原子力損害賠償紛争審査会(第63回) 議事録

1.日時

令和4年12月20日(火曜日)10時00分~12時05分

2.場所

文部科学省内会議室及びオンライン

3.議題

  1. 中間指針第五次追補(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

内田会長、樫見会長代理、明石委員、江口委員、織委員、鹿野委員、古笛委員、富田委員、中田委員、山本委員

青野専門委員、大塚専門委員、日下部専門委員、末石専門委員、米村専門委員

文部科学省

永岡文部科学大臣、井出文部科学副大臣、千原研究開発局長、林原子力損害賠償対策室長、松浦原子力損害賠償対策室室長代理、川口原子力損害賠償対策室次長

オブザーバー

【説明者】
古谷原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)室長
佐藤原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)次長

5.議事録

【内田会長】  それでは、ちょっと時間を超過いたしましたが、第63回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。本日は、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。また、オンラインで御参加の委員の皆様もありがとうございます。
 初めに、本日も井出文部科学副大臣に御出席いただいておりますので、御挨拶をいただきたいと思います。井出副大臣、よろしくお願いいたします。



【井出文部科学副大臣】  おはようございます。井出庸生です。本日63回目ということになりますが、第五次追補の最終的な議論が今日行われると伺っております。これまで何回か傍聴させていただきましたが、本当に先生方の真摯なここまでの御議論に感謝を申し上げたいというふうに思います。
 今回、確定した7つの判決ですとか、これまでのADRの賠償等を踏まえ、中間指針の見直しを議論してきて、その金額等も含めて、今日最終的な議論だと思いますが、これまでの先生方の中立・公正、そして賠償が迅速に進むようにと、その趣旨に立った御議論を最後までしっかりと見守りたいと思っておりますし、私のほうからは、再三にわたって、この中間指針というものをきちんと東京電力に、その趣旨を全て御理解いただくと、ここに示されているもの、また明示的に示されていないものであっても、同じような状況、事情というものが見受けられれば、それは全て賠償の対象になるんだと何度も申し上げてまいりました。その観点から、前回御指摘いただきました部分も少し事務方のほうに修文をしていただいて、最初のたたき台を今日机上に配付しておりますが、どうか先生方の最後の最後までの真摯な御議論をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 なお、本日は、永岡文部科学大臣にも御出席いただく予定ですが、遅れて到着される見込みです。
 では次に、事務局から資料等の確認をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】  事務局でございます。資料の確認をさせていただきます。本日は、会場での対面とオンラインを組み合わせましたハイブリッド形式での開催となってございます。会場で参加される委員につきましては、お手元の端末を、また、オンラインで参加されている委員につきましては、事前にお送りしているものを御覧いただければと思います。
 資料は議事次第に記載のとおりですが、資料に不備等ございましたら、議事の途中でも結構でございますので、事務局までお声がけいただければと思います。
 なお、参考3といたしまして「地方公共団体等からの主な要望事項について」を配付しているところでございます。要望書の本体そのものにつきましては、委員の皆様にも共有しているというところでございますので、これまでと同様、この場での説明は割愛させていただきますが、要望書の概要を配付しているところでございますので、御参照いただければと思います。
 次に、毎回のお願いとなり誠に恐縮ではございますけれども、御発言に当たってのお願いでございます。会場で参加されている委員につきましては、御発言の際、お手元のマイクのボタンを押していただき、マイクにランプが点灯したことを確認いただいた後、必ずマイクに近づいて御発言いただきますようお願いいたします。マイクから離れて御発言いただきますと、オンライン参加の委員などへ音声が聞こえないという場合がございますので、御留意いただければと思います。音声が拾えていない可能性がある場合には、事務局から適宜お声がけさせていただきますので、あらかじめ御了承いただければと存じます。発言が終わりましたら、ボタンを再度押していただき、ランプが消灯したことを確認してください。
 また、オンラインで御参加されている方につきましては、御発言の際、端末の画面上にございます挙手のボタンを押していただきますと、会長などから指名させていただきます。御発言いただく際はミュートの解除をお願いいたします。発言が終わりましたら、その都度ミュートに戻していただきますようお願いいたします。
 なお、本日は、過半数以上の委員の皆様に御出席いただいており、会議開催の要件を満たしておりますことをあらかじめ御報告させていただきます。
 そして、前回審査会に引き続きまして、判決等の調査・分析を担当いただきました専門委員にもオブザーバーとして御出席をいただいているところでございます。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、議事に入ります。議題1は、中間指針第五次追補(案)についてです。
 前回の審査会において、中間指針第五次追補の素案を基に御議論いただきました。今回は目安となる金額についても結論を得た上で、最終的に中間指針第五次追補を決定したいと考えております。前回委員の皆様からいただいた御指摘も踏まえまして、事務局において素案を修正していただき、第五次追補の案を用意いたしました。なお、目安となる金額の部分については、引き続き空白になっておりますが、この後の議論の中で具体的な検討を行いたいと思います。
 それでは、まずは事務局から資料全体を通しまして説明をお願いいたします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  それでは、資料1を御覧ください。
 通しページの3ページ目になりますが、まずは表紙です。表紙については、従前の追補のとおり、副題をつけております。今回「集団訴訟の確定判決等を踏まえた指針の見直しについて」というふうにしております。
 次に、「第1 はじめに」の1 経緯ですが、通しページ6ページ目になりますが、48行目から53行目にかけてのパラグラフを追加しております。「本審査会の指針は、多数の被害者に共通する一定の損害類型を示し、同じ損害類型の中で時期や行動態様で差が生じないようにするなど、公平性の確保、被害者の立証負担の軽減が図られてきたが、その重要性は、本審査会が行った現地でのヒアリングにおいても改めて確認されたところであり、その点に留意して本審査会の指針の見直し等に当たった。」というところを追記しております。
 次に、2 基本的考え方ですが、まず、通しページ7ページ目の68行目から71行目にかけてですが、ADRの総括基準のうち、慰謝料の増額事由を第五次追補に示したことを明記しております。
 次の段落の76行目ですが、指針が示すものに対象区域として明示されなかった地域といったことも、きちんと明示するようにいたしました。
 次に、80行目から84行目にかけてですが、この段落自身は、指針のことと、東京電力の対応の両方について触れております。この東京電力の対応の部分においても、指針が示す損害額はあくまで目安であり、賠償の上限ではないことを再度言及しております。また、指針を踏まえてといったところに、さらにADRの賠償実務も踏まえるといったことも併せて明記しております。
 次の段落に行きまして、87行目から90行目にかけてですが、まず、東京電力が総合特別事業計画で誓っているADRの和解仲介案の尊重といったことも明記いたしました。またその後、90行目から94行目になりますが、第五次追補が遡及的に適用されることを踏まえて、東電における可及的速やかな対応が求められる旨を記載しています。その際、確定判決や和解済み案件について専門委員の最終報告に記載された留意点についても併せて言及しております。
 次に、政府による避難指示等に係る損害、第2の部分ですが、通しページで9ページ目の指針、ローマ数字2の丸1と丸2とあった部分で、丸2ですが、これは福島第一発電所から20キロ圏内の外に出てきて、第二発電所からの8キロから10キロ圏内の部分ですが、ここについて、前回の素案では書き方が少し分かりにくかったということで、このような記載に修正いたしました。
 次に、通しページで11ページ目になりますが、178行目から192行目にかけての部分で、この過酷避難状況が認められる区域に計画的避難区域等が含まれない理由として、個別的事情によって過酷避難状況が認められる場合があるものの、いわゆる着の身着のままのような過酷避難状況が類型的には認められないためといったことを明記しております。なお、括弧書きの「他方」の部分がありますが、計画的避難区域、特定避難勧奨地点については、相当線量地域健康不安、これは後ほどの3のところで触れておりますが、ここについては別途賠償されるべき損害として認められる旨も併せて明記しております。
 次に、備考3)に移りますが、通しページで言うと13ページになります。249行目から252行目にかけてですが、加算の目安について、福島第一発電所20キロ圏内に包含されない福島第二発電所の8キロから10キロ圏内について、避難指示が出されていた期間、約2か月弱になりますが、この期間は過酷避難状況が特に顕著であったことを考慮して算定するということを明記しております。
 次に、2 避難費用、日常生活阻害慰謝料及び生活基盤喪失・変容による精神的損害です。ここについては備考3)、帰還困難区域等の日常生活阻害慰謝料に関する備考になりますが、324行目から338行目にかけてです。第四次追補までは第1期と第2期、これは通算して平成23年3月から平成24年5月までになりますが、この15か月間と第二次追補における第3期一括600万円と合わせて750万円とみなされていたところを、居住制限区域と避難指示解除準備区域については、閣議決定等を踏まえまして、解除の時期を問わず平成30年3月末まで賠償されていることとの均衡を考慮して、平成30年3月末までの85か月間、850万円に改定する旨を記載しております。ここは前回の素案の書きぶりが少し分かりにくく、もう少し明瞭にというコメントを踏まえた修正であります。
 次に、備考8)ですが、ここは居住制限区域、避難指示解除準備区域の生活基盤変容による慰謝料の部分です。427行目から439行目にかけてです。具体的な損害額の算定は、第60回の審査会の論点整理資料を踏まえて、生活基盤喪失による精神的損害との比較において、損害の程度はなお大きな差があると考えられ、生活基盤喪失による精神的損害の損害額の目安の半分を下回る額を目安とすることを明記しております。その上で、確定判決の生活基盤変容に対応する認容部分を参照して算定する旨というふうに修正しております。
 また、439行目から445行目ですが、目安の額の妥当性につきましては、損害額の総額で妥当性を評価することを明記しております。
 次に、備考9)になります。この備考9)は、緊急時避難準備区域の生活基盤変容による慰謝料の部分です。ここにつきましては、467行目から470行目にかけてです。この居住制限区域、避難指示解除準備区域の目安額について、生活基盤の毀損の程度についても算定過程に考慮する旨を追記したことと同様に、第60回の審査会の論点整理資料を踏まえて、該当する文章を追記しております。
 次に、3 相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安に基礎を置く精神的損害です。
 まず損害項目の部分については、損害額の目安を自主的避難等に係る損害との比較で検討していることから、合計額を先に記載するように変更しております。
 次に、備考1)ですが、512行目から520行目です。ここについては前回の審査会において、区域から定義をしていましたが、まずは損害類型から定義をすべきではないかという御指摘を踏まえて、論理構成を少し変えました。その結果、避難指示等の基準、これは本件事故発生から1年の期間内に積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれ、この基準の裏づけとなる線量が測定されたことにより、後に政府が避難指示等を出した場所に一定期間以上滞在した者については、その滞在期間中、生活環境が健康に及ぼす影響について安心できる生活空間を享受する利益を侵害されたものと認められ、その侵害によって生ずる健康不安を基礎とする精神的損害は、自主的避難等対象区域における損害を上回るものであり、賠償に値するものと判断したというふうに、まず損害の類型を定義するようにいたしました。
 次に、備考6)の損害額の算定の部分になります。ここは610行目から615行目にかけての部分であります。子供及び妊婦の目安額について、「少なくとも放射線への感受性が高い可能性があることが一般に認識されている子供及び妊婦の場合は、賠償の基礎となる健康不安がより大きかったことには相当な理由がある」というふうに修正しております。あわせて、先ほどの金額の示し方につきましても、まず合計額のほうを先にするように修正しております。
 次に、精神的損害の増額事由です。まず用語のところですが、素案のときには「懐妊」という言葉を使っておりましたが、今回、懐妊については「妊娠」というふうに修正しております。また、「ないし」という用語ですが、法令用語としては「から」といったことを意味しますが、一般には「または」と誤解される可能性がありまして、これまでの中間指針では「ないし」を使っておりましたが、今回の第五次追補については、統一的に「から」と「まで」に修正するようにいたしました。なお、これまでの中間指針や追補に記載されている「ないし」は、そのままといったことであります。
 次に、備考3)になります。この備考3)は、丸1の要介護、丸2の身体・精神障害、そして丸3の介護者のところになりますが、706行目から711行目にかけての部分、ここは複数の者が恒常的に介護を行った場合の目安を上回る増額を行うことについて、妨げるものではないというふうに前回の素案では書いておりましたが、もう少し強い表現であるべきではないかという御意見もいただきましたので、目安を上回る増額を行うべきことがあることは当然というふうに修正しております。
 また、715行目から720行目にかけてですが、前回お示しした素案では、この備考3)の途中にあった段落ですが、増額事由の丸1から丸3に共通する留意点として、最後に移動しました。また、この丸1から丸3についての増額の目安額が同額となっていることについて、その理由も明記すべきではないかという御指摘がありましたので、ADR賠償実務を参照して、共通して認められる増額の目安として示したものであることを併せて追記いたしました。
 次に、備考4)ですが、これは丸4の乳幼児の世話に関する部分です。736行目から742行目のところですが、ここは先ほどの備考3)の修正と同様に、複数の者が恒常的に世話を行った場合の目安を上回る増額を行うことについて妨げるものではないというふうにここも記載しておりましたが、もう少し強い表現にするということで、目安を上回る増額を行うべきことがあることは当然というふうに修正しております。
 また、742行目から750行目にかけての部分ですが、ここも備考3)と同様、この備考の中の途中に存在していた段落を最後に移動するようにいたしました。
 次に、備考5)ですが、ここは前回「懐妊中」だったところを、「妊娠中」というふうに直した部分であります。
 この770行目から773行目にかけての部分になりますが、妊娠の経過等の個別的事情による場合の増額について、ほかと同様にしております。
 次に、備考6)、ここは丸6持病、丸7持病の介護、丸8別離、二重生活、丸9移動の回数が多い場合、そして丸10その他になりますが、まず783行目から791行目にかけての部分であります。ここで前回の素案のときに、目安を示さない理由があたかも定型的処理になじまないからというふうに見えたところですが、ここについては、そういう理由ではなく、増額の判断が、個別具体的な事情によるところが大きいという理由がまず第一ではないかという御指摘を踏まえて、修正いたしました。さらに、東電においては、可及的に類型的対応に努め、個別事案においても各増額事由の趣旨を踏まえた対応が必要であるべきといったことも併せて明記しております。
 次に、備考7)になりますが、ここは移動回数が多い場合の過酷避難状況との関係です。具体的に言いますと、802行目から809行目にかけての部分であります。第1期のうち過酷避難状況が認められる相当期間の時期以降については増額事由の検討で考慮されることが明確になるように修正ということで、806行目ぐらいからは、「併せて、第1期に生じた移動のうち特に過酷な状況であったと認められる本件事故発生当初から相当期間の時期以降の移動も考慮して、その回数を判断することが相当」というふうにしております。
 次に、備考10)ですが、ここもほかの備考と同様に、目安を上回る増額を行うことについて妨げるものではないというふうな記載になっておりましたが、より強い表現をということで、「本審査会の指針の趣旨からして当然である。」というふうに修正しております。
 次に、「第3 自主的避難等に係る損害」ですが、ここが主に「被曝」という言葉が出てきておりまして、前回の審査会の場では、この被曝の「曝」を、公文書と同様に平仮名の「ばく」というふうにすべきではないかという御意見ありましたが、この中間指針ではずっと、被曝の「曝」については、このにちへんを使っていたということと、あと同じ「ばく」でも、火事の「火」、ひへんと混同されるのではないかという懸念もありまして、今回は「被曝」について、にちへんの漢字を使うといったことで、従前どおりの表記とすることにいたしました。
 主な変更点は以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。それでは、第五次追補の案について、審議に入りたいと思います。議論につきましては、前回同様に、区切りごとに分割して進めたいと思います。
 では、まず「第1 はじめに」についてでございますが、この点について御意見等ございますでしょうか。
 では、鹿野委員、お願いいたします。



