原子力損害賠償紛争審査会(第53回) 議事録

1.日時

令和3年2月8日(月曜日)14時30分~16時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. これまでの賠償の状況及び今後の対応について
  2. 住居確保損害に係る福島県都市部の平均宅地単価の取扱いについて
  3. 被災地の動向等について
  4. その他

4.出席者

委員

鎌田会長、大塚会長代理、明石委員、内田委員、織委員、樫見委員、須藤委員、中田委員

文部科学省

高橋文部科学副大臣、生川研究開発局長、堀内原子力損害賠償対策室長、永井原子力損害賠償対策室室長代理、井出原子力損害賠償対策室次長

オブザーバー

【説明者】
大倉東京電力ホールディングス株式会社福島復興本社代表、弓岡東京電力ホールディングス株式会社福島原子力補償相談室長、古谷原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)室長、辻本内閣府原子力被災者生活支援チーム総括参事官

5.議事録

【鎌田会長】  予定の時間になりましたので、第53回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。
 本日は、お忙しいところを、会場またはウェブ上で御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、高橋文部科学副大臣に御出席いただいておりますので、高橋副大臣から御挨拶をいただきたいと思います。
 高橋副大臣、よろしくお願いいたします。




【高橋文部科学副大臣】  開会に当たり、一言、御挨拶申し上げます。
 来月で東電福島原発事故から10年ですが、被害の規模や範囲が未曽有だった事故によって、日常生活が大きな変容を強いられ、被害者の皆様にとっては本当に御苦労の絶えない10年間であったと思います。
 そのような中、原子力損害賠償紛争審査会の委員の先生方には、迅速、公平かつ適切に、被害者の方々が被った損害の賠償が進むよう、賠償状況や被災地の実態のフォローアップに御尽力をいただき、感謝申し上げます。
 昨年12月、私も、福島県の原子力損害対策協議会から御要望をいただき、県の実情についてお話を伺いました。被害者の方々や地域の実情を踏まえた賠償、消滅時効に関する対応などについて、その強い思いを受け止めさせていただきました。文部科学省としては、こうしたことも踏まえ、引き続き被害者の方々に寄り添いながら、迅速な賠償が進むよう、しっかりと取り組んでまいります。
 本日は、これまでの本審査会やADRセンター、東京電力による取組と、今後の対応方針についての報告、住宅確保損害に係る宅地単価の取扱いに関する御審議等がなされると伺っております。先生方におかれましては、有意義な御議論をどうぞよろしくお願い申し上げます。




【鎌田会長】  高橋副大臣、ありがとうございました。
 それでは、初めに、事務局より資料等の確認をお願いいたします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  私、文部科学省原子力損害賠償対策室の次長をしています井出と申します。よろしくお願いいたします。
 まず、文科省の人事異動がございましたので、紹介させていただきます。
 本年1月18日付で、研究開発局原子力損害賠償紛争和解仲介室の室長に古谷が着任いたしました。よろしくお願いいたします。




【古谷原子力損害賠償紛争和解仲介室室長】  このたび、室長に着任いたしました古谷でございます。一生懸命やっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  続きまして、資料の確認ですが、今回、審査会、ウェブ上での開催のため、事前に資料を一式にてお送りをしています。
 本日、過半数の委員の皆様に御出席をいただいております。会議開催の要件を満たしておりますことを、あらかじめ御報告させていただきます。
 以上でございます。




【鎌田会長】  それでは、議題の1番に入ります。
 これまでの賠償の状況及び今後の対応について、まず1つ目の東京電力による賠償の現状及び今後の対応について、東京電力ホールディングス株式会社より御説明をお願いいたします。
 今回は、事故後、本年3月で10年という節目を迎え、改めて今後の方針などについてお話しいただくということで、東京電力ホールディングスの大倉福島復興本社代表に御出席いただいておりますので、よろしくお願いいたします。また、詳細につきましては、弓岡室長から続いて御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。




【大倉代表】  東京電力ホールディングス福島復興本社代表の大倉でございます。
 鎌田会長様はじめ、審査会委員の皆様におかれましては、日頃より当社事故による賠償の環境整備に大変な御尽力をいただき、心より御礼を申し上げます。
 また、本日は発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。
 まず、私ども会社の原子力発電所の事故から間もなく10年が経とうとしております。今もなお、福島県の皆様をはじめ広く社会の皆様に、大変な御負担と御心配をおかけしていることにつきまして、心から改めてお詫びを申し上げます。
 私どもの会社は、これまで、事故により被害を受けられた方々が一刻も早く生活再建や事業再開を果たし、新たな生活を始められるよう、紛争審査会での審議内容や閣議決定等を踏まえまして、全社を挙げて賠償貫徹に取り組んでまいりました。
 当社経営の最大の使命は、福島の責任を全うすることであります。福島の復興が私たちの原点ということは、10年が経ちましてもいささかも変わることはありません。「3つの誓い」に掲げさせていただきました、「最後の一人まで賠償貫徹」、「迅速かつきめ細やかな賠償の徹底」、それから「和解仲介案の尊重」に基づきまして、これからも全社を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
 当社は、消滅時効に関する考え方につきまして、これまでにプレス発表をいたしてきております。すなわち、時効の完成をもって一律に賠償請求をお断りすることは考えておりません。時効の完成後も、御請求者様の個別の御事情を踏まえまして、最後のお一人まで賠償を貫徹するべく、消滅時効に関しては柔軟な対応を行わせていただきたいと考えております。
 今ほど申し上げました消滅時効に関する私どもの考え方につきましては、現在策定中でございます次期総合特別事業計画におきましても、変わらない考えをお伝えできるように準備を進めているところでございます。
 いずれにいたしましても、10年経ちまして、変わらず当社といたしましては、「3つの誓い」に基づきまして、引き続き被害を受けられた方々に寄り添った、親身、親切な賠償に取り組んでまいりたいと考えております。
 どうぞ引き続き御指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
 私からは以上でございます。




【弓岡室長】  続きまして、東京電力ホールディングス補償相談室長の弓岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 改めまして、当社より賠償の状況などにつきまして御報告をさせていただきます。
 まず、当社の原子力発電所の事故から10年が経とうとしておりますが、このような長い時間が経過してもなお、福島県の皆様をはじめ広く社会の皆様に御迷惑と御心配をおかけしておりますことを、この場を借りて改めておわび申し上げます。
 当社といたしましては、福島の復興が私たちの原点と位置づけており、「3つの誓い」に掲げる、「最後の一人まで賠償貫徹」、「迅速かつきめ細やかな賠償の徹底」、また、「和解仲介案の尊重」を引き続き遵守し、福島復興の責任を最後まで果たしてまいる所存ですが、まだまだ当社として至らない点が多々あるかと思いますので、ぜひ引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。
 それでは、資料の説明に入らせていただきます。
 まず、資料1-1-1、「原子力損害賠償のお支払い状況等について」御説明させていただきます。
 1ページ目については、賠償金のお支払い実績等についてでございます。中ほどのお支払い総額のところを御覧いただきますと、昨年12月末時点で総額約9兆6,877億円のお支払いをしております。なお、直近ですと、1月末時点で約9兆6,980億円となっておりまして、昨年末から比べますと約103億円増加しております。
 下のグラフが賠償のお支払い額の推移でございます。一番右側ですが、グレーの部分、個人の方へのお支払いが累計で3.2兆円、その上の法人・個人事業主の方へのお支払いが5.98兆円となっております。ここ数年の傾向として、個人の賠償の伸びが比較的緩やかなのに比べまして、法人・個人事業主などの伸びが大きくなっております。これは、除染等の費用が大きく増加し、法人・個人事業主などの項目にそれを計上しているためでございます。
 2ページ目以降ですが、参考資料としまして「個人の方に対する賠償の合意状況」、3ページ目が「賠償項目別の合意金額の状況」、4ページ目に「原子力損害賠償請求訴訟等の状況」、また、「原子力損害賠償に向けた組織体制」を掲載しております。後ほど御参照いただければ幸いでございます。
 なお、前回、御説明差し上げました御請求者様への当社の対応強化につきましては、引き続き社員への教育の徹底、親身、親切な対応の徹底の取組を継続しております。具体的には、御請求者様へのより丁寧な説明や迅速な対応を実現するため、請求書の作成支援などを行う補償相談ユニットと申します社内組織を、御請求の受付から支払い可否の判断、支払い手続まで行う補償推進ユニットと昨年10月に統合いたしまして、請求書の受付からお支払いまで一気通貫で行えるような体制とするべく、また、要員の一部を福島へ移すなどしております。そして、次に説明する、いまだ御請求いただいていない方々への対応につきましても、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 続きまして、資料1-1-2、「未請求の方々への取り組みについて」を御説明させていただきます。
 まず、2020年12月末時点で、精神的損害の賠償をいまだ御請求いただいていない方の人数は765名となっております。これは、前回審査会にて御報告させていただいた2020年7月末時点での人数、約780名、具体的には784名でございましたが、こちらより19名の減少となりまして、これまで99.5%の方々にお支払いをさせていただいております。
 次に、これまでの取組に関して御説明いたします。当社は、2013年から、精神的損害の賠償について御請求をいただいていない方、約1万人を特定させていただいて、その方々に対して御請求いただくよう取組を開始しました。その後、当社にて確認できなかった未請求の方について、地元自治体様の御協力をいただき、それらの方々に対して取組を進めてまいりました。具体的には、御請求いただいていない方々へのお電話、戸別訪問、ダイレクトメールの送付による請求の御案内などの対応のほか、地元自治体様による広報紙への記事の掲載や役場窓口へのパンフレットの掲示など、地元自治体様の御協力もいただいて御請求促進の取組を継続してまいりました。
 昨年は、いまだ御請求をいただいていない方々への過去の対応状況等をお一人お一人確認させていただいた上で、3月以降、お電話や戸別訪問を実施し、7月にはダイレクトメールを送付させていただき、改めて御請求の御案内をさせていただきました。
この取組を進める中で、現時点で、当社で御住所及び御連絡先のどちらも把握できていない方が複数おられることも分かってまいりました。これらの方々につきましては、御請求に関する御意向確認ができていないことを課題として認識しておりますので、資料の後段に記載もございますが、地元自治体様に御協力いただきながら取組を推進してまいりたいと考えております。
 続きまして、今後の対応に向けた取組でございます。まず、当社独自の取組としましては、昨年までの取組を踏まえ、改めて御請求に関する御意向を確認するために、お電話やダイレクトメールの送付をいたします。また、ダイレクトメールの送付後に御請求の意思が確認できた方に対しては、円滑に御請求いただけるよう、賠償内容や請求書への記載方法の説明など丁寧に対応をしてまいります。
 地元自治体様との協働につきましては、先ほど申し上げましたが、事故後、転居されたことにより当社にて御住所や御連絡先を把握できない方々に関しまして、地元自治体様へ御協力を要請したところ、おおむね当社の取組の趣旨に御賛同いただいたことから、さらなる請求促進に向け御協力いただきながら、取組を推進してまいりたいと考えております。当社としましては、これまで同様、賠償についてお問い合わせいただいた機会を捉えて、損害の状況を丁寧にお伺いしながら、御請求いただける損害項目について御案内をすることも継続して取り組んでまいりたいと考えております。
 昨年より、原子力損害賠償・廃炉等支援機構様のほうで作成、配布されている未請求に関わるチェックリスト、これについても当社のコールセンターや窓口で円滑に対応ができるよう連携させていただいており、当社にお問い合わせいただいた場合には、御請求書の送付や、戸別訪問等による御請求のお手伝いを今後も実施してまいりたいと考えております。
 引き続き、関係機関の皆様の御協力をいただきながら、御請求促進の取組を継続してまいります。
 先ほど大倉からも御説明させていただきましたが、改めて消滅時効に関しても当社の考え方を説明させていただきます。
 前回、審査会の場でも御説明させていただきましたが、当社は時効の完成をもって一律に賠償請求をお断りすることは考えておりません。時効完成後も、新々・総合特別事業計画の「3つの誓い」に掲げておりますとおり、御請求をいただいた場合には丁寧に対応し、最後のお一人まで賠償を貫徹してまいります。なお、原子力損害賠償・廃炉等支援機構様と共同で申請する次期総合特別事業計画にも時効の対応に関する記載を準備しており、事業計画にもしっかりと位置づけて対応してまいりたいと考えております。
 私からの御説明は以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 大倉福島復興本社代表、及び弓岡室長からは、時効をもって請求をお断りしないことなどを改めて御表明いただきました。今後とも、しっかりと御対応いただければと思います。
 それでは、東京電力からの御説明を受け、高橋副大臣から一言お願いいたします。




