令和7年10月27日(水曜日)10時00分~12時00分
文部科学省15階15F特別会議室及びWeb会議形式
大野座長、伊藤委員、川合委員、染谷委員、高橋委員、千葉委員、仲委員、宮園委員、安田委員
柿田文部科学審議官、藤吉サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、西條科学技術・学術政策局長、福井大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、
井上科学技術・学術総括官、馬場参事官(研究環境担当)、中村人材政策推進室長、淵上研究振興局長、清浦大臣官房審議官(研究開発局担当)、嶋崎開発企画課長、
松浦大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術学術政策連携担当)、赤池科学技術・学術政策研究所総務研究官、石川研究開発戦略課長 ほか関係官
小安文部科学大臣科学技術顧問、永澤内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局参事官(統合戦略担当)、武田経済産業省イノベーション・環境局イノベーション政策課長
【大野座長】 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第4回「科学の再興」に関する有識者会議を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
今回の会議も、対面、オンラインの併用で開催しています。また、全面公開という形で進めさせていただいています。
では、本日の議事等について、事務局から説明をお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 本日の議事及び配付資料につきましては、お配りしている議事次第のとおりでございます。
本日は、仲委員がオンラインで御参加、上田委員は御欠席でございます。
オンラインの仲委員におかれましては、発言時についてはマイクとカメラをオンにしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
資料につきましては、資料1-1、1-2と参考資料1から3をつけております。もし過不足などございましたら、事務局までお申出いただければと思います。
事務局からは以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、議題の1、「科学の再興」に関する提言の素案についてに入りたいと思います。まず、事務局より御説明いただいた後、皆様と意見交換をさせていただきます。
それでは、石川課長、説明をお願いいたします。
【石川研究開発戦略課長】 それでは、資料1-1、1-2に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。
これまでお忙しい中、3回、この有識者会議を開催させていただきまして、様々御意見をいただいております。これまでいただいた御意見ですとか、事務局でまとめてきたものなどをベースにしながら、今回、提言(素案)ということで、この有識者会議の提言のたたき台を事務局で作成させていただきました。資料1-2が素案の本体ですけれども、説明につきましては、概要資料の資料1-1を用いて御説明させていただければと思います。
資料1-1ですけれども、これまで、「科学の再興」のこの有識者会議におきましては、そもそも「科学の再興」とはどういうことかというところからの整理をいろいろ御議論いただいておりました。その中で、まず、近年の国際社会ですとか社会経済の情勢の変化と、今日的な意味合いは何かというところを整理させていただいております。
まず、科学の重要性の変遷ということで、今日的な意味合いを見る前に過去を少し振り返らせていただいております。1980年代当時、基礎研究ただ乗り論といった諸外国からの批判などを受けて、官民で基礎研究、先導的な研究を推進していた時代があったですとか、95年に科学技術基本法が制定されて、先進国追従型の科学技術からの脱却し、世界のフロントランナーへという文脈で当時、基礎研究の重要性がうたわれていた時代がございます。
当時の科学技術の振興が結実した成果としては、今年のノーベル賞は2名、坂口先生と北川先生が受賞されましたけれども、こういった成果も、90年代の成果がベースになって受賞されたということで、当時の振興がこういったノーベル賞にも貢献できたかなということで、少し過去の重要性の変遷を振り返っております。
その上で、科学の重要性に関する近年の情勢変化ということで、特にこの10年、もっと短い、本当に最近のところではございますけれども、4つほどここに例示で挙げております。地政学リスクの高まりなどの国際秩序の不安定性、科学とビジネスの近接化、先端科学の成果の創出と急速な実用化・社会浸透が最近の特にAIなどで起きているところです。こうした国際秩序の不安定性とともに、科学とビジネスの近接化の中で、国際的な研究開発投資の増大ですとか、先端科学競争の激化というのが起きているというのが現状かと思います。また、地球規模課題解決ニーズの増大ですとか、我が国の課題であります人口減少下での持続可能社会の構築、内需の減少と将来投資の必要性、こういったものがあり、科学に関しての重要性が、以前と比べてさらに増しているのではないかということで、(3)で、「科学」の重要性の今日的意味合いということを整理させていただいております。
今申し上げたような近年の情勢変化にあるように、先端科学の成果が社会を変えるほどのインパクトがあると同時に、その社会実装までの期間が短縮化しているという状況の中で、大きく2つ置いておりますけれども、「変動する社会を見据えた戦略性」ということで、我が国の自律性・不可欠性という観点、また、社会課題への対応という観点などから必要であろうというところと、今日のような先の見えない不確実性の高い時代だからこそ、裾野の広い多様性が必要ということで、分野の多様性のみならず、それを担う人材の多様性という観点からも科学は重要であろうということで整理をしております。
そしてここの矢羽根にありますように、産業競争力の強化ですとか経済安全保障の文脈において、基礎研究の一体的な実施が重要であるということですとか、最後にございますように、最先端の科学を他国に一歩先んじて追及し、それを担う人材を有することこそが、我が国の社会経済の発展やその成否、更には国力の源泉であるということを書かせていただいております。これまでのこの会議での議論も踏まえながら、今日的な意味合いということで整理をさせていただいております。
3ページ目ですけれども、今申し上げたように科学の重要性が増しているという中で、我が国の現状について、2ポツで整理をしております。
(1)のところで、指標から見える科学の状況ということで、様々な視点からの評価は必要ではありますけれども、論文という視点、指標から見ますと、総論文数の停滞ですとか、注目度の高いTop10%補正論文の減少と相対的な低下ということがございます。また、民間からの研究費が海外トップ大学と差が拡大していたりというような面もございまして、近年、相対的な地位が低下傾向にあるのではないかということで整理をしております。
