原子力二法人統合準備会議
第12回 原子力二法人統合準備会議 |
第12回 原子力二法人統合準備会議
日 時 2003年3月25日(火) 15:00〜
場 所 経済産業省別館10階 1028会議室
原子力二法人統合準備会議(第12回)議事録
1. | 日時 平成15年3月25日(火) 15:00〜17:00 |
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2. | 場所 経済産業省 別館10階 1028会議室 |
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3. | 出席者
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4. | 議事
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5. | 配付資料
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次の「現存の事業所・研究所の整理。統合」ということでございますが、東海研究所(原研)と東海事業所(JNC)の統合、それから大洗研究所(原研)と大洗工学センター(JNC)の統合ということでございます。これは地域的あるいは業務内容的にこの方向が合理的であるということかと思いますが、私が伺っておりますところでは、やはりそれぞれの事業所の安全規制あるいは行政的な面でなお検討を要すべき課題もあるやに伺っておりますが、方向としてこのような方向が望ましい、ということであろうかと思います。
次は、万全の安全確保、核物質防護対策のため、トップマネジメント直属の強力な権限を有する安全確保、核物質防護に関する統括責任者を置く、という考え方でございます。これのミッションは、安全確保と核物質に関して、ということでございます。
次の項目は、事業所の立地地域との共生のために適切な業務体制を確立する。特に立地地域とうまく円滑な交流、協力を進めていただき、いわば共生をするということで、それに必要な業務体制を強化していくことが肝要である、という点でございます。
一方、廃止措置とか、廃棄物の処理処分につきまして、やはりこれらを一元的に運営していく体制を確立する必要がある、ということでございます。
次は経営の在り方に関してのことでございますが、産業界、大学、地元の有識者の方々の意見を徴する場を設けて、原子力の幅広い社会的な側面を考慮しながら、さらに人文社会科学系の専門家の方の知見も活用して、外部に開かれた運営を実現していく、そのような場、機能が極めて望ましい、という点でございます。
大きな第2番目のくくりは「経営基盤の確立」に関することでございます。
廃止措置と“負の遺産”と呼ばれております廃棄物の処理処分の考え方でございますが、廃止措置と処理処分に関するコストの総額を見積もることが先決でございますし、研究開発事業の規模とのバランスを考えて、そういったコストの総額をいかに年度的にならしていくか、展開していくか、という見通しを準備する必要がある、ということでございます。これらにつきましては、現在いろいろと検討が始まっていると私は伺っております。それから資金確保のために制度的な措置が必要かどうか、というあたりの検討も関連して課題となっているわけでございます。
経営基盤につきましては、限られた資源の下で我が国唯一の総合的研究開発機関としての使命を果たすために、極力固定経費を抑制するという視点が極めて重要でございます。当然でございますが、そのために様々な工夫をこれから当事者の方のみならず、関係の産学官の方々のお知恵、お力をちょうだいしながら、こういう方向で進めていくことが必要である、そのような理解をしております。
は(参考)という位置づけで、キーワードで恐縮でございましたが、ご報告申し上げました内容につきまして、いただきました意見のうちから主なものをピックアップいたしました。内容あるいは表現とも十分に練れたものでないという点はあらかじめご容赦をいただきたいと存じますが、幾つかのポイントをごく簡単に申し上げますと、「研究開発の進め方」につきましては、競争的な研究環境、流動的な運営の仕方、特に人事システムにつきまして外部との交流も含めた流動的な運用が望ましい、それからスクラップアンドビルドを進めていく、ということでございます。また、プロジェクトにつきましては、適切な評価を基に次のステップにいくGO/NO
GOの判断をタイミング良く進める、ということが必要ということでございます。それから関係行政庁、原子力安全委員会の要請に基づいて行う安全研究につきましては、例えば独立したセンター組織として基礎・基盤研究と連携する位置づけで実施する、という案も考えられる、ということでございます。
第2番目は「産業界及び大学との連携」でございますが、技術移転、人材移転に必要な基盤あるいはルールづくりをこれから目指す必要がある、ということが第1点でございます。大学との連携につきましては、これまで両法人さんに私も個人的に大学人として大変お世話になりまして、利用させていただいたことが多々ございますけれども、こうした場を利用者の要望、意見をさらに適切にお受けいただけるような場を設置していただきまして、お互いにプラスになるように努めていただければ、ということかと思います。その次は研究情報体系的に収集する体制、特に新法人から研究の状況あるいは成果も含めました発信機能を強化していかれてはいかがかということで、特に国際的にこれからより見える研究開発機関ということでは、すべからくどの組織もそうでございますが、研究の成果とか、研究論文も国際的な舞台を視野に発信していくという観点が重要である、ということかと思います。
第3番目は「安心、信頼性の醸成」でございます。先ほども申しましたけれども、人文科学系の方々と交流あるいは一部登用していただくということも含めた知識、関連の力の活用を図っていただく、ということでございます。
第4番目は「人事制度」ということでございます。
ごく限られた時間で大変雑ぱくなご報告で恐縮でございましたが、概略は以上でございます。言葉に表せない不備な点につきましては、内容の不備ではございませんで、私のご報告の言葉の能力の限界でございます。これをご準備いただきました方々には大変な作業を進めていただきました。お役所の方々に対しても大変お力を尽くしていただきましたことを、この場をお借りして感謝申し上げて、私のご報告といたします。
ありがとうございました。
丸山審議官 秋山先生、どうもありがとうございました。
それでは、今の秋山先生からのご報告に対しまして、ご質問、ご意見等何でもけっこうでございますので、ご自由にご議論いただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
