原子力二法人統合準備会議
2002/04/02 議事録原子力二法人統合準備会議(第3回)議事録 |
第3回 原子力二法人統合準備会議
日 時 2002年4月2日(火) 8:20〜10:20
場 所 キャピトル東急ホテル「竹の間」
原子力二法人統合準備会議(第3回)議事録
1.時 平成14年4月2日(火) 8:20〜10:20
2.場所 キャピトル東急ホテル地下2階「竹の間」
3.出席者(座長) | 青山 文部科学副大臣 |
(副座長) | 加納 文部科学大臣政務官 |
(有識者) | 秋元勇巳 三菱マテリアル株式会社会長 |
秋山守 財団法人エネルギー総合工学研究所理事長 | |
木村孟 大学評価・学位授与機構長 | |
熊谷信昭 大阪大学名誉教授 | |
小林庄一郎 関西電力株式会社相談役 | |
住田健二 日本原子力学会会長 | |
住田裕子 弁護士 | |
田中豊蔵 ジャーナリスト | |
西澤潤一 岩手県立大学学長 | |
薬師寺泰蔵 慶應義塾大学法学部教授 | |
(説明者) | 栗田 福井県知事 |
橋本 茨城県知事 | |
近藤 東北大学客員教授 | |
東 舞鶴工業高等専門学校校長 | |
望月 原子力安全・保安院次長 | |
(文部科学省) | 青江文部科学審議官、遠藤研究振興局長、今村研究開発局長、 林大臣官房審議官、坂田大臣官房審議官 |
4.議事
1.開会
2.原子力二法人統合に関する意見聴取(原子力安全関係及び立地自治体)
3.その他
4.閉会
資料1. | 原子力新法人への期待(東北大学大学院工学研究科 近藤達男客員教授) |
資料2. | 原子力安全研究から見た二法人統合の意味(放射性廃棄物処分の研究開発を例に考える)(舞鶴工業高等専門学校 東邦夫校長) |
資料3. | 原子力二法人統合に係る原子力安全について (原子力安全・保安院 望月晴文次長) |
資料4. | 原子力二法人の統合に当たって(福井県 栗田幸雄知事) |
資料5. | 原子力二法人統合について(茨城県 橋本昌知事) |
資料6. | 第1回原子力二法人統合準備会議議事録 |
資料7. | 第2回原子力二法人統合準備会議議事録 |
事務局(中西課長) それでは定刻より若干早めでございますが、これから第3回目の統合準備会議に入りたいと思います。それではよろしくお願いいたします。
坂田審議官 会の進行役をやらせていただきます審議官の坂田でございますけれども、今日はこの統合準備会議の委員の先生方全員ご出席でございます。早朝からありがとうございました。
それでは第3回の開会に当たりまして、座長の青山副大臣より一言ごあいさつをしていただきたいと思います。
青山副大臣 皆さん、おはようございます。それぞれご多忙の皆様方にこうして全員お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
今日は第3回の原子力二法人統合準備会議を開催させていただきますが、前回と今回、そして次の会に当たりまして、各界から幅広く有識者の皆様にお集まりいただいて、原子力二法人の見直しであるとか、評価であるとか、あるいは新法人に求める役割・機能等について大変貴重なご意見をいただいてまいります。
前回は、大学関係者と産業界の有識者の皆様方から、特に新法人との連携協力について貴重なご意見をいただいてきているところでございます。
本日は原子力安全に関する有識者として近藤達男東北大学大学院工学研究科客員教授、東邦夫舞鶴工業高等専門学校校長、望月晴文原子力安全・保安院次長の3氏からご意見を伺う予定であります。さらに、原子力施設立地地域の関係者として、栗田幸雄福井県知事、橋本昌茨城県知事からご意見を伺う予定でおります。
本日も貴重なご意見を数多くちょうだいできればと思っております。皆様方にもどうぞひとつ活発なご議論を心からお願いを申し上げまして、開会のあいさつとさせていただきます。ありがとうございます。
坂田審議官 それでは最初に本日の配布資料を確認させていただきたいと存じます。
(資料確認)
「資料 第6号」「資料 第7号」は全文の議事録でございますが、いずれもこれから我が省のホームページに載せて、そこでの公表もいたしますので、よろしくご承知おき願えればありがたいと存じます。よろしくお願いいたします。
それではさっそく本日の議事に入りますが、先ほど副大臣からもお話がございましたとおり、今日は原子力安全の問題と立地自治体との関係について皆様方よりお話をいただいて、ご議論を賜る予定でございます。
まず原子力安全関係でございますけれども、現在、原子力安全委員会の原子炉安全専門審査会の会長をしていらっしゃいます近藤達男先生、同じく原子力安全委員会の核燃料安全専門審査会の会長を務めていらっしゃいます東邦夫先生、それから望月晴文原子力安全・保安院次長のお3方からまず10分程度お話をいただいた後に議論に入りたいと思います。その後に栗田知事、橋本知事よりご意見をちょうだいしたいと思っております。
それではまず近藤先生よりお話をお願い申し上げます。
近藤達男東北大学客員教授 ただいまご紹介いただきました近藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日ご用意いたしました説明は、安全が基本的な命題ではございますが、なるべく原子力全般にわたる意見を申し述べさせていただきまして、その中で安全研究の位置づけをしたいと思います。安全に関するお話はかえってわずかになりますが、その点をお許しをいただきたいと思います。
資料は3ページにわたっておりますが、まず見直しをしていただくにあたっての全般的な期待あるいは要望というようなつもりで少し書いてございます。
「主要な活動領域の見直し」というところでございますけれども、今回2つの機関が1つに合体するわけです。一般には合体することによって生ずるいろいろな不整合というようなことが心配されるのでありますが、私は旧動燃事業団が設立されるときの様々な経緯から、むしろこの合体によって利するところが非常に大きい、資源とか、そういったものと全く別に研究開発をやっていく上で質的に非常にメリットが大きい、というふうに思います。
細かい説明は省略いたしますが、その影響が随所にありまして、動力炉開発というようなものは、非常に基礎的な、うんと探索的なところと実際にものを組み上げて発電にもっていく、という非常に幅の広い仕事ですが、これをあの2つの分立というのはスパッと輪切りにしてしまった、というふうな印象がございます。その影響が今でも残っております。これを極力解消する、というのが一つのねらいになり得ると思います。
また、その二機関の見直しにとどまらず、それを取り巻く行政、産業、学術の構造も、たとえ二機関だけの統合といえども、この際よく見直して、仕事がやりやすいようにしていただきたいと思います。
もう1点述べておりまして、「合理化は総合力の強化が前提」である。これは一見誤解を招きやすい言い方でありますが、財政負担節減は明らかに期待できると思います。いろいろ重複している点があります。しかしながら、それを意図するあまり、研究開発能力が減退することも心配されます。これは単純な意味ではなくて、実は弱体化している部分もかなりあるものですから、そういうところの強化というのもこの際やっていただきたい。何らかの合理化によって浮いてくる部分がありましたら、まず強化に使って、それからトータルとしての削減というふうな発想が必要であろうと思います。
使命の達成には高い能力を必要とします。それから高い意識が必要です。この全体の政策が「あるべき形」と「当面可能なこと」がありまして、行政も当事者自身も現実主義といいましょうか、戦術主義といいますか、そういうもので長らくやってきたところがありますので、これを冷静に把握しまして、「高次元の目標」というのをしっかり決めて、今、無理ならば、段階的に整備に向けて進んでいく、そのビジョンをつくるということが大事だと思います。
資料で、冗費と申しましたが、一般に例えば縮小・整理事業というようなものは、それをなくしますと直ちに費用が減るかと思うと、とんでもないのでありまして、アメリカのデコミッショニングのように、30年もかけてこれから莫大な費用をかけてやる、それが研究開発を相当圧迫している、こういう話も聞いておりますから、このへんは非常に問題だと思います。
それから、これはもっと前向きの明るい話でありますが、ITERのようなものであっても、非常に巨大な計画でありますから、やはり基礎基盤研究のような地味なものを圧迫しがちであります。こういうことで、例えば完全に別枠にしてものを考える、というようなことが必要であります。これは一般的なことを希望として述べたつもりでございます。
次に具体的に「新法人に求める役割・機能」でありますが、これは中核機関でありますから、国の基本計画では核エネルギーと放射線利用と簡単に理解して我々は申しておりますが、この2面があります。
これに対しましては一番大事なことは、国内ではCOE(center of excellence)、非常に優れた高度の研究をやる機関であること、国際的には今、共同事業を非常にたくさんやって、大変躍進しているんですが、日本が主導性をもつということが大きな課題であります。主導性をもっている部分ももちろんたくさんありますけれども、全体としてはやはりまだまだ主導性を発揮しているとは言い難いところがあります。この2つの活動のバランスが重要であります。
主題は安全と言いながらエネルギーのほうを最初申し上げますけれども、これは後で安全研究との合体の問題があると思いますので、少し説明いたします。
まず核燃料転換・利用分野、すなわち、エネルギー分野では、政策支援、増殖炉などの進路というのは非常に難しくて、今までもいろいろな判断があって、国によってはやめてしまったりしておりますけれども、これは本当に専門的に判断すべき問題であります。では、研究機関が政策判断に直結するような仕事をしているかというと、情報を集めたりということはいろいろあるかもしれませんが、本質的に必要なのは、システムを具体的に開発し、新しいものが必要であれば新しいものを提案する、そういったものをつくり上げていくことであります。過去の高速増殖炉技術というのは、概念の上にもっぱら外国に依存してきたところがありますから、もっと基本に戻って、「日本は関連要素技術もここまで持っているし、こういう特徴があるから、これをやろう」そういうような姿勢を期待したいと思います。
再処理につきましては、これは安全とも関係があるのですが、コスト対安全関係というのがありまして、非常にコストがかかります。安全性を重視しますと、コストがどんどんかかります。これは悪循環にならないように、むしろ原点回帰する思想も大事ではないか。要するに、安い再処理と言うと、非常に安くて悪いと聞こえがちですが、基本的なシステム、考え方を変えていきますと、そういうことも可能であろうと思いますので、むしろそういうところを目指していただきたいと思います。
それから独自に開発したVHTR。これはvery high temperature reactorで、普通のHTRではないんです。非常に温度が高いところが特徴であります。ですから、電力というよりは核熱を目指して開発したものです。これは日本が最高温度を達成し、今、世界のトップにあるわけですが、核熱による水素製造とか、あるいはヘリウムタービンというような技術に対する非常に大きなポテンシャルをもっております。もちろん研究ですから、リスクもありますけれども、こういったものこそ世界のエネルギー・環境問題に具体的に主導力を発揮し得る技術でありますから、これはもっと力を入れないといけない。今は、あいまいな状況にあるような気がいたしております。
それから体制の強化であります。これは中期エネルギー対策ですから、基盤的なものをしっかりさせて、ねらいの良いものをやっていかなくてはいけません。現行の発電の技術に対しては安全以外あまり手を出してないという形も、旧来の省庁管轄下のいろいろな区分の影響が出ておりますが、こういうものにもむしろ積極的に入っていって、中期エネルギーから現在までの間の技術の連続的なスペクトルがあってほしい。そうでないと、現行は産業界あるいは経産省関係の研究機関で、将来のものはこちらで、というようなことは、冒頭申し上げましたことと同じ理由で、研究の上ではあまり効率的でないわけでありますから、そういう点も気をつけたいと思います。
