原子力損害賠償紛争審査会(第52回) 議事録

1.日時

令和2年9月24日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 原子力損害賠償紛争審査会による現地視察結果について
  2. 地方公共団体等からの主な要望事項について
  3. 東京電力ホールディングス株式会社による賠償の現状について
  4. 原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況について
  5. 損害賠償請求権に係るこれまでの取組及び今後の対応について
  6. 復興庁設置法等の一部を改正する法律案の成立について
  7. その他

4.出席者

委員

鎌田会長、大塚会長代理、明石委員、内田委員、樫見委員、須藤委員、富田委員、中島委員、中田委員

文部科学省

高橋文部科学副大臣、生川研究開発局長、堀内原子力損害賠償対策室長、永井原子力損害賠償対策室室長代理、井出原子力損害賠償対策室次長

オブザーバー

【説明者】
内田東京電力ホールディングス株式会社福島原子力補償相談室長、佐々木原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)室長、星原子力損害賠償・廃炉等支援機構執行役員、設楽日本司法支援センター第一事業部長、麻山復興庁参事官

5.議事録

 【鎌田会長】  それでは、定刻を少し過ぎましたが、第52回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。
  本日は、ウェブ会議の形となりましたけれども、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
  本日、この場に、高橋文部科学副大臣に御出席いただいておりますので、高橋副大臣から御挨拶をいただきます。
  副大臣、よろしくお願いいたします。




【高橋文部科学副大臣】  先日、文部科学副大臣を拝命いたしました高橋ひなこと申します。本日は、皆様、ありがとうございます。開会に当たりまして、一言、御挨拶を申し上げます。
 原子力損害賠償紛争審査会の委員の先生方におかれましては、指針に基づく賠償が着実に進むよう、賠償状況や被災地の実態のフォローアップに御尽力いただいており、心から感謝を申し上げます。特に、今月2日には、新型コロナウイルス感染拡大を防止する観点から、紛争審査会を代表していただいて、鎌田会長、大塚会長代理におかれましては、南相馬市、双葉町、大熊町を御視察いただくなど精力的に御活動をいただいており、御礼を申し上げます。
 本日は、その現地視察の結果、東京電力による賠償の現状、損害賠償請求権に係るこれまでの取組の状況などについての報告、意見交換などがなされると伺っております。
 政府としては、原子力災害からの福島の復興・再生を加速させ、政府一丸となって一日も早い復興を目指して取り組んでいるところであります。文科省としても、引き続き被害者の方々に寄り添いながら、原子力災害からの復興に向けて取り組んでいく所存です。紛争審査会におかれましても、公平かつ適正な賠償が一層進むように、今後とも有意義な御議論をどうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 高橋副大臣は、御公務のため、ここで退席となります。本当にどうもありがとうございました。




【高橋文部科学副大臣】  ありがとうございました。よろしくお願いします。




【鎌田会長】  それでは、初めに、事務局より資料等の確認をお願いいたします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  文部科学省の井出でございます。
 事務局の人事異動がございましたので、初めに御紹介をさせていただきます。
 8月1日付で、研究開発局原子力損害賠償対策室の室長に着任いたしました堀内大臣官房審議官、今日、ちょっと遅れて参ります。
 また、室長代理に着任いたしました永井開発企画課長でございます。




【永井原子力損害賠償対策室室長代理】  よろしくお願いします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 今回の審査会は、ウェブ上の開催のため、事前に資料1から資料11、参考資料、参考1から参考3についてお送りしておりますが、送付した資料について不足等がございましたら、事前に配付している会議への参加方法にある連絡先にお知らせいただきたいと思います。
 本日は、原子力損害賠償紛争審査会の組織等に関する政令第3条第2項に基づきまして、過半数の委員の皆様に御出席をいただいております。会議開催の要件を満たしておりますことをあらかじめ御報告させていただきます。
 以上でございます。




【鎌田会長】  それでは、議事に移ります。
 議題1、原子力損害賠償紛争審査会による現地視察結果について、これは議題2の地方公共団体等からの主な要望事項についてと非常に密接に関連しておりますので、議題1と議題2についてまとめて事務局から御説明をいただきます。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  それでは、議題1、2に関して、まず資料1から御説明させていただきます。
 こちら、紛争審査会による現地視察の結果ということでございまして、今月の2日でございますけれども、賠償の実施状況を確認するため、鎌田会長、大塚会長代理に現地を視察していただいております。
 視察先といたしましては、大町病院、これは南相馬市でございますけれども、猪又院長ほかと意見交換をさせていただいております。また、南相馬市につきましては、営業再開ができていない農業体験実習館の周辺、あるいは商店街を視察。市役所におきまして、門馬市長ほかと意見交換をしております。
 双葉町につきましては、被災当時の双葉町役場、復興産業拠点の中心となる産業交流センターなどを視察いたしまして、伊澤町長、佐々木議長ほかと意見交換をさせていただいております。
 大熊町に関しましては、本年3月、開通いたしました常磐線大野駅の周辺ですとか、イチゴの栽培施設、こういったところを視察させていただきまして、吉田町長、吉岡議長と意見交換をさせていただいております。
 次のページでございます。現地視察におきまして、被災自治体等の主な御発言でございます。
 まず、大町病院でございますけれども、収入は回復している、しかし収入の7割を人件費として支出している。常勤の医師や看護師の確保が難しくなった。採用活動の強化等を通じて、ある程度増加してきているが、まだ足りないということでございます。看護師は、資格があるので、避難先、移転先等で定着してしまって戻ってこないという実情があります。放射能の風評被害で、人材確保が難しい面もあるということでございます。経営していた老人保健施設を建て直す際に土地の除染費用等を請求しましたが、東京電力に認められなかったということですが、賠償だけでなく、前を向いていくことが重要とおっしゃっていました。
 南相馬市につきましては、商工賠償の営業損害につきまして、市内の人口減少、商圏人口の減少により大きな影響を受けている。市内の事業者の30%前後が未請求か、まだ請求は完了していない、東京電力にはしっかり賠償してもらいたい。公物賠償につきましては、不動産は全損とされても、撤去費用を賠償金に含めないのが東京電力の立場である。自動車事故では、全損の車両について、処分費用、解体費用は裁判例で別途認められており、撤去費用を賠償の対象にしてほしい。市の賠償請求につきまして、ADRセンターにおける和解仲介手続に2年以上かかった案件がある。提出書類が多過ぎるし、時間がかかり過ぎている。営業損害の申立てについて、ADRセンターが和解仲介案を出しても、東京電力が拒否する場合があるため、ADRセンター側が東京電力に忖度した和解仲介案しか出していないのではないか。市の施設である農業体験実習館は、除染をしているにもかかわらず、空間放射線率が下がらない。市としては、移住者を募っており、自然が豊かであることを売りにしていた。住民の方々については、生活の楽しみになっていましたが、自然の享受ができないという問題があるということでございます。
 双葉町につきましては、唯一、全町避難が継続し、町民は今もなお42都道府県にて避難生活を送っている。避難指示が解除され、戻れるけれども戻らないケースと、双葉町のように戻りたくても戻れないケースでは精神的な損害は全く違う。被害は継続していると認識しており、賠償を言い続けるつもりはないが、現在の賠償の在り方については疑問に思っているということでございます。また、双葉町民が置かれている現状を認識いただき、中間指針に反映してほしい。原賠審の委員におかれては、ぜひ全員、双葉町にお越しいただき、現状を見ていただきたい。賠償請求権を行使していない本賠償未請求者がいる。東電は時効を援用しないと説明しているが、援用しないという担保が欲しい。ADRセンターの和解仲介案を東電が拒否するケースがあり、これはのむべきであるというような御意見がございました。
 続きまして、大熊町でございますが、営業損害について、農業者は継続的な賠償を続けていくという合意を得ていると承知しているが、商工業者はそれがない。商工業の賠償は2%程度と聞いており、低過ぎる。しっかり賠償するように東京電力を指導してほしい。地方公共団体の財物賠償につきまして、民間と異なることは理解するものの、復興の予算を使うのは心苦しい。ADRセンターの和解事例が水平展開されていないこと、ふるさと喪失で賠償が認められている判決もされていることなどを考慮した中間指針としてほしい、というような意見がございました。
 それに続きます要望書、こちらは双葉町と大熊町のほうからいただいた要望書がございます。こちらにつきましては、その次の資料2でございますけれども、地方公共団体等からの主な要望事項の中に取り込んでおりますので、こちらを御紹介させていただきたいと思います。資料2につきましては、第51回、前回の審査会以降にこちらに寄せられた要望のうち、主な事項をまとめたものでございます。
 避難者等への賠償につきまして、被害者の生活や事業の再建につながるような現地調査などを通して現状をしっかり把握し、中間指針等の適時適切な見直しを行うこと。審査会としての責務を改めて認識し、避難生活が続く間、実費等が発生している場合にあっては、その個別事情に応じた賠償は確実に実施されるよう審議し、中間指針に示すこと。紛争解決センターの和解仲介手続においては、個別事情による精神的損害の増額など指針の基準を超えた和解が成立していることを踏まえ、類似した損害については共通しているものとして中間指針に確実に反映すること。裁判によって様々なケースの判決が下されており、類似事例につきましては中間指針に示すこと、というような要望をいただいています。
 2.営業損害、風評損害等に係る賠償でございます。こちらにつきましては、被害者からの相談や請求に丁寧に対応するなど賠償を的確に行わせること。避難指示区域内の商工業者、農林業者、営業損害、及び就労不能損害の終期については、一律に終期を定めるのではなく、損害が継続、または発生している場合には、個別事情に対する確実かつ迅速な賠償の実施について中間指針に明示すること、とあります。
 3.地方公共団体に係る賠償でございますが、地方公共団体が負担した費用等につきまして迅速かつ確実に賠償を行わせること。財物に関する損害につきましては、迅速に賠償を行うとともに、個別具体的な事情による損害について柔軟に対応させること。地方公共団体の不動産に係る賠償につきまして、帰還困難区域内に存在している公共施設は、避難の長期化に伴う管理不能により荒廃が進んでいるため再整備を想定しているが、この際、住宅確保に係る損害の指針を公共施設にも準用するよう中間指針に示すこと。
4 .といたしまして、紛争解決センターによる和解の仲介でございます。こちらは、センターが示す和解仲介案の積極的な受入れはもとより、個別具体的な事情への誠実な対応を含め、実態に見合った賠償を的確かつ迅速に行うよう東京電力を指導すること、というような御指摘がございました。
 最後、5.消滅時効につきまして、東京電力に対して、未請求者の掘り起こしや周知活動を徹底させること。消滅時効を援用しないことを具体的かつ明確に示すよう指導するとともに、被害者が請求の機会を失うことがないよう和解仲介手続の一層の周知などを行うこと。平成25年、原賠時効特例法が施行され、消滅時効が10年に延長されましたが、請求権を行使していない被害者がいる。消滅時効を援用しないよう中間指針に示すとともに、賠償基準の策定や賠償金の支払いを遅延させないよう、国と東電に強く申し入れること。時効特例法の第3条を改正し、損害及び加害者を知ったときから20年とすること。原発事故の損害賠償について、時効期間の延長も含め、法的措置等について検討すること。
このような要望等をいただいております。
 御説明は以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するという観点から、私と大塚会長代理が審査会を代表して現地視察を行いましたので、まず、私から現地視察での発言内容や感想を御報告しておきたいと思います。
 現地は、最初の訪問先の紹介の中にもありましたように、新たな復興を目指した施設の運用が開始されていたり、また、町の経済とか行政を支援するために、高度な専門的技能を持った方を含めて、町に移住して行政や経済の活動を支えてくださっているというような明るい動きもあります。しかし、特に双葉町、大熊町におきましては、住民の帰還が達成できないというようなことで、大変厳しい状況の中に依然として置かれているということであります。そういう中で、行政、あるいは市民の皆さんは大変な御苦労をされているということを重ねて実感してまいりました。
 そうした背景があるからと言って間違いないと思うんですが、今回の現地視察におきまして、これまでと同じではありますが、双葉町や大熊町から中間指針の見直しの要望がありました。具体的には、先ほども紹介されておりますけれども、精神的な損害や避難費用を含むその他の実費等が発生している場合にあっては、その個別事情に応じた賠償が確実に実施されるよう、改めて審議し、指針に示してほしい。あるいは、避難指示区域内の商工業者及び農林業者の営業損害及び就労不能損害について、一律に終期を定めるのではなく、一括賠償後においても損害が継続、または発生している場合は、その個別事情に対する賠償を確実かつ迅速に実施してほしい、それを指針に明示してほしいと、こうした趣旨の要望がございました。
 中間指針は、一律に終期を定めて打切りを決めたり、実質的な損害があるけれども、それを賠償しなくていいと、こういうようなことは一切言っていないわけでありますが、それを前提にしながらも、中間指針を改訂してくれればすぐに賠償が得られると、こういうような期待が大きいと思いました。私どもといたしましては、従来も説明してきたところではありますけれども、被害者の迅速な救済のために一律の目安を示す中間指針の役割と、個別の案件について、それぞれの事情にきめ細かく対応していくADRの役割とは異なっている、その2つが車の両輪のごとく調和しながら活動を進めていくことが被害者の救済に役立つと、こういうような考え方で進めてきているということを説明してまいりましたし、今回もそのような説明をいたしました。
 ただ、ADRでどのような解決がなされているかということは、従来はそれほどよく知られてこなかった。そのために、ADRは機能不全に陥っているというような、暴言といいますか、指摘もないわけではなかったということでありますが、ADRの和解事例は相当数積み上がってきております。それが中間指針を補完する役割、重要な役割を担っていると、このように考えております。そこで、後ほどADRから詳しく御説明がいただけると思いますけれども、本年6月には、和解事例を損害項目ごとにまとめて検索しやすくするとともに、個別の事例を整理した和解事例集を取りまとめ、これを被災自治体等に配布しております。この和解事例集をぜひ御活用くださいと、こういう話をしてまいりました。
 現地視察をした上での感想については冒頭で少し触れたところでございますが、併せて、大塚会長代理も御参加くださいましたので、大塚会長代理からも御感想等を御報告いただければと思います。




