令和7年9月5日(金曜日)15時00分~17時00分
文部科学省16階科学技術・学術政策研究所会議室及びWeb会議形式
大野座長、伊藤委員、上田委員、川合委員、染谷委員、高橋委員、千葉委員、仲委員、宮園委員、安田委員
柿田文部科学審議官、藤吉サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、西條科学技術・学術政策局長、福井大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、井上科学技術・学術総括官、馬場参事官(研究環境担当)、淵上研究振興局長、坂下大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、清浦大臣官房審議官(研究開発局担当)、松浦大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術学術政策連携担当)、赤池科学技術・学術政策研究所総務研究官、廣田大臣官房文教施設企画・防災部計画課長、石川研究開発戦略課長 ほか関係官
小安文部科学大臣科学技術顧問、永澤内閣府科学技術・イノベーション推進事務局参事官(総合戦略担当)、武田経済産業省イノベーション・環境局イノベーション政策課長
【石川研究開発戦略課長】 定刻になりましたので、ただいまより、「科学の再興」に関する有識者会議を開催させていただきたいと思います。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中、また本日天候の悪い中、御出席いただき誠にありがとうございます。
冒頭、事務局の私、科学技術・学術政策局の研究開発戦略課の石川が進行させていただきたいと思います。
本日の有識者会議でございますが、対面とオンラインの併用で開催しております。オンラインで参加いただいております先生方におかれましては、マイクは発言時のみオンにしていただければと思います。
本日、本会議は公開ということで、冒頭から傍聴の方々がいらっしゃるという点については、御了承いただければと思います。
それでは、まず今回が初回になりますので、初めに委員の皆様のお名前を読み上げさせていただきます。委員の皆様におかれましては簡単に一言、御挨拶いただければと思います。議事次第の3枚目に名簿もございますので、併せて御確認いただければと思います。
それでは、まずオンラインですけれども、伊藤委員、よろしくお願いいたします。
【伊藤委員】 よろしくお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 続きまして、上田委員でございます。
【上田委員】 上田です。よろしくお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 続きまして、大野委員でございます。
【大野委員】 大野です。よろしくお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 大野委員には、事前に文部科学省から座長をお願いしておりますので、後ほど進行を交代させていただければと思います。
続きまして、川合委員でございます。
【川合委員】 川合です。どうぞよろしくお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 続きまして、染谷委員でございます。
【染谷委員】 オンラインで参加させていただいております染谷です。よろしくお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 続きまして、高橋委員でございます。
【高橋委員】 オンラインで参加させていただきます高橋真木子と申します。よろしくお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 続きまして、千葉委員でございます。
【千葉委員】 千葉でございます。よろしくお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 続きまして、仲委員でございます。
【仲委員】 仲でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 続きまして、宮園委員でございます。
【宮園委員】 宮園でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 続きまして、安田委員でございます。
【安田委員】 よろしくお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 委員は以上でございますが、本日、オブザーバーとして、文部科学大臣科学技術顧問をしていただいております小安先生にも御参加いただいております。
【小安顧問】 小安です。よろしくお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 また、内閣府、経済産業省から、永澤参事官と武田課長にも御参加いただいております。よろしくお願いいたします。
文部科学省からは、柿田文部科学審議官はじめ、各幹部等が参加しております。それでは冒頭、文部科学審議官の柿田より御挨拶いただければと思います。
【柿田文部科学審議官】 文部科学審議官の柿田でございます。一言御挨拶させていただきます。
本日は大変お忙しい中、先生方に集まっていただきありがとうございます。CSTIや科学技術・学術審議会などいろいろな場で既に議論が進んでいる中、この会議もまた科学技術・イノベーション基本計画の議論をということになるわけでございますけれども、ぜひよろしくお願いいたします。
私は先月の人事異動で今のポストにつきましたが、その前は内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局におりまして、宮園委員の下で基本計画の議論にも関わっておりました。この後、説明があると思いますけれども、CSTIの7月25日の基本計画専門調査会の論点整理において「科学の再興」ということで、とりわけ基礎研究力を抜本的に強化するという方向性が示されています。基本計画の柱立ての中に大きく入れられるものと受け止めております。基礎研究の重要性というのは、言葉としては毎回の基本計画に入っているわけですけれども、このような打ち出しで1つの項目を設けているというのは、多分初めてではないかと思います。それだけに、基礎研究、研究力に対する危機感の現れというものがあると考えております。
そうした状況において、では具体的にどういう対策、方策を盛り込んでいくのかということが極めて重要でありまして、そのことについては、もちろんCSTIで御議論いただくわけですけれども、大学や幾つかの研究開発法人も所管している文部科学省として、政府の中で一番と言えるような責任感を持って、この議論を進め、中身を詰めていき、そしてCSTIの議論に貢献していくということが必要ではないかと思っております。
そういう問題意識で、「科学の再興」に関する有識者会議を立ち上げさせていただきました。期間が極めて短くて、今月、来月の2か月でまとめるということであります。時間が限られておりますが、出来るだけ具体策を示していただくことがこの会議に期待するものであると私自身は思っております。例えば、この会議では3つ~5つの本当に大事なやるべきことを明確に打ち出し、それを受ける形で、全体については、内閣府にまとめていただければいいのかなと思っております。ぜひ先生方には、とるべき政策の理念や方向性と具体的な施策について御指導いただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
【石川研究開発戦略課長】 ありがとうございます。
それでは次に、配付資料の確認をいたします。資料につきましては、議事次第にありまとおり、議題ごとに資料1-1、1-2、資料2、資料3-1、3-2、資料4を配付しております。また、参考資料として参考資料1から3を配付させていただいております。もし欠落等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
それでは、これ以降の進行につきましては、大野座長にお願いできればと思います。大野座長、よろしくお願いいたします。
【大野座長】 それでは、議題の1つ目に入りますが、委員の皆様、オンサイト、オンラインで御参加いただきまして、誠にありがとうございます。「科学の再興」は極めて重要な課題ですので、皆様と共にきちんとまとめていきたいと思います。
議題の1つ目は、有識者会議の運営についてです。事務局より、まず御説明をお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 資料1-1、1-2を御覧いただければと思います。
資料1-1につきましては、「科学の再興」に関する有識者会議の設置要綱ということで、この会議の目的などを記載させていただいております。
資料1-2につきましては、この有識者会議の運営要領(案)を作らせていただいております。こちらにつきまして、簡単ではございますけれども、少し中身について説明させていただきます。
第1条では座長につきまして、有識者会議の座長を置きまして、不在の場合には、あらかじめ指名する者がその職務を代理するということを定めております。
第2条は、会議の公開についてです。この有識者会議は原則公開ということで、資料や議事録につきましても、文部科学省のホームページで公開させていただきたいと思います。ただし、公開するに当たって公平かつ中立な審議に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合などについては、非公開にすることもできるとしております。
第3条も、今申し上げました通り、議事録も公開ということでやらせていただければと思います。
簡単ですけれども、資料1-1、1-2について、説明は以上でございます。
【大野座長】 ありがとうございます。
今の事務局の説明に対して何か御意見、御質問はございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、御提案いただいた方針で進めていただければと思います。
この運営要領に従って、私がやむを得ず不在となる際には座長の役割を務めていただく座長代理を決めさせていただきたいと思います。私としては、座長代理は宮園委員にお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【大野座長】 ありがとうございます。
それでは、座長代理は宮園委員ということで、この有識者会議を進めてまいりたいと思います。
それでは議題の2、「科学の再興」に関する有識者会議の進め方についてです。事務局より、再び御説明をお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 それでは、資料2を御覧いただければと思います。
この有識者会議の進め方について、先ほど冒頭、柿田文科審からも少しお話で触れていただきましたが、この有識者会議は、資料2にございますとおり、短期集中にはなりますけれども、9月・10月の2か月間で御議論を頂ければと思っております。CSTIの基本計画の議論にしっかり間に合うようにということで、短いスケジュールではございますけれども、ぜひ忌憚のない御意見を頂ければと思います。
第1回は本日でございまして、「科学の再興」に関する有識者会議の進め方、基本計画のCSTIでの検討状況や、それを踏まえての「科学の再興」に関する論点について御議論いただければと思います。
第2回は個別の論点ということで、新興・融合研究への挑戦を促進する支援の在り方や、AI for Scienceによる科学の再興を御議論いただきたいと思っております。
