資料3 産業界から出された見解への回答

資料3

FaCTプロジェクトに対する東芝の見解への回答


【冷却2ループ化(2台ポンプ)】

・(a)850℃は制限値に対して余裕が少ない(2ポンプの実験炉常陽では軸固着時に約800℃)。安全設計の考え方詳細が不明だが、(1)2台ポンプ停止に対する裕度、(2)タイマーの信頼度の妥当性、(3)第二スクラム信号によるスクラム、(4)重要な安全系統の共通原因故障、が近年の許認可では課題とされよう。この場合に、最高温度は(b)制限値に近づきさらに余裕はなくなる。
・浸漬型のDRACS容量は小さく、炉停止直後の崩壊熱を除去する容量は250%と評価される。もんじゅと同程度の崩壊熱除去系の信頼性を確保するためには(c)DRACS容量または基数を増大させる必要がある。
・(d)したがって、許認可上の課題が残る。

   「1次ポンプ軸固着」対策について:(a)
 1次ポンプ軸固着事象の事象区分は「事故」に相当し、現状の燃料被覆管に対する安全性の判断基準は900℃となる。この判断基準は、破損試験データのバラツキなども考慮して、適切な余裕を含んで設定するものである。よって、この判断基準を満足すれば安全上の問題はない。
 判断基準に対する余裕をさらに大きくすることは、「1次系流量半減時間」や「健全ポンプのトリップ遅れ時間」を支障のない範囲で長くすることなどにより可能であり、今後必要に応じて対応できる。

   「1次ポンプ軸固着」対策について:(b)(d)
(1)2台ポンプ停止に対する裕度: ポンプの耐震性確保のため軸受部で焼き付きが発生しにくい設計を採り入れており、耐震性評価では、Ss地震動を想定しても裕度を持って軸受部での焼き付きが発生しないと評価している。更に、もんじゅや軽水炉と同様に、試験によりこの評価の妥当性を確認する計画である。これより、2基の1次系主循環ポンプが同時に軸固着する事象は想定する必要はない。
 それ以外の2台のポンプが同時に停止する事象としては、「外部電源喪失」等(フローコーストダウンあり)が想定されるが、1次系流量半減時間を適切に確保することなどにより、安全性の判断基準を余裕を持って満足するとの評価結果を得ている。
(2)タイマーの信頼度の妥当性: 健全ポンプのトリップを遅らせるタイマーについては、単一故障では、その機能を喪失しないように多重性を有する設計とし、その回路区分を安全保護系とすることで信頼性を確保する設計としている。
(3)第二スクラム信号によるスクラム:「1次ポンプ軸固着」時に後備炉停止系で原子炉トリップする場合、主炉停止系で原子炉トリップする場合よりも被覆管肉厚中心最高温度などが高くなるものの、安全性の判断基準を満足するとの評価結果を得ている。なお、「1次系流量半減時間」や「健全ポンプのトリップ遅れ時間」を支障のない範囲で長くすることなどにより、判断基準に対する余裕をさらに大きく確保することは可能である。
(4)重要な安全系統の共通原因故障: 安全保護系、原子炉停止系等の重要な安全系等の設計に際しては、多様性に十分配慮した設計とすること(主炉停止系と後備炉停止系で、作動信号や駆動メカニズムを多様化する)などにより、共通原因故障によりその機能を喪失することがない設計としている。

 以上から、ポンプ1台/ループであっても、上述の(1)~(4)でもって裕度は確保され、許認可上は特に問題ないと考える。また、安全性の判断基準に対する余裕は確保するよう設計することは可能である。
 なお、安全設計の考え方詳細が不明とのことであるが、国際会議や学術論文(下記の参考文献リスト参照)で公表している。

   崩壊熱除去系の除熱容量について:(c)(d)
 本プラントでは崩壊熱除去系の動的機器が空気冷却器のベーン・ダンパしかなく、かつ、単一故障でその機能を喪失しないようベーン・ダンパに多重性・多様性を配慮した設計とした。したがって、ベーン・ダンパの単一故障を想定した場合、当該系統の崩壊熱除去系の除熱量は低下しても完全に失われることはない。
 設計基準事象として評価すべき最も厳しい状況は、起因事象として1系統の崩壊熱除去系の機能が喪失し、さらに残った系統における単一故障を想定した場合である。この場合、健全な1系統と単一故障を想定した1系統(除熱量は低下)のみによる自然循環除熱で崩壊熱除去運転が行われることになる。このような状況においても必要な除熱量を確保できるよう、崩壊熱除去系の系統・機器設計を行っており、安全解析によりその設計の妥当性を確認している。なお、現在では、設計基準を超える事象として、炉停止後ある程度時間が経過した後に1次系が2ループともサイフォンブレークしたことを想定してDRACS1系統でも除熱できるように設計されている。
 3系統の崩壊熱除去系の信頼性については、確率論的安全評価(PSA)により崩壊熱除去系の非信頼度は十分に低いことを確認しており、もんじゅと同程度の崩壊熱除去系の信頼性は確保している。
 以上から、DRACS容量または基数を増大しなくても、許認可上は特に問題ない。

参考文献
1.  M. ICHIMIYA, T. MIZUNO, S. KOTAKE, “A Next Generation Sodium-Cooled Fast Reactor Concept and its R&D Program,” Nucl. Eng. Technol., 39, 3, 171-186 (2007).
2.  S. KOTAKE, Y. SAKAMOTO, T. MIHARA, S. KUBO, N. UTO, Y. KAMISHIMA, K. AOTO, M. TODA, “Development of Advanced Loop-Type Fast Reactor in Japan,” Nucl. Technol., 170, 133-147 (2010).
3.  H. YAMANO, S. KUBO, K. KURISAKA, Y. SHIMAKAWA, H. SAGO,  “Technological Feasibility of Two-Loop Cooling System in JSFR,” Nucl. Technol., 170, 159–169 (2010).
 

