国家基幹技術プロジェクトを推進するに当たっては、プロジェクトを支える重要基盤技術の開発はもとより、これら重要基盤技術等をシステム化・統合化するための総合エンジニアリング、さらには、プロジェクト全体を統合的に制御・機能させるためのソフトウェアが重要となる。
重要基盤技術については、各国家基幹技術プロジェクトにとって共通の基盤となるものであり、国として、絶えざる技術の蓄積と発展が求められる。現時点において、このような基盤技術は独立行政法人、民間、大学等に分散して個別の取組が行われているが、蓄積されている技術やノウハウを今後とも継続的に蓄積・発展させる体制は必ずしも十分とは言えない。このため、これら技術やノウハウを産業展開、国際展開に結び付けていくためには、国内外の実プロジェクトで活用していくことが非常に重要であり、官民一体となって、海洋開発プロジェクトに我が国の企業が参画するための政策支援や環境整備に取り組むことが求められる。特に、今後、世界の海洋開発マーケットは急成長する見通しの中、我が国海洋産業の国際競争力強化及び世界でのシェア拡大のためには、グローバルなマーケットへの一刻も早い進出が重要であり、そのための体制整備を早期に行うことが求められる。
総合エンジニアリングは、国家基幹技術プロジェクトの鍵となる。特に海洋における技術開発は、海況の影響や深海といった特殊環境への対応が求められるため、真に現場で有用な技術やエンジニアリング能力の獲得や蓄積のためには、実海域(フィールド)におけるプロジェクトの展開が必要である。このような、実践の場における技術開発を通じて初めて、国内企業等に技術力や経験が蓄積され、海に強い総合エンジニアリング会社の育成にもつながると考えられる。また、実践の場における取組は、これに参画する国内企業にとっては一つの海洋開発実績となるということも考慮すべきである。技術を国際展開していく上で実績は必要不可欠のものであり、国家基幹技術プロジェクトを進めるに当たっては、あらゆる機会をとらえて国内企業に実績を積む機会を与えることが必要である。なお、メタンハイドレートや海底熱水鉱床の生産システムなどの国家基幹技術プロジェクトを進めるに当たっては、我が国の企業と積極的に連携していくべきである。
また、実際に各種技術を国家基幹技術としてシステム化・統合化していくに当たっては、開発を効率的に進めるために、最終的なシステムに至る前に、開発している要素技術やソフトウェアが機能するかどうかを科学的に検証・評価するための中間的な実験を行うなど、段階を追って確認していくことが必要不可欠である。
国家基幹技術プロジェクトの推進においては、人材育成の観点を忘れてはならない。重要基盤技術や要素技術の開発を支える、基礎的・先端的な研究開発を担う人材、重要基盤技術を理解し、これらをシステム化・統合化するための総合エンジニアリング能力を持つ人材、機器やインフラを運用するオペレーターなど、多様な人材が求められており、これら人材を育成する取組を、国家基幹技術プロジェクトの推進体制の中、あるいは企業、大学等との連携を通じて進めていくことが求められる。特に、グローバルな視点で多様な人材を供給することが求められる大学との連携は、大学における多角的な教育と国家基幹技術プロジェクトにおける現場での実践が非常に高い相乗効果をもたらすことが期待される。また、将来を見据え、国家基幹技術プロジェクトに大学等の若手研究者や学生を参画させるべきである。
また、将来の産業展開や国際展開を考えれば、これを担うことになる民間の役割を最大化するという視点が重要である。将来のビジネスの主体となる企業や技術移転を受けることが期待される企業が当初からプロジェクトに参画することはもちろん、当該企業がより主体的に参画するよう、企業からの資金や人材がプロジェクト遂行に積極的に導入されるような仕組みを構築すべきである。
以上を踏まえ、以下に国家基幹技術プロジェクトを推進するための体制について提示する。
○各国家基幹技術プロジェクトの推進体制
○重要基盤技術の開発体制
さらに、以上のプロジェクトごとの推進と重要基盤技術の開発の推進を一体的に行うことが極めて重要であり、これらを一体的にマネジメントする仕組みや、プロジェクトの立案や進捗について適切にフォローアップを行う仕組みを導入することが必要である。今後のいち早い国家基幹技術プロジェクトの実行を期待するとともに、実行の際に適切なフォローアップ体制を構築することを求める。
水野,邉田
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