【大塚会長代理】  恐れ入ります、大塚でございます。では、感想等について申し上げさせていただきたいと思います。
 先ほど、事務局のほうからも御説明ございましたが、私なりの感想を申し上げますが、大町病院につきましては、パワーポイントなどを使って丁寧に御説明をいただきました。賠償と直結する話ではございませんでしたけれども、医師とか、看護師の確保に今でも懸命に取り組まれている状況が伝わってきました。
 南相馬市におかれましては、人口が5万3,000人減少したということで、浪江町とか双葉郡のような商圏の人口減少による影響が大きいということでございました。営業損害につきましては、例えば小高区では26%の事業者が未請求か、請求が完了していないということでございまして、最近では書類作成が難しくなっているということ、新しい資料が求められる例もあるということでございました。自治体賠償につきまして、不動産賠償に関して撤去費用が含められていないことが指摘されていました。市の賠償請求について、ADRで2年以上かかっているものがあること、それからADRの判断が出ても東電が受け入れてくれないケースがあることが指摘されました。また、除染はしているけれども、線量が下がらないので、移住者を招くときに自然が豊かだという南相馬市の特徴を主張できなくなってしまっているということも指摘されていました。
 双葉町につきましては、帰還できない状態が続いていて、最短で令和4年の春に初めて帰還できるようになるので、ほかの地域とは大分違うということを強調されていました。現在、未請求者は30名程度で、消滅時効を東電が援用しないことを担保するものを示してほしいということを要望されていました。一括賠償につきまして、原状回復の点でなお足りないという意見とか、一括賠償は帰還の断念を考えているけれども、特定復興拠点の制度がその後に出てきたので、変わってきたのではないかというようなこともおっしゃっていました。
 大熊町につきましては、町民の96%が暮らしていた土地が帰還困難区域になっていて、避難が長期化しているということでございまして、特に商工業の賠償につきまして東電にしっかり賠償するように指導してほしいと言われました。裁判例との関係で、ふるさと喪失の問題も指摘されました。
 全体として、徐々に復興は進んでいますけれども、各地で被災者、病院、自治体の方々が涙ぐましい努力をされていることが伝わってきました。特に、商工業の営業損害は問題になっていると思われます。また、先ほど会長もおっしゃったように、基本的に中間指針は一律の目安でございますが、これとは別に個別事情に応じた賠償の必要な事例が増えているということでございまして、先ほど会長がおっしゃった和解事例集が中間指針と個別事情に基づく賠償をつなげる架橋になる、そういう役割を果たすのではないかと考えております。
 裁判の動向については、引き続き注視していく必要があると思っております。
 以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 それでは、議題1及び議題2に関しまして、委員の皆様から御質問、御意見がございましたら、自由にお出しいただければと思います。挙手でお願いいたします。よろしいですか。




【樫見委員】 よろしいでしょうか。




【鎌田会長】  はい、どうぞ。




【樫見委員】  樫見でございます。
 被災自治体等の主な御発言の大町病院の件ですが、4ポツ目、経営していた老人保健施設を、別の用地を確保し、建て直す際に、土地の除染費用等を請求したとありますけれども、この点について、東京電力はなぜ認めなかったのかということについてはお分かりでしょうか。もし、お分かりでしたら教えていただきたいと思います。




【鎌田会長】  これは、どうでしょう、東京電力として、今、お答えをなさる準備はございますか。




【内田室長】  すみません、個別の事案について、今、詳細に把握できておりませんので、申し訳ございませんが。




【鎌田会長】  事務局も、その経緯は御存じないですね。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  そうですね、ちょっとそれは存じません。




【鎌田会長】  申し訳ありません、これは調べてみて、お伝えできるような内容があれば、追ってお知らせ申し上げるようにしたいと思います。




【樫見委員】  はい、ありがとうございます。




【鎌田会長】  ほかには、御質問、御意見、いかがでしょうか。間もなく10年という節目になるわけで、そういう中で、いまだに帰還ができない区域を抱えていらっしゃる自治体にとっては、我々はこれだけ長く不自由な目に遭っているのに、もう帰れるのに帰らない人たちと同じような扱いを受けているのではないかというような感覚も強いようで、こういう長く帰れないところについては追加的な賠償というような御要望をお持ちで、それは毎回、繰り返し出てくるところですけれども、直ちに中間指針を見直さなければいけないかどうかという点について、できるだけ多くの委員の方の御意見を承っておきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 では、内田委員、お願いします。




【内田委員】  確かに、帰還ができない人たちについて、特別な対応をしてほしいというお気持ちは非常によく分かる、理解できるのですけれども、やはり会長がおっしゃったように、中間指針の性格上、個別の状況への対応というのはADR等に委ねるということで、大きな方針を示すという中間指針の趣旨からしますと、当面は現状のままで維持をして、ADR等で個別の対応をしていくという現在のやり方がよいのではないかと考えております。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 ほかには、いかがでしょうか。




【樫見委員】  よろしいでしょうか。




【鎌田会長】  はい。




【樫見委員】  私も、基本的には、現在の中間指針の改訂というのはかなり慎重に行うべきでありましょうし、非常に影響するところが大であるという点も考えなければいけないと思います。現在まで、ADRにおいて事例もかなり積み重なり、かつ東京電力側にも、こういう場合には認めようというような個別事例の蓄積がかなりあるのではないかと思うんです。我々、審査会側だけではなくて、加害者側である東京電力側も、やはり何らかの方針といいますか、かなり裁判例も出ておりますし、こういった裁判事例、それから東電側が、個別であったとしても、ある程度認めた事例について、東電側としてもこういうものは認められるというような方針を示すというのも、かなり困難であろうとは思いますけれども、一案ではないか。
 以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 ほかには、いかがでしょうか。よろしいですか。引き続き、現地からの要望をしっかりと伺いながら、なお、中間指針として対応すべき……。須藤委員、御発言でしょうか。よろしいですか。事故から間もなく10年たつということで、その時点までに、我々の果たしてきた役割について総括をして、現状に適切に対応するについて、指針を改めることも含めて、この審査会が十分な役割を果たすにはどうしたらいいか、引き続き検討を続けていければと思っているところでございます。
 ありがとうございました。それでは、恐縮ですが、先に進ませていただきます。
 次に、議題3の賠償の現状について、東京電力ホールディングス株式会社より御説明をいただきます。




