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原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会(第2回)議事録

平成20年6月17日

【野村座長】

 定刻になりましたので、ただいまから第2回の原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会を開催いたします。
 本日は、委員13名のうち、10名の方にご出席をいただいておりまして、あと1名に代理出席をいただいております。また、本検討会の顧問として谷川先生、下山先生にもご出席いただいております。
 続きまして、第1回の検討会にご欠席された委員の方をご紹介させていただきます。簡単に自己紹介をお願いできればと思いますので、最初に柴田委員、お願いいたします。

【柴田委員】

 電機工業会の柴田と申します。電機工業会は原子力プラントメーカーが集まって作っております工業団体の1つでございますので、メーカーの立場でこの議論に参画させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【野村座長】

 それから、廣江委員。

【廣江委員】

 電気事業連合会の廣江でございます。私どもの業界の中の意見もしっかりまとめながら、この場で色々ご発言をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【野村座長】

 また、顧問としてご参画いただいております谷川久先生、前回ご欠席されましたので、一言ごあいさつをお願いいたします。

【谷川顧問】

 谷川でございます。今は日本エネルギー法研究所の所長をやっております。前回は海外出張で出席できませんでしたが、原賠法の改正は過去2回、原子力委員会の専門部会長をやって満20年以上経つわけでございまして、その前の段階からずっと面倒を見てきているところでございますが、今回の改正でさらに飛躍的な改正がなされることを願っている次第でございます。

【野村座長】

 また、本日は日本原子力保険プール専務理事の原徹委員が急遽ご出席できなくなりまして、代理で大西局長にご出席いただいておりますので、よろしくお願いいたします。

【大西局長】

 前回と今回、原が出席できませんで、申し訳ございません。今回も代理でよろしくお願いいたします。私はこの6末で一応退任しますけれども、最後の場と思いまして一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします。

【野村座長】

 続きまして、配付資料の確認をお願いしたいと思いますので、事務局から。

【山野原子力計画課長】

 封筒を開けていただきますと、まず議事次第から始まって何点か資料がございます。配付資料は議事次第の最後にありますように、2−1−1から資料2−3ということで6種類の資料を用意してございます。個々に確認いたしませんが、過不足等ありましたら、その都度言っていただければと思います。
 また、あわせて席上に前回の議事録を置いてございます。それにつきましてコメント等ありましたら、今週の金曜日までに事務局へ何らかの形で連絡していただければと思います。よろしくお願いします。

【野村座長】

 それでは、早速議題に入りたいと思いますが、まず最初にJCO臨界事故時の原子力損害賠償対応についてということで、お3方からご発言をいただいてと思っております。JCO事故当時、それぞれの立場で当事者として対応され、本検討会にも委員としてご参画いただいております方々に当時の対応状況についてご発表いただいて、当時の状況を把握したいということでございます。
 まず、東海村の村長として最前線で被害者救済、賠償交渉の対応に当たられた村上委員からお願いいたします。

【村上委員】

 東海村長の村上でございます。この資料だけでは説明し切れないのですが、損害賠償問題解決の過程の詳細は、前回お配りされております資料1−7の別紙に記載のとおりでございます。村当局といたしましては、何よりも住民の被害、損害、それを避けようという観点から一貫して取り組んでまいりました。
 その点では、特に農産物に対しての被害といいますか、風評被害といいますか、それが非常に厳しい形ですぐに表面化されたものですから、9月30日に臨界事故が起こり、翌日にはもう農産物の出荷停止みたいな状態になりましたし、そして、納めた農産物が返却されるというような事態まで発生しましたので、東海村といたしましては、その農産物は安全なんだということで、電力から相当な人間が来ていましたので、その人たちにガイガーカウンターで農産物の被曝状況を測定していただいて、東海村自体が村長名で安全を保障するというような、あまり根拠もないことでありましたが、それによりまして農家の人たちが安心をするというようなことがございました。茨城県内の各地から東海村に駆けつけてきまして、そして東海村長の安全証明というものを求めてくるというのが300件ほどございました。そういう状況でしたので、いち早く農産物についての安全宣言というものを県から出してくれというようなことで、10月2日にはもう出してもらったというようなことでございました。
 このJCOの臨界事故での損害賠償請求交渉というものは非常に早い立ち上がりだったと、私自身も現場にいて驚いていた状態でございました。10月8日には、農業委員会と集落実践委員会、これはいわゆる生産調整を進めていく実践委員会ですが、その人たちが被害状況の調査を開始したということでありましたし、10月18日には損害賠償の対策協議会が、これはまだ村がタッチしておりませんが、農業委員会・集落転作実践委員会で発足させたというようなことでありまして、そのような動きを見まして、村でも村民の損害というものはどのような形で発生しているかということを調査しろというようなことで、11月に入って実際はやっておりましたが、11月に入ったころから始めまして、その結果をまとめたのが12月8日でありまして、それに当たりましては臨界事故の損害賠償対策協議会を設置するということにいたしました。これは村民が被害を受けているというような観点から、村長が会長になって先頭に立ってやるというようなことでやってきたというような経過がございます。経過はそういうことですが、12月15日が1つの山場だったんです。これは私どもも対策協議会が住友金属鉱山の本社に出向きまして、これは我々としては、もうここまでくれば一歩も引かないぞというようなことで、農業者、商業者、その対策協議会のメンバーともどもやってまいったわけですが、その結果、これは話は膠着状態でありましたが、ちょっと休憩しようと。科学技術庁で調査研究会も立ち上げてありましたので、科学技術庁とも相談する必要があるだろうというようなことで休憩をとって、その後、年内には、我々が請求したものはまずはそれが正当だという仮の前提において、そのうちの半分は年内に支払うということを決めたということでございます。同時に県も働きかけをやっておりましたし、また、我々自身も国会にも働きかけをしておりましたので、当然ながら、もしその賠償ができない、被害者救済ができないということであれば政府が万全の措置をとるという国会決議がされたというのが12月15日でありました。
 そして、直ちに12月22日から仮払い申請の受付を始めたと。このときにとったのが東海村と茨城県は別々にやったということがございます。東海村は地元なものですから、相当なショックも受けておりましたし、影響も大きかったものですから、県に一本でということではなくて、東海村は東海村でやれるというようなことで、窓口が2つになったというような経緯がございます。これは対JCOに対しての交渉力確保という観点からもありましたが、そのような措置をとりました。
 そして、最終は3月末までに仮払いしたものの残りのものについては支払うというようなことで、その間にその基準というものを、これは調査研究会で報告された基準がモデルになっておりましたが、JCOからもその基準を明示してこられて、それで交渉して3月中にはほぼ最終的な決着をしていったということでございますが、当然ながら、その段階だけですべてが終わったわけではございません。3月31日時点の補償の確定額は約6,000件で92億円ということですが、最終的には約7,000件で、合計の金額は151億8,000万円になったということで、その後も損害賠償交渉は続けられたという経過でございます。
 それで、我々がとったものの特徴的な点は、この原子力災害による損失としましては、経済的な損害ばかりではなくて、精神的、肉体的な、あるいはもろもろの損害が発生するわけでありますが、この損害賠償交渉においては基本的には経済的な損失に偏重したといいますか、それに限定してやってきたということがございます。
 それと、もう一つ特徴的なのは、民間企業が起こした事故であったわけでありますが、それに対して行政側が政治的に介入して、むしろ中心になって交渉をやってきたということがございます。しかも、今の交渉経過といいますか、損害賠償の交渉経過を見ていただくとおり、極めて短時間に決着をしているということですね。もちろん依然として何件かの訴訟事件が続いており、必ずしも100パーセント完了しているわけではございませんが、おおよそのところはかなり短期間の間に問題処理ができたということがございます。
 そして、つけ加えますと、このJCOとの損害賠償の交渉過程での大きな争点は、調査研究会でもあったわけでありますが、被害の認定の問題でありました。最初の段階では、いわゆる10月末までというような期間の限定というのがありまして、最終的には1カ月間延ばされ、11月末までというようなことでございましたが、そして、その期間の問題と、それから、被害額の算定の根拠として売上高マイナス売上原価というやり方に関しては、相当な意義がありました。
 と申しますのは、売上高が落ちただけではなくて、その商品価値、それ自体が消滅しているというような状態にありました。干し芋を例にとりますと、当時、11月の段階で干し芋の売上高は前年対比2割ぐらいの水準に落ち込んだし、また、納めたものが返品されるというようなことで、当然、売り先ルートも喪失しました。そういう面では、その商品自体の減価、価値の減少ということがありました。それから、企業自体のいわゆる信用失墜というようなこともありました。そういう面では、いわゆる賠償額の算定、賠償の範囲という認定方法については、かなりの隔たりがあったと今でも私は思っておりますが、非常に素早い対応だったということで、最終的には解決が極めて順調にいったということも確かでございます。それはある面では応用問題をやってくれたのかなということを感じます。
 もう1点、蛇足ですが、この「原子力損害賠償法」の法の趣旨は何だというのも非常に違和感を感じました。原子力産業の健全な発展と、それから、その被害者の救済というような2つの目標になっておりますが、どちらが目的なんだというような点で、損害賠償法ですから、被害者の救済というのが本来は主ではないのかという、この趣旨については、被害者の立場に立てばいいような法律だなということは感じました。そういう点では、この損害賠償法の「賠償する」という精神が不徹底ではないのかなという、そのあたりがやっぱり不透明なところを残してしまう原因であったということにもなるかと思いますし、そして、今、グローバリゼーションの世界の中で国際基準化というものが、それが検討会のテーマの1つかもしれませんが、進んでいる中ではやはり、大きな事故を起こした企業には、その企業責任でしたということであれば、ご退場願うのが筋なのではないかというのが、法の精神を徹底するならば、必要でないのかなという感想は持ちました。
 私からは以上でございます。

