原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会(第7回) 議事録

1.日時

平成20年12月15日(月) 10時30分~12時00分

2.場所

文部科学省東館13F3会議室(文部科学省13階)

3.議題

  1. 原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会第1次報告書について
  2. ワーキンググループの開催について
  3. 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会国際戦略検討小委員会について

4.議事録

【野村座長】 
 それでは、定刻よりまだ前ですけれども、出席予定の方はお見えですので、第7回原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会を開催いたします。本日ご欠席の柴田委員、廣江委員の代理として、日本電機工業会の宮地部長、電気事業連合会の菊永副部長にお越しいただいております。また、本検討会の顧問として下山先生、谷川先生のお二人にもご出席いただいております。まず配付資料の確認をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】 
 資料といたしましては7-1から7-5まで、途中で7-1の別紙というものがあり、6種類の資料が配られていると思います。過不足がありましたら、その都度言ってもらえればと思います。

【野村座長】 
 それでは早速議題に入りますが、前回第6回の検討会において報告書(案)が作成されたことを受けまして、先日事務局がパブリックコメントによる意見の募集を行ったところでございます。これは10月28日から11月26日まででございます。パブリックコメントでいただいたご意見に対する回答、及びパブリックコメントを踏まえた報告書の修正案について、ご審議をいただくということになります。
 それでは、事務局のご説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】 
 まず資料7-1でございますが、10月の後半から1カ月パブリックコメントを実施しました。それで10名の方から11件のコメントが出されてございます。
 後ほど別紙で細かく説明しますが、いただいた主な意見というものをカテゴリーごとに整理しますと、まず一つは賠償措置額の設定ということで、PSAの最近の確率論的安全評価などを用いて施設ごとに細かく算定したらどうかというコメントが1つございました。
 2つ目のカテゴリーとしましては、これは何人かの人からありましたが国の役割ということで、これはおそらく業界の人じゃないかなと思うんですが、もう少し国が前面に立つようなことを具体的に書いたらいいんじゃないかとか、国が援助するという規定で何をするのかもうちょっと明確化したらいいんじゃないかというコメントがございました。
 次は、補償料率ということにつきましては、補償料率が下がれば電気料金値上げにつながらなくていいんじゃないかということで、適切な水準とすべきであるというコメント。
 また、運用ガイドラインの内容につきまして、地元自治体との関係で安全協定というのがあって、自治体と原子力事業者との間では賠償についても決めているようなところもある。そういうことも考えながらやるべきじゃないかというコメントです。
 次が、国際条約への対応ということですが、今の段階でほんとうに役立つかどうかというのはよくわからないけれども、役立つのであれば検討が必要じゃないかというコメント。
 その他といたしまして、普通の人もあまりよく知らないから、原賠制度というものをもうちょっとPRしたらいいんじゃないかというコメントがございました。
 それで、別紙のほうで細かく説明しますけど、いただいたコメントにはおおむね対応していますので、本文を変えるのは、一つ国の支援の在り方ということをもう少し明確にしたらいいんじゃないかということでございます。これについては運用ガイドラインを作成する中できちんと検討していって書きたいなと思っていたところで、報告書にガイドラインの項目例を書いてあるページがございます。そこの中で、今までは漠然と「国による支援の在り方・方策」と書いていましたが、具体的に、例えば「賠償措置額を超える場合の国の援助の在り方」というようなこともきちんと書いた上で内容を詰めていくということにしたらどうかと思います。
 あと、パブコメとは関係ありませんが、若干マイナーの変更をして、換算が間違っていたようなところ等を変えてございます。
 それと、後ほど説明しますけど、報告書でパブコメの段階で入ってなかった「はじめに」をつくったのと、「報告書のポイント(概要)」と「参考資料」を追加してございます。
 それで7-1に、パブコメが11件だったものですから結構まじめにそれぞれ逐条ごとに整理をいたしました。まず左側がそれぞれいただいたコメントを若干観点ごとに整理したりとか、要約にしたりとか、若干加工はしてございますが、大体生のコメントが左側にあるということでございます。
 それで賠償措置額の設定ということで今さっきも言いましたが、最近の確率論的安全評価等の進捗によって、どの程度の規模の損害が発生するかというのが推定できるのであれば、原子力施設ごとにもう少しきちんと技術的に詰めて合理的な賠償措置額を定めようじゃないかというコメントが一つでございます。
 その次のコメントは、最近はJCOの後に災害対策特別措置法もできていろいろな防災対策が整っていることから見ると今後は損害額は小さくなるんじゃないかというようなこととか、あと、そういう少額措置額とかについても単純に上に合わせて2倍に上げているということですけども、そこらももう少しきちんと検討したらいいんじゃないかという2つのコメントをいただいてございます。
 それにつきましての回答(案)でございますが、今までも議論しましたように賠償措置額というものは民間保険の引受能力を考えながら、まずは原子力事業者が基礎的な資金を一定額以上確保するということで決めていて、仮にそれを超えるような場合はアディショナルに国が事業者に対して必要な援助を行うことになるという制度であるということでございます。このためということで、賠償措置額は全体の国際水準とかを勘案しつつ、保険会社の引受能力の範囲内でできる限り高額ということで定めてきております。今回の改正におきましても、原子力先進国の状況とか保険会社がちゃんと引き受けられるかを審議して決めたことでございますし、少額の措置額についても、過去からそういう相対的リスクということは変動ないということですから、同じような割合で引き上げることが妥当であると判断しましたという回答案を考えてございます。
 3番目の意見ですが、事業行為の終了後の廃止段階での賠償措置額を合理化するということについては、これはリーズナブルなので賛成であるというコメントでございます。そういう事業行為の終了後におけるサイト内での活動については、相対的リスクが同等なものに合わせて低減できるところは低減することが妥当と判断しました。そういう方向で見直しを行いましたということでございます。
 次が国の役割。これは4人の方から大体同じような趣旨でコメントをいただいてございます。4番目の人は、賠償法の目的には被害者の保護とともに、原子力産業の健全な発展があることから政府の援助も規定されているのではないかということから、どのような場合に援助を行うかの明確な取り扱い方針を検討したらいんじゃないかというコメントでございます。