【高橋文部科学副大臣】  ただいまの御説明にもありましたが、被害者の皆様にとっては本当に御苦労の絶えない10年間であったと思います。
 この間、被害者の方々が適切な賠償を受けられるよう、鎌田会長をはじめ本審査会委員の方々におかれましては、中間指針等の策定や賠償状況、被災地の実態のフォローアップなどに大変な御尽力をいただきました。また、ADRセンター、原子力損害賠償・廃炉等支援機構等、法テラスなどの関係機関の皆様には、和解の仲介、法律の無料相談などに取り組んでいただきました。地元自治体の皆様には、審査会による損害及び賠償状況の確認や早期の賠償請求を促す広報等に御協力いただきました。
 こうした皆様の10年にわたる取組に対しまして、文部科学省を代表して改めて御礼を申し上げます。ありがとうございます。
 皆様の御尽力により、賠償は前に進みつつありますが、いまだに継続している案件もあり、まだ請求されていない方もいらっしゃると認識をしております。東京電力には、これまでも早期の賠償に努めていただいておりますが、ただいま大倉福島復興本社代表から、時効をもって請求をお断りしないことを改めて表明いただくとともに、次期総合特別事業計画においてその考えを明記するよう準備を進めているの旨、明言していただきました。この方針に沿って、今後も対応をしていただくよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さらに、前回の審査会でもお示しいただきましたように、御社目線ではなく、被害者の方々の目線に立った対応を進めていくことや、中間指針を一律の上限とすることなく、丁寧に個別事情を伺うこと、そして、引き続き未請求の方を減らすための未請求項目の有無に関する問合せへの対応や、申請時のサポート等が重要だと考えております。
 こうした対応につきましても、引き続きしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 文部科学省としては、今後も地元自治体をはじめとした関係者の皆様から御意見を伺い、連携させていただきながら、被害者の方々への迅速かつ適切な賠償が実施されるよう取り組む所存です。皆様からも引き続き御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
 以上、改めて皆様へのお願いと御礼とさせていただきます。引き続き御議論のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。




【鎌田会長】  高橋副大臣、ありがとうございました。
 審査会といたしましても、事故から10年経過した後も、しっかりと賠償の状況を確認し、被災地における意見交換などを継続して実態を把握するとともに、事務局である文部科学省や関係機関とともに今後も早期の賠償を促す活動をするなど、適時に必要な対応を行っていきたいと思います。
 ADRセンターにおいても、引き続き当事者の御意見を丁寧に伺いながら、和解の仲介を行ってまいります。
 なお、高橋副大臣におかれましては、ここで公務により御退席なさいます。どうもありがとうございました。