【野村座長】

 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、当時、国側として対応に当たっておられた天野委員にお願いいたします。

【天野委員】

 2−1−2の資料に沿ってお話をしたいと思います。国のとった措置等の経緯につきましては、前回の資料に詳細に書かれておりますし、前回、課長からも説明がありましたので、もし何かそれについてご不明の点があれば、後ほどご質問にお答えするということで、そういうことを経て私なりに思ったことを少しご紹介させていただいて、議論の素材にしていただければと思います。
 4点、そこに挙げてございます。まず第1点は、この会議はもちろん、原賠法の改正のための会議でありますけれども、損害補償という観点になりますと、補償することだけでは片手落ちで、被害の拡大防止対策と両輪でないと物事は片づかないというふうにこの事故の経験から感じております。現実問題として被害が収束に向かいつつあるという認識がない限り、損害賠償の交渉というのは始まらないと私は思いますし、その上で解決に向かうことはないのだということであります。そして、それは被害の拡大防止は、被災された方々の救済であるということはもちろんですけれども、請求者側にとっても、しかるべき支援になっている。
 確かに法による国の支援とは違うかもしれませんけれども、でも、トータルとしてやはり損害賠償が円滑に片づいていく、そして被害が拡大しないということは、両者にとって非常に重要なことだと私は考えております。したがいまして、損害賠償法をどう適用するか、あるいはどう改善するかということも非常に重要でありますが、同時に、何か起きたときの被害防止対策、拡大防止対策として何ができるのかということを十分議論しておく、整理しておくということが必要なのではないかと思います。こういう分野では、むしろ何か起きたときに、その実際の事業者はそこまでできないのではないかと思いますので、むしろそこにありますように広報、産地直販、こういうようなものについては、国あるいは自治体の果たす役割が非常に大きいのではないか。こんなふうに考えます。
 2点目は、損害補償をやるとき、先の見えることが必要だということと、それが非常に多様な損害、あるいは損害を受けた方々も非常に多様ですが、そういう事情に応じて多様な対応を段階的にとるということがやはり必要なのではないかと思います。とりあえず、まず最初は、そういう方々の損害をきちっと素直に聞くというところから始まって、そしてその1個1個をきちっと整理し、その考え方をまとめていく、そういう手順。それから、先ほどの仮払いというのも1つの手段だと私は思いますけれども、まず、仮払いの意味は一体何だったのたかと今考えてみますと、損害は補償されるのだという被害を受けた方の安心感だったと私は思います。そういうふうに被害の、安心感を持っていただけるような形で物事を進めていくという必要があるだろうと思います。
 それから、2点目は先ほど言いましたけれども、被害の態様にも色々な態様がありますし、被害者の属性も、もちろん地元の方もいらっしゃいますが、場合によっては、企業によっては東京に本社があって、地域で活動している企業もあるし、JRのような大きい会社から非常に小さい会社まであります。それらについて一様に対応するというわけにはいかないだろう。そこはその属性に応じた対応、それも時期的にずれても、それに応じた対応をしていくということが必要だと思います。
 したがって、非常に難しいかもしれませんが、できれば少なくとも事業者ははっきりしているわけですから、その事業周辺の状況に応じた、実際起きたときにどんなふうにこういうものに対応していったらいいのかということについて、事前に何らかの形でシミュレーションしておくということが必要ではないか。実際にはそういうのが役に立つということはないのではないかと思いますけれども、それでも例えばどういうところに相談窓口を置いて、それから、何を地元の諸団体、諸団体というのは自治体もありますし、魚連もありますし、農協もあります。そういったところに何かお願いする、あるいはお話をするときに、どこにどういうふうに話をしたらいいかということも含めて考えておく必要があるのではないかと思います。
 3点目は、こういう補償問題の解決は非常に大きな、色々な方々の支援によるところが大きいということであります。実際に補償の色々な手続の場には、もちろん県の方、市の方、そういう人も入っておりましたが、それ以外にも例えば原研、あるいは電力、そういったところから大勢の人を出していただいて、そして実際にはやらせていただいております。また、補償の話も個別のものを、例えば協同組合でまとめていただくとか、そういうこともやはりやっていただいています。そういった力がなければ、こういうのはできないわけですから、そのことをよく認識しておかなくてはいけない。
 ただ、1つだけは、やはり補償の主体は事業者ですから、そのことを忘れてはいけないので、何でもかんでも誰かが「えいや」とやればいいという話ではなくて、その事業者が事業者なりに考えることと、それから、事業者がそういうことをお願いする必要があるんだということを認識しておく必要があると思います。そのためには日ごろから、その事業者と周辺の諸団体あるいは地元の人たちの間に信頼関係が必要ですし、その事業の社会的意義についてみんなが納得しておくということが重要ではないかと思います。そういうことから、ふだんから、そうしょっちゅうでなくてもいいとは思いますが、サイト周辺の関係者による何か定期的な連絡会というようなものをやはりきちっとやっておく必要があるのではないか。
 その中で原賠の仕組みに対する正しい理解と、先ほど少し村長さんからも賠償の精神という話がありましたけれども、もちろん被害者の救済であるというのがまず基本であるということと同時に、ただし、被害者を救済するためには事業者がそれなりに対応できるような状態で保たれていないと、そういう求償ができないわけですから、そこの両面があって初めて損害賠償というのは片づくのではないかと私は思っていますから、そういうようなことも含めて損害賠償法、あるいは損害賠償のあり方について、ふだんから関係するであろう人たちの間に共通の認識があることが重要だと思います。
 最後は、この請求というのはほとんどの場合、今回もそうでした。JCOのときもそうでしたけれども、おそらく今後もそうだと思いますが、基本的には良識ある請求であると私は思っております。したがって、そういう良識ある請求に対して、その請求者の過度な負担かかかるようなことは好ましくない。原則としては、そういう請求者の負担を軽減するという措置が必要なのではないかと思います。つまり、個々の人が損害賠償の理由である因果関係とか、そういうものについて説明をしなくてもいいように包括的な考えというものを示すことは必要だと思います。
 同時に、このことは裏返せば事業者にとっても、個々には不満なところがあるとしても、補償の根拠となる考えを、概ねこういうところが常識なのだということを知るという意味でもやはり重要です。それをベースに個別に対応できるという1つのスタートポイントになるという意味で、そういうものが示されるということが必要ではないかと考えています。したがって、JCOのときにもありましたけれども、事故の経緯、それから、被害の実態を踏まえた第三者的な検討というものが、いずれの場合にも必要。ただし、これは今、そこにありますように事故の経緯とか、被害の実態によって相当変わると私は思っておりますので、単純にあらかじめ、そういうのを決めておくというのは難しいのではないかと私は思います。
 以上、大体、私からの説明を終わらせていただきます。

【野村座長】

 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に、保険の面から損害賠償へ対応されました原子力保険プールの代表である原委員の代理の大西さんからお願いいたします。