 5番目の人は、JCOの事故の際には実際は親会社が支援するということで国の援助はなされなかったということですが、これはあくまでもイレギュラーなので、今後のことを考えるといろいろな措置として、例えば一たん国が賠償額を立てかえておくというような形のものも含めて検討すべきじゃないかというコメントでございます。
 6番目の人も大体同じようなことなんですが、やっぱり何かあったときの補償を営利目的の民間企業だけに依存するということでは心もとないんじゃないか。特に電力会社はライフラインを維持しており、経営難に陥ると国民に影響が出る重大な問題になるということですから、損害発生時には国も前面に立って向き合う姿勢があることを報告書の中でもっときちんと検討したらいいんじゃないかということでございます。
 7番目には、これも同じようなことなんですが、JCOの場合には国の援助が議論されることなく親会社が支援したことを踏まえると、国は事業継続についても原子力発電を維持するというのが国策であるならば国もそういう事業継続については責任を持つということから、何かあったときに事業者の経営を脅かすことがないように国が援助を行うというようなことをきちんと指針の中で書いたらいいんじゃないかというコメントでございます。
 それを踏まえての回答でございますが、上のほうは説明ですけど、原子力損害の賠償責任ということは事業者が負うというのを基本としているものの、万が一それを超えるような損害が発生したという場合に備えて、必要な場合には政府が援助するという規定があるということでございます。そういうことで、具体的には、損害発生の際の具体的な事情に応じて適切な方法で援助を行うこととなるということです。若干コメントすると、JCOの事故の場合には個別の賠償というものは確かに事業者がやったんですが、国としましても地元への交付金という形で財政支援の制度をつくりましたし、防災センターとかの防災対策という意味で数百億円オーダーのいろいろな支援をしてきたという事実もございます。
 いただいた指摘に対しては、今後ワーキンググループを設置してガイドラインをつくっていくことになってございますので、その中で国がどういう場合にどういう支援をやるかも詳細に検討していくこととしております。これはご懸念に対応して若干報告書も以下のとおり修正するということでございまして、今さっき言いましたようにガイドラインがどういう内容かという項目例のところに、国の支援を「賠償額を超える場合の国の援助の在り方」等と明確に書いて、具体的に検討していくこととしたいということでございます。
 次の3ページ目で、補償料率の話なんですが、毎回毎回賠償措置額が上がることになると少なからず電気料金値上げの要因にもなるということで、具体的な料率見直しには原子力施設の安全性を踏まえた適切な水準とすべきであるということでございます。
  これにつきまして回答の中では、今まで議論してきたとおり、最新の知見とか保険市場の評価、あと契約実績に基づいて補償料率を見直して適切な水準へ引き下げを行うことを報告書で明記しているということでございます。今の段階できちんと書けないですが、具体の料率は万分の5を万分の3ということでほぼそういうことで調整しています。実際は政令に書くのはその後になりますけど。単純に言うと限度額は倍になりますから、その料率が万分の5から万分の3ということで、支払う補償料は1.2倍と2割増しだけでいいという状況になってございます。
 運用ガイドラインの内容につきまして2点コメントがございまして、1点目は、原子力事業者と地元自治体が締結している安全協定という中で、原子力事業者と自治体の関係で損害が出たときにどうするという規定を持つものもあるということで、私も若干だけ勉強しましたが、そういう規定もあります。そういうことなので、何かあったときはそういう安全協定に基づいて自治体が独自に賠償交渉を事業者と進める可能性もあって、そのような場合には地域によって異なる賠償がなされる可能性があるということで、そういう意味では安全協定の規定も含んだシステムの構築が必要でないかというコメントが1つ。
 次の10番目は、事故から何年も経過した後で症状が出てくるというようなことも考えられるということとか、あと、そういう意味では晩発障害みたいなことになると被害者が企業を相手に大変な思いで訴訟を起こさないといけなくなる、それも大分後からというようなことになると結構大変だから、国が長期にわたり被害者のモニタリングとかフォローアップを行うような制度を考えたらどうかというコメントでございます。
  安全協定の話のほうにつきましては、今後運用ガイドラインをつくっていく際にも安全協定もきちんと勉強した上で対応していきたいということでございます。ただ、ここにありますように賠償の基本的な考え方というものは、事故が起こった場合に今後は紛争審査会がみんなの参考になるような指針を示していくわけでございますから、それを基本とした上で安全協定に基づくものが何かあればそこも含めて今後検討するということでございます。
 それと晩発性障害の話につきましては、最近の裁判事例では除斥期間の適用がちゃんと対応できるようになっているということでございます。また、原子力災害特別措置法において、災害の事後対策ということで、定期的な健康診断でありますとかいろいろなフォローアップが国とか地方公共団体また原子力事業者の実施責任のもとできちんと行われるような体制が一応できております。
 次の11番目ですが、国際条約への対応でどのような点がよくなるかよくわからない、あと、具体的には米国の原子力空母や原子力潜水艦などが何かやった場合にはどうなるのかというようなこと。そんなものも含めて、ほんとうによくなるのであれば加盟に向けて検討が必要だと思うというコメントでございます。
 そういうことで、とりあえず国際枠組み、CSCをどうするかということにつきましては右のほうに書いていますように、近隣諸国の動向とか、今の原子力ルネッサンスと言われている状況に対応して、将来の本格的検討に備え論点整理を行うことが有益であると考えておりますから、今後ワーキンググループにおいて論点を整理した上で、将来的には関係省庁と密接に連携しつつ将来的な検討につなげていくということを予定しているということです。なお書きで、原子力軍艦の事故については一般的に原子力損害賠償の条約の対象にはならないということで、実際に何かあればもっと別の外交交渉を通じた賠償等で対応が必要になるということでございます。
 その他でございますが、12番目の人は、原子力の安全というものはゼロでないリスクがあるということであれば、こういう賠償制度は重要であるということで、もう少し国民の理解を深めるような努力をしたらいいんじゃないかということです。それについては、今後ともわかりやすい説明に努めてまいりたいというコメントでございます。
 13番目が、同じような内容でございますが、温暖化対策で原子力は重要である一方で、まだなかなか立地とかでは難しい状況もあることを考えると、万が一の対応としての損害賠償措置がきちんと整備されているということが重要で、今回の法改正はよりそれがそう進むのであれば評価できるということでございます。これについても、今後とも充実した内容になるよう努めてまいりますということでございます。
 以上のようにそれぞれのコメントについてかなり丁寧な回答案をつくったところですが、報告書の本文を変えるところは、国の役割というところを引き続き具体的にちゃんと検討しましょうということで修正しようということでございます。

