令和3年2月10日(水曜日) 14時00分~16時00分
Web会議
遠藤 守 【主査】
渥美 正博
石田 真康
稲谷 芳文
大貫 美鈴
小川 厚
新谷 美保子
竹森 祐樹
津田 佳明
中須賀 真一
永田 晴紀
福島 康仁
牧野 隆
武者 智宏
村上 裕史
研究開発局長 生川 浩史
大臣官房審議官 長野 裕子
宇宙開発利用課課長 福井 俊英
宇宙開発利用課企画官 笠谷 圭吾
宇宙開発利用課課長補佐 渡邉 真人
宇宙開発利用課課長補佐 岡屋 俊一
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事 張替 正敏
研究開発部門
第四研究ユニット ユニット長 沖田 耕一
【遠藤主査】こんにちは、皆さん。遠藤です。
それでは、ただ今より、文科省研究開発局主催のロードマップ検討会の第5回になりますが、会合を開催させていただきたいと思います。本日もまたオンラインということになりましたが、委員の皆さんには御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。
それでは、まず事務局から、本日の会議に関する事務的な確認等々についてお願いをいたします。
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局です。
本日は、革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会に御所属いただいている16名の委員のうち、15名の委員に御出席いただいております。
次に、本日の資料ですが、お手元の議事次第4ポツのとおりです。
オンライン状況について、音声がつながらない等の問題等がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。オンラインシステムの運用上の注意事項等は、事前送付いたしました運用の手引を御参照ください。
事務連絡は以上でございます。
【遠藤主査】ありがとうございます。
それでは、最初の議題に入りたいと思います。議題は、「宇宙輸送意見交換会」の活動状況についてということでございます。本検討会の委員であります稲谷委員と中須賀委員を中心として、国内有識者の宇宙輸送コミュニティーで、将来宇宙輸送システムに関して意見交換会を継続的に実施しておられます。本日は、その取組状況について、稲谷委員から御紹介を頂きます。それでは、稲谷委員、よろしくお願いします。
【稲谷委員】ありがとうございます。今御紹介ありましたように、この2年間ほどになりますが、タイトルの状況報告を私と中須賀先生が発起人ということで、私たちから報告させていただきますが、輸送系、あるいはその受益者も含めたようなコミュニティーということでお声掛けをしたところ、毎回70名程度の方が参加されて、最初の会合はリアルで本郷にみんな集まって、大きな会場でやっていたのですが、コロナになってからはオンラインでやらせていただいています。大勢の方の議論で、なかなか皆さんの意見はいろいろあるところではありますけれども、輸送を前に進めたいという立場で、前向きにどんなことを考えようかということを議論してきた経過と現状について、今日、御報告させていただきたいと思います。
(資料5-1について説明)
【中須賀委員】引き続いて中須賀が少し補足させていただきたいと思います。 今の稲谷先生の内容と重複になるかもしれませんが、もともとの発想は、やはり宇宙輸送系を安くしなければいけない。それで、安くするキーは一体何かというと、やはりものすごく大量の輸送需要しかないだろうということが去年の研究会、勉強会の中でも出てまいりました。そのためには、宇宙に物を運ぶだけでは駄目で、地球上の2地点間を運ぶ、これは特に有人、つまり人を運ぶということで、ものすごい数の輸送需要が出てくる。それによって安くした技術を使うことで、宇宙輸送も安くしていくということしかないのではないか。こういう議論の下に、「P2P」という目標を一つ設定させていただいたということです。
P2Pをやるには、開発費がやはりものすごくかかるということで、国の予算だけでは恐らくカバーしきれないわけです。やはり民の力を使わざるを得ないということで、民が中心になって動いていく中で、政府がそのお金を使って技術的なリスクを取り除いていくという、そういう枠組みをつくっていかざるを得ないということです。そういう世界を今回是非皆さんと作っていきたいということで、先ほど稲谷先生の御提案になった内容になったというところです。やはり民が相当突っ走るための事業体が必要で、そこでのある種CEO的な人がビジョンを出して、そのビジョンのもと皆さんがついていくという、そういう構図をつくらないと、ものすごく大きなお金は出てこないと思うので、それができるようなある種のインフラストラクチャーといいますか、そういったものをつくっていくことが、この準備会の位置づけです。この準備会の中で、どういう技術があればこれにつながるかということの地ならしであるとか、日本の中にこれをやっていこうぜという機運を高めるということを準備会の中でしっかりやって、その中から事業体が出てくることを目指していきたいということが、現在の我々の計画でございます。
技術ロードマップは必要なのですが、技術ロードマップだけ先にやっても恐らく駄目で、まずこういうものすごく大きなとがった事業のプランがあって、それに必要になる技術ロードマップを作っていかなければいけないということです。この辺は順番が非常に大事であると思います。残念ながら、日本は過去に非常に先端的なプロジェクトを幾つかやっても、その後、全然使われなかったということが多いと思います。例えば、衛星の世界ではETS-VII、あの当時、ものすごくすばらしい「ロボット」とか「ランデブー技術」を実行したのですが、あのときそのまま事業につながっていれば、恐らく今、世界の中でトップを行っていたと思いますが、あそこで途切れた。輸送系でも、HOPE、HYFLEXとか、いろいろとやってきましたが、その後、消えてしまった。そうではなくて、出口があって、そこの事業につながるということをベースに技術ロードマップを作っていかなければいけないだろうというふうに思っているところです。そういったことも、このコンセプトの中には入っています。
それから、一昨年から宇宙基本計画をまとめてきた立場から申し上げると、キーワードは民間の力ですね。国中心の宇宙開発、これを僕は「第3世代」と呼んでいますが、国が衛星の開発費、ロケットの開発費を出して、民間がそれで開発をして、それを使って政府のミッションもやるというような、この第3世代ではなくて、アメリカは明らかにもう「第4世代」へ移っていて、民間が自分たちで投資してつくったサービスを政府が購入するという、そういう世界になっている。このような流れに移っていかないと、宇宙は成り立たないだろうと思っています。そういう意味で輸送系における、そこに向けてのきっかけになるのではないかと期待しているところです。
