原子力損害賠償紛争審査会(第56回) 議事録

1.日時

令和4年4月27日(水曜日)15時30分~17時00分

2.場所

文部科学省15階特別会議室及びオンライン

3.議題

  1. 判決が確定した損害賠償請求の集団訴訟を踏まえた今後の対応について
  2. その他

4.出席者

委員

内田会長、樫見会長代理、明石委員、織委員、鹿野委員、古笛委員、富田委員、中田委員、山本委員

文部科学省

高橋文部科学大臣政務官、真先研究開発局長、林原子力損害賠償対策室長、松浦原子力損害賠償対策室室長代理、川口原子力損害賠償対策室次長

5.議事録

【内田会長】 それでは、時間になりましたので、第56回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。
 本日は、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。オンラインで御参加の委員も、どうもありがとうございます。
 では初めに、事務局から報告事項があるとのことですので、報告をお願いいたします。それに続いて資料の確認をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】 事務局でございます。事務局から2点、報告いたします。
 まず、委員の退任について報告いたします。須藤委員におかれましては、御本人から退任の申出がございました。このため、3月31日付けで委員を退任されたところでございます。なお、後任の委員の人選については検討中でございます。
 次に、前回審査会以降の事務局の人事異動につきまして紹介させていただきます。
 大臣官房審議官(研究開発局担当)、また原子力損害賠償対策室長に林が着任してございます。



【林原子力損害賠償対策室長】 林でございます。どうぞよろしくお願いします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】 また、開発企画課長、また原子力損害賠償対策室室長代理に松浦が着任してございます。



【松浦原子力損害賠償対策室室長代理】 松浦です。よろしくお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】 続きまして、資料の確認でございます。オンラインで参加されている方につきましては、事前にお送りしてございますものを、また、会場で御参加されている方々につきましては、お手元の端末及びドッチファイルを御覧いただければと思います。資料は、議事次第に記載のとおりでございますが、資料に不備等ございましたら、議事の途中でも結構でございますので、事務局までお声がけをお願いいたします。
 また、オンラインで参加されている方につきましては、御発言の際には、端末の画面上にございます、反応又はリアクションのところから、「手を挙げる」というボタンがございますので、そちらを押していただけますと、会長などから御指名をさせていただくというところでございます。御発言いただく際にはミュートの解除をお願いいたします。発言が終わりましたら、その都度ミュートに戻していただきますようお願いいたします。
 なお、本日は、過半数以上の委員の皆様に御出席をいただいており、会議開催の要件を満たしておりますことをあらかじめ御報告させていただきます。



【内田会長】 ありがとうございました。
 本日は、高橋文部科学大臣政務官に御出席いただいておりますので、御挨拶をいただきたいと思います。高橋政務官、よろしくお願いいたします。



【高橋文部科学大臣政務官】 会長、ありがとうございます。ただいま御紹介いただきました大臣政務官の高橋でございます。よろしくお願いいたします。
 原子力損害賠償紛争審査会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 内田会長をはじめ、委員の皆様方におかれましては、これまでも賠償状況や被災地の実態の把握など、迅速、公平かつ適正に、被害者の方々が被られた損害の賠償が進むよう御尽力をいただいてきているところでございまして、心から感謝を申し上げます。3月には、なお御承知のとおり、東電の福島原発事故に伴う7件の集団訴訟に関し、最高裁が東電の上訴を認めず、東電の損害賠償額に係る部分の判決が確定したところであります。
 本日は、これらの判決確定を踏まえた今後の対応について御議論をいただくこととしているところでございます。委員の皆様方におかれましては、各判決の内容の分析を丁寧に行っていただきまして、それを踏まえて、中間指針の見直しなども含めた対応の要否について、中立かつ公正なお立場から、有意義な御議論をよろしくお願いを申し上げる次第であります。ありがとうございます。



【内田会長】 どうもありがとうございました。
 ここで、高橋政務官は所用のため御退席されます。



【高橋文部科学大臣政務官】 よろしくお願いいたします。
(高橋文部科学大臣政務官退席)



