原子力二法人統合準備会議
原子力二法人統合準備会議(第7回)議事録 |
第7回 原子力二法人統合準備会議
日 時 2002年6月25日(火) 8:20〜
場 所 ホテル オークラ本館1階「アトランティックルーム」
原子力二法人統合準備会議(第7回)議事録
1. | 日時 | 平成14年6月25日(火) 8:20〜10:20 |
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2. | 場所 | ホテルオークラ「アトランティックルーム」 |
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3. | 出席者 | |||||||
(座長) | 青山 文部科学副大臣 | |||||||
(副座長) | 加納 文部科学大臣政務官 | |||||||
(有識者) | 秋元勇巳 三菱マテリアル株式会社社長 秋山守 財団法人エネルギー総合工学研究所理事長 木村孟 大学評価・学位授与機構長> 熊谷信昭 大阪大学名誉教授> 小林庄一郎 関西電力株式会社相談役> 住田健二 日本原子力学会会長> 住田裕子 弁護士> 田中豊蔵 ジャーナリスト> 西澤潤一 岩手県立大学学長> |
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(文部科学省) | 青江文部科学審議官、遠藤研究振興局長、今村研究開発局長、林大臣官房審議官、坂田大臣官房審議官 |
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4. | 議事
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5. | 配付資料
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坂田審議官 それではただいまから第7回の統合準備会議を始めさせていただきたいと思います。
いつものように開会に当たりまして、青山副大臣よりご挨拶を申し上げます。
青山副大臣 皆様、おはようございます。
それぞれご多用の中を委員の皆様方にはご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
前回の第6回会合までは、各方面の有識者の方々をお招きして、ご意見を伺う形式をとってまいりましたが、第7回目となります今回から基本報告の取りまとめに入りたいと考えております。本日は、基本報告の骨子案の検討をしていただくということで、これまで委員の皆様方からいただきましたご意見をまとめさせていただいて基本報告の骨子案とさせていただいておりますが、なお委員の皆様方にぜひご議論をいただいて、ご意見を伺いたいと考えております。本日も皆様の活発なご議論をぜひお願いいたしたいと思います。
なお、開会冒頭申し上げるのはなんですが、今日、参議院の委員会が開かれることになっておりまして、国会の対応で私は中座させていただきます。加納政務官もその参議院の委員会に入っていただきますが、私のほうが先に失礼させていただきますので、どうぞひとつご了承いただきたいと思います。
ありがとうございます。
坂田審議官 それでは最初に資料の確認をさせていただきます。
(資料確認)
では、誠に恐縮ですが、副大臣はこれにて退席させていただきます。
今、大臣がご挨拶の中で申し上げましたけれども、今日は「資料第2号 基本報告骨子案」の検討をしていただきたいということでございます。
前回までは「中間報告」とか「中間取りまとめ」そういう言い方をしておりましたけれども、もともとこの夏頃までには統合の基本的な考え方を取りまとめるということで議論をしていただいておりましたので、今回の一応「基本報告」という名前でまとめたい、という具合に思っております。
これから基本報告の骨子案を事務局のほうから、「資料第1号」の皆様方の御意見整理表も合わせて、説明をしてもらいたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは事務局の中西課長からお願いします。
中西原子力課長 それではこれまでに先生方からいただきました意見に関しまして、「資料第1号」に基づいて、ちょっと振り返ってみたいと思います。
「資料第1号」は黒と青と緑色でつくられております。便宜的なものでございますが、第4回までの意見を取りまとめたものを黒、原子力委員会と原子力安全委員会の口頭発表と意見交換があったものを青、そして先回、先生方からそれぞれ口頭、ペーパーでご意見をいただいたものを緑で色分けしてございます。いただきましたご意見をなるべく趣旨を崩さないようにコンパクトに取りまとめたものがこの「整理表」でございます。
「基本的考え方」「組織運営」「業務の重点化・効率化」「研究・業務の評価の充実」「業務の透明性の向上」というような項目に従って並べたものでございますが、そのカテゴリーごとに振り返ってみたいと思います。
まず、1〜4ページにかけまして「基本的考え方」に関するご意見が多数出されました。一つ一つを取り上げることはできませんが、大きく新法人に対して「世界一級の研究拠点たれ」というご意見、または「次世代をリードする基盤技術の生産拠点であれ」そういうご趣旨のご意見が一つ、それから「国際活動に貢献しろ」というご意見があった、というふうに考えております。
前者の世界一級の研究拠点で行われる具体的なことにつきまして、例えば1ページの「中期的開発(高速増殖炉、革新炉)、核燃料サイクルの確立、長期的エネルギー開発(核融合、ITER)、基礎・基盤研究(材料、放射線利用)、こういったことをしっかりやるように」というご意見とか、内容的にはほとんど同じですが、別の言い方で、3ページの「原子力利用と核燃料サイクルに係る事業、安全確保と危機管理に係る事業、国際関連の事業、様々な基礎・基盤研究を含めてロジスティクス、それから人材育成を含めてインフラの整備に係る事業をやれ」こういうようなご意見があったように思います。
それから国際活動への貢献につきましては、2ページの「核不拡散をはじめとする原子力平和利用に関する総合的戦略研究を行うシンクタンクとしての役割をぜひ担ってほしい」、それから3ページの「原子力平和利用の高度化と核廃絶の推進に貢献する世界的なCenter
of Excellenceを目指すべきである」というお話をいただいております。
4ページは、その他様々なことがまとめてございますが、「自由な発想で研究ができる環境をぜひ」あるいは「人文系の人材の活用が特に国民理解を得る場合、広報をするような場合はキーになる」、それから「基礎から開発までプロジェクト的な研究を行う新しい機関には非常に強い経営の理念で必要であって、全体の統一性、一体性というものを実現する必要がある」というお話がございました。
5ページから横断的事項に入りますが、その冒頭は「横断的課題」で、組織運営に関するご意見でございます。ここのキーワードは「非常に効率的で透明な組織運営をする」とか、「戦略的でダイナミックな組織運営というものが必要である」とか、大組織のマネージメントのあり方について様々なご意見がございます。そのほかに、「企画・立案・調整の機能というものが非常に重要である」「組織が大きいので、自立性や自己制御性というものを初めから部分、部分に内蔵させなければいけない」「非常に厳しい競争環境の実現というものが重要である」「組織ごとの相応の権限と責任を付するような構成とか、各組織や個人に達成目標を設定して、後でそれを検証するとか、そういった組織運営体制が非常に重要である」というご指摘でございました。
その次のカテゴリーの「業務の重点化・効率化」についてのご意見も多々ございました。「予算や人員の縮減について真剣に検討すべき」とか、「スリム化が重要」「重点化・効率化」、あるいは「いろいろな事業に手を広げているので、十分な研究開発資源が必要なところに回らないのではないか。思い切った対応が望まれる」というようなご意見もございました。
7ページからは評価でございますが、「研究開発に対する徹底した競争原理の導入とか、外部有識者による評価機関の設置ということが運営である」というご指摘でございます。
それから「業務の透明性の向上」のところでは、「情報公開が非常に重要である」「絶えず国民の目に見えやすい透明な組織運営をしなければいけない」、様々な事故もあり、原子力の安全性や信頼性が損なわれている状況にあるわけでございますけれども、「国民の支持、支援がなければ大規模な技術開発はできない」というようなご指摘もございました。「そのためにもわかりやすく説明し、仕事の内容をちゃんとお知らせし、理解を求めることが重要である」というご指摘でございます。
それから「産学官の連携強化と円滑な技術移転」ということでございます。主に大学との連携と産業界との連携の二本柱でございますが、大学との連携に関しては、「新法人では施設の共同利用等に十分配慮して、なおかつ、大学の研究者に対して新しいアイデアで自由に利用させてほしい」、8ページの「原子力オープンラボのような産学連携が行えるような場を設置していただいたらどうか」、9ページの「大学との強い連携協力を進めるための拠点の形成を目指した運営を実現するのがいいのではないか」と、言葉は違いますが、同じような内容のご指摘がございます。
他方、産業界との連携に関しましては、「研究開発途上の実用化にまだ十分至っていない再処理、MOX燃料加工などについては、円滑な技術と人の移転というものが新法人に対して求められる」、また「いろいろトラブルの下支えとなるような技術基盤の整備と技術的な支援、こういったものが重要である」ということでございます。それから「大学での発想を産業界に実用につなげるまでのインキュベーション機能を期待する」「産業界の技術者に対する教育・訓練を提供する機関としても期待したい」というご意見もございました。
それから両方に共通することでございますが、「開かれた運営組織の具体的な方法として、強力な運営審議会を設置する」ことが意見として出されました。
