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原子力二法人統合準備会議

2002/04/26 議事録
原子力二法人統合準備会議(第4回)議事録



第4回  原子力二法人統合準備会議


1.日時 平成14年4月26日(金)  8:20〜10:20

2.場所 キャピトル東急ホテル地下2階「竹の間」

3.出席者      
(座長) 青山  文部科学副大臣

(副座長) 加納  文部科学大臣政務官

(有識者) 秋元勇巳  三菱マテリアル株式会社会長
秋山守  財団法人エネルギー総合工学研究所理事長
木村孟  大学評価・学位授与機構長
熊谷信昭  大阪大学名誉教授
住田健二  日本原子力学会会長
住田裕子  弁護士
田中豊蔵  ジャーナリスト

(説明者) 田中  東京大学東洋文化研究所長
下村  OECD/NEA安全規制担当次長
小溝  IAEA事務局特別補佐官

(文部科学省) 青江文部科学審議官、遠藤研究振興局長、今村研究開発局長、林大臣官房審議官、坂田大臣官房審議官


4. 議事
  1.開会
2.原子力二法人統合に関する意見聴取
3.その他
4.閉会

 
5. 配付資料
 
資料1.   各国の原子力開発利用の現状(事務局資料)

資料2. PREPARATORY MEETING FOR THE UNIFICATION OF TWO NUCLEAR CORPORATIONS
  (経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)  下村和夫  安全規制担当次長)

資料3. 国際原子力機関の視点
  (国際原子力機関(IAEA)  小溝泰義  事務局長特別補佐官)

資料4. OVERVIEW OF U.S.-JAPAN COOPERATION WITH JAERI AND JNC
  (米国エネルギー省(DOE)  Giulia R. Bisconti アジア地域代表)

資料5. 原子力二法人統合の国際的意義と期待
  (国際原子力機関(IAEA)  谷口富裕  事務次長)

資料6. 原研・サイクル機構の統合に関する提言
  (国際原子力機関(IAEA)  村上憲治  保障措置局査察C部長)

資料7. 原子力二法人統合準備会議審議日程(案)

資料8. 第3回原子力二法人統合準備会議議事録
 
  

坂田審議官  定刻ちょっと前ですけれども、これから第4回の原子力二法人統合準備会議を始めたいと思います。
  最初に座長の青山副大臣よりごあいさつ申し上げます。


青山副大臣
  皆さん、おはようございます。大変お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
  原子力二法人統合準備会議も今回で第4回目となりました。これまで大学、産業界、原子力安全関係、立地自治体等々からお話をいただきましたが、二法人統合に関わる様々な分野の有識者の方々から両法人の見直し、評価と新法人に求める役割・機能に関して幅広くご意見を伺ってまいりました。本日は、国際関係に関する有識者として、田中明彦東京大学東洋文化研究所長、国際機関の関係者として、OECD/NEA下村和生安全規制担当次長、IAEA小溝泰義事務局長特別補佐官からご意見を伺う予定でございます。
  また、会議にご出席いただくことはできませんでしたが、ビスコンティ在日米国大使館DOEアジア地域代表、それからIAEA谷口富裕原子力安全局担当次長、同じくIAEA村上憲治保障措置局査察C部長から当会議へのメッセージという形でご意見をいただいております。
  本日も貴重なご意見をひとついただきたいと思いますし、いただけるものと期待しておりますが、委員の皆様にもぜひ活発なご議論をお願い申し上げたいと思います。
  一言開会のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございます。
  

坂田審議官  それではまず資料の確認をいたします。
  (資料確認)
  それではさっそく今日の議事に入りますが、青山副大臣からお話がありましたとおり、今日も引き続いてご関係の皆様から意見をお伺いしまして、議論を深めていただきたいと思います。特に今回は国際関係ということでございます。
  最初に東京大学の田中東洋文化研究所長からお話をお伺いして、それを基にして質疑をやっていただきたい、という具合に思っております。その後にOECD/NEAの下村次長、それからIAEAの小溝補佐官からお話をお伺いして、「資料第4号」「資料第5号」「資料第6号」で3名の方からメッセージをいただいておりますので、それを少し事務局からご紹介申し上げて、全体をまとめてまた最後に議論をしていただきたい、という具合に思っております。
  そういう具合に取り進めたいと思いますが、各先生方のご参考ということで、世界の原子力の開発利用の全般的な状況をご紹介しておいたほうがよろしいかと思いまして、事務局のほうで資料を用意いたしました。冒頭15分間そのお話を中西課長のほうからさせていただきまして、その後で田中先生からお話をいただいて、そこでいったん区切って質疑応答をしていただくということで、よろしくお願い申し上げたいと思います。
  それではまず中西課長から世界の全般状況の説明をしてもらいたいと思います。
  

事務局(中西課長)  それでは少し時間をいただきまして、基礎的なデータのご紹介をしたいと思います。お手元に「資料第1号」がございますので、順序良くかいつまんでお話させていただきたいと思います。
  「各国の原子力開発利用の現状」でございますが、まず「欧米諸国の動向」ということで、米国からでございます。
  「原子力発電の状況」というのは省略をしていきたいと思います。
  全体的動向といたしまして、核不拡散政策としてプルトニウムの民生利用を奨励せず、また自らプルトニウムの分離を行わない、という政策をとっておりますが、西欧と日本における民生用原子力計画におけるプルトニウム利用は認める、というような政策でございます。それから去年1月にブッシュ新政権が発足した後、5月に「国家エネルギー政策」と題する報告書が発表されまして、エネルギー安全保障における原子力の役割を重視して、エネルギー政策の重要な構成要素として原子力を位置づけ、そして推進する、という政策をとっております。
  それから個別の動向といたしまして、エネルギー省は去年の12月、高速中性子束試験装置(FFTF)の永久停止を発表する、ということがございました。また、今年1月、エネルギー省は、放射性廃棄物処分開発のためのサイトとしてユッカマウンテンサイトというのをブッシュ大統領に推薦する、ということを行いました。しかしながら、4月にはネバタ州知事が拒否権を行使して、連邦議会に対してサイト不承認の通知を提出し、議会が3か月以内に議決案を採択しなければサイトは不承認となる状況にある、ということでございます。
  フランスにおきましては、エネルギー自給率向上のため、原子力の利用を積極的に推進しておりまして、非常に高い水準で原子力発電が行われておりますし、総発電量の約13%は近隣諸国に輸出する、ということでございます。それから98年に、フランス政府は高速増殖実証炉スーパーフェニックスの閉鎖と原型炉フェニックスの2004年までの運転継続を決定した、というようなことがございました。去年の9月には主要原子力産業を総括する持ち株会社AREVAというものを設立した、というような出来事もございました。
  英国に関しましては、原子力をエネルギーの多様化政策に位置づけている、ということでございます。今後50年を見据えたエネルギー政策に関わるレビューに着手して、報告書は2002年初頭に発表される、そんなような予定になっております。
  仏国と英国につきましては後でもう少し補足させていただきたいと思います。
  ドイツにつきましては、脱原子力政策の一環といたしまして、2001年6月、独連邦政府と電力会社首脳の間で原子力コンセンサス合意書への最終署名ということが行われました。内容は、運転中の原子炉は、各原子炉の総運転期間を32年として算出した合計残存量まで発電可能として、その後停止する。その残存量はある発電所から別の発電所へ移動することも可能、ということでございます。使用済燃料の再処理は2005年7月で終了。それから事業者は遅くとも5年以内に発電所サイト内あるいは近傍に使用済燃料の貯蔵施設を設置する義務を負う。原子力発電所の新設は行わない。バックエンドについては、再処理とか、廃棄物の処理などについては着実に実施する。
  脱原子力法案というものが去年の9月、19基の原子炉の段階的廃止を規定して、それが閣議決定され、連邦議会において12月に可決される、というような状況にございます。
  スウェーデンは省略いたしまして、旧ソ連、中東欧諸国の動向でございますが、ロシアにおきましては、高速増殖炉を含む原子力開発を積極的に推進、また、ビジネスとして再処理、中間貯蔵の受託などの原子力関連サービスの提供を積極的に推進している、ということでございます。それから個別動向でございますが、余剰兵器から出てくるプルトニウムの処分の方法として、米国との間で34tのプルトニウムを原子炉で燃焼するということを決定しております。これはG8の中のメンバーとして日本もJNCを中心に協力をさせていただいている、ということでございます。
  近隣アジア諸国でございますが、韓国は原子力技術の国産化、標準化ということを目指して、標準型原子炉(KSNP)を98年1号基、99年2号基を運開させております。それから、長計のようなものでございますが、第2次原子力振興総合計画を去年の7月に決定して、さらに2006年までに4基、さらにグレードアップしたものを2015年までに8基完成させる計画でございます。また、発電、淡水化を目的とした中小型炉(SMART)の開発を実行中でございます。それからIAEAに国際原子力大学構想を提案するなど、非常に国際的な協力にも熱心ということでございます。
  台湾は省略いたしまして、中国でございますが、現在、3基の発電プラントが運転中、2001〜2005年にさらに4基程度の着工が見込まれる、ということでございます。それから「第10次5ヶ年計画」におきましては、4〜8基の新規原子力発電プラントを建設し、100万kW級のPWRを標準炉にすべく開発を行っていくこととしております。それから精華大学の高温ガス炉が2000年の12月に臨界、高速実験炉につきましても建設中という状況にございます。多様な炉型について研究開発を進めている、ということでございます。
  ヴィエトナムにつきましては、去年の5月、首相より工業省をはじめ各省に原子力発電のプロジェクトのプレフィージビリティ・スタディの開始を指示した、という状況にございます。
  それからイギリス、フランスについて(参考1)でもうちょっと補足させていただきたいと思います。
  フランスにつきましては、フランス原子力庁(CEA)が中心となって原子力開発を進めているわけでございますけれども、ほかにフランス電力公社(EDF)、ラ・アーグ再処理工場、それからメロックスMOX燃料製造工場、核燃料サイクル全般の業務を行うコジェマ、原子炉原子炉施設建設及び燃料集合体製造を行うフラマトム、それから廃棄物関係のANDRAなどが原子力研究開発を進めている、ということでございます。
  アレバ(AREVA)が一昨年の11月に設立されて、複雑な資本関係を整理し、持ち株会社として発足した、ということでございます。アレバの下にはフラマトムやコジェマ社などの原子力部門が傘下になっている、ということでございます。
  それから高レベル放射性廃棄物の管理組織といたしまして、ANDRAが存在しているわけでございます。高レベル放射性廃棄物処分を含む放射性廃棄物の管理責任を負う組織ということで、発足したわけでございます。ANDRAは低レベル廃棄物処分施設の運営と高レベル廃棄物の地層処分に関する研究を行うための研究施設の建設を行っている、という状況にございます。
  フランスにおいては、廃棄物処分や回収に必要な資金は廃棄物発生者(EDF、COGEMA、CEA等)が負担をする、研究開発や施設建設のための資金は政府からの出資で負担をする、ということになっているわけでございます。ちなみに、EDFが今、放射性廃棄物の貯蔵処分のために引き当てている引当金の総額は4,800億円くらいということでございます。
  次にイギリスは、英国原子力公社(UKAEA)で原子力開発を進めてまいりましたが、核燃料サイクル全般の業務は英国原子燃料会社(BNFL)、デコミッショニング・放射性廃棄物管理などはUKAEA、原子力発電はブリテッシュ・エナジー社(BE)が中心となって行う、というような鼎立体制が組まれております。
  最近の動向といたしましては、BNFLグループの設立というようなことがありますが、海外のいろいろな原子力事業会社の原子力事業部門を吸収・合併いたしまして、イギリス国内だけでなく、世界の原子力の運転管理、燃料製造、ウラン調達、再処理……というような多様な業務を国際的に展開するような組織となっております。
  それからバックエンド政策でございますが、中・低レベル放射性廃棄物処分の実施主体として、英国原子力産業放射性廃棄物管理会社というものが原子力産業の共同出資で82年に設立されていて、管理に当たっている、ということでございます。高レベル放射性廃棄物処分の実施主体については、今現在、議論が行われている段階であって、まだ最終的な決定はなされていない。放射性廃棄物の発生者と所有者は管理・処分するコストを負担する責務がある。それを前もって見積もっておいて適当な資金を引き当てておかなければならない、ということになっているわけでございます。
  去年の11月、貿易産業相が債務管理機関(LMA)の設立を発表しましたが、これは過去の原子力プログラムから生じた債務の整理を目的として、BNFLとか、UKAEAの放射性廃棄物や施設の解体のための債務と資産の管理責任を引き継ぐこととなっている、というものでございます。このLMAは、BNFLやUKAEAの施設を引き継いで、これらの機関と契約を結んで施設の運営をBNFLやUKAEAに委託する、しかし責任はLMAにある、そんな体制を組む、ということになっているわけでございます。
  それから(参考2)は、米国を中心に研究所の管理体制について資料をまとめてみました。
  米国のDOEを例にとっておりますけれども、DOEは研究開発を行う大きな9つの研究機関がございまして、Multi-Program Laboratories(多重プログラム研究機関)と言われております。そのほかに特定のミッションをもって、それに専念するProgram-Dedicated Laboratories(特定プログラム研究機関)というものもあるわけです。DOEは、4つの使命(国家安全保障、エネルギー資源、環境保全、基礎科学)を果たすために、いろいろなプログラムを動かしていて、そのプログラムにこの9つの研究機関と細かい研究機関が協力しながら当たる、という体制になっております。
  具体的には(別紙1)で、使命が4つ並んでいて、それを達成するためのプログラムがあって、それにどのような位置づけでそれぞれの研究機関が参画しているか、ということを見ていただけると思います。
  (別紙2)におきましては、9つの大きな研究機関の予算の内訳がプログラムごとに分析されております。全体で6.8ビリオンダラーというような巨費が投じられているわけですが、国防関係の研究も非常に大きくて、原子力自身というのはその一部である、ということでございます。
  (参考2)に返っていただきまして、DOEの9つの多重プログラム研究機関といいますのは、大学や民間機関に研究所の運営を委託しております。その契約に基づいて、nonprofit organizationやprofit organizationが研究所の運営をしている、ということでございます。
  一例を挙げますと、ブルックへイブン研究所の場合には、DOEの科学局の管轄の下でブルックヘイブン・サイエンス・アソシエイツが受託して、研究所の運営をしております。契約書の内容は、DOEの役割は、目標を定めて、使命を特定して、委託契約者が研究開発をするのに必要な物理的な資源、金銭的な資源を獲得すること、そして受託者は、研究所の管理、運営、職員配置などを行って、DOEによって与えられた使命を達成して、その他すべての業務を行う、というようなことになっているわけでございます。
  こういう特徴的な研究運営を行っている、ということをちょっとご紹介いたします。
  (別紙3)は、具体的にどこの会社がそれぞれ9つの研究所の運営を受託しているか、ということをまとめておきました。歴史的にカリフォルニア大学がロスアラモス国立研究所の運営に当たっていたわけですが、それが全体に広がったということでございます。
  原研の国際協力・貢献の現状(参考3)、それからJNCの国際協力の現状(参考4)などが添付してございますが、省略させていただきたいと思います。ご参照いただけたらと思います。
  以上です。
  