【内田会長】 それでは、議事に入ります。議題1は、判決が確定した損害賠償請求の集団訴訟を踏まえた今後の対応についてでございます。
 まずは、損害賠償請求の集団訴訟7件の確定判決につきまして、事務局から説明をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】 事務局でございます。まず集団訴訟の全体像、資料の構成等について説明いたします。
 本年3月、東京電力福島原子力発電所事故に伴います集団訴訟に関しまして、最高裁判所に上訴中であった7件のうち、東電の上訴が認められる東電の損害賠償額に係る部分、いわゆる損害論の部分の判決が確定したところでございます。全体で40件程度ございます集団訴訟のうち、今般判決が確定しました7件以外の案件は引き続き係属中ではございますが、先行案件における損害論に対する司法判断が確定したということになります。
 今回判決が確定した7件の損害論の内容について、事務局から御報告いたします。7件の内訳につきましては、国と東京電力を訴えた訴訟、以降「国賠案件」と呼ばせていただきますけれども、この国賠案件が4件、東京電力のみを訴えた訴訟、以降は「東電案件」と呼ばせていただきますが、この東電案件が3件というところでございます。これまで審査会におきましては、国賠案件の判決が出るたびに、判決の内容について事務局から説明を行ってきたところでございますが、口頭での簡単な御報告にとどめているというところでございますし、また東電案件につきましては、国が当事者ではない、一民間企業の係争中の案件ということでございまして、これまでは説明をしていなかったというところでございます。
 今回確定した7件につきましては、国賠案件、東電案件、いずれにつきましても、判決の概要をまとめた資料を事務局で用意してございます。こちらに基づき御説明、御報告をさせていただきたいと思います。
 また、判決正本でございますけれども、当事者の機微な情報が含まれているということから、従前の国賠案件の報告では机上配付という資料の扱いにさせていただいてございましたが、今回御報告いたしますものにつきましては、お手元の端末の資料1のところで御覧いただければと思いますが、ここに示しますように、裁判所のウェブサイト「裁判例検索」か、第一法規株式会社のデータベース「D1-Law.com」から取ってきているところでございます。いずれもマスキング等の加工が施されているところでございまして、また掲載元から公開の許諾も得ているところでございます。そういうこともありまして、公開の参考資料という形で御用意をしております。
 今回最高裁で確定いたしました7件に係る高裁判決及びその地裁判決、合わせて14件分の判決正本ということで、大部にわたりますため、会場の資料につきましては、参考資料2-1-1から2-2-7となってございますけれども、これをドッチファイルの形で、紙媒体で御用意しているところでございます。説明に関連するページには付箋をつけております。青色の付箋が貼ってあると思いますので、そちらを御利用いただければと思います。また、それ以外の資料は、電子媒体、iPadのほうに御用意してございます。オンライン御参加の委員は参考資料のPDFを御覧いただければと存じます。画面の左側に出ていますしおり機能、これはオンライン参加の方のみでございますけれども、関連ページをすぐ御参照いただけるようにしてございますので、そちらを御利用いただければと思います。
 なお、国賠案件においてでございますけれども、国の責任をめぐる争点につきましては、現在最高裁において審理中でございますが、本日御説明いたしますのは東京電力についての損害論の部分、その中でも特に精神的損害に関する部分となります。
 それでは、各判決の概要について御説明いたします。以下、高裁判決の日付に沿いまして、順に御説明いたします。
 まず1件目でございますが、令和2年3月12日に高裁判決が言い渡されました仙台高裁判決となります。資料につきましては、資料1-1、判決概要丸1という資料がございます。こちらを御覧いただければと思います。会場の皆さんは、iPadに資料がございますので、御確認いただければと思います。
 まず、事案全体の概要についてですけれども、1ポツ、第一審の概要の上から4段目、一審原告らの請求内容の概要を御覧ください。本件は、南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町、川内村等に居住していた216名の原告らが、本件事故により、財産的侵害を被ったほか、避難生活を余儀なくされ、また、地域社会が喪失・変容したことによって精神的損害を被ったと主張して、東電に対しまして精神的損害及び財産的損害の賠償を請求したものでございます。
 次に、判決内容につきましては、高裁分のみ御説明いたします。2ポツの控訴審の概要の上から4段目でございます。判決の概要、ここの部分を御覧いただければと思います。
 損害論につきまして、判決文につきましては24ページからとなってございます。
 本件におけます被侵害利益と慰謝料額の算定方法について、まず説明させていただきます。判決におきましては、原告らが主張する包括的平穏生活権の侵害による損害の評価に当たりまして、被告東電が避難期間に応じた賠償を行っていることを踏まえ、裁判所においても相当の避難期間に応じた慰謝料、避難生活の継続による慰謝料と言っていますが、これを算定するとともに、それでは評価し尽くせない損害についての慰謝料という形で、避難を余儀なくされた慰謝料、故郷の喪失又は変容による慰謝料という形について検討するのが合理的であるといたしまして、資料にございます丸1という形で、避難を余儀なくされた避難慰謝料、丸2、避難生活の継続による慰謝料、丸3、故郷の喪失又は変容による慰謝料、これらに分けました類型的な慰謝料を算定することとしております。
 慰謝料額について説明いたします。判決文では26ページからとなりますが、判決では、原則として、本件事故時の旧居住地ごとに、先ほど御説明いたしました丸1、丸2、丸3、この慰謝料に分けまして、四角の1番で書いてございますが、帰還困難区域並びに大熊町、双葉町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域につきまして、丸1で150万円、丸2で850万円、丸3で600万円、合計1,600万円。四角の2番でございます。双葉町、大熊町を除く旧居住制限区域又は避難指示解除準備区域につきまして、丸1が150万円、丸2が850万円、丸3が100万円、合計1,100万円。四角の3番、緊急時避難準備区域につきましては、丸1が70万円、丸2が180万円、丸3が50万円の合計300万円が相当であると判断を示すとともに、一部の原告につきましては、個人ごとの具体的事情を勘案いたしまして、別途算出するということになってございます。
 最後に、最高裁の判断について御説明差し上げます。ページは変わりまして、3ポツ、最高裁決定の概要、こちらを御覧いただければと思います。本件は東電案件でございます。東電側、原告側のいずれの上訴も認められず、判決全体が高裁判決どおりで確定という形になってございます。
 2件目以降同じように御説明を差し上げてまいりますが、時間の関係がございますので、どの欄を指し示すかにつきましては、一つ一つ私のほうからお示しはいたしませんので、御容赦いただければと思います。
 次、2件目でございますが、令和2年3月17日に高裁判決が言い渡されました東京高裁判決になります。資料1-2、判決概要丸2を御覧いただければと思います。
 まず、事案の概要につきましてですが、本件は、南相馬市小高区に居住していた335名の原告らが、本件事故によりまして、事故により生活の本拠を失い、従前の生活を送れなくなるなどの甚大な損害を被ったとして、東電に対して精神的損害の賠償のみを請求したものでございます。
 次に、高裁判決の内容となります。損害論につきましては、判決文では22ページからとなってございます。
 本件における被侵害利益と慰謝料額の算定方法について、まず御説明いたします。判決におきましては、本件事故により、原告らが平穏な日常生活を送る利益及び生活基盤に関する利益を侵害されており、それぞれの利益に係る損害は別個の損害であるということで、丸1、避難慰謝料、丸2、本件生活基盤変容に基づく慰謝料、この2つに分けまして、類型的な慰謝料を算定ということになってございます。なお、この算定につきまして、裁判所におきましては、本件請求は、原告らに共通する損害の賠償としての慰謝料請求、すなわち共通損害を超える個別の損害につき後に請求することを留保した一部請求であるという形で整理した上で、類型的な慰謝料額を算定したものであると位置付けているところでございます。
 次に、慰謝料額の部分でございます。判決文におきましては、33ページ以降からとなってございます。判決におきましては、原告らに共通する損害、いずれも旧居住地が南相馬市小高区の居住制限区域内の慰謝料といたしまして、丸1で850万円、丸2で100万円と算定した上で、一部の原告らにつきましては、生活の本拠が小高区にあったとは言えないということで、上記の丸2につきましては認めなかったというところでございます。
 最後に、最高裁の判断について御説明いたします。本件も東電案件でございます。東電側、原告側のいずれの上訴も認められず、判決全体が高裁判決どおりで確定したというものとなってございます。
 3件目でございます。令和2年9月30日に高裁判決が言い渡されました仙台高裁判決、いわゆる、「生業訴訟」でございます。資料1-3、判決概要の丸3を御覧いただければと思います。
 まず、事案全体の概要でございますが、本件は、福島県及び隣接県に居住していました3,864人の原告らが、本件事故により平穏生活権が侵害されたとして、国及び東電に対し精神的損害の賠償のみを請求したものでございます。
 次に、高裁判決の内容についてでございます。損害論につきましては、判決文は230ページからとなってございます。
 本件におけます被侵害利益と慰謝料額の算定方法について御説明いたします。判決では、一審原告らの主張する「ふるさと喪失」損害も、これを除いた平穏生活権侵害に基づく損害も、いずれも訴訟物は異ならないとして、旧居住地が帰還困難区域、旧居住制限区域又は旧避難指示解除準備区域である一審原告らにつきましては、「ふるさと喪失」損害及び平穏生活権侵害に基づく損害が認められるか、認められるとしてその額をいくらと評価すべきかということで判断をしているというものでございます。
 また、一律請求に係る考え方につきましては原判決と同様であるとした上で、一審原告らの旧居住地によって9つのグループに分けまして、それぞれのグループごとに、丸1、強制的に転居させられた点、括弧書きで書いてございますけど、避難を余儀なくされた点など、丸2、避難生活の継続を余儀なくされた点、丸3、ふるさと喪失、これら3つそれぞれの慰謝料額を別々に算定することとしたものでございます。