(2)のところでは、こうした論文指標から見える相対的な地位の低下の要因ということで、この資料ではNISTEPの報告書なども活用させていただいておりますけれども、教員の研究時間割合の低下ですとか、教員数の伸び悩み、博士課程在籍者数ですとか、研究開発費の停滞によって論文数が減少しているのではないかという分析がございます。また、国際連携の取組などが論文産出に寄与しているという分析もございます。
また、3ページの右側の下のグラフですけれども、大学部門の研究開発費が2000年代以降横ばいになっていると。各国、特にこのグラフですと、中国ですとか米国などが伸ばしている中で、停滞傾向にあるというのが現状として整理をさせていただいております。
4ページからでございますけれども、今申し上げたような、科学の重要性という一方で、我が国の科学研究力が相対的に低下しているのではないかという中で、国力の源泉としての科学の重要性が格段に高まっている今、我が国の科学を再興させることが必要であるということで、目指すべき「科学の再興」の姿とはどういうものかというものを、この有識者会議でも様々御意見をいただきました。それをまとめておりますが、科学の再興とは、新たな「知」を豊富に生み出し続ける状態の実現ということと、我が国の基礎研究・学術研究の国際的な優位性を取り戻す、プレゼンスを取り戻すということが「科学の再興」だろうということで整理をさせていただいております。
前回、前々回の資料でも事務局としても提示させていただきましたが、こういった再興の具体的なイメージとしては、右側にありますように、我が国の研究者が、学術研究のコミュニティはもとより、各国の官民セクターから常に意識されている状態、常に認識されている状態ということが、科学の再興のイメージの一つ、国際的な優位性を取り戻すということではないかということで整理をしております。
また、国際頭脳循環の主要なハブということで、国内外の優秀な人材が日本に来たり出ていったりというダイナミックな循環ハブになっているということもイメージの一つとして、改めて整理をしております。
これまで御議論いただいたように、こういった状態を実現するための要素としては、3つに整理させていただいておりまして、新たな研究分野の開拓と先導、国際的な最新の研究動向の牽引、また、国内外の人材ですとか次の次世代が魅力に感じるような環境の持続的な発展・整備、つまり先輩や同僚たちを見て、自分もここで頑張ろうと思えるような環境にしていくというのが大事だろうということで整理をしております。
そして、ここにはこういった「科学の再興」に対しての、中長期的なフォローアップをしていくとしたらこういったものがあるのではないかということで、幾つか指標の例示を置かせていただいております。この下に米印で記載させていただきましたように、こうした「科学の再興」を、「科学の再興」で閉じるのではなくて、社会経済に対する価値の産出の強化というところに結びつけていくためには、産業界との連携を含めて、新たな知をイノベーションにつなげる、イノベーション・エコシステムの本格的構築ということも大事でありまして、そこから得られる対価を基礎研究・学術研究に振り向けるという流れを確立していくことも不可欠であろうということも記載させていただいております。括弧の中で記載していますけど、「科学の再興」は「科学」単独で成し得るものではなくて、こうした産学の相互強化と密接不可分であろうということも、本文の中に記載させていただいております。
こうした「科学の再興」の実現のための要素を3つ、さらに、これらを実現していくための基本的な考え方を、4ポツに記載しております。(1)は本文には記載させておりますけれども、それぞれの要素ごとでさらに詳しく状況の分析をさせていただいております。その上で必要な取組ということで、丸1から丸5までで整理させていただいております。
これらの必要な取組をしていく上で、(3)の基本計画期間中の施策の方向性ということで、大きく2つ挙げさせていただいております。1つ目が、我が国全体の研究活動の行動変革ということで、我が国全体として、行動の変革を促していくという部分と、世界をリードする研究大学群の実現に向けた変革変ということで、特に研究大学として世界と戦っていくような大学において、先行的に組織改革などを進めていくという、2つの切り口で見ていくと。これらを一体的に推進することで、我が国全体の研究システムを刷新していくと整理をさせていただいております。
この2つに関して、重点的に取り組む事項として、これまでの議論など踏まえながら、5ページ目に整理をさせていただいております。第7期基本計画において集中的に取り組む事項として、先ほど申し上げた、我が国全体の研究活動の行動変革という部分では、大きく5つ、重点的に取り組むものを挙げさせていただいておりますけれども、1つが、新たな研究領域への挑戦の抜本的な拡充、日本人研究者の国際性の格段の向上、ここでは特に、日本人研究者・学生の海外派遣の拡大ということを記載させていただいております。それと、優れた科学技術人材の継続的な育成・輩出、AI for Scienceによる科学研究の革新、研究環境の刷新、これらは我が国全体の研究活動の行動変革を起こしていくため、重点的に変えていくべきものとして挙げさせていただいております。
また、右側にありますように、研究大学群におきましては、以下の研究環境を満たす研究大学群の構築・拡大を進めていくということで、経営マネジメント改革、人事給与マネジメント改革ですとか、財務戦略、その他経営改革を進めていただいて、機関内でも挑戦を促すような資源配分ができる体制ですとか、教員採用時におけるグローバルな評価基準の構築、受入体制の整備ですとか、博士課程学生の経済的支援、機関を越えた共用システムの構築、諸外国並みの研究支援スタッフ等による研究時間の確保や、諸外国並みの官民からの投資の確保、こういったことができる経営マネジメント改革を進めて、研究環境を整えていただくということを研究大学群には頑張っていただくという方向性を書いております。
これら2つの大きな取組を進めていくことと併せて、基礎研究のための投資の抜本的な拡充と財源の多様化ということも書かせていただいております。
こういった研究システムの刷新については、なかなかイメージを持ちにくいところもあろうかと思いまして、6ページ目に、現状からこういう形で研究システムを変えていくというイメージの資料を作っております。 現状のほうでは、意欲的な研究者が挑戦を躊躇(ちゅうちょ)する制度上の課題ですとか負担増になるような課題があるのではないかということで、バツを並べながら、例えばですけれども、一番上は、成果の見通しが不透明な新たな研究領域への挑戦、論文が書けるかどうか分からないときに、将来のキャリアのリスクとして、躊躇しているのではないかですとか、海外に挑戦すると帰国後のキャリア、ポストが不安になるのではですとか、3つ目は、必要な設備を現状は自ら資金調達したり整備したり、さらに、維持管理までやっているということで、研究スタートが遅れたり維持管理コストの負担が大きくなっていないかということと、4つ目にあるように、優秀な研究者ほど運営業務などの負担が大きくなっているのではないかということも書かせていただいております。
