原子力損害賠償紛争審査会(第62回) 議事録

1.日時

令和4年12月12日(月曜日)10時00分~12時25分

2.場所

文部科学省内会議室及びオンライン

3.議題

  1. 中間指針第五次追補(素案)について
  2. その他

4.出席者

委員

内田会長、樫見会長代理、明石委員、江口委員、織委員、鹿野委員、古笛委員、富田委員、中田委員、山本委員

青野専門委員、大塚専門委員、日下部専門委員、末石専門委員、米村専門委員

文部科学省

井出文部科学副大臣、千原研究開発局長、林原子力損害賠償対策室長、松浦原子力損害賠償対策室室長代理、川口原子力損害賠償対策室次長

オブザーバー

【説明者】
古谷原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)室長
佐藤原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)次長

5.議事録

【内田会長】  それでは、時間になりましたので、第62回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。本日はお忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。オンラインで御参加の委員の皆様もありがとうございます。
 初めに、本日も井出文部科学副大臣に御出席いただいておりますので、御挨拶をいただきたいと思います。井出副大臣、どうぞよろしくお願いいたします。



【井出文部科学副大臣】  おはようございます。毎回、真摯に御議論いただいておりまして、今日、62回目ということで、本当にありがとうございます。
 本日は、第五次追補の素案について御審議いただくということで、全体の骨格がようやく整ってきて、その中での議論かなと考えております。前回、私のほうから大変僣越ながら発言させていただきました。その思いは、この中間指針第五次追補が共通一律の賠償の目安でありそれが全てではないと、そのことは先生方に改めて申し上げるまでもないと思いますが、今日、机上に配付しております追補の資料の中で、その点については、通し番号の4ページになるんですが、基本的な考え方の2段落目の最初の文章になります。後で細かくお話があろうかと思いますが、そこのところで、4行目に「全て賠償の対象となる」と、ここを少し強くたたき台をつくっていただいたのかなと思います。同じ箇所は、かつての中間指針の「はじめに」というところでは、「個別の損害が賠償されないということのないように留意されることが必要である」という表現ぶりでございました。
 あともう一つ、これは私の素人の疑問で恐縮なんですが、個別の事情に応じてですとか、何とかの場合に賠償が認め得る、こういう表現も各所に盛り込まれているのかなと思います。私は本当に先生方の中立公正な御議論の重要なところだと思いますので、私のほうからこういうお願いをということは申し上げませんが、こういう場合には賠償され得るということになると、こういう場合かどうかという判断と、そこからもう一つ、賠償されるかされないかという判断があるのかなというふうに文言上、受け止めておりまして、何とかの場合には賠償されると書くのは素人の考えなのかもしれませんので、そうしたところも少しお気に留めていただきながら、先生方にやってきていただいた中立公正な議論を何よりも尊重しなければならないと思いますので、今日もまたひとつよろしくお願いいたします。
 私からは以上です。



【内田会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、次に、事務局から資料等の確認をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】  事務局でございます。資料の確認をさせていただきます。本日は、会場での対面とオンラインを組み合わせましたハイブリッド形式での開催となってございます。会場で参加されている委員につきましては、お手元の端末を、また、オンラインで参加されている委員につきましては、事前にお送りしているものを御覧いただければと思います。
 資料は、議事次第に記載のとおりでございますけれども、資料に不備等ございましたら、議事の途中でも結構でございますので、事務局までお声がけください。
 なお、参考4の資料といたしまして、「地方公共団体等からの主な要望事項について」を配付しているところでございます。全体版の資料を御覧の方は59ページ目に当たります。要望書本体につきましては、委員の皆様に共有しているところでもございますので、これまでと同様、この場での説明は割愛いたしますが、要望書の概要を記載の上、配付してございますので御参照いただければと存じます。
 次に、御発言に当たってのお願いでございます。会場に参加されている委員につきましては、御発言の際、お手元のマイクのボタンを押していただき、マイクにランプが点灯したことを確認いただいた後、必ずマイクに近づいて御発言いただきますようお願いいたします。マイクから離れて御発言されますと、オンライン参加の委員などへ音声が聞こえない場合がございます。御留意いただければと存じます。
 音声が拾えていない可能性がある場合は事務局から適宜お声がけさせていただく場合もございますので、あらかじめ御承知おきいただければと思います。発言が終わりましたら、ボタンを再度押していただき、ランプが消灯したことを確認してください。また、オンラインで御参加されている方につきましては、御発言の際、端末の画面上にございます挙手のボタンを押していただきますと、会長などから指名させていただきます。御発言いただく際はミュートの解除をお願いいたします。発言が終わりましたら、その都度、ミュートに戻していただきますようお願いいたします。
 なお、本日は、過半数以上の委員の皆様に御出席いただいており、会議開催の要件を満たしておりますことをあらかじめ御報告させていただきます。
 また、山本委員におかれましては、11時45分頃、退席予定である旨お伺いしてございますので、あらかじめ御承知おきいただければと存じます。
 そして、前回審査会に引き続きまして、判決等の調査分析を担当いただきました専門委員にもオブザーバーとして御出席をいただいております。
 私からは以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、議事に入ります。議題の(1)は、中間指針第五次追補(素案)についてです。前々回の第60回、そして、前回の第61回審査会において、中間指針第五次追補の策定に向けた具体的な論点として、5つの論点について御議論いただき、大方の部分についての方向性を確認したところです。これを踏まえ事務局において、審議のたたき台となる第五次追補の素案を作成していただきました。今回は第五次追補の具体的な内容につきまして、素案を基に審議を進めてまいりたいと思います。
 やり方としては、全体をまとめて説明いただくのではなく、幾つかに分割して説明いただき、議論を重ねていくという形で進めていきたいと思います。
 まずは、「第1 はじめに」というところですが、この部分の説明を事務局からお願いいたします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  それでは、資料1、全体ページは3ページ目になります。
 まず、「第1 はじめに」について簡単に御説明します。
 1の経緯ですが、3つのパラグラフがあります。最初の1番目と2番目のパラグラフは、中間指針策定以降、第四次追補策定までの経緯を記載してございます。3番目のパラグラフには、第四次追補策定以降、東京電力の直接賠償、ADRによる和解仲介の進展の一方で、各地で提起された訴訟が進行し、本年3月に7つの集団訴訟の損害賠償額に係る部分が確定したこと、本審査会はこれら確定判決について、専門委員による指針には明示されていない類型化が可能な損害等の調査分析を進め、本年11月に最終報告を取りまとめ、この最終報告を踏まえ、指針の見直しの検討を実施してきたということが書いてございます。
 次のページに行きまして、2の基本的考え方ですが、まず、最初の段落では、損害の範囲について中間指針は一般の不法行為と異なる考え方に立っているわけではないことを確認の上、1の経緯で述べた7つの集団訴訟の判決が確定したことや、本件事故の特有の事情を十分に考慮し、これまで示してきた指針に加えて損害の範囲等を示すこととしたことが記載されております。
 2番目の段落ですが、指針が示す目安額が賠償の上限ではないこと、指針に示されていない損害も、個別具体的事情に応じて相当因果関係のある損害は全て賠償の対象となること、東電の真摯かつ誠実な対応が求められることが記載されております。
 最後の段落ですが、被災地の復興、被害者の生活再建に向け、東京電力による賠償に加え、政府等による復興支援策等の着実な実施を求めることが書かれております。
 これまでの追補に書かれてきた内容を今回、第五次追補の策定を踏まえて、少し加筆修正しております。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。ただいま御説明いただいた部分は、これまでの論点には入っていなかったもので、今回初めて提示されたものとなります。まずはこの点について委員の皆様から御意見、御質問をいただければと思います。どうぞ御自由にお願いいたします。いかがでしょうか。
 山本委員、お願いいたします。



【山本委員】  先ほど副大臣からの御指摘もあった、2ページの2の基本的考え方の第2段落の部分です。この第2段落の最初の文章、これは非常に結構なのではないかと思っています。損害額の目安が賠償の上限でないことも指摘して、全て賠償の対象となるということかと思います。
 御指摘したいのは2番目の文章なんですけれども、2番目の文章は、東京電力株式会社への要請というか、求められるということが規定されているのですが、ここに規定されていることは、その賠償の対象と明記されていない損害についても誠実な対応が求められるということで、その第1の文章の後ろのほうの話、本審査会の指針において示されなかったもの、損害についての話のみが記載されているようにも読めるような印象を受けました。私としてはやはり前段に書かれてある損害額の目安が賠償の上限でないということも、この東京電力に求めることの中に記載すべきではないのかなという印象を持ちました。
 つまり、本指針が示した目安を超える損害額についても、個別の事例や類型、指針の趣旨も踏まえて誠実に対応するということ。それから、第五次追補では必ずしも目安が記載されていない部分もあると思うんですが、その部分についても指針の趣旨に従って、やはり誠実に対応していただくことが必要ではないかと思いますので、そのような点も2番目の文章の中で、東京電力に対して明確に求められるということを記載したほうがよいのではないかというのが私の意見です。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 では、続いて、鹿野委員、お願いいたします。



【鹿野委員】  ありがとうございます。基本的に、今、山本委員から御発言あったところと同じなのですが、まず、「はじめに」のところの全体としては、今までの指針の考え方や、それから、この間、議論してきたところを整理していただいて、異論はございません。
 第2に、今、山本委員から御指摘のあった2ページの2の2段落目、14行目以下のところについてです。「なお」以下の文章については、これまでも指針でそのような理解であるということが再三確認されてきたところではありますが、現地ヒアリングに行ってみますと、東電から、指針が上限であって、それ以上は賠償に応じられないとか、あるいはそれに載っていない項目は関係ないというような対応が取られることがあるということを被災者の皆様から聞いてきたところであります。ですから、そういうことを考えると、限定する趣旨ではないことを今まで以上に明確な形で示すということに、大いに賛成でございます。
 それから、3点目としては、先ほど山本委員がおっしゃったように、「なお」から始まる段落の後半の部分が私も気になりました。これは日本語の表現ぶりとして、多分前段を受けて後段を書かれたときに、言葉がちょっとだけ足りなかったということなのだろうとは思うのですが、前段のところでは、損害の額の問題と、それから、項目的に損害として挙げられていないものという、大きくその2つが示されているところ、後段についても、その両方をカバーするような形で表現したほうがより分かりやすいと思います。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 では、続いて、中田委員、お願いいたします。



【中田委員】  ありがとうございます。私も、ただいま御発言のありました基本的考え方の第2パラグラフについての意見です。私もお二人と同様に、さらに副大臣とも同様に、このパラグラフは非常に重要だと考えておりますが、さらに、ここには対象区域を示すことの意味も含まれているというように私は理解しております。対象区域を示すということは、従来の指針との関連を明確にするという意味があります。また、損害の類型化のために有用であるという意味もあります。さらに、被害者の側から、御自分がどれに当たるのかを知る上で便利である、こんな意味があると思います。
 しかしながら、他方で、そのことは、対象区域から一歩はみ出ると一切賠償されないという誤解を招いたり、あるいは地域の分断を来しかねないという側面もあると思います。そうではないんだということ、これは例えば自主的避難について、19ページの42行目以下に記載されておりますが、これは指針全体を通じてのことだと思います。
 そこで、4ページの15行目ないし17行目の、指針において示されなかったものも賠償の対象となりうるんだということは、対象区域にも当てはまるということを、できれば明記していただければいいなと思いますし、もしも、この表現に既に含まれているのだから明記する必要はないということであったとしても、対象区域についても妥当するんだということを何らかの形で、ここで確認していただければと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。順番が正しいかどうか分かりませんが、織委員、お願いできますか。



