資料4-3 原子力損害賠償補償契約等に係る業務の円滑な運営の確保について

1.国の業務の円滑な運営の確保の重要性

  本検討会においては、国の業務に関わる事項として以下のような検討を行っているが、国の業務の円滑な運営を確保するため、保険会社の協力を得ていくことが実際的である。

  • <検討会における議論>
    • 1.法律改正事項
      • 国の責任において以下を実施することとし、その際、原子力損害賠償紛争審査会(以下「審査会」という。)の知見を活用する。
        • 原子力損害の全体像の把握
        • 賠償の基本的な考え方の提示
    • 2.指針事項
        • 賠償に関する紛争の解決のために審査会をより活用していくことを前提に、審査会の効果的な対応・活用のスキームを整理
        • 政府補償契約の対象事案について、日本原子力保険プールへの協力依頼等、損害調査・補償金支払の事務処理を円滑に行うための方策を整理

2.原子力損害賠償補償契約等に係る業務と保険業法の関係

(1)保険業法の制約

  保険業法によると、保険会社は保険業以外の業務を原則として行ってはならず(第100条)、政府補償契約等に係る国の業務((2)を参照)について、保険会社の協力を得ることはこれに抵触するおそれがある。
  このため、万が一の際の円滑な業務の実施を確保するため、保険業法上の他業禁止の例外(下記4)として明確に位置付けることの要否について、無保険車・加害者不明等の場合の自動車損害賠償に関する政府保障事業の業務の一部委託の制度等も参考に、さらに検討を行うことが必要ではないか(参照条文を参照)。

  • <保険業法第100条で認められる保険会社の業務の範囲>
    • 1.第97条業務(固有業務):免許の種類に応じた保険の引受け・資産の運用
    • 2.第98条業務(付随業務):1に付随する金融商品取引の仲介
    • 3.第99条業務(法定他業):1の遂行を妨げない限度で行う金融商品取引等
    • 4.他の法律により行う業務:国交省の委託を受けて行う自賠責政府保障事業

(2)検討例

  • 1.政府補償契約に係る損害調査・損害査定・補償金支払等の実施の協力
  • 2.原子力損害の全体像の把握・賠償の基本的な考え方の検討に当たってのデータや知見の提供等の協力

参照条文

保険業法(平成7年法律第105号)

(免許)

第三条  保険業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、行うことができない。

2  前項の免許は、生命保険業免許及び損害保険業免許の二種類とする。

3 生命保険業免許と損害保険業免許とは、同一の者が受けることはできない

4~6  (略)

(業務の範囲等)

第九十七条  保険会社は、第三条第二項の免許の種類に従い、保険の引受けを行うことができる。

2  保険会社は、保険料として収受した金銭その他の資産の運用を行うには、有価証券の取得その他の内閣府令で定める方法によらなければならない。

第九十八条  保険会社は、第九十七条の規定により行う業務のほか、当該業務に付随する次に掲げる業務その他の業務を行うことができる。

一 他の保険会社(外国保険業者を含む。)、少額短期保険業者、船主相互保険組合(船主相互保険組合法(昭和二十五年法律第百七十七号)第二条第一項(定義)に規定する船主相互保険組合をいう。)その他金融業を行う者の業務の代理又は事務の代行(内閣府令で定めるものに限る。)

二 債務の保証

三 国債、地方債若しくは政府保証債(以下この号において「国債等」という。)の引受け(売出しの目的をもってするものを除く。)又は当該引受けに係る国債等の募集の取扱い

四 金銭債権(譲渡性預金証書その他の内閣府令で定める証書をもって表示されるものを含む。)の取得又は譲渡(資産の運用のために行うものを除く。)

四の二 特定目的会社が発行する特定社債(特定短期社債を除き、資産流動化計画において当該特定社債の発行により得られる金銭をもって指名金銭債権又は指名金銭債権を信託する信託の受益権のみを取得するものに限る。)その他これに準ずる有価証券として内閣府令で定めるもの(以下この号において「特定社債等」という。)の引受け(売出しの目的をもってするものを除く。)又は当該引受けに係る特定社債等の募集の取扱い

四の三 短期社債等の取得又は譲渡(資産の運用のために行うものを除く。)

