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原子力二法人統合準備会議

2003/03/25 議事録
第12回  原子力二法人統合準備会議

第12回  原子力二法人統合準備会議



日  時  2003年3月25日(火)  15:00〜

場  所  経済産業省別館10階  1028会議室



原子力二法人統合準備会議(第12回)議事録


1. 日時  平成15年3月25日(火)  15:00〜17:00

2. 場所  経済産業省  別館10階  1028会議室

3. 出席者
(座長)渡海  文部科学副大臣
(副座長)大野  文部科学大臣政務官
(有識者) 青木利晴  株式会社NTTデータ社長
秋元勇巳  三菱マテリアル株式会社会長
秋山守  財団法人エネルギー総合工学研究所理事長
熊谷信昭  大阪大学名誉教授
兒島伊佐美  電気事業連合会副会長
小林庄一郎  関西電力株式会社顧問
住田健二  大阪大学名誉教授
伊達宗行  大阪大学名誉教授
田中豊蔵  ジャーナリスト
畚野信義  株式会社国際電気通信基礎技術研究所社長
西澤潤一  岩手県立大学学長
薬師寺泰蔵  慶應義塾大学法学部教授
(法人) 齋藤伸三  日本原子力研究所理事長
都甲泰正  核燃料サイクル開発機構理事長
(文部科学 省)  間宮文部科学審議官、石川研究振興局長、白川研究開発局長、坂田大臣官房審議官、丸山大臣官房審議官

4. 議事
1. 開会
2. 新法人の主要業務及び経営・業務運営の在り方について
3. 閉会

5. 配付資料
資料1. 「新法人の主要業務及び経営・業務運営の在り方について」
資料2. 第12回原子力二法人統合準備会議議事録

参考資料1   「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての各事業の重点化及び運営等に関する方針」(原子力委員会)
参考資料2   「もんじゅ」を巡る状況等について
参考資料3 「新法人の原子炉施設共同利用に関するお願い」(放射化分析研究会)


丸山審議官   前回、昨年の12月5日からやや時間があいてしまいまして、その点についてお詫びを申し上げます。ただいまから第12回の原子力二法人統合準備会議を開催させていただきます。
   初めに渡海副大臣、大野大臣政務官よりご挨拶を申し上げます。

渡海副大臣   それでは開会に当たりまして、一言ご挨拶をさせていただきます。
   大変お忙しい中、委員の皆様方にはご出席をいただきまして、ありがとうございました。今、お話がございましたように、前回12月ということで、ちょっと時間があきました。その間、様々な動きがあったわけでございます。
   まず、既に事務局のほうからご連絡をいたしておりますが、当初、今年の春をめどということで作業をしていただいていたわけでございますが、作業の範囲は大変膨大なものになるわけでございますし、新たな日本の原子力研究のCOEたる、しっかりとした組織をつくる、この目的から考えましても、先生方には大変恐縮でございますが、もう少しいろいろ議論を深めていただきたいということで、今しばらくこの議論を続けさせていただきたい、というふうに思っているところでございます。そういう中で、当初は12月の会で2月6日、3月25日ということでご連絡をいたしておりましたが、今回になった、こういう経緯をご了承いただきたい、というふうに思っております。
   今回は12回目となるわけでございますが、前回に引き続きまして、基本報告を踏まえた具体的な事項についての議論をお願いすることになるわけでございます。前回、基本報告及び前回の会合においてご報告をいただいた日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の事業評価の見直しの内容を受けまして、調査及び整理をしてまいりましたが、今回は新法人の主要業務及び経営・業務の運営の在り方について秋山委員よりご報告をいただく予定でございます。秋山委員のご報告を受けまして、委員の皆様に更なるご議論をいただき、新法人の主要業務及び経営・業務運営の在り方について統合準備会議の考え方をまとめていきたい、というふうに思っております。
   なお、先般、名古屋高裁の金沢支部におきまして「もんじゅ」の設置許可を無効とする判決が出されました。このことについて一言申し上げたい、というふうに思っております。「もんじゅ」につきましては、12月26日設置変更許可をいただきまして、地域の皆さんにこれからこの改良工事のお願いをしていくという段階でこのような判決が出された、ということでございました。大変残念に思っております。
   既にご案内のとおり、上告の手続きということをしていただいているわけでございますが、我が省といたしましては、今後、日本のエネルギーの問題等々を考えた場合に、この「もんじゅ」の研究というものが非常に重要な位置づけにある、という認識はいまだに変わっておりません。
   しかしながら、原子力というのはやはり国民の理解というのが何よりも重要でございますから、そういったことも含めて、今後の「もんじゅ」の推進体制についてしっかりと文部科学省で対応するために、プロジェクトチームという名前で既に立ち上げさせていただいております。私が座長をさせていただいて、今、その中で様々な作業をさせていただいておりますが、まずこの「もんじゅ」の中身、「もんじゅ」というのは一体何であって、この安全性に対してどういうことを考えているか、という説明責任をしっかりと果たすことが我々の最大の責任である、というふうに私は強く言っております。そういったことも含めて、今、当面の対応ということを取りまとめたところでございまして、今日、資料もお付けしております。
   また、関係各省ともこれから関連を図りながら、訴訟の動向、地元の状況等を踏まえつつ、具体的な対応を行っていきたいと考えているところでございますので、また関係者の皆様方のご支援、ご協力をお願いしたい、というふうに考えております。
   要は、決して“継続ありき”というふうな単純な話ではなくて、これまでやってきたことを国民に説明していく、この責任をしっかりと果たしていきたい、私は強くそう考えておりますので、ご協力をいただきますようによろしくお願いを申し上げる次第でございます。
   少し長くなりましたが、本日も委員の先生方の活発なご議論をいただきますようにお願いを申し上げまして、開会のご挨拶にさせていただきます。
   どうもありがとうございました。

丸山審議官   どうもありがとうございました。
   それでは引き続きまして、大野大臣政務官、よろしくお願いいたします。

大野大臣政務官   皆さん、大変ご苦労さまでございます。副座長を務めさせていただいております大臣政務官の大野でございます。
   ただいま渡海副大臣からご挨拶がありましたように、基本報告を踏まえまして、秋山委員から主題の調査・整理の作業に関するところのご報告をいただく予定になっております。秋山委員におかれましてはご多忙の中を極めて精力的に作業を行っていただきまして、国の原子力研究開発機能を担う新法人の在り方につきまして、お取りまとめをいただいたところでございます。心から厚くお礼申し上げるところでございます。
   本日、このご報告を基といたしまして、原子力研究開発の中核的拠点たるべき新法人の姿についてご審議をお願いいたします。委員の皆様方におかれましては、活発なご論議を賜りますようにお願いを申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。

丸山審議官   どうもありがとうございました。
   議題に入らせていただきます前に、委員に異動がございますので、ちょっとご報告を申し上げます。
   これまで統合準備会議開催当初から参加していただき、多大なるご助力をいただいておりました薬師寺委員におかれましては、ご案内のとおり、本年1月より総合科学技術会議の議員に就任されましたために、誠に残念ではございますが、当会議から退かれるということになりました。ここにお知らせをいたします。
   また、基本報告から今後より具体的な検討を行うに当たりまして、今回から新たに電気事業連合会の兒島伊佐美副会長を委員としてお迎えすることとなりましたので、ご紹介をさせていただきます。
   兒島委員、よろしくお願いいたします。

兒島伊佐美委員   ただいまご紹介をちょうだいいたしました電気事業連合会の兒島でございます。
   原研とサイクル機構を統合し、新たに原子力の開発推進を進めていくという体制をつくっていく、という大変重要な大事な会議に参加させていただくことになりました。大変光栄に存ずるところであります。
   今、原子力は私どもの自主点検の不祥事あるいは「もんじゅ」の判決等によって大変厳しい情勢にあって、むしろ気持ちが萎えるような世論の中にあるわけでありますが、一方では、エネルギー自給率の中で原子力の果たす役割が極めて高いということも関心を集めているところであります。この逆風の中で改めて国民に原子力の全体像あるいは新たな決意をもって進めていく、ということをここに示す二法人統合の討議はそういう絶好の機会であろうかな、こんなふうに思っております。
   微力でありますが、一生懸命やってまいりたい、こんなふうに存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
   ありがとうございました。

丸山審議官   兒島委員、どうもありがとうございました。
   申し遅れましたけれども、事務局に異動がありました。本件を担当させていただいておりました坂田が大臣官房の審議官に異動になりました。

坂田審議官   本席で座る場所がなくなりましたけれども、よろしくお願いいたします。

丸山審議官   私が後任を務めます丸山でございます。今後ともこの事務局をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
   それでは引き続きまして、本日の議事にさっそく入らせていただきます。
   まず配布資料を確認させていただきます。
   (資料確認)
   「資料第2号」の第11回会議の議事録につきましては、文部科学省のホームページに掲載させていただきますので、ご承知おきお願いしたいと存じます。
   なお、高速増殖原型炉「もんじゅ」の行政訴訟については、「参考資料」を後ほどごらんいただきたいと存じます。
   それでは、本日のメインの議題でございます「新法人の主要業務及び経営・業務運営の在り方について」ということで、ご議論をいただきたいと存じます。
   まず、原子力二法人統合準備会議における検討事項に係る調査・整理作業について秋山先生からご報告をいただきたいと存じます。今回は新法人の主要業務及び経営・業務運営についての調査・整理作業の報告というものでございます。
   それでは先生、よろしくお願いいたします。