また、この新しい宇宙基本計画では、宇宙を基幹産業にすることをうたっています。日本が将来何を基幹産業にしていくのかということがいまひとつ見えなくなってきています。この中で、あえて宇宙を日本の基幹産業にしていこうという強いメッセージをこの基本計画に打ち込みました。その一つの柱にこの輸送系はなるのではないかという期待感も私は持っています。これを是非日本でやっていきたいということで、私も力を注ぎたいと思いますので、皆さま方も御参画いただければと思うところです。
以上でございます。
【遠藤主査】ありがとうございました。
それでは、ただ今の御説明に対して御質問がありましたらお受けしたいと思います。御質問のある方、挙手をお願いします。 石田委員、お願いします。
【石田委員】稲谷先生、中須賀先生、どうもありがとうございました。非常に前向きな話だと思いました。伺っていて思ったことは、「P2P」と「宇宙旅行」にフォーカスが当たっている気がしたのですが、やはりイメージは、1908年のT型フォードのイメージなのかなと思っています。あれは人類のモータリゼーションというものを進めるときに、人類が新しく生み出したインフラが多分T型フォードで、記憶が正しければ、1,500万台ぐらい造られて、1モデルで一番量が多かった自動車記録を今でも確か持っているのではないかと思うのですが、これからの新しい時代を、このモータリゼーションという言葉を当てはめたときに、言葉が何になるのか分からないのですが、かつてジェフ・ベゾスはSpace Faring Civilizationという言い方をしていたのを覚えています。宇宙飛行みたいなのが当たり前になっていく、人類が宇宙に展開していく新しい文明を築いていく時代を切り開くために、ヘビーリスキングなことを僕はやっているのだというふうに、ジェフ・ベゾスが2016年ぐらいに言っていて、なるほどと感銘を受けた記憶があります。ある種のそういった新しい人類の宇宙時代のインフラをつくる、T型フォードを造るみたいなことに、稲谷先生がおっしゃったこととか、中須賀先生がおっしゃったことは該当するのかなと思ったので、そういうものを日本の産業界とか日本の政府の力とかを結集してつくっていくことができるとすると、とても日本だけではなくて人類全体にとって意味のあることなのではないかなと思いました。そういうことを、先ほどの組合と書かれていたものでしょうか、ある意味コンソーシアム的な形で立ち上げるのがいいのではないかというふうに考えられているということかと思いました。世界的にこの輸送系を見ると、結構、国ががっちり入ってやるパターンか、ビリオネアが中心となって資金調達をしながらやっていくパターンというのが結構多いと思っていて、コンソーシアム的な立ち上げ方がいいと思われたその背景、考え方、一見いろいろな技術とかいろいろな人を融合するということはとてもいいことだと思うのですが、Onewebはコンソーシアムで立ち上げて結構苦労したイメージもあったりしますし、やはりこういうことをゼロから立ち上げるときは、かなり垂直統合で、全部をやらないといけなくて、コンソーシアムに参加している人たちが全員メリットを享受するということが優先されると、実は目標が達成できないことも多いと思います。このコンソーシアム的なアプローチがこれをやるのにいいのではないかと思われた理由とか経緯とかが何かこれまでの議論の中であるのではないかと思って、その辺りを追加でお教えいただければと思いました。
【遠藤主査】稲谷先生、お願いします。
【稲谷委員】石田さん、その点で、今、勉強会のコアメンバー何人かで議論しているのですが、正に議論の話題がそこで、是非石田さんにそこに一緒に入って考えていただきたいと思うところではあります。過去のこういう新しい技術で研究開発をやってうまくいった例というのがあって、これはジェットエンジン開発をインダストリーサイドで、何とか重工というところがイニシアチブを取ってやろうというようなことをしたのですが、一応は全部が入る形で組合をつくって、それぞれのインダストリーを分担するというようなことが行われた。それの相似形というものがあるのかということが発想の元にはあったのですが、実際にふたを開けて考えてみると、大きな意味のこの事業化をするとか、そういう役割は、本当に命を懸けてやる人が真ん中にいて引っ張ってやるものであって、みんなで仲良くするものではないと考えるところです。ただし、一方で国の支援は要るとか、いろいろな大きな枠組み中で動かないといけないとか、例えば今の輸送ベンチャーの方は頑張っておられると思いますが、そのやり方の延長にこういう大きな話ができるかというと、そこにはいろいろ別の意味の工夫も要ると思います。そんなところで、強い意志を持った人に出てきてもらい頑張ってもらうことどう整合させるのかというようなことの議論を今シリアスにやっているところでありまして、ただ一方で、例えば将来10年、20年かかる目標設定をするわけですので、この瞬間でこのベンチャーにやってもらおうということだけでは、なかなか最終ゴールにつながっていかないと思うので、ロングレンジでのナビゲーションといいますか、インプリメンテーションは、個々の事業をやっていくみたいなことの意味で、何か組合的なものかなと、そんなイメージで私は考えています。これは正にどうやってやるかの議論だと思います。
ただ、こういう議論が収束するには、いろいろとやってみないと分からないということもあるので、まずはそういうことも視野に入れた準備会というところで、そういう体制設計をしていくのがよいのではないかという議論もあり、そういう設計をする、あるいは企画をする、立案をするというような準備会を立ち上げて、世の中に発信をしていったり、マーケットリサーチをしたりとか、そういうことを始められるのではないかと考えています。つまり議論ばかりしていないで、早く始めたいと思っているところであります。お答えになったかどうかはありますが、とても大事な論点だと思っています。
【石田委員】ありがとうございます。正におっしゃるとおりだと思っていて、僕も何か答えとか仮説があるわけではないのですが、やはり目標の高さが高ければ高いほど、稲谷先生が今おっしゃったように、本当に命を懸けてこれをできるかとか、これを前進させていけるかということが問われていく大きなテーマだとは思うし、またいろいろな力を結集しないとできないということもおっしゃるとおりだと思います。個人のリーダーシップという話と組織的なサポートという話のバランスをどう考えるかということなのかなということを今聞いていて思いました。ありがとうございます。
