北極域研究船検討会(第2回) 議事録

1.日時

平成28年11月16日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省5階 5F3会議室

3.出席者

委員

山口座長、大島委員、東委員、川合委員、白山委員、瀧澤委員、田村委員

文部科学省

田中研究開発局長、林海洋地球課長、小酒井極域科学企画官、山口海洋地球課課長補佐

オブザーバー

河野海洋研究開発機構研究担当理事補佐

4.議事録

【山口座長】
ただいまより、北極域研究船検討会第2回を開催します。
まず、事務局から、本日の出席者、配付資料の確認をお願いします。

【山口海洋地球課長補佐】
本日は、全委員7名の御出席をいただき、会議の定足数を満たしております。
本日の配付資料は、資料1から4及び参考資料1から6の計10の資料をお配りしております。参考資料4は、前回の第1回会議でJAMSTECから御説明いただいた資料となっておりますので、適宜御参考にしていただければと思います。
以上です。

【山口座長】
不足等ありますでしょうか。
議論の途中でも不足等に気が付かれましたら、事務局におっしゃってください。
それでは、議事に入ります。初めに議題1、議事録の確認についてです。
資料1、議事録(案)については、既にご覧いただいていると思いますが、修正等ございましたら、1週間後の11月23日までに事務局に御連絡をお願いします。よろしくお願いします。
続きまして、議題2「今後の北極域研究船の在り方について」です。
本日は、前回会議の議論を踏まえて、議論を進めていきたいと思います。まず、事務局から、資料に基づいて、前回会議における主な意見、論点等について説明願います。

【小酒井極域科学企画官】
資料2をご覧願います。これは前回、第1回検討会における主な論点ということで、事務局の方でまとめたものです。3ページにわたって、5つの観点で整理をしています。
まず、1ページ目の「1:研究船で実施する観測・研究」ですが、北極域において、通年観測が可能となることは研究者にとっても魅力的である。また、こうした日本が取得したデータを国際的に発信することは有意義である。
日本が主導力を発揮できる観測内容や観測海域を検討するためには、他国の北極域における観測実績等のレビューが必要である。
また、北極域での観測のみならず、中・低緯度の海洋観測を行えるとよいのではないかといった御意見がございました。
これに関して、今回で示してほしい資料として、諸外国の北極域研究船の活動状況――活動時期、活動範囲、観測項目等々について、まとめています。
その下、「2:必要な観測機器、設備」として、我が国の強みを発揮できる研究課題の把握、必要な観測機器等の検討が必要である。
また、その観測機器によって、どのような船になるのかが変わってくる。
次の下の2つの丸ですが、こちらについては、ムーンプール、バブラーシステムのメリット・デメリットについての検討が必要ではないか。
「3:砕氷・耐氷能力」ですが、どの時期に、どの海域で観測を行うかによって、必要とされる砕氷能力は異なってくる。
また、船のスペックを考える上では、北極海での通年観測を実施するのか、しないのかといったところが分岐点になるであろう。
また、一方で、国際的な観測プラットホームとしては、国際的なプレゼンスを発揮するという目的であれば、ポーラークラス2の船の建造も有意義ではないかといった御意見。
一方で、真冬に極点まで行ける船が必ず必要かと言われれば、そうでもない。ポーラークラス5クラスの船でもできる仕事は多いのではないか。
また、北極海の海氷の減少傾向といったものは変わらないであろう。船の建造までに数年、建造後の運用が20年から30年であることを考えると、それほど大きな砕氷能力は必要ないのではないかといった御意見。
また、冬期に極点周辺に行くよりも、春先に「みらい」で行けるところに行けるようにするといった方が有意義ではないかといった意見。
また、一定の砕氷能力は必要であるといったことと、ポーラークラス2のクラスというのは少しオーバースペックで、費用対効果としても期待できないのではないかといった御意見。
また、砕氷能力を上げると建造・運用コストも上がる。費用対効果を見据えながらの検討が必要。
その下ですが、ポーラークラス2クラスとポーラークラス5クラス程度の船では、観測にどの程度の差が出るのか。また、その差は投資額に見合ったものなのか。また、その差が埋まらないと日本の研究ニーズはどの程度阻害されるのかについての議論が必要だといったこと。
3ページ目ですが、砕氷能力を上げるために必要となる費用は、砕氷能力をある程度とし、その分、観測機器の充実等に充当した方が科学的な成果が期待できるのではないかといった御意見。
これらを踏まて、今回は、ポーラークラス2クラスの研究船、ポーラークラス5クラスの研究船及び「みらい」の観測項目、コスト、乗員数等の比較といった資料を、後ほど御説明したいと思います。
「4:乗船可能研究者、乗組員等」では、乗船する研究者の上限は50名程度、そのほか乗組員が必要といった御意見。
「5:「しらせ」の活用等」ですが、結論から申しますと、1つ目の丸の一番最後のところですが、「しらせ」の北極海での運用は困難であろう。
また、一方で、中国、韓国のような両極――南極、北極に行っているということですが、主な任務は南極と推察される。なお、中韓の南極での基地周辺の氷状は昭和基地周辺ほど厳しくないといったところがあり、船へのダメージも少ないことから、両方の極への航行が可能となっております。
次回で示してほしい資料としては、「しらせ」の運航・点検スケジュールとなっております。
資料2の説明は以上です。

【山口座長】
ただいまの御説明について、御質問等ございますでしょうか。

【白山委員】
2ポツの4番目の丸について、「AUVの運用が可能な大きなムーンプールは作れない」というコメントになっていますが、AUVにもいろいろあり、非常に大きなものから手で運べるような小さなものまであるので、「AUVの運用が可能な大きなムーンプールは作れない」というふうに決めつけることはないのではないかと思います。

【山口座長】
AUVのサイズや機能が制限されるということでしょうか。

【白山委員】
はい。ムーンプールでAUVは使えませんということではないというふうに認識しています。

【山口座長】
ほかにございますでしょうか。

【田村委員】
今のお話ですが、使えないことはないのです。AUVを入れられないが理由ではなくて、AUVをそこに完璧に誘導して回収することが多分、難しいというのはあり得るかなという気がします。回収が非常に難しくなることは確かなので、そういう意味では、AUVを入れられないとは、括弧が違いますが、「バブラーの方が現実的か」ではどうかなという気がします。

【山口座長】
ただし、これも氷況によるかと思います。

【白山委員】
今、JAMSTECで、まだ開発段階ではありますが、AUVを呼び寄せるアンカーを開発しており、それをムーンプールの真ん中からおろしていれば、船底より下のところで、ドッキングをして真上に上げることができるかなというように思います。