【高橋文部科学副大臣】  ありがとうございました。よろしくお願いします。




【鎌田会長】  委員の皆様からの御意見、御質問等につきましては、議題1の2つ目の議題と併せて後ほど頂戴したいと思います。
 そこで、議題1の2つ目、原子力損害賠償紛争審査会におけるこれまでの取組及び今後の対応について、事務局及びADRセンターより説明をいただきます。
 先ほど来、話題になっておりますように、東電福島原発事故から10年を迎えることになりますので、当審査会のこれまでの取組や、早期請求を促す広報等の活動についてもまとめたものとなっておりますので、まず事務局からお願いいたします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  それでは、事務局から御説明いたします。
 資料1-2-1でございます。全体のページ、7ページ目でございます。原子力損害賠償紛争審査会におけるこれまでの取組ということでございます。
 まず1つ目が、中間指針等の策定でございます。
 原賠法第18条第1項に基づきまして、東電福島原発事故に関して賠償を円滑に進められるよう、その紛争についての和解仲介、及び紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針の策定等の業務を行わせるため、平成23年4月、紛争審査会を文科省に設置いたしました。紛争審査会におきましては、被害者の迅速な救済を図るため、一定の類型化が可能な損害項目や、その範囲等について指針を策定し、自主避難等、また、政府による避難指示区域の見直し等の状況を踏まえました時宜を得た対応を行ってまいりました。
 こうして策定してまいりました中間指針と主な内容がこちらにございます。簡単に御説明しますと、第一次指針、第二次指針、第二次指針追補を平成23年の4月、5月、6月と作成いたしまして、これをまとめたものが中間指針として平成23年の8月に出ております。
 1ページめくっていただきまして、2ページ目でございますけれども、こちらで損害の全体像を示したということでございます。この中では、政府による避難等の指示等による損害ですとか、航行危険区域、飛行禁止区域等の設定による損害、あるいは風評被害、こういったものが示されております。
 その後、第一次追補、こちら平成23年の12月に示されまして、自主避難等に係る損害について示されております。
平成24年の3月には第二次追補が示されまして、避難指示区域等の見直しに係る損害ですとか、旧緊急時避難準備区域の精神損害、こういったものについて示されております。
 第三次追補は平成25年の1月でございまして、食品中の新たな放射性物質の基準などが変わったということで、風評被害の新たな産品とか地域を追加しております。
 3ページ目、少し下になりますけれども、第四次追補は平成25年の12月に策定しております。避難指示の長期化に伴う損害ですとか、移住、帰還などに伴う住居確保に関する費用のうち賠償の対象となるものが示されております。こちらで示された住居確保損害の賠償の計算で使用いたします福島県都市部の平均宅地単価を、その後、3回ほど改定しております。
 また、3ページの少し上の部分でございますけれども、地方公共団体に関する損害についても考え方を幾つか示しておりまして、平成25年の10月には税収減についてということで、税収減は基本的には賠償の対象と認めることは困難ですけれども、例えば目的税のようなものについては賠償すべき損害となると。
 あるいは、その少し下に参りますと、3ページの一番下、地方公共団体の不動産賠償ということで、公有財産につきましては民間財産とは異なる扱いになることが基本ですけれども、一定期間の利用阻害については賠償の対象となるというようなことを示しております。
 4ページ目に行っていただきたいと思います。4ページ、真ん中、2.被災地での調査活動等ということでございます。
 専門委員等の活動といたしまして、中間指針等の策定に当たり、関係省庁に加え、地方公共団体や事業団体からヒアリングを行っております。また、専門委員を委嘱いたしまして、様々な分野について、損害状況のヒアリングですとか、風評被害などの被害状況調査を実施いたしまして、専門委員調査報告書を策定しております。また、被災地を訪問いたしまして、損害の状況とか、場所の状況について確認をしております。
 (2)でございますけれども、被災地における意見交換ということでございまして、第四次追補の策定後も、賠償の実施状況を確認するため定期的に被災地を訪問しております。これまで訪問してきた具体的な訪問先などはその下に書いてございまして、5ページ目まで続いております。直近ですと、去年の9月、南相馬市、双葉町、大熊町の現地に行ってまいりました。
 続きまして、5ページ目の真ん中、3.紛争解決センターによる和解の仲介でございます。
 まず、センターの設置ということで、(1)でございますけれども、原子力損害の賠償に当たって和解の仲介の申立てが多数行われることが予想されたということで、平成23年の8月に紛争解決センター、こちらADRセンターと呼びますけれども、この設置を決定いたしております。9月には、東京事務所と福島事務所を設置いたしました。その後、できる限り被害者の住居の近くで話合いを実施するということで、平成24年の7月には福島県内の4か所に福島事務所の支所を設置しております。
 (2)といたしまして、和解の仲介の状況でございますけれども、被害者が簡易、迅速に紛争を解決できるよう、弁護士の資格を有する仲介委員が中立、公正な立場から、個別具体的な事情に応じて和解仲介を行っております。
 センターへの申立て件数、令和2年12月時点で2万6,000件、この中で手続が終了したものが2万5,000件、8割程度に当たります2万件以上の和解が成立しております。
 ADRセンターからのお知らせ等を記載しました広報媒体、こういったものを作成、配布いたしておりますし、6ページでございますけれども、地方公共団体の広報紙とかホームページへの案内なども掲載して、説明会に調査官の方を派遣したりということを行っております。また、和解仲介の結果を広く周知して、今後の賠償の参考としていただくために和解事例をまとめた事例集なども公開しております。
 続きまして、資料1-2-2でございます。全体の13ページについて御説明をさせていただきます。
 こちらは、損害賠償請求権に関する広報・相談等の取組ということでございます。1.といたしまして、これまでどういった広報・相談活動をしてきたかということをまとめてございます。分かりやすいリーフレットを新たに作成いたしまして、12万部ほどを福島県内を含めた日本全国にまいて早期の賠償を促しております。また、NDFが請求漏れチェックシートを作成、配布いたしまして、東京電力が被災者からの未請求項目の有無の問合せについて対応しております。
 前回の審査会、10月以降、本年1月までに広報活動、どんなことをしたかということが(1)以降に書いてございます。請求を促す広報等、分かりやすい新しいリーフレットを作成いたしまして、地元自治体が発行する広報紙に同封したりですとか、商工会連合会、病院ですとか、あるいは生活再建支援拠点、こういったところに置かせていただいています。福島社会福祉協議会と連携いたしまして、戸別配布していただいたりというようなことをしております。政府広報も実施いたしまして、全国紙とか、ブロック紙とか、こういうところにも載せておりますし、福島民報、福島民友でも複数回、広告を掲載していただいています。ホームページも少し更新しております。
 続きまして、2ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは、東京電力が未請求者ごとの状況を踏まえまして、ダイレクトメールですとか、電話ですとか、戸別訪問ですとか、こういったことで情報提供をしているということでございます。
 (2)でございますけれども、請求者に対する支援ということでございまして、ADRセンターのほうで和解仲介の実施をしておりますし、NDF、法テラスのほうで無料法律相談の実施ということもしております。また、オンラインで調査官が説明会に参加しまして、ADRセンターのほうで和解仲介の広報も行っております。
 2ページ目の真ん中辺りですけれども、2.今後の取組ということでございます。国と関係機関が連携いたしまして、地元自治体に協力いただきながら広報・相談等を行いまして、未請求者の減少に努めてまいります。請求漏れチェックシートに基づきまして、東京電力が未請求者の有無に対する問合せに引き続き丁寧に対応するということでございます。ADRセンターは、東京電力へ直接請求したことがなくても利用できますので、東京電力と直接対応することなく手続可能であることなどを引き続き周知していきたいということです。
 こういった観点を踏まえまして(1)早期の請求を促す広報活動として、地元広報紙ですとか、公共団体、病院、商工会、こういった所にポスターの掲示ですとか、地元新聞を通じた広報を行ってまいります。
 3ページ目でございますけれども、引き続き東京電力のほうで未請求者ごとの状況を踏まえたダイレクトメールとか、電話とか、戸別訪問とか、こういったことをしていくということでございます。
 (2)といたしまして、被災者の御要望に応じた個別の活動ということでございまして、引き続きNDFのほうでチェックシートの活用促進ですとか、東京電力のほうで未請求者の有無に対する問合せの対応、こういったことを行ってまいります。
1枚めくっていただきますと、今、ざっと御説明したことを少しまとめて書いてあります。ちょっと個別で分かりにくかったかと思うんですけれども、こちらがこれまで行ってまいりました広報とか相談対応の全体像でございます。
 上から参りますと、多くの人々へ周知していくということでございまして、まさに地元、被災12市町村につきましては、昨年3月からチラシの送付ですとか、地元広報紙に記事を掲載して、全体で26万部ぐらい行っています。こうしたことによって、被災12市町村全ての世帯に周知しておりますし、県外の被災者の方にも周知しています。新たにポスターも作成いたしまして、こういうものを貼っていただこうと思っております。
 (2)福島県内につきましては、福島民友、福島民報さん、こちらは講読世帯数が非常に多いということでございまして、それぞれ24万部、17万部あるということですけれども、こちらを使って10回以上、広報しております。県内の全市町村にチラシも配布いたしまして、全ての市町村に周知をさせていただいております。全国でございますけれども、主要の5紙全て、あとブロック紙、地方紙65紙ございますけれども、全ての都道府県に周知をさせていただいています。ラジオ放送も、去年の2月にも行いましたけれども、今年、また今後、AMラジオ局系列を使って放送していく予定になっております。
 2.きめ細やかな個別対応でございます。先ほどの話ですけれども、東京電力が未請求者ごとの状況を踏まえてダイレクトメールとか戸別訪問をしていく。NDFが請求漏れチェックシートで、東京電力が問合せの対応をしていく。一番下になりますけれども、NDF、ADRセンターによる相談会、こういったものも300回ほど実施しているという状況でございます。
 その次の17ページ目、こちらが新しく作成いたしましたチラシでございます。例えば、真ん中の辺りに4つ丸がございますけれども、お亡くなりになった御家族の賠償が残っているとか、通院費の賠償が最後まで済んでいない、こういう事例を明示いたしましてちょっと分かりやすくしておりますのと、相談窓口をこれまで幾つか載せていたんですけれども、これを一元化してちょっと分かりやすくしているというようなことがございます。
 御説明は以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 引き続き、ADRセンターの活動につきまして、古谷室長から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。




【古谷原子力損害賠償紛争和解仲介室室長】  それでは、ADRセンター室長の古谷から、令和2年の当センターの活動状況につきまして御報告をさせていただきます。数字は速報値になっております。では、資料1-2-3を御覧ください。
 まず、表紙をおめくりいただきまして、1ページ目を御覧ください。これは通しでいいますと19ページになります。センターの人員体制でございますが、令和2年12月末時点の人員は、仲介委員270名、調査官105名、和解仲介室職員111名です。調査官につきましては、申立件数の減少傾向もありまして、令和元年末から27名減となっております。今後の申立件数の推移などを見ながら、規模をどうするかについては検討してまいりたいと考えておるところでございます。
 1ページおめくりいただきまして、2ページ目を御覧ください。申立件数の推移ですけれども、令和2年末までの申立件数の総数は2万6,407件、申立人数の延べ総数は11万3,511人となっております。ピークであった平成26年と比較すると、近年は低水準で推移していると言えるかと思います。
 具体的な数字の推移につきましては、後ろの方に参考資料をつけております。令和2年の申立件数は862件でありまして、令和元年の1,209件と比較すると減少しております。これは、新型コロナウイルス感染症の影響等も考えられるところでございます。
 申立件数は減っている一方で、時の経過に伴いまして、申立人の方々の事業や生活の事情が多様に変化しておりまして、そのあたりの多様な事情を個別具体的に捉えて、丁寧に審理をすることがますます必要な状況になっているところでございます。
 1ページおめくりいただきまして、3ページ目を御覧ください。当センターへの初めての申立てを初回申立て、2回目以降の申立てを複数回申立てという形で分類しております。令和2年の申立てのうち、初回申立ての割合は約39%でございました。まだ39%の方が初回の申立てということになっておりまして、賠償が可能であるのに、ADRを利用した損害賠償請求をしていない方も多くいらっしゃるという状況があると思われることから、今後も引き続きましてしっかりと広報活動してまいりたいと考えております。
 1ページおめくりいただきまして、4ページ目を御覧ください。和解仲介の状況でございます。令和2年末までで、2万5,692件の和解仲介手続が終了しております。このうち、約80%に当たる2万562件が和解成立で終了しております。ちなみに、令和2年末の時点におきます現在進行形の事件数につきましては715件となっております。
 1ページおめくりいただきまして、5ページ目を御覧ください。和解仲介の状況に関して、各年の詳細になります。令和2年に手続が終了した件数は1,087件で、うち、およそ75%になります814件が和解成立という形で終了しております。
 一方、取下げで終了した案件は167件、和解打切りとなったのは106件でございます。打切りの理由につきましては、申立人の請求権を認定できないことを理由として和解打切りとなった数が一番多くございまして、106件中55件となっております。打切り件数中の約5割以上を占める数値になっています。
 また、被申立人であります東京電力が和解案を拒否したために和解打切りとなった件数は、令和元年より減少はしておりますが、令和2年で2件ございました。東京電力におかれましては、和解仲介案の尊重も含む「3つの誓い」に従って、センターが実施する和解仲介手続に対しまして、改めて真摯かつ柔軟な御対応をお願いしたいところでございます。
 それでは、最後、6ページ目を御覧ください。これは、広報に関してでございます。従来、関係団体や関係地方公共団体と連携し、また協力しながら、これらの団体等が主催する説明会などで説明を行ってまいりました。
 令和2年におきましても、福島県内外、様々な所で関係団体が主催される説明会にセンターの調査官などを派遣いたしまして、センターの業務概要や申立方法などについて説明を行ってまいりました。また、地域ごとの個人ないし事業者向けのチラシを作成、配布したことに加えまして、地方公共団体の広報紙であります「ふくしまの今が分かる新聞」、あるいは「広報おおくま」「広報かわまた」といった広報紙に、センターの案内記事を掲載させていただいておるところでございます。
 令和3年3月には、事故から10年の節目を迎えることになります。先ほど御説明しましたように、現在でも初回申立ての方が多くいらっしゃり、いまだ賠償請求をされていない方も多くいらっしゃると思われるところでございます。当センターといたしましては、今後もより一層、広報活動を強化しつつ、紛争解決機関としての役割を十分に果たすことができるように、引き続き努力していく所存でございます。よろしくお願いいたします。
 以上、駆け足になってしまいましたけれども、当センターからの御報告は以上になります。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 議題1につきまして、東京電力、事務局、そしてADRセンターから、それぞれ御説明をいただきましたが、これらについて、まとめて御意見、御質問等を受けたいと思います。御発言のある方は、ウェブ上では「挙手」ですか。画面が見えていないので。