第3回につきましても、個別の論点についての御議論と、提言(素案)を御議論いただければと思っております。第4回は10月下旬に提言(案)について御議論いただくということで、短い期間ではございますけれども御議論いただければと思います。
事務局からの説明は以上でございます。
【大野座長】 ありがとうございます。
何か皆様から御意見はございますでしょうか。短期集中、4回で、第7期に向けた提言にまとめるということでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
御異論がないようですので、御提案いただいた方針で進めていただければと思います。
それでは、これより議題3「第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けた総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の検討状況について」、及び議題4「『科学の再興』に関する論点について」に入りたいと思います。
まず、資料3-1、3-2に基づき、CSTIにおけるこれまでの議論を御説明いただき、続いて、それを踏まえた「科学の再興」に関する論点について、資料4に基づき事務局より説明をお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 それでは、また私から説明をさせていただきたいと思います。
まず、資料3-1、3-2でございますけれども、資料3-1につきましては、CSTIの基本計画専門調査会における検討状況です。昨年12月から今年の7月までで、計8回御議論いただいており、少し太字にさせていただいているところは、その中で文部科学省からも発表した議題でございます。
資料3-2にございますように、第8回の7月25日に、中間取りまとめに向けた論点整理案(改訂版)が報告されております。内閣府の事務局でまとめております、中間取りまとめに向けた論点整理案の5ページ、「第7期基本計画の方向性に関する論点案マル1」において、「科学の再興・技術・イノベーション力の強化」ということで、「科学の再興」が提示されております。この中で、基礎研究力の回復が最重要課題であるとされており、基礎研究力を抜本的に強化し、「科学の再興」を目指すということが示されているところです。まさに、こうした内閣府での議論も受けまして、この有識者会議で「科学の再興」に向けて御議論いただきたいと思っております。
資料4で、「科学の再興」に関する論点ということで、少し事務局で論点の整理をさせていただいております。本日は第1回ということもございまして、各論というよりは、まず基本的な考え方や認識のところで、ぜひ先生方に御意見を頂きたいと思っております。
まず、資料4をめくっていただいて2ページ目でございますけれども、この有識者会議の背景・目的については、今申し上げたように、中間取りまとめに向けた論点整理案においても、主要な論点の一つとして「科学の再興」が挙げられている中で、この有識者会議でしっかり具体的な対応策などを御議論・提言いただきたいということで書いてございます。参考に、「科学の再興」ということで、そもそも科学とはどういうことかという点について、「広辞苑」ではこう書いてありますとか、令和2年の科学技術・イノベーション基本法改正の際に、今までは科学技術について「人文科学のみに関わる科学技術」が除かれておりましたが、それが人文科学も含めて科学技術と捉えることになったということも、参考までに載せております。
3ページですが、本日御議論いただきたいところの一つであり、「科学の再興」ということで、まさに科学の活動の中心とも言えるような基礎研究・学術研究が、今日的に見た際に、改めて重要であると考えているところでございますが、今なぜ基礎研究が重要なのかという点を、改めて文章にしながら、皆様の認識を伺えれば、また御意見いただければと思っております。
まず事務局として、3ページで大きく2つの観点を記載させていただいております。「我が国の国力や地球規模課題等の観点」からということで、1つ目の丸の2行目、3行目辺りにあります通り、国の存立基盤としての産業や、エネルギー、食糧を含めた我が国の安全保障等に重要となる先端技術における優位性の獲得、我が国の自律性、不可欠性の確保といった観点や、2つ目の丸、予期できない自然災害への対応や気候変動対策、また、今、日本が直面しております、労働人口が減少している中で持続可能な社会を構築していくという観点や、経済産業省でも御議論、取りまとめがありましたように、今、科学とビジネスが近接化していると言われているような中で、基礎研究段階からの投資が重要であるということを記載させていただいております。
もう一つ、やはり基礎研究ということで、「多様性の観点」ということで記載させていただいております。現在のような、先の見えない不確実性が高まっている時代だからこそ、やはり、どのような事態が起きてもしなやかに対応できるようにするためにも、すそ野の広い研究の多様性が重要ではないか、そういった観点を記載させていただいております。
上記のような観点について、どちらの観点でも、その根本には、優秀な研究者の知的好奇心に基づく独創的な研究によって得られる新たな「知」が、豊富に生み出され続けることが重要ではないかということを併せて書かせていただいております。
続きまして4ページ目でございますけれども、そうした我が国にとって重要である研究力について、ここでは指標から見える客観的なデータということで、研究力がどのような状況にあるか、主なものを記載させていただいております。論文数やイノベーションに関わるものとして、既にいろいろなところでも発表されているようなものではございますけれども、Top10%論文数が現在13位であるということなどを、客観的な数字として記載させていただいております。
続きまして、5ページでございますけれども、この部分もぜひ委員の先生方と認識を整理・共有できればと思っております。「科学の再興」ということで、ではどういう状況になると「科学の再興」が実現できている、達成できていると言えるのかということで、目指すべき「再興」の姿をどのように捉えるかを、この5ページとして作っております。
最初の丸にございますように、Nature誌においても、「日本の研究はもはやワールドクラスではない」というような記事が出るといったことが最近ございます。我が国の研究力は相対的に低下しており、研究分野において我が国の国際的なプレゼンスが低下しているということは、否定できないのではないかということを、1つ目の丸で記載させていただいております。
その上で2つ目の丸ですけれども、時代の変化とともに「科学」の重要性が格段に高まっている状況において、2行目の後半からですけれども、単に「過去」に戻るのではなく、今日的な時代背景や将来を見通した上で、新たな「知」を豊富に生み出し続けることができる人や資金の好循環とそれを持続的に可能とする環境を確立することで、相対的に失いつつある我が国の科学力、基礎研究力の国際的な優位性を取り戻すということが、「科学の再興」なのではないかということで記載させていただいております。
先ほど申し上げたTop10%論文などでも、2000年前後のところで、ピークである第4位という時期がございましたけれども、当時と時代背景が違う中で、単にその頃の研究環境に戻ればいいということではなくて、現在の本質的な意味の中で、時代背景、国際的な環境を踏まえた中で、どのような形で、もう一度改めて日本の研究力が国際的な優位性を取り戻すのか、ということをしっかり御議論いただけるとよろしいのではないかということで記載しております。
そして3つ目の丸については、我が国の経済的、社会的な国際的プレゼンスを取り戻すということに向けて、「科学の再興」を図っていくということではないかということで記載させていただいております。
下の四角ですけれども、こうした環境を実現するための主要な要素(条件)ということで、幾つか例示させていただいております。一番上から申し上げますと、優秀な研究者がまず存在すること、そしてそういった優秀な研究者が研究するための時間が確保されていることや、研究環境が整っていること、特に今後はAIの活用というものが鍵になってくるだろうと思っております。また、新興・融合領域など、挑戦的な研究へのチャレンジが可能であることや、国際ネットワークに参画できていること、こういったことが重要になってくるのではないかということで記載しております。また、最後ですが、これらが持続的に発展するガバナンスと財源を大学等の研究機関が備えていることが大事になってくるのではないかということで、ここに整理させていただいております。
その上で最後のページでございますけれども、今申し上げたような人材に関する課題など、現状が実際どういう状況かということを振り返ってみますと、若手研究者の活躍の場としての魅力が不足しているのではないかということや、研究時間が減少しているというデータもございます。また、AI技術・データの利活用環境やデジタル化等の遅れ、研究開発基盤の国際競争力の低下、挑戦的な研究への参画不足、国際頭脳循環からの脱落、また大学等の研究機関のガバナンスに関してはまさに経営戦略の構築・実践がまだ道半ばであろうとして、現状と課題を挙げております。
その課題を踏まえた対応の方向性ということで、マル1からマル6まで挙げさせていただいております。マル1 優秀な人材の継続的な輩出や、マル2 AI for Scienceによる科学研究の革新、マル3 研究開発基盤の刷新・利活用の推進、マル4 挑戦的な研究の活性化のための支援強化、マル5 国際プレゼンスの強化、マル6 基盤的経費の確保や大学改革の具体的推進、こういったことが「科学の再興」に向けて、現状の課題を踏まえて対応していくべき方向性なのではないかということで記載させていただいております。
本日は冒頭申し上げましたように、今なぜ基礎研究が大事かというところや、「科学の再興」として実際どのようなことを目指して、どのような姿になると「科学が再興」されたと言えるのか、また、それを踏まえて、ではどういった課題に対応していくべきものなのか、対応する方向はどうすべきかなど、まずはこうした基本的なところについて先生方の御意見を頂いて、認識を合わせていければと思っております。
事務局からの説明は以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
論点を出そうということで、今、石川課長からお話があって、足りないところ、あるいは考え方などを今日は出し切る、あるいは、足りなければメールで石川課長に言っていただいて、次回からは具体的なところに入っていくという建て付けでございます。
それでは、会場で参加の皆様におかれましては、名札を立てていただいて発言の意思を示していただき、オンラインの方々はフラグを立てていただくということで、どなたからでも結構ですので御発言いただければと思います。
アイスブレークとしては、一番遠くから御参加いただいている伊藤委員、いかがでしょうか。
【伊藤委員】 氷を割るということで、では、最初に発言させていただきます。
先ほどの石川課長の説明のとおり、「科学の再興」というところの意味なんですよね。何を目指すのかということを、私は一番、今回、「再興」という言葉を聞いた時点で常に、「再興」とは一体何だろう、何を目指すのかということを具体的にしなければいけないだろうと思っていたところであります。
例えば半導体について、80年代に我が国が非常に強かった頃、もともとのシリコンの半導体等に関する様々な発明は、アメリカを中心にされたではないか、日本はそれをただ単に応用して、基礎的な発明や発見をしないまま、ただ乗りしているではないかというようなことを言われたときがありました。そのときに随分、日本は反省して、科学のもっと基礎的なところの発見、そして発明にも寄与しようということで、特に第1期基本計画ができた1990年後半等には、大きな基礎科学の振興のお金もつき、それによって例えば私や、染谷委員ぐらいまでは、若いときに相当、研究費という意味では恩恵を被ったわけでありますけれども、それが1995年から2005年ぐらいまで続いた後は、なかなか基礎研究へのお金が切れて、もっと出口が必要ではないかと。そのときは恐らく科学と出口の距離が遠かったということで、出口が必要ではないかという大きな反省が何となく世論としてあって、また応用のほう、出口のほう、社会実装のほうに進んでいった印象があるのですけれども、その結果として、基礎研究に基づく様々な出口、社会実装というものに、私たちが遅れていっているのではないかというのが今の私の印象であります。