【田村委員】
そうですが、SIPでAUVを作っている人間としては、まだ難しいように感じます。また、大きさとして四、五メートルはないと、いろいろな観測ができないでしょうから、それが出入りするようなムーンプールを作ることが難しいのではないかと思います。

【山口座長】
立てておろすわけにもいかないでしょうし。

【田村委員】
立ててというのは考えているところです。

【大島委員】
将来的に、技術革新でどんどん小さくなるかもしれません。

【田村委員】
結局は電池の大きさで航行時間が決まってしまうので、どのぐらい入れるかにもよりますがそんなに小さくできないのが現状です。

【山口座長】
ではバブラーで済むのかという問題もありますから、結局、どういう観測をどの時期にやるのかによって氷況が変わってきますかので、そのときに、どういう利用の仕方が一番いいというのが決まってくると思います。メモとしては、コメントは少し考えた上で修正をしなければいけませんが、将来、もう少し後で議論させていただくということでよろしいかと思います。
それでは、資料3の前に、資料2の一番最後の「しらせ」の活用に関しての関連資料が、資料4です。これを先に説明していただきたいと思います。

【小酒井極域科学企画官】
それでは、資料4をご覧いただければと思います。これは、南極観測船「しらせ」の年間スケジュールの概要です。
まず、スタートですが、一番下の矢印のところで、「しらせ」は毎年11月中旬に日本を出航し、南極に向かうスケジュールになっており、11月中旬に日本を出航し、一番上の4月上旬に日本に帰国するといったスケジュールになっています。
帰国後、直ちに年次検査として、ドックに入り、8月中旬ぐらいまでドックの期間となっているところです。ドックの終了後、「しらせ」の乗組員は毎年、約半数が交代しますので、そのための国内訓練が1か月半程度、10月中旬ぐらいまでかかります。
その後、今度は次の隊になるわけですが、11月の出国に向けて、いろいろな搭載物資を積み込む期間が、約二、三週間程度あります。「しらせ」はこのようなスケジュールで現在、運用していますので、これで北極の方に行く時期を見出すのは難しいのではないかと思っています。
資料4については以上です。

【山口座長】
「しらせ」も国の船ですから、国内の広報的な活動のための航海も行っていますが、そういうところだけが目立って、結構、暇にしているのではないかと思われるかもしれませんが、決してそうではなくて、実はかなりタイトなスケジュールで年間運用しているというのを御理解いただければと思います。

【大島委員】
「しらせ」が北極へ行けないのは自衛隊の船ということで、その時点で難しいかと思いますが、今、例えば、あのぐらいの船で、どうしても、ラミングし、接岸しなければならないということになると傷むし、それから、ドックも長くなると思います。ただし、接岸しないで物資を運ぶという手段もあるし、それから、今現在、海氷が一番少なくなるというのは2月なんですが、「しらせ」は結構海氷が広がっている12月に行くので、その分、時間も掛かるし、燃料も消費します。
だから、単純に、燃料を掛けずに行き帰りするということだったら、スケジュールを1か月とか2か月おくらせれば、もっと早く、しかも燃料も食わずに行けるし、昔から同じスケジュールであるから、いろいろ難しい問題があるのであって、工夫すれば幾らでも、負荷を軽減してドックの期間を短くするということは可能だと思います。つまり、スケジュールが限定されることによる問題も結構あるのではないかというの意見です。

【山口座長】
おっしゃるとおりですが、基本的には、昭和基地の周りの多年氷が非常に厳しい中、昭和基地に毎年、決まった輸送をしなければならない。そういう非常に厳しいミッションがあるので、フレキシビリティーがないというのは確かです。また、接岸しないで必要な物資を輸送するということは難しいと思います。

【大島委員】
「しらせ」の運航スケジュールそのものについては、余りこの会議での論点ではないのですが、工夫できる余地、可能性があるのではないかという印象は持っています。

