地震及び火山噴火予知研究計画に関する外部評価委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成19年4月10日(火曜日) 14時30分~17時30分

2.場所

三田共用会議所3階 D・E会議室

3.議題

  1. 外部評価の進め方について
  2. 地震・火山噴火予知研究計画のレビュー結果のヒアリング
  3. その他

4.議事録

(1)外部評価の進め方について

 議事に先立ち、審議を円滑に進めるため会議は非公開とし、議事概要は個人を特定しない形で作成することとした。
 事務局より外部評価の実施方法及び評価事項(案)について説明があり、これを了承した。

(2)地震・火山噴火予知研究計画のレビュー結果のヒアリング

 「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の実施状況等のレビューについて(報告)」に基づき、平田科学技術・学術審議会臨時委員から説明があった。
主な意見は以下のとおり。

【委員】
 学術的意義は高いと思うが、本計画に基づく研究と他のプロジェクト経費で行っている研究との関係はどうか。

【説明者】
 国立大学法人運営費交付金特別教育研究経費が核になっているが、科研費や振興調整費等による研究も含め、この目的に合っている研究全てを含んでいる。

【委員】
 他分野の研究は、基礎研究がある程度見通しがついたところでミッションを作るスタイルが多いと思うが、この計画は走りながら考えながら動いていると感じる。だからこそ、ボトムアップ的に基礎研究を大事にしながらテーマを決め、トップダウンで進めていくというスタイルなのだと思うし、それが正しいスタイルだとも感じる。だが、一方で一般の社会という立場で見たときには、それゆえの分かり難さが少しあると思う。目標が何だったのかが、やや分かり難く、社会に対して何らかの説明をしなければならない。

【説明者】
 地震予知研究の目標は明快であり、いわゆる地震予知をするということ。だが、それはかなり難しく遠い目標である。東海地域のように、条件が整った場所で、ある特定の条件を満たしたときには、特定の予知はできると考えているが、全ての地震についてできる訳ではなく、その道筋をはっきりさせることが重要である。第1次から第7次までの地震予知計画というのは、長期予測と短期予知を行い、その前兆現象を発見するという研究方法をとったが、現在の計画ではそれを修正し、1地震発生に至る過程を理解する、2モデルの構築とモニタリング、3観測技術の高度化という3本を研究の柱として進めている。具体的に今の計画の中で何が目標かといえば、1プレート境界についてはアスペリティモデルを検証することであり、ある程度達成できたと考えている。内陸地震については、アスペリティモデルに対応するような物理モデルの構築が目標だが、これについてはもう少しでできるだろうという段階。2モニタリングについては国の基盤的調査観測網が充実してきたことから、かなり進展しており、新しく発見されたスロースリップをモニタリングすることが重要である。また、3新たな観測開発として、海底の地殻変動観測の精度を上げるということを一つの目標として掲げたが、大学および海上保安庁による音響GPS海底地殻観測という観測技術が開発され、一定の成果が上がったと考えている。

【事務局】
 予知計画は、国民から見てもロードマップが分かり難いのが現状である。予算についても特別教育研究経費の他に、科研費や振興調整費、文部科学省をはじめとして気象庁、国土地理院等の関係機関も貢献している。本来ならば一つのプロジェクトとして、投入資金がどれだけあり、何年間でどういう成果が出るというようにクリアになれば分かり易いが、最初の目標設定と、成果あるいは結果、アウトカムを一対一に対応させるのは難しい。

【事務局】
 第7次計画までの地震予知計画はミッションオリエンテッドで行ってきた。つまり、あるシナリオがあり、長期予測、中期予測、短期予測、直前予測というモデルあるいは概念に沿って研究を進めてきたが、地震は想定していた通りにはならない。なぜかを考えたときに、それまでのモデル設計がおかしいというのが、第7次計画後の見直しであった。現計画の目標は、地震サイクル全過程を理解するということである。それができなければ地震予知は難しいというのが科学的知見である。繰り返し間隔の一番短い、南海トラフト周辺の地震であっても100年サイクルである。この意味では100年間やらないと結果が出ない。それを5年毎に、目標を定めて進めているのであり、5年間で全てが分かるような目標にそもそもなっていない。そのようなものが、ミッションオリエンテッドになるかについては、国民が判断すればよいと思う。我々の地震学の知識が役に立たないのであれば国民は支持をしない。支持が得られているということは、役に立つということ。地震予知という最終目標までは行っていないが、目標に至る過程での理解が防災に役立っていると考えられる。