肝心の安全性でございますが、現行の総合的原子力安全研究は大変な成果を挙げたと思います。事故対応・リスク低減という観点では大変な実績を挙げまして、いろいろな事故のときに力が発揮されつつあります。しかし、一方でまた別種の事故が出てきて、「こういうことが何で予測できなかったんだ」という話があるのも事実であります。やはり研究の性格をこのへんで変えて、積極予防対策に相当力を入れなければいけないだろう。「安全研究はそろそろ成熟したから、このくらいでいいかな」ということで、そのままですと、風化してしまうと思います。開発と安全の独立分立の関係というのがありまして、分立ということはお互いに守るべき道というのがあり、混同してはいけないという意味です。これはきっちり守らなくてはいけないんですけれども、事故の予防ということになりますと、先進的ないろいろな開発上の技術が生かされなければいけませんから、両者をコーディネーションしながら、独立性を保ちながら、開発と安全研究というのはやはりがっちり連携しなければいけない。これは構造的なところでありますから、そういう研究体制システムをつくっていただきたいと思うのであります。
2つ目のカテゴリーの原子核関連の理工学分野というのは、いわゆる放射線利用と言っているものであります。これについてもいろいろ申し上げたいことがありますが、今日のテーマから離れるのでやや簡単にさせていただきます。
核反応を利用したり、量子線をうまく使うということは産業振興に大きな意味をもっております。今まで放射線利用というのは産業に移転されて、かなりの実績を挙げておりますが、やはり特殊なものという思想があって、なかなか広がっていないと思います。しかし、独創性を生かす分野としては非常に広大な未踏分野であります。3番目に書きましたように、我が国の中小企業が非常に苦しんでおります。先進技術といえども、実際につくってくださっている基本的なところは中小企業です。大企業にまず相談はいくかもしれませんが、実際につくっているものづくりというのはこういうところで行われているわけです。ですから、ものづくりの質を高めるという意味では、端的にいえば、こういった技術は中小企業までの一貫した対応ということが必要であります。したがって、スピンオフを非常に大事にしたいと思います。スピンオフ、すなわち、目的以外の副産物を積極的にどんどん産業化していく。これは単純に研究者が「こういう副産物ができました」と論文に書くくらいではだめで、やはり事業としてやや営業的な努力といいましょうか、そのくらいの力を持つ部門ができてやっていくべきだと思います。
それから経営組織。これは私が言うのはおこがましいんですが、1つは中立・透明性、もう1つは大型組織のマネージメントという2つの観点が大事であります。
一般的には透明性というのは研究者あるいは行政の視点で大変努力をしております。しかし、果たしてそれが一般市民の視点でそうかというと、「決してそうではない」という意見もたくさんございます。これは経営を一元化してやれば、そういうところにもっと力を入れるチャンスが出てくるだろう。すなわち、PRとしての透明性、中立というのはあるんですけれども、必ずしもPRとしての透明性だけではなくて、実際に一般市民と一緒に考える、という部分が必要だと思います。
その次に書きましたのは自主であります。釈迦に説法でございますが、これは自由度というものの考え方を書いたのでございます。産業教育研究、行政など各界に対して独立法人化、すなわち、一種の会社のようなものになってしまうことによって、発言力が弱まってしまうのは困ると私は思うのです。むしろ発言力が強くなって、信頼が高まる。そのためには、やはり国民の視点で監視・保証する、これは従来あったわけでありますが、もっともっとしっかりしたメカニズムをつくって、国民の立場でものを言っている、そういうことが言えるようになりたい、ということであります。
それからマネージメントは、大きくなるので非常に大変だということに尽きます。しかし、大きくなったために従来のマネージメントの中で改善すべきであるが、なかなかできないでいたのがかえって実現できる面もあると思います。研究機関というのは、ボトムアップとトップダウンの政策を消化するだけで精一杯で、企画、立案、調整、こういったシンクタンク的な役割をする機能というのがなかなかうまくいかないんです。これは思い切って膨らませて強化していただきたいと思います。こういう役割をするシンクタンクがあって、そこから出されてくるいろいろな判断というものが科学的にも社会的にも十分な根拠をもったものであり、これに先ほど「営業」と言った部分も入れればなおいいかもしれません。
四千何百人になるわけですが、この組織が非常に大きいかというと、私はそうは思いません。国際的な情況を見ますと、大体1機関5,000人くらいという研究機関というのはざらにありますから、これらは普通のものでありますが、我が国としては極めて大きな初めての体験になるだろう、ということであります。
あと基礎・基盤研究で少し書かせていただきましたが、1つの論旨は、やはり目的基礎研究で、自然拡散を防ごうということです。原研の場合、既に先進基礎研究で大変な成功を収めていると思います。
炉工学部門で私が非常に心配していることは、かなり体力低下をしているのではないかと思うのです。デシプリン(学域)、大学でいえば、1つの講座の中ではある学術体系に従って研究がなされ、人が育てられているわけです。ところが、プロジェクトがあまり乱立しますと、そういう組織というのはほとんど抜け穴だらけになってしまいまして、機能を持たなくなってくるんです。そうすると、プロジェクトをやっているときは元気に仕事をしていますが、研究者としてのポテンシャルがだんだん低下し、バッテリーでいうと、放電してしまって、充電しなくなってしまうわけです。こういうことが非常に問題と思いますので、単純にいえば、基盤はもっと厚いものでなければいけない。強化しなければいけない。冒頭に申しました「強化して増やさなくてはいけない部分もある」というのは正にこれであります。
技術移転などをいたしますと、例えばサイクル機構のウラン濃縮事業のように、研究者ごとそっくり移行ということがございますが、その場合ですと、研究機能という基本的な部分も残されないわけです。こういうようなこともやはり考える必要がありますし、高温ガス炉が開発されまして、それの研究開発チームは解散して別のものをやるというのもいいんですが、高温ガス炉は生き物で、これからどんどんいろいろな問題を処理していかなければいけませんから、やはり強力な技術基盤がなくてはだめなんです。ところが、技術基盤が少ないために残念ながらそういうことになっている、ということがあります。したがって、プロジェクト編成というのはもっと広く人材を大学あるいは大学院生あるいは企業、いろいろなところから集める。今までもそういう部分はありましたけれども、今までよりはるかに広く広範にやるべきであると思います。
人材育成につきましては、さっきデシプリンのところで申しましたので、簡単にしますが、知見・技能の伝承というところで非常に大きな問題が起こっております。要するに、伝わっていかないんです。これは暗黙知であるとか、スキンシップとか、そういうものが研究組織には非常に重要でありまして、データベースと文書だけでは到底伝わらない。そういう種類のものでありますから、学域組織を再建する、それから年齢構成を適正化するというようなことをして、健康を守っていかなくてはいけないと思います。
それから安全確保・防災対策は、既にこの間のJCO事故とか、この数年間に起こったいろいろなトラブルの中で実態で経験してまいりました。例えば、原研が総合研究機関として大きな役割をした、というようことも新聞等で述べられておりますが、この中で注目すべきは、単に安全性研究をよくやっているから活躍できたということのみではなくて、基盤技術研究というような専門家としていろいろな見識を持った質的な特色というのがとっさの場合に大いに役に立つ。ですから、基盤技術の中で安全と開発技術というのはあまり極端に神経質に分け過ぎない、ということもやはり必要だと思います。一元化のこの際に環境整備をして、そういった人材をたくさん育てるということが本当の意味での安全確保・防災につながっていくと思います。
地元との関係は、おかげさまで日本は世界でもまれに見る良い関係にあるわけであります。ただ、事故などで失われた部分もありますし、学校教育、初等・中等理科、そういうものに対してサイドから支援する活動をもっと積極的にやるべきであろうと思います。フランスなどではそういうことがよく行われていると聞いております。研究現場見学などは危ないからとずいぶん排除されて、展示館方式になっています。しかし、展示館というのはあくまで展示館で、PRの目的であります。現場に安全な形で一般市民が見に来られるということは、原子力開発初期には非常に積極的に行われていたんです。それがいつの間にかなくなってしまった。これを見直さなければいけない。おそらく多少お金がかかるかもしれませんが、ぜひやるべきだろうと思います。
それから国際協力は、受け身の部分がかなりあったと思います。これは初めの1970〜80年代はやはりやむを得なかったんですけれども、これからはどんどん主体的・主導的にやるべきであろうと思います。しかも、これをやらないと資源の節約はなかなかできません。ただ、研究者の負担が非常に大きくなります。事務機構がそういうふうにできていませんから、研究者が事務をやっているわけです。大変な努力であります。これを何か工夫していただきたいと思います。
最後に申し上げたいのは、大型施設のデコミの問題とか、いろいろ言いましたけれども、研究炉というのがいろいろ散在しておりまして、性能が不十分で陳腐化しております。しかし、国内ではほかに新しいものがないので、ないよりましだという形で運転されております。これは大変な冗費です。人間もお金も食っているわけです。しかしながら、非常に重要な核融合の材料照射というのは、外国の照射ベッドにほとんど依存しているわけです。これでは中核機関としても、あるいは原子力を推進する立国政策からしてもちょっとまずいのです。そういう意味では、新鋭の混合中性子型の高速中性子炉が少なくとも1基必要であります。それに現在ございます「常陽」多目的利用のためにもっと積極的に改造し、照射技術なども開発しまして、これを開放する。この2つがありますと、特殊なものを除けば、ほとんどの需要に賄えるであろう、というふうに思います。
これはちょっと筋の違った話になりますが、核融合開発でもこの材料照射という照射ベッドに大変大きな必要性があります。これには日本が主導的な立場をとって施設の概念設計等をやってまいりました。こういうものも将来やはり国際協力の中で進めていってはどうか、ということでございます。
大変雑ぱくでございましたが、以上が私の説明でございます。
坂田審議官 ありがとうございました。安全問題に関わり大変幅広くやっていただきまして、恐縮でございました。
それでは東先生、よろしくお願いいたします。
東邦夫舞鶴工業高等専門学校校長 10分間「原子力安全研究から見た二法人統合の意味」という題でお話をさせていただきたいと思います。
―OHP―
ここでは、原子炉を除く、ほかの核燃料サイクル関係の施設の安全研究について二法人、原研とサイクル機構がどのように関わり合ってきたか、そういう問題を考えてみたいと思うんですが、一つ一つ考えるのはとても時間がございませんので、現在、原子力で問題になっており、しかも、二法人それぞれにたくさんの研究者、従事者が関わっておられます廃棄物問題、かなり放射能レベルの高い廃棄物を地中深く埋めることに限って、典型的な例として絞ってこの場では議論させていただきたいと思っております。
考えてみますと、できるだけ安く、そして、それが長期にわたって安全であることをどうやって確かめるかといったことは、開発も研究も共通ですから、サイクル機構がやっていること、原研がやっていることはほとんどは同じことです。
