資料2-2 JCO臨界事故を踏まえた対応について-今後の原子力損害賠償制度の運用に当たっての考え方-

  昭和36年制定以降、原賠法が適用された唯一の原子力事故である、JCO臨界事故の際の原子力損害賠償についての対応を教訓として、今後の原子力損害賠償制度の運用に当たっての考え方(指針)を、概ね、原子力事故発生後の時系列に沿って、以下の項目毎に整理していく。

  • JCO臨界事故時の対応について
  • 原賠法の適用の考え方について
  • 損害の拡大防止について
  • 被害(原子力損害)の把握について
  • 損害賠償に受付について
  • 賠償の基本的考え方について
  • 被害者との調整、賠償金の支払いについて
  • 原子力損害賠償紛争審査会の運営について
  • 国の支援について
  • その他

(0)JCO臨界事故時の対応について

  原賠法が初めて適用された事象であるJCO臨界事故について、今後の対応にあたっての参考とすべく、当時の損害賠償対応の状況や、その反省点等を総括することは重要。

(1)原賠法の適用の考え方について

  原賠法の適用対象となる原子力損害の範囲、特に所謂風評被害の扱い等について整理することは重要。

論点

  放射線の作用等との相当因果関係の有無の捉え方は、解釈の幅があり、原賠法適用の考え方についてなんらかの整理が必要ではないか。

(2)損害の拡大防止について

  JCO臨界事故において、原子力損害の8割~9割が営業損害であったことを考えれば、所謂風評被害の拡大防止を図るためにも、正確な情報を適切発信することは重要。

論点

  事故の終息宣言も含め、情報発信は、災害対策の一環として行われるものであり、災害対策との連携を図ることが有効ではないか。

(3)被害(原子力損害)の把握について

  損害賠償を、計画的に進めていくために、事故後、早期段階において、原子力損害の全容を把握することが重要。

論点

  原子力事業者、国、地方自治体(都道府県/市町村)がどのように連携し、情報を収集・集約していくか。

(4)損害賠償の受付について

  迅速かつ適切な損害賠償の受付を実施するためには、予め対処のマニュアルを定めておくことは重要。

論点

  一義的には責任集中されている原子力事業者の責務。他方、状況に応じて農協や漁協等の地域の組合などを活用し、地方自治体ががこれをまとめるなどの支援も有効ではないか。
損害賠償の申請の際に必要となる、申請書類の書式例などを予め作成しておくことは有効ではないか。

(5)賠償の基本的考え方について

  迅速かつ適切な損害賠償を実施するためには、原子力損害発生に際して、なんらかのスキームにより、賠償責任の範囲が提示されることが重要。

論点〔→資料2-3において別途議論〕

  JCO臨界事故を踏まえれば、当時の「原子力損害調査研究会」による報告書のように、科学的・専門的知見に基づいて作成した賠償責任の基準となるべき考え方を提示する機能が必要ではないか。
専門的知見を有する原子力保険プールの支援が有効ではないか。

(6)被害者との調整、賠償金の支払いについて

  迅速かつ適切な損害賠償の調整、支払いをを履行するためには、予め対応のマニュアルを定めておくことは重要。

論点

  一義的には責任集中されている原子力事業者の責務。一方、JCO臨界事故を踏まえれば、地方自治体は第三者的な立場にあることから、状況に応じて、原子力事業者と被害者とのつなぎ役として、両者間の調整に陪席するなどの支援は有効ではないか。
JCO臨界事故の際の教訓を踏まえ、年末等考慮すべき時期、仮払いの可能性とその精算に当たって考慮すべき事項などを整理する必要がないか。

(7)原子力損害賠償紛争審査会の運営について

  被害者の保護に万全を期するために、原子力事業者と被害者の間で調整のつかない事案について、原子力損害賠償紛争審査会を早期に立ち上げ、臨機応変に対応することを見据え、予め対応マニュアルを定めておくことは重要。

論点〔→資料2-3において別途議論〕

  原子力損害賠償紛争審査会は、賠償責任の基準となるべき基本的考え方の提示も行うべきはないか。
(審査会の所掌範囲の見直しは法令改正が必要となる可能性がある)

(8)国の支援について

  被害者の保護に万全を期するために、原子力損害賠償紛争審査会の機能等も含め、国による支援の在り方等について、予め対応方針を定めておくことは重要。

論点

  原賠法第16条に基づく政府の援助については、ケースバイケースで対応するべきであるが、考慮すべき観点(被害者救済の状況、事業者の帰責性、資金力等)を如何なるものにするか、どのような援助(補助、融資等)を行うべきかを整理しておくことは有効ではないか。

(9)その他

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研究開発局原子力計画課