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宇宙3機関統合準備会議

2001/11/21 議事録

宇宙3機関統合準備会議(第3回)議事要録

宇宙3機関統合準備会議(第3回)議事要録

1.日時

平成13年11月21日(水)15:30〜17:30

2.場所

大会議室(文部科学省別館11階)

3.議題

  • (1)統合後の新機関の具体的な機能・役割について
  • (2)新機関における産業界との連携・協力のあり方について
  • (3)その他

〜発言要旨〜

<はじめに>
  • まず第1として、今回の統合を通じて、事業・予算の重点化を是非図っていく。そして、欧米に伍していける分野を獲得してほしい。宇宙分野の研究開発予算は、既に大幅に縮減しつつあり、厳しい財政事情のもとであるが、関係予算の拡充に努めたい。同時に、日本の特色を活かして重点化を図ることによって、めり張りの効いた宇宙開発を進め、欧米と伍していくだけの競争力を確保すべきである。
     第2として、重点化を図るに当たって、まずロケットについては当面H−2Aロケットをコンスタントに打上げることができるよう、高い信頼性の確立に努めることが重要である。また、衛星については、宇宙科学技術研究開発の基盤技術の強化と、それに支えられる公益性の高い衛星プロジェクトや産業化・商業化につながる宇宙実証の衛星プロジェクトに集中すべきである。
     これまでの議論の中で、宇宙開発利用の理念については、人類の宇宙開発利用の理念だけでよいのか、国益の確保を踏まえた国としての理念が必要ではないかという意見については同感である。
     宇宙開発利用の中長期目標における分野の整理のあり方や、新機関における重点化のあり方に関する議論の中で、新機関は我が国の宇宙開発利用の中核機関であって、機能設計は柔軟性を持たせるべきという意見があった。新機関が我が国の宇宙開発利用の中核機関であることについては共通理解が得られたが、宇宙科学技術にどの方向から光を当てるかによって社会とのかかわりの切り口が変わってくると考えられ、新機関の機能・組織設計はできるだけ柔軟なものにしておくことが重要である。
     前回資料の「宇宙開発利用の中長期目標である国及び国民の安全の確保、国民生活の質の向上、知的資産の拡大」については具体的分野がどの目標に入るかをこの場で議論するのではなく、今後柔軟性を持って重点化を図っていくということが大切ではないか。
     産業化に資する開発とサイエンスとは別に整理する必要があるのではないかという意見があったが、新機関は既存の3機関の特徴を大切にしつつ、基礎科学から研究開発までを一体的に行う中で、産業界との連携・協力を強化することが必要ではないかと考えている。
<宇宙3機関における連携・協力の現状(運営本部の活動について)について>
  • 特に「信頼性向上」に関連して考えたが、一般に信頼性向上を考えるとき、一番下に要素レベルの信頼性の問題があり、その上に要素技術を組み合わせたシステムを企画、立案、設計、製作、運用するシステム技術がある。さらにその上位にその全体をマネージするマネジメントの技術がある。大体において、物事は上の方へ行くほどある意味の汎用性・普遍性があり、下の方へ行くほど個別性があるが、この内容はかなり個別マターにわたっているように見える。いわゆるシステム技術、あるいはその上のマネジメント技術についての経験の共有や共同研究については、どのように考えているか。
  • 現状は、運営本部発足の経緯でもある「信頼性を上げるために基盤技術の底を上げる」ことが大変大切であるというところから始まって、かつ初年度ということで、その観点で緊急性の高いものからスタートした。先ほど先生がおっしゃったような意味での上位の技術に関しての研究については、今のところあまり取り入れられていないのが実情である。少し軌道に乗ってきたところで、その方面にも広げていきたい。
<宇宙新機関と産業界との連携・協力の在り方について>
  • この新機関に、宇宙利用の全体について、関係省庁との連携・協力を推進するための戦略策定総合調整推進の役割を担わせる、つまり統合していく新機関が戦略の司令塔になる、ということと「多極化体制」との関連はどうなるのか。
  • 多極化とは、できるだけ関係省庁等の宇宙利用が進んで、全体として予算が増えることが第1の眼目である。新機関が全体を取りまとめて調整し、同時に推進していく中核的な機関としての役割を負ってほしいというのが、産業界側からの強いメッセージで、そういった取りまとめ役の総合司令塔的な役割を負うことになると考えている。