坂田審議官  ありがとうございました。
  短い時間で大変多くのことをカバーしようとしましたので、説明自体が十分であったかどうか、という問題はございますけれども、ご参考にしていただきまして、それでは田中先生からお話をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いします。
  

田中明彦東京大学東洋文化研究所長  東京大学の田中です。
  私の専門は国際政治でございまして、原子力開発の技術的な側面については全くの素人でございます。それから今回の原子力二法人についても特にその内的なことはあまり深く承知していないものですので、現在の国際関係、国際政治情勢の中で今後の日本における原子力開発の研究にとって考慮すべき国際的状況といったものを私がどう理解しているか、ということを少し申し上げて、ご議論の参考にさせていただければと思います。後で国際機関からのお話がある、というふうに了解しておりますので、国際機関との関係のテクニカルな問題等についても私は専門ではございませんので、あまり詳細にわたることは申し上げられません。ですから、極めて大ざっぱな話ということでご了解いただければと思います。
  申し上げますのはおおむね3つの点であります。第1点は、現在の世界全体を見回したときの問題状況、現在の国際政治の構造変動というようなものが原子力とどう結びつくか、というような点、第2の点で申し上げたいことは、世界全体というよりは日本を取り巻く東アジアの状況が原子力の問題にどういうふうにつながってくるか、ということについての私の理解、それから3番目に、原子力二法人統合によってできる新法人に私の観点からどういうところを期待しているか、というようなことを簡単に申し述べさせていただきたい、というふうに思います。
  まず第1は、世界全体、国際政治全体の構造変動というものをどういうふうに考えるか、ということであります。これはそれ自体大変な大テーマでありますので、詳細に議論してまいりますと切りがないわけでありますが、私の理解するところだけ申し上げたいと思います。
  冷戦が終わって、いわゆる二極対立が終わったということで、世界はアメリカ中心の単極体制になるのか、あるいは様々な中心が現れてマルチポーラー、多極の体制になるのか、というような議論がしばしばなされていたわけです。それぞれみなメリットの議論だろうと思いますが、私はこの10年を振り返ってみて、そういう国を中心とした国際政治の重要性に加えて、やはり今の国際政治状況において注目すべきは、国以外の主体、アクターというのものが様々な形で登場してきているということの意味を考えなければいけない、というふうに思っております。
  ハーバード大学のケネディスクールのディーンをやっておりますジョセフ・ナイという人が最近新しい本を書きましたけれども、「世界には3つのチェスボードがあって、1つは軍事力のチェスボード。ここはアメリカが単極支配である。それから2つ目は経済力におけるチェスボード。ここは多極である。ただ、3番目のチェスボードは、国境を超えたトランスナショナルなチェスボードで、ここでは権力というのは非常に拡散している。様々なアクターがいろいろなものを持っている」ということであります。
  様々なアクターというのは、言うまでもなく、大きなところでいえば、国際機関もそうですけれども、企業、NGO、そして、この原子力問題を考えるときに私が今、大変重視しなければいけないと思っているのはテロリストです。
  通常、NGOというのはnongovernmental organizationで、良いことをする非政府主体であります。ところが、世の中は良いことをするために政府以外の人々がいろいろなことができるようになったとともに、多くの人々にとってみると望ましくないことをするのにも、政府ほどの規模がなくてもできるようになってしまった。このような議論は昨年の今頃まではご説明申し上げてもなかなかご理解いただけない面があったのですが、昨年の9月11日以後、こういう議論をすると、大変よくおわかりになっていただけるようなった、というふうに思います。つまり、国家というような体裁を整えなくても、いろいろ考えてやっていきますと、国家の軍隊がもたらすと同じ程度の規模の損害を一般大衆に与えることができる、ということになったわけであります。
  まとめてみますと、非常に多様な主体の登場とともに、これまで想定できないような危険が生まれてきた、ということであります。
  原子力との関係で考えますと、この面は非常に深刻な問題になってきます。これまで大量破壊兵器の問題ということはおおむね国家間の問題である、というふうに考えればよかった。ですから、原子力の核軍縮といったときには、国と国の間の軍縮である、アメリカとソ連との間で一致すればいい、ということであった。
  ところが、これが80年代、90年代となってきた段階で、いわゆるまともな国家でないところで核開発が行われたらどうなるか、という問題が一つ生じてきたわけです。これはNPT体制の問題でもあり、IAEAの査察の問題でもある。北朝鮮であり、イラクであり、その他、時にならず者国家と言われる諸国であります。
  それがさらに最近になって心配されるのは、ならず者国家であっても一応国家でありますから、所在ははっきりしているわけです。ですから、どこを観察していれば大丈夫だ、というようなことがあるわけですが、相手がテロリストのネットワークであるということになると、一体どこにいるのかということが非常に不分明になってくる。もちろん、本格的な原子力開発をやるということになれば、どこでやっているかわからないというような程度の規模ではないわけですから、アメリカのような軍事偵察の能力をもってすれば、たぶんどこでやっているかわかるようになるだろうと思います。それでもイラクのような場合、現在でも査察が十分かどうかわからない。
  さらに問題なのは、そのテロリストたちが使う大量破壊兵器というのは、米ソ冷戦のときのような本格的な原爆である必要はない。放射性廃棄物を何らかの手段で使うというようなこともあるし、この間のニューヨークでのテロのことを考えると、非常に想像力豊かにいろいろなものを使われているということは大変な話でありまして、通常の想定でうまくいかないかもしれない、ということであります。
  この間、防衛庁の今の防衛計画の大綱の見直しをやっていらっしゃる皆さんと少しお話をしたんですけれども、日本の安全保障の今後を考える場合にも、そのような点を重視して考えなければならない、これまでの想定どおりの安全保障でいいかどうかということがある、ということであります。
  ですから、今の世界システムの状況変化というものは、原子力の面においていうと、新しい危険というものを生じさせて、この新しい危険に耐え得るようなシステムやメカニズムというものも組み込んで原子力の平和利用という形を進めていかなければいけない、ということが私の申し上げたい第1の点です。
  第2点は、日本を取り囲む東アジアの国際情勢であります。東アジアの国際情勢にも今申し上げました全般的な国際政治状況というのは共通するわけですが、東アジアの情勢を見るときには、もう一つ、エネルギー安全保障の観点から原子力に関連する非常に重要な傾向というのが生まれていると思います。
  それは何かというと、これは当然の常識的な話ですけれども、これから長い間、東アジアにおけるエネルギー需要というのは相当なスピードで増大する。アジア金融危機でいったん低迷しましたけれども、世界の中で経済成長を遂げてエネルギー需要が増える地域はどこかといえば、やはり東アジアであるというのはおおむね間違いない。
  東アジアにはもちろん化石燃料の供給国もかなりあります。ただ、全体として見ると、今後の東アジアのエネルギー需要の増大は、東アジアが域外へのエネルギー依存を深める、ということを物語っていると思います。東アジアだけでエネルギーの需給がバランスするということはあり得ない。そして、当面の想定されることでいえば、東アジアから中東の石油への依存というのはどんどん増える、ということであります。
  その中で現在の東アジアの国のエネルギー政策等を考えてみると、日本は1970年代の石油危機の教訓もあって、備蓄とか、いろいろやってきていますから、日本一国で考えると、それなりに備蓄体制は整っている、という面があります。ところが、東アジア全体で考えてみますと、これはちょっと誇張かもしれませんけれども、1970年代の日本に非常に似ているのではないか。エネルギーはどんどん増えるけれども、東アジア全体として見ると、石油の備蓄というのはほとんどない。あるのは日本と韓国くらいで、ほかのエネルギー需要の増える国において備蓄の体制というのはまだ十分でない。