今申し上げたように、現状の中では研究者個人の力量に依存するところが大きくなっているのではないか。今、第6期基本計画の中で、卓越大学ですとかJ-PEAKSなどの制度が始まっておりまして、ようやく組織としての体制整備の支援もスタートしているところですが、まさにこれからというところかと思います。右側は、この第7期基本計画期間中に、前の5ページ目で申し上げたような施策を取り組んでいくことで、こういう環境に変えていきたいということで、挑戦に向けた研究費の拡充ですとか、海外経験が適切に処遇や評価に反映されるですとか、博士課程学生への給与の拡充や、専門人材の充実、AI for Scienceによる効率性・生産性の向上ですとか、コアファシリティ化を進めることによる自由なアクセスですとか、専門人材がいることによる効率的な運用・持続的な高度化、また、大学群等組織の中でもグローバルな人事・給与マネジメントシステムですとか、より最適化された業務分担が、優秀な研究者の研究時間確保につながったり、研究支援部門や大学運営部門がしっかり組織化されることで、経営基盤がしっかりしていくことを目指すということで、左から右へ、現状から研究システムを刷新していきたいということで打ち出してはどうかというのを、少しイメージを持ちやすくしております。
下にありますように、現状、こういった研究環境の中で海外研究者や次世代からの魅力が低いのではないかというところから、魅力を上げてきたい。それと、右側のところ、矢印で外側囲っておりますけれども、官民の投資拡大も含めてうまく好循環するような形で、研究システムの刷新のイメージを整理しております。
最後、7ページ目のところは、提言の素案にも、具体的取組を書かせていただいておりますけれども、(1)から(5)までのところで、特に重点的にというところ以外でもやっていくべきものを整理させていただいて、本文で記載する形で素案の全体を構成してはどうかということで、今回、提示させていただきました。
事務局からの説明は以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。それでは、今の事務局からの説明を踏まえて意見交換をしていきたいと思います。いつものように、御発言あるときには名札を立てていただく、オンラインで御出席の仲先生におかれましては、挙手ボタンでお知らせいただくということで進めたいと思います。
それでは、いかがでしょうか。意見交換後に時間があるようでしたら、文科省からの御発言もいただいて、対話ができるような格好で進められたらと思います。
それでは、伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】 すみません、前回欠席したので申し訳ないんですけども、4ページ目で、上のところの中長期的なフォローアップの最初のところのスモールアイランド型の核となるTop1%論文数というのが、矛盾しているのではないかというふうに考えたんです。
というのは、例えば、最初の本当に核となる論文というのは意外と引用が少なくて、ノーベル賞を取った方々は皆さん言っていますが、最初は全く注目されなかったというのがほとんどで、それぐらい革新的なことをやっていて、その後論文が引用されるようになることが多いんですけど、必ずしも最初の人たちがそれほど論文を引用されるかどうかというのは分からないので、スモールアイランド型というのは意外と論文の引用数が少ない。つまり、科研費の広くいろいろな好奇心に基づく研究が行われていて、そこからいろいろ核が出てきて、それが日本の得意な方法なんじゃないかと思っているので、ここのところは、実は引用数が多いのは、コンチネンタル型の流行りの領域で、特にその中でインパクトある論文が引用が多いんじゃないかと思っているところです。
ノーベル物理学賞を見ていても、最初のノーベル物理学賞を取った3人は、同じ研究室で4編ぐらい論文を発表しているんですけど、それぞれ引用数は300ぐらいですかね、この長い時間たっても。でも、その後の中村さんとか蔡さんの論文というのは、その方式を使って、その原理を使って初めて量子ビットをつくったのでのすけど、そっちのほうは2,300とか、一つの論文でものすごいもの引用数で、私は中村さんが(ノーベル賞を)取るかなと思いましたが、やはりその原理原則のところを見つけた人にノーベル賞が与えられたというので、そちらがスモールアイランド型なのかというのが私の印象でした。
以上です。
【大野座長】 ありがとうございます。重要なポイントで、メッセージをきちんと出さないといけないということかと思います。
いかがでしょうか。高橋委員。
【高橋委員】 ありがとうございます。伊藤委員が御指摘なさったところに類似したもので、ちょっと早めに発言させていただきます。私も前回欠席したんですけれども、まさに、領域をつくっていくというところについて、もう少し明確なイメージを共有できたらいいんじゃないかというところです。
概要の4ページこの1枚の中にも、左側のほうには研究分野という言葉が出てきていて、多くのほかのページには、領域という言葉が出てきます。やはり、ピンで立つ1人の1本のトップペーパーではなくて、複数の層の厚い研究領域をどう醸成していくかというときに、ともすると研究領域というのが非常にエスタブリッシュされて、数十年後に教科書になるようなものであるとすると、とてもチャレンジとしては時間がかかり、1人がいかにトップであってもなかなか難しいんだろうというイメージを持ちます。
一方で、そのエマージングなところの角度が上がっている、そういうアクティブなところに対して、ステップ0から1に上がるというところをきちんと、成長していることが分かるように名前をつけることが、エンカレッジにつながるんじゃないかと思っています。
実は、私自身は、博士号は社会工学で取得したんですけれども、ディシプリンが、ディシプリンというのはいろんな意味があると思うんですが、アカデミックな文脈ではいわゆる分野と領域と同じと捉えていいと思うんですけども、ディシプリンが成長するプロセスを社会科学的に研究したという論文があります。1950年代に石油化学と保健衛生学の領域がどういうふうにつながって成長していったかということなんですけれども、簡単に申し上げれば、恐らく分野にとって大きく異なるとは思うんですけども、十数年レベルで、最初は数人の研究者が共通の学術的興味を共有し、そこから十数人のコミュニティになり、学会の分科会のようなものへと連続的に動いていくと。そういう形で、十数年たつと1人のエクセレントなテクノロジーもしくはサイエンスが領域的なものになっていくというような、その成長のプロセスを追ういわゆる実証研究でした。
ここで、科学の再興、という文脈で大切だなと思うのは、コミュニティと、それを継続的に支えるカンファレンス。これは日本では、多くの自然科学の先生方はより御存じだと思うんですけども、いわゆる学会のように確立されたものではなくて、まだ形成過程の興味を同じくする研究者が集う研究会のようなもののイメージで、そこに継続的に積極的に参加することとで、そのコミュニティをつくり、その中心人物となっていくのではないかということです。あいにくそういうものは今、いわゆるファンディングでのサポートというのが、財団等でカンファレンスの開催のサポートなんかはされているんですけれども、なかなかホスト機関として開催するのは負荷が大きく難しい。例えば、研究所のようなところがいわゆるハブになるということで、もう少し日本もビジブルになるんじゃないかと思っていたりします。
欧米では、そういう仕組みがアクティブな印象で、2年に1回、継続的に開催されるその研究所のようなところでのカンファレンスに行くことによって、そのコミュニティが維持・発展され、その中で研究者としての名前が売れていく。このプロセスが可視化できるというところは一つ大切なことかなと思います。そういう意味で、ディシプリンの成長とか領域をつくるというところをもう少し、共有のイメージを持って、そのプロセスも明確にできれば応援になるのではないかなと思いました。
