員】機体サイズが、だから、大分小さいということですね。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】そのとおりです。
 
【渥美委員】分かりました。そうだとすると、先ほどのP2Pで人を何名ぐらいどういうふうにして輸送するというところの話とは少し合わないので、規模サイズでどれぐらいになるのかという話をどこかに入れておかないと分からなくなるのではないかなと思うのですが。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】それについては今後引き続き検討していきます。今回は議論のための資料なので皆さんの御意見を伺った上で再度JAXAの中で検討してまいりたいと思います。
 
【渥美委員】分かりました。全体的な話として、P2Pのような形の大きなマーケットのところにやはりファンドはあるよねということがあって、人が関わるところに大きな費用が動いているよねと、そこに魅力があることが、市場を取るだとか産業化するだとかという点では重要なドライバーになるので、その辺りをやるとするとどういうようなシステムになるのかという観点で一度考えていただけたらと思います。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。今後またこのリファレンスシステムの議論も更に必要になってくると思いますので、この表ですと、現在検討されたものの範囲の中でいろいろレベルの違うものが載っているというふうに私は理解したのですが、もう少しレベルを合わせたときにはどういうシステムになるのかというようなところも是非御検討をお願いしたいと思います。JAXAさんへの要望です。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】はい。承知しました。
 
【遠藤主査】その他ございますか。
 
【渥美委員】すみません。もう一点だけ。システムCにおいて有人で飛ばそうとすると、上段の方にお客さんを乗せたときには、上段にお客さんが乗って垂直に飛ぶ、いわゆる今の打ち上げと似たような感じの姿勢で飛んでいかないといけないので、大分姿勢としてはつらいかもしれない。お客さん目線から見ると、サービス上使うには少し難しいかもしれないなという感想です。以上です。
 
【遠藤主査】その他、ありますでしょうか。御意見のある方は挙手をお願いします。武者委員、お願いします。
 
【武者委員】ありがとうございます。今回準備いただいた特に文科省さんの資料のところで、市場イメージはかなり御苦労されて作ったのだと思うのですが、イメージを持つことができて良かったと思います。
 皆さん御議論いただいているように、P2Pのところで5兆円、これが本当にあるのかどうかということは非常に議論しないといけないところだと思うのですが、これは私個人だけかもしれないですが、肌感覚として、先ほど青木委員がおっしゃっていましたが、今までのエアライン、旅客の需要とコロナを経た上での、あるいは、これから技術が発展していく上での人流はまた違ってくるのかなと。我々も普通の業務として人流と物流を両方扱っているのですが、人流の将来性を考える上で非常に悩みながら考えているところです。
 多分P2Pに関しても同じようなことが当てはまってきていて、私自身も海外出張は年間30回ぐらいしていたのですが、コロナの影響でこの1年間ゼロ、それからポストコロナになっても多分そこには戻らないだろうなというようなことを感じています。
 このP2Pの市場は、当然大きい市場であるので、これに対するアプローチを物流と同じ時間軸あるいはマイルストーンあるいは同じシステムでやっていくのがいいのかなということは、私自身は今までの皆さんのお話を聞いて疑問に感じております。もしかしたら、システムを分けて、あるいは時間軸も変えてやっていった方がいいのかなと思います。当然コスト低減の施策の中で分けることでデメリットも出てくるのですが、人と物とを一緒に扱わない方がいいのではないかというのが感じている印象です。
 加えて、物流のところは、人流もそうかもしれないですが、SpaceXというジャイアントを始め、既存の人たちがかなりコスト面でも先行している中、我々としてこの周回遅れ、2周、3周遅れというところを認識した上で、どうコストを低減していくのかはかなり重い課題だと思うのですね。ここは、そういう意味では、目的を絞ってコスト面だけではないところでの競争力も高めていくことでビジネスとして勝っていくのかなと、そういうことをやっていかないと駄目なのかなという気もしております。
 最後にもう一点だけ。地上からの物を打ち上げる、人を運ぶということはあるのでしょうが、以前永田先生もおっしゃったように、地球の周回軌道から今度は月とか深宇宙に行くインスペースの話ですね。こうしたところは、まだ他にも競合者が少なくて、今までの日本で培った技術とかをしっかり活用しながら新たな事業というものを生み出せるチャンスが残されているところかなと少し感じておりまして、こういうところでの戦い方というか、市場をつかむということを何とかできないかなということを考えたらどうかなという気がしております。以上でございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。その他、ございますか。永田先生、どうぞ。
 