【大西局長】

 それでは、お手元の資料の2−1−3をごらんいただきながら、まず初めに原子力保険プールというのはどういうのかというのを少し説明させていただきますと、ここにございますように1960年に、当時、ちょうど日本の原発がつくり始められたころということでございまして、1962年が原賠法の施行ですから、その2年ぐらい前に将来のこういう原子力の施設に対しての賠償並びに原子力の施設の資産というので、財産の保険ということを念頭に置きましてプールというのが設立されました。
 当時の保険会社が20社ほどございまして、これが設立には皆加わったということでございまして、現在は外国保険会社で、日本で営業するものを加えて会員は24社でございまして、24社同じ保険の品ぞろえをしないと共同保険を受けられないということがございますので、保険業法上、独禁法の適用除外の共同行為の認可をとっております。これはご承知のとおりほかにもございまして、航空保険とか、自動車、自賠責ですね。それから、地震保険とか、こういうものがございますけれども、日本のプールの場合も1号プールということで、こういう独禁法適用除外の共同行為をとって行っているということでございます。
 これは原子力発電所を持つ世界各国に同様な原子力保険プールというのがございまして、組織されておりまして、このプール間で再保険をして引き受けの能力を高めている。日本だけのこの24社の保険会社だけでは引き受け能力が十分ございませんので、世界各国のプールと再保険、再度保険を出すということで海外からも受けますし、日本からも出すという形で相互にそういう再保険が交換されているということでございます。
 その次に賠償責任保険でございますけれども、先ほど少しお話ししましたように、事故が起こったときの第三者への賠償が賠償責任保険でございまして、これ以外に原子力施設そのものの、ですから、電力会社さんの資産そのものを事故が起こったときには補償するというような、これは財産保険でございますけれども、今回のは賠償ですから、施設賠償責任保険というのがございます。これはここにございますように、あくまでもご契約いただいた事業者の方が被害者の方の賠償請求にこたえていただくという形で、保険会社は保険という賠償措置の1つを通してお役に立っているということでございます。
 この中段に皆さんおなじみの自動車保険では、保険会社が被害者と加害者の間に立って示談をするという示談代行というのをやっておりますけれども、これは例外的でございまして、一般の賠償については、原子力も含めてこういうことはしておりません。ですから、あくまでも被害者と加害者側との間で賠償を交渉いただくということになります。被害者と加害者の間に示談等が成立しますと、その中身において保険会社が保険プールから加害者である事業者に保険金をお支払いするという形になります。
 それから、3番目としまして、それではJCOの事故のときにどのような動きを保険プールはしたかということでございますけれども、ここにあるとおり9月30日の午前10時半に起こりまして、我々はテレビ等でそれを認知いたしました。直ちに契約者であるJCOと連絡をとりましたけれども、なかなか大変な状況でございましたので十分な打ち合わせができないというままでございましたけれども、こういうような事故が起こると、原賠法が適用になる原子力事故というのはプールとしても初めてでしたので、事故の内容に対して保険が適用になるかどうかというのをまず検討するということで、そこで当日に、ここの一番下にございますように、プールの中の商品業務委員会というのがございまして、ここに事故の内容を契約の中身とともに連絡をしたということでございます。それから、JCOさん並びに親会社である住友金属鉱山さんとの間で密接な連絡をとっていったということです。
 次のページに参りまして、事故が起こった2日目ですけれども、午前中にこの委員会を招集しまして、この事故の内容について賠償責任保険が支払い対象になるかどうかという検討を行いました。支払いの対象になるという判断のもと、同日の午後に、運営委員会というのがプールにございまして、これが総会の次に、実務的には重要なことはここで決める、審議して決定するということになっておりますので、ここで支払いの対象の事故であるということを認定いたしまして、マスコミ等への対応も一元的に行うということを決定いたしました。2日、3日は週末で土日だったんですけれども、プールの方に詰めまして、主にJCOのお客様からの色々な問い合わせ等に答えるという形でおりました。マスコミからの問い合わせもございまして、土日も詰めてまいりましたということがございます。
 4日には、普通ですと、事故が起こりますと損害査定委員会というので、損害のクレームの対応をするところだけの委員会を開くんですけれども、このような場合、初めてでしたので、プールの横断的な事故対策本部というのを設置しまして、プールの会長を本部長として各メンバーを決めて総合して当たるということを決定いたしました。5日に損害査定委員会を開いたということでございます。これも初めてでしたので、従来の損害査定のやり方とは違って、相当大がかりな編成を行った。それから、弁護士の起用を決定したということでございます。それで、プールの事務局というのは事務局員だけで、損害査定の要員というのは常駐しているわけではないのですけれども、そこに常駐をさせてどんどん作業を進めていったということでございます。
 それから、10月7日以降、契約者のJCOさんから事故の被害申出書というのをいただきまして、これをここにありますように損害形態別に分類したり、損害計算書をつくったり、損害額のシミュレーション等、こういうのを行いまして、だんだんデータを積み重ねていったということでございます。それから、22日に科技庁からの要請がございまして、原子力損害調査研究会というのに参加したということでございます。この場で我々が集めた損害形態とか損害の分類、それから、損害額の算定とか、こういう考え方をこの調査研究会の中でご報告して、それを委員の方にご検討いただいて、我々の賠償における考え方とかいうものを確定していったということでございます。
 それから、10月の下旬から11月の初めにかけまして、この被害申出書をベースにしたデータが大分できてきましたので、パソコンに入力しまして統計的なデータをつくりまして、これを契約者であるJCOもしくは損害調査研究会に提供して検討していただいたということでございます。それから、その後、順次、賠償認定基準であるとか、賠償の対応の促進であるとか、保険金支払いの手続とか、こういうものを進めていったということでございます。それから、賠償請求者との交渉のサポートを図ったということでございます。
 3ページに参りまして、その後、被害者とJCOとの間での示談済みの案件から保険金の認定作業を進めまして、順次、要件が整ったものに対して保険金をお支払いしていった。5月末までに措置額である10億円の支払いを完了したということでございます。
 これが時系列的な、かいつまんだお話ですけれども、次にプールの果たした役割ということでございまして、これは、プールは損害保険会社の24社の集まりでございますから、常々賠償というのは別に原子力に限らず、むしろ自動車の賠償とかそのほかの保険の賠償というのは損害査定部門で扱っておりますので、そういう考え方をこの新しい原子力の賠償の分野に生かしていったということでございます。それから、各社とも損害査定の要員というのをたくさん抱えておりますので、これを多数動員して、こういう処理に充てたということでございます。それによって損害認定基準案というのを先ほどの調査会に早く示せたということです。
 それから、もう一つはパソコンを使ってこういうデータ分析というのをすぐに行っていたということなので、最終的には我々の考え方、プールで損害認定基準を考えていったのは、ほぼ研究会におおむね受け入れていただいて、最終的な報告書の基礎になったということでございます。それから、早いか遅いかというのは別としまして、アメリカで起こりましたスリーマイルの事故というのが、その後、20年近くたってやっと決着がついたというようなことを聞いておりますので、そういうのに比べますと、事故後8カ月以内に保険金額10億円、まあ、少なかったですけれども、支払いを完了したというのは早く動けたのではないかなと思います。
 5番目として今後の課題ですけれども、幸か不幸か、保険にとっては10億円ということだったので、金額が非常に少なかった。実際には150億ぐらいの賠償をされたというふうに書いてございますけれども、そういうことで、実際、150億、それから、現在の措置額600億というのに対応していくとなると、このJCOのときの経験だけでは難しいのではないかということで、もう少し大規模なもの、それから、件数の多い、こういうものに対応するためには、よりたくさんの損害査定の要員を動員することが必要だというようなことを今検討しております。
 それから、さらに原子力事故といっても、JCOの事故と同じような形態になるかどうかわからないということがございますので、今後起こっては非常に不幸なことなのですけれども、もし万一起こったとしても、新たな原子力事故の特徴というものに対して賠償がまた別の特徴を持つのではないか、そういうことに対しての検討をしていかなければいけないのではないか。
 それからあと、事故が起こる前に、事業者とか政府、自治体、こういうところがそれぞれの役割を担って、我々もそうですけれども、万一起こったときの対応として、避難等もございますし、それから、被害者救済ということで賠償を迅速に行う、適切に行うということが必要なのではないかと思いますので、これはあらかじめ「賠償というのはこういうような分野で、こういうようなものに対してされますよ」ということをJCOの教訓を含めて、事前にもう少し浸透していく必要があるのではないか。それから、事業者さんも自治体もそれぞれそういうような資料なり、そういうものを用意していく必要があるのではないか。もちろん、保険会社としてもそういうものを現在も持っていますし、それをさらに改善をしていきたいと考えております。いずれにしましても、万一次に起こりましたときには迅速、円滑、適正な被害者への賠償というのが早く行われるように、保険プールとしても最大の努力と準備をしていきたい、こういうふうに考えております。
 以上でございます。

