地震及び火山噴火予知研究計画に関する外部評価委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成19年4月26日(木曜日) 13時30分~16時30分

2.場所

三田共用会議所3階 第3特別会議室

3.議題

  1. 外部評価について
  2. その他

4.議事録

(1)外部評価について

 冒頭前回の会議で意見が出された中央防災会議や地震調査研究推進本部と地震予知計画との関係について、事務局より「我が国の地震防災に関する政策体系」(参考資料1,2)に基づき、説明があった。

a)地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)

 各委員から提出された評価意見をまとめた資料2-1について事務局から説明があった。また、内陸地震に関する研究成果について、長谷川科学技術・学術審議会委員より前回会議の補足説明があり、その後意見交換を行った。
主な意見は以下のとおり。

〔目標の達成度〕

【委員】
 この研究計画が地震先行現象の発見に重きを置いたものから、地震発生のモデルを立てて検証するというスタイルに変更して進めてきたことを評価したい。基盤観測網の完成とそのことが地震活動と地殻変動の検知能力を大きく向上させ、一次データの公開がプロジェクト研究のみならずボトムアップ型の研究も活性化したことが地震予知研究を大きく支えていると思う。特にプレート境界地震について、アスペリティモデルで説明が可能となり、地震の発生位置や規模の仕組みを理解できたことは高く評価できる。また、内陸地震についても、本日の長谷川委員の説明でモデル化が少しずつ進んでいるということで勇気付けられた。

【委員】
 地震予知計画の「地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究推進」のうち、プレート境界地震については大きな貢献をしたということで高い評価をしたいと思う。内陸地震については、学問的に難しいが、それについても着実な進歩があるということは高く評価したい。「新たな観測・実験技術の開発」については、あまり成果が上がっていないのではないか。次の計画にはどういう技術に対して投資すべきか、よく検討すべきだと思う。

【専門家】
 今ご指摘の海底測位システムについては、海上保安庁が大部分の沖合に観測点を設置してこの観測を行っており、一部は実用化になりつつあるというレベルである。地下構造モニターシステムについては、地震予知計画の中で目指しているものは、非常に難しい技術である。しかし、断層面の地下構造を理解する上で、この地下構造のモニタリングの情報がなければ将来に渡って極めて重要な情報を欠落させることになる。少しずつ進展しているということをご理解いただきたい。

【委員】
 難しいということは承知しているが、次期計画ではきちんとした戦略を考えた方が良いのではないか。

【委員】
 海底の技術開発について現状をもう少し教えてほしい。精度と実績が上がってきているとのことだが、国内技術として存在するのか、それとも海外との技術協力として存在するのか。

【専門家】
 船の位置をGPSで受けて正確に決める部分については、アメリカのGPSに依存している。船から海底に置いた計器まで超音波を使って測位をする部分は日本とアメリカが共同で開発してきている。

【委員】
 国内の大学と官公庁、民間の中に、技術蓄積はできているのか。

【専門家】
 実施主体は海上保安庁と大学であり、技術蓄積もでき始めていると思う。

【委員】
 内陸地震でもアスペリティのようなモデル化について期待ができるとのことなので、今後が楽しみである。

〔実施体制の妥当性〕

【委員】
 東海地震の予知体制について、海側の観測体制の充実を国側への要望事項として上げている。しかし、今の技術レベルでは難しいということか。

【専門家】
 海底観測における海底測位については、先ほど説明した技術レベルにあり、海上保安庁が観測点を東海地域だけでなく、太平洋側に100キロメートル間隔で敷設している。地震計と津波計についても、気象庁が展開しつつある。

【委員】
 予知できれば被害を軽減することができると考えるので、これまでの知見を継承し、予知の確率を高めていただくことを期待している。

【委員】
 大学の法人化ということもあるが、平成8年と18年を比べると大学の観測地点の割合が少なくなっている。他機関が増加したことも一因であると思うが、若い研究者たちを育てる大学の観測点が減少するのは、問題ではないだろうか。

〔学術的意義〕

【委員】
 アスペリティによって物理モデルが構築できたということは大きな進展だと思う。地震予知のみならず、地殻現象全般の理解が進んだ。今後、その実態を地震学的及び物質化学的に検証する方向も併せて検討してもらいたい。

【委員】
 学術論文のレベルは以前と比べて、高くなっており評価できる。

【委員】
 特にプレート境界地震に関してはいくつもの成果が出てきた。計画の成果は大学、防災科研、気象庁等複数の研究機関のボトムアップ型の研究から生まれており、高く評価する。実施体制がうまく機能しているとの印象を持った。

