原子力損害賠償紛争審査会(第67回) 議事録

1.日時

令和6年9月12日(木曜日)14時00分~15時58分

2.場所

文部科学省内会議室及びオンライン

3.議題

  1. 原子力損害賠償紛争審査会による現地視察について
  2. 東京電力ホールディングス株式会社による賠償の現状及び今後の対応について
  3. 損害賠償請求の集団訴訟の状況について
  4. 原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況について
  5. 賠償の請求を促す広報等の取組状況について
  6. 地方公共団体等からの主な要望事項について
  7. その他

4.出席者

委員

内田会長、樫見会長代理、明石委員、江口委員、大村委員、織委員、鹿野委員、古笛委員、富田委員、中田委員

文部科学省

堀内研究開発局長、清浦原子力損害賠償対策室長、上田原子力損害賠償対策室室長代理、本橋原子力損害賠償対策室次長

オブザーバー

【説明者】山崎東京電力ホールディングス株式会社福島原子力補償相談室長、田中原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)室長、堀原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)次長

5.議事録

【内田会長】  それでは、時間になりましたので、第67回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。
 本日は、お忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。オンラインで御参加の委員もありがとうございます。
 初めに、本日は本田文部科学大臣政務官に御出席いただく予定でしたが、急遽御欠席となりましたので、研究開発局長の堀内局長より御挨拶をいただきたいと思います。
 堀内局長、よろしくお願いいたします。
 
【堀内研究開発局長】  今年の7月11日付で研究開発局長に、担当局長になりました堀内です。よろしくお願いいたします。本田政務官に代わりまして御挨拶申し上げたいと思います。着座で御挨拶申し上げたいと思います。
 本日は御多忙の中、第67回の原子力損害賠償紛争審査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。日頃からこの分野について大変な御理解また御協力いただきまして、文科省を代表しまして御礼申し上げたいと思います。
 本年3月に東電福島原子力発電所事故から13年目の月日が既に経過しております。この間、被害者の皆様にとっては、非常に御苦労の耐えない期間であったと認識しております。
 原子力損害賠償紛争審査会の委員の先生方におかれましても、本年の7月に現地視察を行っていただいたと承知しております。
本田政務官におかれても、今年3月には福島県大熊町、双葉町、浪江町を視察し、各自治体におけるそれぞれの復興状況等を確認する中で、復興と賠償の両輪で進めることが重要であることを改めて認識したと伺っております。
 私も、今回は同行いたしませんでしたけれども、ここのポストに来る前に原子力損害賠償の担当をしています頃にこれらの町には何度も訪問させていただきまして、現状の厳しい状況というもの、最近少し大分復興が進んでおりますけども、初期の段階の厳しい状況というものを認識しておるところであります。
 文科省としましては、中間指針第五次追補の策定や原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介手続などによって迅速な賠償が進むよう、しっかり取り組むとともに、引き続き、被害者の方々に寄り添いながら、迅速、公平かつ適正な賠償が実施されることが重要であると思っております。
 本日の審査会では、現地視察の結果報告や、中間指針第五次追補を踏まえた追加賠償を含む東京電力による賠償の現状及び今後の対応の御説明、それから損害賠償請求の集団訴訟の状況などの審議を通じまして、損害賠償の状況をフォローアップすると伺っております。
 内田会長をはじめ、委員の先生方におかれましては、今後とも被害者の方々に寄り添い、引き続き迅速、公平かつ適正な賠償が進むように有意義な御議論をよろしくお願いしたいと思っております。
 どうもありがとうございました。
 
【内田会長】  どうもありがとうございました。
 次に、事務局から報告事項があるとのことですので、報告をお願いいたします。続いて資料等の確認をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  事務局から資料の確認の前に審査会委員の交代がございましたので、御報告させていただきます。
 本年4月10日付で山本和彦委員が御退任されました。また、4月11日付で新たに大村敦志学習院大学教授が着任されております。
 大村委員から一言御挨拶いただければと思います。
 
【大村委員】  学習院大学の大村でございます。大学では民法を専攻しておりますけれども、契約法や家族法を中心に勉強しております。不法行為法は、社会への影響とか社会との関係ということについて関心を持って少し勉強させていただいております。
 初めてで不慣れなことも多いですが、よろしくお願いを申し上げます。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  ありがとうございました。
 また、前回審査会以降の事務局の人事異動について御報告いたします。先ほど挨拶させていただきました研究開発局長の堀内のほかに、研究開発局審議官、原子力損害賠償対策室長の清浦が着任してございます。
 
【清浦原子力損害賠償対策室長】  清浦です。よろしくお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  次に、開発企画課長、原子力損害賠償対策室室長代理の上田でございます。
 
【上田原子力損害賠償対策室室長代理】  上田です。よろしくお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料は議事次第に記載のとおりでございますが、資料に不備等ございましたら、議事の途中でも結構でございますので、事務局までお声がけください。
 また、本日は、会場での対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式での開催となっております。御発言の際の注意事項につきましては、机上配付または事前にお送りしている資料を御確認ください。
 なお、本日は、過半数以上の委員の皆様に御出席いただいており、会議開催の要件を満たしておりますことをあらかじめ御報告させていただきます。
 以上でございます。
 
【内田会長】  それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、議題1は、原子力損害賠償紛争審査会による現地視察の結果についてでございます。事務局から説明をしていただいた後、現地視察に参加された委員の皆様から一言ずつ所感をいただければと思います。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  資料1を御覧ください。令和6年7月23日から24日にかけまして、原子力損害賠償紛争審査会による現地視察を行いましたので、その結果を御報告させていただきます。
 今回の現地視察は、中間指針等に基づく賠償の実施状況を確認するため、被災地域の現場を視察することを目的として行ったものであり、内田会長、樫見会長代理をはじめ、合計8名の委員の皆様に御参加いただきました。
 視察先は、浪江町、双葉町、大熊町の3町と東京電力福島第一原子力発電所でございます。それに加えまして、視察先の3町に事故当時居住しておられました被災者合計6名の方と意見交換を行いました。
 3町におきましては、帰還困難区域の現状や特定復興再生拠点区域の避難指示解除後の状況等を視察するとともに、町長や議長の方々と意見交換を行いました。その後、東京電力福島第一原子力発電所の主にALPS処理水関連施設を視察し、東京電力と意見交換を行いました。
 視察先の詳細は、「4.視察行程」を御参照ください。
 次に、資料の2ページ目を御覧ください。現地視察における被災自治体等の主な御発言を抜粋しております。
 浪江町での意見交換では、特に中間指針第五次追補により、町民の気持ちが一定程度一つになり、前に進むことができたという趣旨の御発言や、今後もADRセンターという組織を維持してほしいといった御発言等がございました。
 双葉町での意見交換では、特に令和4年3月に確定した集団訴訟を踏まえて策定した中間指針第五次追補における日常生活阻害慰謝料の賠償対象期間の見直しについての御発言や、東京電力の誠意ある賠償の対応についての御発言、ADRセンターにおける和解事例の水平展開についての御発言等がございました。
 次に、大熊町での意見交換では、東京電力に対して、個別事情に応じた適切な対応を含め、被害者の立場に立った賠償や親身で丁寧な対応を行っていただきたいという趣旨の御発言、引き続き、ADRセンターとしての機能を果たしてほしいという趣旨の御発言等がございました。
 これに対しまして内田会長からは、東京電力が被害者の方々に寄り添い、迅速、公平かつ適正な賠償を実施していくよう、審査会としてもフォローアップしていくことを伝えるとともに、中間指針の考え方等について丁寧に御説明していただきました。
 特に、中間指針第五次追補における日常生活阻害慰謝料の賠償対象期間については、日常生活阻害慰謝料と生活基盤喪失・変容による精神的損害に係る慰謝料との関係性も踏まえ、賠償に関する考え方についても丁寧に御説明いただきました。
 次に、資料1の3ページ目でございます。被害者住民との意見交換では、加害者の東京電力が主体的に謝罪せず、受動的に処理しているだけで、東京電力が能動的に動くべきという趣旨の御発言や、高齢者の方は自分から連絡して賠償請求することができない人がたくさんいること、東京電力に電話をかけてもつながらないことがあるという御発言や、賠償の終期について、商工業者と農業者に差があり、終期の平準化をお願いしたい旨の御発言等がございました。
 これに対し、内田会長からは、時間の関係上、総括的な観点から御説明いただきました。非常に御苦労されたというお話を伺い、損害賠償は過去の損害についてお金で償うものであり、生活再建とは異なる性質のものと実感したこと、第五次追補では生活再建に向けた取組の位置づけという考え方として、一定額を一括賠償として加算した確定判決を踏まえ策定したこと、中間指針では、営業損害について終期を設けず、個別具体的な事情に応じて相当因果関係がある損害は全て賠償の対象であること、また、東電との直接交渉が難しい場合のADRセンターの活用等について、丁寧に御説明していただきました。
 次に、資料の5ページ目を御覧ください。東京電力との意見交換については、視察の時間が押したため、意見交換の時間をあまり割くことができませんでしたが、委員より住民との意見交換でいただいた意見について東京電力にお伝えいただきました。
 また、通しページの7ページ目から18ページ目には各自治体から提出された要望を添付しております。
 事務局からの説明は以上でございます。
 
【内田会長】  どうもありがとうございます。ただいま事務局から御報告いただきましたとおり、今回の現地視察につきましては、復興に向けて取り組んでおられる被害者の方々の話を伺って、中間指針に基づく賠償状況を確認するとともに、特定復興再生拠点区域の避難指示解除後の状況や帰還困難区域の現状を中心に確認をいたしました。
 また、ALPS処理水放出後初めての現地視察ということで、福島第一原子力発電所のALPS処理水放出関係施設等を確認させていただきました。
 それでは、現地視察に出席された委員の皆様から所感をいただければと思います。御発言は会場参加の委員の皆様から先に五十音順でお願いをし、その後オンライン参加の委員にお願いしたいと思います。最後に御質問等のお時間を設けた後、私からも所感を述べたいと思います。
 それでは、最初に江口委員、お願いできますでしょうか。
 
