北極域研究船検討会(第1回) 議事録

1.日時

平成28年11月1日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省18階 研究開発局1会議室

3.出席者

委員

山口座長、大島委員、東委員、可合委員、白山委員、瀧澤委員、田村委員

文部科学省

田中研究開発局長、林海洋地球課長、小酒井極域科学企画官、山口海洋地球課課長補佐

オブザーバー

河野海洋研究開発機構研究担当理事補佐

4.議事録

【小酒井極域科学企画官】
定刻となりましたので、ただいまより、北極域研究船検討会第1回を開催します。
本検討会の座長につきましては、参考資料1にお配りしておりますが、「北極域研究船検討会の設置について」(平成28年10月7日研究開発局長裁定)におきまして、研究開発局長が指名することとされており、これに基づきまして、山口委員に座長をお願いしているところです。
つきましては、これ以降の進行は山口座長にお願いしたいと思います。

【山口座長】
ただいま御紹介いただきました山口です。局長からの御指名を頂きましたので、本検討会の座長を務めさせていただきます。よろしくお願いします。
検討会の開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。私は、1978年に東大船舶工学部船舶工学科を卒業後、大学院に進み、1983年に博士を取得しています。エンジニアであり、かつ造船教育を受けた人間です。したがって、あまり海洋観測の実績はありませんが、1990年代に日本財団で北極海航路のプロジェクトがあった際に、ロシアの砕氷貨物船に乗船し、北東航路を航海しています。それから、2012年に、文科省のArCSの前のGRENEの北極研究プログラムで、カナダの砕氷船Louis S. St-Laurentに乗船し、北西航路を航海しています。航路調査の観点で両方の航路を調査したのはそうそういないと思います。少ない経験ですが、そういう経験もあって御指名いただいたものと思っております。
この大任、皆様の御協力により一定の結論に持っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、本日の出席者について、事務局から紹介願います。

【山口海洋地球課長補佐】
それでは、山口座長以外の委員の皆様について、御紹介いたします。
東委員でございます。

【東委員】
よろしくお願いいたします。

【山口海洋地球課長補佐】
大島委員でございます。

【大島委員】
よろしくお願いします。

【山口海洋地球課長補佐】
川合委員でございます。

【川合委員】
よろしくお願いいたします。

【山口海洋地球課長補佐】
白山委員でございます。

【白山委員】
白山です。よろしくお願いします。

【山口海洋地球課長補佐】
瀧澤先生は遅れて来られまして、田村委員でございます。

【田村委員】
田村です。よろしくお願いいたします。

【山口海洋地球課長補佐】
本日は、全ての委員の方に御出席いただいております。
また、資料の説明者として、海洋研究の河野研究担当理事補佐にも御出席いただいております。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
河野です。よろしくお願いいたします。

【山口海洋地球課長補佐】
続きまして、事務局の御紹介をさせていただきます。研究開発局長の田中です。

【田中研究開発局長】
田中です。よろしくお願いします。

【山口海洋地球課長補佐】
海洋地球課長の林です。

【林海洋地球課長】
林です。どうもよろしくお願いします。

【山口海洋地球課長補佐】
海洋地球課極域科学企画官の小酒井です。

【小酒井極域科学企画官】
小酒井です。よろしくお願いします。

【山口海洋地球課長補佐】
私、海洋地球課の山口です。よろしくお願いいたします。

【山口座長】
それでは、田中局長に御挨拶いただければと思います。よろしくお願いします。

【田中研究開発局長】
本日は、お忙しいところにもかかわらず、皆様には、委員をお引き受けいただきまして、また、第1回の検討会に御出席いただきまして、本当にありがとうございます。
今後の北極域研究につきましては、今年の2月から7月にかけまして、科学技術・学術審議会海洋開発分科会北極研究戦略委員会において御審議いただきまして、8月に、資料としてお配りしておりますが、北極域研究全体を俯瞰しつつ、我が国として今後どのように北極域に戦略的に取り組んでいくべきかということを内容とする「北極域研究の在り方について」を取りまとめていただいたところです。
この取りまとめにおきましては、北極域は海洋の占める割合が大きく、多くの研究課題の観測プラットフォームとして研究船が必要とされるなど、北極域で活動できる研究船の役割が非常に大きく、このため、今後我が国が北極圏における研究・観測を主体的に実施するには、今後取り組むべき研究課題に対応する観点から、どのような大きさ、砕氷・耐氷能力、観測機等が必要かについて検討を進める必要があるとの提言を頂いているところです。
本検討会におきましては、今後の北極域研究船の在り方について、具体的に必要とされるスペックとはどのようなものかという点を中心に御議論いただければと考えております。
この北極域研究船につきましては、自民党の北極議連の先生方からもいろいろ御提言を頂いており、また、本日、大臣の定例の閣議後記者会見があり、その場で記者から、「北極域研究船の検討会第1回が開かれますが、大臣のお考えは」というようなことを質問されたということで、注目を浴びている分野です。委員の皆様方から貴重な御意見をいただくとともに、今後の北極域研究の御支援をお願いいたしまして、私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。

【山口座長】
ありがとうございました。
次に、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【山口海洋地球課長補佐】
お手元の議事次第を御覧願います。本日の資料として、配付資料4件、参考資料3件、計7件の資料をお配りしております。不足等がございましたら、お申し出いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【山口座長】
もし途中でも不足に気付かれましたら、事務局の方におっしゃっていただければと思います。
それでは、議事に入ります。まず1つ目の議題ですが、「北極域研究船検討会議事運営規則(案)について」です。まず、資料について事務局から説明願います。
 
【山口海洋地球課長補佐】
お手元の資料1と参考資料1、を用いて説明させていただきます。
まず参考資料1ですが、これは本検討委員会の設置に関する研究開発局長裁定の資料です。
次に、資料1ですが、これが本検討委員会の議事運営に関することを定める議事運営規則(案)です。内容ですが、第2条の2では座長代理について、第3条では定足数、第4条では議事の公開、第5条では議事の内容の公開について規定されております。
以上でございます。よろしくお願いいたします。

【山口座長】
ただいまの説明につきまして、御意見、御質問ございますでしょうか。
もしなければ、議事運営規則をこの案文のとおり決定させていただきたいと思います。ありがとうございました。
次に、この議事運営規則第2条にある座長代理についてですが、座長が指名することとなっています。つきましては、国立極地研究所の東委員に座長代理をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

【東委員】
東です。よろしくお願いいたします。

【山口座長】
それでは、次の議題に移ります。次の議題は、「今後の北極域研究船について」です。まず、事務局から資料に基づき、1、北極域研究をめぐる現状、2、本検討会における検討の進め方の御説明を頂き、その後、3つ目、各国の北極域研究船の現状等について、JAMSTECから御説明いただきます。よろしくお願いします。

【小酒井極域科学企画官】
それでは、資料2をお手元に御用意願います。
まず、この資料2ですが、科学技術・学術審議会海洋開発分科会に設置された北極研究戦略委員会において、本年の2月から7月まで5回にわたって、これまでの北極研究に関する意義、現状、課題等を踏まえて、今後の北極研究の在り方について御審議いただき、取りまとめを行ったものです。
その中の今後の方向性としては、北極域研究全体を俯瞰し、今後取り組むべき研究・観測分野及び観測手法について整理をし、我が国の強みである科学技術を生かして、北極域の持続的発展に貢献していくこと、また、永久凍土の研究・観測など、国際的に未着手となっている課題の実施、あるいは、国際的な観測データの共有促進、また、北極域で活動可能な研究船・無人探査機の開発の検討促進等について取りまとめを頂いています。
本検討会に関係する部分ですが、資料2の10ページをお開き願います。10ページの上から1つ目の段落ですが、北極域は海洋の占める割合が大きいことから、多くの課題の観測プラットフォームとして研究船が必要とされているといった現状、また一方で、他国の研究船を傭船とした研究・観測の実施につきましては、所有者の意向が最優先されることから、希望する運航航路ですとか、日数、観測の実施の確保ができないなど、様々な制約が課せられているといった現状がございます。
したがって、我が国が主体的に研究・観測を実施していくためには、今後取り組むべき課題に対応する観点から、規模、大きさ、砕氷・耐氷能力、装備等について、費用対効果の面も含めて、さらに検討を進める必要があると提言をされているところです。
このため、本検討会におきましては、北極域において取り組むべき研究課題や、その際、研究船に求められる規模、設備等について御検討いただきたいと考えております。
続きまして、資料3ですが、北極域研究船検討会における議論の進め方の事務局案としてお配りしております。
全体で4回程度開催し、一定の取りまとめをいただければと考えているところです。
本日ですが、この後、JAMSTECから御説明等を頂きまして、その後、自由討議、第2回は、本日の議論を踏まえた論点整理、また、研究船に求められる規模、設備等に関する検討、第3回は、引き続き、研究船に求められる規模、設備等の検討、検討結果の取りまとめについての御議論、第4回は12月以降を予定していますが、検討結果の取りまとめ、ということを考えているところです。
以上です。