しかし、2つの法人がそれぞれの独自性を出し、どういうような役割分担、棲み分けをしてきたかと申しますと、かなりご苦労があった、というふうに思うんですが、原研は研究機関、サイクル機構は開発機関、規制を担当する原研、地中に埋めることを推進する機関としてのサイクル機構、それから原研は規制のほうを担当している原子力安全委員会をサポートする機関、それからサイクル機関はどちらかというと原子力委員会、対象とする廃棄物はサイクル機構のほうは高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)、原研のほうはそれとは違うということで研究所等廃棄物、そして、サイクル機構は長計などで中核的推進機関と位置づけられておりまして、動燃としての成果として「2000年レポート」と呼ばれる4冊ある大きなレポートを報告しています。
原研とサイクル機構の性格の差を言うためにちょっと説明したいと思いますが、この4冊をもってサイクル機構として主張したい一つのことを言っていると思います。つまり、「変動帯と呼ばれる地震などの多い日本の土地においても十分に地層処分を進めることができます」、その一言だけを言っております。このことについてサイクル機構の人に聞いたら、資料に書いてあることを前提にして、別の研究者がみな同じことを言うというのが、プロジェクト指向のサイクル機構の性格を表していて、また、それで良さが出ているのだろう、という気がいたします。
一方、原研のほうの良さというのが必ずしも今までのところ出てないようなことを少し強調して書き過ぎているかもしれませんが、原研の研究としましては、埋められている廃棄物が地下水の動きとともに地表に出てきて河川などの水に入り、それをヒトが飲んで被ばくするという経路、こういうことが問題なわけで、例えば移行、動いていくということ、そして、動いていく途中に収着、岩石や土にくっついていくので、地下水の流れよりも遅くなるという現象、しかも、いっぱい化合物の形をとるんですが、炭酸錯体であるとか、それからいろいろな化学的条件があるんですが、酸欠条件、化学の人は酸化還元電位が低いと言いますが、そういう条件になる。しかも、たくさんの元素を考えなければならないんですが、特にネプツニウム。ネプツニウムの酸欠状態にある炭酸錯体をつくったときの収着が移行にどう影響するか、こういったことで論文を書き、研究者のとしての業績を挙げる。そういう個別的な一つ一つに対して詳しく勉強する、こういったことを原研は得意となさってきたと思います。
しかしながら、規制、つまり、原子力安全委員会を支える機関としては、全体像をとらえて、許可か不許可かの一つの判断にたどり着く作業、こういうことはちょっと……。それは原研の人に直接聞いたほうがいいんでしょうが、自分がそばから見ている範囲内では、そういうことをやることの価値と意味づけが個々の研究者の研究テーマと両立しない。先ほど言いましたような研究、それから個々の研究者に動議づけがなかなか見つからない。それと、これをサポートするということと、一つを深く掘り下げていくというところがうまくいかない。ちょっと誇張がありますが、必ずしもうまくいってなかったような気がします。
一方、世間、我々外から見ていますと、原研には大勢の方々がおられますし、多分野に優れた人たちがいます。お金もたくさん使っていらっしゃる。そうすると、安全規制への総合的なパワーを、全体としての原研の持っている力が総結集して一つの原研としての意見とか、原研としての成果というような形でこの規制の機関を支える、というようなことはできたかどうか。これが実際上なかなか難しくなっているのが現実だ、というふうに思います。原研の良さはその中では機能し難い。
原研の研究者は、学識経験者の一人として委員会活動をしながら安全委員会を支えてきてくださった。つまり、自分も京都大学ですけれども、京都大学にはたくさんの講座があり、研究者がいますが、京都大学としての意見というのはつくらない。各教授の意見にすぎないわけです。ですから、委員会活動で原研の方が2人見えていて、お互いに意見が違っても不思議ではないし、また、それがかえって研究者としては良い点があろうか、そういうふうに思います。
ですから、プロジェクト指向的なサイクル機構と個別研究的な原研の2つが統合されましたら、研究開発というのは必ずしも一つでいいわけではなく、両方が必要なので、両面を備えた非常に良いものになるのではないか、そういう気がいたします。
このような状況を両法人に強制してきたかどうかわかりませんが、実際上そうなってきたのは、
原子力安全委員会というのは許認可の権限を持っていますので、ほかの推進機関とか、企業から独立していなければならない、という論理は大事なことですが、その規制を開発する、技術を開発する、それを支える機関が独立している必要はないと私は思います。それを支える機関にまで独立性を要求してきたことは、不合理性、無理、そういうようなことを生んできたのだろう、という気がします。
後の2ページに言いたかったことをまとめておりますが、許認可の権限を持っている原子力安全委員会は、ほかの推進機関から独立している必要があります。しかし、技術の開発研究をする機関と規制の研究開発をする機関は、それ自身が許認可の権限を持っているわけではないですから、別々に分かれている必要はない。そのような二重構造は非効率的であり、競争力の低下を招く。
稚拙なたとえでおかしいですが、アクセル(推進)とブレーキ(規制)は独立に作動すべきでありますが、アクセルの開発とブレーキの開発と両方があって一つの自動車ですから、同じ自動車会社が行うべきで、別々の会社で開発する問題ではない、というふうな気がいたします。
今までの原研とサイクル機構は、明らかに日本の原子力を支え、推進する非常に重要な役割を果たしてくださいました。それが一つの機関に統合されるわけですから、非常に大事な役割を持ってくださることになろうかと思います。
これは、原子力について「原子力というのは枯渇しそうな石油や天然ガスに代わる人類のエネルギーである」という意義づけをしようとするときによく使われる一般の人用の図ですが、石油や天然ガスと同じくらい、あるいはそれ以下のエネルギーしか取り出せないウラン資源、MOXでプルサーマルにしても3割ほど大きくなるだけですから、この300という数字が400になるくらいで、五十歩百歩です。原子力というのは、こんな枯渇しそうなものと同じか、それ以下のようなものでなくて、それとははるかに違う数十倍大きな高速増殖炉を目指している。将来世代に対して負担を残すような、負い目を負うような何百年、何千年の廃棄物問題も、これを目指しているということの中で許される点があるのだろう、というふうな気がいたします。
ですから、新しい法人は、私はここで高速増殖炉と言っておりますが、大きな人類的な使命を前面に掲げてやらないと、廃棄物は何百年、何千年という期間が必要でありますし、不確かさというものも必ず残ってくる、こういう問題には十分な説得力のある目的、そういうものを示しておく必要があるのではないか、という気がいたします。
簡単にまとめますと、両法人の統合によって棲み分けが不必要になりまして、効率的で立派な機関になるだろう、という気がいたします。それから、一緒になることによって削れる部分は削れますので、大いにシンプルな研究組織になるだろう、という気がします。また、基礎研究と開発研究の両方が一緒になった非常に良い新しい法人になることを期待したい、そんなふうに思っております。
ありがとうございました。
坂田審議官 どうもありがとうございました。原研とサイクル機構の違いと規制の研究と技術開発は別々である必要はない、というようなお話をいただきまして、ありがとうございました。
それでは続きまして、望月次長、お願いいたします。
望月晴文原子力安全・保安院次長 原子力安全・保安院の望月でございます。よろしくお願いいたします。
「資料 第3号」に私の申し上げたいことはまとめてございます。
昨年1月に省庁再編が行われまして、通産省が経済産業省になりましたときに、原子力のエネルギーに関する安全規制はサイクルから発電所まで経済産業省が一元的にやるということで、その受け皿として国家行政組織法上の特別の機関ということで原子力安全・保安院が成立いたしました。
経済産業省としては原子力推進のほうもやっておりますけれども、本日はむしろ安全規制の現場の立場から、原子力二法人統合という非常に重要な事項に対しまして私のほうから見解を述べたいと思います。
私どもとしては、今回の統合によって一番大事なことは、安全が最優先されて、新法人の施設・事業について安全確保が図られること、そのために必要となる資金、人材、組織が十分に確保されることが不可欠である、ということが基本であろうかと思っております。
これまでも「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故、あるいはアスファルト固化施設の火災爆発事故など、我が国の原子力を揺るがしかねない事態が発生いたしておりますし、また、動燃改革においては動燃が研究開発への偏重が見られて、安全への資源配分が不足していたと見られることが指摘されております。新法人は「もんじゅ」などの研究開発を進めるほか、高レベル廃棄物を含む多量の放射性廃棄物を抱えておりまして、その処理を進めなければいけないと思いますし、また、今後「ふげん」の廃炉なども実施しなければなりませんが、これらについては安全確保を十分図りながら進めることが前提となります。私どもとしては新法人には統合により安全確保への取組みがおろそかにならないよう、自らの事業に関する安全確保を業務運営の最優先事項として取り組んでいただくことを強くお願いをしたい、というふうに思っているわけでございます。
2番目に、私どもとしては、安全規制の科学的合理性というものを確保するために十分な試験や実験等に裏打ちされたデータ収集がどうしても必要になるわけでございます。我が国において52基の商業用の発電炉が稼働し、また、今後、核燃料サイクル関係の事業が本格実施される情勢の下で、これまで日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構が安全を含む原子力に関する研究の面で果たしてきた役割を今後とも果たし、その成果を公開していくことが我が国の原子力安全確保を進めていく上で大変重要である、というふうに考えているところでございます。
ちょっと後先になりましたけれども、2ページに「原子力安全・保安部会報告」というのがございますが、これは昨年、原子力安全・保安院が発足いたしましてから、まず第一に総合エネルギー調査会の中に原子力安全・保安部会をつくりまして、今後の安全基盤の確保ということをさんざん議論をいたしました報告の中からの抜粋でございます。そこで私どもの考え方の基本が示されたわけでございます。これに基づいてご説明をさせていただきたいと思います。
3番目に、これは大変重要なことでございますけれども、原子力の実験施設における大規模な研究を実施する能力を持つ機関というのは、我が国においては原研、サイクル機構にほぼ限られているわけでございます。原子力安全・保安院といたしましては、両法人の統合の後も両法人が持つ原子力実験施設、特にホット施設を持っているということ、それらを活用した原子力安全分野を含む研究機能が時代の要請を踏まえつつ、これまでと同様な機能を維持されていくことを強くお願いしたい、というふうに思っております。
それから4番目に、原子力の安全基盤の一つとしての知識基盤ということは大変重要なことでございますけれども、原子力安全規制に直結する安全性実証研究に限られるものではなくて、今もお話がございましたように、原子炉や核燃料サイクルに関する先駆的研究や基礎的研究が不可欠でございます。規制においてその成果を利用していく、ということが非常に重要でございます。また、国内や海外において今や各種の新しい炉の研究も再び進められているわけでございます。こうした原子炉や核燃料サイクルなどの原子力に関する知識基盤形成において、原研、サイクル機構は重要な役割を果たしてきておりますし、これらは安全分野から大変必要なものでございますので、新法人が今後ともこれらの分野において役割を果たすことも心から期待をしているところでございます。