秋山守委員   それではご指名いただきましたので、前回の統合準備会議から本日までの作業の内容につきましてご報告申し上げます。
   まず、以前から統合準備会議におきまして、統合に関しまして「両法人の若手職員の方々の意見を聴取したらどうか」というご提案をいただいておりましたので、これにつきまして両法人さんに呼びかけをいたしましたところ、若手職員の方々が一同に会しまして、しかも休日を返上しての精力的なご検討の作業を進めていただきまして、貴重な提言として私どもに発表していただきました。作業会で1月に若手の方々から直に大変貴重な資料を基にご意見をちょうだいすることができました。
   その内容でございますが、非常に前向きな若い方々の熱意に溢れる貴重なご提案、その背後にある的確な問題意識の分析というものを私ども感じたわけでございまして、時間がございませんので、ごくポイントだけご紹介を申し上げたいと存じます。
   原子力の社会の認識につきまして、若い方々が等しく強い危機感をもっておられる。これは私どもも直感的によく理解できるところでございます。プルサーマルの導入につきまして、今後、積極的に貢献していきたい、軽水炉発電の競争力強化等の目の前の課題とも積極的に対決していきたい、ということが述べられました。それから究極の核分裂利用としてのプルトニウムのリサイクルにつきましても、社会の中できちんとご理解いただけるように努めていきたい、というご意向も伺いました。そして、それらを支える基盤研究につきましては、これからなお一層活性化を図りたいといった4項目ばかりの共通認識をご披露いただきまして、私どもも大いに同感するところがございました。
   その上で、今後、「融合的な取り組み」という表現で、若い方々が様々な問題、様々な専門分野を糾合しながら取り組んでいきたい、という項目がいくつも挙がっておりましたが、その内容といたしましては、核分裂エネルギーの総合研究開発構想、プルトニウム利用と廃棄物処分、基盤研究の活性化と活用、原子力の安全と安心への取り組み、長寿命の放射性廃棄物の低減化の問題、研究開発に従事する職員の方々に対する評価尺度を複線化してほしい、というようなご提案がございました。ごくごく概略でございますが、以上、私ども大変勉強になったところでございます。
   さて、前回の統合準備会議におきましては、昨年の8月に出されました基本報告におきまして、その後の課題とされました3つの課題のうち、個別事業の評価見直しについての検討結果をご報告させていただいたわけでございますが、今回も前回と同様に、多くの専門家の方々のご協力をいただきながら、残りの2つの課題を1つにまとめまして、「新法人の主要業務及び経営・業務運営の在り方について」というタイトルで本日お手元にお配りいただいておりますような内容でご報告を取りまとめさせていただいたわけでございます。
   それでは「資料第1号」をご参照いただきながら、その内容をごく要約的にご報告申し上げます。
   まず1の「原子力新法人設立の向けての検討のポイント」につきましては、第1は「国が定めるべき事項と法人の裁量に委ねられるべき事項との仕分け」ということで、3項目ほど整理してございます。「法律事項」「法令に基づく国の関与事項」、そして「法人の裁量事項」ということでございますが、従来から本席でもご指摘いただいておりますように、法人については極力弾力的な裁量権といいますか、自発的なご努力が内部で、また外部にも反映していただけるように裁量については十分考えていただく、ということが指摘されておりました。これの背景といたしまして、キーワードを並べたような3つの観点から整理をいたしました。
   2番目は「原子力分野での我が国唯一の総合的な研究開発機関としての新法人の特色を発揮させる具体的方策」ということでございまして、これは申すまでもございませんけれども、世界のトップレベルをいく原子力の研究開発のテーマをいかに設定していくか、ということがか第一でございまして、それを今度実現していくためには行政、産業界、学界等のご意見あるいはニーズを的確に反映し、相互に組み合わせながら推進していく、ということでございます。
   第3番目は「職員の高いモラルとポテンシャル維持のための制度設計」が重要であるという観点からの整理でございますが、基礎・基盤研究につきましては、申すまでもなくて、研究者の独創性を重視する。原子力の可能性の開拓と成果の実用化を目指した目標設定をし、その成果について第三者評価をきちんと行う。当然のことでございます。プロジェクト開発研究につきましても、社会的なニーズを十分反映した目標を合理的に設定して、これもやはり定期的な第三者評価を進めていく、ということでございます。
   第4項目は「法人統合効果による目に見える合理化」ということでございます。融合・相乗効果の発揮、事業の集約及び重点化による事業の整理を進めていく、それから老朽化した施設、機能が重複している施設につきましては効率的に統合していく、あるいは廃止していく、ということが必要でございます。次に、人員につきまして、管理部門を主になお一層合理化のご検討をお願いすることが肝要であります。5番目は安全を十分に確保した上でアウトソーシングを拡大するということで、技術移転とか、人的支援ということで円滑に社会との効率的な交流、協力を進めていく、という観点でございます。
   第5項目は「強力なトップマネジメントの下での強い経営の確立」ということで、意思決定は当然のことでございますが、迅速かつ柔軟に進めていく。そのためのメカニズムを構築していく。法人全体で一体的な運営の確立のための方策を整備していただく。また、これも重要なことでございますが、外部に対して十分に開かれた経営を実現していただきたい、ということでございます。
   第6が「原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理・処分の枠組み」、第7が「原子力委員会の定める長期計画、安全委員会の定める安全研究年次計画の中期目標への反映」という点でございます。
   キーワードだけのご紹介で恐縮でございますが、時間の関係で次に進めさせていただきます。
   2は「新法人の主要ミッションの整理」でございます。これもこれまで準備会議でもご審議いただいたことが主でございますが、左側に主要ミッションを6ブロックで整理してございます。それに対応いたします現行法令を参考の形で右に点線で枠を囲った内容で表示しております。
   まず「原子力の基礎・基盤研究等を総合的に推進」が基礎的には極めて重要でございますが、これにつきましては原研を法第22条第1項1号で「原子力に関する基礎的研究を行うこと」と明示されている、ということでございます。
   2番目は「核燃料サイクルの確立を目指した研究開発を実施」、第3番目が「安全研究、核不拡散研究等の実施を通じた国の核不拡散や安全規制、原子力防災対策への協力」、第4点は「教育研究への協力等を通じた原子力人材の育成」、第5番目は「原子力基盤施設の共用」、第6番目が「研究成果の普及」ということでございます。
   3は「新法人の主要業務の実施の方向性」、新法人の主要業務を実施していくときにどのような方向に焦点を向かっていくべきかということにつきまして、6項目整理していただいております。
   第1が「原子力の基礎・基盤研究等」で、原子力に直接関係するものに重点化して研究を実施する、ということでございます。基礎・基盤研究は最近、ご案内のように、様々な先端的な科学技術あるいは関連の分野の学術とも重なり合い、また融合しながら大いに進展しているところでございまして、どこまでが原子力という枠組みも必ずしも容易ではないかもしれませんが、限られた資源、また原子力の中で効率的強力に成果を出していくためには、やはり原子力という視野を十分共有しながら、それに直接関係するものに重点化していく、ということでございます。その中身の例でございますが、中性子研究、革新的原子炉、非エネルギー分野の利用研究(これは放射線研究も非常に重要な分野でございます)、これらに重点化していく、という視点でございます。核融合の研究につきましては、ITER計画の国際的な議論の趨勢がまだ決着がついていない状況でございますので、それらの状況を十分確認しながら、適切なタイミングでITER計画の状況等との関係について検討を深め、結論を得ていく、ということであろうかと思います。
   第2番目の「核燃料サイクル研究開発」の分野につきましては、高速増殖炉のサイクル技術でございますが、いわば軽水炉に比肩するサイクル技術の実用化像と、それに必要な研究開発計画を提示する、ということでございます。その中でも取り分け、研究開発の中核施設でございます「もんじゅ」の運転再開へ最大限努力をしていく必要がある、ということでございます。ご案内のように、現在、それぞれの方々、それぞれの組織でもって全力で取り組んでおられるところでございます。第2点は、高レベル放射性廃棄物の処分研究は、原子力発電環境整備機構等と役割分担を明確化しながら、重複を排除する効率的かつ強力に実施していく、ということでございます。次は軽水炉の再処理技術開発についてでございますが、現在実施している事業の遂行に係るものに傾注していく、ということでございます。それから第4点につきましては、研究開発の遂行に当たりまして、民間への技術移転を念頭に置きながら、定期的な評価を行って、技術開発の進め方を決定していく、このように整理しております。
   次の第3番目は「安全研究、核不拡散研究等の実施を通じた国の核不拡散や安全規制、原子力防災対策への協力」ということで、プロジェクトに固有の安全研究はそのプロジェクトの中で自ら実施という認識で進めていただきたい、このほかに関係行政庁あるいは原子力安全委員会からの要請に応じて研究を実施していく、ということでございます。安全研究につきましても、それぞれのプロジェクトあるいは直接関係している、ご指導いただいている組織とそこをきちんと仕分けて研究をしていっていただきたい、こういうことでございます。もちろん、安全研究の進め方につきましては、原子力安全委員会とのなお一層の調整をしていただくことが必要であります。それから新法人の有する研究開発能力や人材を有効に活用して、国際的な核不拡散の強化等に技術的な観点から積極的に貢献をしていただく、ということでございます。
   第4番目は「教育研究への協力等を通じた原子力人材の育成」ということでございます。何よりも人材が必要とされ、強力な資源、基礎でございまして、ご案内のように、産業界におかれましてもこの分野で特段のご尽力をなさっておられるところでございます。もちろん、大学等におきましても自発的に原子力人材の育成についてはいろいろな計画を進めているところでございますが、それらを視野に入れて、大学と新法人の役割分担を明確化しながら、さらに連携協力を強化していただきたい、ということが第1点でございます。人材育成事業に対しまして、大学とか、産業界のニーズを的確に把握して、それを強力に反映していただきたい。これが第2点でございまして、基盤的な施設をできるだけ共有として利用できるように、なお一層ご配慮をいただき、研究機会の提供の在り方への反映などを含めて、さらにご検討、ご研究を進めていただきたい、ということでございます。それから国際的に見ますと、近隣のアジア地域の方々の人材育成についても協力、貢献をしていく、この視点が第3点でございます。
   第4番目は「研究成果の技術移転」でございますが、核燃料サイクル技術をはじめといたします研究成果を民間産業界に的確に、しかも適切に技術移転がなされなければいけないわけでございまして、このための様々な考え方、計画等を新法人の中で十分お力を尽くしていただくべくご配慮いただく、ということでございます。
   第6番目は「整理・合理化する事業」ということで、Spring-8の運転業務とか、地球シミュレータの運転業務につきましては、整理・合理化の例として議論されております。それから老朽化施設とか、機能の重複する研究施設につきましては、先ほど申し上げましたように、適切に廃止されるのが合理的である、このように結論づけております。
   4は「経営体制・制度設計」ということで、これらの事業内容を推進していきます際の経営体制、制度の設計、考え方でございます。これは法人における検討に枠組みを与えるためのたたき台ということでございまして、これもまだ作業会で現在、検討が進行中の内容でございます。
   大きく2つに分けて整理しておりまして、第1が「法人の組織形態の在り方について」でございます。
   ミッション(事業)を効率的に遂行しながら、同時に施設の運転管理、安全管理の確実な実施を図ることができる組織体系を構築する、ということでございます。効率と安全、この両者を密接に視野に収めて、それに最も適した組織体系を構築する、という視点でございます。そのために、ミッションの柱ごとに事業本部制を採用し、それぞれの研究所・事業所のミッションが横断的に一体的かつ機動的に遂行されるように、それに適した責任体制を構築される、ということでございます。各ミッションの遂行を担う主たる研究開発機能が所在する研究所・事業所を各本部の責任者が適切に把握できるように明確化するということの背後には、それぞれの研究所・事業所の直接のリーダーとともに全体的な視点で責任をもって統括される本部直属の責任体制が必要ということだろうと理解しております。