 あわせて資料7-2の報告書もやってしまいたいと思いますが、若干加えたところとか変えたところも含めて簡単に説明しますと、まず1ページ目の「はじめに」というのを、これは大体本文が決まらないと書きようがないということで新たに書き起こしたところでございます。
 簡単に説明しますと、まず報告書の位置づけということで、検討会において次期通常国会に提出すべき法律改正及びそれとあわせて行うべき政令改正の基本的内容をまず示すものとした上で、原子力損害賠償制度を若干説明をしてございます。今の制度は昭和37年に整備されたもので、万が一の事故により公衆損害が発生した場合における被害の迅速かつ適切な救済を図るべく、原子力の特性を踏まえた救済制度を整備するとともに、原子力事業の健全な発展を図るべく、賠償リスクを原子力事業者に集約するということによって原子力事業の法的安全基盤を確保したものであるということです。このような制度の下では、原子力事業者が故意・過失の有無を問わず集中的に賠償責任を負うということなんですが、基礎的な原賠原資をあらかじめ確保するということから、民間の責任保険、また政府との補償契約の締結によって賠償措置を講じておくことが義務づけられているということ。さらに、賠償措置額を超える賠償が必要となったというような場合には、国による援助の仕組みが整えられるとともに、紛争が生じた場合に和解の仲介を行うために紛争審査会を設置し得るとされているものであるということです。今回の制度の見直しはおおむね10年ごとに行われておるということで、制度の骨格を維持しつつ、責任保険市場の引受能力の拡大を踏まえながら賠償措置額の引き上げ等の改正が行われてきたということです。今回の見直しにおいては、この間にJCOの臨界事故があったということですから、JCOの臨界事故の経験を踏まえ機能できる制度とすべく検討を行った結果、従来のように賠償措置額の引き上げに加えて、紛争審査会の機能の追加でありますとか、あと、補償契約の一部事務を委託できるというような創設の必要性が認められたということでございます。
 また他方で、こういう制度を円滑に機能させるために運用面における体制整備も必要であるということから、JCOの臨界事故から得られた教訓を踏まえてガイドラインを取りまとめていくことが重要であると。また、国際的な枠組みについても、世界的な原子力産業の連携・再編であるとか、アジア周辺諸国におけるいろいろ導入への動きを踏まえて、現実的な選択肢であるCSCについて、具体的な論点整理を進め、将来の本格的な検討に備えておくことが重要であると。
 このため本検討会としては、まずこの方向性で書いております制度改正事項を踏まえた法律改正、政令改正においては、政府において適切に講じられることを期待するとともに、引き続き運用ガイドライン、あと、国際条約への対応について検討を進めていくこととするというようなことで「はじめに」を追加しました。
 1章からは個々に説明しませんが、基本的に変えてございません。変えたところは、28ページからありますようにガイドラインとしてこんなことを決めたいと書いている中で、政府の支援の項目を少し具体的に書いたということです。今後の議論の過程で具体的にしていけばいいんだと思います。
 あわせて参考資料とかをつくったんですが、36ページ、37、38で、簡単ですが第1次報告書のポイントをまとめてございます。第一には、原子力損害賠償をめぐる情勢ということで、JCO臨界事故における損害賠償の経験を書きました。今回の検討のバックグラウンドということでは、このJCOの話と、平成16年にパリ条約が改正されたとか、アジア周辺諸国で導入、米国がCSCを批准したというような国際動向もあったということでございます。
 2番目で、原子力損害賠償制度の見直しということで、法律改正事項と政令改正事項を印を分けて書いてございます。1番目は期限の延長、これは法律事項です。次に、賠償措置額の引き上げにつきましては、まず600億円を1,200億円に引き上げるというのは法律事項です。少額措置額の120億円と20億円をそれぞれ240億円と40億円に上げるというのは政令事項。補償料率を引き下げるのは政令事項でございます。事業終了段階での賠償措置額についても、政令で具体的にするということになります。37ページで、紛争審査会に、賠償の参考になるような賠償の範囲等を決めるという役割を追加するということですが、それについては法律事項になります。(5)の政府の補償契約の事務の一部を損害保険会社に委託できるようにするということも法律事項です。(6)の罰則も法律事項です。最後に、運用ガイドラインの作成と国際条約への対応については、ワーキンググループで引き続き検討を行っていくことを書いてございます。ポンチ絵みたいなものも含めて3枚ぐらいが簡単なポイントということで、まとめました。
 さらに頁を進めると参考資料がありますが、今までの検討で使ってきたものなどを参考事項としてつけたということでございます。
 そういうことで、パブコメの対応とか、あとパブコメ以外にもここも変えておいたほうがいいのではないかという事項がありましたら、委員からご意見をいただいて、できれば早く報告書をきれいな冊子にしたいと事務局では考えてございます。
 説明は以上でございます。