【事務局】 「挙手ボタン」を押す、もしくは発言していただければ。




【鎌田会長】  御発言のある方は、ミュートを解いて発言してください。お願いします。




【織委員】  それでは、織です。よろしいでしょうか。




【鎌田会長】  はい、どうぞ。お願いします。




【織委員】  東京電力さんの御発表に関して、幾つかお伺いしたいと思います。
 前回、東電さんの寄り添う気持ちと、実際、地元の方が思っていらっしゃるところとなかなかギャップがあるので、具体的な対応をお願いしますという要望に対して、今回、具体的に幾つか発表していただいて、ありがたく思います。本当にありがとうございます。
 その中の一つとして、補償相談員というものを設置なさって、受付から支払いまで一貫して対応、カウンセリングしてくださる方がいらっしゃる、設置してくださったということで、これはすごくハードルを低くするよい取組だと思うんです。具体的に、実際やられてみて、住民の方の反応はいかがだったとか、あるいは、実際、相談員をしてみて、ここがハードルだったとか、この辺がなかなかうまくいかないというようなことがあったら、ぜひその経験を教えていただきたいということです。
 それから、未請求765名ということで、住所、氏名不明の方については自治体の協力、それ以外については電話ですとか、ダイレクトメールを直接ということですけれども、実際、電話をなさってみて、未請求の方の対応というか、なぜしなかったのか、あるいは何が引っかかっているのかという電話対応で分かったことも教えていただければ、私たちも新たな取組の参考になるかと思いますので、よろしくお願いいたします。




【鎌田会長】  それでは、東京電力、よろしくお願いいたします。今、分かる範囲で結構です。




【弓岡室長】  東京電力、弓岡でございます。御質問、ありがとうございます。
 まず、1点目の取組について、私の説明が足りておりませんで、申し訳ございません。実は、これまで弊社では、多くを東京のほうで賠償できるかどうかを確認する部門と、実際に被害をお受けになられた方の窓口をやる人間と、組織が分かれておりました。
 したがいまして、どうしても確認をする側が御請求者様に寄り添いきれず、厳しめに動くということが、しばしばありまして、実際に窓口で対応する人間が確認する機能も持てるようにということで動き出したところです。まだ10月からですので、3か月間余り、4か月ほどやってきております。
 反応としましてはまだまだのところはございますけれども、やはり確認と窓口の対応を一緒にやると、その人間は寄り添う方向で検討、もちろん、法的な制約の中での話ではございますけれども、迅速、丁寧に動き始めているという思いはございます。社内でも少しそういう動きが見えるところではありますが、ただ、この取組は緒に就いたばかりで、まだまだ評価をいただけるような段階ではないと思っておりますので、さらに加速をさせていきたいと思っているのが現状でございます。また、お褒めの声等々をいただけるように努めてまいりたいというふうに思っています。
 2点目の未請求の方の理由ですが、これは、未請求の方、連絡させていただいていて、なぜなのかという点について、御請求の意思がそもそもあまりないという方や、あと、ADRや訴訟を考えておられる方、また、御請求支援をお受けいただけない方もおられますし、これはちょうど今年に入ってから電話させていただいて、本当に今のデータですが、約60名ぐらいの方は請求したいというふうに申出をいただいたりしておりまして、年明けてからも効果が少し出てきていると思っております。未請求の状態になられている方の理由としましては、様々の面はございますけれども、一つ一つできる限り丁寧に今後も努めてまいりたいと考えております。
 拙い説明で申し訳ございませんが、以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。ほかに御意見、御質問がございましたらお願いいたします。
 中田委員、お願いいたします。




【中田委員】  ありがとうございます。私からも東京電力の御報告についてお伺いしたいことが1点ございます。
 消滅時効に関するお考えとして、時効の完成をもって、一律に賠償請求を断ることは考えていないということが、大倉様からも弓岡様からもお示しいただきました。
 他方で、鎌田会長、あるいは高橋副大臣の御理解としましては、「一律に」という言葉が入っていなかったようにさっき聞こえました。
 恐らく審査会の側も、それから東京電力の側も、認識は今さほど離れていないと理解しておりますけれども、ただ、「一律に」という言葉が後に独り歩きしますと、個別にはあり得るとか、あるいは、むしろケース・バイ・ケースで断ることがあるんだということが強調されてしまうと、どうも趣旨と違ってくると思います。そのようなことがないように、本日の審査会の側の受け止め方に従って御対応いただければと思いますけれども、いかがでございましょうか。




【鎌田会長】  東京電力、お願いいたします。




【弓岡室長】  ありがとうございます。東京電力でございます。
 実質的に時効を援用する考えがないということを申し上げておりますが、消滅時効に関する当社の考え方につきましては、民法上、時効の利益はあらかじめ放棄することができないということも考慮しながら、最大限可能な表現として、これまでも表明をさせていただいてきたところでございます。
 柔軟な対応と申しますのは、趣旨として時効の完成をもって賠償請求をお断りすることはなく、時効完成後であっても、御請求いただいた場合には丁寧に対応して、最後の1人まで賠償を貫徹してまいりたいという思いをしっかり述べたつもりでございます。
 何とぞ御理解いただければと思います。




【鎌田会長】  中田委員、よろしいでしょうか。
 それでは、ほかに御発言ございますか。




【樫見委員】  よろしいでしょうか。




【鎌田会長】  どうぞ。




【樫見委員】  先ほど東京電力のほうからお話があったのですが、法人、個人企業主の方に係る項目というのが、風評被害等2兆円以上に、かなりの額に達しております。この点について賠償額がかなり積み重なっておりますけれども、東京電力の側におかれては、この風評被害等に関しまして、何らかの賠償の方針とか、そういうことが定まっておられるのであれば、お聞かせ願いたいと思います。
 以上でございます。




【鎌田会長】  東京電力、お願いいたします。




【弓岡室長】  ありがとうございます。風評被害、お手元の資料でございますと、合意金額として資料1-1-1、2のところに、法人・個人事業主の方に関する風評被害等を書かせていただいております。これについては、本当に、事故に伴う損害、風評被害が継続する限り、当社としては賠償をさせていただく、相当因果関係のある賠償については継続して賠償をさせていただくという方針に変わりはございません。
 したがいまして、農業、漁業等々ございますが、それぞれの業種様で風評被害が起きた場合は、これは同じような考え方に基づいて、相当因果関係に基づいて判断をしてお支払いをしてまいるという考えでおりますので、引き続きどうぞよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。




【樫見委員】 ありがとうございます。




【鎌田会長】  樫見委員、よろしいでしょうか。




【樫見委員】  ありがとうございます。




【鎌田会長】  では、ほかの御意見をお願いいたします。




【明石委員】  明石です。よろしいでしょうか。




【鎌田会長】  明石委員。




【明石委員】  先ほど、電話連絡、それから戸別訪問等についての御質問があったんですが、これはある意味で、住民側がどんな考えをお持ちかというのを聞くチャンスでもあるんですが、先ほどの東電の方のお答えの中にもあったんですが、知らなかったというのが多いか、それとも、請求する意思がない、どういう方が一番多いんでしょうか。もちろん、いろいろあると思うんですけれども、数としてどういう種類のものが多いのかは、今後の広報等を続けていく上で非常に重要だと思うので、ぜひ聞かせ願えたらと思います。




【鎌田会長】  東京電力、お願いします。




【弓岡室長】  東京電力でございます。これは、765名の方々の中の内訳について、なかなか一概に申し上げにくいところもあるんですが、ただ、やはり、架電や戸別訪問等をしておりますと、そもそも知らないというよりも請求する意思について、十分請求しようというような意思を明確にしていただけていない方が、これは当社の取組が不足していた面もあるかもしれませんが、約400名ぐらい、意向がはっきりしない方がいらっしゃいました。
 したがいまして、年を明けてから300名近くの方に集中的にお電話しましたら、60名ほど請求意思を示していただいたりしておりまして、半数以上の方が、意向があまり明確でなかったという側面がございました。そこについては、当社の至らない面もありますが、引き続きしっかり架電や戸別訪問をして、請求意思についてダイレクトメールをお出しして、請求する意思があるというふうに返していただいたり、あとは電話で意思があるということであれば、お伺いをして、請求書の作成の仕方も支援させていただいて、しっかりやってまいりたいと考えております。
 また、その他、所在や連絡先不明の方などもおられますので、そこについては、自治体様の御協力を仰ぎながらやってまいりたいと考えております。
 私からは以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。ほかの方、いかがでしょうか。
 それでは、大塚会長代理、お願いします。




【大塚会長代理】  大塚でございます。2点お伺いしたいと思いますが、あるいはお願いですけども、1つは、23ページのところの、被申立人が和解案を拒否した例がまだ出ているということでございまして、これは東電のADRに対する方針との関係、和解案尊重の方針との関係ではどういうふうになっているのかということを教えていただければと思います。
 それから第2点ですけれども、先ほど風評被害の話が出ましたが、むしろ営業損害に関して、商工業の営業損害に関して個別の賠償のほうをなさっていると思いますけども、現在どういうふうになっているかということと、被害者の目線に立って個別賠償を進めていっていただきたいということもお願いしたいと思います。現在、どういう状況になっているかも教えていただけるとありがたいと思います。
 以上です。