【内田室長】  東京電力ホールディングスの内田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、賠償の状況につきまして御報告する時間をいただきまして、誠にありがとうございます。
 当社の原子力発電所の事故から9年6か月がたちました。このような長い時間が経過しても、なお多くの皆様に御迷惑と御心配をおかけしておりますことを、この場を借りてお詫び申し上げたいと思います。
 当社といたしましては、後ほども御説明申し上げますが、いまだ対応として至らぬ点が多々あるものと認識しております。そうした点を一つずつでも改善しながら、福島復興の責任を最後まで果たしてまいる所存ですので、委員の先生方におかれましては引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。
 それでは、資料の説明に入らせていただきます。資料3、原子力損害賠償のお支払い状況等について御説明させていただきます。
 1ページ目については、賠償金のお支払いの実績等についてでございます。中ほどの表のお支払い総額のところを御覧いただきますと、本年7月末時点で総額約9兆5,449億円のお支払いという形になってございます。ちなみに、直近ですと、9月18日、先週末時点で約9兆5,600億円となっておりまして、7月末から比べますと約151億円増加しております。
 下のグラフが賠償のお支払い額の推移でございます。一番右側の棒グラフですが、グレーの部分、個人の方へのお支払いが累計で約3.19兆円、その上の法人・個人事業主の方へのお支払いが約5.85兆円となっております。ここ数年の傾向として、個人の賠償の伸びが比較的緩やかなのに比べまして、法人・個人事業主などの伸びが大きくなっておりますが、除染等の費用が大きく増加し、これを法人・個人事業主の項目に計上しているためでございます。
 2ページ目以降は、参考資料としまして、個人の方に対する賠償の合意状況、3ページ目が賠償項目別の合意金額の状況、4ページ目に原子力損害賠償請求訴訟等の状況、さらに原子力損害賠償に向けた組織体制を掲載しておりますので、後ほど御参照いただければ幸いでございます。
 続きまして、5ページ目以降を御説明させていただきます。御請求者様対応の強化に関して、当社の取組状況について記載をさせていただいております。
 まず初めに、前回の第51回審査会において、委員の先生方から、事故から9年以上がたち、被害者に寄り添うという事故当初の気持ちが薄れてきているのではないか、また、被害者が、事故だけでなく、当社との賠償交渉において二次的な被害を受けて、心情的につらい思いをしているのではないかという御指摘をいただき、その原因調査と、そういった御意見に対して一歩前進した具体的な対応方策の検討が必要ではないか、こういう御意見を頂戴いたしました。
 当社といたしまして、具体的な対応方策を検討するに当たりまして、当社のコールセンター、あるいは賠償相談受付窓口において、御請求者様からいただいた御意見等も改めて調査したところ、ここに記載がありますが、例えば被害者一人一人の事情を理解せず、ルールどおりに賠償しているだけであるとか、賠償交渉の中で加害者意識が感じられなかった等、前回審査会でいただいた御指摘につながるような御意見をいただいていることを確認いたしました。
 これらの御意見を頂くことになった原因について分析を行いましたが、結論としましては、これまでも被害に遭われた方の個別の御事情に応じた丁寧な対応を志向してまいりましたが、一部に被災者の皆様に寄り添った丁寧な対応が徹底し切れていない事例があったということが大きな要因であると考えております。具体的には、賠償初期は、多数の御請求者様へ迅速に賠償をお支払いするため、中間指針を基にした類型的な対応を優先してまいりましたが、個別の御事情に基づく請求が年々増加している中で、一部の担当者においては、過去の類型的な対応にとらわれた対応が見られたケースや、事故から長い年数がたっても、いまだにつらい思いをされている御請求者様の心情に十分思いを至らせることができなかったようなケースがございました。
こうしたことが結果として、前回審査会で御指摘いただいたような御意見や、御請求者様からの直接の御意見につながっているものと考えております。
 以上のような状況を踏まえまして、こうしたことを改善していく方策として、「御請求者様目線に立った丁寧な御説明の徹底」と、「個別の御事情を踏まえた迅速かつ柔軟な判断の実施」という方針の下、取組を進めているところでございます。
 次の6ページでは、具体的な強化策と、その取組について御説明させていただきます。御請求者様対応の具体的な強化策としまして、主に「教育の徹底」、それから「親身・親切な対応の徹底」の2つに重点を置いて対応を進めてまいりました。
 まず、「教育の徹底」についてですが、前回審査会での御指摘の趣旨を踏まえ、賠償可否を判断する上で、当社目線での類型的な判断に陥ることなく、丁寧に個別事情を伺う等、御請求者様へ寄り添うさらなる意識の醸成と浸透を目的に、次のような対応を実施してまいりました。
 1点目ですが、本年2月に、室長である私から、請求書の確認、賠償の可否判断を行う補償推進ユニットという部署があるんですが、そちらの部署に対しまして講話を行いまして、加えまして、6月には社内のイントラネットを活用してメッセージを掲載いたしております。メッセージの具体的な内容については後ほど御説明させていただきますが、今後もこういった必要な情報発信を継続してまいりたいと考えております。
 2点目は、新規着任者向けの研修についてでございます。御請求者様に真に寄り添った対応の徹底を目的として内容の拡充を実施しており、今後、人事異動の際にも必要な見直しを継続して実施してまいりたいと考えております。
 3点目は、中間指針の正しい位置づけの理解や、それを踏まえた賠償業務の運用の徹底について、これまで社内で実施してきた取組をいま一度確認し、中間指針に記載されていないものが直ちに賠償の対象外ではないということ、中間指針のみで賠償可否について判断、断言するようなことはしないなど、中間指針を正しく理解するため、より充実した内容の教育を徹底してまいります。
 次に、「親身・親切な対応の徹底」についてですが、当社から御請求者様に対して賠償の判断結果を丁寧にお伝えするなど、御請求者様に寄り添った対応を目的として、次に掲げる対応を実施してまいりました。
 1点目は、本年5月より、個別の御事情に基づく複雑な案件等に対する賠償可否の回答については、これまでどおり御請求者様と対面で御説明させていただくことに加えまして、原則、文書回答とするよう業務の運用の見直しを行いました。
 2点目は、先ほどの教育の徹底のところで御説明させていただきました。私からのメッセージにおいて、以下に記載の4点を掲げまして、室内の各組織の幹部には直接指示をいたしております。
 その内容につきまして、1つ目は、御請求者様の心情や、置かれた立場を十分配慮し、丁寧に個別事情をお伺いした上で、中間指針等への形式的な当てはめだけに固執するのではなく、本来の意味合いや、真に必要としているものを理解し、社会常識に照らし、想像力を働かせて判断すること。
 2つ目として、中間指針等に該当しないという理由だけでは理解を得られないことは明らかであり、必要に応じて判断に直接関与した社員が同行する等、判断に至った経緯や理由等の丁寧な説明を行うこと。
 3番目として、判断に時間を要する案件は、適宜、進捗状況をお伝えする等、御請求者様に長くお待たせして不安な思いをさせ、御心配をおかけしないよう、誠実な対応を徹底すること。
 以上の1から3の3つを実行するためには、一人一人が御請求者様対応スキルと御請求者様マインドを磨き続けるとともに、社内の連携、コミュニケーションを密にすることが重要であること。また、一人一人は東京電力の代表として見られているという意識をすること。こういった内容を徹底してまいるよう、全体に指示を出しているところでございます。
 最後に、御請求者様の御負担軽減に寄与する取組を実施していくということで、時間の経過ととともに、証憑の御用意が困難となる場合など、代替証憑の御提案や、当社社員による証憑収集のお手伝い等、御請求者様に極力御負担をおかけしないような取組というのを継続的に実施してまいりたいと考えております。
 なお、今、御説明させていただきました強化策と併せまして、御請求者様に寄り添った対応の更なる強化を推進するため、組織体制の見直しや運用改善にも継続的に取り組んでまいります。
資料に記載はございませんが、具体的に申し上げますと、これまで現地で相談窓口や戸別訪問を通じて御請求者様と直接対応し、請求書の作成支援などを行う補償相談ユニットという組織がありまして、それとは別に、請求書類等の受領、内容確認、支払い可否の判断、支払い手続などを行う補償推進ユニットと、こういう2つの大きな組織に分かれて対応しておりました。この補償推進ユニットという賠償の支払い可否の判断などを行う部署は東京側にあったというのが特徴的なところでございました。この点につきましては、本年10月から両ユニットの補償相談ユニットを残す形で統合いたしまして、東京側にあった補償推進ユニットの機能及び要員の一部を順次、福島側、福島県内に移していくということといたしました。
 これによりまして、現地感覚を今まで以上に身につけるとともに、御請求者様マインドの醸成を図る、更に御請求の受付から賠償可否の御説明までを一体的に運用するということで、御請求者様の心情や置かれた立場を十分に配慮した対応を志向して、御請求者様に真に寄り添った迅速かつ丁寧な対応を推進してまいりたいと考えております。
 私からの御説明は以上でございます。




【鎌田会長】  御説明ありがとうございました。
 特に今御説明くださいました御請求者様対応の強化につきましては、前回の本審査会における指摘を踏まえて、東京電力が実態を調査・分析し、対応していただいたということで、我々としても感謝をしたいと思います。
 ただ、まだ、これは時間がたてばたつほどそうなるのかもしれませんけれども、現地の側ではなかなか請求すること自体が難しいんだという話もございますので、なお実態に応じて、更なる改善も図っていただければということを期待したいと思います。
 ただいまの説明についての御意見、御質問ございましたら挙手をお願いいたします。大塚会長代理、お願いします。




【大塚会長代理】  すみません。大塚ですが、大変いい試みをお考えいただいていると思いますので、ぜひこれを徹底していただきたいと思います。
 なお、今のお話と少しずれるかもしれませんが、先ほど、今回の視察で要望がありました営業損害における商工業賠償について、東電の一括賠償の後の個別対応が厳しいという指摘があるんですけれども、この点についての東電の対応については何かお答えいただくことはございますでしょうか。
 それから、一つ確認をすみません。1ページのところで、最近、法人事業主の損害の支払いが増えている理由として、さっき説明されたんですけど、少し聞き取りにくかったので、その理由を教えてください。




【鎌田会長】  東電、お願いします。




【内田室長】  東京電力でございます。1点目の商工業事業者様に対する一括賠償後の追加賠償が少ないのではないかというお話でございます。確かに数字的に申しますと、今、御請求が約1,000件弱ぐらい、990件ぐらいいただいておりまして、そのうち合意に至って、お支払いが終わっているものが25件ということで、数的にはかなり、確かに少ないということでございます。
 内容をいろいろ分析いたしますと、例えば休業中のまま御請求いただいているケースであるとか、あるいは典型的には不動産賃貸業のように、6年分の逸失利益と、更に財物賠償しているということで、なかなか追加的な賠償は裁判例から見ましても、ちょっと厳しいと考えているようなケース、こういったものが大半を占めているということで、ただ、本当に事業者様のいろいろ御要望、御事情については、より今まで以上に1件1件、丁寧にお答えして、今度は審査をする人間も現地に入り込んで、今、御説明したような組織体制でやっていこうと考えておりますので、                                       今まで以上に突っ込んで御事情を聞きながら対応してまいりたいと考えております。
 すみません。2点目がちょっと私、聞き取れなかったのですが。




【大塚会長代理】  お互いに聞き取れなくてすみません。法人事業主の損害の支払いが増えている理由は、さっき何とおっしゃいましたか。




【内田室長】  すみません。そこは、ここに除染や中間貯蔵の国からの求償のお支払いもここに分けて整理しているものですから、その分が増えているということです。




【大塚会長代理】  分かりました。ありがとうございます。




【鎌田会長】  ほかにいかがでしょうか。




【明石委員】  明石ですけど、よろしいですか。




【鎌田会長】  はい。明石委員、どうぞ。




【明石委員】  明石ですが、1点、東電の方にお伺いしたいんですが、先ほどの現地視察の結果や、県の要望を見ますと、時効について、やはり何回も御説明されているんですが、伝わっていないというか、信用されていないというか、担保を求めるとか、幾つかそういう言葉が出てきているんですけども、真摯に説明するということで、もう少し真意が伝わるような説明というのはもう少しできないんでしょうか。




【鎌田会長】  それは東電からということですね。




【明石委員】  はい。そうです。よろしくお願いします。




【鎌田会長】  では、東京電力、お願いいたします。




【内田室長】  御指摘のとおり、当社も昨年10月にプレス発表いたしまして、時効に対するスタンスも表明しており、時効の援用について一律に適用することは考えていないというような形で、正式にはお知らせしているところです。
 ただ、御存じのとおり、民法の規定もありまして、どうしても歯切れの悪い言い方を、一律に適用することはないというような、やや歯切れの悪い言い方を申し上げているところは確かにあるんですが、我々は直接お会いして、お話しするときには、これの意図するところは、実質的に援用しないと、最後の一人まで賠償貫徹という精神で考えておりますということは、補足しながら説明をさせていただいているところですが、ただ、どうしてもそれが行き渡っているかというところで、若干のそういう御懸念を抱かれているというところかと思っておりますが、後ほども御説明しようと思っておったんですが、今後、総合特別事業計画の改定も予定されておりまして、その中でもこういった時効の問題を位置づけて、スタンスをきちんと御説明していきたいと考えております。そういった点でも補充をしていきたいと考えております。
 以上であります。




【鎌田会長】  よろしいですか。




【明石委員】  はい。どうもありがとうございます。




【鎌田会長】  ほかに御質問あるいは御意見。はい。内田委員、どうぞ。




【内田委員】  最後の7ページ目のところですが、「時間の経過ととともに証憑のご用意が困難となる場合等」があるという点、もう少し具体的な例をお話しいただけますでしょうか。そして、負担軽減に寄与する取組を継続していくというお話でしたけれども、例えばどういうことを恐れていて、どういう御苦労があるかということについて、少し御紹介いただけますでしょうか。




【鎌田会長】  東京電力、お願いします。




【内田室長】  東京電力でございます。やはり我々も何らかの根拠、一定の根拠がないとなかなか、例えばこれが事故による損害であるという認定もしくは推定、推測ができないものですから、そういった意味で、なるべく証憑とかも推認を働かせるような形で考えておりますけども、具体的な事例というのは、今思いつかないんですが、例えばお手伝いという意味では、風評の影響を受けている産品をどのぐらい扱っていたかというのを調べさせていただく際には、もう我々が実際にコピーをさせていただいたり、自ら当社の担当者が出向いて、手を動かして、御請求者様のお手伝いをしていくと、そういったようなことを主にやらせていただいているというところでございます。




【鎌田会長】  よろしいですか。




【内田委員】  どうもありがとうございます。




【鎌田会長】  では、中田委員、お願いいたします。




【中田委員】  ありがとうございます。「御請求者さま対応の強化」の部分についてお伺いしたいと思います。これは前回の審査会での指摘を受けて、このように具体的な強化策を設けていただいたということで感謝しております。他方で、これを拝見しますと、現場あるいは第一線の方々に問題があって、本社は正しいのだけれども、それが十分に伝わっていなかったのだ、だから教育をしようというようにも読めるわけでございますけれども、しかし、被災者の方々にはむしろ全体としての御方針あるいは御認識に疑義をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思います。
 特に和解について応じられないということからも、そのような疑義もあるかと思うんですけれども、会社全体の御方針について改めて御確認をお願いしたいと存じます。