【稲谷委員】是非一緒に考えていただきたいと思います。
【石田委員】はい、何かお役に立てれば。
【遠藤主査】ありがとうございました。
それでは、他にも御質問あると思いますが、後ほど議論の時間を十分取っておりますので、先に進ませていただきたいと思います。
それでは、2番目の議題にまず進みたいと思います。2030年代/2040年代の宇宙利用市場ニーズ/規模の議論ということですが、この検討会では、2040年の目標設定ということが大きなテーマになっているわけで、そのためにも中間段階の姿というのが重要になると思うのですね。単に現在からのプロジェクションとしての10年後の姿だけではなくて、20年後の目標に対して、10年後に何を目指すのかというようなところを、今後そういう形で議論をしていきたいと思うのですが、まずこの議論を始める前に、事務局とJAXAから、これまでの議論の整理と検討の進め方、将来の宇宙利用市場の予測、これらの一例等について説明をしていただきます。その後で、宇宙利用市場のニーズと要求される宇宙輸送能力等について、皆さんの御意見を伺いながら議論を進めていきたいと考えております。
それでは、文科省事務局とJAXAの沖田代表研究ユニット長から、続けて御説明をお願いいたします。よろしくどうぞ。
【笠谷企画官(事務局)及び沖田ユニット長(JAXA)】
(資料5-2について説明)
【遠藤主査】ありがとうございます。
ここから先は、これまでの御説明等を踏まえまして、皆さんの御意見を頂きたいと思います。30年代、40年代の宇宙利用をどのように考えるべきかということです。議論としては、まず地球周回のカテゴリーと月・火星・惑星のカテゴリーの2つに分けて議論を進めさせていただきたいと思いますが、最終的には、我が国としては両方に、できれば両方の共通的な点をうまく含めることができるようなビジョンというかロードマップがうまくできないかというふうに、私は個人的に思っています。
それでは、御意見のある方、挙手をお願いいたします。
永田委員、お願いします。
【永田委員】範囲が広範囲で、どこから議論を始めればいいのかがよく分からないのですが、冒頭、稲谷先生からお話しいただいた有人で需要をどんどん膨らませていって、民間のお金を取り込んでいくという戦略は基本的に賛成で、そのために民間のお金の流れを目利きするようなリード役がどこかに必要だというのも非常に賛成です。そこで低・静止軌道と、そこから先とに分けて考えた場合、つまり地球周回軌道とその先とに分けて考えた場合に、将来的には、最初は地球・月圏をカバーするような輸送系をインフラとして整備する必要があると思うのです。その中でやはり一番つらいのは地球周回軌道に行くまででありまして、そこから先はデルタV(速度増加量)で言うと比較的に楽なわけです。つまり地球周回軌道に行くまでの間は、大気圏を抜けなきゃいけないという点でも非常に増速することがつらくて、ここのところをどう技術開発していくのかということがすごく大変で、かつここの技術開発には有人の需要の喚起にもダイレクトにつながりますので、非常に重要かと思います。 その次に僕が気に掛けているのは、技術開発、特に「有人技術」について誰がやるのかというところですが、ここは余り国主導でやらない方がいいなと思っています。というのは、「有人に関する技術開発」というのは、どこかに人が関わると、けがとか命とかに関わるような事故ということが全くないまま技術が成熟していくということはなかなか考えにくくて、そういう点で、国主導でやると、そのような場合に技術開発が止まってしまうという心配がどうしてもあります。したがってここはやはり民間主導で技術開発をやっていくような手段を考えた方が、何かあったときに止まらずに済むという点ではいいのではないかと考えます。こういう点については余り国が正面に出て技術開発をやっていくのは避けた方がいいのではないかと思っているところです。その上で、民間主体でそういう技術開発をやっていくためには、民間の資金とか資源、そこをどこに投資していくのかという目利きが非常に大事になるという意味で、先ほどの御提案内容は非常に意味があるのかなというふうに思いました。
以上です。
【遠藤主査】ありがとうございます。
その他、御意見のある方、どうぞ。武者委員、お願いします。
【武者委員】三井物産の武者です。
いろいろ細かく分類いただき、また今までの検討会の情報も共有いただいて、ありがとうございます。
意見というか質問にもなるのですが、将来このように宇宙利用を増やすために、プロダクトアウトではなくて、デマンド・クリエーションでもなく、こういう方向に行くのだというビジョンをつくってやっていくということも非常に重要だと思いますし、それに向けて人が大量に移動する、利用することで、価格を低減していくという考え方も賛成でございます。この議論も「地球周回」と、その先に分けるという考えも分かるのですが、ここで質問ですが、「有人」と「無人」ということを同時に考えるのか、それとも「無人」をやった上の延長線で「有人」に広げていくというふうに考えるのかどうか。つまり、「無人」と「有人」の順番に考えるのかによっても、いろいろな議論の展開が変わってくるのかなと、考え方も変わってくるのかなと思うのですが、ここはどう整理したらいいのかという質問でございます。以上です。
【遠藤主査】ここは大変重要な御質問だと思うのですが、いろいろな意見がきっとあると思うのですね。私なんかは、「有人」と「無人」は、確かに生命を維持するところは有人固有ですけれども、いわゆる宇宙に行って帰ってくるということに関しては、有人、無人はそんなに技術的な大差はないのではないかと思っているのです。何か今の御質問に対して御意見のある方いらっしゃいますか。
稲谷委員、お願いします。
【稲谷委員】御質問にぴったりの答えが多分できるかどうか分からないですが、シャトルが高コストになってうまくいかなかったと言われるところの理由の一つは、荷物を運ぶミッションも人を運ぶミッションも、両方やっているのですが、荷物を運ぶだけのミッションにも人が乗っていかないといけないということで、他の荷物だけを運ぶ無人ロケットに比べて極めて高コストになってしまっています。単なる荷物を運ぶことにシャトルが使われることがほとんど途中からなくなってしまったというような事実があります。したがって、人と荷物の輸送というものを、余りいいかげんに考えることはよくないという例があるということは一つ言えると思います。
一方で、「有人」ということを目的にするのであれば、それは最初からそういうことを考えてロケットも造っていかないといけないということも一方では思うところで、そこはやはり目的をはっきりさせて、何を造っていくのかということをちゃんと分けて考えるということかという気がしています。