【弓岡室長】  申し訳ございません、ハウリングして……。




【大塚会長代理】  もう一度言い直しますね。
 1つは、23ページのところで、被申立人が和解案を拒否した例が相変わらず出ていますので、これが、東電のADRに対する和解案尊重の方針との関係ではどういうふうになっておられるかをお伺いしたいというのが第1点です。
 第2点といたしましては、営業損害に関して、商工業のほうの営業損害に関して、個別の賠償を進めておられると思いますが、現在どういう状況になっているかということをお伺いしたいのと、被害者目線に立った賠償を進めていただきたいということをお願いしたいということでございます。
 以上です。




【鎌田会長】  東京電力、よろしいですか。




【弓岡室長】  申し訳ございません、よく聞き取れなかったもので、大変失礼いたしました。
 まず、和解仲介案の件でございますが、この和解仲介案の尊重につきましては、個別に丁寧に御事情をお伺いし、真摯に対応してまいるという考えに変わりはございません。また、ADRが早期解決を目指す場ということは十分認識しております。ただ、本当に一般論で申し訳ございませんが、中には、共通の御事情として、熟慮の結果お受けできないようなケースや、個別のケースで熟慮の結果、やむを得ずというようなところも正直ございました。それが2件として表れておりますが、ただ、私どもとしましては、極力、個別に丁寧に事情をお伺いして、数を減らして、もちろん、ゼロを基本としていきたいと思っており、和解仲介案の尊重について、その思いは変わっておりませんので、この点、1点申し上げたいと思います。
 2点目の商工業の営業損害については、一括賠償をさせていただいて、その後、それを超過したというお申出をいただいた場合には、弊社としては、表面的・形式的に判断することなく、事業の特殊性など、これも個別の御事情を丁寧にお伺いして、対応をさせていただきたいというふうに考えています。
 また、どうしても帳票等をお出しいただくようなお願いをすることがありますが、これについては、それまで一括賠償のときにお出しいただいたような帳票があれば、そういったことについて、お手間を極力おかけしないように、以前いただいた書類を最大限活用するなど、できる限り御請求者様の御負担軽減につながるような動きをしてまいりたいと考えております。
 私どもからは以上でございます。




【大塚会長代理】 ありがとうございます。




【鎌田会長】 ありがとうございました。
 予定の時間を大分過ぎておりますので、ここで、次の議題に移らせていただきたいと思います。もし何かありましたら、また後ほど御発言いただければと思います。
 次に、議題2、住居確保損害に係る福島県都市部の平均宅地単価の取扱いについて御議論いただきたいと思います。
事務局及び東京電力からの説明を伺った後に審議をさせていただければと思います。
 まず、事務局からお願いいたします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  それでは、資料の2-1、全体の29ページについて御説明をいたします。こちらの住宅確保損害に係る福島県都市部の平均宅地単価の取扱いということでございます。
 1ポツでございますけれど、第41回の紛争審査会で見直しの検討の考え方について検討しておりますので、そちらをまず御紹介させていただきます。
 住居確保損害に係る福島県都市部の平均宅地単価の見直しの検討の考え方につきまして、第41回の審査会において以下の方針が取りまとめられております。
 毎年、地価の動向等を確認した上で、これまでの日本全国の地価の変動幅を勘案しつつ、必要に応じて、指針宅地単価を見直すこととする。
 1つ目のポツ、地価の確認方法でございますけれど、国土交通省土地鑑定委員会による地価公示及び都道府県による地価調査を基に専門機関が行った調査結果を確認する、こちらは参考資料2についてございます。全体の49ページです。
 2つ目のポツです。見直し検討の際の基準といたしましては、宅地単価の基となった専門機関による調査結果を基準値とする。
 また、3つ目のポツです。見直し後の宅地単価の適用時期につきましては、見直し決定日から適用するのが基本。ただし、単価を減額する場合には手続途中で賠償上限金額が減額されることなどがないよう、東京電力は適用時期に配慮することが望まれるというようにされています。
 2つ目でございます。平均宅地単価の今回の状況と去年の状況ということでございます。四次追補策定時と同様の方法で専門機関に調査を委託しました。令和2年の福島県都市部の平均宅地単価は次の表のとおりとなっておりまして、令和2年のところを御覧いただきますと、4万6,424円。前回改定時、平成30年でございますけれど、この基準値と比較いたしました変動幅が1,051円の2.3%となっております。
 それでは、3ポツの検討事項でございます。今般の調査結果に基づきまして、平均宅地単価を改定した平成30年と令和2年で比較すると、金額で1,051円、変動率で2.3%上昇しております。四次追補に示されている平均宅地単価を見直す必要があるかどうかということ、また、見直す場合に、指針宅地単価を幾らとすべきか、ということについて御審議をいただければと思います。
めくっていただきまして、2ページ目の上部、御覧いただきますと、これまでどういったときに宅地単価を見直してきたかという経緯が少しございまして、25年にこちらを設定したと。26年は1.9%上がって、こちらは反映しておりません。27年、28年と7.9%、5.5%上がったときに、こちら、反映をしています。29年、また2.8%では反映せず、平成30年に5.5%上がったときに反映しています。また、R1、こちらは1.3%上がって、こちらは反映せず、こんな状況でございます。
 その下の表を御覧いただきますと、今、全国、三大都市圏ですとか地方圏で上昇率を見ていただくと、R2が全体的にもう下がっているという状況がございます。こちらについて、平均宅地単価の御審議をいただければと思います。
 御説明は以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 引き続き、東京電力ホールディングス株式会社から御説明をお願いいたします。




【弓岡室長】  東京電力ホールディングスの弓岡でございます。
 それでは、持家に係る住居確保損害の賠償の概要につきまして、資料2-2、「住居確保損害に係る算定方法について」という資料に沿って御説明させていただきます。
 まず、住居確保損害に係る賠償につきましては、従来の財物に対する賠償だけでは、避難先から御帰還される際に必要な建て替えや修繕の資金が不足する、あるいは、移住しようとしても新たに宅地や住宅を購入する資金が賄えないといった状況に対する改善の御要望にお応えするため、中間指針第四次追補を踏まえ、2014年の7月に御案内を開始し、お支払いをさせていただいております。なお、賠償の対象につきましては、弊社事故発生時点において避難指示区域内の持家に居住されていた方とさせていただいております。
 資料を御覧いただきますと、まず、資料上段に記載のとおり、対象となる費用は、「住宅の再取得・修繕費用」。それと「宅地・借地権の再取得費用」及び「諸税や登記費用等の諸費用」となっております。
 資料の中段にございますイメージ図のとおり、住宅確保損害に係る賠償は、既に宅地・建物・借地権の賠償としてお支払いしている賠償金額を超過して、住居確保に要した費用につきまして賠償条件金額の範囲内でお支払いをするものとなります。
資料の下段にその賠償上限金額の算定方法をお示ししておりますが、宅地・建物・借地権の賠償金額と算定式により計算した、対象資産ごとの賠償可能金額の合計額を賠償上限金額として設定しております。
 資料の裏面に参ります。2019年1月の第49回当審査会におきまして、移住先標準宅地単価が平米4万3,000円から4万5,000円に見直された際の弊社の対応の概要を記載しております。このときは単価改定日、これは第49回審査会開催日の2019年1月25日でございますが、この単価改定日以降に初めて住居確保損害の賠償を請求いただく方、または、既に御請求はいただいているものの、改定日時点で確定賠償の金額が見直し前の賠償上限金額に達していない方に対しまして、新しい見直し単価を適用させていただいております。
 私どもからの説明は以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 ただいま御説明をいただきましたように、資料2-1に検討事項が掲げられているところでございます。今回の調査結果を踏まえまして、中間指針第四次追補に示されております住宅確保損害に係る福島県都市部の平均宅地単価について、まずはこの数字を御覧になって、今回上げる必要があるかどうかという点を御議論いただき、次いで、上げる必要があるというときには幾らにするかという御議論をいただければと思っております。
 まず、見直す必要があるかどうかについて委員の皆様の御意見をお伺いいたします。
 御発言はございませんか。
 これまで、おおむね5%という線でそれを超えたら見直す。それまでは見直さなくていいのではないかという議論をしてきたところですけれども、今回についてはいかがでしょうか。
 特に御意見がないようでしたら、これまでと同じような考え方で、5%に達していない今回は、2年間を通じての変動率で2.3%ということで、この増額分に応じた見直しはしなくてよいというのが大方の意見だと理解してよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、そのように取り扱わせていただきます。
 ほかにこの課題について、何か御意見ございますか。
 これまでに、値下がりしたときどうするかということもいずれ考えてくださいという御指摘もございました。値下がりした場合について若干の言及は既にあるのですけれども、これまでのところ、一貫して少しずつ上がってきていましたが、これからどうなるかは予測つきませんので、将来に向かってはそういった点も御留意をいただきながら御検討いただければと考えているところです。
 それでは、次に議題3に移ります。まず、被災地の動向等のうち、第1番目といたしまして、地方公共団体等からの主な要望事項につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  それでは、資料3-1、全体ページの35ページについて御説明をさせていただきます。
 こちらは地方公共団体等からの主な要望事項ということでございまして、前回の審査会以降、文科省に寄せられた要望について主な事項まとめたものでございます。
 まず1つ目、被災者等への賠償ということでございまして、1つ目のマルですけれど、被害者の生活や事業の再建が確実に果たされるよう、紛争審査会において、現地調査や関係市町村等から意見聴取、民事訴訟等の判決内容の精査等により、被災地はもとより、福島県の現状しっかりと把握して適時適切な中間指針等の見直しを行うこと。
 2つ目でございます。多くの被害者に共通する損害については、類型化による中間指針等への反映によって確実かつ迅速に賠償がなされるべきであるものということで、住民や地域、市町村に混乱を生じさせないよう、審査会における審議を通じて損害の範囲を具体的かつ明瞭に「指針」として示すこととされております。
 2つ目でございます。営業損害及び風評被害に係る賠償ということでございまして、避難指示区域内や出荷制限等に係る農林業の一括賠償後の取扱いについて、農林業者等へ丁寧な周知・説明を行い、被害の実態に見合った賠償を確実に行わせること。また、風評被害はもとより、個別具体的な事情がある場合には、被害者の立場に立って柔軟に対応させること。
 2つ目の丸でございます。商工業等に係る営業損害の一括賠償後の取扱いについても、被害者から相談や請求に丁寧に対応し、表面的・形式的に判断することなく、個別具体的な事情をしっかりと把握した上で、損害の範囲を幅広く捉え、被害の実態に見合った十分な賠償を確実かつ迅速に行わせること。また、原子力発電所事故との相当因果関係の確認に当たっては、一括賠償請求時の提出書類を最大限活用するなど、手続の簡素化に取り組みながら柔軟に対応し、被害者の負担を軽減させることとされております。
 次のページを御覧いただきたいと思います。
 3ポツといたしまして、地方公共団体に係る賠償でございますけれど、地方公共団体が住民の安心・安全を守るために行っている様々な検査等に要する費用や、地域の復興のために実施している風評被害対策などの事業に要する費用は、実施体制に要する費用を含め、政府指示の有無に関わらず因果関係が明らかであることから、賠償請求手続を簡素化するとともに確実かつ迅速に賠償を行わせること。
 4つ目、紛争解決センターによる和解の仲介でございます。
 原子力損害賠償紛争解決センターが提示する「総括基準」や「和解仲介案」を原子力災害の原因者としての自覚を持って積極的に受入れ、確実かつ迅速に賠償を行わせること。また、同様の損害を受けている被害者に対しては、和解仲介の手続によらず、直接請求によって一律に対応させることとされております。
 最後、5つ目でございます。損害賠償請求権の消滅時効について。
 全ての被害者が賠償請求の機会を失うことのないよう、東京電力に対し、請求未了者の掘り起こしや周知活動を徹底させることはもとより、中間指針等に明記されてない損害への対応を含め、将来にわたり消滅時効を援用しないことを総合特別事業計画に明記させるなどの方法により、具体的かつ明確に示し、損害がある限り最後まで賠償を行うよう指導すること。また、国においても、紛争解決センターによる和解仲介手続の一層の周知や、さらなる法制度の見直しも含め必要な対応を行うこととされております。
 御説明は以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 時間の関係もありますので、御意見、御質問等につきましては、次の御説明を伺った後に併せて頂戴したいと思います。
 特定復興再生拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除につきまして、内閣府より御説明をいただきます。




