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原子力二法人統合準備会議

2002/06/13 議事録
原子力二法人統合準備会議(第6回)議事録



第6回  原子力二法人統合準備会議


1.日時 平成14年6月13日(木)  14:30〜

2.場所 ホテル オークラ本館1階「アトランティックルーム」

3.出席者      
(座長) 青山  文部科学副大臣

(副座長) 加納  文部科学大臣政務官

(有識者) 秋山守  財団法人エネルギー総合工学研究所理事長
木村孟  大学評価・学位授与機構長
熊谷信昭  大阪大学名誉教授
小林庄一郎  関西電力株式会社相談役
住田健二  日本原子力学会会長
住田裕子  弁護士
田中豊蔵  ジャーナリスト
西澤潤一  岩手県立大学学長
薬師寺泰蔵  慶應義塾大学法学部教授

(説明者) 鳥井  日本経済新聞社論説委員
吉川  日本学術会議会長
村上  日本原子力研究所理事長
齋藤  日本原子力研究所副理事長
都甲  核燃料サイクル開発機構理事長
竹内  核燃料サイクル開発機構副理事長

(文部科学省) 青江文部科学審議官、今村研究開発局長、林大臣官房審議官、 坂田大臣官房審議官


4. 議事
  1.1. 開会
2. 原子力二法人統合に関する意見聴取(マスコミ関係、日本学術会議会長)
3. 原子力二法人統合に関する意見聴取(日本原子力研究所/核燃料サイクル開発機構)
4. 各委員からの意見発表
5. 閉会

 
5. 配付資料
 
資料1−1.   原子力開発体制見直し検討会からの提案
  (鳥井日本経済新聞社論説委員)

資料1−2.   原子力二法人統合準備会議への提言要旨
  (鳥井日本経済新聞社論説委員)

資料2−1.   新法人の役割・機能について(1)-理念、運営方針などの基本的考え方-
  (日本原子力研究所/核燃料サイクル開発機構)

資料2−2.   新法人の役割・機能について(2)-主要業務-
  (日本原子力研究所)

資料2−3.   新法人の役割・機能について(3)-主要業務-
  (核燃料サイクル開発機構)

資料2−4.   新法人の役割・機能について(4)-相乗効果と今後の課題-
  (日本原子力研究所/核燃料サイクル開発機構)

資料3.   日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合についての意見
  (秋山委員) )

資料4.   原子力二法人統合にあたっての提言
  (秋元委員)

資料5.   原子力二法人統合に当たって
  (木村委員)

資料6.   新法人に期待するもの
  (熊谷委員)

資料7.   原子力2法人統合にあたっての意見
  (小林委員)

資料8.   原子力研究開発関連二法人統合に関する私見
  (住田健二委員)

資料9.   原子力2法人統合に当たっての意見
  (住田裕子委員)

資料10.   原子力二法人統合準備会議審議日程

資料11.   第4回原子力二法人統合準備会議議事録

資料12.   日本学術会議対外報告:日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合と我が国における原子力研究体制について
  (日本学術会議)

参考資料1.   動燃改革検討委員会報告書の概要

 
  

坂田審議官  それでは最初に開会に当たりまして、青山副大臣よりご挨拶をいただきたいと思います。  
  

青山副大臣  皆様にはご多忙の折ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
  原子力二法人統合準備会議も今回で第6回目を迎えました。本日は、マスコミ関係の有識者として鳥井弘之日本経済新聞社論説委員から、また動燃改革検討委員会の座長を努めていただきました吉川弘之日本学術会議会長からご意見を伺う予定でおります。さらに、これまでのご議論を踏まえまして、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合に関する意見を合同で発表することとなっておりまして、村上健一原子力研究所理事長及び斎藤伸三同研究所副理事長、都甲泰正核燃料サイクル開発機構理事長及び竹内榮次同機構副理事長にお越しいただいておりまして、これまでの業務の評価と新法人における業務とその運営についての考え方を伺う予定でございます。さらに、今回は各委員の有識者の方々からもそれぞれご意見をご発表いただく予定でおります。本日も貴重なご意見を数多くいただきたいと考えております。
  次回からは中間報告書案の取りまとめに入っていきますので、各方面の有識者の方々をお招きしてご意見を伺う形式で開催させていただくのは、今回が最後となる予定でございます。皆様方にも活発なご議論をお願い申し上げて、開会の挨拶とさせていただきます。
  ありがとうございます。  
  

坂田審議官  それではこれから進めさせていただきたいと思いますが、最初に資料の確認をさせていただきます。
  (資料確認)
  それでは第1の議題は、先ほど副大臣からご挨拶でございましたけれども、最初に日本経済新聞社の鳥井論説委員と学術会議の吉川会長よりご意見をちょうだいしたいと思っております。まず最初に鳥井論説委員のほうからお願い申し上げます。
  鳥井日本経済新聞社論説委員
  本日は日本経済新聞の論説委員としてお話をさせていただきます。
  ―OHP(「資料第1−2号」P.1)―
  「資料第1−1号」に私どもがつくりました資料は入っておりますが、今日は時間がないので、その要旨でご説明させていただきます。
  なぜこんな資料をつくったかといいますと、時代と環境の変化で日本の原子力体制というのは再構築しないとだめだ、ということを強く感じておりまして、二法人統合こそ再構築のチャンスで、どうやってチャンスを生かすべきか、というようなことを考えたからであります。
  どういうことをやったかといいますと、原子力や周辺に携わる有志の人たちに集まってもらって、ブレーンストーミングをやりました。どういう人が集まったかについては、「資料第1−1号」に付いております。匿名希望という方もいらっしゃいました。まず、日本の原子力開発というのは何のためにやるのだろう、ということを検討したわけであります。そこから始まりまして、では、その目標を達成するのに何を考えなくてはいけないのだろう、さらに従来の体制の反省点というようなこと考えたり、目標を達成するために日本が全体してどういう機能を持ってなくてはいけないか、ということを考え、新法人も含めて、各大学あるとか、いろいろなプレーヤーがどういう役割を果たすべきかを考え、最後に新法人がどういうことをやってほしいか、ということを考えていったわけであります。
  まず目標でありますが、従来は日本のエネルギーの安定供給というようなことが第一の目標で、あとから先端技術の先導役というようなことが付け加えられたわけでありますけれども、それではだめなんじゃないだろうかということで、国際的に最先端のエネルギーの選択肢を日本がシェアリングしていく、そういう能力を持つ国になろうじゃないか、ということをまず目指すべきではないか。それから、それを通して、地球環境とか、人口の問題とか、水の問題などがあるわけですが、それを通してグローバルな課題へ解決策を提示して、それに貢献しようではないか。それを実現するために、国際競争力のある原子力産業を育てようではないか。こういったことを目標にしてはどうか、ということになりました。
  次に目標を達成するために考えるべきことというのを次にやったわけでありますが、まずビジョンをちゃんと提示して、ビジョンと予算、開発体制にきちんとした整合性をもたせる、というようなことを考えました。特に、核融合とか、放射線利用のような非エネルギー研究というのは少し別の枠で考えていったらどうだろう、ということが話題になりました。それから、研究開発には競争的原理を入れようではないか。今までは概算要求というかっこうで組織にお金が配分されていたわけでありますが、もっと研究テーマに直接ファンディングする、そういったようなことを考えようではないか。そのときにはそういった競争的資金の受け手が多様に存在することが極めて大事であろう。それから評価というのも非常に大事ではないか。次に、アジアなどの成長市場をターゲットにしよう。日本の原子力市場というのはこれから急成長するということは考えにくいわけでありまして、アジアというところをターゲットにしようではないか。それから人材の流動化を図ることが大事である。それから研究開発のインフラ、知的基盤の整備をすることが大事である。それから産業政策を実施することが大事であるし、取り分けインファントな産業を育成していくというようなことが大事である。さらに、プロジェクトと学術、産業技術と学術、こういったもののシナジー効果がとても大事ではないか、ということになったわけであります。
  ―OHP(P.2)―
  日本全体としてどういう機能を備えたらいいのだろうか、ということを検討した詳細が「資料第1−1」の「参考−2」に付いております。
  そういう中で国はどういうことを担うべきであろうかというと、柔軟で十分で、誰でも応募のできる競争的資金を準備して、評価をしてきちんと配分する、そういう機能を持つべきではないだろうか。今でも競争的資金はあるわけでありますが、やはりちゃんと実用というところまでいけるような形の競争的資金の準備が必要ではないか。それから原子力に対して国が何を求めるのか。政策ニーズをちゃんとはっきりさせてください。それから研究の知的基盤整備とか、インフラ整備をちゃんとやってください。産業政策をちゃんとやってください。インキュベーション機能を持ってください。非核融合など非エネルギー予算との明確な区分をしてください。こういったことを国がやるべきではないだろうか、ということになりました。 さらに大学への期待は、どういう分野でも同じことでありますが、革新的で最先端、つまり、創造的な研究をやって原子力技術の芽をつくって、今まで原子力は電気をつくることにしか使わなかったわけでありますが、多様な原子力の利用の道を模索する、こういうことを大学に期待したい。それから、もちろん人材の養成、供給、受入れ。今、大学では卒業した人のキャリアパスというのがあまりなくて困っているわけでありますが、学生のキャリアパスをしっかり開拓して確保しなさい。それから研究炉など研究施設の維持・運用をちゃんとしてください。こういうようなことが大学への期待である、こういうことであります。
  従来の原子力開発体制ではほとんど顧みられなかった原子力産業でありますが、電力の下請から脱却して、新市場を自分で開拓する気概をもってください。それからメリットに見合うリスクを負担する覚悟をしてください。それから革新的原子力技術の商用化というようなことに取り組んでください。他のプレーヤーとの協力ということをしっかり考えてください。国際競争力という視点からちゃんと経営してください。産業としてしっかり研究に対するニーズを発信してください。こういうことであります。
  電力会社への期待でありますが、かつては電力会社が日本の原子力開発をほぼ全面的に引っ張ったわけでありますが、これからなかなかそうはいかないわけでありまして、ユーザーとしてしっかりどういうニーズがあるのか、しっかりちゃんと発信してください。それからニーズに応える研究に対してちゃんと対価を払ってください。ユーザーとして研究開発とのシナジー効果をちゃんと追求してください。こんなことが必要だというわけであります。
  ―OHP(P.3)―
  そういうことから、では新法人がどういう機能を持つべきか、という話になるわけでありますが、まず研究開発の機能については、国、自治体、産業、ユーザーのニーズに応える研究開発機能。これは軽水炉も含めてであります。安全や核不拡散に関する研究開発機能。競争的資金に応募して、ちゃんと基盤的研究をやる機能。今までみたいにお金が国から降ってきて、それでやるというのではなくて、きちんと競争的資金に応募して、競争を勝ち抜いて、やる機能を持ってください。それから社会的要請に応えて臨機応変にプロジェクト研究を行う機能。産業などと協力して既存技術を継続的に改良する機能。知的基盤形成の研究開発機能。こういった機能を担ってほしい、ということであります。
  それから、新機関に強く期待することは日本の研究開発のインフラとしての役割の役割であります。プロジェクト研究を支援する機能(施設や場の提供)、それから原子力開発ですから、特殊な研究施設が必要なわけでありますが、そういったものを維持・運営、一般に広く開放して研究機関にサービスする機能、それから研究開発の負の遺産をきちんと処分する機能、大学などの研究成果を産業につなぐ機能、こういったものを持たせる。
  このほか、安全であるとか、国際展開に関する機能とか、そういったことを考えました。
  せっかく新機関になるわけですから、少し留意点があるような気がいたします。何をリストラするかがちゃんと見えるような合体をしてほしい。それから行政目的の遂行を助ける機関であることを自覚してほしい。研究開発のインフラとしての役割を果たす意識をもってほしい。競争原理を十分働かせてほしい。
  新機関が自分の中だけで原子力開発を完結させようとしたり、中だけのシナジー効果を考えるのではなく、日本全体のシナジー効果が出るようなことを考えてほしい。それにはまず、研究主体にサービスを提供するサービス提供の機関である、ということを強く自覚してほしい。つまり、インフラを担うということを自覚してほしい。要約しますと、この2点に尽きるかな、という感じがいたします。
  どうもありがとうございました。  
  

坂田審議官  たくさんの内容を限られた時間で大変恐縮でした。どうもありがとうございました。
  それでは続きまして、吉川先生、一番最後の動燃改革検討委員会の報告書の概要も参考にしていただいて、先だって学術会議からご意見は伺いましたが、補足的に先生のほうからございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。  
  