  そうなりますと、世界情勢の激変、特に中東地域における情勢いかんによっては、東アジア地域でエネルギー供給に対する不安というようなものが突然増大する。1970年代の日本である種のパニックが起きたわけですけれども、日本だけ考えると、日本には備蓄があるから大丈夫だ、という面もありますけれども、東アジアのどこかよその国が備蓄がなければパニックが起きるかもしれない。パニックが起きたときに、それがどういう心理効果が波及するかというのはなかなか予測し難い面があります。
  その面でいうと、東アジアのエネルギー情勢に対する対策は、東アジア諸国全体で備蓄をもっと強化する、それから中東へのシーレーンの確保、その周辺諸国における安定を図る、というようなことが一つあるわけですけれども、もう一つの考え方は、石油に限らない、ほかの資源を導入することによって脆弱性を減らすということであって、その場合に原子力発電というのは有力なオプションになるわけであります。先ほどご紹介がありましたように、ヴィエトナムで原子力発電所をつくるという動きが出てくるというのは、正にそのような事情を物語っていると思います。
  ただ、そこで問題は、新たな国々が原子力の平和利用に参入するといったときに、これが本当に安全に運用してもらうかどうか、ということが非常に重要なことであって、東アジアの各国の原子力発電所の運用について、もちろん原研がいろいろご協力になっているわけですけれども、ますますもって協力体制を強めていかなければいけない。つまり、東アジアにおいて原子力発電へのインセンティブというものはエネルギー供給の状況からしたら必然的であります。そうなった場合には、この東アジア地域全体でのエネルギー安全保障の面からいって、原子力の平和利用の協力ということが望ましい、ということになると思います。
  これはエネルギー供給という観点でなく、別の観点からいって、この間の1月に小泉総理がシンガポールで政策演説をなさいまして、「東アジアの共同体を共に歩み、共に進む共同体にしよう」というようなことをおっしゃっているわけですが、もし日本が東アジアについてそういう協力体制を進めようといったときには、やはりエネルギー分野の供給、それから原子力においての平和技術の共同開発等の協力というのも重要な柱になろうかと思いますので、日本外交全体ということから考えてもこの側面が重要になっている、というわけであります。
  つまり、私が申し上げたいのは、一つは、先ほど申し上げた世界全体の動向からいっての安全保障面との関係の原子力問題、テロリストに危険なものを絶対渡してはいけないという側面、第2に、しかしながら東アジアの情勢を考える場合に、原子力の平和利用ということは促進しなければいけないし、協力体制をつくらなければいけない、ということでありまして、これは場合によると、やや矛盾する要求になってくるのかもしれません。この矛盾するものを片方だけやめたというわけにはいかないわけでありまして、両方を促進するためにその面での研究機関、シンクタンクの果たす役割というのはますます大きいだろう、というふうに私は思います。
  最後に、この新しい機関にどういうことを期待するかということは、今申し上げました国際政治の観点からの期待であります。技術面については私は特に知識がございませんが、研究テーマとして見ると、テロリストが使えるような危険なものを何としてでも防がなければいけない。ですから、原子力発電、原子力関連施設、その他において行われるいろいろなものがテロリストに渡らない、というための研究ももちろんしなければいけませんけれども、技術的にテロリストがそれを悪用できないような技術の開発というものが非常に重要になってくるのだろうと思います。
  それから第2に、今までの技術の開発主体の研究機関についてはそういう例はあまりないのかもしれませんけれども、原子力の技術開発というのは優れて国際政治と密接につながった研究開発であるということであって、その面でいって、私のような観点からすると、サイエンティスト、エンジニアに加えて、ある種の国際関係、国際政治の問題としての原子力問題等の専門家の育成、そういうものもこの機関でやっていただけるとありがたい、という感じがします。
  国際政治の学会はありますけれども、おおむねいわゆる文科系的な人間が本を読みながら軍縮について勉強し、原子力発電の意味について考える、という形でやっております。それはそれの一つのメリットはあると思いますが、現実の国際政治の動向で将来に与える影響ということですと、やはり日々現場で開発をしている、あるいは研究をしているサイエンティスト、エンジニアとの交流をもちつつ、国際政治の原子力関係の側面の研究をする人材というのも必要だろうと思うんです。
  国際組織あるいは国際的な外交、原子力問題の軍縮の関係の外交、それから個別の交渉あるいはテロリストの対策といったときに、今までのようなある種の文科系的な国際政治学者、私のようなのが国際会議に行ってもほとんど迫力はないわけです。技術的知識の裏打ちがないから、「何を言っているんだ」ということになります。
  ですから、技術的知識の裏打ちのある国際政治研究者がこの問題を取り上げるということが、日本としての原子力関係の国際外交を進めるときに非常に重要になってくると思いますので、そんなに人数は要りませんが、新法人の研究体制の中でそのような面のご配慮もいただけると大変ありがたいし、日本の国益の面から考えても非常に重要な点になってくるのではないかと思います。
  以上で終わらせていただきます。
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  国際政治の観点から3つの論点についてお話いただきました。それぞれ大変興味深く拝聴いたしましたし、示唆に富むお話も多かったと思います。
  これからしばらくこれまでのところを踏まえて議論していただきたいと思います。どうぞご質問等々お願い申し上げます。
  

住田健二委員  今、先生が一番最初に取り上げられた問題点は、テロが使うような技術手段を渡してはいけないとか、それを避けるような方法を考えろ、というご提案ですけれども、これは私の専門領域に近いから、あえて申し上げるんですけれども、一般に核兵器を目的として非常に工夫してつくられた、ある意味では高純度な特別な仕組みを持ったようなやり方でつくられた兵器は非常に大きな破壊力を持っているわけです。ところが、テロが使える程度のものというのは、そのへんにあるものをかき集めてきてやるという方法でやるんだったら、そんなに大きな破壊力を持つだろうか、という疑問が非常にあるわけです。はっきり言いまして、アイソトープなどを集めてきてまき散らすということでも、もちろん恐怖を与えることはできるわけですけれども、そうなれば、普通の細菌兵器などでウイルスとか、そういうものをまくのと同じようなことになってしまいます。しかも、非常に狭い範囲でしかまけないわけです。ですから、核兵器であるがゆえに特殊な恐怖を与えるというのではなくて、一般的な恐怖を与える手段と同じレベルのものではないのか、ということが考えられるのが一つです。
  それから逆に、その程度のものでありますと、むしろテロにとってはマイナスだと思うんですが、核兵器あるいは原子力関係の機器の場合には、非常に検出しやすいという特殊性があります。封じ込めておいても、なおかつ外から検出できるわけです。ほかの生物兵器とか、化学兵器などの場合は、どこかでこっそりつくってきて、わりあい移動が簡単にできますから、そこでポッと使うということがあるんですけれども、テロが使う程度のそういうものは何らかの検出方法があるということで、むしろかえって怖くないのではないか、という気が私はするんです。
  

秋山守委員  今度の統合後の法人で、国際関係の専門家の育成を視野に入れていくということは重要なことだ、という認識を私も改めたところでございますが、大学におきましても今、学部間のそれぞれの学術的・専門的な縦割り構造から横断的に、あるいは学部間の中身が融合していく、というようなパラダイム・シフトの時代でございまして、大学の中におきましても法律の専門家の方あるいは国際政治の方、また技術的な方々が、今のテロ対策等も含めて、基本的な考え方なり対策に関わる基本的な理論なりを研究していかれる、という情勢だと思います。
  今度の新法人の中で基礎的なところを研究するというところまでは当然カバーできないと思いますが、新法人の外における大学等のこの分野での活動と、新法人の中でのそれに対応する方々との役割分担、あるいは全体のコーディネーションという点についてのさらに突っ込んだアドバイスをいただけるとありがたいと思います。
  