【鹿野委員】  ありがとうございます。基本的には、今までの議論を踏まえて経緯及び趣旨をまとめてくださっておりまして、その意味では賛成でございます。ただ、改めて拝見しておりますと、若干文言的に気になるところがありましたので、それについて指摘させていただきたいと思います。
 2つあるのですが、1つ目は、48行目「本審査会の指針は」というところから始まる段落なのですが、ここの主語と述語のかみ合わせが悪いような気がします。51行目のところで、「が図られてきたが」というふうになっているのですが、これは、「本審査会の指針は」を受けているので、51行目は「を図ってきたが」というふうにした方がよろしいのではないかと思いました。これが1点目です。
 それから2点目ですが、その下の「2 基本的考え方」のところの1段落目の2文目です。58行目の一番最後、「その上で」というところから始まる文章がありますが、「その上で」の後に、この事故の内容、深刻さ、周辺に及ぼした被害の規模等々が「前例なきものであり」というふうに書いてあります。これは、そのとおりではあるのですけれども、ここの部分がその文章の後段のところとどういうふうな関係に立つのかということが、ちょっと表現上分かりにくいような気がしました。文言を少し変えて、「前例なきものであることから」とか、何かそういうふうな、後ろとのつながりをもう少し明確にするような表現をとった方がよいのではないかと思った次第です。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。ただいまの修正について、事務局のほうは何かありますか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  ありがとうございます。まず、鹿野委員からありました最初の、経緯の一番最後の、今回追加した段落につきましては、先生おっしゃるとおりですので、少し主語述語の関係で適切なワーディングにするということで、「軽減を図ってきたが」というふうに修正したいと思います。
 次の基本的考え方の58行目以降のところですが、まず趣旨としては、今回、この事故の内容、深刻さ、周辺に及ぼした被害の規模、範囲、期間等が前例なきものということは、これまでの不法行為の損害の範囲について、なかなか前例になるものがないということが見受けられて、その中で今回新たにこういう類型を示してきたということの経緯を、前例なきものの中で新たにこういう損害類型を示してきたといったことを説明したところであります。先生御指摘のとおり、この「あり」といったところは少し流れが悪いので、「あることから」というふうに修正させていただければと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、織委員、お願いいたします。