【野村座長】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明について、ご質問、ご意見等ございましたらお願いしたいと思います。

【道垣内委員】 
 1点よろしいですか。報告書を直すレベルの話じゃないんですが、賠償措置額のあり方についての説明の仕方ですけれども、資料7-1別紙の最初のページですが、パブリックコメントの1、2、3でおっしゃっていることは、事故が起こったときに幾らの額の損害が起きるのかという話と、その確率の話と、2つあると思うんです。賠償措置額というのは事故の想定額よりは少ないかもしれないけど、おおむねそれで間に合っているだろうということも考えられていると思うんです。国際水準ということで条約のことも少し触れると、そこは基本的には有限責任なんです。日本は無限責任ですから、その責任限度額を賠償措置額に使っているわけです。そこら辺の説明が十分なされていたのかどうかがわからなくて、この中では相対的リスクという言葉を使われていて、最初に申し上げた2つの額の想定と発生率の話はこの相対的というところで上を決めることによって下が決まるといいますか、大規模な施設で1,200億としたのなら、ほかはこれくらいだろうと説明できるということだろうと思うんですけども、そこは条約とはちょっと考え方が違うんです。条約は責任の上限までは措置額は置けと言っているわけです。国が持てと。何で私がそういうことを言うかというと、仮に今後CSCに入るときに国が間を埋めなければいけなくなるかもしれないじゃないですか。もしそうなった場合にも通じるような説明にしておいていただきたいと思うのですが、どうなんでしょうか。