ですから今回、科学と応用、出口、社会実装の距離が近接しているという、先ほどの経産省の話もありましたけれども、そのような中で、私たちは科学力をどこまでどのように強めていくのか、そのロードマップといいますか、例えば科学力で世界一になりますということを言っても、なかなか財務省としても、いや、だからそれは一体どういう目標なんですかと言われかねないところがありますので、そうした具体的な目標をどうするのか。例えば人口が減っていく中において、世界中からもっと人を集めるような科学力、科学者を集める科学力によって、いきなり1位というようなことを言うわけではなく、どのような形で新たな「科学の振興」をしていくかが、未来志向として大切であって、年配の人は「再興」という言葉が好きなんですけど、若者たちにとっては、「再興」とは一体何を目指すのか。若者たちにとっては、この30年間、自分たちは科学でそんなに強かった記憶がない。20年間、若手・中堅科学者が「新興」された記憶がないという中において、皆さんの昔の何に「再興」するのですかと言われかねないので、これからの時代、人口が減っていく中で、日本が何を目指していくのかということを具体的にここで議論できると、それがCSTIの基本計画専門調査会等に出てきたときに、こういうことを科学として我々は目指すのだったら、こういうことをしましょうという具体的な議論と、それから具体的な施策の提案につながっていくのではないかと思うところであります。
少し長くなりましたが、以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
伊藤委員は海外出張中で、オンラインで参加いただいているので、一番遠くからというお話をさせていただきました。
この後は、時間ほぼいっぱいまで、「再興」の定義あるいは考え方も議論させていただきたいと思いますけれども、基礎研究にはどういう環境を用意して、今、何が足りないのかということも含めて議論できれば、皆様と意見交換できればと思います。
それでは川合委員、お願いいたします。
【川合委員】 ありがとうございます。
論点をよく整理していただき、ありがとうございます。(資料4の)5ページ目にありますのがアイテムであるということ。
国の科学政策は、研究費を直接研究実施者に供与するという考え方で、いわば、親が子供を丁寧に育てようとしている政策に近い。子供が自分で考えるところに、もう少し目を向けることが独自の力を発揮させる1つのキーではないかと思っています。
具体的に言いますと、個々の研究者が一定の水準にまで達すれば、課題を提案し研究費を取りに行くことができますが、そこに至るまでのサポートは、所属機関が担うべきだと思います。具体的に言いますと、大学が、この人がいいと思って採用しますが、雇用された者はその時点では、特に若い場合は研究費ゼロからスタートして、外部の資金を取って、自分の研究室の設備を整え人的研究体制を整えてから、さあ、大きなバジェットに行きましょうというように、研究体制を整えるまでに多くのの時間を費やします。そこをいかに短くするかというのが、「科学の再興」を考える上でのスピードのキーだと思います。研究環境を整えるため、もう一段階、前段が必要ではないかと思います。
具体的に言うと、大学や研究機関自身が、自分たちのアイデアで自由に使えるお金を持って、支援する者、それから支援するグループに対して、彼らが迅速に大きな力を持てるようしっかりと整えを支援する。アメリカの大学でいうと、雇用した者に対するスタートアップ経費に当たるところでございます。最近聞いた米国の例ですが、私どもの材料研究分野ですと、将来有望な若手教員には、4から10億円のスタートアップ経費を提供しています。研究環境を整えるために,多くの外部資金を取りに行く苦労をさせるのではなく、雇用している大学や研究所が有望と考える研究者や研究チームの環境を整えるというところを担い、その後、外に戦いに行くわけで、ちまちまとaccumulateの作業を何年もかけてやっている日本の環境を考えると、大分、時間の損失が大きいと思います。
では、全ての大学にばらまきのようなお金を出すのがいいのかというと、それはまた少し問題だと思います。今の物価高に対しては、国立大学法人全体に対しては運営費交付金を物価スライドするという考え方をきちっと入れていただいています。一方、大学法人はそれぞれ強い分野については競争的資金を取ってきますので、今は3割程度ですけど、間接経費が入ってきているはずです。ただ、間接経費という考え方は、その課題を動かすために必要な経費という考え方であり、ゆえに課題と一緒に終わってしまいます。しかしながら、本当に必要なのは、その課題の基盤となる設備や人材を実施機関が持つことですので、オーバーヘッドのような形で、少し長期にわたって使える資源を実施機関に持たせるということが1つのヒントになるかと思います。
「科学の再興」に帰する施策のところにもう一つ加えるならば、飛び立つ前、実施前の前夜にきちっと、各大学や研究機関が自らの判断で、自らのリスクをもって投資するようなメカニズムをつくるというのが、1つ抜けているのではないかと思いました。
以上です。
【大野座長】 ありがとうございます。スタートアップですよね。加えて、伊藤委員の「科学の再興」というのは、世界のトップグループに入っていくというのをどう表現するのかということだったかと思います。
続いて千葉委員、お願いします。
【千葉委員】 ありがとうございます。
私は、「科学の再興」、要するに科学について日本が再びトップレベルになっていくために重要なのは、進んでいる国の姿を見て、どうやったらそうなれるかという発想も大事ではあるのですが、むしろ、日本でしかできないものは何なのだろうかということをもっと考えるべきではないかなと思います。
例えばスタートアップ1つを取っても、日本はものすごい数の中小企業によって支えられて成長してきた国であって、要するに、そういうもの(中小企業)がない国はスタートアップをつくるしかなかったなど、いろいろな背景の違いを見ていくと、単純に同じことができていないというだけでは済まない話がたくさんあると思います。
それで、例えば私の分野ですと、食料をつくるのに、世界では温室効果ガスが25から40%近く出ているんですけど、日本は4%ぐらいしか排出していない。それは、ほとんど輸入しているからなんですけど、逆に言うと、そこに日本が、自然とマッチしながら新たな技術を開発していくという余地がある。あるいは、森林が67%もあって、ほとんど未開の状態なんです。要するに、これから世界が注目するであろう自然資本というものに対して、ポテンシャルしかないような国でもあるんです。
これは1つの例なのですけれども、このように、今、日本が世界の先頭を切ってやれるものは何なのだろうかということをもっともっと徹底的に解明していくと、そこでのリーダーシップを取っていける可能性が、いろいろな分野でたくさんあると思っています。ほかの国はほかの国で有利なところで突き抜けて進んでいるわけで、そこに対して何とかならないかなという発想だけでは、近づくことが難しいのではないか。ですから私は、これまでの日本がどうしてこれだけ発展してきたのか、そこでまた生かせるものというのは何なのだろうかということを、未来志向で考えることがすごく重要だと思っています。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
上田委員、お願いします。
【上田委員】 私も今回の資料は非常によくまとまっていると感じました。
まず資料4の2ページ目の真ん中に、「科学」とはとあり、今回、「科学技術」と「科学」を分けると聞いたので、この「科学」の定義をしっかり共有したほうがいいのではないかということを申し上げました。ここでは、自然科学、社会科学、人間科学という3つの点が挙げられているというのが非常に大きなポイントだと思います。最近は「科学」といえば、自然科学、つまり理系の科学というイメージで捉えられていた部分もあると思うのですが、基本的には、自然科学、社会科学、人間科学の分野で細分化していっている。要するに、いろいろな知識がたくさん蓄積されることによって、多くの新しい発見があり、結果的に細分化されていって、全体が分かる人がだんだんいなくなってきているというのが1つの課題であると思います。従って、「科学の再興」という点では、まず社会にこういう課題がある、それを解決するにはこういう科学がある、という形で、人間社会は発展してきたと思うのですが、その科学が少し弱くなってきている。つまり、この3つをきちんと捉えた進化、進歩を考えていく必要があるというのが、「科学の再興」ということではないかと思います。
それを踏まえてもう一つ、資料3-2の最後のページに、「追加的な論点」というのがまとまっていますけれども、ここの「追加的な論点」の4つも非常に大事だと思います。多様性ということは、単に研究のテーマの多様性ということだけではなく、いろいろな意味での多様性、特に人材の多様性ということも含むと思うのですが、そのように考えますと、ここには多様性だけでなく総合知という、ある意味では1つのキーワード、さらにはジェンダードイノベーションと、もう一つ重要なサイエンスコミュニケーションというキーワードが入っていると思います。
今の話を踏まえますと、基本的には資料4の最後のページ、「科学の再興」に関する論点の整理、これが1つのまとめになると理解しています。まずこれを見たときに、「人材に関する課題」のところは、先ほどの内容を踏まえますと、まず人材の多様性ということが大事ではないか。これはどういうことかといいますと、やはり考え方、自分の頭で考えるということがだんだん弱くなってきていて、これはAIの台頭など、いろいろなこともあると思うのですが、まさに大学の先生方と話していても、学生が自分の頭で考える人がだんだん少なくなってきているという問題意識を持っておられます。企業でもある意味で、そうした状況も少しずつ起こってきていて、インターネットでウェブを検索すれば、いろいろな答えが出てくる。それを使っているうちに考える力が低下してきているというのが、科学、すなわちサイエンスが弱くなっている1つの原因ではないか。
それを克服していこうと思うと、まず1点目の重要なポイントが、人材の多様性。これは、外国人、あるいは男女などということも含めて、多様な人材がいろいろな形でコミュニケーションを深めていくことによって、自分で考える力を強くしていき、それが最終的に科学というものを強くしていくのではないかと思います。逆に言うと、今それが弱くなっているのではないかというのが1つ目です。
2つ目は、重要キーワードというのを少し意識して、最後の6ページ目をもっとブラッシュアップしていくと、全体がうまくまとまるという気がします。ここには、国際に関する課題として、「国際頭脳循環」というキーワードは既に使われているのですが、例えばキーワードとしては、総合知、人文知、あるいはAIの活用というのが、重要な1つのキーワードになると思います。AIというのは、どちらかというと、先人の知識・経験をうまく統合するような、いろいろな分野のアイデアを統合するような活用の仕方、つまりいろいろな知識や経験があちこちに分散している中で、それらを統合して、体系化していくことが、今弱くなっているのではないか。その結果、基礎研究の結果を実用化するというところにおいて、かなり時間がかかる、あるいはなかなか実装がうまくいかないということが起こっているのではないかと思います。もう一つのキーワードがサイエンスコミュニケーションで、これは、サイエンスというものをいろいろな人に理解してもらい、異分野の融合を深めていこうとすると、このサイエンスコミュニケーションというのは非常に重要です。今、幾つかの大学ではもう既にサイエンスコミュニケーターの育成というのを進めていますが、これも非常に重要なキーワードになると思います。