【山口座長】
分かりました。
それでは、次に、資料2の論点で御説明いただきましたとおり、追加の説明について、JAMSTECの河野理事補佐から資料に基づき御説明願います。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
まず、ページをめくっていただきますと、本日の説明の内容が書かれています。早速ですが、前回御質問のありました、諸外国における北極海観測の状況につきまして御説明します。
こちらにある図は、2015年に諸外国によって行われた観測の測点、あるいは測線を図示したものです。
まず、マル1、太平洋側及びカナダ側の北極海、これは主にマル1という丸で囲った部分における活動で、カナダのLaurierという船と「みらい」で行われているのが赤い線、赤い点ということになります。これは、このあたりにあるバイオロジカルホットスポットと呼ばれている、生物活動が盛んな海域をターゲットとしていて、物理や化学、生物、全てを含んだような包括的な研究計画です。測線は大体決まっていて、係留活動も開始しています。
それから、Joint Ocean Ice Study、JOISというのが、カナダのLouis S. St-Laurentで行われている観測航海で、黄色い線になります。2003年から行われており、物理が主ということになります。それに併せて、海氷の観測なども実施しているということです。
それから、マル2、図でいいますと右側に丸で囲った部分ですが、これが、Nansen Amundsen Basins Observation System、NABOSと呼ばれているもので、これはロシアの砕氷船、観測船で行われているものです。ピンク色の点が測点でして、大体、物理が中心で、大西洋側からの温かい水の挙動を調べるというのがメーンターゲットということになります。
それから、図面で見ますと向かって左側、マル3で囲まれたところが、ArcticNetによるAmundsenという船で行われている航海で、オレンジ色の測点です。生物がメーンで、分野横断型の観測ですが、カナダの北極海観測プロジェクトの1つということになります。
その下のデービス海峡モニタリングというのがありますが、これもカナダのAmundsenと、それから、アメリカの観測船で行われています。マル3で囲っているオレンジの点の、図面でいいますと下の方に来ているところ、60度と書いてありますが、ここよりさらに外れたところにデービス海峡があり、この海峡を通って北極から多島海に水が流れていきますが、このフラックスを調べるというのがメーンターゲットになっています。
ページをめくっていただきますと、ちょうど真ん中辺、マル4という海域に北極海中央部、GEOTRACEというのがあります。アメリカ、ドイツのPolarstern、カナダの船が中心になっており、GEOTRACEというのは、我が国では、北極海でないところでは東大の白鳳丸などが活躍している研究計画ですが、化学中心の航海ということになります。緑色の点です。
それから、UNCLOSと書いてある研究計画もあり、これがやはりマル4の海域です。測線は出ていませんが、海底地形を測るというのが主な目的でしたが、それに氷の観測などを加えてやっているということです。私たちもXCTDを頼んで、投入してもらったことがあります。
その下、マル5、フラム海峡モニタリングとバレンツ海回廊モニタリングというのがあります。フラム海峡モニタリングは、フラム海峡を通って、大西洋と北極海を出入りする海水を測るという計画で、バレンツ海回廊モニタリングというのは、大西洋と北極海の間の水の出入りを調べるというもので、バレンツ海峡モニタリングの方が青、それから、フラム海峡の方が緑色の横に行くような線ということになります。
以上が大体、北極海における国際共同観測プロジェクトですが、ここには書いてありませんが、このほかに、「みらい」では、この図でいいますと一番上、マイナス180と書いてあるあたりにあるベーリング海峡から北極海に流入する海水の挙動を調べるという観測航海を続けてやっております。 それから、ページをめくっていただいて、これは既存のものではなくて、今、北極の海洋関係の人たちが集まってやろうとしている大きな観測計画の一例です。Synoptic Arctic Surveyと呼ばれており、これは、こちらの絵にあるような線に沿って海面から海底まで詳細に物理、化学、生物科学的な成分を高精度で調べてあげようという計画です。
御存じの方がいらっしゃれば、昔、GOOSと呼ばれている、大陸間を縦横断するような、同じような表面から海底までの高精度観測がありましたし、今ではそれがゴーシップと呼ばれているもので行われておりますが、それの北極版だと考えていただければいいかと思います。
2020年に一斉に実施することを計画していて、この赤の線が、ほぼできるだろうと思われている測線、黄色の測線は、既存で既に実施されており、調整が必要だけれども貢献してくれるだろうという測線、それから、グリーンは、ここは氷が厚いところですので、やりたいけれども少し難しいだろうと言われている測線です。赤色の太いところが、「みらい」でやることを期待されている線です。ちなみに、「みらい」ではこれまで高精度観測というのをやっていましたので、そういう意味では、これはちょうど日本の強みを生かしている部分と言えるかと思います。
続いて、諸外国における北極海観測の現状として、中国の観測の現状についてです。
中国では、1999年7月から9月の第1次航海以来、数年おき、最近では、2年に1度、雪龍と呼ばれております観測船を使いまして観測を実施しています。ちなみに、第1次の航海のときに、東委員が乗船されたと聞いております。
雪龍という船は、ウクライナから購入した古い船で、2012年にはかなり極点に近いところまで行っていますが、最近は、先ほどのマル1という海域、太平洋側及びカナダ側北極海というところの観測を主に実施しています。これは測線が決まっているので、日本、中国、韓国などが、このプロジェクトに参加していることから、こういう海域での実施が主体になっているものと思われます。
なお、中国では新砕氷船の計画があり、こちらにラフスケッチと大体の諸元が書いてありますが、雪龍よりも機動性を高めるために、小型ですが、高い砕氷能力を持たせ、ポーラークラス3程度を狙っているようです。これは今年度、着工予定と聞いています。
ページをめくっていただきますと、韓国の状況です。
韓国は、2010年7月から9月以来、毎年アラオンによる観測を実施しています。例えば2013年には、運航日数311日に到達する航海を年間に実施しており、北極と南極に行っています。今年は67日間の北極航海を実施しているとのことで、こちらの航跡図を参考に、南極と北極の両方行っていることが分かると思いますが、2015年の北極の部分を拡大したのがこれで、大体、北緯81度付近まで、先ほどの雪龍も似たようなところまで行っております。活動海域はやはり太平洋側の北極海ということになりまして、これもほぼ、「みらい」と似たような活動域ということになります。
なお、この間、当機構の職員がKOPRIという韓国の極地研に行きまして、新造船の話を聞いてまいりましたが、アラオンクラスを目標に現在折衝中で、デシジョンメークはもうすぐだと言っているそうです。パーソナルコミュニケーションですが、アラオンというのが大体、最上の目標で、予算その他の事情によりということだと思いますが、そこからどういうふうに落としていくかといった議論になりそうだという情報でした。
その次のページ、「みらい」による北極海観測航海の例ですが、「みらい」は、2010年に一番北まで行っています。このときに、79.11度まで行っていまして、大体、ほかの船が80度、81度といったところですので、似たようなところまで行って、これまで実績を積んできたということになります。
左斜め下が、まだ帰ってきたばっかりですが、今年の観測です。色が付いているところが海氷密接度というもので、氷の厚さと必ずしも一致しませんが、どのぐらいたくさん氷があったかということを示しています。青い線に沿っていきましたが、「バロー岬」と書いてあるところまで海氷が張り出してきていて、ここを避けて通らなければいけなかったという苦労をしております。オレンジでは、分厚い氷が張ってきて行けなかったのかというと、そんなことはなくて、もう少し耐氷能力なり砕氷能力があれば行けたかなという感じだったそうです。
1998年以来、2016年までに14回の北極観測を実施しておりまして、中国や韓国の砕氷船と似たような海域で、恐らくそれを上回るような研究成果を出している状況です。
ページをめくっていただいて、船の形が見えるような状態にしないと議論が進まないということでしたので、想定したケース、2つについて御説明します。
実は3ケースという話もあったのですが、3ケース目は「みらい」だというふうに御理解いただいて、強力な砕氷船、ポーラークラスでいいますと2程度を優先した研究船と、それから、一定の砕氷機能、ポーラークラスでいいますと5程度を持たせて、かつ、平水域での観測能力の両立を目指したものという、2つのケースについて説明します。
まず、強力な砕氷船の場合、多年氷が卓越する海域を含めて北極海における通年にわたる活動が可能ということになります。
もう一つ、一定の砕氷機能等を持たせたものというのは、北極海の多年氷が一部混在する海域における通年観測に加えて、北部太平洋、ベーリング海といった環北極の海域における活動を可能にするものと考えていただければいいと思います。
ちなみに、通年観測をするかどうかが1つのポイントというお話が前回出たと思いますが、目安ですが、ポーラークラス5から上については砕氷船でして、北極で言えば、一応、通年観測ができる船です。多年氷がある、要するに分厚い氷が一回も解けないような海域の観測ができるかどうかというところが、PC2との分かれ目で、次のページに書いています。