【織委員】  ありがとうございます。私も、今回いろいろ議論を尽くしていて、そういった修正の趣旨を入れていただいたこと、改めて感謝したいと思います。
 その上で、今から修文をしろということではないんですけれども、私もドラフトを送ればよかったんですけれども、基本的な考え方の74行目以下のところの、80、1行目あたりだと思うんですけれども、「本審査会の指針が示す損害額はあくまで目安であり、賠償の上限ではないことに改めて留意するとともに」という、ここはすごく重要なところだと思っていまして、後の28ページ以下でも、上限ではないということは当然であるということが繰り返し述べられているところでもありますので、改めてこの初めのところに、上限ではないということ、個別の事情に応じては増額も当然あるということは、以下の、後の個別の事象においても繰り返しまた述べるところではあるみたいな一文を入れていただくといいかなというのが1点です。
 それから、今回追加されたADRのところ、88行目あたりのところで、東京電力の3つの誓いのうちの一つ、「和解仲介案の尊重」についてという記述が入れられているかと思います。これはすごく重要なところで、私どももヒアリングを住民の方にしていたときに、度々、東電さんには3つの誓いを尊重してもらいたいということをすごく強調されていたのが印象に残っています。実はこの3つ目の「和解仲介案の尊重」だけではなくて、誰一人取り残さない、迅速かつ、きめ細やかな賠償の徹底というのも重要な内容であり、前のほうの71行目ですとか85行目のあたりは、まさにそこのところが述べられているところでもありますので、もし可能であれば、その東電の3つの誓いについて、ここでも言及していただければなというふうに思いました。
 全体を通じて、私、この審査会において、皆さん住民の方が被られた御苦労ですとか苦しみというものを、なかなか一律類型化することができないという悩みがある一方で、ADRですとか個別の中においては立証の難しさがあるゆえに、ここで類型的に決めてほしいという、そういったニーズを酌みながらこういうことをやってきたというニュアンスがもうちょっと入るといいかなというふうな気がしました。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。最初におっしゃった点ですが、上限ではないということは、これは本当に今回は繰り返し出てきますので、かなり強調されていると思います。以下に出てくるということも、読めば明らかなので、織委員の御趣旨は今の文章でも一応出てはいるかなという気がいたしますが、いかがでしょうか。



【織委員】  私は一応この議事録に、さらにもう1回強調したということが残ればいいかなと思っています。特に今回の発言は議事録で、もう一度ここのところは重要だということを改めて言っていることが残ることが重要だと思っていますので、修文に生かしていただかなくても、それは大丈夫です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 2番目のところは、3つの誓いを、この「はじめに」のところでもう1回言及するということですか。



【織委員】  はい、そうです。そのほうがよりクリアになってくるのかなというふうに思いました。



【内田会長】  「総合特別事業計画において誓っている」というふうに書かれているので、一応出てはいるかと思いますが、事務局、いかがでしょうか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  3つを全てここに言及すると、多少くどいかなというのがあるのと、前回、特にADRの増額事由も指針に明記したこともあって、和解の仲介案の尊重というのはきちんとここに明記すべきではないかということを踏まえて、今回あえて、3つの誓いのうちの「和解仲介案の尊重」についてはきちんと明記をしたと。3つの誓いがあるといったことをここに明記するというのはあるかなと思いますので、例えば「東京電力株式会社が総合特別事業計画において示している3つの誓いのうち、特に」といって、「和解仲介案の尊重」といったように追記するのはいかがでしょうか。



【内田会長】  織委員の御発言の趣旨をよく反映しているように思いますが、よろしいでしょうか。



【織委員】  はい、結構です。ありがとうございます。



【内田会長】  ありがとうございます。あとの点は御趣旨を議事録にとどめるということとさせていただきたいと思います。
 それでは、樫見委員、お願いいたします。



【樫見会長代理】  基本的には大体全部賛成なのですが、表現の問題として、先ほど鹿野委員が御指摘になった61行目の「範囲、期間等が前例なきものであることから」というふうに変えるという話になったのですが、ただ、この文章が、実は73行目までずっと一つに続くわけです。なので、例えばですが、61行目の「内容、深刻さ、周辺に及ぼした被害の規模、配置期間等が前例なきものであった」と、ここで改行して、少しだけ行を少なくして「このたびの中間指針は」という、本当に言いたいこれを改行して、数行なんですが、短くしたらいかがでしょうか。あまりにもこの文章が、73行目までずっと、長くなってしまいますので、本当に言いたいのは、この「この度の中間指針第五次追補においては、上記で述べた経緯を踏まえ」てという、ここのところを強調するように、改行して、表現を変えたらいかがでしょうかというものでございます。



【内田会長】  ありがとうございます。私も文章を短くするのは大好きなのですが、ちょっとここは切りにくい感じもしますけれども、ほかの委員の皆様で何か御意見ありますでしょうか。
 鹿野委員、お願いします。



【鹿野委員】  ありがとうございます。先ほどこの点について発言させていただいたのですが、私もここの文章を読んで、とにかく長くて、どこにどういうふうにつながっているのかが分かりにくいというところに、まずは疑問を持ちました。なので、もし可能であれば文章を切っていただいたほうが、より明確になるのではないかと思います。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。できれば切って分かりやすくできるといいと思いますが、今の最初の文のところで切るというのは可能でしょうか、事務局のほうは。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  この一連の長い文章は、今御指摘あったとおり、最後の「今後の迅速、公平かつ適正な賠償の実施による被害者救済」といったところにつながるもので、その手段として、今回第五次追補で新たな損害類型を示すとともに、総括基準のうち、今回の指針に新たに示したと、この2つの手段によって最後の文章につながるという構造にしておりましたので、逆に「前例なきもの」といったところで一旦切っていただいたほうが、読みやすさの観点からもよりよい文章になるのではないかというふうに思います。



【内田会長】  ありがとうございます。それでは、委員の皆様の御指摘を踏まえて、「前例なきものであった」というところで一旦切って、2文にするということにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  ささいな話ですが、「あった」で終わるとなると、その前のつなぎが、「その上で」「あった」となっており、というのは、またちょっと変な感じになるので、この「その上で」を少し変える必要があると思います。例えば、「そして」に変えるとか、一番単純にはそうなりますけども、そこも踏まえて修正していただければよろしいんじゃないかと思います。



【内田会長】  「その上で」というのは、「あった」で、その後は「この度の」と続く。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  「改めて確認する。」の後の、3行目です。58行目の最後の「その上で」。



【内田会長】  「その上で」の部分ですか。



【富田委員】  ええ。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  「そして」か「また」か、何もつけないか、どちらか。



【内田会長】  何もつけないのでもいいかもしれませんね、シンプルに。じゃあ「その上で」を削除して、「前例なきものであった。」で、「この度の」というふうに始まるということで。では、そのように修文させていただきます。
 ほかに。大塚専門委員、お願いします。



【大塚専門委員】  今のところ、本当に微妙な話で、私が専門委員として申し上げることではないのかもしれませんが、一言申し上げます。「その上で」としてあるところの前の文章との関係では、前の文章は今回、特に異なって解する理由はないというところから始まっていますので、むしろ58行目から59行目にかけては、そうはいってもこういうことがあるからということを付け加えているので、そこの接続詞はぜひお考えください。「もっとも」ではないんですけど、少し新しいことを言うという感じのことを追加していただくことになりますので、その接続詞は事務局のほうでお考えいただければありがたく存じます。



【内田会長】  いえ、重要な御指摘をいただきありがとうございます。確かに、言われてみればそうだと思いますので。大塚専門委員の言われた「もっとも」というのはいかがですか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  先生、では、例えば「確認する。しかしながら」とか、「もっとも」というふうに入れて、「前例なきものであった。」といったところで改行した上で、「その上で」とか、そういう。「この度」の前に「その上で」を入れて、今の「その上で」を「もっとも」か「しかしながら」にするといったことではいかがでしょうか。



【大塚専門委員】  私は賛成です。ありがとうございます。



【内田会長】  私もそれでいいように思いますが、御異論ありますでしょうか。特にありませんか。
 それでは、今のように修文させていただきたいと思います。大変明確な文章になりました。御指摘ありがとうございました。
 ほかに御意見ありますでしょうか。特にはありませんでしょうか。
 中田委員、お願いします。