【課題解決のための提案】
・ポンプ基数を4基とする。
・コールドレグ配管を2本に分割(全体で4本のコールドレグ配管)してポンプを4基設置する(APR1400)方法と原子炉容器に4基ポンプを一体化させる方法(インターナルポンプ型)がある。
・原子炉容器内に単段のコアキャッチャーを設置するので(コアキャッチャー径は12m以上必要)、原子炉容器に4基のポンプを一体化させるほうが合理的である。さらに、原子炉容器に設置するDRACS必要基数に柔軟に対応できる。
インターナルポンプ型原子炉一次系概念および主要技術の高温電磁ポンプの実証状況を示す(添付4、添付5)。

   ポンプ4基について:
 ポンプ4基で150万kWeの実用炉を想定した場合でも、ポンプの吐出流量は単段斜流型ポンプの実績範囲内であり水力部設計に無理は無いこと、安全性等のその他の設計条件を全て満足すること、により機器容量の大型化によるスケールメリット効果が大きいポンプ2基を選択した。
 浸漬型電磁ポンプを1次系ポンプとして採用する設計概念は以下の課題が残されており、現状の機械式ポンプに比較して、実現のために解決すべき課題は多いと認識している。
 (1)160m3/minの電磁ポンプ試験で観察された低周波不安定流動問題の発生要因の解明と、これを回避する設計あるいは運転条件の明確化と、これを実証する試験データの取得。
 (2)高い信頼性を有するフローコーストダウンシステムが必要であり、その機構は設計基準事象での単一故障の適用で機能喪失しないことが求められる。そのような具体的な構造と、その信頼性を実証することが必要。
 (3)大電流が流れる電磁ポンプ・コイル絶縁部の信頼性の実証と、その損傷に伴う地絡によって、1次系ナトリウム内に漏電した場合の影響範囲が限定され、安全保護系回路への有意な影響を及ぼさないことの実証が必要。
 (4)電磁ポンプ単体の効率は40%程度であり、コイル等で発生する全ての熱回収を考慮しても総合効率は60-70%程度と推定され、機械式ポンプ(機械効率は80-90%)に比べ10-30%程度低い効率となる。これによる所内負荷率の増加が想定され、これによる発電コストへの影響を評価する必要がある。

 1990年代の電力実証炉プロジェクトの中で、大容量電磁ポンプの開発が進めてられていたが、そこでも、炉心安全性に直結する1次系の主循環ポンプに採用されなかった。
 以上より、インターナルポンプ式の浸漬型電磁ポンプ4基を採用する提案は、FaCTで開発を進めている機械式ポンプ2基方式に比べて、許認可性や実現性は低いと判断する。

   インターナルポンプ型について:
後述する(P13)。

【原子炉容器コンパクト化】
(1)ガス巻込み防止構造 

・(a)水平版に部分的開口が生じると、(b)巻き込まれたカバーガスは、円錐型炉心支持構造の下部に蓄積される。(c)蓄積しうるガス量は多く、炉心を通過すると反応度事故が生じる。
・もんじゅでは、巻き込み防止のための水平版を設置しているが、ガス巻込みを仮定し高圧プレナム上部に蓄積したガスの炉心通過を考慮している。
・(d)したがって、許認可上の課題が残る。



   ガス巻き込みが発生しないように対策するとともに、発生した時の影響を考慮して必要な対策をとり設計を進めている。カバーガスが巻き込まれた場合の安全上の重要な影響は、ガスがまとまって炉心を通過することによる正反応度投入であるが、この点についても安全設計の基本原則である深層防護(異常発生防止、拡大防止、影響緩和)を適用して対策をとっている。

   具体的な設計方針・設計対応は以下のとおり。
(a)原子炉容器の液面下にディッププレートを設置して液面近傍の流速を抑制し、ガス巻き込みを防止する設計としており、ディッププレートは想定される地震荷重、熱荷重、流体力を考慮しても破損することはなく、ご指摘の部分的開口は生じない設計としている。
(b)万一ガス巻き込みが生じた場合に備えて、冷却系統内にガスが滞留するような部位を極力なくすように設計している。それでもガスの滞留可能性がある部位が残る場合には、その部位からのガス抜きができるようにガス抜き孔やガス抜き管を設けることとし、さらに、1次ポンプ内の液面部からガスを抜く機構についても検討しており、原子炉容器内に大量のガスが蓄積しない対策をとっている。
指摘のあった炉心支持構造の下部においては、ガス抜きのために複数個のガス抜き孔を設置している。
(c)さらに、もんじゅの許認可で扱われたように、炉心支持構造の下部でガスが蓄積され得る最大体積を想定し、これによる気泡が一斉に炉心を通過する状況でも炉心安全性が確保される設計としている。
(d)以上から許認可上の課題は無いと考えている。

【課題解決のための提案】
・(a)原子炉容器径に適切な余裕を与えること、ホットレグ配管の吸込み流速を低減させること、局所的な噴出し流を抑制することにより、ガス巻き込みのポテンシャルを低減する。
・(b)大量に蓄積するガスだまり部を一次冷却系から排除する。

(a)原子炉容器の液面下にディッププレートを設置して液面近傍の流速を抑制し、ガス巻き込みを防止する設計としている。本設計の妥当性を、液位などの運転条件、縮尺の影響、水とNaの比較を含む実験(1, 2など)及び解析にて確認しており、これらの知見を元に設計を最適化し、原子炉容器径の最適化は検討を進めてきている。
(b)上記(1)ガス巻込み防止構造の評価に対する回答(c)に記載のとおり、ガスだまりが生じた場合の対策構造を設けており、指摘された提案はすでに設計で考慮済みである。

1)N. Kimura, et al., Experimental Study on Gas Entrainment at Free Surface in Reactor Vessel of a Compact Sodium-Cooled Fast Reactor, Journal of Nuclear Science and Technology, 45 (10) 1053–1062 (2008).
2)N. Kimura, et al., Experimental Study on Gas Entrainment Due to Nonstationary Vortex in a Sodium Cooled Fast Reactor -Comparison of Onset Conditions Between Sodium and Water, Journal of Eng.. for Gas Turbines and Power, 132 102908 (2010).