長くなりました。以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、仲委員、お願いします。
【仲委員】 どうもありがとうございます。御説明、大変よく分かり、よくまとめてくださったと感じました。特に、今出ているスライドのところの1から5のところ、本当に多様な、広く、ソフトに多くの人たちを巻き込んでいって、海外とのネットワークもつくりながら、2、3、4と来て、より物理的、情報的な基盤もつくり、そして最後に、5のところで、ピークとしての大学改革というような基盤をまた、つくるというふうなこと、大変ビジョンとしても見えやすく、説得力があると思いました。
意見を申したいのは、4のところなんですけれども、次のスライド行っていただきまして5ページ目の、4-2の研究環境の刷新ということで、これは津々浦々ある大学において設備等が老朽化していたりする、そういうのを新しくして、若い人たちが夢を持って臨めるようになるといいということを申してきまして、本当にこれは重要なことだと思います。
言えていなかったと思うことが一つあって、それは、今、多くの基盤をサブスクとかライセンス料に頼っているという部分があると思うんです。昨今、よく使っているWordとか、ああいうものの値上がりを目にして改めて思ったところですけれども、本当に日々使っているああいうワープロのWordソフトとか、Excelみたいなものから、専門的なアプリケーションとか、論文の掲載料であるとかオープンアクセス化であるとか、あるいは、AIを使う、ああいういろいろな最近のAIもみんなサブスクになっていて、これは、国外のいろいろな企業に、ある意味首根っこを押さえられていると言えるのかなと思ったところです。
そういうところが、ライセンス料を倍にしますよとか3倍にしますよというと、それに応じていかないと対応が不可避となるかと思うんです。そこにお金をたくさん使わなくちゃいけないというのは、やはり「科学の再興」の在り方としてどうなんだろうと、改めて思いましたいました。ここのところ、サブスクは必要だと思うんですけど、サブスクだけに頼らないで済むような情報的な基盤というのを入れていかなくちゃいけない、そこも強化する必要があるのかなと思いました。
そのうちの一つとして、例えば人文社会系では、いわゆる学術誌というのは学会が持っているんです。学会の会員が投稿できるようになっていて、国際誌もあったりもするんですけれども、いろいろな海外の雑誌社に頼らなくても、自分たちで出していける基盤があるわけなんです。改めて、むしろそれは遅れているんじゃないかと思っていたのですけど、私たちが主導権を持っている、そういう情報基盤というのはとても大事であるのかなと改めて思いました。
ということで、研究環境の刷新のところに、物理的なファシリティーの向上など、あると思うのすけれども、加えて、私たちがサブスクに頼っているような様々な情報的な基盤を私たちの手の元に持ってくる、コントロールできるようにするというのが重要かと思いました。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。極めて重要なポイントだと思います。
千葉委員、お願いします。
【千葉委員】 6ページの左側から右に移行していくというところが一つ、極めて重要な話なんですけれども、これは一体、何が原動力になって実現できるだろうかということで、一つは、大きいのはやはり大学の中のガバナンスということです。それで、これを掲げるのはできるんですけども、実現するというのは非常に難しい。じゃあ、それをどういうふうにしていくか、あるいはさらに日本の研究力を再興するには、何が不足しているかというところ、本質的なところを考えておく、あるいは共有していくことが大事かなというふうに思っております。
私自身は、いわゆる欧米型のスピード・競争・分業型モデルとは異なって、日本は調和・熟成・競争型モデルであると、そして、これは、ある意味、文化というよりも文明的なところから来ている、日本人の本質的なものであるだろうというふうに考えています。重要なことは、世界の科学が次に求める持続可能な知の体系を先導できるかどうか。要するに、今見えている景色ではなくて、次の世界を先導できるかどうかというところを見ていかないと、科学の再興はないだろうというふうに思います。私は日本が弱みだと思っている5つの要素を考え、そして、その弱みを考えることによって、何をしたらいいかが明確になるだろうと考えています。
1番目は、発信・論文化力の弱さというのがあります。ただ、これは見方を変えると、観察とか分析の深さ、あるいは世界に翻訳されてない知が多く眠っていて、これを文脈化するということが、実は日本の持っている大きなポテンシャルになるだろうということです。
2番目としては、分野の縦割りとか組織的硬直性というのが、日本は今直面しています。ただ、これはやはり見方を変えると、非制度的な連携力、要するに暗黙の協調というものが非常に日本は強くて、形式を超えた縁とか共感に基づいて進められる、要するにこれ信頼型のイノベーションというものが、日本がこれまで非常に強いと考えてきたことだと思います。この部分を忘れてはならないだろうということです。
3番目が、リスクテークできない、野心の欠如というものがよく言われます。これも見方を変えると、失敗を蓄積として生かす文化というものが日本にはあるだろう。要するに、改善型イノベーションというところもしっかりと焦点を当てるべきだろうと。
4番目が、この評価マネジメントの非対称性なんですけども、例えば研究支援人材というものを長らく今まで支援をしていただいてきましたけれども、私自身は、研究開発マネジメント人材というのは、支援ではなくて大学のトップ層になるべきものだというふうに思っています。この人事制度を大幅に変えていく。要するに、マネジメントというのは、経営だけではなくて研究開発もマネジメントです。これは、教授陣より上位の概念に立って、大きな責任と視点を持って大学を変えていく、これはまさに個々の大学が進めるべき大きなガバナンス改革であり、先ほどの6ページの図を実現する原動力になるのではないかなと思います。
最後、5番目ですけど、世界的視野から見ると、日本は内向きの傾向があると、これも皆さん共有しているところだと思いますが、これも見方を変えると、日本は、外圧がなくても動ける。これはもう何百年も前からそうなんですけども、内発的な誠実性から物事を動かしていくという特性を持ってきたということで、世界に合わせる科学ではなくて、その内発的なところを原動力に世界を動かす、日本的な誠実な科学というもの、これを忘れてはならないだろうと。今回の資料にお示しいただいた内容は、結構なんですけど、ただ、この日本がどれだけ強いものを持っているかということは、しっかりと内製化させて共有しないと、力にならない。力が湧いてこないと、ここに書いたことが実現できなくなってしまうということで、ぜひそこをみんなで共有していければというふうに思っています。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。続いて、染谷委員、安田委員、川合委員の順番でお願いします。
【染谷委員】 では、染谷から発言させていただきます。まずは、科学の再興に向けての提言のお取りまとめ、ありがとうございます。これまでの委員からの発言を非常に丁寧にまとめていただいていたものと思います。一方で、今改めて説明をお伺いし、これだけでは本当に、再興されないのではないかというように感じるところもあり、それの3点、ちょっと発言をさせていただきたいと思います。