   次の「現存の事業所・研究所の整理。統合」ということでございますが、東海研究所(原研)と東海事業所(JNC)の統合、それから大洗研究所(原研)と大洗工学センター(JNC)の統合ということでございます。これは地域的あるいは業務内容的にこの方向が合理的であるということかと思いますが、私が伺っておりますところでは、やはりそれぞれの事業所の安全規制あるいは行政的な面でなお検討を要すべき課題もあるやに伺っておりますが、方向としてこのような方向が望ましい、ということであろうかと思います。
   次は、万全の安全確保、核物質防護対策のため、トップマネジメント直属の強力な権限を有する安全確保、核物質防護に関する統括責任者を置く、という考え方でございます。これのミッションは、安全確保と核物質に関して、ということでございます。
   次の項目は、事業所の立地地域との共生のために適切な業務体制を確立する。特に立地地域とうまく円滑な交流、協力を進めていただき、いわば共生をするということで、それに必要な業務体制を強化していくことが肝要である、という点でございます。
   一方、廃止措置とか、廃棄物の処理処分につきまして、やはりこれらを一元的に運営していく体制を確立する必要がある、ということでございます。
   次は経営の在り方に関してのことでございますが、産業界、大学、地元の有識者の方々の意見を徴する場を設けて、原子力の幅広い社会的な側面を考慮しながら、さらに人文社会科学系の専門家の方の知見も活用して、外部に開かれた運営を実現していく、そのような場、機能が極めて望ましい、という点でございます。
   大きな第2番目のくくりは「経営基盤の確立」に関することでございます。
   廃止措置と“負の遺産”と呼ばれております廃棄物の処理処分の考え方でございますが、廃止措置と処理処分に関するコストの総額を見積もることが先決でございますし、研究開発事業の規模とのバランスを考えて、そういったコストの総額をいかに年度的にならしていくか、展開していくか、という見通しを準備する必要がある、ということでございます。これらにつきましては、現在いろいろと検討が始まっていると私は伺っております。それから資金確保のために制度的な措置が必要かどうか、というあたりの検討も関連して課題となっているわけでございます。
   経営基盤につきましては、限られた資源の下で我が国唯一の総合的研究開発機関としての使命を果たすために、極力固定経費を抑制するという視点が極めて重要でございます。当然でございますが、そのために様々な工夫をこれから当事者の方のみならず、関係の産学官の方々のお知恵、お力をちょうだいしながら、こういう方向で進めていくことが必要である、そのような理解をしております。
   5は(参考)という位置づけで、キーワードで恐縮でございましたが、ご報告申し上げました内容につきまして、いただきました意見のうちから主なものをピックアップいたしました。内容あるいは表現とも十分に練れたものでないという点はあらかじめご容赦をいただきたいと存じますが、幾つかのポイントをごく簡単に申し上げますと、「研究開発の進め方」につきましては、競争的な研究環境、流動的な運営の仕方、特に人事システムにつきまして外部との交流も含めた流動的な運用が望ましい、それからスクラップアンドビルドを進めていく、ということでございます。また、プロジェクトにつきましては、適切な評価を基に次のステップにいくGO/NO GOの判断をタイミング良く進める、ということが必要ということでございます。それから関係行政庁、原子力安全委員会の要請に基づいて行う安全研究につきましては、例えば独立したセンター組織として基礎・基盤研究と連携する位置づけで実施する、という案も考えられる、ということでございます。
   第2番目は「産業界及び大学との連携」でございますが、技術移転、人材移転に必要な基盤あるいはルールづくりをこれから目指す必要がある、ということが第1点でございます。大学との連携につきましては、これまで両法人さんに私も個人的に大学人として大変お世話になりまして、利用させていただいたことが多々ございますけれども、こうした場を利用者の要望、意見をさらに適切にお受けいただけるような場を設置していただきまして、お互いにプラスになるように努めていただければ、ということかと思います。その次は研究情報体系的に収集する体制、特に新法人から研究の状況あるいは成果も含めました発信機能を強化していかれてはいかがかということで、特に国際的にこれからより見える研究開発機関ということでは、すべからくどの組織もそうでございますが、研究の成果とか、研究論文も国際的な舞台を視野に発信していくという観点が重要である、ということかと思います。
   第3番目は「安心、信頼性の醸成」でございます。先ほども申しましたけれども、人文科学系の方々と交流あるいは一部登用していただくということも含めた知識、関連の力の活用を図っていただく、ということでございます。
   第4番目は「人事制度」ということでございます。
   ごく限られた時間で大変雑ぱくなご報告で恐縮でございましたが、概略は以上でございます。言葉に表せない不備な点につきましては、内容の不備ではございませんで、私のご報告の言葉の能力の限界でございます。これをご準備いただきました方々には大変な作業を進めていただきました。お役所の方々に対しても大変お力を尽くしていただきましたことを、この場をお借りして感謝申し上げて、私のご報告といたします。
   ありがとうございました。

丸山審議官   秋山先生、どうもありがとうございました。
   それでは、今の秋山先生からのご報告に対しまして、ご質問、ご意見等何でもけっこうでございますので、ご自由にご議論いただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

住田健二委員   全体的なことでお伺いしたいんですけれども、1の国の関与するところで「主務大臣」という言葉が出てまいります。新しくできる新法人を管理、主導される省庁は、文部科学省と経済産業省が入るのか、入らないのか、この文章だけ読んでいますと、はっきりしないんです。これまでの経験からいいますと、日本原子力研究所は文部科学大臣が掌握されていますけれども、核燃料サイクルのほうについては両省庁にまたがっていて、テーマによってその都度主導される官庁が違う、というふうに了解していたんですが、そういう理解でよろしいんでしょうか。後々いろいろな研究テーマの問題で前提条件になりますから、そこのところをはっきりしてから議論させていただきたいと思いますので、まずその点をご質問させていただきます。