吉川日本学術会議会長  それでは簡単にお話いたします。
  ご紹介いただきましたように、私は動燃改革検討委員会というのを平成何年かにやりまして、そろそろ記憶が薄れかけておりますけれども、大変印象的な委員会だったことは確かで、その中で決定したことを改めて考えてみますと、間違いではなかったというふうに現在思っております。しかし、行革の中で原子力研究所とかつての動燃、すなわち、サイクル機構が統合するということで、これは当時、議論したこととある意味では大変大きな違いをもっております。その点について言及してみたい、というふうに考えているわけです。
  動燃というのは、日本で先進的なエネルギーの開発をする、という非常に大きなミッションをもち、大変高い意識をもってスタートした組織であった、ということを我々は当時も認識していたわけですけれども、エネルギーという問題は動燃が発足したときよりはるかに重要な意味を最近もち始めているわけです。たぶんエネルギーが人類の生存を将来決めてしまう決定的な要因になるだろう、というふうな国際的な認識が環境と関連して高まっている、そういったことが出てきているわけです。すなわち、現在言われている持続可能な開発への一つの大きなキーファクターだということは間違いないということで、この認識を決して捨ててはいけない。言い換えれば、エネルギー開発に関わる研究者あるいはそれを経営する人たちというのは国際的な意味でも大変大きな責任を負っている、ということかと思います。そういった意味では、このエネルギー開発の重要性というのは言い過ぎて言い過ぎることはない、ということだと思うんです。
  さて、そこで当時のことを簡単にまとめてみますと、結果的に動燃で幾つかの事故が起こったり、残念なことが起こったということの原因は、一言でいえば、経営の統一性ということに欠陥があったのではないか、そういうことになります。
  それはどういうことかといいますと、当時の動燃がやっていた研究開発の中には、当時、フロンティア研究とお呼びになっていたようですけれども、そういった極めて基礎研究の部分が存在していたわけです。同時に、高速増殖炉あるいは核燃料サイクルといったような現実的なエネルギー生産の仕組みを実現する実用的なものとして開発する作業が行われていたわけです。そのほかにさらに、燃料の処理とか、濃縮ウランやウラン鉱を開発するとか、そういった様々な関連する事業を平行して行っていたわけです。
  しかしながら、ごく大まかに分けると、フロンティア研究と呼ばれる基礎研究とFBRを中心とした実現化研究開発、それからさらにこれは正にコマーシャルのものになりかかっておりました燃料処理、そういう実用化開発といった3つのフェーズのものが同時平行的に行われていたんですけれども、実はのこの3つの部門というのは風土が大変違うわけです。
  フロンティア研究というのは、本当の基礎研究ですから、自由な発想に基づいて、いわば研究者の知的好奇心に基づいて、ある意味では道のない道を歩んでいくような研究で、関係でいえば、大学の研究者というのは誰にも何も言われないで勝手にやっているわけですから、それに近いような研究の風土というものをもっていたわけです。
  それからFBRを中心としたような実現化研究というのは、大変厳しい。はっきり言って、シナリオが描かれていて、到達すべき目標が決められていて、絶対に安全性を守るという原子力独特の一つの拘束の中で開発をしなければいけない。これは他の一般の基礎研究とは全く違う風土であったはずです。
  第3のカテゴリーとしては既にコマーシャルのもので、これはコストダウンとか、競争力の強化あるいは生産の合理化といったような、これまた全く違う風土での一つの精神構造をもたなければ推進できないような研究開発という部門があったわけです。
  この3つの異なる風土をもった研究集団というものを統合的に引っ張っていく経営理念というものが欠落していた、これが一つの結論だったわけです。
  したがって、結論的にいうと、それらは3つに割ってしまったほうがいいだろうということで、フロンティア研究は原子力研究所あるいは大学研究に任せるべきである、実用的なところはできたところから事業を行っている企業にどんどん明け渡していくべきである、中心である非常に厳しい状況でシナリオに基づいて行われる実現化研究は、ほかに例もないものですので、大変独創的な研究開発並びに経営が必要だったわけですが、そういったものに特化すべきだということを主張し、結果的にはそのとおりに動燃がサイクル機構として生まれ変わったわけです。ある意味では非常に明快な経営理念と開発目標というものをもった一つの研究所に生まれ変わったということで、私はそのことは正しかったと今もって思っているわけです。
  さて、それでは再び文化の違う、比較的基礎研究である日本原子力研究所というものと、先ほど申し上げたような形で実体的に自分のあるべき姿を求めて変化してきたサイクル機構というものが合体するというのは一体どういうことなのか。合体が決まっているのだとすれば、どういう形で2つの異なる文化というものを合体することに対応すべきなのか、ということが問題になります。
  結論的にいうと、より強い経営理念が必要だということです。あるいはより次元の高い経営理念が必要だということで、これは容易なことではないと思います。私は経営しているわけではありませんので、「こういうことをしろ」とか、「ああせい」ということは一切言えませんけれども、ささやかな私自身の経験をお話したいと思います。
  現在、私は学術会議もやっておりますけれども、独立行政法人産業技術総合研究所というところにおります。私は今お話した動燃のことが頭に残っていたかどうかわからないんですけれども、産業技術総合研究所というのは実は非常に基礎化していたんです。5,000くらいの大きな研究所ですが、産業とあまり縁がなくなっていたような研究者の意識で固まっておりました。要するに、「ネーチャー」とか、「サイエンス」といったような雑誌に投稿することが主目的で、特許を取るなんていうのは下らない仕事である、こういうふうな非常に基礎的な研究所に変わっていたわけです。しかし、それでは産業技術研究にならないということで、動燃でいえば、出口のほうの産業と近いところをどうやって揺り起こすか、ということを考えたわけで、基礎研究は非常に大事です。しかし、同時に産業応用、例えばベンチャーをつくるとか、産学共同をするとか、そういった部分も必要です。これは動燃と逆行するようですが、基礎研究所と化していた産業技術総合研究所を基礎研究から実現化研究、さらには開発研究へという一つの全体的なものを包含する研究所に変換させよう、ということを私は今やっているんです。そのためには非常に強固な経営理念というものが必要になる、ということを実感しているわけです。しかも、その経営理念を私だけで5,000人に浸透することは不可能だ、というのが現在の結論です。
  その場合にどうやっているかというと、この数千人の人間を50のユニットに分けているんです。自発的にユニットをつくります。そのユニット一つ一つに一人の非常に志の高いユニット長というものを配置し、そのユニット長が自分の専門(50に分かれていますから、これは非常に狭い専門になります)の中で基礎研究から実現化研究、さらには実用化、そういう一つのコヒーレントな人的構造をつくってマネージする、ということによってのみ可能なのではないかと私は思っているんです。
  そういった基礎から実現化研究、さらには出口というような研究を一つの塊として研究グループとしてやる研究を私はフルリサーチ、本格研究、こういうふうに呼んでいるんですが、そういったことが可能ならば、動燃のような組織でマネージが難しかった問題が解決していくだろう。それは数10人から100人くらいを統括していく、みんなお互いに顔が見えるような構造の中で一つの強い研究思想、研究遂行する上での思想をもった人間がコントロールしていくということは可能である、というふうに私は今のところ結論しています。
  したがって、それを非常に大きな数千人という規模の新しい法人が実行するということは決して容易なことではない。私はやはり期待したいんですけれども、決して産総研のとおりにやれるという話ではありません。それとは全く違うにしても、従来にない新しい経営方法というものを開発しない限りは、かつて動燃で問題になりましたような、安全性への配慮とか、経済性への配慮ということと基礎研究開発ということをどういうふうに矛盾ない一つの構造としてつくり上げていくのか、ということが解決しないのではないか、そう思っているわけで、私は動燃のときよりもさらに強い大きな経営理念と経営の吸引力というものが必要である、ということをこれを機会に申し上げておきたいと思います。
  以上でございます。  
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  それではいったんここでご意見を聞くのをとどめて、今お2人の先生からお伺いしたお話の範囲で質疑応答していただければ、という具合に思います。ご質問でもご意見でもどうぞよろしくお願いいたします。  
  

熊谷信昭委員  核融合などは非エネルギー予算ということになるんでしょうか。
  鳥井日本経済新聞社論説委員
  非エネルギー予算と言い切る必要はさらさらないと思うんですけれども、いわゆる近未来のエネルギーを供給するという意味の原子力という話からはだいぶ離れた話で、次元の違うものをあまり一緒くたにしてやりますと、「原子力はたくさんお金を使っているけれども、何も成果が出ないじゃないか」とか、いろいろな誤解を与えることになるので、はるか先のエネルギー予算でもいいんですが、そこはしっかり区分する必要があるだろう、という感じがいたします。  
  

坂田審議官  両法人のほうで何かご質問でもあれば……。  
  

村上原研理事長  今のお話に正に関連したことでございますけれども、核融合の話をはるかなエネルギーとか、近未来ではだめだと言うのは、現実にITERその他で議論されていることと若干……。特に最近ヨーロッパから起こりましたファーストトラックの考え方などを考えましたときに、少し遠くにやり過ぎているのではないか、というふうに思います。  
  

鳥井日本経済新聞社論説委員  私が新聞記者になりましたのは約30年前なんです。30年前から核融合というのは50年後と言われて、いまだに50年後と言われているんですよね。その中で大きく進歩したことは私もよくわかっているつもりでありますが、「すぐにもエネルギーになるよ」というような形で研究投資をしていって、国民においしい餌を見せて、「お金を使おうよ」と言ってやって、いざ食べようと思ったら、目の前になかったというのはあまり良いことではない、というような気がするわけです。少なくともITERというのは、あれでエネルギーを取り出そうという装置ではないわけですね。ですから、そこははっきり国民がわかるようにちゃんと説明しなくてはいけない、説明できるような予算の仕組みになってないといけない、こういう感じはします。  
  

坂田審議官  鳥井委員のおっしゃっている意味はよく理解できたと思いますけれども、核融合はきりがありませんので、これくらいにします。
  吉川先生から非常に大事な経営のことを言っていただきましたけれども、これにつきまして何か先生方から……。  
  

住田健二委員  偶然ですけれども、吉川先生は、その後も、原子力とご縁が切れなくて、JCOの事故のときもわずかな期間の間にいろいろな調査をやって、まとめていただいたものですから、別の側面もよくごらんいただいております。原子力にはもっとお粗末な分野があるということも……。一言いい訳をしておきますと、事故も起こしておられますけれども、動燃などはずいぶん良いほうでございます。
  吉川先生の「非常に強い経営理念が必要だ」というご意見は全く同感でございます。ただ、これは非常に失礼な言い方かもしれませんけれども、動燃については担当者がどんどん替わられたということもあったりして、非常にグラグラ揺れていて、中の人は非常に不安がっていた、というのも事実だと思うんです。外から見てもそうですが、中の人は特にそうだったと思うんです。その点では、どちらかといいますと、受け身の体質を持っておられた、というふうに思うんです。
  一方、日本原子力研究所のほうは、理事長は元事務次官でいらっしゃる方も多かったですけれども、たとえば今の村上理事長は全体をコントロールしていらっしゃるだけではなくて、かなり自立性、自主性をもたしておられる。所員は「自分たちはこういうことをしなくてはいけないのではないか」ということで、経営理念というのは必ずしも上から与えるものではなくて、自分たちのほうからも自発的に出していく、そういう傾向が少し強かったと思うんです。
  事業の創設期というのはみなそうでございまして、私が原研にいた頃、よく冗談半分で若い仲間同士で「おまえは理事長心得違いだ」とか、「吹く吹く(副々)主任研究員だ」とか、あだなをつけました。というのは、一人一人の研究者がそれだけ、自分たちが経営までを担当しているんだ、というくらいのつもりでやっていたわけです。
  ですから、私は先生のおっしゃるとおり経営理念は必要だと思うんです。勿論、上のほうもそうであってほしいんですけれども、この統合する機会にこれから原子力をやろうという現場の人たちが、一人一人が経営者になれとは言いませんけれども、何のために自分たちがやるのかと、もう一回元に戻って考えていただきたい。これは絶好のチャンスでございまして、このチャンスを失ったら、原子力というのは本当に斜陽産業になっていくのではないかと思います。先生のおっしゃる経営理念を経営者だけでなくて、末端にまでもっていただきたいのが私のお願いでございます。  
  

吉川日本学術会議会長  むしろそういう意味で申し上げたかったんです。経営というのは決して一人で踊っているものではなくて、経営陣と一人一人の研究者が思いを一にする、私は経営というのはそういう定義で使っているわけです。
  そういった意味で、最後におっしゃいました、今のエネルギー研究者というのは一体何を目標にするのか、ということですね。これを失ったら、あるいはこれがバラバラになったら、研究所はほとんど解体する。それは抽象的でもいいと思うんです。私が最初に申し上げましたように、エネルギーというのが人類の将来を確実に支配する、ということをもっと……。エネルギー・クライシスとか、エネルギー・セキュリティのためにエネルギーをつくる、というような次元の話ではなくて、もっと大きな大目標がエネルギーにはついて回っていると思います。
  私はたまたま国際科学会議(ICSU)の会長をやっているんですが、そこで今、環境問題というのが非常に議論されているんですけれども、エネルギー問題というのは、電力会社とか、石油のメジャーとか、そういうものにコントロールされてしまって非常に政治的な課題になっているために、科学者の手が出ないんです。これは非常におかしいので、エネルギーというものも正に科学の対象とすべきものなんだ、そこから出発して、「エネルギー技術開発というものの一連のプログラムを人類がもたなければいけない」という提案をこれからするわけですけれども、そういったことをエネルギー研究者というのはもっと日常的に常に繰り返し考えながら、自分の研究室における非常に小さな研究を位置づけていく、というようなことが必要だと思います。
  そういったことを可能にする経営理念というものが本当に必要なので、経営者も非常に大きな哲学をもたなければいけないし、それに共感する研究者というものが同時に必要だ、ということだと思います。  
  

坂田審議官  時間がありませんので、本来でありますと、もっとご議論いただきたいところですが、このへんにいたしまして、次の議題に移らせていただきたいと思います。
  次は原子力研究所とサイクル機構のほうから資料に従って統合に関するお考えを拝聴したいと思います。
  では、まず原子力研究所のほうからよろしくお願いします。  
  