3つ目は、大学の基礎研究力を強化するということもあるのですが、基礎研究に裏づけられた実用化という言葉があったように、それを踏まえると、産業界との連携というのが、この中にあっていいのではないかと考えます。産業界はどちらかというと、実用化のところに重きを置いた基礎研究をやっている一方で、大学は基礎研究に軸足があるケースが非常に多いので、その2つをうまく融合すれば、基礎研究に裏づけられた実用化がもっと加速して、科学がうまく社会に還元される、活用されるという状況になるのではないかと思います。ですから、この産業界との連携というのを何かうまいキーワードで入れていくと、全体がもっと分かりやすくなってくるのではないかということを感じました。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、オンラインで安田委員、お願いいたします。
【安田委員】 どうもありがとうございます。
非常にまとめられているものに共感する部分が多かったのですけれども、この中でやはり大事になるところが、「科学の再興」で何を目指して、何ができたら再興につながるのか、というところだと思いました。
今、一般市民というか、科学者以外の目線から見たときに、科学というものがどう見られているかということを考えますと、少子化で地方では人が少なくなっていて、地域を再興する、地域を活性化させるために地方大学を使いましょうという話などもある。地方大学にいた私は特に感じるのですけれども、相当に地域貢献、科学をどう地域で生かすかというところが(地方大学に)求められていて、その比重というのが年々大きくなっているかなと感じております。こうした科学においては、市民が科学によって何か助かった、問題が解けた、また、みんなでデータらしきものを得て、それによって信頼や合意を取れた、人材が育成された、といった細かいところが、非常に市民にとっては重要であるということを、私も地域の研究をしていて感じるところです。
そうすると、初めのページにあった、日本の科学力が落ちていることの証拠としての基礎研究の客観的数字、インパクトファクター、特許の話などと、やはりどうしてもちょっと乖離があり、基礎研究も非常に重要で、それがトップレベルにあるということやノーベル賞を取るということも、市民・国民にとってはものすごいプライドというか、我々は科学で生きているのだという、そういう意味でのポジティブなものではありますが、もう一つはやはり先ほどのような、地域貢献のような役立つ科学をすごく求められているという現状が今あると思います。
そうしたときに、では「科学の再興」といったものが、何ができたら科学が再興できていて、新しい形として日本は科学で国を立てるのに成功しているのか、というときに、やはりメトリクスとして、何か地域貢献などに反映されているものなどもすくい出すような評価システムや、あと目指すものの中に初めから、こういうものを目指しましょうということを明言しておかないと、ちょっとよく分からないところに議論が行ってしまうかなというところもやや感じました。もちろん、一方で私は基礎研究もものすごく重要だと思っておりまして、そことのバランスですね。今、世の中の一般市民が感じる科学の需要というものと、根本的な科学をきちんと日本の中で、特に強いところをどんどん強めていくということが重要であるということ、の両方を感じます。
特に、日本の科学の自律性というところは、私はもう非常に共感しまして、例えば私は分子生態学をやっておりまして、次世代シーケンサーの使用頻度などがそこそこあるのですけれども、日本は日本独自の次世代シーケンサーを開発できていなかったので、すごく高いお金で外注したりしているのです。外国に行くと、ものすごく安く、同じものがシークエンスできたりして、大量にデータを出すことができるとなると、もうそれだけで、その分野を切り開いていくときに、ものすごくディスアドバンテージになってしまっているということがあったりして、この自律性はすごく重要だと思います。
また、もう一つはワクチンの話なども、日本国内で安く外注しているうちに、日本国内でワクチンを作る技術がなくなってしまう。これは科学ではなくて技術の話かもしれないのですけれども、やはり安全保障の面などでも、もう既に議論はたくさんされていると思うのですけれども、この自律性という意味でも、日本の科学を基礎のところから押し上げていくということも重要ということで、この両方を目指す科学の指標、何を指標として進めるかというところがすごく大事になってくると思います。
市民が科学によって助かった、と思うものの中には、結構、やはり論文では見えないもの、論文のインパクトファクターでは見えないものがたくさんあると感じる。例えばデータの蓄積は、ふだんからきちんと科学的に標準化された方法で何かデータを取っておくと、ある有事のときに、科学のデータを基に科学的な判断ができるということもあると思うのですけれども、そういった、ふだんの雑巾がけのようなデータを取るようなところというのは、やはりお金もちょっと今、回りにくいところ、環境問題などでもそうなのですけれども、平常のデータがない限り、異常になったときに、何か異常が起きたことは分かっても、何が異常だったのかということは分からないということもある。そういう見えない科学というか、インパクトが初めは分からないようなところも最終的には社会にとって大事なものなのかなということを考えると、やはり「科学の再興」といったときに、我々が目指す科学、みんなが幸せになる科学というものがどういうものなのかということを踏まえて、目標を立ててやっていけるといいなと思いました。
長くなってしまって申し訳ありません。ありがとうございます。
【大野座長】 ありがとうございました。
それでは仲委員、お願いいたします。
【仲委員】 どうもありがとうございます。
おまとめは大変分かりやすく、重要なポイントを突いていると思いました。
この中で、「科学の再興」というのは何を表すのかということを私のイメージで申しますと、やはり国際的な知のバウンダリーを、国際的な協力の下、広げていく。また、技術をさらに進めていく。それを一緒にやっていく。そこに、日本のチームが常にあるということがひとつ。それからもう一つは、日本に潤沢な科学者予備軍といいますか、人材が育っているというのが大変重要かなと思うところです。そのためには、CSTIのまとめにもあり、また、資料4にもありますような重点化は重要で、これまで培ってきた、スパコンもそうですし、アクセラレーターやシンクロトロンといった設備や、また災害研究なども日本が大変強いところですので、そういったところを重点化して、まさにそこに世界から若手が集まってきて、訓練を受けて、また散っていくという、コネクションが広がっていくということが重要かなと思うところです。
この点につきまして言いますと、例えば日々、普通に自分のラボで研究していると、なかなか世界の動きというのが分からないところです。たまたま私は国際担当の仕事で、例えばOECDや国連、Research7+Engagement Groupなどの会議に出ることがありましたが、そういう場所にいると、世界の国々、機関がタッグを組んで、この方針、あの方針と議論しているのが伝わってくる。でも、それがなかなか研究の現場に生かされていないなと思うことがあります。ここは省庁の日本代表ということで、ヨーロッパや北米、ASEANなどにいらっしゃる方たちの力も得て、全体として世界の動向の中で何が日本の強みか、何が期待されているかというのを、より研究現場にも生かされるような形で示していただくということがあると有益なのかなと思うところです。
これが重点化のほうなのですけれども、もう一つ、多様化ということもあって、これも大変重要だと思っています。人材の多様化のためには、今、委員のお話にもありましたように、地域で、広く人が育って、それがだんだんと集まってきて、そのアイデアを、研究を推進している機関・大学などで花開かせていくのが望ましい。そう考えると、津々浦々のいろいろな教育機関が、やはり重要な教育研究機能を担っていなくてはいけないと思います。そのためには、機材や設備の老朽化、あるいは運営費交付金の話があったりするところですけれども、それが、なかなか現在の考え方とは一致しないところもあるのですが、やはり一定程度は広く与えられていないとできないかなと思います。
それからもう一つ、CSTIの資料(資料3-2)の最後のP11に「ジェンダードイノベーション」という言葉があるのですけれども、やはりジェンダーは大変重要で、特に生産年齢人口が2050年ぐらいまでには4割ぐらい減るなどという話がありますので、今でも女子はそんなに高い学歴を目指さなくてもみたいな考え方がどこかにはあるところ、そうではなく、みんなが研究者を目指していけるような土壌があるといいなと思います。そのためには、STEMなどにより、文理を分割して教えるのではない、融合的な研究・教育環境というのが育っていく必要があるかなと思います。
最後にお金のところですけれども、国内だけで何とかしようということではなく、国際的な研究グループと組んで、国際的な基金を入れる、例えば大きな経費を取ってきて、特定の地域に持ってくると、そこにお金が落ちてくる、労働力も増すということがあったりするわけです。このように国際的な基金を日本に持ってきて使っていくということが、もっとできるようになるといいなと思います。そういう意味では、国際的な動向、全体を知るメカニズムも、CSTIなどに果たしていただけるとすごくありがたいなと思いました。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして高橋委員、お願いします。
【高橋委員】 ありがとうございます。2点ほど、せっかくなので、1回目ですから少し議論を振るようなコメントをさせていただきたいと思います。
1つ目は、(資料4の)ページ6の印象についてです。少し、きれいにまとまり過ぎていて、包括的過ぎるのではないか。もう少しシャープに焦点を絞ると、先ほど他の委員もおっしゃっていたと思うんですけど、私もその意見に賛成です。とりわけ経産省のほうで科学とビジネスの近接化ということを言ってくださり、CSTIでは科学技術・イノベーションの包括的な議論をしている中、せっかく今回、「科学」と掲げたことというのをもう少ししっかり捉えたいと思います。
その観点からこのページを見ますと、若干、既視感があるリストが、ばーっと並んでいて、そういう意味では、今までの御議論の中身に関してはアグリーです。科学をどう捉えるか、とりわけ優秀な研究者が、Top10%論文を短期的に生み出す人たちという定義でいいのかというところは、議論があってもいいのではないかというのが1点目です。
2点目は、ではどこに焦点を絞るかについて、個人的には国際的ということをもう少し掘り下げていいのではないかと思います。資料でも、国際に関する課題として、もちろん重要な流入・流出や共著論文等、書いてありますが、我が国が、地球が丸い中でオンラインがデファクトになる中、ますます地理的にも時差的にも国際共同研究の中で不利な状況にあるということと、ついつい国際というとOECD諸国が念頭にある、この時代遅れ感ということに関しては非常に危機感を持っております。
例えば私自身はURAに関する国際的な場に努めて出ていこうとしますが、もはや、「日本、ああ、来たんだね」という感じで、「ああ、いたんだ」というような存在感のなさと、アフリカに対して時差がないヨーロッパやアメリカが個々の大学にアプローチをし、イーブンな立場で共同研究をしようとしていることを垣間見ますと、本当に10年後、どうなるのだろうと、ぞっとする感じがいたします。