9ページの「原子力人材の育成」というカテゴリーとして、教育との関わりにつきましては、「今の連携大学院構想に基づく等の連携は非常にうまく動いている」「寄付講座や総研大のようなシステムもあるが、学位授与ということについては相当の専門の取組みが必要なので、新法人が担うということについてはいかがなものか」というようなお言葉もありましたが、11ページの「世界の大学や大学院と連携して人材を受け入れるためには、学位授与の道も開いてはどうか」という別の観点からのご意見もございました。あと「国際的に活躍できる人材を長期にわたって育成していく必要性」の指摘もあったところでございます。
11ページからは「安全確保への取り組み」でございますが、「特に先進的な研究開発の一部としての安全研究、安全規制・防災対策への支援につながる安全研究、この2面が大切で、新法人の役割が増えるであろう」という原子力委員長のご指摘でございました。そして、安全委員長のほうからは「新法人が担う安全研究には透明性や中立性が求められる」ということでございましたけれども、同時に「基礎・基盤的な研究と切り離してしまっては安全研究はできないので、総合性をもって活動するということが必要」ということで、安全部門だけを独立させるということについては否定的な意見が多かった、ということでございます。
それから13ページの「立地地域との共生」に関連いたしましては、「動燃改革の実績を十分尊重してください」ということが一つ、それから両知事とも「安全確保が最優先」ということをまず言われまして、その後、「地元重視の姿勢」とか、「地元の科学技術や産業の振興にぜひ貢献してください」、あとは個別的な地域に特徴的なことが幾つかご意見として出されたわけでございます。
それから14ページの「国際協力・核不拡散への貢献」に関しましては、「アジア地域の発展のリーダーたれ」というようなご意見が国際機関から来られた方々から声をそろえて出されております。そのほか、15ページの「平和利用、核廃絶に向けて積極的な役割を担え」という強いご意見がございます。特に「核拡散防止とか、包括的核実験禁止などの国際条約に関する討議と、その実効的適用への技術サポートの役割を新法人は担うべきである」「核廃絶の実現は日本国民の悲願であって、こういう役割を新法人が担うことは国益にもかなっている」というご指摘でございます。
それから「廃棄物処理・処分」の関連でございますが、大学のほうからは「国全体の仕組みの中で大学の廃棄物をぜひ」というお話がございましたが、それとは別に「新法人に移行するに当たって、新法人の経営の妨げとならないように、あるいは運営の過度の負担とならないように廃棄物について適切な処理することが必要である」というご意見が多く出されました。特に「廃棄物や廃止措置などの問題については新法人の経営とは切り離す」というご意見でございます。併せて欠損金についても同じように「健全な運営を阻害しないように、統合に当たって措置すべきことが望ましい」というご意見でございます。それから主に原子力委員会のほうからご指摘がありました「核分裂分野は最も統合の効果が現れるところであるので、積極的に進めるべきである」「核融合分野はITERの誘致が解決して、その後ふさわしい体制を構築すべきである」「加速器分野はいろいろな可能性を秘めている」「放射線利用は分野は産業創製の柱の一つである」というようなことでございます。それから「新分野、特に新型炉、将来炉と呼ばれる一連の炉型の研究開発、高レベル廃棄物処分やFP消滅などの研究などに対しても組織的な取組みを行う良いチャンスである。それをうまく生かすように」というお話でございます。一番最後は欠損金でありまして、「新法人の効率的な運営と研究開発を阻害しないように措置すべきである」ということで、これは再掲でございます。
以上のようなご意見がございまして、これを踏まえまして基本報告の骨子案を取りまとめてございますので、「資料第2号」に引き続き入らせていただきたいと思います。
「1.検討の経緯」はこの委員会が設置されて、何回かの議論を経て、こういう基本報告を取りまとめる、そういう記述が入る予定でございます。
中身は「2.基本認識」のところからでございますが、1段落目は原子力による安定的なエネルギー供給の重要性をうたっております。2番目は、50年の原子力の歩みをちょっと振り返りつつ、原子力エネルギーを基幹的な電源の位置まで育て上げて、原子力開発利用の世界的な先頭グループに属するまでに至ったことを記述し、原子力二法人はこうした進展に非常に大きく寄与してきた、ということを記述いたします。しかし一方で、特殊法人形態で行ってきた両法人の事業に対して、硬直化、肥大化、非効率化、それからいろいろプロジェクトが遅れていって費用の増大などを招いた、というような批判があったことも記述いたします。加えて、大きな事故がございまして、国民の原子力に対する期待と信頼が低下して損なわれている状況にある、ということを記述し、このような現実を直視することが二法人の統合の検討に当たって必要である、ということを記述いたします。そして、この会議は平和利用という我が国の国是と経済社会発展実現の不可欠の政策上の手段としての原子力の重要性を明確にした上で、この二法人の統合を国民の支持を回復する機会、併せて新たな発展を目指す重要な機会としてとらえて、21世紀を担う新法人設立の基本理念と役割を明らかにし、基本理念のほうに入っていくということにしてはどうか、ということでございます。
次は「3.新法人設立の基本理念」でございますが、全体で(1)〜(5)まで5項目掲げてございます。
(1)は総括的なことですが、総合的な原子力の研究開発拠点(Center of Excellence)として基礎・基盤研究において世界をリードし、核燃料サイクルをはじめとする原子力エネルギー研究開発を着実に進め、基盤的な原子力施設の共用を促進し、人材の育成に貢献し、このことによって国内の産業、大学、地域、行政における原子力活動を支え、発展させる。国際的には、平和利用に徹して、核廃絶という国民の悲願を踏まえて、核不拡散のための諸活動に参加し、具体的に例えば解体核の平和利用方策を実現するなど、技術面において国際的な活動に貢献する、ということを目指します。
(2)として、それとともに原子力開発利用というものを安全面で支える中核的役割も新法人は担う、ということでございます。
(3)は、この統合が行政改革の一環として行われているということを踏まえて、事業の見直し、共通部分のスリム化により人材の再配置、予算の重点配分を行い、効率化や資源の集中ということを通して法人の活力を高めていく、そういう視点も重要である、ということでございます。
(4)で、大きな法人になりますので、効率的・効果的なマネージメント体制を構築をして、迅速な意思決定システムというものを確立することが非常に重要である、そのことによって社会経済の動向に応じた時宜を得た活動を展開する、ということを訴えております。
そして(5)は、安全確保の徹底による立地地域との共生のことでございます。
「4.新法人に求められる役割」としては、こういう理念の下で新法人には次の7つの役割を期待したい、というふうに思います。主要なミッションとして7つの役割を明確に位置づける、ということでございまして、(1)はやはり基礎・基盤研究の推進でございます。
(2)は、核燃料サイクルの確立を目指した研究開発でございます。それは産業界との密接な連携の下で実用化を目指しつつ進めるということが重要であろう、というふうに思います。
(3)は、安全研究をちゃんとやるということ、安全規制に必要とされるいろいろな科学的データを提供するということ、それから国や地方の防災などを技術的に支援するということであります。
(4)は、大学との適切な役割分担の下で、施設を提供しながら基礎研究の機会を提供するとか、それを通じて人材育成に貢献するとか、そういった連携・協力が大学とのまで進められるべきである、ということでございます。
(5)は産業界との関連でございますが、研究成果と人材の移転を推進して、産業活動を技術的に支援することも新法人の重要なミッションではなかろうか、ということでございます。
(6)では、基盤となる必要不可欠な施設、設備をちゃんと整備する、それを産業界や大学に積極的に解放して、共用を促進する、ということでございます。
特に(4)(5)(6)(7)は、今まで法人の付帯的な事業として行われていたようなものをちゃんとミッションとして位置づける、ということでございます。
それから(7)は、原子力の平和利用を国際的に先導し、核不拡散、安全確保、そして特にアジア地域でございますが、世界の原子力人材の育成などを支援する、ということでございます。
こういう役割を果たしていくための新法人の組織・運営のあり方に関して、「5.新法人に求められる組織・運営の在り方」で何項目かに分けて記述してございます。
(1)は、新法人が独立行政法人であるということを踏まえた組織・運営体制でございますが、は自主性・自立性の確立ということで、これは当然のことでございます。
は、財務体質など情報公開をして、国民の目に見える透明な組織運営をしなければいけない、ということでございます。それから
は、外部評価機関というものを設置して、ちゃんと定期的に評価をする、ということが独法としての運営形態として求められる、ということでございます。
「(2)経営の基本的考え方」としましては、トップマネージメントの強力なリーダーシップの下に経営理念が明確に打ち出されることが必要である、ということでございます。そして、基礎・基盤とか、プロジェクトとか、いろいろ進め方の違う事業を円滑に両々相まって進めつつ、法人全体としての言った一体性が確保できるということが非常に重要であろう、というふうに考えます。それから新法人の経営に当たっては、透明性の確保、費用対効果の評価というものが不可欠であって、そのために外部からの関係者の意見を適切に聞いて反映させていくことが非常に重要である、ということでございます。
それから「(3)業務運営の在り方」でございますが、としまして、若手人材にとって魅力に富んだチャレンジングな目標というものを設定して、有為な人材を積極的に登用できる競争的な環境や人事システムを構築する必要があり、外部との積極的な人事交流による人材の流動性の向上というものを図らなければならないと考えます。