村上原研理事長  ただいまご紹介いただきました原研の村上でございます。
  「資料第2−1号」に基づきましてご説明申し上げます。
  青山座長、加納副座長はじめ統合準備会議の委員の先生方には、本年2月15日の会合以来、精力的にご議論賜りまして、厚く御礼申し上げます。また、私ども茨城地区の研究施設をご視察賜りまして、ご理解を深めていただきましたことに対して厚く御礼申し上げます。
  さて、昨年、閣議決定されて以来、私ども原研と核燃料サイクル開発機構とは、原子力研究開発を総合的に実施する新たな研究開発法人のあるべき姿について議論を重ねてまいりました。本日この場において説明させていただきますものは、その議論の結果、両法人間で合意したものでございます。
  まず初めに「資料第2−1号」に基づきまして、基本理念と運営方針について両機関に代わって私のほうから述べさせていただき、次に主要事業につきまして、それぞれの法人が分担して説明を行い、最後に相乗効果と統合に当たっての課題についてサイクル機構都甲理事長のほうから述べさせていただきます。
  1ページは、新方針の「基本理念」についてでございます。 新法人は、原子力の研究開発を総合的に実施する機関として、国民の負託に応えるために、以下の理念をもって、事業を進める。 ○エネルギーの安定確保と環境問題の解決に資するために、実用化を目指した原子力エネルギーの研究開発を推進する。 ○基礎・基盤的研究によって原子力エネルギー開発を先導するとともに、原子力の先端性、総合性に発した新しい科学技術の創成に貢献する。 ○国、産業界、大学等と協力して原子力が直面する課題の解決に取り組み、安全で安心に暮らせる社会の発展に寄与する。 ○原子力の平和利用において世界をリードし、国際社会に貢献する。
  この各項について少し説明を加えさせていただきます。
  まず前文についてでございますが、特殊法人等整理合理化計画において新法人は原子力研究開発を総合的に実施する機関とされており、また原子力委員会の基本的考え方におきましても、先進性、一体性及び総合性を備えた研究開発機関としてその役割を果たすことが強く求められております。以下の各項はそれらに応えるための新法人の任務について私たちの考えるところをまとめたものですあります。
  最初の項に関しては、新法人は、原子力エネルギーの研究開発を安全性の一層の追求とともに、優れた経済性の達成と環境問題の解決という明確な目標をもって研究開発を進める、ということであります。
  次の項につきましては、新法人においては、基礎・基盤的研究を積極的に実施することにより、原子力エネルギー開発の健全な基盤をつくるとともに、その先端性、総合性を生かして、新しい科学技術を生み出していくことをもう一つの大きな任務としてもつことを述べたものであります。原子力長計によれば、基礎研究は原子力の多様な可能性を引き出し、将来の技術革新につながるシーズを生み出す、また、この分野の基盤研究は原子力のプロジェクト研究及び他の科学技術分野の発展に寄与するとされております。
  3番目は、原子力の利用においては人々の安全が十分保証されているだけでなく、人々がその安全を確実なものと感じ取ることが必要であります。このためには、技術的のみならず、人的、社会的な側面を加えた一体的な安全へり取組みが必要であり、新法人はこの要請に応えるべきであると考えます。
  最後の項は、国際的な位置づけに関するものです。新法人は、原子力平和利用に徹する世界における研究開発の中核機関として、原子力の研究開発、安全文化の普及、核不拡散技術開発支援等において国際的にリード、貢献していくべきと考えます。
  続いて2ページから「運営方針」について述べます。
  新法人は、今述べましたような理念を実現するために、以下の10項目の視点が必要と考えます。
  第1は、「独立行政法人として透明性と自主性をもち、効率的に事業を進める」ということであります。その際、適切な外部評価を受けるとともに、広く研究成果や業務内容を公表し、組織及び運営の状況を国民に明らかにしていくことが重要であると考えます。
  第2は、「原子力の安全性向上に貢献する」ということであります。安全性研究を透明性と客観性をもって推進するとともに、行政庁等への技術的・人的支援、国及び自治体の原子力防災施策の展開等への協力といった多面的な機能を持つことが必要であると考えます。
  第3は、「原子力の研究開発機関として、事業を進める上で安全確保を第一とする」ということであり、両法人においてこれまでも最優先課題として取り組んできたところであります。
  第4は、「我が国の原子力政策を具現化するために基礎・基盤的研究とプロジェクト研究との活力ある相乗的発展を目指す」ということであります。これにより、先進性、一体性、総合性を備えた研究開発機関として原子力の発展に一層貢献していくことが重要であると考えております。
  第5は、「国際的研究拠点にふさわしい、自由かつ独創的な発想を導くことのできる研究開発環境を整備する」ということです。21世紀の研究開発においては、自由かつ独創的な発想の下に世界トップクラスの人材を輩出するよう、研究開発環境の整備を進めるべきと考えます。
  第6は、「研究開発の効率的・効果的な推進、ならびに原子力平和利用の国際的発展に貢献するために、国際協力を積極的に進める」ということであります。FBRサイクルや大強度陽子加速器等の先導的なプロジェクトにより国際協力を推進するとともに、アジア諸国の原子力の平和利用の促進や核不拡散に関する技術的・人的支援を行うことも新法人の重要な役割と考えます。
  第7は、「大学等と連携して、我が国における原子力分野の人材育成や基礎研究の推進に積極的な役割を果たす」ということであります。連携大学院制度との連携の強化など、並びに共同研究や大型研究施設・設備の外部利用の拡大・促進に努めます。
  第8は、「実用化を目指した研究開発においては、産業界等と連携して進める」ということです。産業界等との連携においては、技術移転や民間事業支援はもとより、人材の流動化、産業界技術者の育成等、広範囲な協力、共同が不可欠であります。
  第9は、「放射性廃棄物の処理処分及び施設の廃止措置を着実に実施する」ということであります。このためには、処理処分等を合理的、経済的に進めるための研究開発を行う必要があります。
  第10は、「積極的な情報公開等を通じて相互理解を深め、地域社会との共生に努める」ということであります。事業の遂行に際しては国民、なかんずく立地地域の人々の理解と協力を得ることが不可欠であります。このため、相互理解に努めるとともに、地域社会の発展に貢献する必要があります。
  以上、新法人の理念及び運営方針の案について両法人の考えるところを述べさせていただきました。意を尽くせぬところがありますが、よろしくご検討賜りますようお願い申し上げます。
  続きまして、新法人の主事業と考えられる内容につきまして、原研、サイクル機構からそれぞれ分担して説明いたします。
  最初に原研の斎藤副理事長から原研分についてご説明申し上げます。  
  

斎藤原研副理事長  それではさっそくでございますが、「資料第2−2号」を用いまして、新法人の主要な事業領域と、原研のほうからは主に原子力エネルギー研究開発、安全性研究、原子力科学技術などに関して述べさせていただきます。
  1ページでございますが、まず最初に原研の主要事業の評価についてご報告させていただきます。原研では、平成3年から委員の半数以上は外部の方にお入りいただきまして、研究評価を実施しておりましたが、平成10年にいわゆる大綱的指針が策定されましてからは、これに則り外部委員のみによる研究所評価、研究テーマ評価を受け、その結果を公開するとともに、事業に反映させてきております。
  時間の関係で逐一ご説明できませんが、分野ごとに評価していただいた「主な成果」並びに「課題」の欄には引き続き努力すべきご指摘事項をまとめております。
  2ページは、新法人の主要な事業領域を模式的に示したものでございます。一つの大きな柱は次世代へ向けて核燃料サイクルの確立を伴った原子力エネルギーの研究開発及び利用の開拓であります。各論については原研、サイクル機構のほうからそれぞれご紹介いたします。この使命を達成いたしますためには、新法人自らが原子力科学技術に関するしっかりとした基礎・基盤的なポテンシャルを絶えず維持・発展させ、それに立脚したものであることが必須であると認識しております。また、放射線を利用した先端的・先導的な研究は、学問の進歩、新産業の創成に向けて新法人の重要な役割であると考えております。一方、原子力のエネルギーとしての利用分野のうち、既に商用化された軽水型原子力発電所や核燃料施設などに関しましては、国の安全規制等に必要な安全性研究を一つの重要な業務として実施し、安全確保と国民の安心の醸成に貢献してまいりたいと考えております。その他、国際協力、人材育成なども重要な事業でありますことは運営方針でただいまご説明申し上げたとおりであります。これらの事業全般にわたり、国のご指導、ご支援はもとより産業界、大学などと連携して、あるいはご協力をいただいて進めてまいりたい、というふうに考えております。
  3ページにまいりまして各論に入らせていただきますが、「原子力エネルギー研究開発」に関し、原研のほうから3項目についてご説明させていただきます。
  まず「次世代核燃料サイクルシステム」でございます。プルトニウムの需給バランス、ウラン資源の有効利用やバックエンドコストの削減等を考慮した核燃料サイクル確立のために、柔軟かつ系統的な戦略の下に、産業界等と密接な連携をもって研究開発を進めてまいる所存であります。
  原研では、これまで実績豊富な軽水炉技術を基盤とし、プルトニウムバランスを早期に改善するものとして、革新的水冷却炉の研究開発を実施してきております。新法人では、サイクル機構のFBR開発計画と一体化した体制の下に産業界と連携して、適時・的確な次世代核燃料サイクル技術を開発し、技術移転していくことが重要であると考えております。
  2番目に「利用の多様化」であります。一次エネルギー全体に占める原子力の割合は現在14%程度でございますが、この原子力エネルギーの利用を拡大するためには、非電力分野への利用の道を開拓することが重要であると認識しております。この目的に最も適した軽水炉が高温ガス炉でございます。そこで、先ほど完成いたしました高温ガス炉HTTRを用い、世界初の核熱利用による水素製造試験を実施し、その技術を確立することが肝要でございます。高温ガス炉は高い固有の安全の安全性を有するとともに、高温の熱が得られますので、原子力エネルギー利用の多様化や格段に高い熱利用率が得られ、この技術を産業界へ移転することも大切な仕事であると考えている次第であります。
  3番目に「核融合」の研究開発でございます。新法人は、我が国における核融合エネルギー研究開発の中核機関として、核融合が今世紀半ば以降のエネルギー供給に貢献することを目指し、ITER計画を積極的に支援することを中心に研究開発を進めたいと考えております。右下にITERのスケジュールを示しておりますが、現在、公式政府間協議が行われており、国際的なサイト選定が年末をめどに行われ、建設に10年、運転に20年を予定しております。
  次に「安全性研究」でございますが、この位置づけ、重要性については、これまで申し述べたとおりでございまして、国等の規制、防災あるいは事故対応、こういったことにご協力、ご支援していくことが使命である、というふうに認識しております。そして、安全性研究を進めるに当たっては、高い専門性とともに広範な科学技術分野にわたる総合性をもって対処する必要があり、基礎・基盤部門との連携は欠かせません。一方、安全性研究の信頼性を維持するためには、優れて透明性と客観性をもって研究を進め、組織的にも中立性が外部から見えるものに配慮する必要があろうかと考えております。
  次に、原子力科学技術について2枚の図を使ってご説明させていただきます。幅広い基礎・基盤的研究により、初めてプロジェクト研究開発を成功に導くことができると考えております。このためには、両部門における人材の交流、移動をも含めました密接な連携が極めて重要でございます。また、放射線利用を柱とした原子力科学技術の「多様な展開」、例えば中性子やX線レーザーなどによる蛋白質の構造や機能の解明などは各国で先陣争いをしております。また、放射線を用いた新機能材料の開発は産業利用に直結するものであります。現在進めている世界の最先端をいくこれらの研究開発を引き続き推進し、新産業の創成と国民の福祉に貢献してまいりたいと考えております。
  次に、研究炉の中性子ビームを用いた物質生命科学などの中性子科学研究を大きく発展させ、数多くの外部利用者のニーズに質、量ともに応えるために、世界最強のパルス中性子源となる「大強度陽子加速器計画」を立案し、建設に着手いたしました。これは、21世紀の科学の進展に大きく貢献しますとともに、左下に示しておりますように、既に各種産業利用の仕組みも発足しております。また、私どもはこの施設を用いまして、放射性廃棄物の核変換処理技術研究も目的としております。これは、放射性廃棄物処分に係る環境への負荷を大幅に低減することに貢献するものであります。
  9ページの「大学との連携と協力」につきましては、「運営方針」でご説明いたしましたとおりでございますが、特に新法人が所有いたします原子力施設と人材を活用して、これからの若い人材の原子力教育と夢のある研究に貢献していまいりたい、というふうに考えている次第でございます。
  最後に「事業の集約と施設の廃止」でございますが、原研ではこれまで計画的に進めてきましたが、今後も統合を前に原研として予定しております計画を本表に示させていただきました。
  以上でございます。  
  