田中明彦東京大学東洋文化研究所長  一番最初の住田(健二)委員のおっしゃった点は、そのとおりなんだろうと思います。本格的な核兵器というのは、テロリストにとっては全く使いにくいものだと思うんです。実際には生物兵器とか化学兵器、あるいは今度の旅客機をハイジャックするということのほうがおそらく有効な手段だと思うんですが、私が申し上げたいのは、何分にも相手はいろいろなことを考える。ですから、核物質というのはやはり相当危険なものである。本格的な原子爆弾でなくても、いろいろな使い方を考える。それからもう一つ、原子力発電所という存在自体について、それの周りに恐怖を与えるという形の活動も考えられる。私が申し上げたいのは、ぜひそういうことをいろいろ考えていただきたい、ということであります。
  そのためにも、私のように知識のない者については、住田(健二)委員のように知識のある方から「いや、そうではない」ということを直ちに言っていただけるような環境が重要だと思うんです。その面で、大学等における国際政治や法律の研究と、実際の原子力開発であれば原子力開発の技術的な側面との接点になるような人材を育成することが必要だと思います。
  大学の中にそのようなインターディシプリナリーな学科なり大学院プログラムをつくる、というのももちろん一つのやり方ですが、実際にはインターディシプリナリーなプログラムをつくることと並んで、現在の情勢でいうと、2〜3人、3〜4人の少数でもいいですから、技術関係の交流のできる人材をつくる、ということがやはり重要ではないかと思うんです。
  5年任期なり、あるいは何年かの任期なりで、このような問題についての民間、政府レベル等の国際会議というのはいろいろあるわけですから、戦略問題を扱うようなIISS(国際戦略研究所)とか、いろいろな国際会議にも頻繁に出つつ、国内におけるこの新法人なら新法人の技術者の方とのインタラクションを深める、というようなタイプの人材が2〜3人でも養成されていくと、だいぶ違うと思うんです。
  国際的な外交等というのはある種のマフィアみたいな世界があって、特に原子力とか、核軍縮とか、その他不拡散の問題で「今年初めて勉強し始めたので、よろしく」と言っても、なかなか相手にしてもらえないんです。そのようなことについては技術的知識を背景にして、それなりに何年もやっていくということが必要で、こういう例が適切かどうかわかりませんけれども、例えば日本人の例でいえば、今井隆吉大使がかなり長い間このような問題でいろいろな場に出られるというのは、それなりに長くずっとやっていらっしゃるからなんです。
  ですから、この分野でいっても、大学等での新たなインターディシプリナリーなプログラムを考える、という長期的なものと、2〜3人から4〜5人の接点となるような人材をできるだけ早くつくって、長い間やってもらう、ということが重要なのではないかと思います。
  

秋元勇巳委員  2つ目の論点ですけれども、東アジアの特に石油の中東依存性の脆弱性に対する対策として、2つ挙げられました。1つは東アジアの集団の石油備蓄、それから2つ目は非化石エネルギー、その代表としての原子力というようなお話をいただいたんですけれども、最初の石油の集団国家備蓄というのはあまり現実性がないのではないか、というような感じがしております。
  日本のような国でこれだけの石油備蓄がやれるようになったというのは、かなり強力な経済的な背景があったからですけれども、東アジアの国たちは今、エネルギーの需要を何とか賄いながら一生懸命発展を遂げている最中であります。
  備蓄というのは、そこから何の価値も生まないわけです。危機が起きたときだけに使うだけであって、それまでの間は備蓄に対するコストがかかり、その建設のためのコストがかかり、それに見合う利益は全く生まない、という設備なわけです。
  それをもし東南アジアでやろうとすれば、結局、日本のような国がODAなり何にり、そのような仕組みで支援をしていく、という以外にあまり方法がないだろうと思うんですけれども、もしそういうことをやるというのであれば、原子力の技術を東南アジアに輸出をし、安全な原子力を発展させるほうがずっと意味があるだろう、というふうに私が思っておりますのは、原子力エネルギーそのものが非常に大きな備蓄性をもっているわけです。原子炉が運転されれば、燃料は3年間原子炉の中でもってエネルギーを出し続けるわけですし、そのために必要な燃料の製造ということになりますと、また数年間のウラン資源が工場内にとどまっているわけです。ですから、原子力の発電をやるということだけで、数年以上にわたってのエネルギー備蓄をやっているという機能が同時に達成できるということになるわけで、むしろ日本のこれからの立場としては、東南アジアに非常に安全性の高い、また拡散性のない原子力技術を開発し、そこへ植え付けていくということに大いに力を入れる。そのためにODAも使えるようにする、というような形の政策のほうが望ましいのではないかと私は個人的に思っているんですけれども、先生のご意見を承れれば大変ありがたいと思います。
  

田中明彦東京大学東洋文化研究所長  今、秋元さんがおっしゃったことは、私は全く同意見であります。
  ただ、そうはいっても、備蓄は大変難しいのはわかるんですが、安全保障というのは一つの手段にすべてをかけるというのはやはりやや危険な面があります。いろいろな形の危険分散の方策をとらなければいけない。ですから、私は東アジア諸国に「備蓄は大事ですよ」ということを言い続けるということは依然として重要だと思います。ただ、それと並んで、原子力発電というものが平和的に拡散せず使われるというやり方を確保できれば、これも大変効率的で効果的である。それは正に秋元委員がおっしゃったとおりであります。原子力発電所であれば備蓄性というのは非常に高いわけですから、安全性に留意して行えるということであれば、エネルギー安全保障の観点からいって非常に重要なオプションだ、というふうに思います。


住田裕子委員  秋元委員がおっしゃったように、私自身も東アジアのエネルギー基盤の脆弱性からいいまして、原子力というのは一つのキーワードになると思っています。特にCO2とか環境問題、人口問題に関して東アジアは今後の問題が非常に懸念されるところですので、その際の解決の策としても原子力が一つだとは思うんですが、実は心配なのは、東アジアでもやはり平和利用にとどまらず、核兵器として軍事目的で利用しようというようなところがまだかなり見えると思いますので、日本が平和利用に限って協力できるという体制を国際政治の中でどういうふうに考えていったらいいのか。非常に難しい問題ですけれども、そういう形で貢献するためにどうしたらいいのか、何かお考えがありましたら、ぜひ教えていただきたいと思います。
  

田中明彦東京大学東洋文化研究所長  幾つか問題があろうかと思うんですが、心配し出すと、きりのない点もあるんです。
  北朝鮮の問題が当面は頭に浮かぶわけですけれども、東アジアにおいて原子力の平和利用について日本がある種の協力あるいは役割を果たすことができるか、という一つのプロセスの途上にあるのは、今のKEDOの枠組みで北朝鮮に平和利用の原子力発電所をつくることができるか、北朝鮮で原子力発電所ができるということになれば、IAEAの査察によってこれまでも武器用のプルトニウム抽出を行ってない、ということを確認しなければいけませんし、そういうことができるかどうか、というのが一つの問題であります。
  それからもう一つは、中国というのは平和利用の可能性があると思いますけれども、やはり核兵器国でありますので、その関係というのはなかなか難しい面もあります。日本が中国に対して「核兵器開発のほうをこうしろ」というふうに言っても、中国のほうでなかなか「はい」と言うことを聞くわけではないというのは、国際政治上からいえば、常識に類することです。
  一つ面白いのは、ヴィエトナムの原子力開発について、どのくらい純粋平和利用の面で行えるかどうかということではないか、というふうに思います。
  それから、これは私は細かいことはよくわかりませんけれども、先ほど台湾の事情はご説明を省略されましたけれども、台湾はNPTに入ってないんですね。そうすると、東アジアで原子力発電の安全性の協力といったときに、台湾はどういうふうに入ってもらうのかというようなことも、国際政治上でいうと、中国との関係もあって、かなり難しい。ですから、一面で原子力平和利用が東アジアにとって非常に重要であるということは秋元委員の言ったとおりですが、東アジアの国際政治情勢からすると、すべての面に注目を払っていくというと、調整がかなり難しい面もある、ということは言わざるを得ないと思います。
  

田中豊蔵委員  これは質問ではなくて、先生のお話を聞いての感想ですが、日本の国内世論を考える上でも重要なことを言われたように私は受け取りました。
  世界の構造変化の中で原子力というものが新しく人々の安全に対する危険の度合いを大変増している。生物化学兵器に加えて、原子力というのが一つの手段になり得る、というような状況が増えた。今、日本の原子力の平和利用に対しての世論、コンセンサスは、一定の支持は得ながら、何かあるとひっくり返るくらい脆弱性も合わせ持っている。これから二法人が統一して新しい国益に沿った国民世論を盛り上げていく際に、先生の言われるように原子力という問題がテロリズムなどに大いに利用されかねない、というような認識が広まると、肝心の原子力の平和利用全体に対する支持基盤みたいなものがその一点で崩れかねないということです。
  個人的な意見をあえて言わせてもらえば、現代人というのは一定のリスクを覚悟した上で様々な便宜を受けて生活している。ですから、テロのリスクを含めて我々は覚悟して生きていかなければならない現代社会の中で生存しているわけですが、同時に避けられるリスクはなるべく避けるような努力を相当真剣にやっていかないと、原子力全体の肝心の平和利用に対するコンセンサスづくりがつまずきかねないような局面になりかねない。
  そういう意味で、どんなささいなことでもいいから、テロリズムに対する防衛策を含めた原子力の安全な利用の方策をこの際みんなできちっと考える、ということが非常に重要だということを改めて再確認した次第です。
  

坂田審議官  議論は尽きないと思いますが、後の議題もございますので、最初の議題はこのあたりにさせていただきまして、続きまして下村OECD/NEAの次長からご発言をいただきたいと思います。
  