【野村座長】

 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、事務局から当時の原子力損害賠償紛争審査会及び原子力損害調査研究会の状況についてご説明をいただきたいと思います。

【山野原子力計画課長】

 資料の2−1−4でございます。この2つの研究会と審査会は、研究会の方は、当時は下山先生が座長をやられて、紛争審査会の方は谷川先生が座長ということなので、後ほど何かあれば追加的なコメントなりいただければと思いますが、どういうことがあったかというてんまつだけ簡単に資料で説明します。
 概要のところは飛ばして(2)から説明いたしますが、原子力損害調査研究会、これは今の保険プールさんの説明でもございましたが、当時こういう経験もなかった中で、急遽10月27日に研究会を立ち上げました。メンバーとしましては、法学者であるとか弁護士さんなどが中心なのですが、損害賠償についてどういう考え方で、どういう範囲をやるべきかというようなことをかなり検討したということでございます。それで、実際上は保険プールさんがオブザーバーで参加しながら、基礎データの提供とかで下支えをしていただいたようでございます。
 それで、目的としましては、実際上の損害賠償というのは当事者間の問題だというものの、ある程度基本的なところは整理ができないかということでやったということでございまして、ここにありますように10月27日から3月までの短い期間で17回開催してございます。それで、12月には中間的な取りまとめということで、特に最大の損害でありました営業損害について基本的な考え方を示したということで、この考え方がある程度仮払いとかに活かされるとともに、こういう中立的な場で報告が出たということで、色々な手続が動き出すという意味でかなりターニングポイントになったと聞いています。それで、最終的には3月に、そういう営業損害だけではなくて検査であるとか、避難とかも含めて損害費目の分類ごとに賠償責任の基本的な考え方を整理をしたということでございます。
 当時の評価を関係者に聞いてみますと、2ページ目ですけれども、一番よく言われてございますのは、加害者であるJCOに代わって、そういう損害の費目とかについて一定の線引きをある程度ニュートラルな専門家の立場から提案していただいたということで、非常に大量の請求案件の処理の推進につながったというふうな評価でございます。また、かなり基本的なところが示されたものですから、一定の枠の中であれば、個々の被害者が個別にそれぞれ考えて立証するとかということなく、大体同じようにやられたということでございました。
 また、内容もさることながら、こういう機関が12月のタイミングで中間取りまとめをやったことによって、年末の仮払いに向けてのきっかけになり得たというような評価もございました。また、実際上、3月の時点までいきますと、ある程度仮払いとか精算の際に参照できるものはできたけれども、できない部分もあったというようなことも言われてございます。
 次の(3)が紛争審査会でございます。これは法律にちゃんと規定されてございます組織でございまして、これも常設されているわけではないものですから、JCOが起こった後、直ちに新たな政令を定めて、メンバーも集めて立ち上げたということでございます。これも10月22日に設置をされているということでございます。それで、基本的なマンデートも法律に書いてございますが、和解の仲介を行うということでございます。それで、結果的に言いますと、6,000とか7,000という案件の中で和解の仲介に持ち込まれたのは2件でございました。紛争審査会は5回、2件の案件ごとにそれぞれの小委員会を設けまして、18回、10回とそれぞれ開催し、かなりの頻度で努力したということでございます。
 結果としましては、その2件は、ここにありますように納豆の製造販売会社でございますが、販売が落ち込んだ損害の賠償請求ということなんですが、そこはJCOとの間でかなり賠償額に隔たりがあって、この場を通じて和解ということに至らずに、それぞれ裁判に行ったというような結果になってございます。そういうことから、評価としましては紛争審査会の権限が和解の仲介ということだけですから、当事者間がそれなりに和解しようという意識がないとなかなか難しくて、結果的になかなか解決まで導くことは難しかったというようなこと。
 他方、こういう紛争審査会というのが国に用意されているんだということですから、もしも当事者間でもめたときに、直ちに裁判と行く前に国にこういう場があるんだということで、何とはなしに安心感もあって、現場サイドのそれぞれの当事者間とかの交渉がうまくいったのではないかというような議論もあったのではないかという評価もございました。
 また、(4)でその他にということですが、当時の科技庁としてはJCOとか親会社の住友金属鉱山に対して、ここにありますように窓口を設置してくださいとか、あと、きちんと被害者救済に親会社としてちゃんとやってくださいというようなことで、色々な立場から関与したというようなことでございます。
 説明は以上でございます。下山先生と谷川先生、何か補足がありましたらよろしく。

【下山顧問】

 既にこれまでのご説明で済んでいると思いますし、今の調査会の果たした役割、非常に要領よくまとめられたので特にございません。私は、この調査会には科学技術庁の参与という立場で会長をやらせていただきました。それで、半世紀前に実はこの法律をつくるときから、私は参画させていただいたのですが、そのときに思ったことは、今の原賠法では損害の範囲、いわゆる基礎的な因果関係の問題が全く民法に任されてしまったということに対して非常に危惧を持っていまして、それがおそらく実際に起こったら一番問題になるんじゃないかなとは思っていたんです。
 それも問題だったのですけれども、一番調査会をやって感じたのは、まず、総額の把握をどうやってやるか。つまり、日本の場合にすぐに裁判所へ行きませんで当事者間の話になります。そうすると、全体の損害を把握しないとだめだ。しかし、把握するのを待っていると、いつまで経っても賠償までに時間がかかる。この2つをどうやったら実際の事故が起こったときに満足できるんだろうか。まず、総額の把握の仕方。それから、裁判所へいきなり行きませんから、どうしても当事者間になりますけれども、これを当事者間だけに放っておいたら、おそらくいかなる場合でも長引くだろう。そのときにやはり自治体の役割が非常に大きい。県だろうと、あるいは村上村長、村であろうと、そこの自治体の役割がやはりどうしても出てくるのではないか。いかに民事だから当事者間といえども、それはそこだけに任せておけない住民の問題、それから、日本の場合には立地をするときから自治体の役割というのは大きいわけでして、そういう意味からも自治体の役割についてきちんと考えておかなければいけない。
 もう一つは、調査研究会をやったときに実は、実際の損害の査定というのは、これは保険会社しか専門家がいないわけ。この保険会社の査定能力については、一般の方は、実際にお宅が火事になったら分かるでしょうけれども、これは大変な能力でして、やはりいかなる場合でも原子力事故が起こったときには、保険会社のその機能をどうやって活用するか。
 もう一つ最後に、先ほども出ておりましたけれども、実際に請求される方は、どこへ何をどういう形でいつ持っていけばいいんだということについて、やはり指針みたいなものが準備されていて、それを例えば自治体のところで持っておられる。あるいは今、この場合だったら文科省、そういうところが外へ出すかどうかは別として、そういう指針を今度は備えておく。そして、そういうものが不幸にして起こったときには、そういった手続なり順序なりが分かっているということで、これでかなり違うだろう。実際、初めて原賠法が適用されたケースで思ったことはそういうことでございまして、因果関係はもちろん大事なんですけれども、実務的な、いかに迅速に処理するか、収束に向かわせるかということが今後の原子力の開発あるいは地域との一体管理にとって非常に重要なことだろうというのが私の印象でございます。

【谷川顧問】

 私が関わりましたのは、賠償紛争審査会でございまして、先ほどご説明がありましたように、この法律上の根拠は昔からあったわけですが、実際に立ち上げるなんてことは誰も考えていなくて、その組織・手続の規定も全く準備されていなかったわけです。この状態が発生することによって、そして仲介の申し立てがなされるということを受けて、急遽、組織規定を作り、必要な手続規定を作り、そしてそれに基づいて委員を任命し、というようなことで泥縄で立ち上がったわけですが、実際問題としては、持ち込まれた事件は2件だけ。これはまことに幸いであったと思うのは、先ほど来説明があるように、本件については極めて早く大多数の事案が解決に至った。そのために紛争審査会に和解の仲介の案件を持ち込む必要がなかった。
 それが幸いして紛争審査会としては2件だけ受けることになったのですが、その2件はここにもありますように、2つとも納豆屋さんでありまして、資料では簡単に納豆等の製品の販売が落ち込んだ損害と、しれっと言っておりますけれども、請求の中身が極めて複雑でありまして、実際に納豆が売れなくなったというのもそうなのですが、例えば販売促進のためにテレビのコマーシャルを作成し、それが空振りに終わった損害とか、新しい工場の稼働が遅れた等の損害であるとか、、それを1つずつ認められる損害なのかどうか検討していかなければならなかったわけです。
 それで、第一小委員会のときに18回、第二小委員会の方は、その第一小委員会と類似の事件でありますから、第一小委員会が進んでいるにもかかわらず、第二小委員会を10回もやらなければならなかった。ところが、だんだんやっているうちに、これはまずいということになって納豆屋さんの方が訴えを取り下げてくれた。その2件だけで審査会は役目を終わって、しかし、後から後発損害が出てくる可能性があるかもしれないということで、審査会自身をつぶすわけにはいかない。まだ審査会自身は残っているわけであります。
 法律上は、審査会は、ある事故が起こったときに必要があれば審査会を置くという形になっておりますから、別件が起こったときに、今、存在するJCOを念頭に置いた審査会をそのまま流用できるのかどうかというのは、これはまた別問題で、法律的にどうするのかというのは考える必要があるのかなという気はしますけれども、そういうことになっておりまして、したがって、審査会の評価というのをここでどうするというのはなかなか難しいところだと思いますけれども、ここにも書いてありますように、場合によれば和解の仲介をしてくれる国家の機関があるんだということが、定められていることが当事者に安心感を与えるという評価はできるのだろうと思います。それ以上の何が期待され、何ができるのかというのは、今回のたった2件のケースでは何とも確定的な評価はできないというのが私の感じであります。
 以上であります。