まず、具体的な取組としていろいろ挙げられているものについて、何ら違和感はないんですが、一方で、融合研究の推進とか国際連携の強化、博士人材の育成、基盤経費の確保などが書かれているわけですが、これは今まで言われ続けていたけれども、期待通り発展していないと。つまり、ここに書かれていることは間違っていないんだけれども、なぜこれが実現されてないのかということの分析をもってきちっと対応しなければ、再興されないんだろうというのが1点目です。
2点目は、科学が重要になってきているという、2ページ目の(2)に書かれている分析、これも非常に正しいと思っております。地政学リスクの高まり、科学とビジネスの近接化、内需の減少、人口減少、しかしながら、これを基に、地政学のリスクが高まっているがゆえに、科学と経済安全保障の接続がどうなるのか、科学とビジネスが近接化するために産業政策と学術政策をどう連動させるべきなのか、あるいは、人口減少や内需の減少などを基に、科学技術と地域の発展というのをどう連動させるのか、こういう視点を持って、やはり、具体的なその接続部分を検討しなければ、この背景に反映した科学の再興というのはないのではないか、ここの部分についても、そういう視点での記載がないということについて、ぜひ考えたいというのが2点目です。
3点目、先ほど来、ノーベル賞の話があり、本当にこれは日本の基礎科学のすばらしさを示していると思いますが、一方で、ノーベル賞はゼロから1の研究に対して行われるのに対して、ゼロから1の研究が重要なのは言うまでもありませんが、1から10、10から100というものも、発展していかなければ恐らく科学の再興はないのではないかと。そういう点で見たときに、ゼロから1、1から10、10から100というのは全く必要となるものが異なりますし、また、必要なものというのは、分野によっても異ります。
ですから、例えば、若手の支援ということについて、これを否定する人はいないし私も大賛成ですけども、一口に若手といっても、どの年齢でどういう活躍ができるのかということも分野によって大きく異なりますので、単に、シニア層の研究費を全部吸い上げて若手にだけに分ければそういうことが起こるというわけではない。そういう点において、やはり分野や領域などの特殊性の状況に鑑みて、ここに書かれていることを丁寧に反映していただくことが重要なのではないか。
なので、冒頭の話で繰り返しになって恐縮ですが、ここに書かれていること自体に何ら問題ないというか、違和感はないわけですけれども、それを実行するための3点についてぜひ御検討いただき、今後の政策に反映していただきたいということで発言させていただきました。
私からは以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、安田委員。
【安田委員】 ありがとうございます。何かちょっと散漫になってしまうんですけれども、気がついた点からお話しさせていただきます。
この4ページ目のところに、具体的なイメージのところで「日本の研究者が、学術コミュニティはもとより各国の官民のセクターから常に認識されている」、これは、もっともだなと思うと同時に、国内で科学をきちんと守り立てていくためには、今、日本で立法府とアカデミアの直接の対話の機会がないということもかなり、ほかの先進国と比べてもちょっと特異的なところで、できれば本当に立法府、行政、民、学がきちんと国内で話し合える場というか、対話をできる場というのがあるべきではないかなということを思いました。それでお互い認識されていて、何が必要で何が食い違っているのかということを理解できるようになるという状態もすごく重要ではないかなと思います。
STSフォーラムとか国際的な会議でいろんなトップの人たちが集まる会議というのに私も行ったことがあるんですけれども、意外に国内でそういうセクターを超えた、もっとラウンドテーブルで対話していく方の話合いの場というのが実はないのかなということを思っておりまして、そういうものはつくったほうがいいと感じております。
やっぱり、私も文科省の親しくなった方とかとお話しさせていただくと、全然見ている世界が違うし、どういうふうに何を考えて何をよくしようとしているのかというところに初めて気づかされるということも多くありまして、これだけの熱意を持ってよくしようとしてくれて、こういう政策が出ているって、その過程をやっぱり科学者側が理解していなくて、一方的に通達されたかのように感じて、不満を持って、それに対してもあまりパフォーマンスが出せないまま、またそれを評価するみたいな、ちょっと悪い循環になっているような気がして、さらにもっと言えば、国民の理解を得てそれが政治家を動かして、全部のセクターでうまくいくというのが一番理想で、そこはもう「科学の再興」における基礎の基礎というところかなと思いますので、そこについても考えていく必要は一つあるかなと思いました。
あと、人を大切にできる業界でないと、やっぱりいい人が集まらないということで、それでこの中にありますような、若手の支援だとか何とかということになっていると思います。最近、若手のほうの支援は本当にいろいろ手を打ってくださっていて、かなり助かっているところがあるという認識を、私は中堅になりつつあって、若手というのはおこがましいんですけども、若手アカデミーの場などでお話が聞かれます。
この間、私が知った論文で、初めて書いた論文が社会的なインパクトをもたらしていることが多いといった内容があった。これは恐らく、ドクターの学生さんが、いいシニアのPIと連携していいものをつくっており、そのときのパワーみたいなものがやっぱりすごく大きいのかなということを考えております。恐らく若手に対して、好きなことだけやりなさいでも、それもいいことはあると思うんですけれども、やっぱり上の経験のある人たちの知識と、若手の思い切った発想、行動力とが連携したときにいいものが生まれているのかなと思うところで、そのあたりのバランスとか、世代を超えた理解と連携みたいなものというのも私はすごく大事かなと感じております。
また、グローバルの視点なんですけれども、外国人を呼ぶのに、いい人を当然呼んでこなくてはいけないんですが、ちょっと日本の給料だと厳しいのかなというのが正直思っているところで、外国人の人が日本のアカデミアの求人を見たときに給料が書かれていないことがあることに非常にびっくりするという聞きます。海外においては、研究者でいい人を取り合いにするときというのは、交渉が始まって(給与が)幾らで、じゃあ私がこっち出すから、所長にもするから来てくださいみたいな交渉がある中で、私は自分の給料には何一つ不満はないんですけれども、日本は、非常に優秀な人が、私と同じような給料で来てくれるかというと、恐らくもっといいオファーがあって採られてしまうというのはあると思います。本当に私はここに何も文句はないんですけれども、国外から非常に優秀な人を採ってくるときは結構制約になってしまうところで、そこも考えなきゃいけない部分かなというふうに思いました。
あと、指標のところで、論文数についてや、Top1%、10%の論文で指標から見える状況から問題提起が始まってしまっているので、どうしてもこの指標が上がったかどうかというところは、この政策をやったときに必ず見るというか、ほかの指標を見るにしても必ず見る場所になってしまうと思います。これには、先ほどの先生方がおっしゃっていたような問題点とか、本当に内実を伴わなければ意味のない数字だということは重々考えた上で、やっぱりこの数字を直接伸ばす施策も必ず必要かなと思っております。私が現場にいて感じるのは、結構いいデータでも、次の研究費を取るために、これを先にアクセプトさせたい、とにかく後手にならないで今出したいと思ったときに、あまり(難易度の)高いジャーナルをわざわざ狙わないというのはあります。