は、安全研究に関しては「中性性」「独立性」の確保に配意した研究運営というものがなされる必要があろう。また
は、原子力の多様な国際側面、国民理解の増進の観点から、ご指摘がありましたように、国際対応、広報等において人文科学系の専門家との連携、その活用というものが非常に大切でありまして、そのための体制の構築ということが必要になろう。そして
として、原子力研究開発の基盤施設については、外部利用者の要望を適切な反映した共用体制を確立することが非常に重要である。それから
といたしまして、当然のことですが、原子力施設や核物質に対して厳格な安全確保や管理体制を維持し、確立する。
は、その安全確保の徹底を通じて地元の信頼を確保するということと、立地地域の科学技術の振興や経済社会の発展を支援していくということ、こういう運営をしなければいけない、というふうに考えております。
それから「(4)経営基盤の確立」に向けての2つのポイントでございますが、は、欠損金問題の適切な処理を図ることによって、独立行政法人として健全な運営を図り得る財務体質と財政基盤を確立するべきである。それから
といたしまして、原子力二法人において施設の廃止措置や放射性廃棄物の処理処分に係るコストやスケジュールなど可能な限り明らかにすることが非常に大切でございまして、それに基づいて、新法人は計画的に安全に、かつ円滑に処理処分を実施できる体制を確立することになろうかと思います。
こういう業務運営のあり方を新法人の実現に向けて確保していきたい、ということでございます。
最後に「6.原子力二法人統合準備会議の今後の検討事項」ということでございまして、3点挙げてございます。
(1)は、各事業ごとの実績を踏まえて、見直すべき事業内容を明確にした上で、事業の効率化、重点化を図る、ということでございます。
(2)は、その見直しを踏まえて、各研究開発拠点のミッションを明確にする。ここのセンターはどういうミッションをもっているのか、ということを明らかにした上で、人の再配置、適切な資源配分などが実現できる組織体制を構築していく、ということでございます。
(3)といたしまして、上のほうにありました迅速な意思決定システムとか、効率的・効果的なマネージメントのあり方というものは具体的にはどういうふうに構築したらいいのか、その具体論を明確化する、ということでございます。
そういう3ポイントを今後の検討課題として挙げてございますが、これ以外にもあろうかということで、「等」という言葉を入れてございます。
骨ばかりでございますが、この骨子につきまして今回ご議論をいただいて、次回に少し肉付けした基本報告の案を出させていただこう、というふうに考えているところでございます。よろしくお願いいたします。
坂田審議官 どうもありがとうございました。
今、事務局から説明があったとおりでございますけれども、次回に基本報告そのものの案を出すに当たりまして、今回は骨子の案というものを出させていただきまして、これを参照しながら基本報告として取りまとめるべき中身についてご議論いただければ、ということが一番の趣旨でございます。
この骨子案に関連しまして、何からでもご意見をいただければよろしいのでございますけれども、もし全体の構成について何かご意見とか、ご質問がございましたら、ちょうだいいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
それでは後ほどでもけっこうですので、内容のほうに入らせていただきまして、これは短いですので、どこからでも何なりとご意見、ご質問等をよろしくお願いいたします。
住田健二委員 原子力委員会の藤家委員長がお話されたときに、今までのことを踏まえて、原子力委員会としてこの法人に期待していることは何かという中で、核燃料サイクルの確立、それから放射線利用という2つの非常に大きな柱を提示された、というふうに私は理解しておりまして、私も個人的な発言の中ではそういうことを申し上げたように記憶しております。
原子力関係者の立場で申し上げますと、サイクル機構はどうか別として、少なくとも原研に対してはこれまで寄せられた期待というのは、単にエネルギー開発の基本的な、特にその中の基礎研究部門に近いところを担当しているということだけではなくて、エネルギーという意味はもう少し広義の放射線利用というのが入っていたと思うんです。例えば、設立当初から高崎研究所のようなものがございますし、SPring-8とか、関西研究所とか、いろいろございますけれども、その方面ではずいぶん活躍されていて、研究成果も挙がっております。もし新法人がただ機械的にそういうものがあったから引き継ぐということでは困ると思うんですけれども、本来、日本の原子力政策としては、国の持っているCOEに相当するところはそういう2つの両面を持つ、というように理解しておりましたし、少なくとも原子力委員会が今までやってこられた長計その他の作業は一貫してその立場をとっておられたように思うんです。
この基本報告の骨子案をざっと眺めますと、そういう中でエネルギーの分野についてはこれまでのものを継承しているという感じがするんですけれども、原子力研究開発という中に非常に広い意味の放射線利用、そういうものを含めようとしているのか、それともあえて言うなら、それをぼかそうとしているのか、ちょっとよく読めないんです。そのへんをぼかすのではなくて、ちゃんと取り上げて議論して、それはやらないで別法人にするなら、それでもいいと思うんですけれども、そこはちょっと突っ込んでいただきたいな、という気がいたします。これは意見と質問と両方ですけれども、そのことをひとつ申し上げたいんです。
私は個人的には漠然と、基礎・基盤研究の中にそういうものを組み込んでしまうということをしないほうがいい、ここでちゃんとやってほしいな、と思っています。エネルギー利用その他についての成果は両機関からもよくお話いただいたし、各方面からの要望があったと思うんですけれども、私どももそのことについては十分議論してないように思いますので、そのことを特に「基本認識」のところで申し上げておきたいと思います。
坂田審議官 エネルギーと並んで放射線利用は大事な分野だと認識しておりますけれども、中西課長のほうで何か補足することはありますか。
中西原子力課長 個別のプログラムについては今まであまり議論がございませんでしたので、そこは5ページの「6.……今後の検討事項」のところで事業ごとにもう一度見直して議論をさせていただこう、というふうに考えております。そういったこともありまして、本文のほうでは「原子力の基礎・基盤研究において世界をリード」そういう言い方にしてございますが、基本報告がまとまった後でディスカッションをさせていただいて、どうするかということを整理していきたい、というふうに思っております。
住田健二委員 重ねて申し上げますけれども、基礎・基礎研究という形での広がりの中では当然入ってくると思うんですけれども、そうではなくて、大きな柱として認識するのかどうかということをいっぺんここで議論していただきたい、というお願いです。既存の広がりの中では当然入ってくると思うんです。ただ、原子力委員会の委員長があれだけはっきり「2つの柱だ」と明言されたのを少しぼかしてしまうというのは……。私は最初からこの委員会で「原子力委員会の意見を聞いて」ということを申し上げたのも、そういう意味合いがあったわけです。ただ、もし新しくできる機関でそういうことをやれないのであれば、国としてどうするか、ということももちろん検討しなければいけないわけですけれども、そのことをぼかしてしまうのではなくて、後々のためにもちゃんと議論をしたほうがいいんじゃないでしょうか、そういうことを申し上げているわけです。
坂田審議官 今の点で何か……。
秋山守委員 関連したことで、ちょっとしつこいかもしれませんが、住田先生のご意向に私も同じような思いをもっておりますことと、私は今、国際的な原子力学会ベースの活動の一つのサークルとして、環太平洋地域の協力のお手伝いもしておりますので、そういった観点も含めて、今の放射線利用について新法人に期待するべき役割というものを、私なりの認識と期待を込めて、若干追加させていただきたいと思います。
放射線利用の形態、目的はたくさんございますけれども、大きく分けますと、ご案内のように、学術研究の面で、ポジトロンなどを含めて、最近、非常に新しい解析手法として大きな期待が寄せられております。例えば、物質のミクロな構造の解明とか、学術研究の新しい手法としての力もございますし、新しい物質の創製といったような面での新しい反応、物質化学という利用がございます。それから実用面では農業、工業、健康面ではアイソトープの生産といったようなことが多々あるわけでございます。そういったことを含めて、国際協力の面でも今後の発展が大変期待されている分野でございますので、住田先生のおっしゃいましたように、新法人が直にそこを全面的に受け皿としてなさるかどうかというのは、国の全体的な視野の中でご議論があるかもしれませんけれども、私ども今の国際協力の一環を担っております立場も含めまして、原研さんのご活動(もちろん日本原子力産業会議さんでの国際協力のご尽力ということも合わせてでございますけれども)は非常に期待されるところが大きいと思いますので、できるだけそこはきちんと今後ご議論して、新法人にしかるべき役割をご期待申し上げるということになりますれば、適切な基盤整備、また国際協力面での仕組み、人材の確保といった面でも整備していっていただきたい。これが第一点でございます。
ついでに別のことで恐縮でございますが、実は先般の長計の第4分科会でも、加速器あるいは核融合を含めました先端的な科学技術、それからもちろんそれのエネルギー利用あるいは多方面にわたります実用ということも合わせて議論したわけでございます。私の前回の発言の中で、先ほどの放射線利用につきましては、第一項目の原子力利用という言葉の中に放射線利用ということも含めていたわけでございますが、もう一つの加速器とか、核融合、または計算科学といったような大型の国際的なプロジェクトに関する研究というのは、私の期待される活動分野という整理の中では必ずしも明示的に挙げてなかったので、若干言葉足らずであったと思います。本日改めて、核融合、加速器に関する研究開発への取組みの意義と、それに関わる新法人に期待される役割というものを私なりにちょっと補足させていただきたいと思います。