【鎌田会長】  では、東京電力から。




【内田室長】  東京電力でございます。おっしゃるとおり、全体の方針が100%正しいのかというところについては、我々も真摯に考えるべきところがあるかと思っております。特にADRの和解の点について御指摘があったと思いますけども、一部、集団のADR等において和解案の拒否をするという事例がある程度多く出てしまっているということについては、大変心苦しく、申し訳なく思っておりますが、我々としても、会社として全体の影響とかそういったことも考えながら、会社として、これはどうしても、和解の尊重を踏まえても受けられない、受諾が難しいというようなことは、会社として判断して対応しているというところでございます。ただ、当然のことながら、より柔軟な判断、柔軟な対応ができるものについては、少しの認識の相違があっても、そこはもう歩み寄って受諾するということを今徹底して実行しているところでございます。
 そういった意味で、まだ至らぬ点があるとは思いますけども、そういった姿勢では臨んでいるところでございます。
 私からは以上でございます。




【鎌田会長】  よろしいでしょうか。




【中田委員】  当初のお約束に立ち戻って、引き続き御尽力いただければと存じます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。では、よろしくお願いします。
 ほかには御意見よろしいですか。
 それでは、全体の進行の予定もございますので、次に移らせていただいて、また追って総合的な討論の時間も取れるかと思いますので、ここで、東京電力による説明は終了とさせていただきます。
 次に、議題の4番、ADRセンターの活動状況について。ADRセンターより説明をしていただきます。よろしくお願いします。




【佐々木室長】  原子力損害賠償紛争解決センターの室長の佐々木でございます。
 それでは、資料4、全体通しページの26ページにありますが、これに基づいて御説明申し上げます。数値は速報値となっておりますので、その点は御留意いただければと思います。
 表紙をおめくりいただきまして、資料の1ページ目を御覧ください。センターの人員体制についてでございますが、令和2年6月末時点の人員には、仲介委員が276名、調査官が114名、和解仲介室職員が112名となっております。調査官につきましては、申立件数が減少傾向にあることも踏まえまして、自然減に任せておりまして、令和元年末から18名減となっております。今後の申立件数の推移など、様々な諸般の状況を見ながら規模をどうするか、絶えず検討していきたいと考えております。
 続きまして、次の2ページ目ですけれども、申立件数の推移ですが、本年6月末までの申立件数の総数は2万5,897件、申立人数の延べ総数は11万2,158名となっております。ピークでありました平成26年と比較しますと、近年は低水準で推移しております。
 具体的な数字の推移につきましては、次の3ページ目を御覧ください。3ページ目ですけれども、本年の上半期の申立件数は、352件です。昨年の上半期の数字は、資料には掲載しておりませんが、ちょうど676件でありましたので、昨年上半期と比較しますと、約48%の減となっております。また、本年の上半期の申立人数につきましては、743人となっておりまして、昨年上半期の1,463人から約49%の減となっております。
 この申立件数及び申立人数の減少の理由を明確にすることは困難ではありますが、新型コロナウイルス等の影響により、生活や事業が落ち着かなくなったり、あるいは感染防止の対応を取ったりして、現時点では賠償に注力することは難しいという方々が非常に多くおられるのではないかという可能性を考えております。
 次にまた1ページおめくりいただきまして、4ページ目ですけどれも、当センターに初めて申立てを頂いた申立てを初回申立て、同じ申立人によります前回申立てが存在している場合を複数回申立てと呼んでおりますけれども、令和2年上半期に申し立てられた件数のうち、初回申立ての割合が46.6%という高い率を依然維持しております。
 全体のボリュームは減ってはいるのですけれども、そのように初回申立てがまだかなりのボリュームを占めているということは、まだまだ賠償は可能であるのにADRを利用した損害賠償をしていない方も数多くいらっしゃるのではないかと推測されるところであります。そういうこともありますので、広報を更に強化していきたいと考えてございます。
 次に5ページ目でございますが、和解仲介の状況でございます。令和2年6月末までに2万5,141件の和解仲介手続が終了しております。これはこれまでの申立ての総数の97.1%に相当いたします。先ほども御指摘があったのですけども、そのうちの80.1%に当たる2万140件は和解成立ということで終了しております。当センターによる和解仲介が形骸化しているという御指摘も頂くのですけれども、なおまだ和解率は相当に高いものを保っていることになります。令和2年6月末における進行中の件数を未済件数と呼んでおりますけれども、これは756件ありまして、全体の2.9%になっております。
 さらに、1ページおめくりいただきまして、6ページですけれども、各年別の推移を見ますと、令和2年上半期に手続が終了した件数は536件、この数字は昨年よりも少ないペースになっております。令和元年の上半期では653件という数字でありました。このように減ってございますのは、新規件数が減少することによって、係属事件数全体のボリュームが少なくなってきている。それから、事件それぞれも事故からの時の経過に伴って申立人が置かれている状況が多様化しておりまして、和解案を提示するために、かなり申立人ごとの個別事情を丁寧に審理する必要が出てきた。そういう全体のボリュームの問題と、事件の変質というか、質が変わってきたことが原因で、審理期間が長期化しているということが考えられるかと思います。
 ただ、御視察いただいた際に、審理期間が長引いている、長いという御指摘を頂いたということでありますので、そのような御指摘が少なくなりますというか、なくすように頑張るということで、大きく対策としましては、計画的な審理をますます充実させる。それから、釈明等を行うときには分かりやすいものになるべくやっていく。それから、内部での検討期間を少しでも短くするために、合議を徹底的に強化していくということを考えてございます。これはこれまでやってきたことではあるのですが、更に強化していきたいというふうに考えております。
それから、既済の内訳になりますけれども、和解成立で終了した案件は392件で、既済件数全体に占める割合は73.1%、昨年の69.8%と比べまして、やや増加しております。3件に2件以上の割合となっております。そもそもADRに申し立てられる案件というのは、直接請求でうまくいかなかったものが相当あるということを考えますと、かなり効率よく、パフォーマンスよく事件を何とか解決しているというふうに考えております。
 一方、取下げで終了した案件は91件で、割合は17%になります。昨年の15.9%と比べて、やや増加しております。
 打切りにつきましては、件数自体は減っておりますが、詳細はまた後ほど御説明いたします。
 未済件数は、令和2年6月末で756件でありまして、この半年間に184件減少しております。これは事件の解決に鋭意努めていることもあるのですけれども、新規申立件数の減少傾向で、全体のボリュームが減ってきたことも影響していると考えてございます。
 1ページめくっていただきまして、次に7ページ目で、和解打切りの詳細ですけれども、令和2年上半期に和解打切りとなったのは53件です。和解打切りを理由別に見てみますと、申立人の請求権を認定できないことを理由として打ち切ったものが一番多くて、53件中28件。令和2年上半期の全終局事件数の5%程度を占めており、打切りの中では約5割、半分を占めていることになります。このようなもの、請求権の認定ができないということを理由にする和解打切りが多い原因といたしましては、個々の事案によって理由は多様なのですけれども、本件事故からの時の経過等に伴って申し立てられる損害項目と、本件事故との因果関係を認定することが難しい事案がやはり増加していることがその一因になっていると考えております。
 それから、被申立人であります東京電力が和解案を拒否したために、和解打切りとなった件数は、令和2年上半期で2件ございます。このうち、これまでかなりの割合を占めてまいりました東京電力社員、又はその家族からの申立てという案件はございませんでした。
 更に1ページめくっていただきまして8ページ目になりますけれども、前回の紛争審査会以降現在までに、被申立人である東京電力が和解案の受諾を拒否したことなどから、和解打切りとなって、和解案の提示理由書を公表している案件1件をここに掲載しております。
 事案といたしましては、飯舘村長泥行政区の住民が申し立てた案件でございますが、これは仲介委員において、申立人らの申立てに係る損害項目、これは幾つかあったのですけれども、そのうちの中間指針に規定する精神的苦痛に対する慰謝料を増額するという和解を提示した部分につきまして、東京電力が受諾できないということを明らかにしたことなどから、話合いがつかなかったと。そういうことでこの部分について打ち切ったものとなります。
 東京電力におかれましては、和解案尊重を含みます3つの誓いに従って、センターの実施する和解仲介手続に対して真摯かつ柔軟な対応をお願いしたいということを毎回申し上げているのですけれども、ここでもまた繰り返し申し上げさせていただきたいと思います。このことは、東京電力にお送りしております当センターの活動状況報告書にも記載してございますし、文部科学省の研究開発局長からも要請していることでありますが、この機会にまた改めてお願いしたいと思います。
 そして、先ほど東京電力の議題3のところで改革改善のお話を伺ったのですけれども、その改革改善の話は、ADRの手続にもやはり妥当することだと思いますので、これからよい結果がADRにも表れることを期待し、注視していきたいと考えております。
 それから次に、1ページをおめくりいただいて、9ページ目になりますが、センターの福島事務所・各支所の所在地に関しまして、今年の4月1日に会津支所を一箕町松長という場所から追手町の福島県会津若松合同庁舎新館2階の一部を間借りさせていただいて、移転しており、そのことが記載してございます。他の事務所・支所の移転はございません。
 また、開所日ですけれども、支所において、窓口を開けて利用者をお待ち申し上げているということなのですけれども、なかなか利用される方がいらっしゃらない日もございますことから、4月1日に一部の支所では開庁日を減らしまして、減らした部分で浮いたというか、作られたマンパワーを説明会等、外に行っての広報活動に尽力したり、その調整や準備をすることに移行させたりしております。具体的に開所日が変更して、曜日がどうなったのかということですが、それは資料に記載したとおりということになっております。
 最後の10ページ目、広報に関して、従来、関係団体や関係地方公共団体と連携、協力しつつ、これらが主催する説明会などで説明を行ってきたところですが、現在でも初回申立ての方が多くいらっしゃったり、いまだ賠償請求をされていない方も多くいらっしゃったりすると考えられることから、一層広報を強化していくということが、いろんな数字を書いて、ここに書いてございます。
 令和2年上半期も福島県内外、様々なところで、関係の団体が主催して開催された説明会に調査官等を派遣して、センターの業務概要、申立方法などについて説明を行ったり、地域の個人や事業者向けのチラシを作成、配布したりしたことに加えまして、「ふくしまの今が分かる新聞」、「広報おおくま」、「広報かわまた」など、福島県内の各地方団体が発行する広報紙にもセンターの案内記事を掲載させていただくなどしております。
 広報については、また後ほど少し詳細に御説明する機会があると伺っておりますので、この程度にいたします。
 駆け足となりましたが、資料4による当センターの活動状況の御報告は以上となります。