そういう意味では、冒頭、柿田様が、3つから5つぐらい、明確な何か重要なもの、施策につながるものを、とおっしゃいましたが、このページ6でいうと、国際ということをもっと広げる。それから、もう既に言われていますが、インド、アフリカ、アジア等、我々が通常見ている今の国際のコミュニティーの外の人たちをどう捉えるかということと、優れた科学を行うために非常に重要な国際を絶対条件にするというところがとても重要だと思っています。
そういう意味で、このページの一番下の、組織を運営する中で、どうしても国内の国立大学だと、まだまだ国際をオペレーション上、意識することはあまりないかもしれないのですけれども、もう少し一般的に、普通に国際ということが入っていくような、そのようなことに対しての応援のお金が少しつけられるといいのではないかと思います。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
それでは、続きまして染谷委員、お願いします。
【染谷委員】 東大の染谷でございます。
私からは、まず今回は「科学の再興」についての論点ということで、基礎研究力の抜本的な強化であったり、基礎研究あるいは学術研究の推進ということで議論が進んでいるものと理解いたしました。その中で、先ほど、何人かの方が言及されていましたが、経産省のイノベーション小委員会で、ビジネスとサイエンスの近接化というものが非常に大きな影響を及ぼしているという話がありましたように、私の中では基礎科学と学術研究、それらと応用研究というのは完全に不可分のものではなく、相互に連関して相乗効果を上げることによって大きな効果が得られるものと思っております。ですから、基礎科学者による基礎科学者のための基礎科学という論点ではなく、周辺のものとの関係に留意して、ぜひ議論していく必要があると思っております。これが1点目です。
2点目はそれに大きく関係するのですが、今、第7期の基本計画の議論が進んでおりますけれども、そこにおいては、経済安全保障であったり、産業政策あるいは成長戦略との関係が議論されているわけですが、このようなトップダウン的に来る研究と、やはりボトムアップ的な基礎研究というものは不可分のものであって、こういうものを連関させることによっていかに相乗効果が上がるのかという視点の議論も必要であると思います。
3点目は、これも何人かの方が既に言及されておりましたが、6ページ目の論点整理にもありましたように、AIは非常に重要ではあるのですが、一方でAIは、もはや学術だけでなく、申し上げるまでもなく社会システムにも大きな影響を及ぼし、かつAIによって様々な学術が、横串が刺されるかのように相互に連関して大きな影響を与え続けていることを思うと、ここでの捉え方も、やはりAI for ScienceあるいはAIのデータ活用といった部分だけを捉えるのでは、非常に断片的であると思います。
ということで、この3点を踏まえた上で、6ページ目の現状と課題については、やはり基礎科学の基礎科学部分についてだけの課題が列挙されている。ここの部分の重要性を否定するものでは全くないのですけれども、今後、この論点に基づいた方向性を議論するに当たっては、課題としては、もっと基礎科学、それから基礎研究、それから学術研究と周辺の部分を総合的に捉えながら課題を分析し、対応を考えていく必要があるのではないかと考え、発言させていただきました。
私からは以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは宮園委員、お願いいたします。
【宮園委員】 どうもありがとうございます。
まずTop10%論文において、日本の順位が下がっているということで、研究の活動性の指標という意味でTop10%論文が本当によい指標なのかというのは議論があるかと思います。最近でも、中国では国内での引用が多いようで、Top10%論文が増えているようです。日本人の研究者は、日本人の同じフィールドでやっている研究者をライバルと思ってしまう人が多いのか、日本人の成果はなかなか引用しないという傾向がありまして、そういったこともあるのでしょうけれども、やはり総合的にいろいろな指標を見る限り、日本の研究力が低下していると言わざるを得ない。そのために今回、「科学の再興」ということで議論させさせていただくということで、大変重要でありがたいことだと思っております。
実は、ヨーロッパの研究者、米国の研究者、それから昨日、韓国の研究者に、あなたたちの国はどうですかと聞きますと、大体どこも、ヨーロッパ、韓国、それから米国もそうですけれども、やはり同じようなことに苦労していて、若い研究者がなかなか自分のフィールドに入ってこない、何とかしなくてはいけないという危機感は共有していると思います。ただ、その中でやはり日本は、先ほどから出ています国際ネットワークその他の点で、諸外国と比べてもハンディが多いということで、これを基にきちんと考えていく必要があるのではないかと思います。
私たちは、科学のアクティビティーが低下しているということで、大学の運営費交付金が減っているとか、科研費が増えていないとか、国際的な研究を支援してもらえないと言っておりましたところ、私がCSTIに着任しましたら、運営費交付金はしっかり増えるという話が出てまいりましたし、科研費も何とかしようという話も出てきて、最近では、米国のいろいろな変化もありまして外国の研究者を呼び込まなければと言いましたら、すぐにJ-RISE Initiativeということをやっていただきました。そういう意味では、文科省あるいは経産省の方に、非常に速やかに対応していただいて、大変感謝していると同時に、こうなると私たち研究者はしっかりしなくてはいけないなと私は毎日感じているところであります。
ではどうしたらいいかということで、考えたことは幾つかありまして、やはりコロナを契機というよりも、その少し前からですけれども、日本人の研究者は海外に行くことが少なくなった。昔とは留学の形態が違ってまいりましたので、若い人が留学しにくいということはあるわけですけれども、それにしても、日本人が外国で研究をするということが減りましたし、国際的なシンポジウム、ワークショップに日本人の研究者がなかなか行かなくなった。これを我々は真剣に考えるべきであって、やはり研究というのは世界で共有していくものですから、どうやって世界とさらに連携を深めていくかということは非常に重要であると思います。と同時に、やはりこれは欧米の研究者と話をしていると、国内だけで若い研究者を雇用するのはなかなか難しいところがあって、外国人の研究者・留学生を日本に呼び込むということは非常に重要であると。その場合に、外国から来た研究者に日本で何を学んでもらって、その後どういうキャリアを積んでもらうかということも、我々は念頭に入れつつ、中国人の研究者が多くなっているということはもう数字に出ていますけれども、例えばヨーロッパに行きますと、アフリカや中近東からの研究者が大分増えておりますし、Top10%論文の順位は日本より上にイランがあるということから考えましても、中国以外の多くの国々の活動も活発になっている中で、日本人は外国人の研究者とどのように付き合って留学生等を受け入れるかということも、考えていくべきかなと思っております。
あとは、基礎研究の活性化を支援していただくというのは大変ありがたいと思っております。ここで、科学とは何で、科学とはどうあるべきかという話が出ていますけど、この前もCSTIで聞かれたのですけど、どうして研究するんですかといったら、正直言いましたら、面白いからやるだけであって、それがうまく社会に実装されれば、我々としては大変ありがたいと思いますが、基本的には面白くないと研究したくないというのは正直なところで、うなずいている人が多いと思いますけれども、そういった気持ちは継続していけるようになればいいなと思っております。
そうした中で、若手を育成して、若手の方に、あるいは中学生・高校生に、科学をする、研究をするということに興味を持ってもらうことが必要であり、そういったことをいろいろな形で進めていくことも重要かと思っております。研究室の形態も、今、PI化という言葉が言われておりますけれども、ここで医学部の研究室に一番詳しいのは私のようですから申し上げますが、医学部のように講座のヒエラルキーがあって、若い人がやった研究でも何でも全部、教授がラストオーサーになるという制度はさっさとやめてしまって、若い人がもっと自分たちがやった成果を若い人の成果であることが見えるような形でどんどん発表できるように、この際、古い形態をしっかりと破壊して進めるようなことも必要ではないかと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
あと、委員としては私が残っていますので、私が発言した後、第2ラウンドに入りたいと思います。まだお話しになりたい論点を幾つもお持ちだと思いますので、第2ラウンドで挙手をしていただければと思います。
今、我々は日本の学術のエコシステム2.0みたいなものをつくろうとしているのだと思いますけれども、日本の学術を担う個人と法人の間に様々な組織、グループがあります。通常ですと、大学でいえば学科であったり専攻であったり研究科であったり。それらが離合集散して、卓越した研究を追求するというメカニズムが、今は欠けているのではないか。これは、少なくとも大きな研究大学を見ると、分野が固定化されていて、もちろん小さなグループでは卓越した人を採ってこようということはありますけれども、新たな分野を開拓して、そこに人を集めようということは、多分、議論がほとんどされていないのだと思います。その理由は何かというと、これは川合委員が最初におっしゃったように、スタートアップとかそういうものすら手当てできないという、要するにお金がないからというところもあります。お金があれば全部うまくいくかということではないと思いますけれども、そもそも出発点としてお金がないので、ないお金をみんなが公平に分けるという仕組みしかない。そうすると、我々はこれを伸ばして、10年後にここにピークを持ってこようという議論は、多分、大学の中でほとんどされていない。もちろん、千葉委員のおられるようなシャープなところは違ってほしいと思っているので、ちょっと慎重過ぎる言い方かもしれませんけれども、ほとんどの大学ではそれがない。ですので、今、国際卓越研究大学だったり、J-PEAKSというところをやって、やっと内部留保もできるようになって、スタートしたばかりですので、まだ投資するお金もない状況ですけれども、やっと環境が整ってきたので、きちんと形にできるようなエコシステムを目指すべきではないかと思っています。
そうすると、トップレベルの研究大学だけではなくて、地方の大学でもこういう形で収入が得られるという仕組みをつくることができれば、その仕組みによって、地域で活躍する、あるいは地域のニーズを吸い上げて、研究活動も含めた人材育成を追求できるということになるので、当然ながら多様性が出てくると思うんです。ですから、そういう仕組みを目指していくべきなのかなと思っています。
あと、論点で幾つか出てきたTop10%論文について、これは学術の界隈ではとても評判が悪くて、大学で言おうものなら、あの人は分かっていないという扱いになるのですけれども、でもこれは(社会との)コミュニケーションの手段では絶対あるんです。ですから、皆さんにこれだけ心配していただいているのは、Top10%論文が全然出なくなったとか、あるいは総論文数は4位なのに、なぜTop10%論文は13位なのかという点。本当は総論文数が4位だったらTop10%論文数も4位でいいではないかというところがあるはずなのですけれども、そこの乖離がすごくあって、それを埋めていく必要がある。そこがうまく埋められれば、ちゃんとやっているねということで、中身にはそれほど立ち入らなくても、社会からより一層サポートしていただける流れになるのではないかなと思います。ですから、それは学術(の本質)という立場ではなく、いかに自分が書いた論文を、これもやはり組織、学科、専攻あるいは研究科などがプロモートしていくかということにかかっているのかなと思います。