核融合は当然、将来の新しいエネルギー源の開発ということで、技術的にも、あるいは科学的にもさらに解決すべき高度な挑戦課題があるわけでございますけれども、それに向けて挑戦するというプロセスを含めて、またその期待される成果も含めて、国際的にも非常に期待され、魅力ある大型プロジェクトだという認識があるわけでございます。それを新法人がいかなる形で受けていかれるかということは、この場でもご指摘がありましたように、財政的な面での配慮をどうするか、いろいろ細かい議論はあるわけでございますけれども、国全体としての視野の中で新法人にしかるべくそこのところにご期待申し上げたい、というのが私どもの願いでございます。
核融合につきましては、そういったエネルギー利用ということは当然の目標でございますが、波及効果といたしまして、非常に多面にわたります先端的な科学技術のフロンティアを開拓している、という事実がございます。プラズマ物理あるいは制御科学、また新しい材料の挑戦、そして最近はご案内のように、電磁場と材料構造との応用というところに端を発しました応用電磁気学というような大きな学問分野、あるいは学会などの発展もあるわけでございます。こうしたことで、核融合については基礎研究サイド、また実用と基礎を結ぶ中間段階といろいろな切り口で期待されるところがございますので、ここはぜひ適切に取り上げていただきたい。
それから加速につきましても、前回の第4分科会で学術研究、産業あるいは生活、また健康面といったような様々な今後の活用の観点に照らしながら議論したわけでございますので、加速器というキーワードが本報告書の中で適切に位置づけられることを期待しているところでございます。
小林庄一郎委員 両先生のご示唆の中で「原子力長計」というお言葉が出ましたけれども、先進各国の中で原子力長計というものをしっかりと一定のインターバルでつくっているのは我が国だけで、これは世界に誇るものだと思います。また、秋山先生もおっしゃいましたように、そこでは広く原子力全般についての国のあるべき姿が示されております。これを実施する主体として新法人がその中に国として加わるべきだ、ということをうたえば、住田先生のおっしゃること、あるいは秋山先生のおっしゃることも当然その中に入ってくるような気がいたします。それで十分でなければ、さらにキーワードを散りばめていただいたらいいと思いますが、単に原子力長計を支援するサポーターでなしに、プレイヤーとして新法人が乗り出していただくように。「基本理念」のところでお書きいただくのか、「求められる役割」でお書きいただくのか、「組織・運営」で書いていただくか。初めに書いたほうが重くなるような気がしますけれども、そのへんはお任せいたしまして、ぜひ原子力長計ということにお触れいただきたいとお願いをする次第です。
坂田審議官 放射線利用の問題で住田先生、秋山先生がおっしゃった点についてはしっかり受け止めたい、という具合に思います。それから、原子力長計の重要性は言うまでもございませんので、今後の基本報告をつくる中で文章は考えていきたいと思います。
秋本勇巳委員 前回休ませていただきまして、申し訳なかったんですが、紙の中にも書いたつもりですが、この「基本認識」のところにも出ておりますように、我々の原子力開発利用というのは50年前に国民からの大きな期待の下に開始されたわけです。そこで始まっているのが今、小林委員がお話になられました原子力委員会なんですね。原子力委員会というのは、いわば原子力開発利用をやっていく上での一番の大元締めの機関として、そこがまず基本方針を発信して、それに基づいて原子力の政策が生々と進んでいくというのが基本であろう、というふうに思いますので、このあたりの表現ぶりですね。小林委員は実施機関というふうにおっしゃいましたけれども、それを実施していくということがこの機関の最も根本にあるところではないかな、というような感じが私もやはりしております。
それからもう一つは、放射線利用とはやや見方が違うのかもしれませんけれども、放射線影響の問題ですね。これはやはりもう少し何らかの形で重点化をしていきませんと……。例えば、エネルギー利用だけを進めていくにしましても、放射線影響の問題が十分解明されて、それが一般大衆の人たちにきちんと受け止められるようにならないと、本当の意味での原子力の需要にならない、というふうに思っています。
今、放射線影響、例えば低線量の影響などについて放医研とか、あるいは電中研などで研究はやっておられるわけでありますけれども、全体の原子力をこれから推進していくという立場から見た放射線影響の位置づけとか、それの組織的な研究開発というのはまだ十分ではない、というふうに思っています。
それはやはり放射線利用の研究とかなり密接に結び付いているということがあるわけですから、エネルギー利用から放射線利用だけ切り離してしまう、というような位置づけでいきますと、そのあたりの部分が非常に半端になってしまう。原子力というのは、これをエネルギーとして利用するか、それ以外のものとして利用するかは別としまして、広い意味で放射線を利用する技術であるわけなので、その全体の体系の中でとらえた研究開発というふうに整理をしていただくほうがよりわかりやすいのではないか。
あえてお願いをすれば、特に放射線影響の問題が全体のエネルギー利用の促進も阻害している、という部分がありますので、この正常な理解を進めるための積極的な研究開発をぜひお進めいただきたい、というふうに思っております。
住田裕子委員 この基本報告が対外的に公表されることになると思いますと、一般の私たち国民から見て、まず今まで二法人はどういう仕事をしてきたか。例えば、日本原研さんですと、原子炉、核融合、加速器利用などの基礎的研究を幅広くとか、核燃サイクルさんの場合は核燃サイクルについての実用化を目指すプロジェクトとか、そういう基本的なものをまず押さえていただきまして、その上で今回の二法人の統合に当たっては、例えば2ページの(3)のスリム化、もう一つはよく出てきましたシナジー効果、そういうものが今までの事業の役割の中で今回統合することで期待される、そういうものを個別的にわかりやすく書いていただくと、「ああ、こういうものか」というイメージがわくかと思いますので、どこかに入るかと思いますが、よろしくお願いいたします。
西澤潤一委員 小林先生のおっしゃいましたことを重ねるようになると思いますが、戦略的な研究というものが原子力については絶対必要ですし、今までもやってこられたと思うんです。そのときに例えば、最初に私がやらされた「もんじゅ」が頭の中にあるものですから、あたまがそちらに行き過ぎているかもしれませんが、あれでトラブって5年も機械が止まってしまっているということが長計に一体どんな影響があるのか。ひどいのになると、「あんなものはつぶしてしまえ」と言った人もいるんですが、そんないいかげんなことで我々も引っ張り出されたというのははなはだ迷惑だと私は思うんですが、やはりああいう事故が起こるということが長計に非常に大きな阻害が出てくるわけですから、そういうことに関しては、この間も申し上げたことですが、研究所が新しくできたときに総力を挙げてこれに対応する、ないしは出てくるべき事故を未然に予防するというようなことにも当然注意がいくのが当たり前ではないか、という気がしております。
そういう意味で少し誤解を招くような言葉も2、3気がつくわけでございますが、夢物語の原子力開発というのは夢ではありけれども、現実においてこういうことをやっていこうというときには、やはりそれは後回しにする。あえて言わせていただければ、現実に非常に直結した研究をしていくところから実は大きな夢が生まれてくる、というふうに私は考えておりまして、向こうへ行って見てくるような夢を追っているということは、両面で結果的には後追いになってしまって、本当にすばらしい研究が生まれることは非常に少ないのではないかとすら思っているわけです。言い過ぎだと言われる方がいらっしゃるかもしれませんが、私はそういうふうに考えております。所員の方々みんなが原子力の展開について責任をもつ、というふうな気持ちでやっていただく、ということが第一条件ではないかと思っております。
坂田審議官 住田(裕)委員がおっしゃいました、両法人がどんな仕事をしてきたかというのは、我々は頭の中で当たり前のように思っておりますけれども、そういった点も報告書では少し触れたほうがいいかな、というふうに思います。注意したいと思います。
1〜2ページの「基本認識」「基本理念」のところに関連して、追加的にご意見がございましたら……。
木村孟委員 4ページのところで「独立行政法人化すると、この3つのことをやらなければいけない」ということが書いてあります。「
活動状況が絶えず国民の目に見える透明な組織運営体制」というのは当然、独立行政法人して課せられる義務ですが、この二法人がこれまでに置かれてきた立場を考えると、新しい法人は徹底的な情報公開をしていくということを大きな柱にしておかないと、国民の理解がなかなか得られないのではないか、と思います。
独立行政法人化すれば、中期目標、中期計画をつくって、それを評価し、その結果が、公表されるわけですから、普通の状態でやってもある程度の情報は出ていくことになりますが、それでは足りないのではないか、と思います。現在、先行法人の評価に関係しておりますけれども、やはり旧機構がこれまで置かれていた立場によって、国民の受け取り方に微妙な違いがありますので、そのへんのところには新しい法人は相当気をつけられる必要があるのではないかな、と感じております。
それから、「責任と権威ある外部評価体制に基づく、業務運営についての定期的評価等」についてです。これも独立行政法人としては当たり前のことですが、たぶん新法人はこれくらいのことでは世の中がなかなか認めてくれないのではないか、というふうな気がいたします。法人化したら、評価委員会ができることになりますが、それだけではどうにもならないので重層構造をもつような緻密な評価が出来る体制、つまり、業務運営だけではなくて、それぞれの研究ユニットの研究がどうなっているか、そこまできちんと評価できるような評価体制を築く必要があるのではないかと思います。