次に分野別課題を2ページの上に項目だけ例示してございますが、幾つか言及させていただきたいと思います。
最初にまず「国際協力」でございますが、私ども原子力安全・保安院自身は、今まで日本の安全規制が国際的な場では、どちらかというと、ルールテーカーでございまして、自ら積極的にそこに入り、ルールメーカーの役割を果たしていなかったのではないか、ということがいろいろな意味で反省点になっております。昨年発足以来、現場の課長など幹部も含めて、IAEAやOECDなどの会議に積極的に参加させることによってルールメーカーの一端を担おう、というふうに努力をしているところでございます。ただ、役人という制約もございまして、専門性あるいは深い知識、研究のバックグラウンドを持った方にバックアップしていただくことが大変重要でございます。
技術的な知見という意味で、IAEAやOECD/NEAなどの活動に対して今後とも我が国が積極的に貢献していくためには、原研やサイクル機構が政府の活動をバックアップしていただくことが非常に重要であろうと思っております。また、特にOECD/NEAにおける国際共同研究などについても、研究の効率的な実施を行う上で大変重要でございますので、原子力実験施設を持つ統合法人の貢献というものは期待されているわけでございます。
2番目の「原子炉分野」でございますが、燃料の高燃焼度化に関するデータ収集については、実際に燃料体を用いて行うことが不可欠でございます。ホット施設を持つ日本原子力研究所が重要な役割を果たしていることはご承知のとおりでございますけれども、今後とも高燃焼度化あるいはMOX燃料の事故時の挙動など、原子力の実験施設を活用したデータ収集は必要不可欠でございます。
また、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、国内や海外において新型炉の研究が行われております。これらが実用化した場合の安全規制手法の確立にも新法人が併せてこういう知見を蓄積していただくことが非常に重要ではないか、というふうに思っているわけでございます。
それから3番目は「サイクル分野」でございます。臨界安全実験装置などによる臨界に関する科学的知見というのが、今後の本分野の安全規制関連情報収集の上では不可欠でございます。また、再処理施設の腐食ホット試験設備が、今後、再処理施設の本格稼働に向けた安全性実証を実施する上では不可欠ではないかと思っております。サイクル機構からはJNCの再処理、MOX加工などにおける安全確保上の蓄積というものが今後の安全規制上の知見に反映する上で不可欠であると思いますし、今もお話がございました高レベル廃棄物を中心といたしました廃棄物の処理処分の安全確保を目指した研究というものが私どもとしてはぜひとも不可欠なものであろう、ということでございます。
4番目は「人材基盤の確保・育成分野」でございます。ある意味ではこれが最も重要なことかもしれません。原研は、これまでも原子力施設を活用した原子力研究の現場という特徴を生かして、研究者を中心に人材を輩出してまいりました。また、原子力施設とそれに付帯するノウハウを生かすことによって、原子力事業者における人材育成にも大きな役割を果たしております。最近では人材の枯渇というようなことが原子力事業の世界でも大変危惧されておりまして、今後ともこういった両法人の人材育成機能というのはぜひとも維持されることがある意味では最大の課題ではないか、というふうに思っております。
それから5番目は「危機管理・防災」でございます。原子力施設を扱う能力というのは、防災支援の面でも大変有意義でございますし、これはこれまでの最近のいろいろな事件でも立証されているところでございます。特に先般開設された原子力緊急時支援・研修センターというものは大変立派な機能を持っておりますし、私どもとしても今後ともこの支援センターと連携を取りながら原子力防災についての緊急時対応をぜひしていきたい、というふうに思っているわけでございます。
ハードを維持するということではなくて、そういった現場の防災機能が実質的に上がっていくことによって原子力防災に万全を期すること、それによって国民の信頼を勝ち得ていくということが大変重要であろうかと思っておりますので、この危機管理・防災についての機能は改めて着目されてしかるべきだ、というふうに思っているわけでございます。
以上、全体を申し上げますと、私どもが原子力の安全規制を国民の信頼を勝ち得ながらきちっとやっていくという上では透明性、科学的合理性ということは不可欠でございますけれども、透明にし、科学的・合理的に維持していくという面でも、こういった本当に技術的実力を持っている法人がその機能を万全に発揮していく、ということは不可欠でございます。そういった意味で、この両法人統合が本当に前向きに展開されていくことを心から望んでおります。これまでも組織統合をするときにはいろいろな意味での失敗を経験いたしておりますので、より一層の緊張感をもってこの統合に向けての準備を進められることを心からお願いをしたいと思っているところでございます。
以上でございます。
坂田審議官 ありがとうございました。
これからお三方のご発表につきまして少しディスカッションの時間をとりますので、どのような話題からでもけっこうでございますので、ご遠慮なくお願いいたします。
西澤委員 トランジスタが発明されたのは大正15年、ベルでそのトランジスタの研究に着手したのは昭和11年でございます。ショックレーがリーダーシップを取ってやりまして、10年間全然成功しなかったんです。ところが、最後になって、そろそろ見切りをつけたのかどうかわかりませんが、軍の要請でレーダーのデテクターをやらされたんです。このときまでショックレーが一つ大きな間違いをしておりましたのは、蒸着膜でやろうとしておりました。このときドイツの研究が進んでおりまして、単結晶を使ったダイオードのデテクターの研究を手伝いまして、その過程でトランジスタが初めて見つかったわけです。もちろん、はじめて単結晶を使い出し、その後、ショックレーがそれまでためた10年間の知見というのは非常に有効に働いてトランジスタが出来てゆくわけでございます。
日本でいいますと、戦争の末期に朝永振一郎先生とか、小谷正雄先生がマグネトロンの研究開発に大変大きな力を重ねまして、これが戦後、学士院賞として受賞対象になっている、というようなこともあるわけでございます。戦争はちょっと芳しくない点がございまして、一つの社会のニーズに適合するということが必ずしも歓迎されないわけではありますが、結果として見ると、そういうものが非常に大きな引き金になっていることがある、基礎研究が発展するというふうに私は承知しております。
半導体にも同じようなことがあったと思いますけれども、やはり自分の足元のことから片付ける、という姿勢をもち続けることが大変大事ではないか、というふうに考えております。一時的には東洋の田舎になってしまって、中央学会には全く持っていけないようなことも起こるとは思いますが、かえってそのほうが後になって非常に優れた研究が出てくることが多いと私は考えております。そんなこともちょっと余計な一言として申し上げておきたいと思います。
秋元委員 仕事の方法として、サイクル機構はプロジェクト指向で進めてこられるという傾向が非常に強い、それから原研は、どちらかというと、個別研究的な指向がある、という東先生のご指摘は正にそのとおりだと思うんです。しかし、「だからといって、安全のところでこの2つの組織が別々に分かれてやる必要はないではないか」というお話がございました。
私もこうやって一つの組織に統合されて、廃棄物問題一つとりましても、かなり広範な研究開発を進めていくということが非常に大事だ、というふうに思っているわけですが、この2つの特徴というのはこれから原子力を開発していく上においてどうしても必要な性質なんです。どっちかがなくなって、どっちか1つということではいけない、というふうに思うんです。では、この2つの傾向を一つの組織の中でうまく生かしていくためには一体どういうふうにしたらよいのであろうか、ということをお伺いできれば大変ありがたいと思います。
それからもう一つは、望月さんからのお話で、この研究開発機構自体が規制をやるわけではございませんから、この研究開発機構の活発な研究やアクティビティ、そういう成果を利用して、保安院のような機関が有効な規制を行って、有効な対策をとっていく、そういう戦略面について国がきちっと責任をとり、現実の成果を出すことはこの新しい開発機関がやっていかなければいけないと思うわけですけれども、その2つがうまく有機的に作用していかないと、非常に難しい問題が出てくるだろう、というふうに思います。ここをやっていくためには一体どういうことに気をつけたらいい、というふうにお考えなのか、そのあたりのお話をもう少し伺えればと思います。
東邦夫舞鶴工業高等専門学校校長 開発研究というのは、必ずプロジェクト指向的なところと個別研究的なところと両方あって初めて進むのだろうと思います。ただ、両者を一つにくっつけただけで有機的な良いバランスのものができるとは限らないと思っております。くっつけただけでいいとは思っておりませんで、どのような研究管理・開発管理、それからターゲット、そして意欲をもたせて導いていくか、これは次の課題だろう、というふうに思います。それは新しくできた法人の指導とか、そういうことで決まる問題であって、くっつけただけで出てくるものではない、私はそう思います。
望月晴文原子力安全・保安院次長 私どもでこの両法人に安全規制上でいろいろお助けいただいている点は多々ございますが、一例を挙げますと、先般の浜岡原子力発電所における水素爆発、配管破断の際に、破断面についての金相解析などを事業者自身が関係メーカーの研究所においてやるということは、これはこれで重要なことではございますけれども、私どもとしては最近の安全規制における公正・中立性、透明性という観点からいきますと、同時に別の第三者的機関がやる必要があるということで、当初からその破断面を2つに分けまして、原研に持っていきまして、金相分析をやっていただきました。これによって、もちろんほぼ同じ結果が出たわけでございますけれども、それを公開することによって、ある意味では国民の信頼性というのは確保できたのではないかと思っております。そういった意味で、今、私ども自身でそういう分析ができる機関がないということもございまして、大変有効に活用させていただいたということでございます。
したがいまして、両法人統合について私どもは差し出がましいことを申し上げるつもりは全くございませんけれども、サイクル機構について申し上げれば、安全規制上、例えば先ほどもございましたように、高レベル廃棄物の地層処分などについての安全研究について委託調査をさせていただいて、そのデータ蓄積を活用させていただく、こういうことになっているわけでございます。
ただ、大変つらいことには、サイクル機構自身は安全規制上の被規制者として「もんじゅ」とか、「ふげん」とか、ああいう大型の施設を持っておりますので、ある意味では事業者そのものでございます。したがって、先ほど申し上げた浜岡のときの分析のような中立性みたいなものをどうやって新しい法人に期待していくか、ということが私どもとしては若干想像がつかないところがございます。そういう使命も頭に置いた上で、この法人の形態を工夫していただくことによって、私どもはぜひそういった機能を引き続き期待をしていきたい、ということを思っているわけでございます。
原子力安全・保安院が発足いたしましたときに、私どもだけでは人手が足りませんで、いろいろなところから出向者もお願いしたわけですけれども、簡単に申し上げますと、原子力研究所からの出向者というのは引き続き今おられます。これはそういう意味での中立性を害するものではない、というふうに今、思っているわけでございます。ただ、経済産業省全体として、もちろんサイクル機構からの方もおられるわけですけれども、安全規制当局に来ていただくという意味では、「もんじゅ」とか、「ふげん」とか、ああいう大きな規制対象を持っている以上なかなか難しいとしました。当初そういうことで発足しているわけでございます。