住田健二委員 全体的なことでお伺いしたいんですけれども、の国の関与するところで「主務大臣」という言葉が出てまいります。新しくできる新法人を管理、主導される省庁は、文部科学省と経済産業省が入るのか、入らないのか、この文章だけ読んでいますと、はっきりしないんです。これまでの経験からいいますと、日本原子力研究所は文部科学大臣が掌握されていますけれども、核燃料サイクルのほうについては両省庁にまたがっていて、テーマによってその都度主導される官庁が違う、というふうに了解していたんですが、そういう理解でよろしいんでしょうか。後々いろいろな研究テーマの問題で前提条件になりますから、そこのところをはっきりしてから議論させていただきたいと思いますので、まずその点をご質問させていただきます。
丸山審議官 これは役所から直接正確にお答えいただきたいと思います。
説明役 いろいろ事業がございますので、その事業に応じて文部科学省プラス経済産業省の関与があるか、ないか、というようなことだと理解しております。ここはごく一般的に独法の中期目標は主務大臣がつくります。それから中期計画はそれに沿って独法自身がつくって、主務大臣が認可します。その関係を表現したかったということでございます。
秋元勇巳委員 主務大臣、主務官庁というのがどういう位置づけか、特に新法人の場合にわかりにくいんですけれども、私自身はこうじゃないかと思っているんです。まず原子力研究所、それから原子燃料公社、その後、動燃になり、今の核燃料サイクル開発機構ができたいきさつを考えてみますと、最初に原子力を国がナショナルプロジェクトとして立ち上げていくときに原子力委員会というのができて、そこで国の原子力開発推進の総合戦略をつくっていこう、それをインプリメンテーションをするための機関として動燃などができた、というふうに私は解釈をしているわけです。
今後この新法人は原子力を推進していく日本での唯一の法人と言ってもいいような位置づけになるわけですが、その基の基本的な構造は崩れていないのではないか。そのために原子力委員会は5年ごとに中期計画をお出しになり、それをベースにして今までも研究開発が進められてきたのではないか、というふうに思っているわけです。
その後、原子力委員会の位置づけとか何とかいろいろ変化はしていますけれども、基本的枠組みでいうならば、私は主務官庁という法律的な意味はわかりませんけれども、原子力を進めていく上での主務官庁といえば、やはり原子力委員会である。その原子力委員会が出される基本方針にのっとって、その中で文科省が担当される部分については文科省が細部の計画をお出しになるということになるだろうし、通産省がお出しになるということもあるだろうし、将来はまた原子力に関係してきて、厚生省とか、ほかの分野でもそういうことが出てくるかもしれませんけれども、やはり国の総合戦略というものを一本にまとめて、その総合戦略に基づいて進めていく唯一の研究所であるという立場を考えると、そういう枠組みをこの中でどう読むか、というのが非常に大きな問題だろうと思うんです。
そこをきちっとしていかないと、今までも科学技術庁と通産省との間で引っ張り合いっこになったり、あるいは間が抜け落ちてしまったり、そういうような形で総合戦略としての一貫性、合理性がなかなか保たれなかったということがあるので、その問題がこの後でもまだずうっと引き続いていってしまうと思うんです。やはりここで国としての原子力を総合的に進めていく必要性、そのための原子力委員会の役割についてもう一回議論をしていただいて、その上で主務大臣とか何とかいう一般の法令問題に入っていくということでないと……。初めの形式論から入ってしまうと、話が逆転してしまうのではないか、という気がしてしょうがないんですけれども、そのあたりは秋山先生、ご議論をなされたことはおありですか。
秋山守委員 そこはまだやっておりません。前回、第11回議事録の22ページが今のご指摘のポイントに関連するところであろうかと思います。要するに、原子力委員会の位置づけ、あるいは原子力委員会の下での研究機関の在り方ということで、私の理解では今の住田先生、秋元先生のご指摘の点がこれに関係していると思いますが、前回のこの議論以降、さらに結論に向けた、詰めた議論を特にこの作業会で進めたということはございません。全体の準備会議でのご意向をさらにもっと高い次元でぜひご反映いただきたい。作業会はそこまでなかなか……。
秋元勇巳委員 その意味では、の1に「国が定めるべき事項と法人の裁量に委ねられるべき事項との仕分け」というのがありまして、最後の7で「原子力委員会の定める長期計画、原子力安全委員会が定める安全研究年次計画の中期目標への反映」とありますけれども、「反映」ですと、委員会というのはただ意見を言うだけで、それをどうするかというのは主務官庁の裁量でやるということで、原子力委員会はアドバイザー的な役割というふうに読めないことでもない。私はやはり1と7は一つの一体的な取組みとして議論をしてやっていかないといけないのだろうと思っているんです。そうでないと、原子力委員会の今までの位置づけは崩れてしまうわけですね。それで本当にこれからの日本の原子力研究をやっていくのにいいのか、私は非常に危機感をもっております。
秋山守委員 本日ご参考までに原子力委員会でのご検討の内容をお配りいただいているかと思いますが、原子力委員会でも両法人を含めて、いろいろな考え方、具体的な計画等が挙がってきた場合には、それを受けて原子力委員会としてご判断なり、ご指導なさるということかと思いますが、まとまったものを原子力委員会が受けるということだけでなくて、原子力委員会としての基本的な考え方、政策というものに照らして、さらにこちらの内容についてご意見を申される、あるいは必要なところはその枠組みを押さえていく、そういうご議論が進んでいる、というふうに私は理解しております。
住田健二委員 原子力委員会も原子力安全委員会も諮問委員会でございまして、行政委員会ではございません。したがって、法律的にはいわば勧告権しかないので、やはり主務官庁というのがはっきりしないといけないわけです。原子力委員会にしても、原子力安全委員会にしても、いろいろ意見は言えますけれども、自分たち自身が決定する権限というのは与えられておりませんから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。ですから、主務官庁をあいまいにしておきますと、両委員会あるいはほかの審議会もいろいろ勝手な注文をつけますけれども、結局、実行段階になると、所轄の主務官庁は適当に取捨選択されて、言うことを聞いてもらえないということになりますので、その点ではもう一回ここで原子力委員会の長期計画に対するものをはっきりうたっておくということは非常に重要なことだと思います。
丸山審議官 私の理解では、今、住田先生がおっしゃったように、独立行政法人の構造からいって、原子力委員会が主務官庁になることはたぶんないと思います。ただ、秋元先生が言われたように、原子力委員会の政策をいかに適切に反映していくか、というところのメカニズムは今後きちんと詰めて、法律でどう担保するかも含めて、やらないといけない。
それから主務官庁の問題は、先ほど住田先生が解説していただきましたように、今のままであれば、経済産業省と文部科学省が一緒に共同で監督しているという部分がありますが、この問題は文部科学省だけの意見というわけにいきませんので、経済産業省ともよく相談しながら今後詰めていかなければいけない。役所の間でその話合いを今後しなければいけませんので、ここはあえて主務大臣と書いたつもりでございます。