私が「有人」、「無人」でそんなに変わらないのではないかと申し上げたのは、技術という観点であり、当然、「有人」のときに安全性を確保するための設計の仕方とか、そういうものは違ってくるのだと思います。
【遠藤主査】はい、渥美委員どうぞ。
【渥美委員】人が絡むというところの話を技術的なマターだけで議論するのは非常に危ないと思っていて、人が絡むということは、その人たちの生命等に関する話はもちろん、それから旅行をするにしても何にしても、それらをサポートとすることは、結構ばかにならない規模になることが普通だということです。
まず、航空機の世界の中では、市場が大体130兆円というふうに言われていて、世界中の航空機産業、サービス等から全部ひっくるめてそれぐらいの規模になりますが、半分がエアライン市場ですね。つまり70兆円ぐらいがエアラインで、製造に関わる機体製造だとかエンジン製造だとかというところは、両方を合わせても26兆円ぐらいですね。したがって、技術的なマターで人に関わるから費用が高いとか何とかということよりも、P2Pのような形の話を考えていくときには、その人々をいろいろな意味で流動させていくところに別の面で非常に大きな費用がかかるということを考えておかなければいけないし、またそういうような人的流動があるが故に大きな市場規模になるのだということを忘れて議論されると危ないのかなというふうに思います。自動車も似たところがありますが、自動車ではどちらかというと「サービス」というよりは物品寄りに近い形になりますから、人に関わるところの費用というよりは、ハードの方に関わってくるところが中心の規模感で動いているということだと思います。それが「人」に関するところの話です。
ついでに1つだけ。稲谷委員たちが目指すところの話で、大体自動車で400兆円、航空機産業で130兆円です。今言っておられるところでの宇宙輸送の話が1兆に満たないぐらいの話だとすると、基本的には産業といっても、航空機産業の中の100分の1以下ぐらいの話でしかないし、どれぐらいの規模の話を考えますかということになります。製品開発にしても運航やその他の費用にしても、燃料費や何かひっくるめて、どれぐらいの規模感の産業にしようというイメージがあるのかというところは、結構重要な話だと思います。
以上です。
【稲谷委員】今の渥美委員のコメントに関して、先ほどの資料で再度説明させてください。
【遠藤主査】はい、どうぞ。
【稲谷委員】渥美委員の質問の答えとしては、我々のマーケットリサーチがどのぐらい正しいかとか前例はどうかという議論がありますが、10兆円のオーダーというのが何か目安かと考えます。それは例えば今の長距離飛行機旅客100人のうち1人が100万円出してもいいやというようなことにすると何兆円とかというオーダーになると思うので、それが100人に1人ではなくて、100人に2人になり、100人のうちの5人になるとかすると、10兆円を超えるくらいの規模になると思います。ですから、母集団を増やしていかないとそういう規模の大きなマーケットにはなっていかないということ、数少ない金持ちを相手にしているのでは駄目だということを一方では言っています。したがって、渥美委員がおっしゃるように、シビル・アビエーションの世界全体と同じぐらいにするということで100兆円市場ということであれば、そこは段階的に拡大していくのかどうか分かりませんし、シビル・アビエーションも最初から100兆円だったかというとそうではなかったと思うので、その辺の母集団といいますか、受益者を増やしていくというようなことをやるということとセットだと思うわけです。そのための規模的な目安というものは、先ほど100万人ということを申しましたが、シビル・アビエーションに乗っている人数は、それより二桁も三桁も多い数だと思います。あるいはもっと上かもしれませんが、そこは大きくしていくことをやらないといけないのだろうと思います。したがって、現在見えている100人に1人が10倍の切符のお金を出すだろうというくらいのことで言うと、やはり10兆円の桁ではないかというふうに思います。
【遠藤主査】ありがとうございます。
【稲谷委員】私が今日示した内容は、そういう前提でやっていました。
【遠藤主査】渥美委員、何かありますか。
【渥美委員】ありがとうございます。10兆円の規模感だとすると、自動車の関係者だとか航空機の関係者がおられるので、恐らくホンダさんだと1社でもう10兆円を超えているぐらいの売上げだったと思いますが、十数兆円、20兆円に近かったかなと思うのです。その規模感と、今説明した規模感との差を、どういうような感覚で捉えられるのかということを一度お聞きしたいなというふうには思っていたのですが、いかがですか。
【稲谷委員】市場規模感というか、人数とかチケットプライスとかがマーケットリサーチから出てくる結果かと思います。これがもっと増えるとすると、10倍になるというようなことはできるとは思います。それで、渥美委員は10兆円産業の方に規模感覚を聞いてみたいということで、私も聞いてみたいと思いますので、是非御意見いただければと思います。
【遠藤主査】それでは、リクエストがありましたので、小川さん、お願いします。
【小川委員】今、ちょうど挙手をしていたところです。
車全体で言うと、新車の販売だけで年間200兆円ぐらいです。今後その10%以上が”Mobility as a Service”ということで「シェアリング」にかわっていきます。車のユーザーもどんどん増えるのですが、シェアリングがある一定量として1割ぐらいがかわったとすると、新車販売台数は減っていきます。
自動車で言うと、アフターマーケットでの営業収入で、大体、正確な数字は忘れましたけれども、今はかなり低いです。というのは、結局オイル、プラグ、タイヤぐらいの交換程度なので大きくありません。ただし、今後それが10年間で700兆円ぐらいになるといわれています。結局そこで、あらゆるデータの活用であるとか、ソフトウエア等をアップデートするとか、そういうビジネスがどんどん増えていくということで、我々もこのような方向にある程度シフトしていくと考えています。売り切りというよりは、アフターも取っていくということ。そこで、この宇宙ビジネスで全体としてどういう、売り切りではない、それ以外の部分の成長が見込めるのかということを是非お伺いしたいと思っていたところです。
以上になります。
【遠藤主査】基本的に、P2P、宇宙ビジネスというのは、売り切りというより、サービスとしてマーケットが存在するわけです。どなたか。