(2)デブリ冷却構造

・炉心デブリを原子炉容器内で保持・冷却する構造は、再臨界排除と熱除去の観点から十分な表面積をもつ(a)単段の構造とすべきである。
・(b)したがって、許認可上の課題が残る。


   デブリ冷却構造について:(a)
炉心損傷時の燃料再配置
 炉心損傷時には、再臨界回避方策である内部ダクトを通して溶融燃料が早期に炉心上方へ流出した後、炉心に残留した燃料は崩壊熱によって徐々に溶融し、制御棒案内管等の炉心に存在する流出経路を通して下部プレナムに流出する。この場合、一度に下部プレナムへ流出するわけではなく、徐々に下部プレナムへ移行する。
 炉心損傷事象推移の評価では、炉心に残存する燃料は初期炉心燃料インベントリの約30%(主に外側炉心燃料)、上部プレナムに流出する燃料は約20%、下部プレナムに流出する燃料は約50%となる。なお、炉心部に残存した燃料は、炉心に再流入してくるナトリウムによって冷却され、炉心部で保持される。

受け皿設計上の想定燃料量
 上述のように下部プレナムへ移行する燃料量は全炉心の約50%と評価され、全炉心燃料が下部プレナムへ移行することは考えにくい。しかし、JSFRでは溶融燃料の再配置過程に関する不確かさを保守的に考慮し、全炉心燃料が受け皿に移行しても、冷却保持できる設計としている。

受け皿に落下する燃料デブリ
 炉心下部から受け皿までの下部プレナム容積は、全炉心の溶融燃料が落下してきたときに、クエンチ(微粒化及び固化)するに十分なナトリウム量を確保できる設計としている。下部プレナムに流出した溶融燃料は、ナトリウムとの接触によるクエンチ過程を経て、受け皿へ堆積する。
 既存の実験的知見からクエンチされて生成されたデブリの平均粒径は300μm程度の砂状で、流動性の高い性質を有している。また、デブリの堆積厚さが局所的に冷却限界厚みを超えても、堆積デブリ内のナトリウムの沸騰によって堆積デブリが分散し、自ずと平坦化するセルフ・レベリング現象により冷却可能な状態となることも実験的に確認されている。

受け皿の設計オプション
 受け皿に堆積する燃料デブリは、核的観点から再臨界とならないようにするためにデブリの堆積高さを臨界高さ以下に制限し、また、熱的観点から冷却・保持するためにその堆積高さを冷却限界高さ以下に制限する必要がある。

 1500MWeのJSFRでは、冷却限界高さ以下に制限しておけば、臨界制限も達成できることから、冷却限界高さ以下で燃料デブリを保持できるように受け皿面積を設計している。
 原子炉出力(炉心燃料インベントリ)が増加するにつれて、炉心燃料の全量を保持するために必要な受け皿面積も増加する。十分な受け皿面積を確保するには、炉心投影面積よりも広い単段の受け皿とするか、受け皿を多層にする等の設計方策が従来から検討されている。
 単段の受け皿では、炉心部より外周方向へ一定高さで広く堆積していくことを確認する必要があり、多層の受け皿では、上段受け皿から下方への移行挙動を確認する必要がある。

JSFRの受け皿設計
 受け皿に堆積したデブリはナトリウムとともに流動しやすく、ある高さ以上に堆積するとセルフ・レベリングによって平坦化する。このような特徴は単段でも多層構造であっても変わらない。
 多層とする場合は、上段受け皿には冷却限界高さ以下の高さのデブリ落下筒(微粒化燃料を下段に落下させるための機構)を設置し、この高さをデブリ堆積高さが越えた場合に、落下筒を通してデブリが上段受け皿から下段受け皿へ移行する設計としている。 JSFRでは、ループ型の特長を活かし、原子炉容器径を小さくすることによって、(1)炉心支持構造等にリング鍛鋼品を採用して高い信頼性を確保すること、(2)原子炉容器径を小さくして物量を削減して経済性を向上させること、の2つの目的から、受け皿面積を拡げる単段ではなく、多層の受け皿を採用している。この多層の受け皿構造は、デブリの熱負荷によってクリープ変形等が生じて、デブリの安定冷却保持に影響がないように、リブ付きの補強を行い頑健な設計としている。

受け皿設計の許認可性:(b)
 ナトリウムは、溶融燃料を固化・微粒化させる特性、微粒化燃料の冷却性に優れており、その冷却特性を示す基本的な試験データは得られている。それらの知見の裏づけを補強し、設計方策の有効性を確認するため、今後、デブリベッド堆積挙動とセルフ・レベリング挙動を確認する研究開発を実施し、許認可に向けた技術的根拠の充足を図っていく計画である。
 従って、デブリ挙動の物理メカニズムに基づけば多層構造にしても問題なく、単段構造の受け皿にすべきとの指摘は当たらないし、上記計画通りに研究開発を進めることで許認可上も課題解決できると考える。