伊達宗行委員 既に議論も出ておりますが、についての問題点は、原子力委員会というのが往年の権威を失いつつあるということで、これは拭うべくもないと思うんです。これは憂うべきことであって、前は科学技術庁が全面的にバックアップしたんですよ。その体制がなくなって、下が切れましたね。そうすると、メンバーは大変立派な方で涙ぐましい努力をしていることはわかりますけれども、この問題が残っている限り、原子力委員会を上に立て、その旗の下に法人は進め、という絵はなかなか描けない。それが一つ。
それからもう一つ、住田先生も言われましたように、もう少し突っ込んでいえば、例えば「もんじゅ」についていえば、これができた暁にその電力を売るということになると、経済産業省が必ず絡んでくるんですけれども、例えば今度の裁判のようなことがあって、より試験炉的な性格になってしまえば、これはわかりません。その出た電力を売らないとなれば、文部科学省の一つの管轄の中で処理できるということにもなるはずです。ですから、このへんの問題は、今後どこまでフレキシブルに対応できるか、ということが非常に大きいと思うんです。それを十分お考えいただいて、で矛盾のない合理的な解決を期待したい、というふうに思います。
秋元勇巳委員 いつもこの会議で申し上げているんですけれども、特に原子力研究の場合は、最終的に民間が産業技術として電気を出し、放射線の利用をし、そういうところに技術移管をされていかなければいけないわけですね。そういう民間の産業と関わりをもっておられるのは経産省である。そういう意味では、入口は文科省であるけれども、出口は経産省である、という形はこの研究所の場合変わらないですね。それでは2つ並べておくのかというと、ただ2つ並べておいてもその中で調整機能がなかったら、動かないわけです。
私も法律屋ではないものですから、原子力委員会が主務官庁になれるか、なれないかというような意味では、私の言い方は非常に乱暴なのかもしれないんですけれども、今までの原研の生い立ち、あるいは原子力の研究開発の生い立ちというところまで戻って考えれは、今、往年の力がなくなったとおっしゃいましたけれども、正にそうなので、やはり原子力の委員会がもう少し力を取り戻していただいて、原子力委員会の旗の下に現実にインプリメンテーションは文科省、経産省が手を取り合ってやっていただく、そういう枠組みをつくっていただかないと……。
この法律というのは、もともと主務官庁の中で取り仕切れるような程度の大きさの研究開発をやっていくような法人とか、そういう事業をやっていくための法人にとっては非常にいいんですけれども、そこに入り切らないようなものについてどうするか、ということで立ち入っては考えてないわけです。法律がこうだからということで、かえって間尺に合わないような小さな着物を着せてしまったら、この研究開発はつぶれてしまうということがあるわけで、ここはやはりきちっともう一回整理をしておく必要があるのではないか、という気がします。
田中豊蔵委員 私は第1期のこの委員会からずっとこの論議を聞いていて、その上に立って秋山先生のこのまとめを拝見して、ご苦労されていることはよくわかるんですが、ひとつぜひこうすべきではないかと感じたのは、の「新法人の主要ミッションの整理」で「原子力の基礎……」から「研究成果の普及」まで6つあるわけですが、7つ目にそのトータルとして「広報活動の抜本的充実と展開」というのを加えてほしい。
当たり前だといえば当たり前で、「それぞれがやるんだ」と言われるかもしれませんが、ミッションの中に「広報活動の抜本的重視と展開」というものを入れることの意味は大きいと思うのです。今、秋元さんが提示された問題を含めて、今後の原子力のトータルとしての唯一の、しかも世界的に見ても本当にすばらしいエクセレンスセンターをつくっていこうというわけですね。そのためには、第1期のいろいろな論議を振り返って考えてみると、いろいろな先生が言われたのは(私も言ったんですが)、昭和30年代、1950年代の日本の原子力の勃興期の燃えたぎるような原子力の平和利用に対する情熱がなぜ今日、いろいろな時間的経過の中で、さっき言われたように、若い人が危機感をもつような状態になったか。あるいは渡海先生が言われた国民の理解が大事で、説明責任を果たしていかなくてはいけない。ということは、裏返せば、今くらい国民の理解が希薄になったときはない。原子力の平和利用が戦後、日本に起こってから最悪の状態にいるというときに、正にこの2つの組織を統合して新しいシナジー効果も発揮して、すばらしいものをつくっていこうというからには、国民の理解と支持を集めるための抜本的な広報活動を組織的に展開する。これからどういう政党が与党になるか流動的ですが、少なくともそういう政治の変動を超越した部分で、日本の長期的国益に沿った広報、国益に沿ったこの組織のありようについて国民に日常的に訴える。
今度のいろいろな電力会社の不祥事の反省というか、いろいろな方の話を聞くと気がつくのは、専門家の集団と専門家以外のマネジメントの間で、専門家は専門家で自信をもってやっていた。しかし、一つの組織の中でも十分な意思疎通が行われない時間がけっこう長く続いてきた。国民との関係でいっても、いろいろな事件がありました。国際的にもあったし、国内でもあってはならないような事件がありましたが、それだけではないんです。事件が直接的な引き金にはなっているけれども、広報、宣伝の日常的な努力をどれほどしていたか、ということをこのスタートに抜本的に考え直すことが本当に必要だと思うんです。これはミッションの重要な一つである。つまり、それぞれのテーマの研究はもちろんですけれども、正に広報、宣伝活動こそが重大なミッションだ、という認識を今こそもつべきだと思うんです。
例えば、私は昨日テレビを見ておりました。そうしたら、中山太郎さんが予算委員会でなかなかいい質問をしたんです。今度のイラク戦争の関係で日本の石油などの事情の質問をする中で、「アメリカとロシア、プーチンとブッシュは昨年のサミット以降、エネルギー問題で相当頻繁に話し合って、言ってみれば、これが昨年のサミットの重要なテーマでもあった。これからイラクの戦争がどう終焉しようとも、エネルギー問題というものがそれぞれの国益がぶつかり合う大変なテーマになる。そういうことについて首相はどう思いますか」と。私は小泉さんがきっと良いことを言うのではないかと内心期待して聞いていたら、非常に簡単に「再生可能なエネルギーを含めて、いろいろ考えていきたい」というようなことをおっしゃっておりました。残念なことに、原子力のゲの字もありませんでした。
私は小泉さんを批判するために今しゃべっているわけでは全くなくて、小泉さんならずとも、このいろいろな事件が起こったとき、政府自民党のヘッドクォーターからどれほど日本の総合的な国益を原子力と結びつけた形で批判を恐れず、積極的に国民に意見を述べた人がどれほどいるか。ほとんどいない。電力会社に任せるか、あるいは原子力委員会とか、ここの会議とか、そういうところでは非常に熱心に問題をどういうふうに解決しようかと論議しているけれども、残念ながら……。渡海さんや大野さんは非常に熱心にやられていると思いますけれども、トータルとして政府、自民党というか、政治のレベルでいまだに前向きの建設的な話が十分に行われていると私には思えない。