【鎌田会長】  ありがとうございました。




【佐々木室長】  引き続きまして、資料5を御覧いただければと思うのですが、今年6月に公表させていただいた原子力損害賠償事例集でございます。これについて御報告させていただきます。
 当センターでは、従来、成立した和解の中から、和解仲介手続の基準となる中間指針等の解釈、運用上、ADRの利用者にとって有益と考えられる情報を含むものを文部科学省のホームページ上に掲載していただいて、利用いただく際の判断指標の一つとして提供しております。
 ただ、最近では、掲載数は1,600件を超えて、利用者の方から体系的な検索や案件間の比較検討に手間がかかる、使いにくいという御意見、御指摘を寄せられるようになりましたことから、より活用しやすい内容のものとするように考えまして、本事例集を作成、公表したものでございます。先行する平成25年の事例集後の事案、公表番号でいきますと146から1,553までを取り上げております。
 そして、この事例集は2部構成となっておりまして、第1部では和解仲介の基準となります中間指針の第4次追補までと、当センターの総括委員会が策定した総括基準のそういったものに沿う損害項目を整理した上で、項目ごとに関連する和解が成立した事案を取り上げて、和解内容となっている損害項目や期間等をできるだけ明示して、一覧できるように整理しております。損害項目ごとに重複をいとわず掲載して、参照の便宜をなるべく図っております。
 第2部では、第1部で上げられた各事例の内容を個票として取りまとめておりまして、事案の概要、申立人の事故時の住所や人数などの基本情報、それから、各項目の和解金額や、その和解の対象となった期間といった和解の概要が記載されております。
それぞれを具体的なものとして確認いたしますと、資料5の全体通しページで、40ページから47ページを御覧いただければと。これが第1部の目次ということになります。ずっと損害の項目が書かれておりますけれども、本文がどのようになっているかというのは、次の48ページを御覧いただきますと、四角い枠組みの中に中間指針の抜粋が書いてございまして、その枠組みの下には中間指針の備考等の抜粋を書いてございます。飛んでいただいて、51ページになりますけれども、そこには総括基準についても、中間指針と同じように記載しております。これが賠償の基になる規則というか、法令に対応するようなものになるかと思います。ここでは日常生活損害阻害慰謝料の増額事由となるものを取り上げておりますけれども、こうしたルールのものを上げた上で、その下に、その賠償基準に対応する和解の公表事例をずっと配列するという形になっております。
 通しの52ページ以下を御覧いただくと、日常生活阻害慰謝料の増額事由として、ここで総括基準に掲げられております要介護状態にあることに関連する事例が挙げられております。
 53ページには、増額が5割以上のもの、55ページには、増額幅が10割以上のものと、こういうふうに分けながら、どういう事情があったときにそういう増額の量になるのかということをまとめたものとなります。
 続きまして、第2部のサンプルというのが、今度は59ページ以下になります。60ページから63ページにかけて、個票を2例抜粋してございます。60ページのものが精神的損害等の事案、62ページのものは営業損害の事例です。第2部はこのような形で、第1部に掲載した事例について、事案ごとに詳細情報を記載してございます。具体的な利用に当たっては、まずは第1部で請求したいと考えている損害を中間指針等との関係で検索して、事例も見ながら類例の当たりをつけていて、その上で、第2部で関連する個別の事例について詳しく確認していくと。そういうことによって、一体どういうものがどういう事情の下に賠償されているのか。その賠償の金額と期間がどういうふうになっているのかということを把握していただければと考えております。
ここに掲載している事案は、しつこいようですけれども、いずれも和解が成立した事案、つまり、東京電力が和解案を受諾したという実績があるものですので、その意味でも、当センターの利用に際して、こういった事例集が載っている事例を参考にしていただく有益性は高いと考えてございます。
 ただ、もっともという話もございまして、事例集の和解事例は事案解決の先例となることはそうなのですけれども、飽くまでも個別の被害者の方における個別の事情を反映したものですので、事案を離れて、基準を掲示するというものではありませんし、事案の捨象した一般化をしてしまって、基準として用いることはもちろんできないものであるということについては御留意いただければと思います。
 会長も御説明していただいたように、中間指針・総括基準のような基準と、この事例が具体的にどうなっているのかという、ここのところの両輪でいろいろと検討していただければと思われます。
 そして、その事例集なのですけれども、この分析等は仲介室職員において、記録からうかがうことのできる事例を取りまとめたものでありますので、事案を担当した仲介委員の真意を一つ一つ確認したわけではございませんので、その点も御承知おきいただければと思います。
 最後に述べさせていただきたいのですけれども、事例集の各和解事例は、審査会の特別委員を給源とする仲介委員の先生方が、和解仲介の手続に御尽力いただいた成果でありまして、その成果を取りまとめさせていただいたのが事例集だということでありますので、この場をお借りいたしまして、和解事例を積み重ねていただいた審査会の特別委員に感謝を申し上げるとともに、引き続きセンターの和解仲介手続に御協力いただけますよう、お願い申し上げたいと思います。
 非常に駆け足の説明内容になってしまったのですけれども、資料2つの御説明は以上ということになります。




【鎌田会長】  ありがとうございました。詳しく、また、分かりやすく御説明いただいたと思います。御質問、御意見がございましたら挙手をお願いいたします。大塚会長代理。




【大塚会長代理】  これは本当に御苦労なさっていただいたと思っておりまして、先ほども会長もおっしゃいましたように、中間指針と、それから、今、佐々木さんがおっしゃってくださったように、総括基準と、それから、具体的なADRとの接点を架橋するというのは非常に大事なものですから、このような大変な作業をしていただいたことに感謝したいと思いますし、これから、被災者の方々がこれをぜひ具体的に御活用いただくことをお願いしたいと思います。
 以上です。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 もしよろしければ、先に進んで、また追って別の場所で御議論をいただければと思います。
 次に、議題5、損害賠償請求権に係るこれまでの取組及び今後の対応についてであります。
 前回の審査会におきまして、事務局から損害賠償請求権に係る広報活動についてとして、国及び関係機関が適切に役割分担し、一体となって、広報、相談活動を行う旨の説明をいただきましたが、今回はこれまでに関係各機関が取り組んできた対応等を御説明いただきます。
 まず、各機関における取組の御説明をいただいた上で、その後、事務局から説明をお願いします。
 まず、ADRセンターから、引き続きで恐縮ですが、よろしくお願いいたします。




【佐々木室長】  センターの室長、佐々木でございます。ADRにおける広報活動の状況につきまして、その詳細を御説明させていただきます。資料6を御覧いただければと存じます。通しのページで64ページ以下になっていると思います。
 議題4でも簡単に御説明いたしましたが、関係団体や関係地方公共団体と連携協力しつつ、これらが主催する説明会などに調査官や福島事務所各支所から職員を派遣させていただきまして、ADRに関する御説明、ADRの申立書の書き方に関する御相談などを実施してまいりました。平成30年におきましては、延べ10日ほど、令和元年は更に増えて、延べ34日に及ぶ説明会に協力させていただいております。
 ただ、令和2年につきましては、新型コロナウイルス等の影響によりまして、予定されていた説明会が中止になってしまうなどしまして、今日現在では、10日を超える程度の説明会への協力にとどまっております。ただ、緊急事態宣言の解除後、最近になりまして、徐々に説明会が再開されてきておりますので、今後、関係団体等と御相談しながら、できる限り協力させていただく所存でおります。
 また、従前から、関係地方公共団体等の御協力を得まして、センターの御案内や和解事例等を御紹介するリーフレットやチラシなどを配布しておりますけれども、令和2年は、令和元年よりも更に配布の部数を増やしまして、リーフレット類を4万部以上、チラシ類を10万部以上配布させていただいております。
 さらに、後ろのページに具体例をつけておりますけれども、前回審査会における御指摘等も踏まえまして、各地方公共団体等に御相談させていただきながら、センターの紹介と併せて、対象の地方公共団体における和解事例、例えばA市町村ではその市町村の中の事例というものを記載させていただいた、いわゆるオーダーメードチラシなどの広報資料を新たに作成して配布させていただいたり、地方公共団体が発行する広報紙にセンターの紹介記事の掲載等をさせていただいたりするようにしております。
 具体的にどんなものだと言いますと、ページをおめくりいただきまして、通しの65ページから66ページを見ていただきますと、これが先ほどお話しいたしましたオーダーメードチラシの1例でございまして、65ページの左上に「川俣町の方へ」と書いてございますが、このような形で、オーダーメードのものを作っておりまして、同じようなものは、大熊町や富岡町など、そういう御協力いただけている地方公共団体ごとに変えて、こういうものを作ってございます。これらのチラシは各地方公共団体からの広報物と併せて、住民の皆様に配布されたり、地方公共団体の出張所等に設置させていただいたりしてございます。
 また、ページをおめくりいただきまして、通しの67ページでございますけれども、福島県、県ですけれども、2か月ごとに発行する広報紙の「ふくしまの今が分かる新聞」の表紙でございますが、もう1枚、68ページのところですけどれも、このようにADRの紹介記事を掲載していただいております。この広報紙は、県内外の住民の方々に広く配布されるものです。
 このほかにも南相馬市、大熊町、川俣町、浪江町など、地方公共団体が発行する広報紙に当センターの記事を掲載させていただいているところであります。引き続き、より多くの地方公共団体の御協力を仰ぎながら広報活動をしてまいりたいと思います。
 69ページ目以降につきましては、前回審査会で御覧いただきました原子力損害賠償対策室と連携して作成しましたチラシや、それから、NPOに寄稿させていただいたチラシ、こういうものもくっつけております。引き続き、これらの広報活動を精力的に実施することで、賠償請求でお困りの方々に情報をお伝えして、原発事故の被害者の方々のお役に立ちたいと考えております。
 また、新型コロナの関係で、説明会にこちらから、東京から伺えないような場合にも、対応といたしましては、リモートで説明会ができないかということを今いろいろ検討して、その準備をしているところでもあります。
 駆け足でございましたが、広報に関しては以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 それでは、次に、原子力損害賠償・廃炉等支援機構から御説明をいただきます。