それから、先ほどから少しお話が出ております産と学の連携でありますけれども、非常にいろいろなものが出てくる可能性が既に指摘されておりますから、むしろこの際、積極的に産と学の連携の機軸的な役割をこの新しい法人が担っていく、という視点をぜひ打ち出していただく必要があるのではないかと思います。
「基本認識」「基本理念」と直接関係するかどうかわかりませんけれども、3点申し上げさせていただきました。
坂田審議官 最初の透明性に関連して、この骨子の中では「情報公開」という言葉が出ておりませんけれども、報告書では透明性を裏付ける問題として情報公開の問題はしっかり書くべきだろう、という具合に思います。
それから評価については「きちんと重層的な詳細な評価をして、それを外に出していく」というご指摘だと思いますけれども、大事な評価の組織問題として受け止めさせていただきたい、という具合に思います。
今日はたっぷり時間がありますので、これまで言い足りなかったことも含めまして、何なりと言っていただきたいと思います。
田中豊蔵委員 この基本報告が一般の国民に出たときの国民の受け取り方は、さっき住田さんが言われたように、「一緒になって何をやるの?」ということを含めて、「なぜ今、一緒になるの?」と。それは行政改革という一つの大きな特殊法人改革の一環として出てきたんですが、「この特殊法人の統合は、日本の将来にわたる国益あるいは世界の公益、そういうものに直接つながる非常にバイタルなテーマなんだ」と、行政改革の一環としての組み替えの枠を超えたような非常に力の入った訴えかけをしないとだめなのではないか。そこが非常に重要だと思います。ですから、木村先生が言われた、正に徹底的な情報公開を基礎にして、具体的に「こういう点で国益と世界益のため、プラスになるために新しく乗り出すんだ」というような意気込みを本当に情熱を込めて示す、ということが本当に必要だと思うんです。
というのは、これは蛇足かもしれませんが、政府の当事者がどういうふうな気持ちで言ったのかは別にして、先日、「日本も将来、国民の意思によって核武装する時があるかもしれない」というふうに受け取られた発言が現実に世界のメディアにも伝わっていて、日本の国民の中にも「あれはどういうことなのだ」とかなり疑念をもっている人もいるわけです。
そういうことを考えると、基本報告の2ページに書いてありますが、我が国の非核国家としての国是を再確認し、ナショナル・セキュリティーとしての原子力の平和的な研究開発に対する国際貢献というふうなところを……。当たり前のこととはいえ、今の政治状況を考えながら、政治に対してきちっとものを言うというのは、表現がちょっとおかしいんですが、この二法人の発足が新しい政府にとっても新しいメッセージを世界に発信する、そういう機会になってほしい。そういうことを含めて、この会議で何度も言っていることですが、基本報告で平和的なものに徹するトップランナーというところの問題をきちっと述べるということは、非常に重要なことだと思います。
坂田審議官 大事なご指摘をありがとうございました。
秋元勇巳委員 少し先の各論にまで入ってしまうかもしれませんが、「基本理念」との関連で先ほどご説明いただいた中でやや気になる点をちょっと申し上げたいと思います。
2ページの「基本理念」の「(4)効率的・効果的なマネジメント体制の構築により迅速な意思決定システムを確立し、経済社会の動向に応じた時宜を得た活動を展開する」というのは、大変すばらしい基本理念を打ち立てていただいた、というふうに私としては大変ありがたく思っているんですけれども、さて、それを実際に具体的に展開する方法として、後の各論で何が出てきているかというと、そこがちょっと読めないというところがあります。
基本的にここで書かれていることは、「新法人に求められる組織・運営の在り方」の中で、責任と権威ある外部評価体制をつくる、というお話がありまして、そこに例えば民間の知恵なども入れたらどうかというのが一つあるのかな、という感じがいたしますし、「業務運営の在り方」のところでは「法人外部との積極的な人事交流」という言葉がありまして、そこで産とか、学とかの間の交流を考えておられるのかな、という感じがいたします。「経営の基本的考え方」のところでは、「大学、産業界等外部の関係者の意見を適切に反映する」というところにとどまっているわけです。
これから特殊法人として、「基本理念」に書いてありますような非常にフレキシブルな、しかも迅速な意思決定ができるような組織になるためには、新法人というのがあって、産と学はやはり外部である、そういう対立した形として運営されていたのではだめなんだろうと思うんです。やはり産と学が一体になって新しい二法人を運営していく、経営に積極的に参加していく、というようなところまで踏み込まないと、こういう迅速な意思決定、経済の動向に応じた時宜を得た活動というのは不可能なのではないか、という気がしております。その意味では、経営の中に民間人あるいは大学人が積極的に入って経営の主体になっていただく、そこまで踏み込まないといけないのではないか。各論の中でもしそういうような形のところまで踏み込んだご検討をいただければ、少なくともそういう理念に一歩でも近づけることになるのではないか、という気がしています。
現実に、原研、動燃、さらにはその前身であります原燃公社の歴史などをたどってみますと、いろいろな節目、節目で民間人がその中に入って問題を解決した例があります。そういう意味では、現時点の法人は民間あるいは学からちょっと離れた存在であって、非常に官に近い存在になっているような気がします。独立法人となる以上は、もっと一体感のある組織になるんだ、ということをもう少し何かの形で具体的に出していただけるといいのではないかな、という気がしております。
坂田審議官 経営についての大変重要なご指摘だったと思います。ありがとうございました。
今、秋元委員から主として新法人の組織運営のお話が基本理念と関連してございましたけれども、「基本認識」「基本理念」「役割」「組織運営のあり方」、そのへんまで含めて何かございますでしょうか。
今村開発局長 今、秋元委員からお話のありました経営の問題は、大変重要な点だというふうに思っておりますので、よく検討させていただきたいと思いますが、この問題についてはもう一つ別の側面があると思います。新しい法人は、人数でいうと約4,700人、事業所の数でいうと、数え方にもよりますが、約9事業所と非常に大きな存在になりますので、できるだけそれぞれの事業所ごとに権限を委譲して、そこである程度の判断ができるようにする、そういう考え方の下にサイクル機構においては敦賀本部というのをつくって、そこで相当自主的にやれるようにいたしました。そういうピラミッド型の意思決定システムが良いのか、ややフラットなシステムが良いのか、というようなことも含めて議論になろうか、というふうに思いますので、そういった点も含めて今後少し検討を進めたい、このように考えております。
田中豊蔵委員 これは意見ではなくて、質問で、どなたかに答えていただきたいんですが、今おっしゃったように、現在の2つの組織が統一されて大変大きな新しい独立法人になる。その場合、これまでと比べて構成人員あるいは予算面でどのくらい減ることが可能なんですか。つまり、何か良いことをやるためにお金や人間を減らすことはない、というのは一つの意見として成り立つんです。それを私は否定はしませんが、明らかに2つの組織の中に無駄があることも事実なのではないかと思うんです。無駄というのはちょっと乱暴な言い方ですが、2つの組織で重複している部分があって、それを絶対に減らさない、予算は死守する、というような組織論が先行してしまうと、どこかの銀行と同じようなはめにならないとは限らない。これも言葉は良くないんですが、行政改革のある側面に貢献するという部分について、この基本報告はどの程度書き込めるのか。あるいはそういうことは書き込まないのか。そういう可能性はないということなのか、あるいは相当あると期待できるのか。今の段階でそういうことをお聞きするのは無理なのかもしれませんが、精密な数字でなくてもいいんですが、漠然としたお答えでも何かそのへんの感じを教えていただいたい。
今村研究開発局長 今のお話は2ページの「3.新法人設立の基本理念」の(3)のところに書いてあるとおりで、事業の見直しと両法人の共通部分のスリム化というのは明らかにあるわけです。例えば、人事とか、総務とか、2つあるのを1つにするわけですから、具体的にスリム化できる部分があるだろう、という考え方に立っております。それからもう一つは、人材の再配置ということも当然必要だろうと思っておりまして、今までの組織をただ短冊で上にかぶせるだけではだめで、シャッフリングも当然必要だろうと思います。予算の重点配分もそのとおりであります。
それで、数値目標的にどれくらい減らせるのかといったような点については、今のところまだあれがございません。実は、これは最初のプレゼンテーションのときに少しあったかと思いますが、二法人を足したトータルの予算とトータルの人員は今までもずうっと下がってきております。ある意味でいうと、どんどんスリム化してきているというプロセスがありまして、特にサイクル機構については動燃改革のときに相当事業を整理するということをいたしましたので、既にスリム化されているという部分もございます。今回、二法人を統合することによってどれくらいドラスティックにできるかというあれはまだ手元にございませんが、今のような事情でございます。
坂田審議官 今の局長のお答えのとおりだと思いますが、減量していくといいますか、そういうことは方針としてしっかり顕示すべきことである、というふうに考えております。個々にどうするかというのは、今後の議論もありましょうし、当事者である両法人がしっかり考えていただかなければいけないことなので、今後の検討に委ねるところがあろうと思いますが、効率を高めていく、活力を高めていくという意味での無駄なところを省くというのは大事な点ですので、それはやはり基本報告の中でも書くべきところにしっかり書くべきだということではないか、という具合に思っております。