これからこの法人が統合されて、どういう形になるかということによって、私どももお願いをする形というのが変わってくるのではないかと思いますので、それがすべてであるとは思っておりませんし、もちろん我々はできたものを前提にして我々なりにお願いをしていくつもりでございますけれども、ぜひ新しい法人の形態を考えていく上ではそういった意味での工夫もご考慮いただいてやっていただければありがたいな、というふうに思っているところでございます。
坂田審議官 東先生、望月次長からのお話は大変大事な点だろうと思います。
ほかにいかがでしょうか。
小林庄一郎委員 近藤先生から初めの「見直しにあたっての期待」というところで、日本が原子力分野においてリーダーシップを取っていく、その意味でITERというものを取り上げていることについて意義をお認めになりましたが、特にその中でこのITERの予算については、国際的なものでございますし、別枠にして、現在ある原子力予算を圧迫しないように、というご指摘をいただいたことは大変ありがたいと思いますし、テークノートしていただきたいと思います。
住田裕子委員 今回の二法人統合の場合、国民の目から見まして、やはり一定のスリム化ということは当然必要かと思われます。また、それと裏腹の形であるゴールを設定されるとか、一つ目的を設定するとか、そういうメリハリを利かせた方向づけが大きな目標の一つだろうと思うんです。その中で東先生は「スリム化が必要な周辺状況」と書いておられまして、そういうものの例として廃棄物処分と非常にわかりやすかったんですけれども、ほかに幾つか事例が挙げられるならぜひ教えていただきたいと思います。
東邦夫舞鶴工業高等専門学校校長 先ほど少し誇張して申し上げましたが、特に廃棄物をやっている人たちは、同じようなことをやっているのに無理して自分たちの独自性を出しているということで、統合することをわりに自然に受け止めている、という点があると思います。それはスムーズなスリム化ができる、ということです。
それから、統合することによるスリム化も多いとは思うんですが、超ウラン元素、つまり、人工的につくったプルトニウムやネプツニウム、アメリシウム、こういった天然にはない元素の物理化学的な性質を調べていくことを推進していく役をこの廃棄物問題が最初やっていたと思います。そういうときの基礎研究と、現在、法律ができ、実施主体ができているような状況における基礎研究の状況とは違う。そういう意味でスリム化をすべき時期にきているのではないか、といったようなことを併せて申し上げたつもりであります。
ほかの点につきましても、先ほどサイクル施設の概念図がありましたが、スリム化できるところはあると言っていいと思います。例えば、先ほど来出ております核融合というのは、サイクル機構には全くない分野ですので、スリム化の度合いというのは各施設によってかなり違っている、あるいは研究テーマによって違っている、というふうに言えると思います。
木村孟委員 細かくなって恐縮でございますけれども、近藤先生に一つお伺いしたいと思います。
「資料 第1号」2ページの「経営と組織のあり方」の2番目のところで、大型研究組織のマネージメントということについてお触れになっております。私は通産省の工技院が現経済産業省の産総研に移行する過程をつぶさに見てまいりまして、ここのところが非常に大事だというふうに思っておりまして、そういう点では全く同感であります。
ただ、今の話で出ましたように、スリム化していくわけですから、新しい人材をここに入れ込むということが非常に難しい。そうなりますと、2つ目の黒丸で書いておられます企画、立案、調整の機能を持つスタッフチームをつくるということが現状の体制で可能かどうか、ということを非常に心配いたします。経産省でも相当苦労されたようでありますが、そのへんのことについてお伺いしたいと思います。
それから2行目に「戦略構築などのシンクタンク機能を活用する」と書いておられますが、これは外部のシンクタンクという意味でございますか、それとも中にそういうものをつくっていくということをお考えなのでしょうか。
その2点についてお伺いしたいと思います。
近藤達男東北大学客員教授 産総研のできる過程は実は私も非常に興味をもって見ておりまして、あれだけ大きなシステムをどういうふうにマネージするのか、ということが試されると思いました。
まず後のほうのご質問に先にお答えしますと、あれは内部にということです。外部シンクタンク委託というのは過去にずいぶんはやったんですが、あまり役に立たないと思います。内部に強力なブレインの部分をつくるわけですが、今までどうやっているかというと、研究者を2〜3年徴用しまして、それを使う。みんな研究が中断することを一方でブツブツ言いながらも、やはり非常に重要な役割で、また勉強にもなるというようなことで、人材を還流させているんです。こういうやり方は限界があります。やはりチームの何割かはそういうものに特化された専門家でなければならない、ということでありますから、いきなりそういうものをつくるというのは大変難しい、というのは全く同感でございます。
ただ、一時的には研究勢力も少しダメージを受けるかもしれないけれども、思い切ってつくらないといつまで経ってもできない。それから、研究勢力の方は若いフレッシュな大学院卒業生等を今どんどん入れなければだめなんです。そもそも組織が平均年齢がうんと上がっておりますから、そういう両面でやっていかないといけません。
それから外部人材の入り方ですが、不況のときはわりあいに来てもらえるんですが、好況になるとさっぱり来てくれないとか、そういうことがあります。したがって、やや岡目八目的な言い方ですが、そういう環境づくりをやることが大事だと思います。外からも入りやすい。それから新しいものをつくるというのは人材枠の問題でございますが、当然一体化することによって、言葉は悪いですが、スクラップ・アンド・ビルドでスクラップがたくさん出ると思います。そのスクラップはいつまでも置いておくわけにいきませんから、産業界などでうまく使う。逆に外に出ることによって活躍するということもありますから。人事問題は一番難しいですが、そういう形でやっていかないといけないと思います。
坂田審議官 議論は尽きないかもしれませんが、このあたりでディスカッションをいったん中断させていただきまして、これから両知事にご発言をお願い申し上げたいと思います。
15分くらいでお願い申し上げておりますが、最初に栗田知事からよろしくお願い申し上げます。
栗田幸雄福井県知事 福井県知事の栗田でございます。
青山副大臣、加納大臣政務官をはじめ準備会議の皆様方には日頃から福井県に何かとご理解、ご協力を賜っておりまして、心からお礼申し上げます。
本日、原子力二法人統合に当たりまして、この準備会で発言する機会をいただきましたので、核燃料サイクル開発機構の「ふげん」と「もんじゅ」が立地しております県といたしまして、ご意見を述べさせていただきます。
原子力二法人の統合に当たりまして特に申し上げたいポイントといたしまして、配布してあります「資料 第4号」にも書いておきましたが、1つには、動燃改革の意義と実績を十分尊重していただきたい、ということであります。2番目に、安全の確保を最優先に取り組んでいただきたい、3番目に、地元重視の姿勢と地域との共生を徹底していただきたい、4番目に、本県の科学技術や産業の振興に貢献することを希望している、ということでございます。
そこで具体的に話を進めさせていただきますが、まず「動燃改革の意義と実績を十分尊重すること」につきましては、本県におきます核燃料サイクル開発機構(旧動力炉・核燃料環境事業団)の事業は、昭和43年に新型転換原型炉「ふげん」の建設地点を日本原子力発電株式会社敦賀発電所の敷地内に決定いたしました。また、昭和45年には高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の建設地を敦賀市白木に選定したことから始まったわけでございまして、多くの県民の理解と協力を得ながら建設と運転が行われて、現在に至っております。
特に「ふげん」と「もんじゅ」につきましては、旧動燃事業団の大きな柱であります国産技術によります新型炉の運転、核燃料サイクルの実現に向けた夢の原子炉として当時大いに期待されたものであります。
しかし、平成7年に新型転換炉実証炉の開発を中止決定したことから、原型炉として運転を行ってまいりました「ふげん」の位置づけが不明確になりました。さらに、同じ平成7年の12月に「もんじゅ」の事故が発生いたしました。この事故によりまして、国民全体に国の核燃料サイクル政策に対する不信、また原子力発電に対する不安が大変大きくなる結果となりました。
この「もんじゅ」事故後の平成9年に旧動燃東海再処理施設でも事故が発生いたしまして、国におきましては旧動燃の体質及び組織体制につきまして徹底的に第三者的なチェックを行いまして、抜本的な改革を図る必要があるとして、いわゆる動燃改革を行いました。この動燃改革では、業務の抜本的な見直しや整理・縮小、さらには本社機能と現場機能の適切化と連携強化、職員の意識改革、さらには体質改善等について調査、研究、検討が行われまして、その結論を踏まえまして、平成10年10月に核燃料サイクル開発機構が新しくスタートしたわけであります。
今後の二法人の統合に当たりましては、このように既に行われた動燃改革の意義と実績というものを十分尊重していただきまして、まずは日本原子力研究所のほうの組織や業務全体についての調査、検討をしていただくことが重要ではないかと考えております。
次に「安全の確保を最優先に取り組むこと」についてでございますが、福井県には15基の原子力発電所が立地しております。そのうち「ふげん」と「もんじゅ」は研究開発段階炉でございますし、他の13基はいわゆる商業炉でございますが、「『ふげん』『もんじゅ』は商業用の発電所とは違う」との意識が県民の間にもあります。そのため、安全性に対する県民の関心が非常に高いことも事実であります。
「ふげん」は来年3月に運転を停止し、その後は廃止措置に移ることが決定しておりますけれども、その期間は、準備期間を含めまして、20年以上にも及ぶと聞いております。その間、使用済燃料の保管あるいは搬出、「ふげん」の特色であります重水の搬出、さらには放射性廃棄物の処理、また最終処分と解決すべき課題がたくさんあるわけでございます。
また、「もんじゅ」につきましては、平成7年12月の二次系ナトリウム漏洩事故以来、試験運転を停止しておりまして、現在、改造工事計画について国の安全審査が行われております。県におきましては、「もんじゅ」全体の安全性につきまして確認をするため、県独自の専門委員会を設置いたしまして、県民の安全性に対する不安、疑問をもとに鋭意審議を行っております。特に「もんじゅ」につきましては、開発意義や役割とともに、全体の安全性について県民、国民の理解が十分得られることが重要であると考えております。
原子力事業者に対する信頼は、県民の目線で十分意識していただきまして、すべての業務にわたりまして徹底した安全を確保するという姿勢で臨んでいただくことが重要でございまして、その姿勢が県民の目に映るということによりまして、信頼が築き上げられるものと考えております。
これらを踏まえまして、新法人となった場合、安全の確保を最優先に課題解決に全力を挙げて取り組んでいただく必要があると考えております。
3番目に「地元重視の姿勢と地域との共生を徹底すること」ということでございまして、今回の二法人の統合につきましては、県民の間から安全の確保、また地元雇用、地域経済への波及が大きくなることが懸念されておりますため、「十分に配慮した対応が必要である」との指摘があります。