【永田委員】今の御意見は非常に賛成です。というか、自分で発言しておきながら、きょうそこに頭が回っていなかったのですが、そこの観点も非常に重要だと改めて今思いました。というのは、地球周回軌道に行った後に、そこから先につなぎやすいのか、つなぎにくいのかということは、月以遠を考えたときに非常に重要になると思いますので、それを考えるとだんだん完全再使用が必ずしもいいとは限らないという話にもなります。むしろ重たい1段目を戻して、2段目を身軽にして地球周回軌道から更にその先につなぎやすいようにするという、そういう発展性も考えられますので、まず地球周回軌道に行って、その後深宇宙に行くのだということを見据えた上での検討というものがやはり必要かなというふうに思いました。以上です。
 
【遠藤主査】私も少し意見を言わせていただくと、深宇宙、いわゆる月・火星、月・惑星という観点と地球周回という観点を別々に考えるのではなくて、システムとしては全く同じというわけにはいかないのかもしれないのですが、今永田先生が言われたように、つなぎやすいといいますか、うまくモジュールを組み合わせることによって何か両方に使えるという、そういう技術的な共通性みたいなものを、共用性みたいなものをうまく考えることによって両方をうまく達成できないのかなと思います。それはまた技術的にはいろいろ議論があるところだと思うのですが、今後の議論にそういう視点も加えていきたいと思います。
 永田先生、ありがとうございました。それでは、その他の方。新谷委員、お願いします。
 
【新谷委員】ありがとうございます。沖田さんにお伺いしたい点があるのですが、よろしいでしょうか。プレゼン資料の5ページ目ですが、システム形態の特徴というところで、私は皆さまのように技術のことはよく分からないのですが、お伺いしたいこととして、まずシステムBのデメリットですが、サイズの話が先ほど出ていたので、それによって違うとは思うのですが、長距離の発着場が必要になると書いてあるのですが、これはどれぐらいを長距離というふうに思われているでしょうか。3,000メートルあれば十分なのかどうかというところをお伺いしたいです。
 それとあと、航空分野との融合が必要ということはきっとそうだと思いますが、これはレギュレーションの観点でも航空分野とのすみ分けが必要なところで、正に整理をしようと御努力しているところだと理解しています。技術分野ではこの融合ということがデメリットで、赤字で書かれるぐらいに難しいことなのかどうかということが、少し感覚として理解ができておりません。その点、この視点での質問ですが、お伺いできればと思います。よろしくお願いします。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】まず、一つ目の答えですけれども、これはやはり機体のサイズによって大幅に変わりまして、3,000メートルから5,000メートル、そういったところになる可能性もありますし、着陸システムによっては短縮化も図れる可能性がありますが、まだ引き続き検討しているところなので、そういった観点も含めて、今後お答えできるようにしたいと思います。
 2つ目の質問ですが、ここでデメリットと言っているのは、主要技術(エンジン・熱構造)の技術成熟度が低いといったところでございまして、こういったことを解決するに当たって、航空分野との融合が必要不可欠というふうに記述しております。お答えになっているでしょうか。
【新谷委員】それがとても難しいとか、現時点で成熟度が低いというだけで、誰かが努力すると克服できるのか、かなり実現できない可能性があるというような技術のレベルなのかというところですが、どうでしょうか。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】現在、世界的に見てもなかなかきっちり実現できていると言っている所はございませんので、正にリーディングエッジになる技術というふうに考えてございます。
 
【新谷委員】まだかなり難しい部分があるということですか。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】はい。おっしゃる折です。
 