【小川委員】そうですね、自動車のサービス、プラスさらにそこで吸い上げたデータをどう有効活用するかというところ、そのもう一つ先に行くと思うのですが、そこら辺の実証というか、そういうものがあるのかないのかというところが、まだ少し私は理解しきれていないところです。
【遠藤主査】稲谷先生でよろしいですかね。どうでしょうか。
【稲谷委員】よちよち歩きのこれからやろうとしている人たちが、成熟した産業と比べてしょぼいから駄目じゃないかという議論にはしたくなくて、成熟した姿というのは、やはり今のエアラインビジネス、それから車のビジネスも、誰でも乗れるという世界をつくるまでにはいろいろと曲折があったと思うので、何段階かの段階を経て、それは技術の問題もあると思いますし、みんなが移動をすることを目的として、お金を出す人が出てくるというところがあるので、今航空輸送と同じ100兆円の規模が見込めないからやめておけば、多分その規模にできないということで、どうやってそこに持っていくかという議論が1つ。
それから、今先ほどの小川さんのお話をちゃんと理解したかどうかは分かりませんが、やはり車の世界もどんどんシェアリングとか、いろいろと状況が変わっていく中で、究極はパーソナルロケットというのがあるかどうか知りませんし、そこはもっと技術革新が要るのかもしれませんが、やはり誰でも持つとか誰でも持てるとか、もう1人に1台とか、何かそういう世界にならないと、本当に成熟したというのにはならないのかなと一方では思います。ただ、長距離輸送とか新幹線、飛行機、ロケットとなっていくと、それをパーソナルにしていくというのが実はあるのかなというところもあるかもしれませんし、見えている技術の未来において、それができるかというのは、私もよく分からないところではあります。答えになっているかどうか分かりませんが、大きなマーケットをどうやってつくるかという議論は、是非させていただきたいなと思っています。
【遠藤主査】逆に、他のビジネスからのアナロジーというか、そういう発展形態をうまく使いながら、2040年に限る必要はないと思うのですが、宇宙輸送の分野が大きなマーケットを形成し得るというような、どなたかそういう予測をつくっていただけると大変有り難いと思うのですが。
【稲谷委員】:いや、だから1つは、シビル・アビエーションの世界が、少し古い例ですが、B-29が太平洋を渡って爆弾を落としに来た技術が、転じて10年、20年たったら、その世界が出来上がっていたということがあるので、マーケットがこの民間航空輸送マーケットの発展の歴史と、ある種、重なるところはあるのかなという気がいたします。車との相似というのはどうやって考えたらいいか、少し私も分かりません。それも是非一緒に考えていただければ有り難いなと思います。
【遠藤主査】渥美委員、お願いします。
【渥美委員】では、10兆円ぐらいを目指すところが第1ステップだという認識でよろしいのですかね。議論はそこからスタートするということで。ということを言われていると認識したのですが。
【稲谷委員】私のつたないサーベイでそうなっていますが、規模感として、最初に目指す規模は、そんな感じかなという気がいたします。
【渥美委員】分かりました。10兆円がファーストステップだということであれば、そこからどういうような形で回していけるのかというところの話を、どれぐらいの規模で収益を上げてくるのかというところから議論を始めればいいのかなというふうに思います。
以上です。
【遠藤主査】ありがとうございます。
【稲谷委員】すみません。そのときに、比較がいいかどうか分かりませんが、スペースシャトルの開発費というのは、一説によると3兆円とか4兆円とかといわれていて、年間売上げ10兆円あるのだったら、もうそれぐらいの開発費は少し借金すれば出るよねというような考えでいいのかどうか分かりませんが、規模感的にはペイしているような気もします。そこら辺こそ、ちゃんとビジネスをやっている方、あるいはエアラインの方に是非教えていただきたいなと思います。
【遠藤主査】石田委員、お願いします。
【石田委員】ありがとうございます。
いや、何か今これがどれだけの市場規模を捉えられるかという話だと思うのですが、僕の理解というか、僕の感覚でいくと、これは結局、機体の性能ではなくて、何か所P2Pの受け手となるポートを造れるかによって決まるかなと思っていて、どんなに機体の性能がよくても、これが離着陸できるポートが、例えばJFK空港と羽田しかないといったら、そこの路線以外には使い物にならないと思うのですよね。だから、多分これをやっていく人が将来実装しようとすると、世界のメガポートにこれの離着陸ということをやるとすると、今の航空機で年1.5億人を輸送するうち何%を取ることができるのか。業界用語で、ビジネス用語でよくTAMと言いますけれども、Total Addressable Marketが幾らになるのかというのは、そういうふうに多分考えていくことになると思うのですよね。だから、普通に考えると、最も人の移動が多い2地点間にスペースポートを造って、そこでこのサービスを入れたら、究極を言ったら、そこの航空機の需要を全部代替するぐらいの狙いでやっていかないと多分駄目かなと思ったし、あるいはこの技術を使えば、今、航空機ではコスト的にペイしないところにもポートを造ることができて、人の移動を新たに生むことができるというのであれば、それはそれで何か説得性があるような気がするので、恐らく実際は全体の薄く1%~10%を取るというよりは、どこの拠点、どことどこの移動をこれで実現するのかというものをシミュレーションして、そこがその2地点間の間にある人の移動というのが全世界の移動のうちの何%を占めていて、スペースポートを例えば5か所造ったら代替できるのは何%で、10か所造ったら代替できるのは何%でと、というようなシミュレーションを回すとTAMが計算できるかなという気がしました。
以上です。
【遠藤主査】ありがとうございます。なかなか面白そうですね。
新谷委員、お願いします。
【新谷委員】ありがとうございます。
今、石田委員の御発言にあったとおり、スペースポートを制する者は宇宙産業を制するとおっしゃっていた方がいて、それに着想を得まして、スペースポートを正に、もちろん射場は既にあるわけなのですけれども、P2Pのビジネスが先んじて欧米で興ってしまった場合に、日本にきちんと降りられるような場所を造ろうということで、このスペースポートをアジアでいち早く整備を整えることが、この大きなマーケットをもう事実上造って、日本がきちんと参画していくことになると考えて、私たちは今正に活動しておりましたので、おっしゃるとおりだというふうに思っております。