議論の途中で恐縮でございますが、加納政務官が間もなく国会のほうに行かなければいけませんので、今朝のテレビのプルサーマルのニュースに関連して政務官のほうから一言ございますので、よろしくお願いいたします。
加納大臣政務官 この会議が始まる前に、委員の先生方から「今日の朝7時のNHKのテレビニュースに乗った『プルサーマルは今年の夏やるのは無理だ』といったことは事実ですか」というお尋ねがございました。私もNHKのテレビニュースは見ました。それから朝刊は極力情報を集めたつもりでございますが、朝日新聞、産経新聞、日本工業新聞、東京新聞等6つほどの新聞しかまだ見てないのでございますが、そこまでの情報で事実をちょっとご報告したいと思います。
今日報道されましたテレビは、書き取ってないので、記憶が違っていたらごめんなさいですが、おおむねこういうことだったと思います。昨日、6月24日、東京電力が経済産業省原子力安全保安院、それから福島県のほうに福島第一原子力発電所3号機の定期検査の申請を出しました。これに対して県のほうは「プルサーマルについては現在、県のエネルギー政策検討会で勉強しているところである。まだ県民の理解が得られていない、というような認識である」。ここからはテレビのコメントになりますけれども、「このようなことから、MOX燃料の装荷は今年の夏は無理だということになった」というように私は聞いたわけでございます。新聞のほうも前段のほうは全く同じ表現でございますが、最後のところについては幾つか記述がございまして、「必ずしもだめとは言わないけれども、難しいなった」とかいうような表現になっております。
事実をご報告申し上げたいと思います。昨日、東京電力が申請を出したのは事実で、これは確認してございます。原子力安全・保安院でももちろんそれは受けております。その中で次期定検、今回やる定期検査でプルサーマル(ウラン・プルトニウム混合燃料を軽水炉で燃やすことでございます。今でも軽水炉の中ではプルトニウムが3分の1ほど仕事をしているわけでございますが、初めからそういう燃料を装荷するということでございます。これはかつて了解を得た話でございます)を実施したいということで申請を出し、その旨を県にも連絡した、というのが第1点でございます。
これまで日本の政府としましては何をやってきたのかと申しますと、プルサーマルは国策として進めるということで、「これを自治体が受け入れてくれることが望ましい」ということは福島県にも伝えているところでございます。これは今日報じられておりませんが、こういうことが2つ目であります。
3つ目でございますが、地元の双葉郡の8つの町村及び議長から成る双葉地方のエネルギー政策推進協議会というのがございます。これは正に地元の第一線の町長さん、村長さん、議長さんなどが入っているところでございますが、ここでは県に対して「早急にプルサーマルの実施が望ましい」ということを既に提言しておられる。これも全く報道されておりませんでしたけれども、3点目としてこれが事実であります。つまり、地元の組長さん等は「やってほしい」「早くやろう」ということを言った、というのも事実でございます。
4点目は、これでだめになったかどうか、という事実でございますが、これはそうではないと私どもは認識しております。燃料の装荷、燃料を実際に入れるのは10月上旬が目途になっておりますから、これからまだ3か月以上ございます。したがいまして、県の理解が得られると私は希望しておりますが、県の理解を得てプルサーマルが実施される、ということが期待されているところでございます。
参考までに申し上げますと、県のエネルギー政策検討会というのは、県知事が提唱されて、プルサーマルだけではなくて、核燃料サイクル自体をよく勉強しよう、政策の勉強をしようということで1年ほど前から始められ、既に17回開かれておりますが、これに対して国が参加したいということについては今日まで受け入れられていない、というのが事実でございます。今日の新聞では「原子力委員会との対話は受け入れる」という記事が一段記事で載っておりましたが、知事ももちろん良識のある方でいらっしゃいますので、様々な意見も聞いて、ということだろうと理解しております。
最後に一言付け加えさせていただきます。新しい情報としまして、去る6月14日をもってエネルギー政策基本法が公布、施行になりました。この中で、国会でもさんざん議論されたことでありますが、地方自治体と国の関係について明記したところでございます。国はエネルギー政策の基本方針に基づき基本計画をつくる。基本方針というのはエネルギー政策基本法で国会議員が国会で決めるということで、今回、法律で正式に決まった大事な基本方針がございます。エネルギー政策は今回の二法人にも関係しますが、第一にエネルギーのセキュリティを重視する。安全保障は大事である。安定供給は大事である。カリフォルニアの無責任な行政の二の舞をやってはいかん。ペルシャ湾に過度に依存してはいかん。石油の備蓄も大事である。メインになりますが、原子力を含む非化石燃料。ただし、太陽光とか風力も、役割は小さいけれども、排除をしない。こういう非化石燃料、化石燃料以外の燃料に転換していく、ということを明記したエネルギー安全保障政策と、2つ目は環境保全政策であります。セキュリティと環境対策を極力重視していこう。環境に良い自然エネルギーは小なりといえどももちろん推進しますが、原子力がメインになることは誰の目にも明らかで、これは国会で十分に議論されたところであります。その揺るぎなきセキュリティと環境の原則の上に立って市場原理を推進する、市場原理を活用していく、競争政策を積極的にやっていこう、こういうことで国会議員同士で12時間議論して、議院立法で成立した。その中で「国はこの基礎方針に基づいて基本計画をつくり、自治体は国の施策に準じて施策を行う」と明記してありまして、これもだいぶ議論になりました。「自治体がプルサーマルに反対したら、国はできないのか」とか議論がありましたけれども、日米安全保障条約のような国全体に関わる問題については、「1,000人とか、2,000人の住民投票で決めるというのはいかがか」という議論が学説としてある、ということも国会討議で披露されております。最終的には国の施策に準じて地方自治体は施策をやっていただく。「国の施策に反して施策をやっていただく」とは毛頭書いてない、ということも事実でございます。つまり、プルサーマルは国策である、原子力の利用は国策である、ということになりますと、これに準じて地域の特性を加味しながらやっていただく。もちろん「地域の住民の方々のお気持ちというのは十分に尊重しなければならない」と国会答弁でなされているところでございますが、そういうことがあった、ということを一つ付け加えさせていただきたいと思います。
文部科学省の政務官としてはちょっと発言が過ぎているところは、政治家としての発言と理解いただきたいと思っておりますが、これは我が省としても責任をもって言える、国会で議論された内容をご報告したところでございます。
なお、「これはおかしい。原子力はゴリ押し法だ」というような記事を書いた一部の新聞もございましたけれども、国民が選んだ国会議員は88%の方がこの法案に賛成をした、ということも付け加えさせていただきます。
ありがとうございました。
これから国会が始まりますので、誠に申し訳ございませんが、中座させていただきます。あと2、3分だけいさせていただきますので、何かございましたら、お答えさせていただきます。
坂田審議官 政務官、どうもありがとうございました。
それでは基本報告の骨子に戻りまして、3〜4ページの「役割」「組織・運営の在り方」、それから5ページの「今後の検討事項」、このへんを通じましてご意見なりご質問なり、確認したいこと等々ございましたら、お願い申し上げます。
住田裕子委員 この原子力二法人統合準備会議というのは、6月をめどにしていた、というふうに最初はお聞きしていたんですが、今回8月ということになりまして、ほぼ2か月のズレがあります。締切りとしては平成16年の法案提出ということはほぼ揺るぎないものだろうと思いますと、今後どういうような形でこれが動いていくか、ということが委員として非常に関心があるところです。これは委員だけではなく、国民としても注目している部分があろうかと思います。今回、「今後の検討事項」として最後に3つ課題が挙げられたようで、これについてはどなたがどういう形で関わって検討していかれるのか、またスケジュール的なものはどういうものなのか、ということをひとつ教えていただきたいと思います。
その中で、これは私の意見でございますけれども、この検討事項を検討するに当たっては、やはり開かれた形で国民の意見も入れつつ進めていただきたいということと、もう一つは、当事者の二法人の方々が、今回は違った立場で関与されたわけですけれども、主体的に関わっていただけるような場を今後つくっていっていただき、上から押しつけられた基本理念等ではなく、当事者の方々が自らのものとして運営、実施していけるような形でのシステムをこれからつくっていただけるようにしていただきたい、ということでございます。
坂田審議官 今のご質問に関連して、私の申し上げることが役所を代表する意見ではございませんけれども、今後検討しなければいけない材料として申し上げますと、去年の特殊法人の整理合理化計画が閣議で決定されたときの一つのスケジュールに関わる考え方は、法律を出すのが16年度までと書いてありますので、16年度ということになりますと、平成17年の3月末までに法律を出す、ということになりますので、その時点ということを考えますと、常識的には平成17年の1月とか2月に統合法法案を出す、ということだろうと思うんです。仮にそのときに法律を出せば、その通常国会で決めていただくことになりますので、新しい法人の発足は17年度の適当なときというようなことだろう、という具合に思います。それが基本スケジュールだろう、という具合に思います。あと今後の課題として、世の中の動きを見まして、そのスケジュールについて変更を加える必要がひょっとしたらあるかもしれませんけれども、一応そういうことだろうと思っております。