【織委員】  ありがとうございます。私も今の中田委員と同じような懸念を持っておりました。対象区域が内外で住民の方に差が出てきてしまうということに対して、住民の方のヒアリングにおいて、すごく大きな不公平感ですとかそういった問題があるということを実感している中で、こういった区域外でも大丈夫だよということは、ここのところで明記しておいたほうがいいのではないかなと思いました。
 それから、もう1点、また、経緯なんですけれども、私たちがなぜ最高裁の判決を受けて、さらにこの類型化についてまた新たな指針の見直しを行うのかということについて、もちろん最高裁の判決の意義も大きいのですが、何よりも住民の方にヒアリングしている段階において、本当に指針はガイドラインで、個別のADRを妨げるものではないけれども、一方で、やはりまだまだADRの使用については難しいと感じていたり、住民の方に負担が多い中で、指針が持つ意義というものがすごく高いということを改めてヒアリングで実感させられたということも背景にあることを、ぜひ私たちがその住民の方とのやり取りに応じて、この意義といったものを強く感じていることもまた経緯の中に入れ込んでいただければと思っております。
 あと、皆さんがおっしゃっている第2パラグラフ、4ページのところなんですけれども、先ほど鹿野先生もおっしゃっていたように、私も住民の方へのヒアリングにおいて、現場において、東電さんがこれを上限扱いしているということを非常に憂慮しています。ですので、ここの基本的な考え方の中で少し強めに、東電さんに対して、こういったことは上限ではないと。そして、そういう方便で使ってはならないというようなことを何らかの文章の形で入れていただければと思います。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、樫見委員、お願いします。



【樫見会長代理】  既に皆様から御意見がありましたように、私も同趣旨でございます。ただ、1点付け加えたいと考えておりますのは、ADRの機能についてでございます。やはりなお書きの以下の部分というのは、個別具体的な事情に応じての損害額の提示ということになりますので、この点はなかなか被災者の方々が申し上げるのは大変で、まさにここがADRが機能する場面です。やはりこの指針の考え方を実際に体現するのはADRであり、そこが提示した和解案については、やはり東電がきちんと尊重するということをうたっていただきたいと考えております。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 オンラインの委員の皆様優先みたいになりましたが、会場参加の委員の皆様、いかがでしょうか。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  今までの各委員の御発言、いずれも私も賛成です。ADRの賠償実績については、個別のところでも、後で指摘されていますが、ADRの賠償実務では、指針に示されていない事項についても、あるいは、目安となる額がある場合でも、指針の額を超えて賠償されておりますので、その点も、ここの一般論のところに、例えば「指針の趣旨及びADRにおける賠償実務を踏まえ」といった形で入れていただければと思っております。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
 大変有益な御指摘をたくさんいただきまして、ありがとうございます。それを踏まえて、事務局のほうで改訂をよろしくお願いいたします。
 それでは、「はじめに」の部分を終わりまして、次に、第2の「政府による避難指示等に係る損害について」に入りたいと思います。ここは大きく4つの項目がありますので、一つずつ御議論いただければと思います。
 まずは1番目の過酷避難状況による精神的損害についての説明ですが、これを事務局からお願いします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  次に、「第2 政府による避難指示等に係る損害について」、説明します。
 まず柱書きですが、第60回の審査会において、指針の構成について、第四次追補の第2の1、避難費用及び精神的損害を大きく変更することになるから、変更点を簡明にするため、第四次追補を全面的に改訂すると確認されました。そのため、柱書きに避難費用、精神的損害について中間指針第3と第二次追補はそのままで、第四次追補が第五次追補に置き換わるという趣旨の記載をしております。
 次に、1ポツ、過酷避難状況による精神的損害ですが、まず、対象区域、対象者、これは過酷避難状況による精神的損害の対象者は、福島第一発電所から半径20キロメートル圏内、福島第二発電所から半径10キロメートル圏内の者であることを明記しております。
 次に、損害項目に移ります。まず指針のローマ数字1ですが、ここに示されているのは、過酷避難状況による精神的苦痛が賠償の対象ということです。指針のローマ数字2ですが、本件事故から相当期間にわたって生じた損害として、第1期中、これは6か月間になりますが、避難指示が出されていた期間に応じて加算する旨を明記しております。加算される期間の考え方については備考3)で説明しております。
 次に、備考に移ります。備考1)、少し長いですが、1番目から3番目の段落までは、7つの確定判決のうち、複数の判決が避難を余儀なくされたことによる精神的損害を認定していることを踏まえ、過酷避難状況による精神的損害は、中間指針が示す日常生活阻害慰謝料では十分考慮されていなかったとして、類型化する趣旨を記載しております。
 4番目の段落ですが、対象者は、過酷避難状況が認められる者に限定され、計画的避難区域等が含まれない旨を明記しております。
 次に、備考2)、過酷避難状況は避難生活開始後も避難所を転々とするなどで、一定期間存続することにより、日常生活阻害と同時に生じること。一時立入りの制限によってもたらされる苦痛は日常生活阻害と内容的に重なり合う性質を有することから、日常生活阻害慰謝料と同一の損害項目における考慮要素とすることを明記しております。
 次に、備考3)、加算の目安は、過酷避難状況が継続した期間を考慮しつつ、避難所等での避難生活の場合に、1人、月額2万円加算を考慮することが相当と記載しております。加算される期間については、福島第一発電所20キロメートル圏内及び福島第二発電所8キロメートル圏内は、第1期全体に加算。福島第一発電所20キロメートル圏内に包含されていない福島第二発電所8キロから10キロメートル圏内は避難指示が平成23年4月21日までであることから、2か月間加算と明記しております。
 備考4)、損害額については、個別具体的な事情に応じて増額され得ることを明記しております。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。ただいま御説明がありました素案の内容について、御意見、御質問をいただきたいと思いますが、特に今回、御意見をいただきたいと思います点を最初に申し上げたいと思います。3つぐらいございます。
 まず第1には、備考1)で、7つの確定判決を踏まえて、これまでの指針に含まれていなかった本損害を賠償の対象として定めることとしたという説明をしていますが、この文章で賠償額を加算する趣旨がきちんと表現されているかどうか御確認をいただければと思います。
 それから2つ目としまして、素案のローマ数字2で、2つの区域を分けて、加算額の目安を示すこととし、その説明を備考3)でしていますが、実際に加算する金額の決定は次回の審査会に行うこととして、まずはローマ数字2の丸1に書かれている、これは福島第一から半径20キロ圏内と、第二から半径8キロ圏内についてですけれども、このような定め方及び説明でよいかという点について御確認をいただければと思います。内容的にはこれまでの審査会での議論を踏まえた内容になっているはずですが、これでよいかどうかの御確認をいただければと思います。
 そして、3つ目として、素案のローマ数字2の丸2、これは福島第二の8キロ以上10キロ以内の圏内の区域についての金額の定め方です。ローマ数字2の2行目ですね。通しページで言いますと、5ページの19行目になりますけれども、「第1期において実際に避難指示が出されていた期間に応じて」とあります。
単純に期間だけで言いますと、ローマ数字2の丸1の区域は、第1期が6か月で、6か月間ずっと避難指示が出されていたということに対する加算ということになりますが、丸2のほうは、避難を強いられたのは2か月であるということで、とすると、6か月に対して2か月ということで、単純に金額が3分の1となるのか。それとも備考3)の通しページで言いますと、6ページの下から2行目には、「過酷避難状況が継続した期間を考慮しつつ」という文章があります。この過酷避難の状況というのは事故の当初が一番ひどくて、時間がたつにつれて少しずつ軽減していくという性格があるかと推測されますけれども、そうであるとすると、最初の2か月ということは、単純に3分の1というよりは、2分の1とか、もう少し割合を高くしたほうがいいのかといった点についても御意見をいただければと思います。
 以上の点を含めまして、ただいま御説明いただいた点について御自由に御意見、御質問をお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 江口委員、お願いします。



【江口委員】  すみません。一番最後のところから言うようで申し訳ないんですが、私も最初の過酷避難状況による損害を見たときに、先ほども会長の御指摘ありましたように、通しページの7、上から4行目のところで、まさに、「過酷避難状況は、本件事故発生当初の時期が特に顕著であったと考えられる」という言葉が入っているので、それを見ると、単純に期間だけで割るというのはどうなのかなという気はいたしました。
 もともとこの金額の出し方も、あえて1か月幾らというのではなくて、期間自体の問題も6か月とバッと捉えられるのかということもあって、一定額というような決め方をしたのですから、ここはやはり一定額ということで考えていいのではないかと思います。



【内田会長】  というのは単なる3分の1、単純に3分の1ではなく、増額の方向でということですね。



【江口委員】  はい。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。富田委員、お願いします。



【富田委員】  この過酷避難状況による精神的損害は、当初の段階に限定するものですので、20キロ圏以内ということになっているわけですが、実際問題としては、20キロ圏を越えて、帰還困難区域が後に設定されていて、そこに居住する方々は、最初に避難指示は出ていないんですけれども、現実には非常に厳しい状況に置かれたといえると思います。そういう方々に対して、なぜ過酷避難状況による賠償はされないのかという点を、念のため、もう一度、理由づけといいますか、説明はどうなるのかという点を確認しておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。



【内田会長】  では、これは事務局からお願いできますか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  今、富田委員御指摘の点は、備考1)の4パラグラフに書いてございます。この過酷避難状況については、政府の指示等により即時の避難を余儀なくされた者。これは基本的に福島第一発電所から20キロメートル圏内の者です。他方、計画的避難区域のようなところ、また20キロメートルを越えているところで帰還困難区域あるいは居住制限区域に指定されているようなところは、即時に避難という類型は当たらないので、この過酷避難状況は認められない。
 ただ、その者については、後ほど御議論をいただく3に、相当線量地域に一定期間滞在した者に認められる、健康不安を基礎に置く損害というのがありますので、そちらのほうで賠償されるという関係になっております。
 では、富田委員、どうぞ。



【富田委員】  今の点が、これは念のためなんですが、本来、避難すべき状況にあったにもかかわらず、この計画的避難区域においては、逆に避難指示が出なかったという点が後から見れば厳しい状況だったというところがあります。その点は、先ほどの相当線量地域に一定期間滞在した者に認められる、健康不安を基礎に置く損害で賄うという点が十分対外的に理解されるように、特にこれは対外的説明において必要かなと思いますので、よろしくお願いします。