 次に、慰謝料額でございますけれども、判決文では370ページ以降となってございます。本件事故時の旧居住地ごとに、四角1番から四角9番までございますが、四角1番、帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域、これらにつきましては、丸1番で150万円、丸2番で850万円、丸3番で600万円の合計1,600万円。四角2番でございます。大熊町を除く旧居住制限区域につきましては、丸1番で150万円、丸2番で850万円、丸3番で150万円の合計1,150万円。四角3番、大熊町、双葉町を除く旧避難指示解除準備区域におきましては、丸1番で150万円、丸2で850万円、丸3で100万円の合計1,100万円。四角4番、旧緊急時避難準備区域につきましては、丸1番で100万円、丸2番で180万円の合計280万円。四角5番、南相馬市の旧特定避難勧奨地点につきましては、丸1番で50万円、丸2番で250万円又は490万円、合計しますと300万円又は540万円となってございます。四角6番、旧一時避難要請区域につきましては、丸1番で20万円、丸2番で60万円の合計80万円。四角7番、自主的避難等対象区域につきましては、子供及び妊婦か否かにより、丸1番で5万円又は15万円、丸2番で12万円又は36万円ということで、合計17万円又は51万円となっているというものでございます。四角8番、県南地域及び宮城県の丸森町につきましては、子供及び妊婦か否かによりまして、丸1番で3万円又は10万円、丸2番で10万円又は24万円、合計いたしますと13万円又は34万円となっているところでございます。四角9番のその他の地域につきましては、丸1、丸2を合わせまして、ゼロから11万円という形でございます。
 これら9つのグループに分けまして、慰謝料額を認めているというものでございます。
 その上で、中間指針等による賠償額を超えて、例えばADR等による増額の賠償を受けている者につきましては、その超える額を、各グループで認定いたしました慰謝料額のうち東電の自主賠償基準を超える額から控除しているというものでございます。
 最後に、最高裁の判断について御説明をいたします。本件は国賠案件でございます。国側の上訴のうち、責任論に関する部分だけ上訴が認められたというところでございますが、それ以外の部分は排除されております。また、東電側、原告側の上訴につきましては、東電の上訴に係る二重提訴の4名を除きまして、いずれも認められず、判決のうち損害論の部分が高裁判決どおりで確定をしたというところでございます。    
 4件目でございます。令和3年1月21日に高裁判決が言い渡されました東京高裁判決でございます。資料1-4、判決概要丸4番を御覧いただければと思います。
 まず、事案の概要についてでございます。本件は、福島県内に居住していた137名の原告らが、本件事故により平穏生活権を侵害され、群馬に避難を余儀なくされたとして、国及び東電に対し精神的損害の賠償のみを請求したものでございます。
 次に、高裁判決内容についてでございます。損害論につきましては、判決文では267ページからとなってございます。
 本件におけます被侵害利益と慰謝料額の算定方法につきましてですが、判決では、慰謝料の算定について、本件における被侵害利益は多様な利益が結びついた包括的な平穏生活権の侵害であることを前提に、避難指示区域等の区分などの避難前に居住していた地域や、子供又は妊婦であるか否かなどの避難者の属性を類型的な考慮要素としつつ、個々の一審原告らについて、従前の生活状況、避難の状況及び避難生活の状況等の具体的事情を考慮して、各人ごとに慰謝料額を算定するのが相当としているところでございます。
 慰謝料額につきましては、286ページからとなってございます。先ほど説明いたしました考え方に基づきまして、各原告の具体的事情を勘案し、算定しているというところでございます。なお、今回御報告してございますほかの判決とは異なりまして、本判決におきましては、避難を余儀なくされた点、避難の継続、ふるさと喪失などの慰謝料の性質を分けずに、一括して算定をしているというものでございます。
 最後に、最高裁の判断につきまして御説明をいたします。本件は国賠案件でございます。原告側の上訴のうち、国の責任論に関する部分だけは上訴が認められたというところでございましたが、それ以外の部分は排除されており、また東電側の上訴は認められず、判決のうち損害論の部分が高裁判決どおりで確定したというところでございます。
 5件目でございます。令和3年1月26日に高裁判決が言い渡されました仙台高裁判決、いわゆる「中通り訴訟」でございます。資料1-5、判決概要丸5を御覧ください。
 まず、事案の概要についてでございます。本件は、福島県中通り地域に居住してございました52名の原告らが、東電に対し、精神的損害及び財産的損害の賠償を請求したものでございます。
 次に、高裁判決内容についてでございます。損害論につきましては、判決文では18ページからとなってございます。
 本件におけます被侵害利益と慰謝料額の算定方法について説明いたします。判決では、自主的避難等対象区域に居住していた原告らについて、放射線被ばくに対する恐怖や不安により、平成23年3月11日から同年12月31日までの期間に被った精神的苦痛については、社会生活上受忍限度を超えて法律上保護される利益が侵害されたものと評価するのが相当であるとした上で、各自の生活状況等により精神的苦痛等の損害の生じる態様に差異があるとしても、精神的損害の根幹部分は共通するものであって、生活状況等の違いにより大きな差が生ずるものとは評価できないといたしました。
 次に、慰謝料額でございます。判決文では32ページからとなってございます。
 判決におきましては、損害が基本的に共通するという性質を考慮した上でも、なお異なる損害を算定すべきであると言えるような特別の事情が、各原告の被害状況において認められない限り、原告1人当たり30万円が相当であると認定してございます。最終的には、各原告の具体的な被害状況を見た上で、さきの慰謝料額とは異なる額を認めるべき特別な事情は認められないといたしまして、一律30万円の慰謝料を認めるのが相当としたところでございます。
 最後に、最高裁の判断について御説明いたします。本件は東電案件でございます。東電側のみが上訴しておりましたが、認められず、判決全体が高裁判決どおりで確定をしたというところでございます。
 6件目でございます。令和3年2月19日に高裁判決が言い渡されました東京高裁判決となります。資料1-6、判決概要丸6番を御覧ください。
 まず、事案の概要についてでございます。本件は、福島県に居住していた45名の原告らが、本件事故により千葉県内への避難を余儀なくされたとして、国及び東電に対し、精神的損害及び財産的損害の賠償を請求したものでございます。
 次に、高裁判決の内容についてでございます。損害論につきましては、判決文では162ページからとなってございます。
 本件におけます被侵害利益と慰謝料額の算定方法について御説明いたします。丸1にございますとおり、判決では、本件の精神的損害に対する賠償について、避難生活に伴う精神的苦痛に対する賠償、避難生活に伴う精神的損害以外の精神的苦痛に対する賠償、これを認めまして、これらを分けて算定するということにしたところでございます。なお、原告らがふるさと喪失慰謝料として一律2,000万円を請求する旨の主張、これにつきましては精神的損害の要素を、さきのとおり捉えることによりまして、生活環境に関する法的利益の保護は必要かつ十分に実現できるといたした上で、個別具体的な事情を捨象し一律の金額の慰謝料を認めるべきであるとする点において失当であるといたしまして、同主張を採用しなかったというものでございます。
 丸2にありますとおり、避難生活に伴う精神的苦痛につきましては、避難生活の継続に従って増加するというものであり、慰謝料額は基本的に月額10万円、発生期間は本件事故当時の居住地ごとに異なるといたしまして、帰還困難区域、旧居住制限区域等の区域ごとの終期の目安を示した上で、最終的な慰謝料額については、世帯ごとに具体的事情を勘案しながら算定しているというものでございます。
 最後に、最高裁の判断の部分について御説明いたします。本件は国賠案件でございます。国側の上訴のうち、責任論に関する部分だけ上訴が認められたところでございますが、それ以外の部分につきましては排除されたところでございまして、また、東電側、原告側の上訴はいずれも認められず、判決のうち損害論の部分が高裁判決どおりで確定したというところでございます。
 最後、7件目でございます。令和3年9月29日に高裁判決が言い渡されました高松高裁判決でございます。資料1-7、判決概要丸7番を御覧ください。
 まず、事案の概要についてでございます。本件は、福島県内に居住していました25名の原告らが、本件事故により愛媛県への避難を余儀なくされたといたしまして、国及び東電に対し、精神的損害の賠償のみを請求したものでございます。
 次に、高裁判決内容についてでございます。損害論につきましては、判決文では467ページからとなってございます。
 本件におけます被侵害利益と慰謝料額の算定方法についてでございますが、判決では、いずれの原告らも包括的生活利益としての平穏生活権を侵害されたものと認めた上で、その居住地ごとに、丸1番、強制的な避難を余儀なくされたこと等に対する避難慰謝料、丸2番、避難生活の継続を余儀なくされたことに対する避難継続慰謝料、丸3番、実質的に故郷を喪失したことに対する故郷喪失慰謝料、この3つに分けまして、類型的な慰謝料額を示した上で、最終的には世帯ごとの具体的事情を勘案して算出するということとしたものでございます。
 慰謝料額についてでございますが、判決文では596ページ以降となってございます。区域ごとの類型的な慰謝料額といたしまして、先ほど説明いたしました丸1、丸2、丸3の慰謝料について、四角1番の旧避難指示解除準備区域におきましては、丸1番、200万円、丸2番、1,020万円、丸3番、100万円の合計1,320万円。四角2番、旧緊急時避難準備区域におきましては、丸1番、150万円、丸2番、216万円の合計366万円。四角3番の自主的避難等対象区域におきましては、丸1番、原則10万円、子供及び妊婦については20万円、丸2番、原則60万円、子供及び妊婦については126万円といたしまして、合計しまして、70万円又は146万円としているところでございます。
 最後、コメ書きで書いてございますが、旧緊急時避難準備区域及び自主的避難等対象区域における、丸3番、これは故郷喪失慰謝料でございます。これの発生は認められないとしているところでございます。
 最後に最高裁の判断について御説明をいたします。本件は国賠案件でございます。国側の上訴のうち、責任論に関する部分だけは上訴が認められたところですけれども、それ以外の部分につきましては排除されたところでございます。また、東電側、原告側の上訴はいずれも認められず、判決のうち、損害論の部分が高裁判決どおりで確定したというものでございます。
 以上が7件の判決の概要となってございます。
 なお、参考3、地方公共団体や訴訟関係者等からの主な要望事項といたしまして、判決の確定を受けての対応に係る要望が審査会宛てに寄せられているところでございます。具体的な要望内容の概要につきましては、1ポツ、最高裁判所の決定を受けての対応というところに幾つか書いてございますので、これを御覧いただければと思います。
 それ以外の項目の要望もいただいておりまして、それも参考3に記載させていただいてございますけれども、この部分につきましても詳細な説明は割愛させていただきたいと思っているところでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。