【江口委員】  江口でございます。一昨年、昨年に続き、本年も視察地の一つとして大熊町の大野駅に参りました。今回でいいますと、大野駅の西口では大きな産業交流施設や商業施設の建築が進み、2年前に見たときに感じた何もないというのとは様変わりしていました。
 また、大熊町の複数の地区に建築されている各種の公営住宅というのも見させていただきました。
 ただ、町の住民登録をした居住人口は事故前の1割にも到底満たないそうですし、そのうちの6割が新しく移住された方というように聞きました。
 13年という年月は重く、復興は重要ですが、その復興が住民の方の生活基盤の喪失や変容を補うものではないという感じを強く思いました。
 なお、事務局の御説明の中にもありましたが、私としては、浪江町の町長さんが最初の御挨拶の中で、第五次追補によって住民の気持ちが穏やかになったのではないかとおっしゃってくださったことには大変ありがたいと思いました。
 以上です。
 
【内田会長】  ありがとうございます。では、大村委員、お願いいたします。
 
【大村委員】  大村でございます。私は今年から初めて委員になりまして、視察も初めて参加をさせていただきました。福島第一原発とそれと隣接する3つの自治体を訪問させていただきましたけれども、初めて見まして、やはり視察というものが持っている意味というのは非常に大きいとまず感じました。
 その上で、被災住民の方々との意見交換というのもございましたけども、これも非常に印象に残りました。今回の事故のように多数の被害者が出ているような事件につきましては、被災者の間で平等を図るということと同時に、個々の方々の状況の違いというのも考慮に入れなきゃいけないと、この言わば二律背反の要請というものがあるということをお話を聞きながら非常に感じました。
 それともう一つ、先ほどの事務局のからの御説明にもありましたけれども、賠償の期間についての考え方というのを内田会長、非常に丁寧に説明をされたと感じましたけれども、なかなか理解をしていただくというのが難しいところでもあるので、今後も継続的に御説明を続けていく必要があるのではないかと感じました。
 以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。では、織委員、お願いいたします。
 
【織委員】  ありがとうございます。私は今回4回目の視察になっておりますが、今までとはまた異なるフェーズに入ったなというのを強く実感しました。今まではやはり損害の大きさですとか、地域の方のお気持ちといったもの、悲しみが前面に出ていたと思うんですけれども、今は復興のフェーズに入ってきているのと、一方で損害賠償もまだ残っている現状の中で、そういう中間過渡期といいますか、そういうところにあるということを、現地を見ることによって強く実感した次第です。
 それは、浪江町のほうで、請戸漁港ですとか水産等を見せていただいて、むしろ前よりか付加価値を上げて、足りないぐらいだという前向きなお話が聞かれる一方で、やはりまだ帰還が実施できていない双葉町、大熊町では苦しんでいる人たちがいるというお話がある中で、損害賠償一律公平にという中でどういうふうにスタンスを決めていくのか、それがどういうふうに住民の方にとって寄り添っているということをあらわしているのかという難しさがますます難しくなってきたなあというのは実感した次第です。
 特に多くの住民の方と意見を交換しながら、こういった意見交換をするということは必ずしも100%皆さんのお気持ちに沿うことはできないにしても、皆さんがそれを望んでいらっしゃるということも強く感じた次第なので、なるべく機会を多くして、どんな形でも皆さんのお気持ちを少しでも酌んでいって、それを何らかの形でリアクションしていくということが、何より気持ちに寄り添うということがそういうことになっていくのではないかなという、そういう思いを一層強くさせていただきました。
 以上です。
 
【内田会長】  ありがとうございます。それでは、古笛委員、お願いします。
 
【古笛委員】  私も4回目、現地へ行かせていただいて、今回は、今まで以上になく目に見える形で復興が進んだということをすごく感じました。新しく大きな建物が建って、新しい移住者の方でまちづくりが行われているという点ですけれども、それに逆に言うと目を奪われることなく、本当に残された賠償問題というのをきちんと解決しなければいけないなということを強く心に思うとともに、また、復興が進むにつれ違った問題が出てきているというお話もあったので、そういった点にも配慮しなければいけないんだろうと思いました。
 自治体の方々、それから住民の方々のお話の中で、賠償問題とともに、やはり被害者の心情に配慮してとか、寄り添ってとか、それから能動的に東電に動いていただきたいというようなお話があったことについては私たちも同じようにそれを受け止めなければならないなと思いました。
 以上です。
 
【内田会長】  ありがとうございます。それでは、富田委員、お願いします。
 
【富田委員】  一番感じたのは双葉町で、第五次追補に関して、今回もいろいろと要望、あるいは問題点ということの指摘があり、それに対してどういうふうに説明していくかというところがなかなか難しいということです。しかし、納得されていないという状況であることを認識し、これに対してきちんと説明し広報していくことが重要であると感じました。
 また、被害住民との意見交換会では、こちらの問題意識と被害住民の問題意識との間にずれがあるために、なかなかかみ合いにくいところはあるんですが、このかみ合っていないということをよく認識した上で、今後の広報にきちんと生かしていく必要性を感じました。なかなか被害住民の方が来ていただくのもなかなか難しくなっているとは聞いておりますけれども、やはりこれは毎回直接被害住民の方々の意見を直接聞くということは非常に重要だと感じました。
 ADRセンターについては、各自治体で大いに期待しているという話がありましたので、ADRセンターとしても広報を含めて今後とも地元の期待に応えていくべく頑張っていく必要があると感じた次第です。
 以上です。
 
【内田会長】  ありがとうございます。では、中田委員お願いいたします。
 
【中田委員】  私が初めて現地にお伺いしましたのは2016年です。それから8年を経て各地で復旧・復興が進んだと感じました。
 ただ、双葉町、大熊町ではなお被害が目に見える形で残っているということも強く感じました。この2つの町とも、本当にかすかではありますけれども、光も見えているように思いましたが、まだまだ御苦労が多いことと思います。
 今後とも過去の事項として見るのではなくて、被災された方々の現在の御苦労に思いを、常に思いを馳せつつ、審査会に参加していきたいと感じました。
 以上です。
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日オンラインで参加していただいています樫見委員、お願いいたします。
 
【樫見会長代理】  樫見でございます。今回の視察では、現在もなお帰還困難区域が残っております浪江町、双葉町、大熊町の各地区、そして東京電力の施設であります廃炉資料館、双葉町と大熊町にまたがる福島第一原子力発電所内の状況を視察いたしました。
 浪江町、双葉町、大熊町は、避難指示解除が先行したほかの町村に比べまして、福島第一原子力発電所に近接していたため、今なお帰還困難区域が残っておりまして、浪江町では面積全体の78%、双葉町では全体の85%、大熊町では全体の51%に上る地域が当時のまま復興から取り残されております。
 視察では、復興再生施設の状況を見るために、浪江町では津島地区再生賃貸住宅、請戸漁港、双葉駅付近、大熊町の大野南再生賃貸住宅等を視察いたしましたが、医療、介護、福祉、教育、買物環境等の整備の状況ですとか、震災当時の人口の回復には遠く及ばないということを思い知りました。
 また、震災当時にお住まいであった住民の方との意見交換では、金銭賠償では償うことができない震災当時の居住地やなりわいに戻れない悲しみですとか、新たな生活再建も進まない現状へのつらい思いなど伺うことができました。
 他方で、昨年は東日本大震災・原子力災害伝承館を訪れまして強い衝撃を受けましたけれども、今回は、東京電力側の施設として、廃炉資料館の視察とともに、双葉町と大熊町にまたがる発電所内に立ち入りまして間近に廃炉作業が行われている1号機から6号機を実際に見る機会をいただき、また電力喪失の一因となった鉄塔が倒壊したままあえて現状保存されている現場、あるいは汚染水対策のための諸施設の視察と説明などを通じまして貴重な経験をさせていただきました。
 今回の視察を通じて、私自身、東日本大震災に続く原子力災害により受けた地域社会の被害の回復、地域住民の苦しみがなお依然として続いているという現実とともに、先の見えない廃炉作業の状況を突きつけられ、原子力災害の大きさを痛感した視察でありました。
 今後とも、東京電力におかれましては、引き続き被災者の方々への賠償の支払いはもちろんでございますが、被災者の方々への誠実な対応をお願いしたいと思いました。
 以上でございます。
 