【内田会長】  では、よろしくお願いいたします。いま一度、記載が十分かどうかを確認していただければと思います。
 ほかに。織委員、お願いいたします。



【織委員】  ありがとうございます。私も富田委員と同じ意見というか、観点からなんですけども、繰り返し、先ほどもお話をさせていただいたんですけども、住民の方のヒアリングを通じて印象に一番残っているのが、距離ですとか期間によって地域が分断されてしまうことに対して、忸怩たる思いを皆さんがお持ちになっている。それについては十分に配慮しなければならないと思う次第なんですね。
 それで、法律上、個別の要件を明確にして、ある程度切っていかなければならないということは重々理解しているんですけども、それと同時に、先ほど富田委員がおっしゃったように、それ以外でも、過酷な状況にあったことについてもまた配慮し得るということをもう少し分かりやすい形で、この文面の中にも言っていただけると、これを読んだ、当てはまらない、該当しない方たちの中でも諦めるというわけではなくて、忸怩たる思いも少し解消されるのではないかなと思いましたので、文章において、その辺を分かりやすく示していただければと思いました。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 中田委員、お願いします。



【中田委員】  非常に形式的なことを1点申し上げます。通しページ、5ページの24行目、丸2のところですけれども、この区域については、先ほど会長から、あるいは事務局からも具体的な御説明があったので非常に分かりやすかったのですが、この記載自体は、「丸1以外の区域については」という書き方になっていて、分かりにくいと思いました。何とか改善できないかと思って、2つ考えてみたのですが、1つは、「同(1)丸2のうち半径8kmから10km圏内の区域(同(1)丸1の区域を除く)」というものです。もう1つは、「同(1)の区域のうち、丸1以外の区域」というように、外枠から攻めていくものです。いずれにしても、現在のままだとちょっと分かりにくいかなと思いました。



【内田会長】  また御検討いただければと思います。
 それでは、鹿野委員、お願いいたします。



【鹿野委員】  ありがとうございます。先ほど御議論のあった、通しでは6ページの12行目からの文章について、質問も含まれているかもしれませんけれども、私も一言、発言させていただきたいと思います。
 「なお」から始まる1段落だけを見ると、「そこで」以下の1文目と2文目がどうして具体的にはこうなるのかというのが必ずしもよく分からないような気がいたしました。たしか前の審査会、第60回の資料2-1-1のところではもう少し分かりやすいような記載があった気がいたしますし、あるいは、それ以外の資料でもそうだったかもしれません。先ほど御説明があったように、今回の資料だと、後ろの3のところ、全体のページで言うと12ページでしょうか、その3の相当線量で考慮される対象者があるということですが、前の資料では、そこも同時に記載があったので、その関係を確認しながら読んでいたということが私の記憶ではあります。ですが、今回のこの資料を頭から読んでいくと、「なお」のところで、その辺りの関係があまり明確に示されていないような気がしますので、そこにちょっと言葉を足すなりしていただければよいのかなと思いました。
 それから、もう一つ、これは質問かもしれませんが、「そこで」以下のところで、具体的に対象となっているところと、それから、対象にならないところが記載されており、そこに、「地方公共団体が住民に一時避難を要請した区域からの避難者」というのが対象外の例として出てくるんですが、これが対象から外れるというのはどういう説明になるのでしょうか。
 政府の指示があって、地方公共団体で、住民の皆さん、早く避難してくださいという場合があり、それはもちろん対象になるということなんでしょうけれども、ここでの除外は、国の指示というわけではなくて、基準としている8キロ、10キロとかの範囲外で、地方公共団体が一時的避難を要請したという場合なのかなとも思います。これは「地方公共団体が」というところが重要なのか、それとも、一時的ということで、それほどの期間にわたって、自分のものも取りにも行けないような状態ではなかったということが重要なのか。そこら辺の区分けの仕方が、今回の資料を読んでいて、私には分かりにくかったので教えていただければと思います。よろしくお願いします。



【内田会長】  ありがとうございました。
 ただいまの鹿野委員の御発言は、前半は富田委員と同じような問題意識かなと理解いたしましたが、後半について事務局からお願いできますか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  地方公共団体が住民に一時避難を要請した区域というのは、もともと中間指針で対象区域を定めた際に、一番最後に書いてあるところでして、具体的には、場所的には南相馬市の一番北側にある、30キロよりさらに北になる部分です。ここは政府の指示は特に出ていなかったんですが、南相馬市長が鹿島地区についても避難を一時的に要請した。これについては、4月22日にはもう市の指定が解除されておりますし、22日以降というのは自宅での生活も可能ということになっております。その前に、南相馬市は独自の判断で住民に対し、一時避難を要請したということから、ここは外れるということになっております。



【内田会長】  ただいまの御説明でよろしいでしょうか。



【鹿野委員】  ありがとうございます。できれば、ここに書かれている文章で、なぜこれが外れるのかということが分かるような形で書いていただければと思います。要するに、自分の意思に関わりなく、取るものも取りあえず避難を余儀なくされたという方々については、過酷避難状況による精神的な苦痛についての損害が増額事由として別途考慮されるということだと思いますが、ここに書いてある文章だけだと、対象外の中に、自分の意思に関わらず取りあえず避難しなければいけなかったという方々が含まれているようにも見え、なぜここで排除されるのかという、その関係がよく分からないように思いましたので、説明を加えるということになるのかもしれませんけれども、文章を考えていただければと思いました。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  いずれにしろ、このなお書きの段落については、少し趣旨を明確にするように修正いたします。



【内田会長】  では、鹿野委員の御指摘についても御検討いただければと思います。
 大塚専門委員、お願いできますでしょうか。



【大塚専門委員】  ありがとうございます。今、鹿野委員に最後におっしゃっていただいたので、もう発言しなくてもよくなったんですけど、この過酷避難状況の損害については、判決との関係を見ながら、まさに、着の身着のままで、取るものも取り敢えずというところを強調して、新しい算定根拠として考えていこうということで提案させていただいたものでございまして、そういう意味では、例えば計画的避難区域のような、そのときはあまりよく分からなかったけれども、後で線量を超えていることが分かったというケースとは大分違うと考えておりました。先ほど事務局に説明していただいたことを若干補足する程度のことでございますけれども、そういう趣旨で提案させていただいたということを取りあえず申し上げさせていただきたいと思いました。
 鹿野委員が最後におっしゃっていただいたようなことに私も賛成で、12行目から後の、通しページ、6ページの12行目から後については、もうちょっと、取るものも取り敢えずとか、着の身着のままというのは強調したほうが分かりやすいかなと思いました。