【野村座長】

 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に基づきまして、当時の状況をご理解いただけたかと思いますけれども、質疑応答の時間に当てたいと思いますけれども、今ご発表いただいた方にご質問等ございましたら。いかがでしょうか。

【山野原子力計画課長】

 せっかく村長さんが来られているのでお聞きしますが、当時を今から思うと、かなりスムーズに行ったという評価なんでしょうか。それともやっぱり初めてのケースだから、パーツ、パーツでは紆余曲折はあったんですか。それと、スムーズに行ったのであれば、何があったからスムーズに行ったと言えるのか。当時の教訓的なことも含めて何かありましたらお聞かせ願いたいと思います。

【村上委員】

 基本的スムーズに行ったと。これは150億円、6,000件というものをあの期間で処理するというようなことは、よその例だとなかなかできないんじゃないでしょうか。それを3月末あたりまで半年の間でほぼ決着をつけていったというのは、それは希有な例なのではないのかなという感じはします。その理由としては、親会社の住友金属鉱山の決断もあったということ。それから、政府もかなり早い時期から動いたということは言えますし、国会の政治家も動いたということもあります。
 それで、交渉窓口を、何度も出ておりますが、それを民民の問題だからというところで行政側、つまり国、県、村の三者も逃げなかったということが言えますよね。それは原子力の事故だという初めてのケースということであったということもあるでしょうが、国も県も村も通常の災害の場合でも、例えば工場の火災、爆発事故等の損害についても座視しているわけではございませんが、それ以上に初めての原子力事故だということでの対応は非常に素早かったと思いますね。私どもから見たら、損害賠償調査研究会の内部の実態というのは全然見えなかったと言ってもいいのですが、それが一応の基準を出したということは、私は重要だったと思っていますね。
 もちろん、私どもの方では、住民を集めてJCO、住友金属鉱山に要請するというやり方もあったわけですが、JCOも住友金属鉱山も前向きに対応したということは言えます。その基準については先ほども申しましたが、例えば風評被害というようなことについてどういうふうに捉えていくか、その損害というものの範囲をどこまでとするかというのは、親会社を引っくるめて前向きにやったと思います。それから、何度も天野さんも言われておりますが、まさにそういう交渉窓口を作ったり、それをサポートしたりというようなことでやってきたというようなこと。
 多分、これは希有な例なのではないのかな、半年間で決めたというのは。今言ったように、もろもろ、初めてのケースなので相当集中的に、エネルギーを集中して問題解決しようとしたような気がしますね。

【野村座長】

 どうぞ。

【伊藤委員】

 質問ですが、風評被害というか、経済的な損害もそうなのですけれども、一般の村民の人にとってはやっぱり、体に与える影響というのを非常に心配したのではないかと思うんですね。例えば頭がちょっと痛くても、ちょっと気持ちが悪くなっても、これはもしかしてあの事故のせいなんじゃないかというふうに思ったりすると思うんですね。でも、その全部が賠償に値するわけでもないし、そこのところの調整というのはどういうふうに村としてはしていたのかなと。例えば具体的にそういう窓口というのを作っていたのかどうなのか。

【村上委員】

 作ってありました。最初から健康――要すれば被曝調査というのをやりますね。被ばく調査、それから、測定もやりました。7万6,000人ぐらいがその測定をしましたし、それから、一昼夜閉じ込められたということもありますので、暑い中非常にストレスがたまって精神的にPTSDというか、そのような一面もありましたし、また、原子力で被ばくしたんじゃないかという恐怖心がかなりありましたので、その点でのストレスということもありまして、そういう点では健康調査と精神的なカンファレンスと、これを合わせて同時にやっていきました。
 それで、今でも続いておりますが、年1回、希望者に対しましては、避難した区域の350メートル以内の方はもちろんですが、そのほか1ミリシーベルト以上浴びたという人に対しましては、地域にかかわらず健康診断をやっている。これはある面では物理的というよりは精神的なケアというような面もあるかも知れません。相当長期間やることによって、それでデータ分析するということも必要だろうとも私自身も思っておりますが、そういう精神的な面ということでありますね。
 ただ、そのために心配で医者に通ったり、医者を求めて大阪や広島まで行ったりというような方もいまして、その人に対しての損害賠償というのはされていない。それから、PTSDだという医者の診査があっても裁判で認められていないという係争中の裁判も1件はありますね。

【天野委員】

 補足ですけれども、村庁の2階にそういう相談の窓口を作っていただきましたね。放医研とか原研の人間がそこに詰めさせていただいて、色々相談を受けるというようなことも行われました。

【村上委員】

 そうですね。

【野村座長】

 どうぞ。

【四元委員】

 この前も少しお聞きしたことではあるんですけれども、結局、国が必要と認めるときに援助をするとなると、国がある種この損害賠償の当事者になるわけで、そのときに国がどう関与するのかなというのは非常にかねてより思っていて、JCO事故に関しては、具体的な損害の賠償の個々のものについては、国は直接的には何もタッチ、関与をしていないということなんですかね。

【天野委員】

 私の当時の考え方は、国が賠償するというのは基本的ではなくて、まず国はあくまでも支援であって、賠償は当然事業者であると。

【四元委員】

 直接の当事者は事業者ですよね。

【天野委員】

 だから、どこまで行っても基本的には国はその事業者を支援することはできる。事業者を支援しなくてはいけないので、そのときに支援するだけの根拠がないといけない。その根拠はきちっと作らなくてはいけないというふうに思っていました。その根拠は実は2つで、事業者が一生懸命努力をしたという事実と、もう一つは公正にその損害賠償が行われた事実が要るだろうと思ったということですね。
 それで、その1点目が、親会社に対してお願いをする。親会社も一生懸命やったという事実が必要だと思ったことと、後者については、調査研究会というのはもちろん、今そこで行われているものに対してもそういう方針を示すということで、基本的な考え方を示すという意味が一番大きなことでしたけれども、同時にそういうものに従って行われたという事実はやはり、国がいずれ支援に出るときに非常に重要だと考えた、そういうことですね。

【四元委員】

 今回もどこかの時点までは国の支援ということも、一応、可能性としてはあるということだったわけてすね。

【天野委員】

 当初から、それは当然考えていました。なぜかというと、非常に小さい会社だということもすぐにわかっていましたし、責任保険の保険金額が10億円しかないということも分かっていましたから。

【四元委員】

 仮に未来に何か起こって、国の援助が必要になったとしても、やり方とするとやはり、そのような関与の仕方――難しいですね。

【天野委員】

 この間、道垣内さんからも質問がありましたけれども、色々な解の仕方があって、そのときそのときによって違うとは思いますけれども。

【四元委員】

 そうですね。

【村上委員】

 しかし、あれは国が激甚災害を認定した案件だと思いますがね。

【天野委員】

 そうそう。無償融資とかそういう措置は当然、このときにもとっています。実際にはほとんど数件しかなかった。

【村上委員】

 あまり使わなかったわけですね。

【天野委員】

 はい。使われませんでしたが、そういう対策ももちろんとりました。

【下山顧問】

 早い時点から、さっきおっしゃっていた親会社の住友金属鉱山が了解したという事実があるから良かったのですけれども、もしそれがうまくいかなければ、当然、国は16条に基づいて援助を考えなければいけない。