【【課題解決のための提案】
・単段構造とする。

   他国の受け皿設計では、炉心燃料の全量を保持することを想定していない場合や、全量保持としていても、デブリのドライアウトを許容し、デブリ下面のナトリウム沸騰防止などの条件で設計されている。JSFRは、デブリのドライアウト発生を防止できる条件で設計しており、このような条件で全炉心燃料を保持冷却できる単段受け皿の設計例は見当たらない。
   他国の設計例でもって単段構造にすることを課題解決のための提案としていることは技術的根拠に欠落する。JSFRは、上述のような設計の考え方と技術的根拠でもって多層の受け皿で許認可を取得できると考えている。

【防護管付き伝熱管蒸気発生器】

・二重管伝熱管による(a)Na水反応の発生頻度低減という設計の考え方が変更されているので(b)代替案とはいえない。これまでどおり発生頻度の低減を目標とすべきである。
・伝熱管と防護管の(c)Naギャップは0.4mmである。この狭いギャップ中のNaは主流路でないため、プラント起動初期の純化は十分でない可能性が高い。また、ある伝熱管の水の小リーク後の再利用時に、Na中のギャップだけでなく反応生成物が存在する(d)カバーガス中のギャップを純化することは容易ではない。このため(e)ギャップ中には腐食性の不純物が滞留している可能性が高い。(f)不純物は伝熱管の腐食原因になるため狭いNaギャップは、伝熱管の信頼性を低下させる。
・(g)したがって、信頼性上の課題が残る。
・SUS保護管の熱抵抗により伝熱面積は、これまでより増大するので蒸気発生器はより大型化する。この結果、管板重量は鍛鋼品製造限界の100トンを超える。(h)実証炉規模でも同様な課題をもつ場合に、蒸気発生器基数を増やす必要がある。


 SG設計の考え方について:(a)、(b)
   SGの設計では、安全性を確保すると同時に「信頼性を向上させる」ことが設計の要点である。
   信頼性向上技術として、2重バウンダリによる貫通破損の発生頻度低減と、密着2重管による水リーク流量制限効果による破損伝播防止を狙い密着2重伝熱管を開発してきた。
   並行して、Na-水反応に対する伝熱管の耐性を強化することにより伝熱管の破損伝播防止を狙った「防護管付伝熱管」も設計検討してきた。
   ともに、SGの信頼性確保に対し最も大きな課題となる水リーク時の伝熱管破損伝播を防止する技術であり、「信頼性向上」を実現するという目標と設計の考え方は共通であり、設計要求は変更していない。
   一方、これら2つの信頼性向上技術の実証炉段階での実現性について評価したところ、密着2重管ではその製造設備に比較的規模が大きな投資が必要であり実現性が低いのに対し、防護管付伝熱管では国内現存設備の改良で工業的生産の可能性が高いことがわかった。
   これらの結果より、プロジェクト施策上の判断として、防護管付伝熱管を選定し、密着2重管を代替技術と判断した。

   Naギャップについて:(c)~(g)
・伝熱管と防護管のギャップ部はナトリウムが流動する設計であり、ナトリウムは滞留しない設計である。ギャップの寸法・仕様については、流動性、充填ドレン性、製作性、組立性、振動及び摩耗、座屈、検査性、ナトリウム-水反応の観点から決定する計画であり、指摘の観点も当然考慮している。
・水リーク後にギャップ中に酸化物が残留したとしても、Na中ではその化学形態はNa2Oであり、酸素が供給される環境ではないため伝熱管等の腐食は進行しない。
・カバーガス中のギャップについては、水リーク発生後は、初期リークが発生した伝熱管は抜管及びプラグすることから、カバーガス中のギャップは存在しない。また、隣接する伝熱管のカバーガス中ギャップは、カバーガス中の防護管開放部を超える位置までナトリウム液位を上昇させて反応生成物を洗い流すことから、万一、反応生成物が発生したとしても容易に純化は可能であり、ギャップ中に不純物が滞留しない。不純物が滞留しないことから、指摘のような信頼性上の課題は残らない。

   SGの基数について:(h)
・防護管付伝熱管の採用により増加する伝熱管本数は1%未満であり、密着2重伝熱管とほぼ同等の物量となる。
・また、実証炉での管板重量は100トン未満で国内に現存する製造設備の設備容量範囲内であり、SGの基数を増やす必要は無い。

【課題解決のための提案】
・Na水反応の発生頻度を低減することを目標とし、Na水反応が発生する前に内管の漏洩を検出するシステムを備えた二重管蒸気発生器伝熱管とする。
・このために、内管と外管の間に、伝熱管材料と同じ組網線を入れ、内外管ギャップ0.4mmを確保しギャップ中には腐食性のないヘリウムを充填する。
・内管の漏洩検出は、ヘリウム中の湿分の連続監視をもっておこなう。
・製造性および伝熱性実証を経て、米国のNaループにて運転実績を得ている。
・課題とされた、ギャップのある二重管伝熱管の外管の欠陥検査方法を開発した。また、伝熱管と伝熱管の溶接技術を開発しており、長尺の伝熱管を製造する技術を確立している(添付3)。
・この組網線入りギャップ部のヘリウムの良好な通気性を試験にて確認済みである。