そこで、その大きなマーケットをどうやってつくるかですが、実際、今、米国の当局とのやりとりとか政府間でのやりとりの中に実務家として立ち会っている身から思うに、問題意識としましては、皆さまがおっしゃっているとおり、やはり民間に命懸けでやる事業体があるということがもちろん絶対条件で、そのようなことを信念に動く人がいるということが絶対条件なのですが、どうしてもP2Pになれば国境を挟みますし、そうでなくとも機体の国籍が違えば国家間の調整が必要になってきます。そのときに日本国としてどうするのか。前回も少しだけ申し上げて、ちゃんと自分の言いたいことが伝わっていなかったようにも思ったのですが、国としてどうするのかの意図が決まっていないというところに非常に歯がゆい思いを感じていまして、そのような中で民間のことが動いている。命懸けでやっている人がいる。そこで、こういう調整をしなきゃいけないと現に出てきたときに、例えばニュージーランドやUKであれば、自分たちの国は、近い10年、20年、こういうふうにしたいから、このように国際的には交渉していくということが国のスタンスとしてもう明確に決まっていて、事業体に対するほう助というものをイギリスなんかは既に金銭的にもかなりしていますが、金銭的にだけではなく、国際交渉の中でも、それを一緒に応援してくれるという形になっていると思います。やはり米国側から見ますと、UKや例えばニュージーランドのように、こういうふうにしたいというところが日本側からは出てこなくて、やはり調整をしているというようになっていると感じています。
ですので、スペースポートを開くというだけではなくて、降りられる場所を、離着陸できる場所を造るということよりも、「有人」はもっともっと大変なことだというふうに思っています。私も是非、先ほど稲谷先生と中須賀先生が御発表されたとおりにやっていただきたいと思っているので、基本計画に書かれているというところだけでは少しフックが小さくて、40年に向けて、もうこういうふうにしていくということを、この会議体としての結果としてなのか、どこかできちんと大きな整理がないと進まないのかなというふうに思っています。
ちなみに、先ほど別の産業との比較ということが出ていたのですけれども、アメリカが航空業界を産業支援したときの経緯として、一番大きなものは、以前にもこの会で申し上げたかもしれませんが、あるいはドローンの審議会で申し上げたかもしれませんが、航空郵便での産業振興をもう無理やり郵政省主導で法律を作ってやってしまったということがあります。当初は、本当に100マイルごとのパイロットの死亡率8.67人とかというぐらいで、すごくたくさん死んでいって、パイロットとしての平均寿命は4年とか、安全性に大きな問題がある中でも、定期飛行というのを始めて、定期便をつくって、郵便物を飛行機で運ぶなんて、高過ぎてもう全く意味がないと人々が思っていたところから、どんどん国がお金を付けて飛ばすことで、事業としてできるようにしていったという歴史を勉強したことがあります。したがいまして、やはり国がある程度補助しないと、事業体だけではできないのかなというふうに思っているところです。
以上です。
【遠藤主査】ありがとうございます。
では、津田委員。
【津田委員】ANAの津田です。余り参考にならないかもしれませんが、エアラインの視点でコメントさせていただきます。ほかの地点に移動することが目的なものと、移動そのものに価値があるものに、ニーズを分けて考えた方がいいと思っています。「移動」の方は、我々エアラインが従来事業をしているところに近いです。ここの需要が年間40億人規模で、先ほど指摘された年間100兆円というマーケットができています。その中からより高速な移動を嗜好(しこう)する人が転移してくるという見方もできるのですが、分かりやすく10兆円をゴールにするのであれば、既存需要の転移だけだと数字をつくり上げるのは理論的には結構難しい気がしますので、もう少しポテンシャルとみられる新規需要を見た方がいいです。例えば日本発を考えると、ブラジルや南アフリカのような主要な国であれば丸一日ぐらいかければたどり着きますが、もう少し離れた場所にある国などは、片道1日以上かかってしまうので、旅程のスケジュールが取れずに移動しにくい状況にあります。ポテンシャルはあるけれども、時間的制約で無理だったマーケットを見て、需要予測していけばいいかなと思います。
もう一つの視点として、私たちがどの路線を飛ばすかを決めるときの話をします。人の移動は飛行機の路線によって生まれるわけではなくて、もともと出発地から目的地すなわちOrigin and Destinationで移動するニーズが基点となります。その中である路線を運航することによって、どれくらいの需要を取り込めるのかを計算します。特定の地点間を移動する需要に対して、直行便つまりノンストップで行けるケースと、ワンストップ/1回乗り換えて行くケースと、ツーストップ/2回乗り換えて行くケースがあった場合に、それぞれのケースに重みづけをして需要を取り合うシミュレーションをします。その際にノンストップとワンストップでは、この重みを示す係数が10倍ぐらい違います。このようにお客さまのノンストップに対する嗜好(しこう)が非常に強いので、Point to Pointで行けるということに対する価値が非常に高いです。こうしたところも含めて、潜在的な需要がどれぐらいあるのかを試算していくことはできると思います。逆にそれをやらないと、なかなか年間10兆円規模にはならないのかなと思います。さらに、移動目的だけではなくて、体験目的で利用するような人たちでどれぐらいマーケットが取れるかというところも、更に需要を積み上げるために考えていくべきと考えます。
あとは、モビリティーとして、既存のエアラインだけではなくて、例えばビジネスジェットのようなサービスが、高速P2Pのサービスとはかなり近いニーズがあるところかと思います。いろいろな統計がありますが、現在のところ年間2~3兆円ぐらいの市場規模しかありません。将来伸びて倍になったとしても4~5兆円の規模なので、これと比べても、年間10億円というのはかなり大きな数字であると見ることができるかなと思います。まとめると、エアラインだけではなくて、ビジネスジェットのような領域も見ていく。さらには、船でいえば高額のクルーズのように、移動自体が目的になっているような領域も見ていく価値があるかなと思いました。
以上です。
【遠藤主査】ありがとうございます。
竹森委員、お待たせしました。お願いします。
【竹森委員】竹森です。
4回出させてもらって、非常にいい形で、変な言い方なのですが、いい形でまとまってきているなという感じで、とても私も勉強になります。