【中田委員】  今回の御提案は、前回の議論を反映していただきまして、非常に丁寧にされていましたので、私としては異存ございません。ただいま皆様からの御指摘に基づく修正についても異存ありません。



【内田会長】  どうもありがとうございました。それでは、「第1 はじめに」については、この内容で確定してよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
 ありがとうございます。では、ただいまいただいた修文の内容を踏まえ、反映させた形で確定をしたいと思います。
 では、次に「第2 政府による避難指示等に係る損害について」に入ります。ここは大きく分けて4つの項目がありますので、1つずつ御議論をいただきたいと思います。
 まずは、1の過酷避難状況による精神的損害です。議論に入ります前に、まず、空白となっております目安となる額の部分ですが、これについて、会長としての私の私案でございますけれども、御議論のたたき台を御提案したいと思います。
 まず、指針のローマ数字2の丸1、福島第一原発から半径20キロ圏内及び福島第二原発から半径8キロ圏内の区域についてですけれども、この区域の方々に対しては過酷避難状況が見られる第1期の、事故から6か月の間に、1人月額10万円の日常生活阻害慰謝料が支払われています。これが第1期で合計60万円となります。そこで、これに加えて支払われる過酷避難を理由とする慰謝料としては、この日常生活阻害慰謝料の総額の半分である30万円としてはどうかと思います。30という数字を入れるという御提案です。つまり、過酷避難状況を経験した方は、第1期の避難に伴う精神的損害の慰謝料額が1.5倍になるという計算です。
 この点について確定判決を見ますと、仙台高裁のいわき判決や仙台高裁の生業判決は、過酷避難に相当する損害に対して、額面を見ると150万円が支払われているのですが、これらの判決は、いわゆるふるさと喪失に対して、指針よりも少ない600万円となっておりまして、これを指針のように700万円というふうに見るとすると、過酷避難に対する慰謝料はトータルで見ると50万と評価することも可能です。
 他方で、東京高裁の前橋や千葉判決は、過酷避難を慰謝料額算定において考慮しますけれども、指針の日常生活阻害慰謝料や生活基盤喪失に対する慰謝料の額と比較をすると、過酷避難自体に対して明確に割りつけられている金額というのがうかがえません。
 こういうふうに、確定判決の中にもばらつきがあるということを考慮いたしますと、50万とか、ゼロと評価するのは問題かもしれませんが、一定のばらつきがあることを評価すると、その間の30万円という金額は裁判例との関係でもバランスが取れているかと思います。
 それから、丸2の福島第二原発から半径8キロから10キロまでの区域につきましては、前回の審議会でも御議論いただきましたが、避難指示が出されていた最初の2か月間というのは、過酷避難状況は本件事故発生当初の時期に特に顕著であったということを考慮すると、単純に第1期の6か月のうちの2か月、3分の1というふうに計算するのではなく、増額するのが適当であるという御意見をいただいておりました。そこで、これを2分の1として、15万円としてはどうかと考えます。
 その結果、まとめますと、通しページ9ページの指針、ローマ数字2、丸1の最初の括弧は1人30万円、丸2の括弧は1人15万円とするということを御提案したいと思います。
 以上の提案を、これは私案にすぎませんので、一つのたたき台として御議論いただければと思います。
 それでは、具体的な追補の記載内容や、あるいは目安となる金額について、御意見を御自由にお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 では、江口委員、お願いします。



【江口委員】  私としては、結論としては、ただいまの会長の御提案に賛成でございます。過酷避難状況における精神的損害というのは、今、会長もおっしゃられたように、判決の中でも非常に分かれていまして、専門委員の方に分析していただくのもすごく苦労の多かったところと思います。ただ、専門委員の最終報告の中で、類型化は必要だと、だけれどもこれは加算要素とするということが示されまして、これは大変深い分析の結果だなと思いまして、当審査会でもその方向でずっと考えてきたと思います。そうしますと、日常生活阻害慰謝料が、今、会長もおっしゃられたように、6か月で見ると60万円、それから、ここの備考にも出てまいります避難所生活における過酷さによる加算が、6か月では12万円という金額になってまいります。
 そうすると、この過酷避難状況による慰謝料の目安についても、やはり12万円は超える必要があるのではないかと思うけれども、じゃあ、倍の60万円ということにはとてもならないんだろうということを考えますと、今の避難所生活の12万円の倍の24万円を超える金額というのを考えることは、過酷避難状況による精神的損害が必ずしも6か月全部になるんだろうかと、だけれども6か月と見ようねと、これも既に今までの審査会の中で議論されてきたことです。そういうことと比較しても、極めて相当な金額ではないかと思う次第です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、古笛委員、お願いいたします。



【古笛委員】  私も、結論としては会長の私案に賛成です。最初の1人30万ですが、低いほうに合わせるのもどうかと思うんですけど、だからといって最高額に合わせるのもどうかと、やっぱり全体を考えるとバランスがいいのは、若干多めの30万ということでよろしいかと思います。
 丸2のほうは、当初は6か月に対して2か月なので、10万円でいいのではないのかなという気もしたんですが、やっぱり着の身着のままでということは、当初は負担が大きいだろうと、まさに過酷避難状況を増額事由とした趣旨からいくと15万円でいいかなというふうに考えましたので、30万、15万に賛成です。
 以上です。



【内田会長】  どうもありがとうございます。ほかに御発言ありますでしょうか。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  ここの点もなかなか難しいところですけれども、今、会長が言われましたように、仙台高裁の生業について考えると、50万円ぐらいが相当となります。既に帰還困難区域については、生活基盤喪失に相当する金額が700万円ということで考えてあり、そして、避難に伴う日常生活阻害慰謝料が85か月分で850万円ですから、慰謝料全体として1,550万を中間指針で認めるという形になりますが、東京高裁の前橋では1,500万円、それから千葉では、少ないほうでは1,550万ということですので、そこからは逆に差額が出てこないという状況があります。そういう状況を加味すると、各高裁判決の状況を考えても30万円は妥当ではないかというふうに考えます。



【内田会長】  ありがとうございます。富田委員には前回も、総額とのバランスということを御指摘いただきましたが、その観点からの御発言をいただきました。
 ほかに御発言ありますでしょうか。特にはありませんでしょうか。
 いずれも実務家御出身の委員の方々からサポートいただきました。それでは、特に御異論がないということでしたら、最初にお示ししたたたき台の金額のとおりで御承認をいただいたというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
ありがとうございます。それでは、過酷避難については以上のように金額を定めたいと思います。
 続きまして、2の「避難費用、日常生活阻害慰謝料及び生活基盤喪失・変容による精神的損害」に入ります。先ほどと同様に、まずは目安となる金額の部分について、私、会長から私案を御提案したいと思います。
 まず、生活基盤喪失による精神的損害について見ますと、対象となる帰還困難区域の場合、通しページ14ページの指針、ローマ数字1、丸1の小文字ローマ数字1を見ますと、日常生活阻害慰謝料を、これまでの75か月から、平成30年3月末までの85か月といたしますので、日常生活阻害慰謝料が850万ということになります。それに先ほどの過酷避難状況による精神的損害の目安となる金額、先ほどお認めいただいた30万円を加えて、これに生活基盤喪失による慰謝料額700万円を足しますと、先ほどの富田委員の御発言にありましたように、この場合は1,580万円が総額ということになります。これは確定した各判決と比較しますと、おおむね同じような金額となっておりますので、バランスの取れた金額と言えるだろうと思います。これが帰還困難区域の場合です。指針の日常生活阻害慰謝料を850万円とするということを踏まえた上で見ますと、700万円というのは相当な額となっているということだろうと思います。
 そこで、次に居住制限区域及び避難指示解除準備区域の生活基盤変容による慰謝料額が問題となりますが、確定判決を見ますと、例えば仙台高裁いわき判決は、いわゆる故郷変容慰謝料と、避難を余儀なくされたことによる慰謝料を加えて250万円を認めており、ここから先ほど確認いたしました過酷避難状況による精神的損害の目安額30万円を控除いたしますと、この指針の立場から見た場合に、故郷変容分は220万円ということになります。それから、仙台高裁生業判決も同様な計算をいたしますと、故郷変容分は220から270万円となります。また、東京高裁前橋判決は一括算定されておりますので、これを日常生活阻害慰謝料分を仮定して換算しますと、故郷変容分というのは250から300万円となります。
 これらの判決を踏まえまして、指針の目安額は250万円としてはどうかということを御提案したいと思います。そうしますと、この場合の目安額の総額は、過酷避難が30万円、日常生活阻害慰謝料が850万円、それから生活基盤変容の慰謝料250万円を合計して1,130万円となりますが、この金額は、各確定判決と比べてもバランスの取れた金額になると思われます。例えば仙台高裁いわき判決や生業判決は総額が1,100から1,150万円の範囲ですので、大体その範囲に入っているということが言えようかと思います。
 次に、緊急時避難準備区域についてですが、判決によって生活基盤変容による慰謝料を認容しているものと、していないものがあります。例えば、仙台高裁いわき判決と東京高裁千葉判決は、緊急時避難準備区域について50万円としており、東京高裁前橋判決は、同様に換算しますと80ないし120万円とされています。他方では認容していないものもあるということで、これらを踏まえて、この金額については50万円とすることを提案したいと思います。
 そうしますと、この場合の目安額の総額は、日常生活阻害慰謝料18か月分と合わせて230万円となるのですが、この総額はおおむね各確定判決とバランスが取れていると思われます。
 以上の御提案をまとめますと、通しページ14ページのローマ数字1、丸2の小文字ローマ数字2、居住制限区域及び避難指示解除準備区域の生活基盤変容による精神的損害については、1人250万円を目安とする。
 また、小文字ローマ数字3の緊急時避難準備区域については、これは通しページ15ページの1行目になりますが、1人50万円を目安とするということになります。
 以上の提案を一つのたたき台として、御議論いただければと思います。
 それでは、この具体的な記載内容や、あるいは目安となる金額について、御自由に御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 江口委員、お願いします。