【谷川顧問】 
 いや、条約の場合は責任の限度を決めて、それでそこまでは裏づけがありますという形で保険をつけさせるなりするということなんだけど、日本の場合は責任は限度なしだからね。だけど、それじゃ全責任を担保する制度ができるかといったら、そんな保険はとても引き受けられませんから、できるわけないんだよね。そのときに、それならこの制度のもとで保険はどこまでなら消化できますかということで、国際的な再保険の仕組みその他から考えて、できるマックスまでは少なくとも裏づけの措置だけはしておきましょうというのが日本のシステム。だからそこは全然違うんだよな。

【道垣内委員】 
 違いますね。そうすると、回答案の上のほうの第2パラグラフの施設ごとの損害規模なんて話はおよそ関係ないですよね。

【谷川顧問】 
 建前から言えばね。

【道垣内委員】 
 ええ。

【谷川顧問】 
 だけどそれは、さはさりながら賠償措置額のほうではその程度は全然もちろん無視して、無限責任も基本に据えながら持てる範囲というもので措置額を決めていますが、それは大きさによって1本で決まっている。リスクの大きさなんていうのは個別には全然考えてないわけだよ。

【道垣内委員】 
 個別にはね。少額措置額で類型的には考えるんですよね。

【谷川顧問】 
 類型的には考えるけど。ここでコメントの主張者の言っているのがどっちへ向いて言っているのかよくわからないんだけど、確率を勘案すれば下がるじゃないのということを言いたいんだとすれば、賠償措置額はどんどん引き上げるんじゃなくて引き下げるほうに働いてくる。僕は業界の意見かなと思ったわけですよ。

【道垣内委員】 
 ただ、そうすると少額措置の対象の事業をやっているものもまた同じ言葉で説明されているんですよね、相対的リスクが……。

【谷川顧問】 
 それは説明する側の知恵の出し方だよ。

【下山顧問】 
 損害賠償法の経緯から見ると、まずアメリカがプライス・アンダーソン法をつくったんですけど、これは一応損害は勘定したんです。あれは事故の発生の確率とかいうのはみんな無視して、30万キロの動力炉が事故を起こして、その中にあるキュリーの3分の1が出たと勝手に仮定してしまうんです。出てから先はどうなるか、損害発生額というのは、まず事故の対応、それから周囲の天候がものすごく影響するんです。例えば晴天の日にやると拡散するけど、雨のしょぼしょぼ降る晩にじわじわとやったら付近に落ちます。そういう6通りか8通りのケースでやっているんです。だから、まず第一に事故の原因と全く離れている。それから、天候と事故の対応で決まるから、これはもう全然参考にならない。ですからヨーロッパはおそらくこういう理由でやってないと思うんです。アメリカは唯一それをやって、日本でも同じようなことを科技庁はやってみたんです。事故の原因は問わない、出たときにどのくらいになるか、6通りぐらいやりましたけどあまり参考にならなかった。

【谷川顧問】 
 計算をするんだったら、原子炉の方式の違いもある。チェルノブイリの方式だったらどこまででも飛んでいくんだからね。どの国の賠償措置額もその辺の区別はしてない。

【下山顧問】 
 少額というのは、事業の育成というか、例えば教育用なんかの原子炉は非常に低いわけでしょう、そっちから来ている。その前提は小さくても国が援助するんだから、腰だめでやってもいいということなんだろうと思うんです。
 それともう一つ、パリ条約は、いまの僕の理解の仕方と違うのは、前のパリ条約は全部そこで責任制限があったのが、今度はその限度額がミニマムになって、いろいろな考え方も上へ多々ますます弁ずになっているわけです。例えば何もないんだったらそこで、賠償額はそこまでで……。

【道垣内委員】 
 切ってもいいんですよね。

【下山顧問】 
 そこまでは絶対に上げなくてはならないから、みんなキャパシティーが足りないところは、どうやって埋めようかと今議論をしているわけです。
  それともう一つ、無限責任というのは日本の特徴じゃなくて、ドイツもスイスも、それから北欧が皆なってしまいましたから、だからそれが要因とは違うんじゃないかと思うんです。

