資料2-3 紛争解決に果たすべき政府の役割に関する論点

  JCO臨界事故の賠償の際の原子力損害調査研究会及び原子力損害賠償紛争審査会(以下「審査会」という。)の実績を踏まえると、政府の役割に関して以下のような論点が考えられる(論点のポイントを○は長所、●は短所で整理した)。

(1)賠償の基本的考え方を提示する仕組み等について

論点1-1 原子力事業者の賠償責任の範囲の判断に当たって、同一の原因による原子力損害全体に共通して適用することができる基本的な考え方(損害費目・相当因果関係・額の算定等)について、当事者の状況に応じ、中立的・専門的な立場から調査審議・提示することができる仕組みが必要ではないか。

○ 原子力損害の賠償請求は短期間に多数の案件が生じるものであり、公平・迅速な賠償の実施の確保のためには、個別事案ごとの解決の支援にまして、損害全体に共通して適用できる賠償責任の判断の基本的な考え方を早期に関係者間で共有することが重要ではないか。

○ 事故の混乱による原子力事業者の当事者能力の欠如、被害者感情への配慮の必要性等の状況によっては、当事者間の自主的な解決の前段階で、政府による適切な支援を要する場合があるのではないか。

● 原子力損害の原因(事故)の態様により対応は大きく異なるため、ケースバイケースで対応すべきではないか。

● 最終的には提示された考え方に当事者(裁判上の請求に至った場合には裁判所)が拘束されないため、限界があるのではないか。

論点1-2 賠償の基本的考え方の提示に先立って、原子力損害の全体の状況を把握・整理する仕組みが必要ではないか。

○ 公平・確実に賠償を確保するには、早期に原子力損害の全体像を把握することが有益であり、一定の主体に一定の様式により情報を集約することが重要ではないか。

論点1-3 上記の機能については、誰が担うこととするのが適当か。

誰が担うか 特徴
政府で対応 文科省(研究会等を設置)
  • ○状況に応じ、ケースバイケースで機動的な対応が可能
審査会
  • ○既存の機関であり、対応が明確
  • ○中立性・専門性に信頼を得やすい
  • ●賠償責任の考え方の提示と仲介と両立性
当事者でケースバイケース又は民間で対応
  • ●手続が不透明な場合には関係者間の公平に疑義
  • ●原子力損害に知見を有する民間団体は想定しづらい

(2)審査会の在り方について

論点2-1 多数の和解の仲介が申し立てられた場合の対応を準備しておく必要があるのではないか。

○ 原子力損害の性質上は短期間に多数の申立てがあることも想定され、案件全体を通じた公平な処理のための判断基準の整理、迅速な運営のための手続の明確化等について、上記(1)と合わせて検討することが適当ではないか。

論点2-2 審査会を常設とすることが必要かどうか。

● 原子力損害の態様はケースバイケースでその発生頻度は極めて小さいことから、必要となったときにその都度設置することで十分ではないか。他方、必要に応じた早急な立上げが可能となるよう、設置の手続等は整理しておく必要があるのではないか。

論点2-3 和解の仲介のほか、調停・仲裁等のより積極的な活動を審査会に行わせ、審査会の判断により強い効果を与えることが必要かどうか。

● 審査会の機能は突発的に発揮されるものであり、その体制は準司法的・高度な判断を行うのに十分なものではなく、そうした機能はもっぱら裁判手続に委ねる方が適切ではないか。

種類 概要
あっせん 第三者が当事者間の交渉の円滑化を世話する。
和解の仲介はあっせんの一類型と考えられる。
裁判所の即決和解を利用すれば、当事者の合意の内容に確定判決と同一の効力。
調停 第三者が当事者間に立って解決に努力する。
調停案の受託勧告ができるものが多い。
仲裁 当事者の同意の上で、第三者の判断により解決する。
仲裁判断は確定判決と同一の効力。
裁定 仲裁と同意。または第三者の判断が行政庁の行政処分であるもの。

論点2-4 上記の審査会の在り方の検討と合わせて、時効の中断、訴訟手続の中止等の訴訟との関連での利便をより向上させる方策が必要かどうか。

○ 他の特別の紛争処理機関や認証紛争解決事業者の制度と比較して、審査会の利便の向上を図る必要があるのではないか。

● 審査会は任意の手続に過ぎず、また、消滅時効期間を超えても和解に至らない事案は、裁判手続に委ねるのが適当ではないか。

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