坂田審議官  それでは引き続きまして、サイクル機構からお願いいたします。
  都甲サイクル機構理事長
  それでは引き続きまして、サイクル機構の分の主要事業について述べさせていただきます。「資料第2−3号」と「資料第2−4号」を使ってご説明申し上げます。
  まず最初に、事業の見直しと重点化という点について簡単に申し上げます。御存じのように、動燃改革におきましては事業分野の見直しを行いまして、サイクル機構の中核的なミッションはここに示しております3つの事業に重点化いたしました。それ以外については、整理縮小事業として平成14年度末までにほぼ終了する予定にしております。中核技術でありますFBR技術、軽水炉再処理及び高レベル廃棄物処理処分の研究開発は、新法人におきましても研究開発の柱として継続していく必要があると考えております。
  また、この図の下には核燃料サイクルを示しておりますが、軽水炉の燃料サイクルにつきましては民間における事業化が進んでおりまして、私どもは技術移転、技術支援を円滑に行うよう努力してまいりましたが、この役割は新法人においても変わらないと考えております。
  2ページは、サイクル機構がこれまで実施してまいりました研究開発の主な実績、成果とその展開についてまとめてございます。私どもといたしましては、いずれも期待される成果を挙げ、または挙げつつあるものと評価しております。
  それでは次に、中核的事業としております3つの研究開発事業についてご説明いたします。
  3ページの図は、高速増殖炉を導入する意義についてまとめたものでございます。FBRの導入によって限られたウラン資源の利用率を飛躍的に向上することができますが、それに加えて、環境に優しく、高レベル放射性廃棄物を相当量減少できる経済的で、かつ安全な原子力エネルギーの利用が可能となり、循環型社会に適した競争力と魅力のある発電技術体系が確立できるものであります。
  下の図は、現在の軽水炉が寿命に達して、本格的にリプレースが必要となる2030年頃からFBRサイクルを導入できれば、これらを実現できるということを示してございます。
  4ページは、FBRサイクルの実用化に向けた研究開発の展開について示しております。まず原形炉「もんじゅ」につきましては、現在、運転再開に向けて安全審査が行われております。MOX燃料、それからナトリウム冷却型のFBRは最も研究開発が進んでいる有望なオプションでありまして、他のオプションとの比較のベースとして優先的に研究開発を進めて、発電炉としての技術の実証を図る必要があります。また、「もんじゅ」は実用化のための革新技術の実証の場としても活用していくことが重要と考えております。
  一方で、FBRサイクル実用化戦略調査研究におきましては、原子炉のシステムと燃料サイクル技術の幅広い選択肢について、オールジャパンの体制で研究を行っているところでございます。種々の革新的な概念や先進技術を取り入れまして、段階的に選択肢の絞り込みと重点化を行い、2015年頃までに競争力のある実用化技術体系を提示できるように考えております。この研究では原研における研究開発の成果も有効に利用することになると考えております。
  以上の研究開発を着実に進めまして、将来の我が国の循環型社会におけるエネルギーと環境の問題の解決を図り、このような次世代の核燃料サイクルが実用化され、定着されるまで技術基盤の維持・高度化を行っていくことが重要と考えております。
  5ページは、高レベル放射性廃棄物の処理処分に関わる研究開発を示しております。2000年には研究成果の二次取りまとめが終わりまして、処分事業の実施主体である原子力発電環境整備機構が設立されました。その結果、サイクル機構が行う研究開発の役割分担も明確にされました。2020年代には最終処分地が選定される予定となっておりますが、このような処分事業の進展に対して、新法人では東海事業所及び2つの地下研究所において地層処分の信頼性確保を中心とした研究開発を着実に進めて、事業主体への技術協力を行っていくことが重要な役割であると考えます。並行しまして、国が行う安全規制や安全評価に貢献することが新法人のもう一つの重要な役割であります。
  6ページに、核燃料サイクルの重要な要素であります軽水炉の使用済燃料再処理とプルトニウム燃料に関する研究開発について述べております。
  まず東海の再処理施設につきましては、電気事業者との契約に基づく役務処理を2005年まで継続しまして、その後、2010年頃までに新型転換炉「ふげん」などの使用済燃料の再処理を行う計画としております。一方で、我が国として再処理の技術基盤を維持し、高度化に対応することは、六ヶ所における民間事業の円滑な推進の観点からも極めて重要と考えております。
  次にプルトニウムの燃料製造技術でありますが、サイクル機構では長年にわたりプルトニウムの安全な取扱実績を積んできましたし、核不拡散の観点から保障措置の技術も確立してきております。今後も「常陽」や「もんじゅ」の運転計画に従って使用するMOX燃料を製造いたしますが、併せて民間のMOX燃料工場の設計建設に向けての技術支援を行っていくことも重要であると考えております。
  それでは引き続きまして、「資料2−4」に従いまして、新法人の相乗効果と統合に当たっての課題についてご説明申し上げます。
  実用化を目指した原子力エネルギー研究開発の分野では、両法人がそれぞれの研究開発を行ってきましたが、これを一体的に実施することにより大きな相乗効果を発揮できると思います。1ページの図に示しましたように、FBRの実用化を見据えた次世代の核燃料サイクルシステムの構築と核熱を利用する水素製造等の多様な原子力エネルギー利用のための技術基盤の確立を効果的に進めることができます。社会の要請に対しまして、適時・的確に貢献を果たすことができると考えております。また、実用化技術の開発に当たりましては、初期段階から産業界との密接な連携を図り、効率的に研究開発を進めることが重要と考えております。
  2ページには材料開発の分野における相乗効果の発揮の例を示してあります。両法人が有しております原子力材料技術の融合によりまして、軽水炉をはじめとして高速増殖炉、高温ガス炉、さらには核融合炉等のための原子力用材料の研究開発に総合的に取り組むことができます。
  3ページですが、施設の廃止措置と放射性廃棄物の処理処分については、両法人の経験を合わせるとともに、施設の合理的運用を図るなど、効率的に進めることができると思います。また、両法人が保有する試験研究炉やホット試験施設の連携によりまして、施設利用の合理化、効率化を図ることができる上に、JMTRと「常陽」という2つの照射炉を有し、従来、単独の法人では困難だった幅広い照射試験条件の提供が可能となります。また、新法人においてはこのような試験施設をこれまで以上に幅広く、大学等の研究のために開放していく等の役割も期待されているところでございます。
  4ページに、国際的な核不拡散体制への貢献が一体的な体制の下で強化できることを示しております。国際的な核物質管理の強化に貢献するとともに、両法人の保障措置、核物質管理の経験を生かして民間事業主体等に関する技術支援も強化できます。これに加えて、国際的な保障措置体制への技術協力、包括的核実験禁止条約の遵守状況の監視の強化、解体核処分の推進に関する国の施策に対して技術的な支援を強化するなど、国際的な核不拡散体制の強化を推進し、原子力平和利用に貢献することが可能であります。
  相乗効果の最後の例としまして、5ページに研修・防災事業を取り上げております。原研の東海研修センターやサイクル機構の原子力緊急時支援研修センターなどの施設を活用しまして、研究者、技術者の養成・訓練、国際技術交流事業、防災演習といった原子力に関する研究の幅を広げ、内容の一層の充実を図ることが可能となります。また、両法人が有する人材や施設を活用して原子力防災支援体制の強化を図ることができると思います。
  最後に「統合にあたっての課題」でございますが、重要と思われる検討事項や両法人の間で時間をかけて協議していくべき課題のうち4点を以下にご説明申し上げます。
  その第1は、これは多くの先生方から既にご指摘をいただいておりますが、新法人は我が国唯一の総合的原子力研究機関となることから、求められる多くの役割、機能を実現するための組織や運営をどうすればよいか、これは極めて重要な検討課題であると認識しております。この中では迅速な意思決定をどうするか、地元や国民の皆様に安心していただけるようにするために、安全管理や危機管理をどう体系づけていくか、あるいは原子力安全委員会から求められおります安全研究の中立性をいかに担保するかなど様々な観点からの検討が必要となります。
  それから第2は、業務運営のためのインフラ整備としていろいろな管理制度やシステムの統合、OA化といった多くの作業が必要になります。
  第3は、これも多くの先生方からご指摘をいただきましたが、両法人が現在、保有している低レベル放射性廃棄物や将来の原子力施設の廃止、そして、それにより発生する廃棄物の処理処分に関するもので、その資金をどうするか、という問題があります。
  第4は、会計上の問題ですが、特殊法人で、以前から言われております累積欠損金をどのように取り扱うか、ということであります。
  検討すべき事項はこのほかにもございますが、いずれにしましても、新法人のあり方につきましては、本統合準備会議の中間報告を受けて、今後さらに具体的な検討が必要であると考えております。
  これまで私ども当事者といたしましては、新法人としてのあるべき姿や、統合前においても協力・協調できることはないかなど、様々な検討を進めてまいりました。まず両法人が相互理解を深めることが第一と考えておりまして、そのために人事交流の促進にさっそく取りかかることといたしました。この7月には、若干名でありますが、人事交流を行いまして、今後、段階的に人数を増やしていく方針でございます。
  以上、統合後の新法人のあり方に関して考えるところを述べさせていただきました。統合により両者の良いところをさらに伸ばし、我が国はもとより世界に貢献できる原子力研究開発機関の実現に努力していかなければならないと考えております。  
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  それでは今ただきましたプレゼンテーションに関して、若干の時間、質疑をしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  
  

秋山守委員  統合による相乗効果のご説明は、私も大変理解が深まりまして、ありがとうございました。この相乗効果をさらに高めていくという観点で、これからその仕事を担われる人の交流、人と人との触れ合いによる、ここに書かれていない、もっと基盤的な相乗効果というものが根底にあると思いますので、このようなご計画を今後実現されていくに当たりまして、既に現在から両機関におきますそれぞれの関係のご専門家の間で既にそういう相乗効果をいかに高めるか、というようなご相談なり、あるいは意見交換なりをされているのではないかと思いますが、そのあたりの現状と近未来のこれからの展望を少しご紹介いただけると、さらに理解が深まると思いますので、よろしくお願いいたします。  
  

斎藤原研副理事長  ご意見ありがとうございました。
  秋山先生のおっしゃるとおり、私どもは緊密な連携を取らせていただくということで、今、いろいろなレベルで議論を進めております。一番手っ取り早いところは、非常に似通っているところの研究開発を融合してやったらどうか、というようなことを考えておりまして、さっそくどういうテーマなら統合前でもできるかということで、これまでもいろいろな共同研究をやっているわけですが、研究協力協定の中に特に融合を目指した融合研究というのを位置づけまして、今スタートを切ろうとしております。
  典型的な例を一つ申し上げますと、今、電気事業者さんのほうでやられていらっしゃる再処理事業というのが値段が非常に高いものになる、これをもう少し安価な良いものができないかということは各々検討していたわけでございますが、この高度化湿式再処理の研究開発をまず第一の融合テーマにしてやっていきましょう、ということで書かれております。
  そのほか、例の核変換、高レベル廃棄物の長寿命なものを短寿命のものにしようということも、両機関別々の方法で検討していたわけでございますが、こういった分野についてもさっそく協力をしてやっていきましょうということで、今、具体的には3テーマ挙がっておりまして、これも7月1日からスタートして、各々人も相互乗り入れしてやっていこう、研究的な面から申し上げますと、そういうことを考えております。
  それから、先ほどもチラッと申し上げましたように、私どもとしては革新的水冷却炉ということでやっておりますが、サイクルさんのほうではFBRの実用化戦略ということで検討されております。産業界のご意見もいろいろ賜りつつ、この2つをどういうステップでやっていったらいいかということを、これからの将来をにらみつつ……。将来と申しますのは、プルトニウムの需給バランスあるいはウランの資源、そういったことをにらんで、どうやっていくかということを、相互に人を乗り入れて……。例えば、私どもの設計陣が大洗のほうに加わり、基盤的な研究は東海のほうでやるとか、そんなようなことを今、検討しているところでございます。  
  

坂田審議官  もしこの時点で特段ご質問等なければ、続けて先生方にこれまでの当準備会議でのいろいろなプレゼンテーション、議論を踏まえてのご意見を賜りたいと思います。
  木村先生におかれましてはプレゼンの紙も出していただきましたが、お帰りになりましたので、事務局のほうで項目だけでもご紹介したいと思います。また、秋元委員も残念ながら今日ご欠席ですけれども、紙のほうはお出しいただいておりますので、項目だけ若干ご紹介させていただきたいと思っております。
  それではあいうえお順ということで、秋山先生からよろしくお願いいたします。  
  