【江口委員】  私も結論としては、今、会長が示された250万、それから50万という提案に賛成いたします。
 この、生活基盤変容による精神的損害というのは、言わば過去の審査会では議論されたことがなく、今回新たに議論するということでした。
 ただ、これも専門委員の最終報告の中にありましたように、変容も大きな問題ではあるけれども、喪失と変容を比べると、やはり金額的な目安としては喪失の半額は下回るだろうということが出てまいりまして、その時点から、審査会の中でもその点は共通していたんじゃないかなというふうに私は理解しておりました。
 そして、その下回るというときに、ある意味、「やや下回る」というものから「下回る」というものがあって、「大きく下回る」というものが出てくるんじゃないか。「やや下回る」というと例えば300万ぐらいで、「大きく下回る」というと半額の半額、つまり4分の1以下になって、150万とか100万という金額が出てくる。そして、「下回る」というのは250万か200万かというような感覚なのかなというふうにして、審査会の議論をずっと聞いておりました。
 やはり下回るという以上、ちょっと「やや」は取りにくいなと。それから、「大きく下回る」ということは、これもおかしいのではないかというのは、大分前にほかの委員の方から御指摘があったとおりだと思います。
 そうすると、もし審査会として独自に考えるにしても、250万か200万かというふうな金額というのが、相当の範囲なのではないかなというふうに思っておりました。
 私としては、判決の中でわざわざ変容による金額というのだけ見ますと、150万というのもありましたから、200万円ぐらいが相当なのかなというふうに考えていた時期もあったんですけれども、全体としての総額であるとか、ただいまの会長の御説明などの中で、やはり被害の実相というのを見つめて、250万というふうに提案されたことには賛成いたします。



【内田会長】  どうもありがとうございました。この変容というのは、元のコミュニティーが壊されて、元どおりの生活ができないという状態をいかに評価するかという、かなり難しい評価だと思いますが、その難しさということも、ただいま御発言の中で表現していただきまして、どうもありがとうございました。
 ほかに御発言ありますでしょうか。
 古笛委員、お願いいたします。



【古笛委員】  先ほどに続いてなんですけれど、私も最終的には、この私案のとおりで賛成させていただくことにいたしました。
 最初の、やっぱり生活基盤の喪失とか変容というものについては、これまで例がない損害賠償における、経験したことのない損害算定だったので、恐らく裁判所のほうも随分悩まれたのではないのかなと思います。
 たくさんの確定判決を踏まえたところ、最初、居住制限区域と避難指示解除準備区域については、いわきや生業から出ている220万円でいいのかなという気もしたんですけれども、全体、前橋なども踏まえると、250万円というのが落ち着きのいいところだろうなと。緊急時避難準備区域についても、裁判例を踏まえて50万円、ゼロもあるところを50万円というところでいいのかなと。
 さらには、今回全体を通して言えるんですけれども、今まで例のない損害額の算定ではあったけれども、こういった数字が人身事故における後遺症とかとの比較においても不自然さを感じない金額であったので、結論としては、この250万円・50万円ということに賛成させていただくことにしました。
 以上です。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 富田委員、お願いいたします。



【富田委員】  こういうふうに細かく、生活基盤変容といった形で独自の慰謝料を認めるかどうかというのは、法的にはいろいろ議論があり得るところなんですが、しかし、裁判所のほうでは、結局は総額基準が妥当かどうかというのが最終的なことになろうかと思います。特に東京高裁の各判決はそこを分けていませんので。
 そういう意味で、総額というものがどうかとなると、実際上、仙台高裁にしろ東京高裁にしろ、ある程度同じ水準の金額が出ているというところが裁判所の感覚であろうというふうに思います。
 ただ、審査会としては、やはり被害者に寄り添う面から見れば、こういった個別の部分についても重視するという姿勢で基準を設けるというのは、あり得る立場だろうというふうに思います。
 そういう意味で、今、会長がおっしゃられたように、基本的に最終的な総額が、項目を分けた裁判所、あるいは分けない裁判所でも大体共通になることから見れば、このあたりの数字が総額としても妥当だろうということですので、私も会長が示された案でよろしいのではないかというふうに考えております。



【内田会長】  どうもありがとうございます。このテーマにつきましても、実務家出身の委員の皆様からサポートいただいて大変心強く思いますが、ほかに御意見いかがでしょうか。
 中田委員、お願いいたします。



【中田委員】  数字につきましては、やはり実務家の皆様方の御意見というのは非常に説得力があるなと思って伺っておりまして、特に私もそれと異なるものではございません。
 一つだけ申し上げたいことは、先ほどの会長の御説明の中で、例えば仙台高裁いわき判決について、避難を余儀なくされたことと故郷変容と合わせて250万円から、過酷避難状況による精神的損害の30万円を引くと、というような御説明があって、それはそれでそうなんですけれども、地域によっては過酷避難状況による精神的損害の対象になっていないところもあると思うんですが、しかし、そういうところは、後で出てきます「相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる精神的損害」で対応されているところもあると思いますので、結論としてそのようになるのだろうと思います。
 以上、補足だけです。



【内田会長】  補足していただきまして、どうもありがとうございます。
 事務局、何かありますか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  今、中田先生がおっしゃったところは、過酷避難状況の審議の際に、今回修正している備考1)に、きちんと別途、過酷避難状況が認められていない区域についても、計画的避難区域と特定避難勧奨地点については、相当線量地域の健康不安に基礎を置く損害が認められるというふうに明記しておりますので、先生の御趣旨は、指針上もしっかり反映されているというふうに思います。



【内田会長】  どうもありがとうございます。補足をしていただきましてありがとうございます。
 ほかに。鹿野委員、お願いいたします。



【鹿野委員】  ありがとうございます。私も、既に委員から御指摘のとおり、判決でいろいろと分かれているところもあるのですが、それら確定判決の全体的な状況に照らし、しかも個別の項目というだけではなくて、総額とのバランスということも考えますと、指針の目安額としては、先ほど会長から御提示いただきましたように、250万と50万円というような形でよろしいのではないかと考えております。
 それから、額についてはそうなのですが、ちょっとこのついでに、備考のところの文章について、一点だけ発言させていただきたいと思います。
 279行目の「この点」というところで、これは改訂することにした理由が書いてあるのですが、何か読んでいてとても分かりにくかったので、「この点」の後に「本指針では」という言葉を入れていただいて、それで、293行目のところに、これこれにするため、旧指針を全面的に改訂することとしたものである、というふうに、「旧指針を」という言葉を入れていただいたほうがより分かりやすいと思います。
 もちろん、前の段落を受けての文章ですから、意味は分かることは分かるんですけれども、日本語としてより分かりやすくなるようにという観点からの要望です。よろしくお願いします。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ただいまの修文の御提案については、事務局、よろしいでしょうか。
 適切な御指摘をいただきましてありがとうございます。御指摘のとおりに修正したいと思います。
 ほかに御発言ありますでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 それでは、御議論を踏まえて、最初にお示ししたたたき台の金額どおりで御承認をいただいたと理解してよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
 どうもありがとうございます。
 それでは、続いて3の、「相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安に基礎を置く精神的損害」となります。
 この部分は被曝の不安に関係する損害でありまして、最後に配置されております第3の「自主的避難等に係る損害について」の考え方とも関連をしております。
 そこで、ちょっと順番としては、「自主的避難等に係る損害について」の議論をした後で議論したほうが進めやすいというふうに思いますので、この部分、3は最後に回させていただきたいと思います。
 そこで、次が4の「精神的損害の増額事由」でございます。
 まずは、目安となる金額の部分について、私、会長から私案を御提案したいと思います。
 御提案をいたします金額は、この精神的損害の増額事由自体がADRの賠償実務を踏まえたものですので、金額もADRの賠償実務を踏まえた数字ですけれども、通しページの28ページ、指針のローマ数字2にあります丸1から丸3までの事由について、これはすなわち丸1の要介護状態にあること、丸2の身体又は精神の障害があること、丸3の、丸1又は丸2の者の介護を恒常的に行ったことの3つですが、この3つについての具体的な賠償額の算定方法は、1人月額3万円を増額の目安とするとしてはどうかと思います。
 それから、指針のローマ数字3にあります丸4の事由、「乳幼児の世話を恒常的に行ったこと」という事由については、ローマ数字3のアにあります、満3歳未満の場合は、1人月額やはり3万円の増額を目安とする。イの、満3歳以上小学校就学前の場合は、1人月額1万円を増額の目安とするとしてはどうかと思います。
 それから、指針のローマ数字4の丸5の事由、「妊娠中であること」という事由ですが、これにつきましては、本件事故発生時に妊娠していた者については、一時金として30万円の増額を目安とし、本件事故発生後に妊娠した者については、妊娠期間中月額3万円の増額を目安とするということを提案させていただきたいと思います。
 以上の提案を一つのたたき台として、御議論いただければと思います。
 それでは、具体的な記載内容や目安となる金額につきまして、御自由に御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 明石委員、お願いします。