結論は、「とにかく動かしたい、動かせなきゃいけない」という視点を持っています。であれば、おまえのところで金を出せよと言われそうなので、現に言われているのですが、長らく航空ばかりやってきた金融家として、少しどうやったら金を出せるかなとか、10兆円とか何兆円というのは分かりませんが、大体予測すると間違えるので分からないのですけれども、どうすれば動くのかな、どうすれば金を出せるかなという視点で、3つほど整理してみました。皆さんのやりとりを踏まえてでもあるのですが、1つが、先ほど命懸けでやりたい人がやるべきだという話、正にそのとおりで、金を出すときに、やはり誰がこれをやりたいのかというのはすごくポイントになるのですね。なので、その命懸けでやりたい人がいる。
逆に言えば、その最適な組織体というのは一体何なのかと考えると大きく3つで、「金持ちの個人」と「企業」と「ジョイントベンチャー」と、みんなでやるのが3つのパターンだということなのですよね。で、金持ちの個人は、日本でいたとしても潰されるだけで、なかなかビジネスにならないというのが何となく日本っぽいところだと。企業は、今いろいろな面で苦しんでいるので、なかなか宇宙だというとコーポレートガバナンス的にアウトになるというのが何となくあると。では、ジョイントベンチャーかというと、そうするとやはりコーディネーターはすごく大切で、責任のなすり付け合いになり、結局進まないということになるので、結局、ジョイントベンチャー的なやり方はいいのですけれども、やはりコーディネーターが必要で、そのときに航空機の経験を踏まえると、70年代、80年代に通産省を中心につくられた日本航空機エンジン協会とか航空機開発協会、三菱さん、川崎さん、IHIさん、富士さんが組んで、ジョイントベンチャーを組みながらやってきた。これは航空機工業振興法を改組してつくった法律でやってきたのですけれども、非常にいい仕組みなのですね。官と民と、それから金融も応分に負担をしながらやっていこうじゃないかといったようなジョイントベンチャーの非常にいい仕組みがあって、補助金と融資とか、いろいろな仕組みがあったということです。こういう航空機事業の歴史と工業振興法の仕組み、これは一つ学ぶ価値があるかなと思います。
とはいっても、これは単なるジョイントベンチャーではなく、ちゃんと実態を持って、かつ三菱さんにも川崎さんにもIHIさんにも、当時歴史上に残るような、本当に命懸けでやってこられた歴史上の人物みたいな方がいて、ジョイントベンチャーがあって、企業にやりたい意思がある。先ほど申し上げた3つがうまく融合されて、JAECとJADCという仕組みができたのですよね。だから、この仕組みができないと、やはりこういう歴史を動かすようなことは、なかなかできないなというところがあります。というのが1点目の質問。
それからもう一つが、日頃思うのが、ずっと航空とか宇宙をやって、2年前に外されて今違うことをやっているのですが、世論とか社会情勢というところが、例えばロケットが爆発しても「よくやっているね」というような世論ではないですよね、やはり日本だと。だから、社会情勢とか世論というところをもう少し器用にうまく喚起していくという仕組みは必要かなというのが2点目です。
最後、3つ目なのですが、今、拝読しているこの2040年の宇宙開発事業の状況ということで、これは非常に分かりやすいなと素人ながら感じています。ただ、おっしゃるとおり、人、金、財源が制限ある中で、どれをやるのか、一体どれを優先してやるのかという、時系列の問題とか、選択というのはもう決めなきゃいけない。全部やれないですし、全部一緒にやったとしても無理なので。であれば、まずはどれをやるのかということかなと。まず順番という視点でいくと、その次に、ロケットとか航空をやっているのですけれども、やはり海外を見ると、国防予算とか国の予算なんかも非常にうまくリンクしながらやっているような、いろいろな仕組みが必要で、資金が限られているので、まずは民がつくって、国がしっかり買い取ってもらうと。しっかりロケットを着火させる仕組みというところが必要。国がそういった着火させるために、ではどれから始めるのかということで、ぐるりと回るのですけれども、そういうのを考えた後、社会情勢と組織体、その辺の連立方程式を解きながらやっていくのかなと思います。その方程式を解いて、よし、やりたい人が出てきて、この組織体でここから始めてこうしようという流れができてから、「では、技術はできるでしょうか。」なのですが、技術も金をかければあるわけで、逆に言うと、コストを下げれば、近くでいろいろロケットとか見ていますけれども、結局コストを下げるといろいろな技術のやり方も違ってくるので、ではコストをどうするのかと。何かそういうような順番かなと思っています。一つの組織体とか、まずどれをやるのかということを、もう仮定を置きながら動かしていく段階かなと感じます。そういう形になれば、我々みたいな金融機関も、おっかなびっくりですけれども、「よし、やろうぜ」というふうになるのかなと、こういうふうに感じた次第です。
すみません、長々と。以上です。
【遠藤主査】貴重な御意見ありがとうございました。
いかがでしょう。永田委員、お願いします。
【永田委員】すみません。少し有人と技術の関係で1つだけ指摘しておきたいことがございます。一番の違いというのは、有人の場合はちゃんと地上に戻ってこなきゃいけないというところが無人との一番大きな違いですが、これは再使用化すると、だんだんこの違いもなくなっていくのかなというふうに思います。一方もう一つ忘れちゃいけないのが、無人の場合は、何か不具合があったときに、指令破壊で危ないところに飛んでいかないようにというようなバックアップを取るのが普通なのですけれども、有人の場合は、アボート飛行をして安全なところに戻ってこなきゃいけないというのがやはり無人と決定的に違うところです。このアボート飛行をして戻ってくるという技術というのは、なかなか日本でやられていないところで、ここのところは無人でも技術開発はできるので、ここは国主導でやっていただいた方が有り難いかなと思いながら、先ほどの議論を聞いていました。すみません、少し時間があったようですので、意見を言わせていただきました。
【遠藤主査】ありがとうございます。
有人を中心に議論をしていただいたというような今日は感じなのですが、惑星探査・月・火星等についての何か御意見もあればお伺いしたいと思いますが。
稲谷先生、お願いします。
【稲谷委員】すみません、度々で。意見が出なささそうなので、またつなぎでやりますが、別のところで月とか、アルテミスとか動いていますけれども、もっと先でどういうことを目指すのだみたいな議論をすることがあります。でまたこれもお金の話になって恐縮ですけれども、例えばアルテミス計画にかかると言われている費用の内訳を見てみると、実はアルテミスで、持続的に人がずっと月におれるかというと、なかなかそれは難しくて、輸送費が全体の9割を占めているのですね。例えば、ISSと同じだけお金をかけると、10兆円かけましたといっても、月の上で活動するためにかけられるお金というのは10兆円かけても1兆円しかないということになります。9兆円はロケットに消えていくということです。今、SLSと言う巨大ロケットでやろうとしているのが1発2,000億円するとか、何かそんな話になっている。