そういうことを含めて、ぜひこのミッションの中に「広報活動の抜本的重視と展開」ということを加えるべきです。単に課ができるだけではなくて、役員クラスを含めて、専門家が専門語を使ってしゃべるのではなくて、本当に広報の専門家を……。例えば、私は全く無知ですが、新聞社にはテクニカルタームを理解し、大学の原子力工学とか、そういうものを出て、科学部関係で仕事をしている人もいるわけです。そういう人を積極的に活用したりしながら、今までの発想をガラッと変えて、国民に直接的に訴えて、前向きに事故などの後ろ向きの対応ではないことをやっていく。今度の統合は正にそういう良いチャンスだと思うんです。
秋元勇巳委員 今、田中さんがおっしゃったお話と、秋山先生がこの中で「人文科学系の研究者あるいは社会科学系の研究が必要だ」ということを何回か言っておられることと非常に密接な関係がある話だと思うんですけれども、3つ目の「安全研究、核不拡散研究…」は、これから日本が燃料サイクルを本当にやっていく上では非常に大事な研究だと思うんです。
しかし、残念ながら、今までの原研の中での安全研究、核不拡散研究というのは技術の面で終わってしまっている。核不拡散は技術だけではなくて、政治の問題であるし、国際関係の問題であるし、そこが技術と一緒にならなければ、周りの国も納得してくれるような核不拡散の体系はできてこないわけですし、周り人たちも「日本の核不拡散体制は十分だ」と認めてくれない。
安全も同じで、安全の技術はできていても、それを社会に安心をもって取り入れてもらえる枠組みができないとだめなわけです。ですから、ただ人文科学系の先生たちが例えばこういう委員会に何人かおいでになって、時折の判断でいろいろ言われるというのではなくて、原研の中にそういう部門をつくることが必要ではないか。技術屋と一緒に人文社会科学系の人たちがいて、ある程度の政策提言ができる。政策調整もやれる。社会に対しても発信ができる。そういう政策調整機能を持ったようなグループを新しい法人の中に持てば、例えば今の原子力委員会が新しい長期計画を出そうとしても、そのための素材はそこから出せるわけです。昔、伊達先生がおっしゃったように、科学技術庁と原子力委員会が一緒になって、科学技術庁が知恵を出して、原子力委員会がそれを使えた時代と同じようなことが今度またできるのかもしれないし、そういうものもし新しく考えていただければ、今の田中さんのお話も生きるのではないか、そんな感じがいたしました。
田中豊蔵委員 もう一言ぜひ言わせてほしいのは、北朝鮮の問題が核を巡って今後相当新しい展開をする可能性があります。そういう中で、日本が唯一の被ばく国として、原子力の平和利用に対しては「だからこそ世界の原子力の平和利用をリードするんだ」という気概と実質をこれからやっていく。これは言葉で言うのは簡単ですけれども、相当大変な力と頭といろいろな条件が必要だと思うんです。唯一の被ばく国であるからこそ、平和利用に対しても全力を挙げていくんだという点は、ミッションの中で正に日本独自の範疇なんです。日本に比肩する先進国はみんな原子爆弾を持っている。核兵器を持っている。そういう中で、私は日本は核兵器を将来的に持ってはならない、絶対そういうことはあってはならないと思います。ところが、一般の国民の中には核の平和利用と核兵器の問題とを必ずしも峻別して理解されていない部分というか、理解しながらもそのへんがちょっとあいまいになって、核拒絶反応みたいなものがあることも事実なんです。
そういう意味で、普通の会社が営業品目を広報でやるという以上のものが、この組織には国民に対する責任としてもある、というふうに思うので、ぜひ力を入れてほしい。
兒島伊佐美委員 私ども電力は、2つの法人の成果をちょうだいしながら、現場でそれを具体的な姿に現しながら運転をしていく、そういう任務を背負っているわけであります。
今の田中先生の「国民の理解の面でこのミッションの中に入れたらどうだ」というご提言は、誠にタイムリーで、大変重要だと思って、私どもは本当にうれしく、ぜひそのように入れていただきたい。
原子力を振り返ってみたときに、今、先生がおっしゃったように、原子力を我が国に導入するときは、諸先輩の燃えるような情熱で導入をしてきた。そして、幾つかの技術開発をしながらやってきた。その後、オイルショックのときに代替エネルギーの開発ということで、原子力が脚光を浴びて、もう一度大きな山があって、それの導入を一生懸命やってきた。そういうことで、やはり大きなエネルギー、情熱が必要だったのだと思います。今ここにきて原子力は、サイクル、プルトニウムを使う、という次のステージに入った。「もんじゅ」につなげていく、という大きなロマンといいましょうか、計画に挑戦しようとしているときに入った。このときにもう一つ燃えるような情熱で国民全体にそれを知らしめていく、ということを今しなかったならば、これはなかなか理解していただけない。
この二法人の統合というのは、財政が豊かでないから統合ということもあるんですが、合体して新しい体制をつくって力強く進んでいく、そういう合体なんだ、こういうふうに思って、これがチャンスだと思うんです。今、原子力は逆風が吹いていますが、逆風もチャンスでありまして、逆風のエネルギーでも使えば、いくらでも前に進めるのであります。新法人統合と併せて、大きな広報をしていくミッションをこの新法人にしょっていただきたい。
先ほどから出ている主務大臣でありますが、私どもは今、両方の省のお世話になっております。六ヶ所村は経済産業省の管轄であります。それから、高レベル放射性廃棄物のNUMO(原子力発電環境整備機構)も経済産業省の管轄であります。しかしながら、そこで使う技術は、二法人で開発していただいたものをいただいてやっているわけであります。まだお願いする開発分野が幾つか残っているわけでありまして、そういう意味では両省の力を合わせたご指導がなければ、我々のプロジェクトは進まない。特に「もんじゅ」につなげていく、あるいは再処理してプルトニウムを使って、それでまたつなげていく、この分野はぜひとも両省の力を合わせたご指導を賜りたい。そういう意味で、この新法人の中にどういうふうに書き込んでいったらいいかちょっとわかりませんが、専門的領域になると思いますが、ここはその趣旨をぜひ反映をしていただきたい、こんなふうに思います。
もう一つは、原子力委員会は力強い原子力委員会になっていただかなければいけない。私ども事業者として少し口幅ったいものの言い方でありますが、これは切望してやまないところであります。これを力を合わせて応援をしていきたい、こんなふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。
