日本原子力研究開発機構改革本部(第3回) 議事要旨

1.日時

平成25年7月29日(月曜日)16時~17時

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 安全を最優先としたJAEAの業務運営の在り方(特に「もんじゅ」の運転管理の抜本改革)について

4.出席者

委員

青山委員、井手委員、柘植委員、中西委員、宮野委員

文部科学省

下村文部科学大臣、福井文部科学副大臣、丹羽文部科学大臣政務官、山中文部科学事務次官、藤木文部科学審議官、戸谷大臣官房長、川上大臣大臣官房政策評価審議官、土屋科学技術・学術政策局長、田中研究開発局長、田中大臣官房審議官(研究開発局担当)、増子研究開発局原子力課長

オブザーバー

松浦日本原子力研究開発機構理事長、辻倉日本原子力研究開発機構副理事長

5.議事要旨

事務局より資料に基づき説明した内容について、以下の意見があった。

<青山委員>
○ 「もんじゅ」の運転管理部門を原子力機構から切り離し外部委託というオプションが示されているが、切り離すということは必ずしも外部委託だけに限らない。外部委託が困難な点として、ナトリウム炉を取り扱った経験が電力会社になく、実際の運転が困難ということはある。一方、今の改革案は、今までよりも電力会社、メーカからの人員を強化することが主で、あとは機構の安全文化の改革という一種の精神論が中心になっている。
炉規制法の関係で民間に全て丸投げすることはそもそも困難であるが、原子力機構において、「もんじゅ」を依然として預かるのであれば、原子力機構の解体的出直しが必要。現状の総花的に運営をしている原子力機構に、民間からの技術者を増員するからといって今後の「もんじゅ」の進展は不可能ではないか。やるのであれば、「もんじゅ」を民間と一緒に運営するための新しい機構の出発が必要であり、今まで実施してきた業務のうち残すものがあっても、「もんじゅ」のための機構とは別組織になるべきである。また、名称も重要な要素であり、現状の総花的な体制を表している名称の変更も検討するべきである。

○ 「もんじゅ」の再開のために、3.11後の社会情勢を踏まえて、世論にも国会にも納得される体制をつくらないと、むしろ致命傷になりかねない。現状とあまり変わらないJAEAに、民間から少し人を入れたからということで、安易に再開しようとしても、原子力規制委員会を含めて周りから納得を得られない。問題を残したまま運転再開したとして、軽微な事故がひとつでも発生したら原子力政策の致命傷となる。
今回、提示されているオプションだけで「もんじゅ」を再開するというのは政治的、社会的、また実は経済的にもリスクがあるということを認識するべきである。急いで結論をまとめる必要はある。先送りせずに急ぐのは賛成だが、どれだけ高い壁がそびえているかを改めて認識する必要がある。

<柘植委員>
○ 喫緊の課題としては、「もんじゅ」の安全運転確保に向けた機構改革を優先すべきことはいうまでもないが、これに限定した対症療法的な改革だけでは、機構の本来果たすべき社会的使命の発揮の面で、新たな問題が顕在化する恐れが高い。

○ 旧原研の持つ軽水炉の安全性向上も含む社会的使命と、旧動燃の持つ核燃料サイクルイノベーション創造への社会的使命とが、両者を合体して新機構にまとめた折に組織の構成員、所管官庁の文部科学省ともに、それぞれの社会的使命の意識が希薄化し、それを自覚できない組織文化ができてしまったのではないか。

○ 「もんじゅ」の安全運転確保に向けた機構改革は、実態が伴う持続可能な組織強化になることをチェックして実現していくことが合理的と考える。

○ 同時に、機構の持つ本体の社会的使命である軽水炉のたゆまぬ安全性の向上に向けた研究開発機能の再強化を機構改革の視座に入れることが必要ではないか。その視座として重要なのは、規制・推進機関の動きだけにとらわれず、両方の視点も取り入れつつ、社会経済システムとしての軽水炉プラントの安全性向上に資する研究開発の拠点となることである。規制・推進のニーズと共に電力事業者等の産業側との共同の仕組みの強化も機構改革の視座に沿えることが必要であると考える。

<井手委員>
○ 「もんじゅ」は20年近く止まっており、国の原子力政策が定まらない時期が続いている状況においては、職員が士気を維持するのは困難。この状態は、ひいては職員の意識の劣化につながっている一因である。
核燃料サイクル、放射線利用・基礎研究の技術開発は我が国の成長に不可欠であり、その主導的立場にある原子力機構の重要性に変わりはない。安全確保の重要性と原子力機構の組織としての社会的責任を踏まえた上で、明確な組織目的を設定し、それを職員と共有する体制を整備し、運営していく必要がある。各職員が安全を最優先し、他の拠点の事象であっても、ないがしろにしない風通しの良い組織としなくては、同じ過ちが繰り返されるかもしれない。
職員に我が国にとって重要な「原子力」の分野を背負っているという責任感と誇り、それに基づく向上心を醸成させることもトップマネジメントの役割である。