秋山守委員  実は、私、昨日までアメリカの原子力学会の年会に出ておりまして、各国の学会代表との意見交換の中で両法人の統合の件も話題に出まして、アメリカ、フランス、ロシア、韓国といった国の原子力の学会代表が国際的に大変強い関心、期待をもっておりますことと同時に、両法人がこれまで果たしてこられた実績についてもずいぶん高く評価させておられた、ということが記憶に残っております。
  21世紀という新しい国際情勢、新しい国内社会情勢あるいは新しい科学技術の進展などを受けまして、国全体として今ここで改めて新法人としての役割と使命を確認するということ、そしてまた合理的、かつ着実に目標達成に向かうことを私としても強く期待いたしているところでございます。
  両法人の中核使命といいますか、直接的な使命はもとより、日本の科学技術あるいは社会経済を引っ張っていただくことも含めまして、いろいろな面での使命があるわけでございます。それらの全使命を達成していくことをぜひよろしくお願いしたいと存じます。その場合に、ミッションを新法人がぜひ積極的に自ら新しいビジョンを描いて、それに向かって力を内生して能動的にその使命を果たしていく、そういうスタンスで将来の事業を開拓していっていただきたいと思います。直接的な使命に加えまして、技術基盤と人材の確保あるいは地域社会との共生、また産業界との連携といった多面的な活動が含まれることは当然でございます。
  新法人に期待される活動分野につきましては、これまでに示されている内容でほぼ完結していると思いますが、さらに先進的な着想とか、新しい社会のニーズに対応できるように、基礎的な研究開発資源を一定的に確保していただきながら、また機動的に予算対応ができるような体制運営をしていただくことを望んでいるところでございます。
  期待される活動分野としまして、言葉足らずではございますが、「資料第3号」の1ページに・〜・として、これまでの皆様方のご意見も含めて、私の認識をまとめてございます。・のロジスティクスというのは妙な言葉でございますが、ここには核融合、加速器を含めました、国際的な大型のプロジェクトに関する基盤的な研究あるいは計算科学などの基礎的な研究も含まれている、というふうに読んでいただければと思います。・の原子力利用の中身は、当然ながらエネルギー利用と放射線利用の分野が含まれるわけでございます。
  「2」以下の項目につきましては、私が主としてこれまで歩んでまいりました研究の立場にいささか偏ることをお許しいただきながら、新法人の経営並びに他との連携協力に関することにつきまして、若干お話申し上げたいと存じます。
  まず具備すべき要件として、目的と趣旨に沿いまして、有益な知的・社会経済的な成果を確実に生み出していただく能力をぜひ確保し、また向上していただきたい。これがミッションとしては非常に重要なことであります。その内容といたしましては、これまでにご提示いただきました安全の徹底、創造性の発揮、透明性の確保、適正で効率的な運営、社会の信頼の確保といったようなことがベースとして重要でございます。目的を一言で申しますと、社会から期待される先進的な成果を確実に生み出していただく。それだけの能力をぜひ両法人が確保され、また将来高めていっていただきたいと重ねてお願いする次第でございます。
  活動の前提といたしましても、ご指摘がもう既になされておりますけれども、経営的に大変大きな問題となっております歴史的な債務を撤去する。これはもちろん絶対必要な条件だと思います。この撤去のやり方につきましては、これからご関係先、また国が主導されまして、ぜひ知恵と力を出してこの解決に向けていっていただきたいと願っております。それから計画達成に必要な財源とか、人員を確保していくということは当然でございますが、やはり関係各方面、また社会から広く新法人への協力と支援が必要でございます。この3点が活動の前提となると思います。
  新法人の経営並びに他との連携協力の点でございますが、組織内の経営につきましては、私は経営面は素人でございますので、申し上げることはございませんけれども、関連の機関との連携協力に関しまして基本的に申し上げたいことは、関係組織の代表から構成されます強力な運営審議会等を機能していただきまして、ぜひ一段と開かれた組織運営として活躍していただきたいと願っております。
  また、新法人からも今後、独立行政法人化が予定されております国立大学等に対しましても同様に強力に運営審議等に参画し、こういったコミュニケーションを通じまして、人とか、基礎的なシーズ等を交換することで活力を交換していただきたいと思っております。この運営審議に当たりましては、「必要に応じ拒否権をも含めていく」というような言葉も書いてございますけれども、実体的に運営審議がより実り多くなることにつきまして、知恵と力を出していかれることを望んでおります。
  それから連携協力の内容と考え方につきまして幾つか書き並べておりますけれども、これは日本学術会議で取りまとめております大学の研究者の意見で、「資料第12号」でごらんいただく内容でございます。私はこちらの関係の仕事もしておりましたので、改めてご指摘申し上げたところでございます。
  幾つかポイントを申し上げますと、技術的知識・経験のある社会心理学とか、国際政治学の方々のご専門家の採用あるいは交流を広めていっていただく。それから原子力の基礎・基盤研究につきましては、大学との強い連携協力を進めるための拠点の形成を目指した運営としていただく。そして、新法人の重点的研究施設・設備は国を挙げて維持管理し、有効かつ適切な利用を図っていただきたい。また、やや個別的なことでございますが、大学等におきまして現在、研究炉の使用済燃料等の問題を抱えておりますし、また研究炉がこれからの人材育成、また社会とのこの分野の交流を深めていく、という多目的な意味におきまして極めて重要であるということは、学術会議でも大学等の研究者の間でも広く認識されているところでございますので、ぜひこれはオールジャパンで考えていくという一貫で、新法人に対しましてもこの面でのより深いご認識とご協力をお願いしたいと思っております。また、人や情報の交流ということで、他方面の積極性ある人材を受け入れて、いわば参加型の事業を拡大していただくということも含めまして、これからお考えいただければいかがかと思います。
  <付記> と書いてありますところは、これまで出ましたご意見を私なりに整理したところでございまして、何ら新しいところはございませんが、いわゆる戦略的な観点、戦略的な進め方を本統合事業におきましても十分踏まえていただきたい。その戦略に当たっての一番重要なポイントは、私の認識ではやはり何を目標に定めるかということであろうかと思います。国際社会の中で、新法人の事業も含めまして、我が国がいかなる地位、役割を占めるのか、というあたりにつきまして、現状はそれぞれの分野で個別にがんばって良い線をいっているところもたくさんあるわけでございますが、戦略的視点というところに照らしますと、コスト・ミニマムで成果を最大にしていくという観点も含めまして、なお点検し、新しいあり方を策定していくべき時期にきているのではないか、という感じがいたしております。それから社会との関連で、パブリック・コミュニケーションとか、最近のネット・マネージメントといったような視点も含めて、ぜひご尽力いただければと思います。
  以上でございます。  
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  秋元委員の「資料第4号」、木村委員の「資料第5号」については、私のほうから項目程度紹介させていただきたいと思います。
  秋元委員の「資料第4号」でございますけれども、まず「1.Center of Excellenceを目指した組織」ということが書いてあります。原子力の平和利用の高度化と核廃絶の推進に貢献するCenter of Excellenceを目指すべきではないか、ということがございまして、International Fuel Cycle Research Center of Excellenceを組織することを提言したい、ということを言われております。
  それから「2.上記COEを実現するために配慮すべき事項」として、「(1)核廃絶に向けた国際貢献」ということで、プルトニウムの関連技術を総合強化して、これをそういう方面に使ってどうかということで、特に解体核から出る余剰プルトニウムの処理への貢献というのがございます。
  それから「2.これまでの二法人で開発、蓄積された技術の民間への積極的な移転・利用」ということで、運営方式などきちんと強化して、しっかり民間への技術移転を視野に入れた取組み、そういうものを要望したい、ということがございます。
  それから「3.二法人の抱える負の資産への対応と、新法人における今後の研究運営」ということで、先ほど両法人からご説明のあった統合に当たっての課題にもございましたが、欠損金、廃棄物、廃止設備などの負の資産の措置ということで、新法人の経営とは切り離したようなやり方を措置することが望ましい、とございます。
  関連して、「4.国の全体的廃棄物戦略と新法人の廃棄物研究および役割」ということで、廃棄物については処理処分の研究と実務を分離して独立した運営というようなことがご提言なされております。
  (補足資料)には特に核廃絶のほうの取組みに向けての新法人に期待するところが書かれてございます。
  大変簡単で恐縮でございますけれども、後ほど資料にはしっかりお目通しいただきたいと思います。
  木村委員の「資料第5号」でございますが、3点ございます。「1)新法人を若い研究者、技術者にとって魅力のある機関とすること」ということで、木村委員の現地視察での意見交換を踏まえまして、サイクル機構と原研では開発をする性格がちょっと違いますけれども、「若者が自由な発想で仕事が出来る組織の構築を目指すべきである」ということで、その前段階として、例えば研究テーマに関して柔軟な選択が可能となるような組織の再構築を考えることができるのではないか。これは主として原研が担ってきた研究部分であります。
  それから「2)全体組織の見直し」ということで、統合して大変大きな法人になって、予算も年間2,000億円を超えるようなものになるかもしれないけれども、「統合を機会に、既設設備の抜本的な見直しを行い、設備に関しては徹底的なスリム化を図る必要がある」という具合に指摘されておられます。
  それから「3)原子力に対する国民の理解を得るための組織作り」ということで、この会議においても原子力に関する国民の理解を得る点についてのご議論がございましたけれども、「原子力に関わる問題に対する意思決定が専門家だけで行われてきたため、人文科学、社会科学等の分野の専門家との連携がほとんど考慮されていなかった」ということが書いてあります。先ほど秋山先生もこういう点にお触れになりましたが、「そういう他分野の研究者あるいは学識経験者を巻き込んだ組織を今度の新法人の中につくることを考えるべきではないか」というようなご提言がございます。
  非常に簡単で恐縮ですが、以上でございます。
  それでは続いて、熊谷先生からよろしくお願い申し上げます。  
  

熊谷信昭委員  「資料第6号」に沿って申し上げます。
  第1点は、既に多くの方々がおっしゃっておりますように、新法人は、原子力の平和利用全般に関する先導的・先駆的な研究開発を総合的に行う世界最高の国際的研究開発拠点として、我が国の発展に寄与するとともに、世界・人類に貢献するという高い志と確固たる理念をもたなければならないと思います。したがいまして、予算や人員の規模等につきましても、初めに枠を設定して、その制限された枠内で議論するというようなことは望ましくない。必要に応じて弾力的な運営が可能となるような、自由度の高い研究開発組織にしなければならないと思います。
  そして、国にはそのような世界を先導する研究開発機構を実現するために、長期的な視点に立って、必要な資金の投入をはじめとする適切な支援を行うことが求められます。また、新法人の最高責任者には、原研とサイクル機構がそれぞれ担当しておられました、比較的自由度の高い基礎研究から各種の規制の多い開発・運転部門までを適切に統合・調和させて運営することのできる、高い識見(経営理念)と強いリーダーシップを持った人物が期待されます。
  第2点は、研究のあり方についての意見でありますが、新法人がその基本的理念に沿って設立の目的を達成していくためには、すべての研究課題について最終の目標が明確に認識されていなければならないと思います。そういう意味では、基礎的・基盤的な研究も含めまして、すべての研究は結局ミッション・オリエンテッドな研究でなければならない。しかし一方、具体的な実用化や改良を目指したミッション・オリエンテッドな開発研究でも、これを徹底的に追求していきますと、結局、基礎研究にまで行き着くということが多いわけです。また、研究の過程で全く予想もしなかった新しい現象や当初の目的とは関連のない問題に遭遇することもしばしば生じます。研究管理者には、研究者がこれらを解明するために基礎的研究の領域にまで進んでいくことを許容する賢明な判断力と勇気ある雅量が求められます。その結果、最初の目的とは無関係な成果が副次的に得られ、例えばそれがノーベル賞をはじめ学術的な賞の受賞対象となるような純学術的な成果となったとしても、それはそれで世界・人類への貢献として評価され、また実利的にも新法人が若い優れた人材を集める上で最高のリクルート効果をもつものであると解すべきであると思います。
  第3点は人材育成と国際交流に関することでございますが、新法人は世界のCenter of Excellenceとして日本の大学や大学院と連携するのみならず、世界の大学・大学院と連携大学院等を構成して、学位授与の道も開き、海外からの学生や研究員・研修生などを積極的に受け入れる努力をすべきであると思います。発展途上国をはじめ世界の原子力分野にmade in Japanの指導的人材を数多く送り込むようになることが国策としても期待と思います。
  以上です。  
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  それでは続きまして、小林委員、よろしくお願いいたします。  
  

小林庄一郎委員  ペーパーを出しておりますけれども、かいつまんで私から4点申し上げたいと思います。
  第1点は、日本の原子力の平和利用は、ウラン資源をリサイクルして、ウラン、プルトニウム、できれば一部のTRU核種も軽水炉、高速炉あるいは新型炉の中で燃やし尽くす、というクローズサイクルを確立する、ということが長期の目標だと思います。これがエネルギーの安全保障、核不拡散への担保、地球温暖化対策のために必要であり、その基盤技術を開発する新しい法人は、国策としてこれを全面的に支援すべきであろうと考えております。
  第2点は、この長期目標に向かっての第一歩である青森県六ヶ所村の再処理工場の円滑な立ち上がりと、原発におけるプルサーマルの実施は、リサイクルの成否をかける課題でございまして、人、技術の新法人からの民間移転及び関連する基盤技術の維持・発展による支援を期待するものでございます。
  なお、六ヶ所村が出ましたので、ちょっと脱線しますけれども、ITERが六ヶ所村に決まったということはご同慶の至りでございます。先ほど鳥井先生と村上理事長の間でちょっとご議論がありましたが、このITERはリサイクルとも電気エネルギーとも縁遠い研究ではないか。したがって、現在、電気をご使用のお客様に負荷しております電促税をこれに転用する、ということは絶対避けていただきたい。これは勝手なお願いでございます。
  第3点は、新法人が現在の二法人を統合して原子力開発の中核となって世界をリードするためには、国民の理解と推進母体の透明性の確保が必要でございまして、二法人の廃止・統合のときこそ、皆さんがおっしゃっていますとおり、過去、将来における放射性廃棄物の処理費及び累積欠損金を明らかにし、今回の行革を決意し断行する国がその処理、また処理方針を責任をもって明確にしていただきたいと思います。イギリスにおける例はペーパーに記したとおりでございます。
  最後に第4点は、吉川レポート(動燃改革検討委員会報告)によって解体的な新体制を発足した核燃料サイクル開発機構は、この10月をもって発足4年に至ります。そこには運営審議会という外部組織が設けられまして、事業計画、予決算のほか、吉川レポートにより指摘されました4項目、15事例について、いかにそれを実現しているかの評価を行っております。ようやくその評価の一巡目が終わろうとしておりますが、必ずしも万全ということはできないと思います。新しい新法人組織におきましてもこのような外部評価機関を設置、この準備委員会において提起された問題点がいかに真剣に反映されているかもチェックしていただくよう、お願いする次第でございます。
  以上です。  
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  それでは続いまして、住田健二先生のほうからよろしくお願いします。  
  