【山口座長】
続いて、資料4に基づき、各国の北極域研究船の現状並びに研究船への搭載が考えられる設備等について、JAMSTECの河野研究担当理事補佐から御説明願います。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
海洋研究開発機構の河野です。資料4に基づき御説明させていただきます。
きょうの説明内容ですが、北極で活動する主な観測船等を欧米とアジア諸国に分けて簡単に御紹介し、その後、主な観測船の中から一部について詳細御説明したいと思います。引き続き、我が国の北極研究における北極域研究船の役割の例、それから、北極域研究船で実施することが考えられるテーマ、それから、備えるべき機能と役割などの例について、当機構で勉強した結果を踏まえて御説明したいと思います。
2ページ、北極で活動する主な観測船等ですが、ここでは主に研究活動に用いられたことのある公の船、公船をまとめてあります。
まず米国ですが、このHealy、POLAR STAR、Sikuliaqというような3隻をピックアップしました。赤字の部分については、後ほど少し詳細を御説明します。
左から4つ目のカラムに建造年が書いてありまして、Sikuliaqは2014年建造の非常に新しい船です。
その2つ右に排水量が書いてあり、これで大まかなサイズを御理解いただけると思います。砕氷船の多くは1万トンを超えるクラスのものが多くなっております。
その隣の砕氷能力ですが、これが、例えば、Healyの場合、1.4メーターの氷を3ノットで割りながら航行できるというもので、氷に向かってぶつかっていって、割ってちょっと進んで、また戻って、またぶつかってと、こういった能力を示したものではありません。それが可能な仕様としますと、もう少し厚いものも割れるということになります。これはあくまで割りながら進める能力ということになります。
主な特徴が一番右端に書いてあります。例えば、Sikuliaq、新しい船ですが、これは3,700トン、非常に小さい船で、しかも、氷を割る能力も小さいため、乗船人数も少なく、ヘリコプターもないということで、非常に特殊な船です。
カナダでも、この3隻がありますが、この中でLouis S. St-Laurentというのが非常に古く、1969年建造。この船については、2017年に廃船にすることが決まっており、代船が建造予定ということです。後ほど少し詳細を御紹介しようと思います。
ノルウェーのHaakon、これが2017年就航予定の、今、最新鋭に近いものです。9,000トンと書いてありますが、グロストンですので、容積を表わすようなものだと思っていただけるといいかもしれません。排水量という重さで言うと、恐らく1万トン以上になるかと思います。5ノットで1.0メートルですので、そこそこの砕氷能力があります。
ロシアについては、大型の砕氷船を持っているということですが、詳しく調べるのが非常に難しいところがあります。
イギリスは、Sir David Attenboroughという船を建造中で、2019年に進水予定。1万3,000トンで、3ノットで1.0メートルですので、「しらせ」よりは若干小振りという感じです。
ドイツは、Polarsternという船が活躍しておりまして、82年建造。排水量が1万7,300トンと大きい船で、5ノットで1.5メートルの氷が割れるという、かなりの砕氷能力ということになります。
次のページですが、アジア諸国、今までの国は北極圏国、あるいは、非常に北極海に近い国でしたが、中緯度の国をまとめました。
中国は、雪龍という船と、新規に建造予定をしております、2016年末に着工予定と聞いておりますが、ひょっとすると着工しているかもしれないという時期です。
韓国は、ARAONという船を韓国の極地研究所が持っており、排水量が9,000トン、。3ノットで1メーターの氷が割れるという、そこそこの砕氷能力を持った船です。後ほどまた詳しくお知らせします。
日本は、「みらい」。これは砕氷船ではありませんので、ここにリストしてはいけないところですが、97年建造の耐氷船です。それから、「しらせ」は、御存じのとおり北極で活動しておりませんので、北極で活動する主な観測船には入りませんが、我が国が持つ代表的な砕氷船ということで、こちらに挙げております。排水量は1万3,000トン弱で、1.5メートルの氷を3ノットで割れるという船です。
どの船も、一番右端の主な特徴を見ていただきますと、「しらせ」を除きまして、両極で活動している船が多く見られます。
幾つかの船について、少し詳し目に御紹介いたしますと、4ページは、それらの船の外観の写真です。さらにめくっていただいて、ポーラークラス言葉の定義をそこに書いております。
ポーラークラスというのは、砕氷能力ではなくて、これくらいの氷に囲まれても大丈夫というような定義でありまして、大体「しらせ」が、ポーラークラスで言うと、2のクラス。ポーラークラスが1という船があまり存在せず、ロシアにあるくらいです。それから、「みらい」に当てはめますと、ポーラークラスの7相当になるだろうということになります。それぞれ、冬に多年氷がある海域に行けるかどうかというようなところを基準に、定義されているということです。
まず、アメリカのHealyです。1999年に就航し、ポーラークラスで言うと2。原子力砕氷船などを除きますと、最高クラスに近いものです。1.4メーターの氷を3ノットで割ることができて、観測機材についても比較的充実しています。船尾にはAフレームクレーンなどを持ち、AUVや大型の観測機材なども使えるようになっております。後ほどちょっと話題になるので申し上げておきますが、聞いたところによりますと、比較的古い砕氷船で、機能のいい船については、プロペラを固定ピッチにするというのが多かったそうで、この船は固定ピッチプロペラの2軸の能力です。
この船は、JAMSTECでは一度一緒に観測に従事したことがあって、アメリカの研究者が行う北極海での観測航海に共同研究という形で乗船したことがあります。このときは分担金とか傭船費とかは発生せず、共同研究という形で、こちらの費用はこちらで持つという実費の形になります。
隣にありますSikuliaqというのが新しい船で、非常に特徴的です。ポーラークラスで言うと5ですので、一応砕氷船という船は大概ポーラークラスが5より上ということになりますので、ぎりぎりというような感じをイメージしていただければいいと思います。氷も2ノットで0.8メートルですから、もし3ノットでノーマライズすると、もう少し砕氷能力が劣るというものです。ただ、観測船を強くイメージしていますので、一般海上気象であるとか、あるいは、普通の観測は実施することができて、船尾にAフレームクレーンもあり、普通の観測も実施できるような形になっています。特徴的なのは、このアジマススラスターというので、これは旋回するようなプロペラが付いて、プロペラ自体が旋回するような装置でして、これを使用すると、位置保持が非常に精度よくできるということで、観測をかなり強く意識した設計になっています。アラスカ大学が運航していますので、研究者のネットワークによって、相乗りで観測するということは不可能ではないと聞いております。
Louis S. St-Laurentについて、これは1969年の就航で非常に古い船で、当時、ポーラークラスはありませんので、アークティッククラス4で表示され、これはポーラークラスの2に該当するということなので、これも最高に近い耐氷能力を持つ船です。砕氷能力も一般以上ということになっておりますが、この船は必ずしも観測に特化したような船ではありません。観測に使うために、普通の一般海上気象であるとか、CTD・採水/BT/ADCPなど、水温や塩分を測るという観測は実施可能だと聞いております。古いので、固定ピッチプロペラ3軸の船ということになります。
この船は、JAMSTECとカナダのDFO(漁業局)の研究所がMOUを結んでおり、参加費(分担金)はほぼ傭船費ですが、必要日数に応じた分担金を払うことで観測を実施したことがあります。当時のレートでは、1日当たりカナダドルで、9万5,000カナダドルです。
次がPolarsternですが、これが1982年竣工、PCは2ということで、1.5メーターの氷を5ノットで進むことができ、これは砕氷能力としてはかなり高い方ということになります。これも観測をかなり強く意識しており、船尾にAフレームクレーンがあるほか、可変ピッチプロペラも装備しており、ピストンコアであるとか、サブボトムプロファイラーなど、海底下の観測も可能となっています。これも共同研究で分担金などは発生せずに、彼らの航海に参加したことはあります。