【内田会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、最後に私からの所感を述べたいと思います。今回の現地視察では、事故から13年が経過してもなおふるさとに帰還することができないという被災者の御苦労を改めて目の当たりにしたということはもちろんですが、同時に、何人かの委員がおっしゃいましたように、被害を受けながらも力強く復興に向けて努力しておられる方々の姿が印象に残りました。
 初日の津島地区の福島再生賃貸住宅でお目にかかった石井農園を経営しておられる石井絹江様、また、請戸漁港の柴栄水産の柴社長様、会長様のお話を伺いました。そして大熊町役場での被災された方々との意見交換では、それまでやっていた商売とか農業を再開することの難しさだとか、あるいは賠償の不十分さへの御不満といったことも確かにお伺いしましたけれども、そんな中でも復興に向けて努力しておられるお姿も強く印象に残りました。
 私、初めて現地視察をしたのが2019年で今から5年前ですけれども、この間、賠償から復興へと地元の空気が徐々に変わってきているのを今回も改めて感じました。
 それでは、最後にちょっと総括のコメントをさせていただきます。
 今回の現地視察は、被災自治体に加えて、一昨年に続き、住民との意見交換会を実施いたしました。
 また、ALPS処理水放出後初めての現地視察ということもあり、東京電力福島第一原子力発電所についても視察行程に入れさせていただきました。
 自治体との意見交換においては、第五次追補を踏まえた追加賠償について、賠償の支払いが進捗しているという話がありました一方で、以前ほどではないにしても、いまだ各自治体が賠償に関する問合せ対応に御苦労されているというお話がありました。
 そういったことも踏まえますと、東京電力におかれましては、引き続きしっかりと対応していただくことが重要であると考えております。
 また、第五次追補に対して一定の評価をしていただきました一方で、被害者の視点に立った誠実かつ迅速な賠償への対応、あるいは指針の適時適切な見直しといったことへの御要望もいただきました。
 審査会におきましても、東京電力の賠償状況について引き続き注視し、迅速、公平、適正な賠償の実施がなされるようフォローアップしていくことが重要であると考えております。
 なお、特に双葉町からは、中間指針第五次追補における日常生活阻害慰謝料の賠償対象期間の見直しに関する御要望を昨年に引き続き今回もいただきました。そこで、この件に関する審査会としての考え方を、当日、伊澤町長様や伊藤議長様にも申し上げましたけれども、改めてこの場においても説明をしたいと思います。
 損害賠償は、本来、過去の損害をお金で償うということではありますけれども、同時に被害を受けた住民の生活再建に向けた取組の支援という性格を持っています。
 そこで第五次追補では、確定判決を踏まえまして、これまでの月額での日常生活阻害慰謝料を避難指示解除の時期を問わず一定時期まで、すなわち事故から7年目となる平成30年3月までは支払う。月額で支払う一方で、この時点でまだ帰還の見通しが立たない避難者については、たとえ将来帰還の可能性があるとしても、実質的にはもはや帰還できなくなったに等しい損害が生じたと評価をして、いわゆるふるさとの喪失に対する賠償として、生活基盤喪失に対する一括での慰謝料を支払うことといたしました。
 これに対して、帰還はできたけれども、元のコミュニティーが変質してしまって、元どおりの生活ができないという損害を受けた方々については、生活基盤の変容に対する慰謝料を一括で支払うことといたしました。
 そして、生活基盤の喪失あるいは変容に対する一括賠償の金額については、確定判決で認容された金額を踏まえて決定をいたしました。
 これによって、いまだ帰還できない住民が裁判を起こしたとすれば認容されるであろう賠償額とほぼ等しい賠償が第五次追補で認められるようにいたしました。
 このように日常生活阻害慰謝料の終期となっている平成30年3月末というのは、特定の避難指示の解除時期を基に設定された時点ではなく、もはやふるさとを喪失したに等しいという評価をする時点として、確定判決を踏まえて設定されたものです。
 さらに第五次追補においては、指針が示す賠償額の目安が賠償の上限ではないということも明記しており、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められれば増額されることは当然の前提となっています。
 実際にそのような個別事情を認定して賠償額を指針より多く認容している判決もありますけれども、そのことは何ら指針と矛盾することではありません。
 双葉町からは、町民に対して、中間指針第五次追補の考え方を分かりやすく説明することが難しいという御意見をいただいておりますので、事務局におかれましては、いま私から御説明をいたしました考え方を分かりやすくまとめ、双葉町の御要望に丁寧に対応するようにお願いしたいと考えております。
 いずれにせよ、今回の現地視察の結果を踏まえまして、今後の審査会の審議をしていきたいと思います。
 以上です。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  ありがとうございました。内田会長より御発言いただきました内容について、承知いたしました。事務局として速やかに着手させていただきたいと思います。
 
【内田会長】  よろしくお願いいたします。
 次に、議題2の東京電力ホールディングス株式会社による賠償の現状及び今後の対応につきまして、第五次追補を踏まえた追加賠償に係る支払い状況及びALPS処理水に関する賠償の状況について東京電力から御説明をお願いいたします。
 
【山崎室長】  東京電力の山崎と申します。よろしくお願いいたします。
 当社事故から13年以上経過いたしましたが、今なお福島県及び広く社会の皆様に多大なる御心配と御負担をおかけしていることにつきまして、心より深くお詫び申し上げます。
 また、福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出開始から1年が経過いたしましたが、引き続き安全性を十分確認しながら海洋放出を進めてまいります。
 一方、燃料デブリ試験的取り出し作業の中断により御心配をおかけしたことにつきまして改めてお詫び申し上げます。しっかりと対策を行い、安全を最優先に緊張感を持って取り組んでまいります。
 これから中間指針第五次追補等を踏まえた追加賠償やALPS処理水放出に関する賠償を含めた全体の賠償状況について資料に沿って御説明させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、賠償金のお支払い実績等について御説明いたします。お手元の資料2-1の「原子力損害賠償のお支払い状況等」を御覧ください。
 賠償の御請求・お支払い等実績は、個人、個人の自主的避難等に係る損害、法人・個人事業主などに分かれております。個人及び個人の自主的避難等に係る損害の項目には、中間指針第五次追補等に伴う追加賠償以外にも以前からお支払いしている個人の方への精神的損害や自主的避難等に係る損害賠償も含めた件数及び金額を記載しております。
 中ほどのお支払い総額のところを御覧いただきますと、今年8月末時点で総額約11兆3,694億円をお支払いさせていただいております。前回、第66回審査会にて報告させていただいた昨年12月末時点のお支払い総額と比べ約2,315億円増加しております。
 下のグラフが賠償のお支払い額の推移でございます。グラフの一番右側、グレーの部分、個人の方へのお支払いが累計で約3.51兆円、その上の法人・個人事業主の方へのお支払いが約7.26兆円、そして一番上の個人の自主的避難等に係る損害のお支払いが約0.44兆円となっております。
 また、グラフの下に消滅時効に関する当社の考え方を記載しております。当社といたしましては、時効の完成をもって一律に賠償請求をお断りすることは考えておらず、御請求者様の個別の御事情を踏まえ、消滅時効に関して柔軟な対応を行わせていただくことを表明しておりますが、実質的には時効を援用し請求をお断りすることは考えていないということでございます。
 2ページ目以降は参考資料としまして、個人の方に対する賠償の合意状況、3ページ目が賠償項目別の合意金額の状況、4ページ目に原子力損害賠償請求訴訟等の状況、原子力損害賠償に向けた組織体制、未請求の方々の状況を記載しております。
 なお、福島原子力補償相談室全体では、9月1日時点で約3,670人の体制となっております。第66回審査会にて御報告した1月10日時点の約4,890人から約1,220人減少となりますが、追加賠償や処理水賠償のお問合せ、御請求の状況などを踏まえて、適宜見直しを行っており、今後も適切に対応してまいります。
 未請求の方々の状況については、8月末時点で610名の方が未請求となっております。
 中間指針第五次追補等を踏まえた追加賠償の御請求の御案内などの機会を捉え、損害の状況を丁寧に捉えながら、御請求をいただいていない損害項目についても御請求いただけるよう御案内を行い、第66回審査会において御報告した昨年12月末時点と比べると、新たに40名の方から御請求をいただきました。引き続き対象の方から御請求いただけるよう継続して取り組んでまいります。
 それでは、中間指針第五次追補等を踏まえた追加賠償の対応状況について御説明いたします。お手元の資料2-2を御覧ください。
 追加賠償の対象の約148万人に対し、請求書の発送受付やウェブ請求の受付をしている現時点で御住所を把握できている方は約139万人となり、第66回審査会の約129万人から約10万人増加しております。なお、現時点で御住所を把握できていない方は約9万人となります。
 追加賠償の御請求・お支払い実績については、9月9日現在、約131万人の方から御請求をいただいており、このうち約129万人の方にお支払いしております。
 こちらは前回から御請求受付で約118万人、お支払い完了で約31万人、それぞれ増加しております。
 当社としては引き続き、今回の追加賠償の対象となる方から御請求いただけるよう取り組んでまいります。
 御請求いただいていない方への対応は資料中段③に記載しております。昨年4月の御請求受付開始以降、当社御請求発送依頼の御連絡をいただいた方のほか、特段の御連絡がない場合も、当社が現在の郵送先住所を確認できた方には随時御請求をお送りいたしました。
 御請求を御案内するダイレクトメールは昨年11月以降、御請求書を御返送いただいていない方に対して定期的にお送りしております。現時点で約22万人の方にお送りし、約17万人の方から御請求をいただいております。
 12月から3月にかけて福島県内を中心に新聞やテレビ、ウェブなどで広告出稿しており、多くの方から御請求いただくことができました。
 直近では、お盆や夏休みで御家族が集まりやすい8月から9月の間、福島県内を中心に新聞やテレビの広告を実施しております。
 臨時御相談窓口の開設は昨年4月以降取り組んでおります。開設に当たっては自治体様と開設する場所や期間などについて協議させていただくとともに、自治体様の広報誌や折り込みチラシで周知していただいております。
 また、御請求者様の御意見などを踏まえ、当社常設の御相談窓口から遠い県中・県南地域にお住まいで、御請求の返送をいただいていない御高齢の方が御利用しやすいように臨時相談窓口を開設して、御請求書作成のお手伝いをさせていただいております。約350人の御来場があり、御請求者様から「近くにこのような機会を設けていただき大変ありがたい」といった声も寄せられております。
 また、御高齢の方などへのサポートも同時期より実施しております。具体的には、窓口にお越しいただくことが難しい御高齢の方に対し、御希望の日時を伺った上で、御自宅を訪問させていただき、御請求書作成のお手伝いをしております。
 訪問による御相談、御請求書作成のお手伝いの実績は、昨年4月から今年8月までに約820件とありますが、このうち65歳以上の方への訪問件数が約580件となっており、引き続き丁寧な対応に努めてまいります。
 高齢福祉施設への御提案は、福島県内の高齢福祉施設に対して、当社より御請求書作成のお手伝いや説明会の開催を御提案しており、現在、175団体に御提案しております。
 以上のとおり、対象の方から御請求いただけるよう取り組んでまいりました。
 しかしながら、当社の原子力事故から約13年以上経過していることから、複数回転居されている方も相応におられると想定され、また、別離などの御事情により請求を分割した世帯の御住所を御教示いただけない場合もございます。また、事故直後の賠償より単身で御請求いただいていた御高齢の方がお亡くなりになっておられる場合も想定され、相続人の方の御住所の把握が大変難しい面もございます。
 今後も、新聞やテレビの広告、あるいは福島県をはじめとした県下の自治体様に広報誌への広告の掲載などについて御協力いただくほか、現在、御請求書を御返送していただいていない方に対する個別訪問を検討するなどしており、引き続き追加賠償の対象の方から御請求いただけるよう取り組んでまいります。
 続きまして、ALPS処理水放出に関する賠償の取組状況について御説明いたします。お手元の資料2-3を御覧ください。ALPS処理水放出が決定された昨年8月22日以降、9月4日時点で約230件、約400億円の賠償金をお支払いしております。当初懸念していたような国内での大規模な買い控えは顕在化していないと認識しておりますが、外国政府からの輸入停止措置などの影響により、国内水産品に被害が発生しており、発生した被害に対しまして適切に賠償させていただきます。
 また、輸出に係る状況など、事業者様が御請求の際に必要な証憑を準備することが困難な場合は、別の証憑で代用させていただくなど、御請求者様の御負担を軽減し、早期にお支払いできるよう取り組んでまいります。
 賠償に関するお問合せは、引き続き御相談専用ダイヤルで伺うとともに、当社ホームページで分かりやすい情報発信に努めてまいります。
 私からの説明は以上となります。
 