【内田会長】  どうもありがとうございました。
 ほかに御発言ありますでしょうか。
 古笛委員、お願いします。



【古笛委員】 おおむね同じです。今回の見直しに当たって、やっぱり気になっていたことが今、顕在化しているのかなと。過酷避難状況というと、ここに当たらない人だってみんな過酷なんだという思いを持たれるんだけれども、ただ、今回、指針として挙げたのは、判決を踏まえて、ともかく着の身着のままにということで避難された人をここで類型化して、形式的な判断に当てるためで、それ以外の人が過酷ではないとか、対象にならないというものではないということが分かるように、文章の最初のほうには書いていただいているんですけれども、何となく読み進んでいるうちに、「なお」が離れているので、そういう思いになるのかなと、そういうところかと思います。書き方の問題ということでお願いできたらと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。避難すること自体がもう既に過酷で、それに対して、日常生活阻害慰謝料という形で慰謝料は支払われているわけですが、それで尽きないような、この本件に特有の過酷さというものがある。それを特別に加算事情としようというのが今回の御提案かと思います。「過酷」という言葉だけだと、みんな過酷だと感じておられると思いますので、その点がよく分かるように少し表現を工夫していただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
 それでは、過酷避難状況による精神的損害については、大体この素案の方向で進め、かつ、本日いただいた御意見を踏まえて、最終的な案を作成していくということにさせていただければと思います。どうもありがとうございました。
 次に、2の「避難費用、日常生活阻害慰謝料及び生活基盤喪失・変容による精神的損害」に入ります。まずは、事務局からこの項目についての説明をお願いいたします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  それでは、2ポツ、「避難費用、日常生活阻害慰謝料及び生活基盤喪失・変容による精神的損害」です。
 まず、第2の柱書きの記載については、先ほど説明したとおり、第四次追補第2の1を全面的に改訂することが分かるように、念のため、注書きをしております。
 指針のローマ数字1の構造ですが、丸1として、避難費用、日常生活阻害慰謝料、丸2として、生活基盤喪失・変容による慰謝料と、損害類型ごとに記載しております。避難費用のうち、生活費増加費用は、精神的損害と合算、そして、終期も連動することから、避難費用及び日常生活阻害慰謝料とくくっております。
 次に、指針のローマ数字1の丸1避難費用及び日常生活阻害慰謝料です。終期を区域ごとに、小文字のローマ数字1で帰還困難区域、小文字のローマ数字2で居住制限区域、避難指示解除準備区域は平成30年3月末まで、小文字のローマ数字3で緊急時避難準備区域は、楢葉町を除いて平成24年8月末まで、楢葉町は平成30年3月末までとしております。小文字のローマ数字3の緊急時避難準備区域の考え方につきましては、備考5)に記載しております。指針のローマ数字1の丸2生活基盤喪失・変容による慰謝料。ここも区域ごとに、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域、緊急時避難準備区域の損害額の目安を記載しております。
 次に、指針のローマ数字2ですが、これは住居確保損害の賠償を受ける者の避難費用が賠償の対象となる期間についてです。これは第四次追補を全面改訂することによって、第四次追補から転記しております。そのうち、合理的な時期の考え方につきましては、第四次追補の備考で、事故後6年後までを目安とした記載を今回の改訂と平仄を合わせて、平成30年3月末までを目安と修正することを備考11)に記載しております。
 次に、備考1)ですが、まずここは全面改訂の理由をお伝えしております。その理由としては、3番目の段落に、「生活基盤変容による精神的損害」の新設をしたこと、第四次追補の相当期間が第五次追補で避難指示区域における避難費用、日常生活阻害慰謝料の賠償対象期間の目安を一律に示したことから不要となったこと、緊急時避難準備区域で「生活基盤変容による精神的損害」の新設に伴い、日常生活阻害慰謝料の対象期間も規定したことを記載しております。
 次に、備考2)、生活基盤、故郷喪失と変容の説明です。前半では、生活基盤とは、人的関係や自然環境なども包摂する経済的・社会的・文化的・自然的環境全般を意味するもので、ハード面のインフラに尽きるものではないこと。一部の確定判決が認定する、いわゆる「故郷」は、生活基盤と同義であるか、あるいは、その生活基盤を被害者の側から捉え直したものと記載しております。
 後半ですが、「生活基盤の喪失による精神的損害」とは、生活基盤が著しく毀損されたことによる精神的損害を意味し、帰還困難区域の住民に生ずるもの、「生活基盤の変容による精神的損害」とは、生活基盤がかなりの程度毀損されたことによる精神的損害を意味し、帰還困難区域以外の居住制限区域等の住民に生ずるものと説明しております。
 備考3)、ここは指針のローマ数字1の丸1の小文字のローマ数字1、帰還困難区域等の日常生活阻害慰謝料です。確定判決が認める実情や、政府方針を踏まえて、居住制限区域や避難指示解除準備区域につき、平成30年3月末まで東電により賠償されていることとの均衡を考慮し、賠償期間を75か月間から平成30年3月末までの85か月間と改めたことの説明です。
 備考4)、これは居住制限区域・避難指示解除準備区域の日常生活阻害慰謝料についての説明です。避難指示解除の時期を問わず、平成30年3月末まで一律とする理由を記載しております。
 備考5)、緊急時避難準備区域の日常生活阻害慰謝料です。楢葉町以外は、第二次追補と同様の平成24年8月末までとし、楢葉町については、同町のほとんどが避難指示解除準備区域である等の特別な事情があることを考慮して、平成30年3月末までとしたことを記載しております。
 備考6)、ここは相当期間についてです。避難指示区域、緊急時避難準備区域の賠償期間を一律に示したことから相当期間が不要になった旨を記載しております。
 備考7)、帰還困難区域の生活基盤喪失による慰謝料の説明です。第四次追補が示す第3期の長期間にわたって帰還不能となった精神的損害、1,000万円について、第二次追補による一括賠償額600万円の将来分300万円を控除した700万円が、実質的には生活基盤が本件事故前の状況から著しく毀損されたことによる精神的損害、すなわち生活基盤喪失による精神的損害を賠償する性質のものであると言え、第四次追補の内容を変更する必要性は見いだせないと記載しております。
 損害額の目安数については、日常生活阻害慰謝料850万円、生活基盤喪失慰謝料と過酷避難状況の加算額を合計した1,550万円プラスアルファとすると、ここが確定判決と同等の水準であることから、賠償額として妥当である旨と記載しております。
 備考8)、居住制限区域・避難指示解除準備区域の生活基盤の変容による慰謝料です。1番目から2番目の段落は、本件事故前の状況から、かなりの程度毀損された生活基盤を受け入れざるを得ない状況にあり、同区域の住民一律に生活基盤変容による精神的存在を合理的な範囲で賠償すべきものと認められる旨、記載しています。
 3段目の段落は、具体的な損害額の算定は、確定判決の生活基盤変容に対応する認容部分を参照して、喪失と変容で、認容額の大きさには相当の差を設けていることを考慮した旨を記載しております。
 4番目の段落は、居住制限区域、避難指示解除準備区域の両方区域間で差を設けない理由を明記しております。
 備考9)、緊急時避難準備区域の生活基盤変容による慰謝料です。解除後も生活基盤の回復に一定程度の期間を要し、多数の住民の帰還が相当程度の期間できなかったことを踏まえ、生活基盤が一定程度変容したと認められること。そして、損害額算定の考え方を明記しております。
 備考10)ですが、個別の事情で目安を上回る損害額が認められ得ることを明記しております。
 備考11)、第四次追補の備考で、事故後6年後までを目安とした記載を今回の改訂と平仄を合わせて、平成30年3月末までを目安と修正しております。
 備考12)、住居確保損害のところの転記による経過措置のような趣旨を書いております。
 説明は以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、ただいま御説明がありました素案の内容について、御意見、御質問をお出しいただきたいと思いますが、最初に、特に御意見をいただきたいと思います点を幾つかピックアップして、お話をさせていただきます。ここは論点が多くて、5つぐらいあります。
 まず最初に第1点ですが、総論ですね。全体を通じた論点として、備考1)にありますとおり、第四次追補の第2の1を全面的に改訂することにいたしておりますが、その趣旨がこれで十分説明されているかどうかについて御確認いただければと思います。
 それから、2番目に、指針のローマ数字1の丸1に関してですが、備考2)から6)に、避難費用及び日常生活阻害慰謝料の説明がありますが、これについては、第60回の審査会における論点整理で確認されたとおりですので、内容的には特段問題はないかと思いますけれども、念のために御確認いただければと思います。指針のローマ数字1の丸1に関する部分です。
 それから、3番目に、次の指針のローマ数字1の丸2に関する生活基盤喪失・変容の慰謝料ですが、金額の決定は、次回の審査会で行うことといたしまして、今回はまず備考7)に関しまして、帰還困難区域は第四次追補の1,000万円が実質的には700万円の生活基盤喪失による精神的損害を賠償する性質のものであるということ。これは既に審査会で確認済みですけれども、念のために御確認いただければと思います。
 ちなみに、御参考までに、これまで配付されている確定判決の資料の中から該当部分、この箇所に該当する部分の金額を抽出した表を事実上の資料として机上に配付しております。机上配付資料の(1)ですけれども、大体確定判決の水準とバランスが取れていると言えようかと思いますけれども、一応この点の御確認をいただければと思います。これが3点目です。
 4点目は備考8)に関してですが、居住制限区域、避難指示解除準備区域の慰謝料額を、これは生活基盤変容のほうですので、帰還困難区域の700万円と比べてどのくらいの割合とすべきかが問題となります。第60回審査会では、2分の1を大きく下回る額が確定判決で認容されていることが示されましたが、その確定判決の各判決の該当部分の金額の資料が机上資料として配付されております。(2)の部分です。これを御覧いただきながら、どの程度の額が妥当であるかについて御意見をいただければと思います。最終的な額の確定は次回いたします。
 5番目ですが、備考9)に関しまして、緊急時避難準備区域の慰謝料額を、こちらは居住制限区域、避難指示解除準備区域に準じてどのくらいの割合とすべきかが問題となります。第60回審査会では、確定判決の内容に鑑みて、それを大きく下回る額という方針で御了承いただいておりますが、各確定判決の内容というのが、これもやはり机上配付資料の(3)で示されております。これを御覧いただきながら、どの程度の額が妥当かの御意見をいただければと思います。
 以上の点も含めまして、事務局から説明がありました2につきまして、御意見、御質問をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。
 江口委員、お願いします。



【江口委員】  私は今、委員長が御指摘された最初の全面改訂の理由、それから、備考における2)から6)というのは分かりやすくなったので、これは本当にこのとおりでよいのではないかと思っております。
 それから、問題の8)のところで、これは、もしかしたら額が決まると表現が出てくるのかもしれませんけれども、今の書き方だと、確定判決の認容額があって、それを参照してこの額になったみたいなところが強く出ていて、多分、審査会はもちろんそこも見ながら、だけれども、変容はこうだよね、喪失はこうだよねというそれなりの何か判断があると思うんですね。そこのところはもう一つ、認容額も見ながら、こうこうこういう点を考慮したのでこうなったみたいな、審査会としては、こうこうこういう点を考慮したというのが何かなくていいのかなと。ただ書き方として、前回の先ほど言われた60回のときの資料みたいに、「目安額700万円の半分を大きく下回る額」というような書き方はできないと思いますけれども、やはり変容と喪失ではこうこう違うんだからということをもう一言入れてもいいんじゃないかな。
 ちなみに、前のときには、変容と喪失については、損害の程度にはなお大きな差があると認めるのが合理的である。これはもちろん最終報告にも同じ表現だったと思うんですけれども、そこら辺が全く消えちゃったんですけれども、「なお大きな差」というとあまりに差があり過ぎるということでしょうか。そうだとすると、「大きな」という言葉を何か考えてはどうかと思うんですけれども。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。説明の補充と、どういう表現がいいかということについても御示唆をいただきましたが、この点は事務局から何かありますか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  論点整理のときには、確かにそういうふうに、金額の差をどういう考え方かという点を書いていたんですが、今回、指針の素案のときにはそのあたりが不十分だったかもしれないので、追記を検討したいと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。江口委員のおっしゃるように、額が決まれば書きやすいところがあるかもしれませんので、2分の1を大きく下回るということでよいかどうかということも含めて御議論いただければと思います。
 富田委員、お願いします。



【富田委員】  机上配付資料にありますように、各判決は、避難を余儀なくされた慰謝料をかなり認めているものとそうでないものとあるんですが、問題は、現在の議論では避難を余儀なくされた者というのは20キロ圏内に限定されることになりますが、それぞれの区域は、20キロ圏内の場所とそうでない場所があるわけです。緊急時避難準備区域は基本的に20キロ圏外だと思いますが、そこでも避難を余儀なくされた慰謝料を認めている判決もあります。しかし、帰還困難区域と居住制限、避難指示解除準備区域については、そういう意味で、避難を余儀なくされた慰謝料を認めるところと認めないところが出てくるので、その点で、中間指針では、ふるさと喪失といいますか、生活基盤変容のところをどう見ていくかというあたりは、もう一度考え方として確認しておく必要があろうかと思いました。



【内田会長】  重要な御指摘だと思いますが、富田委員から何か、こういうふうに考えればという御示唆はありますでしょうか。



【富田委員】  いや、結局、判決との整合性のところで、特に仙台高裁関係は避難を余儀なくされた費用が150万とかなり大きくなっていて、次の居住制限区域のところでまた、それがさらに大きく効いてくるだろうということがあるので、金額の決定に当たって、そこをどういうふうに調整していくか。特に判決の金額をどう受け止めるかにかなり影響してくると思いますので、実際には金額の議論のところでやらなきゃいけないところです。しかし、そこは基本的考え方をどうするかは、ある程度議論しておく必要もあろうかなとは思ったところです。
 私は、生活基盤の喪失、変容については、ある程度長期間にわたるものを見ているので、それはそれとして金額を決めていけばいいだろうと。避難を余儀なくされた部分は、今のところ、判決の水準までは認める必要がないといいますか、認めてない判決もあって、その間のバランスを取るということですから、それはそれでいいかと思うんですが、ふるさと喪失の金額を判決からどう見るかについては、こちらとは整合しない部分がありますので、そこは考えていかなきゃいけないなという指摘程度でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。総額も見ながらというところになろうかと思います。ほかに御意見、いかがでしょうか。
 古笛委員、お願いします。



【古笛委員】  ここのところは、両委員からもお話があったとおり、おおむね判決を踏まえた整理として、たくさん論点があるんですけれども、このとおり進めさせていただけたらとは思いますが、金額が決まらないと、細かいニュアンスのところは違ってくるかと思うので、もう一度議論させていただく時間をいただけたらとは思います。



【内田会長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。



【大塚専門委員】  提案の趣旨として申し上げさせていただくということで、恐れ入ります。生活基盤の喪失とか変容の慰謝料に関しては、今までの避難費用とか日常生活の阻害の慰謝料とは別の項目だということを打ち出しているつもりでございまして、そちらは備考のほうに出てきていると思うんですけれども、避難を余儀なくされた慰謝料、つまり、過酷避難状況の慰謝料とは一応別のものとして考えさせていただいていいのではないかと思っているところでございます。ですので、そちらのほうが多いとか少ないとかということが、この生活基盤の喪失とか変容の慰謝料の額に影響してくることではないと考えて提案させていただいております。
 交通事故の慰謝料と関係させること自体がいいかどうかという大問題はありますが、生活基盤の喪失とか変容の慰謝料は、交通事故との関係でもし言うとすると、というだけでございますけれども、後遺症の損害とかに近いのではないかという議論がございました。補足させて説明させていただいたということでございます。恐れ入ります。



【内田会長】  補足をいただいてありがとうございます。富田委員の御意見は、多分そういう点も踏まえた上で、かつ総額もにらみながらというところの御指摘も含まれていようかと思いました。
 中田委員、お願いします。