次のページですが、アジアの船として、Araonです。これはPC4.5と称していて、4と5の間ということになります。これは2009年建造の新しい船ですので、やはり観測を強く意識しており、観測機材のほか、マルチチャンネルや重力計など、地質の観測もできるような装備になっておりますし、アジマススラスターを備えており、位置保持も精度よくできるような設計になっています。研究者のネットワークによって相乗りは可能で、事実、日本人の研究者も乗船しております。
建造中のHaakonですが、これはPC3になるであろうということです。これもかなり観測を強く意識しており、普通の観測機材のほか、書いてありませんが、Aフレームクレーンも装備しています。ムーンプールという、船体の真ん中に穴が開いていて、そこから観測も実施できるというような設計になっています。もちろん、推進器もアジマススラスターです。
次ページですが、「しらせ」です。北極では活動していませんが、ポーラークラスで言うと2相当。砕氷能力も、最上とは言いませんが、かなりの砕氷能力を持った船です。ただ、貨物船ですので、観測の能力については、ごく普通のXBT/ADCPとか、一般海上気象、それから、マルチナロービームもあり、測探ができることになっています。推進器は固定ピッチプロペラです。
また、耐氷船ですが、「みらい」です。「みらい」はポーラークラスで言うと7ぐらいで、これは観測船ですので、これまで出た船のほとんど全ての観測を網羅しています。傭船については、スケジュールが空いており、JAMSTECが受託できる趣旨の航海であれば、運航費の負担で傭船が可能ということになっています。
10ページ目は総括です。主な砕氷船は、北極と南極の両極で活用しています。それから、当機構で独自に調査したところ、砕氷船ではありますが、韓国や中国の船は、「みらい」とほぼ同じ夏季に同じような海域、太平洋の氷がないところで航海をすることが多いです。これは、そこでの観測研究というのを国際共同でやっているからということだと思います。中国については、一度、北極を縦断なのか横断なのかの航海を実施しているようですが、韓国については、ほぼ太平洋域だけということになります。
それから、最近の船の多くは、砕氷能力だけではなくて、例えば、アジマススラスターを付けるなどの定点保持機能を持たせて、観測を強く意識して設計されているようです。
また、中国の砕氷船については、今年末に建造に着手する予定で、今持っている設備よりはやや小型で、ポーラークラス3程度、砕氷能力は、2~3ノットで1.5メートルということなので、比較的強力ということです。
韓国についても、新砕氷船の建造が正式決定するという情報がありますが、今現在、決定したという情報は、私どもは得ておりません。
先ほど申し忘れましたが、インドについても、計画はありますが、着手あるいは実行段階になったという情報はまだ得ておりません。
以上が、研究船による各国の状況です。
次に、我が国の北極研究における北極域研究船の役割例ということを御紹介します。
先ほど来、皆様の御挨拶の中にもありましたとおり、北極海では温暖化が進行しており、そのために氷が減少し、北極航路の利用、あるいは、海底資源の開発の可能性が高まるということで、我が国でも北極政策を策定しているところです。一方、環境の悪化や気候変動の進行による影響も深刻化し、これに対する研究活動が求められているところです。
これも先ほどありましたが、北極は海が占めている面積が大きく、北極海の観測研究というのが大きな役割を占めるということです。
これまで我が国では、単に北極海のみならず、それに続く北部太平洋、あるいはベーリング海等の北極周辺海域を含めてた北極海太平洋側の夏の研究というのを長く続けていて、ここにはかなりの強みを持っております。ただ、これまでは主に「みらい」を利用していましたので、氷海での活動は困難ですので、例えば、北極政策で言われているような北極域研究船として「みらい」を位置付けるのは、やや北極海における活動能力が不足していると言わざるを得ません。
そこで、ここでは、「北極域研究船」を建造して、プラットフォームとするということが重要なのではないかというのが役割の例です。
次ページですが、北極政策の抜粋と、その下は、例えば、我が国がなぜ太平洋側が強いかという点です。Pacific Arctic Groupという組織があり、日、米、ロシア、カナダ、韓国、中国の研究機関が国際的に協調して観測を行っており、韓国の砕氷船が北極に行く場合、太平洋側、我々と同じようなところというのは、PAGに参画しているからということが言えると思います。
それから、MOSAiCという今重要視されつつある気候研究のための研究があり、各国が砕氷船などを出し合って共同で研究するというものです。我が国も、特に研究面においては深く関与しつつあるところです。
次ページですが、北極域研究船で実施することが考えられる研究テーマ例です。先ほど来の北極域の周辺海域を含めた実績のある海域における観測研究を強化するばかりではなく、特にこれまで行けなかったところ、行けなかった時期に行ってこそできるような研究というのをさらに拡充していくことがよいのではと考えています。
テーマ1としては、温暖化によって広がる結氷・融解域、解けたり凍ったりする海域、ここに行けるようになりますので、ここでの現象解明に関わる研究です。概要は詳しく申しませんが、これには、今「みらい」で行われているような様々な生物、物理、化学の観測が必要になります。そして、そのための装備が必要になります。
それから、夏季海氷激減のメカニズムの解明に関する研究、これも、氷の中に入っていけるということで、今までできなかったところでのデータが取れるようになります。
次ページですが、北極航路の活用についてです。これも、リアルタイムの氷の状態や厚さの観測が必要ということで、これも今「みらい」では非常に限られたことしかできません。これが氷の中でも可能になる。
次に、船舶の建造技術です。せっかく氷海域船を作るのであれば、最初からその技術的なデータとなり得るようなセンサを付けることが可能ですので、め、船体のモニタリング、船底の海氷の挙動のモニタリングなど、我が国は当該分野における造船技術は優れていますので、そこの研究に活用できるのではないかと考えています。
また、我が国ではこれまでほぼ取り組んでいませんが、例えば、海底のあまり深くない数メートルから10メートルぐらい、あるいは20メートルぐらいのコアを採ることで、古環境の研究ができるようになります。あるいは、上から降ってくる沈降物を採ることによっても、こういうことができるようになります。
さらに、サブボトムプロファイラーや、マルチビームなどの地質系の装備を付けることで、テクトニクスの解明に係る研究にも着手することが可能になります。
これらの例を踏まえますと、備えるべきと考えられる機能は、北部太平洋、ベーリング海等、北極海周辺海域における観測が従前のとおりできるということに加えて、一年氷、多年氷が混在するような海域においても活動が可能となるような耐氷性能及び一定の砕氷機能が必要なのではないかと考えられます。
そして、例えば氷海に行きますと、安全面からも、ヘリコプター自体を装備している必要はありませんが、離着陸が可能な設備は必要だろうということと、それから、氷の中でも水の中にアクセスできるようなムーンプールを設けておいた方がいいのではという議論が考えられます。
それから、ここでの議論の対象ではないのかもしれませんが、「自律型無人機」などを使うことによって、船が行けるところからさらに奥の氷下まで観測ができるようになるのではないかということ、また「国際研究プラットフォーム」になることが、我が国の立場上求められていることを踏まえ、多くの研究者の乗船が可能で、しかも、我が国から北極までは遠いので、そこそこの量の機材を搭載できることとそれを踏まえたサイズと仕様というのが必要になるのではということを例として考えております。
次のページは、これらを言葉でまとめた一覧です。観測機器、船体性能、基本設備等で、「みらい」でできること。また、これまでの観測船で可能であったことに加え、光学的な観測装置、あるいは、氷海用の設備を備え、かつ、船体性能について一番大事なのは、低燃費であることです。一般に砕氷船は燃費が悪いと言われています。船首部が丸くなるので悪いと言われておりますが、最新の造船技術、設計技術によって、それがどこまで低燃費にできるのかが大きな要素になると思います。それから、最新の条約その他に応じた低公害船というものを設計していく必要があるのではと思います。また、船体整備としては、観測船の機能が必要なので、DPSは必要ですし、船尾のAフレームクレーンも必要になります。さらに、重量物が扱えるような装備が必要ですし、安全面を考えれば、ヘリコプターをなくとも必要に応じ着揚収ができるようなデッキ、そういったものが必要となるであろうということがまとめてあります。
最後のページは今まで「みらい」でやってきた活動の参考資料です。