丸山審議官   これは役所から直接正確にお答えいただきたいと思います。

説明役   いろいろ事業がございますので、その事業に応じて文部科学省プラス経済産業省の関与があるか、ないか、というようなことだと理解しております。ここはごく一般的に独法の中期目標は主務大臣がつくります。それから中期計画はそれに沿って独法自身がつくって、主務大臣が認可します。その関係を表現したかったということでございます。

秋元勇巳委員   主務大臣、主務官庁というのがどういう位置づけか、特に新法人の場合にわかりにくいんですけれども、私自身はこうじゃないかと思っているんです。まず原子力研究所、それから原子燃料公社、その後、動燃になり、今の核燃料サイクル開発機構ができたいきさつを考えてみますと、最初に原子力を国がナショナルプロジェクトとして立ち上げていくときに原子力委員会というのができて、そこで国の原子力開発推進の総合戦略をつくっていこう、それをインプリメンテーションをするための機関として動燃などができた、というふうに私は解釈をしているわけです。
   今後この新法人は原子力を推進していく日本での唯一の法人と言ってもいいような位置づけになるわけですが、その基の基本的な構造は崩れていないのではないか。そのために原子力委員会は5年ごとに中期計画をお出しになり、それをベースにして今までも研究開発が進められてきたのではないか、というふうに思っているわけです。
   その後、原子力委員会の位置づけとか何とかいろいろ変化はしていますけれども、基本的枠組みでいうならば、私は主務官庁という法律的な意味はわかりませんけれども、原子力を進めていく上での主務官庁といえば、やはり原子力委員会である。その原子力委員会が出される基本方針にのっとって、その中で文科省が担当される部分については文科省が細部の計画をお出しになるということになるだろうし、通産省がお出しになるということもあるだろうし、将来はまた原子力に関係してきて、厚生省とか、ほかの分野でもそういうことが出てくるかもしれませんけれども、やはり国の総合戦略というものを一本にまとめて、その総合戦略に基づいて進めていく唯一の研究所であるという立場を考えると、そういう枠組みをこの中でどう読むか、というのが非常に大きな問題だろうと思うんです。
   そこをきちっとしていかないと、今までも科学技術庁と通産省との間で引っ張り合いっこになったり、あるいは間が抜け落ちてしまったり、そういうような形で総合戦略としての一貫性、合理性がなかなか保たれなかったということがあるので、その問題がこの後でもまだずうっと引き続いていってしまうと思うんです。やはりここで国としての原子力を総合的に進めていく必要性、そのための原子力委員会の役割についてもう一回議論をしていただいて、その上で主務大臣とか何とかいう一般の法令問題に入っていくということでないと……。初めの形式論から入ってしまうと、話が逆転してしまうのではないか、という気がしてしょうがないんですけれども、そのあたりは秋山先生、ご議論をなされたことはおありですか。

秋山守委員   そこはまだやっておりません。前回、第11回議事録の22ページが今のご指摘のポイントに関連するところであろうかと思います。要するに、原子力委員会の位置づけ、あるいは原子力委員会の下での研究機関の在り方ということで、私の理解では今の住田先生、秋元先生のご指摘の点がこれに関係していると思いますが、前回のこの議論以降、さらに結論に向けた、詰めた議論を特にこの作業会で進めたということはございません。全体の準備会議でのご意向をさらにもっと高い次元でぜひご反映いただきたい。作業会はそこまでなかなか……。

秋元勇巳委員   その意味では、1の1に「国が定めるべき事項と法人の裁量に委ねられるべき事項との仕分け」というのがありまして、最後の7で「原子力委員会の定める長期計画、原子力安全委員会が定める安全研究年次計画の中期目標への反映」とありますけれども、「反映」ですと、委員会というのはただ意見を言うだけで、それをどうするかというのは主務官庁の裁量でやるということで、原子力委員会はアドバイザー的な役割というふうに読めないことでもない。私はやはり1と7は一つの一体的な取組みとして議論をしてやっていかないといけないのだろうと思っているんです。そうでないと、原子力委員会の今までの位置づけは崩れてしまうわけですね。それで本当にこれからの日本の原子力研究をやっていくのにいいのか、私は非常に危機感をもっております。

秋山守委員   本日ご参考までに原子力委員会でのご検討の内容をお配りいただいているかと思いますが、原子力委員会でも両法人を含めて、いろいろな考え方、具体的な計画等が挙がってきた場合には、それを受けて原子力委員会としてご判断なり、ご指導なさるということかと思いますが、まとまったものを原子力委員会が受けるということだけでなくて、原子力委員会としての基本的な考え方、政策というものに照らして、さらにこちらの内容についてご意見を申される、あるいは必要なところはその枠組みを押さえていく、そういうご議論が進んでいる、というふうに私は理解しております。

住田健二委員   原子力委員会も原子力安全委員会も諮問委員会でございまして、行政委員会ではございません。したがって、法律的にはいわば勧告権しかないので、やはり主務官庁というのがはっきりしないといけないわけです。原子力委員会にしても、原子力安全委員会にしても、いろいろ意見は言えますけれども、自分たち自身が決定する権限というのは与えられておりませんから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。ですから、主務官庁をあいまいにしておきますと、両委員会あるいはほかの審議会もいろいろ勝手な注文をつけますけれども、結局、実行段階になると、所轄の主務官庁は適当に取捨選択されて、言うことを聞いてもらえないということになりますので、その点ではもう一回ここで原子力委員会の長期計画に対するものをはっきりうたっておくということは非常に重要なことだと思います。

丸山審議官   私の理解では、今、住田先生がおっしゃったように、独立行政法人の構造からいって、原子力委員会が主務官庁になることはたぶんないと思います。ただ、秋元先生が言われたように、原子力委員会の政策をいかに適切に反映していくか、というところのメカニズムは今後きちんと詰めて、法律でどう担保するかも含めて、やらないといけない。
   それから主務官庁の問題は、先ほど住田先生が解説していただきましたように、今のままであれば、経済産業省と文部科学省が一緒に共同で監督しているという部分がありますが、この問題は文部科学省だけの意見というわけにいきませんので、経済産業省ともよく相談しながら今後詰めていかなければいけない。役所の間でその話合いを今後しなければいけませんので、ここはあえて主務大臣と書いたつもりでございます。

伊達宗行委員   既に議論も出ておりますが、1についての問題点は、原子力委員会というのが往年の権威を失いつつあるということで、これは拭うべくもないと思うんです。これは憂うべきことであって、前は科学技術庁が全面的にバックアップしたんですよ。その体制がなくなって、下が切れましたね。そうすると、メンバーは大変立派な方で涙ぐましい努力をしていることはわかりますけれども、この問題が残っている限り、原子力委員会を上に立て、その旗の下に法人は進め、という絵はなかなか描けない。それが一つ。
   それからもう一つ、住田先生も言われましたように、もう少し突っ込んでいえば、例えば「もんじゅ」についていえば、これができた暁にその電力を売るということになると、経済産業省が必ず絡んでくるんですけれども、例えば今度の裁判のようなことがあって、より試験炉的な性格になってしまえば、これはわかりません。その出た電力を売らないとなれば、文部科学省の一つの管轄の中で処理できるということにもなるはずです。ですから、このへんの問題は、今後どこまでフレキシブルに対応できるか、ということが非常に大きいと思うんです。それを十分お考えいただいて、1で矛盾のない合理的な解決を期待したい、というふうに思います。

秋元勇巳委員   いつもこの会議で申し上げているんですけれども、特に原子力研究の場合は、最終的に民間が産業技術として電気を出し、放射線の利用をし、そういうところに技術移管をされていかなければいけないわけですね。そういう民間の産業と関わりをもっておられるのは経産省である。そういう意味では、入口は文科省であるけれども、出口は経産省である、という形はこの研究所の場合変わらないですね。それでは2つ並べておくのかというと、ただ2つ並べておいてもその中で調整機能がなかったら、動かないわけです。
   私も法律屋ではないものですから、原子力委員会が主務官庁になれるか、なれないかというような意味では、私の言い方は非常に乱暴なのかもしれないんですけれども、今までの原研の生い立ち、あるいは原子力の研究開発の生い立ちというところまで戻って考えれは、今、往年の力がなくなったとおっしゃいましたけれども、正にそうなので、やはり原子力の委員会がもう少し力を取り戻していただいて、原子力委員会の旗の下に現実にインプリメンテーションは文科省、経産省が手を取り合ってやっていただく、そういう枠組みをつくっていただかないと……。
   この法律というのは、もともと主務官庁の中で取り仕切れるような程度の大きさの研究開発をやっていくような法人とか、そういう事業をやっていくための法人にとっては非常にいいんですけれども、そこに入り切らないようなものについてどうするか、ということで立ち入っては考えてないわけです。法律がこうだからということで、かえって間尺に合わないような小さな着物を着せてしまったら、この研究開発はつぶれてしまうということがあるわけで、ここはやはりきちっともう一回整理をしておく必要があるのではないか、という気がします。