通年航行という意味では、PC5からが可能ということになります。多年氷海域での活動ができるのがPC2ということですので、PC2以上じゃないと通年航行できないというようなイメージがあったかもしれませんが、そうではありません。
次のページですが、コストパフォーマンスという意味で、ポーラークラスの砕氷能力の目安と船価や運航に掛かる能力、船価です。それから、機関出力といったものについての大体の目安を知りたいということでしたので、こちらに書きました。
実はポーラークラスというのは、船の構造や機関の設計について決められているルールでして、必ずしも砕氷能力を示すものではありません。砕氷能力というのは、その船が持つ機能ということなので、若干、1対1に対応しませんが、一方で、船の頑丈さ、要するに、これぐらいの氷のところに行っても大丈夫だというからには、見合う砕氷能力があって当然だろうという考え方に基づきまして、ロシアの中央船舶海洋設計研究所というところが、ポーラークラスに対応した砕氷機能の目安というのを出しています。原資料は、2ノットのときにどのぐらいの氷を割れるかということですが、今、我々は3ノットで統一していますので、3ノットの場合に換算した表、すなわち、もともとの表とは少し違う数字が書いてあります。
例えばポーラークラス2の場合ですと、2.25から2.81メートルぐらいの氷が割れる性能を持っているべきだ。一方、PC5だと、0.82から1.18メートルぐらいの氷を割る機能を持っているべきだというような指標ということになります。2から5の違いというのはこういうことになります。
船価、あるいは船の重量ですが、例えば、普通の船を作った場合を1として、同じサイズで、重量がこちらですから、排水量トンが1万トンの船があったとしますと、これをPC7クラスにするためには大体1万900トンになる。PC5だと1万2,500トンになる。PC2の船を作ろうと思ったら2万トンクラスになる。これは鉄板の厚さその他のものによります。
機関出力も、例えば、非氷海で1万キロワットぐらいの船を作ろうと思うと、PC5では1万5,400キロワットぐらいが必要、そして、PC2になると5万キロワット程度必要という比になります。
船価も、100億円でできるものが、PC2にしようと思ったら350億円ぐらい掛かるのではないかというような表です。
ごらんになっていただくと、これはグラフにすると分かるのですが、実は指数関数的に、PCが上がるほど増えていて、微分係数が一番大きいところは、恐らくPC5が、変曲率で、変化率、微分係数を微分したものが一番大きいところは、PC5あたりのところになります。
次ページですが、各ケースでどのような要目になるかというのをまとめています。
概要ですが、まずケース1、PC2クラス、「しらせ」並みの砕氷船の場合、多年氷が卓越する海域を含めて北極海における通年航行が可能になるものというのを念頭にします。
ケース2として、PC5程度の、通年、北極海には行きますが、多年氷海域で氷を割ることは念頭にしない船となります。
御参考までに、「しらせ」は南極地域観測協力を任務とした物資輸送船なので、必ずしも観測船としては設計されていません。それから、「みらい」は、全球での観測を主眼に置いていまして、そのため、北極海でも活動ができるように耐氷機能を持たせていますが、砕氷機能はなく、夏に氷のないところにしか行けないという船です。
活動範囲ですが、ケース1の場合、多年氷が占める海域全てですので、全北極域ということになります。
ケース2の場合、通年航行は可能であるものの、一年氷に多年氷が一部混在する海域ということになります。
「しらせ」は、言うまでもなく、多年氷が占める海域において活動が可能です。
「みらい」の場合、薄い一年氷が存在する海域で活動が可能というクラスではありますが、運用次第というところがあります。
耐氷性能ですが、ケース1がポーラークラス2程度、ケース2がポーラークラス5程度、「しらせ」はポーラークラス2相当、「みらい」はポーラークラス7相当になります。
砕氷能力としては、3ノットで1.5メートル以上というのがケース1ですが、それに、ラミング――氷にぶつかっていって割るということができるものが想定されていまして、ケース2は3ノットで1メートル程度、「しらせ」は3ノットで1.5メートル・プラス・ラミングということで、実際には物すごい厚さの氷を割って活躍しているということです。「みらい」は砕氷能力がありません。
耐航性能ですが、ケース1の場合、北極海において各種観測を可能とする程度の耐航性能を持っている。ケース2の場合は、「みらい」に近い耐航性能を持っているもの、「しらせ」は少し観測の方が分かりませんが、「みらい」は、WMOのシーステート4――1.25から2.5メートルの波高で、見た目、かなり波があるなという状態でもCTD観測が可能な設計になっています。
次ページですが、ケース1では12ノット程度、ケース2でも12ノット程度の巡航速度で、「しらせ」は約15ノットでマックス19.2出るそうです。「みらい」は設計上、16ノットでマックス18ノット出ます。
航続距離はこちらにあるとおりで、「しらせ」は2万5,000マイルですが、その他は1万2,000マイル程度です。全長は、そこに記載してある程度、国際総トン数では、ケース1が1万7,000トン、ケース2が9,000トン、「しらせ」が1万2,650トン、これは排水量ですので、国際総トンにすると少し値が変わってきます。「みらい」が8,700トンです。
機関推進力もこちらにある程度で、次に推進方式ですが、ケース1の場合、氷を割って、大きな氷の塊が後ろの方に行くということもあって、固定ピッチプロペラ2軸、ケース2の方は、可変ピッチ又はアジマススラスタが付けられるであろう、「しらせ」は、ケース2ですので、固定ピッチで、「みらい」は可変ピッチプロペラを付けています。
船員は、こちらにある程度です。
建造費は、先ほど、比でお示ししたとおりで、普通の船よりは少し高くなって、ケース1の場合は430億円程度、これは主な観測機器や分析機器を含めます。ケース2では300億円程度で、御参考までに、「しらせ」は376億円かかっているそうです。「みらい」は約200億円です。ちなみに、「みらい」は完全な新造ではなく、「むつ」という船をベースに改造した、改造費を計上しております。
運用費についても御質問があったと思いますが、ケース1の船、「しらせ」並みの砕氷船の場合は当然、「しらせ」と同程度の金額がかかると思います。ケース2の場合は、「みらい」プラス氷海航行することによるかかるお金、あるいはドックにかかるお金、そういったものに経費がかかるという想定になっています。
ケース1とケース2について、それぞれ相対的な比較をしてみますと、14ページの表で、関係するテーマというのは、前回の資料のうちの研究テーマ、マル1、マル2、マル3、マル4と整理して、その数字が書いてありますが、氷海航行性能というのは全ての研究に必要とされていまして、ケース1の船は、北極海全域にいつでも行けるということで「◎」、ケース2は、通年だが一年氷が卓越しているところ、あるいは多年氷が一部混在するようなところでできる。「みらい」は、基本的に氷海航行は不可能となっています。
それから、平水域、普通の海ということですが、ケース1では、一般の船舶に近い航行が可能で、ケース2ではほぼ一般の船舶と同等、「みらい」も同等です。
多年氷卓越海域における観測は、ケース1では支障はありませんが、ケース2では、必ずしも全ての場所でできることはなく、例えば係留するとか、あるいは、AUVを活用するなどの工夫をする必要があります。「みらい」はそもそも氷に近付けませんので、こういうことはできません。
一年氷が卓越している海域での研究というのは全てのテーマに必要ですが、ケース1では、できますが、プロペラの作り方その他によっては、定点保持機能が、ケース2あるいは「みらい」などに比べると若干劣り、「〇」になっています。ケース2では、一年氷が卓越している海域では支障なく観測ができる、「みらい」は、そもそも一年氷が卓越しているところには行けないので、「×」ということになっています。
環北極海における観測ということでは、ケース1の場合、船型の制限、プロペラの制限などから動揺、あるいは荒天海域での観測などには不向きなところがあり「△」に、「みらい」は、そういうところで観測ができるように設計されていますので「◎」で、ケース2は、そのちょうど真ん中で「〇」になっています。
AUV、ROVについては、何をどう運用するかによりますが、「みらい」は、実は船型と関係なく、AUV、ROVを運用することを最初念頭に入れて設計していませんので、決して不可能ではありませんが、「△」ということになります。ケース2の場合は、あらかじめそれを想定すれば、位置保持などについても工夫が可能で、特に支障なくできるかと思います。ケース1の場合は反対に、位置保持機能について相対的に劣ることもあるので、やや不向きかもしれません。
最後に、それらをまとめたものになりますが、ケース1の利点は、単独で北極海のほぼ全域における通年観測が可能となって、北極圏国が保有する大型砕氷船並みのプラットホームとして活動が可能な点ですが、懸念として、「みらい」やケース2に比して建造、運用に係るコストが増大します。それから、船型の制約により、耐航性能にやや劣り、事実上、氷海観測専用船になるということになります。それから、強力な砕氷機能を十分に活用し得る運航体制の構築が必要となります。
ケース2について、利点は、建造や運用に係るコストが低くなるということと、耐航性を考慮することによって、北極海のみならず、取り巻く周辺の環北極の海域においても活用が期待できるということ。それから、多年氷卓越海域以外では、国際的なプラットホームとしての活動が可能ということになります。懸念としては、北極海での通年観測は可能であるものの、多年氷があるところにはやはり行きません。強力な砕氷船との協働とか、あるいはAUV等の活用が必須になります。それから、一定の砕氷機能と観測機能を十分に生かし切る運航体制の構築が必要となります。
以上です。