【山口座長】
ありがとうございました。 御質問や御指摘等ございますか。きょうは初回ですので、自由に思い付いたことを、お話していただくことが大事かと思っています。

【大島委員】
16ページの耐氷性能及び一定の砕氷機能というところですが、あえて書いていないと思いますが、PCクラスとしては4とか5を想定しているのでしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
想定はこの委員会でなされることだと思いますので、書いておりません。あえて2つ書いたのは、ポーラークラスというのがよく聞かれますが、それは耐氷機能であって砕氷機能ではないので、耐氷機能と砕氷機能という書き方をしただけで、どのような仕様が必要かというのは、何に使うかによって決まるかと思います。

【瀧澤委員】
先ほどの大島委員の質問と同じですが、やりたい研究活動というのがあり、それに即してみると、大体ポーラークラスで言うと、3ぐらいなのでしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
いつ、どこに行って、何をやって、何をやらないかによります。例えば、真冬に極点まで行って、そこに一冬過ごして何かをしたいということであれば、ポーラークラスで言えば2、砕氷能力で言えば、少なくとも「しらせ」並みのものは必要ですが、そうなると船は非常に大きくて、燃費も悪く、恐らく今、北太平洋で冬季に観測してくれと言っても、難しいかもしれません。

【瀧澤委員】
先ほどいろいろ研究テーマ例というのが出ていましたが、それはそこまで具体的に、いつ、どれぐらいの期間ということはあまり書いていないわけしょうか。

【JAMSTEC(河野)】
例えば、結氷・融解域であれば、それは「しらせ」並みでなくてもできるかと思います。それから、海氷激減のメカニズムについて、冬に絶対に氷の中で、極点近くの氷の厚いところで観測したい、そこまでやらなければ絶対だめだということであれば、それは「しらせ」並みないとだめでしょうということなので、時期と場所によります。例えばですが、古環境研究を冬にどうしてもやる理由があるのであれば、それはやはりかなり強い砕氷船でないと難しいです。

【瀧澤委員】
とすると、PC1ということはないが、4でもないという、そういう中間あたりがいいかという話でしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
例えば、Sikuliaqは5ですし、Araonも4.5です。
11ページに、夏と冬の氷の状況の絵がありますが、これで、例えば、そこそこの砕氷能力のあるポーラークラス5の船を作ったとして、例えば、コースを選べば、夏であれば極点付近まで行けるでしょう。この濃い目の緑のところの氷が1メーターよりも薄いので、こういうところまで行けるかと思います。冬は、ベーリング海からは運がよければ入れる。大西洋側からは中に入っていけるでしょう。コースを選べば、そこそこのことができますというのが、ポーラークラスの5です。

【瀧澤委員】
そうすると5ぐらいも視野に入っていくということでしょうか。

【JAMSTEC(河野)】
砕氷船というからには、5から上ということと思います。ちなみに、1の船というのは、多分、ロシアの原子力砕氷船しかありません。

【田村委員】
なぜこのような議論になるかというと、お金の話が何にも書いてないからだと思いますが、やはり粗々でも、このくらいの建造費と維持費がかかって、逆に、2の船を作ったら、もうほかの海域ではなかなか使えない、例えば太平洋の真ん中に行くことはあまり期待できない船ができると思いますが、その辺のところがもう少し資料がないと議論になりにくいのではないかと思います。

【瀧澤委員】
全く違う質問ですが、先ほど、中国、韓国が砕氷船を持っているにもかかわらず、夏の期間、「みらい」が行けるような海域しか観測されていないとのことでしたが、、それはなぜですか。

【JAMSTEC(河野)】
まず、彼らは南極に基地を持っていますので、メインミッションは、恐らく南極の基地への物資輸送や研究なのだろうと思います。

【瀧澤委員】
そっちの方に行っているのですか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
これは想像ですが、北半球の季節で言うと、北半球の冬に南極に行って、北半球の夏に少し北極に行くという運用をしているように見えます。同じ研究をするのであれば、単独で、ほかの国が強いところへ入っていって何かやっても成果は出ませんので、だったら、国際的な枠組みがあるPAGの海域、Pacific Arctic Groupというところでやっているような海域に参加した方が成果が出るということなのだろうと思います。

【東委員】
私は、雪龍号が初めて北極へ行く航海のときに乗せていただいたんですが、あまり砕氷能力がある感じはしなくて、その時はまだ慣れていなかったせいもあるかもしれませんが、ほとんど氷海には入れなかったです。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
ちなみに、雪龍号が北極を縦断か横断かしたときも、ロシア側の沿岸近くを航行していました。

【瀧澤委員】
そうすると、そういう事情というのは、日本はまた違うわけでしょうか。単独でも北極海に乗り込んでいって観測ができるというクオリティを持った研究者が多いというふうに聞いております。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
私の個人的な見解を言う場ではないので、少し言いづらいのですが、日本の強さを生かした研究をするべきだと思っていて、今、瀧澤先生がおっしゃったような研究者が日本にたくさんいるのかというと、それはちょっとどうかと思います。
ニーズはありますかと聞かれたら、それは研究者はやりたいことはたくさんあるので、ニーズがないということはありません。だから、そこは費用対効果、あるいは、日本がどういうプレゼンスをどこに対して示すかというようなことによって変わってくるのだと思います。

【東委員】
私は船での観測もほとんどしたことがないので、船に詳しくはありませんが、極地の観測ということで考えますと、やはり冬でも観測をして、新しいことをやった方がいいのではないかという気がします。費用のことは全く分かりませんが、ほかの国が北太平洋の夏の観測をやっているのであれば、この際、日本は氷海に打って出て、冬でも通年観測できるようなデータを取って、日本に研究者がそれほど多くないのであれば、国際的にもそういう場を提供すれば、結構それに乗ってくれる国はたくさんあるのではないかという気がします。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
それは、強力な砕氷船を持っている諸外国が既にやっているところに、後発の我々が入っていくということを意味しますが。

【東委員】
しかし、通年観測などは、まだそれほど行われていないのではないでしょうか。

【JAMSTEC(河野)】
モザイクとかが通年観測ですが、そこに我々が今から入っていって、果たしてどれだけのプレゼンスが示せるかということです。

【白山委員】
1点、今おっしゃった最初の前提の、夏にはほかの国がいっぱいやっているから日本はやる必要がないというコメントについては、ちょっとオブジェクションがあります。

【東委員】
すみません、そういう意味ではないのです。もちろん、今までやっていた観測とか、それを発展していくことはとても重要だと思うのですが、私は極地研究所にいるので、極地の研究者の声がよく聞こえてきますが、通年観測のデータが欲しいというようなことをよく聞きますので、確かにそうではないかなと思います。
どこの国がどれだけの研究成果を既に出しているのかというところが分かりにくいので、コメントが難しいところですが。

【白山委員】
そういう意味から言うと、むしろそういうレビューをまずしてはいかがでしょうか。先ほどの河野が説明した件というのは、結局、こういうことができるのではないかという、我が国の強みを生かしたというレビューではありますが、じゃ、ほかの国がどれだけやっているかというレビューは、今はしておりません。つまり、ここが強いのだという話はしましたが、ここはもう少し難しいというか、既に他国が取り組んでいるといった説明はされていないいので、そういうレビューもあると、もう少し議論がしやすいかもしれません。

【大島委員】
一番いいのは、多分、「しらせ」が今貨物船なので、あれが観測船であれば、氷海にも入っていけるし、実際に「しらせ」はほとんど半年ぐらいしか運用されていないので、日本の税金としては無駄になっているように思います。
そんなにお金もあるわけではないので、何隻もすごい砕氷船を作るというのはなかなか実際には難しいところで、本当は一番いいのは、自衛隊が運用している限り難しいのでしょうが、普通に文科省というか、民間で運用して、両極に行けるようにするというのが一番正しい使い方かなと思います。
例えば、そういう強力な砕氷船と、もう一つ、少し小振りなSikuliaqみたいな、小振りなPC4とか5とか、そのぐらいの船が2つあって、それらをうまく組み合わせてやるというのは、多分、一番税金も無駄にはならないということかなと思いました。
ただ、日本の中でそういう体制を変えるというのは非常に難しく、「しらせ」の運用を自衛隊以外でできるかを考える際には、船員の問題とか、いろんな問題があります。小振りのそれなりの砕氷船ができれば、次の「しらせ」のときに自衛隊の運営ではなく、民間なり、あるいは国の機関なりが運用してという形になることなど、そういう先の「しらせ」がどうなるかということまで含めて議論した方が、日本の長い先を考えたときには良いのではないかと思います。
多分、自衛隊の運用という中での制限というのはすごくあるので、そういうことも含めて考えたらいいかなと思います。