○ もんじゅの運転管理においては電力会社やメーカのノウハウ活用が重要である。ただし、「もんじゅ」は、あくまでも原型炉という性格上、民間のノウハウ活用だけでは対応できない点にも留意の必要がある。「もんじゅ」は「長期的には、高速炉のあり方等を踏まえてより適切な運転管理体制を検討する」と資料にあり、またもんじゅ作業部会では「もんじゅ」の位置づけを議論しているようだが、その成果を踏まえた見直しも大切である。

我が国では核燃料サイクルにおいては高レベル廃棄物の問題とプルトニウム使用の観点が大きな課題である。プルトニウムの利用において重要な役割を担う高速炉の研究開発の進め方については、日米協定や国際的技術協力も視野にいれて、今後の開発の進め方、方針が明確になっていくと考えるが、その過程としてのもんじゅの運転管理への協力に加えて、今後の中長期的な視点での、メーカや電力の役割を議論する必要がある。

<中西委員>
○ 電力会社については管理経験者を登用しトップに据えるとあるが、メーカについては中途採用者でかつ現場対応とあるが、電力会社とメーカとの扱いが違うように思う。トップクラスの技術を持つメーカは、トップマネジメントで組織を運営させてきており、マネジメントのノウハウは十分にあると思うので、電力会社とメーカとを区別をしないで両方から英知をえるように考えてはどうか。

<宮野委員>
○ もんじゅについては、原型炉としての位置づけを見直し、開発を含めて全体を民間に移管することも選択肢として検討してはどうか。

○ 士気の劣化については、目標が明確でないことがあげられる。士気を上げていくためには、国として再稼働のスケジュールを示して、予算をつけて、人材を含めた資源を投入し安全を確保していくという方針、姿勢が必要ではないか。

○ 選択と集中ができていない中で、もんじゅの位置づけが中途半端なものになっていると考える。もんじゅを含めて産業基盤の開発は経産省を中心とした組織とし、技術基盤の研究と人材育成は文科省の責任で行うという分離の仕方も考えられる。もんじゅは産業基盤の開発をしようということで進めているひとつだと思うが、産業として電力会社やメーカが参画してどのように進めていくのかをしっかり位置づけた上で協力体制をつくっていかないと、メーカや電力の本質的な協力が得られないのではないか。

○ 原子力の安全確保についてJAEAの役割は非常に大きい。人材育成をJAEAが中心となりながら、大学との交流を行って活性化していくのもひとつの方法である。また、産業基盤の開発においては民間の人材との交流を図るというのも一つの方法である。

○ 原子力安全がどういうものかを文部科学省がリーダーとなり、理事長も含めJAEAのなかで議論をし、共有していく仕組みを考えていく必要がある。

○ 安全文化の確保は、東電福島第一の事故を経験したわが国では、国としての最優先事項である。国の最優先事項として、国全体としての仕組みを見直すという意味でもんじゅの改革、JAEAの改革が問われていると思う。

○ もんじゅの検査漏れについては、ルール上、検査漏れがまかり通ってきたことが大きな問題に発展してきたのではないか。ルールは非常に良くできていて、机上では合理的にできていても、そもそもルールを守れないと言うことが問題であり、その結果、安全という問題につながってきた。原因を突き詰めて改革を検討していくことが重要であると考える。

<下村大臣>
○ 今回の議論の中で、文部科学大臣としてもんじゅの運転再開宣言をある程度目標を決めてやることによって体制をつくることのご提案があり、また地元の敦賀市からもできる限り早くの再開を期待されているが、再開宣言するための前提条件があり、これを全てクリアした段階で初めて再開宣言ができるものであるため、それを考えるとすぐにできる状況ではない。それ依然の段階として、JAEAの組織の在り方、「もんじゅ」の抜本的な体制の見直しをトータル的に議論していくことと政府全体のエネルギー政策との関係の中で、もんじゅの位置づけ、それに関係するJAEAの関係を考えていく必要がある。
運転管理の安全という視点だけでなく、JAEAそのものを議論するということは、我が国の原子力政策そのもの対してどうするかという問題にも係ってくるものであって、早々の結論は難しいが、しかし一定のスピード感をもって結論をまずは出して、次に向かってスタートすることが必要であると考えている。


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