【道垣内委員】 
 もちろん私も長年やっているんですけども、ただ説明ぶりで、「このため」でつながらないと思うんです。

【谷川顧問】 
 どうやって評価するかが。

【北郷課長補佐】 
 先ほどご議論いただいたとおり、損害賠償措置額自体はリスクと必ずしも関係なく保険の額いっぱい、それから国際水準ということで決めているわけですが、少額措置額につきましては、賠償措置については一定の費用がかかるというところを、小規模な事業については当然事業規模等からリスクも落ちると、定性的な意味でございますが、そういうところを踏まえて、比例原則的に合理的な負担額に落とすという部分もあったのかなと思っています。

【山野原子力計画課長】 
 もうちょっと整理します。当然我々は答える責任はあるので。ただ、PSAとかを使って施設ごとにというのはリーズナブルじゃなくて、どこかで妥当な割り切りがあるはずで、それと日本の場合は、それをもしも超えた場合も無限責任と援助という青天井の世界がありますとそこは言える。

【道垣内委員】 
 要するに上のほうの理屈と下げるときの理屈が、両方うまく説明できていれば一番いいと思うんです。

【野村座長】 
 多分現実にここまで措置をしておきなさいというのは、それは保険会社の能力とか、あるいは国際水準とかありますけど、やっぱりある程度現実的な範囲内は確保しておくという発想も多少はあるんじゃないかという気がしないでもないです。つまり逆に言えば、低過ぎる場合には、無限責任を負わせている以上低いままで置いておいていいというものじゃないでしょう。確かにちょっと書くのは難しい。

【下山顧問】 
 それと、一つお聞きしたいのは、安全協定では自治体のほうが何かやるように書いてあるから何か要るんじゃないかというコメントですけど、天野さん、JCOのときは自治体をどうやって引っ張り出すかというのに我々は苦労したんです。実際はそこが一番。

【天野委員】 
 多分安全協定はあの後そういうのが加わったんじゃないかと思うんです。昔からそうなっていたとは記憶にない。青森も実際にそれについて議論したのはその後だと思うんだよね。

【山野原子力計画課長】 
 私もこういうコメントもあったので調べました。やっぱり場所によって書きぶりが違ってたり、青森は明らかに風評被害用に事業者に基金をつくらせたりしている。

【天野委員】 
 あれは別な理論があった話なんだよね。

【山野原子力計画課長】 
 そこは損害賠償以前の世界があって、何かあったら自治体が出ていって、事業者はそれに従わなければならない負担も抱えているようなところもある。

【天野委員】 
 僕はワーキンググループのときにもう一度よく見せていただきたいと思うんですけど、多分それは後からいろいろつけ加わってきたんだと思うんです。この時点のときにはそういう自治体の役割とかについては明確になっていなかったと覚えています。

【下山顧問】 
 これは随分苦労したんですよね。

【野村座長】 
 ほかに、ご発言いかがでしょうか。

【谷川顧問】 
 1つだけ教えていただきたいんだけど、国の援助に関連して、これはガイドラインの中でいろいろ書きますと。ただ、ここで1つだけ最初にはっきりさせておかなければならないのは、法律上の国の措置といっているのは、これは原子力事業者の賠償すべき額が措置額を超え、かつ、その法律の目的を達成するために必要があると認めるときに、原子力事業者に対して原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行うという限定がついているんだよね。ガイドラインでどこまで盛れるのか知らないけど、「JCOのときにこういうことをやりましたよ」と言うときの「やりましたと」いう措置は、この法律上の措置とは全然別物だから、これを書いたからといって、法律上の国の措置について答えたことにはならない。

【山野原子力計画課長】 
 それを前提で、だからマニュアルです。こうなったらすぐに何かしましょうと具体的に書けるわけじゃないんです。例えばそういう援助の仕方だって、キャッシュは極論であって、それ以前に電気事業者への融資に政府保証するとか考えられる方策をとりあえず検討しても、どうなったら絶対発動しますというものではないんです。おそらく起こった形態が注意不足なのか、同情の余地があるのかで全然違いますし、資力がどこまでもつかとか現実にはいろいろな要素が考慮されると思うので、判断材料を書ける範囲で書いたらいいんじゃないかなと思っています。

【天野委員】 
 おそらくこれは2種類あるんだと思うんです。ほんとうに損害賠償上の措置というものをどうするかということと、そういう被害を拡大防止したり、それから被害の損害をなるたけ損害賠償制度以外の方法ででも早く救済する方法はないかとか、その2種類にやっぱり分ける必要があると思うんです。実際には、制度上だけでなくその他の方法がたくさんあるということが非常に大事だろうと思うんです。

【山野原子力計画課長】 
 そのとおりです。だから、それで報告書の修正案も2つを書き分けることにして、1つ目の方法はまさにそういうことなんです。原賠法に基づくものじゃなくて、安全宣言を的確にやることで風評被害がぐっと減るわけです。そういうこともちゃんと検討していきたいと思います。