【山口座長】
この委員会の座長ではなく、南極の輸送委員会の委員長として少し補足しますと、実は昭和基地は多年氷がすごく厚くなるところにあって、中国や韓国はすごく楽なところに基地があります。だから、イヤーラウンドで両方の夏に行くというオペレーションができるのですが、日本の場合は、本当に満身創痍で帰ってくることがありますので、長期間のドック入りというのはどうしても避けられないところがあります。
ただ、今年の春は、しばらく前に昭和基地周りの分厚い多年氷が大規模流出を起こしたので、多分、南極航海は楽だと思います。そういうときに、制度的、組織的な課題はいろいろあると思いますが帰ってきてからドック入りの期間を短くして、北極に2カ月行って、「みらい」の航海サポートをするとか、そういったことは技術的には可能だとは思います。必ずしも「しらせ」を両極に持っていくということはそう簡単なことではないというのが、日本の南極観測の事情としてあります。
それと、PC2の船であれば、冬に北極に行かせたいところ、「しらせ」は北極の冬に南極へ行きますので、行かせられない。ですから、そういう意味では、もう一隻PC2の船を欲しいというのはあります。

【白山委員】
先ほどの資料2の方ですが、このパラグラフに、費用対効果の面も含め、さらに検討を進める必要があると書いてあって、やはりここは税金の使用をお願いをする立場から言えば、それなりの合理的な説明が必要なものと思います。これだけ投資すればここまでできます、これだけ投資するともっとここまでできます、その差は十分に有意です、いや、あまり有意ではありません、という議論をできるような場にしていただく必要はあるのではないかというふうには思います。
ですから、もしポーラークラス2の船を作ると一体どれだけのことができて、5だとこれだけができて、その差はこれで、その差が埋まらないと日本の研究のニーズは非常に大きく阻害されるのか、あまり変わりはないのか。そのあたりの議論も、やはり先ほど田村委員もおっしゃいましたが、そういう議論ができるような資料を、船のコストについては我々も多少勉強はしてありますので、機会があればお示しすることはできるかと思います。

【東委員】
費用について全く素人なものですから、そういう資料を見せていただけると大変ありがたいです。

【山口座長】
私の認識では、この委員会で1つの船に絞り込まなければいけないというふうには捉えていなくて、この船だったらここまでできて、幾らぐらいの予算が必要です、こっちに行くんだったら、こういう体制でないといけないというふうな具体的な提言をまとめられればいいのではないのかなと思っているのですが、そういう認識でよろしいですか。

【林海洋地球課長】
ある程度まとめていただいた方が、こちらとしてはありがたいと思います。

【山口座長】
ただ、研究者としては、当然冬も行って、イヤーラウンドで北極の観測をしたいという要求があるわけですが、PC2クラスの船になると、どうしても船のサイズが大きくなりますので、日本の研究者だけではなくて、国際観測ステーションとして、日本がイニシアティブを取るというような国としての決断が要るかと思います。それは、この委員会では決められない話だと思いますので、そういう姿勢で、運用体制から予算まで考えた上でやらないといけないのではと思います。
今の北極のニーズの中、国際社会の中で、日本は一分担者という立場でいいのだったら、それがどこまでできるかというのを具体的に見せると、そういうのでいいのではないかと思いますが、そういう方向性でよろしいですか。

【林海洋地球課長】
そこは議論しながらということになると思いますが、一応いろいろな境界条件もありますので、予算の話もあれば、先ほど出た「しらせ」というものがあるという、そういう条件の中で、今、どういうものが適当なのかということなのかなと思います。

【山口座長】
一回「しらせ」に行ってもらいたいとは思いますが、。なかなか難しいでしょうか。

【林海洋地球課長】
難しいと思います。

【川合委員】
ポーラークラスについて、まだよく分かっていないのですが、砕氷能力と耐氷能力、別々にあるわけですね。それを合わせたものがポーラークラスで表わされているのでしょうか。

【山口座長】
いえ、耐氷能力がポーラークラスです。ただ、必然的に、そういうところに入るためには、それなりの砕氷性能が必要ですので、3ノット・1.5メーターとか、そういうのが付随としてついてくるということです。

【大島委員】
砕氷と耐氷の意味付けが分かりにくいですね、バックして前進後乗り上げて割るということが砕氷でしょうか。

【山口座長】
いえ、自分で氷を割っていくかどうかです。ただ、耐氷、砕氷は、日本ではよく船級協会の方も、耐氷クラス・砕氷クラスと決めますが、そういう厳密な言い換え方をしているのは日本くらいです。
実は、耐氷クラスの船でも、50センチや60センチの氷を砕氷できる機能を持っている船というのはいっぱいあります。「みらい」は、残念ながら、1Aという2番目の耐氷クラスで、結構強い耐氷クラスを持っていますが、船種が砕氷船種になっていないので、氷を割らないということです。

【田村委員】
プロペラの強度の関係もあり、あまり氷の中に入る船ではないということです。

【大島委員】
運用もかなり大きなファクターかと思います。

【山口座長】
間違っていたら訂正していただきたいのですが、PC5の船だったら、JAMSTECが積極的に運用できるのではないか、PC2になると、これは船員教育等を別途考えなければならない、それから、国際的な研究プラットフォームとしてやっていくという、いろんなことを一緒にして考えないと、あまり日本が持っている意味がないように思います。
また、当然、「みらい」の後継船としての、海洋観測船は必ず要りますので、PC2というのは「みらい」の後継船にはなり得ないように思います。それはもう機能ががらっと変わってしまいますので。

【田村委員】
そういう意味で、PC2にしたときに、JAMSTEC側としては、例えば、ブイの投入とか、そういうことはもう別の船にやらせて、PC2の船は「みらい」の後継船ではないという可能性でもよろしいんでしょうか。

【白山委員】
JAMSTECとしての1つの方向性を決めているわけではないので、一学識経験者としての立場ではありますが、、ともかく「しらせ」クラスの新しい船ができたときに、JAMSTECが運用してくださいと言われると、それは全く新しいミッションだと考えるのであって、今運用している船を一部代替する船としての位置付けとするのは無理だと、そういう立場になると思います。
先ほどPC5ぐらいだったらというお話もありましたけが、そのくらいのときでも、予算が増えることは間違いないので、運用に必要なコストとしては、やはりその運用に係るコストの手当てについても考えていただきたいという立場は当然あります。
ただ、船員の教育とか、そういうことに関してのハードルは大分低くなるという、そういう認識にはあるのと、それから、先ほど田村委員もおっしゃいましたが、これが北極の船だとしてですが、北半球の夏に北極に行くだけでなくて、例えば、北半球の冬に中緯度・低緯度のところでの海洋観測もする、そういう幅の広い運用が可能にはなるのだろうなとは思います。

【東委員】
PC2の船を作ったときに、その船が今までのような観測ができないというのはどのような理由でしょうか。それと、船員教育もかなり特殊な教育になるのでしょうか。大は小を兼ねないのかなと思うのですが。

【山口座長】
非常に厳しい氷の中を走っていく船というのは、それなりのオペレーションの経験がないと無理です。国内にそういう組織がないので、今、国交省の海技教育機構がカナダから習って、そういうコースを設けようといった気運もあります。ですから、それをアジアの船員教育拠点として、日本がその船も船員教育に一緒に使うということであれば、今後、北極海の利用、航行は増えていくはずですから、それなりの政策ではあるかと思います。

【東委員】
そうしますと、今、南極の場合は自衛隊が運営しているから、そこで教育が行われているということになると思いますが、もし「しらせ」を自衛隊じゃないところの組織が運用した場合は、「しらせ」の方でも同じ問題が生じてくるということになるわけでしょうか。

【山口座長】
同じ話になります。

【東委員】
その自衛隊のノウハウをもらうというのは、相当ハードルは高いものなのでしょうか。

【田村委員】
自衛隊のOBを雇うとか、手はいろいろあるとは思いますが、皆さん、納得しないところがいろいろあるだろうというのもありますし、もう一つは、やっぱりJAMSTECがPC2を抱え込んだら、もう一隻「ちきゅう」を抱え込んだようなものになると思います。
維持費だけでも大変なことになるので、それは海洋地球課さんが倍の予算を取ってこないとなかなか難しいという状態になる可能性があるわけで、多分、「ちきゅう」と違ってアルバイトもできない船でしょうから、そんなに稼げることもないと思います。

【山口座長】
だから、PC2の船は文科省が全責任を負うような船ではないと思います。だからこそ難しいと思います。実現性というところで。ただ、あるとすごいなとは思います。