渡海副大臣 これは私の誤解があるかもしれませんが、広報活動等は新しい法人にも当然やっていただかなければなりません。与えられたミッションに対してしっかりと安全性を証明していくとか、そういうことは大事なことだろうと思います。しかし、私は大きな意味で、原子力委員会からも当然そのアイデアをいただかなければいけないんですけれども、広報活動というのは国が背負っている部分が非常に大きい、というふうに思うんです。
ですから、例えば今日整理をしていただいた2の部分で、「原子力防災対策への協力」という書き方をしていますね。間違っていたら田中先生に叱られるかもしまれませんが、そういう意味では広報活動も一義的にやっていただくというミッションではやはり違うと思うんです。当然いろいろなことをやっていただかなければいけないんですが、やるにしてもそこのところはちゃんと交通整理をしてやらなければならないと思います。法人の性格からして、やはり基本的には協力という形にならざるを得ないのではないか、そういうふうに思いますので、一言口をはさませていただいたんですが、そういうことではないんですか。
田中豊蔵委員 去年1年の政策アイテムを考えてみると、道路と特殊法人と郵政、日本中に重要な政策はこの3つくらいしかないような形で政治が進行している。小泉内閣が批判されている部分でもあるんです。ここで政治論をするとあまり良くないかもしれないけれども、私はこのテーマは政治論が重要だと思うんです。このテーマを政治論抜きに、いわゆる研究室の論議でしている限り国民的レベルの広がりは持ち得ない。「これほど政治的な重要なテーマはない。だからこそ私はここに出ているんだ」とずっと思って来ているわけです。口幅ったい言い方ですけれども、渡海さんらは既にがんばっておられるんですけれども、一層がんばっていただきたい。
西澤潤一委員 今まで何回か申し上げていることですが、どうもあまり受け取っていただけてないな、という印象があるので、申し上げたいんです。ちょうど今、田中さんと兒島さんのほうから同じようなご意見が出ましたので、そのお尻にくっついて申し上げますと、この法人というものがこれから日本が展開していくであろうところの原子力というものに対して十分な調査研究を実現しようというときに、周りが持ってなければいけないですね。ですから、原則としては先にそういうことをどんどんやっていくんだ、と。そのへんで例が出ると、いろいろと刺激的になってくるわけでございますが、核融合の問題よりも先にやらなければいけないのは「もんじゅ」ではないかと私は思っているんです。だめだということになれば別ですけれども。そういうときに、どういう考え方で現在の原子炉というものを十分に力を出させて活用するか、ということをまず優先的に考えておいて、その次に核融合というのが順序ですね。もちろん、研究を始めてから10年かかるものは、そのときから始めても間に合わないんですから、あらかじめ10年前からやっておかなければいけないということで、この前後関係はかなり複雑になりますが、本質的にはパート法などに対応するような技術が研究機関からいつでも出てくる、社会が必要としたときにちょうど間に合って出てくる、というふうになっているのが理想だろう、これは調べてなかったというのでは困る、というふうに私は考えております。
これは私のひがみだと思ってくださってけっこうですが、これを見ますと、何か良い論文の書くとか、何とか賞をもらうとかいうことのほうが大事なんだと考えていらっしゃるのではないかな、という印象をもつんです。現実にいらっしゃるわけで、私のよく知っている原子物理学者という人は盛んにいろいろなことを反対にしに来るんです。この間までそういう講義をしておられた方が今度は反対に回っていらっしゃって、この頃は黙ってしまっているんですね。自分が間違っていたなら、間違っていたということを鮮明に言って、説を変えるのはけっこうだと思うんですが、時流に流されて右に行ったり左に行ったりしながらやっているというのは私は社会人としては落第だと思います。
物理ではあるにしても、そういうことの基礎にはやはり自分たちが生活している社会というものに対する責任感をもっていることが必要ですから、そういうことについては発言をするならするで、相当慎重にやらなければいけないし、原子力工学者がいろいろ苦労していらっしゃるときに、場合によれば、見かねて「おれも手伝うよ」という人が出てきてもいいのではないか。一応これで危機を乗り切ったから、また基礎研究のほうに戻る、そういうふうな考え方の方がいらしてもむしろ当然ではないか、という気がするんです。
いつも申し上げることでありますけれども、この原子炉技術を導入するときに、向坊先生あたりはご自分は論文を書くという時間も持てずに、学者としての研究という立場を全部犠牲にして集中されたということで、先生にとってはマイナスな面もたくさん出てきてしまったわけです。「論文が一つもないのか」ということで、いわゆる栄誉対象になりにくいですね。しかし、私はやはり人間的には向坊先生を大変尊敬申し上げているわけでございます。それで、私もこんなところへお手伝いに来ているわけで、ほかの方から言われたら、たぶん断わっただろうと思うんです。
この原子力の新法人は、原子力工業というものが必要したときにデータがパッと間に合っているということが原則だ、ということをどこかに書いておいていただきたいですね。さっき7番目をつけろ、8番目をつけろ、というお話がありましたが、0番目でもいいんですけれども、それを出しておくということが実は非常に大事ではないか、という気がするんです。エネ庁のほうが国全体のエネルギー政策というのを見るんでしょうが、その中で原子力というものがそういう形で部分をちゃんと満たす、ということをやっていかない限り、日本の原子力行政というものはうまくいきっこないと思うんです。
伊達宗行委員 のコメントを申しましたけれども、
、
をまとめて2つコメントしたいと思います。
昨年8月にお出しになった格調高い今後のリレクションと比べて、の1は矮小化されているのではないか、という気がします。
まずの「新法人の主要業務の実施の方向性」の「性」をお取りいただけませんか。方向性というのは、英語で言おうと思うと困ってしまうんです。というのは、方向性というのは非常にあいまいな日本語でありまして、こんなものはないんです。「方向」としていただきますと、後の項目はすべて、どういうふうに、どういうふうに、ということで動くと思うんです。
そうしますと、「1.原子力の基礎・基盤研究等の推進」とするほうが方向がはっきりすると思うんです。
それから、「原子力に直接関係するもの」の前に「常に新しい原子力の可能性を探るとともに」という1行を入れていただきましたら、基礎・基盤研究の8月の格調高いイメージに戻れると思います。その後は「原子力に直接関係するものに重点化して研究を実施」ということで、これは非常に大事ですし、お挙げにになった項目もけっこうだと思います。ただ、重点化を言うあまり、「重点化」という言葉が2度出てくるのはちょっと底が割れてしまうので、終わりのほうは「などを推進する」というふうにお書きになったらいかがかと思います。