【野村座長】 
 いろいろご発言をいただきました。報告書そのものについては、先ほど事務局からご説明がありました修正案の内容でこの検討会として取りまとめるということでよろしいでしょうか。はい、そういうことで進めさせていただきます。

 次は現在検討中の原賠法の改正案の条文案が資料として配付されているかと思いますけれども、現在の検討状況について事務局からご説明願います。

【山野原子力計画課長】 
 資料7-3でございます。ドラフトと書いてますようにいろいろなレベルで調整を進めてございまして、基本的な枠組みは大体了解をいただいています。ただ、条文の書きぶり引き続き検討しております。
 まず1ページ目からいきますと、一つは賠償措置額を上げる。これは非常に単純で、600億を1,200億にするということでございます。それと、紛争審査会に指針を定めさせることにつきましては、まず第18条の紛争審査会の目的を加筆してございます。今までの「和解の仲介を行わせるため」というところに、「和解の仲介その他和解の促進に資する事務」という目的を広げたということです。具体的な事務は2項の2号を追加して「当該紛争に係る原子力損害の範囲の判定の方法その他紛争の当事者に参考となるべき事項に関する一般的な指針を定めること」という事務を紛争審査会にやってもらえるようにするということで加えた。ここは一番の今回の改正のポイントになると思います。それとあわせて3号業務で、これに必要な調査もできるようにしてございます。
 次の2ページ目が、まず延長につきましては10年間延長ということですから、平成21年を平成31年に変える。次の罰則につきましては、最近の炉規法との平仄をとりまして引き上げを行うということでございます。
 3ページ目がもう一つ今回の大きな改正ですが、補償契約法のほうも業務の委託ということで、新たな18条を追加してございます。「政府は、政令で定めるところにより、補償契約に基づく業務の一部を責任保険契約の保険者に委託することができる」ということ。自賠責の条文を参考にしております。
 法律改正事項は大体このような感じで、最終的に法制局との調整を行っている状況でございます。今後は、これは予算関連法案ですから、おそらく2月中旬ごろまでに政府内では閣議決定をして次の国会に出すというような段取り進めているところでございます。
 以上でございます。

【野村座長】 
 法案についてはいかがでしょうか。

【谷川顧問】 
 2点だけ。最初に補償契約のほうで、これは技術的なことなんだけど、「責任保険契約の保険者」というのは、これはそう言っておけばわかるのか。責任保険契約というのは定義があるんだな。

【北郷課長補佐】 
 はい。

【谷川顧問】 
 もう一つは、原賠法第18条の改正のところで「和解の仲介その他和解の促進に資する事務」というんだけど、和解の仲介というのは和解の促進に資する事務の一部ではないという整理か。もし、それの一部だというのなら……。

【山野原子力計画課長】 
 「その他の」の「の」が入ります。

【谷川顧問】 
 別なのか、別じゃないのか、そこを議論した上で「の」を入れるか入れないかを決めたのか確認をしておきたい。

【北郷課長補佐】 
 いろいろ議論中なので確定しておりません。

【下山顧問】 
 法律改正の国会のスケジュールはどうなっているのか。

【山野原子力計画課長】 
 国会はわかりません。こういう政治状態ですからなるべく早く出しておきたい。12月末で期限が切れるものの、実際は保険金額が変わるものですから、その分の保険プールや事業者の準備期間必要なんです。