【四元委員】

 国の財政出動が本当にいざあるとなると、国も大変だろうなとは率直には思いますよね。

【下山顧問】

 先ほどの融資とか、色々な方法があるのだろうと思うので、ある意味では、住友金属鉱山に対してそういうことをリコメンドするというか助言するということも、1つの援助ではないけれども、支援の意思形態だったのではないかと、後からそう考えているわけなんです。
 資料中のその他というところに遠慮がちに科学技術庁の役割が書いてありますけれども、私が客観的に見ていて非常に、まあ、別に持ち上げるわけじゃないけれども、上手にやられたと。表へ積極的に出るのではなしに、しかし、実質的には、天野さんなんかは非常に上手だったわけで、実質的には県あるいは村と相談される。それから、調査会も設置して、その辺は実質上の軸としてうまく動かれた。ただ、常にそれがそういうふうにうまくいくかどうかはちょっと別問題なんですけれども、実際的にはうまくいったと思いますね。
 それともう一つ、事故の起こり方がやっぱり国の援助なんかの問題になるなと。バケツでやったとかそういう問題が出てくると、最後まで事業者の責任追及ということが一般的にも重くなるわけですね。不可抗力的な起こり方と、明らかに自分の責任が大きいという場合とはやっぱり違ってくるだろう。だから、そういうふうに一概に、本当はそこを決めたいんだけれども、それは無理ではないか。じゃあ、どういう支援のきっかけ作れるかというと、これは50年前にもやったんですけれども、ほとんど無理だということになっていた。JCO事故で実態としてそういう形ができ上がっているわけだから、ある程度行けるものは指針とか、マニュアルとかというものを整備しておくということが今回の場合は必要なのではないですか。

【野村座長】

 どうぞ。

【谷川顧問】

 私が見ていて、この事件は、法律的に言えば極めて異例な処理が行われたケースだと思う。その最も異例なのは、本来の責任主体が責任履行能力がないことは目に見えていたわけですよね。そのときに親会社を引っ張り出す。これは法人格が別ですから、親会社は本来出てくるものではないにもかかわらず、うまいこと親会社を引っ張り出して、親会社に事実上の責任を負わせることに成功した。これは極めて異例のことで、今後そんなことが起こり得る保証ができないくらい異例なことなのではないか。
 しかし、それが実現できたから、本来の責任当事者であるJCO自身を存続させたまま事件が解決できたと。これも極めて大きなことで、問題を起こした会社には退場願わなければならないというのは、退場されたら困るんですよね。破産されていなくなったら請求する先がなくなってしまうわけで、これをどうやって生かしたまま問題解決しなければならないかを極めてうまいこと処理されたというのは、天野さんや下山さん以下、みんな関係した方々のうまい舞台回しの結果だったと私は感心しているところであります。
 以上です。

【村上委員】

 私は、子会社という方式をとられたら親会社に請求できないとなったら、原子力はさせられませんよという気がしますよね。それはみんな都合悪いことがあったら困るから、100パーセント出資で別会社にして、これは法人格が別だから私には責任ありませんというような企業は相手にできないということになりますよ。実態的には住友金属鉱山から人が来ているし、すべての権限は住友金属鉱山が持っていたわけですから、その形式的な法人格は別だという話ではないだろうと私は思いますが、そういういいかげんなことをされたらとても、そういう企業には核燃料なんかつくってもらいたくないと。
 例えば今の原燃工あたりでも、これは古河とは私どもは別なんだと言われたらば、おまえのところの補償能力がどこまであるかということになって、じゃあ、もうやめてくれということになりますから。そのあたりは形式論から言えば法を超えた超法規的な対応だったということになりますが、私は納得はしていませんね。

【野村座長】

 それでは、もう一つ議題がございますので、まだご発言あろうかと思いますけれども、そちらに移りたいと思います。2番目の議題でJCO臨界事故を踏まえた対応についてということで、事務局で検討課題を資料の形でまとめておりますので、事務局からまずご説明をお願いします。