【新谷委員】分かりました。ありがとうございます。
 
【遠藤主査】新谷委員、ありがとうございました。それでは、その他の方。
 
【笠谷企画官(事務局)】遠藤主査、すみません。少し一点事務局からよろしいでしょうか。
 
【遠藤主査】どうぞ。
 
【笠谷企画官(事務局)】事務局から質問というわけではないのですが、先ほど渥美委員の御発言の中でどこのポイントに行くか、そういうことを明らかにした方がいいということをおっしゃっていたかと思うのですが、これはP2Pで行くべき主要な点というか、そういうものを明らかにすべきというか、それをどういう点かというのを少しもう一度渥美委員から御教示いただければと思います。すみません。
 
【渥美委員】渥美です。申し上げましたのは、例えば「P2Pに行きます」と簡単に言っても、恐らく「P2Pにはそう簡単に今行けません」というような技術上の課題があるという感覚で恐らく沖田さんも回答されたと思うのですが、それとロケットのようなタイプでやっていくようなもの、どのポイントの所で技術的な開発を行いながら、ある程度の収益を上げられるか、つまり収益を上げつつ、技術開発をしつつ、そのポイントから最終的なターゲットのところのポイントに移っていくという、その時間とともに恐らく目標を少しずつ変えながら進めていかなければいけないような話に最終的にはなるのではないかなという感覚があります。先ほど言ったような技術的な観点でどこを狙うことがまずメリットがあるかという点です。
 それから、マーケットサイズを大きくしていくという点で、どういった所を狙っていった方がいいかという話を考えていくということが、何らかの道筋をつけていくには重要ではないかということで申し上げました。
 
【笠谷企画官(事務局)】ありがとうございます。つまり、最終的な完成品といいますか、このシステムA、B、C別にいずれの形でもいいし、その他でもいいのですが、最終的な完成品になる前までの段階でも、部分、部分のどこに技術の踊り場ではないのですが、一定の到達点があるのか分かりませんが、一定の到達点、この到達点でもちゃんとやれるというか、そこで収益化もしつつ、最終的なものを目指していくというか、そういう対応をすることでございますかね。最後の瞬間まで全く収益もないようなものでやると、「なかなか企業としてそれは難しい」ということでございますよね。
 したがいまして、途中でまた市場とかも時系列に伴った発展もあるだろうから、そういうところも考慮して、あと技術的な段階のスピードで、途中で稼げるような、そういうことも考えながらやっていくとか、そういうこともちゃんと考えてシステムの選定を考えなきゃいけない。そうしたことでございますか。そういうことでいいでしょうか。
 
【渥美委員】はい。収益的には今おっしゃったとおりのところもありますし、技術的にも完全に見えていないところにいろいろとチャレンジしていくのに、例えばロケットで打ち上げることで何か試験ができるようなことがあるのであれば、その試験をやっていけばいいだろうし、そこで実証ができると技術のレベルとしてどのような形で上がってきますかというような観点での見方も当然あります。最初に牧野さんが言われていた2013年の検討時にいろいろな要素試験的な話から始まって、実験機があって実証機があって実機があってというようなカテゴリーに相当するものをイメージしながら、どの時代にどのパーツのものをどのように当てはめて、収益を上げつつ、技術を上げつつ、最終的にこういったところを目指していきましょうというような形でシナリオを作らないとシステムは作れないのではないかなということでございます。以上です。
 
【笠谷企画官(事務局)】ありがとうございます。了解いたしました。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。小川委員、挙手されていましたかね。
 
【小川委員】はい。小川です。少し時間があるようなので、予定する議論からは外れるのですが、メタン燃料の展望というか、普及という観点で御意見を伺いたいなと思いました。カーボンニュートラルメタンという言葉があったと思うのですが、弊社も2050年カーボンニュートラルを掲げていましてEVになると走行時のCO2の排出はなくなるのですが、やはり製造時のCO2にどう対応するかというところに結構苦慮しています。
 ただ、ホンダは水素が造れるので、工場の排ガスと水素なんかからメタンが造れる。それによって、実質カーボンニュートラルプラスマイナスゼロを目指すというような姿も描けると思っています。また、グリーンボンド資金なんかも集まる可能性があるので、メタンがある程度普及してくると、直接的ではないものの間接的に関われる企業も出てくるかと思うのですが、という意味で、メタン燃料の普及というか、いつ頃にどれぐらいの規模で普及していくかなというのは、どなたか教えていただければと思いました。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。沖田さんにかかわらず、今の御質問に対して、どなたかお答えできる方はいらっしゃいますか。それでは、沖田さん、ロケット燃料としての観点でもよろしいので、今の質問に対してお願いします。
 