【星執行役員】  原子力損害賠償・廃炉等支援機構の星と申します。私は相談事業と情報提供事業の担当執行役員並びに福島事務所長を併任しております。本日は、資料7に基づきまして、当機構の取組について御説明いたします。会場のほうでは、クリアファイルに入れての資料配付とさせていただいておりますけれども、後ほどその理由についても御説明させていただきます。
 資料のほうでございますが、本日の説明内容のアジェンダ紙1枚と、あとは、現物を見ていただいたほうが理解していただきやすいと思いますので、チラシを別添として、2種類用意いたしました。
 それでは、アジェンダの1番目にございます、原子力損害賠償に関する法律相談・情報提供の活用促進でございます。ここでは私どもが行っております具体的業務について御紹介させていただきたいと思います。
 まず(1)にございます対面相談。弁護士による対面相談でございますが、こちらは福島県内と福島県外で行っておりまして、福島県内では常設会場相談と巡回相談という2つの形態で実施しております。
常設につきましては、避難者の多い、また、避難先であります郡山市、福島市、いわき市といった県内主要6都市を中心に、また、近年では、避難指示が解除された楢葉町、浪江町、富岡町、大熊町、こういったところの帰還者向けに、それぞれの市町村の中に入っていって、常設的に相談会を実施しております。
 2つ目の形態でございますが、こちらは当初、仮設住宅から始め、現在は復興住宅が中心となっておりますが、復興住宅の集会所等を定期的に訪問する巡回相談と、こういう形で県内では進めております。
 それから、福島県外につきましては、福島県の隣接であります宮城県、山形県、そして、避難者の多い東京を中心とした首都圏で、年間約20回程度、県外での相談会を開催しております。また、被害者の方々は全国に避難されておりますので、こうした私どもの相談会には参加することがなかなか困難であると、こういった方々のために、全国の都道府県弁護士会に委託いたしまして、全国各地の弁護士事務所、あるいは相談者が居宅での相談が受けられる。そういった体制を委託契約により整えております。
 次に、アジェンダの(2)になりますが、電話による相談、情報提供でございますが、こちらは当機構の東京本部のほうで行政書士がメインとなって行っております。東京電力への直接請求あるいはADRの申立てといった各種手続の問合せをはじめ、こういった賠償に係るよろず相談窓口となっております。週末しか時間が取れないという方々もいらっしゃいますので、そういった方々に対応すべく、毎週月曜日から土曜日まで実施しております。また、火曜日と木曜日、週2回になりますが、弁護士による電話相談あるいは面談も実施しております。
 ここで、1つ目のチラシ、ページで言うと76ページ目になりますけれども、上段に、「9月10月開催分相談会情報」と書いたものを御覧ください。ただいま申し上げました内容を1枚のチラシにまとめたものでございまして、実物はA3サイズで見開きのチラシのため、ウェブの資料では、私がこれからする説明と、ページの順番が多少前後いたしますが、表紙に書いてありますところの相談会ですが、相談会は無料で、1回1時間、年度内6回まで御利用いただいております。
 次に中面でございますが、こちらはカレンダーになっておりまして、相談会の開催日、あるいは場所等の情報が確認できるようになっております。
 裏面のほう、一番最後のページになりますが、ここは全国弁護士会への連絡先、そして、東京本部での電話相談、こういったところの連絡先を記載しておりまして、このチラシを各市町村にお願いしまして、広報と一緒に挟んでいただいて、毎月4万部、そのほか、公共施設等に置いていただくなどして、年間にすると50万部近く、このチラシを配布しております。アジェンダの資料に、参考として数字を記載しておりますが、昨年、令和元年度の実績のほうですけれども、対面相談のほうが787件、電話相談、情報提供が654件、合計1,441件という実績となっております。
 続きまして、アジェンダのほうで言うと2つ目でございますけれども、賠償請求状況確認の促進について御説明いたします。
 これまで私どもの相談会ですとか、あるいは市町村との意見交換等を通じて、被害者の方々、理由はそれぞれでございますけれども、最近では、東電への請求、あるいはADRの申立て、更には私ども弁護士への相談でさえも腰が重くなって、なかなか請求に至らないという実態をお聞きすることがあります。そうした点も、踏まえまして、請求を具体的に進めていただくためにはどんな方法が良いのだろうという視点で考えてみました。
 一つ目は被害者の方々に情報を直接お届けできないか。2つ目が請求に動き出していただくためには具体的なツールがあったほうがいいのではないか。それから、3つ目としては、個別の状況を確認するためには、やはり当事者である被害者の方々と東京電力がつながる必要があるのではないか。こういった観点を踏まえまして、まず動いていただくためのツールとして、請求漏れ確認のためのチェックシートを作成し、これを使って、対象状況を確認するためのスリーステップを作成いたしました。
 チラシのほうになりますが、もう一つのチラシを見ていただきたいのですが、右上、端のほうに保存版、真ん中に「請求漏れ確認の3ステップ」と書いたチラシでございます。こちらも現物が見開き版のため、ウェブ上では説明と順番が前後いたしますが、個別に御説明いたします。
 アジェンダのほうでは2ポツの(1)の「請求漏れチェックシートの送付」という書き方にしていますが、被害者の方々に、直接届くようにという考えに基づいて、先ほど説明しましたカレンダーとともに、各市町村に御協力をお願いしまして、この広報紙を同封して、今回これを4万部送付することにいたしました。
 また、一方で、被災地の市町村の広報物、これは今、量が多くて、最近ではこうしたチラシは見ずに捨てられてしまうことも多いという話も伺いました。したがって、なるべく手に取って見ていただけるよう、用紙を厚紙にするとか、あるいは他の広報物と差別化できるようにクリアファイルに入れて、手元に残しておけるように工夫するとか、こういった工夫を凝らしてみました。また、市町村ごとに、あるいは同一の市町村の中でも、避難区域の設定の違いで賠償内容が異なりますので、違う賠償内容が違う地区に行ってしまうと混乱が生じますので、こういったことが生じないように、全5種類を作成しまして、それぞれ該当する地域に該当するチェックリストを送付することにしております。
 具体的な3ステップですけれども、チラシを開いていただきますと、中身がステップ1ということになっております。まずはこのチェックリストで、御自身で請求状況を御確認いただきたくことになりますけれども、御自身でもなかなか気づかない可能性がある項目、例えば、左側の青いボックスですが、これは個人賠償の欄ですけれども、この右側の端のほうに2つのチェックボックスを設けまして、請求済みであっても、例えば制度が追加されて、未請求の期間が発生してしまっている、こういったケースも見られます。そういったところはないかという確認をしていただく。
 あるいは、右の黄色いほうのボックス、これは財物賠償の関係でございますが、この中で上の黄色のボックスの一番下に住居確保に係る費用が書いてございます。ここにつきましては、持ち家だけではなくて、借家だった方も賠償の対象になっていますよと。これは逆に言うと、知らなかったという相談者からの意見も散見されておりましたので、できるだけこういった形で、未請求漏れがチェックで引っかかるような工夫、こういったこともしてみました。
 このチェックシートですが、それでもなお御自身でのチェックには限界があるということも想定されます。請求状況が御自身ではもう分からない、もう分からなくなってしまったという方がいらっしゃると思われますので、請求状況が不明なところにつきましては、資料で裏面になりますが、ステップ2に進んでいただきまして、東京電力に問合せをしていただければ、東京電力で請求内容を確認後、賠償内容を回答していただくということにしております。
 もちろん東京電力との間では、今回のこの一連のスキーム、立案の段階から連携して進めてまいりましたので、例えば問合せのあった項目以外にも、客観的に請求漏れが想定されるような項目については、皆様にお知らせする、あるいは電話で聞いただけでは不安だという方もいらっしゃると思いますので、必要があれば紙にして回答していただくと。こういったように、問合せについては丁寧に対応することが必要であるという認識を共有して進めてまいります。
 その上でということになりますが、事実関係を確認した上でも、ステップ3としまして、まだどうしても請求漏れの不安が残る、あるいは専門家にこういう請求はできないのかといったような、いろんな意見を聞いてみたいと、こういった不安、疑問の点につきましては、私ども機構の無料相談が御利用いただけるということをステップ3として御案内しております。
 アジェンダでは一番最後になりますが、送付時期、送付部数について記載しております。9月中旬に広報が発行されました大熊町、双葉町、富岡町、飯舘村、南相馬市、ここにつきましては、9月中でもう既に発送済みで、約2万3,000部を配布しております。
 この後、10月初旬ですが、広報が予定されています浪江町、葛尾村、楢葉町、川俣町、川内村、田村市、広野町、ここにつきまして10月の初旬で1万8,000部を配布する予定でございます。
 説明は以上となりますが、当機構としましては、被害者の方が一人でも多く、一歩でも前に進めるように、引き続き、被害者の方々の相談機会の確保、それから、情報提供を続けてまいる所存でございます。ありがとうございました。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 残りはあと15分になってしまいましたけれども、事前に予定している、この後の議題を消化するだけで、事前予測で45分かかることになっております。はしょっていただくにしても、終了時間を少し延長せざるを得ないかと思いますので、御都合の悪い委員もいらっしゃるかと思いますが、その点、御容赦をいただければと思います。よろしくお願いします。
 それでは、次に、日本司法支援センター、法テラスから御説明お願いいたします。




【設楽第一事業部長】  日本司法支援センターの設楽と申します。どうぞよろしくお願いいたします。原発損害賠償に関する法テラスの取組について御説明いたします。資料は8番で、通しページが80ページと81ページになりますので御覧ください。
 まず、原発損害賠償に関する取組の1つ目でございますが、80ページのマル1、法テラスではホームページ上に東日本大震災のQ&Aを掲出しております。その中に原発損害賠償関係という項目を設けまして、様々なQ&Aを掲出しております。この中には、原子力損害賠償紛争解決センターのホームページへのリンク、それから原子力損害賠償・廃炉等支援機構の相談会情報などを掲載するとともに、同機構のホームページへのリンクを貼って、利用者の方に相談会情報を提供するなどしております。
 また、ホームページの相談窓口検索においても、相談窓口の詳細な情報を検索できるようにしております。
 マル2の法テラス福島、ふたば、二本松等の窓口の原発損害賠償に関するチラシを備え付け、相談会情報やポスターを掲示している点でございます。こちらには、文部科学省作成のチラシ、ADRセンター、福島県弁護士会、原子力発電所事故被害者救済支援センターのチラシなどを備え付けております。また、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の相談会開催情報を掲示したり、ADRセンターのポスターを貼り出すなどしております。このほか、法テラスでは今年2月に東日本大震災の被災地において新聞広告を実施いたしましたが、新聞広告には、原発事故に関する損害賠償請求も相談できるということを盛り込むなどして、被災者の方への広報を行いました。
 次にマル3ですが、法テラスでは、電話やメールなどで問合せをしてきた利用者の方に対して、法制度に関する情報と相談窓口に関する情報を無料で提供するという情報提供業務を行っております。東日本大震災の被災者の方には、被災者専用フリーダイヤル、震災法テラスダイヤルなどと呼んでおりますが、こちらを御用意いたしまして、通話料無料、利用料無料で情報提供を行っております。
 資料の情報提供件数の推移を御覧ください。1つ目、真ん中のグラフですが、被災者専用フリーダイヤルなどを受け付けている法テラスが運営するコールセンターにおいて対応いたしました原発損害賠償に関する問合せ件数の推移を示しております。問合せ件数は、平成26年度の143件をピークに減少傾向が続いておりまして、今年度は7月末時点で8件となっております。
 下の2つ目のグラフを御覧ください。こちらは、コールセンターにおいて原子力損害賠償・廃炉等支援機構と原子力損害賠償紛争解決センターを紹介した件数を示したものでございます。こちらは平成25年度の33件がピークとなっておりまして、ここ数年は10件以下となっております。本年度は7月末時点で実績はございません。
 4つ目の原発損害賠償に関するその他の取組でございますが、法テラスでは、民事法律扶助業務と申しまして、経済的に余裕のない方などが法的トラブルに遭ったときに無料で法律相談を行う法律相談援助、それから、必要な場合に弁護士や司法書士の費用の立替えを行う代理援助、書類作成援助というものを行っております。平成24年4月1日からは、震災被災者を対象とした無料法律相談や原発ADR申立て、裁判手続などを行うための弁護士、司法書士の費用の立替えを行っております。震災被災者の方は、資力の有無を問わず、資力要件を満たさなくてもこれらの援助を御利用いただくことができます。今回は、東日本大震災の被災者向けの援助業務のうち、原発に関連する法律相談、代理援助の件数について御報告をしたいと思います。81ページのグラフを御覧ください。
 東京電力を相手方とする法律相談援助件数は、平成27年の2,437件が最も多く、その後は急速に減少しております。令和2年度は7月までの実績で23件となっております。この統計数値ですが、私どももシステムで法律相談の相手方は必須入力項目となっておりませんので、実はこのグラフに表れた以外でも東京電力を相手方とする法律相談援助というものがある可能性はございますので、この点、御了承いただければと思います。
 次に、代理援助について御説明いたします。原発ADRの代理援助件数は、平成24年度の2,185件が最も多く、その後は年々減少しており、令和2年度では7月までに10件となっております。原発ADR以外の代理援助件数ですが、平成27年度の1,512件が最も多く、こちらもその後減少しておりましたが、令和2年度は7月までで387件と増えてございます。令和2年度に代理援助件数が増加した理由でございますが、原発集団訴訟が控訴審に継続することで、法テラスの代理援助件数が増加しました。というのは、法テラスの代理援助は審級ごとに援助の開始をいたしますので、控訴審に継続する多数の被援助者の方が控訴審についての代理援助の申込みをなさったということに起因しております。本年度は、この後ももう少し代理援助件数、特に控訴審関係が伸びるのではないかと予想しております。
 最後に、今後の取組につきまして簡単に御説明いたします。法テラスでは原発損害賠償について、ただいま御説明したような取組を行ってまいりましたが、被災者の方が救済を受けることができるよう、今後も引き続き適切に情報提供、それから、法律相談、代理援助を実施してまいりたいと考えております。
 以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 次に東京電力ホールディングスから御説明をいただきます。