そこで、例えば研究費において、ほんの少しでもインセンティブがあるんだったら。この数字を上げること自体が目的ではないし、それで何か科学不正とかが増えてしまったりしたら元も子もないので、そういうものでは決してないことを大前提として、いいものだったらちょっとチャレンジしてみようといった空気をつくるというのは一つありかもしれないというふうに思ったところです。ここはすごく賛否両論あると思いますが、一つの考え方として、考えたところです。
あと最後に、国内での無駄な足の引っ張り合いだとか競争みたいなものが、限られた資源の中でどうしても生じてしまっているという現状があります。「科学の再興」が国際社会での日本のビジビリティーだとか存在感だとかという、ここの一番初めに書かれているようなことにゴールであるとすれば、競争があることが悪ではないですけれども、無駄に足を引っ張ってしまうような、研鑽していくような形ではない、限られたものを奪い合いになってしまって蹴落とすみたいな、国内での競争はなるべく削減できるような形で、みんなが協力して、いいものをどんどん国内で、いい科学を発展させていきましょうというような空気の醸成が必要かなというところは思いました。
抽象的な発言で申し訳ないんですけども、私からは以上です。ありがとうございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、川合委員、お願いします。
【川合委員】 取りまとめありがとうございます。議論されていたことをしっかりとまとめられていると思います。7ページのところに実際にやるべき具体的取組をまとめられていて、これの全て、妥当であると思います。
でありながら、さっき染谷先生がおっしゃったように、ここ、別に今まで何も書かれてなかったものではないので、これをどうやって実効的に動かしていくかというところに知恵が要るのかというところは全く大同感でございます。こういうものがみんな分かっているのに、スピード感を持ってやれないというところが多分問題で、先ほど千葉先生がおっしゃったみたいに、機関の責任をきちっと果たせるような構図が大事だというのも、私もそう思います。
本当の原因は何かって思うと、資料3ページの右下に書かれていましたけど、この20年~30年で世界的に科学に対する投資が上がっている中で、日本は予算額が一定です。「減っていません」ということは、それでよかったのかなというのはすごく強く思うところでございますが、やはり、世界と伍していくためには、伍するだけの経費はかけないと成果がなかなか出てこないというところが一番の大本です。
そのための政策を考えなきゃいけないというのがこの委員会のミッションなんだと思うんですが、資料にたくさん書かれている項目は全て納得するものですが、これをスピーディーに、かつ成果が上がるように運用するために、何が効率のいいやり方かということを考える必要があります。従来のように国主導で新たな予算を用意して、競争的資金として配分する仕組みは、お金は回っていてもすごく手間暇がかかっているなという気はしています。申請書を書く手間もすごいかかりますし、それから、実際に申請する側も評価する側も結局はどちらも研究者なので、ダブルに時間が取られて、研究時間の確保という問題とカップルしてくるんです。
それをスピーディーにやるためにはやはり、サブセクターをちゃんと設け、具体的に言うと大学や研究所の機関そのものなんですけど、そこに一定の裁量を任せるシステムにする。それで、お互いに信頼できるような関係をつくっていく。そのためには、責任ある運用をすればそれに見合ったリターンが得られるというエコシステムをうまく設計するのが大事かなと思っています。これ、前回も発言した内容なんですけれど。
なので、資料7ページの最後のところ、(5)の「基盤的経費の確保と」というところでそれは意識されているんですけれど、ここの中だけではなく、この(1)から(4)の項目に書かれているものの一部も機関に任せて運用し、実績が上がったらそのオートマチックに予算が増額されるようなループ(循環)を作る必要がある。都度申請を求める形式のままでは、手間暇かかるままでどんどん仕事量が増えていくのでは効率が悪いと思います。
ですから、どうやって機関に任せていくか、機関の成功実績を次の予算配分に申請するのではなく自動的に戻ってくると、失敗すれば減るということになれば、やはり責任のある運営体制をつくっていくと思いますので、そこを、少しじゃないですね、しっかり考え、そして第7期ぐらいから、そういう「機関に任せる体制」をつくっていくのがいいと考えています。
実際に、国際卓越研究大学であるとかJ-PEAKSというように、国が選定したところに対して一定量を出して、先行的にやってごらんというのは今走っているわけですけれど、それをもう少し、全体に広げるような形で国の施策の一部を機関に任せて、その結果を厳しく資金配分に反映していくというシステムをここから動かさないと、アイデアが出るたびに現場の手間がかかっていきますので、そこが大事なポイントかなと思っています。発言しているのは多分3回目ぐらいだと思いますけど。項目は非常にいいと思います。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
それでは、宮園委員、お願いします。
【宮園委員】 どうもありがとうございます。
まず、今年のノーベル賞が、坂口志文先生と北川進先生が選ばれまして、大変すばらしかったということと、このお二人の研究は何度も皆様がおっしゃっているとおり、30年以上前の、まさにその分野を切り開くような研究が30年たって評価されてノーベル賞につながったということです。今回の科学の再興に向けての提言案において、はっきりと、新たな研究領域や分野なのか、ちょっと言葉のことはまたこれから詰めていかなきゃいけないんですが、そういう分野をつくるような研究を継続的に推進していくということが重要だということで、ここをはっきり書いていただいたこと大変ありがたく思っています。
実は私、昨年まで文科省のライフサイエンス委員会の座長をしていたんですけれども、そこでも同じようなことを議論していたのですが、大阪大学のオルガノイドの研究で有名な武部先生が使われた言葉は、この創造的な研究、ディスラプティブな研究破壊的な研究ということでしょうか、そういうものを大切にしたい。5年も10年も、本当に一部の人が、彼らの場合ですとオルガノイドというのを見つけて、その基礎的な研究ではほとんど注目されない時期があって、その後はディベロップメンタルな、どんどんどんどん発展していくことになる。そうなってくると世界中の研究者が参入してきますし、研究費をつけやすくなると。でも、一番大事なのは、最初にディスラプティブな研究があって、その後にディベロップメンタルな研究につながっていくのが重要だというのを武部先生は強調していまして、本当にいい話を聞いたなと思ったのを覚えています。
こういう、最初の破壊的な研究はもちろん重要ですが、それをやっぱり発展させていく研究というのもきちんと支援していくことが重要であるということで、ここで、資料7ページに(1)と(2)で、国際ネットワークの参画といいますか、そういう発展的なところは(2)に当たると思いますので、そういった目で見ていただくと、今回の具体的な取組は非常に私としては、受け入れやすい構成になっていると思います。