    組網線入2重伝熱管について
 また、課題解決のための提案にある組編線入り2重管については、機構もフィジビリティスタディーにおける伝熱管型式の選定過程において、直管型への採用可能性を検討しており、20年以上前に試作試験等も実施したが、下記理由により不採用とした。
(1)片側リークが発生した後の補修において、伝熱管の端部を切断すると共に、水・蒸気管板とナトリウム管
 板の2つをプラグする必要がある。ナトリウム管板のプラグや伝熱管の切断は、水蒸気管板の小さい管孔を
 くぐり抜けて作業が困難。
(2)外管とナトリウム管板の継ぎ手(溶接部)破損が発生した場合、リーク検出はできるが、破損伝熱管の特定
 が困難。
(3)2枚管板と2重管の接合は手順が複雑なため溶接部が増加し、結果として信頼性を低下させる。
(4)組網線を介した伝熱管外管の体積検査の見通しがない。
(5)組編線入り2重管の生産方法として、寸法、面圧、ギャップ等の保証、検査、規格・基準化も含めて原子力
 級工業製品として供給するための技術課題は多い。

提案は(4)に対するブレイクスルー技術であるが、以下の課題が解決されていない。

   2重管外管の欠陥検出技術開発に関しては、母材部は0.4mmギャップであるのに対し、最も水リークの発
 生が懸念される管-管溶接部のギャップは0.8mm程度であり検査できない。
   試験結果もスリットによるものであり、実際のき裂欠陥は開放されない可能性も高く、検査性を実証したも
 のではない。さらに、外管内面のRF-ECTの検出性については、開発要素が残されている。

以上により、JSFRに採用することはできない。

【実用炉への連続性】

・(a)「相似形」でも実用炉用件を満たすことを示すだけでなく、世界的な開発動向を将来取り入れることができる実証炉戦略が適切である、と考える。
・世界の実用炉動向としてのタンク型炉、あるいは二次系削除、に柔軟に対応できる一次系構成が好ましい。

   実証炉の開発戦略は、将来の軽水炉に競合する経済性など、実用炉としての開発目標を満たすための
 技術を実証し、実証炉の規模は実用炉の性能を実証可能な出力レベルとすることである。この戦略により、
 実証炉は実用炉と出力相似な機器・システムをとることとしている。
   この結果、実証炉→実用炉のステップでは、開発課題は大型機器の製作性に絞られ、大型機器の試作 試験を十分に実施することによりステップアップが可能となると考えている。
   この実証炉の開発戦略は五者協議会で合意されている開発戦略である。
   以上より、実証炉の機能は第一に実用炉の性能を実証することであり、実証炉の設計概念を、将来の設計動向に対応できる特異な1次系構成とする考え方は採用し得ない。

【課題解決のための提案】
・実証炉として、インターナルポンプ型の一次系構成が柔軟性に優れる。
・インターナルポンプ型の実用炉が見通せる。
・一方、中間熱交換器を原子炉に一体化すればタンク型であり、中間熱交換器を新型の発電システム用熱交換器に置き換えれば2次系削除につながる。


   提案の炉型は、冒頭の回答に記載したように技術的実現性も低く、我が国の実証炉の開発戦略にも合致しておらず、検討に値しない。

 【晶析による効率的ウラン回収】

使用済燃料を対象とした実証性あるデータとはいえない。また、精製プロセス後の最終的なウラン回収率についての知見が不足している。したがって、DF、ウラン回収率について不確かさが大きく、性能に課題が残る。(代案として電解還元ウラン抽出法)

 
【ウラン回収】

FaCTでは、移行期は検討されていないが、軽水炉と高速炉が併用される時期が長く続くと想定されることから、移行期に適したプロセスの検討が必要である。
移行期には、回収したウランを軽水炉でリサイクルすることが資源の有効利用のために重要である。この場合、燃料加工施設の作業者の被ばくに係る制約から、再処理工場で必要となる回収ウランの除染係数DF=105が必要である。(代案として電解還元ウラン抽出法)

晶析に係るデータの実用性、DF・U回収率の不確かさについて
   U晶析率やDFは、実際のFBR照射済燃料を用いた試験で取得したデータも活用して評価しています。
   結晶精製技術については一般産業界で実績のある方法であり、ウラン試験で基本的な成立性を確認して
   います。今後、工学規模結晶精製装置試験やホット試験によりDFおよびU回収率をより精度高く実験的
   に確認していくことが課題です。

電解還元ウラン抽出法について
   晶析技術は、経済性の向上のみならず核不拡散性向上を目的に選定したものであり、単にUを粗分離す
   る手段として適用するものではありません。よって、電解還元ウラン抽出法を晶析技術の代替技術とする
   場合は、この開発目標を十分達成できると見通せるデータを提示することが必要です。
   FBR燃料には劣化ウランを用いることとしており、軽水炉燃料としての再利用には不向きです。軽水炉燃
   料からの回収ウランを再利用する場合には、燃料加工(転換、濃縮、再転換、ピン加工)のために必要な
   除染係数 (≥105) を達成する必要があり、このための方法として電解還元ウラン抽出法を提案されたもの
   と理解します。抽出工程への電解還元技術の適用については、過去にKfKをはじめ弊社でも研究開発し
   た経緯があり、プロセス性能や機器成立性等の観点から不採用としています。今後、移行期用プロセスと
   して電解還元ウラン抽出法を推奨するのであれば、以下の点について技術の成立性、開発目標/性能目
   標の達成度評価について定量的な見通しを示すことが必要です。

   核不拡散性
    電解還元ウラン抽出法の場合には、Puの原子価調整が必須であり、晶析技術と比較して核不拡散性(
  技術障壁)に劣ると考えられます。
   プロセス成立性(特にFP核種の影響、電解生成物の影響)
    使用済燃料溶解液の電解還元時におけるFP核種の影響および電解生成物(水素他)によるプロセス
  性能への影響について、詳細なデータが提示されておらず、プロセスの安定性や安全性の低下が懸念さ
  れます。また、移行期を想定したウラン粗分離技術であれば、Co-Processing法に対する優位性を示す必
  要があります。
   機器成立性(特に抽出器とのマッチング構造、大型化、臨界管理)
    抽出工程に電解還元装置を組み込む場合、抽出器の流動性を妨げない電解装置構造が必要であり、
  加えて必要な電極面積と臨界安全性を確保した装置構造が要求されることから、現在、提示されている実
  験室規模の電解装置構造による試験結果からでは工学的成立性の見通しは評価できません。したがって
  、200t/y規模の電解還元・抽出システムを想定した場合、プロセスフローシート検討に加えて、臨界安全管
  理を考慮した電解還元装置のスケールアップ性、抽出器との流動安定性の確保等、技術的な成立性に関
  して課題が多いと考えられます。