【山野原子力計画課長】

 まず、2−2の資料は今まさに議論していただいたようなことで、当時のJCOのときの対応というのは、かなりスムーズに行ったということであれば、今後に生かせるものは水平展開していく。そのために何かちゃんとマニュアルで残していたらどうかというような作業を今後やっていけばいいのではないかと考えています。そのときのまとめ方として、大体考えられるとしたらということで、対応の時系列に沿ってとりあえず項目を並べただけでございます。今後、この項目の立て方もさることながら、内容によってはもう少し深堀りが必要なものは深堀していくとかしながら、マニュアルとしてまとめていったらどうかということでございます。
 それで、内容としますと、(1)としては原賠法の適用の考え方ということで、ここについては原賠法の中で原子力損害の定義はあるのですが、最後は相当因果関係の解釈論に落ち着くということで、現場で考えるとどうしても風評被害の扱いなどはどうやっていくかということがあるものですから、当時のそういう研究会で議論されたような話なども参考にしながらある程度具体的な事例も出しながら、一度何らかの整理をしていたらいいのではないかなと考えています。
 それで、次に(2)としましては、まず、そういう損害賠償もさることながら、天野委員から話があったように損害の拡大防止ということがおそらく重要ですので、そういう有事の際の安全宣言みたいなやつも含めてどうやるかということ。実は原賠法と別体系で、当時の事故を踏まえて原子力災害、防災対策の法律もあって、そこらのスキームと合わせて連携しながら考えていくことが有効ではないか。実際、有事の際には別に賠償問題だけ起きるのではなくて、まずその事態を止めるというところから始まって、災害防止がメーンで動くわけでございますので、そっちとの連携を考えながら損害拡大の防止対策なども考えていったらいいのではないかということでございます。
 次としましては、例えば下山先生からも話があったように、まず、ある程度の段階でどれぐらいの損害が起きたのかということをある程度マクロに、それはものすごく正確でなくてもいいのですが、マクロにある程度把握しながら対応を考えていく必要があろうということでございます。そのためには原子力事業者と国とか、地方自治体とか、これに保険プールさんなども連携するような形で、初期段階である程度全体像をつかむためにどういうことを用意しておくかということで整理してはどうかということでございます。
 次には、損害賠償の受付けということで、当時は何も準備のない段階で行われたわけでございますが、当時の反省としては、民民同士の当事者同士ということが基本というものの、そういう損害賠償をまとめるに当たっても、例えば当時、農協とか、漁協とかがある程度間に入ってくれてまとめていただいたところもあります。それをやることによってAさんとBさんが公平にできるとか、そういう機能も実態上あった。個人、個人でやっていると、隣の人は100万なのに私は50万とか、そういう変なことにならずに、こういうことをやることによってかなりまとめられるというようなこともあるので、そういう協力の仕方なども考えてはどうかということと、あと、そういう何千件もあったわけですから、あらかじめ必要な書類の様式なども、これは整理しておいてはどうかということでございます。
 次の(5)が賠償の基本的考え方ということでございまして、これはまさに今議論があった当時の調査研究会のような機能を今後も考えていった方がよかろうということでございます。それで、後ほどもう一つのペーパーがありますが、そういう当時の調査研究会が果たした役割などというのは今後とも重要ではないかというようなことで、では、それに当たっては誰が中心でやるのかというようなこととか、あと保険プールさんの支援が有効であったということでございますが、そのあたりも平時の段階から用意できるものはある程度ビルトインしておきたいということでございます。
 6番目の行為としては、被害者との調整とか、実際の賠償金の支払いということでございまして、こういうところにつきましても、当時スムーズに行った要因のおそらく最大のものは、間に県や東海村とかが入っていただくことによって、当事者間同士がかなりリーズナブルに話し合いが持てたというようなことでございますので、そういう原子力事業者と被害者のつなぎ役として、地方とか国もあるでしょうが、それがどういうような連携をとったらいいだろうかということを整理しておきたいということでございます。
 また、当時の教訓などを踏まえて、当時はやっぱり、仮払いした1つの要因としては、12月末、色々な経済活動をしている人にとっては非常に重要な時期ですから、それまでにとりあえず一区切りをつける必要性もあったようですし、当時は確かに仮払いをやって、その後精算ということをやったわけですから、その際にやっぱり考慮すべき事項、例えば精算に当たっては常識的にはこういう資料が要るということがある程度一般化できるのであれば、そのような内容をある程度あらかじめ整理しておいたらどうかというようなことでございます。
 次のページに行きまして、これも今既に話があったような紛争審査会の運営ということでございます。これにつきましては、今まさに谷川先生がおっしゃったように泥縄的に立ち上げたに近かったので、これについてももう少し、そういう早期に立ち上げて臨機応変に動けるということで、ある程度用意するものを用意するということ。あと、ここの論点と書いてあるのは、紛争審査会の役割としてどうあるべきかとか、あと、おそらく用意しておいた方がいいのは、例えばたまたまJCOのときは2件だったけれども、100件出てきたときに対応できるのかというような話があるので、そういう多数が出てきたときに、やっぱり類似の損害はカテゴリーとしてカテゴライズしてやっていくとかをある程度整理しておかないと、ふたを開けてみたら100件来てお手上げという事態にならないようなことを考えておく必要があろうということです。
 次のポイントが国の支援ということでございまして、これにつきましても原賠法の中では国の援助ということも書いているわけですが、これも当然どういう場合は絶対援助するんだというのはおそらく決めようがないのだと思うんですが、ケース・バイ・ケースを前提とするものの、やっぱり考慮するという場合に、原子力事業者の体力に比べて被害総額が多かったときとか、事業者の帰責性とか、資本力とかなども考慮すべき点ではないかというようなこととか、あと、そういう援助の仕方についても、まさに真水で援助するとか融資をするとか様々な方法があると思うので、あらかじめ整理しておいたらどうかなということでございます。
 ということで、JCOの対応なども踏まえて、それぞれ整理していきながら、足らない項目を追加していくとか、この部分は特に重要だからもう少し深堀りしていくとかで、検討会が終わったときには、ある程度以上の対応マニュアルができていることを1つの成果にしたいなということで考えているということが2−2でございます。
 それとあわせて2−3も説明しますが、特に紛争解決に果たす政府の役割のところで先ほどまさに調査研究会の話と紛争審査会の話が出たので、それをもとに多少論点的に整理していった資料でございます。それで、まず当時の調査研究会の賠償の基本的考え方を提示する仕組みについては、まず、論点1−1、当時の研究会が果たしたような役割ということはやっぱり今後とも必要かどうかということでございます。もっと分かりやすく言うと、まさに当時のそういう中立的、専門的な立場からある程度ガイドライン的なことを示すことが必要かどうかということでございます。分かりやすいようにしろまるくろまるでまとめてございますが、原子力損害の賠償請求というのは短期間にものすごく多数来るということですから、それに対してある程度公平性、迅速性を確保しながらということであれば、全体を通してある程度のそういう判断の基本的考え方を、特にニュートラルな立場で示すという機能というのはおそらく重要だろうという議論があるということでございます。それと、実際上、その場合には原子力事業者は、極端な場合には大変な目に遭って当事者能力が欠如しているだけではなくて、加害者的な感じになっていますので、政府による適切な支援などが当初の段階ではやっぱり必要なのではないかということでございます。それに対してある程度ネガティブ的に言うと、ケース・バイ・ケースのところがあるのではないか。対応によって違うから一元的に言えずに、こんなのなくてもいい場合もあるんじゃないのというような議論とか、当事者間でもめれば、こういうガイドライン的なものにかかわらず、最後は裁判まで行ってしまうということで限界があるのではないかというような意見もございます。
 次の論点として1−2ということなのですが、そういう基本的な考え方を示す中で、損害の全体をマクロに把握するような仕組みが必要ではないかということで、これはおそらく、誰がやるかというのは1つ議論だと思いますけれども、ある程度まず全体を把握しないと、もめ事が進まないでしょうから、どこかで情報を集約するようなことが重要ではないかということでございます。
 論点1−3としましては、じゃあ、そのような機能を誰が担うのか。当時は若干、アドホック的に今で言う原産協会の下に調査研究会を設置したということなのですが、まず国がやるということで整理すると2つの案があって、ケース・バイ・ケースで研究会を作る場合もあれば、役所がダイレクトにやるということで、その場合は状況に応じて機動的にやれるのではないかというのがもう一つの利点でございます。
 次は、紛争審査会、必要であれば名前も変えてもよいと思いますが、そこでこういうことをやるというのはどうか。これに対しては、当然、既存の機関で、かつ法律に基づく機関ですから、かなり外向きに非常に対応が明確になるということと、中立性、専門性というので信頼を得やすいということですね。それに対してネガティブな点から言うと、和解の仲介というところと、そういう基本的な考え方を提示するというのは、両立性に問題はないかという議論があります。
 それに対して、当事者でケース・バイ・ケースでやるとか、民間でやるとかというのも1つの方法としてあろうかと思いますが、その場合はなかなかリーズナブルではないのではないかなということでございます。ここは議論していただければいいのですが、誰がやるのかということが1つの論点だということでございます。
 次の2ページ目で、じゃあ、紛争審査会そのものとしても論点があるのだと思うのですが、1つは、今さっき申しましたように、多数の案件が持ち込まれた場合の対応などは用意しておく必要があるのではないか。これはおそらくイエスもノーもなくて、皆さんイエスだと思いますが、これはある程度やっぱり用意しておいて、類似案件に対応できる考え方をまとめるとかについて、ちゃんと考えておく必要があろうということでございます。
 それと、今の紛争審査会は案件ごとに作るということになっているのですが、議論としては常設してはどうかというような議論もあろうかと思います。これに対しては、そういう原子力損害が起こるというのはケース・バイ・ケースで違うというのもさることながら、そういう発生頻度というのは極めて少ないということでしょうから、常識的には起こった都度やるということになるのではないかと思います。他方、早期に立ち上げ可能になるように、あらかじめの準備というのはちゃんとやっておく必要があろうということでございます。
 あと論点3としましては、和解の仲介だけではなくて、調停とか仲裁とかも含めてもう少し強い権限を持ったらどうかというのも1つの論点としてあるわけでございます。それに対しては、そういう紛争審査会そのものが、その事故のたびにパッと突発的に置かれるというようなものでございますから、なかなかそういう事務局機能も含めて十分なものでないということですから、そういう機能は議論としては裁判所とかきちんとしたところに任せるのが適当ではないかという議論があるということでございます。
 最後の論点の2−4ですが、そういう紛争審査会がやっている場合に、ずっとそれが続いているうちに何か訴訟するタイミングを失ってしまったとかにならないように、相互の関連も考えていたらいいのではないかというような論点でございます。それに対しては、しょせん和解の仲介ということですから、裁判で長期間かけて争ってやるような案件は、いずれにしても和解なんかならないのだから裁判に行ってもらうということで、考える必要がないのではないかというような議論もあるということでございます。
 ということで、2−3はこれにのっとって1つずつ議論してもらう必要もないのですが、議論のたたき台ということで少し論点を整理してみました。説明は以上でございます。

【野村座長】

 それでは、残り15分ほどしかございませんけれども、ただいまの資料2−2、2−3についてご説明いただきましたので、それについてご意見、ご質問等ございましたらご発言をお願いしたいと思います。
 道垣内委員、どうぞ。

【道垣内委員】

 経験はすごく大切ですから、それを踏まえてというのはよくわかるのですが、先ほどから議論がありますようにJCOは相当変わったシチュエーションというかまれな状況が重なっていたと思うので、指針を作るのは1つ必要だと思いますが、10倍とか100倍の事故の場合のマニュアルも同時に作らないと、例えば100倍になると60万人から請求が来て、1兆5,000億円出ていくということになりますから、それはそう簡単なことではないですよね。ですから、そのときに全くお手上げですというのではなくて、それも一応想定していましたというマニュアルがあってしかるべきではないかと思うんですね。
 それからもう一つ、私は専門の立場から言うと、外国で事故があってその損害が日本に及ぶということはあり得ることで、それも幾つかタイプがあると思うのですが、単純化して言えば、例えば漁業被害だけが起きている、日本海の魚が全然売れないという場合と、それから、黄砂と一緒に何かいっぱい飛んできて日本中に降りかかっているというような場合とは多分また全然違うので、それが対応できないのであれば条約のことを考えなければいけない話につながるわけですけれども、少なくとも現行の原賠法の対象ではないので、そこをどうするのかというのは問題ですが、そういうことも想定してマニュアルを考えたらどうか。いわゆるシミュレーションなので。
 最後、もう一つだけ申しますと、JCOの100倍の事故の場合に、例えば訴訟の管轄を1カ所にしたほうがいいということもあるかも知れない。色々なところで訴訟が起きるよりは、事故発生地を管轄する地方裁判所の専属管轄だという規定を入れておけば、そこで破産手続が起こった時には何かといいのかも知れない。例えばそんなことも出てくるのではないかと思いますので、ご一考いただければと思います。