【明石委員】  明石でございます。法律の専門家ではないのでちょっと教えてほしいのですが、ここの30万円と3万円、事故の前に妊娠した、それから事故の後に妊娠した、この差というか、その差の考え方というのはどういうふうにお考えになって、こういう、30万・3万円というふうになったのか御説明いただけると、皆さんというか、読まれる方も納得しやすいんじゃないかと思いますが。ぜひよろしくお願いします。



【内田会長】  ではこれは、ADRセンターの古谷室長からお願いいたします。



【古谷室長】  ADRセンターの古谷から御説明いたします。
 事故時に妊娠されていた方の中には、妊娠1か月の方もいれば、もうすぐ赤ちゃんが産まれるという方もいたと思います。その方たちというのは、細かく見ていくとご事情はいろいろあるかと思うのですけれども、その時の大変さというのは、ある程度一律のものとして賠償するというのがよいのではないかという考えでございます。ですので、そういった方は一律に、今言っていただいたような金額で賠償をするという発想になります。
 もちろん、事故後に妊娠された方についても個別的な御事情は様々あると思うのですけれども、そのような方については、妊娠されていた月数と対応した御苦労、大変さというのがあると、法的には見てもよいのではないかという発想から、月額での賠償ということを、御提案させていただいています。
 以上です。



【内田会長】  どうもありがとうございます。



【明石委員】  ありがとうございます。結構でございます。



【内田会長】  妊娠期間を10か月とすると、いずれにせよ30万ということですが、事故後の妊娠の方については、日常生活阻害慰謝料の支払われる期間で妊娠中であった期間、月額でという計算になるのかと思います。
 ほかに御発言いかがでしょうか。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  ここの基本3万円という数字は、ADRにおける賠償実績が平均3万円前後であったということに基づいていると思います。
 もちろん、ADRでも事例によって金額は増減させているわけですので、ここでの中間指針の数字も、事例によっては増額していただくという前提だとは思いますが、指針の目安としては、基本的に3万円にするということでよろしいのではないかと思います。
 減額しているところはそれに準じた形でやっているということですので、私はこの数字で目安を定めることには賛成です。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかに御意見は。古笛委員、お願いいたします。



【古笛委員】  私も、結論としてはこの御提案どおりでよろしいかと思います。
 センターの実績ということで3万円と。要介護状態にある方と妊娠された方が同じでいいのか、いろんな見方はあるかと思うんですけれども、3万円というのは、それはそれで合理的に受け入れられるのではないかというふうに思いました。
 それから、妊娠されている方の30万円ですけれども、昨年、もう出産直前の方とか直後の方が入院されていた病院、そのまま避難された病院を見学させていただいたんですが、その時やっぱりものすごく大変だっただろうなということを感じましたので、30万円で皆さん一律でよろしいかと思いました。
 以上です。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 江口委員、お願いします。



【江口委員】  私も、これはADRの実績を踏まえた金額だということで、それで賛成いたします。
 また、備考欄の書き方も、今回、事務局がいろいろ、位置を変えていただいたりして、ちょっと位置を変えただけなんですけれども、それでも、それぞれ、やっぱりこれは上限なんだから、ちゃんとADRセンターにおける賠償実務を参照しなければいけませんよということは、前回の案よりも随分はっきりしてきましたし、しつこいぐらい書いてあると思いますので、ADRセンターはこれから大変と思いますけれども、大変、備考の記載も含めて、よくなったと思っております。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかには御発言。山本委員、お願いします。



【山本委員】  この金額の点については、今、実務家出身の委員から、あるいはADRセンターのお話もありまして、基本的に異論はありません。
 一点だけ申し上げたいのは、備考6)のところで丸6から丸10の増額事由に係る記述の部分です。
 その一番最後のところの文章で、この丸6から丸10までの増額事由についても、東京電力は可及的に類型的対応に努めるべきであり、個別事案においても、各増額事由の趣旨を踏まえた対応を行うべきであると。
 この記述は全く賛成で、ここにぜひ入れていただきたいのですが、さらに加えるとすれば、これは当然そういう趣旨なのかなとは思うんですけれども、「直接賠償」という言葉が入ったほうがよいのかなという印象を持っております。
 つまり、東京電力がADRに行く前の直接賠償の段階で、このような類型化あるいは個別事案に応じた対応ということで、前回、ADRセンターのほうでも、この丸6との関係では、「重度の持病」というところですけれども、透析を受けているような方については基本的には認める、対応されているとか、あるいは、丸9の移動回数についても、ある一定の回数を超えれば基本的にはもう賠償の対象になるという取扱いをされているというお話がありました。そういう類型的な対応を、ぜひ東京電力に直接賠償の段階でやっていただいて、ADRセンターに来なくても多くの人がそういう賠償を受けられるという趣旨かなというふうに思いますので、「直接賠償」という言葉、例えば「東京電力においては、直接賠償について」とか、何かそういうような文言を入れていただいたほうが、趣旨が明確になるのかなというふうに思った次第です。



【内田会長】  大変適切な御指摘をいただきましてありがとうございます。修文の案としては、「東京電力においては、直接賠償においても」とかいうような文を入れる……。



【山本委員】  そうですね、ちょっと、「おいて」が2つ重なるのがあれなのかもしれないですけど、趣旨はそのようなことであります。



【内田会長】  はい。じゃあ事務局から。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  「東京電力による直接の賠償においては」にするのはいかがでしょうか。



【山本委員】  はい、それでも結構かと思います。



【内田会長】  「東京電力による直接の賠償においては」。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  はい。「東京電力による直接の賠償」というのは、「はじめに」の部分の26行目から27行目にも同じ表現がありますので。



【内田会長】  「努めるべきである」の主語が「東京電力」ですが。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  それでは、「東京電力においては直接の賠償に際し」……。



【内田会長】  山本委員から、これはという修文案を出していただけると。



【山本委員】  これはというのはないんですが、主語が、「東京電力は行うべきである」ということなのであれば、「東京電力は、直接の賠償においても」という、これこれを踏まえた対応を行うべきであるという、単純なものでもよいのかなというふうには思いました。



【内田会長】  それで、「おいては」は、大丈夫ですかね、繰り返しはありますけど。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  「東京電力は、直接の賠償においても、可及的に類型的対応に努めるべきであるし、個別事案においても」云々というふうに。



【内田会長】  よろしいですかね。



【山本委員】  はい、そういう感じです。



【内田会長】  特に御異論がなければ、そのように修文をさせていただきたいと思います。山本委員には適切な御指摘をいただきありがとうございました。
 ほかに御発言はありますでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 それでは、この増額事由につきましても、たたき台の金額どおりで御承認いただいたと理解してよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
 どうもありがとうございます。
 それでは、続いて3の、通しページで言いますと35ページ以下ですが、「第3 自主的避難等に係る損害について」に入ります。
 まずは、目安となる金額の部分につきまして、私、会長から私案の御提案をしたいと思います。
 まず、これまでの指針の第一次追補では、子供・妊婦の本件事故発生から平成23年12月末までの損害として40万円。それ以外の者の事故発生当初の時期の損害を8万円を目安とするということとしておりましたが、今回の追補においては、この後者を増額するということになります。
 その目安となる金額の算定についての考え方ですけれども、確定判決を見ますと、子供・妊婦以外のものについては、子供・妊婦の場合の3分の1から2分の1程度の金額が認められています。そこで、これを踏まえまして、子供・妊婦の金額の2分の1とすることを御提案したいと思います。
 その結果、通しページの40ページの指針、ローマ数字3の中の丸2、その他の自主的避難等対象者についての括弧は20万円となります。40万円の半分の20万円となります。
 また、指針のローマ数字5の丸2、通しページで言うと41ページになりますが、丸2、避難指示等対象区域から自主的避難等対象区域に避難して滞在した場合の、平成23年12月末までの損害についてですが、これは指針の第一次追補では、子供・妊婦について20万円とすることを定めていました。そこで、子供・妊婦以外については、やはりここも半額ということとして、指針、ローマ数字5の丸2の小文字ローマ数字2の括弧は、1人10万円を目安とすることを御提案したいと思います。
 以上の提案を一つのたたき台といたしまして、御議論いただければと思います。
 それでは、具体的な記載内容や目安となる金額につきまして、御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 江口委員、お願いします。