それから「6.原子力二法人統合準備会議の今後の検討事項」は今日は3つだけしか書いてありませんが、別に3つに限らないと思っております。8月にこの基本報告を出していただきますと、そのときにどこまで書き込んだものになるか、ということがまず第一点だと思うんですけれども、どこまで書き込んだものかというのを見ていただいた上で、こういう点はさらにもう少し掘り下げて検討すべきだ、ということがきっと浮き上がってくるだろうと思うんです。「6」はおそらくそういうことがあるのではないかと思って書いてある、ということですけれども、私どもは今、この秋以降にそのへんを続けて議論していただいたらどうかと考えております。当然オープンでやりたいと思っておりますし、今、住田(裕)委員がおっしゃいましたように、この8月までは両法人は当事者としては入っていただいておりませんけれども、秋以降もう少し詳しい議論をするのであれば、両法人にも入っていただいて議論をすることが適当かな、という具合に思っている次第です。
そういう形で議論を進めていけば、基本報告ではなくて、より深められた報告を出すことになると思いますけれども、それは例えば今年度内にも出すというようなことが一つ考えられるのではないか、という具合に思っております。あとはそれを踏まえまして、どちらかといいますと、両法人の当事者がいろいろなことを検討すべきだと思いますし、役所もそれなりにしっかりかんで相談しながら進めていく、というようなことではないか、という具合に思っている次第です。
小林庄一郎委員 私が申し上げると同じことばかりになるんですけれども、「(4)経営基盤の確立」というところで、その前提として累積欠損金を取り上げていただき、また廃止措置あるいは廃棄物の処理費等についてお取り上げいただいたということについては感謝をしたいと思います。
まず累積欠損金については、設立前に適切な処理を図るということになって、出発前に身ぎれいにしていただくということですが、「適切な処理」というのは非常にわかりにくいので、実際どういう具体的な案をお持ちなのか、明確にしていただきたいと思います。それから2番目に、二法人においてカウントして、コスト、スケジュールなど可能な限り明らかにする。発足した後、お2人が結婚した後、「新婚家庭は独立してやれよ、そこで借金をどうやって返すか、ゆっくり長期的観点から計画的、安全かつ円滑に実施できることを考えよ」、これではお祝い金の代わりに借金の質札か何かを新婚家庭にお渡ししたようなことで、新法人は恵まれた出発とは言えないと思いますので、やはり発足以前にストーリーをはっきりして、少なくとも安心して新家庭が持てるような状態にして……。どこかでだんだん肉付けが行われると思いますけれども、明確にしていただきたいと思っております。
今村研究開発局長 今の点は承りました。特にの廃止措置、廃棄物の処理処分に係るコストについては、取りあえずの概算は既に出されております。その中で既に廃棄物を持っている分もありますけれども、これから新しい法人が作業をする、いずれは例えば「もんじゅ」なども何十年か後に解体する、そういうものも含めた計算をいたしているわけでございまして、そうしたこと全体を明らかにしていくということでございます。今、小林委員からご指摘のストーリーを明確にして、どういうふうになるんだ、ということについてはできるだけ明確にするように努力をいたしたい、というふうに思います。
小林庄一郎委員 電気事業者は既に御存じのような積立制度を設けておりますが、そういうふうな仕組みをきっちりとつくって、将来、不安のないような形にしていただきたいと思います。
坂田審議官 ありがとうございました。大変大事なご指摘だと思います。
この案は骨子の骨しか書いてありませんので、これ自体がすごく変だということはないのかもしれませんが、関連して、「基本報告としてはこういうことをしっかり触れるべきだ」というような観点でご意見等ございましたら、ぜひお願い申し上げたいと思います。
熊谷信昭委員 私は骨組みとしてはこの骨子案で大体いいのではないかと思うんです。しかし、この骨組みを基に肉付けをしていただくときに、何とかならないかなと思う点があるので、それを申し上げたいと思います。
研究機関としての二法人を統合するということの積極的な意義といいますか、あるいは建設的な意義、意欲といいますか、それが骨子案のざっとした書き方だと、どこにも見当たらないんですね。「国民の原子力に対する期待感と信頼は……低下し損なわれているのが現状。二法人の統合に当たってはこのような現実を直視することが必要」そういう「基本認識」はいいかと思うんですけれども、では研究機関である二法人が統合されたことで国民は信頼と期待感をもつようになるのだろうか、というのが筋道としてはわからないんですね。
では、なぜ統合するのかということを理解しようと思うと、法人の整理統合という大前提で行政改革の観点を踏まえて事業の見直しやスリム化をやるというんだったら、「法人の数を減らせ」というお国の大方針があるから統合しなければならない、そういうストーリーになっていくんですね。
そんな感じをさらに強めるのは、「二法人の統合を原子力に対する国民の支持を回復する……重要な機会と捉え」というのは、「無理やりやらされるんだけれども、それを良い機会ととらえて何とかしよう」というように……。全体的な前半の流れが「統合しなきゃならんから、やるんだけれども、やるからにはなるべく良い結果が得られるようにしようか」そういうような消極的な意欲というか、意義というか、そういうものしか私には感じ取れないんですね。
まとめて一つにして大きいものにすれば、常に良いと言えるのか、ということも基本的には問題でありますけれども、今までの実情を見ていても、分割したほうがいいということで、JRも分割されたし、NTTも分割されたし、古くは電力も分割されてきたわけです。経営を合理化したり、競争的環境を実現しようと思えば、そうしたほうが良い場合もあるんでしょうね。
しかし、これは研究開発機関ですね。研究開発機関を統合するというのはどういう意義があるのか、ということをちゃんと言えないものかと思うんですね。研究開発機関ですから、JRとか、NTTとか、電力会社とはやはりちょっと違うんです。金儲けをするため、あるいは具体的・直接的サービスをするための機関ではないわけです。統合したほうがいいというので、銀行などはみんな統合して褒められているので、本当はどちらがいいのかなかなかわからないんですね。そういう事業体と比べて議論するとわからなくなるんですが、単科の大学に対して総合大学、ユニバーシティが持つ研究教育上の単科大学では得られないメリットといいますか、そういうようなものにむしろ近いのではないか、という気がするんです。
要するに、申し上げたいことは、「やらなきゃしょうがないので、やることになったが」そういうトーンでなくて、研究機関として統合することの積極的な意義あるいは建設的な意味というものを初めの部分の「基本認識」「基本理念」で何とかならないかな、という気がするんですね。統合したら今までに比べて研究開発を遂行する上でどういうメリットがある、ということを言えないものかな、という気がいたします。
「効率的・効果的なマネジメント体制の構築により迅速な意思決定システムを確立し、経済社会の動向に応じた時宜を得た活動を展開する」というのは、二法人を統合する際の理念というよりは、あらゆる組織に対して言える基本的な事柄なので、肉付けをしていただくときに、研究開発機関である二法人を統合することによる積極的な意義、2つが単独であった場合に比べてどう良くなる、ということが一般国民にもわかるような説明に何とかできないかなと……。具体的な提案ができなくて申し訳ないんですが、そういう気がしてならないんです。
坂田審議官 統合して元気が出なければいけないと思いますので、今の熊谷先生のご指摘は本当に大事だと思います。やはり「基本認識」のところかな、という感じもいたしますので、統合の積極的あるいは建設的な意義についてぜひ工夫をさせていただきたいと思います。
住田健二委員 私などは原子力をやっていたほうですちから、今の熊谷先生のご指摘は、いみじくも一生懸命になって事務局が隠蔽していたところをはっきりとおっしゃったと思います。原子力関係者の中でも、二法人の併合ということについては、「国策として閣議決定までされたんだから、今さらどうしようもない」と半分あきらめに近い気分でこの問題を見ている方がかなり多いと思うんです。そういう意味では、先生の今のご指摘というのはある意味では非常に非常にポイントを衝いたご指摘だ、というふうに思います。
しかし、それでおしまいではいけませんし、私はまたちょっと別の見方があると思っているんです。動燃が原研から分かれていって、たまたまそのときのいろいろな行政上の都合で核燃料のほうの公社とついた、というような経緯があったりしまして、歴史的には両者というのはある意味では原研から分かれて出た部門であったり、ほかのところでまた育ったものがあったりして、ミックスして並んでいるわけです。人の行き来もありますし、血縁関係はかなり濃いわけです。
その中で、これまで両者が競合し合ってプラスだったという面もありますけれども、個人的にいうと、開発と研究を無理やり引き裂いてしまった、という面がなかったわけではない。一つの組織で動くことになれば、やはり新しい面といいますか、非常に大きな総合力が……。先生が今いみじくもおっしゃってくださったんですけれども、単科大学と総合大学の違いみたいなものがもう一回そこで期待できるのではないか。
私はこの前、具体的に2、3例を申し上げたつもりですけれども、原研とサイクルに人材がおりながら、それが両組織に広く分散しているということで、そのあたりのピックアップ・メンバーを集めてきてやれば、すごい精鋭部隊がつくれる絶好のチャンスであります。今まで両法人ともお互いに協力関係ということで、サイクルのプロジェクトを原研の人がある程度手伝うとか、逆のこともやっているんですけれども、どうしてもその壁がかなり厚かったと思うんです。ある新聞社が「仲の悪い兄弟」と表現をされたみたいですけれども、そういう面がなかったわけではない。この垣根を取り払えばずいぶん良くなるだろうと思います。