住田健二委員  ITERにつきましては私も言いたいことがあるんですが、そこまでやりますと時間がありませんから、あえて省かせていただきます。
  一般論的には私のところまで順が回ってくる頃には大体みな言い尽くされておりまして、気のきいたことがなかなか言いにくいんですが、繰り返しになりますけれども、先ほどから何回も出ておりますように、世界有数のおそらく1、2を争うような大原子力研究開発機関になる。その大きさからいいましても、必然的に狭い意味での単なる核燃料サイクルの技術だけではなくて、放射線利用まで含んだような広い意味での大きな総合的な研究所になるであろう。したがって、基礎から応用までという非常に大きなものになるだろう、というのは当然でありまして、日本の国としてはそういうものを受け入れるようなゆとりをできるだけもっていただきたいと思うんです。狭い枠の中に押し込んで何とかを殺すようなことにならないようにしていただきたい、というのがお願いでございます。
  それから両法人についてお願いしたいことは、単に今までこういうことをやってきたからということで、それを足し算的にガラガラポンと箱の中に埋めてしまって、2、3気がきいたつまみ出しだけやったというのでは困るのでありまして、思い切って整理・統合もやっていただきたい。今日、既に具体的な措置もがございましたけれども、もう少し思い切った自主規制的なことをやっていただけると私は期待しておりまして、そういう意味で単なる縦割りのものが2つくっついたようなものでなくて、本当に融合していただきたい、というふうにお願いしたいと思うんです。
  そういう意味では、既に両機関が自主的に協力して、今日一部そのご紹介がありました。これは大変けっこうなご努力だと思います。個々の内容についてはもちろんいろいろ意見がございますけれども、そういうことがよそから強制される前に既に両方でおやりになっていらっしゃるというのは大変うれしいことでございまして、ぜひこの線で協力作業を進めていただきたいと思っております。
  それからもう一つ、原子力に関係してきた人間の立場で申し上げますと、これまでこれほど大きな組織の改廃というのはなかったと思うんです。ある意味ではラストチャンスである、というふうにも思える面がございますので、ぜひお願いしたいと思いますことは、これまでサイクルと原研と両方に人材とか、機材が分散していたためになかなか大きくは取り上げにくかったようなこと、例えば先ほどお話に出ておりました、いろいろな炉型の開発などはそれぞれでおやりになっておりましたけれども、なかなかうまくまとまらなかったわけです。絶対にこのチャンスを逃してはならないと思いますので、ぜひうまく一本化してやっていただきたい。それから、最終的な私たちの夢でありますFPの消滅の話とか、高レベルの廃棄物処理の問題は両方でやっておられたんですが、これもぜひ協力してやっていただきたい。こういう幾つかの非常に大事な仕事がございます。
  両法人が併合いたしますと、世上伝えられるところ、人間とか、予算の面ではウン10%のカットが可能ではないか、というようなことも言われるんですけれども、そういう形で単につじつま合わせの数字でやるのではなくて、こういう新しい仕事のためにそういうところに思い切ってお金が回る、人も回るというふうに前向きにやっていただかないと、皆さん意欲をもってやっていただけないのではないかと考えております。
  それから両機関ともこれまで大学や民間と共同研究を十分やっていただいたんですが、私どもが経験いたしましたことから申し上げますと、相手になるのは私たちのような利用者だけではございませんで、実は他の省庁との関係があるわけです。具体的にいいますと、財務省とか、いろいろあるわけでありますけれども、あらかじめそういうことを予想して、単に原子力の中だけで話合いをするのではなくて、そういうところとうまくやっておいていただきたい。これはお願いでございます。実際問題、サイクル機構などはそのためにいろいろ非常に苦しい思いをなさっていて、なかなか実行できていなかったことがたくさんございますので、準備期間がございますから、ぜひそのへんのところをよろしくお願いいたしたいと思います。
  そこまでは一般論でありまして、以下、他の方がおっしゃってくださらない可能性が強いと思います点を、あえて幾つか書き上げております。
  一つは安全研究の関連でございます。これはこれまでいろいろなところで再三議論されておりまして、安全研究に関して独立した研究所で、両法人とは別のところでもっと基礎まで含めたような研究機関をつくれとか、あるいは原子力安全委員会の直轄の研究機関をつくれ、というご意見が出ております。少なくとも日本の現状で考えますと、そういう孤立した単なる安全試験のための組織をつくりましても、実効はほとんど挙がりません。今まで原研等でやってくださったお仕事が非常に役に立ち、あるいは世界的に評価されているとすれば、原研という広い場の中で、基礎研究まで広い立場でいろいろな検討が即刻行える、どこかに頼むのではなく、隣の部屋へ行って議論を吹っかけてやれる、そういう環境があったということだと私は理解しておりますので、「形式上縦割りにしたから、それが中立である」というような議論ではなくて、中立性を保つというのは、内容を公開するなり、外部評価をするなり、いろいろな方法がありますから、大型施設だけを分離して孤立して運営するというやり方でないような安全研究を新組織でやっていただきたい、というふうにお願いしたいと思います。
  それから、私がたまたま関西に住んでいるから、ひがみだと言われるかもしれませんけれども、とかく日本国が政府のお金でやる大型の研究、施設というのはほとんど関東地方に集中しておりまして、原子力もその例外ではございません。ただ幸いにして大学というのは、昔から旧帝国大学などが分散していた関係がありまして、多少分散的ではありますけれども、大型の原子力研究施設というのは、ほっておきますと、ほとんど東京周辺に集まってくる。今度六ヶ所に広がるというのはある意味ではけっこうだと思うんです。そういう意味で、原研やサイクル機構をただ自分たちだけの立場で集約化されていきますと、関東地方に既存の施設がありますから、そういうところへまた全部集中して、地方のほうは枝葉だというので切り落とされてしまう、という心配をしないわけではございません。原子力が国民全体のものだというふうにお考えでしたら、少なくともいろいろなところにいろいろな研究機関があるということが、やはり大きな目で見てプラスになるということも考えていただきたい。このことは地方の立場で一言申し上げておきたい。
  それから、これはここで言うべきことではない、というのは承知の上で申し上げますけれども、何回も申し上げておりますが、「低線量被ばくの人体影響研究を総括するような国家的なレベルの研究機関は要らないんですか」という質問をあえてここで繰り返して申し上げます。もちろん、放射線医学総合研究所、放影研その他たくさんありまして、それぞれの範囲内でおやりになっておりますけれども、国全体を総括するような立場ではない、というふうに私どもは承知しております。別の言い方をしますと、大変失礼ですけれども、省庁レベルでも一体どこが最終責任を取っているのかよくわからない、という感じがいたします。私は安全委員会に籍を置いておりましたから、「少なくとも今の安全委員会の所掌ではないね」ということをよく言ったことがありますけれども。これは非常に深刻な問題になりうる。ハードウェアのサイドで原子力のエネルギー利用ということが今度の二法人の統合で非常に大きく飛躍する可能性がある。一方、一番根本的な人体影響に対する問題について答えを出す責任をもっているところが依然はっきりしないというのは、大変よろしくないと思うんです。アメリカの場合は議員立法で大きな予算をつけて、10年計画くらいで研究がどんどん進んでおりまして、そろそろ成果が出始めてきております。ぜひそのあたりも参考にした上でご検討いただきたいと思います。
  それからもう一つ、また全然別のことを申し上げます。人材養成は非常に重要でございまして、この新しい組織からいろいろな将来の日本の原子力を担う人材が出てくるということは大いに期待したいのでありますが、同時にいろいろな産業界その他から期待されたことは、特に大学中心に現在の原子力関係の人材が不足していて、将来心配だという声がありまして、一言申し上げたいと思います。
  今まで特にアジア関係などでは開発途上国の人を呼んできて、いろいろサービスをいたしておりますけれども、いつでもそういう方々が自分の国へお帰りになった後で活躍することを前提にして考えている。その人たちがもし日本で職を持ちたいというようなことがあったとしても、2、3例外はありますけれども、なかなか難しい現状であります。しかし、何時までも、そういうことをやっておりますと、日本というのはだめになります。将来のことを考えたら、そろそろそういうセンターでは良い人をスカウトする場になってほしい。サッカーに外人を呼んできたり、職業野球に外人を呼んでくるだけでなくて、原子力の実務的な研究機関でも我々の仲間の中にそういう人たちがどんどん入ってくるような……。その一つのチャンネルとしてのアジア地区のサービスセンター、研究センターというのも考えていただけないでしょうか。大学などはぼつぼつ考え始めておりますけれども、二法人の場合にもぜひそういうことを考えていただけないでしょうか。ちょっと余分なことを申し上げました。  
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  では引き続いて、住田委員お願いします。  
  

住田裕子委員  これまでは自然科学系、技術系のご専門の先生でございまして、私自身はそういう意味では一種の門外漢ですので、逆に国民の目、国民の立場というところからの意見を申し上げさせていただきたいと存じます。ペーパーは1枚半くらいでございますが、ざっと概要を申し上げます。
  私自身、これまでこの会議に当たっていろいろなお話を伺いまして、私なりにまとめたものと申しますと、やはりまず第一に「原子力を平和利用目的のみに利用するという我が国の国是、その精神等を諸外国とも連携してさらに徹底し、核廃絶に向けて国際的に貢献すること」、これが我が国の原子力のいろいろな形における出発点ではないかと思います。今、政治的にいろいろ言われていますので、やはりここはかみ締めるべき原点ではないか、というふうに思っております。
  今回この会議がもたれた理由といいますのは、厳しい財政事情の下で決定された『特殊法人等整理合理化計画』の精神が出発点でございます。「コスト意識を常に持ち、種々の政策評価に耐え得る効率的な事業運営をするということ」、これも国民から大きく期待されているところであります。簡単にスリム化とは言いませんけれども、やはりそういうことがどこかで見えないと、国民は納得しないのではないかと思っております。
  3つ目に「二法人統合のシナジー効果により、さらなる成果を挙げること」。私は素人でございますので、これは語るべきものはございません。今日もお聞きしましたけれども、これを私のような素人にわかるような形で成果としてお示しいただくことが重要なことではないか、というふうに思います。
  そして4番目ですが、科学技術立国としての我が国の将来を担える新規技術等を研究・開発・育成・推進し、様々な事業化への道筋をつけていただきたい。この方面におけるフロントランナーとしての地歩を固め、さらに邁進していただきたいと思っております。我が国の経済的な停滞というのは、何か新しい芽を見つけることができないことによって、ますます閉塞感が高まると思いますが、これは重要な芽をもっている世界ではないかと思いますので、この点に対して私は国民として期待をしております。
  次に2番目ですが、ただそうはいっても国民の目はどうかということは、今日はほかの委員があまりおっしゃらなかったので、少々私が言わせていただきたいと存じます。
  原子力関係の研究開発、事業等を取り巻く状況、取り分け国民の目には非常に厳しいものがあります。環境保全の動きの中で京都議定書が批准承認されたわけでございます。そのときにエネルギーの問題については当然いろいろな議論が出ておりまして、現実的な選択肢として最大のものは原子力発電の新設・増設であるはずでありますけれども、環境問題というと、この話は表には出てこない。しかも、実際には立地等の問題からか、当初の20基目標から最大でも13基までとトーンダウンした、という厳しい現実があります。ここ数日いろいろな動きがあるようでございますけれども、やはりなかなか厳しいということであります。
  戦後のある時期までは、平和利用目的の原子力技術は新たな科学技術開発の希望の星として多く期待を寄せられてきて、その技術は現在は先進国の中でもトップ集団である、ということでございます。
  しかし残念なことながら、今現段階では様々な事故により、また事故だけでなく、その対応の拙劣さによって、安全性とか、関係者に対する信頼性が大きく損なわれて、不信感が国民意識の中に醸成してしまった。これはやはり目をそむけてはならない現実ではないかと思います。
  環境保全を志向する政治的勢力といいますのは、やはり将来の原子力に対しては否定的でありまして、国際的な流れもそういうところへ向かっていることにきちっと目を向けなければならないと思います。我が国におきましても、プルサーマルに暗雲が漂っておりますし、高速増殖炉についてもなかなか難しい問題がございまして、非常に閉塞感の中にあるように見える、ということを指摘せざるを得ないと思っております。
  そこで、二法人統合でございますが、やはり現状打破と国民の支持に向けたものにぜひしていただきたい、ということであります。「新法人の役割・機能について(1)」で「国民の負託に応えるために」ということが掲げられておりましたけれども、負託というよりも、国民の支持を推進力としてこういうものは動かなくてはならないと思います。統合に当たっての課題として、様々なご意見の中に累積欠損金ということが出ておりますけれども、国民の支持がなければ、国の資金というのはそう軽々に投入されるべきものではないと思います。そういう意味では、今回の統合を現状打破の一つのきっかけ、大きな契機にしていただくチャンスではないかと思います。
  二法人は単なる看板のかけ換えでは許されない、ということでありまして、今後、耐えざる評価にさらされる存在となりますが、逆にそれだからこそ萎縮してしまうか、その存在感を発揮する好機とするか、真価が問われているところであります。当事者一人一人の方々がある意味では危機感をもって統合のシナジー効果を最大限挙げるべく、事業の見直し、人材・予算の効率的・重点的配分、そして傾注すべき事業へ邁進することが求められる。今や通常の民間企業は選択と集中を当然のこととしてやっておりますが、これを当然ここでも求められることになろうかと思います。このような事業に邁進する過程で手にした成果のみならず、目標に向かう途上としての現状の経過説明などを怠らず、絶えず国民の目に見えやすい透明な組織運営とする必要があると思います。
  先ほどは省庁のことを言われましたけれども、実は私はある金融機関を想定して言ったんですけれども、どこかの合併体のように主導権争いなどする暇はないはずでございまして、今日もお聞きする限りではその心配は今はしていないわけですけれども、やはり国民の目というのは厳しいものがありますので、そういう意味で絶えずそういうところについては情報公開、情報提供等をしていただきたい。また、これについては相応のコストもかかりますが、当然のコストであるというふうに考えていただきまして、今までの事故対応の拙劣さを乗り越えて、情報提供についての技術も磨いていただきたいと思います。
  「今まで十分やってきました」というようなご説明は私も重々承知はしているんですが、最終的な国民のところにまでどの程度届いたか、ということについてはやはり非常な疑問もあるわけでございます。それに対しての技術を磨いていただきたい。国民の支持、支援がなければ大規模な技術開発は不可能である、ということを肝に銘じていただきまして、この統合を転換期とされることを期待しております。
  以上です。  
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  それでは田中委員からよろしくお願いします。  
  