【内田室長】  改めまして、東京電力の内田でございます。それでは、早速資料の説明に入らせていただきます。
 当社の未請求者の方々への取組について、資料9、通しページで82ページでございますが、こちらで御説明をさせていただきます。
 まず、未請求者の方々に対するこれまでの取組について御説明いたします。当社は、2013年に各自治体様の御協力をいただきまして、事故発生時に避難等対象区域に居住していた方を特定し、既に御請求をいただいている方とまだ御請求をされていない方の確認作業を実施いたしました。その結果、2013年時点では約16万5,000人のうち、約1万人の方が御請求いただいていないということが分かり、それらの方々に御請求いただくべく取組を継続的に実施してまいりました。
 具体的には、ダイレクトメールの送付や訪問、架電による請求の御案内といった対応のほか、自治体様の広報紙への記事の掲載、役場窓口へのパンフレットの掲示等、各自治体様の御協力もいただいて御請求促進の取組を実施してまいりました。その結果、今年2020年の7月末時点での未請求の方の人数は約780名となってございます。当社としましては、個別の御事情でいまだ御請求に至っていない方々について最後の1人まで賠償を貫徹すべく、引き続き、以下のとおり対応してまいりたいと考えております。
 まず、賠償についてお問合せいただいた機会を捉えて、損害の状況を伺いながら、御請求いただける損害項目について御案内を継続して実施してまいりたいと考えております。また、原賠機構様で作成・配布される未請求に関わるチェックリスト、先ほど御説明をいただきましたが、そのチェックリストにつきまして、当社のコールセンターや窓口で円滑に対応できるよう連携するとともに、当社にお問合せいただいた場合には、御請求書の送付や戸別訪問等による御請求のお手伝いを実施してまいりたいと考えております。
 最後に、改めて消滅時効に関する当社の考え方について触れさせていただきたいと思います。先ほども申し上げましたし、また、第50回審査会の場でも御説明させていただきましたが、当社は時効の完成をもって一律に賠償請求をお断りすることは考えておりません。時効完成後も新々・総合特別事業計画の「3つの誓い」に掲げておりますとおり、最後のお一人まで賠償を貫徹するべく、消滅時効に関しては柔軟な対応を行わせていただきたいと考えております。これは、実質的には時効を援用し、御請求をお断りすることはないということにしているものでございます。
 なお、先ほども触れさせていただきましたが、原賠機構様と共同で申請する次回の総合特別事業計画におきましても、時効の対応に関する当社の考え方を記載するよう調整しておりまして、総合特別事業計画にもしっかりと位置づけて対応してまいりたいと考えております。
 これまでの取組を通しまして、御請求いただいていない方の中には、例えば当社との接触、あるいは請求書の作成のお手伝いというものを拒まれている方などもいらっしゃいます。そういった方も含めて、いろいろな理由、御事情から、まだ御請求に至っていないというふうに理解しております。当社としましては、今申し上げたとおり、時効を援用して御請求をお断りすることは考えておらず、引き続き、戸別訪問、あるいはダイレクトメールの送付等により、未請求の方に1人でも多く御請求いただけるよう、最大限対応してまいりたいと考えております。
 私からは以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 最後に事務局から説明いただきます。なるべく手短かにお願いします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  分かりました。それでは資料10-1に基づきまして、事務局から文部科学省における広報に関する取組を御説明させていただきます。通し番号は83ページになります。
 被災12市町村に関しましては、広報紙に記事を掲載、また、リーフレットを折り込み、あるいは回覧板にて情報をお届けしております。また、各市町村の本庁舎や支所にリーフレットを配置させていただいたり、ウェブページに文科省の時効を説明したウェブのリンクを掲載していただいております。
 また、主に福島県内につきましては、福島県発行の被災者向け広報紙、こういったところに記事を掲載していただくとか、また、県内の全市町村にリーフレットを窓口に配置していただく。あるいは、福島民報ですとか福島民友に新聞広告を掲載していただくといった方法で情報をお届けしています。また、商工会連合会、商工会議所などにも窓口にリーフレットを設置させていただいております。また、全国に関する取組につきましては、政府広報ラジオ番組内のCMなどを用いまして広報をさせていただいております。
 その次のページでございます。こちらは、実際に我々が配布しているリーフレットでございまして、こちらは説明を省略させていただきます。
 続きまして、通し番号86ページでございます。こちらは資料10-2でございますけれども、賠償請求権に関する広報・相談の取組ということで、各機関、文部科学省も合わせて、どんな形で全体で広報しているかということについての御説明でございます。
 まず、1ポツといたしまして基本的な考え方、広報・相談を東電任せにせず、国や関係機関も適切な役割分担の下、一体となって広報・相談を行う。また、福島県や被災市町村と連携をしていく。さらに、内容につきましては一定の統一感をもって実施するということにしております。
 また、2ポツにつきまして、こちらは各政府関係機関との役割分担、対応状況を書いてございますが、これは今まで御説明いただいた内容でございますので、割愛させていただきます。
 次のページ、3ポツでございます。賠償請求間に係る今後の取組ということでございます。
 引き続き、国や関係機関が連携して、福島県や被災市町村に協力いただきながら広報・相談活動をさらに強化・実施し、未請求者の減少に努めるということにしております。また、請求できていない理由を分析し、継続的な取組のみならず、新たな取組も含めて精力的に実施していきたいと考えております。
 その次の88ページ、こちらは実際にこれまで実施してきたもの、これから実施していくものということでございます。請求を促す広報等の活動といたしまして、これまで文部科学省でも、地元広報紙への記事の掲載ですとか、あるいは被災地をできるだけ網羅できるようなチラシの配布、新聞への継続的な広告の掲載、こんなものを考えておりまして、また、東京電力さんでは未請求者への戸別訪問ということを考えていらっしゃいます。
 また、請求漏れを確認する活動といたしまして、先ほど御報告がございましたけれど、NDFさんのほうから請求項目のチェックリストの送付ですとか、また、東京電力さんのほうについては、こうした請求項目に関する問合せの対応、また、ADRセンターのほうで調査官の派遣といったことを説明会で行っていくということでございます。
 一番下でございますけれど、請求に対するきめ細かな支援ということで、申請手続のサポートですとか、復興公営住宅などの巡回相談会、これはNDFさんです。また、先ほどADRの説明会への調査官の派遣、こういったことをしていきたいというふうに考えております。
 御説明は以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。先ほど東京電力からの御説明の中で、これまで繰り返しここで確認してきたことでありますけど、読みようによっては非常に含蓄に富んだ書き方になってはいるんですけど、事実上、消滅時効が完成したということのみをもって、弁済をしないというような主張はしないというふうに理解してよろしいですね。




【内田室長】  はい、それで結構でございます。




【鎌田会長】  これまでの御説明について、御意見、御質問ございましたらお願いいたします。




【明石委員】  よろしいですか。




【鎌田会長】  どうぞ。




【明石委員】  いつも言わせていただくんですが、私ども、法律の専門家ではないので、多少分かりにくいところが、例えば、言葉尻も結構難しくて、時効の援用とか、消滅時効とか、我々はあまり聞き慣れない言葉であるんですが、この援用といっているのは、恐らく東電の意思でやっているもので、また、この間行われた法律の改正みたいなものというのは法で決めてしまうということもあって、それでも、現状ではまだ多くの請求していない人たちがいる。東電がおっしゃるように、最後の1人までというふうには言われているんですが、ここは法律的な意味合いというか、もっと言ってしまえばメリットというか、デメリットというか、それはどういうところが違うんでしょうか。それを少し説明していただくと、僕らも少し議論に入りやすいかなと思うんです。




【鎌田会長】  民法の御専門の先生がたくさんいらっしゃるんですが、どなたか。
 要は、法律改正をして立法的に対処しろという主張が一方にあり、それ以外のもうちょっと柔軟な対応を主張するものがあるけど、どこがどう違うんだと、そういう御質問と理解してよろしいですか。




【明石委員】  そうですね。ぜひその辺のところを、もっと言えば、メリットとかデメリットも含めて御紹介いただけるとありがたいのですが。




【鎌田会長】  どなたか、いかがでしょうか。
 では、内田委員、お願いします。




【内田委員】  専門の先生がほかにたくさんおられるので、私が適当かどうか分かりませんが、消滅時効の趣旨について、少し補足をさせていただきたいと思います。
 今回のADRセンターの活動報告を伺っても、今なお初回申立てが半数近くあるということで、これは時効との関係で非常に不安材料だろうと思います。消滅時効というのは、一定期間が来ると権利の行使ができなくなるというわけですから、時間の制約で、本来できるべき権利の行使ができなくなるというのが消滅時効であるとすれば、それはあまり合理的ではないと思えるわけで、むしろ時効期間は長いほうがいいし、時効期間が来るのであれば延ばせばいいじゃないかという話になり得るわけです。
 しかし、そうすると何のために消滅時効という制度があるのかということが問題になるわけですが、やはり消滅時効という制度には合理性があるとこれまでは考えられていると思います。具体的には、時間がたつことによって証拠が得にくくなりますし、事実の解明が非常に困難になり、紛争解決に時間とコストを要するようになります。今回のADRセンターの御紹介でも、時間の経過で因果関係の認定が困難になっている事例が増えているという御紹介がありましたが、これがまさにそれを象徴しているのだろうと思います。
そういう消滅時効制度の趣旨を考えると、どんどん期間を長くするということが必ずしも正義の実現に資するとは言い切れないということなのだろうと思います。そういう趣旨から、ほかの不法行為についても一定の期間内に権利行使をしてくださいという消滅時効の制度が適用されていますので、それとのバランスも考える必要があります。
 時効期間が経過したとしても、債務者、今回の場合で言うと東電が援用しなければ、時効というのは効果が生じないわけですが、東電のほうでは、一律に援用することはしないという言い方をしておられます。この意味は、なかなか法律の専門家でないと理解しにくいように思いますけれども、結局、いわんとすることは、損害の証拠があるのに時効期間が来ていますということを理由に賠償を拒むということはしないということだろうと思います。そういう方針を明らかにしておられるということも考えると、時効期間をさらに延ばすために労力を費やすよりは、コロナの問題はありますけれども、権利行使を促進することに力を割くべきではないかと考えます。
 今回の御報告でも、ADRセンターやNDF、法テラスなどでも非常に広報に力を注いでおられるということがよく分かりましたけれども、なお初回申立ての方が多いという現状がありますので、東電や政府としても、さらに広報活動に力を入れて、ともかく早く権利行使をしていただく、証拠がなくなって、せっかく権利があるのに証明できないという事態を防ぐために、早く権利を行使していただくということに力を注ぐのがいいのではないかと思います。
 以上です。




【鎌田会長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。補足的な御説明でも結構ですが。
 明石委員、大体今のような説明でよろしいでしょうか。




【明石委員】  どこがよくてどこが悪い点があるというところは非常によく分かりました。ただ、その辺が、今私どもが説明をしていただいたので分かった部分があるんですけれども、やはりその辺のところを、ただ時間が迫っている、急いでいる、焦るというような気持ちばかりにならないように、もう少し、皆さん、その辺、住民の方々にも分かりやすい説明があると違うのかなというふうに感じました。
 いずれにしてもどうもありがとうございました。




【鎌田会長】  ありがとうございます。御指摘の点を踏まえて、これまで以上に分かりやすい広報ということで、関係各位に御尽力いただきたいと思います。
 大学で授業をやっていても、時効が一番学生に分かってもらいにくいですので、市民の方に御理解いただくのはなかなか苦労が多いと思いますけれども、何とぞよろしくお願いいたします。
 ほかにはよろしいでしょうか。大塚会長代理、何かありましたら。




【大塚会長代理】  内田先生がおっしゃったとおりだと私も思っておりまして、事務局にはぜひ分かりやすく説明をしていただきたいと思っています。この件に関しては様々な御意見があると思いますし、基本的には国会で決めるべきことでございますが、一度、10年延長していますので、さらに再延長というのは、ややハードルが高いかなということはございますし、先ほど御説明もあったように、東京電力の総合特別事業計画にも書かれるということですので、あまり援用される可能性は低いのではないかということは考えております。
 私からは以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。法律で延ばしていただければ、それで本当に救済になるかどうか、逆に難しい問題も起きてくるというのは内田委員のおっしゃられたとおりなんですが、それ以上に、この法律改正をしようと思ったら、大変な労力が必要で、それで本当に改正ができるかどうかというリスクもあるということなので、法律改正がなくても大丈夫なような備えをする。そして、何よりも、現時点では、時効にかかってしまうような債権者をなくしていくということに力を注いだほうがいいと思います。起算点の問題がありますから、事故から10年目にみんなの権利が一斉になくなるということでもないわけなので、その辺のところを含めて、しっかりと対応していくことを、文科省のみならず、東電、ADRセンター等含めて、お願いをしておきたいと思います。
 すみません、もう既に終了予定時刻を10分過ぎてしまっております。
 富田委員、御発言お願いいたします。