【山口座長】
では、御質問等をお願いしますが、私の方から少し補足しますと、重要な14ページについて、これの関係する研究テーマの丸付き数字は、きょう、参考資料4として配られていまして、前回資料の14ページ、15ページになります。北極域研究船で実施することが考えられる研究テーマ例、項目としては5番目の項目になりますので、これを参考にしながら、きょうは少し詰めた議論をしていただきたいので、船が変わるとどうなるかというようなことを想定しながら議論していただければと思います。
では、資料3に関して、何か御質問ございますでしょうか。

【大島委員】
4ページにあるSASについて、「みらい」に期待されり航路が赤太字で示されていますが、これは、実際には、すごく運がよくなければ航行することができないというレベルではないでしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
運も必要ですが、すごくということはないと思います。

【大島委員】
ではこの海域は比較的、今、氷が少ないので、行ける可能性があるということでしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
はい。今年は航行できませんでしたが、夏においてはある程度実績のある海域です。

【大島委員】
分かりました。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
エスコートも付けますかと言われています。

【山口座長】
では、議論を進めますが、会議時間も限られていますので、議論を効果的、効率的に進めていくため、資料2の1ページ目の3つの項目、まず、研究船で実施する観測・研究、次に、観測・研究に必要な観測機器、設備、その後、砕氷・耐氷能力という項目順で、議論させていただきます。
観測・研究に関しては、その項目が、前回の資料、きょうの参考資料4の方に、河野理事補佐から前回、項目出しをいただいて、議論が済んでいますが、これで過不足、抜けがないか、これを忘れていたということがないかを、皆さんの知識で補完していただければと思います。

【白山委員】
きょう配付された資料のスライドの番号が右下に付いている2番と3番ですが、結局、2015年に北極海域で砕氷船が行った観測というのは、6月から10月初旬までであって、実は冬、観測をしたという実績はあまりありません。その理由をどう考えるかですが、真冬の北極海で、真っ暗な中で観測・研究をするということは、物すごく困難で、かつ例えばバイオロジーでいいますと、その間は全然、生物はじっとして耐えているだけに近く、余りアクティビティーがない、また船でなくてもブイで観測できるのではないかとか、いろいろな要因があるかと思います。あるいはニーズがないのか、いずれにせよこの統計を見る限り、真冬に多年氷があるところで動く、つまりポーラークラス2の船であるメリットが、余り諸外国ですら生かされていないように思います。

【山口座長】
だからこそ、MOSAiCのプランがあって、それが今、注目されているということだと思います。

【川合委員】
このマップにはないのですが、沿岸域では冬を越すような観測を、カナダのArcticNet、Amundsenを氷漬けにしてやったりしています。
あとは、90年代の、シーバープロジェクトでも、カナダ海盆の方で冬を越す観測というのをLouis S. St-Laurentでやっています。

【山口座長】
結局、観測する項目で、前回資料で、研究船で実施することが考えられる研究テーマ例の方で、通年でないと困るというのは多くはなく、項目として考えると、15ページのマル3の北極海航路の活用云々と書いてあるところですが、海氷域における季節ごとの氷状と云々について、通年でデータがあればいいという話ぐらいです。
ただし、これも前回、大島先生がおっしゃったように、ブイを置くことで、数は限られるが、計測ができなくはないという状況で、あとの項目はもちろん、その船が行ける時期、場所が砕氷能力、耐氷能力によって変わるもので、それはもちろん大きな影響がありますが、観測項目が大きく変わるということではないというように感じます。

【大島委員】
今までの議論というのは、どうしても、今までの研究の延長線上にあり、アクセスがある程度可能なベースでのテーマになっているので、実際には、真冬で観測することの意義というのは間違いなくあると思います。
例えば、2年ほど前にノルウェーの砕氷船が海氷域の中に入って、通年で、昔のNansenのように漂流させて、その間でいろいろな物質循環やフラックス等を測り続けたというような観測もありますので、真冬に観測すればそれなりに意義はあるのだと思います。

【東委員】
先日の会議の後で極地研に戻り、若手の研究者の方たちの意見を聞いたところ、学会等でもそういう研究会を何度かやって、冬の観測とか、あるいは氷海を砕氷しながら進んでいくような観測にも、ニーズはあるようです。ただし、毎年は苦しいかもしれないので、南極と北極の両方の運用というようなことを考えではどうかという意見がありました。それで、今の大島さんのお話にもありましたが、今までのことばかりにとらわれず、新しいことに挑戦できるような船にしたいという気がします。