【川合委員】
実際、氷がだんだん薄くなってきていて、その中で、恐らく、北極研究だけですと冬に毎年行くわけでもないかと思います。その中で、PC2というのは少し行き過ぎのような、いいものを作り過ぎという印象があります。それよりも、春先に、今まで「みらい」では行けなかった海域に行けるぐらいの船というのが一番いいのかなという気はします。
PC5だと、逆にAraonとか、中国の船なんかにも近すぎるので、それよりはもう少し攻められる船あたりが、現場でやっている人間としては欲しいと思います。
そうなると、今のPC2だと、JAMSTEC、極地研という話がありましたが、3、4だとどうなるのでしょうか。

【林海洋地球課長】
運航費等々によるのではないかとは思います。

【川合委員】
あともう一つは、PC3、4あたりの場合は、中緯度域の観測をすることというのはどうでしょうか、現実的に。

【山口座長】
やればできるのですが、とても効率が悪いのと、例えば、フィンスタビライザーがないとか、普通の船ではなくなってしまうので、通常域の観測の制限が増えてしまう可能性はあります。荒れた海域では、全部が難しくなるのですが、それがより静かな状態からできなくなってしまうなど、そういう可能性はあり得ます。

【田村委員】
多分、中緯度に行くときに、速度が何と言っても遅いというのがあって、なかなか効率的に回れないと思います。15ノットぐらいでしょうか。

【山口座長】
「しらせ」は17ノット出ます。

【田村委員】
「しらせ」は一杯馬力をかけて、燃料を燃やし続けて何とか走りますので、普通「しらせ」だって全部を回してないかと思います。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
川合先生がおっしゃった春先に今まで行けてないところを攻めていくというのは、例えばですが、PC5でも、ある程度の砕氷能力を持たせれば可能だと思います。どこまで攻められるかは、船体によるところで全て決まっているわけではなく、どういう観測のために、どういう船員たちがどういう気持ちで行くかによるところも大きいので、必ずしもPC5でAraonと一緒だからできないということではないと思います。Araonも、スペックぎりぎりのことはやっていないはずです。

【川合委員】
Araonでもできるということでしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
建造時に砕氷能力についてちゃんとした試験をどこまでやっていて、それがどれくらいパスしているのか、そういうことにもよっていて、Araonはどうしているのかちょっと分からないです。
だから、必要なことができるような設計にすればいいので、あらかじめPCが幾つということを、3なのか、4なのか、5なのかを決める必要というのはなく、自ずと決まってくるものだと思います。

【白山委員】
山口先生に専門家としての御意見で伺いたいのですが、何でPC2とPC5ぐらいで、3とか4というのがあまり建造がないのでしょうか。リストを見ると、両極というか、二方分布で、その間があまり作られない。何か船舶工学上の理由があるのでしょうか。

【山口座長】
船舶工学上の理由ではなくて、むしろ目的だと思います。やはり通年観測、北極海ということになると、PC2ということになるが、夏行けるんだったら5ぐらいでいいということになるのではないかと思います。

【東委員】
その間は中途半端になってしまうということでしょうか。PC3とか4は。

【山口座長】
だと思います。

【大島委員】
ちなみにこの資料の中にもPC3や4があるんでしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
Araonが4と5の間で、今度作ろうとしているHaakonがPC3と言われています。

【山口座長】
Araonは1メートルの氷割れないのではないかと思います。船首が立っていますし。

【JAMSTEC(河野)】
そうです、Araonは公称ほど行けないのではないかと思います。

【田村委員】
おそらく公称であって、ちゃんとした試験をしていないのではないかと思います。

【山口座長】
5月に韓国の造船航海学会の大会に呼ばれて講演しましたが、そのときに、韓国の極地研の担当者が、2隻目は「しらせ」並みの能力で、冬も行けるのを考えているとは言っていました。ただ、技術的な問題ではなく、予算的な問題から本当に可能なのかというのは、今の状況を見ていると思います。

【大島委員】
僕も川合委員と同じく、PC2というのは少しオーバースペックで、作っても、対費用効果が期待できないのではという印象です。現実的には、3か4か5か、そこは分かりません。実際に、北極の多年氷域はどんどん減っていますから、そんなにPC2で攻めていくという必然性はないのではないかと思います。さらに多年氷はもっと減って、薄くなっていくでしょうし、建造も今すぐではないでしょうし、建造後、20年、30年、使用することを考えると、現在よりももっと北極は緩い状態になっているのではと思います。北極をターゲットにするということを考えたら、PC2というのは現実的じゃないのではという感じもします。
北極域の多年氷が減っていくだろうというふうに言ってしまいましたが、専門分野の研究者として、多分それが逆になることはないと思います。今の地球の状況から考えると、ますます多年氷が減って薄くなっていくということは、ほぼ間違いないと思います。

【山口座長】
PC2かPC3ということは実はあんまり関係なくて、要するに、冬も行くのか、通年観測するのかしないのかというのが大きいのではないかと思います。

【大島委員】
ただ、だんだん緩くなっていくと、冬でもPC5でも行け得る可能性もあります。

【山口座長】
ベーリング海峡を越えられるのかなと思いますが、氷況次第だと思います。
河野さん、資料4の航行範囲の資料があるかと思いますが、「みらい」のアイスパイロットがPC5だったら、行けるとか行けないといった、そんな話ではないですか。根拠はありますでしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
いや、そこまではありません。例えば、PC5で、その船が普通だったら備えているであろう砕氷能力を考えたときに、どう行けるかという話です。
この赤いところは、たまたまこのときは入っていけたのだと思います。

【山口座長】
なるほど。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
このときは入っていけるような感じの氷況だったというだけです。

【大島委員】
ちなみに、巡視船「そうや」はPC何でしょうか。

【JAMSTEC(赤根課長代理)】
「そうや」は少し古いので、PCという意味では分からないですが、あれは結構船首が尖っているので。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
砕氷船型ではない、普通の船です。PCのどれに相当するのか分かりませんが、氷を割って行きます。

【山口座長】
1メーターは割れないかな、90センチぐらいは割れると思います。

【大島委員】
何度も乗っていますが、1メートル近くは割れると思います。

【JAMSTEC(赤根課長代理)】
流氷は冬でも結構難しい状況ではあるので、それぐらいは大丈夫ということではあるみたいですが、何せ尖っているので。

【田村委員】
多分、500トンクラスの「てしお」のほうがちゃんとした砕氷船型です。【山口座長】  でも、無理矢理当てはめるとPC5とか、そんな感じでしょうか。

【田村委員】
5までいくかな、ちょっと危ないかもしれないと思います。

【大島委員】
そうですか。でも、結構それなりに厚いところでばりばり進んでいきます。

【田村委員】
プロペラが可変ピッチなので、そういう意味では、いろいろとあります。

【山口座長】
おっしゃるとおりです、プロペラがもつかどうかというのはあります。

【JAMSTEC(赤根)】
やはり5ぐらいだと思います。

【田村委員】
5ぐらいだと思います。ちょっと甘めに評価して、5ぐらいかなと思います。

【山口座長】
資料4の航行範囲の資料で、冬場の黄色くなっているところは、氷の厚いところなのですが、カナダ海盆のあたりにあるぐじゃぐじゃっとした点が、実は、ずっと冬から春にかけてチュクチ、東シベリアの方に流れてきて、夏場の北極海のロシア側の航海を邪魔します。そういう意味では、この辺の観測の冬場というか、冬ではなく秋口から春でもいいので、その辺の観測というのは、私の研究分野からの立場からしても欲しいです。
最終的に、東シベリア、チュクチのところは、夏、6月の終わりから氷はなくなるのですが、7月のあたりに残ります。そこは、実はロシアの原子力砕氷船でも苦労するところなのです。

【田村委員】
でも、本当に冬場のベーリング海を渡っていく決意が観測者の方たちにあるのでしょうか。お椀の船になりますので、かなり揺れると思います。「しらせ」でもそれなりにひどいのですが、ベーリング海はもっとひどいかもしれない。

【山口座長】
でも、来年の「みらい」での航海が秋口だと思うので、北太平洋のすごいところを通過できるかもしれません。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
「みらい」も揺れますが、誰も食卓に出てこないような話にはほぼならないです。

【田村委員】
あと、観測の方のものが非常に重要になってくるので、特にAUVは氷海域で使えるようなものがまだできていないかと思います。今、AUVの開発をしていますが、多分、JAMSTECはあのAUVは入れず、なくしても大丈夫なものではないと入れないのではないかと思います。そういう意味で大変であるのと、先ほど割と気楽にムーンプールがあってと言っていましたが、砕氷船でムーンプールがある船はそんなにはないのではないかと思います。そこの部分も結構難しい、船舶工学的にも難しいかもしれないというところがあります。