  • 商業化については、自立できるということで、かなり自明の定義だと思うが、産業化の方で「最低限の事業化」というのはどういうことか。完全商業化に時を移さず移れるだけの人材をその間維持しておくなど、の定義があるのか。
  • 公的機関で行っていた事業を民間の方に移す段階と考えており、必ずしも民間の需要だけで自立していける段階ではないという意味で、産業化という定義をここではしている。したがって、その段階では民間需要だけでの自立は不可能で、官需で支えていく必要があるのではないかと考えている。
  • 国から商業化までの間のステップとして、このような段階を認識するのが政策的には正しいのではないかと考えている。
  • 商業化が成立するまで官需で需要を支えるということは、政府はバイジャパニーズをやれということだが、世界的な商業的競争の中にあって、日本政府がそれをやることに対して、スーパー301条に代表されるような動きが世界の中において起こるわけであるが、それについてはどう考えているのか。
  • スーパー301条に関して、ロケットについてはまだそのような制限はかかっていない状況である。実際アメリカでも「バイアメリカン」という政策が明確に法律等でとられており、そういう選択肢は当然日本でも考えていいのでは。総合科学技術会議のような場で日本としてのスタンスをきちんと決めていただく必要があるのではないか。
  • 宇宙3機関が利用分野の開拓を行う、つまり開発に当たって利用機関からの要望を受け身でやるのではなく、3機関も積極的に、そして利用機関も積極的にやる、という意味か。
  • 単なる受け身で全く提案できないような機関になるのではないかとの懸念もあったが、それに対しては、これまでも宇宙開発事業団が自らいろいろなことを提案し、それを具体化してきた実績を踏まえた山之内理事長のお話があり、そのような積極的な機能を引き続き維持し、さらに従来以上の努力をして、利用を拡大していってはどうかというのがこの考え方である。
  • 今回の産業界との基本的認識については全く同感であり、異論はない。
     新機関が中心になって産業界と一緒に、本当の意味でのこれからの10年の「サポートする官需」は何かということが明確にされるべきで、国に対してただ待っているだけではなく、新機関自身が官需として何をつくるかという戦略をしっかりと持たなければいけない。
     日本がつい最近まで何においても世界を制覇した時代があるが、そこまで日本の産業が技術として進歩したのは、原点として国内マーケットがあったから。そこが何もないのが宇宙・航空機の弱さである。ただ、日本で放送・通信を含めてニーズがないかというとそうではなく、スーパー301条下でユース・フォー・ジャパンの衛星を日本のメーカーが取れるようにするために、国家が何をすればいいかが示されればありがたい。
  • 産業化あるいは商業化に向けて、具体的にこのような組織が設置されて、積極的な利用とアイデアの発掘をやっていただくとともに、産業界としてももちろん貢献していかなければならない。
     例えば通信放送衛星等々について、これまでオファーはしてきているが、実際に日本のメーカーが担当するに至らなかったのは「実証衛星が上がっていない」ということにつきる。実証衛星、宇宙実証のチャンスが与えられるものを提案しつつ、実証衛星として上げていくことが大事ではないか。
  • どのようなスペースクラフトを選ぶか、つまり商業化・産業化に資する衛星開発あるいはロケット開発をどうするかについて議論する場がどこに据えられるのか。1社の思惑だけで決めていくのではなく、国全体がエンテティーとして一番強力な戦略をつくる場というのを設定していただきたい。
  • この3機関の統合が、もともと宇宙開発を発展させる前向きな方向で提案されてきているものでないことが非常に問題で、むしろ縮小するときにどのような形ですれば一番効率がいいかという話になっている。
     日本の産業は国内の非常に大きなカスタマーに支えられてまず発展し、それから海外へ出ていくという形をとっていたが、今はその段階を過ぎて産業の空洞化が起こり、今までの日本の基幹産業と言われているものはほとんどそうなっていくだろう。
     その状況で今後産業をどうするかというとき、海外に出ていかない産業を育てる必要がある。国の安全にかかわる産業は一番海外へ出ていかない産業で、その意味で航空宇宙産業は非常に大事な産業だと思うが、航空も宇宙もだめになったら、日本は先進国から完全に脱落するという認識が、政府・国民の皆さんの中にあるのかどうか。
  • 客観的環境に恵まれない状況であることは間違いないが、しかしこの準備会合はどうやって縮小するかということを議論する場ではないと考えている。