【委員】
 国立大学法人化後、外部資金等の獲得が多いところがもてはやされているが、地震分野はどうか、外部から見ていて非常に気になる。

【専門家】
 火山ほどではないが、地震も若手研究者が減少傾向にあるのは間違いない。地球科学全体が大規模な予算を得るような機会が少ないことから、大学院生も減少傾向にある。対策が必要だと認識している。

〔社会的貢献〕

【委員】
 地震調査研究推進本部の体制の中で、地震予知計画の役割が対外的に明確になるよう、説明ぶりを注意しながら次期計画が作られることを希望する。

【委員】
 社会的貢献として、地方自治体の防災担当者に、分かりやすく研究の成果を発表する機会を設けるなど、地震予知の現在のレベルを防災担当者たちに理解してもらうことは重要だと思う。

【委員】
 本計画の研究成果が、地震調査研究推進本部や中央防災会議、または自治体の防災対策に直接的・間接的に貢献しているというのは理解したが、国民が「地震予知」に期待していることとは乖離があると思う。地震予知の限界を国民にしっかり伝えることが必要ではないか。また、専門用語を分かりやすく表現することも必要ではないか。

【委員】
 1995年の地震以後、国民への説明機会を増やそうと地震学会は非常に努力している。5月の地球惑星関連の合同大会あるいは地震学会において市民レベルで解説する機会を設けている。今後は更に積極的な取り組みが必要である。

【事務局】
 地震予知計画そのものの普及広報ではないが、地震調査研究推進本部の成果を広く社会に普及させるため、地震セミナーを毎年10回程度文部科学省と市町村と共同で開催している。今後は、地震予知研究計画の中身についても、このセミナーを活用することなど様々な機会を活用しながら、地震に関する取り組みを広げていきたい。

【委員】
 個人的には、学術会議が率先して行うべきだと考えている。地震などの防災関係は安全・安心な国造りに寄与する分野であるため、一つの学会に任せるのではなく、学術会議という大きな枠の中で社会的貢献を行っていくべきではないかと主張しているのだが、予算の問題がありなかなか難しい。

【専門家】
 社会貢献については学術会議の中でも検討が始まりつつある。

【委員】
 例えば、静岡県等ニーズの高い地域に説明に出向くことも必要ではないか。

〔今後の計画の在り方に関する意見・提言〕

【委員】
 内陸地震について成果が出ている旨説明があったが、更に応力集中過程のモデル化を推進していただきたい。

【委員】
 報告書は、予知研究の枠組みでサポートされている研究の報告だけなのか、サポートされていない研究も含まれているのか。

【専門家】
 全てを網羅してはいないが、部分的に入っている。地震予知研究計画については、測地学分科会地震部会の下に観測研究計画推進委員会を設置し調整を行っている。一方、東大地震研は全国共同利用研究所という役割があり、予知研究に参画していない研究者はこの機能を利用して参加している。それら以外の研究を網羅することはできなかったが、地震予知計画に関わっていると思われる重要な研究については報告書の中に組み込んでいる。

【委員】
 予知研究にかかわる公募研究という形を取る可能性はないか。また、報告書には、地震の準備段階から発生に至るシステムを理解するというが、日本に限らず世界の地震予知の研究の現状がどうであるかという記述が必要ではないか。

【専門家】
 報告書の中では、現計画のレビューであることから日本以外の予知研究の現状については記述していない。しかし、研究そのものは日本以外でも行われ、地震予知研究、地震学全般あるいは地球惑星科学全般を取り込みながら計画は推進されている。次期5か年計画を考える上で、できるだけ広く意見を聞きながら計画を検討したいと思う。

【事務局】
 以前の地震予知計画に比べ、現在はボトムアップ的要素が非常に強くなっている。地震予知計画の方針に従って研究を進めている研究者であれば、計画に参画していると考えていいと思う。建議で謳っているような方向性で地震現象の理解を進め、最終的には地震予知に結びつくような成果を出していくことが重要である。公募という形になるかどうかは別にして、学術的に未知の部分が多いため、狭い意味での地震予知ではなく、外部資金の研究も含めて考えた方がよいと思う。