動燃改革の際にも、サイクル機構設置に当たっては地元重視の姿勢と安全管理強化のため、本社機能を敦賀市へ移転するということを強く国に申し上げまして、その結果、副理事長が常駐する本社機能を持った敦賀本部が敦賀市に設置されました。現在、サイクル機構は東海地区と敦賀地区にそれぞれ本部機能を持たせまして、敦賀地区は「ふげん」の廃止措置と高速増殖炉開発の拠点としての機能を持っておりますけれども、職員数の規模から見ますと、敦賀のほうがかなり少ないということで、大きな差があることも事実でございます。
この二法人統合に当たりましては、現在の敦賀本部を西日本の本社としての位置づけをしていただく、そして、機能の強化を図っていただきまして、地元重視の姿勢、地域との共生を徹底していただくことが重要であると考えております。
二法人が統合された場合に、この二法人の意義、統合された法人の意義、そして新しい法人が取り組もうとしている安全対策等について正しく広報していただく、ということも重要なことではないかと考えております。
4番目に「本県の科学技術や産業の振興に貢献すること」でありまして、本県では平成10年11月敦賀市に、地域に根ざした研究、研修、交流の拠点といたしまして、福井県若狭湾エネルギー研究センターを開設いたしました。この施設では、若狭湾地域に蓄積されましたエネルギーと原子力に関する科学技術、また、これらを支える人材等を活用いたしまして、新たな時代の先駆けとして、加速器の医学、工学、農林水産分野への利用、エネルギーの有効利用、安全科学等に関する研究、研修、交流を行っております。
また、サイクル機構では、敦賀市に国際技術センターを持っておりますし、関西電力は福井県の美浜町に原子力安全システム研究所を持っておりまして、これらの研究機関の連携した活動が期待されております。
さらに本県では、昨年成功いたしました小型のレーザー発振技術を核といたしまして、国際レベルの産学官共同研究の推進にも力を入れております。
新法人は、我が国の原子力政策とエネルギー政策に大きく貢献している本県の現状というものを十分認識していただきまして、原子力やエネルギー関連の施設と科学技術並びに人材を有効に活用して、本県の科学技術振興や産業振興に積極的に貢献していただくことがぜひとも必要である、このように考えております。
なお、今回の発言に当たりまして、「ふげん」と「もんじゅ」が立地しております敦賀市長から、お手元にありますように、「1 もんじゅについては、今後地域の状況に合った機敏な対応が必要であることから、大きな独自裁量権をもった組織とすること」「2 ふげん発電所は平成15年3月に運転を終了することから、その後の廃止措置の業務を活力あるものとするため、主要業務として位置付けること」「3 敦賀市地域に適している原研の業務は敦賀市に移管すること」「4 地域経済や雇用面への影響がないことはもとより、現在以上に充実するよう特に配慮すること」「5 原子力発電所の安全確保については、最優先問題であり、人材配置や予算配分に配慮すること」、以上の5点をいただいておりますので、申し伝えておきたいと思います。
最後に、原子力は我が国のエネルギーを支える基盤でございまして、今後とも原子力の研究開発を確実に推進していくためには、原子力の安全性、また核燃料サイクルについて国民の理解を得る仕組みをさらに強化する必要があると考えております。そのためにも、政府の行政改革の中にありまして、安全性の確保というものを最優先にしていただきまして、財政的な裏付けをもつ強い組織の新法人となるように、政府一体となった取組みをぜひとも行っていただきたいと考えております。これからの核燃料サイクルの推進に当たりまして、安全性の確保というものを前提にして取組みを進め、いやしくも予算が制約されるから安全性がおろそかになるということは絶対にないように、地元として強くお願いをいたしたいと考えております。
このような点を十分理解していただきまして、今後の検討に当たっていただきたいと考えておりまして、私の発言を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
坂田審議官 栗田知事、どうもありがとうございました。
それでは続きまして、橋本知事、お願い申し上げます。
橋本昌茨城県知事 茨城県知事の橋本でございます。
原子力二法人統合準備会議の皆様方には、私どもに意見を申し述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私は実は東海村の出身であります。小さいときには、ある意味では原子力は誇りに思うような存在でありました。ところが、今、県議会のたびに厳しい質問にさらされているわけでございまして、ずいぶんと状況が変わってしまったなと思っているわけですが、私どもの一番の願いというのは、この原子力二法人の統合に当たって、原子力というものについてマイナスイメージからプラスイメージのもてるものへどうやって転換していただくか、そのための最大限の努力、きっかけにしていただきたい、ということであります。
そのためには、やはり2つの大きな柱があるのではないかと思います。1つは、安全をしっかり確保するということ、もう1つは、原子力というものが夢のある、歓迎されるものになっていくこと、これが大切ではないかなと思っております。
先ほど来いろいろなお話がございました。二法人統合によって間違いなく効率化というものが図られれば、財政的メリットというものがかなり出てくると思います。それを財政が厳しいからというので、そちらに回してしまうというのでは、たぶんJCOの事故の二の舞いをまた踏むことになってくるのではないかと思っております。JCO事故はあらゆる面で電力料金を安く安くということが遠因になっているわけでございまして、同じことをやったのでは大変なことになる、ということをまずご認識いただいて、せっかく効率化が図られたということであれば、せめてその半分くらいは安全とか、研究面の推進にさらに投下する、という形でやっていただくことが必要ではないかと思っております。
一番最初の「安全管理体制の確立」というところに書いてございますけれども、まず安全体制について、一日も早く統一的かつ一元的な体制をつくり出していただくことが必要だろうと思っております。これがバラバラのままでいったのでは意味がなくなりますから、それを一日も早く実現する。そしてまた、「より一層の安全確保を図るため、安全面への投資及び安全に係る研究を積極的に行うこと」ということでございます。
先ほど来ございましたように、原研にしても、サイクル機構にしてもプロジェクト中心とか言いますが、研究者指向の研究ということになっているわけでございます。原子炉の材質などの研究は大変進んでおりますけれども、片一方で、安全という面での研究というのはまだまださっぱり進んでいない現状にあるのではないかと思っております。そういった点で、これからぜひ防災面からの安全研究というものにもより一層力を入れていただけたらと思っております。
先ほど原子力安全・保安院のほうからは、原研の中立性ということで支援者としての立場がかなり強調されておりましたけれども、私どもは原研もサイクル機構も今度統合される法人も、支援者であると同時に原因者たるものとしてとらえているわけでございます。原研であっても間違いを起こさないということはないわけでありまして、これは十分に心していただきたいと思っております。
今回、原子力緊急時支援・研修支援センターというものが完成いたしました。これにつきましても、実はサイクル機構では最初は「自分の敷地内につくりたい」という話がありました。私どもは「サイクル機構が事故を起こしたら、どこに支援者が集まるのか。それは絶対に外につくれ」という申し入れを強硬にしまして、現在の位置にしていただいた経緯がございますけれども、やはり新しく統合される法人も、原因者たる可能性が多分にある、第三者ではないということで、安全面には十分に注意をしていただけたらと思っているところでございます。
今日の新聞に、総理がBSEに関連して「食品安全行政を消費者重視に立ったものに変えていかなくてはいかん」ということをおっしゃっておられました。原子力の世界でもそうでありまして、「何ミリシーベルトで、原子力の専門家から見れば、全然問題ありませんよ。レントゲンを撮るときの何百の1、何千分の1ですよ」と説明しても、一般の住民はそういったことではなかなか納得いたしません。そういった点についても十分にご配慮いただいた上での安全面への徹底した投資、安全性の確立というものをお願い申し上げたいと思っております。
それから次に「総合的な原子科学の研究開発の推進」ということでございますけれども、核融合という形で未来のエネルギーへの取り決めが進められておりまして、これは私どもとしても大いに歓迎をするところでございます。それ以外にも、発電オンリーではなくて、先ほど福井の栗田知事からもお話がございましたけれども、私どものつくばでの高エネルギー加速器研究開発機構、こういったところでも量子線治療などが行われております。バイオでもナノテクでも、あるいは今度、大強度陽子加速器というものを本県で建設していただいておりますけれども、こういった形で実用研究というものを一層充実していっていただいて、国民に身近なものにしていただけたら、と思っております。
昨日付けの「新いばらき」という新聞の一面トップに、大強度陽子加速器とITERを中心にした科学技術拠点づくりというのが大きく載っております。伊達先生に座長を引き受けていただきまして、サイエンスフロンティア地域ということで、この地域をこれからの科学技術の中心地域にできないかということで、いろいろ検討をしているところでございますけれども、こういったことを含め、特に財政が厳しいからということで、核融合などについての誘致もやめてしまうとかいうことのないように、そして、大強度陽子加速器につきましても予定どおり進めていただけたらと思っているところであります。
次に3番目は「人材育成機能の充実強化」ということでございます。先ほどもお話がございましたけれども、先ほどの原子力マイナスイメージということで、これから大学などでも原子力学科に進む人がますます少なくなってくる可能性が強いのではないかと思っております。現在でも大学で原子力と名のつく学部を設けているのは北大と近大くらいで、定員も合わせて100人くらいしかおりません。大学院のほうには若干もっと多くおりますけれども、こういった状況の中でより専門的な人材の育成を図りますためには、連携大学院制度を使うとか、私ども地元の茨城大学で大学院へ総合原子科学専攻課程をつくりたいとか、いろいろな動きがございますけれども、大学や産業界との連携による人材育成、原子力の最先端部分での研究開発、人材育成ということに一つは取り組んでいただきたいと思っております。
それからもう1つは、今、50を超える発電所があるわけでございますけれども、今申し上げたように、大学その他の教育機関の収容人数なども減ってきている中で、最高の技術者でなくて、現場で運転その他に当たる中堅技術者というものをしっかり確保していただく必要があるのではないかと思っております。
JCOのときもそうでございました。いくらフェールセーフにしておくといっても、この間のような高速道路を逆に走るような話が起きてしまっては安全は確保できないわけでございまして、そういった点につきましてもしっかりと教育ができるように、基礎を教えていけるように、ということをお願いしたいと思いますし、また、せっかく積み重なってきている安全性研究及び事故原因調査、こういったものについての成果というものをしっかり伝承、普及していっていただけたらと思っております。
その次も人材育成に関係するものでございまして、私ども県としても積極的に原子力行政について理解し、協力をしているところでございますけれども、これの根っ子には、世界の人口は50年後には60億から90億になってしまう。そのときにエネルギーはどうするのかとか、地球の温暖化をどうするのか、あるいは今でも酸性雨の影響が大陸方面からすごい舌状の形でSOX系統のものがきている。こういった現状を見ますと、日本だけが環境面とか、エネルギー面でいろいろ努力をしていっても、とても無理があるのではないか。90億になった人口を養うエネルギーというものは、化石燃料その他ではなかなか無理になってくる。そうすると、原子力というものが大変重要な役割を占めていくだろう。あるいはまた、原子力を使わないで化石燃料などを使っていった場合に、温暖化とか、あるいは酸性雨とか、そういった関係で地球が危機的な状況に瀕するだろう。どちらが大変かという点でいえば、私どもとしては原子力のほうがまだ……。例えば、今度の大強度陽子加速器により核種の変換ということにも取り組んでいただけるそうでありますけれども、そういったことをやっていただければ、解決可能な、といいますか、努力すればまだまだ解決できるかもしれない、そちらを選んだほうがいいのではないか、ということも考えられるところでございます。