【委員】
 社会的貢献に絡む意見を述べる。おそらくプレート境界部分の研究については成果が上がっていると思うが、阪神・淡路大震災以後で国民が知りたいのは内陸における地震についてではないか。この前の能登半島地震においても能登半島で地震が起こるとは思わなかったとアンケート結果が新聞に出ていたが、阪神・淡路大震災のときも、研究者はここで地震が起きると言っていなかったと非難された。直前予知というのは、特に活断層地震の場合は難しいという前提を踏まえつつも活断層が次々と見つかっており、社会のニーズを考えれば、プレート境界ももちろん大事だが、直近で被害が出たところに対して応えられる研究成果はあるのか。活断層発見あるいは活断層評価ということに力を入れてほしい。プレート境界地震については今後に期待しているが、活断層の面からはどうなのか。また、近年の予算は運営費交付金の内数で分からないとされているが、決算書類等で分かるのではないか。予算を把握しなければ、次の計画を立てられないのではないか。状況を教えていただきたい。

【事務局】
 決算ベースで出せるよう努力する。細かいところまでは無理だが、傾向は分かるのではないか。

【委員】
 精度は悪くなるが、一つのデータとして出すべき。

【事務局】
 地震調査研究推進本部が推進する調査研究には四つの柱があり、そのうちの一つがここで行っている地震予知研究である。活断層調査については、推進本部の方針の下、文部科学省の交付金で実施され、地震動予測地図として取りまとめられた。阪神・淡路大震災後、陸域の活断層調査を大分行ったが、実際に国民に対してどれだけ役に立ったのかという評価は難しい。近年では予算確保も厳しくなっており、次の10年20年を見据えた場合、活断層の調査だけでなく、東南海・南海地震あるいは首都直下型地震等の大地震の切迫性が高いため、そちらを優先することも考えられる。これらは推進本部の調査研究であるが、次回までに予知計画との関係を整理した資料を用意したい。

【説明者】
 平成11年からの第1次計画期間中に基盤観測網が整備され、プレート境界に関してはアスペリティモデルが提唱され、誰にでも分かるような成果がでた。海域観測の機器開発は現計画で出てきたものである。

【委員】
 プレート境界地震と内陸地震の予算配分では、プレートに大きく傾いていると感じる。プレート境界地震に優先的に配分した理由は何か。外部評価事項の中に、当初目標で、どう優先順位を付けて研究したのかを盛り込む必要があるのではないか。また、研究により理解が進み、研究内容が当初計画と変わった場合、どう優先順位をつけたのかについても評価に加えるべきではないか。

【説明者】
 プレート境界地震に比べて内陸地震の説明が少なかったが、予算的には同等額である。研究の段階が違うからであり、内陸地震の研究については、防災に生かせるようなレベルまで達していない。次の計画では、内陸地震の研究をどのように推進するかについて盛り込めるのではないかと考えている。

【委員】
 社会貢献について、本研究が防災にいかに役立っているか、既存の防災対策にどのような貢献をしているか、また予知できる可能性が高まったのかについてはどうか。

【説明者】
 推進本部では、地震動予測マップを作成している。モデルとなっているのは長期予測であり、それぞれの地域がどれくらい地震が起きるか、どれくらい揺れるかを割り出している。その長期予測にはアスペリティモデルが基盤となっている。東南海・南海については、プレートがどれくらい付着しているか分かってきた。予知に近づいていると言える。数値モデル、物理モデルを構築できるところまできた。

【委員】
 中央防災会議、推進本部等との関係の中で、本計画がどのような位置付けなのか整理願いたい。国立大学法人化に適切に対応できているかについては、競争的資金は採択されるか不確定であり、当初考えていたよりも脆弱な財政基盤で計画の目標達成についてどう評価すればいいのか。これから先、国の計画についてどういう考え方を持って目標を設定するのか。

【委員】
 基礎研究で成果が上がっていることを発信することは社会貢献において重要。不完全でも地震予測や地震情報について、ここまでは分かっているがこれについては分からない、ときちんと説明することが重要である。

【事務局】
 予算面で見れば微々たるものであり、その中で大きな成果を上げている。この計画とは別のプロジェクトでインフラを整備し、いかに計画に結びつけるか努力をしている。

 「第7次火山噴火予知研究計画の実施状況等のレビューについて(報告)」に基づき、藤井科学技術・学術審議会臨時委員から説明があった。
主な意見は以下のとおり。

【委員】
 地震の発生モデルは開発の段階にあるということだが、火山噴火予知はどうか。

【説明者】
 物理モデルを作るということについては、ある程度到達していると思う。しかし本計画の目標は、いつどこで、どのようなマグマを噴出し、どのくらいの期間噴火するのかまでを予知することだが、到達するまではまだまだである。

