6.今後の防災教育支援に関する基本的戦略

  前述の4.現在の防災教育における課題、及び5.防災教育の現状において、防災教育が地域の防災力向上を図る上で極めて重要であるにも関わらず、必ずしも十分な取組が行われていない現状や課題を明らかにした。
  これらを踏まえ、今後、防災教育の目的とする「生きる力」を有する人材を育成するために、防災教育支援で取り組むべき戦略を明確にするとともに、それに基づいて、具体的な施策の展開を図っていくことが重要である。
  このため、以下に、今後の防災教育支援の3つの基本的戦略を示す。

1.「担い手」・「つなぎ手」等の人材を育成する

  教育は人なりと言われるように、防災教育の積極的な推進を図っていくためには、学校や地域において防災教育に携わる人材を育成していくことが極めて重要である。
  このため、防災教育の「担い手」としての役割が期待される学校の教職員等や地域防災リーダーの育成に向け、防災教育の必要性や具体的な教育内容・方法等を学ぶための研修等の機会を設ける。同時に、これらの人々は、防災教育の「つなぎ手」として、外部の人材を防災教育の現場と結びつける役割も期待されることから、学校や地域以外の関係者との人的なネットワークを構築するための場づくりを進める。また、地域の防災教育の「担い手」・「つなぎ手」として、学校と地域の連携を進めるとともに、行政機関、自主防災組織、学協会、民間企業、経済団体等の防災に関わる者の防災教育への積極的な参加を促す。さらに、地域の災害の実情を踏まえた防災教育の内容の充実等を図り、児童生徒や地域住民等に科学的で正しい知識を身につけさせるため、防災科学技術の研究成果等を多く有する大学・研究機関と、学校や地域とを有機的に結びつける取組を推進する。

2.内発的な動機付け、気づきを促す教え方を導入する

  災害の被害から想定されるように、「防災はこわいもの、暗いもの」という認識を持つ人も少なくないが、これは防災を表面的に捉えたものに過ぎない。防災の取組が自らや周りの人々の大切な生命を守ることにつながるということを意識させ、その印象の転換を図るためには、防災教育の成功事例や、環境教育、福祉教育等の他分野の成功事例等を積極的に活用し、「明るく、楽しく、面白く学べる防災教育」の在り方を示すことで、持続的な関心を持たせ、自発的かつ能動的な取り組みを促していくことが極めて重要である。
  このため、防災教育の重要性にまだ気づいていない人に対して、取組のきっかけを与え、防災教育に取り組む「内発的な動機付け」や、防災の重要性への「気づき」を促す観点から、既に防災教育に熱心に取り組んでいる人を引き合わせて協同で防災教育に取り組めるような場や機会、また、誰でも優れた取組を実践できると理解してもらえるような機会等を充実する。また、児童生徒が防災について、放課後や週末を活用し、学校・社会教育施設等で様々な体験活動や地域住民との交流活動を行えるような仕組みや、地域住民のニーズを満たしながら地域の防災の課題の解決を図れるような教え方の導入を図る。

3.誰でも利用できる学びの素材を提供する

  防災教育を効果的に支援していくためには、防災教育に携わる人のみならず、誰もが利用できる優れた「学びの素材」の存在、それらを簡単に揃えられるような環境が重要である。
  このため、防災教育に関する優れた取組や事例等で活用されている教材・コンテンツを積極的に収集・提供し、児童生徒の発達段階や教育課程の内容、さらには地域住民の理解度等、対象者に応じて内容の体系化を図るとともに、利用できる教材・コンテンツの選択肢を複数提示できるようにする。また、教材・コンテンツは、子どもや地域住民に何を伝え学ばせるか、どのような発見をさせるかという具体的な狙いをもったものとするとともに、科学技術の知見や研究の成果が正しく反映されたものとする。さらに、「担い手」・「つなぎ手」である教職員・地域防災リーダーに対して、これらの教材・コンテンツを効果的に活用することができるよう、その活用方法を学ぶ場を設ける。

  

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