【辻本参事官】  内閣府被災者支援チームの辻本でございます。
 それでは、資料37ページを御覧ください。これは前回の原賠審以降、帰還困難区域について避難指示解除の新たな仕組みをつくったという動向の変化がございましたので、それについて説明させていただきます。
 38ページを御覧ください。
 マル1として、指定避難指示区域の解除に向けた取組の現状、これを整理しております。一番上の政府の方針、これにつきまして読み上げはいたしませんが、引き続き、我々はこの政府方針の下に動いていると。その下を見ていただきますと、これまでの取組と現状ということで、昨年の3月に帰還困難区域を除く全ての地域で避難指示を解除いたしました。また、帰還困難区域につきましては、昨年3月のJR常磐線の全面開通、これに合わせて駅周辺の解除を行っております。
 現在のステージとしましては、来年になりますけど、令和4年、5年の特定復興再生拠点区域の解除に向けた取組を実施中であります。
めくっていただきまして、通し番号39ページ、御覧いただければと思います。
 マル2として、拠点区域外における避難指示解除の検討状況であります。これは上に2つ書いておりますけども、帰還困難区域を抱える自治体におかれましては、拠点区域外の帰還・居住に向けて解除の方針を早期に示してほしいという要望を常にいただいております。
 2番目に書いてありますけれども、拠点区域外、これは各自治体ごとにおのおの状況が違いますので、これを踏まえながら検討を進めているという状況であります。
 下を見ていただきますと、左の(1)のところで基本的検討、帰還・居住したいとの要望への対応でございますけれども、これにつきましては、引き続き政府としてどういう方針でやるかという方針の検討を加速化させていくという状況であります。
 本日御説明させていただきたい中身は右のほうの(2)であります。土地活用したいとの要望への対応でございます。これは2番目のポツを見ていただきますと、地元の自治体から、土地を活用して避難指示解除をしてほしいという御意向がございました。これを踏まえまして、住民の安全の確保を前提としまして、拠点区域外での従前の拠点の解除とは異なる新たな仕組みにつきまして、昨年の12月25日ですけども、原災本部で決定をいたしました。
 具体的には、次の40ページを御覧ください。
 下のほうを先に説明いたしますと、左の(1)、これは従前の避難指示解除要件でありますけども、3点であります。1点目が空間線量率、年間積算量20ミリシーベルト以下であるという点。マル3番を見ていただきますと、県、市町村、住民との十分な協議。マル2番としまして、電気、ガス、水道のインフラ整備。また、子供の生活環境中心の除染作業を十分に進捗すること。これが拠点における避難指示解除の要件になります。
 今回新たに設けたのは右の(2)でありまして、マル1番とマル3番は変更ございません。今回新たに設けましたのはマル2番でありまして、土地活用を行う者などによって必要な環境整備が実施されていること。※印を見ていただきますと、土地活用の目的に沿った土地の造成・設備の設置、被ばく線量の低減といったものについて、これは土地活用ごとに必要な環境整備が異なりますので、改めて、要件として設定をしたというものであります。
 上に戻っていただきまして、1ポツ、2ポツ、書いております。従前の避難指示解除要件に加え、土地活用を目的とした新たな解除要件も設定し、これは各自治体の御意向を十分に尊重して運用していくというふうにしております。
 また、2ポツでありますけれども、これまでの解除と同様に、住民の安全・安心に資する放射線防護対策、これ、避難指示を解除した以降は放射線防護対策が重要でありますので、これにつきましては、昨年の8月に規制委員会で了承をいただいたところであります。
 めくっていただきまして41ページであります。
 概要は、規制委員会でお認めいただいた住民向けの放射線防護対策でありまして、この中身につきましては、既に定められている特定復興再生拠点区域における放射線防護対策とほぼ同様の内容についてお認めいただいたところであります。
 説明は以上です。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 それでは、両方通じての質疑応答に移りたいと思いますけれども、これまでも何度も申し上げておりますように、先ほど御紹介いただきました地方公共団体からの要望事項の類型化した損害の中間指針等への反映ということにつきましては、昨年6月にADRセンターが事例集を取りまとめました。これによりまして、中間指針よりもきめ細かな紛争類型ごとにどのような判断がなされているか、どういう判断が期待されるかということの予測可能性が高まる。現時点ではこうした形のものが有用だろうということでADRセンターに事例集を御作成いただきまして、その配布等に努めていただいているところです。
 また、地方公共団体に係る賠償につきましては、ADRセンターが自治体用の申立てのひな形を公表いたしておりますので、こうしたものを活用して、引き続きADRセンターへの申立てを御検討いただきたいと考えているところです。この点を補足申し上げた上で、議題3についての委員の皆様の御意見、御質問を頂戴したいと思います。
 どうぞ御自由に御発言ください。
 特にないですか。事務局、あるいは東電から補足的な御発言はございますか。
 それでは、大塚会長代理、お願いします。




【大塚会長代理】  資料の3-1との関係でちょっとだけ申し上げておきたいと思いますが、先ほどの営業損害、風評損害に関する問題ですけども、これは商工業に関しても農林業に関しても、それぞれ業界との関係で東電のほうで交渉していただいていて、大変ありがたいと思っていますけれども、同じことになってしまいますが、一括賠償の後の個別賠償に関しては個別的な事業がかなりあると思いますので、しっかり対応していっていただきたいということは、先ほどと同じようなことで恐縮ですが、改めて申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。




【鎌田会長】  東京電力、よろしいですか。




【弓岡室長】  東京電力でございます。御趣旨、ありがとうございます。
 先ほど御回答させていただきましたが、商工業様はじめ、皆様、しっかり対応していきたいと思っております。ありがとうございます。




【鎌田会長】  では、よろしくお願いいたします。
 ほかに御発言がないようでしたら、少し予定の時間も超過しておりますので、次の議題4、その他に移らせていただきたいと思います。




【樫見委員】  すみません、1点。




【鎌田会長】  どうぞ。




【樫見委員】  申し訳ありません、樫見でございます。
 先ほど御説明いただいた復興再生拠点区域外の避難指示解除のところなんですが、(2)のマル2、土地活用を行う者によって必要な環境整備が実施されていることとあります。当然、この必要な環境整備に当たっては除染等の費用が出てくるわけですが、その費用負担についてはどうなっているのかお教えていただきたいなと思っております。




【辻本参事官】  御指摘ありがとうございます。支援チームの辻本でございます。
 まず、土地活用につきましては、土地活用を行う者、これは自治体さんの場合もあれば企業さんの場合もあろうかと思います。まずはその土地活用、どういうふうな土地を活用していくかというのを決めていただいた上で必要な環境整備が進むわけでありますけれども、実際の案件が出てきた際に、これにつきましては具体的な対応、政府としてどういうふうな支援をさせていただくのかというふうな整理をしていくことになろうかと思っております。
 ただ、一般論として申し上げれば、自治体さんの場合にはいろんな加速化交付金といったメニューがございますし、企業に関しましては、企業立地補助金というのがございます。これをどう活用していくのかというのは、地元自治体も十分協議しながら対応を図っていくということになろうかと考えております。