【山口座長】
それはとても重要な話で、研究者のやる気を促進するものになりますし、世界中から人が集まってくるものになると思います。そういう点でも、日本がそれなりのイニシアチブをとれるものになると思います。PC5だと、それが少し下がるという感じではあると思います。
技術的な話、科学的な話もありますが、そうではない部分として重要な話であると思いますので、提言としては、そういう点を仕分けた形で話をまとめたいと思っています。

【大島委員】
グリーンから始まって、北極研究はある意味でトップダウンの研究で、結構な成功を収めていると思います。もともと我が国のサイエンスのレベルは高いので、10年前に比べると日本の北極研究というのはすばらしい状況にあります。砕氷船では、北極に関しては中国や韓国の方が今、進んでいるのでしょうが、実際のサイエンスとなると圧倒的に日本の方が進んでいる状況だと思います。
ただし、今は「みらい」でアクセスが可能な地点での観測など、限られたところでやっている状況なので、今の体制のままでいくと早晩、研究に関しては頭打ちになっていくのではないかと危惧します。
研究提案というのも今までのベースの延長にあるので、それほど大きくアクセスが変わらないような状況だと、頭打ちになって、せっかくの日本の盛り上がった状況がしぼんでしまうということになるのではないかと思います。せっかくここまで盛り上がったのであれば、それなりに、冬季にもある程度の観測ができるような船になった方がいいだろうなと思います。

【山口座長】
1つ忘れてはいけないのは、「みらい」がもう寿命なので、代わりの船が必要であるということです。立派な砕氷観測船にすると、それは、「みらい」の代船にはなりません。海洋観測船としての「みらい」の代船というのは、日本の海洋観測というか、海洋研究のレベルを保つために絶対必要だと思います。
PC2にすると、それとは別に、観測船が必要になるという話になります。

【川合委員】
先ほどの河野理事補佐の御説明の中では、PC5でも、そんなに多年氷が混在しないところでは通年観測できるというお話があり、そういう意味だと、多年氷の少ない海域というのは広がっているので、そこでの冬を越すような観測をするという可能性もあるのではないか、特に、冬に観測を実施するからPC2でないといけないということではないと思います。
また、冬の観測は係留系でできるという話もありましたが、ラフな海氷の下の面のせいで、余り浅いところは観測機器が置けないという問題があります。そういう意味では、船で実際に冬に行くと、本当にごく表面の大事な大気、海洋、海氷のインタラクションが詳細に分かるというようなこともありますし、化学とか生物の観測になると、船でないとできないことはたくさんあると思います。

【山口座長】
そういった点は仕分けが必要です。船でないと行けない通年観測の項目とそうでなくても実施可能なものというふうに、分けて話をしなければいけません。その上で、北極域研究船としてどういうスペックがベストなのかという議論をしていかなければいけないと思います。

【大島委員】
前回山口先生から、冬のベーリング海を航行することは厳しいのではないかというお話がありましたが、そのあたりはどうでしょうか。

【山口座長】
本当に氷況次第なので、何とも言えません。ただし、一年氷ですが、積み重なっており、しかも南下流になっているので、心配はおおいにあります。

【田村委員】
何を観測するかという点で、問題はいろいろありますが、先ほど、皆さんのやる気を促進する船という話を考えると、5よりちょっと上ぐらいが動機づけになるように思います。そういう意味で、5ページの中国の新砕氷船を見ていますが、いい線をついている船です。
恐らくアジポッドがついており、ダイナミックポジション等もできそうな感じもしており、悪くないなと感じます。
ポーラークラス3と言わなくても、大きさも含めて5より少し上ぐらいの感じというのが悪くないのかなと思います。搭載人員も90人ですし、砕氷能力はもう少し下で、耐氷だけ強めておけば、先ほどの氷の中に閉じ込められる実験等、そういうものをできる可能性はあるかと思います。何をやるかは余り考えずに、魅力的という意味においては、そのぐらいが狙えるところかなと思います。

【山口座長】
結局、議論の項目の仕分けは難しいもので、混ざり合わせて話をしていますが、やはり船によってできること、できないこと、それから必要性といったものを、もう少しブレークダウンしなければいけません。 田村委員がおっしゃることももっともだと思いますが、海洋観測船としての機能を損なわないようにしないといけません。
1隻作るのであれば、平水中でも使用できることを忘れてはいけない話であり、上げられる耐氷・砕氷能力の限界が問題になるかと思います。PC2やPC3クラスだと、もう1隻作るものと開き直る話になると思います。ポーラークラスの中で、どういうことができるかということを考える、それだけでスペックを決めるという話になります。

【東委員】
この検討会というのは北極域研究船検討会で、中緯度の船を作る検討会ではないのではないかと思いますが、「みらい」の後継船を作るということが前提にあって、それに機能をアップして、北極も観測できる船というふうに考える必要があるものでしょうか。

【山口座長】
日本の海洋研究のレベルを上げていくには、やはり北極だけに特化してはいけないと思います。日本の海洋研究のレベルが高かったので、北極をやろうというときに人が集まって、世界トップクラスの研究ができている、そこの部分は忘れてはいけないと思います。

【東委員】
とても重要なことだと思いますし、「みらい」はサポート体制等が整っており、非常に高い精度で観測ができると聞いていますので、そこは是非キープするべきだと思いますが、何に優先順位を置くかというところについて、教えていただければと思います。

【山口座長】
この検討会としては、やっぱり北極域で何をするかという点に、一番プライオリティーを置いて議論していただければといいと思います。その結果として、例えば、それが予算的に無理だという話になれば、後の話になると思いますが、そのときに案を1つしか考えていないのであれば、全部無かった話になってしまいますので、何段階かの話をまとめておかなければいけないと思っています。

【田村委員】
中緯度の観測という意味において、「かいめい」ができたので、その分、「みらい」のところは少し肩代わりできていることはないのでしょうか。

【白山委員】
「かいめい」の就航に伴って、「なつしま」と「かいよう」という2隻の船がなくなりましたので、むしろ中緯度、低緯度の観測の能力が下がったと言ってもいいかもしれません。
実際、受託の研究を中心に、現在残っている船と「かいめい」、それから、「かいれい」と「よこすか」で実施していますが、それが非常に日数を消費しているので、実はコミュニティーにその3つの船で供給できる低緯度、中緯度、あるいはベーリングへの、研究航海の日数は、3船合わせて50日しかない。「みらい」が200日ほどコミュニティーに供給できているので、それなりのトータルの日数になっていますが、「みらい」もなくし、北極の船だけを作るという話になりますと、コミュニティーが公募で、中・低緯度で毎年使える日数は50日になります。
つまり今の日本の海洋科学にとっては致命的なダメージになるだろうと思います。

【大島委員】
ただ、この海洋船がどういうレベルになるかにもよりますが、JAMSTECとは限らず、どこが運用するかについてはここで決めるようなことではないかと思いますので、どういう形になるかとはまた別問題だと思います。

