2.国家基幹技術の検討の視点

 当委員会において国家基幹技術を検討するに当たっては、我が国が海洋立国として目指す目標を達成するためには何が必要であるかという観点から検討を行った。より具体的には、個別技術からボトムアップ的に検討するのではなく、目標達成を念頭に置いたトップダウン的なアプローチで必要な技術の検討を行った。検討の過程では、様々なとらえ方で技術が議論された。まず、目標達成のために直接的に貢献する技術を考えると、これは個別重要技術をシステム化・統合化した比較的巨大な総合技術であり、例えば、海洋資源生産システムといったものが挙げられる。当委員会では、このような考え方に基づく総合技術を「国家基幹技術プロジェクト」と位置づけた。また、このような総合技術を支える、例えばサブシー技術などの共通基盤的な技術について焦点が当てられ、中でも特に重要なものを「重要基盤技術」と位置づけた。当委員会においては、「国家基幹技術プロジェクト」及び「重要基盤技術」を併せて、「国家基幹技術」と位置づけることとした。これらの技術を支える個別要素技術は、競争力の源泉として他の産業への展開を図っていくべきものであり、当委員会においては、この点も議論された。
 今次検討においては、以上のような考え方を基に我が国として取り組むべき国家基幹技術プロジェクトを選定した。この検討の考え方は以下のとおりである。

(1)検討の前提

  • 国家基幹技術は、新たな海洋基本計画における海洋国家日本の目指すべき姿※を実現するために必要であり、国が取り組むべき重要技術とする。
  • 国家基幹技術は、目標達成に直接的に資する個別技術をシステム化・統合化した総合技術と、これを共通的に支える重要な基盤技術とし、前者を「国家基幹技術プロジェクト」、後者を「重要基盤技術」と位置づける。

※海洋国家日本の目指すべき姿

○国際協調と国際社会への貢献
 -アジア太平洋を始めとする諸国との国際的な連携を強化。
 -法の支配に基づく国際海洋法秩序の確立を主導し、世界の発展・平和に貢献。
○海洋の開発・利用による富と繁栄
 -海洋資源等、海洋の持つ潜在力を最大限に引き出し、富と繁栄をもたらす。
○「海に守られた国」から「海を守る国」へ
 -津波等の災害に備えるとともに、安定的な交通ルートを確保。
 -海洋をグローバルコモンズ(国際公共財)として保ち続けるよう積極的に努める。
○未踏のフロンティアへの挑戦
 -海洋の未知なる領域の研究の推進による人類の知的資産の創造への貢献。
 -海洋環境・気候変動等の全地球的課題の解決に取り組む。

(2)選定における評価軸

  • 将来、高い競争優位性を有するか
  • 国際展開の可能性と国際貢献への効果が高いか
  • 産業展開の可能性が高いか
  • 期待される効果・効用が大きいか
  • 波及効果が高い基盤的・根源的なものであり先導性があるか
  • 日本ならではの視点があるか、他国では成り立たない技術戦略かどうか、他国との差別化がなされているか
  • 今着手しなければならない必然性があるかどうか

(3)選定の際の留意事項

  • 技術の検討に当たっては海洋分野のみならず全分野を視野に入れる
  • 産業展開、国際展開につなげることを考慮する・技術のソフト面やオペレーション面にも考慮する
  • 国家基幹技術を開発していくための体制も検討する
  • 中長期的な視点で技術の蓄積や人材の育成を行っていくことを念頭に置く
  • 我が国が、優位性を有する技術と、技術が確立しておらず中長期的な開発を要する技術があることを考慮する
  • 優位性を有する技術については、国際標準化を目指すことも考慮する
  • 我が国が優位性を持っていない技術については、時間的観点や波及効果などを考慮し、国家基幹技術として時間をかけても新たに開発を行うのか、海外から調達することにより措置するのか検討する

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