2番目の点は、原研に誤解していただかないようにしないといけないんですが、私は安全研究というもののイメージがもたらす社会的な効果でちょっと気にしていることが2つあります。安全研究とといった場合、社会一般の通念からいくと、「ほかは安全じゃないのか」というのが1つ、それからもう1つは、安全研究という旗を立てても、今、大体2年に1度は問題の原子力事件が起きております。これが減らないと、安全研究をしてもだめではないかと思われてしまうのがマイナスです。
実は、現行の安全研究というのは、安全委員会のミッションもあって、いわばプロフェッショナルなフレームワークがある。これが社会の安全のセンスと必ずしも合わない。先ほど田中さんの発言もありましたけれども、社会性ということを考えたら、社会的な安全研究も旗に上げていただけないか。
具体的にどういうことかといえば、今、約2年に1回問題の原子力の事象が起きております。決して事故とは申しませんけれども。事故もあります。最近は商用原子炉が古くなってきたので、この間のシュラウド問題、そういうことが増えてきています。2年に1回起きている原子力の問題点を半分に減らそう、例えばそういう旗を安全研究でお立てになったらどうか。これは言うは易しく、行うに非常に難しい。しかし、社会が要求している安全研究というのはそういうものだと思うんです。それで、4年に1度になったら大変な成功です。しかし、そのためにするべきことは非常にいろいろある。そういう角度から切り出すと、安全研究というのはまた別のシェアが出てくる。むしろそれが社会が要求しているシェアだろうと私は思います。
ですから、プロフェッショナルな安全研究も賛成でございますけれども、そういう社会に密着した角度からやはりお考えいただくということが大事ではないか、
この2点をについて申し上げたいと思います。
畚野信義委員 秋山先生が言われたように、これはかなり要点だけを書いておられるので、私自身、原子力は素人なので、あまり具体的にわからないところが多いんですけれども、1つは、例えばの2のテーマの設定ですとか、
の「1.研究開発の進め方」というところで、プロジェクトの設定とか発足、さらには修正とか廃止というときに、ルールをちゃんとつくっておくべきではないかと思うんです。そのときの空気で行き当たりばったりにいくと、原子力というのは大きなプロジェクトですから、良くないのではないか。ただ、ルールというのは大体独り歩きするものですから、数字などを入れてしまうとかえってまずいんですけれども、そういうときの評価とか、判断の手順みたいなものをつくっておく必要があるかなと思います。
それからの3と後の人事制度にも関わることですけれども、「第三者評価」というのが出ています。R&Dの仕組みの中での評価というのは、大きく分けて、プロジェクトの評価と組織の評価と人の評価と3つあると思うんですけれども、これはたぶんプロジェクトの評価だけだろうと思うんです。プロジェクトの評価というのは、確かに外部の評価が必要だと思います。それから、組織のパフォーマンスの評価というのは、外部の評価をベースにして内部のマネジメントが決心することです。組織のパフォーマンスの外部の評価というのは碁や将棋の観戦者の岡目八目みたいなもので、その人たちが言ったとおり責任者が打って、負けても本人の責任で、それをを言った人の責任にならない、そういう性格のものです。最後に、ここは抜けているのではないかと思うんです。職場や職員のモラルを確保するのは人の評価です。これは内部の評価です。内部のマネジメントが責任をもってやらないといかん。評価に基づいた処遇をしないといかんですね。処遇は報酬だけではなくて、一番最後のところにあります人事制度も含めた処遇をきちっとリンクしてやる、という方針が組織として必要なような気がします。
それから、私は原子力をよく知らないので、日本の原子力の国際的な力量というのは不明ですけれども、技術移転とか、国際貢献とか、いろいろあります。技術移転は国内向けが視点ですから、けっこうだと思うんですけれども、国際的には決して協力や貢献だけではなくて、国の安全から考えて、権利とか、もっと具体的にいえば、IPRの確保みたいなものは絶対に必要になってきます。やはりこういう視点を入れる必要があるだろうと思います。
それから、ちょっとちょっときついかもわからないんですけれども、に「極力固定経費を抑制する」とあります。これは言うは易くして、実際にはものすごく難しいんです。10年余り前にできたわりに小さい国立大学がスタートしたときに予算20億、事務局員16人でした。それなりにちゃんとやっていたんです。今、わずか4倍の80億の予算で180人の事務職員がいる。信じられないことが起こっている。こういうのがあちらにもこちらもあるのではないか。これから独立行政法人化するのにあたりどうするか、というようなことが中でも問題として認識されるようになっているようですけれども、特にこういうところは外の目を入れることが必要なのではないか、というふうに思います。
住田健二委員 火付け役をしたら、後はほとんど言いたいことを皆さんがおっしゃってくださったので、一番元にまた戻らせていただきたいんですけれども、秋元委員から「主務官庁とかいう名前を抜きにしても、原子力委員会にぜひリーダーシップを取って全体のことを見てほしい」というお話がありました。
それに関連してですけれども、共通した性格を持っているものに総合科学技術会議というのがあります。それからランクは少し違うかもしれませんけれども、経済産業省の総合エネルギー調査会、そういう原子力委員会と同格に並ぶような諮問委員会がございますので、そういうところで原子力の政策を決めるときにぜひ話合いをするようなことを考えていただいて、そういう背景の下に、そういうものが支えて、この新しい新法人をやっていただきたい。原子力委員会だけがしゃかりきになって支えて、踏ん張ったのではだめなので、全体で見ていただきたいと思うんです。それが一つのお願いでございます。
必ずしも合議が必要だという意味ではないんです。非常に恥ずかしいことですけれども、例えば原子力委員会と原子力安全委員会というのは、原子力委員会から分かれてできたのが安全委員会でございまして、連携が非常にうまく取れているはずなのに、実際には月に1回合同会議をやりましても、公知の差し障りのない話をしているだけで、あまり厳しい議論をしたことがない、あるいは避けていた、というのが本当だと思うんです。それが実態でございますので、そのへんも含めて、問題が発生したときには、そういう政府レベルの大きなところとぜひ話合いをしながらここを支えてください、というお願いを一つしておきたいと思うんです。