     その中で、これだけは必ずやるというような重点化をどうするかということが一番大きな問題である。
  • 産業界から見れば事業採算が一番大事で、需要が官需であっても民需であっても、採算がとれれば出ていく。ただ、宇宙の場合は非常に投資リスクも大きく、そのため初めは官需で支えて、それで産業界のすそ野がある程度広がり、その延長線上で世界のマーケットに出ていけるような競争力が出てくれば、そこから商業化がスタートするだろう。
     ユーザーの立場から見れば、いい衛星・いいロケットであれば国は問わない。なぜ日本のH−2を使わないのか、あるいは国産の衛星を使わないのかという御質問を時々受けるが、端的に言ってまだ競争力がないというのが現状だ。やはり日本の産業に力がつくように、事業採算性を踏まえながら、国の機関としてまず産業を育成するという視点で進めていかないと、官需だけを請け負って採算をとるという狭い範囲でやっている限りにおいては、日本の宇宙開発は発展していかないのではないか。
<我が国の宇宙開発利用の目指す方向について>
  • 4ページの「利用の発掘」で、例えば宇宙通信だったら宇宙通信の会社、あるいはアメリカだったらアメリカの市場をマーケットリサーチして開発方針を決める、というところまで、新機関で考えられているのかどうか。
  • 例えば新しい物を商業化を目的に開発するのであれば、当然それは不可欠だろう。その能力が今3機関の方々の中にあるかどうかはわからないが、たぶん弱いのではないか。そのときには、産業界から人的な支援をいただいて一緒にやるということになるのではないかということをイメージして書かれている。
  • 3ページの新機関の機能・役割の「位置付け」の2つ目で、COEという言葉を使わず中核機関という言葉を使った、とあったが大変結構だと思う。
     それを受けた機能・役割の「研究開発の推進」の2つ目で「宇宙3機関が有する人材、科学技術の蓄積を〜」とあるが、日本の場合は大学あるいは産業界などに広がっている人材もあり技術もあり、それらを集約できる、あるいはシステム化できることが必要で、リソースリミテッドの格好で宇宙3機関が有する人材と書かれたのかもしれませんが、もう少し夢を広げて、日本のアクティビティーのコアであるという形でまとめた方がよいのではないか。
     2つ目として、例えば宇宙輸送系技術の完成と維持と言ったとき、輸送系には大きな物から小型の物までいろいろ取りそろえなければ物の役に立たないというところがあって、それをことごとく自前主義で維持するということは含まれていないと考えてよいか。国として自在な打上げ手段、と書かれると、大きいのを上げたい、小さいのを上げたい、たまにはどこか火星か何かに打込みたいという全ての要求に対応するという広がりを持ってしまうが、それでよいのか。
  • 最初の件については全く賛成で、宇宙3機関統合準備会議としても全員の賛成が得られると思うので、どこかの文章に入れたいと思う。
     次の件については、4ページ「社会との連携・協力」の最初の丸の一番下、「開かれた柔軟な研究開発体制の構築」の中に、大学などと共同で進められる開かれた体制にしたいということも含んでいる。
     最後の件は、難しい問題であるが、ここで考えていることはH−2Aのファミリーをある程度しっかり持つということが最小限必要だろう。それによって少なくともすべて海外に依存しなければいけないという状況からは脱却したいという意味である。すべてが持てるかどうかはわからない。
  • 4ページで「人的交流の推進」とあるが、ここで言う「官民の人的交流」は、何か事業的な物を考えて、それに対して官と民と両方で交流するということか。
  • 両方含んでいる。その上に「技術移転、民間委託を推進」とあるが、あるプロジェクトを民間に委託する、その中に3機関の人が入っていく、そして3機関に産業界の人を受け入れるということ、両方含んでいるつもりである。
  • もっと広く、マネジメントレベルやプロジェクトリーダーレベルといった研究者レベルまでも含んで考えている。
     戦後の日本の産業の発展、技術導入の発展の経緯を見ても、本格的に技術移転をやって産業の種にしていこうという気ならば、人の移動がお互いについていかないといけない、というのが委員会での基本的な認識である。
  • 人的交流は極めて大事であるが、産業界からの研究資金など、資金についてはどうか。特にヨーロッパでは、アリアンも含めて、資金・人的交流などまさに官民一体となって戦略的に進めている。
  • 当然のことだろうと考えている。これからできれば増やしていきたいということがこの中に含まれている。