【内田会長】 どうもありがとうございました。7件に及ぶ、しかも、一つ一つが大変浩瀚な、分厚い判決ですけれども、これを大変要領よくまとめていただきました。どうもありがとうございます。この確定判決を踏まえた対応につきまして、具体的に御議論いただくわけですが、その前に、ただいま御報告のありました確定判決7件の概要に関する事実関係につきまして、御質問がありましたらお受けしたいと思います。何かありますでしょうか。
 御説明の内容、事実関係についての御質問ございますでしょうか。特にありませんでしょうか。
 それでは、次に、確定判決を踏まえた対応について御議論いただきたいと思います。まずは事務局から説明をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】 事務局でございます。今度はお手元の資料2を御覧いただければと思います。端末を御覧になる場合は、通し番号13ページ目になってございますけれども、お手元の資料2を御覧いただければと思います。
 判決に係る調査・分析についてということでございまして、(案)となっているものでございます。
 まず1ポツの調査・分析の必要性でございますけれども、東電福島原発事故に伴います損害賠償請求の集団訴訟につきまして、東京電力の損害賠償額に係る部分の判決が確定したということを踏まえまして、中間指針や各追補、いわゆる中間指針等と、この見直しも含めました対応の要否について検討を行っていくに当たりまして、先ほど概要を御説明いたしましたが、各判決等の内容を詳細に調査・分析する必要があると考えてございます。
 そのため、原子力損害賠償紛争審査会の組織等に関する政令第4条に基づきまして、専門委員を任命して、調査・分析を行ってはどうかと、事務局としては考えているというものでございます。
 次に、2ポツ、調査・分析事項。この部分につきましては、次のページにある別紙の観点から調査・分析を行うということで書いてございますが、この部分の御説明は最後にさせていただきたいと思います。
 そして、3ポツでございます。調査・分析を行う専門委員の選任の考え方等でございます。1つ目の丸にありますとおり、判決等の調査・分析を行うというものでございますので、裁判官経験者、弁護士を含みます法律の学識経験者から数名を選任してはどうかというものでございます。
 また、2つ目の丸にありますとおり、今回、中間指針等の見直しも含めた対応の要否について検討を行うという上で、中間指針等の策定経緯、これに知見のある者からも選任してはどうかというものでございます。また、コメ書きで記載してございますけれども、必要に応じまして、審査会の委員にも御参画いただくことも一案ではないかと考えているところでございます。
 最後に4ポツ、今後のスケジュールというところでございます。1つ目の丸にありますとおり、今回、審査会に調査・分析についての方針、これにつきまして御承認いただけたという場合は、事務局において速やかに専門委員の選任及び発令手続を開始したいと考えているところでございます。
 また、2つ目の丸にありますとおり、専門委員による調査・分析につきましては、その結果が一定程度得られた都度、審査会に御報告するということとしたいと思います。その際、必要に応じまして、専門委員は審査会の場において説明を行う場合もあるかと考えているところでございます。
 その上で、途中飛ばしましたけれども、2ポツ、調査・分析事項のところで、別紙というところになってございます。次のページになってまいりますが、別紙の調査・分析に当たっての観点、ここにつきまして御説明したいと思います。今、事務局のほうで幾つか案を提示しているというものでございます。
 1つ目の丸、中間指針等の内容についての評価がどうなっているか。一部これまでの審査会において確認したものもございますけれども、7件の判決においてどのように評価されているかというところでございます。
 2つ目の丸、中間指針等には示されていない類型化が可能な損害項目や賠償額の算定方法等の新しい考え方が示されているか。
 3つ目の丸でございます。係属中の後続の訴訟における損害額の認定から影響を受けるような要素を有している可能性があるか。要するに、今後、約30件ございます後続案件の判決がなされた場合におきまして、その結果がこれから審査会において行われる検討に影響を与えるような要素があるかということでございます。これらの調査・分析などの観点につきましては、委員皆様からの御意見をいただければと考えているところでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。