下村和生OECD/NEA安全規制担当次長  今、ご紹介に与かりました下村でございます。
  本日このような重要な会議にお招きいただきましたことを感謝しております。
  本日は、新法人の国際活動への期待といたしまして、現在、私がおりますOECD/NEAにおきます活動をベースに個人的な意見を述べ、この準備会議の検討の参考になればと思っております。
  ―OHP(「資料第2号」P.1)―
  ―OHP(「資料第2号」P.2)―
  まずイントロダクションといたしましてOECD/NEAの簡単な紹介、それからその活動に対します現在の二法人の貢献状況、続きまして新法人の国際活動に対する期待、最後にサマリーという3つのコンテンツでお話したいと思います。
  ―OHP(「資料第2号」P.3)―
  OECD/NEAは、1958年に欧州経済協力機構の原子力機関として発足いたしました。その後、1972年の4月に日本が加盟いたしまして、現在の原子力機関、NEAとなったわけでございます。ということは、先週が日本加盟30周年に当たるわけでございます。続きまして米国が加盟いたしまして、最近10年間にメキシコ、韓国、チョコ、ハンガリー等が加盟いたしまして、現在27か国が加盟しております。
  OECDの加盟国は現在30か国でございますけれども、OECDの準独立機関でございますNEAは、独自のメンバーシップをもっておりまして、現在27か国ということで、スロバキアが加盟申請中でございます。
  ―OHP(「資料第2号」P.4)―
  これはNEAのミッションを示したものでございまして、1999年から2003年までの中期の戦略計画でもってミッションが設定されているわけでございます。これは割愛いたします。
  ―OHP(「資料第2号」P.5)―
  これはNEAの委員会構造でございまして、一番上に運営委員会がございます。これはSteering Committeeと呼んでおりますけれども、その下に7つの分野別の常設技術委員会が設置されまして、いろいろな活動をやっているわけでございます。この運営委員会は、マネージング・ボディといたしまして、最も重要な委員会でございまして、加盟国の代表で構成されております。この運営委員会の中で議長と4人の副議長でビューローを構成しておりますけれども、このビューローには委員会運営に関しまして実質的なリードをするということで、日本からは日本原子力研究所の佐藤理事がビューロー・メンバーとして活躍されているわけでございます。
  また、そのほかの7つの常設委員会は、原子力の安全、化学、廃棄物、放射線防護、法律、こういったものにおきましてもビューローを持っております。いろいろなワーキンググループ等もございまして、日本原子力研究所、サイクル機構がいろいろなところで活躍をされているわけでございます。
  先ほど田中先生からご紹介がございましたように、こういうビューローに入りますにはマフィア的なところがございまして、ある一定の期間の技術的な貢献、それから顔も売れている、そして継続的に今後貢献ができるということで、コンセンサスを得て入ってくるわけでございます。ですから、新法人におきましても、このような現状を維持するとともに、さらに多くの貢献をできるように期待したいところでございます。
  ―OHP(「資料第2号」P.6)―
  NEAは非常に小さな事務局でございまして、現在、スタッフが90名でございます。そのうちの40名がいわゆるプロフェッショナルのスタッフ、いわゆる技術的な検討を行う者でございます。このような小さな事務局の下で開催される専門家会合に、加盟国の専門家が出席をして、いろいろな技術検討を行うわけです。このような会合に、日本からは原子力研究所、核燃料サイクル開発機構の各種の専門家が中心となって参加しております。その成果につきましては、カラフルな印刷物にまとめられまして、加盟国のみならず、広く活用されております。
  NEAの活動は、正規のプログラム以外でも、加盟国の要請等に基づきまして特別な活動もやっておりまして、最近では、事務局からご紹介がありました米国の高レベルの廃棄物の処分場、ユッカマウンテンのピアレビュー、国際的な専門家がチームでもってもう一度レビューし直すことを、NEAがリードいたしましてIAEAと共同で実施して、この1月に終えまして、アメリカのDOE長官、大統領へのいろいろなアクションが行われたわけでございます。
  それからもう一つは、米国が国際活動として提案し、日本も活発な貢献をしている2030年に向けた第四世代の原子炉システムの開発に関する国際フォーラム(GIF)に対するNEAの貢献です。このGIFには技術ワーキンググループが4つございますが、このうちNEAはガス冷却炉と液体金属、この2つのワーキンググループの事務局をしているわけでございます。
  それからNEAのユニークな活動の一つといたしまして、ジョイント・プロジェクト、各国の持っております研究施設を共同で利用いたしまして、いろいろな研究をやるということをやっております。古いものにつきましては、ノルウェーにありますハルデンという研究炉は40年前からやっておりますけれども、そういった活動に対しましても日本原子力研究所、サイクル機構の専門家が長年にわたりまして貢献をしてきたところでございます。さらに積極的な参加、貢献が望まれるところでございます。
  ―OHP(「資料第2号」P.7)―
  これは現在の原子力発電の状況でございます。世界の原子力発電の運転状況は、今、435基ということでございまして、このうちの約8割がOECDの加盟国で運転しております。ただ、ご承知のように、今後、継続的に建設されていきますのは、日本、韓国以外におきましては、フィンランドで1基、あとアメリカで新しい原子力発電所をつくる兆しが見えてまいりましたけれども、アジア地域が中心になって今、活発な動きがあるわけでございます。
  韓国のデジョンという日本でいえばつくばのような科学学園都市に、韓国の原子力研究所、それからいろいろな研究所がございます。そこで先週、国際若者原子力会合が開かれ、250名の若者が集いまして、そこに私はスピーチで招待されまして行ってきたわけでございます。その際に韓国の関係機関、それから施設を見せていただきましたけれども、非常に活発な動きが見られました。
  先ほど事務局からございましたように、今、16基の発電所を運転しておりますけれども、4基が建設中、さらに8基が2015年までに建設されます。それから国際教育訓練センターの開所式がちょうど先週ございまして、IAEAももちろん参加しておりましたけれども、そういった新しい動きがございます。それから新型炉のAPR1400、韓国の軽水炉の新しいものでございますけれども、これを開発するための熱水力のテストループも建設中でございます。
  世界的に見まして、NEAの加盟国で原子力の施設はどんどん閉鎖されていっております。例えば、ドイツ、スイス、そういったところの施設につきましても閉鎖される憂き目にあるところを、今、NEAのジョイント・プロジェクトでもって資金をコスト・シェアリングする、それから専門家をシェアリングするという形で維持しているところでございますけれども、今後ここ10年、15年、アジアの活動が非常に大きくなってくるということは疑いないと思います。そういう面で、新法人が今後、研究開発機関といたしまして活躍しなければいけない、こういう関係があるのではないかと思います。
  ―OHP(「資料第2号」P.8)―
  前置きが長くなりましたけれども、本題に入りまして、まず新法人の国際活動に対しましてどのようなことが要求されるか、ということでございます。新法人の新しいビジョンの中に国際活動の重要性を高いプライオリティで位置づける、ということがまず必要ではないかと思っております。
  新法人のあるべき姿でございますけれども、原子力、放射線の安全を含みます平和利用の研究開発に関しまして、国内外の関係機関はもとより国民社会から評価、信頼され、頼りにされる、こういった組織になることが重要かと思います。そのためには、国際機関等の国際活動に活発に参加していただきまして、国際的にも柔軟に対応できる組織、予算、人、施設等を効果的に整備する必要があるのではないかと思っております。
  ―OHP(「資料第2号」P.9)―
  アジア、さらには世界をリードするR&D Center of Excellence、この頃、国際機関でCenter of Excellenceという言葉がよく使われておりますけれども、こういった機関に新法人がなって、アジア、世界をリードしていく、こういうことが必要かと思っております。
  この観点からいいますと、両法人の国際活動は歴史的に見まして、まずキャッチアップの時代から始まりまして、最近ではいろいろな分野で国際的にリードしてきているわけでございますけれども、残念ながら、やはり日本の組織全体が基本的に国際的に対応できるような組織になっていない。内向きに組織ができておりますので、国際対応といってもなかなか急にはできない、というのが現状ではないかと思っております。
  ここに挙げましたのは、国際的な対応・リードを円滑にできるようにする観点からの、新しい法人に必要な要件です。すなわち、情報通信技術の高度化とグローバル化、社会的要求等の新しい時代への対応を適切にやっていく、国際的活動をリードしていく新世代の原子力技術者・研究者の要請並びに継続的な教育・訓練への対応ができるようにする必要があるのではないかと思っております。
  現在、世代交代に入っておりまして、今までの第一世代、第二世代の方々がどんどんリタイアしております。これは日本だけではなくて、特に欧州、アメリカにつきましては大きな問題になっております。世代間をうまくトランスファーしていくために、技術的・科学的な能力も必要でございます。そのためには、いろいろな道具が要る。施設が要る。お金も要る。人の訓練も要る。それからチャレンジする、ラーニングする、そういうカルチャーをぜひもう一度見直していく必要があるのではないかと思っております。
  それから国際協力プロジェクトは、残念ながら日本の施設を使った国際共同プロジェクトが現在、NEAにはございません。これにつきまして今、日本原子力研究所等で検討が行われていると聞いておりますけれども、こういったものにどんどん参加していただきまして、そこでリードしていく、さらにそれに参加していく専門家がそこで鍛えられていく、こういうことが必要かと思っております。
  私の経験からも、国際経験のない者が急に国際舞台に出て活躍しろと言われても、なかなかうまくいかないということでございまして、もちろん個人レベルのチャレンジ、自己鍛練は必要でございますけれども、そういった最低限の養成・訓練を新法人で中・長期的にやっていけるような人的なマネージメント・システム、それから効率的な予算配分、ヒューマン・ネットワーク、こういったものを確立していっていただきたいと思います。
  それから世界各地でいろいろな会合が行われているわけでございますけれども、それをプライオリティづけして効率的にいろいろなところに派遣していく、そういうスキームも必要かと思っております。
  例えば、小さいことでございますけれども、今、NEAではアメリカの間ではビデオ・カンファレンスとか、テレフォン・カンファレンスなどをやるわけです。といいますのは、1日か2日の会議をパリでやるについては非常に効率が悪いということで、補完的にそういうものを使うわけです。日本とやる場合、時差の関係もございますけれども、そういうツールがまだそろっていない、ツールがあってもなかなか使いにくい、という状況がある。新時代に備えまして、新法人ではこういったものを効率的にどんどん活用していただく、ということも必要ではないかと思っております。
  それから、新法人では海外から、マネージャークラスも含めまして、専門家としてリクルートしていく。そうすることも、組織の国際化推進策の一案になるのではないかと思っております。これは従来から言われているわけでございますけれども、職員の国際機関への派遣も中・長期的に人材育成の中で継続的に検討していただく、ということがもちろん必要ではないかと思っております。
  ―OHP(「資料第2号」P.10)―
  最近、社会的な側面が原子力に限らず注目されております。公開性、エシックスをもつ。いろいろな意思決定に関してパブリックの参加を促す。リスクをうまくガバナンスしていく。あと環境問題等でございますけれども、こういった社会的側面を考慮していかないといけないということで、新しい法人に働く技術者につきましては、専門的な技術とともに、こういった社会的側面を合わせながら今後やっていかないと国際的にも通用していかない、こういうことではないかと思っております。
  ―OHP(「資料第2号」P.11)―
  今言いましたように、新法人の国際活動の重要性につきまして中・長期的に政府がコミットしていただく。といいますのは、やはり予算等、いろいろなフレームワークが必要になってまいります。そして、新法人がフレキシブルにタイムリーに動けるようにする、ということを考えていただく。組織、予算、ヒューマン・リソースが第1点でございます。それから、新法人がアジア、世界をリードしていくR&Dの総合機関として機能していくようになる。最後に、もちろん社会的側面を検討に入れながら、総合研究機関となって世界をリードしていくようになれば、非常にいいのではないか。個人的な期待を込めて、3つのサマリーで私の紹介を終わらせていただきます。
  どうもありがとうございました。
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  それでは引き続きまして、小溝特別補佐官よりお話をよろしくお願いします。
  