【江口委員】  これはやはり、自主的避難者等について、子供・妊婦以外の方に対しても期間を延ばすという選択をした以上は、今、会長がおっしゃったように、20万円・10万円というのが極めて相当な金額ではないかと思います。御提案に賛成いたします。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかに御発言ありますでしょうか。
 古笛委員、お願いします。



【古笛委員】  私も結論として、20万・10万ということでよろしいのではないかなと思います。子供・妊婦と比べて2分の1から3分の1という結論ではあるんですけれども、切りのいい20万ということで、全体の子供・妊婦の半額というところでバランスも取れていると思いますので、裁判例を踏まえた結果として、こういった形でよろしいかと思いました。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかに御発言はいかがでしょうか。
 富田委員もよろしいでしょうか。



【富田委員】  この点については、もう先ほどの御意見のとおりで、子供及び妊婦を40万あるいは20万とする基準ですので、半分より増えるというのはなかなか難しいと思いますから、半分という形が妥当なのではないかというふうに思います。賛成いたします。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 それでは鹿野委員、お願いします。



【鹿野委員】  私も金額については、既に御発言のあったとおり、異論はございません。
 備考のところについて一つ発言させていただきたいのですが、924行目のところで、こちらは対象者に関する記載ですが、この924行目の、「この場合、中間指針による賠償と重複しない限りにおいて」という表現が用いられているのですが、この「中間指針による賠償と重複しない」というのが、何というか、分かりにくいように感じました。
 この趣旨というのは、既に中間指針により賠償対象とされている損害と重複しないというような意味ではないかと思いますし、それでその後に、一見重複しているように見えても、これは性質が違うから別途認められるとか、あるいは、この分は重複しているんですよというさらなる詳しい説明があるのだと思います。そういう趣旨だとすると、この「中間指針による賠償」という言葉を、少しかみ砕いて表現していただいたほうがいいのではないかと思いました。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 では事務局からお願いします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  この部分は、もともと第一次追補にあった備考をそのまま転記する形になっておりましたが、先生の御意見も踏まえて、趣旨を明確化する観点から、「この場合、中間指針による賠償対象とされている損害と重複しない限りにおいて」というふうに修正したいというふうに思います。



【内田会長】  ありがとうございます。分かりました。それでは、以上のように修文をさせていただきます。どうも御指摘ありがとうございました。
 ほかに御発言ありますでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 それでは、ただいまの自主的避難等に係る損害についても、たたき台の金額どおりで御承認をいただいたと理解してよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
 どうもありがとうございます。
 それでは続いて、最後に、先ほど飛ばしました、「3 相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安に基礎を置く精神的損害」、これは通しページで言うと22ページになりますが、こちらに戻りたいと思います。
 まずは、目安となる金額の部分につきまして、私、会長から私案を御提案させていただきたいと思います。
 この慰謝料は、後に政府が避難指示を出した線量の比較的高い地域に一定期間滞在したことによる健康不安が賠償の根拠となっておりまして、基本的にはこの項目はADRの賠償実務に根拠を持っております。
 しかし、確定判決の中にはこれに相当する賠償項目というのはないのですが、確定していないとはいえ、地裁の判決に事例があります。
 すなわち、本日の配付資料で言いますと参考資料の一番後ろに小さな字でついている表ですけど、参考資料の2-3、これは一番最後のページの裏側になりますかね。参考資料2-3の判決の番号1番、令和3年7月30日の福島地裁郡山支部の判決を見ますと、子供・妊婦以外の者の被曝不安による精神的損害の額が30万円認容されていると見ることができます。
 これは、この精神的不安が含まれている賠償者と含まれていない賠償者を対比したときに、この精神的損害の額が30万円認容されていると見ることができるという判決です。
 そしてまた、先ほど御議論いただきました、自主的避難等に係る損害での平成23年12月末までの精神的損害の目安となる金額が、子供・妊婦の場合は40万円、子供・妊婦以外の者が20万円ということになりましたが、ここでの額、この相当線量地域の健康不安は、それらを少し上回る金額になるのが妥当ではないかというふうに考えられます。
 そこで、子供・妊婦以外の者については合計を30万円とし、子供・妊婦の場合は自主的避難の場合と同様、2倍ということにして合計60万円とすることを御提案したいと思います。
 その結果、通しページで言いますと23ページの、指針のローマ数字3の子供・妊婦については、最初の括弧は60万円。これは平成23年12月末までの10か月間の額ということになりますので、1人月額というところでは6万円となります。
 そしてその他、つまり子供・妊婦以外の者については、合計が30万円、1人月額3万円を目安とするということになります。
 以上を一つのたたき台といたしまして、御議論いただければと思います。
 それでは、具体的な記載内容や目安となる金額につきまして、御自由に御意見をお出しください。いかがでしょうか。
 江口委員、お願いします。



【江口委員】  私はこの点についても会長の提案に賛成いたします。
 まず、基本的に、やはり自主的避難の場合の金額よりは多くなるべき事案だろうというふうに思います。それから、また一方で、最初のところにも出てきました過酷避難状況による損害の慰謝料額、ここもやはりにらむ必要があるんだろうというふうなことに思います。
 示されたような、地裁とはいえ判決で言われている、その額とも合うのであれば、やはり子供には60万、それ以外の方については30万という金額は、いろいろな観点から見て極めて妥当であると思います。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 樫見委員、お願いいたします。



【樫見会長代理】  御趣旨に賛成でございます。やはり本則に従って考えますと、相当線量の線量地域に一定期間滞在したということによる健康不安、これはやはり被害者にとっては大変な不安、それから、この先どうなるであろうというような様々な苦痛をお考えになられたかと思います。
 したがいまして、原則に立ち返って、地裁の先例自体は少なかろうとは思いますけれども、やはりこの点は被災者の心情に沿った形で、その精神的な苦痛を補う損害賠償を与えるということは、これは重要なことだと思いますので、金額については、先ほどおっしゃられたことに関しまして私も賛成でございますので、そのような考えで賛成でございます。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかに御意見いかがでしょうか。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  この計画的避難区域というのは、本件の事故が起こった最初の時期に、こちらは安全だろうと思って避難して行ったところが、放射線がこの計画的避難地域のほうへ流れていったために、ある程度高濃度の汚染にさらされて被曝の危険で不安な思いをしたという特殊性がある事柄ですので、それについての住民の不安をこういう形で評価するということは重要であろうというふうに思います。
 金額については、先ほどの自主的避難区域等とのバランスを考えて、会長の御提案する金額が妥当ではないかと考えております。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかに御意見ありますでしょうか。
 大塚専門委員、お願いします。



【大塚専門委員】  どうもありがとうございます。今、富田委員がおっしゃっていただいたとおりなんですけども、これは風の向きがちょっと変わっていたために、政府としては避難の指示が遅くなったというようなこと等もございまして、後から線量が高いところにいらっしゃったことが分かったというケースでございまして、かなり特殊なケースでございます。
 さらに、20ミリシーベルトを超えたところにちょっとでもいれば、直ちに何か健康に被害が発生するということでは全くございませんが、ただ、政府がとにかく指示をするようなレベルの区域にいらっしゃったということに鑑みて、不安に伴う、いろいろ御心配なさることもありますので、それについての賠償を認めるということです。「不安に伴う損害」ということについては一般化するわけにはいきませんので、非常に特別なケースではあるとは思いますが、この辺はむしろ明石委員におっしゃっていただいたほうがいいんですけども、100ミリシーベルト以下に関しては科学的には全く明らかでないので、それ自体に関してどう対応するかは極めて難しい問題ではあるんですけれども、とにかく政府が指示するレベルのところに一時いらっしゃったということに鑑みて、お支払いするということだと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。趣旨を補足していただきましてありがとうございました。
 何か明石委員、ありますか。



【明石委員】  特にございません。趣旨を理解しましたので、特に発言することはございません。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかに御発言はありますでしょうか。
 古笛委員、お願いいたします。