田中豊蔵委員  私は、これからの日本の国家戦略にとって平和利用に徹した原子力の活用が不可欠である、とかねがね思っております。この基本認識に立って、原子力二法人が統合するこの機会に一体何が一番大切なのかということを、今までのお話と若干重複することがあるかもしれませんが、私なりに考えているポイントを絞ってお話したいと思います。
  今もちょっとお話が出ましたが、近年、我が国の原子力政策に対する信頼あるいは原子力そのものに対する期待感、そういうものがかつてと比べて著しく薄れている。この現実を直視すること。つまり、これから目をそむけて、どんな名論卓説、プロジェクトを考えても、それは現実のものとはなかなかなり得ない。直視の中から、原子力の活用が日本の将来にとってこれだけプラスがあり、かつ、それが世界益につながることである、ということをいかに説得力をもって訴えるか、まず差し当たってそこに全力を傾注する、そういうことが今一番大切なのではないか、というふうに考えます。
  では、何をどういうふうに国民に説得するのか。これはいろいろな角度があるんですが、例えばの話で申し上げます。
  依然としてこの段階でも「省エネで問題解決」あるいは「代替エネルギーをもっと活用すべきだ」「原子力エネルギーはもういいかげんにやめたほうがいいんじゃないか」というような感じをもっている市民は少なくないんです。さらに外国の状況などを見ると、それぞれの国にはそれぞれの資源状況があって、「原子力発電はストップしよう」という国も最近はけっこうニュースに出てくる。そういうことなどが相乗作用を与えて、何となく原子力エネルギーがなくても、現実の日々の生活ができる、あるいは将来もやっていける、というようなことを考えがちである。もちろん、省エネや代替エネルギーへの努力は大切なことですが、こういう幻想をいかに取り除くか、ということをまずやっていかないとだめである。それぞれの電力会社が広告費を割いて、そういうことを遠慮がちにコマーシャルの形で訴えているというのが現実ですが、これからは国策として、つまり新しい法人が、そういうことを含めて、基本のところからやり直すくらいのことがないと、かつての昭和30年代、1950年代のあの期待に包まれた原子力への国民的支持、そういうものはよみがえらないのではないかと思います。
  原子力エネルギーの問題は、医療の問題やいろいろのことがあるわけですから、非常に多岐にわたっている。もちろん、そういうことに対する訴えかけも必要ですが、ともかく、日本の国家安全保障政策の中核として、原子力に対する国家的努力が極めて重要である、ということを国民に対してきちっとわかりやすく説明することがこれから一層重要な課題ではないか、と私は考えます。
  日本はこれまで非核平和主義に徹し、これからもそういうことでやっていくわけです。一時的な逆流はあっても、世界の情勢を全体としてみれば明らかに核廃絶に向かっているわけです。核兵器廃絶へ向かっている国際世論の中で、日本が憲法に言う名誉ある地位を占め、現実に重要な役割を演じていくためには、肝心の原子力技術者の層が質、量ともに世界に負けないようなものでなければならない。そういう意味で、この新しい統一された組織体の任務は、日本の国家安全保障戦略の中の中核部隊としての位置づけがされないといけない。近隣の諸国がこれからエネルギー資源の開発をしてゆくときの安全技術を中心にして、協力基盤の中心的役割を日本が積極的に果たす、そういうことも大切なわけです。
  その他、日本でもこれからのナショナリズムの高まりの中で、核の平和利用から一歩踏み出すような動きが出てこないとは限らない。そういう中できちっとした平和利用のスタンスを守り抜き、日本の国益と世界の公益とを結びつける、正に中核的な役割を新法人は果たすべきだと思います。
  新しい法人は大胆な発想で世論を喚起してほしい。例えば、ネーミングを真剣に考える、ということから始めてもいいと思うんです。この2つの法人が合併するときに一体どういう名前で国民に訴えるか。最近、銀行や何かが合併して、いろいろどうかなと思うネーミングもあるけれども、やはり相当苦労して新しい組織体を国民にアピールしようとしている。世界の唯一の巨大組織になると言ってもいいわけですから、21世紀の科学技術立国日本を象徴するような良いネーミングの中で国民の夢と希望をよみがえらせる。これは決して付け足しの話ではなくて、こういう大衆情報化社会の中ではそういう努力もばかにしてはいけない。
  「私は専門家で、わかっている。わからない人はしょうがない」というような考えはこの統合を機会にさらりと捨てて、専門家であればこそ、誰にでも「そうか」とわかるような説明をし、十分な広報活動に努力すべきです。本当の専門家だったら、そういうことができるはずです。
  今日のような原子力に対する国民の期待感の変化は、スリーマイルから始まってチェルノブイリあるいは日本国内の様々な事故、事件、そういうことはもちろん大きな影響があるんですけれども、専門家たちの努力が十分でなかったことにも一半の責任があるとあえて申し上げたいと思います。
  その他いろいろなことを申し上げたいんですが、私はかつて政治記者の一人として心配するのは、原子力二法人統合というような大きなプロジェクトは、国民の信頼を受けた政治権力が指導性を発揮する中で行われないとなかなかうまくいかない、ということです。残念ながら、この2年間くらいのタイムラグで考えると、「本当に大丈夫か」という危惧を率直に感じています。
  「行政改革の一環として行われる」という点ですが、私は節約するところは大いに節約して、それも国民に訴える一つの材料にしてほしいと思います。人数が減ったり、予算が減ると仕事ができないというのは嘘です。もちろん、そういうケースもあるかもしれないけれども、不要なものを節約することによってスリムになって組織が活性化する、という例はいくらもあるわけです。「我々はこれだけ努力した。こういう特殊法人はほかにないだろう」ということも国民に訴える一つの材料にしてほしい。
  つい2、3年前に省庁再編が行われた。それはいいんですが、では省庁再編によってこの段階で国民としてどうメリットがあって、国家公務員の数がどの程度減って、これによってどの程度国家予算が節約されたか、節約されないまでも国民がどの程度便利になったのか、というのはいまだに十分検証されていない。単なるそのときのご都合主義、その場しのぎ、まやかし、あるいは単なる政治的スローガンみたいなものの中で、中身が十分に検証されることが少ない。そういうことを反省しながら、他の組織が範とするような統合でありたい。
  以上、私の申し上げたことを新聞の見出し風に言いますと、「原子力二法人統合で新しい世論つくれ」「21世紀科学技術立国日本を目指して」ということです。
  今まで皆さんのお話を聞いてきて、それぞれもっともなことばかりですが、問題はそれを支える根幹の世論をつくれるかどうか、にほとんどすべてがかかっているのではないかと思うので、あえてその点に絞って申し上げました。
   
  

坂田審議官  励ましをありがとうございました。
  それでは西澤先生、よろしくお願いします。  
  

西澤潤一委員  ここへ来まして、何を申し上げるのか、私の考えていたことと方向がちょっと違っているのかなと思って心配でございますが、私は、二法人を統合することによって、その法人にどういう働きを期待するか、ということを申し上げればいいのではないかと思っておりましたので、そのことだけ申し上げます。科学論みたいなものもいろいろあるようでございますけれども、それは改めてまた別の場所でやらせていただきたい。これについても決して負けないつもりでございますけれども、その話は今日は棚上げにさせていただきたいと思います。
  いろいろなことが起こっておりますけれども、私が高等学校に入ったときに同じ部屋の1年先輩が鈴木範雄という人でありまして、その後、東大の電気から福島県第一原子力発電所の所長を長いことやった人であります。それから同じクラスメイトで伏屋潔というのがいまして、これも同じパスで、福島第二原発の所長をやった人でございます。不思議なことにそういう方々とわりに関係があったわけでございますが、所長を辞めた後、2人とも何回もアメリカに頼まれて安全運転の講義に行っているんです。それを非常に鮮明に覚えているわけでございます。この頃そういう話がなくなってしまって、教えに来てもらいたいというのが当たり前だ、というふうな風潮になっているのが私は非常に不思議でたまりません。
  現に、非常にしっかりした方々もいらっしゃいましたし、本当に原子力のためにすべての栄誉をなげうたれた方々もいらっしゃるわけでございます。向坊先生とか、ご本人がいらっしゃるとので、言いにくいんですが、小林先生とか、そういう方々がいっぱいいらっしゃいますので、そういう方々のやられた方向を見落とすことは大変大きな損失である。やはりそういう方々の志をもういっぺん思い出してみる必要があるのではないか、という気がするわけでございます。
  その頃からよく感じていた言葉でございまして、この頃時々新聞などに書くときに使わせていただいているんですが、私が小学校の何年のときかよく覚えておりませんが、新聞の下のほうに、当時の国鉄のある保線区長が自殺をした、という記事が載っておりました。何事かというと、自分の担当保線区の中で大雨が降りまして、土砂崩れを起こしたんです。そのために列車が転覆したのでも何でもなくて、列車が遅延をいたしました。それに対して責任を感じて自殺をした、という記事でございます。私は別に、これから事故を起こしたときに責任者に自殺してもらいたい、なんていうことを言っているつもりは毛頭ございませんので、誤解をしないでいただきたいと思うんですが、この頃若い人と話をすると、その自殺した意味がわからないということを言うわけでございます。私なりに注釈をいたしますと、自分の受け持ちの保線区の中に、ある程度の雨が降ったときに土砂崩れを起こすであろうという場所があったのに、それが見抜けなかった、ということに責任を感じているのだと思うんです。つまり、自分の保線区の中をよく見て歩いて、そういう危険を予知して、それに対して工事要求をちゃんとしておくことをやっておかなかった、ということに本人が責任を感じたのだと思います。今、我々はそういうことをよく思い出してみる必要があるのではないか。
  今度できます大変すばらしい力を持った研究所は、そういう分野に対して責任感をおもちの方ばかりだと思いますので、当然のことながら、今後とも事故を起こさないように、国民に不安感を与えるようなことがないように、自分の学問分野でお考えになるのは当然ではないか。そういう点からいいますと、やはり今度の研究所の中の第一の目的は、そういうものに対して研究を十分尽くしておいて、事故を予知して未然に防止する、ということではないかと思います。
  私は非常に疑問を感じるのでございますが、少人数でも非常によく働いて責任を全うしておられて、何も事故を起こさないところは、むしろ縮減の対象になる。事故が起こったところは増やさなければいかんというわけで、拡大されるわけでございます。大変矛盾を感じるわけでございまして、このへんのところも見直さなければいけないわけでございます。
  いずれにしても、根本的にご自分の学問分野の範疇ないしはその隣のあたりにあります将来の危険を予知できなければいけないわけで、よく勉強すればそういうことはかなりわかるものだと思います。今こういう状態でございますから、まず何を置いても事故を防止するための研究をいろいろとやっていただく、ということをお願いしたいと思います。もちろん、そういうことだけではなしに、これから先いろいろと新しいことに手を出さなければいけない。
  原子力の導入が日本に始まった頃、私の研究室は大変貧乏でございまして、テレビなどにも紹介されたような体たらくでございますが、「これからのエネルギーは原子核融合にまたなければいけない。30年経ったらすべて原子核融合に期待するようになるのだから、おまえたちも金が欲しいのはよくわかるが、おまえたちに回す金はない。がまんしろ」と言われていたわけでございます。ばか正直でございますから、それを真に受けていたわけでございます。
  文部省の審議会のメンバーにされたときに、ほかの方がいらっしゃらないものですから、私がエネルギー担当になりました。最初に命令を受けましたのは、京都大学の原子炉運転所の閉鎖でございます。いろいろ伺ってみますと、閉鎖するには十分な理由がないと思っていました。結果的には任期のうちには黒白をつけずに終わってしまったわけでございますが、その間非常に気になりましたのは、担当の管理者がよくごちそうをしてくださろうとなさるんです。私は「そんな暇があったら、これからこの運転所をどんなふうに展開して、どんなふうに成果を挙げるようにしていらっしゃるのか、計画を見せてほしい」ということを再三お願いしたんですが、とうとう最後まで見せていただけませんでした。今も運転を続けていらっしゃるので、その後、改善されたものだと私は思っております。
  その仕事を引き受けるときにちょっと話が合わないものでございますから、30年経ったら原子核融合になると言った人に「原子核融合はまだ全然表にも出てこないけれども、どうなっているんだ」と言いましたら、「おまえ、バカだな。30年なんかでできるわけないじゃないか。どう見たってあと50年はかかる」と言ったので、私は「バカとは何事か」と言ったんでございますが、もともとバカでございますから、それ以上追求はしなかったわけでございますが、私は「せめて土下座して国民に謝れ」と言ったんです。やはりそういう責任感はちゃんともつ必要があるのではないか。
  現に、京都大学にいらっしゃいました宇尾先生のようにかなり独創的な仕事も日本から出ておりますが、まだなかなか伸び切らなくて、「もう一歩進んでいれば、ITERと競合するようなことになったのだが」と惜しがる方もいらっしゃるわけです。そうだとすれば大変惜しい話でございますが、時の研究所をつくるときには、私も素人ではございますが、奮戦をいたしまして、ようやく宇尾先生の意志をいくらかはつなぐことになったわけでございます。その後、大変順調に研究が展開をしているということで大変うれしいわけでございます。
  どうなったかなと思って非常に心配をしておりましたが、外部評価委員を命ぜられまして、その頼みに所長がお見えになりましたときに私が一番先に「どうですか」と聞いたら、「大変うまく動いています」ということで、「我々もずいぶん心配しているんだから、そういうときには電話の一本くらいくれたらいいじゃないか」ということを申しました。それから「宇尾先生の未亡人には電話してあるんでしょうね」と言ったら、「いや、しておりません」と言うから、「何をやっているんですか。帰ったらすぐに電話してください」と言ったわけでございます。そういうメンタルな問題がやはりこの根底にはあると思います。
  それから輸入学問の常で、決して原子力だけとは申しませんけれども、やはりどうしても後追い型が多い。最高機関のほうで、外国でやっている5つか6つの分野以外の学問には研究費を投入しない、ということが決まっているそうでございますから、それは必然の流れかとも思いますが、まじめにこつこつ足元のテーマを研究していくときに、そこに実は大変大きな花が咲く、といういわゆるグラスゴー流の学問の流れを私どもは受けておりますので、やはり地についた、自分たちが今どうしてもやらなければいけない必然的な仕事を根気よくやっていく。そこから出てきたものをまた学問に昇華させていく。例えば、ロード・ケルビンの熱力学第二法則に至る蒸気機関からの出発とか、あるいは誰かわかりませんが、ドーバー海峡に電線を2本沈めて海底ケーブルの開祖になったのを、ロード・ケルビンがそれを電信方程式にしまして、その結果を使って、逆に今度はアメリカとイギリスの間に海底ケーブルを敷く、という世界の文化史上に残る大壮挙をやって見せるわけでございますが、そういうすばらしい仕事がこの分野からもやがては出てくるのではないか、というふうに私は心から期待をしているところでございます。
  以上でございます。  
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  それでは最後に、薬師寺先生、よろしくお願いします。  
  