小溝泰義IAEA事務局長特別補佐官  ご紹介に与かりました小溝でございます。
  私のほうからは、エルバラダイIAEA事務局長の観点から見て、どういうことが期待されるか、という点につきまして簡単にご紹介します。
  「資料第3号」を準備しておりますが、これを全部やりますと45分かかることがわかりましたので、項目だけ、それから今までの重複もありますので、なるべくまとめさせていただきます。
  まず一番最初に申し上げたい点は、日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構は、それぞれ基盤研究、応用研究という違いがあるにせよ、今の段階でも世界的に見て非常に大きな存在である、これが統合されると、おそらく世界でも類を見ないような大きな研究所になる、という事実が大事な点だと思います。それを含めまして、国際的な視点から見て大事な点は、日本が広範、大規模、なおかつ先端的な原子力事業研究開発を行っている、という事実です。
  それから2点目に、非核兵器国として核兵器の不拡散条約(NPT)あるいはIAEAの保障措置という国際的な枠組みの中で平和利用に徹してこれをやっている。
  この2つの事実は非常に重要な点ですので、これをまず確認したいと思います。この事実を踏まえた上で、私のお話する点は7点ございます。まず「安全性」、それから「核不拡散」「国際貢献のリーダーシップ」「「透明性」「ネットワーク」「次世代の人材育成」、最後に以上のすべてと関連しますけれども、「IAEAの場を通じての具体的な国際貢献」ということでございます。
  もう1点、前置きになりますが、これから申し上げる点は、基本的に事務局長の視点ですが、詳細にわたりましては私が書いていますので、文責は私にあるということと、もう一つ、国際機関の立場として具体的な日本国内の役割分担その他に立ち入るのは若干内政干渉になりますので、私の申し上げるのは、むしろ二法人に対してというよりは、日本全体としてどんなことができるか、どういうことになるかという中で、直接、間接に二法人の役割についてご参考いただければと思います。
  この面で、安全利用関係の谷口事務次長、それから保障措置関係の村上部長から別途、もうちょっと個人的な技術者としての観点からの意見を合わせて準備してございますので、これも合わせてご参考いただければと思います。
  まず「安全性」につきましては、原子力先進国の日本に対し、安全性の確保、安全面でのインフラ整備、安全技術のよりいっそうの向上という観点から、世界のロールモデルとしての期待が寄せられており、日本には、その期待に応えるべき重責があることを強調したいと思います。
  次に「核不拡散」という点につきまして、4点申し上げます。冷戦後、今でも核の不拡散の危険はなくなっていなくて、むしろ世界的なパラダイム・シフトの中で新しい秩序を模索しての不安定性が増している。この間の9月11日の例に見られるように、新しい危険というものが生じている。この事実がまず第1点です。
  それから第2点目は原子力技術の二面性で、これはやはり軍事転用の技術である。
  この点につきまして一つ申し上げさせていただきますと、これはあまりにも当たり前な事実ですけれども、肝心の原子力産業界あるいは原子力技術平和利用の研究開発に参加されている当事者の方々が、具体的なIAEAの保障措置ということになりますと、現実問題ずいぶん手間がかかるものですから、どちらかというと、「余計なことをされているな」と非常に不人気である、というような点をよく聞きます。
  この点につきまして、原子力技術が核兵器に転用可能な技術である、という点から見ますと、日本のような平和国家であっても、非核兵器国としてNPT条約あるいはIAEA保障措置上の義務を厳格に遵守している、という裏付けがあってこそ初めて国際社会がこれだけ広い先端的な日本の原子力活動を信頼できる、ということを忘れてはいけないだろうと思うんです。この点につきまして関係者の方あるいは一般市民の方の理解が不足しているということになりますと、非常に残念なことですので、IAEA側としても極力保障措置等の簡素化には努力していますけれども、別途、国内広報が大事だと思いますので、関係省庁機関の皆様あるいはここにご参集の先生方が一層国内的にこの点を啓蒙していただければありがたいと思います。
  それからIAEAの保障措置の歴史を振り返りますと、実は日本が1958年のIAEAの第2回総会で原研の研究3号炉について天然ウランの一部をIAEAを通じて入手するということを言って、IAEAの保障措置の研究が始まった、という経緯がございまして、日本はそういう意味でもIAEAの保障措置開発にその頃から非常に重要な役割を果たしているわけです。
  その後、NPTによって包括的な保障措置ができまして、北朝鮮、イラクのいろいろな疑惑ということを契機としまして、97年に追加議定書という新たなサイトのサクセスが拡大された、無申告のものについても査察を行う、という体制ができたわけですけれども、この追加議定書に本格的な原子力活動をする国の中では他国に先駆けて日本が入っていただいた。現在、非常に広汎な査察に対する、ある意味でいうと、先駆的・実験的なことを日本で適用しているわけです。これは日本側にとっても大変な負担になるわけですけれども、追加議定書という新たな枠組みの中でいかなる実施基準、国際基準ができるか、という国際基準づくりを正に日本が身をもってつくってくださっている。日本に適用されたものがイラクその他のところにも全部適用されるわけですから、非常に大事であります。この意味で、日本が保障措置技術の面で今までも貢献してきましたけれども、それとともにも引き続き保障措置の受入れ国としてもいかに模範を示していくか、ということも非常に重要な役割があるのだろうと思います。
  次に「国際貢献のリーダーシップ」は、ほかにもあると思いますが、4つパターンがあり得ると思います。1つはロールモデル、2つ目は国際基準をつくる面での貢献、3つ目が科学技術を推進するという面での貢献、それから既存の技術を技術移転する、この4つの側面でいずれも日本はがんばっていらっしゃるわけです。
  安全性の面、保障措置の面で共に日本はロールモデルとして役割を果たしておられて、日本の極めて高い水準の安全性をいかに保っていくか。ここでの見方というのが世界全体の安全性の水準にも影響してくるわけで、この意味でのロールモデルは非常に大事です。
  それから基準づくりということでは、IAEAで核燃料サイクルの中で未整備の分野もまだございますし、研究炉その他の貢献について日本からぜひ積極的に参加していただきたい。
  それから技術の向上の面では、特に安全技術の面で原研、サイクル機構それぞれ努力されておりますけれども、これが非常に重要になってくる。
  技術移転の点からいいましても、日本の安全技術が東アジアの地域にいかに行われていくか。先ほど話もありましたけれども、この地域協力の中で非常に微妙な点がありますけれども、安全協力というのはどんどん進めていい、と言うことができると思います。
  それから一つ、テロとの関係を含めて申しますと、保障措置の基盤を成すのは国の核物質計量管理のシステムで、これができないといくら査察しても抜け穴になってしまう。非常に大事な基盤です。これができることによって、テロ防止にも大きな役割になる。日本は非常に高い水準の計量管理システムを持っていますので、このシステムをいかにほかの国に移転するかということで、非常に大きな貢献ができるだろうと思います。
  次に「透明性」です。透明性という点では、やはり原子力利用が二面性をもつという観点から非常に大事です。どこに対する透明性かといえば、一つは国際社会、もう一つは市民社会に対する透明性です。この場合に重要な点は、一つは、説明の一貫性があるか、ないかということです。それからもう一つは、いろいろな事態が変わってきたときに、受け身ではなくて能動的・即応的に対処することによって信頼が得られるということです。
  例えば、プルトニウム政策につきまして日本は長計白書に立場を明確にされている。これは非常に大事なことですし、日本の地理的状況、エネルギー賦存状況からエネルギー需要、あるいは長期的な観点でやっているということを説明しておられますけれども、今後とも高速増殖炉の開発状況あるいはMOX燃料の使用に関する状況その他を踏まえて、今の説明で今の状況に十分マッチした説明になっているかどうか、ということを常に見直して能動的に広報していく、ということが非常に大事だと思います。
  それから説明の内容につきまして、非常に専門的な技術であるということから、一般市民あるいはオピニオンリーダーに対する説明のときに大事なことは、原子力技術を保持している人が信頼できるかどうか、これが大事です。原子力保持者が信頼できないということになってしまったとたんに、何を言ってもわからない。この信頼をいかに確保するか、これが大事だと思います。
  それから「ネットワーク」につきましては、特に国内のネットワークを申し上げたいと思います。エネルギーにかかわらず、どこでも一般的な傾向としてあるんですけれども、全体的にどうなっているかよくわからない。
  例えば、日本がIAEAに対して様々な支援をしています。技術的支援もしていれば、予算的な支援もして、人も送っている。文科省、経済産業省、外務省あるいは原研、サイクル機構、それから電力、こういうものがいろいろな協力をしているけれども、全体として一体どんな協力をしているかというと、わからないんです。全体としてこれだけやっているのにわからない。それから全体として一貫性がとれているかどうかもわからない、ということがあります。
  技術だけ見ても総合的ですし、安全保障、環境、それからエネルギー利用と様々な側面をもっている。これをいかに全体としてのネットワークをつくって、その中で非常に深みのあるメッセージを国外に発信できるかどうか、これが大事だと思います。これができることによって、海外との交流も深まってくるし、国際性も高まってくる。メッセージに重みが増してくる。
  この点で、事務局長がイギリスのチャタムハウス(王立国際問題研究所)で行った彼の個人的な意見も含めた講演の中で「核抑止のドクトリンに安全保障上過度に依存している」ということを批判した後で言っていることを申し上げますと、「私の意見では、現在の核兵器保有量の大幅な削減に向けて移行するための現実的な可能性は、私たちが核抑止に代替し得る確実な安全保障戦略――すなわち、機能し、かつ、すべての国が確信をもって依拠し得る戦略――を私たちが持ち得るか否かに決定的に依存しています。この目的のためには、安全保障概念の定義を軍事的観点からのみでなく、同じく重要なものとして、統治能力、社会的経済的開発及び人権に関する安全保障の側面をも包摂する、より広義の安全保障概念を定義することによって、国連憲章が定める安全保障制度を活性化させることが緊急に必要となっています」。これは正に日本が積極的に貢献できる分野で、この分野でぜひ貢献をお願いしたい。
  それから「次世代の人材育成」も非常に大事です。今年の6月には、IAEAも原子力分野におけるノレッジマネージメントの高級専門家会議を開きます。その中の主要なテーマになっています。ぜひ日本からも参加をお願いしたいと思います。
  最後に「IAEAの場を通じての具体的な国際貢献」ということですが、高須大使が去年の12月にウィーンの国際機関代表大使として着任されたときに、エルバライダイ事務局長と会って、こういうことを言われました。「IAEAに対する日本の貢献という場合、財政支援や邦人職員の増強が大事ですけれども、それ以上に重要なのは、知恵を出すということです。自分は、日本がIAEAの場でいかに知恵を出して貢献していくか、この点を最重視していきたい」とおっしゃっていました。
  これは正に重要な点で、これまでもIAEAの場でいろいろな常設委員会がありますけれども、事務局長自ら「必ず日本人を入れるように」ということで、IAEA側も日本側の貢献に期待して、また日本もやっていますけれども、見てみますと、IAEAの場に出てくる非常に重要な日本の専門家の方は、若いときからIAEAとの場でいろいろな活動をされて育ってこられている方です。今後とも若い人、中堅の方をぜひIAEAの場に派遣していただいて、あるいはNEAのほうもそうですけれども、こういう場で自然に国際的な識見をもった者として育ってくる、という形の貢献をぜひお願いしたい。
  それから最後に財政面ですが、IAEAはこの10年間ゼロ成長の枠の中でやってきましたけれども、今度核テロの関係で新たなイニシアティブを発揮して、日本からもさっそく特別拠出をいただきましたけれども、保障措置あるいは核テロあるいは安全、こういうことについては、一定の資金的基盤がなければレベルが確保できない問題がありますので、ぜひこの点につきましてもご配慮をお願いしたい、ということを申し上げまして、私の話とさせていただきます。
  