【中田委員】  また細かいところで申し訳ないんですけれども、通しページの9ページの第2段落、3)のところでございます。帰還困難区域等の日常生活阻害慰謝料について、従来の75か月間を85か月間に改めるということなんですが、この意味が私、よく分かりませんでした。85か月で月額10万だから850万、従来は600万だったので250万プラスという意味にも取れますし、10か月間延長するのだから10掛ける10の100万の増額とも読めますし、あるいは600掛ける75分の85、これは680になるんですが、その差額80とも読めるわけです。御趣旨としては850というのが事務局の御提案だと思うんですが、であれば、どこかにやっぱり850ということを書いたほうが分かりやすいんじゃないかな、紛れがないんじゃないかと思いました。
 その上で、仮に850だとしますと、これは10か月分を延ばすだけではなくて、15か月分を前倒しし、1期、2期の分も含めるということになると思うんですが、そうすると、どうしてそうするのかということの説明も入れておいたほうがいいのではないかと思いました。



【内田会長】  ありがとうございます。今の点は事務局から何か補足ありますか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  趣旨としては、最初に、第二次追補600万と出したときには、それまでの間に一度150万円は既に賠償されているところに加えて、一括で600万円を足して750万円となったと。第四次追補のときに、1,000万円のさらに一括したときに、当初の600万円のうち将来分の300万円は重複するので、1,000万円から控除することになり、日常生活阻害慰謝料としては、最初に出した150、そして600万に加えて700万という、こういう足し算になっています。
 そうするときに、日常生活阻害慰謝料が750万円という計算になってしまうので、単純に10か月間延ばして850万円にしたというのが事実関係としてあります。中田委員の御指摘のように、ちょっと分かりにくい点があれば、さらに、ここの表現ぶりについては修正を検討したいと思います。



【内田会長】  中田委員、今のようなことでよろしいでしょうか。



【中田委員】  御趣旨は分かったのですけれども、この文章からはなかなか読み取りにくいので、明確にしていただいたらいいと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、大塚専門委員、お願いします。



【大塚専門委員】  事務局にお考えいただければいいことですので、私が差し出がましいことを言うのはどうかと思いつつ、一言だけ申し上げておきますが、今の中田委員のいろいろな御指摘のうちの一つは、なぜ75か月が85か月になったのかということの理由も書いてくださいという話が入っていたと私は受け取ったんですけれども、そこは、全面的に解除されるのが85か月後だったということとかを書いていただくのは、私はあり得ると思っております。ただ、事務局としては、あまり細かいことまで書くのは混乱すると思われているかもしれないので、そこはよく分からないところもありますけれど、そういう事情があって85か月にしたことを記述することはあるかとは思います。



【内田会長】  ありがとうございます。事務局、これは判決を踏まえてということでしょうか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  はい。備考3)の冒頭にもありますように、判決と実際、居住制限区域等は、閣議決定を踏まえて30年3月末までと。そこが今、大塚先生から御指摘のあった全面的に解除をされるところが30年3月だったというところもあって、こういう記載になっているんですが、そこの分かりにくさは引き続き検討したいと思います。



【内田会長】  よろしくお願いします。ほかにはいかがでしょうか。特に御意見はありませんでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
それでは、この素案の方向で、さらに金額を詰めていくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 引き続き次のテーマに入りたいと思いますが、次が3の「相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安に基礎を置く精神的損害」でございます。まずは、この項目についての説明を事務局からお願いいたします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  それでは、通しページ12ページです。相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安に基礎を置く精神的損害。まず、対象区域と対象者ですが、計画的避難区域、特定避難勧奨地点と明記しております。損害項目ですが、まず、指針のローマ数字1、賠償対象となる精神的苦痛について定義しております。指針のローマ数字2ですが、賠償対象期間を、本件事故発生から平成23年12月末までの間として、日常生活阻害慰謝料に加算する旨、記載しております。指針のローマ数字3ですが、子供、妊婦とそれ以外の者についての損害額の目安を月額、合計額で記載しております。
 備考1)、年間積算線量が20ミリシーベルト超のおそれがある計画的避難区域、特定避難勧奨地点に一定期間滞在したことによる健康不安を基礎に置く損害が賠償対象となるという旨を記載しております。
 備考2)、最初の1段落目は、被害者の行動態様が様々であることから、避難の実施時期を問わず、同等に類型的取扱いをする旨を記載しております。2番目の段落ですが、半径20キロメートル圏内の住民は、一義的には対象者から除外されますが、個別具体的な事情に基づいて、例えば浪江町のケースのような避難の過程で計画的避難区域に一定期間滞在したと認められる場合は賠償が認められ得る旨を記載しております。
 備考3)、賠償期間を平成23年12月末までとする考え方です。住民の行動記録を基にした外部被曝線量の推計値から、放射線による健康影響があるとは考えにくいとする福島県の調査結果が平成23年12月に公表されたことにより、健康不安はある程度軽減されたものと考えられる旨を記載しております。
 備考4)、日常生活阻害慰謝料の損害項目と並行して生じているとして、独立の損害項目ではなく、日常生活阻害慰謝料に加算するのが相当である旨を記載しております。
 備考5)、計画的避難区域がその後に帰還困難区域等に見直されますが、見直し後の区域によらず一律に賠償、特定避難勧奨地点も同様である旨を記載しております。
 備考6)、損害額の算定方法です。最初のパラグラフは、自主的避難等による損害額を上回ることが相当、自主的避難等に係る損害における扱いと同様に、子供、妊婦の場合、放射線への感受性が高い可能性があることが一般に認識されていることなどを考慮して算定しております。自主的避難の場合は、子供、妊婦の場合は40万、ほかは子供、妊婦の2分の1から3分の1というのが確定判決にあるとおりです。
 2番目の段落は、自主的避難等対象区域に避難した場合は、損害の性質上重複するため、自主的避難等対象者に準ずる者として、既に賠償されたものがあれば控除することが相当である旨を記載しております。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。ただいま御説明がありました素案の内容について、御意見、御質問をお出しいただきたいと思いますが、特に御意見をいただきたいと思います点として、2つほど挙げたいと思います。
 まず第1は、指針のローマ数字1、ローマ数字2、及びこれについての備考の1)から5)ですけれども、この部分は第60回の審査会における論点整理で確認されたとおりの内容です。まずは、この点、問題ないかどうかの御確認をいただければと思います。
 2番目に、指針のローマ数字3についてですが、具体的な金額の決定は次回行いますが、審査会の御議論に基づいて、子供、妊婦とそれ以外とを区別することにいたしましたので、この区別を有している自主的避難の場合の金額の定め方のアナロジーで言うと、ただいま事務局からの御説明がありましたように、子供、妊婦以外は、子供、妊婦の2分の1から3分の1程度と考えてよいかどうかが問題となります。
 以上の点も含めまして、御意見、御質問をお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 明石委員、お願いします。



【明石委員】  明石でございます。14ページの備考6)のところで、これは前もちょっと申し上げたと思うんですけども、ここの項目では、健康不安を基礎とする精神的な損害に対してというのが、ここの前提というか、考え方ということを考えると、ここについては書き方で、放射線への感受性が高い可能性があることが一般的に認識されることなどを考慮し、何とかを加算の目安とするという書き方をしてしまうと、ここだけ放射線の影響であるかのような書き方になってしまうと思います。20ページのところを見ますと、20ページの3)のところに、こういう可能性があるので放射線被曝や恐怖や不安を抱くことということが書いてありますので、比較的線量は低いとはいえ、放射線への恐怖や不安を抱くということが書いてあるということになると、やはりここは少なくとも子供及び妊婦の場合は、ほかの人たちよりも放射線に対する不安が大きいという趣旨で、加算の目安とするという文脈にしないといけないのではないかなという気がします。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。その点、よろしいでしょうか、事務局。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  基本的には明石委員御指摘の考えなんですが、ちょっと言葉が足りてないところがあるかもしれませんので、ちょっと修正を考えます。



【内田会長】  よろしくお願いします。
 では、大塚専門委員、お願いします。



【大塚専門委員】  ちょっと難しいところなので微妙なところだと思うんですけども、明石委員がおっしゃっているようなことは随分検討はして出させていただいたつもりではおり、ますが、明石委員が御指摘したいと思っておられるリスクに関しては、100ミリシーベルト以下については特に明確な違いがあるわけじゃないという御趣旨がある一方で、あまり不安に基づく損害というのを全面的に押し出していくと、一般の損害賠償との関係での影響もあるものですから、そこは表現についてはかなり微妙な表現になるところもございまして、両方の点を踏まえて、事務局に表現を御検討いただければ大変ありがたいと、私は専門委員で恐縮ですが、思っております。



【内田会長】  大塚専門委員は、もともとの指針の策定にも関わられたので、微妙な表現というのは、例えば、何か御示唆はありますでしょうか。



【大塚専門委員】  「感受性が高い可能性があることが一般に認識されている」というのを少し変えて、今、明石委員がおっしゃってくださったことを表現することになるかなと思っていまして、不安の程度によって賠償額がどんどん変わっていくとか、不安を感じれば全て賠償するみたいな、そういう受け取り方をされないようには気をつけていただいたほうがいいかなとは思います。抽象的なことしか言えなくて、すみません。



【内田会長】  明石委員から、追加で御発言お願いいたします。



【明石委員】  明石です。大塚先生のおっしゃることは僕もよく理解できます。ただ、どうもここだけの文章だと放射線の感受性、つまり、放射線による直接影響によってという意味が出てしまうので、そうではないのではないかと。ちょっと文章を足してほしいということですので、大塚先生の言っていることに反対しているわけでも全くございませんので、事務局に多少工夫をしていただければということでございます。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。ただいまの御指摘からすると、感受性が高い可能性があることによる不安が大きいとか、そういうような表現は考えられますでしょうか。ありがとうございます。



【大塚専門委員】  大塚ですけど、一言いいですか。どこかで、ほかのところにも書いていただいているように、賠償の基礎とされる不安がとか、文章の主語を変えるとかいう方法もあるかなとは思いました。なかなか微妙なところで、申し訳ありません。



【内田会長】  ありがとうございます。それも非常に有力な候補になろうかと思いますので。じゃ、ちょっと表現ぶりを御検討ください。ほかに御発言ありますか。
 中田委員、お願いします。



【中田委員】  ただいまのお二人の御発言とも関係するのですけれども、12ページの備考1)のところでございます。この書き方は、まず、対象となる区域及び地点を特定して、そこでの損害を損害項目とすると、こういう書き方になっています。ほかのところでは、損害の内容あるいは類型を示した上で、その対象区域を示すという記載の順序になっているのと、やや違っている感じがあります。これはやはり、今のお二人の御発言にもありましたように、どの範囲でのみ賠償するのかということと切り離せないところがあるのかもしれないのですけれども、先に区域を出しますと、結論が先に出ているような感じもします。そこで、ここでもまず相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安については賠償の対象になるということを示した上で、それを具体的に言うと、こことここなんだというように書いたほうが分かりやすいかなと思いました。



【内田会長】  ありがとうございます。ただいまの点、事務局、お願いします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  ここは、専門委員の最終報告を踏まえて、こういう損害の類型化をしていますが、相当量線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安というのは、ほかの損害類型とはちょっとアプローチの仕方が違っていて、もともと相当量の線量地域って何かということを定義しようとすると、やはり計画的避難区域が後になって指定をされて、そこからすぐに避難をできずに、一定期間、避難が完了するまでに時間がかかったという、その類型の仕方がやっぱり区域と密接で切り離せないと。逆に、相当量の線量地域って区域によらずどこでもあるのかというと、この損害の類型上は、この区域でしかなかなか類型化しにくいというのがあるので、最終報告も踏まえて、この類型化の仕方がよいのではないかと事務局としては考えている次第です。