田中豊蔵委員   私は第1期のこの委員会からずっとこの論議を聞いていて、その上に立って秋山先生のこのまとめを拝見して、ご苦労されていることはよくわかるんですが、ひとつぜひこうすべきではないかと感じたのは、2の「新法人の主要ミッションの整理」で「原子力の基礎……」から「研究成果の普及」まで6つあるわけですが、7つ目にそのトータルとして「広報活動の抜本的充実と展開」というのを加えてほしい。
   当たり前だといえば当たり前で、「それぞれがやるんだ」と言われるかもしれませんが、ミッションの中に「広報活動の抜本的重視と展開」というものを入れることの意味は大きいと思うのです。今、秋元さんが提示された問題を含めて、今後の原子力のトータルとしての唯一の、しかも世界的に見ても本当にすばらしいエクセレンスセンターをつくっていこうというわけですね。そのためには、第1期のいろいろな論議を振り返って考えてみると、いろいろな先生が言われたのは(私も言ったんですが)、昭和30年代、1950年代の日本の原子力の勃興期の燃えたぎるような原子力の平和利用に対する情熱がなぜ今日、いろいろな時間的経過の中で、さっき言われたように、若い人が危機感をもつような状態になったか。あるいは渡海先生が言われた国民の理解が大事で、説明責任を果たしていかなくてはいけない。ということは、裏返せば、今くらい国民の理解が希薄になったときはない。原子力の平和利用が戦後、日本に起こってから最悪の状態にいるというときに、正にこの2つの組織を統合して新しいシナジー効果も発揮して、すばらしいものをつくっていこうというからには、国民の理解と支持を集めるための抜本的な広報活動を組織的に展開する。これからどういう政党が与党になるか流動的ですが、少なくともそういう政治の変動を超越した部分で、日本の長期的国益に沿った広報、国益に沿ったこの組織のありようについて国民に日常的に訴える。
   今度のいろいろな電力会社の不祥事の反省というか、いろいろな方の話を聞くと気がつくのは、専門家の集団と専門家以外のマネジメントの間で、専門家は専門家で自信をもってやっていた。しかし、一つの組織の中でも十分な意思疎通が行われない時間がけっこう長く続いてきた。国民との関係でいっても、いろいろな事件がありました。国際的にもあったし、国内でもあってはならないような事件がありましたが、それだけではないんです。事件が直接的な引き金にはなっているけれども、広報、宣伝の日常的な努力をどれほどしていたか、ということをこのスタートに抜本的に考え直すことが本当に必要だと思うんです。これはミッションの重要な一つである。つまり、それぞれのテーマの研究はもちろんですけれども、正に広報、宣伝活動こそが重大なミッションだ、という認識を今こそもつべきだと思うんです。
   例えば、私は昨日テレビを見ておりました。そうしたら、中山太郎さんが予算委員会でなかなかいい質問をしたんです。今度のイラク戦争の関係で日本の石油などの事情の質問をする中で、「アメリカとロシア、プーチンとブッシュは昨年のサミット以降、エネルギー問題で相当頻繁に話し合って、言ってみれば、これが昨年のサミットの重要なテーマでもあった。これからイラクの戦争がどう終焉しようとも、エネルギー問題というものがそれぞれの国益がぶつかり合う大変なテーマになる。そういうことについて首相はどう思いますか」と。私は小泉さんがきっと良いことを言うのではないかと内心期待して聞いていたら、非常に簡単に「再生可能なエネルギーを含めて、いろいろ考えていきたい」というようなことをおっしゃっておりました。残念なことに、原子力のゲの字もありませんでした。
   私は小泉さんを批判するために今しゃべっているわけでは全くなくて、小泉さんならずとも、このいろいろな事件が起こったとき、政府自民党のヘッドクォーターからどれほど日本の総合的な国益を原子力と結びつけた形で批判を恐れず、積極的に国民に意見を述べた人がどれほどいるか。ほとんどいない。電力会社に任せるか、あるいは原子力委員会とか、ここの会議とか、そういうところでは非常に熱心に問題をどういうふうに解決しようかと論議しているけれども、残念ながら……。渡海さんや大野さんは非常に熱心にやられていると思いますけれども、トータルとして政府、自民党というか、政治のレベルでいまだに前向きの建設的な話が十分に行われていると私には思えない。
   そういうことを含めて、ぜひこのミッションの中に「広報活動の抜本的重視と展開」ということを加えるべきです。単に課ができるだけではなくて、役員クラスを含めて、専門家が専門語を使ってしゃべるのではなくて、本当に広報の専門家を……。例えば、私は全く無知ですが、新聞社にはテクニカルタームを理解し、大学の原子力工学とか、そういうものを出て、科学部関係で仕事をしている人もいるわけです。そういう人を積極的に活用したりしながら、今までの発想をガラッと変えて、国民に直接的に訴えて、前向きに事故などの後ろ向きの対応ではないことをやっていく。今度の統合は正にそういう良いチャンスだと思うんです。

秋元勇巳委員   今、田中さんがおっしゃったお話と、秋山先生がこの中で「人文科学系の研究者あるいは社会科学系の研究が必要だ」ということを何回か言っておられることと非常に密接な関係がある話だと思うんですけれども、3つ目の「安全研究、核不拡散研究…」は、これから日本が燃料サイクルを本当にやっていく上では非常に大事な研究だと思うんです。
   しかし、残念ながら、今までの原研の中での安全研究、核不拡散研究というのは技術の面で終わってしまっている。核不拡散は技術だけではなくて、政治の問題であるし、国際関係の問題であるし、そこが技術と一緒にならなければ、周りの国も納得してくれるような核不拡散の体系はできてこないわけですし、周り人たちも「日本の核不拡散体制は十分だ」と認めてくれない。
   安全も同じで、安全の技術はできていても、それを社会に安心をもって取り入れてもらえる枠組みができないとだめなわけです。ですから、ただ人文科学系の先生たちが例えばこういう委員会に何人かおいでになって、時折の判断でいろいろ言われるというのではなくて、原研の中にそういう部門をつくることが必要ではないか。技術屋と一緒に人文社会科学系の人たちがいて、ある程度の政策提言ができる。政策調整もやれる。社会に対しても発信ができる。そういう政策調整機能を持ったようなグループを新しい法人の中に持てば、例えば今の原子力委員会が新しい長期計画を出そうとしても、そのための素材はそこから出せるわけです。昔、伊達先生がおっしゃったように、科学技術庁と原子力委員会が一緒になって、科学技術庁が知恵を出して、原子力委員会がそれを使えた時代と同じようなことが今度またできるのかもしれないし、そういうものもし新しく考えていただければ、今の田中さんのお話も生きるのではないか、そんな感じがいたしました。

田中豊蔵委員   もう一言ぜひ言わせてほしいのは、北朝鮮の問題が核を巡って今後相当新しい展開をする可能性があります。そういう中で、日本が唯一の被ばく国として、原子力の平和利用に対しては「だからこそ世界の原子力の平和利用をリードするんだ」という気概と実質をこれからやっていく。これは言葉で言うのは簡単ですけれども、相当大変な力と頭といろいろな条件が必要だと思うんです。唯一の被ばく国であるからこそ、平和利用に対しても全力を挙げていくんだという点は、ミッションの中で正に日本独自の範疇なんです。日本に比肩する先進国はみんな原子爆弾を持っている。核兵器を持っている。そういう中で、私は日本は核兵器を将来的に持ってはならない、絶対そういうことはあってはならないと思います。ところが、一般の国民の中には核の平和利用と核兵器の問題とを必ずしも峻別して理解されていない部分というか、理解しながらもそのへんがちょっとあいまいになって、核拒絶反応みたいなものがあることも事実なんです。
   そういう意味で、普通の会社が営業品目を広報でやるという以上のものが、この組織には国民に対する責任としてもある、というふうに思うので、ぜひ力を入れてほしい。

兒島伊佐美委員   私ども電力は、2つの法人の成果をちょうだいしながら、現場でそれを具体的な姿に現しながら運転をしていく、そういう任務を背負っているわけであります。
   今の田中先生の「国民の理解の面でこのミッションの中に入れたらどうだ」というご提言は、誠にタイムリーで、大変重要だと思って、私どもは本当にうれしく、ぜひそのように入れていただきたい。
   原子力を振り返ってみたときに、今、先生がおっしゃったように、原子力を我が国に導入するときは、諸先輩の燃えるような情熱で導入をしてきた。そして、幾つかの技術開発をしながらやってきた。その後、オイルショックのときに代替エネルギーの開発ということで、原子力が脚光を浴びて、もう一度大きな山があって、それの導入を一生懸命やってきた。そういうことで、やはり大きなエネルギー、情熱が必要だったのだと思います。今ここにきて原子力は、サイクル、プルトニウムを使う、という次のステージに入った。「もんじゅ」につなげていく、という大きなロマンといいましょうか、計画に挑戦しようとしているときに入った。このときにもう一つ燃えるような情熱で国民全体にそれを知らしめていく、ということを今しなかったならば、これはなかなか理解していただけない。
   この二法人の統合というのは、財政が豊かでないから統合ということもあるんですが、合体して新しい体制をつくって力強く進んでいく、そういう合体なんだ、こういうふうに思って、これがチャンスだと思うんです。今、原子力は逆風が吹いていますが、逆風もチャンスでありまして、逆風のエネルギーでも使えば、いくらでも前に進めるのであります。新法人統合と併せて、大きな広報をしていくミッションをこの新法人にしょっていただきたい。
   先ほどから出ている主務大臣でありますが、私どもは今、両方の省のお世話になっております。六ヶ所村は経済産業省の管轄であります。それから、高レベル放射性廃棄物のNUMO(原子力発電環境整備機構)も経済産業省の管轄であります。しかしながら、そこで使う技術は、二法人で開発していただいたものをいただいてやっているわけであります。まだお願いする開発分野が幾つか残っているわけでありまして、そういう意味では両省の力を合わせたご指導がなければ、我々のプロジェクトは進まない。特に「もんじゅ」につなげていく、あるいは再処理してプルトニウムを使って、それでまたつなげていく、この分野はぜひとも両省の力を合わせたご指導を賜りたい。そういう意味で、この新法人の中にどういうふうに書き込んでいったらいいかちょっとわかりませんが、専門的領域になると思いますが、ここはその趣旨をぜひ反映をしていただきたい、こんなふうに思います。
   もう一つは、原子力委員会は力強い原子力委員会になっていただかなければいけない。私ども事業者として少し口幅ったいものの言い方でありますが、これは切望してやまないところであります。これを力を合わせて応援をしていきたい、こんなふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。