【抽出クロマト法によるMA回収】

抽出クロマト法は多孔質シリカ充填材を使用しており、多孔質空孔内部に水が存在するため、放射線分解により水素が発生する。水素はMAの多孔質表面への接触を阻害するため吸着機能が低下する。また、水素爆発の危険性を有する。このため、吸着材を頻繁に抜出す必要があり、かつ吸着材の再利用が容易ではないので、経済性向上は望めない。
MAの目標回収率99%を目指す場合に廃液の発生量が多い。
したがって、経済性の課題が残る。

【プルトニウム+MA回収】

移行期以降、環境負荷低減及び燃料資源の有効利用の観点から、Pu+MA(Np、Am、Cm)を同時に回収するプロセスが必要である。(代案としてシュウ酸沈殿法) 

全般
   移行期以降、環境負荷低減、燃料資源の有効利用の観点から、Pu+MAを回収するプロセスが必要です
   。Pu回収とMA回収の同時性については、上記の観点からは必須ではなく、むしろ経済性等の観点から
   有効性を示す定量的な評価を示すことが必要です。

抽出クロマト法における安全性と吸着剤の交換、廃液発生量について
   通常運転時においては、放射線分解により発生する水素ガスは通水している液体により分離塔外へ排出
   され、水素ガスの蓄積は生じないことを確認しています。このため頻繁な吸着剤の交換は必要ないと判断
   しています。
   廃液発生量に関しては、現在のところ溶媒抽出法と大差がありません。今後、分離効率を高めることを目
   指した研究開発を進める予定です。

シュウ酸沈殿法の提案について
   U粗分離後のFPが多量に含まれる溶液にU、Pu、MAを回収するためのプロセスを適用する際は、回収率
   およびDFの確認が重要と考えられ、シュウ酸沈殿法を推奨するのであれば、以下の点について技術の
   成立性、開発目標/性能目標の達成度評価について定量的な見通しを示すことが必要です。
   プロセス成立性(特に回収率、DF)
    シュウ酸沈殿法は反応晶析法の一種であり、結晶粒が小さく比表面積が大きくなるため、高いDFが得
   にくくなることが懸念されます。したがって、高い回収率で高いDFを得るための具体的方策とその成立性
   評価が必要です。
   機器成立性(特に沈殿物の分離回収、閉塞防止)
    シュウ酸との混合後の沈殿生成挙動及び沈殿物の性状を明らかとし、シュウ酸沈殿生成・分離装置の
   構造概念とその成立性評価が必要です。また、分離後の沈殿の移送、転換工程や溶融塩電解工程との
   取り合いなど、閉塞対応や商業規模へのスケールアップの見通しについてきちんと考慮した成立性評価
   が必要です。
   経済性、廃棄物発生量(特に溶融塩電解法との組合せ、試薬の分解処理)
    高い沈殿回収率を得るため過剰に加えたシュウ酸が高レベル廃液に残留するが、製品流と同じように
   シュウ酸を熱分解処理することは困難と考えます。またシュウ酸沈殿の後に溶融塩電解工程があるため
   、結果としてシュウ酸沈殿工程から排出される高レベル廃液と溶融塩電解工程から排出される高レベル
   廃棄物の二種類が発生します。さらに、硝酸プロセスと溶融塩プロセスの共存により廃棄物の種類が増
   加し、各種廃棄物の処理・処分負荷が大きくなる事が懸念されます。したがって、ガラス固化を含めた全
   体的な経済性を悪化させないような処理方法が提案,確立される必要があります。
   なお、FSフェーズ1(ローマ数字)においてシュウ酸沈殿法について調査しており、溶媒を使用しないため潜在的危険性
  が下がる一方、シュウ酸沈殿法で得られるシュウ酸Puは難溶性のため、溶液同士の混合による富化度の
  微調整ができない、回収のための固定装置による固液分離が必要になる等の課題を有すると評価しまし
  た。

【副概念(金属燃料高速炉およびその燃料サイクル)について】

研究の進捗を反映するとともに運転性を考慮した設計により、再処理単価は金属乾式法と同等となった。この結果、200t/yの大規模な再処理施設においても(50t/yでは金属電解法が建設費小)、先進湿式法の金属電解法に対する建詮費の優位性は失われた。
したがって、再処理方式の選定根拠を再整備する必要がある。

主概念および副概念の再処理方式の比較
   実用化戦略調査研究(FS)において、システム全体として社会環境の変化に柔軟に対応できると考えられ
   る金属燃料高速炉およびその燃料サイクル技術(金属電解法技術と射出鋳造燃料製造技術)を副概念
   に選定している。
   その際、高レベル放射性廃棄物発生量低減や計量管理手法の課題が指摘されると共に、研究開発に長
   期を要すると判断され、現在、基礎基盤的に、それらの解決に向けて研究開発がなされているところであ
   る。
   現状、この状況に基本的な変化はないものと考えられるため、2011年以降も副概念として基盤的に研究
   を進め、2015年にその後の取り扱いを判断することが適当と考えている。

 

FaCTプロジェクトに対する日立の見解への回答

 