ただ、伊藤委員がおっしゃるとおり、じゃあ(1)位をどうやって評価するかというのは、私も、現状ではTop1%論文ぐらいしか思いつかないなと思いながら、何かいいものが見つかればいいなと思いながら、ちょっとまだ答えが出ていないというのが現状であります。
あとは、2つ目に考えておりますのは、若手の育成ということを考えたときに、ぜひこの委員会では長い目で見た人材の育成ということを考えると、この前も申し上げたかもしれませんが、大学生だけでなくて、その前の若手の中学生、高校生段階から、本当に支援したほうがいい、大事じゃないかと考えます。
この素案の資料1-2の26ページあたりに、次世代の科学技術人材育成の強化ということ書いてありまして、STEAM教育やスーパーサイエンスハイスクール(SSH)とか、STELLAとか書いていただいて、多分これが非常に重要じゃないかと考えています。
ここに私が、もし可能であれば付け加えることとしては、高校生・中学生に、早期からのグローバル人材育成につながるように、例えば、高校生ぐらいから体験留学をするとか、そういった国際交流を支援していって、大学に入る前の中学生、高校生ぐらいから国際交流を進めていくことが、長い目で見たら非常に有効なのかなと思って発言させていただきます。
最後はまた、毎回医学分野の研究の話を申し上げますが、前回も申し上げましたが、東北大学の国際卓越研究大学の取り組みの見学に行きまして、SiRIUSという医学部の出身者のPIを支援しておられるプログラムがありまして、応募者も非常に多くて、東北大学の出身者だけでなくて広く人材を求められて、大変すばらしい企画で、これが多分、何年も続くと、恐らく医学部出身の研究者が医学研究をやる上でも非常にいいきっかけになるのではないかと思っております。
生命科学や医学の研究は、日本の研究の大体5割近くを生命科学、医学が占めていると聞いていますが、非常に重要だと思っております。こういうSiRIUSのような取組ももちろん非常に大事ですけど、もう一つ考えますのは、これは東京大学の医学部の、前研究科長をやっておられました先生とも話したことなんですけれども、「医局」の制度というのは診療をしっかりとやっていく上では非常に重要なのでありますので、臨床でそういう形である程度のヒエラルキーを持ったシステムというのは重要だと思いますけれども、研究に関しては、若手の、例えば、講師とかシニアの助教ぐらいの方々がPIとして、自分のアイデアで書いた論文は、教授が支援して、我々はクレジットと言いますけれども、ラストオーサーとかコレスポンディングオーサーは、きちんとアイデアを出した若手研究者がラストオーサーになって発表していくと、そういった風土をつくっていって、ぜひ医学部の若手研究者が自由な発想で研究できるようなシステムを広げていくと。
よく医学部の人たちは敷居が高いとかいろいろ言われるんですけども、決してそんなことがないように、多くの生命科学系のほかの研究者や、医工系、その他の異分野の連携も大変重要ですので、そういった形で推進していただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、私も発言させていただいた後、文部科学省、さらに、せっかく御出席いただいているので、経済産業省、内閣府からも、それぞれ、少し御発言をいただければと思います。
私も、非常によくまとまっていて、どうもここまでまとめていただいてどうもありがとうございました。これらの政策を推進するのが非常に重要だと思います。
ただし、政策を推進するに当たっては、それが研究者の負荷になるというのが今までの例だったわけです。新たな政策ができて、それに応募するとか、いろいろな申請書を書くとか、総出でやることによって、研究時間がどんどんなくなっていくと。ですから、そこをどうしていくのかということ。
また、川合先生がおっしゃられたように、科学というのはこれまで十分な投資がなされてこなかった分野だと思うんです。それは先ほどの図表からも明らかなわけです。その投資が乏しいことを前提に、いろんなことを苦しんで考えてきたわけですけれども、それはそれで今後とも重要になると思いますが、投資をされるべき分野だということもきちんと発信していく必要があるなと思っています。我々を取り巻く環境も少しずつ変わっているんだと思います。そうは言っても、やっぱり産学連携であったり、地域創生であったり、さらには国の在り方を決める、広い意味の安全保障への貢献というのも科学が果たすべきことなので、これらをどのように資金循環やリソースの循環と結びつけて、全体を考えていくかというのが、「科学の再興」にとって非常に重要なところだと思います。
そういう意味で、川合先生おっしゃられたんですけれども、研究者が全部やるのは無理です。また、千葉先生もおっしゃられていたと思います、ガバナンスがなぜここで強調されているのかということを、もうちょっときちんと位置づけてもいいのかもしれません。つまり、ガバナンスがないと全部研究者がやることになってしまって、そういう、大学にある種の構造がないと、今までの大学の構造では難しいと思うんですけれども、上から下りてきたものを下に下ろすだけという感じになっていますから。そうじゃない構造について、大学自身が頭を使って、卓越した研究や産学連携や地域創生、あるいは広い意味での安全保障などを担う、ということをしていくことによって、大きな資金循環が起きるということは重要だと思います。
これまでの産学連携というのは、一つは、「原価販売」の世界でありまして、かかる費用を積み上げて、そこにちょっとだけ利益を乗せて皆様に払っていただくという仕組みになっていて、幾らやっても大学や研究者が豊かにもなりませんし、身を削って何とか細々とたくさんやっているという世界で、そこから脱却しないといけないと思います。
一方で、それを社会に認めていただくためには、何を社会に約束するのかという点も重要です。幾つかお話がありましたけど、やっぱりKPIのような形で5年の「科学技術・イノベーション基本計画」に向けての議論ですから、その中で何を実現するということは言っていかないといけないと思います。そのためには、学術を担う研究をしている方々との対話も必要ですし、これは安田委員のお話にもありましたけど、大学の中では、「また文科省が」とか、「また本部が」といって、全然共感を持って受け入れられない文化もないわけではないんですね。ですから、そこを理解した上で、これは全体で引き受けるべきものなんだということを、多くの構成員に分かってもらえるような形にするべきなんだと思います。なかなか難しいんですけど。
最後にデータがこれから大事になります、ソブリンデータという観点で、データを解析した後で、ほかのところでがっちゃんこということは最近の情報科学の進歩でできるようになりましたけれども、データ自身はきちんと国が管理すると。ですから、いろんなプロジェクトごとにデータが細切れに保管されている状況というのはやっぱりまずいんだと思いますね。ですので、これをきちんとやっていくということ。
もう一つ大きな問題は、データの統合です。つまり、健康に関連する厚生労働省所管のデータとほかの研究データとが統合できない。それが統合できないとイノベーションは出てこないので、生命科学や健康増進するイノベーションを創出するためには、データを統合していかなければなりません。「科学の再興」に関しては、省庁を超えたデータに関する提案が必要だと思いますね。そこは避けて通れないんですけれども、必ずしも十分に書き込まれていないと。割と省庁の所掌を配慮した記述にとどまっているのかなと思いますけれども、ここは我々日本として工夫が必要なところだと思います。