それと、やはり輸送のコストが一桁下がる、二桁下がるとかをしないと、月で大規模な活動をするということは、それは軌道上でも同様だと思いますけれども、そこは難しいのだろうと思います。月・火星で自由自在にものをやるには、先ほどの永田先生がおっしゃった、地球の外にまず出るところのコストが大幅に下がることが絶対的な条件になるという、そういう事実がありますということを知っておいていただいて、だからロケットに金を突っ込めという話ではありませんが、段階的にいくにしても、先ほどのようなステップというのは、もしそういう切符1枚幾らで地球周回できるというような世界と今のことは、話としては非常に整合しているなという気はしています。
以上です。
【遠藤主査】やはり低軌道に行って帰ってくるというところが、有人にしても無人にしても非常に重要なポイントになってくるのではないかというのも、これまでの議論で明らかになってきたのではないかなという気がします。特に、やはり日本では、稲谷先生もおっしゃっていましたよね、低軌道から帰ってきて、また宇宙に行くというような、要は軌道からリエントリーして、また再使用するというところの事実がなかなか途中で中断してしまっているという状況もあります。そういうところも、今後、議論の対象ではないかなと思います。
時間も残り少なくなってきましたが、どなたか御意見があればお願いします。いませんね。
それでは、活発な議論をありがとうございます。前半に事務局の方から今後の進め方についても御提案を差し上げたところですが、御了解いただければ、次回にもこういうニーズがある等のニーズの議論もまだもう少し必要とは思いますが、併せて将来宇宙輸送システムの在り方という形で進めていきたいと思うのですが、この辺りの進め方について何か御意見があれば、最後にお伺いしたいと思いますが。
渥美委員、お願いします。
【渥美委員】御提案いただいた議論の進め方ですが進めることでいいのかなとは思っています。ただ、今日の議論にあったような形の10兆円をベースにしたとすると、大体どこでどういうような金額規模で動くというところをまず考えてみるひな形がないと、恐らく議論にならないのだろうと思うのですね。結局、今日の先ほどの確認で、第1ステップとしては10兆円を目標にしましょうと。そこに置いていったときに、大体どこでどういうようなファンドがどれぐらいの規模で動くのかというところのシミュレーションをやってみて、大体その感覚が合うか合わないかやっていくところから始めないと、いつまでたっても話が進んでいかないのではないかと思います。その際に、一番大きなことは、ある領域であるお金が動いてくるのですが、そのお金をどのように回していきますかということです。例えば、ものをつくるというようなところだとか、ものを、材料を購入するとかという費用そのものと、個人が支払っていく金のつながりというのが、ある程度、産業の構造として、こういうような感じにして、規模として回していくというようなことを、航空機なり自動車なり、いろいろなものをひな形にしながら、少し規模感をつかむために数値を置いて議論されるのがいいかなと思います。というのが1点。
それから、第1回のときにも申し上げましたけれども、それを実現するためにはやはりどれぐらいの性能でなければいけないかという話はどうしても避けて通れないだろうと思います。それが恐らくチャレンジしなきゃいけない技術のレベルの高さというのも見せる形になるので、事業としては資金のマップ、それから技術としては性能的な面のシミュレーションをやって、大体の目標値を作って、見てというようなことをやられるのが、一番早く話が進んでいくドライバーになるかなという気がいたします。
以上です。
【遠藤主査】御提案ありがとうございます。前半の方、なかなか10兆円規模というところは、その手法とか何とか、事務局を中心に考えていただこうとは思いますが、なかなかそういう専門的知見もないと思いますので、いろいろと委員の皆さんにも御助力をお願いすることがあるかもしれません。その点はよろしくお願いいたします。
【稲谷委員】少し遠藤主査、よろしいですか。
【遠藤主査】はい、どうぞ。
【稲谷委員】先ほど申し上げた我々のプレゼンの中の準備会とか、組合がいいかコンソーシアムがいいかとか、いろいろありましたけれども、そこでも少し、今、渥美委員がおっしゃったようなことの、なかなか全部はできないのですが、実態としてそういうスタディーをするようなことは活動のうちかなと思っています。それから、先ほど竹森委員がおっしゃったような観点も、準備会などで議論しているところですので、もっとそういう検討状況を、どう進むかは分からないところがありますけれども、またいろいろ共有させていただければいいかなと思います。
【遠藤主査】はい、そこは精力的にやっていただいて、この検討会にインプットしていただけると大変助かります。
【稲谷委員】はい、そうなるように、是非御支援もお願いします。
【遠藤主査】はい。
それでは、次回に向けたいろいろ課題というかやるべきことが大分明らかになってきたと思いますので、いろいろと皆さまに御協力を頂きながら進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、今日はこれでおしまいにしたいと思いますが、最後に事務局から連絡事項等をお願いいたします。
【笠谷企画官(事務局)】:事務局です。
本日も御議論ありがとうございました。次回に向けて、今御指摘の点、数字等なかなか課題等はありますが、ただ渥美委員がおっしゃったように、何かしらの具体的なものがないと御議論にならないと思いますので、しっかり準備していきたいと思います。
それでは、事務局より御連絡いたします。
本日の会議資料と議事録の公開について申し上げます。
本日の会議資料は公開となりますので、そちらは既に文科省のホームページに掲載させていただいております。また、議事録につきましても公開となりますので、委員の皆さまに御確認いただいた後、文科省のホームページに掲載させていただきます。よろしくお願いいたします。
事務連絡は以上でございます。
【遠藤主査】ありがとうございます。
それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので、これをもちまして終わりにさせていただきます。
本日はありがとうございました。
―― 了 ――
研究開発局宇宙開発利用課