  • 外部との交流について少しコメントを。5ページの左下に「学術研究」とあって、天文学と惑星学と書かれているが、少なくとも宇宙に関しての工学について、ここで言及していただけるとありがたい。
  • この部分の宇宙科学、それから航空に関しましては、全面的に松尾所長、戸田理事長のおっしゃるとおりに表現したいと思う。
  • 国際宇宙連盟の方でもエンジニアサイエンスという言葉があって、極めて萌芽的な研究もサイエンスの一環として行われており、ぜひこういうところも引き継いでいきたい。
  • ひとつには、組織など考え方を整理するときに、一般論としてはソフトに書いておいた方がいいのか、ハードにリジッドに書いた方がいいのかが難しい。リジッドに書くと明確になるがエクスキューズにもなる。ソフトだとどうにでもなるがピンボケになる。そこである程度ディバイドしていくということが大事ではないか。昔の宇宙開発計画は5年ごと行っていたと思うが、そこに書いてないと言われると動きがとれないということもあり、そこの取り扱いについてはこれから考える必要があるだろう。
     2つ目に、資料4「連携・協力の在り方」の3ページでかなり具体的に戦略策定推進のための総司令部的な組織の整備という提案を、資料5の4ページに書き加えた方がいいのかどうか。いずれそれらを集約しながらまとまっていくという理解でよいか。
  • そのように考えている。経団連からもう少し具体的な提言の動きもあるそうで、書き加えるのがいいのか、もう少し別の形がいいのか、現在はこのような格好で、少しづつ具体化して、議論が重ねられていくという理解である。
  • 宇宙3機関統合準備会議の意識としてはここでは枠組みの中身を書いたつもりで、どちらかというとフレームワークづくりの方に意味があるような気がしたので、フレームの方はヘッディングのところで読み込んでいただこうと考えている。一例として、評議員というような制度をこの機構が持ち、その評議員にたくさんの民間の有識者の方に入っていただく、もしくは理事会というような1つの執行機関を持つのならば、理事の中に民間が入るというやり方もある。そういう連絡・協力体制だけは考えてほしい。その眼目として、実際は人の交流がないとだめ、ということで書き上げたのである。
     資金の点は、技術実証の機会や共同研究といったものがそういう含みを持っているということで考えている。
  • 資料5の5ページの図で、産業界という黄色い大きい枠組みの中にいろいろな物が位置づけられていて、学術研究は確かにそこから外へは出るが、通信・放送利用技術の開発や測位利用技術開発あるいは観測技術の高精度化という面で、宇宙科学の学術研究が実社会のニーズを超えた技術要求を出していくという非常に先導的な役割を果たしている。そこで何とかつなげるような工夫ができないか。学術研究から技術開発あるいは高精度化に矢印が行くようにお願いしたい。
  • 基本方針の123が国益から始まっていること、そして3の技術力を独自に保持することも非常に大切である。
     安全保障の情報収集関係の衛星を進める場合、3ページ、4ページに書いてある新機関の機能・役割に記述してあることがすんなり当てはまるのかどうか。はまらないものを無理にやろうとすると、やっている方は非常に大変なことになってしまい、特に若い人が魅力を感じなくなってしまうことがあるので、機能・役割の部分にそれに関することを1つぐらい書いておく方がよいのでは。
  • 大変難しい問題で2つの側面がある。ひとつは、国会決議で少なくとも情報収集衛星についてはセーフということになって協力しているわけで、それを一歩踏み越えて書くかどうか。もうひとつは、情報収集衛星が完全にコンベンショナル化して、10個も20個もどんどん上げるような形になったときに、その担い手は新機関になるのかどうか。その場合はおそらく民間により今の軍需産業と同じような形の調達で行われるようになっていくことになる。その段階における新機関について考えると、技術開発の推進や宇宙実証の推進という形で基礎づくりに貢献できるということで、明示的に出していないのである。
  • 1つを挙げるのではなく、利用の拡大の中には従来は入っていなかったこともだんだんと入っていくという流れで整理している。
<全体を通しての意見>
  • 新機関の組織づくりにおいて、これだけ変化が激しい局面において、その変化に対して非常に対抗力を持つような技術基盤をぜひ構築するように努力してほしい。5年後の問題に対応できるような変化対応力も考えに入れる必要があるだろう。
  • 前回議論になった、産業化に資する開発・新しい機関の役割とサイエンスについて、基礎科学から技術開発までを一体的に行う中で、産業界との連携・協力を強化するという考え方、その方向で整理されるということでよろしいか。