【白山委員】
ですので、「みらい」の後継船として新しい船を作った場合に、できた船が中・低緯度では観測に向かない船になり、JAMSTECが運航した際には、そういうシナリオになるということです。

【瀧澤委員】
仮に、「みらい」の後継船にもなり得る北極船を作ったとして、ほかの中緯度も含めた需要はちゃんと満たせるのでしょうか。

【白山委員】
今より悪くはならないと思います。

【瀧澤委員】
悪くはならないと思いますが、むしろ、先ほど東委員の御指摘もありました、あの議論は筋論としては正しいと思いますが、まず必要なものとして、北極、南極、両方行けるもの、それから、「みらい」の後継船を別々に考え、それがどうしてもだめだったらどうするかという話になるかと思います。むしろ前者、2船を作る方が、観測にとっても、中緯度も含めた、低緯度も含めた観測にとっても望ましいという状況ではないでしょうか。

【白山委員】
運航費のことを全く無視すれば、そういうことになります。

【瀧澤委員】
その運航費ですが、13ページのケース1は「しらせ」と同程度、ケース2は「みらい」プラス氷海運航というふうに書いてありますが、具体的にどれぐらいの金額かということと、「しらせ」と同程度のケース1の場合、「しらせ」は乗員数もすごく多いので、大分違ってくるのではないかと、感じたのですが、実際にはどれぐらいの金額が想定できるのでしょうか。

【林海洋地球課長】
予算上、「みらい」は大体18から19億円、どういう運用をするかによって、実際にかかるお金は違いますし、毎年、また5年に一度点検があり、一概には何とも言えませんが、ここ数年の平均を見ると、大体18から19の間であるかと考えています。
「しらせ」につきましては、これも運用の在り方が、ドックに入っている期間が長く、一概に比べられるものではないというふうに思いますが、運用費として計上しているのは40億円程度ということになります。
したがって、PC5クラスの話であると、20弱の「みらい」に加えて、これもまた、どういう運用をするかにもよりますが、氷があるところに行って、余計に修繕費がかかるとか、あるいは燃費が落ちるとか、そういうことを踏まえると、今の「みらい」よりは高くなり、20を超えていくような運用費になるだろうと考えております。
あくまで、運用のやり方や検査の在り方によって変わってくるので、一概に言えず、表の中には明確に入れてはおりません。

【瀧澤委員】
ケース1の場合の40億円というのも、実際には、それよりは大分低くなるのでしょうか。

【林海洋地球課長】
それも、どういう運用をするかによりますが、本当に氷の厚いところに行ってということになれば高くなるでしょうし、逆に修繕の期間が長くなると、もしかしたら軽くなるかとは思いますが、PC5の船よりも相当程度高くなるだろうというようには思います。

【白山委員】
10ページのスライドを見ていただきますと、機関出力比というのが、これはほぼ油代相当だと思っていただいていいと思いますが、「みらい」は非氷海に相当しますが、同じ大きさの船だとすれば、PC5クラスで1.5倍ぐらいなのですが、PC2ぐらいになると5倍ぐらいにはなるのではないでしょうか。

【山口座長】
最大出力は、一番厳しいところを想定して決めますので、そこまではいかない、燃料がそんなに要るというわけではないです。ただ、これを機関平均したような数式になるということなので、大きくはなります。

【田村委員】
電気推進を使うので、少し話は違ってくるのではないでしょうか。そういう意味で、別にこの倍数でなくても少し高くなるかもしれません。

【白山委員】
単純に言って、船の重さは2倍になるわけですね。

【田村委員】
また、船速が、12ノットは結構遅いです。15あるか、ないかはすごく大きな差で、乗っている人の感覚も加味すると、15ノットというのは何とか確保したいなという感じはします。

【山口座長】
これは別のところで議論したときも、最初から12ノットになっていましたが、この辺の船速の根拠というのはあるのでしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
「かいめい」の船速で12ノットです。

【山口座長】
確かに、北極、南極、両方行くとなると、もう少し船速が欲しいというのがあります。

【田村委員】
やはり遠いだけ船速が遅いときついかと思います。

【大島委員】
PC5なら確実に夏は全く問題なく行けると思いますが、真冬じゃなくても、冬に北極域に入っていけるかどうかという点が論点の1つではないかと思います。例えばPC5でも入っていけるというのであれば、PC5でも冬の観測ができるわけです。
作った砕氷船が夏にしか使えないというのと全シーズン使えるのでは、サイエンスとして全然違ってくるので、論点の1つなのかなと思います。

【山口座長】
ベーリング海峡を越えられるかどうかは、やっぱり氷況によるので、そのとき次第にしかならないと思います。ただ、西から入るというのはあるかもしれません。ただ、西から入っていくのにどんな意味があるのという話はもちろんあると思います。
河野理事補佐、「みらい」にアイスパイロットを乗せていますよね。ああいう人たちに意見を伺うことは可能でしょうか。PC5のこういう船だと、ベーリング海峡を冬に越えられそうかどうかについて。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
検討はしますが、アイスパイロットは、どうでしょうか、PCのクラスと行けるかどうかの話について、包括的な見識を持っているでしょうか。
先ほど来の議論を聞いていると、5と4や3、その数字だけが動いているように思いますが、山口先生がおっしゃるとおりで、たとえPC3の船を作っても、行けるときもあれば行けないときもあります。
ですので、例えば、絶対にベーリング海に冬に行けることを保証しろという話であれば、それこそPC1の船を作るしかない。ですので、ポーラークラス5ではだめで4ならといった議論にはならないのではないかと私は思います。ポーラークラスの部分の日本語がこういう書き方なのは、ポーラークラス3の船だと1.2メートルの氷を割れることを保証する、ということではなく、船の強度がこういうものであれば、ポーラークラス2と呼べるということです。
つまり、ポーラークラス5と称しているものを4にしたからといって、行ける海域が明らかに広がることを保証するものでは必ずしもなく、そのとき次第ではあります。