もう一つは、皆さん非常に実務的なことをご心配くださっているので、私みたいにその中ではいずり回ってきた人間からすれば、うれしいことではあるんですが、逆にそれだけに大切なことは見落としてほしくないと思うんです。逆らったようなことを申し上げて恐縮です。先ほど「広報活動が必要だ」とおっしゃったんですが、確かにそうなんです。私も今いろいろな機会にお手伝いをしておりますけれども、実はもっと本質的なことは理科教育の問題なんです。国民の科学技術に対する理解がないものですから、いくら原子力だけわかってもらおうとしても無理な話なんですよ。そんな虫のいいことはないんです。たまたま文部科学省の会議で、副大臣がいらっしゃいますから、ぜひお願いしておきたいと思うんですけれども、やはり国民全体のそういうものに対する理解がなければ、そのときいくら上手に広報をして、わかったような気持ちになってくださるかもしれませんけれども、本質的にはわかってない。ですから、新法人が自分たちの業務に関連して広報活動は当然やるべきだと思いますし、アカウンタビリティーの責任の範囲だと思うんですけれども、新法人にまさか理科教育までやってもらおうとは思いません。副大臣もおっしゃったように、それは国の責任だと思いますから、ぜひ国の責任でそのへんはしっかりと支えるほうに回っていただきたい。これをお願いしたいと思います。
西澤潤一委員 昔に比べて、事故率は増えているのではないかと私は思っているんです。それはやはり職業責任というものがずいぶん低落してきてしまっている。これは少し豊かさに慣れて、たるんだという見方もできますけれども、自分が社会人として生きていくときに、どれくらい自分の仕事に対する責任があるのか、ということをもういっぺん自覚させるということが、事故率を半分にするとか、4分の1にするということに通ずる最大の鍵ではないか、というふうに私は思っております。そのほうもぜひお願いしたい。
秋元勇巳委員 今の人材の問題で私も一番心配なのは、これから原子力を支えていく技術屋をどういう形でずっと確保していくか。例えば、今度の「もんじゅ」の問題でも、裁判が終わるまでは少なくとも「もんじゅ」から電気を取り出すわけにはいかないわけですね。しかし、今もプルトニウムを扱う技術者というのがだんだん年を取っていくわけですし、その中でその技術のレベルをどうやって維持していくか、という問題があるわけです。それから、これからいろいろなサイクルが実用化していくわけで、今までそういう技術者も原研、動燃の中で少しずつ育ってきているわけですけれども、それを本当に民間に役に立つ形で使っていけるかどうか。
もう一つは、例えば安全委員会、原子力安全・保安院の問題などで考えてみますと、今、原子炉の保安査察員は百何十人という人間が各原子炉あるいは施設に配属されているわけですけれども、配属されて、そこにずっとステーションしているだけでは保安の技術は上がらないんです。いろいろな機械を動かすことによって、いろいろな経験をし、失敗もして、技術が上がっていくわけですけれども、一番良い状態、何も起こらないのが安全の理想ですから、もし本当に安全な施設に配属されたら、失敗の体験も出来ないところにいることになるわけです。これでは安全技術は決してブラッシュアップできない。安全技術を支えていくには、この新法人がそういうようなプラットホームとしての役割を果たしていただかなければいけないんだろうと思うんです。
私も保安院の方とも少しお話をしたんですが、例えば2年にいっぺんくらいは保安院の査察員の方が新法人に来られて、半年間新しい安全技術を全部習得され、場合によってはいろいろな施設をシミュレートした防災訓練もやられて、また帰っていかれる。そういうようなことをグルグル回していかれれば、安全技術は常に世界のトップを維持していくことができる。そういうような技術屋を育て、訓練し、技術を維持していくための機能をぜひ新しい新法人の中で考えていただけないだろうか。今、産業の中でも一番気になるところはそこなんです。
もう一つは、そういうものを進めていく上で、国際的な枠組みというのをもう少し使うことがあっていいのではないか。秋山先生の報告の中にも随所に国際的な貢献というのが出てくるんですけれども、例えば今、「もんじゅ」は動かせなくなったけれども、動燃の人たちはロシアに行ってBN600を動かして、そこでいろいろな技術を高めているわけですね。この間、アメリカからアブラハム長官が来られて、ジェネレーション4をやりましょうということで「国際的に新しい炉の開発については協力してやっていきましょう」という話になっているわけです。ですから、そういう場を使っていけば、たとえ今の「もんじゅ」が不自由でも、それに必要な技術を周辺のいろいろな協力関係の中でつくり上げていくことができる。
そういう意味では、国際センターといいますか、国際的に日本の原子力をリプリゼントするような組織、そういったものを新法人のミッションとしてひとつ考えていただけたらどうだろうか。これは、特に先進国などと一緒になって新しい原子炉を進めていくという面と、例えばアジア、これから進んでくる人たちのために新しい協力をしていく、そういう人たちに今の核不拡散の問題とか、安全技術も伝えていくというようなことも必要だし、そういうことのために国際的な枠組みをフルに利用して進めていく、そういう視点もあっていいのではないか、というような気がしまして、表現ぶりですけれども、そのあたりをひとつご配慮いただければ大変ありがたいと思います。
都甲泰正委員 「もんじゅ」につきまして2、3度議題に上りましたので、名古屋高裁で行政訴訟が敗訴いたしましたが、私どもサイクル機構の考え方を簡単にご紹介申し上げたいと思います。
法律的には設置許可はまだ有効でございますので、地元のご理解と国民のご理解をいただきながら、改造工事に着手できるように、今、環境整備に最大限の努力をしているところでございます。お国のほう、あるいは関係の皆様方にもどうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
伊達宗行委員 都甲さんから今「もんじゅ」の話題が出ました。実は、前回のこの会で私は「『もんじゅ』は大丈夫か」という発言をしましたので、その締めくくりを含めて、ちょっと発言したいと思います。
あの後、非常に短い時間でしたけれども、若干書類なども拝見して私なりには納得したんですが、その後に裁判の結果が出まして、実は先日、原研とサイクル機構合同の安全研究会というのをおもちになったときに、裁判の顛末と両方の主張の違いというのが出ておりました。それを拝見しての感想をちょっと申し上げておきたいと思います。
細かな技術まですべて見通すという力も持っていませんし、経験もありませんが、方法論として、自然科学及びその技術というのはやはり経験科学であります。「常陽」というのは日本で20年前から、動燃時代から成功裏に運転されてきた。その実績と自信が表面に浮かんでこないんです。高裁の「これは危ない」「これは危ないかもしれない」「だからだめ」という論法に対して、反論ができるとすれば、「20年の経験でこれはここまでクリアしたから」というふうな論点があってしかるべきです。それからもっと前にいけば、「常陽」をつくる前に、どういうところまで解明しようと思って「常陽」をつくったか。「常陽」のためにやられた成果は何と何か。それでなお不十分なものは何か。不十分なものは「もんじゅ」に期待する。だからもんじゅ」はどうしても要るのだ。率直に言って、そういう経験科学的な積み上げが不足ではないか。法律論で最高裁でおやりになるんでしょうから、法律論でそんな技術の細かいことを挙げられないと思いますけれども、ほかの方へのアカウンタビリティーとしては、「常陽」でやられた成果、そこで超えられない新しい問題、それを「もんじゅ」でどう超えるか、「もんじゅ」で期待することができなかったら、もう一度試験炉をおつくりになる。実用の前におつくりになると言っておられたですね。それにはどこまで期待するのか。その技術と経験の継続性が見えないんです。ぜひこれをいただきたい、というふうに思っております。