【沖田ユニット長(JAXA)】いつぐらいかということに対しての答えは、我々も経産省さんの会議等の資料を参照しつつ想像しているところなので、恐らく持っている情報については同じだと考えております。
 一方、輸送系、ロケットの観点からすると、水素かメタンかで我々も悩んでいるところなのですが、やはり「再使用」といったところを目指すとすると、メタンにすると構造の質量が飛躍的に小さくできるといったところがございましてメリットがあります。また、先ほども軌道上サービスというか、周回軌道からの輸送とかそういったものも考えると、液体水素というのは蒸発しやすい燃料でございます。そういう意味でも、メタンだと比較的燃料の保持もたやすいというところで共通化できるのかなと思います。将来的にはこういったところをきちんと考えながら選定していかないといけないのかなというふうに考えている次第です。お答えになっていなくて申し訳ございません。
 
【遠藤主査】小川委員、いかがでしょうか。
 
【小川委員】ありがとうございます。定量的にはもう少し調べますが、そういう時代が必ず来るというところで、技術準備としては大変興味があると思いました。どうもありがとうございました。
 
【遠藤主査】カーボンニュートラルという観点でも、メタンは最近非常にクローズアップされておりますが、やはり宇宙輸送という観点でも密度の高い燃料を使うということによって機体をコンパクト化できるというメリットもありますので、性能的には水素の方が上なのですが、どちらを取るのがいいのかというような、用途によって変わってくるのではないかというような気がいたします。
 それでは、もう少し時間がありますので、あと2~3御意見を賜れればと思いますが。渥美委員。
 
【渥美委員】先ほどの御質問に関する話で、メタンを燃料とした場合には、大体1回の打ち上げで今打ち上げているぐらいの衛星であれば、400立米ぐらいを使うというようにイメージしていただければと思います。そのときに一番問題になるのは、その単価が幾らに下がるかというところの話が重要になります。この単価がどの程度まで下がるかによって、先ほどの輸送のコスト、こちらの方の費用が、今液体水素や何かでも億単位は使っているので、それが1,000万円を切るぐらいのところまで来てくれると非常に有り難いというのが、輸送業者の方から見たときの使う量と金額的な感覚でございます。以上です。
 
【小川委員】ありがとうございます。定量的なイメージとコスト目標が何となく分かりましたので大変助かりました。ありがとうございます。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。その他、最後にどなたか意見があればお伺いしたいと思いますが、よろしいですかね。稲谷先生、どうぞ。
 
【稲谷委員】メタンか水素かという議論は、この宇宙輸送のことだけで燃料が決まるかというと、やはり世の中がどういう社会になるか、水素社会になるとかいう話で、コストが下がるのも宇宙のことだけでコストを下げるという話ではないので、燃料の選択はもう少し広い範囲の議論のトレードオフが必要か。一方で、先ほど来、出ている非常に先進的な、あるいは高いレベルのシステム要求を満たそうとすると、やはり水素というのは非常に魅力的な燃料になってくるというのも一方ではあって、その辺で全体の関連をよく見て決めるような話だと私は思っています。以上です。
 
【遠藤主査】ありがとうございます。これから更にきょうの議論を進めていきたいと思いますが、最後に。渥美さん、発言がありますか。
 
【渥美委員】すみません。燃料は今ここで議論するような話ではないと思いますので、どんなシステムを作るかというところの方が重要だと思います。
 
【遠藤主査】承知しました。それでは、更に次回も議論を進めてまいりたいと思います。
そろそろ時間がまいりましたので本日はこれでおしまいにしたいと思いますが、まず事務局から連絡事項等があればお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は公開となりますので、既に文部科学省のホームページに掲載させていただいております。また、議事録につきましても公開となりますので、委員の皆さまに御確認いただいた後、文科省のホームページに掲載させていただきます。よろしくお願いいたします。以上でございます。
 
【遠藤主査】それでは、以上で本日の議事は全て終了いたしました。これをもちまして閉会とさせていただきます。本日は御苦労さまでした。ありがとうございます。
 

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