【富田委員】  地元の市町村からも、あるいは一般の方からもいつも言われている中間指針、あるいは総括基準にもっと具体的なものを入れてほしいという要請については、それについて具体的なところはそこまで書けないので、それは個別に請求してもらい、難しければADRで判断すると説明してきました。この点について、今回の事例集がそれを具体的に示したものだということだと思いますので、今後、地方公共団体や一般の方々に対して、この事例集を基に、なぜ具体的に認められたものが基準にならないのかという点の説明が今後やりやすくなるんじゃないかと思っております。
 もう一方では、どうしても東電の方では、直接請求では中間指針にないのものは認めてくれない、ADRで行かない限り認めてくれないという点もかなり批判を浴びている点であると思います。東電において、この事例集に載っているものは全て認めろというわけにはいかないのは分かっています。直接請求において、この事例集と同種事例かどうかが正に争われた場合には、その点をADRで認定するという機能がありますので、それは仕方がないと思います。しかし、同種事例について、事例集では認めているのに、なぜ直接請求では認めないのかという点については、やはり東電の方できちんと説明を尽くしていただくようにしていただきたいと思います。そして、どうしてもその点が難しければ、ADRで判断していくという本来の機能を果たしていただけるように今後やっていただければと思っておりますので、東電の方においても、そういうふうな形での運用を是非お願いしたいと思っております。
 以上です。




【鎌田会長】  ありがとうございました。この点、東電もぜひよろしくお願いいたします。
 ほかにはよろしいでしょうか。よろしければ、次の議題6番ですけれども、復興庁設置法等の一部を改正する法律案の成立について、復興庁より御説明をいただきます。随分長くお待たせしてしまいましたけれども、よろしくお願いいたします。




【麻山参事官】  復興庁法制班の麻山晃邦と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは、先の通常国会において、6月に成立いたしました復興庁設置法等の一部を改正する法律について御説明いたします。お手元の資料11になります。89ページから92ページまでの4ページありますが、時間も限られておりますので、1ページ目、89ページを中心に御説明いたします。
 まず、法律を改正した背景について、昨年の12月20日に復興・創生期間後の復興の基本方針を閣議決定いたしましたが、この中で地震・津波被災地域は復興の総仕上げの段階にあり、また原子力災害被災地域は今後も中長期的な対応が必要とされていることを踏まえまして、復興・創生期間後、令和3年度以降になりますが、この復興を支える仕組みや組織について、今回の法改正により整備をしたところでございます。
具体的には、5つの法律の改正をしたところでございます。
 まず1つ目、1番ですが、復興庁設置法でございます。これは、東日本大震災からの復興の状況を踏まえまして、復興・創生期間後も対応が必要な事業を確実に実施することができるよう、復興庁の設置期間を令和13年3月末まで10年間延長し、引き続き内閣直属の組織とし、現行の総合調整機能を維持することや、復興局の位置などを現行の法律で定める形から、政令に委任することなどを内容としております。
 なお、そこの米印にありますとおり、岩手と宮城の復興局は沿岸域に移設いたしますが、福島については引き続き福島市に復興局を置くこととしております。
 続きまして、2つ目ですが、復興特区法でございます。これは震災発生から一定年数が経過いたしまして、地域や分野によって復興の進捗状況に差が生じてきたことから、引き続き支援が必要な地域に集中することが円滑かつ迅速な復興に資するため、復興特区制度に基づく規制や金融の特例などの対象地域、復興特区税制等の対象地域をこれまでの復興状況等を踏まえて重点化すること。また、復興交付金事業が今年度である令和2年度までに完了する見通しであるため、復興交付金を廃止することなどを主な内容としております。
 なお、対象地域の重点化に際し、福島については、1つ目のポツにあります規制の特例等については引き続き県全域を、また、2つ目のポツの復興特区税制につきましては、浜通り地域の市町村に重点化することを予定しております。
続きまして、3つ目は、福島復興再生特別措置法でございます。これは避難指示の解除が進展し、帰還環境の整備が進む中、本格的な復興・再生に向けて取組を加速させるものです。第1に、帰還の促進に加えまして、住民の帰還状況や意向を踏まえ、新たに移住の促進や交流・関係人口の拡大を支援することとし、これらを福島特措法に基づく交付金の対象事業に追加いたします。
 第2に、被災12市町村の営農再開面積が3割弱にとどまることもありまして、地元の担い手に加え、地域外から担い手を呼び込めるよう、農地の利用集積や6次化施設の整備を促進する特例措置を設けます。
 第3に、企業や人材を呼び込みながら産業集積の促進を図るため、福島イノベーション・コースト構想の推進に係る税制特例を設けます。
 第4に、いまだ根強く残ります風評被害への対応として、税制特例を設けます。
 第5に、現行の政策課題ごとの法定計画を統合し、福島県が地域の実情を踏まえて福島復興再生計画を作成し、これを国が認定する制度を設けます。
 最後、4番目ですが、復興財源確保法と特別会計法の2法でございます。これらは、復興庁が復興・創生期間後も対応が必要な事業を確実に実施するには、基本方針にあるとおり、復興・創生期間後、当面5年間、令和7年度まで、ここの所要の財源を手当てすることなどが必要なことから、復興債の発行期間の延長、それから政府保有株式の売却収入を復興債などの国債の償還に充当する期間の延長などを内容としております。
 2ページ目以降、90ページ以降は御参考となりますが、福島特措法の改正内容につきましては3ページ目、91ページ目に今、御説明したものよりかはやや詳細に記載しておりますので、お時間のあるときにでもお目通しいただければと思います。
 私からの説明は、以上となります。




【鎌田会長】  どうもありがとうございました。はしょらせてしまいまして申し訳ございません。
 御質問等ございますでしょうか。どうぞ。




【大塚会長代理】  急いでいるときにすみません。風評対策についての課税の特例というのは、具体的にはどの程度のことをなさるおつもりか教えていただけますか。




【麻山参事官】  具体的には、これから始まります税制改正要望のプロセスの中で具体的に決まっていくものでございますので、今の時点で具体的に申し上げることができないところ、御容赦いただきたいと思います。




【大塚会長代理】  はい、ありがとうございました。




【鎌田会長】  ほかにはよろしいでしょうか。
 それでは、議題の7、その他ですけれども、前回の審査会以降に判決が幾つか出ておりますので、事務局から、ごくごくかいつまんで御報告をお願いします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  かしこまりました。こちらの資料は、委員の先生方にはお配りしていたんですが、こちらを用いずに口頭だけで簡単に御説明いたします。
 福島原発事故に伴う被災者などが原告となりまして、今、全国で30件の集団訴訟が継続中ということでございます。前回の審査会以降、3月に札幌地裁、6月に福岡地裁、8月に仙台地裁において判決が言い渡されておりましたが、こちらはいずれも控訴されておりまして、判決は確定していない状況です。
 判決文ですが、こちらは皆さんのタブレットには入っているんですけれど、今回はお時間がないということで、場合によっては次回の審査会でもう少し御紹介させていただければと思っています。
 御説明は以上でございます。




【鎌田会長】  以上ですか。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  次回、少しまとめて御報告をいたしますので。




【鎌田会長】  恐縮ですけれども、終了時間を20分以上過ぎてしまっておりますので、詳細は次回に回すということで、お許しをいただければと思います。
 ほかに、皆様方から何かこの機会にという御発言ございましたらお願いいたします。樫見委員、どうぞ。




【樫見委員】  よろしいでしょうか。2点だけお願いいたします。
 先ほど、原子力損害賠償・廃炉等支援機構のほうから出されました請求漏れ確認のための3ステップですが、この資料についてはADRのほうでも活用されているのでしょうか。非常に分かりやすいもので、東電のほうでは活用されている、連携をしているというお話を伺っているのですが、この点、請求者の方が見ると比較的分かりやすいので、もしADRでこういった資料が使われていないのであれば、使っていただきたいなというのが1点です。
 それから、東電のほうから出されました請求者様への対応の強化のところで、具体的な強化策の最後のところ、親切な対応の徹底というところで、2番目のポツのマル1なんですが、ここで請求者に対して中間指針等への形式的な当てはめだけに固執するのではなくて、本来の意味合いや真に必要としているものを理解しと、これは極めて抽象的な言い方をされていまして、分かりにくいなという気がしております。
 私個人としましては、ここの点、お気持ちは十分に理解はしているのですが、被災者の方が従前の生活を回復するために本当に何が必要なのか、このときに中間指針に、形式的にこだわるだけではなくて、請求者が新たに項目として請求された場合、東電側のほうが新たな生活の出発等、これまでなかった賠償項目等も十分に考えられて、賠償の枠組みを検討するというような方向で、まさに想像力を働かせて判断するというふうに御検討いただくとありがたいなと。これは意見でございます。
 以上です。




【鎌田会長】  ありがとうございました。ADRセンター、いかがですか。




【佐々木室長】  ADRセンターの室長、佐々木でございます。NDFのこの紙自体を利用するかと申しますと、ステップの過程で東電の方に入っていくところ、我々がこの紙自体を使ってしまうと、当事者である東電と、和解を仲介する当センターとを混同してしまって、ただでさえ利用者の中には、うちをまだ東電の一部局と勘違いしていらっしゃる方もいらして、ますます混乱が助長されてしまいますので、これを使うということはないのですけれども、これをお持ちになって相談にいらっしゃればそれなりに対応をすると。
 それから、ほかの自治体と今相談させていただいているのは、もっと簡単なものを考えていたり、あるいはある町は物すごく簡略な申立書式を作っているのですけれども、それも受け入れて、調査官が入って受理したり、細かく聞きながら特定していくという作業を一緒にやるということをやっておりますので、それでお答えになりますでしょうか。




【樫見委員】  はい、十分に御趣旨を理解いたしました。ありがとうございます。




【佐々木室長】  ありがとうございます。




【鎌田会長】  東京電力、何かコメントございますか。




【内田室長】  東京電力でございます。委員の御指摘の御趣旨をよく踏まえて対応していきたいと思っておりますが、ただ、新たな賠償の枠組みというところまで行くのかどうかというのは、ちょっと難しい気もしておりますけれども、いずれにせよ、御事情をきちんと理解した上で、その損害が事故との相当因果関係があればお支払いするということがベースでございますので、そういった形で対応してまいりたいと考えております。




【樫見委員】  ありがとうございます。




【鎌田会長】  今回の現地視察でも、大熊町で、避難先から帰ってきて商売を始めるとなると、開店してからしばらく売上げがほとんどないだろうが、これもやっぱり避難指示で出ていって、そして戻ってきたということに伴う必要経費みたいなものだから、こういうものをちゃんと見てもらえないだろうかと、そういうふうな話もありました。これも普通の因果関係論だけで行くと判断が難しいと思いますけれども、なるべく被害の実態に応じた柔軟な対応ということでの御検討をいただければと思います。




【内田室長】  そういった点も具体的に検討してまいりたいと思っております。




【鎌田会長】  それでは、もう30分超過してしまいましたけれども、直ちに指針の見直しをする必要はないという説明について、先ほどのように、今日は説明を省略されましたけれども、判決がたくさん出てくると、判決で指針を上回る損害賠償を認めているんだから見直すべきでないかという指摘や質問がたくさん出てきています。けれども、今のところまだ賠償の水準が判決ごとに相当ぶれていますし、それぞれの判決の内容の分析等も今日は皆さんに御議論いただけなかったので、その点については引き続き御検討をいただきたいと思っておりますので、委員の皆様方におかれましても、裁判例の動向等について注視しておいていただければと思います。
 そういう意味で、時間を超過した割に中途半端にしてしまいましたけれども、本日の議事はこれにて終了ということとさせていただきます。大変長い時間、熱心に御議論いただきましてありがとうございます。この審査会を必要に応じて開催をするとともに、随時賠償の状況について確認をしていく、あるいはいろいろなルートを通じて地元の意見の聴取に努めていくということにしたいと考えております。ぜひ今後とも御協力をお願いします。
 最後に、事務局からの連絡事項をお願いいたします。




【井出原子力損害賠償対策室次長】  事務局でございます。次回の開催は、改めて御連絡をさせていただきます。また、議事録は、事務局でたたき台を作成し、委員の皆様及び本日御発言をいただいた皆様に御確認の上、御了承いただいたものを次回開催までにホームページへ掲載させていただきます。
 以上でございます。




【鎌田会長】  ありがとうございました。本日は、これにて閉会とさせていただきます。大変時間を超過しまして申し訳ございませんでした。




―― 了 ――

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