坂田審議官  どうもありがとうございました。
  下村次長からは主として「国際的な活動に柔軟性をもって日本がしっかり対応してほしい」という趣旨でいろいろお話があったと思いますし、今、小溝特別補佐官からは7つの観点から非常に幅広くお話いただいて、どうもありがとうございました。
  メッセージを3人からいただいておりまして、それを簡単にご紹介しようかと思いましたが、時間の関係もありますので、省略したいと思います。恐縮でございますが、先生方にはお読みいただきたい、というように思います。
  それでは、これからお2方のご発言を踏まえまして質疑応答に入りたいと思います。ご意見、ご質問等ございましたら、どうぞよろしくお願いします。
  下村次長、国際活動に対する柔軟性が日本にちょっと欠けるという点で、日本の組織は内向きというようなお話もありましたけれども、もうちょっと……。
  

下村和生OECD/NEA安全規制担当次長  NEAは非常に小さな事務局でございまして、特に欧米を中心とした専門家のネットワークでいろいろな仕事をしております。そのネットワークに日本の組織の専門家がなかなか入ってこれない。いろいろな専門会議を開くわけでございますけれども、事務局から日本にお願いしますと、例えば専門家の選出手続き、そういったものに非常に時間を要したり、今、欧米がやっているテーマに対して日本の認識がやはり距離があるわけでございます。専門家の方々に来ていただきますと、今、欧米で何が問題となっていて、特にNEAで何を議論しているかなどという理解ができ、その重要性も認識されるわけでございますけれども、やはり日本の研究活動を念頭に置いておりますので(研究者の業務評価において、国内でのものが重要視され、国際活動はあまり評価されない)、国際議論になっているものは二の次となり、継続的な対応をしない傾向が見られます。
  欧州などはボーダーがないわけでございますので、もともとが国際活動を念頭に置きながら日常活動(業務評価も)をやっております。国際機関が日本の専門家を重要視して、いろいろ招待したいんですけれども、日本のいろいろな仕事が大事といった形で、その要求に合った方々がなかなか出てこれないような組織体制になっている(国際機関が本当に必要としている日本の専門家は、コミュニケーション能力の観点からも数が限定されていることに加え、国内業務も多忙とされ、組織が頻繁には海外出張させない傾向が見られる)、こういうことでございます。
  

木村孟委員  私が前から感じていたことを3人の方がほぼ共通の御意見としておっしゃいましたので、私も一点だけコメントしたいと思います。
  お3人の御意見で共通した点は、原子力という一つの技術を通しての国際貢献という問題です。特に小溝さんは「日本がずいぶんコントリビューションしているのに、それがトータルとして見えなくなっている」とおっしゃいました。その理由として、たぶん省庁縦割りとか、いろいろなことがあるんでしょうけれども、私はもう一つ大きな側面があるのではないかと思っています。
  私もJICAの専門家としていくつかのプロジェクトに関わり、ずいぶんいろんなところに行きましたが、そのときに派遣されるのは当該技術の専門家だけなんですね。その技術がその地域あるいは国に対してどうインパクトがあるのか、そういうことがほとんど考慮されてない。つまり、田中先生が一番最後におっしゃった「原子力の研究開発というのは国際政治に密接に関係するから、サイエンティストとエンジニアだけではだめだ」、ここのところだと思うんです。
  ODA一つとっても、それが相手の国にどうインパクトを与えるか、そういうことをきちんとやっている研究者がほとんどいない。東工大におられた渡辺利夫さんくらいではないかなと思っているんですが、そういう人材を国として積極的に育てていく必要があるのではないかと強く思っています。それをやらないと、原子力に対する日本の国際貢献もなかなかうまくいかないのではないでしょうか。
  話は少し唐突になりますけれども、3年ほど前に防衛大学校が安全保障研究科という研究科をおつくりになりました。日本で初めて安全保障の専門家を育てるということに乗り出されたのですが、これは日本にとっては非常に意義があることであると、私は考えております。そういう観点から、繰り返しになりますが、サイエンティスト、エンジニアと一緒に働けるような専門家を育てるようなことを国としてやる必要があることを強調させて頂きたいと思います。
  

秋元勇巳委員  小溝さんからご紹介いただきました中で、エルバラダイさんの核兵器の不拡散と今後の道筋に大変感銘を受けんですけれども、核抑止のドクトリンがあまりにも幅をきかせ過ぎて、今、そういう時代でなくなっているにもかかわらず、いまだにアメリカにも大変膨大な核抑止のためのロビーがあるものですから、そのロビーを維持するためにまた核抑止論をさらに膨らませる。膨らませるために、IAEAのメカニズムが下手をすると利用されかねない。そういう悪循環が起きているような気がしていまして、ここで言っておられるように、核抑止に代替し得るような確実な安全保障戦略という論旨に大変賛成するんですけれども、いま一つこの代わり得る戦略というものの中身がよくわからない、というところがありまして、そのへんのところをもう少しエラボレートしていただければ大変ありがたい、という気がします。
  今、ピンポイント攻撃が可能な兵器が出てきて、古めかしい核抑止論で世界の安全が保障されているということでは全くなくなってきていると思うんですけれども、いまだにそれが認識となっていない。例えば、日本はアメリカに対してそういう意味でどういう発言をしていったらいいのか、IAEAはそれに対して一体どういう対応をお考えになっておられるのか、というようなことについてもし何かありましたら、お聞かせいただければ大変ありがたいと思います。
  

小溝泰義IAEA事務局長特別補佐官  私はそれほどの知見はございませんので、中身について補足する点はありませんけれども、これは正に非常に重要な問題です。経済的・社会的な問題、貧困の問題、格差の問題あるいは人権の問題ということにどれだけ取り組んでいくか。国際的な相互理解というところに働きかけをしなければ、いかにハードの面で対策をしようと思っても、とても対応できない。これは中東で今、イスラエルが直面している問題を見れば、ある意味ではっきりわかると思いますけれども、その前提になるところにいかに力を入れるか、そこに開発援助の意味もあるわけです。開発援助の意味は、単に経済的な支援をするのではなくて、例えばベトナムあるいはアフガニスタンにベートベンがいるかもしれない、住田先生のような方がいらっしゃるかもしれない、経済的な基盤がないためにその能力を生かせない、ということがあるわけです。こういう国に対して、そういう人たちの個性を最大に生かせるような貢献をどうするのか、という視点での基盤づくり、遠い話ですけれども、その道を避けて安全保障というのは本来あり得ない、ということです。
  実は、事務局長の発言はかなり踏み込んだ発言で、IAEAは国際的な核管理、平和利用の体制の中で加盟国から信託された技術的なことを果たすものですから、特定の加盟国に対して「こうしろ」「ああしろ」とはなかなか言えない立場でございますけれども、やはり各国とも協力して、いかにより長期的に安定のある安全保障政策を確立するか、ということが大事です。そのためにも、正に先ほどおっしゃっていただきましたけれども、日本の国内で非常に幅広い観点から、例えば技術的な専門家であっても、「自分がこういう技術的な貢献をすることは、実は平和利用の全体の枠組みの中でこういう意味がある。そのために私はこうやっているんだ」ということが言えるような人たちを日本がつくっていくことが大事だと思います。