【内田会長】  ただいまの説明に対して、中田委員、いかがでしょうか。



【中田委員】  御趣旨は分かるのですが、やはり、また元に戻って、明石委員と大塚委員とのやり取りにも出てきましたように、ここで対象となっている損害は何なのかということがまず定まって、それを示すのが、切り離せないとおっしゃったんですけれども、この区域と地点であるということにならざるを得ないんじゃないかなと思うのです。最初から、相当量の線量地域というのはこの区域とこの地点なんだということを示しますと、それによって損害の内容を規定することになると、損害の内容にも区域というものが持つ意味が効いてくるんじゃないかと思うんですが、それはちょっと逆転した発想ではないかなと感じております。



【内田会長】  これ、なかなか難しいところですが、ほかの委員の皆様……。
 大塚専門委員、お願いします。



【大塚専門委員】  そこも非常に難しいところだと私も思っているんですけど、どちらかというと、これは明石委員のほうが強く思っていらっしゃるんじゃないかと思うんですけど、相当量の線量がそもそも何かという話とかを含めて実は大問題になってしまうので、科学的に見て不適切とは言えない程度の、あるいは不合理とは言えない程度のものに関しての不安というのが多分問題になり得ると思うんですけれども、実際には政府は20ミリシーベルトを基準にしたので、20ミリシーベルトを相当量の線量と考えているということが実は背後にありまして、相当量の線量は何かということを含めて、非常に問題が拡散していく可能性があるので、多分事務局はこの書き方はかなり慎重にしているということではないかと思います。これは補足の説明です。恐れ入ります。



【内田会長】  ありがとうございます。相当量線量であるということだけが賠償の根拠になっているわけではないということかと思いますが、ほかに御発言ありますでしょうか。では、特に御発言がないようですので、中田委員の御指摘も踏まえた上で、事務局で再度表現ぶりを検討するということでよろしいでしょうか。ちょっと微妙な問題があるようですので、問題がきちんと伝わるように表現ぶりを検討していただきたいと思います。
 明石委員、お願いします。



【明石委員】  明石です。今、大塚先生も御指摘された、中田先生もおっしゃられたと思うんですが、ここは20ミリシーベルトという数字が出てきているので、ここでいろいろな考え方が出てくるんだと思うんですが、多分ここでの考え方は、いわゆる数字が大きくなれば大きくなるほど不安も大きくなるでしょうというようなことを言おうとされているのかどうかということで多少書き方は違ってくるとは思うんですが、ここはそういう意味を含ませているのでしょうか。



【内田会長】  ただいまのは、事務局にお答えいただく前に、大塚専門委員、お願いします。



【大塚専門委員】  事務局に答えていただいたほうがいいのかもしれませんが、提案した趣旨としてはそういうことではないという趣旨です。つまり、政府が20ミリシーベルトというのを、いろんな指示をするときの非常に重要な根拠にしていることを踏まえて、相当量の線量については、20ミリシーベルトを非常に重視して考えるという発想ですので、それを申し上げておきます。もうちょっと別の言い方をすると、何ミリシーベルトだということを御自身で測定なさって、そこに少しいたということを理由に請求されてくるということについては、ここでは特に考えていないということではないかと思います。すみません、事務局のほうが正確にお答えいただけると思いますけど。



【内田会長】  ありがとうございます。事務局からさっき説明していただいたことではありますけど、重ねて何かありましたら。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  今、大塚専門委員が御説明されたとおりで、不安と線量が直接相関しているというよりは、政府指示が出る基準として20ミリシーベルトがあって、それ以上の線量に年間積算線量で達するおそれがある区域に一定期間いたというのが計画的避難区域の特性でありますので、そういう外形的な基準から、そこが相当線量地域の健康不安が定義されるということで、今、大塚先生がおっしゃったように、直接明石先生の御懸念はここでは想定してないということです。



【内田会長】  ありがとうございます。その点を踏まえて、表現ぶりについては再度検討していただければと思います。ほかに御発言ありますでしょうか。妊婦、子供とそれ以外との差についても、大体、先ほど事務局から説明があったような方向で検討していくということでよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
ありがとうございます。相当線量地域健康不安については、以上のような方向で最終的な案を詰めていただきたいと思います。
 続いて、4の「精神的損害の増額事由」に入ります。この説明に入ります前に、前回審査会での説明について訂正などがあるとのことですので、ADRセンターの古谷室長から御発言お願いします。



【古谷室長】  ADRの古谷でございます。先日の私からの発言の内容で訂正をいたしたいところと補足をさせていただきたいところがございますので、お時間をいただきたいと思います。
 まず、訂正が2点ございます。前回の審査会で、私どもの昨年1年間の資料、和解事例から取った数値を御報告いたしました。その中で、懐妊中であること、妊娠していることの関係で、平均の金額、約2.8万円という御報告をいたしましたけれども、これは誤りでございまして、正しくは約3.3万円でございました。おわびして訂正させていただきます。
 2点目ですが、私からの報告の中で、1人の方が要介護と身体または精神の障害が重なっている場合があり、この場合に、両方を足した金額、あるいはそれ以上の賠償がされている例が多いという御報告をいたしました。大変申し訳ないですが、こちらも統計の誤りでございまして、実際は1つの家族の中で、要介護の方と身体または精神に障害がある方が、別々に2人いるというケースでございました。重要な点でしたが、誤った説明をいたしました。大変申し訳ございませんでした。
 以上の2点につきましては訂正をさせていただきまして、改めて議事録は、その趣旨で訂正をさせていただければと思っております。
 続きまして、補足の1点目になります。前回の審査会で御指摘がありました、若い人が介護をしているケースは、ADRでどうなっているのかという御質問がありましたので、調査をいたしました。ここ4年間の和解事例のうち、2件ございました。1件は、中学生が祖父母のうちの一方の方を介護していたというケースでございました。もう1件は、10代前半から10代後半にかけて、お父さん、お母さんのうちの一方を介護していたというケースでございました。件数としては、把握しているのは以上でございます。今後、今回の中間指針の見直しに伴いまして、事案が増える可能性も十分あろうかと認識はしております。センターといたしましては、いわゆるヤングケアラーと呼ばれる方の置かれている状況を十分踏まえまして、適切に賠償していきたいと考えております。
 もう1点補足がございます。前回の審査会のときに、昨年1年間の和解事例から賠償の平均額をお伝えしたところでございますが、1年間だけでは足りないのではないかという御指摘もありまして、今回、令和元年から令和3年までの3年分の平均値を改めて調べましたので、御報告いたします。
 まず、要介護につきましては約3.8万円でございます。昨年1年も約3.8万円ということで、数値としては同じということになります。身体、精神に障害のある方につきましては、約3.7万円ということになります。これは、昨年1年では約3.3万円でしたので、少し高い金額になっております。介護された方につきましては、約3.4万円になっています。昨年は約3.3万円という御報告をいたしました。乳幼児の世話の関係ですが、これは3年間でも約2.8万円となっておりまして、昨年1年間でも約2.8万円ということで同じ数値になっております。
 最後に、懐妊されている場合ですけれども、先ほど訂正いたしましたとおり、昨年は約3.3万円でしたが、3年間を取りますと約3.1万円となっておりました。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。続きまして、この項目についての説明を事務局からお願いします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  4ポツ、「精神的損害の増額事由」です。
 まず、指針のローマ数字1ですが、丸1から丸10の事由を、日常生活阻害慰謝料の増額事由として明記しております。ADRセンターの総括基準において同じ基準がありまして、同センターの賠償実務において、それを踏まえた運用実績が積み重ねられていることから、今回、指針において明確化するというものです。
 次に、指針のローマ数字2ですが、丸1から丸3の増額事由がある場合の増額の目安を設定し、なお、丸3の増額事由、恒常的介護ですが、複数の介護者がいるときは、主たる介護者を賠償の対象とする旨、記載しております。
 指針のローマ数字3の丸4、乳幼児の世話の増額事由ですが、乳幼児の年齢、就学しているか否かを基準として増額の目安を設定しております。なお、複数の者が世話をしていたときは、主として世話を行った者を賠償の対象とする旨、記載しております。
 指針のローマ数字4ですが、懐妊中の場合、本件事故発生時に懐妊していた者については、その妊娠月齢に関わらず一時金賠償、本件事故発生後に懐妊した者については、妊娠期間に応じて月額賠償等を記載しております。それぞれの増額の目安も設定いたします。
 指針のローマ数字5ですが、丸6から丸10の増額事由については、かつ通常の避難者と比べて精神的苦痛が大きいと認められる場合は、個別具体的な事情に応じて、ADRセンターの賠償実務を踏まえて増額すべき旨、記載しております。
 備考1)、総括基準は、ADRセンターの和解仲介事案の多くに共通する問題点についての基準を示したものと。総括基準のうち、東京電力による直接の賠償において広く適用することが可能なものについては、東京電力がそれを適用し、迅速、公平かつ適正な賠償を促進することが期待されると記載しております。
 備考2)、1番目から2番目の段落は、指針の1は総括基準が日常生活阻害慰謝料の増額事由として定めている事由を、このたび、第五次追補において増額事由として明記。この増額事由に基づく増額は、過酷避難状況による精神的損害や相当線量地域健康不安による精神的損害の増額とは別個に行われるべきものと明記しております。
 3番目の段落ですが、各増額事由というのは、自主的避難等対象区域において避難を行った者に関しても、個別具体的事情を踏まえ、その趣旨が尊重されるべきと明記しております。
 備考3)、ここは丸1要介護、丸2身体、精神障害、丸3介護者についてです。1番目の段落は、増額事由のうち当該事由の内容が明確で、その認定が比較的容易なものについては増額する金額の目安を示すことが相当。指針のⅡは、丸1から丸3の増額事由における増額の目安を明記。2番目の段落は、増額事由の認定については、被害者にとっての負担を小さくすべきであり、信頼性の高い文書、例えば介護保険被保険者証、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳など、こういったものを活用すべき旨記載しております。
 3番目から6番目の段落は、増額目安について、ADRセンターの賠償実務を参照し、一律に目安額を設定。7番目の段落は、複数の者が介護を行った場合については、主たる介護者を賠償の対象とするが、状況に応じて、主たる介護者や主従がなく介護した者に対しても柔軟な賠償を行うべきと。8番目の段落は、介護を受ける者が複数いる場合は、個別具体的な事情に基づき賠償額を算定することを記載しております。
 備考4)は、丸4の乳幼児の世話です。2番目の段落は、増額事由の認定については、被害者にとっての負担を小さくすべきであり、立証が容易な事実、例えば乳幼児との同居の事実、そういったものを活用すべき。3番目の段落は、増額の目安については、ADRセンターの賠償実務を参照し、子供の年齢を主な基準として目安額を設定する。4番目の段落は、複数の者が世話を行った場合については、主として世話を行った者を賠償の対象とするが、状況に応じて従として世話を行った者や、主従なく世話を行った者に対しても柔軟な賠償を行うべき。5番目の段落は、子供が複数いる場合は、個別具体的な事情に基づき賠償額を算定と記載しております。
 備考5)は、丸5の懐妊中の場合です。2番目の段落は、増額事由の認定については、被害者にとっての負担を小さくすべきであり、信頼性の高い文書、例えば母子手帳や、立証が容易な事実である出産時期を活用すべきと記載しております。3番目の段落は、増額の目安については、本件事故発生時に、懐妊中の者に関しては妊娠月齢により賠償に差を設けるべきではないから一時金による賠償とし、本件事故発生後に懐妊した者については月額による賠償、ADRセンターにおける賠償実務を参照し、具体的な目安額を設定。妊娠の経過等の個別具体的な事情による目安は、個別具体的な事情に応じて、目安を上回る増額が認められることを明記しております。
 備考6)ですが、持病、持病の介護、別離や二重生活、避難所を転々とする場合、その他ですが、1番目の段落は、指針のローマ数字5は、丸6から丸10の増額事由については目安額の設定を行わず、個別具体的な事情に応じて、ADRセンターの賠償実務を踏まえ増額されるべきことを明記しております。
 2番目の段落は、丸6から丸10の増額事由は概念の外縁が不明確であったり、客観的証拠による立証が困難であったりすることから、定型的に目安額を定めて賠償を行うことが困難、増額する場合の金額の算定等は、個別具体的事情に応じた判断に委ねられる旨明記しております。
 備考7)ですが、丸9の移動回数が多い場合の過酷避難状況との関係です。この増額事由は、避難所への移動回数が多い場合には、それに対応して精神的損害も大きくなることが多いことに着目したもの。一方、過酷避難状況による精神的損害は、放射線に関する情報が不足する中での避難行動自体に伴う苦痛や過酷さにより生ずる損害で、第1期の期間中、本件事故発生から相当期間にわたって損害が発生すると。第1期のうちの苛酷避難状況が認められる相当期間内においては、丸9の増額事由の精神的損害と過酷避難状況による精神的損害はある程度重なることから、この増額理由は、主として第2期以降に生じた移動を中心に、第1期に生じた移動を副次的に考慮して判断すると記載しています。ただし、計画的避難区域、緊急時避難準備区域及び特定避難勧奨地点については、第1期に生じた移動も含めて判断すると記載しております。
 備考8)はその他で、いわゆるバスケットクローズの趣旨であります。
 備考9)は複数の事由が認められる場合で、これについては個別具体的事情を踏まえて総合的に増額の金額を検討するのが相当であり、目安額は設定しない旨を書いております。
 備考10)、これは目安以上の増額についてです。丸1から丸5の増額事由については、個別具体的な事情を踏まえて、目安額を超える増額をすることが可能と明記しております。
 備考11)ですが、個別具体的な事情を踏まえての増額ということで、この点につきましては、ADRセンターの賠償実務を十分に踏まえることが相当である旨、記載しております。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。ただいま御説明がありました素案の内容について、御意見、御質問をお出しいただきたいと思いますが、増額の金額そのものは次回の審査会で議論するとして、今回、特に御意見をいただきたいと思います点を2つ、最初に挙げさせていただきます。
 まず第1は、備考1)に書かれていることですけれども、総括基準のうち、今回、増額事由を指針で類型化する趣旨についてです。総括基準の中の増額事由を今回、指針で類型化する趣旨について、その説明がこれでよいかどうかということについて御確認をいただきたいと思います。
 2つ目として、この増額事由が適用されるのは、避難指示等対象区域における日常生活阻害慰謝料についてですけれども、備考2)の、これは通しページ15ページの40行目、下から4行目ぐらいになりますが、40行目以下にありますように、自主的避難等対象区域に住居があった者で避難を行った者についても、個別具体事情を踏まえた賠償においては、本増額事由の趣旨が尊重されるべきことが書かれております。この点は当然のこととは思いますけれども、増額事由の審議の際に、明示的にはこれまで出ていなかった点であるかと思いますので、念のため御確認いただければと思います。
 以上の点を含めまして、御自由に御意見、御質問をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。
 古笛委員、お願いします。