【内田会長】  御説明どうもありがとうございました。
 それでは、質疑応答をしたいと思いますが、その前に私から一言発言をさせていただきます。今回の現地視察で実施いたしました住民との意見交換会の中で、東京電力における賠償の対応状況について大きく2つの点の言及がありました。
 1点目は、高齢者の方は自分から連絡して賠償請求することができない方がたくさんいるということを知ってほしいという趣旨の御発言。2点目は、東京電力に電話をかけてもつながらないことがあるという趣旨の御発言です。
 1点目の高齢者の方に対する対応につきましては、先ほど御説明の中でも詳しく御説明いただきましたけれども、今出されている対応方針については理解をいたしました。被害者の皆様に寄り添った丁寧な対応を重ねてお願い申し上げたいと思います。
 2点目については、現状のコールセンターの稼働状況に関連するものかと思いますけれども、現時点での対応状況がどうなっているかということをお聞きしたいと思います。東京電力さんにおかれましてはいかがでしょうか。
 
【山崎室長】  コールセンターに関するお話ですが、追加賠償の御請求の受付開始当初は当社コールセンターに電話がつながりづらい状況が続いておりました。その後、体制の強化など、様々な対策を講じて、現在状況は改善しておりまして、この半年以上はほとんどお待たせすることなく電話がつながる状況となっております。
 引き続きお問合せの状況等を踏まえて適切に対応できるよう取り組んでまいりたいと思います。
 以上となります。
 
【内田会長】  ありがとうございます。以前に比べて最近は十分な改善が図られていると理解をいたしました。引き続き被害者の皆様に寄り添った丁寧な対応をお願いしたいと思います。
 それでは、議題の2につきまして、御意見、御質問等ございましたらお願いします。どこからでも結構です。いかがでしょうか。
 鹿野委員、どうぞ。
 
【鹿野委員】  ありがとうございます。私、今年は日程の調整ができず、現地視察には参加できなかったのですが、先ほどの意見交換等の御報告を伺い、特に5ページに記載されている、まさに今内田会長がおっしゃった2点についてお聞きしようと思っていました。ただ、もう既に内田会長から御指摘があり、お答えもされたところでございますので、基本的にはいいのですけれど、1点だけ確認をさせてください。
 高齢者の方への対応ということで、全体のページでいうと23ページのところに記載があり、先ほど御説明もいただいたところでございます。東京電力様としては、できる限りのことを丁寧にされているということは、先ほどの御説明あるいはここの23ページの記載からもうかがえたのですが、自ら請求とかを積極的にできないような高齢者などのニーズがどこにあるのかということについてはどのように把握していらっしゃるのかということを教えていただければと思います。もし問合せがあったらそこに訪問で行きますよということであるとすれば、その問合せすらも高齢者自らができないということも少なくないんじゃないかと思いました。御家族がいらっしゃるときには、御家族の支援というのもあるのかもしれませんけれども、言わば孤立したような形であればなおさらそういうことも難しいのかなとも感じまして、それを伺いたいと思いました。
 それともう一つ、訪問件数などについては先ほど御紹介いただいたんですけれども、訪問してお手伝い等をされて、それが実際に請求にどの程度つながっているのかということについて、もしデータ等をお持ちであれば教えていただきたいと思います。
 以上、よろしくお願いします。
 
【内田会長】  それでは、東京電力さん、お願いいたします。
 
【山崎室長】  御質問ありがとうございます。1点目につきましては、御指摘いただいたとおりかと思っておりまして、まさにそこが課題と思っております。今はなかなか打ち手がない状況ではありますが、まず、当社のほうに御請求いただく方であれば、お話を伺えるのですが、そういうことができない方もいらっしゃるかと思います。その辺りは、自治体様にどういう御高齢の方がいらっしゃるのかよくお話を聞かせていただきながら、当社のほうから積極的に何ができるか考えさせていただきたいと思っておりますし、また、一つは、先ほど臨時相談窓口ということで、近くまで出向けば、多少そちらのほうに来ていただけるという面もあるのではないかなと思っているところでもあります。
 いずれにしましても、御指摘の点、そのとおりだと思いますので、引き続き当社のほうで御高齢者の方にこちらのほうから何か積極的にできないかどうか、考えてまいりたいと思っております。
 2点目の質問につきまして、御質問の趣旨をもう一度お願いしてもよろしいですか。
 
【鹿野委員】  すいません。350件なのですかね、訪問件数があるという御説明だったと思いますが、それが実際の請求につながっていったという理解でよいのか、それとも、そのうちのある程度の数について具体的に御請求されたということなのか、実際の請求とどのような関係があるのかということについてお話しいただきたいということでした。
 
【山崎室長】  失礼いたしました。350名の方から御来訪いただいて、約9割の方から御請求書作成をその場でお手伝いさせていただく、あるいは請求書の再発送の依頼を受け付けさせていただくという形で対応させていただいているという状況になります。
 
【内田会長】  先ほどの御説明で65歳以上の高齢者への訪問が580件あったというお話ありましたけど、多分鹿野委員は、その訪問をすることでそれが実際の請求につながったのかどうかという、そういう御趣旨ですかね。
 
【鹿野委員】  そうですね。580件ということでしたから、今の数字とちょっと違ったんですけれども、私の当初の質問の趣旨は、580件の訪問というのがどれだけ実際の請求につながったのかというデータをお持ちであれば教えていただきたいということでございました。
 
【山崎室長】  分かりました。詳細な580件の内訳につきましては持ち合わせておりませんが、多くは御請求書作成のお手伝い等をさせていただいているというものとなっておりますので、五次追補の追加賠償のご請求の増加という形には結びついているものかと思っております。
 
【鹿野委員】  ありがとうございました。それから1点目につきましては、確かに東京電力さんが待っているだけだったらなかなかニーズがどこにあるのかというのが分からないということもあろうかと思いますし、ぜひ各自治体様と連絡を取って、そういう方に手が届くように御対応いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【山崎室長】  はい。承知いたしました。
 
【内田会長】  よろしくお願いいたします。では、明石委員、お願いします。
 
【明石委員】  どうも明石でございます。私もちょっと都合が悪くて行くことができなかったので、非常に残念だと思っております。
 ただいまの23ページとちょっと似たようなところなのですが、県内は御自宅を訪問するとか、県内の高齢福祉施設を行くということはもちろんこれはいいことだと思うんですけども、逆に県外の高齢の方には、どういう連絡なり、情報提供なり、こういうものがあるということをされているのか、もしよかったら教えていただけたらと思います。
 
【山崎室長】  今は、県外の方に対する対応にきましては、自治体様からお送りさせていただいている広報誌がございまして、自治体様のほうで県外に避難されている方に送っているものがございます。そちらのほうに当社の賠償の御案内等を折り込ませていただいているということで、対応しているという状況になります。
 なかなか数が多く、対応が難しい状況であるということは課題として認識しております。
 
【明石委員】  どうもありがとうございます。実際、県外にそういう情報、広報等を通じて、市町村を通じて情報を流すということでかなり反応はあるんでしょうか。反応があるというのは、請求がまだ県外からも高齢の方々から上がってくるということなのか、それともあまり効果がないという言い方は変ですけども、あまり請求が出てこないという理解でよろしいんでしょうか。
 
【山崎室長】  一定程度はあると我々のほうでは認識しております。今回、8月に請求書をお送りさせていただいた方のうち、アンケートも取らせていただいて、どういう形で請求に結びついたのかというところを確認しております。なかなかアンケートの数が多く集まりませんでしたがそういった中では、CMとかテレビ報道等で知ったという方が一定数いらっしゃいますので、そういった対策は一定程度効果はあると思いますけれども、ちょっと今後どういう効果的な対策ができるどうか、引き続き考えたいと思っておりますし、また、県外の方に対する対策につきましても引き続き考えていきたいと思っております。
 