【委員】
 当初の計画を作る段階で、過大な計画設定をした部分やあるいは投入すべき資源が不足だった部分があると思う。次の計画作成時には、目標をどのように設定するかという問題があり、それに関連する資源が投入できるかどうかになる。外部資金に依存して計画を作るのは、計画というよりむしろガイドライン的、目標のような位置付けになるのではないか。実現可能性が高い目標を設定して資源投入するという、ある程度コミットメントした計画として作るか、あるいは広く学術研究者にガイドラインを示し協力を仰ぐという形で計画を作るのか、考え方を整理した上で取り組まれた方がよいと思う。

【専門家】
 両者の要素が必要である。地震の発生予測というターゲットははっきりしている。非常に基礎研究的要素が強く、ボトムアップ型の研究成果に依存している。資金を投入すれば目標が達成できる段階ではなく、ボトムアップ型研究がまだまだ必要であると認識している。

b)第7次火山噴火予知計画

 各委員から提出された評価意見をまとめた資料2-2について事務局から説明を行い、その後意見交換を行った。
主な意見は以下のとおり。

〔目標の達成度〕

【委員】
 建議の目標設定に対して、観測網が整備されている場所では十分達成されていると考える。しかし、それで十分かと言えば、個人的にはそうは思わない。

【委員】
 全体的に見ると、地震に比べて、不安材料・課題がある。

【委員】
 設定した目標に対する達成度は高い。しかし、物理システムの確立が建議では謳われているがレビューでは見られない。個別火山の状況とシステムの記述が圧倒的に多い。

【専門家説明者】
 報告書に書かれているのは、火山噴火予知計画に関わった研究者が行った研究のみである。全国の研究者に研究データを供給しているが、それに基づく成果等の全てが含まれているわけではない。そういう面では不十分だと思う。

【委員】
 火山は地震と比べると自分のフィールドとして各研究者が研究している。物理的システムの構築に向け、最近では研究者の意見交換が行われ、ブレークスルーが起こりかけているのではないか。地震のように直ぐにモデル化するのは難しいのと思う。

【専門家説明者】
 全国で集中観測が行われ、連携しながら一つの火山に多数の研究者が携わるというスタイルが定着し、マグマ供給系が見えてきた。しかし、それが分かる火山は10にも満たない。富士山についても全国の研究者が集まって研究するスタイルができた。そのスタイルを今後も継続すべきで、そこから普遍的なモデルが出てくるのではないか。

〔実施体制の妥当性〕

【委員】
 地震は予知ができることによって被害を大幅に軽減できる。一方、火山の場合は予知が被害の軽減には直接的に結び付かない。火山噴火は、被害状況を確認してから対応策を定めるということしかできない。予知の精度としては、どの程度の被害が想定できるか、というところまでいかないと、一般の人は予知に対する価値を見いだしにくい。

【専門家説明者】
 過去の被害を理解し、時間・場所・活動の推移を研究することで人的被害を防げると考える。被災範囲の評価研究も必要であろう。大学の研究者だけでなく、他省庁とも連携しながら、進めていくものである。

【委員】
 次期の観測体制についてどうすべきか、戦略的に集中観測をどこから実施するのかということが報告書には書かれていない。次期計画では集中観測体制に重きを置く方がよいのではないか。

【専門家説明者】
 第6次計画から、気象庁及び国土地理院は観測監視、大学は研究テーマを持って実験観測を行うという体制になった。基盤的観測ができないと火山噴火予知はできない。

【委員】
 火山は物理モデルが構築されていない。実施体制についても、共同研究の件数が地震に比べて非常に少なく、基礎研究に携わる研究者の層が薄い。それぞれ適切な対応策を立てなければならないと考える。

【専門家説明者】
 地球科学分野全体が人材不足で悩んでいる。資料を共同利用する火山学全体に係る研究を戦略的にやるべきと個人的に考える。

〔学術的意義〕

【委員】
 リアルタイム監視の重要性を示唆している。また、若手の研究者によって編纂された「火山性地震・微動に関するデータベース」は、日本全国を俯瞰したもので、報告書では1行しか触れられていなかったが、学術的意義のみならず社会的貢献の視点からも高く評価する。

【委員】
 個々の研究論文は優秀だと思うが、集中観測等のプロジェクトでは複数の論文が出なければいけない。地震に比べ火山は論文数の面で、劣る印象である。

【専門家説明者】
 火山は防災への貢献は高いが、観測に時間を取られる。基盤的観測を気象庁等がしっかり行ってもらわなければ、大学の研究者が減る可能生がある現状から危惧している。「火山性地震・微動に関するデータベース」は全国共同利用研究所の京都大学防災研究所がまとめたものであり、全国の研究者が協力して研究を行った成果である。比較研究というものがあまり活発ではないので、次期計画ではそれも踏まえて進めていくべきだと考える。