【古笛委員】  この増額事由につきましては、前回、かなり時間をかけて議論させていただいたところを踏まえて、今回、全体の書き方としてはこういう方向でよろしいのではないかなと思っております。具体的に金額のところで、また確認はさせていただけたらとは思いますが、方向性はこれでよろしいかと思っております。



【内田会長】  ありがとうございます。
 江口委員、お願いします。



【江口委員】  私も、増額事由のところはこれでいいと思っております。先ほどの、なぜ増減事由を総括基準の中から取り上げて指針に入れるかというのは、今までの会議の中では出てまいりました。東京電力が、総括基準のままだと、きちんと重視しないからというのがあるんですけど、そのようなことを指針の中には書けないと思いますので、やはり今備考1)で書いてあるところを、これ以上強くと言ってもなかなかないのかなと思っております。
 その上で大変細かいことを申し上げて申し訳ないんですけれども、備考10)と11)なんですけども、これ、しつこく言わなきゃいけないからということなのかもしれませんけど、10)は、ここで増額事由として挙げた事由のうち増額の目安を示したもの、つまり、丸1から丸5のことですよね。これについては、当然目安を上回る増額をすることを妨げるものではないと言うんですけども、それはそれぞれ、例えば、通し番号16の26から28行目とか、ここに、「目安にとどまり、個別具体的事情を踏まえて」云々かんぬんと出てきますし、それから、丸4に関しては、17ページのところの上から6行目から9行目に同じ文言が出てきますし、さらには、同じ17ページの29から31行目に同じことがそれぞれのパートにも書いてありますが、さらにここでももう一度よく言っておかないといけないと、こういう趣旨ですかね。妨げないという言葉だとすると、たしか一番最初の副大臣のお話にもありますように、逆に言葉としてちょっと弱いんじゃないか。
 それから、11)に関しては、この11)で言っているのは、今言いました丸1ないし丸5について個別事情で増額するときに、ADRセンターの賠償実務を十分に踏まえなさいよということだと思うんですが、本文の中にはそうは書いてないので、ここの最後のときには、そこも、どうせ書くなら念押ししておいたらいかがかなと思います。細かいことばかりですみません。



【内田会長】  ありがとうございます。この点、事務局から。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  妨げないのニュアンスについては、事務局で検討したいと思います。備考11)のほうは逆に、ほかの項目に書いてない不均衡のところも検討したいと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。全体の文章のバランスとかもあろうかと思いますので、それを踏まえて御検討いただければと思います。
 大塚専門委員、お願いします。



【大塚専門委員】  非常に細かいところの話で誠に恐縮ですが、通しページの18ページの14行目のところで、「第1期に生じた移動も副次的に考慮して」と書いていただいております。これは、文章全体を読めば分かることかとは思いますけど、趣旨としては、第1期は6か月全部になってしまうので、過酷避難状況というのははっきりと期間は言えないけれども、6か月全部というよりは、最初の2か月とか3か月程度のあたりの、さっきの着のみ着のままでの、取るものも取りあえずの避難のことを言っているので、重なる面もあるけれども、6か月のうちの部分的なところが重なってしまって、そこは過酷避難状況のほうでカウントしているということになるだけなので、第1期全部の移動に関して、過酷避難状況の精神的損害で完全にカバーし切れるものではないという意味が、この「副次的に考慮して」というところに入っているんだと思われますが、その趣旨は、必ずしもこれだけ読んだだけではよく分からないところもあるので、もうちょっと表現を追加していただけるとありがたいと思います。一言ここで言及させていただくことが大事かと思って申し上げさせていただきました。恐れ入ります。



【内田会長】  ありがとうございます。今の趣旨を踏まえて修文ということでよろしいでしょうか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  ちょっと検討してみたいと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。
 中田委員、お願いします。



【中田委員】  細かいことを含めて3点ございます。
 1点目は、通しページ14ページの40行目に、ブランクですけれども、1人月額幾らの増額を目安とすると書いているんですが、その前提として39行目に丸1ないし丸3の事由があるということで、丸1と丸2と丸3が同額であるということが前提になっているように見えます。そうだとすると、なぜ同額なのかということを16ページの3)のあたりで示しておいたほうがいいんじゃないかなと思いました。
 それから2番目ですが、15ページの備考1)のところですけれども、総括基準について、どうしてここに書くのか、これは先ほどの御意見にもありましたように、なかなか難しいとは思うんですが、こういう書き方になるとは思います。
 ただその上で、全体の第1のはじめにの2の基本的考え方というところがありますけれども、これは通しページで4ページですが、そこでは主として確定判決との関係がメインになっていると思います。ここにADRの総括基準を取り込むということが、これは先ほど鹿野委員や樫見委員が御発言なさったADRの重要性ということとも関係するんですけれども、今回、総括基準を取り入れるということについて、基本的な考え方か、あるいはその手前の1の経緯のところかもしれませんけれども、少し書く可能性もあるかなと思いました。もちろん3ページの下のほう37行目からに、必要に応じ、ADRセンターにおける事例の情報提供も受けということが入っておりますので、そこで示されているんだということかもしれませんけれども、ちょっと分かりにくいかなと思いました。
 3点目ですが、16ページの26行目から28行目にかけて、ここの金額は目安にとどまるんだということを書いていらっしゃるんですけれども、どうしてここに書くのかということがちょっと分かりにくかったんです。どうしてここにというのは、この位置だと丸2に関する記述のようにも読めるし、あるいは丸1と丸2を受けての記述のように読めるし、あるいは丸3も含めてのことのようにも読めるように思います。そうすると、場所はどこかもうちょっと前のところ、例えば18行目と19行目の間ということも考えられるかと思います。
 他方で、18ページの27行目から、10)というところで同趣旨のことが全体について書かれています。これとの関係で、あえてもう一度書くことはどのような御趣旨なのかということを確認していただければと思います。



【内田会長】  ありがとうございます。
 最後の点はちょっとどう書くか、先ほどの点ですが、ほかの点は、今の段階で事務局から何か応答はありますか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  備考3)のところの増額理由丸1から丸3について、それぞれの金額の考え方というか、全部同じだというふうに暗黙の上で書いてあるという御指摘だと思いますので、ちょっとそこら辺については修正を検討したいと思います。
 2番目の御指摘は、はじめにの部分等含めて、ちょっと記載ぶりを検討したいと思います。
 3番目の点は、江口委員からも御指摘あったとおりのところで、とにかくしつこく言うというのがこの場での共通認識に近いところがある。だから、そこら辺の書き方については、全体を通して改めてよく精査したいと思います。