そういった面から考えても原子力を進めていく必要があると思いますが、その場合に日本国内だけではだめでありまして、アジア、特に中国の影響その他が強く出てくるわけでございますので、そちらの方面に対する原子力の人材教育、こういったことについては今よりももっともっと進めていく必要があるのではないかと思っております。現在、国際原子力総合技術センターという形でいろいろとやっていただいておりますけれども、今回、支援・研修センターができたわけでございますので、こういった地域にこれまでの規模を拡充し、機能も充実するような形での原子力の人材育成拠点というものを設けていただけたら大変ありがたいと思っております。
その次の4番目は「放射性廃棄物処分対策の確立」でございますけれども、私どものところで放射性廃液というものを432m3保管しているわけでございます。これもなるべく早く固化体にしていかなくてはいけないわけでございますけれども、ガラス固化体の保管能力は420本しかなくて、現在、97本あるということになると、あと323本。片一方で、放射性廃液を432m3持っているわけでございますので、とても保管できない状況になってくるわけでありますし、あるいは全国の低レベル放射性固体廃棄物の約4割というものが県内の事業所において保管されているわけでございまして、こういったことについても処分体制というものを早期に確立していただきたいと思っております。
また、高経年化ということに伴いまして、これからいろいろな動きが出てくるだろうと思っております。全国的にも12商業炉、5研究炉がもう高経年炉の段階に入っているわけでございまして、そういったものの処理と一緒に、特に原研、サイクル機構が抱えております原子力施設の解体処分に関する費用、一説によりますと、1兆円を超すということもお聞きしているところでございまして、積立金、引当金がない状況の中でこういったことについてしっかりやっていくためにどうすればいいのか。大変お金がかかるのは現実でございますけれども、手を抜いてもらってはこれこそ大変なことになるわけでございますので、こういった点についてもしっかりとご配慮をいただけたらと思っております。
最後は、若干我田引水になるかもしれませんけれども、今度二法人が統合した場合には、法人の本社というものはできるだけ研究施設が近接しているということが必要ではないかと思っております。議会その他でも強くこういった声があるところでございまして、もう既にサイクル開発機構の本社については立地をしていただいているわけであります。柏にあることについては意味は全くないと思いますので、できるだけ安全性を確保し、地元との信頼関係を築くためにも、本県の東海から大洗にかけた地域に本社設置をしていただけたらと思っているところでございます。そういったことがいろいろな意味で現地の住民の信頼を勝ち得る大きな方策にもなるのかなと考えているところでございます。
以上です。
坂田審議官 ありがとうございました。
両知事から地元の立場でご発言を賜りましたが、非常に幅広くご指摘、ご注文があったと思います。
それではこれからディスカッションに入ります。時間は十数分しかございませんが、ぜひこの機会に「これは」ということでご議論賜りたいと思います。お願いいたします。
薬師寺泰蔵委員 いろいろお話を伺っていて、素人の意見としてお聞き願えればありがたいんですけれども、動燃の事故とか、そういうようなことで、二法人に統合されても今の状況では予算とか、そういう点ではたぶんじり貧になってくる。つまり、予算を上げるというような政治的なロジックをつくり上げるには非常に薄い。そうすると、いくらがんばってもだんだんじり貧になってくる。そういうような現実の中で、日本の原子力のエネルギーシステムというのをどういうふうにするか、というロジックをきちっと考えなければいけないと思うんです。
一つは、お2人の知事も言われましたように、日本のエネルギー問題というものがやはり原子力というようなもので支えなければいけない、という説明能力をきちんと明確に国民に対してもつけていかなければいけない。
それから技術という点では、西澤先生もおっしゃったように、日本は強い面があるわけですけれども、原子力の分野についてどういう形で日本の科学技術というものを伸ばしていくか。大学における原子力工学科の問題は、秋山先生とか、いろいろ友人に聞いていると、やはり内部進学の率が非常に悪くなってくる。そういう問題をどこかで逆転ホームランという形を科学技術の点で考えなければいけない。そうすると、安全技術という問題に関しても、論文という点ではやはりまだ総合的な安全の問題はできないかわからないんですけれども、そういうところに若い人たちを振り向けていって、なおかつ、原子力そのものに対する科学技術と安全技術に対する魅力をつくっていかなければいけない。
ですから、エネルギー問題と人材を含めた科学技術の問題を原子力というのはどういうふうに国民に対して説明ができるか。それができなければ、やはりじり貧になってくる。それで、総体的に日本のエネルギー問題というのは何も解決できない、ということになると思うんです。
それから国際的な展開ということを……。知事のお話の中にもございましたけれども、アジアの国々に対して日本はどういう貢献ができるのか。単なるエネルギーそのものに対する貢献というよりも、人材の教育とか、そういう開かれた前向きの方策を考えない限り、どうしてもだんだんしぼんでいく。
聞いていて一番気になりますのは、原子力の専門家が議論をしているので、やはりテクニカルな話が非常に多くて、それを国民にどうやって説明するかというのはまた違うロジックなのか。お医者さんと患者の話と同じような話でございまして、やはり国民が支えない限りお金もつかないし、本社機能も茨城県にいかない。そういうようなことで、今までの内部だけのロジックで考えずに、もっと広いロジックをつくらなければいけないな、提言は全然ないんですけれども、そういう印象を受けました。
住田健二委員 最初に、両県知事がお見えになっていますので、私はたまたま前職で両方にはずいぶんお世話になりましたので、ありがとうございました。深いご理解のおかげで地元との関係を何とかうまく保ちながらやっていけているので、まず最初にこのことをこの場所を借りてお礼を申し上げたいと思うんですけれども、それだけに余計今日のお話というのはいろいろ……。こちらに並んでいらっしゃる3人の方というのはご同業でございますから、おっしゃることは一つ一つ胸に思い当たることがあって、「ああ、あれを言いたいんだな」と具体的なイメージもわかるんです。また逆に地元のほうからのお話も伺ったんですが、一つ一つにこだわっていますと何も申し上げられませんので、一つだけちょっと……。
今、たまたま私の言いたいことの半分くらいは薬師寺先生がおっしゃってくださったと思うんですけれども、ちょっと観点を変えたいな、という気がするんです。というのは、あまりにも2つの法人の統合ということにこだわり過ぎますと……。さっき隣の住田さんが「スリム化しなければいけない」とおっしゃいました。確かに理屈はそうなんですけれども、原子力をやっている人間の立場で、勝手な論理からかもしれませんけれども、この統合の機会にスリム化を強制されて、肝心なところ(安全性が特にそうなんですけれども)が抜けやしないか、ということが一番心配なんです。そういうことを考えてみますと、立場を変えて原子力の位置づけを考えたときに、「日本にとっての原子力というのはやはり非常に重要である」ということをもう一回繰り返して申し上げたい。これが一つです。これはたぶん皆さんわかっていらっしゃると思うんです。
もう1つは、日本が世界において原子力でどういうことを期待されているか、ということをひとつぜひ考えていただきたい。というのは、今までは先進国がございまして、そこの国がやってくれたことをある程度吸収すればよかった。アメリカの経験を吸収すればよかった。ところが、日本の軽水炉はアメリカでやっている経験の年数に追いついてしまって、台数は少ないにしても、例えば経年化の問題というのは、アメリカで起こらなかったものがどんどん出てくるわけです。日本が本当に技術のトップに立たなければやれないので、どこかのものを買ってくるという基本姿勢はだめだ、ということははっきりしたわけですから、二法人の統合のときにも、その立場になった新しい法人はどういう姿であるべきか、という議論をしていただきたい。これをぜひお願いしたいと思うんです。2つの組織のあそこが要るとか、要らないという議論は当然あると思うんですけれども、まず新しい原子力推進開発をやる、しかも、安全についての責任をもてるような国家的な大きな研究組織は一体いかにあるべきか、という議論をぜひ……。そこからスタートしていただきたい。これが私のお願いでございます。
原子力委員会あるいは原子力安全委員会からぜひ先に意見を言ってほしい、ということをこだわっているのはその点でございまして、個々の問題につきましては先生方のご指摘、今日のいろいろなお話の中でいろいろなことを考えてくださっているのは本当によくわかるんですが、まだ大前提のところをぜひ……。原子力委員会の案がもう出たのか、数日中に出るのか、ぜひそれを伺わせていただきたい。その立場でもう一度皆様の今日の議論を見ていただいて、ということを私は真っ先にお願いいたしたいと思いますので、そのことをまずお断りしたいと思うんです。
それから、そのときの一つの特殊な条件として、先ほどご指摘のございましたアジアでの日本の寄与は何ができるか。いろいろな形で問題がありますけれども、やはり原子力というのはアジアに対して寄与のできることの非常に大きなものの一つであります。しかも、日本の原子力の特徴というのは非軍事利用であります。平和利用であるが故に、再処理の問題その他で、よその国が軍事利用によって培ってきた技術を乗り越えなければいけない、あるいはそれとは離れたところでやらなければいけないということで、いろいろご苦労なさっているわけですけれども、逆にそこで生かされた日本の技術というのはいろいろなところで生きてきます。平和利用中心にやってきたということで、ある意味では弱点であったんですけれども、今度は長所になりますから、そういうものを前に押し立ててアジアでがんばりたい。アジアだけではなくて、世界の中での原子力リーディング・カンパニー、原子力を中心にした日本の立国というのはあり得ると思います。そういう大きな立場でのご議論をお願いしたいと思います。
秋元委員 住田(健二)先生の「原子力委員会、原子力安全委員会の基本的立場を踏まえた上でやるべきだ」という意見に私も大賛成でございます。
それとはちょっと次元が違うかもしれないんですけれども、私、今日のお話を聞いていて、少し気になってきたことがあります。
一つは新法人における労使関係の問題ですけれども、核燃料サイクルの労使関係と原研の労使関係がかなり違います。先ほどの東先生のお話のように、プロジェクトと個別研究という各々の持っている使命から見れば、今までそれだけの歴史的意味はあったと思うんですけれども、各燃料サイクル開発機構の場合にはほとんど組織率100%の組合がある、というふうに理解しておりますし、労使との間の対話というのもかなり透明にいろいろとやっていて、プロジェクトを進めていく上での要件はかなり満たしているのではないか、というふうに外から見えるわけですが、原研の場合にはおそらく組織率は15%くらいだと思います。ほとんどの方は労使関係にはあまり興味なしにいろいろと研究開発をやっておられる。それはそれで一つのあり方だと思うんですけれども、これから一つの大きな組織になって、各知事がおっしゃっておられますように、その中で統一性、安全性というようなものを踏まえて仕事をやっていくということになりますと、これをどうするのか。ただ2つを合わせて、コチョッとやればいい、そういう簡単な問題ではないと思います。