例として私が申し上げたのは、軽水炉と高速炉の間に何がくるか、という議論については、私どもの関係者の中でいろいろな意見がございまして、それぞれの思惑でそれぞれがいろいろなことを言っておりますけれども、残念ながら、それを国全体として総合的にどこかでまとめて大きな部隊をつくって、もう一回きちっと締め直す、というようなことはなかったと思うんです。それもこの両法人の合併の最大のメリットの一つだ、というふうに考えております。
それから皆様のご指摘の中では社会科学的な考慮、先生のところの研究所が正にそうですけれども、今までの両法人はあくまで技術的なことだけだったんですけれども、(部分的にはなさっているんですけれども)もしそういうものをやるとすれば、一つのチャンスですね。
それから低線量被ばくの問題は私も申し上げたんですが、秋元先生もおっしゃってくださいました。これはちょっと無理かなとは思うんですけれども、もしチャンスがあるなら、日本の国の政策としては国が全体をまとめて見る。部分部分でバラバラやっていますけれども、一つこういうところにセンターをつくる機会ではあります。もしそういうことが可能であれば、大きなチャンスだと思います。
たまたま私が関係したところでちょっと見て、すぐ気がつくわけですから、皆様のご専門のところで「一緒にやれたらいいのにな」ということは実感としてあったと思います。今まで無理やり縦割りにやっていたという面がありますので、それをエンカレッジしていただければ……。それは決してマイナスだとみながあきらめて、いやいややっているというわけではございませんので、先生の今のお言葉をぜひどこかに反映して取り上げて、それを推していただけたらありがたいと思います。
秋元勇巳委員 後ろの席に座っておられる方がもし発言されれば、そのほうがより今の現実を代弁していただけるのかもしれないんですが、今、住田先生がおっしゃったような経緯なんです。
ただ、これで統合ということが決まりましたので、現実にはサイクル機構と原研との実地の研究者の間でかなり濃密な対話が今、進み出していると思っています。私ども原子力産業会議という場でも、そういう方々がおいでになって何回か議論をしています。いわば根元は同じテーマの研究開発を二法人が別個に進められた、という部分があるわけですけれども、これは二法人が一緒になったらどうしようかということについて、みながかなり議論をされて、それなりに今、求心力が出始めている、というような感じがしております。
先ほど坂田審議官から、今年の秋から二法人の方々もここに参画して、現実に何をやるかということを議論しよう、というようなお話を伺って、大変けっこうだと思っているんですけれども、二法人から具体的に「一緒になったときにこういう相乗効果が出てくる」「こういうことが出てくる」というような話がおそらく今年の秋からは聞けるのではないか、というふうに思っております。総論の場でインセンティブを打ち出せといっても、本来の動きがもともとそういう方向だったものですから、「こういう利益があるから、一緒にやるんだ」ということが出てこない、ということがあるわけですが、一緒になった結果として、「一緒になってよかったね」というものを二法人の現場の方たちがつくり上げていく意欲もおもちだし、現実にそういう動きで動いておられると私は思っておりまして、今年の秋からの議論に期待したい、というふうに思います。
坂田審議官 今、秋元委員から秋からの議論についてちょっと触れていただきましたけれども、これまで6回ほどいろいろな方々にお話を聞いて、それを踏まえて先生方からご意見をいただき、「資料第1号」に整理されておりますけれども、個別の事業をどうするかというのは正にこの秋からの議論になりますので、それに関連して何かご意見等ございましたら、この機会にお伺いしておきたいと思います。
住田健二委員 私は一番最初の会合のときに「ここの委員に原子力をプロパーでやっている人の数が少ない」という大変失礼なことを申し上げたんですけれども、それは逆にいいますと、大局的な立場でこの問題を見ていただくのには絶好のチャンスだと思うんです。むしろ当事者であった人間よりは、皆さんのようないろいろな意味で高い立場で見ていただける方に見ていただく絶好のチャンスだと思うんです。
そういう意味で、当事者があまりいろいろなことを申し上げるよりは、ということがあったんですけれども、いよいよそういう各論の場に入ってまいりますと、やはり実体論が出てまいります。逆にいいますと、先ほど西澤先生から「夢じゃ困る。現実に直結したものを」と非常に厳しいご指摘があったんですけれども、現場で本当に苦労している人、あるいは少なくとも近い過去においてそういう経験をされて痛い思いをした人たちが、正直に自分の失敗を申し上げて、やるような構成というか、そういう場でないといけない、というふうに思います。
親委員会としてのこういう全体を見る委員会はいいんですけれども、できましたら少し部会的なところもつくっていただいて、そういうところで専門家同士で議論をしていただいて、それがこういうところに上がってくるような……。今ですと、率直に言いますと、我々が断片的にいろいろなことを言って、事務局で……。元科学技術庁、文部科学省は優秀な方がそろっていますから、いわゆる普通の一般の官庁の行政官よりははるかに科学技術的な問題については理解が深い、というふうには思いますけれども、やはりおのずから限界があります。ですから、実務機関の両機関からの参加ということだけではなくて、我々の同業者という言い方をしてよろしいのかどうかわかりませんが、原子力に少し関係の深い方にもそういう場に参加していただけて、いろいろ議論をしていただけるような方向にもっていってほしいな、というふうに思います。
というのは、逆にいいますと、何回も申し上げていますけれども、原子力というのは非常に幅が広うございまして、核融合にしても高速炉にしても基礎から最先端までやっています。ものすごく広いものですから、小人数ではなかなかカバーし切れない点があります。ですから、そちらのほうの人も参加した上で両機関の人が加わった場というのをぜひ考えていただけたら、というお願いでございます。
坂田審議官 秋からの検討のやり方については、今、住田先生がおっしゃったことも含めて、よく検討させていただきたい、という具合に思います。
西澤潤一委員 今、法律が変わるというお話がございましたけれども、まだ勉強させていただいておりませんから、どういうふうに変わるかわかりませんが、方向としてはこれでますます組長さんが窮地に立つ可能性が多い。最近、いろいろな情勢で少し好転の兆しはございますが、ちょっと前に戻っていただくと、国民の世論がかなり厳しかったですね。そういう状態で、それは悪いことではないんですが、中央からのいろいろな指示が力を持ってくるということになりますと、これはまた非常に不安定な状態に入ってくるのではないか。そういう意味では、やはりこの研究所というものがバックをちゃんとやるという体制をしっかり固めておきませんと、これから国民の間の摩擦がますますひどくなってきてしまうのではないか、という気がいたします。この際そこを特に注意をしていただきたい、という気がいたします。
坂田審議官 ほかにございますでしょうか。
それでは大体予定した時間に近くなりましたので、今日のところはこれで議論を打ち切らせていただきたいと思います。
最後に西澤先生のおっしゃったことが大事な点としてございますが、今日は振り返ってみますと、放射線利用の問題、長計が非常に大事だという点、それから原子力の新法人、長計を実施する主体として大事だという点、放射線利用に関連して、核融合であるとか加速器、こういった点も非常に大事な課題として位置づけていく必要があるではないか、というようなご意見もございました。それから放射線影響に関する問題は、エネルギーのほうの切り離してやるというようなことではなくて、きちんと整合をとってやらなければいけない、というようなご指摘がありました。それから両法人がこれまでどんな仕事をしてきたか、その上で新法人になればどういうスリム化とかシナジー効果が出てくるのか、ということを明らかにすることが大事ではないか、というお話がございましたし、現実をちゃんと踏まえて、現実の場での研究から夢が出てくるというようなこと、職員の皆さんが全員で責任をもってしっかり取り組まなければいけない、というお話もございましたし、透明性に関連して、情報公開でありますとか、また評価については特に重層的な評価の構造、体制をつくっておくことが大事だ、というお話もございました。産と学の連携をする上で新法人がその連携の基軸を担う役割をすることが大事だ、というお話もございましたし、今回の統合は行革という枠の中の話ではなくて、それをはるかに超えて、国益とか、世界益のためにしっかり乗り出してやっていく、というような考え方を打ち出すべきではないか、というお話もございました。それから評価の体制などにも関係いたしますけれども、経営に関わる話だと思いますが、産と学というものをこの新法人の外に位置づけるというような考え方ではなくて、一体となってこの法人を運営しないといけないのではないか、というご指摘もございましたし、統合に伴いまして、どれだけ減量化していくのか、スリム化していくのか、というご指摘もございましたし、累積欠損金あるいは廃棄物の処分については、やはり新法人の発足の前にきちんと処理をしなければいけないのではないか、というお話も改めてございました。そして、統合の積極的な意義について最後のほうにお話があったかと思います。
今日お伺いいたしましたご意見については、十分にそれを踏まえまして、次回には基本報告のフルテキストの案として出させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
あと事務的なことを申し上げさせていただきたいと思います。次回でございますけれども、7月16日(火)の朝8時からキャピトル東急ホテル竹の間で行うことになっております。やはり食事をしていただきまして、会議自体は8時20分から10時20分まででございます。それから取りあえずの基本報告をまとめるための最終会合として、第9回の会合を8月5日(月)午後3時から午後5時まで同じキャピトル東急ホテルの竹の間でやりたいと思っております。
本日は以上で終わりたいと思います。よろしゅうございましょうか。
では、これで終わります。どうもありがとうございました。