7.当面、推進すべき防災教育支援の具体的方策

  「6.今後の防災教育支援に関する基本的戦略」に基づき、当面、推進すべき防災教育支援の具体的な方策は以下のとおりである。

1.防災教育支援モデル地域事業

  防災教育支援に資する人的・物的資源を多く有する機関・団体(特に、防災科学技術等の研究成果を有する理工系の大学や、教員養成を行う大学等)等を中心に、周辺の学校、地域の関係機関等と積極的に連携・融合し、その地域の災害の実情等に応じた防災教育の推進を支援するための中核拠点を全国10地域程度で形成する。例えば、地震関係5、風水害関係2、火山関係2、雪氷関係1のように、地域の災害の実情に応じつつ、被災経験を含め中核拠点を選定していくことが必要である。特に、学校や地域等における防災教育の「担い手」・「つなぎ手」を育成するため、主に学校の教職員や地域防災リーダー等を対象とした支援施策に重点的に取り組む。
  具体的には、例えば、以下のような支援の取組を行う中核拠点を形成する。

支援例

  • 自然現象の発生メカニズムや挙動のシミュレーション、自分の住環境に近い状況を再現できる災害シミュレータ、耐震補強実験等、防災科学技術の研究成果等も盛り込んだ防災科学教育関連教材等の作成
  • 学校の教職員等(特に初任者や学校の管理者)を対象に、防災教育に対する理解を深めるための研修プログラムの開発・実施
  • 年齢や地域等に応じて身につけるべき防災知識や教えるべき順番等が体系化され、現行の学習指導要領の中で対応することが可能な実践的な防災教育プログラム等の開発
  • 地域における防災の実情や災害の予測、被害想定等を含め、大学・研究機関等の防災科学技術等の研究成果等を活用し、地域住民等を対象とした市民講座等の実施

2.動機づけ・気づきをつくるための取組の実施

  学校や地域等における防災教育の優れた取組・事例や、大学・研究機関等の最新の研究成果を紹介し、その他の学校や地域等における防災教育の取組を促すための「防災教育支援地域フォーラム(仮称)」や、防災教育の実践的な取組を行なっている優れた学校や地域等に対して顕彰を行なう」方策を実施する。
  具体的には、「防災教育支援地域フォーラム(仮称)」においては、例えば、防災教育で成果を上げている教職員や地域防災リーダー等によって、既に防災教育に取り組んでいる人を対象とした講演等を行なうのみならず、防災教育にこれから取り組む人、取り組み方がわからない人等も対象に、初めて取り組んだ人がどのような課題や失敗等を克服し、成功へ至ったかの過程を紹介したり、豊かに生きるための防災といった側面、防災の明るい側面が伝わるような講演等を合わせて行なうことで、防災教育の必要性、面白さに気づくことができるような内容の取組を行なう。
  また、防災教育に熱心な学校・地域の取組のみならず、それほど熱心とはいえない地域の取組を活性化し、防災教育の面的な広がりを図るため、地域別や災害別に顕彰を行なう等の取組を行う。

3.素材・コンテンツの提供を含む防災教育関連情報の発信機能の整備

  国や関係機関、学協会が中心となり、防災教育に関する情報を全国からできる限り正確かつ分かりやすい形で集約・整理し、幅広く発信するための「防災教育支援窓口(仮称)」を整備する。
  具体的には、「防災教育支援窓口(仮称)」においては、1の防災教育支援モデル地域事業や、2の防災教育支援コンテストにおける防災教育の優れた取組事例をはじめ、「担い手」等の防災教育に携わる人のネットワークを活用することにより、全国の学校や地域等で取り組まれている防災教育の事例を一元的に集約し、素材・コンテンツ等として提供する。その際、集まった事例に対して教育や科学技術の分野の専門家が横断的に分析をするとともに、「担い手」の意見を踏まえてさらに使いやすいものとなるよう改良し、素材・コンテンツ等として提供する等の取組を行う。特に、4.(2)で述べたような大学や研究機関等の持つ防災科学技術等の研究成果を活かし、防災教育の素材・コンテンツとして提供することとする。また、それらの素材・コンテンツを分かりやすく紹介し、またその活用を促すため、教材作成や講師派遣等の相談も受け付ける。

   なお、上記の方策は、特に早急に対応すべき重要なものであり、その他に必要な防災教育の支援方策については、4.及び5.で掲げた現状や課題を踏まえ、引き続き検討を行うこととする。その結果を踏まえて、これらの具体的方策についても、一層の充実を図ることとする。

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研究開発局地震防災研究課