【委員】
 平成14、15年度の富士山での観測は文科省主導だったのか。

【説明者】
 測地学分科会で、富士山の研究観測の強化について報告書を出していただき、振興調整費で3年間の集中的な観測研究を行った。富士山観測終了後、計画当初から25年間のレビューを行ったが、観測に携わった研究者は40人足らずであり、その後ポストは確実に減ってきている。技術者についても、定員削減計画より順次減ってきており、無人になった観測所も増えている。

【委員】
 地震分野の推進本部のような体制が無いということを言われたが、そのような体制を作るべきということなのか。

【説明者】
 大学の観測体制では既に限界。法人化によって運営費交付金となり、それで観測体制を更新することすらできなくなっている。日本の火山研究体制は酷くなっているが、絶対に噴火は起きる。大学の一研究者が観測点を作るのではなく、精度の高い地震計を置き、気象庁などが保有し、そこで収集したデータを大学等と共有して、火山研究のレベルを上げることが必要ではないか。基礎研究と観測体制を整備すべきである。

【委員】
 推進本部のような体制を作ることには疑問。40人の研究者についてバックデータを出していただき、必要な研究費について発信がないと、国民には分からないと思う。専門家から具体的に言ってもらうのがいいのではないか。

【説明者】
 研究者が限られており、研究費を投入するだけでは十分ではない。観測基盤の整備及び精度の高いデータの収集、観測網の充実が先決だと考える。

【委員】
 理科教育離れが言われており、地球科学も含まれている。エデュケーションとアウトリーチということを考えると、5年10年のことを想定した基盤整備も重要だが、将来を考えた場合、この研究をぜひやりたいという人材を育てることが重要。文部科学省にも頑張ってほしい。火山噴火予知については、そこに山があるのになぜ予知できないのかと国民は思っている。地震も、耐震基準を満たしていれば安全なのか、耐震基準を満たしていない建物がどのくらいあるのか、というような当たり前の疑問に答えていかなければ、長い信頼と、この研究をやりたいという意欲をもつ研究者の獲得にならないのではないか。

【委員】
 防災の立場から言えば、地震対策に対する県民の関心は徐々に薄れている。災害が起こると関心は高まるが、火山は地震に比べてもかなり低い。富士山についても一時関心が高まり、ハザードマップを作った。それは一つの成果だがハザードマップを作って安心してしまっているのが現状。行政が火山対策を推進しても地震より理解を得るのは難しいため、専門家の先生方にも頑張ってもらいたい。

【委員】
 どのように国民に理解してもらうのか。地震についてはいつどこで起こるのか分からないが、火山というものは近くに火山がないと身近な問題とならない。例えば、富士山が噴火したら火山灰がどれだけ東京に影響するのか等、具体的なイメージが湧かないと危機感を抱けないのではないか。

【委員】
 大学と気象庁が連携して計画を推進しているとのことだが、どのくらい気象庁がコミットしているのか。基盤観測網を気象庁が整備してくれればいいという事も考えられるが、どの程度参画しているのか。

【説明者】
 気象庁は、火山噴火予知については、定員も増員しており、それぞれの地域に火山観測センターを設置している。しかし、反面それは技官を吸収してしまい、火山そのものを見ている人が減ってしまった。大学の観測所は火山に密着したところで観測をしており、小さな変化に気付いたから大事に至っていない。2000年の有珠山噴火の時も直前の兆候をとらえて避難を促すことができたため、予知はできるんだという誤解を与えている。気象庁も大学に頼るのではなく、観測網を整備すべきである。しかし、気象庁は国交省の内局であり予算の増額が難しい。アウトリーチの必要性は理解して努力しているが、なかなか火山防災の必要性が浸透しない。実際に火山灰が東京に積もった場合、首都機能はほとんど停止する。1991年のフィリピン火山の噴火により5ミリメートルの火山灰が積もっただけで、飛行機は飛べない。飛行機は火山灰に対し弱く、上空を飛んでいるときに噴火したら飛行機は墜落してしまう。

【委員】
 資源や人材が足りないと言っているだけでは生産性はない。残さなければいけないものは何か、最低限やらなければならないこと、新しく行っていくものは何かを考えていかないといけない。我が国の災害を減らすために、今やるべき研究は何かという視点を少し入れていかなければ、我々がここにいる意味がない。すばらしい成果が上がっているということだが、国民がこれはやらなければいけないなと思うようにアピールをお願いしたい。研究者の立場、国民の立場、官公庁の立場からは視点が違うので、できれば対象別成果を見せていただければ、よくできているなと評価しやすいと思う。

以上

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)