【内田会長】  よろしくお願いします。
 それでは、鹿野委員、お願いします。



【鹿野委員】  予定の時間を経過しているのですが、1点だけ申し上げたいと思います。
 通しの17ページの38行目あたりのところです。その段落の初めのところでは、丸1から丸5の増額事由については一定の金額を示すということとされ、その後に38行目から丸6から丸10については、金額として提示することはしないということとされています。このこと自体は、既に議論をしてきたところで異論があるわけではありません。
 ただ、この38行目から43行目あたりの書き方なのですが、私の認識では、丸6ないし丸10についてはかなり個別性に富み、いろいろな多様なパターンがあるから、一定の数字を示すということが難しいのだと、そこが一番の理由なのだというふうに受け止めておりました。しかし、この書き方だと、もしかしたら前回の資料もそうなっていたのかもしれないんですけれども、立証困難というところが前面に出ていますし、しかも、これでいくと丸6から丸10まではすべからく立証が困難で当事者の主張しかないみたいなふうにも読めてしまうんですが、これも事案によって明確な立証ができるというものもあると思います。そこで、数字を示さないことの理由の示し方について、もし私の今の理解が誤っていなかったらということですけれども、順番を含め、あるいは表現も含めて、少し検討していただければと思いました。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 その点、御検討いただければと思います。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  個別性という部分があまり書いてないところは修正したいと思います。



【内田会長】  ほかにはいかがでしょうか。
 明石委員、お願いします。



【明石委員】  すいません、明石です。時間を超過しているところで非常にささいなことを申し上げて申し訳ないんですが、通しページの14ページのところで言葉、丸5のところで懐妊中という言葉を使われているんですが、これ普通、妊娠ではないんでしょうか。特に意味があるのかどうかということ。それから、言葉のことをもう一つついでに申し上げますと、普通、放射線被曝の「ばく」って平仮名で書くことが多いんですが、国の文書もほとんどが平仮名になっているんですけど、この文書は漢字になっていることをちょっと御一考いただければと思います。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ちょっとその表現について、御検討いただければと思います。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  懐妊中は、総括基準をそのまま準用しているということで、ちょっと指針に当たってどうするか検討したいと思います。
 被曝については、これまでも漢字で書いてきたという経緯があって、ちょっとそこはどうするか、会長とも御相談したいと思います。
 以上です。



【内田会長】  お願いします。
 ほかはよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
 ありがとうございます。増額事由につきましても、この素案の方向性で最終案を固めるということで進めさせていただきます。
 時間が超過して申し訳ありませんが、最後の第3の「自主的避難等に係る損害について」に入ります。まずはこの項目についての説明を事務局からお願いいたします。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  第3の「自主的避難等に係る損害について」ですが、まず、柱書きですが、第一次追補第2、そして第二次追補第3を全面的に改訂する旨の柱書きです。この全面改訂することによって、対象区域や対象者も全部ここに記載しております。まず、自主的避難と対象区域は、対象となる市町村は第一次追補と同内容であります。備考1)ですが、第一次追補第1はじめにの必要部分を子供・妊婦以外の者の賠償期間を変更することも踏まえて、修正の上、記載しております。
 備考2)から4)は、第一次追補の自主的避難と対象区域の備考1)から3)を記載しております。この備考4)ですが、対象区域以外であっても、個別具体的な事情に応じて賠償の対象と認められ得るというふうにされており、実際、県南地域や宮城県丸森町の子供・妊婦の場合には、対象区域の半額、さらに子供・妊婦に関わらず、県南地域及び宮城県丸森町の全体に追加的費用4万円を自主的に賠償しているというふうに承知しております。
 対象者ですが、第一次追補の対象者の備考2)を、子供・妊婦以外の者の賠償期間を変更すること、計画的避難区域、特定避難勧奨地点についての相当線量地域健康不安に基礎を置く損害が賠償されることを踏まえての修正の上、記載しております。
 次に、損害項目にいきます。これ以降は、前回の論点整理で議論した内容を踏まえた記載となっております。
 指針のローマ数字1からローマ数字2は賠償すべき損害で、第一次追補同様です。
 指針のローマ数字3は損害額の算定です。第一次追補から子供・妊婦以外の者の賠償期間を変更することに伴う修正です。第一次追補で示しました目安の8万円を含めた、既に賠償されている額を控除できることも明記しております。
 指針のローマ数字4ですが、平成24年1月以降の取扱いで、これは第二次追補第3の記載を転記する形になっております。
 指針のローマ数字5、これは避難指示等対象区域の居住者の取扱いです。丸1として中間指針の精神的損害が賠償されていない期間の取扱い、丸2は中間指針の精神的損害が賠償されている期間に、自主的避難等対象区域に避難して滞在した場合の取扱いで、金額は子供・妊婦の半額を目安とすることは前回確認済みだと理解しております。
 備考1)から2)は、損害項目一括一定額の算定、そして避難実行者と滞在者を一律に扱う旨、これは第一次追補と同じ内容であります。
 備考3)、賠償の対象期間ですが、子供・妊婦以外の者の賠償対象期間を確定判決を踏まえて、残存する後続事故に対する不安と相まって生じる相当程度の複合的な恐怖・不安を抱いたことには相当な理由があるというふうに明記しています。平成23年12月に政府が事故そのものの収束を宣言したことにより、おおむね解消したとして、賠償期間は平成23年12月末までに変更する理由を明記しております。
 備考4)は損害額の算定であります。子供・妊婦につきましては、第一次追補と同様です。子供・妊婦以外の者については、確定判決では、子供・妊婦の場合の3分の1から2分の1程度であることも参考に算定というふうに明記しています。また、既賠償額を控除することについて、第一次追補で示した8万円は五次追補で一括して算定したものと重複するため控除することが妥当である旨と判断しました。
 備考5)は、平成24年1月以降の取扱いで、第二次追補第3の記載を転記しております。備考6)は、避難指示と対象区域等居住者の取扱いで、ここも第一次追補と同様です。備考7)ですが、指針に明記されていない損害でも、個別具体的事情に応じて賠償の対象や異なる損害額となり得る旨を明記しております。
 以上です。



【内田会長】  ありがとうございます。
 では、ただいま御説明がありました素案の内容について、御意見、御質問をお出しいただきたいと思います。
 その際、特に御確認をいただきたいと思います点が3つほどあります。
 まず第一に、第一次追補の第2とそれから第二次追補の第3を全面改訂して、その結果、自主的避難等対象区域と、それから対象者についても、これまでの追補の記述をそのまま書き下すとともに、2つの追補の記載を合体させた形になっております。まず、この点についての御確認をいただければと思います。
 それから2番目に、前回審査会で確認しましたとおり、自主的避難等対象区域は第一次追補のままとした上で、備考4)で、対象区域外の地域でも個別具体的な事情に応じて賠償の対象と認められ得るということを明記をいたしました。この点も御確認をいただければと思います。
 それから3つ目として、子供・妊婦以外のものについて、指針のローマ数字3、丸2の金額につきましては次回審議したいと思いますが、金額の導き方を含め、確定判決を踏まえた考え方について、これは既に前回の審査会で確認しておりますけれども、改めて御確認をいただければと思います。
 以上の点を含めまして、自由に御意見、御質問をお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 特に御意見はありませんでしょうか。
 江口委員、お願いします。



【江口委員】  今、会長のほうから指摘されました3点については、前回、それからそれ以前からも随分議論されてきたところだと思います。やはりこの改訂の仕方は、こういうふうに改訂することによって、やはり分かりやすさというのもとても大事だと思いますし、また区域の点、それから、さらに備考として4)が加わっている点、これについても十分妥当であるということが、もう既に確認されているとおりだと思っています。また、金額の考え方についても皆さんで確認したとおりだと思っておりますので、これであとは金額を決めるだけと思います。



【内田会長】  どうもありがとうございます。
 ほかには御意見ありませんでしょうか。
 古笛委員、お願いします。



【古笛委員】  前回に引き続いてなんですけれども、やっぱりこの件については多分いろんな御意見はあるんだろうなとは思いつつも、指針として検討させていただいた結果、こういう書き方で区域については従来どおりで、備考4)のところでなるべく問題がないよう対応するということで、運用で解決すべき問題なのかなと思っております。



【内田会長】  ありがとうございます。
 ほかには御意見、御質問ありませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、この素案の方向で最終的な金額を固めるべく、次回は最終案を御準備いただくということにしたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、一応一通り各項目について議論いたしましたが、既に終わった論点も含めまして、何か御意見や、あるいはほかの観点からの御意見等ございましたらお出しいただきたいと思いますが、何かありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 中田委員、お願いします。



【中田委員】  すいません、全体的なことなのですけれども。
 今回の指針による改訂の適用が、従来、既にADRがあったものを含めて、どのように遡って適用されるのかについては、これは恐らく指針の外の話なのかもしれないんですが、どのように対応されるおつもりなのかをお聞かせいただければと思います。



【内田会長】  これは全体にわたる御発言ですけれども、ここは遡って適用されるということだと思いますが、一応事務局からお願いできますか。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  当然遡って、新たに類型化されたものも含めて、効力を発揮されるというふうに理解しております。



【内田会長】  それをどういう形でアナウンスするかというのが中田委員の問題意識でしょうか。多分、指針の発表のときに説明はされるということですかね。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】  はい、その理解で結構です。



【内田会長】  それでよろしいでしょうか。



【中田委員】  そういうことだと思います。指針の中身として、言わば附則みたいなものの中に遡って適用されることを書くかどうかということと、実際にADRで既に和解をしている方にも適用されるということを何らかの形で明確にするという必要性と、両方、2段階あるのかなと思いました。



【内田会長】  ありがとうございます。そこは明確にするようにしたいと思いますし、判決が出ている場合についても、これまで議論を既にいたしましたけれども、それを踏まえた、何らかのアナウンス、利用者が利用しやすいように工夫をしていただきたいと思います。
 以上でよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
 今回、中間指針第五次追補の素案を基に、その具体的な内容について御議論いただきました。細かな点で修正等が必要な部分は、本日もいろいろ御意見をいただきましたので、あろうかと思います。この点については、次回までに修正をして、事務局のほうで修正案をつくっていただきたいと思います。
 ただ、全体としてこの素案について、大きな方向での特段の異論はなく、委員の皆様の間での認識はおおむね共有できたかと思います。したがいまして、次回は、細かな文言の修文はいたしますが、その上で、中間指針第五次追補の案を議題として出していただき、目安となる金額についても、次回、議論をして、結論を得た上で、最終的に本審査会として中間指針第五次追補を、できれば次回決定することを目指したいと思います。事務局におかれましては、今回いただいた各委員からの御意見を踏まえて素案を修正していただき第五次追補案を作成し、次回審査会に提出していただきますようお願いいたします。
 以上で議題の1は終わりです。
 続いて議題の2、その他となっておりますが、これは今回特に議題が設定されていないと聞いておりますので、本日の議事は以上になります。
 本日の審査会を通しまして、委員の皆様からほかに何か御発言ありましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 特にありませんでしょうか。 ありがとうございます。
 大変時間が超過してしまいましたけれども、本日の議事はこれで終了でございます。長時間にわたり熱心な御審議をいただきまして、ありがとうございました。
 最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】  事務局でございます。
 次回、第63回審査会につきましては、来週、12月20日火曜日を予定してございます。詳細につきましては、改めて御連絡をさせていただきます。
 また、本日の議事録につきましては、事務局でたたき台を作成し、委員の皆様方に御確認の上、準備が整い次第、ホームページへ掲載をさせていただきます。
 以上でございます。



【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日はこれにて閉会をいたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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研究開発局原子力損害賠償対策室

(研究開発局原子力損害賠償対策室)