【古笛委員】  ただいま大塚先生からも御意見があったとおり、やっぱり実務的に考えて、不安とか漠然とした心配だとかいうことだけで賠償を認めるのはなかなかハードルが高いとは思ったんですけれども、でも今回の場合には、今御説明いただいたような一種特別な事情があったということを踏まえた上で、単に危惧感とかそういったものの賠償というものではないということ、ADRの実績などを踏まえて、下級審というよりはADRのこれまでの実績などを踏まえた上での、特殊なものとしてこれを位置づけるということで、結論としては賛成です。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかに御発言ありますでしょうか。特によろしいでしょうか。
 それでは、お示ししたたたき台の金額どおりで御承認をいただいたと理解してよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
 ありがとうございます。
 一通り各項目について議論いたしましたが、ほかに何か御意見ありましたらお伺いしたいと思います。何かありますでしょうか。
 特にはよろしいでしょうか。



【川口原子力損害賠償対策室次長】  会長、すみません。事務局でございます。
 念のため、明確化のために2点だけ確認をさせていただきたいと思います。
 全体の行数58行目でございます。第1の「2 基本的考え方」の3行目のところでございます。「その上で、」のところを、「もっとも」または「しかしながら」という形で、2択となっていたというふうに認識をしてございます。
 こちらにつきましては、「もっとも、」という形で改めるということでよろしいかという御確認を、念のためいただければと思います。
 もう一点、88行目でございます。先ほど修文の中で、3つの誓いの文を入れるというようなお話がございました。その中で、「総合特別事業計画」というものは固有名詞で出すところでございますけど、最初のほう、「第四次総合特別事業計画」というものがございますので、この点を87行目の末尾から、「東京電力株式会社が、令和3年8月4日に認定された「第四次総合特別事業計画」において示している「3つの誓い」のうち、特に「和解仲介案の尊重」」云々と続くという形で改めるということでよろしいかということを確認いただければと存じます。



【内田会長】  ありがとうございます。まず前半、最初の点ですが、これ、「しかしながら」という案も有力であったかと思いますが、これは「もっとも」でよろしいでしょうか。特に御異論はありませんか。
 ありがとうございます。それでは、58行目ですね、「その上で」というところを「もっとも」というふうに訂正をいたします。
 江口委員、どうぞ。



【江口委員】  すみません、申し訳ありません。ここ、切るのであれば、61行目の「期間等が」ではなくて「期間等は」にしたほうがよいのではないかと思うんですけど。



【内田会長】  ありがとうございます。文を切るということからすると、「は」のほうが適当であると。確かにそうですね。それでよろしいでしょうか。
 副大臣、どうぞ。



【井出文部科学副大臣】  すみません、私が言うべきではないんですが、今の「しかしながら」「もっとも」のところは、一番最初に御意見をいただいた先生から、前例がないものであって、このため、というような、そういう意味のつなぎをしていただけないかという御意見があって、その次に、その文を切ったらどうだというような御意見が出てきたと思いますので、それを踏まえると、「しかしながら」としていただいて、その後、何もつけないでおけば、しかしながらこういうことがあって、このたびの中間指針追補においてはという、「しかしながら」のものを前提に「このたびは」とつながっていくのかなと感じました。すみません。



【内田会長】  ありがとうございます。「しかしながら」のほうが適切ではないかという御提案かと思います。確かに、そのほうがちょっと強調はされる感じはしますかね。いかがでしょうか。
 鹿野委員、お願いします。



【鹿野委員】  最初にこの点について言い出したものですので、一言発言させてください。
 「しかしながら」のほうがより明確ではあるとは思います。「もっとも」で伝わらないかというと、それはそれなりに伝わるとは思いますが。
 ただ、その後について、現在では61行目のところですが、「このたびの」の前で文章を切って、改行後に「このたびの」からはじまる文章を置くということに、たしかなったと思います。その頭のところに、「そこで」とかの言葉を入れてはどうでしょうか。その方が、上のところで、一般の不法行為と同じなんだとし、しかし、例のない事故なのだということで、それを踏まえてこのような形で紛争の解決に資するために指針を示すのだということで、全体がつながりやすいかと思います。
 つまり、「このたびの」というところの頭に、上を受けたような形の接続詞を使っていただければと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。「このたびの」というところは「その上で」になるんですよね。ですから、「このたびの」ではなく、文を切った上で「その上で、中間指針第五次追補においては」という文になると思いますので……。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  「その上で、このたびの」というふうに、先ほど御提案していたかと思います。



【内田会長】  「その上で、このたびの」。
 鹿野委員もそれでよろしいでしょうか。この部分は。



【鹿野委員】  「その上で」というと、どうなんですかね、なおそのつながりが私には分かりにくいように感じられます。それで先ほど、「その上で」というより「そこで」ぐらいがよいのではということで発言させていただいたのですが。



【内田会長】  分かりました。「そこで」でもいいですね。
 じゃあ、鹿野委員の御指摘のように「そこで」というふうに。「そこで、このたびの」とさせていただきます。
 その前の、「規模、範囲、期間等が」となっているのは「は」に直すということにいたします。
 そして、先ほどの58行目末尾ですが、これは「もっとも」よりも、副大臣御指摘のとおり「しかしながら」のほうが明確に強調されるイメージがありますので、そのような修正でよろしいでしょうか。
 よろしいですか。



【川口原子力損害賠償対策室次長】  念のため、読み上げをさせていただきます。
 58行目の最後から「しかしながら、東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故の内容、深刻さ、周辺に及ぼした被害の規模、範囲、期間等は前例なきものであった。(改行)そこで、このたびの中間指針第五次追補」とつながっていくという形でよろしいでしょうか。



【内田会長】  そのとおりと理解しております。特に御異論ありませんでしょうか。
 ありがとうございます。大変いい、分かりやすい文章になったかと思います。
 ほかに御発言ありますでしょうか。特にはありませんでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、これまでの御議論を踏まえまして、記載をここで合意したとおりに修正することといたします。
 また、目安となる金額につきましても御了承いただきましたので、それを埋めた上で、本審査会として中間指針第五次追補を決定するということでよろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
 ありがとうございます。それでは、本審査会として中間指針第五次追補を決定いたします。
 11月10日の第59回審査会で専門委員の最終報告が提出されてから1か月余りでありますが、その間、59回を含めまして5回の審査会を開催いたしまして、非常に集中的に御審議をいただきました。その結果、本日、第五次追補の取りまとめに至ることができました。
 ここに至るまでの委員、そして専門委員の皆様の御協力、御尽力に、厚く感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
 また、それを裏方で支えていただいた事務局にも厚く御礼を申し上げます。事務局におかれましては、第五次追補の速やかな公表等の手続をお願いいたします。
 次に、議題の2の「その他」となっておりますが、本日は特に議題が設定されていないと聞いておりますので、本日の議事は以上となります。
 それでは最後に、本日は永岡文部科学大臣に御出席いただいておりますので、御挨拶をいただきたいと思います。
 永岡大臣、よろしくお願いいたします。



【永岡文部科学大臣】  文部科学大臣の永岡桂子でございます。内田会長をはじめ、委員そして専門委員の皆様方におかれましては、精力的に御審議を重ねていただきましたこと、そして本日、中間指針の第五次追補を策定していただきましたことに、厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 今回の第五次追補は、本件の事故に伴います7つの集団訴訟に関しまして高裁の判決が確定したことを受けまして、専門委員によります各判決等の詳細な調査、そして分析結果も踏まえた議論の結果、策定されたわけでございます。
 社会的にも大きな関心が示される中、ここに至るまでの大変な御苦労があったものと推察させていただいております。このような大変困難な取組に御尽力をいただいておりました委員、そして専門委員の皆様方に対しまして、改めて敬意を表し、御礼を申し上げる次第でございます。
 今後は、第五次追補に基づきます、東京電力によります追加賠償等に向けた取組に移ってまいるわけでございます。第五次追補において記載されておりますとおり、中間指針は賠償の上限ではないこと、そして中間指針に示されなかったものや、対象区域として明示されなかった地域も、個別具体的な事情に応じまして、相当因果関係がある損害と認められるものは全て賠償の対象になることなどの考え方も含めまして、第五次追補に従い、被害者の心情にも配慮した誠実な対応に努めるよう、私から東京電力の小早川社長に対して要請を行いたいと思っております。
 文部科学省といたしましては、迅速、公平かつ適正な賠償が行われますように、関係省庁と連携・協力しながら、引き続き全力で取り組んでまいる所存でございます。
 最後になりますが、内田会長をはじめとする委員、そして専門委員の皆様方に対しまして改めて感謝を申し上げ、私からの御挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございます。



【内田会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、これで本日の議事は終了でございます。
 事務局から連絡事項をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】  事務局でございます。次回、第64回審査会につきましては、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。
 また、本日の議事録につきましては、事務局でたたき台を作成し、委員の皆様に御確認の上、準備が整い次第、ホームページへ掲載をさせていただきます。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日も大変熱心な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。
 これにて閉会いたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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