【野村座長】

 今のはマニュアルを超えますよね。

【道垣内委員】

 最後のところはね。

【野村座長】

 ほかにご発言、いかがでしょうか。下山委員。

【下山顧問】

 資料2−2の(2)損害拡大防止ですが、私、どうも災対法をあんまり勉強していないですけれども、退避命令というのは国が出すのですか。災対法ではどうなっているんですか。

【山野原子力計画課長】

 災対法では、色々なパターンがあって、昔の災対法は基本的には市町村長だったんですけれども、それの原子力の特例法みたいな感じにして、国自らもできるし、市町村長からもできるということです。そこは一元的に一定の事例が発生すると、国では総理ヘッドの本部がポンと立ち上がって、オフサイトセンターが地元にも立ち上がるということで、そこで国も市町村も一体として対応するということで、基本的には国が前面に出るのだという発想ですから、国中心に退避命令となります。

【下山顧問】

 だから、その関係、災対の一環として行うのであり、連携を考える、そこが非常に重要なところだと思うのは、実は損害の範囲には、調査研究会の中間確認事項でもそうなんですけれども、地理的な範囲と時間的な範囲と2つあって、どこまで除くかというのが実は損害の範囲に重要に関わってくるので、その辺を一体今後どういうふうに考えるかというか、それをあんまり考えると、出すのをヘジテートして、かえって損害が深刻になるということもある。そういう意味では、村上村長さんが早い時期に出された勇気は大変と思うんですけれども、いずれにしても、そういうことは別にして賠償法との関係を考えると、そこをどういうふうに今後運用されるのか、そこに何か基準が要るのではないかという感じがするんですけれども。

【山野原子力計画課長】

 そうですね。それと別に、当時私は災対法を作るタスクチームに入っていたんですけれども、新法だから、大体案を作ったのは10月なんですね。9月30日に起きて。だから、当時だと原賠法が動くかどうかも分からない状況で作ったものだから、原賠法と全然リンクさせていないんです。だけど、当然、防災対策の方はおのずと災害対策基本法の流れから来ているので、国、県レベル、市町村レベル、消防とか警察とかも含めて、関係者がそれぞれ役割を負ってやるような仕組みになっているんですね。だから、原賠だけが独立してどこかで動くわけがないので、そういう感じのリンクを張れば、もっとスムーズにそういう自治体とか色々な協力関係が組めるのではないかなという感じがしています。
 それと、実際、当然、村長さんもそうなんでしょうけれども、現場の人は別に原賠だけ考えているわけではなくて、何かあれば、まずは本当に異常事態を止めることから始める。防災も一連のものですから、やっている人も一緒ですから、例えば原子力の防災対策の法律を作ったときにも事後対策というのがあるのですが、その1項目として原賠みたいなのが実際機能できるような感じで考えた方がいいのではないかなと感じています。

【村上委員】

 いいですか。下山先生のおっしゃられたことなのですが、どう的確に判断するかといったら非常に難しいのですが、結局、7,000件、150億の損害賠償が出てきたというのは、こういう言い方もされていますよね。それは10キロ圏内を屋内退避にしたとか、あるいは常磐線を止めたとか、国道を封鎖したとか色々言われますが、しかし、それは政府の責任だ、茨城県の責任だ、あるいは東海村の責任だということにはやっぱりならないと思うんですよね。それはあくまでもJCOの臨界事故というのが起きて、過剰な反応だったから茨城県全域の農産物は売れなくなったという損害を受けた。そういう人たちがドッと県庁に来て損害賠償を請求したんですよね、茨城県内の人たちが。その事実だけちょっと言っておきますが。

【天野委員】

 今の件で僕もちょっと似たような気持ちが実はあって、僕が思っているのは、やはり賠償と災害対策というのは別に分けておく必要があると私は思います。ただし、ここに少し挙げてある損害の拡大防止、これはやはり災害対策の一環として考える必要があると思いますけれども、そういう災害対策と賠償に何らかの関係があると考え始めたら、僕はそこのところは物事は片づかない、分けておく必要はあると思います。

【村上委員】

 そうですね。

【野村座長】

 ほかにどうでしょう。

【大西局長】

 ただ、国際条約なんかはそういうのを入れてきていますからね。国際条約を受けた国内法をつくっていくと、今まであまりそういう概念になかったのが、避難についても、それから、空振りについても、今、災対法なども空振りも入れていますよね。

【天野委員】

 僕が言っていることは違って、それはあくまでもどういうところを損害賠償するかと別に考えればいいと言っているんですよ。だから、災害対策の防災対策とか、防災計画の中に損害賠償がどうなるかとかいうことを入れないということです。

【大西局長】

 それはそう。

【天野委員】

 それを入れ出すと話は混乱してしまう。

【野村座長】

 大西さんが言っているのは、空振りによる拡大費用を損害として入れるかという話ですね。

【天野委員】

 それはまた別途の議論があるでしょう。それは当然、賠償法の問題として議論がある。

【谷川顧問】

 この2−3で2つばかり。論点1−3の研究会等を設置して、状況に応じてケース・バイ・ケースで機動的な対応をするというのは必要だし、こういうことはいいのだと思うんですけれども、そこで対応するという意味なんですけれども、情報提供になるのかな、どこまでの機能を期待するかというので、役所がかむから極めて微妙な話が出てきやしないかというのは、仕掛けとしてどういう仕切りをしておくかという整理が必要なのかなということを感じます。
 それからもう一つは、次のページのところであっせんも調停も実質は同じことだと思いますし、あっせん・調停と仲裁とが違うのは、決定について拘束力があるかないかという違いだと思いますし、あっせんという言葉を使うと、何か当事者の意思がなくても職権で乗り出せるというような場合に使うこともあって、何か強そうに見えるんだけれども、実際はその示されたものをのむかのまないかは当事者の自由ですから、効果の面から言うと違いがないのではないかという気がいたします。
 それともう一つ、さっきの道垣内さんの話だけれども、国際的な関係が起こったときにどうするかというのは、今、そこまで詰めてマニュアルを作るというのは大変だから、とりあえず国内できちっと作ることが先なのではないかという気がいたしますけれども。

【四元委員】

 でも、必要性といったら、もしかするとそっちの方があるかも知れませんね。

【谷川顧問】

 原賠法、かぶせようがないんですよね。

【大西局長】

 ええ、そうですよね。

【谷川顧問】

 外国で起こったものについては。

【天野委員】

 災害対策特別措置法はかぶせられるんだろう、一応は。

【山野原子力計画課長】

 かぶせられないでしょう。

【天野委員】

 やっぱりなれないの。

【山野原子力計画課長】

 あれも出発点は、まず原子力事業者を捕まえるところから出発ですから、そこから何か起きるというのが全部トリガーになっています。

【谷川顧問】

 原子力事業者の定義の中に入ってこないんだ、外国の業者は。

【天野委員】

 入っていないからだめか。

【山野原子力計画課長】

 入っていないでしょう。それは災害対策基本法だと入っているかもしれないですけれども、ないでしょうね。

【天野委員】

 災対法では入っているわけだな。

【山野原子力計画課長】

 災対法、入っているかもしれない。

【天野委員】

 自然災害が入るんだから、よそから来たのが入らないということはないよね。

【山野原子力計画課長】

 ええ。

【下山顧問】

 さっきの道垣内先生が管轄権とおっしゃったのは、国際的な。

【道垣内委員】

 いやいや、国内の話。

【下山顧問】

 国内でしょう。

【道垣内委員】

 だから、それはまたちょっと話が別な。

【谷川顧問】

 国内でも風で来るやつにそんなに集中していいのかな。

【道垣内委員】

 いやいや、でも、裁判所に最後は任せるというところがあるわけですよね。ばらばらの裁判所に行ってしまうと全然経験が積み重ならないので、同じ裁判所に来てもらった方が裁判所としても対応はしやすい。

【谷川顧問】

 じゃあ、移送できることにしておく。

【道垣内委員】

 まあ、移送はできます。

【谷川顧問】

 最初から1つに専属管轄を決めちゃうというのは、事件によっては違うんじゃないか。

【野村座長】

 じゃあ、そろそろ時間ですけれども、特にご発言がなければ本日はここまでということでよろしいでしょうか。2−2につきましては、これから色々議論を深めていただいて、内容をまた整理していきたいと思いますので、本日の議論については、次回までに事務局で整理していただくということで、事務的なご連絡がございましたら。

【山野原子力計画課長】

 次回の第3回は、ご案内のように7月4日10時から12時ということで考えてございます。よろしくお願いします。

【野村座長】

 それでは、本日はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

─了─

(研究開発局原子力計画課)