特に昔、動燃ができますときに、プロジェクト的な仕事を進めていく上では今までの原研の組織ではちょっと難しい、というようなことが一つの理由になって、大プロジェクトが動燃のほうに移ったというような経緯もある、というふうに思いますし、そのあたりの問題が十分議論されないままでこの話が進みますと、やはり将来にかなり問題を残す可能性もある、という気もいたしますから、もし必要であれば、そういう関係の方々の意見もこの場でも聞かせていただくというようなこともして、議論を尽くしたらいかがか、というふうに提案をさせていただきたい、というふうに思います。
坂田審議官 ご提案については事務局のほうでも考えさせていただきたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。
西澤潤一委員 しつこいですが、ぜひ思い出していただきたいのは、昭和40年くらいでございましょうか、福島原発の第一所長の鈴木ノリオさんが第二のフセヤさんと一緒にアメリカに安全運転に関する講習会の講師として行ったようなことがあるわけです。これは私が専門家ではない立場から聞いた話でございますが、既にその時点では日本はアメリカに講師を派遣する程度までの実績を持っていた、ということをもういっぺん我々はぜひ思い返してみたいと思うわけであります。ばかに落ち込んでいますが、そんなもんじゃないんだ、ということです。
それから、その頃、某大学の教授と話をしておりましたら、「自分たちは科学技術としての原子力なんかやってない。自分たちがやっているのは文化としての原子力である」と言われて、私も舌を巻いた覚えがございますが、実はついこの間、かなり責任のある方から同じ言葉を聞いております。それでかえって先ほどああいうことを申し上げたのでございますが、国民に安定したエネルギーを供給するという大命題を責任をもって解決する、ということをこの2つの機構の統合に当たりましてもぜひしっかり押さえていただきたい。
私は素人でございまして、具体的なことは十分勉強しておりませんので、間違いを申し上げるといけないので、申し上げませんが、根本的にはそこではないか、ということをさっき申し上げわけであります。
秋山守委員 前々回にも申し上げたかもしれませんが、私の頭の中を整理するという意味で、キーワードで申し上げますと、まず両法人の統合を含めて、原子力の今後のあり方を考えていくための第一は、使命をどこに見定めるか、ということであろうかと思います。両法人のお仕事の中身、今後の進め方につきましては、ご説明によりまして、私も含めて、認識が共有できつつある、という現状であろうかと思います。
その中でやはり一つ特になお念を押して申し上げたいのは、私の立場も含めてでございますが、両法人の日常の業務等の着実な推進と同時に、次の世代につながる、あるいは次の世代をリードする技術の生産に関わる基盤をここで改めて強化していただきたい、という点でございます。
2番目の論点は、バウンダリー・コンディションといいましょうか、両法人のお仕事の直接的な使命はさることながら、関連の産業界、それから国際的な活動等々があると思いますので、そのあたりの境界をどのようにマネージしていくか、ということがあろうかと思います。産業界のご意向のご説明も前回いただいたわけでございまして、発電事業、燃料サイクル事業それぞれの組織形態、中身の仕事は進んでいるわけでございますが、両法人の統合と関連いたしまして、例えば燃料サイクル事業でございますと、関連の産業界と統合された組織とのつなぎ目のところをどのように発展的に進めていくか、というあたりまで議論を少し深めていければと思っております。
なお詳しいこと、より正確なことにつきましては、少し整理をしたものを後ほどまたご提出したいと思います。
それから第3点は、くどいようでございますけれども、このような議論の背景をやはりきちんと認識しておくことが私自身としても必要であろうかと思います。それは一つは国際貢献。定性的には"国際貢献かくあるべし"という議論はキーワードは出ておりますけれども、もう少し具体的にどこに焦点を置いて、我々の限られたリソースでもってどのように有効に効率的に国際貢献の地位を占めていくか、というあたりのことをきちんと議論する必要があるのではないか。これは私に対する自戒も含めてでございますが、そのような印象でございます。
以上です。
坂田審議官 議論が尽きないかもしれませんが、そろそろ時間が押し迫っておりますので、本日の意見をお伺いするのと、それに基づく議論はこのへんにとどめさせていただきたいと思います。
後ほど政務官と副大臣から一言ずつご発言を賜りますけれども、その前に若干事務的なことだけお知らせ申し上げたいと思います。
かねて各委員の皆様方に現場をご視察いただく旨、調整させていただいておりましたが、大体日程が決まりましたので、ここでご報告いたします。
秋元委員と両住田委員と田中委員4名は4月16日にご視察いただく、ということでございます。それから熊谷委員は4月17日、翌日でございます。小林委員は5月16日でございます。それから木村委員と西澤委員は5月22日にご視察いただく、ということでございます。私どもで手配をいろいろいたしますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
それから次回の会合は今月26日、同じ時間帯にこの場所でやりたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
それでは、今日の会合を踏まえまして、最初に加納政務官から一言お願い申し上げたいと思います。
加納大臣政務官 大臣政務官、加納時男でございます。
今日も先生方には大変有益なお話をありがとうございました。3つほど感じましたことを感想として報告させていただきたいと思います。
第1に、終わりの段階で秋山先生、西澤先生からご指摘がございましたように、ミッションの重要性、ミッションの明確化というのが今日のキーワードの1つ目だったと思います。従来あるいは現状の延長線上で2つの組織を一緒にして何ができるか、という発想ではなく、何をなすべきか、という目標を明確にし、そのために人、物、組織をどのようにマネージメントしていくのか、というふうに考えるべきではないだろうか。もっと言い換えれば、現状から出発して、今、抱えている問題をどうするのか、あるいは既に発生している問題の後始末をどうするのか、という発想ではじり貧になっていくのではないか、というご指摘がありました。そしてまた、将来の夢を描く意味で、原子力の位置づけ、その持っている可能性についてまず議論をしっかり議論すべきではないか。ただ二法人をどう統合するかではなくて、原子力をどう考えるのか、どういう可能性を原子力に託すのか。
それからもう1つは、今までは、外国に追いつく、ということが原子力のいろいろな研究開発でのやり方だったわけですけれども、既に日本はトップランナーになっている、という認識の下に、これから原子力によって未来をどう開くのか、という発想に立つべきではないか。そのためにはどのようなマネージメントが必要なのか、という議論があったかと思います。
そういう段階で、今まで不必要な棲み分けがあったとすれば、それは解消することができるチャンスであるし、基礎と開発が分断されていたとするならば、これを一貫化する契機ではないか、というご指摘がありました。
第2のご指摘は、第1が夢だったとしますと、第2は足元を固めるということかと思います。足元という意味では、幾つかのご提言がございました。1つは、安全という言葉でくくれると思いますが、原子力全般についての安全研究ということと同時に、自らがフロンティア開発あるいは基礎研究をやるわけですが、その研究についての自らの安全管理、つまり、人さまのための安全研究と自らのための安全管理の両方が大事である。特に自らの安全管理が仮におろそかになり、フロンティア開発にだけ神経がいっていると、案外初歩的なミスから大きなつまづきとなり、これが実はフロンティア開発に大変なブレーキをかけ、国民の原子力あるいは核燃料サイクル、こういったものの利用に関する大変な不信を招いているのではないか、という厳しいお言葉もあったかと思います。そういう意味では、自らの安全管理ということは今日非常に強調されたことかと思っております。
また、足元という意味では、国際協力に当たって、もちろん今までやってきたようなお付き合いということもあるとは思いますが、単なるお付き合いとか、受け身ではなく、まず足元、原子力技術の分野で日本は何が強みなのか、強みをしっかりと見極め、育てていくことが大事であり、それに基づいて、テーマを設定したり、あるいは国際協力のルールをメーキングするルールメーカーにもなっていこう、というご指摘があったかと思っております。
これとの関係で、ITERについても、意義は非常に大きいけれども、これが国内の原子力研究開発の足かせにならないように、そういう意味でもITERの研究開発費、協力費というものは別に考えるべきではないか。それが原子力の研究開発の足を引っ張ってはいけない、というご意見がありました。
また、前を向く話だけではなく、デコミあるいは高レベル廃棄物あるいはRIの廃棄物、いろいろなバックエンドについての配慮も大事である、さらには足元という点では、地元をしっかり重視し共生策を強化せよ、という知事さんからのお話もございました。また、討論の中で、信頼に満ちた労使関係が重要である、ということもあったかと思います。
通じて申し上げられることは、一般的に原子力のサイクルについての社会とのギャップがございまして、やはり足元をしっかり固めないと、いわば専門家の常識と社会の認識の間に深刻なギャップが生じてきている、というご指摘もあったかと思います。
最後になりますけれども、人材の問題が今日のお話の中でだいぶ出てまいったかと思っております。これも、内部での研究開発の人材の育成ということと同時に、外部、新しい研究機関の外にある大学とか、企業との間の研究者の育成、協力といったことも重要であります。それから産官学の協力、つまり、内部での育成と同時に、外部の専門能力、専門家の見極め、目利き能力の重要性ということも強調されたかと思っております。
以上3点ほど感じたことを整理させていただきました。
坂田審議官 それでは副大臣、お願いいたします。
青山副大臣 皆様には本当に貴重なご意見と活発なご議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
本日は、原子力安全関係の先生方や立地自治体の両知事から新法人が原子力安全の分野で果たしていくべき役割、それから新法人と立地地元との関係について幅広い観点から貴重なご意見をいただきました。誠にありがとうございます。
また、その後の議論におきまして、皆様から新法人における安全確保対策と安全研究推進への重要性について、また新法人における研究開発マネージメントのあり方、エネルギー問題と原子力、人材育成問題にどう対処するべきか、世界あるいはアジアの原子力に対して新法人はどんな役割を果たすべきか、新法人の労使問題、あるいはエネルギーと文化、また新法人の果たすべき使命について、誠に示唆に富むご意見をいただきました。ありがとうございます。
次回は今、4月26日を予定しておりますが、欧米の在日大使館の原子力担当者に来ていただいて、さらには国際機関や国際関係の有識者の方々にお越しいただいて、国際的な視点から新法人に求められる機能、役割についてご議論をいただく予定になっております。今後、別途原子力二法人の統合について検討を既に行っております原子力委員会、原子力安全委員会の議論の動向も踏まえながら、さらに議論を深めてまいりたいと考えておりますので、皆様におかれましてはどうぞ引き続きよろしくご協力を賜りますようお願いを申し上げて、閉会のあいさつとさせていただきます。皆様、ありがとうございました。
坂田審議官 本日はどうもありがとうございました。