【内田会長】 ありがとうございます。ただいま事務局から説明がありましたとおり、専門委員を任命して、各判決の調査・分析を行うこととしてはどうかという御提案がございました。また、その調査・分析に当たっての観点、どういう点についての調査・分析をお願いするかという点についても御提案がございました。
 これらにつきまして、委員の皆様からの御質問、御意見をいただきたいと思います。どの点からでも結構ですが、御発言ありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。古笛委員、どうぞ。



【古笛委員】 実務の立場からですが、この7件の最高裁判決が出たというところで専門委員に分析していただくということに大賛成です。この結論だけを見ても、前提となっている事実関係がどうなっているのか、中間指針そのものについてどういうアプローチをしているのかということをきちんと分析していただくことが今後の審査会の在り方にも大いに役に立つと思いますし、それにはまた審査会の委員も参画させていただくということでお願いできたらと思います。



【内田会長】 どうもありがとうございます。
 ほかに。織委員、お願いします。



【織委員】 ありがとうございます。私も全く、専門委員を立ち上げることについては賛成でございます。特に中間指針の評価がそれぞれの高裁判決でどのようになってきたのか、それをどの程度考慮しなければならないのかということはすごく重要な分析になってくるかと思います。一方、気になるのは、この委員会を立ち上げて、調査・分析をしていただくにしても、スケジュール感というのがどういうふうになっていくのかというのは多分、被害者の方も気になってくるところだと思いますので、今のお話だけだと、全体のスケジュール感、進み方みたいなものが少し見えてこないので、その辺も御教示いただければと思います。