渡海副大臣   これは私の誤解があるかもしれませんが、広報活動等は新しい法人にも当然やっていただかなければなりません。与えられたミッションに対してしっかりと安全性を証明していくとか、そういうことは大事なことだろうと思います。しかし、私は大きな意味で、原子力委員会からも当然そのアイデアをいただかなければいけないんですけれども、広報活動というのは国が背負っている部分が非常に大きい、というふうに思うんです。
   ですから、例えば今日整理をしていただいた2の部分で、「原子力防災対策への協力」という書き方をしていますね。間違っていたら田中先生に叱られるかもしまれませんが、そういう意味では広報活動も一義的にやっていただくというミッションではやはり違うと思うんです。当然いろいろなことをやっていただかなければいけないんですが、やるにしてもそこのところはちゃんと交通整理をしてやらなければならないと思います。法人の性格からして、やはり基本的には協力という形にならざるを得ないのではないか、そういうふうに思いますので、一言口をはさませていただいたんですが、そういうことではないんですか。

田中豊蔵委員   去年1年の政策アイテムを考えてみると、道路と特殊法人と郵政、日本中に重要な政策はこの3つくらいしかないような形で政治が進行している。小泉内閣が批判されている部分でもあるんです。ここで政治論をするとあまり良くないかもしれないけれども、私はこのテーマは政治論が重要だと思うんです。このテーマを政治論抜きに、いわゆる研究室の論議でしている限り国民的レベルの広がりは持ち得ない。「これほど政治的な重要なテーマはない。だからこそ私はここに出ているんだ」とずっと思って来ているわけです。口幅ったい言い方ですけれども、渡海さんらは既にがんばっておられるんですけれども、一層がんばっていただきたい。

西澤潤一委員   今まで何回か申し上げていることですが、どうもあまり受け取っていただけてないな、という印象があるので、申し上げたいんです。ちょうど今、田中さんと兒島さんのほうから同じようなご意見が出ましたので、そのお尻にくっついて申し上げますと、この法人というものがこれから日本が展開していくであろうところの原子力というものに対して十分な調査研究を実現しようというときに、周りが持ってなければいけないですね。ですから、原則としては先にそういうことをどんどんやっていくんだ、と。そのへんで例が出ると、いろいろと刺激的になってくるわけでございますが、核融合の問題よりも先にやらなければいけないのは「もんじゅ」ではないかと私は思っているんです。だめだということになれば別ですけれども。そういうときに、どういう考え方で現在の原子炉というものを十分に力を出させて活用するか、ということをまず優先的に考えておいて、その次に核融合というのが順序ですね。もちろん、研究を始めてから10年かかるものは、そのときから始めても間に合わないんですから、あらかじめ10年前からやっておかなければいけないということで、この前後関係はかなり複雑になりますが、本質的にはパート法などに対応するような技術が研究機関からいつでも出てくる、社会が必要としたときにちょうど間に合って出てくる、というふうになっているのが理想だろう、これは調べてなかったというのでは困る、というふうに私は考えております。
   これは私のひがみだと思ってくださってけっこうですが、これを見ますと、何か良い論文の書くとか、何とか賞をもらうとかいうことのほうが大事なんだと考えていらっしゃるのではないかな、という印象をもつんです。現実にいらっしゃるわけで、私のよく知っている原子物理学者という人は盛んにいろいろなことを反対にしに来るんです。この間までそういう講義をしておられた方が今度は反対に回っていらっしゃって、この頃は黙ってしまっているんですね。自分が間違っていたなら、間違っていたということを鮮明に言って、説を変えるのはけっこうだと思うんですが、時流に流されて右に行ったり左に行ったりしながらやっているというのは私は社会人としては落第だと思います。
   物理ではあるにしても、そういうことの基礎にはやはり自分たちが生活している社会というものに対する責任感をもっていることが必要ですから、そういうことについては発言をするならするで、相当慎重にやらなければいけないし、原子力工学者がいろいろ苦労していらっしゃるときに、場合によれば、見かねて「おれも手伝うよ」という人が出てきてもいいのではないか。一応これで危機を乗り切ったから、また基礎研究のほうに戻る、そういうふうな考え方の方がいらしてもむしろ当然ではないか、という気がするんです。
   いつも申し上げることでありますけれども、この原子炉技術を導入するときに、向坊先生あたりはご自分は論文を書くという時間も持てずに、学者としての研究という立場を全部犠牲にして集中されたということで、先生にとってはマイナスな面もたくさん出てきてしまったわけです。「論文が一つもないのか」ということで、いわゆる栄誉対象になりにくいですね。しかし、私はやはり人間的には向坊先生を大変尊敬申し上げているわけでございます。それで、私もこんなところへお手伝いに来ているわけで、ほかの方から言われたら、たぶん断わっただろうと思うんです。
   この原子力の新法人は、原子力工業というものが必要したときにデータがパッと間に合っているということが原則だ、ということをどこかに書いておいていただきたいですね。さっき7番目をつけろ、8番目をつけろ、というお話がありましたが、0番目でもいいんですけれども、それを出しておくということが実は非常に大事ではないか、という気がするんです。エネ庁のほうが国全体のエネルギー政策というのを見るんでしょうが、その中で原子力というものがそういう形で部分をちゃんと満たす、ということをやっていかない限り、日本の原子力行政というものはうまくいきっこないと思うんです。

伊達宗行委員   1のコメントを申しましたけれども、23をまとめて2つコメントしたいと思います。
   昨年8月にお出しになった格調高い今後のリレクションと比べて、3の1は矮小化されているのではないか、という気がします。
   まず3の「新法人の主要業務の実施の方向性」の「性」をお取りいただけませんか。方向性というのは、英語で言おうと思うと困ってしまうんです。というのは、方向性というのは非常にあいまいな日本語でありまして、こんなものはないんです。「方向」としていただきますと、後の項目はすべて、どういうふうに、どういうふうに、ということで動くと思うんです。
   そうしますと、「1.原子力の基礎・基盤研究等の推進」とするほうが方向がはっきりすると思うんです。
   それから、「原子力に直接関係するもの」の前に「常に新しい原子力の可能性を探るとともに」という1行を入れていただきましたら、基礎・基盤研究の8月の格調高いイメージに戻れると思います。その後は「原子力に直接関係するものに重点化して研究を実施」ということで、これは非常に大事ですし、お挙げにになった項目もけっこうだと思います。ただ、重点化を言うあまり、「重点化」という言葉が2度出てくるのはちょっと底が割れてしまうので、終わりのほうは「などを推進する」というふうにお書きになったらいかがかと思います。
   2番目の点は、原研に誤解していただかないようにしないといけないんですが、私は安全研究というもののイメージがもたらす社会的な効果でちょっと気にしていることが2つあります。安全研究とといった場合、社会一般の通念からいくと、「ほかは安全じゃないのか」というのが1つ、それからもう1つは、安全研究という旗を立てても、今、大体2年に1度は問題の原子力事件が起きております。これが減らないと、安全研究をしてもだめではないかと思われてしまうのがマイナスです。
   実は、現行の安全研究というのは、安全委員会のミッションもあって、いわばプロフェッショナルなフレームワークがある。これが社会の安全のセンスと必ずしも合わない。先ほど田中さんの発言もありましたけれども、社会性ということを考えたら、社会的な安全研究も旗に上げていただけないか。
   具体的にどういうことかといえば、今、約2年に1回問題の原子力の事象が起きております。決して事故とは申しませんけれども。事故もあります。最近は商用原子炉が古くなってきたので、この間のシュラウド問題、そういうことが増えてきています。2年に1回起きている原子力の問題点を半分に減らそう、例えばそういう旗を安全研究でお立てになったらどうか。これは言うは易しく、行うに非常に難しい。しかし、社会が要求している安全研究というのはそういうものだと思うんです。それで、4年に1度になったら大変な成功です。しかし、そのためにするべきことは非常にいろいろある。そういう角度から切り出すと、安全研究というのはまた別のシェアが出てくる。むしろそれが社会が要求しているシェアだろうと私は思います。
   ですから、プロフェッショナルな安全研究も賛成でございますけれども、そういう社会に密着した角度からやはりお考えいただくということが大事ではないか、
   この2点を3について申し上げたいと思います。