最後に1点だけ。国際化は必須だと思います。学術というのは、少なくとも基礎的なところは、もう1国のものではない。それをどう使うかというのは国のものですし、安全保障にも関わりますけれども、基礎の基礎で好きでやっている人たちがどんどん出してくる成果は、やはり国際的な場で揉まれて初めて、一流と思われる皆さんが認定してくださるので、国際化というのは、もちろん偏りがあってはいけないというところはありますし、今の地政学的な境界条件を反映しなければいけないとはいえ、国際性というものをいかに我々が獲得していくかということが大きなテーマになると思います。もう、嫌でも一年、二年、(海外に)出て行ってくれ、そうでなければ、うちは昇任させませんというのが、実は国際卓越研究大学で私がつくっていた案の一つだったんですけど、それはまだ実現していないので、ぜひどなたか、どこかがやってほしいなと願っています。
ちょっと長くなりましたけれども、私からは以上です。
小安顧問はいかがでしょう。
【小安顧問】
私は国際的なプレゼンスがすごく大事だと考えています。再興できたと考える1つのメルクマールが、外国の研究者たちに認知されている日本の研究者が何人いるかということになると思います。引用が少ないのも、認知されていないから引用されないということになっていると感じています。私たちが若い頃は、留学しなくても、自分の先生が著名な外国の先生方に紹介してくれるという機会が多くありました。そのようなことから学会などで一緒になった際に、話ができるようなり、自分の研究についてもきちんと対話し、議論ができるという環境になっていました。今は、若者を外国に行かせようとしているけれども、単騎で送っても多分あまり意味がなく、知っている人から紹介されるから向こうも責任を持って育てようと思うのです。以前のような環境をもう一度つくり、若者を育てるということをしないといけないのではないかと考えています。その先に、外国の研究者から認知される研究者が増え、その人の論文は引用すべきとなり、引用数が上がるという良い流れが生まれるのではないかなと思います。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
いかがでしょうか。仲委員、お願いします。
【仲委員】 ありがとうございます。
国際のことを考えると、私の専門は人文社会、心理学なのですけれども、多くの研究者と話していて、自分の研究人生の大きな転機が在外研究によってもたらされたと言われる方は多いと思うんです。私自身もそうです。しかし、今、在外研究に充てられる予算もあまりないし、大学から国外に出ていく方も数が減っているということがある。「科学の再興」ということでいうと、在外研究のチャンスは、やはり「ねばねば(must)」の1つの要件ではないかなと思っています。一年でも二年でも海外で研究生活を送るというのは、ネットワークをつくることにもなるし、新しい発想とかアイデアを得るいいチャンスでもあるし、かつ日々の雑務から逃れて、本当にがっつり研究に取り組めるということがあって、その後の人生に大きく役立つのではないかなと思います。
そんなことを1つ、思いました。
【大野座長】 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
オブザーバーの武田課長。
【武田イノベーション政策課長】 オブザーバーの経済産業省のイノベーション政策課長の武田でございます。今日はそもそもオブザーバーとして経産省も参加させていただきまして、心より感謝申し上げます。
何人かの委員からの御発言もありましたけれども、我々は文科省と一緒に経済産業省の審議会でイノベーションの議論をさせていただきまして、科学とビジネスの近接化の時代であるとしています。ビジネスの成否がそもそも科学の強さによって変わる時代だという認識の下で、人材政策や科学技術政策という観点から科学が重要なのは当然ですけれども、経済政策という観点から見ても科学は非常に重要であるし、我々経産省としても、その再興に貢献していきたいと考えてございます。
そういう意味で、(資料4の)6ページ目の論点整理の中で、どの分野なら経産省は貢献できるだろうかという目で拝読していたのですけれども、何人かの委員の方々からも御発言があった国際のところは、経産省も貢献できる余地が大きくあるかなと思っています。私はイノベーション政策課長であると同時に量子産業室長でもあるのですけれども、量子やAIの分野というのは、200人とか百何人とか共著者がおられるような巨大論文が多くなっていて、あたかも巨大グローバルプロジェクトみたいな論文が増えている領域ですけれども、そういうのを見ていると、必ずしも日本の研究者の方がおられないというケースも多くて、やはりそういう意味でも国際のところは、我々としても重要だなと思っています。
そういう観点からいうと、我々経産省は、JETROであったり、グローバルなウイングを持っていたり、さらに言えば外務省の方々とも連携させていただく中で、文科省のやられたい科学の国際化みたいなものについても、我々の貢献できる余地があるのではないかと思っておりまして、積極的に考えていきたいと思っています。
以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
川合委員、お願いします。
【川合委員】 今、宮園委員の話を聞いていて、はっと思ったことがあります。先ほど私が発言させていただいたように、大学や研究機関を自立させて、自らの意思で研究組織を動かすことを継続する場合、今、何が苦しいかというと、そのような運用資金を機関が取得するには、その都度競争的資金に申請しないといけません。機関が自らの意思で投資した結果がよければ、研究資金となって戻ってくる。自ら判断して行った施策の結果がオートマチックサイクルの中で戻ってくるようになっていれば、いい研究投資をすればいいリターンを得られる。こうしたメカニズムを、全部とは言わないですけど、一部に動かすと、先ほどの資料4の6ページのマル6の基盤的経費確保について、細かいことをいろいろ書くのではなくて、もうちょっと大くくりにできるかと思います。
宮園委員は、私たちは面白いと思うことをやるだけですとおっしゃったんです。そのとおりです。では、何で面白いと思うかというところです。ちゃんとした科学者は、人のまねをして面白いとは絶対思わない。そこに今まで知られていない科学がある。これをやったら、これとこれがくっつくねとか、要するに新しい要素出しをするときに、科学者は面白いと思うわけで、だから、面白いと思うことを本気でやらせたら、きっと前に進むのだということに、改めて気づいたわけです。だから、宮園委員が面白いと思うことにお金を投資したら、きっと間違いがない。この人は大丈夫か、あの人は大丈夫かと、財政当局は疑心暗鬼になりがちです。だけど、駄目な人には次はお金は来ないのだから、もういいのだと思い切ってしまうと、もう少しシンプルになると思います。なので、まず基盤経費の話としては、一部はちゃんと確保していかなくてはいけないんですけど、大学や研究機関の自律性を育てる上では、彼らが行った施策が成功したか失敗したかをもう一回検証するのではなくて、その結果取れている研究費からオートマチックに基盤経費の一部が補塡される。今は3割だけど、ハーバード大学などは10割取っているわけで、全部2倍とは言わないですけど、適切な基盤経費の比率を課して、申請したものを入れてあげるぐらいのことをやると、自動的に回るシステムになるのかなと思いました。
これも大学や研究機関を政府当局が信頼するかにかかっているんです。そこは信頼していただいて、リスクはお互いに取りましょうということ。細かい作業でアイテム出しをして1つずつやっていくというのが今までのやり方だと思いますが、もうちょっと大きなフレームワークにして、自動ループがちゃんとつくられると、大分、感じが違うかなと思っています。
【大野座長】 どうもありがとうございました。収入をきちんと大学が考えるということは重要だと思います。それは、大学が経営として成り立っているということで、その中から自分たちが大事だと思う基礎研究や基盤研究を支えると。それが仮にすぐに収入に結びつかなくても、大学の意思としてそれをやっていくという仕組みが、今、我々がつくっていかなければいけないことなのだと思います。それによって、収入があるということ自身で社会に認められているという、その1つの証左になるのだと思います。
いろいろ言いたいことはあるのですけれども、伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】 ありがとうございます。皆様の様々な御発言を伺って、そのとおりだと思うことがたくさんありました。でも、その中においてもやはり、もう少しめり張りをつける。総花的に全てをリストアップすると、なかなか財政当局としても、全部やりたいのは分かりますけれども、これは一体どういう優先順位で、何が鍵だと思っていますかとなる。そう聞かれたときに、私たちがしっかりと答えられるようにしたいなというのは、私も非常に強く感じました。
「人材育成」とざっくりと書いてありますけれども、例えば国際化を進めるときに世界で何が行われているかといえば、サバティカルというもので、例えば7年に一度、完全に自由が与えられる。また、12か月のうちの3か月の給料が例えば自分の研究費から来るということで、逆に言えば3か月間は自由になるという。この辺は、先ほど川合委員もおっしゃいましたけど、ある程度努力して認められた人が、自分の給料も稼いでくるようなことにはなるのかもしれませんけれども、やはり自由というものに対する責任。でも、自由を与えるというのが結構大切なことであって、そういう意味では、運営費交付金を、自由時間も含めて増やしてくれないと、いわゆる教育の部分も大学においては回らない。だから、こういう基盤の部分はどうしても大学で確保しなくてはいけないし、人材的な部分も確保しなくてはいけない。なので、運営費交付金を増やしてほしいのだけれども、それに伴う自由は皆さんが責任を持って全うして、科学技術の発展に尽くしますというような形をつくっていくのが大切なのではないかと思いました。これは、私が考える1つの優先事項だと思います。
もう一つは、人材育成において、やはり修士・博士課程に対して、しっかりとした給料をつける。これもなかなか、好きな人だけ残ってください、滅私奉公してくださいというのは、世界からも人は呼ぶことができないので、ここに関しては、博士課程の学生を社会人として扱うということだと思うのですけれども、それぞれの研究費で、そうした学生にしっかりとした給料をつけていくという点において、科学研究費の倍増が必要だと私は考えているところであり、それをただ配るのではなく、この点においても自分が面白いと思うことをしっかりと説明できる人のところにつけていくということなのではないかと思います。
さらには、最後に、オーバーヘッドの話がありましたけれども、オーバーヘッドというのは、その研究費を取ってきた人だけのための間接経費ではなくて、次の世代を育てるための、機関が準備する施設等の研究環境の整備の費用という形にも捉えるべきであって、そのような好循環には、必ず機関として施設整備をしていくことが必要であります。特に、私立大学等においてほぼ全てを学納金に頼っている場合、一体、研究施設はどのような形で整えていくのかといったときには、やはり研究者たちが頑張って取ってきた間接費、オーバーヘッドを、次の世代のために使っていく、投資していくということになりますので、その辺に関する明確なロードマップを描きながら要求していってほしいというのが私の意見でございます。
以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございます。極めて重要な視点だと思います。