【樫見委員】  ありがとうございました。




【鎌田会長】  よろしいですか。




【樫見委員】  はい。




【鎌田会長】  それでは、議題4のその他に移りたいと思います。
 前回の審査会におきまして裁判の判決の概要を報告する予定にしておりましたけれども、時間不足で省略をいたしました。実は本日も、残り時間、数分しか残っていないんで、多少時間をオーバーすることを御了解いただければ、この点について事務局からの御説明をいただきたいと思いますが、委員の皆様、よろしいでしょうか。
 特に御異議はないものと受け止めさせていただきます。
 それでは、事務局から御説明をお願いします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  それでは、御説明いたします。
 国家賠償の概要等ということでございまして、事故に伴う国家賠償請求訴訟につきましては、前々回、51回の審査会以降、こちらは参考資料3にございますけど、全体の62ページにございますとおり、地裁で4件、高裁で2件の判決が言い渡されております。こちら、いずれの判決につきましても上訴されて、判決は確定しておりません。
 委員の皆様には、「机上配布資料」というフォルダを御覧いただきますと、こちらについて判決文が出ておりますけれど、機微な情報を含みますために、委員の先生方のみ御覧いただけるようになっております。
 説明の中で判決文の該当ページを申し上げますけれど、画面の左側に出ているしおり機能というのがございますので、そちらですぐにそこのページを御覧いただけるようになっております。
 各判決では、国の責任の有無ですとか、その理由について、責任論についても述べられておりますけれど、本日御説明するのは損害論の部分のみということになっております。その中でも、精神損害に関する部分について御説明をいたします。
それでは、各訴訟の判決の概要について御説明をいたします。
 まず、札幌地裁ですけれど、昨年3月10日に判決が言い渡されまして、最終的な原告数は253名、原告らは精神的損害、財産的損害への賠償を請求しています。
 主な判決内容につきまして、損害論114ページからございます。慰謝料額は153ページ以降にございます。帰還困難区域については、1,000万円が相当。旧避難指示解除準備区域については、平成30年3月31日まで月額10万、合計850万円が相当。旧緊急時避難準備区域につきましては、平成24年8月31日まで月額10万、合計180万円が相当。自主的避難等対象区域については、30万円が相当と判断されています。それ以外の区域に居住していた者については、慰謝料は、個別具体的事情により避難及び避難継続の相当性が認められる場合に、自主的避難等対象区域に居住していた者に対する慰謝料額を参考に算定されます。
 そして、札幌地裁判決では、各原告に生じた精神的損害のほか、財産的損害も加えた損害の総額から、東電が既に各原告に対して賠償した金額をそれぞれ控除し、全体として合計5,300万円が認容されております。
 続きまして、福岡地裁でございます。
 昨年6月24日に判決が言い渡されまして、最終的な原告数は53名、精神的損害、財産的損害への賠償を請求しています。
 主な判決内容につきましては、精神損害につきましては232ページからございまして、自主的避難等対象者に対する慰謝料額の基準を原則として、本件事故時、妊婦または子供であった者については50万円、それ以外の者については25万円とし、24年1月1日時点で妊婦または子供であった者については、さらに25万円を加えるとされています。また、それ以外の原告については、避難の相当性が認められる場合には、自主的避難等対象者に対する基準を参考にして慰謝料が算定されています。
 そして、福岡地裁判決では、各原告に生じた精神的損害のほか、財産的損害も加えた損害の総額から東電が既に各原告に対して賠償した金額をそれぞれ控除し、全体として約490万円が認容されています。
 3つ目の地裁でございます。仙台地裁ですね。こちら昨年8月11日に判決が言い渡され、最終的な原告数は83名です。原告らは精神的損害への賠償のみを請求しています。
 主な判決内容といたしまして、損害論は122ページからございます。慰謝料の額については、避難慰謝料及び故郷喪失・変容慰謝料、健康不安慰謝料、その他の慰謝料に分けて算定されています。避難慰謝料及び故郷喪失・変容慰謝料は125ページ、 126ページのとおりでございまして、原告らの生活地域ごとに算定をされています。
 双葉町につきましては、避難慰謝料、故郷喪失・変容慰謝料の合計が1,500万円、浪江町、富岡町、葛尾村、小高区につきましては、避難慰謝料850万円、故郷喪失・変容慰謝料は100万円とされております。原町区は、避難慰謝料180万円とされておりまして、これが相当と判断されています。
 健康不安慰謝料及びその他の慰謝料は、126ページ、127ページにございまして、原告らごとに、本件に表れた一切の事情を勘案して、それぞれ算定するとされております。
 そして、判決では、各原告に生じた精神的損害の総額から、東電による精神的損害に対する賠償額をそれぞれ控除いたしまして、全体として約1億4,000万円が認容されております。
 地裁最後でございますけれど、東京地裁における判決です。
 昨年10月9日に判決が言い渡されております。
 ここですいません。参考資料の3で10月8日と書いてございます。これは、9日の間違いでございますので、訂正をさせていただきたいと思います。
 10月9日に判決が言い渡されておりまして、最終的な原告数は54名。原告らは、精神的損害及び財産的損害への賠償を請求しております。
 判決内容につきましては、精神的損害が864ページからございまして、都路地区に生活の本拠があった原告らは、本件事故により生活の本拠からの避難を余儀なくされたことにより、1人当たり30万から198万円の精神的損害を受けたものと認められるが、東電から避難慰謝料の支払いを受けた者については損害が塡補されており、他方、生活の本拠からの避難を余儀なくされたものではない原告らは、本件事故により精神的損害を受けたものとは認められないとされております。
 そして、判決では、各原告に生じた精神的損害のほか、財産的損害も加えた損害の総額から、東電が既に各原告に対して賠償した金額をそれぞれ控除し、全体として合計約6,500万円が認容されております。
 では、続きまして、高裁判決2つでございます。
 まず、仙台高裁判決、こちらは福島地裁判決の控訴審でございますけれど、原審となる福島地裁では、平成29年10月10日に判決が言い渡されて、その控訴審となる仙台高裁では、昨年9月30日に判決が言い渡されております。一審原告らの総数は3,817名で、精神的損害への賠償のみを請求しております。
 主な判決内容といたしまして、損害論は230ページからございまして、一審原告らの主張する「ふるさと喪失」損害も、これを除いた平穏生活侵害に基づく損害も、いずれも訴訟物は異ならないとしまして、旧居住地が帰還困難区域、旧居住制限区域、旧避難指示解除準備区域である一審原告らについては、「ふるさと喪失」損害及び平穏生活侵害に基づく損害が認められるか、認められるとして、その額を幾らと評価するべきかを判断するとされております。
 そして、239ページから241ページにございますけれど、一律請求に係る考え方については原判決と同様であるとした上で、一審原告らの旧居住地によって一審原告らを9つのグループに分けて、それぞれのグループごとに損害額が算定されています。
慰謝料につきましては、362ページから、大部にわたって記載がございますけれど、本件事故時の旧居住地が帰還困難区域並びに大熊町及び双葉町の居住制限区域及び避難指示解除準備区域については1,600万円、大熊町を除く旧居住制限区域については1,150万円、大熊町、双葉町を除く旧避難指示解除準備区域については1,100万円、旧緊急時避難準備区域については280万円、南相馬市の旧特定避難勧奨地点については540万円、旧一時避難要請区域については80万円、自主的避難等対象区域についてはゼロから51万円、県南地域及び宮城県丸森町についてはゼロから34万円、その他の地域についてはゼロから11万円、以上のような損害額が認められております。
 そして、判決では、東電の自主賠償基準を超える賠償を東電から受けている者については、その超える額を、各グループで認定した慰謝料額のうち東電の自主賠償基準を超える額から控除し、全体として合計10億1,000万円が認容されています。
最後でございますけれど、東京高裁判決でございます。
 原審となる前橋地裁では、平成29年3月17日に判決が言い渡され、その控訴審となる東京高裁では、本年1月21日に判決が言い渡されました。一審原告らの総数は91名です。一審原告らは、精神的損害への賠償のみを請求しております。
主な判決内容につきまして、損害論につきましては227ページからございます。慰謝料の算定については267ページからの記載がございまして、本件における被侵害利益が多様な利益が結びついた包括的な平穏生活権の侵害であることを前提に、個々の一審原告らについて従前の生活状況、避難の状況、避難生活の状況等の具体的事情を考慮して、各人ごとに慰謝料額を算定するのが相当とされております。
 慰謝料額については、286ページから、これまたたくさんのページにわたってございますけれど、世帯ごとに具体的事情を勘案して算定をしております。
 そして、東京高裁判決では、各一審原告に生じた精神的損害の総額から、東京電力による精神的損害に対する賠償額をそれぞれ控除いたしまして、全体として1億2,000万円が認容されております。
 御説明は以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。それでは、この点につきまして御意見を頂戴いたします。
 これまでも、こういった裁判がこれ以外にもあるわけで、判決が出されたことを踏まえて、指針を見直さないのかという御質問を頂いておりますが、これまでの各裁判所の判決は、かなり内容が異なっておりますし、いずれも確定前のものでありますから、いずれかの判決に従って指針を改めるというには時期尚早ですので、それらの判決の基になっている考え方等々を考慮して、慎重に検討を進めていきたいと考えているところです。
 また、先ほども申し上げましたけれども、中間指針で一律にというよりも、現時点では、様々な特殊な要因にきめ細かく応えていくことが重視される状況になってきていると認識しておりますので、先ほど紹介申し上げましたADRの和解事例集等で対応していくことがより現実的だろうと現時点では考えているところです。
 いずれにしましても、今後ともしっかりと賠償の状況、それから損害につきましても、いろいろと新しい状況が出てくるかもしれませんので、それらについて慎重にフォローアップをして、必要がある場合には、この場で改めて審議、判断をしていきたいと思っております。
 委員の皆様から何か御発言ございましたら、お願いいたします。
 では、大塚会長代理、お願いします。