     最初に3機関の統合について研究開発局でエクササイズを始めたときにNASAの機関のあり方が例にあがり、そういう組織がいいのかどうかという議論があった。しかし、将来に向けての技術基盤をまず強化するということを前提に考えれば、今議論している方向がいいのではないかと考えているが、一方において、それに対する危惧があり、方向性はよくとも組織論的にはどうかという議論もあり得るわけで、その点も今後の課題ではないかと思っている。本日は、むしろ産業化に関するご意見が非常に多かったので、多少気になるところである。
  • 新機関の機能、位置付け等でも、宇宙開発という表現の後ろに注意深く括弧して、宇宙科学を含むと書かれており、大筋でよいと思うが、資料5の4ページ終わりの「人材養成」で、次世代の研究開発を担う人材養成と書いてあって、できることなら研究開発という後ろに宇宙科学を含むと同じように書き加えられると、もう少し先をねらった先導的な開発研究に従事できる人材を育成するという意味合いも含められるのではないか。
  • まず機能設計をやり、次にそれぞれの機能についてどれだけの能力を持つのかという性能設計があって、その両方を受けて初めて組織論に入れるのだが、機能が見えるとある程度その先の組織の想像ができる、ということを受けた局長の問題提起であろう。
     ただ、このように機能を書き出して、その機能対応で組織をつくることは、ここで言っている事業や予算の精選という話にはつながっていかない。必ずそこにはある種の性能の面での重複が出てくる。機能別に組織を縦につくっていくということは、少なくとも基本的考え方に合う物ではない。
     そうしたとき落ち着く先として、いわゆるマトリックス組織が考えられる。その場合、何をマトリックスの縦にし、何を横にするか。
     マトリックス組織で難しいのは、1人の研究者から見ると縦のボスと横のボスがいて、コンフリクトを起こす場合がある。その設計をどうしていくかという話に落ち着いていくのではないか。一般にマトリックス組織がうまく運営できるとかなり柔軟なことができるということが1つの常識であるが、失敗するとばらばらになるということも確かである。
  • 資料5の6ページで、横の短冊が並んでいて縦の連携が見えないという意見があった。横の項目を横糸だとして、これらがどういう連携を持つのか、ここに極めて重要な戦略があるのでは。これらを実施する新機関で、どういう連携のクロスポイントに重点を置いていくかということを見定めて、縦糸をしっかり通すと、より戦略が明確になるのではないか。
  • 新機関の機能や位置付けで、市場原理になじまない公共性の高い活動を行うとあるが、公共性という言葉が非常にあいまいで、あまり実質的な内容を伴わない。もっと国益の追求ということを全面に出したとき、公共性という概念ではなじまないような物で、実際、国益の上で必要という物があるかもしれない。もう少しはっきり国益というようなことを全面に出した方がいいのではないか。
  • 今の点については、また議論させていただきたい。ただ、国益と言うと人類全体への貢献はどうだとかという話も出かねないのでは。
  • それも国益になる。国益を追求するというのは、人類のためにならないことをやっては国益の追求にならないということになるから。
<おわりに>
  • 新機関が担うべき我が国の宇宙開発の目指す方向は、第1に宇宙への輸送手段の確保など国及び国民の安全の確保、第2に公共財としての利用、産業の発展と創出につながるなど、国民の生活の豊かさと質の向上。第3に人類の知的資産の拡大。これらに集約されるとともに、これらを目指すためには宇宙利用の拡大が期待される多角化を目指す宇宙開発に徐々に変化させていくことが必要であって、公的開発機関である新機関の機能・役割も変化に添った機能・役割に柔軟性を持たせて重点化していくことが大切であるとの共通的な認識が構築できたのではないか。
     このような共通的な認識に立った上で、新機関は宇宙開発、航空科学技術を先導する中核機関として、宇宙輸送系技術、強力な技術的基盤、宇宙利用の拡大、産学官連携・協力、宇宙科学、航空科学技術、国際協力、人材養成をキーワードとした機能・役割を担うものと整理できるのではないか。新機関と産業界との連携・協力についても大方の合意をいただいたものと受けとめている。
     次回は、今回までの議論を整理させていただいたものをもとに御議論いただきたい。

以上

(研究開発局宇宙政策課)

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