【2.1高速増殖炉システム】
(1)ポンプ組込型中間熱交換器

ドルレグ配管削除によるプラント物量削減効果があるが、合体による機器の大型化、設計・製作の複雑化が機器コストに及ぼす影響についても検討する。

   機器合体による効果は、ご指摘のミドルレグ配管削減による物量削減効果に加え、2つの機器が1つにな
   る効果、建屋配置容積の削減効果がある。
   現状の経済性評価は、物量に基づく評価であることから、機器の大型化によるコストへの影響は概略評
   価されている。
   また、合体による機器の複雑化については、製作時はIHX、ポンプが別々で製作できることから、複雑な
   機器の製作とはならないと判断している。
   以上により、合体によるコストへの影響は、少ないと考えている。
   今後、詳細設計段階で、ポンプ組込IHXのコスト評価を検討していく予定である。

(2)高クロム鋼の1次冷却系中間熱交換器への採用

(1) 高クロム鋼の溶接には、基本的には熱処理が必要であり、伝熱管本数が数千本のオーダーとなる中間熱交換器の材料に使用する場合、伝熱管溶接に要する製作期間、作業量増加がコストに及ぼす影響についても検討する。
(2) 上記処理により、薄肉伝熱管表面に生じる黒錆の影響についても検討する。
(3) ステンレス鋼と異なり、建設時の錆止め対策として一般的には機器内面に防錆剤を塗布するはずだが、ナトリウム充填前にこれを完全に除去する方策についても検討する。(あるいは防錆剤を使用しない方策を検討する)
(4) 1次系内に異なる種類の材料が共存することになるので、微量元素の異種材料間の移動による影響がないことを確認しておく。

(1) 指摘の通り、9Cr鋼の熱処理に対する課題は認識しており、製作性の検討により、予熱、後熱、応力除去焼鈍等による製作時の熱影響を緩和する構造を採用することとしているが、コストに対する影響は小さいと評価した。
 今後、溶接部の熱処理による製作期間、作業量増加に関するコストに及ぼす影響については、構造を詳細化する段階で、製作性に係る要素試作試験を実施しその成果を反映して、コスト増加を抑える製作方法等の検討を行う。

(2) 指摘の課題は認識しており、もんじゅ蒸発器の実績や、SGの試験体製作等により、プラントへの影響は少ないと判断している。
 今後、熱処理時の黒錆発生量を抑える検討を実施する。

(3) 指摘の課題は認識しており、もんじゅの蒸発器、常陽等の2次系設備の経験及びSGの試験体製作を踏まえ、今後、錆止め対策を検討する。

(4) 1次系構造材料である316FR鋼および改良9Cr-1Mo鋼のいずれも、ナトリウムに含まれる炭素および炉心材料から溶出する炭素により浸炭を生じると考えられる。そこで、浸炭の影響について、浸炭雰囲気ナトリウム中で材料試験を実施し評価を進めている。これまでの結果から、浸炭が生じても強度(引張、クリープ、疲労およびクリープ疲労強度)に及ぼす影響は有意ではないと判断した。


(3)建物配置

革新技術の採用により、建物がコンパクト化されているが、今後の概念設計段階では、機器、付属品の点検・交換やISI作業などの保守が容易な配置設計となっているかどうかよく検討する。

   指摘の通り、現段階では、機器・配管の保守・補修を考慮して、原子炉建屋のコンパクト化を図っている
  が、今後の設計では、軽水炉の建屋配置を参考に、想定する保守・補修項目を設定して、機器へのアク
  セスルート、保修スペースの確保、機器の交換ルート等を詳細化し、原子炉建屋の配置設計に反映する。


(4)1次系配管の2重管化

設計段階で付属設備や分岐管により構造が複雑化する可能性があることに留意する。

   JSFRの設計思想の1つとして、配管は短縮化し、出来るだけドレン管等の枝管を設置しない設計としてお
  り、1次系配管は、短尺で枝管が無い構造であることから、設計が進捗しても、1次系配管の2重化構造は
  複雑化しないと判断した。
   今後、詳細設計段階で2重化構造の具体化を図り、設計を詰める。


(5)直管型SG

(1) 防護管付伝熱管については、初期ナトリウム充填時やその後のメンテナンス時、補修時にSG内ナトリウムをドレンする際、防護管と伝熱管のギャップ部にナトリウム化合物が生じるような現象についての影響を検討する。
(2) 伝熱管本数が数千本のオーダーとなるSGが2ループ化に伴って大型化することによる製作工程の長期化がプラント建設工程全体に及ぼす影響についても検討する。(中間熱交換器についても同様)
(3) 防護管の有無により、万一のSG伝熱管破損対策設備に大きな差異が生じないのであれば、1重管をベースとしてISI,補修時の復旧の容易性を追及するオプションも比較検討する。

(1) 防護管と伝熱管のギャップ部について
・伝熱管と防護管のギャップ部はナトリウムが流動する設計であり、ナトリウムは滞留しない設計である。ギャ
 ップの寸法・仕様については、流動性、充填ドレン性、製作性、組立性、振動及び摩耗、座屈、検査性、ナト
 リウム-水反応の観点から決定する計画であり、指摘の観点も当然考慮している。
・水リーク後にギャップ中に酸化物が残留したとしても、Na中ではその化学形態はNa2Oであり、酸素が供給さ
 れる環境ではないため伝熱管等の腐食は進行しない。
・カバーガス中のギャップについては、水リーク発生後は、初期リークが発生した伝熱管は抜管及びプラグする
 ことから、カバーガス中のギャップは存在しない。また、隣接する伝熱管のカバーガス中ギャップは、カバーガ
 ス中の防護管開放部を超える位置までナトリウム液位を上昇させて反応生成物を洗い流すことから、万一、
 反応生成物が発生したとしても容易に純化は可能であり、ギャップ中に不純物が滞留しない。不純物が滞留
 しないことから、指摘のような信頼性上の課題は残らない。