【山口座長】
大島さんたち科学者側の御要望はよく分かりますが、若干無理な議論があるのではと思います。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
ケース2の船でも冬に観測に行くことのできる可能性はあります。ケース2と言っている船を考えていたときのコンセプトは春と秋に、今まで観測できなかったところで観測できるようになり、かつ、冬にも条件付きで観測できるような通年観測ができる砕氷船というイメージです。
それを、この海域にいつ行けることを保証します、何メートルの海だったら行けるのですかという数値ベースの保証を求められても、難しいです。
「みらい」も、シーステートを読んでできると言っていますが、シーステートを読んでも、できるときとできないときがありますし、シーステート5だって、やったことがあり、それと同様です。
ですので、どんなコンセプトの船なのかということを決めれば、それに伴う設計というのは後から付いてくるのではないかと思います。それに基づいて、ポーラークラスのどの認定に当たるのかというのを決めるというのが順番ではないかなと思います。
また、JAMSTECでの検討では、東委員がおっしゃった、若い研究者たちの研究会の成果をまとめたものを取り入れています。若い人たちは冬に観測するとおっしゃると思いますが、日本にいる北極研究者の人数が、果たして、世界に比べてそんなに多いか、お考えください。
もう一つ、『nature』、『Science』『nature geoscience』に北極研究で論文を書いた研究者は、ここ数年だと、ここにいらっしゃる川合先生1人です。
その状況で、冬だって研究者のニーズがあると、日本がPC2の船を作ったとして、後が続くでしょうか。
なので、これまで強いところをさらに強めていって、国際的なプレゼンスを上げるということに重点を置いたのがケース2です。やる気を促進したいのであれば、大きな砕氷船を作ればいいのだと思います。ただし、世界で初めて冬に北極点へ行きましたといったものを、科学が求めているのではないと私は思います。

【大島委員】
河野理事補佐のお話はもっともだと思いますが、PC云々とは無関係に、冬とか春とか秋に北極に、海氷状態がどうで、どのようにアクセスできるのか、そういう点をもう少し調査できればと思います。基本的にベーリング海や海峡は一年氷で、そんなに厚くはありませんが、どんな科学者でも、毎冬、北極に入って観測するということはなくて、タイミングのいいときに何年かに1回やる。それだけでも十分、サイエンスとしてはすばらしい成果があるものだと思います。
ただ、その何年かに1回、いい氷況のときに行くチャンスがあるのかどうかも含めて確認した上で議論した方がいいのかなと思います。

【山口座長】
運用上の問題じゃなくて、氷況と船、砕氷能力の問題としてでしょうか。

【大島委員】
はい、ある程度の船であれば、チャンスがあれば冬に入っていけるのかどうかということです。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
前回の資料で参考に付いております、参考資料4の11ページをごらんください。これが2016年2月の海氷のデータです。ブルーとグリーンの間ぐらいの色のところが1メートルですので、大体濃いめの緑に見えるかなというところが航行可能海域になると思います。

【大島委員】
確かにこのデータを知っていますが、これはそんなに当てにならないように思います。

【JAMSTEC(河野)】
そのとおりだと思いますが、大島先生の御要望にお応えするための資料をご提供することは難しいです。

【白山委員】
今の議論で1つ考えるのは、真冬にベーリング海峡を越えなければいけないかというのが、ポイントとしてはあるかと思います。つまり、春、入っていて、秋に出る、もしくは秋に入っていて、春までいてもいいわけだと思います。そういうことも加味して、船の、あるいはサイエンスのリクエストです。
ただし本当に越冬できるかどうかが問題だと思います。

【田村委員】
越冬は結構大変で、ノルウェーの方たちはされてますが、JAMSTECが越冬するということを考えたら、だんだん要望が多くなると思います。
別に砕氷能力を高める必要はそんなになくても、耐氷性能は上げておくとか、船の運航に安心感を与えることは重要です。

【山口座長】
例えば、いざとなればロシアの砕氷船に助けてもらうとか、そういうふうな準備をしておかないと、難しいかなと思います。乗組員の問題もあります。

【大島委員】
ただ、例えば日本の役割として、太平洋側をやるとすれば、ほとんど一年氷で、真冬といえどもそんなに、危険な氷が多くあるようなところなのかなという気はします。季節海氷域になっているわけなので、そんなにヘビーな氷があるわけではないと思います。

【山口座長】
カナダ海盆域は北から結構流れてきています。

【川合委員】
多年氷の集まっているグリーンランド海側からぐるっと回ってくることがたまにあります。

【白山委員】
1つだけ意見します。どういう観測をするかという議論は、スポットなのですが、どういう航海をするかというイメージでないと多分、船のイメージとして考えにくいところもあるのではないかと思います。それこそステークホルダーの方に、幾つか考えていただくと、観測はどうか、船はどうかという議論のほかに、例えば必要な観測機器は何かとか、そういう点にもかなり議論が深まるような気がいたします。
つまり、夏、ピストンコアラーで泥をとるのと、冬、ピストンコアラーで泥をとるのは全く違いますし、そういうところも、航海全体のイメージがあった方がいろいろ議論しやすいかもしれません。

【山口座長】
議論の進め方としては、私としては、この会議の後、少し時間を置かせていただいて、少人数で、事務局と、河野さんとか私で、もう少し具体化したものを考えたいと思います。
そのとき、多分、1つに絞り込むことは無理で、これだとこうなる、これだとこうなるという感じの書き方になると思いますが、それを、次回の会議よりも前に先生方にお配りして、御意見を頂いた上で集約していくというような進め方にさせていただきたいのですが、それでよろしいでしょうか。
では、次回の会議につきましては、本日、かなり御議論いただきましたので、第3回目で扱う項目、開催時期等について、事務局と相談した上で御連絡することにさせていただきたいと思います。現在、既に日程調整中でございますので、少し先になるのではないかなと思います。
次に、議題2の「その他」ですが、皆様から何か、その他御意見ございますでしょうか。

【大島委員】
観測機器で、例えばヘリをどうするかとかその辺は、きょうは議論はしていないかと思います。

【山口座長】
私はヘリは必須だと思っておりました。

【大島委員】
ただ、例えばヘリを常備するというのはすごく大変だから、ヘリ甲板は必要ですが、常備でなくて、必要なときにレンタルするというぐらいなのか、それとも常備なのかとか、いろいろあると思いますが、私は、ヘリ甲板は必須だと思いますが、ヘリを常備するのは、すごく運航経費もかかるので、必要なときにレンタルでいいのではないかと思います。

【山口座長】
サポートする砕氷船があれば別ですが、氷海域に単独で入る以上、ヘリは必須だと思います。

【田村委員】
私も必須だと思っていましたが、そのときに必要なら借りるという観測をするし、緊急のときに、絶対にピックアップができるためにヘリは必要ですから、ヘリが降りりられるようにするというのが一番必要だと思います。

【大島委員】
越冬観測という場合には、まさにそうだと思います。

【山口座長】
それでは、事務局から連絡事項等をお願いします。

【山口海洋地球課長補佐】
次回の会議につきましては、再度、座長と御相談させていただいた上、追って先生方には御連絡させていただきたいと思います。
また、本日の会議資料につきましては、机上に残しておいていただけますと、また郵送させていただきますので、よろしくお願いします。
以上でございます。

【山口座長】
それでは、本日の会議はこれで終了とします。
ありがとうございました。

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