【内田会長】  よろしいでしょうか。ほかには。織委員どうぞ。
 
【織委員】  ありがとうございます。先ほど内田会長もおっしゃっていたところなんですけども、住民との懇談会のところで、資料でいうと4ページで東電に電話をかけてもつながらない、半日かかってもつながらないことがあるという、この問題については解消していて、現実は今はつながっているというお話だったと思うんですけれども、実際につながっているにもかかわらず、つながっていないと思われているという、ここの原因究明が何よりも重要だと思っているんですね。
 多分2つ理由があって、1つは、昔つながらなかったから今やっても無駄だと思って諦めてしまっている層があって、今はつながっているよという状況がきちんと周知徹底されていないのではないかということ。
 もう1点は、東電さんの態度、対応は、どうせ東電さんのところはいつも忙しくてやってくれないよねという諦め感が住民の方々にあるがゆえにこういう先入観を導いてしまっているという、2つの理由が考えられると思うんですね。
 こういったまだつながらないというような声が実際にあって、それが東電さんに届いていて、そういうふうに思われているのは何かという原因究明をなさっているのかどうか。また、実際には現在つながっているにもかかわらず、そう思われている方に対して何らかの周知という対応を行っていらっしゃるのかどうかお伺いしたいと思います。
 
【内田会長】  いかがでしょうか。
 
【山崎室長】  当社への連絡を諦めている方に対する周知や、そのような状況が生じている原因に対する当社の認識についてですが、昨年の受付開始当初にコールセンター等が混み合いまして、一定程度つながらなかったというところにつきましては、改善し、ホームページのほうでも御案内しているところでございます。
 しかし、今、そういう方が引き続き、そのような思いがあるということに対して、特に何か今対策を打っているかというと、正直打てていないところではございます。
 したがいまして、いただきましたご意見に対しまして、認識を強くして、今後、対策を打っていきたいと考えております。ありがとうございます。
 
【織委員】  ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 
【内田会長】  よろしくお願いします。ほかにはいかがでしょうか。
 特にありませんでしょうか。
 特にないようでしたら、ちょっと私から発言をさせていただきますが、本日は、東京電力による賠償の現状及び今後の対応について東京電力に御説明をいただきました。いろいろ課題も指摘されましたので、ぜひその点はよろしくお願いしたいと思います。
 これまでもお伝えしていることではありますけれども、中間指針というのは、類型化が可能で、一律に賠償すべき損害の範囲や項目の目安を示したものであって、第五次追補では指針が示す損害額の目安が賠償の上限ではないということ。指針において示されなかった損害とか、対象区域として明示されなかった地域が直ちに賠償の対象とならないものではないこと。個別具体的な事情に応じて相当因果関係がある損害と認められるものは全て賠償の対象になるということが明記されています。
 これらの点は審査会における議論の中でこれまでも指摘がされてきたところではありますけれども、重要な点ですので、今回改めて申し上げておきたいと思います。
 第五次追補に係る支払いの手続については、前回審査会以降も、数字を拝見しますと、着実に一定の進捗は見られますけれども、まだ道半ばであり、東京電力さんには引き続きしっかりと対応していただくことが重要であると思います。
 また、消滅時効を援用しないという考え方についても、東京電力から御説明をいただきましたけれども、この点の対応も重要であると考えております。東京電力におかれましては、第四次総合特別事業計画において示された「3つの誓い」の遵守をぜひよろしくお願いしたいと思います。
 審査会としては、今後も第五次追補に基づく賠償の状況やALPS処理水の対応方針に関する風評被害の解消の状況も含めまして、フォローアップをしていきたいと思います。
 以上でございます。東京電力さん、御説明どうもありがとうございました。
 それでは、次の第3番目の議題に入りたいと思います。損害賠償請求を集団訴訟の状況について、まずは事務局から説明をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  事務局より御説明いたします。
 資料3-1を御覧ください。今回御報告する訴訟の一覧です。東京電力福島原発事故に伴う損害賠償請求の集団訴訟につきまして、令和6年1月から本日までに、高裁で5件、地裁で2件の判決言渡しがございました。
 そのうち1件の高裁判決及び1件の地裁判決については、東京電力ホールディングス株式会社が単独で被告となっている案件であり、判決が確定しておりますが、地裁判決については9月に公表されたものであり、内容を精査する必要があることから、次回の審議会で御報告したいと思います。
 また、その他5件については、国及び東京電力ホールディングス株式会社が被告となっている案件であり、原告らから上訴がなされていると承知しております。
 まずは確定した判決についてでございます。資料3-2を御覧ください。令和6年2月14日の仙台高裁判決でございます。地区名が伏せられて公表されています。こちらは福島県A郡B町C地区に居住していた原告らが慰謝料等の損害賠償を求めた事案です。
 2.控訴審の概要でございますけれども、被侵害利益ないし損害額の算定方法については、中間指針第五次追補の考え方に従い、①から③の類型に分けた上で、④のその他の事情による精神的損害の増額事由を個別に加算して算定しており、具体的な慰謝料額については資料に記載のとおりでございます。
 3ページ目には認定された慰謝料額と第五次追補を踏まえた東電の基準、中間指針ないし第五追補、過去の確定判決の認定額を比較した表を掲載しております。この表にお示ししたとおり、本仙台高裁判決における損害額の算定方法については、これまでの中間指針ないし中間指針第五次追補の考え方に沿ったものであり、新しい観点は特段含まれていないものと認識しております。
 また、認定された慰謝料額についても、第五次追補策定の際の議論で考慮した令和4年3月の7つの確定判決の認定慰謝料額の範囲内にとどまっているという状況です。
 以上の内容が当事務局にて簡易的に分析を実施した結果でございます。
 続きまして、確定していない判決について御説明いたします。こちらについては5件ございますが、いずれも上訴がなされております。
 判決文の全体版につきましては、机上配付資料として、机上のiPadに格納してございますので、そちらを御覧いただければと思います。判決文につきましては、機微な情報を含みますので、委員の方々のみ御覧いただけるようにしております。なお、説明の中で申し上げるページ数は、iPadで格納している各判決のページ番号に対応しております。
 各判決では国の責任の有無やその理由などの責任論についても述べられておりますが、本日御説明するのは損害論の部分、その中でも特に精神的損害に関する部分でございます。
 それでは、1件目の仙台高裁の判決でございます。机上配付資料1を御覧ください。令和6年7月17日に判決が言い渡され、最終的な原告数は674名です。原告らは精神的損害への賠償を請求しています。
 48ページ目から66ページ目では、慰謝料額の算定に当たって、中間指針等に示された考え方を参考として、本件事故発生時における生活の本拠である地域ごとに類型的に判断するのが相当とし、福島県双葉郡富岡町及び大熊町の帰還困難区域に居住していた者については、居住移転の自由を侵害されたものであり、平穏な日常生活が阻害され、生活基盤を喪失したものと言え、精神的負担は相当大きいとして慰謝料を算定しています。
 福島県南相馬市に居住していた者については、損害の発生を個別に認定しつつ、緊急時避難準備区域に居住していた者と特定避難勧奨地点に居住していた者に分けて慰謝料を算定しています。
 福島県伊達郡川俣町、伊達市、福島市、いわき市、郡山市、須賀川市、相馬市、二本松市、本宮市または桑折町の自主的避難等対象区域に居住していた者については、平穏な生活を送る利益を侵害されたと言えるとして損害を認め、子供・妊婦以外の者と子供・妊婦に分けて慰謝料を算定しています。
 なお、中間指針については、その考え方は不法行為による損害賠償請求の一般的な考え方であって、合理性を有するものであり、第五次追補までに示された精神的損害の原因には、本件原発周辺の住民が本件事故により被ったものと言える精神的な苦痛の原因となる事情が含まれており、控訴人らが被った精神的損害に対する賠償額を認定するに当たり、中間指針等に示された考え方を参考として検討し、判断するのが相当であるとしています。
 次に、2件目の東京高裁の判決です。机上配付資料2を御覧ください。令和6年1月26日に判決が言い渡され、最終的な原告数は168名です。原告らは財産的損害及び精神的損害への賠償を請求しております。
 204ページから215ページでは、精神的損害慰謝料を日常生活阻害慰謝料と生活基盤喪失・変容慰謝料に分類した上で、日常生活阻害慰謝料については、避難指示等が出された区域に居住していた者については、1か月当たりの損害額を定め、これに避難生活を送った月数を乗じることにより算定するのが相当とし、福島県のいわゆる浜通り並びにいわゆる中通りの北部及び中部に居住していた者については、一般、子供及び妊婦、養育すべき子のいる親に分けて算定しています。
 また、生活基盤喪失・変容慰謝料については、避難等を余儀なくされた元居住地の状況等によって異なるとし、帰還困難区域に生活基盤喪失慰謝料を、居住制限区域、避難指示解除準備区域及び緊急時避難準備区域に生活基盤変容慰謝料を認定しています。
 中間指針の考え方は、民法上の不法行為に係る一般的な理解や考え方に整合するものと言え、個別の一審原告らの損害について検討するに際しても参考にすることができると考えられる一方、具体的損害額を算定するに当たっては、本件に現れた一切の事情に基づき、中間指針が目安とする額から増減した額を定めることも当然に許容されるべきであるとしています。
 次に、3件目の仙台高裁の判決です。机上配付資料3を御覧ください。令和6年3月18日に判決が言い渡され、最終的な原告数は75名です。原告らは精神的損害への賠償を請求しております。
 9ページから20ページでは、本件事故によって平穏生活権を侵害された者は、原賠法第3条第1項に基づき、平穏生活権が侵害されたことによって受けた精神的苦痛に対する慰謝料の賠償を求めることができるとし、第五次追補と現判決の考え方を踏まえ、区域ごとに避難慰謝料、故郷喪失・変容慰謝料、健康不安慰謝料及びその他慰謝料を算定しています。
 なお、故郷喪失・変容慰謝料については、生活地域における居住年数が特に長期であった原告らは増額しています。
 また、健康不安慰謝料及びその他慰謝料については、第五次追補の過酷避難状況による精神的苦痛はこの中で考慮しており、その額については、原告らごとに避難及び避難生活の状況、年齢、健康状態、被告東電らに対する財産的賠償の状況、その他本件に現れた一切の事情を勘案して算定しています。
 なお、中間指針については、第五次追補は本件事故に特有の事情を十分に考慮して策定されたものであって、本件事故によって被害者に生じた精神的損害について、類型的に把握される要素をある程度網羅的に評価しており、類型的に把握することのできない個別事情に基づく損害を除き、本件事故による精神的損害の評価方法として一定の合理性を有するものであり、今後の迅速、公平かつ適正な賠償の実施等による被害者救済に資するものであるとしています。このため、第五次追補については、本件における被害者らの精神的損害の評価においても、基本的にはその考え方を十分に斟酌するのが相当としております。
 次に、4件目の神戸地裁の判決です。机上配付資料4を御覧ください。令和6年3月21日に判決が言い渡され、最終的な原告数は77名です。原告らは財産的損害及び精神的損害への賠償を請求しております。
 208ページから212ページでは、避難指示等により避難を余儀なくされた者は、住み慣れた生活の本拠からの移転を余儀なくされ、慣れない土地での不便な避難生活を強いられることになり、また、避難指示等によらないで生活の本拠から移転した者についても、避難の相当性が認められる場合は同様に、居住・移転の自由を侵害されたほか、平穏な生活を送る利益を侵害されたということができるとしています。その上で、慰謝料額については、本件事故当時に居住していた地域ごとに、避難慰謝料、ふるさと喪失・変容慰謝料に分けて算定しています。
 なお、中間指針については、当事者による自主的な解決に資する一般的な指針であることから、その内容が裁判所を拘束するものではないとしています。
 最後に、5件目の東京高裁の判決です。机上配付資料5を御覧ください。令和6年4月19日に判決が言い渡され、最終的な原告数は629名です。原告らは精神的損害への賠償を請求しております。
 40ページから50ページでは、自主的避難等対象区域に居住していた原告については、本件事故によって避難を余儀なくされたことが認められ、本件事故と相当因果関係を有する損害の賠償を請求することが認められるとされており、また、県南地域の白河市に居住していた原告については、本件事故直後に十分な情報が得られない中で避難を開始することには合理性が認められるとしています。
 また、平穏生活権が侵害されたことによる損害の程度については、当該生活の本拠としていた地域への帰還の可否、その前提となる当該地域の空間放射線量の推移、当該地域での社会経済活動の状況、当該地域からの避難者数やその人口に占める割合等を総合的に考慮して判断するのが相当としています。
 避難を継続することについての合理性が認められる期間については、子供及び妊婦以外については、平成23年12月までは自主的避難を行ったことについてもやむを得ない理由があったというべきとし、子供及び妊婦については、放射線被曝への一層の不安や恐怖を抱くことが合理的であると認められ、平成24年8月末日を避難の合理性が認められる終期とすることが相当としています。
 なお、中間指針については、裁判所が拘束されるものではないとした上で、紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針を定めたものとして示されたことや、実際に中間指針に基づいて同種紛争について和解等による解決がなされていること、第五次追補は本件訴訟と同種の事案についての本件事故に関する別の複数の損害賠償請求訴訟の確定判決の結果を考慮して示されたものであることなどに照らすと、判断の内容において参酌することができるとしています。
 大変長くなり恐縮でございますが、事務局からの説明は以上でございます。
 