(2) 国内PWRのSGは、3,000~4,000本の伝熱管を有するが、プラント建設工程とマッチした現実的な製作工
 程を実現している。JSFR(実証炉で約4000本)については、製作性の検討を深め、あわせて製作工程につい
 ても検討する。(約10,000本の伝熱管を有する米国向けPWRの取替用SGの製作実績がある。)

(3) JSFRでは、SG伝熱管のNa-水反応に対する信頼性確保を指向している。1重管(単管)SGの検討は過
 去に実施しているが、厚肉管+高性能水素計による早期検出方法を用いた場合においても、伝熱管の破損
 伝播防止が困難となり、信頼性が確保できない結果を既に得ており、プラント設計思想と適合しない。


【2.2再処理、燃料製造システム】

(1)今回は、主としてFBR平衡期において最適な技術として検討されていると考えるが、今後の検討においては、その前に来るLWRからFBRへの移行期への適合性にも、より留意して最適化するよう検討する。

   FaCTでは、これまでFBR平衡期を前提に、最適なプロセスとして先進湿式法を選定し開発を進めてきまし
   た。今後は、移行期に適した再処理プラントのあり方とそのプロセスについて検討します。

(2)個々の技術の成立性についてしっかり評価している段階のものが多いと考えられるが、今後は、実用化に向けた大型施設への適用性、諸外国の開発技術との比較評価などの観点からも、より検討を深める。

   ご指摘のような観点も踏まえ、今後の開発を実施していく中で検討を深めていく考えです。

(3)今後の検討においては、燃料製造、原子炉、再処理、高レベル廃棄物処分の各分野を俯瞰した全体プロセスとしての整合性、最適化の観点にも、より留意して検討する。

   ご指摘の全体プロセスとしての整合性、最適化の観点は重要と考えており、今後の開発計画の検討の際には、より留意して検討していく考えです。



【3.今後の進め方全体についての要望】

(1)炉だけでなく、フロントエンドからバックエンドまでのサイクル全体について、目標とする開発ロードマップを設定していただきたい。

   実用化までのロードマップは2015年に提示することになっている。また、2015年までの開発ロードマップについては、現在、検討中であり、本委員会で今後の開発計画を議論する際に説明する予定である。

(2)ロードマップ作成に必要な視点として、研究開発だけでなく、メーカが担うプラント設計、建設、保守運転を通じた工学経験の蓄積と伝承が途切れることなく継続できるような建設のインターバルを考慮いただきたい。

   2015年までのFaCTフェーズ2(ローマ数字)における検討の中で関係機関と相談する。

(3)特に高速増殖炉システムについては、メーカの「もんじゅ」経験者が数少なくなる中、2025年実証施設運転開始の目標が遅れると、経験者のノウハウの継承が困難になるため、目標工程が達成できるようご配慮頂きたい。

   2025年に実証炉が運転開始できる目標工程を実現できるように努力したい。

(4)高速増殖炉システムの開発ロードマップ作成において、「実証施設の出力レベルが実用炉の機器・構造の製造性確認、実現性に関するリスク評価および革新技術の技術実証性判断に及ぼす影響」を明らかにすることが重要であるが、その際、「常陽」から「もんじゅ」までのステップアップの経験から得られた知見を生かして、次の実証施設ステップに進む際の技術リスクを緩和するという観点でも検討・整理する。

・  FaCTの開発戦略としては、実証炉は実用炉での成立性を確認した技術で構成し、実証炉の規模は実用炉
  の性能を実証可能な出力レベルとする、である。この戦略により、実証炉は実用炉と出力相似な機器・シス
  テムをとることになる。この結果、実証炉→実用炉のステップでは、出力比は2倍で実証炉の設計知見が
  活用できる範囲内であること、開発課題は大型機器の製作性に絞られること、から、大型機器の試作試験
  を十分に実施することによりステップアップが可能となると考えている。
・  「常陽」から「もんじゅ」へのステップアップでは、熱出力で約7倍(常陽MarkⅡの熱出力ともんじゅ熱出力比)
  であり、もんじゅではじめて導入された水・蒸気系統や大型ポンプを中心に実規模の実証試験を実施する
  ことによりステップアップを行った。実証炉へのステップアップ(出力比約2.7倍)では、もんじゅでのナトリウ
  ム炉設計・建設・運転データを活用可能な範囲であることと、もんじゅと同様に機器・システムの実証試験を
  実施することにより十分に技術リスクを緩和することができる。

(5)技術リスク、投資リスクの低減のために、今回改正されたナトリウム冷却高速炉の仏、米との協力関係を具体化する際には、つぎのような項目が重要と考える。
・運転保守経験に於ける失敗事例の共有
・設計思想まで踏み込んだ本音の議論
・類似技術の共同開発、開発分担

(1)運転保守経験における失敗事例の共有
 日仏の協力の中には、我が国のもんじゅ、常陽と、仏国のフェニックス及びスーパーフェニックス炉の運転保守に関する情報交換、及び人材の交流を継続して実施してきた。これらの協力では、多くの失敗事例が共有されており、技術向上に反映する。

(2)設計思想まで踏み込んだ本音の議論
 指摘のとおり国際協力での原子炉開発には、設計思想まで踏み込んだ本音の議論が必要と考えている。

(3)類似技術の共同開発、開発分担
 指摘のとおり、共同開発、開発分担を目差し、現在、三国で議論中である。

お問合せ先

研究開発局原子力課核燃料サイクル室

(研究開発局原子力課核燃料サイクル室)