【山口座長】
船舶工学的には、やれと言われればやりますが、その分、価格が上昇するという話で、別に開口部がある船もたくさんあるので、その辺は心配しなくて大丈夫だと思います。

【東委員】
ムーンプールというのは、先ほどちょっと御説明されましたけど、どういうもので、どういうところが難しいのでしょうか。

【田村委員】
船の真ん中に穴が開いて、水がそのまま下までつながっているものです。例えば、「ちきゅう」には、海底を掘るためにムーンプールがついています。掘削船なんかはみんなムーンプールがあります。

【田村委員】
すごく文学的な名前ですが、普通は掘削船に付けるものではありますが、この場合は周りが氷になっているときに、そのまま海水に直接アクセスできる用途もあります。

【山口座長】
どのみち、砕氷船って、船底からの冷却水取入口に一緒に氷が入ってくるので、水と氷を分けるための大きなタンクがあります。そういう意味では、ムーンプールみたいなものを持たなければいけないので、ムーンプールをなくしたって、そんなに楽になるものではないと思います。

【田村委員】
ただ、氷と冷却水を分ける部分は、頻繁に海水が詰まりますから、ムーンプールにも入り込むかもしれないという危惧はあります。もちろん、工学的な話は、船舶工学の方にお任せするところになるかと思います。AUVだけは、なかなか開発も難しいかもしれないです。

【山口座長】
AUVでどこまでいけるのかという点も、スペックに関係してくるのではないのかなと思います。

【田村委員】
AUVとピストンコアラーも、どの程度のものが要るのかという点で課題になりますが、おそらく掘削はできないと思うので、ピストンコアラーにするのではと思います。今回の「かいめい」のようなピストンコアラーはもう付けられないとは思います。

【白山委員】
だと思います。逆の発想もあるかと思いますが、BMSだったら、プールを作って真ん中から下ろすこともできるかもしれない。
海底の堆積物のコアを採ろうと思うと、ピストンコアというのは、長い筒の頭におもりを付けて、海底に鉛直に下ろして、その後、自重で沈んでいくものになります。ですから、ずっと細くて長いままになります。今度、「かいめい」で新たに導入する機械は、長さが5メーターぐらいの筒を海底で自分でどんどんつなげて、深く掘っていくという機械なので、それだと、先ほどから話題になっているムーンプールというところから真っすぐ下に、ケーブルは立派なのが必要になりますが、真ん中から下ろしていけば、おそらく上げ下げができる。
長さが20メートルの筒をムーンプールから下ろしてつり上げて横にしてというのは、現実的には想像できないので、オペレーションは無理だと思います。実際の船では、船の横から下ろすわけですが、そうすると、氷があって下りないということになります。恐らく、ピストンコアもやれるとして、5メーター、10メーターとか、そんなものではないかと思います。

【田村委員】
結局、観測機器のところである程度できるものが制限されるので、その中で何をするのかみたいなところも考えていただき、それが船の方にもつながるという可能性がある。

【大島委員】
真冬に行くかどうかというのは1つの焦点だと思うのですが、もちろん、行ければいいとは思いますが、そのためには、かなり砕氷能力を上げなければならないということだと思います。ただ、実際には、例えば、海とか海氷のデータは、夏の海氷が薄い時に行って、係留系を入れて、それで測るという方法、我々は主にそういうふうにしていますが、それでもできる。
ただ、今だと、「みらい」だと、本当の氷縁のギリギリ、かなり限られたところでしか観測が行えず、実際にはかなり運もあるため、今の状況では制限されています。
ですが、夏に海氷の中に入っていけるようにすれば、結構いろんなところに行って、北極点近くにも行けて、係留も可能だと思います。なので、対費用効果を考えたら、最高レベルの砕氷能力の高い砕氷船を作るよりは、その分のお金をもっと観測機器のスペックを上げるというものに使った方が、恐らくサイエンスとしてはプラスになるんじゃないかなという印象を持ちます。

【白山委員】
今年夏、「みらい」で海氷下のAUVの観測を挑戦して、帰ってがきましたが回収できないという状況になりました。氷の中にいて、「みらい」で氷を割って取りにいくということはできませんでした。
そういう意味から言うと、先ほど大島先生おっしゃったとおりで、今の「みらい」にはもう少し力が欲しいというふうに多くの研究者はお考えだと思いますが、真冬に北極点まで行ける船でないとだめなのかというと、そうでもないのではないか、そうでなくてもできる仕事はあるのではないかという気はします。

【東委員】
この研究は、何をやるかというところは、コミュニティの希望を取りまとめる必要があると思いますが、その辺はもうかなりまとまっているのでしょうか。

【大島委員】
ボランタリーに砕氷船をどうしたらいいかというような研究会とか集まりとかいう中で、具体的にどういうサイエンスができるという議論は四、五年ぐらい前からされていて、それを河野さんがうまくまとめられたと思うのですが、その中に大体入っているとは思います。しかし、どうしても今やっている研究の延長線上にあることもあるので、真冬で何かやるという提案というのは、そんなに多くはなかったと思います。

【大島委員】
ですから、河野さんが説明された14ページから15ページというのは、今までそういったことで議論されたことなんかもベースにあって、それをいろんな形でいろんな人が反映させたものがここにまとめられたのだと思います。

【東委員】
そうしますと、ここに書いてあることを実現するには、PC2は必要なくて、3、4、5、分かりませんが、そちらの方がよろしいということでしょうか。

【大島委員】
もちろん、2が必要な事項もあるのですが、それは多くはないという印象を持ちます。例えば、PC2が必要なのだとすれば、14ページの観測データ例の通年観測が必要、特に冬のデータ不足というところがありますが、海洋循環とか標高、そういうところは必要になってくると思います。

【東委員】
ただ、これは夏の間に何かを投入しておけば、冬に行かなくてもデータは取れる可能性があるということでしょうか。

【大島委員】
もちろん、現場に行くのと行かないのでは全然違いますが、今言ったように、係留系で海氷の厚さとか海のあれを測るということは可能なので、現場に行かなかったら全くできないというわけではないということです。

【東委員】
そうすると、ここに書いてあることの大部分のことをやろうとすると、どういうスペックのものが必要になるのですか。

【山口座長】
それは、観測船として実現性のあるものに落とし込んでいかないといけないです。そこがまだできてないですと思います。

【大島委員】
おそらく、その実現するという意味だと、先ほど説明があったムーンプールというのは、それが必要とされているものがわりかし多いかもしれないですね。ばりばり割るよりは、そっちのリクワイヤメントの方が多いように。個人的には、自分の専門では冬行って観測の方が必要性がありますが、フェアな立場で見ると、そのように見えます。川合さんの方がもっと現場に行っていられるのでお詳しいのではと思います。

【川合委員】
今のムーンプールなんですが、我々は、ムーンプールの付いた船に乗ったことがなくて、いつもLouis S. St-Laurentというカナダの砕氷船、PC2の船で氷を割っていって観測しています。観測中は、常にバブラーで氷を押し流すことで、一定の場所で観測を長時間できるというシステムになっており、そうすると、ムーンプールが本当に必要なのかというところの境目が実は分からないのです。ムーンプールがあるとできる作業といいますか、その辺が、実はまだ把握できておりません。でも、費用的には、恐らくバブラーシステムの方が相当安いのかなと勝手に思ったりはしているのですが。

【田村委員】
おそらく、バブラープラスを入れるための多関節クレーンかなんかが一緒にないと、うまくいかないと思います。ムーンプールがあると、ムーンプールの上にそのままクレーンを付ければいいという感じなのですが、その辺がちょっと違うかもしれない。
ただ、どっちにしても、ムーンプールもすごく大きなものを作れないので、AUVとかを入れられるかどうかは回収も含めてちょっと難しいかなと思います。そういう意味では、バブラーで横を開けるというのが現実的な話かなとは思います。

【山口座長】
特に氷が密々のところに入っていかないのであれば、必ずしもムーンプールは必要でないかもしれないです。

【白山委員】
北極域以外のところでも使うということも視野に入れたときに、ムーンプールがある船のメリットというのはあって、しけの中でも恐らく比較的観測ができるだろうということはありますが、そこもそれこそ費用対効果だと思います。
つまり、もし北極コミュニティとして必要な船だけでないというスタンスであれば、それによって考える船というのは、必ずしも北極のコミュニティだけで考えた船とは少し違うものになる可能性はあると思います。それは先ほど座長がおっしゃいました運用に非常に深く関わるところです。この船は北極しか行かない船として新たに作るというのと、二兎を追う船として作るかというので全然違いますが、もし前者だとすると、JAMSTECの立場から言うと、それを運用するための原資をちゃんと頂かないと、結局浮かべているだけになってしまいます。あるいは、むしろ北極だけでなくて南極にも行く船で、極地研が持つなどです。