【内田会長】  どうもありがとうございます。ただいま事務局から説明がありました判決について、御意見、御質問等いただきたいと思いますが、説明がありましたとおり、まだ確定していない判決が5件ありまして、これは確定したところで内容を精査する必要があると思いますが、本日とりわけ御意見をいただきたいと思いますのは、判決が確定した令和6年2月14日の仙台高裁判決についてでございます。
 これにつきましては、事務局の説明では、第五次追補までの中間指針で考慮されていないような新たな観点というのはないと考えられるということでした。この点で審査会としてどう考えるかについて、ぜひ御意見をいただきたいと思います。では、御自由に発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
 江口委員、どうぞ。
 
【江口委員】  先ほどの説明にありましたように、確定した判決についても、まず、第五次追補の合理性を認めて、精神的損害の評価において、基本的には第五次追補の考え方に沿って行うということが判示されております。そのうち、避難による日常生活阻害による精神的損害のほうは全く第五次追補と同じ考え方をしておりますし、生活基盤喪失変容による精神的損害についても、基本的にはやはり第五次追補の考え方に沿って行うというものです。
 確かに最終的な金額については若干的な違いがありますけれども、これはこの判決を見ますと、生活基盤の棄損の程度について、やはり人口減少、とりわけ若年人口の減少やインフラの状況、それから伝統行事その他の地域活動、さらには里山と深く関わる生活の変容、相互依存関係の喪失など、かなりきめ細かく具体的に詳細に認定した上で、最終的な330万円という金額を示しています。
 翻って、第五次追補のときに検討しました確定7判決を見ましても、とりわけ生活基盤の変容のところの金額をどう捉えるかというのは、7つの判決の間、それから1つの判決の中でも、個々の個人の事情によってかなり金額の差があった部分です。
 そうしますと、そういう意味では、中間指針という性格、それから、個別具体的に認定していく判決という性格、それから、過去の確定7判決の状況と考え合わせても、今回、最終的な数字で若干差があったとしても、これはごくごく当然のことで、既に確定7判決について検討したときに織り込み済みのことというふうに考えます。
 そういう意味では、少なくとも今回の確定判決によって何らかの見直しというのは一切必要ないものと私は考えております。
 
【内田会長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。古笛委員、どうぞ。
 
【古笛委員】  私も、今、江口委員から御意見があったとおり、この判決、確定した判決ですけれども、一定程度、まず中間指針を踏まえた上で、第五次追補を踏まえた上で、当然これは上限であって、裁判所を拘束するものではないと言いつつ、第五次追補になった経過なども踏まえて、合理性を有するものであると裁判所が正面から判示していただいていて、ちょっとほっといたしました。
 これを踏まえた上で、今後また新たに裁判例を積み重なっていくと思うんですけど、直ちにまた第五次追補を見直すという状況にはないのかなというふうには感じました。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。特に御発言はありませんでしょうか。
 この確定した判決の原告というのは居住制限区域と避難指示解除準備区域の方々で、第五次追補でいうと、生活基盤の変容に当たる地域の方々です。第五次追補ですと、変容の場合250万ということになっていますが、先ほど江口委員からも御指摘がありましたとおり、個別事情をかなり詳細に認定した上で、増額をして、80万円の増額ということになって、330万となった判決のようです。
 これは第五次追補あるいは中間指針の考え方からしても、個別事情による増額ということで、全く合理的な、問題のない判断ではないかと私も感じました。
 ほかに特に御発言はありませんでしょうか。
 それでは、この判決の内容は第五次追補までの中間指針の中で既にカバーされていると考えられるために、現時点では直ちに中間指針の見直しの要否に向けた検討に着手しなければならないという論点はないと理解をいたしました。
 では、引き続き、今後の判決の状況につきまして注視をしてまいりたいと思います。どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、議題の4に入りたいと思います。議題の4から6までは続けて説明をしていただき、その後、まとめて御意見、御質問等をいただきたいと思います。
 まず、議題の4ですが、原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況についてです。ADRセンターの田中室長から御説明をお願いいたします。
 