畚野信義委員   秋山先生が言われたように、これはかなり要点だけを書いておられるので、私自身、原子力は素人なので、あまり具体的にわからないところが多いんですけれども、1つは、例えば1の2のテーマの設定ですとか、5の「1.研究開発の進め方」というところで、プロジェクトの設定とか発足、さらには修正とか廃止というときに、ルールをちゃんとつくっておくべきではないかと思うんです。そのときの空気で行き当たりばったりにいくと、原子力というのは大きなプロジェクトですから、良くないのではないか。ただ、ルールというのは大体独り歩きするものですから、数字などを入れてしまうとかえってまずいんですけれども、そういうときの評価とか、判断の手順みたいなものをつくっておく必要があるかなと思います。
   それから1の3と後の人事制度にも関わることですけれども、「第三者評価」というのが出ています。R&Dの仕組みの中での評価というのは、大きく分けて、プロジェクトの評価と組織の評価と人の評価と3つあると思うんですけれども、これはたぶんプロジェクトの評価だけだろうと思うんです。プロジェクトの評価というのは、確かに外部の評価が必要だと思います。それから、組織のパフォーマンスの評価というのは、外部の評価をベースにして内部のマネジメントが決心することです。組織のパフォーマンスの外部の評価というのは碁や将棋の観戦者の岡目八目みたいなもので、その人たちが言ったとおり責任者が打って、負けても本人の責任で、それをを言った人の責任にならない、そういう性格のものです。最後に、ここは抜けているのではないかと思うんです。職場や職員のモラルを確保するのは人の評価です。これは内部の評価です。内部のマネジメントが責任をもってやらないといかん。評価に基づいた処遇をしないといかんですね。処遇は報酬だけではなくて、一番最後のところにあります人事制度も含めた処遇をきちっとリンクしてやる、という方針が組織として必要なような気がします。
   それから、私は原子力をよく知らないので、日本の原子力の国際的な力量というのは不明ですけれども、技術移転とか、国際貢献とか、いろいろあります。技術移転は国内向けが視点ですから、けっこうだと思うんですけれども、国際的には決して協力や貢献だけではなくて、国の安全から考えて、権利とか、もっと具体的にいえば、IPRの確保みたいなものは絶対に必要になってきます。やはりこういう視点を入れる必要があるだろうと思います。
   それから、ちょっとちょっときついかもわからないんですけれども、4に「極力固定経費を抑制する」とあります。これは言うは易くして、実際にはものすごく難しいんです。10年余り前にできたわりに小さい国立大学がスタートしたときに予算20億、事務局員16人でした。それなりにちゃんとやっていたんです。今、わずか4倍の80億の予算で180人の事務職員がいる。信じられないことが起こっている。こういうのがあちらにもこちらもあるのではないか。これから独立行政法人化するのにあたりどうするか、というようなことが中でも問題として認識されるようになっているようですけれども、特にこういうところは外の目を入れることが必要なのではないか、というふうに思います。

住田健二委員   火付け役をしたら、後はほとんど言いたいことを皆さんがおっしゃってくださったので、一番元にまた戻らせていただきたいんですけれども、秋元委員から「主務官庁とかいう名前を抜きにしても、原子力委員会にぜひリーダーシップを取って全体のことを見てほしい」というお話がありました。
   それに関連してですけれども、共通した性格を持っているものに総合科学技術会議というのがあります。それからランクは少し違うかもしれませんけれども、経済産業省の総合エネルギー調査会、そういう原子力委員会と同格に並ぶような諮問委員会がございますので、そういうところで原子力の政策を決めるときにぜひ話合いをするようなことを考えていただいて、そういう背景の下に、そういうものが支えて、この新しい新法人をやっていただきたい。原子力委員会だけがしゃかりきになって支えて、踏ん張ったのではだめなので、全体で見ていただきたいと思うんです。それが一つのお願いでございます。
   必ずしも合議が必要だという意味ではないんです。非常に恥ずかしいことですけれども、例えば原子力委員会と原子力安全委員会というのは、原子力委員会から分かれてできたのが安全委員会でございまして、連携が非常にうまく取れているはずなのに、実際には月に1回合同会議をやりましても、公知の差し障りのない話をしているだけで、あまり厳しい議論をしたことがない、あるいは避けていた、というのが本当だと思うんです。それが実態でございますので、そのへんも含めて、問題が発生したときには、そういう政府レベルの大きなところとぜひ話合いをしながらここを支えてください、というお願いを一つしておきたいと思うんです。
   もう一つは、皆さん非常に実務的なことをご心配くださっているので、私みたいにその中ではいずり回ってきた人間からすれば、うれしいことではあるんですが、逆にそれだけに大切なことは見落としてほしくないと思うんです。逆らったようなことを申し上げて恐縮です。先ほど「広報活動が必要だ」とおっしゃったんですが、確かにそうなんです。私も今いろいろな機会にお手伝いをしておりますけれども、実はもっと本質的なことは理科教育の問題なんです。国民の科学技術に対する理解がないものですから、いくら原子力だけわかってもらおうとしても無理な話なんですよ。そんな虫のいいことはないんです。たまたま文部科学省の会議で、副大臣がいらっしゃいますから、ぜひお願いしておきたいと思うんですけれども、やはり国民全体のそういうものに対する理解がなければ、そのときいくら上手に広報をして、わかったような気持ちになってくださるかもしれませんけれども、本質的にはわかってない。ですから、新法人が自分たちの業務に関連して広報活動は当然やるべきだと思いますし、アカウンタビリティーの責任の範囲だと思うんですけれども、新法人にまさか理科教育までやってもらおうとは思いません。副大臣もおっしゃったように、それは国の責任だと思いますから、ぜひ国の責任でそのへんはしっかりと支えるほうに回っていただきたい。これをお願いしたいと思います。

西澤潤一委員   昔に比べて、事故率は増えているのではないかと私は思っているんです。それはやはり職業責任というものがずいぶん低落してきてしまっている。これは少し豊かさに慣れて、たるんだという見方もできますけれども、自分が社会人として生きていくときに、どれくらい自分の仕事に対する責任があるのか、ということをもういっぺん自覚させるということが、事故率を半分にするとか、4分の1にするということに通ずる最大の鍵ではないか、というふうに私は思っております。そのほうもぜひお願いしたい。

秋元勇巳委員   今の人材の問題で私も一番心配なのは、これから原子力を支えていく技術屋をどういう形でずっと確保していくか。例えば、今度の「もんじゅ」の問題でも、裁判が終わるまでは少なくとも「もんじゅ」から電気を取り出すわけにはいかないわけですね。しかし、今もプルトニウムを扱う技術者というのがだんだん年を取っていくわけですし、その中でその技術のレベルをどうやって維持していくか、という問題があるわけです。それから、これからいろいろなサイクルが実用化していくわけで、今までそういう技術者も原研、動燃の中で少しずつ育ってきているわけですけれども、それを本当に民間に役に立つ形で使っていけるかどうか。
   もう一つは、例えば安全委員会、原子力安全・保安院の問題などで考えてみますと、今、原子炉の保安査察員は百何十人という人間が各原子炉あるいは施設に配属されているわけですけれども、配属されて、そこにずっとステーションしているだけでは保安の技術は上がらないんです。いろいろな機械を動かすことによって、いろいろな経験をし、失敗もして、技術が上がっていくわけですけれども、一番良い状態、何も起こらないのが安全の理想ですから、もし本当に安全な施設に配属されたら、失敗の体験も出来ないところにいることになるわけです。これでは安全技術は決してブラッシュアップできない。安全技術を支えていくには、この新法人がそういうようなプラットホームとしての役割を果たしていただかなければいけないんだろうと思うんです。
   私も保安院の方とも少しお話をしたんですが、例えば2年にいっぺんくらいは保安院の査察員の方が新法人に来られて、半年間新しい安全技術を全部習得され、場合によってはいろいろな施設をシミュレートした防災訓練もやられて、また帰っていかれる。そういうようなことをグルグル回していかれれば、安全技術は常に世界のトップを維持していくことができる。そういうような技術屋を育て、訓練し、技術を維持していくための機能をぜひ新しい新法人の中で考えていただけないだろうか。今、産業の中でも一番気になるところはそこなんです。
   もう一つは、そういうものを進めていく上で、国際的な枠組みというのをもう少し使うことがあっていいのではないか。秋山先生の報告の中にも随所に国際的な貢献というのが出てくるんですけれども、例えば今、「もんじゅ」は動かせなくなったけれども、動燃の人たちはロシアに行ってBN600を動かして、そこでいろいろな技術を高めているわけですね。この間、アメリカからアブラハム長官が来られて、ジェネレーション4をやりましょうということで「国際的に新しい炉の開発については協力してやっていきましょう」という話になっているわけです。ですから、そういう場を使っていけば、たとえ今の「もんじゅ」が不自由でも、それに必要な技術を周辺のいろいろな協力関係の中でつくり上げていくことができる。
   そういう意味では、国際センターといいますか、国際的に日本の原子力をリプリゼントするような組織、そういったものを新法人のミッションとしてひとつ考えていただけたらどうだろうか。これは、特に先進国などと一緒になって新しい原子炉を進めていくという面と、例えばアジア、これから進んでくる人たちのために新しい協力をしていく、そういう人たちに今の核不拡散の問題とか、安全技術も伝えていくというようなことも必要だし、そういうことのために国際的な枠組みをフルに利用して進めていく、そういう視点もあっていいのではないか、というような気がしまして、表現ぶりですけれども、そのあたりをひとつご配慮いただければ大変ありがたいと思います。