薬師寺泰蔵委員  最初はずいぶんはりきって、これは言おうと思っていたんですけれども、皆さんがみんな言ってしまったので、萎えてしまいました。それでも簡単に短く申し上げたいと思います。
  ご承知のように、日本は好きと嫌いにかかわらず大国でございます。大国の中で原子力をやっているのは、ドイツは今、大国からややリトリートしておりますけれども、経済的な理由、政治的な理由で、すべて軍事研究がまずあって、そのために原子力をやるということは特に疑義がございません。国家を守るということになっております。日本だけが大国の中で軍事研究をやらないということはもうご承知のとおりでございます。そのことは、逆に言うと、皆さんがおっしゃったように、内外の社会がサポートしない限りはできない。いくら研究は良いものをやっていると言っても、日本の場合にはナショナリゼーションができない。ですから、そこのところは国民の支持とか、そういうようなことではなくて、研究者それぞれが「自分たちがやっているのは、大国の中でやっているけれども、違うんだぞ」ということを今度統合するときに明確に確認をしていただきたいと思います。
  そのベースの中に立ってみると、2つのことを提案したい、というふうに思います。
  一つは、易しいほうからいきますけれども、広報官をたくさんつくっていただきたい。広報をする場合には2つあります。副大臣とか、政務官はよくわかっておりますけれども、官房長官の発言もありますように、大体政治家は原子力というのはほとんどわからないわけでございますので、政治家に対する広報をきちんとやっていただきたい。それからメディアもいいかげんでございますので、田中さんなどに頼らないで、きちんと正確な広報をやっていただきたい。それから社会一般に対して常に広報をやる。そのために広報官を入れていただきたい。
  それから、若手を中心に社会科学者(人文科学者も入れて)と原子力研究者と共同プロジェクトをやっていただきたい。若手というのが重要でございまして、年配の方はもう外していただいて、社会科学者も原子力研究者も若手だけで一種の課題プロジェクトをやっていただきたい。その中で2つの項目を入れていただきたいと思います。
  一つは、パブリック・アクセプタンスに関する組織的な研究です。吉川先生もおっしゃったように、ユニット型にする理由は、研究の細分化というように、大きくなると一度パブリック・アクセプタンスに失敗すると、全員がつぶれてしまいますので、組織的にディスカレッジングされたのをどこかでとめる。ユニットにするかどうか知りませんけれども、事故は起こらないではなく、必ず起こるという前提で、そういうような組織研究をやっていただきたいと思います。
  それから先ほど安全保障の話を田中さんがされましたけれども、ナショナル・セキュリティというわけではなくて、日本の安全が非常に危なくなっているものに関して研究をやっていただきたい。
  その項目は幾つかありますけれども、エネルギーの自給、それから技術のフロンティアが日本はなくなっている、ということです。それは原子力の分野でどう貢献できるか。それから人材が非常に枯渇しているのはご議論のとおりで、どうしたら原子力のこの分野に新鮮な優秀な人間を入れることができるか。それから国際貢献でございます。数で外国人が来たとか、一緒にやったというのではなくて、日本はこの分野で本当に貢献をしているのかどうかということを、いろいろフィードバックも含めて、きちんとした研究をやっていただきたいと思います。
  以上です。  
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  本来ですと、先生方の今のご発表に関連してもう少し議論していただきたいところですが、あいにく時間がまいりましたので、今日はここにとどめさせていただきまして、次回以降、報告書をまとめていく過程で追加的にどんどんご議論いただきたい、こういう具合に思います。
  それでは、最後に政務官と副大臣から今日のご感想をいただく前に、いつものとおり若干事務的なことを申し上げさせていただきたいと思います。
  日程の案でございますが、次回の7回目は今月の25日(火)の朝8時スタートで、食事がございますので、会議としては8時20分スタートで、10時20分までとしたいと思います。場所はこの部屋でございます。それから第8回は7月16日(火)で、やはり8時から始めさせていただいて10時20分までですけれども、場所は変わりまして、キャピトル東急ホテルの竹の間ということでございます。そして、第9回の会合は8月5日(月)午後3時から5時までで、場所は同じキャピトル東急の竹の間ということでございます。
  できれば第9回目で取りあえず中間的な取りまとめについて先生方のコンセンサスが得られれば、という具合に思っている次第でございます。
  それでは加納政務官から一言お願いいたします。  
  

加納政務官  加納でございます。ありがとうございました。恒例によりまして、ずうっと伺っていたことの印象を5分以内で短くまとめて申し上げさせていただきたいと思います。3つにまとめます。
  第一でございますが、今日は新法人に何を望むかということについていろいろご議論があったと思います。おおむねのご意見としては、原子力の平和利用は国家の安全保障の確保、それから環境問題としての循環型社会の構築の上で不可欠なオプションである、ということを強く認識することがこの新法人の前提として大事である、そして、この新法人はその原子力の研究開発の世界的なCOE(Center of Excellent)を目指すべきである、ということが強調されたと思います。高い志と強い使命感の下に人材とか、資金とか、施設とかを結集し、効率的な運営をすることが大事だ、といったことがキーワードだったと思います。同時に、世界的な課題解決のためにこの新法人が期待されているわけで、新法人はその運営に当たって、総花的に取り組むのではなくて、日本はフロントランナーを目指し、また、それが可能となるような分野に資源を選択、集中すべきではないか、といったご意見もあったかと思います。その例示として多くの委員の先生から出ていたものは、世界最高レベルの安全研究であるとか、プルトニウムをただ核兵器不拡散という弱みではなくて、プルトニウムを日本がフロントランナーとして積極的に平和利用するんだ、エネルギー利用するんだ、そういう面での研究開発、それから新型炉、新しい燃料サイクルの開発、FBR、大型加速器、こういったものが例示されていたかと思います。
  2つ目でございますけれども、研究開発の進め方について多くのご指摘がございました。ベースとして大切な、例えば安全確保を大前提とすべきである。安全解析とそれによる未然防止を図るべきである。それから、2つの組織がただ統合するだけではなく、統合によるシナジー効果を高めていくべきであろう。例えば、バックエンドの統合した研究であるとか、研究インフラの多目的、他組織間の利用といったようなシナジー効果。
  それから3つ目としては、先進性、総合性、一体性といったことがベースとして大事である、というご指摘に加えまして、さらに本日は研究開発の進め方として3点ほどご指摘がありました。競争原理を徹底的に生かした運営をすべきである。それから、徹底的な外部評価を基にした透明性を向上させるべきである。それから、基盤・基礎研究と応用研究あるいはプロジェクト開発との関係についても、それぞれの特質を踏まえることが大事であるけれども、テーマによっては基礎から応用まで一貫した研究体制を組むことも大事である、という大事なご指摘があったと思います。当然のこととして、産学官の連携は今日も話題になりました。テーマとか、研究インフラとか、人材研究、様々な面での連携が大事である。それから今日新しく出た話では、シーズとニーズの交換が大事である、産官学の知恵と力のコラボレーションといったキーワードがあったかと思います。
  最後になりますが、今後の進め方、新法人発足に当たっての配慮事項として大事なご指摘がございました。3点あったと思いますが、1つは、負の遺産をしっかりと整理してから新法人を発足させろということで、例えばバックエンド、デコミとか、廃棄物の問題があります。既にもう廃棄物は出ておりますけれども、これらをどうするのか。それからもう1つは、累積欠損金の扱いです。こういった、いわばマイナスの遺産を新法人の発足に当たってすっきりさせて、出るべきではないだろうか。例えば、JRとか、BNFLの民営化の例も今日はご報告いただきました。
  2つ目のポイントは、チャレンジ精神をもて、ということだったと思います。先例のない研究開発に取り組むわけでございますから、当然のことながら、失敗を恐れぬ勇気がなければいけない。と同時に、これはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、状況によっては退く勇気も大事である、そういう両方の面での勇気が大事なのではないか。
  それから3つ目は、社会の目が重要だ、ということでございました。これも多くの先生方からご指摘がありましたが、専門家の常識と社会の認識の間に大きなギャップが出ておりまして、このギャップから原子力についての様々な誤解なり不信感なり、あるいは期待薄れとか、いろいろなマイナーイメージが出てきております。そこで、独善にならないように、こういったギッャプがあることを直視すべきである、というのが今日の重要なご指摘でございました。対策としては、外部の有識者の目で絶えず評価をしてもらうことであるとか、あるいは専門家の広報担当者を育成することであるとか、若手研究者のプロジェクトチームでPAについての組織的な研究をすべきであるとか、非常にたくさんのご提言をいただきました。
  報告書が出来上がってしまったような感じもいたしますが、今日の議論の感想でとどめさせていただきました。
  最後に一言だけちょっとPRさせていただきます。今日のご発言に対して一言だけぜひ聞いていただきたいのは、国会議員はバカだ、政治家はなってない、というご指摘は本当に同感でございます。だからこそ我々はがんばっているつもりでございますが、大変うれしい話は、この6月7日、先週の金曜日にエネルギー総合政策を決めるエネルギー政策基本法というのが日本で初めて議員立法ででき、それを通じて12時間にわたって議員同士で原子力の話、原子力燃料サイクルの話、今日正にお話になったエネルギーの安全保障と国家の安全保障戦略の話というのが正に国民の公開の場で議論されたのですが、サッカーばっかりで、テレビでは全く報道されない。非常に悔しい思いをしております。政治家がバカだということは認めますけれども、バカはバカなりに一生懸命勉強して、今回は役人の書いたものではなくて、かなりレベルの高い議論を12時間国会議員同士でやった、ということをぜひ認識していただきまして、今回の新法人の発足に当たりまして政治家も心を引き締めて勉強をしてまいりたいと思っております。  
  

坂田審議官  では、副大臣、お願いいたします。  
  

青山副大臣  皆様には非常に貴重なご意見をいただきました。活発なご議論をいただいて、感謝しております。
  本日は鳥井解説委員や吉川日本学術会議会長から貴重なご意見をいただきました。また、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構からも統合に係る考え方について伺うことができました。また、これらご意見を踏まえて、委員の皆様から様々なご意見の発表いただきました。その内容としては、経営のあり方、特に次元の高い経営が必要である、という意見がありました。それから新法人の使命、役割についても広範にご指摘がありまして、例えば核燃料サイクルの確立への寄与、人材養成の重要性、基礎・基盤研究や安全研究への取組み、国際協力や国際貢献への取組み、国民の支持と支援、理解される透明性が必要である、あるいはまた行政改革の要請にしっかり対応して活性化を図るべきであるということで、新しい提案を幾つかいただきました。
  次回からは、これまでのご議論を踏まえまして、いよいよ中間報告書に向けた整理に入ることになります。次回は、新法人理念や担うべき役割、機能のあり方について皆様からいただいたご意見をまとめさせていただいて、中間報告書の骨子案を提示させていただきたいと思います。そして、それに基づいて十分なご検討をいただきたいと思います。8月の中間報告書の最終取りまとめまで計3回の会合を開催するということでありまして、時間があまりあるわけではありませんが、皆様におかれましては今後とも引き続きご協力を賜りたいと思います。
  私は最後に一言政治家として言っておかなければいかんかなと思うことがありましたが、大臣政務官が言ってくれましたから、やめますが、社会の風潮として、政治を批判していればよい、というような風潮はいけない。政治家は甘んじて非難を受けますけれども、成すべきことを成さなければいけない、という使命感はもっております。それに対する正しい情報をいただけますようにお願いをしたいと思います。
  本日、こういう機会に皆様から本当にすばらしい提案、ご意見をいただいたことに心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。  
  

坂田審議官  それではこれで本日は終わります。ありがとうございました。


(研究開発局原子力課)

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