【内田会長】 この審査会からお願いするということになりますので、スケジュールについても、我々がどう考えるかということになると思いますが、この点について何か御意見ございますでしょうか。



【織委員】 かなり難しいところではあると思うんですけど、迅速にある程度、要望書もかなり出ていますが、一方で早くやればいいのかということになると、逆に勇み足になってしまっても困ってしまうというところなので、夏ぐらいまでには目安がつけば、ほかの方たちも安心するのではないかという、相場観的に私はそんな感じがしております。



【内田会長】 ありがとうございます。
 ほかに御発言ございますでしょうか。鹿野委員お願いします。



【鹿野委員】 鹿野です。ありがとうございます。結論から言うと、私も御提案に賛成でございます。ついでに言葉を補足しますと、まず、中間指針は従来から賠償額の上限を定めるという趣旨のものではなく、ここに掲げられた以外の損害であってもそれぞれの事案において、相当因果関係があると認められるものについては賠償の対象になり得るという考え方を一貫して取ってきたものと思われますので、その意味では、今回確定した裁判所の判断との関係で、中間指針が矛盾しているというようなことではないと個人的には思っているところです。
 しかしながら、中間指針等は、多数の被害者に共通する損害について、賠償の考え方を示すことによって、原発事故による損害賠償紛争の迅速かつ公平、適正な解決と被害回復の実現を目指したものであると思います。したがって、今回確定した裁判所の判断の中から、いまだ中間指針には示されていない損害項目等について類型化して、賠償についての基準を抽出することができるものがあるのであれば、それを中間指針に取り込んでいくということが、中間指針の基本的な趣旨に合致するものと思われます。
 したがって、専門委員を任命して、判決の調査・分析を行っていただくということに賛成であります。より具体的に、これらの判決の中には、先ほど事務局から御説明いただきましたように、例えばふるさと喪失、変容による慰謝料や、避難を余儀なくされたことや、避難生活の継続を余儀なくされたことによる慰謝料などについての判断も含まれており、これらに関してどこまで類型化して基準の抽出ができるのかということについては、ぜひ分析する必要があると思います。
 もっとも、これも先ほどの御説明の中にあったところですが、確定した7件の判決では、その内容に違いも見られることから、分析作業においては各判決の違いをどのように見るのか。その違いを超えた共通項の括りだしというのがどのような形で可能なのかということに、もちろん留意する必要があるものと思います。ですが、そのような点に留意しながらも、ぜひ類型的な賠償基準の抽出について積極的に検討していただきたいと思っております。
 それから、あと一つだけ付け加えますと、スケジュール感については私もとても気になるところでございます。先ほど織委員からもありましたが、夏までにきちんと分析結果が出せるかというと、この大部の判決ですから、なかなか難しいところがあるのかもしれませんけれども、途中であっても、夏ぐらいには一度御報告をいただきたい。中間報告という形であっても、そういう御報告をいただければと思っているところです。
 以上です。



【内田会長】 どうもありがとうございます。
 ほかに御発言ありますでしょうか。山本委員、どうぞ。



【山本委員】 専門委員を選任して、調査・分析を詳細に行っていただくことについては賛成であります。私からは手続法の観点から、2点、コメントさせていただきたいと思いますが、まず第1に、今回の最高裁の判断というのは、私の理解する限りは、上告棄却の判断と、上告不受理の決定の判断ということだと思います。上告棄却というのは今でも原判決が憲法等に違反していないという点が問題になるにとどまって、法律の解釈適用についての判断では、基本的にはないということなんだろうと思います。
 また、上告不受理というのも、結局、その判断、原判決については、法律の解釈、適用に関する重要な問題が含まれていないという判断にとどまるものでありまして、これも原判決の内容の当否についての判断では必ずしもないということであろうかと思います。
 そういう意味では、今回の最高裁の判断というのは、原判決についての最高裁の何らかの判断といいますか、当否についての判断というのは基本的には含まれていないということなんだろうと思います。これが第1点です。
 第2点は、とはいえ、原判決、複数の高裁判決が確定したということは、中間指針等、あるいはADRの機能との関係では、やはり一定のインプリケーションを持つだろうと思います。言うまでもなく、この中間指針、あるいはADRの機能というのは、訴訟、判決に至らずに、簡易、迅速、廉価に被害者を救済するとともに、公平な形での被害者救済というものを図るということが主たる目的なんだろうと思っています。
 そういう意味では、最終的な判決結果と、この中間指針と、あるいはADRを含んだ解決との間の乖離、結果の乖離ということが仮に大きくなるとすれば、それはやはり一定程度、中間指針等あるいはADRの機能に影響をするということになるんだろうと思います。判決によったほうがより大きな救済、多額の賠償が得られると。多くの被害者にとって、そのような結果になるような判断がされるとすれば、結果として訴訟による解決に、被害者を向けることになるわけでありまして、その結果として、中間指針あるいはADRによる簡易、迅速、廉価な解決が阻害されるおそれがある。多くの人が結局、訴訟によらざるを得ないということになると、そこが問題になると思いますし、また、訴訟を提起した者だけにより多額の救済がなされるとすれば、それは当然のことながら被害者間の公平な救済というものが阻害されるおそれがあるということになってくるんだろうと思います。
 そういう意味では、中間指針等との関係で、今回の幾つかの判決というのが多くの被害者に対して類型的に異なる解決結果になるような判断なのかどうかということを見極めていただく必要があるのかと思っています。
 ただ、今回の判決は、7つの判決ですが、これ以外にもかなり多数の訴訟が係属しているという先ほどのお話がございましたので、これだけでそういう見極めをしていいのかどうかということも問題になるのかと思っておりまして、そういう意味では、先ほど鹿野委員からの御指摘がありましたけれども、夏までに、何か最終的な結論が出るようなことになるのかどうかというのは私自身も分からないところでありますけれども、ぜひそういう専門的な見地からの検討、分析というのは進めていただきたいと思います。
 私から以上です。