【下山顧問】 
 そうですか。

【野村座長】 
 それでは、法案のほうはよろしいでしょうか。

 次の第2の議題が「原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会ワーキンググループの開催について」ということでございます。運用ガイドラインの策定の話や、CSCを中心とした国際条約への対応については、先ほどお決めいただいた報告書の中でも引き続きワーキンググループを設置して検討を継続するものとされております。ワーキンググループの設置については事前に事務局と相談して、各々の座長について、運用ガイドラインワーキンググループは天野先生、国際ワーキンググループは道垣内先生にお願いしたいという案になっております。まず事務局からご説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】 
 資料7-4でございます。今まで説明してきましたので概要は説明を省きます。
 検討の進め方としては、あまり形式にとらわれずに柔軟かつ機動的に、進めていきたいと思っています。そういうことで、ワーキンググループは非公開として、適宜公開の場である検討会で進捗状況を報告するというように、実務的にやりたいと考えております。
 メンバーでございますが、別紙にございますが、運用ガイドラインのほうは天野委員に座長をお願いするということで、一番重要なのがJCOのときの経験者で、天野さんが役所側、大西さんが保険プール、東海村は関田さん、茨城県は吉田さんにお願いをしてございます。あとそれと、現役の保険プール、電力会社、それとフィロソフィカルにも議論できるよう水野さんにお願いしていますが、経験者主体で具体的な話をしたいと思っています。
 次の国際ワーキンググループのほうは道垣内先生に座長をお願いするということで、まず業界代表として電事連と電工会、それとCSCとか輸送とかに明るいということで小松さんにお願いしてございます。それと原子力や産業の国際展開でありますとかという意味では大橋先生、市川さん。また国際展開に絡む外務省、経産省のそれぞれ課室長にも入ってもらういます。
 ちなみに市川さんと大橋さんは、次の7-5の資料にございますが、経産省の総合エネルギー調査会の電気事業分科会原子力部会のもとにこの10月末から国際戦略検討小委員会という組織が設置されてございます。新規導入国等への支援であるとか、先進原子力利用国との連携、関連産業の競争力強化、国際展開ということで、原子力関係の最近の動向にどう対応するかの検討を始めたということでございます。その中の一つとして、CSCが産業の国際展開に役立つかというのも当然こちらの小委員会の検討領域に入ってくるもので、市川さんと大橋さんはこちらのメンバーにも入っておられるということですから、我々の検討会にも入っていただくと、特に政策的観点から検討する際に後々いいんじゃないかということでございます。
 ちなみに国際戦略検討小委員会は今まで2回開かれていて、先日の2回目では、簡単ですが私からCSCの条約はどんなものか、我々の検討会でもワーキンググループを設置して今後論点を整理していきますというようなことを淡々とニュートラルに説明してきました。
 説明は以上でございます。

【野村座長】 
 それでは議題2と3と分かれておりますけれども、両方ご一緒に説明いただきました。ご発言ございますでしょうか。

【山野原子力計画課長】 
 そう言えばスケジュールを書いてないんですが、少なくとも第1回目のワーキンググループは1月ぐらいに開始して半年ぐらいをターゲットにやりたいと思っています。

【天野委員】 
 JCOの懐かしいメンバーに加わっていただけることは非常に心強い反面、JCOの特異性があまり表面に出るといけないと思いますので、できるだけそういうものをそぎ落として、いろいろなところでも参考にしていただけるような指針をつくりたいと考えております。よろしくお願いします。

【道垣内委員】 
 ある条約に入るべきだというのか、入りたいというのか、それで拠出金の出どころが違ったりするような結果にならないように中立的な議論をしたいと思います。

【谷川顧問】 
 国際枠組みのワーキンググループに僕が顧問として入るんだけど、下山先生も適時出席してもらえるような形にしておいたほうがいい。

【山野原子力計画課長】 
 わかりました。両顧問には両方出てもらうことにしましょう。

【谷川顧問】 
 運用ガイドラインのほうは。

【下山顧問】 
 そっちもやってくださいよ。

【野村座長】 
 ほかにいかがでしょうか。特にご発言はよろしいでしょうか。
 時間はまだ残っているんですけれども、それでは一応本日はここまでにしたいと思いますが、最後に櫻井審議官から一言ごあいさつをお願いしたいと思います。

【櫻井大臣官房審議官】 
 今年の6月6日から1回目の検討会を始めていただきまして、半年間精力的に各委員の皆様方にはご議論いただきまして、原子力損害賠償制度の在り方ということで中身の濃い報告書をこのような形で取りまとめることができました。ほんとうにありがとうございます。
 この報告書は、先ほど来山野が申し上げますとおり、事務局としまして次期国会で抜かりないようきちっと通すということで、準備作業を進めてまいりますので、またよろしくお願いします。
 あと、これで終わりではなくて、2つのワーキンググループ、一つは運用ガイドライン、もう一つは国際枠組みということで、今回の法改正に相並ぶほど極めて大事なものだということで当方も認識しておりまして、天野委員それから道垣内委員におかれましてはそれぞれ座長ということで労をとっていただきますが、引き続きまたよろしくお願いいたします。
 それから、やっぱり物事には歴史がありまして、谷川先生と下山先生におかれましては、引き続き顧問ということで大所高所から迷ったらとりあえず一言言っていただくというスタンスで、今後とも引き続きお願いしたいと思います。
 最後になりましたが、各委員の皆様方には大変お世話になりました。さはさりながら、これはまだある意味中間的な一つの報告書ということで私自身は強く心に思っておりまして、引き続き今後の原子力行政にかかわりまして、ご支援、ご鞭撻、ご協力のほどをよろしくお願い申し上げまして、簡単ではございますがあいさつとさせていただきます。ほんとうにどうもありがとうございました。今後ともまたひとつよろしくお願いいたします。

【野村座長】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、閉会の前に事務局から連絡事項がございましたら。

【山野原子力計画課長】 
 次回の予定未定です。ワーキンググループのほうは1月ぐらいから、それで節目節目にこの親会議にもご報告させていただきたいと思います。
 以上でございます。

【野村座長】 
 それでは、これで第7回の原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

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