【委員】
 論文の質量は評価に大きく影響する。日本ではさらに社会的貢献も評価される。

【委員】
 火山噴火予知計画の予算は、地震予知計画予算の10分の1程度であり、研究者数は地震の3分の1程度だろうとのことなので、評価にあたっては成果の違いと予算規模の違いのバランスという視点も必要ではないか。

【事務局】
 レビューにあたり、事務局として研究者数を調査したところ、大学の附置研究所・研究センターが地震も火山も行うという位置付けで設置されており、明確に両者を区分けできないのが現状である。

【事務局】
 地震について研究者数が減少しているのは確かだが、まだ若手研究者の層は厚い。それに対して火山は層が薄いという印象。若い層が薄いと、将来の活動にも影響すると思う。

【委員】
 研究者がどのような分野の出身かを考慮すれば、ある程度地震と火山と分けられるのではないか。

〔社会的貢献〕

【委員】
 噴火情報・非難情報を直接国民に発信しているということで、社会的貢献は高く評価できる。しかし、防災面でまだ不明な点も多いと思うので、社会的貢献として、そのような視点も忘れないようお願いしたい。

【委員】
 防災への貢献は非常に高い。しかし、気象庁や地震における地震調査研究推進本部のような組織が、最終的に情報を評価して社会発信をする体制を整えることが望ましい。大学が情報を評価し発信するところまで行うのは責任が重すぎる。

【委員】
 実際にいつ、どの程度の規模で噴火が起きるのかが予知でき、その情報が地方公共団体の防災担当まで届く仕組みができることが望ましい。

【専門家説明者】
 短期的予測とともに、中長期的評価も行っていく意識で富士山を集中的に観測した。火山情報を的確に出すことについて、関係機関と議論を行い、ハザードマップ・防災マップ等へ研究成果を反映するという社会的貢献もあった。実際に火山噴火が起こるかどうかの線引きをどうするかが重要であり、現在内閣府等で検討されている。地域防災計画の中で、研究者がどう貢献するか、行政はどう観測研究に協力するか明記しておけば、緊急時に対応できるシステムになる。

【委員】
 地元では、防災研究会等はよく行われているが、火山に関する研究会は聞いたことがない。静岡県等、火山が目に見える地域では行われているのか。

【専門家説明者】
 北海道、静岡、鹿児島等では頻繁に行われている。地震学会等で講演会も行っている。社会に広く知られているかは問題だが、対象等どういう枠組みで行うかは別に検討が必要であると考える。

【委員】
 火山の場合は啓蒙しなくても、危機意識というものを付近の住民は抱いていると思う。具体的に直前予知がなされたときにどう行動するかということは、自治体等防災担当者がしっかり対応を理解しておく必要がある。短期・直前予知はある程度できているので、中長期の対象は市民よりは担当者に説明すべき。

【専門家説明者】
 噴火予知はまだまだできていない。大きな被害が起こりそうな火山については前兆がはっきりしているのでわかりやすい。監視を続けていれば小さな前兆が連続して起こることも観測できる。しかし予知できるとは言える段階にない。

【委員】
 例えば有珠のように予知が成功すると、予知は可能だと一般に思われるということを注意しなければならない。

〔今後の計画の在り方に関する意見・提言〕

【委員】
 噴火予知が可能だと考えてはいけない。前兆があっても噴火しない場合も多い。一つ一つの火山に研究グループが張り付くのではなく、日本の火山の情報は共有し、コミュニティで監視するということが必要ではないか。基礎研究を重点化し観測体制を整備することが必要ではないか。火山については、様々な研究者が参画する余裕がなく、自分たちで手一杯という印象である。他分野からの参入が見込めない。共同研究を行えば、研究は非常に進展するのではないか。

【専門家説明者】
 1988年に火山学の今後の在り方という報告で、データの共有や全国を結ぶネットワークという構想について言及されている。そのような構想は既にあり、どう実現するかが今後の課題。

【委員】
 火山分野の研究者の層が薄い。安全・安心を担う研究者が減少するのは、我が国の重大問題である。

【委員】
 火山について、見えない火山すなわち海底火山の被害について、脅威を国民は知らないと思うが、海底火山のハザードマップ等はあるか。

【専門家説明者】
 海底火山については、海上保安庁が火山噴火及び地形調査、熱の評価を行っている。海底火山の被害として津波等が考えられるが、ハザードマップ等はまだ整備されていない。

以上

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)