住田裕子委員  今のお話をお聞きしまして、日本がそういうふうな人材をこれから育成していかなくてはならない、ということなんでしょうが、現状としては非常にお寒いし、私自身も今回こういうペーパーを見せていただきまして、認識を新たにするところがありました。
  今、谷口事務次長のペーパーをザッと読ませていただいたんですが、例えば1の「平和利用分野における世界の原子力研究開発の牽引役」として日本が期待される。しかも、平和利用に徹している経済大国は、ほかの国、フランスやアメリカに比べても、その部分に限ってみれば、研究開発予算というのはかなり大きいと推定される。こういう現実については、こういうペーパーを見て改めて「ああ、そうなのか」と。
  ほかの国から見ると、こう言ってはなんですが、やはり日本は極めて偉大な存在であるし、注目すべき存在であろうと思います。その戦略展開をするということに対してもやはり注目をされているのだろうと思いますが、実は日本国民、私どもから見れば、「初めて知った」というような気がする、またもっと存じ上げない方がいらっしゃるのではないかと思います。
  人材を世界に向けて出すためにも、やはり国民世論の支持というのが必要でしょうし、日本がほかの国から見て非常に栄誉ある地位を占める、フロント・ランナーとしてもっと走っていけるためにも、こういう国際的な観点から見た日本の地位をいろいろな意味でぜひPRしていただくことが大事ではないかな、というふうに思いました。
  

坂田審議官  ほかにご意見、ご質問、あるいは今日来ていただきましたゲストからさらに言いたいことがあれば……。
  

下村和生OECD/NEA安全規制担当次長  先ほど木村先生からもご指摘がありましたように、いわゆる専門的な会合に専門家しか来ない。NEAは従来そうでございました。先ほど時間がなくてご紹介しなかったんですけれども、社会的側面の重要性が増えてまいりまして、今、NEAの中でシビル・ソサエティとニュークリア・エナジーというコンテクストで社会学の学者、心理学の学者、いろいろな方々にお願いして、フォーラムでもって議論をする、ということを始めております。
  今週、パリでフォーラム・イン・ステイクホールダーズ・コンフィデンス(ステイクホールダーは、「利害関係者」と日本語で訳しているようですが、もうちょっと幅が広い)というNEAのワーキンググループ会合(フランスの放射性廃棄物管理公社長官のリバー氏が議長)が開催されていますが、これは、地元の方、産業界、もちろん政府関係といろいろな方々を含めて、どのようにすればコンセンサスが形成できるかなどを議論しております。NEAでは、2年ほど前から、廃棄物の処分の問題、放射線防護の分野でこのような会合を開催し、社会的、政治的なコンテクストからいろいろな関係者・専門家を招聘して、コミュニティにちゃんと貢献し、またいろいろな意見を取り入れて研究開発等の活動をやっていけるか、こういうことをやっております。
  今、我々もネットワーク(社会学等の専門家、いろいろなステイクホールダーなど)を広げております。昨年の11月にフィンランドで廃棄物のその関連のフォーラムを開催しました。そこに、慶應大学の社会学分野の研究室に関係する女性の研究者(米国の大学に留学中)が参加されました。今回、新法人のコンテクストしかお話しませんでしたけれども、今後、日本のいろいろな学界(原子力以外の)の方々にも参加していただきまして、幅広く貢献していただきたい、こういうふうに思っております。
  

坂田審議官  大事なお話をどうもありがとうございました。
  それでは時間がそろそろまいりましたので、今日の議題の関係のご議論はこのへんでとどめさせていただきます。
  この後、政務官、副大臣から一言ずつちょっとお願いしたいと思っておりますが、その前にこの準備会議の審議日程の「資料第7号」をちょっと見ていただきたいと思います。今日は第4回の会合ということで、国際問題を取り扱っていただきました。それから次の第5回の会合は来月20日午後3時〜5時までですけれども、そこにありますとおり、原子力委員会、原子力安全委員会、さらに学術会議のほうからもこの統合に関する考え方をお伺いする、ということにしたいと思います。したがいまして、当初、両法人から改めて新法人に臨むに当たってのお考えを聞く予定をしておりましたけれども、それは第6回に延期をしたいということと、併せて第6回には学術会議の吉川会長に、3年前の動燃改革をご担当いただきましたので、そのときのお話をちょっとお伺いしたい、という具合に思っております。その後にまた各委員の先生方からそれぞれご意見をいただきまして、中間報告をまとめていく、という段取りにしたいと思っております。
  そういうことで、当初に比べますと、会合を2回くらい多めにやらせていただければと思っておりますので、誠に恐縮でございますけれども、よろしくお願い申し上げます。
  それから現場のご視察の件でございますけれども、4月16日に秋元委員、田中委員、それから両住田委員に東海村と大洗にある原研、サイクル機構の研究施設を見ていただきました。また、熊谷先生には4月17日に見ていただきました。今後、小林委員には5月16日、それから木村先生と西澤先生には5月22日に見ていただくことになっております。
  それでは、加納政務官が先般、米国にいらっしゃいまして、そのときに原子力のいろいろな関係等のお話をされましたので、そのお話も交えて、今日の会合の感想も付け加えてお願いいたします。
  

加納大臣政務官  それでは短い時間でポイントだけご報告したいと思います。
  先週1週間アメリカにまいりまして、ワシントンのi-con10(原子力第10国際工学会議)のキーノート・スピーチをさせていただきました。その後、プリンストン大学、コロンビア大学、それからDOE、連邦議会、上院議員等に会って、いろいろ議論してまいりました。しゃべっていますと1時間かかりますので、3分間で印象に残った単語だけ申し上げます。
  1つ、アメリカの原子力の稼働率は去年90%を越えて絶好調になっている。
  2つ目、その結果、コストが大幅に下がって石炭と競争可能になった。
  3つ目、9月11日のテロ、その前のカリフォルニアの停電事故、こういったことからセキュリティに関する意識が高まり、原子力へのセキュリティ面での期待がかかっている。特に中東に対するアメリカの石油依存度が高まっている今、輸入の25%以上が中東になり、アメリカの石油輸入は58%になりました。そのことから非常に危機意識をもって、これが原子力についての追い風になりつつある。
  そのことを受けて、「原子力を増やしたほうがいい」という支持が大幅に増えて、テロの後に行われた調査では65%賛成、29%反対ということで、圧倒的に風向きが良くなってきた、ということであります。NRCのディアス・コミッショナーにも会いましたが、規制の改革に非常に意欲的で、「規制から不必要な障害を取り除くことが予見可能性を高める」ということを大勢の前でも明言していただきました。DOEでは、2010年を目指した原子力の建設の現実化を目指してロードマップをつくったり、戦略目標条件整備を発表しました。
  研究開発については、GIF、先ほどご紹介のありました第4世代の国際的な原子炉の開発が大幅に進みまして、先週の段階ではいよいよ今年6つのタイプに炉の形を絞って、それは東京で決めよう、というようなところまで話が進みました。
  ユッカマウンテンは大詰めにきております。DOE・エブラハムは「ユッカに決める」ということで大統領に進言し、大統領は「それでいいんじゃないか」ということで知事の同意を求め、ネバダ州の知事が反対をした。その結果、90日以内に両上下両院でこの拒否権を覆せば、ユッカに正式に決まるという最終段階で、国際会議では「我々はユッカで勝たねばならぬ」と叫ぶ上院議員もいた、というのを目撃してまいりました。
  そして最後になりますが、ITERについて「ぜひアメリカの参加を望みたい」ということを申し上げましたら、「その方向で現在、最終的な詰めに入っている」ということであります。まだ「入る」という返事はいただけませんでしたけれども、非常に意欲的でございます。
  今日の感想でございますが、2つポイントがあった、という感じがします。
  1つは、ミッションの明確化ということであります。新法人に即していえば、ミッションの明確化ということで、つまり、どういうことかといいますと、「非核兵器国として世界最大の原子力平和利用の牽引役が期待されるのが新組織ではないだろうか」というご指摘があったかと思います。その内容は、基礎基盤研究から応用研究まで研究開発のセンター・オブ・エクセレンスとしての存在というのが大きな話であります。
  2つ目はその研究のポイントは何かということで、今日の先生方からのお話は3つあったかと思います。1つは平和利用に徹する、2つ目は安全性に重視する、3つ目はセキュリティ、特に核不拡散とテロ対策といったセキュリティ。平和・安全・セキュリティというのが研究の大きな目標として注目すべきだ、というご指摘であります。
  3つ目のポイントは、「次世代の人材を育成という機能を果たしてもらいたい」というお話があったと思います。
  大きな2つ目は、国際協力について全体像と一貫性がよくわからないのではないか。これを明確にすべきである。それから、単なる国際貢献という美しい言葉から一歩進めて、これに加えて国際戦略、日本のサバイバル戦略といった視点が重要である。そういう点では、技術オリエンテッドの国際協力の人材だけではなく、技術を踏まえた国際政治、様々なタクティクスまで含めた戦略を備えた人材が必要ではないだろうか。言葉は悪いんですけれども、そういう意味ではいい意味での国際マフィアを日本でももっと育成すべきである。
  それから最後になりますけれども、GIFについてのお話もありまして、「こういった面での研究開発の協力も重要である」ということだったと思います。
  短い言葉で申し訳ございません。以上であります。
  

坂田審議官  それでは副大臣お願いします。


青山副大臣
  本日は貴重なご意見をいただきました。また、活発なご議論をいただきまして、誠にありがとうございます。
  本日は、国際関係の有識者や国際原子力関係機関の方々から、国際的な原子力情勢を踏まえた新法人のあるべき姿や核不拡散への貢献に対する期待、個別分野における国際協力のあり方、さらにはそれらの実現のための法人の運営体制など、幅広い観点から貴重なご意見をいただきました。また、皆様から、核テロリズムをいかに防ぐか、東アジアにおける石油備蓄の可能性と原子力協力の有用性について、我が国の原子力分野での国際貢献のあり方と、その効果をあげていくための人材養成のあり方、国際政治を含めた人材養成のあり方について、原子力の社会的側面への適切な対応について、示唆に富むご意見をいただきました。
  次回は、原子力委員会、原子力安全委員会及び日本学術会議から原子力二法人統合に関する基本的な考え方について、ご説明を受けたいと思います。今後、次回のご説明を経た後、次の次の会には改めて両法人からヒアリングを行いまして、また有識者委員の皆様のご意見もご発表いただいて、だんだんと中間報告の取りまとめ段階に入っていきたいと考えております。皆様におかれましては引き続きご協力をいただきますように心からお願いを申し上げ、閉会のご挨拶とさせていただきます。
  ありがとうございました。
  

坂田審議官  下村次長、小溝特別補佐官にははるばるパリ及びウィーンからお越しいただいて、本当にありがとうございました。改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。


(研究開発局原子力課)

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