資料3-3 損害賠償措置額の見直しに関連する事項について(案)

1.少額賠償措置額(特例額)の見直しについて

(1)特例額見直しの前提

  原子力損害の賠償に関する法律施行令(以下「原賠法施行令」という。)において、原子炉の運転等の種類に応じ、法定措置額(現行600億円)より低額(120億円または20億円)の賠償措置額(特例額)が規定されているが、これについても法定措置額の見直しに伴い、法定措置額とのバランスや国際水準等を参考として、見直しを行うことが適切であると考えられる(特例額の見直し推移は別紙のとおり)。
  現行特例額は、原子力事業者の行為および取扱物質の特性を考慮して、被害者の保護と原子力事業の健全な発達という法目的にも照らしつつ、法制度としての簡潔性にも配慮して2区分としており、一定の合理性を有するものであると考えられる。

(2)国際水準・条約など考慮する観点

  運転等の種類による設定区分は異なるものの、諸外国においても特例額を設けている場合が一般的である。また、改正パリ、改正ウィーン、CSCの各条約においても特例額の設定を認めているが、各条約の締約国は一定の賠償措置額にみたない部分について、公的資金で充足できるようにしておく必要がある。

(3)特例額の見直しについて

  特例額の見直しについては次のオプションが考えられる。

1.オプション1【法定措置額の引き上げ(据置き含む)に対応し、同様に引き上げる】

  法定措置額を現在の600億円から1,000億~1,200億円に引き上げる場合には、特例額についても法定措置額の引き上げ率に合わせた引き上げを行う(法定措置額が据置かれた場合は特例額も据置く)。

2.オプション2【CSC条約を念頭に、3億SDR相当額に引き上げる】

  現行2区分の特例額(120億円または20億円)を、一律3億SDR相当額(約500億円)に引き上げる

考慮事項

CSC条約との関係

  仮に今後国際条約の締約を検討する場合、現実的な選択肢としてはCSC条約が考えられる。CSC条約は、特例額(500万SDR以上の額)を認める一方、賠償措置額(3億SDR以上の額)まで公的資金が利用可能であることを確保するよう要請しており、この資金をどう確保するかとの課題がある

  (注)我が国制度は保険の限度額は特例額であっても、原子力事業者は無限責任であり、かつ、必要に応じ国の支援もあることから、現行制度でも3億SDRまで対応できることになっているとの考え方もある。

2.解体中の原子炉における賠償措置額について

  原子炉施設の廃止措置段階において、特に核燃料物質の搬出を終えた施設については、事実上臨界の可能性はなく、運転段階に比して災害の可能性は著しく低減するものであり、原子炉等規制法においても、核燃料物質の搬出をひとつのメルクマールとして規制の合理化を実施している。
  こうした点を勘案し、廃止措置の段階に応じて賠償措置額の低減を図ることが適切であるとし、具体的な低減の条件・賠償措置額を以下のとおりとする。

   解体中の原子炉の賠償措置額(熱出力1万KW(キロワット)超の原子炉の場合)

原子炉施設の状態 賠償措置額
1.通常の運転の場合 600億円(=運転の賠償措置額)
2.使用済燃料を炉心から取り出しサイト内で保管している場合 120億円(=使用済燃料を貯蔵する者が要する賠償措置額)
3.核燃料物質(使用済燃料を含む)をサイト外へ搬出した場合) 20億円(=放射性廃棄物の管理を行う者が要する賠償措置額)

3.政府補償契約の補償料率について

(1)補償料率

  原子力損害賠償補償契約に関する法律において、「補償料の額は、一年当たり、補償契約金額に補償損失の発生の見込み、補償契約に関する国の事務取扱費等を勘案して政令で定める料率を乗じて得た金額に相当する金額とする」と規定されており、補償料率については、制度創設以来、同率(10,000分の5)を維持してきた。
  賠償措置額の見直しがされ、大幅な引上げにより1,000億円を超える賠償措置額へ移行する場合には、補償料率の引き下げの要否を検討する意義があると考える

(2)補償料率の見直し

  補償料率の算定にあたっては、法律に定められた料率決定の要件(補償損失の発生見込み、国の事務取扱費)等を勘案してより適切な算定方法を検討する。

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