いかがでしょうか。こういう言い方をするとあれかもしれませんけど、地方には、非常に豊かな方がいらっしゃって、共感が得られると結構大きな額を大学に寄附していただけるということも、ままあります。もちろん地方でなくても、全国でそういう方々がいらっしゃるのだと思います。そういう、大学を応援したいという気持ちに見合った形の税制があると、大学として新たなチームをつくるなり、努力して収入を上げていくということができると思います。それによってエンジンがかかって、今お話があったような建物であったり、あるいは次世代を育成するというサイクルができると思うので、今の税制を変えるというのは、極めて重要です。今、政治的にも大きなイシューになっているので、怖くて言えないところもありますけれども、最終的にはやはり、社会にある蓄積された資産を未来に投資していいよと言っていただけるようなサイクルにするというのは大事なのではないかと思います。
いかがでしょうか。ほかに。上田委員、お願いします。
【上田委員】 「科学の再興」に関する論点ということで、基本的には、何人かの方もおっしゃいましたけれども、「科学の再興」とは、一体どういう状態になったら、これが実現できたのかということが、ある意味で一番大きなポイントなのではないかなと思います。その意味では、先ほどの国際に関する課題のところで、国際的な人材を育成しよう、あるいは国際的なプレゼンスを強化しようという話があったのですが、これも、どういう状態になったら、国際的な人材育成ができたと言えるのか、あるいはどういう状態になったら国際プレゼンスの強化ができたと言える状態になったのかというように、「どういう状態になったら」とか「どういうことを実現すれば」というのが要る気がします。
我々は、社内でも「グローバル人材の育成」などの議論をするのですが、そもそもグローバル人材とはどういう人材なのか、が曖昧です。いろいろな視点で、いろいろな定義も出てくると思うのですが、今、神戸大学の文学部の先生方と、島津製作所で協働しているのですが、9年連続、世界ランキングトップのオックスフォード大学の学生が、日本学に関心を持っているので、神戸大学の先生方が日本学というものを体系化して、それを提供している。その中で我々もそこに入って、そもそもオックスフォード大学の学生と、我々島津の社員の違いは何なのだろうというふうに見ていくと、少なくとも3つの違いがありました。
1つ目は、多様性ネイティブということです。これは、もともとは多様な民族が身近にいる環境で育っているので、基本的には他の民族あるいは他の国の文化を理解するということにおいて、オックスフォード大学の学生は非常に能力が高く、日本人とかなり違っています。ですから、多様性ネイティブという観点では、視野が広いということも含めて、日本の我々の社員と、あるいは日本の学生さんとも大きな違いがあるということが1つ目です。
2つ目は、やはり言語能力が高い。これは英語も含めて、複数の言語を話すことができます。欧州の学生は多様な民族の歴史・文化を理解するというベースがあるので、結果的に言語についても無意識で、そういう能力がついてくる。歴史や文化が異なる背景や、いろいろな違いを理解しようとしたりすることもあって、結果的に三か国語、四か国語はしゃべれるオックスフォード大学の学生は多く、さらに、最近は日本のアニメを利用して日本語を学ぶオックスフォード大学の学生が増えているんです。ですから、言語能力が高いというのは、我々にとっても非常に重要なポイントで、特に日本人は英語が弱いという人がかなりいるので、ここが、やはり国際化の中に入っていくときに大きな障害になっているという気がします。これは、当社の社員を見ていても、そう思います。やはり英語がきちんとしゃべれる人間とそうでない人間では、後者は視野もだんだん狭くなってきますし、海外のいろいろな新しいアイデアを取り入れるという能力もなかなか伸びないということもあります。このため、言語能力を、具体的にどういうやり方で高めていくかというのは非常に重要なポイントで、そのためにはやはり多様性ということが重要になるのというのが2つ目です。
3つ目は、同年代の平均的な我々の社員あるいは学生と比べると、オックスフォード大学の学生は視座が高い。この視座が高いというのが3つ目の大きなポイントで、基本的には高校までで哲学や倫理をしっかり学んでいるので、同じような年齢の日本人と比較すると、物事を思考する、考えるときの視座が高いというのが大きな特徴です。これは、シチズンシップというものを身につけていることになるのですが、このシチズンシップというのは、他人を尊重しながら、市民として社会に参加して、その役割を果たすということがもう自然と身についている。結果的に、自分が社会に向き合うスタンスをきちんと持っているというのが、オックスフォード大学の学生と我々の社員の違いだということがありました。言い方を変えると、グローバル人材ということを社内で議論するときに、少なくともこの3つを意識する必要があります。まず、多様性ネイティブということを念頭に置きながら視野を広げていくこと。2つ目が、言語能力を高めていくために、多様性が非常に重要になると思います。3つ目は、視座を高めるということで、これも、自分たちが単に個人のことだけでなく、社会にどう関わっていくかということをしっかり考えられるような人材を育成していくことが、国際的なグローバル人材の育成につながるということです。これらのことを念頭に置くと、どういう状態になったときに初めて目標が達成できたかという議論が重要であることを感じました。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
論文というもので測られる部分というのは、どうしてもあると思うんです。そのときに、その論文が読めない環境にある。つまり、自分の所属している機関が、その雑誌を購読していないということ。あるいは、論文を書くときにも費用、お金を取られるので、成果を形にしようとしたときに、研究費が切れてしまっていると、論文の費用が払えず、ビジブルなところに出版できないなど。そういう、小さな例ではあるかもしれませんけれども、やはり研究の仕組みというのを、もうちょっとインクルーシブにしていかないと、地域の大学であったり、あるいは私立大学で活躍しようとしている人たちが、論文という形で自分たちの研究を表現できないのではないかということはよく思っていますが、何かそれに関連するようなご意見はいかがでしょうか。安田委員、お願いいたします。
【安田委員】 ありがとうございます。
私は先ほど、地方大学のことを言ってしまって、Top10%論文など指標を上げるような話とは、ずれた話をしてしまったのですけれども、今の(大野座長の)お話は本当にそうで、地方大学は今もとにかく地域貢献や、いろいろなことを求められていて、私がいたのは宮崎大学なんですけど、人数が多い大学に比べるとスタッフの数が少ないので、何か1つ変革するときに申請書を書く人の負担も大きくなったり、いろいろなことで、研究時間などを確保することが非常に難しいというのが、もちろん東大でも忙しいのですけれども、地方大学ならではの身動きができない感覚としてある。求められていることが基礎研究だけではなくて地域貢献などいろいろあり、確かに、一部は産業などと関わるところで基礎研究とリンクできるような幸せなところもあるのですけれども、やはり現実の問題と向き合ったときというのは、どうしても基礎科学と離れてしまうことが多くて、専門と類似はしている分野、関連はしている分野だったとしても、やはり直接的に自分の研究の一番面白いところが何かできるかというと、そうではないことがすごく多い。けれども一方で地方大学でも、非常に視座が高い、世の中にすごく自分が貢献したいと思っている、いい研究者や若手の研究者、学生もいて、そういう人たちが活躍できるということを考えたときには、地方大学でも基礎研究などもできる、研究したいときにできるという環境がいいのですけれども、今おっしゃっていたように、地方大学はお金もなくて、夏にも冷房が止まってしまったり、ピークカットされてしまったり、いろいろな雑誌の購読を切られてしまって、なかなか読むことができないなどということがあり、研究をする地盤の地盤が本当に崩れ始めているというのをすごく感じました。
私は宮崎大学に11年いたのですけれども、入ってきたときと出るときで、危機度が違い、一番初めの入ったときはまだ基盤経費も少しはあって、何もお金が取れなかったとしても何かができるという状況だったのですけれども、最後、出るときは基盤経費がほとんどゼロになってしまっていて、大学の中でも廊下で電気が1本ずつ抜かれて節電している状態で、27度以上の一番暑いときになると、夏、電気代のために冷房も自動で止まってしまうというような状況であったことを考えますと、やはり地方大学をちゃんと生かす、しかも地域貢献だけではなくて基礎研究をやりたい研究者がちゃんと研究できるような環境、基盤を整える必要があるかなというのをすごく感じております。
あと、これもまたちょっと今回の提言とずれるかもしれないのですけれども、ここでどうしても伝えたいなと思ったんですけど、今お金をかけないで、より日本の研究力というか、アウトプットを押し上げる方法が私は1つあると思っておりまして、それは産業界の力も必要なのですけれども、就職活動についてです。日本は結構、修士の学生が研究の基礎データを出していることも実験系などだと十分あるかなと思うのですけれども、修士の就活が最近、入学した途端の5月、6月から始まってしまって、何も研究ができないまま、あなたは研究は何をしているのですかと聞かれたりして、翌年になっても、まだ本人がやりたいことが定まっていなかったりすると、ずっと就活していて、本当は研究したくて大学院に入ったのですけれども、将来の夢も定まらず、そういう形で悩んでいる学生さんなどもたくさんいるんです。でも、大学の教員からすると、未知の研究課題である研究というものについて、その内容のクオリティーということ以前に、取り組んでいる内容、いわゆる修論発表の内容みたいなものを、学生に例えば30分質問すると、どれだけその学生が真面目に自分が選んだ課題、研究テーマをやったかというところはすごく見えてきて、私は本当はいろいろな就活で、その子を見極めるために一生懸命やっている質問よりも、ずっと有効な質問であり、その人本人というか、見えない課題にどう取り組むのかというところは分かると思っていて、それが、学生にとっても研究が分かることがwinだし、自分が選んだ分野で自分の研究室でやることがwinになり、それがさらにその後の就活、それが別に研究者にならなかったとしても結びつくといったシステムになる。今、就活が始まる時期を遅くしてくださいと言っていても、青田刈りになっている状態だから何とも言えないし、外資系が前倒しにしてしまって、国内でもどうしようもないというところも分かっているのですけれども、就活がもっと後になって、その人が何を大学で研究してきたのかということを見てくれるようになったら、日本の科学力自体も、アウトプットも相当上がるのではないかなと思っている。リソースが今すごく限られているので、地方大学を復活させるためにも切れないパイをどうするのかというところ、就活時期の後ろ倒しについては、制度の話と、企業側の話と思うんですけど、そこがどうにかできれば大分変わるかなと思っておりまして、ちょっとずれてしまうのですけれども、発言させていただければと思いました。ありがとうございました。
【大野座長】 どうもありがとうございます。では関連して川合委員。