【大塚会長代理】  大塚でございます。
 昨年の9月30日に出されました仙台高裁判決につきましては報道でも取り上げられておりまして、中には中間指針の在り方を問うようなものもございました。
 判決に対するコメントは控えたいと思いますけれども、いま一度、中間指針の位置づけについて確認をしておきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。




【鎌田会長】  御指摘のように、個別の判決にコメントをするのはいかがなものかと思いますけれども、中間指針の位置づけについて、正面から議論の対象にされているので、その点については認識を共通にしておいたほうがよろしいかとも思いますので、事務局から、どのようなことが語られているのかについて御紹介をいただければと思います。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  それでは、判決について、指針の位置づけが述べられている部分がございますので、そちらについて御説明させていただきたいと思います。
 仙台高裁ですね。こちらでございますけれど、全中間指針の位置づけというところが書いてございますのが、全体の295ページがございます。そこにまとめられて書いてございますけれど、本当に全部まとめてあるのは296ページにございまして、こちらを読み上げさせていただきます。
 296ページの真ん中の辺りでございますけれど、「以上によれば」のところですね。「全中間指針において定められた額は、指針策定当時までの事情を基に、個別事情を捨象して、当該地域に居住していた全住民に共通する損害項目を考慮に入れながら、一審被告東電側も任意の支払いを拒否することのないように合理的と考えられる額として定められたものと解されるから、任意の支払いを念頭に置いた和解金的な色彩があることは否定できないところである。そうすると、本訴において口頭弁論終結時までの事情を基に、一審被告東電による任意の支払いを期待するという要素を考慮に入れずに、本件事故と相当因果関係のある損害額を定める場合に、全中間指針における基準額よりも高い額となることは、ある意味では自然な結果であると言える」というふうにされております。
 以上でございます。




【大塚会長代理】  よろしいですか。
 この判決は原子力損害賠償法の18条が、紛争審査会は原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合における和解の仲介及び当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な支援の策定をするとしているところを取り上げて指摘しているというふうに考えております。
 ただ、紛争審査会といたしましては、これは鎌田先生におっしゃっていただくことでもあって恐縮ですが、東京電力が支払いを拒否することがないように損害を認定したということはございませんし、特に中間指針の第4次追補までの辺りの状況を考えますと、その策定の経緯におきまして、東京電力がそれを拒否するようなことは、事実上、非常に考えにくい状況であったということもございます。紛争審査会は、そのようなことを想定する状況になかったということもございまして、当時のことを想起していただければ、実際上は、この点は自明であると思われます。
 むしろ、不法行為に関する判例とか学説では、認めるべきかどうかが必ずしも明らかでなかった住宅確保損害とか自主的避難者の損害等を含めて賠償の対象に含めてきたということがございます。その意味で、任意の支払いを拒否することのないように合理的な額を定めるというようなことを判決がお書きになっている箇所は誤解を招きやすい指摘ということは言えるのではないかと思います。
 ただ、中間指針が各被災者の個別事情を十分に斟酌できないということは、個々の事例まで精査する時間も権限もない紛争審査会の性質上、避けることはできませんので、この点は判決が指摘しているとおりではあると思います。
 中間指針の策定のときの能見会長も、中間指針が個別事情について考慮していないということは何度も指摘しているところでございまして、この点はそのとおりだということを追加的に申し上げておきたいと思います。
 取りあえず、恐れ入ります。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 ほかの委員の方、何かこの点について御意見ございましたら、御発言をお願いいたします。




【須藤委員】  須藤ですけれども、よろしいでしょうか。




【鎌田会長】  はい。




【須藤委員】  今の大塚先生のお話、そのとおりではないかと思います。ただ、原子力損害賠償紛争審査会として、個別事情については全く考慮しないという姿勢だったという誤解を招いてもいけないので、一言付け加えさせていただきますと、中間指針は、可能な限り早期の被害者救済を目指して一定の類型化が可能な損害項目やその範囲を示したものであって、この中間指針で対象とされなかったものが直ちに損害賠償の対象とならないものではなく、「中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意されることが必要である」と明記しています。個別の事情もADRなどを通じて救済を図るというのが審査会の姿勢であり、それは今も変わらないということを明らかにしておきたいと思います。
 以上です。




【鎌田会長】  その点は全くおっしゃるとおりですし、しかも、どちらかといえば、当初、念頭に置いたのは、特別損害は個別に検討しようということだったと思いますが、いずれにしろ個別事情を考慮して、指針の提示する額より引き下げるということは全然考えていないわけで、指針は、いわゆる本件事故と相当因果関係のある損害及び、場合によっては、その損害額の算定方法について、これは東電が払ってくれるだろうということを期待してではなくて、被害者がそれで納得していただける、被害者に十分な救済を与えることができるという線を中間指針で出していった。それでも足りないという特別事情があれば、それは個別にADRセンター等を活用して解決していってほしいと、こういうふうな考え方で指針を策定してきたつもりですので、そういう意味では、中間指針の在り方について正確に御理解いただいた記述ではないという印象は免れないというふうに、中間指針等の策定に関わった者としては言わざるを得ないところだろうと思っております。
 多少、踏み込み過ぎた発言であるかもしれませんけれども、そのような感想を私は持っております。
 ほかの委員の先生方から、何か補足、訂正等がございましたら、よろしくお願いします。
 よろしいでしょうか。
 それでは、これで、もう時間も大分超過しましたし、議事も終わりたいと思いますが、全体を通じて、委員の皆様から何か補足的な御発言はございますか。
 特にないようでしたら、これで終わりたいとは思いますけれども、事故後10年を迎えるということですので、私からも一言申し上げたいと思います。
 平成23年3月11日に、これまで我が国が経験した中でも最大規模の災害となった東日本大震災が発生し、地震とそれによって引き起こされた津波などによって多くの方々が犠牲となりました。そして、東京電力の福島原子力発電所における事故によって広範囲にわたる放射性物質の放出などがもたらされ、それまで平穏な暮らしをしていた多くの方々が、避難を強いられるなど多大な損害を被ることになりました。その日から、間もなく10年が経過いたします。
 震災の混乱の中、同年4月には本審査会が設置され、こうした多くの被害者の方々を迅速、公平かつ適正に救済するため、精神的損害などの損害の範囲等を示した中間指針の策定等を行ってまいりました。
 先ほど東京電力から説明がありましたように、これまでの同社に対する直接請求では約270万件、9兆円を超える賠償が行われましたが、指針等はこうした被害者の方々の早期救済に貢献することができていると考えております。
 また、平成23年9月には、被害者の方々が東京電力との賠償交渉をスムーズに行い、迅速かつ適正な紛争解決を図ることができるよう、法曹界の御協力によって多くの弁護士に御参集いただき、ADRセンターが設置されました。ADRセンターによる和解の仲介においては、これまでに手続が終了した約2万5,000件の案件のうち8割程度で和解が成立しています。
 ADRセンターへの申立件数はピーク時に年間約5,000件にも上りましたが、時の経過とともにその数は減少してまいりました。このように、被害者の方々への賠償が進み、現在は多くの被害者に対して迅速さを最優先にした一律賠償の段階から、個別事情に応じたきめ細かな賠償が求められるフェーズになっています。
 一方で、いまだADRセンターに対する新規の申立てが行われ、裁判所に複数の訴訟が係属していることに象徴されますように、損害賠償については、事故後10年が経過するからといって特別な区切りが来るわけではありません。
 審査会としては、平成26年以来、毎年、現地を視察してまいりました。現在では避難指示が解除され、インフラ整備が進み、道路や常磐線が開通することなどによって、復興が進展しつつある地域も見られるようになりましたが、いまだに避難生活を余儀なくされているなど、事故の爪痕が深く残っているところもあることを実感いたしました。
 今後も引き続き審査会の開催や被災地の視察などを通じて、地元の声に耳を傾けるとともに、賠償状況をフォローアップし、必要な対策を行ってまいります。また、ADRセンターにおいて和解の仲介を進めてまいります。
 東京電力には、引き続き自らが定めた「3つの誓い」、すなわち最後の一人まで賠償貫徹、迅速かつきめ細かな賠償の徹底、和解仲介案の尊重、これをしっかりと遵守し、仲介委員の示す合理性のある和解案を尊重していただくこと、及び、時効を理由に賠償を拒むことがないようにすることを求めます。
 また、事故当初とは異なり、個別事情に応じた賠償が求められる機会が多くなっていることから、一つ一つの案件にきめ細かく対応できる体制を整えるとともに、社内教育も徹底させ、被害者に寄り添った賠償をしていただくよう要請したいと考えます。
また、文部科学省をはじめとした関係機関には、速やかな損害賠償請求を促す広報活動などを今後も積極的に行っていただきたいと思います。
 最後に、事故からこれまで、被害者の方々を救済するため、円滑かつ適切な賠償の実現に大変な御尽力を賜りました関係者の皆様には、深く御礼を申し上げるとともに、今後ともますますの御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 以上、よろしくお願いいたします。
 それでは、ほかに、特に委員の皆様方から御発言がないようでしたら、本日の議事を終了したいと思いますが、よろしいでしょうか。
 予定の時間を大幅に超過してしましいましたが、長時間にわたりまして熱心な御審議に加わっていただきまして、ありがとうございます。心より御礼申し上げます。今後とも審議会を必要に応じて開催するとともに、適宜賠償の状況等を確認していきたいと思います。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  それでは、次回の開催につきまして、改めて御連絡させていただきたいと思います。
 また、議事録は事務局のほうでたたき台を作成いたしまして、委員の皆様に御確認いただいた上で、次回開催までにホームページへ掲載させていただきたいと思います。
 以上でございます。




【鎌田会長】  それでは、本日は以上をもちまして閉会とさせていただきます。誠にありがとうございました。




―― 了 ――

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(研究開発局原子力損害賠償対策室)