【田中室長】  ありがとうございます。原子力損害賠償紛争解決センターの室長の田中でございます。
 ADRセンターの令和6年における活動状況につきまして、御報告をさせていただきます。配付資料では資料4、通しページですと表紙が29ページになっておりますが、そちらのほうに基づいて御説明を申し上げます。なお、本日お示しする数字は全て速報値となっております。
 それでは、まず、本文の1ページ目、めくっていただいて、通し番号では30ページ目でございます。センターの人員体制でございますけれども、令和6年6月末時点の人員は仲介委員が189名、調査官66名、和解仲介室職員が102名でございます。令和5年末と比較すると、調査官については1名減、仲介委員については6名減ということになっております。なお、調査官の人数につきましては、本年7月以降の増減の結果、本日時点では70名となっております。
 センターの人員規模につきましては、中間指針第五次追補の策定等を踏まえ、今後の申立て件数の推移などを見ながら、引き続き検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 それでは、引き続き2ページ目、通し番号では31ページ目でございます。申立て件数、人数の推移でございます。令和6年6月末までの申立て件数は480件でございます。累計申立て件数は30,665件、累計申立て人数は124,595人となっております。
 平成26年以降、申立て件数は減少傾向となり、その後、ここ数年はほぼ横ばいとなっておりましたが、令和5年につきましては令和4年より約300件の増加となりました。その主たる原因としては、第五次追補の策定を踏まえた追加賠償が実施されたこと、令和4年に引き続き、地方公共団体と連携した説明会等の広報周知活動を活発に実施していることが考えられるというふうに思います。
 また、今年の申立て件数は昨年の同時期に比べて減少をしております。これにつきましては、昨年の同時期は第五次追補策定直後ということで、申立てが多かったというところ、それから、それに対して本年は、東京電力への直接請求による追加賠償の支払いが相当程度進んでおるというところなどもありまして、こういうことになっておるのではないかというふうに考えているところでございます。
 それでは、3ページ目、通し番号で32ページ目でございます。ここでは平成23年からの申立て件数の推移の内訳等を御参考ということでお示しをいたしております。具体的な説明は省略をさせていただきます。
 次に、4ページ目、通し番号では33ページ目でございます。ここでは当センターへの初めての申立てを初回申立て、2回目以降の申立てを複数回申立てと分類しておりますけれども、令和6年6月末までの申立てのうち、初回申立ての割合は52.1%でございました。このような状況を見ますと、賠償される可能性があるもののADRセンターへの申立てをされていない方がまだ一定数いらっしゃるのではないかと思われます。
 当センターといたしましては、引き続き地方公共団体等と連携した説明会の開催、広報紙への記事の掲載をはじめとした広報周知活動にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 引き続いて5ページ目、通し番号では34ページ目でございます。和解仲介の状況でございますが、令和6年の6月末までに累計で30,665件の申立て件数に対しまして、29,769件の和解仲介手続が終了しております。このように終了したもののうち、約8割に当たる23,626件が和解成立ということで終了しておるということでございます。
 なお、令和6年6月末時点における現在進行中の未済件数は896件となっております。
 それでは、6ページ目、通し番号では35ページ目でございます。和解仲介の状況についての各年の詳細を挙げさせていただいております。令和6年については、6月末までに手続が終了した件数は663件でございます。うち502件、割合で申し上げますと、75.7%が和解成立で終了をしております。
 一方、和解打切りとなったのは59件、取下げで終了した案件は102件でございます。打切りの理由別では、申立人の請求権が認定できない、あるいは申立人と連絡が取れないということを理由として和解打切りとなったものが多く、双方の理由を合わせると、打切り件数全体の7割以上を占めております。
 また、被申立人である東京電力が和解案を拒否したために和解打切りとなったものは、令和5年に引き続き、令和6年6月末まではございません。
 東京電力におかれましては、中間指針第五次追補の趣旨を踏まえ、引き続き、和解仲介案の尊重も含む3つの誓いに従い、センターの実施する和解仲介手続に真摯かつ柔軟に対応していただきたいと思っております。
 それでは次、7ページ目、通し番号で36ページ目、ここでは平成23年からの和解仲介の状況の推移の詳細を御参考までに書かせていただいております。説明は省略をさせていただきます。
 引き続いて8ページ目、通し番号では37ページ目でございます。中間指針第五次追補の内容を含む申立ての全体的な状況についてでございます。令和6年に申し立てられた第五次追補に関連した申立て件数は281件、令和4年12月の第五次追補策定以降の合計は1,068件でございます。
 なお、申立て件数のうち、五次追補に関する部分を含むものについての部分については、申立て時の内容を基に整理をした概数となっておりますので、最終的な和解提示の時点における実態とはやや乖離がございます。
 また、和解成立をしたもののうち、第五次追補を含む事案については、令和6年では390件、第五次追補策定以降の合計は854件となっております。
 その一方で、最終的に和解打切り取下げに至った件数は、表に書かせていただいたとおりでございますが、そのうち早期一部支払い、これは東京電力が答弁書で認めたものについては前倒しで一部和解を成立させて、争いのある部分をその後に審議をするという形の取扱いでございますけれども、早期一部支払いによる一部和解成立後に終局手続で取下げや打切りとなったものが、それぞれ、うち一部和解成立後の欄に記載したとおり、第五次追補策定以降、打切りについては19件、取下げについては合計42件となっております。これらについては、他の打切り、取下げの事件とは性質が異なって、実態としては、和解により紛争が解決されたものに分類できるのではないかというふうに考えております。
 引き続いて9ページ目、通し番号では38ページ目でございます。令和4年12月以降、主に令和5年における中間指針第五次追補に係る申立ての詳細を御参考までにお示しをいたします。説明は省略をさせていただきます。
 それから10ページ目、通し番号では39ページ目になっております。センターの広報活動についてでございます。当センターでは、冬の確定申告説明会、あるいは夏からの健康診断に合わせて、ADRセンターの調査官等を現地に派遣し、申立て方法などについての説明を行う説明会を行っており、令和5年度は浪江町、南相馬市、大熊町、富岡町、双葉町と連携をして実施をしております。令和6年1月から3月までの確定申告説明会に合わせた説明会での申立ての受理件数は、5市町及び福島県の会場で合計196件となっております。
 また、令和6年度につきましても引き続き、健康診断に合わせた説明会を順次実施中でございます。説明会などの際には、地域の特性に応じて和解事例を記載したチラシを配布するなどして、センターの活動について周知を図っております。
 そのほか、昨年同様にNPO法人と連携した広報活動や富岡町役場等での月1回の説明会にも取り組んでおり、原子力損害賠償事例集については本年も今後公表予定であるなど、説明会開催のほかにも広報活動を行っているところでございます。
 引き続いて11ページ目、通し番号では40ページ目でございます。これも広報活動についてでございますが、本年の試行的な取組といたしまして、福島事務所の夜間臨時開所というものを実施しております。令和6年3月に福島県と連携をして実施した郡山市の市役所における説明会では、原発事故時に自主的避難等対象区域に住所があった申立人が相当数を占めておったということから、自主的避難等対象区域に住所があった方については、原子力損害賠償ADRに係る説明に接する機会や相談する機会等に必ずしも恵まれていなかった可能性があるのではないかというような問題意識の下に、このような夜間臨時開所というのを実施するということにしたものでございます。
 また、平日の昼間には時間を取れなかった方にも利用しやすいように、臨時的に福島事務所の開所時間を延長して、かつ、お住まいの地域に限らず幅広く御利用いただけるように、電話やオンライン参加を選択肢の中に入れまして、従前の広報が行き届かなかったのではないかと思われる方々も含めて、幅広い利用者を募っておるというところでございます。
 夜間臨時開所では説明会と同様に、ADRセンターの調査官等を福島事務所に派遣し、申込者に対して個別に対応いたしております。期間は令和6年の8月から令和7年の1月までといたしまして、毎月1回の計6日間実施をいたします。
 なお、電話及びオンラインでの利用者には事前に必要書類を郵送する必要がございますので、説明会とは異なり、事前予約制という形にしております。引き続き、機会を捉えた広報活動に積極的に取り組んでまいります。
 資料12ページ目、通し番号では41ページ目、ここでは令和5年に開催した説明会の開催実績を御参考までにお示しをいたしております。説明は省略をさせていただきます。
 お配りいたしました資料に基づく当センターの活動状況の報告は以上でございますけれども、1点、7月の審査会の現地視察の際に双葉町のほうから、ADRセンターの広報物の作成に関して、御高齢の方に対する対応をちゃんとやるようにであるとか、そういう御指摘をいただきましたので、そのことも踏まえまして、ADRセンターの広報に関する取組について補足説明をさせていただきたいと考えております。
 当センターでは従前よりイラスト等を多用した見やすく分かりやすい事例集や広報チラシの作成に努めており、具体的には、浜通りの自治体様を中心に、その地域の和解事例を掲載した事例集や広報チラシを作成して、地域の広報紙に同封をしたり、説明会の会場で手渡しをしたりして配布をしております。
 例えば、説明会会場で配布しているチラシなどでは、比較的多くの方々について検討対象になるのではないかと考えられる事例というか、事項をイラストとともにワンフレーズで記載するなど、時間をかけずに内容を理解できるように工夫しております。例えば、次のような事情はございませんかと書いて、乳幼児と一緒に避難をしたであるとか、あとは、例えば野菜とかお米を作れなくなって食費が上がっただとか、そういうような比較的和解事例を見てもよくある事項を挙げて書かせていただいております。
 それで、先ほどのように双葉町から御要望があったところですけれども、双葉町につきましてはちょうど和解事例集を作成中でございまして、その中でも従前どおり、大きめのポイントの字を使って、イラストもたくさん使って、視覚的に分かりやすいものとするというようなことを考えておったわけですけれども、今回の御指摘を踏まえて、例えば文中にポイント解説というようなものをやって、その事例のポイントというのは何かというところをちょっと抜き出して書かせていただいて、一般の方でも自分の事例に応用できるかどうかというのを検討しやすいようにしてみたり、あとは、先ほどの説明会会場で配るビラのように、イラストとワンフレーズでこういうことはありませんかというようなことを書かせていただいて、そういうことを冒頭に記載をしたり、あとは全体的にレイアウトを工夫して、視覚的により分かりやすいものとなるような工夫を加えるという形で作成をすることを検討しております。
 双葉町の事例集につきましては、同町の広報紙11月号に挟み込んでいただくことによって全戸配布をするという予定にしております。事例集や広報チラシにつきましては、今後も継続的に新しいものを追加いたしましたり、既存のものを更新したりなどしていきたいと考えており、その際には、今回の御指摘を踏まえて、高齢者等にとっても参照しやすい工夫をさらに検討していくということが必要であろうというふうに考えているところでございます。
 私からの御説明は以上でございます。どうもありがとうございました。
 
【内田会長】  どうもありがとうございます。ただいまの御説明に対する御質問等はまた後でまとめてお願いしたいと思います。
 それでは次に、議題5の賠償の請求を促す広報等の取組状況につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  資料5を御覧ください。賠償請求を促すため、国と関係機関が連携して、地方自治体等に御協力いただきながら広報相談活動をさらに実施し、必要な情報の周知に努めており、前回第66回審査会以降の広報の取組について御報告させていただきます。
 まず1ページ目でございますけれども、新しく作成したチラシにつきまして、1ページ目に記載のある関係機関に本年3月に配布させていただきました。なお、本年度も新しくチラシを作成し、配布する予定でございます。
 続きまして2ページ目、通しの43ページ目でございますけれども、(2)の福島県内に向けた取組でございます。本年2月から3月にテレビCMの放映や地元新聞への記事広告の掲載を行いました。(3)の全国に向けた取組といたしましては、本年3月に政府広報にてバナー広告を実施いたしました。
 次のページ、通しの44ページ目は、今、御説明申し上げたことをまとめた資料になりますので、説明は省略させていただきますけれども、青字の部分が前回からの更新部分となります。
 4ページ目、通しの45ページ目でございますけれども、こちらは配布したチラシや地元紙への記事広告、テレビCMのイメージ画像などについて掲載をしております。
 5ページ目、6ページ目、通しの46ページ、47ページでございますけれども、こちらは配布をいたしましたチラシになります。
 また、7ページ目と8ページ目、通しの48ページ目、49ページ目でございますけれども、こちらは地元紙への記事広告を拡大したものになりますので、御参照いただければと思います。
 今後とも追加賠償請求を促すことを含めまして、継続して実施するとともに、地方自治体等からの御意見を踏まえまして、広報相談活動を進めていきたいと考えております。
 事務局からの説明は以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 では、引き続き、議題6の地方自治体等からの主な要望事項について事務局から説明お願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  資料6を御覧ください。前回第66回審査会以降、現時点までに文部科学省に寄せられた要望のうち、主な項目の概要をまとめたものでございます。各項目の後ろの括弧書きは、どの団体から寄せられた御要望かを表しております。
 今回も全体で5つのカテゴリーに分類させていただいております。1つ目は被害者への賠償に係る対応、2つ目は地方公共団体に係る賠償、3つ目は原子力損害賠償紛争解決センターによる和解の仲介、4つ目はALPS処理水の処分に係る風評対策、5つ目は法制度に係る対応でございます。
 一つ一つの御説明は省略させていただきますが、詳細につきましては資料6を御確認いただければと思います。なお、審査会に対して寄せられた要望書の本体については、各委員に既に共有させていただいております。
 説明は以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございました。
 それでは、議題4から議題6までにつきまして、まとめて御意見、御質問等をいただきたいと思います。どこからでも結構です。御発言どうぞよろしくお願いいたします。
 鹿野委員、どうぞ。
 