【内田会長】 どうもありがとうございました。それでは、樫見委員、どうぞお願いいたします。



【樫見会長代理】 判決に係る調査・分析については、事務局から提案された御提案については賛成でございます。そして、検討の視点につきまして、先ほどお二方から御意見があったのですが、重複する部分がありましたらお許しいただきたいと思います。
 まず一つは、今回は原告の方が様々な主張、立証をなさって、判決額、特に慰謝料額でございますけれども、認められたわけであります。これまで中間指針を中心としまして、指針の額では十分ではないとお考えの被害者の方々が、原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解というADRを利用された方がいらっしゃいます。具体的な認定に基づいた賠償額を求めるという点で言えば、今回の検討の中に、原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解事例における賠償額についても検討の中に加えていただけたらと思います。これが第1点です。
 もう1点は、裁判所の判決は、通例はやはり訴訟提起された原告の方々に判決の効力を及ぼすということが原則でございます。そういたしますと、今回の判決を受けて、ほかの被害者の方々にどのような影響を与えるのか。この点、御提案いただいた3つ目の丸、係属中の後続の訴訟における損害額の認定から影響を受けるような要素、この点についての調査があると必要性を述べられているのですが、この点についても併せて御検討いただければと考えております。
 以上でございます。



【内田会長】 どうもありがとうございます。それでは、続いて中田委員、お願いいたします。



【中田委員】 私も専門委員に調査・分析をお願いすることは賛成です。つきましては、3つほど希望があります。
1つは、高裁判決と中間指針の基準との関係を正確に分析していただくことです。山本委員も御指摘された手続法上のことは私もよく理解しておりますけれども、やはり7件の高裁判決が確定したということは重いと思います。専門委員におかれましては、その際に、判決の認める損害の類型、あるいは損害額の基準が中間指針とどこが一致し、どこが異なっているのか。それはなぜなのかを正確に分析していただければと思います。
 2番目は、何人かの委員がおっしゃったことですけれども、スケジュールに関しまして、調査・分析がある程度まとまるよりも前に、ごく早い段階で、実際に調査・分析に着手されて判明した課題などを審査会のほうにお示しいただければと思います。
 その課題について審査会で検討することによって、作業全体の効率化が図られるのではないかと思います。確定的なものをできるだけ早くというのは、それはそうなんですけれども、しかし、なかなか時間もかかるでしょうから、早い時期に着手についての報告をしていただければと思います。
 それから、3点目ですけれども、これは直接の委嘱事項ではないかもしれませんけれども、もし中間指針の見直しをするとすれば、その実施に当たって、解決すべき課題がでてくると思うのですが、それについてお気づきの点があればお示しいただければと思います。
 いろいろな技術的な課題があると思うんですけれども、それをあらかじめお示しいただくことは、審査会でその後の検討を進める上で有益ではないかと思います。



【内田会長】 どうもありがとうございました。
 各委員から貴重な御指摘をいただいております。ほかに御発言ございますでしょうか。織委員、どうぞ。



【織委員】 私は、先ほどスケジュール感の話をさせていただきました。今、内容が専門委員にどのような分析をお願いするかということに移ってきていると思いますので、その点に関して、先ほどから皆さんがおっしゃっているように、この中間指針の法的性質というものは、あくまでも当事者の紛争に資する指針ということを考えていきますと、この最高裁の判決を受けて、では、直ちに見直すかということには決してならないとは思います。
 ただ、そうはいっても、実際に最高裁の判決において、より高額な額が示されれば、それはやはり地元の方としては、訴訟のほうに行きたいという気持ちになってしまうと思います。ですから、私たちの中で、法的な理論もそうなんですけれども、高裁の判決の中で、どのような点が地元の方たちの気持ちに沿っている部分、くみ上げているのかという、そういった視点での分析もぜひ入れていっていただきたいと思います。
 個々的な事案というのはそれぞれ異なっていますし、その法律論というのを超えて、何が地元の人たちの気持ちに沿っていて、どこが、私たちが高裁判決の中で考慮に値するものかどうかという、そういったことを見せていただくことが中間指針の見直し、地元の方の気持ちに沿った中間指針の見直しというところにもつながっていくと思いますので、少し法律論から離れるかもしれないんですけども、ぜひそういった観点での分析も入れていただければと思います。



【内田会長】 どうもありがとうございます。
 富田委員、お願いいたします。



【富田委員】 まず、スケジュール感の点については、特にADRの立場からは、今後こういった申立てが、確定した高裁判決に基づく申立てが続々来るかもしれないという問題があります。そういう意味では、従前の中間指針のままでいいのか、それともやっぱり改定すべきということになるのか、そして、改定するにしても、どうやっていくのかについて、段階を踏んで検討することが必要ではないかと思います。いずれにしても、あんまり長くかかっていると、ADRとして、なかなか仕事が円滑にいかなくなるという点は危惧されますので、なるべく早く決める方がいいということは間違いないと思います。
 それから、既にお話がありますように、調査分析していただくと、特に、避難慰謝料について、ふるさと喪失とかと分けないで判断し個別にかなり額の差がある判決と、一定の類型でふるさと喪失とかいったようなものを正面から認めている判決とでは、恐らく共通項がないんじゃないかということが想像されます。その辺りを分析した上で、中間指針の在り方から見て、じゃあ、どういう方針で額を検討するのかという点は、途中である程度審査会から方針を示していかないと、分析することもなかなか困難ではないかと考えられます。
 そういう意味で、調査の途中で、今どういう問題があるかを審査会に報告していただいて、そこをどういう方向でやっていただくかというところを審査会が示していくことが、やはり大事になるのかとも思っております。
 我々のほうも、よくよく見た上でそれに備えていきたいとは思いますが、早急に調査分析を開始していただいて、そこで出てきた問題を随時報告していただくということが必要と思っております。
 以上でございます。