都甲泰正委員   「もんじゅ」につきまして2、3度議題に上りましたので、名古屋高裁で行政訴訟が敗訴いたしましたが、私どもサイクル機構の考え方を簡単にご紹介申し上げたいと思います。
   法律的には設置許可はまだ有効でございますので、地元のご理解と国民のご理解をいただきながら、改造工事に着手できるように、今、環境整備に最大限の努力をしているところでございます。お国のほう、あるいは関係の皆様方にもどうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

伊達宗行委員   都甲さんから今「もんじゅ」の話題が出ました。実は、前回のこの会で私は「『もんじゅ』は大丈夫か」という発言をしましたので、その締めくくりを含めて、ちょっと発言したいと思います。
   あの後、非常に短い時間でしたけれども、若干書類なども拝見して私なりには納得したんですが、その後に裁判の結果が出まして、実は先日、原研とサイクル機構合同の安全研究会というのをおもちになったときに、裁判の顛末と両方の主張の違いというのが出ておりました。それを拝見しての感想をちょっと申し上げておきたいと思います。
   細かな技術まですべて見通すという力も持っていませんし、経験もありませんが、方法論として、自然科学及びその技術というのはやはり経験科学であります。「常陽」というのは日本で20年前から、動燃時代から成功裏に運転されてきた。その実績と自信が表面に浮かんでこないんです。高裁の「これは危ない」「これは危ないかもしれない」「だからだめ」という論法に対して、反論ができるとすれば、「20年の経験でこれはここまでクリアしたから」というふうな論点があってしかるべきです。それからもっと前にいけば、「常陽」をつくる前に、どういうところまで解明しようと思って「常陽」をつくったか。「常陽」のためにやられた成果は何と何か。それでなお不十分なものは何か。不十分なものは「もんじゅ」に期待する。だからもんじゅ」はどうしても要るのだ。率直に言って、そういう経験科学的な積み上げが不足ではないか。法律論で最高裁でおやりになるんでしょうから、法律論でそんな技術の細かいことを挙げられないと思いますけれども、ほかの方へのアカウンタビリティーとしては、「常陽」でやられた成果、そこで超えられない新しい問題、それを「もんじゅ」でどう超えるか、「もんじゅ」で期待することができなかったら、もう一度試験炉をおつくりになる。実用の前におつくりになると言っておられたですね。それにはどこまで期待するのか。その技術と経験の継続性が見えないんです。ぜひこれをいただきたい、というふうに思っております。

青木利晴委員   新法人のミッション、こういうことについては、先ほどの国の政策も含めて、大変議論が活発にあったように思いますけれども、後半の経営、業務運営ということについてはほとんどなされてないと思います。畚野先生から先ほど一部ご意見があったわけですが、今日のようなこういうミッションを遂行するということに照らし合わせて、どういう体制なり運営の仕方をしたらいいかということについて、例えば民間的センスでいえば、事業本部制あるいは経営という言葉はプロフィットを追求するということから出てくるわけですけれども、そういうつもりで何か体制をつくっても、このミッションを考えますと、基本的には非常に大きな国としての政策の中でどういうふうに研究をし、かつ人材を育成していくか、そういう問題をどういう体制でやっていったらいいかというのは、ある意味ではほかの独立法人とはまた違った意味で具体的にもう少し検討すべきことではないかと思うんです。
   個々のことでいろいろ申し上げたいことはございますけれども、終わりの45で終わったということではなくて、これを受けて、またご議論されたらいかがかと思います。

丸山審議官   秋山先生から表題のご説明がありましたけれども、法人における検討に枠組みを与えるためのたたき台ということで、こういう方向で法人の中でよく検討をしていただいて、またその結果をここにフィードバックをして議論を深めていく、ということを想定しております。ご指摘の点、ごもっともでございます。

秋元勇巳委員   今、45のところで青木先生のお話が出ましたが、今まで何回も出てくることですけれども、廃止措置と廃棄物処理処分の考え方、この部分はこの法人の性格を決める上で非常に大きな問題のところだ、というふうに思います。私は本来なら、国鉄清算事業団のような形で、今の新しい前向きの研究開発とは別の組織でやるのが一番望ましいと思うんですけれども、それが不可能であれば、少なくとも別会計の制度で、これが新しい研究開発の足を引っ張らないようにその制度だけはぜひ何とかこの発足までにやっていただければ大変ありがたい、というふうに思っております。

丸山審議官   それでは、今日はたくさん貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。
   原子力委員会の点は、私どもは内閣府の総合調整に服する立場にございますので、この場で原子力委員会のあり方とかを直接議論することはなかなか難しいと思いますけれども、今日、先生方からいただいたご意見を何らかの方法で原子力委員会のほうにもお伝えしながら、原子力政策のほうの議論も深めていただき、この法人の制度設計も具体化していく必要があるのかな、というふうに考えております。
   それでは、特にご意見がないようであれば、最後に渡海副大臣のほうから締めのご挨拶を申し上げます。

渡海副大臣   本日も大変闊達なご議論をいただきまして、ありがとうございました。今日は聞かせていただいて、私自身も勉強になったなと思っております。いろいろな意味で、問題点の方向性というのがけっこうクリアになったのではないか。それも含めて、将来の取りまとめにどうやって反映していくか、こういうことをこれからしっかりとやらなければいけないのだろう、というふうに思っております。
   個々のご指摘について一言一言感想は差し控えさせていただきますが、一つだけ「副大臣……」という住田先生の意見がございました。理科離れというのは我々も大変心配をしております。私は一度落選をしておりまして、当選してから、これはすぐやらんといかんということで、党内にもかなりのプロジェクトチームをつくりまして、けっこうしっかりやらせていただいているつもりでございます。御存じではございましょうが、その中からスーパーサイエンスハイスクールとか、様々なメニューもつくっております。十分ではないかもしれませんが、やはり人材を育てなければだめだと思うんです。我々の子供の頃を考えてみたら、こうじゃなかったな、と。時代もありましょうが、理科系に行くほうがむしろいいんだ、というような時代に私は育ったものですから、そんなことも含めて、今後、教育の場でしっかりとした基盤はつくらせていただきたいと思います。河村君が教育の担当でございますので、しっかりと伝えたい、というふうに思っております。
   それから組織の問題、原子力委員会、安全委員会、経産省との絡みは、独断と偏見で言わせていただいたら、風通しを良くしていくというのはある意味で我々の仕事だ、というふうに思っております。長い間の霞が関の障壁というのはなかなか簡単には取れない、正直そう思っています。しかしながら、やはりそうではいけないのであって、原子力政策という意味では鳥瞰的にすべてがしっかりと絡み合っていなければいけない。要は、「これはあなたのところの責任だ」というようなことではなくて、しっかりそういうものが行われる、そういう形をどうやってつくるのかというのは、いろいろなことが起こるたびに、正直、最近とみに感じておりまして、今日のいろいろな先生方のご意見も参考にさせていただきながら、原子力委員会等ともよく話をさせていただいて、その中でこの法人が担うべき役割というのを最終的にきっちりと整理をさせていただきたい、というふうに思っております。
   次回は、今日ご議論いただきました様々な内容等も精査しながら、整理合理化の具体像、それから先ほど秋元委員からもお話がありました放射性廃棄物の処分問題など、経営基盤の確立に関わる重要課題について、少し具体的な作業を両法人合同で行っていただいて、その結果をまた秋山委員にご整理をいただくという形で詰めていくことが必要である、というふうに考えております。秋山委員には作業量が多くて大変でございますが、どうぞよろしくお願いをしたい、というふうに思っております。
   皆様におかれましても引き続き様々な点でご指導をいただき、また今後ともよろしくご協力をいただきますようにお願いを申し上げます。
   よろしければ、今日の会合はこれで終了させていただきたい、というふうに思います。

丸山審議官   次回の会合は、5月23日、金曜日を予定させていただきたいと思っております。場所その他につきましては決まり次第ご連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。
   それでは副大臣のほうからお話がありましたような考え方で今後の作業を進めていきたいと存じますが、最後に何かご意見ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
   それでは長時間どうもありがとうございました。これで今日の会議は終わりにさせていただきます。

渡海副大臣   どうもありがとうございました。



(研究開発局原子力課)

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