五 有価証券(第四号に規定する証書をもって表示される金銭債権に該当するもの及び短期社債等を除く。)の私募の取扱い

六 デリバティブ取引(資産の運用のために行うもの及び有価証券関連デリバティブ取引に該当するものを除く。次号において同じ。)であって内閣府令で定めるもの(第四号に掲げる業務に該当するものを除く。)

七 デリバティブ取引(内閣府令で定めるものに限る。)の媒介、取次ぎ又は代理

八 金利、通貨の価格、商品の価格その他の指標の数値としてあらかじめ当事者間で約定された数値と将来の一定の時期における現実の当該指標の数値の差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引又はこれに類似する取引であって、内閣府令で定めるもの(次号において「金融等デリバティブ取引」という。)(資産の運用のために行うもの並びに第四号及び第六号に掲げる業務に該当するものを除く。)

九 金融等デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理(第七号に掲げる業務に該当するもの及び内閣府令で定めるものを除く。)

十 有価証券関連店頭デリバティブ取引(当該有価証券関連店頭デリバティブ取引に係る有価証券が第四号に規定する証書をもって表示される金銭債権に該当するもの及び短期社債等以外のものである場合には、差金の授受によって決済されるものに限る。次号において同じ。)(資産の運用のために行うものを除く。)

十一 有価証券関連店頭デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理

2~9  (略)

第九十九条  保険会社は、第九十七条及び前条の規定により行う業務のほか、第九十七条の業務の遂行を妨げない限度において、金融商品取引法第三十三条第二項各号(金融機関の有価証券関連業の禁止等)に掲げる有価証券又は取引について、同項各号に定める行為を行う業務(前条第一項の規定により行う業務を除く。)及び当該業務に付随する業務として内閣府令で定めるものを行うことができる。

2  保険会社は、第九十七条及び前条の規定により行う業務のほか、第九十七条の業務の遂行を妨げない限度において、次に掲げる業務を行うことができる。

  • 一 地方債又は社債その他の債券の募集又は管理の受託
  • 二 担保付社債信託法により行う担保付社債に関する信託業務

3  生命保険会社は、第九十七条及び前条の規定により行う業務のほか、第九十七条の業務の遂行を妨げない限度において、信託業法の規定にかかわらず、その支払う保険金について、信託の引受けを行う業務(以下「保険金信託業務」という。)を行うことができる。

4~10  (略)

(他業の制限)

第百条  保険会社は、第九十七条及び前二条の規定により行う業務及び他の法律により行う業務のほか、他の業務を行うことができない。

自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)

(業務)

第七十二条  政府は、自動車の運行によつて生命又は身体を害された者がある場合において、その自動車の保有者が明らかでないため被害者が第三条の規定による損害賠償の請求をすることができないときは、被害者の請求により、政令で定める金額の限度において、その受けた損害をてん補する。責任保険の被保険者及び責任共済の被共済者以外の者が、第三条の規定によつて損害賠償の責に任ずる場合(その責任が第十条に規定する自動車の運行によつて生ずる場合を除く。)も、被害者の請求により、政令で定める金額の限度において、その受けた損害をてん補する。

2・3  (略)

(業務の委託)

第七十七条 政府は、政令で定めるところにより、第七十二条第一項の規定による業務の一部を保険会社又は組合に委託することができる

2  組合は、次の各号に掲げる規定にかかわらず、前項の規定により委託された業務を行うことができる。

  • 一 農業協同組合法第十条
  • 二 消費生活協同組合法第十条
  • 三 中小企業等協同組合法第九条の二又は第九条の九

3  国土交通大臣は、第一項の規定による委託をしたときは、委託を受けた保険会社又は組合の名称その他国土交通省令で定める事項を告示しなければならない。

自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)

(自動車損害賠償保障事業の業務の委託)

第二十二条 政府は、法第七十七条第一項の規定により、損害のてん補額の支払の請求の受理、てん補すべき損害額に関する調査、損害のてん補額の支払その他法第七十二条第一項の規定による業務のうち損害のてん補額の決定以外のものを保険会社又は組合に委託することができる

2  政府は、前項の規定により委託をした保険会社又は組合に対し、能率的な経営の下における適正な原価を償うに足りる金額を委託費として支払うものとする。

3  前項の委託費の支払の方法その他第一項の規定による委託契約に関する準則は、国土交通省令で定める。

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研究開発局原子力計画課