【鹿野委員】  ADRセンターの広報活動について質問を1点させてください。通しページでは40ページのところです。
 ここで御紹介いただきましたように、平日昼間には時間が取れなかったという方にも利用しやすいようにということで、臨時的に福島事務所の開所時間を夜間まで延長したということでございました。
 これを聞いたら、とてもよい取組なのではないかと思うのですが、実際8月から開始されたということなので、まだ開始しても間もないから十分なデータがそろっていないのかもしれませんけれども、8月からやってみての状況を教えていただきたいということと、それから、先ほどの御説明では8月から1月までということで、取りあえず半年間、試行的にやってみるというようなことだったかと思うのですが、これは状況を見て、もし利用が多いということがあれば、それを延長するというような可能性もあるのかということについて教えてください。お願いします。
 
【田中室長】  御質問ありがとうございます。ADRセンターの田中でございます。
 今の御質問でまず1点目の8月の状況でございますが、これ枠としては5枠取っておりますけれども、8月の時点では2枠、相談者が来られたということでございます。
 それで、ちょっと特筆すべきことは、そのうち1枠は県外の方がわざわざ足を運んで来られたということがございまして、県外への広報活動というのはなかなか難しい面があるんですが、知り合いか御親戚か、口コミで聞かれて、それでウェブや電話でもいけますよというお話を申し上げたら、でも行きますというので来ていただいたということで、県外から来られると、やっぱり夜間のほうがいいんだろうなというのが1点で、やってみた意味があったのかなと。それで、こう思ったということでございます。
 それで、2点目でございますけれども、取りあえず6か月というのは、今までやってない取組ですので、どの程度の実績が上がるかというのが分からなかったものですから、取りあえずこれぐらいの期間やってみようということで始めたというところで、先生御指摘のとおり、ある程度需要があるというようなことでしたら、本省のほうとの御相談ということになると思うんですけれども、当センターとしては、それなりにこれは有用だという判断になれば、継続も検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
 もう1件、今月も終わっておりますので、9月の状況を補足して御説明申し上げると、相談3件、対面2件で電話が1件ということでございますので、やはり一定程度枠は埋まってきているということなのかなと考えております。
 以上でございます。
 
【内田会長】  織委員、どうぞ。
 
【織委員】  今の枠の話なんですけれども、夜間というのも大変なトライアルだと思うんですけれども、普通に主婦ですとか子供がいる家庭の層を考えると、平日の昼間、夜間にしても難しいように思うんです。むしろ祝日というか、土日の昼間という、このほうが出やすいことは出やすいと思うんです。そこら辺についての御検討はいかがでしょうか。
 
【内田会長】  お願いします。
 
【田中室長】  ADRセンターの田中でございます。
 取りあえず週末休日ということですと、ある意味、どういう形で人員を確保するかというところとバーターというところもありまして、特に健康診断とかそういうところも多少いろいろあったり、あとは週末に説明会をたしかやったりということもございます。現に今週末、ふたばワールドというイベントが広野町で開かれる。双葉郡の自治体が持ち回りで開催しているイベントのようですが、それは土曜日ですので、それも含めて、いろいろと週末なんかの検討もやったりということはしておるのですが、なかなか事務所を週末に開けてということになると、それでは、週末開けたときに平日のほうを休みにするのかとか、そのあたりの調整がいろいろあるものですから、いろんな選択肢の1つとして、週末休日の開庁というのは検討課題かなとは思っておりますけれども、なかなか現時点では実現には至っていないというのが正直なところでございます。
 
【織委員】  会場は必ずしも事務所じゃないといけないんですか。何か機密性の問題からいって。例えば、週末に保健所とかでそういうのをやったり、イベントに合わせてやっているところに衝立か何かを作って、そこで対応すれば、少なくとも職員はそこに週末いずれにしても行っているので、そこで対応するということは可能になるということはあり得ますか。
 
【田中室長】  例ですと、NPO法人に声をかけていただいて、調査官を派遣しているというのは週末ですね。ただ、そこで申立てまで受け付けられるかというと、ちょっといろんな問題がありますので、説明を申し上げる、あるいは申し立て書の書式をお渡しするというところはある程度柔軟にできるかなと思います。
 先生御指摘のとおり、機微にわたるお話もあるものですから、そのあたりをいろいろ勘案しながらやっていくということなのかなというふうに思っております。
 
【織委員】  ありがとうございます。
 
【内田会長】  ほかにいかがでしょうか。明石委員。
 
【明石委員】  通しページ41ページに令和5年の説明会開催実績というのがございます。6月から8月10日の南相馬市の健康診断会場で350件という結構な割合が来ていて、これ見ると、今年度はどうだったんだろうかというような感じを受けるんですけれども、こういうイベントに合わせるというのは、確定申告で始めて、とてもよかったという経験もありますし、これを見ると、意外に、もちろん来た人数が多いのはこうなのでしょうけれども、今年度はどんな傾向なんでしょうか。
 
【田中室長】  御質問ありがとうございます。お答え申し上げます。
 昨年の348件というのは、第五次追補の策定直後で、先ほどもちょっと東京電力さんの御説明の中にもありましたように、なかなかコールセンターがつながりにくかったり、まだ請求書の発送というのが道半ばというところで、御相談に来られる方も、追加賠償という話があるんだけど、東京電力のほうから何も書類が来ないみたいなことで来られる方とかいろいろおられて、それだったらADRで申立てをしていただければいいかなというので受け付けたというのもございますし、あとは、昨年はまだ夏に野馬追をやっているというところがあって、ちょうど人がたくさんいらっしゃるということなんかも影響していたのかなと思います。
 今年は7月8月健康診断をやっているところで説明会をやったのですが、健診会場での人数というのは、全体の申立てを見ると100件ずつぐらいという感じのイメージですので、去年よりは大分少ないのですけれども、それでも、やっぱり健診会場での説明会というのをやると申立て件数は非常に伸びるというところはあるかなというふうに思います。
 以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。樫見委員、どうぞ。
 
【樫見会長代理】  通しページの35ページのところなんですが、和解打切りの中で申立人が資料提出に応じない、申立人と連絡が取れない。打切りの理由としては極めて自然なんですけれども、何か裏に特別な事情なりがあるのか、その辺、把握していらっしゃったら、あるいは何か御存じのことがありましたら、お教えいただきたいなと思いまして、無理な御質問であるということは重々承知しております。
 
【田中室長】  なかなか連絡が取れなくなった原因というのを、センター側のほうで確たる理由を把握するというのは難しい面もございまして、あと、資料提出に応じていただけないというのは何でなのかというのはなかなか難しい面があるんですけれども、これは確たる話というよりも推測の部分もかなり混ざるんですが、例えば、早期一部支払いでかなりの金額を支払う和解ができて、残っている部分というのはそんなに金額をたくさん認定しづらいような項目なんかだとすると、なかなか費用対効果というか、そこら辺のいろんな資料を集める手間なんかを考えて、ちょっとモチベーションが下がってしまうという方も中にはいらっしゃるのかなという気もいたします。
 これは完全な私の推測ですので、ちょっと確たるところではないのですが、それ以外の点については、正直申し上げてよく分からないというところでございます。
 以上でございます。
 
【樫見会長代理】  ありがとうございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。特にはありませんでしょうか。
 それでは、事務局とADRセンターから広報活動について御報告をいただきましたけれども、ADRセンターの利用促進や中間指針第五次追補を含む賠償の請求を進めていくために、広報活動というのは大変重要であると思います。今後とも広報活動に積極的に取り組んでいただければと思います。
 また、ADRセンターにおかれましては、和解仲介の申立ての状況や傾向について引き続きよく把握をし、分析しながら、今後とも紛争解決機関としての役割を果たしていただければと思います。日本の和解仲介というか、調停の歴史を見ましても、原賠のADRセンターというのは特筆すべき実績を上げているADRだと思いますので、ぜひその実績を続けていただければと思います。どうもありがとうございます。
 それから、地方自治体等からの要望事項につきましても、引き続き出されています。本審査会といたしましても、これらを踏まえまして、引き続き東電の賠償状況を注視してまいりたいと思います。
 それでは、議題の4から6は以上で終了でございまして、次に議題の7、その他についてとありますけれども、今回は特に議題が設定されていないと聞いておりますので、本日の議事は以上となります。
 最後に、本日の審査会を通しまして、委員の皆様から何か御発言がありましたらお伺いしたいと思いますが、何かございますでしょうか。特によろしいでしょうか。
 それでは、本日はこれにて議事を終了したいと思います。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  次回、第68回審査会の開催につきましては、改めて御連絡させていただきます。
 また、本日の議事録につきましては、事務局でたたき台を作成した上で、委員の皆様方に御確認の上、次回開催までにホームページに掲載させていただきたいと思います。以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございました。
 それでは、本日はこれにて閉会いたします。長時間にわたりまして、熱心な御審議ありがとうございました。これで終了いたします。
 
―― 了 ――

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