【大島委員】
JAMSTEC、南極へ行ってもいいのではないですか。

【林海洋地球課長】
観測自体は、どこに行ってもいいと思います。南極地域観測事業としてやっているのは、あくまでも輸送で、昭和基地で観測するために人と物資を運ぶ、そのための船が「しらせ」であるということです。もちろん、南極の観測で、御承知のとおり、海洋大の船が委託を受けて、近くまで行って観測して帰ってくるという例がありますし、もちろん、「みらい」は、南の方を通っていろいろなことをやるというのもありますので、南極に行ってはいけないということではないとは思いますが、そこは研究として必要かどうかということだと思います。
あともう1点、この場のミッションは基本的に北極域の研究船の検討をしてもらうということなので、それに必要十分なものを準備してもらうということで、ほかに使えるかどうかということは、作ったときに1年間本当に観測を行う必要があるのかという観点の中で、やらないのであれば、ほかにも行けるとか、そういう議論になるので、まず、今求められている北極域の研究にとって重要なものはどういうものかという点を基本的に議論していただければと思います。

【大島委員】
関連するのですが、何らかの砕氷船ができれば、どれだけ使えるかということに関しては、北極だけではなくても、南極域でもあれば非常にニーズはあると思うので、そこの部分もあるかなというふうに思っています。

【山口座長】
一応これは北極域研究船の検討会なのですが、当然、そういう話はあると思います。それはできてからというか、今、そこを一緒くたにして考える必要は特にありませんが、氷海域が観測できる観測船としてどういうスペックが必要かという点を考えなければいけません。

【大島委員】
もちろん、オホーツク海も行けるかもしれないですし。

【田村委員】
私ら船舶で言うと、船は家を作るみたいなものなので、何人乗るかという点が結構重要で、どのくらいの研究者が一航海にこの船に期待されていますかという点が気になります。大体50人ぐらいでいいのか、100人レベルというのか、そのくらいの違いによって、船の大きさが変わってきます。おそらく、50人ぐらいかなと思っていたのですが、もうちょっといる感じでしょうか。

【大島委員】
やはり最大50人ぐらいです。

【川合委員】
カナダの船の場合は、最大は40人乗れるんですが、研究者は、大体平均すると20人ぐらいしか乗っていないです。

【大島委員】
ですから、二人部屋でよければ、50人ぐらい乗せるのは割と簡単だろうと思います。

【山口座長】
この2ページの表、その他乗員数というのが観測者でしょうか。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
御参考ですが、「みらい」で北極域の観測航海するときは、研究者が46人乗れますが、常に満席です。なので、最大50というのが研究者数であれば、大体「みらい」と似たような大きさかと思います。船員を入れて50だと、おそらく研究者はほとんど乗れないです。

【田村委員】
船員は別にして、船員は多分十数名でという感じだと思います。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
「みらい」の場合、お断りした人もいるので、46だとちょっと不足ぎみの感じです。

【白山委員】
Araonとか、Healyとか、船員数19とか、非常に少ないのですが、この船員数に関しては、やっぱり日本のルールだとこのくらい要るとか、そういうものなんでしょうか。結構ランニングコストには効く話ではあると思いますので。

【田村委員】
何人で動かすかというのはいろいろとあって、別に普通に動かしているときは、そんなに人は要らないです。それと、長期にわたる航海ですと、何工程するかという、組合との関係などが出てきまして、そうすると、それなりに人が要るようになってきます。多分、20人弱で運航できるのではないかなという気はしますが。「しらせ」が多いのは別問題ですので。

【JAMSTEC(河野理事補佐)】
おそらく、十何人での運航だと思います。観測はそれではできなくて、24時間の観測と言うと、船員さんたち三交代で、操船する人と観測作業をする人に分かれて出てきますので、作業員なしであればそうなのかもしれませんが、観測作業、デッキ作業そのものも船員さんたちの仕事と位置付けると、恐らく30数名というところなのだろうと思います。

【田村委員】
そういう意味で、Sikuliaqだとちょっと小さ過ぎるというのがよく分かると思います。もうちょっと大きな船が必要で、Healyは、もともと沿岸警備隊の船なので、少し違うのですが、そういうところで、odenとか、その辺ぐらいの人数がいいところでしょう。
中国の船はよく分かりませんが、韓国の船の船員数というのはちょうどいいぐらいの感じになっていると思います。やっぱり「みらい」を参考にして考えればいいぐらいの感じでしょうか。

【東委員】
質問ですが、この船は純粋な研究船という位置付けなのでしょうか。資源開発をするための観測というのは、この中には入ってこないのでしょうか。この文章の中には資源開発という話があったので、ちょっと気になったんですが。

【林海洋地球課長】
資源開発をどこまでというところだと思うのですが、さっき言ったようなコアを採ってくる、地形を測る、あるいはAUVを入れて下を探査するとか、研究でやっている資源の探査研究みたいなものについては、多分、やればできるようなものになるのではないかと思います。やるかどうかは別にしてですが。ただ、本当に採掘をしてくるとか、そういった資源開発については、もともと文部科学省で考えているものでもないので、あまり視点には入っていないと思います。

【山口座長】
資源調査と言うと、北極海はほとんど他国のEEZで、なかなかややこしいことになってしまいます。科学観測のための船という扱いにしないと難しいと思います。

【山口座長】
では、よろしいでしょうか。
資料3を見ていただくと、きょうは自由討議で自由な御意見を頂いて、次回から急ピッチで論点をまとめていかなければいけないということになります。
本日頂いた御意見、事務局でまとめていただいて、次回のための議論のたたき台の作成をお願いします。また、その作成段階でいろいろ御相談させていただければと思います。

【田村委員】
ちょっとよろしいですか。最初に言った話につながるのですが、JAMSTECさんがお調べになったということなのですが、一応は幾らぐらいかというのは、それなりに感覚的にはあると思われるので、もし出せれば、次の議論のときにもうちょっと具体化できるのではないかと思います。こんなに違うならばやめようかという話もあるかもしれないし、少しはやっぱりお金の話をしないとだめなのかなという気もしますが、いかがでしょうか。

【林海洋地球課長】
でも、「みらい」が200億ちょっとで、「しらせ」が400億ぐらいという事実の中で、今の議論では、「みらい」以上、「しらせ」未満というと、大体その辺かなという感覚はあります。詳細な金額については、もう少し具体化していかなければというふうに思います。

【田村委員】
今のお話で出てきた400億と200億というのは、それなりにパターンとしてよく分かるところで、200はちょっと高いかなとは思いますが、そんな感じかなと思います。400は高すぎると思います。

【山口座長】
おそらく、PC2でも400までいかないと思います。

【田村委員】
300ちょっとぐらいになるだろうとは。

【山口座長】
300は下回らないだろうと思います。今ここでその話をしてもしょうがないのですが。

【田村委員】
そんな感覚ですというのが、委員の皆さんが分かるといいのではないかと思います。

【山口座長】
次は、やっぱり船を見ながら議論できるようにできたらいいですね。

【瀧澤委員】
運用にかかる費用、どれぐらいの規模のものをどういうふうに運用するとどうなるかというのも知りたいです。

【田村委員】
修繕費と油代なのですが、それも結構になります。

【林海洋地球課長】
我々としては、建設費もさることながら、運用の方がずっとかかっていくので、そこがどれぐらいになるかというのが一番気になる点です。

【山口座長】
本当はそこが大事だと思います。建設の方は、金額は大きいですが、実は打ち上げ花火みたいなもので、気運が盛り上がればというものかと。

【林海洋地球課長】
ほかの組み合わせの中で差配できる部分もあるわけですが、運航費になると、もうずっと10年、20年かかるという話なので、そっちの方がどうしても最終的に予算としては効いてきます。

【山口座長】
では、きょうの議論はこの程度でよろしいでしょうか。
では、次に、議題2のその他ですが、委員の皆様から何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
では、ありがとうございました。それでは、事務局から連絡事項等をお願いいたします。

【山口海洋地球課長補佐】
次回の会議につきましては、11月16日水曜日16時から18時の開催を予定しております。場所等につきましては、追って御連絡させていただきたいと思います。
また、本日の会議資料でございますが、テーブルの上に残しておいていただけますと、お送りさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
以上です。

【山口座長】
それでは、本日の会議はこれで終了とします。ありがとうございました。


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