【内田会長】 どうもありがとうございます。それでは、明石委員、お願いいたします。



【明石委員】 明石でございます。私は法律の専門家ではないので、少し別の視点から発言させていただければと思うんですが、先ほど山本先生のお話の中で、裁判というのは、裁判を起こした者に適用されることである判決は、そこに適用されるものであるというふうに先生が言われて、そういうふうなことであれば、もし法律の専門家でなければ、この裁判の例だけから中間指針を見直すことでは、漏れる人たち、つまり裁判を起こしてない人たちの意見は含まれないんじゃないかという意見は、多分出てくるような気がいたします。
 そうすると、この裁判の判決というのを一つの例に取って、この中から問題点を抽出するという視点と、それから、この裁判の内容だけから当てはめるのではなくて、サンプルとして、この中から中間指針に取り入れるべきこと、欠けていること、それから修正するべきところという視点で、この専門委員の先生方が、そういう視点を中心に意見を出していただくというのでないと、やはり裁判を起こした人たちだけの考え方に、凝り固まるという言い方はおかしいですけれども、引っ張られてしまうような気がするので、ぜひそういう視点を強く持っていただく専門委員の提案というか、報告にしていただければいいのかなと、私は専門家ではないので、自分が住民だったらどうかなということで発言をさせていただきました。



【内田会長】 どうもありがとうございます。
 ほかには御発言ございますでしょうか。古笛委員、お願いいたします。



【古笛委員】 専門委員にお願いしたいといろいろ御意見が出ているので、実務家の立場からです。原発の世界ではないんですが、交通事故の世界でもよく似たような問題はあって、交通事故だと、自賠責基準、任意基準、裁判基準と、いろんな基準があると言われています。
 したがって、裁判所が一事案について判断をしたとき、それが全ての示談の事案に当てはまるというわけではないけれども、だからといって示談の場合に、あまりにも裁判と乖離し過ぎているというのはよろしくないのではないかという問題もあるので、今回、専門委員の先生方にお願いするとしたならば、損害賠償という意味で広く、この7件、ほかにもたくさんあるので7件で尽きるものではないんですけれども、そういった視点からも分析していただいて、それを踏まえて審査委員会でもいろいろ検討できたらいいなと思っております。



【内田会長】 どうもありがとうございました。
 専門委員にお願いする検討のスケジュール感、そして何をお願いするかということを含めて、様々重要な御指摘をいただきました。
 ほかに、加えて御指摘いただくことはございますでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございます。
 それでは、ただいまの御議論を踏まえますと、事務局から提案がありました、まず専門委員を任命して、各判決の調査分析をしていただくということについては、皆さん、おおむね御異議がなかったと思いますが、それでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。それでは、専門委員を任命するということにしたいと思います。事務局においては、速やかに専門委員の選任及び発令の手続を進めていただければと思います。



【川口原子力損害賠償対策室次長】 事務局でございます。承知いたしました。
 具体的な人選などにつきましては、会長とも御相談しつつ、発令手続を進めていきたいと考えてございます。



【内田会長】 では、よろしくお願いいたします。なかなか負担の大きな委員になりますけれども、できるだけ優れた法律の専門家の方にお引受けいただけるように努力をしたいと思います。
 それから次に、資料2の別紙にありました、判決の調査・分析に当たっての観点の案が示されていたわけですが、この点につきましても、皆様から様々な御指摘をいただきました。ただいまいただきました御指摘を適宜反映して、何をお願いするかという点について修正をしていきたいと思いますけれども、この修正につきましては、大変恐縮ですが、会長の私に御一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。御発言いただきました点をなるべく織り込んだ形で専門委員にお伝えできるように修正をしたいと思います。それでは、以上のような形で進めたいと思います。
 議題1は以上でございますが、特に何か議題1につきまして御発言ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 次が、議題2のその他となっているのですが、今日は、特にこの議題2の内容というのが設定されていないと聞いておりますので、本日の議事は以上になります。
 最後に、本日の審査会を通しまして、委員の皆様から何か御発言ございましたら、いただきたいと思います。何かございますでしょうか。
 特にありませんでしょうか。
 それでは、今日御指摘いただきましたような点を留意しながら、専門委員を任命し、調査検討をお願いするということにしたいと思います。
 そしてスケジュールにつきましても、いきなり最終的な報告を求めるというのはなかなか難しいであろうということで、おおむね皆様の御意見として、夏ぐらいをめどに中間的な報告をしていただく。もちろん、それより早くてもいいわけですが、何といっても大部の判決ですので、どのような事実、証拠を基に、各原告についてどのような損害額が認定されているかということを精密に検討し、かつ、中間指針の考え方と比較をし、ということになりますと、なかなかそう簡単にはいかないかと思いますので、希望としては、夏ぐらいをめどに中間的な報告をしていただいて、審査会で検討の結果、議論の結果をまたフィードバックをして、最終報告に向けて調査分析を続けていただくと、そういった感じかなと受け取りましたが、よろしいでしょうか。そういう方向で専門委員にお願いをするということを考えたいと思います。
 それでは、本日の議事は以上でございます。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。



【川口原子力損害賠償対策室次長】 事務局でございます。
 まず、本日の御議論、一部音声の不良等もございまして、会場の皆様そして傍聴の皆様、一部聞き取れなかった部分があったと思います。大変申し訳ございません。
 その上で、次回の開催でございます。これにつきましては、改めて御連絡させていただきたいと考えているところでございます。そして、議事録につきましては、まず事務局でたたき台を作成いたしまして、委員の皆様などに御確認をいただいた上で、次回開催までにホームページに掲載をさせていただきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。



【内田会長】 ありがとうございます。
 次回というのは、専門委員の中間的な報告がいただけるようなタイミングになったところでというのが、一つ考えられる候補でしょうか。



【川口原子力損害賠償対策室次長】 そうなるかと思います。



【内田会長】 分かりました。それでは、そのように進めていただければと思います。
 以上で、本日の審議は終了でございます。大変お忙しいところ、充実した審議をいただきましてありがとうございました。
 本日は、これにて閉会いたします。
 
―― 了 ――
 

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