青木利晴委員 新法人のミッション、こういうことについては、先ほどの国の政策も含めて、大変議論が活発にあったように思いますけれども、後半の経営、業務運営ということについてはほとんどなされてないと思います。畚野先生から先ほど一部ご意見があったわけですが、今日のようなこういうミッションを遂行するということに照らし合わせて、どういう体制なり運営の仕方をしたらいいかということについて、例えば民間的センスでいえば、事業本部制あるいは経営という言葉はプロフィットを追求するということから出てくるわけですけれども、そういうつもりで何か体制をつくっても、このミッションを考えますと、基本的には非常に大きな国としての政策の中でどういうふうに研究をし、かつ人材を育成していくか、そういう問題をどういう体制でやっていったらいいかというのは、ある意味ではほかの独立法人とはまた違った意味で具体的にもう少し検討すべきことではないかと思うんです。
個々のことでいろいろ申し上げたいことはございますけれども、終わりの、
で終わったということではなくて、これを受けて、またご議論されたらいかがかと思います。
丸山審議官 秋山先生から表題のご説明がありましたけれども、法人における検討に枠組みを与えるためのたたき台ということで、こういう方向で法人の中でよく検討をしていただいて、またその結果をここにフィードバックをして議論を深めていく、ということを想定しております。ご指摘の点、ごもっともでございます。
秋元勇巳委員 今、、
のところで青木先生のお話が出ましたが、今まで何回も出てくることですけれども、廃止措置と廃棄物処理処分の考え方、この部分はこの法人の性格を決める上で非常に大きな問題のところだ、というふうに思います。私は本来なら、国鉄清算事業団のような形で、今の新しい前向きの研究開発とは別の組織でやるのが一番望ましいと思うんですけれども、それが不可能であれば、少なくとも別会計の制度で、これが新しい研究開発の足を引っ張らないようにその制度だけはぜひ何とかこの発足までにやっていただければ大変ありがたい、というふうに思っております。
丸山審議官 それでは、今日はたくさん貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。
原子力委員会の点は、私どもは内閣府の総合調整に服する立場にございますので、この場で原子力委員会のあり方とかを直接議論することはなかなか難しいと思いますけれども、今日、先生方からいただいたご意見を何らかの方法で原子力委員会のほうにもお伝えしながら、原子力政策のほうの議論も深めていただき、この法人の制度設計も具体化していく必要があるのかな、というふうに考えております。
それでは、特にご意見がないようであれば、最後に渡海副大臣のほうから締めのご挨拶を申し上げます。
渡海副大臣 本日も大変闊達なご議論をいただきまして、ありがとうございました。今日は聞かせていただいて、私自身も勉強になったなと思っております。いろいろな意味で、問題点の方向性というのがけっこうクリアになったのではないか。それも含めて、将来の取りまとめにどうやって反映していくか、こういうことをこれからしっかりとやらなければいけないのだろう、というふうに思っております。
個々のご指摘について一言一言感想は差し控えさせていただきますが、一つだけ「副大臣……」という住田先生の意見がございました。理科離れというのは我々も大変心配をしております。私は一度落選をしておりまして、当選してから、これはすぐやらんといかんということで、党内にもかなりのプロジェクトチームをつくりまして、けっこうしっかりやらせていただいているつもりでございます。御存じではございましょうが、その中からスーパーサイエンスハイスクールとか、様々なメニューもつくっております。十分ではないかもしれませんが、やはり人材を育てなければだめだと思うんです。我々の子供の頃を考えてみたら、こうじゃなかったな、と。時代もありましょうが、理科系に行くほうがむしろいいんだ、というような時代に私は育ったものですから、そんなことも含めて、今後、教育の場でしっかりとした基盤はつくらせていただきたいと思います。河村君が教育の担当でございますので、しっかりと伝えたい、というふうに思っております。
それから組織の問題、原子力委員会、安全委員会、経産省との絡みは、独断と偏見で言わせていただいたら、風通しを良くしていくというのはある意味で我々の仕事だ、というふうに思っております。長い間の霞が関の障壁というのはなかなか簡単には取れない、正直そう思っています。しかしながら、やはりそうではいけないのであって、原子力政策という意味では鳥瞰的にすべてがしっかりと絡み合っていなければいけない。要は、「これはあなたのところの責任だ」というようなことではなくて、しっかりそういうものが行われる、そういう形をどうやってつくるのかというのは、いろいろなことが起こるたびに、正直、最近とみに感じておりまして、今日のいろいろな先生方のご意見も参考にさせていただきながら、原子力委員会等ともよく話をさせていただいて、その中でこの法人が担うべき役割というのを最終的にきっちりと整理をさせていただきたい、というふうに思っております。
次回は、今日ご議論いただきました様々な内容等も精査しながら、整理合理化の具体像、それから先ほど秋元委員からもお話がありました放射性廃棄物の処分問題など、経営基盤の確立に関わる重要課題について、少し具体的な作業を両法人合同で行っていただいて、その結果をまた秋山委員にご整理をいただくという形で詰めていくことが必要である、というふうに考えております。秋山委員には作業量が多くて大変でございますが、どうぞよろしくお願いをしたい、というふうに思っております。
皆様におかれましても引き続き様々な点でご指導をいただき、また今後ともよろしくご協力をいただきますようにお願いを申し上げます。
よろしければ、今日の会合はこれで終了させていただきたい、というふうに思います。
丸山審議官 次回の会合は、5月23日、金曜日を予定させていただきたいと思っております。場所その他につきましては決まり次第ご連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。
それでは副大臣のほうからお話がありましたような考え方で今後の作業を進めていきたいと存じますが、最後に何かご意見ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは長時間どうもありがとうございました。これで今日の会議は終わりにさせていただきます。
渡海副大臣 どうもありがとうございました。
(研究開発局原子力課)
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