【川合委員】 今、地方大学の話題が大分出たんですけど、参考資料1に、これまでの科学技術・学術審議会等での提言取りまとめの一覧がございます。下から2番目のところに、国立大学法人等の機能強化に向けた検討会があり、私は有識者委員で出ていたのですが、この最終的な取りまとめを見ていただきますと、これは国立大学に関しての取りまとめなんですけど、これまで競争的な環境に置かれていたものを、連携したり協働して国全体の教育のレベルを考えようと。それから研究に関しても、グループ化したり、それからもう少しフリーな形で連携するということが、提言として明記されています。ここは国立大学法人等という冠がついて提言しているんですけど、これを基に先日、国大協でトップセミナーという機会があって、大学の学長さんたちが議論していた中で、国立大学でこうしたうまい連携ができたり、教育に対するアイテムが出てきたときに、それを国立大学の中だけでとどめるのではなく、国公私立全部で使えるようなシステムにすべきではないかというような意見が出ております。
ここは非常に重要なポイントだと思っていまして、今、数的に弱体化していく日本で、もう競争をあおる時代ではないという認識を、学術の世界の方たち、それから役所の方々もお持ちですので、ぜひ、舵をそちらに切って、全体のレベルアップというのも一緒にやりながら、トップの研究を出していくシステムを底支えするというのが非常に大事かなと思っています。
さっき上田委員が、何をもって検証するのかとおっしゃいました。これは難しいんですけど、ただ、私が思う1つの指標は、何か次の施策を考えようとか、次に研究は何をしようかというときに、必ず日本はどうだろうかと言ってもらえているかどうかは非常に大事で、そこに対しては、私は自分の組織を非難する言い方になりますが、調査報告みたいなものを全部、日本語で書いて出して、それで中だけで終わりにしているのをやめない限りは、日本はレファレンスとして引いてもらえないので、そこも国際化していかないといけない。こういう議論も、お金を取るところだけだから日本語でいいかではなくて、何をベースに考えたかというものを、国際的に常に発信していくことによって、みんながリファーする材料をちゃんと提供するというのも、国際的なビジビリティーにとっては非常に重要ではないかと思っています。
言いたかったのは、地方の大学に関しても連携という形で、国立大学総体として強化する動きが出ていますので、さらにいいアイテムを入れていただくと、より補強されるという印象でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。今、私立大学も含めて、非常に大きなエコシステムが科学でできると、また違った形になるのかなと思われます。
高橋委員、お願いします。
【高橋委員】 ありがとうございます。
何をもって「再興」という状態かというのは大変大きな命題で、なかなか、ぽんと1つの、一意の答えがないとは思うのですが、少なくとも(資料4の)ページ6のスモールアイランド型研究領域というのが継続して生まれる状態というのは1つ、第1ステップになるのではないかと思っています。
今のファンディングのところを少し考えますと、すばらしい我々のシステムの科研費のSとか特推などの大きなものを取っても、若干、属人的で、ビッグネームの方がそれをリタイアなさったりすると、せっかくの萌芽の学術領域というのが、そこで残念ながら1回、スピードが落ちるというのは、少し前からもったいないなと思っていました。例えばCRESTだとか、それは別のファンディングに引き継がれていくのですが、近頃、ファンディングが、例えばNEDOとJSTでも随分、重複する部分にお金が降っていて、やはりそこに技術やイノベーションというフレーバーがないと、なかなかまとまったお金がつきにくいということを考えると、科研費のもう少し新しい領域をつくるというところにフォーカスしたものがあってもいいのではないか。これは単なる思いつきというのではなくて、今日の御議論を聞いていて2例ほど、スタンフォードと南洋理工大について、私が皆様に言うのは釈迦に説法ですけれども、スタンフォードでは大学レベルで三、四十年単位で学部の研究領域のドメインを見直すというようなことをしていますし、南洋に関しては、1研究者の論文の生まれる領域が、7、8年ごとにシフトしていかないとアクティブではないというようなことを言っていたりするので、やはりそういう指標というのは、単なるTop10%論文などということを超えて、組織として考えてもいいのではないかなと思っています。これは「再興」の第1ステップということで申し上げます。
2点目です。先ほど本当に国際ということに関しては、思いと危機感を持っているのですけれども、例えばどなたかがおっしゃったサバティカルは、超著名国立大学ですら、サバティカルを本当に取ろうと思っても、条件がいい先生でさえ、今、まるっと一年取れる人など、ほぼいないと思いますし、海外出張でも、きちんと半日単位で業務がなければさっさと帰ってこいということで、あまりにも時間に余裕がなく、冒頭、最初の1週目のときにどなたかおっしゃった、その余った時間で、たまに海外で会えるビッグネームの方と、会議が終わった後、1時間お話しするといったような時間が捻出できないというのは、あまりにももったいないと思います。ということで、では少し余裕があるルールを学内で新たにつくろうと思うと、ここで事務の壁が生まれます。ただ、事務の壁というのは、彼らの職務、今々の職務をきちんとこなそうと思うと、当然言ってくることで、ここに対してやはりもう少し、特に国立大学においては2004年以降、法人化してしまって、今でいうと一番下のところですけれども、大学等のガバナンスという際には、今までは研究者の育成、それから執行部とトップガバナンスのことが非常に中心的な議題だったと思うのですけれども、いわゆるソフトパワーの大学の基盤的な活動を支える人たちに対しても、もう少し、一緒にルールを変えていくというところに対する新しい取組ができたら、少し変わるのではないかと思っています。
これも思いつきというわけではなくて、EUでは、マリー・キュリー・プログラムで、若手研究者の育成とイーブンに、研究所のいわゆるアドミニストレーションを担うスタッフが、複数格で一緒に手を挙げて、相互に行き来することによって、当たり前に多様性を事務の職員の方も身につけるというプログラムが、老舗で走っています。それによって、研究者のみならず、地続きだということもありますけれども、大学の職員たるもの、複数か国の言葉を使ったり、時差が当然の会議を設定したりと、研究者と一緒になって体感を持って組織を運営するという土壌が、圧倒的にあると思います。我々は島国ですけれども、そこのある種、ディスアドバンテージの部分を見ると、もう少し大学の研究力強化ということに関して、今までこれは法人のマターですとなっていたところに対しても、改めて強化してもいいのではないかと思います。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。多分、文科省側の方々も少し発言したいのではないかと思うんですけど、いかがでしょうか。西條局長。
【西條科学技術・学術政策局長】 どうもありがとうございます。
今日、最初に石川課長から御説明させていただいたように、まず今回、「科学の再興」という議題の中で、今日的な意味合いというのをしっかりと意思共有していただきたいというところがまず1点あって、こちらの素案を出しつつも、今日御意見いただきまして、非常に示唆に富んだお話や、ここで少し抜けているような部分というのは大分、足していただけたのではないかなと思っています。特に多様性の観点でも、あまり人材などというところに触れていなかったのですけれども、人材の多様性の部分についてご指摘いただきました。また、大きな本日の目的としては、今日、非常に議論いただきました、まさにどういう姿を目指していくのかという点。基礎研究が重要というのはずっと前から言われていて、それを今回、「科学の再興」という形で、基礎研究がどう重要かというところをもう一度見直さないと、これはまた同じ繰り返しになってしまうかなというところで、今日は非常に御意見いただきましてありがとうございます。
それを踏まえて、対応の方向性についてもかなり御意見を頂いて、国際化の部分とか、それからこれまで抜けていたような視点、また経済、いわゆる産業界との連携の部分もどう見ていくのかという点、また整理したいと思っております。
ただ、基礎科学、科学、基礎研究、また学術研究というところで、今回、最初に2つに分けて、その重要性というところで示させていただいたのですけれども、何となく皆さん、基礎研究、学術研究という言葉は一緒なのだけれども、見ているところがやはりちょっと違うというところがあって、特に最近、これは経産省の議論にもあるように、科学とビジネスの近接が起こってきているといわれています。つまり、経済政策としても科学の重要性が非常に高まるということがあって、それがどちらかというと我々の今回示した上のほうの話になると思いますが、一方でやはり多様性の観点というところ。今日はこの点も大分議論いただけたのはとても大きいと思いまして、これは不確実性に備えるので、裾野を広くというのもあるのですが、今日頂いた、まさに人材の多様性、結局は研究を通じてどの程度、人を多く生み出しておくのかというところ。また、多様性という意味には、その研究分野の多様性もあれば、女性や外国人といういわゆるダイバーシティーという意味での多様性というところもあり、この辺ももう一回、整理をさせていただいて、また次の議論に続けていければなと思っております。
それともう一つ、やはりアクセス性をどうするのかというところ。先ほど川合委員からお話もありましたが、スタートアップといったときに、個人にスタートアップ資金を渡して、機器を自分たちで買ってやってもらうのかというところも、全く違うと思いまして、やはり誰もがアクセスできるような環境をどうつくっていくのかというところも1つ、大きな課題だと思っていますので、そこについても議論はさせていただきたいと思っております。
私もこの間、熊本大学に行ってきたときに、生命系では今、完全に機器が共有化されていて、そこに、海外に行っている日本人研究者が身一つで帰ってきたとしても、すぐにその次の日から研究ができる環境を整えていると。そういった部分で、すごくスピード感を持っているが、一方で、この研究者たちは10年間で出ていけと言われる仕組みになっており、いざ出ていこうとしたら、嫁入り道具がないと次の機関は受け入れてくれないということがある。これについて、ちゃんと全体としてこういった仕組みをつくっていかないといけない。ただ、簡単にはできないので、多少の長いスパンを見て、どういう形でやっていくのかということ。また例えば、競争的資金について、全部、共有でやってください、だから機器は買っては駄目ですといくら言っても、それでは研究ができないということに、今の状態ではなってしまうので、その辺も含めて少し整理もしつつ、議論をさらに先生方と深めさせていただければと思っております。
【大野座長】 ありがとうございます。
ちょうど時間になりましたので、まだ、そういえばこういうものがあるとか、こういう議論もすべきだということは、別途、事務局におっしゃっていただければと思います。ということで、本日の議題は以上となります。
最後に、事務局から連絡事項をお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 次回、9月17日の水曜日に、第2回を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
本日の議事録は、また改めて皆様に御確認いただいた上で掲載させていただく予定としておりますので、よろしくお願いいたします。
また、今、大野座長から言っていただいたように、この場で言い切れなかったようなところなど、もしあれば、ぜひ事務局に言っていただければ、そういった意見も踏まえて検討させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【大野座長】 それでは、以上をもちまして今日の有識者会議を閉会といたします。どうも皆様、御出席ありがとうございました。
科学技術・学術政策局研究開発戦略課
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