長くなりましたけど、以上が委員の意見となります。
続いては、文部科学省から、西條局長、淵上局長、あるいはどなたか指名いただいて、時間の関係もありますので少しコンパクトにレスポンスをしていただけたらと思いますけど、いかがでしょうか。
【西條科学技術・学術政策局長】 今日はありがとうございます。非常に建設的な御意見いろいろいただきまして、ありがとうございます。
少し細かいところを、もし担当課長からフォローがあればとは思いますけれども、全体的に、非常に先生方にいろいろと御意見いただきましたが、最初の、まずは今日的な意味合い、それから将来を見据えた上での科学、いわゆる基礎研究の重要性ということをもう一度しっかりと議論していただいた上で、「科学の再興」がどういう姿なのかというところまで整理をいただいて、これを実際に実行に移していくためというところがやはり一番難しいというようには思っております。
我々もこれをまとめるに当たって、今回いろいろ御意見いただいているように、施策を書いていくと、「今までやってきているよね」、「今まで言ってきているよね」という話にどうしてもなってしまうところがございます。そういった意味もあって、正直なところ基礎研究は重要だというのはみなさんずっと言い続けていることであって、それが今でも同じように言っているということになってしまうと、結局のところまた、5年たった第7期計画が終わったときも、「あのときもそう言っていたよね」という状況になってしまうということを危惧しておりまして、今回は少し大きく議論いただいて、なおかつこの後また、もう少し、その数値目標も含めて、少しお話をさせていただければと思っているんですが、5ページにあるような形で、この第7期の中でどう変えていかなきゃいけないかという点を前面に出していくということと、その例示としての6ページにあるような形で、今回も御指摘いただいていますが、システムとして大きくどう変えていくのかという点を、一番シャープに打ち出したいと思っております。
どうしてもやはり、「大学の研究現場は個人経営だよね」みたいな形で動いているところを、組織としてしっかりと捉えて、研究者そのもののパフォーマンスをしっかり伸ばしていくということができる土壌をしっかり作り上げるということが一番大事かなと思っているんですが、これも我々が、正直なところ、これまでも言ってきていることですけど、これをどれだけしっかりと実行に移せるかという点を、もう少し詰めて対応がしっかりと見えるような形に持ってなきゃいけないと思っているところでございます。
当然のことながら、資金の投入というのは、これから大きく入れていかなければいけないですが、それを今までの仕組みの中でやっていったら、例えば研究機器、今回、コアファシリティ化を前面に出させていただいていますけれども、やはり個人経営で各研究者のところに機器が全部行ってしまうような状況であれば、かなりの額を得たとしてもその効果というのが期待したように出てくるのか。それであれば、やはりコアファシリティ、また、千葉先生からありましたように、まさにチームとして、サポート人材ではなくいわゆるパートナーとしてしっかり、千葉先生の言葉を借りると、パートナーどころかもっと上のマネジメントということで上位ということなのかもしれませんけど、そういったところをしっかりとそろえていくような仕組みづくりをどうつくっていくのかという点は、もう少し、今日いただいた意見も含めて、我々の中でも詰めていきたいと思っております。
また、先ほどいただいた、まさにアカデミアと行政側の意識をどう合わせていくかについては、仲よく何でもやればいいという話ではなく、本当にどういうことを考えてやっていくのかというところはしっかり議論していかなければいけないとともに、その周りにあるパブリックに対しても、どういう形で、この重要性を理解していただくか。細かい話かもしれないですけれども、応援いただけるような仕組みはしっかり考えていかなければいけない。今、アメリカでも見られているような、パブリックからも、科学技術の研究費が切られてもあまり文句が起こらないような世界をつくっては、やはりいけないと思っていますので、その部分も含めて少し考えないといけないと思っております。
難しいテーマですので、ぽっと何か新しい施策をつくれば解決できるということにはならない領域ですので、しっかりと取り組みたいと思っております。
【大野座長】 まず、局長2人からお話をいただきたいと思います。
【淵上研究振興局長】 研究振興局長の淵上でございます。今日は研究振興局から私が参加しておりますので、御説明させていただきたいと思います。
まず、投資の拡大という意味で、私の担当で言えば、研究費をしっかりお支えできるような規模で確保すると、こういうことがまずは大事だと思います。科研費をはじめとして基礎研究にかかる経費をしっかり確保していきたいというふうに思っています。あわせて、研究者の数自体も、これは科政局とも連携してですけれども、研究者の数自体をしっかり増やしていかないと、研究費を配ろうと思っても、研究する方々がおられないということ、あるいは、より質を確保するという意味でも、研究者のベースというのは必要だろうというふうに思います。他国と比べてそこがまだまだ足りないという状況だと思いますので、両輪で進めていく必要があるかなと思います。
それから、研究力の向上という観点で今回も大分御議論いただいておりますけども、我々も若手と国際と新興領域、この辺がキーワードだと思っていますけれども、私が個人的にまだすごく悩んでおりますのは、新興領域ということを審査するのをどうするかということでございます。新しい領域であればあるほど、それがどういう意味を持っているのかとか、インパクトがあるのかということ自体がなかなか難しい面がございますし、領域が複合的になってくればくるほど、個別の分野の先生方ではなかなか審査しきれないというふうなことがあります。
今の科研費のシステムでも、かなりいろんな工夫はしておりますけれども、テーマが挑戦的であればあるほど、なかなかそれをすくい上げにくいみたいな側面もあるので、これを大胆にどういうふうにすればアクセラレートできるのかというのは併せて考えていく必要があるかなというふうに思っています。また、この点での何か具体的なアドバイスがあれば、大変参考になるなと思います。
また、研究費自体を国だけではなくて民間とも一緒になってやっていこうという取組も始まってきております。民間企業が研究費を出す場合に、JSPSのこの審査のスキームを借りようということで、つまり、科研費の審査システムと民間の方々のファンディングを連動させながら、より質の高い研究に、また、企業側にとっても意味のあるものにしていこうという動きが出始めておりますので、こういったものも、これからどんどん振興できるような環境ができるといいかなというふうに思っております。
それからまた、第2回で私、御説明させていただきました、AI for Scienceで、これから科学全体を革新していきたいというふうに、していく必要があるだろう、それはどういう環境をつくっていくのかということでございますが、これも科政局とも連動をしてやっていかないといけませんけれども、AI for Scienceの環境をどうつくるのかということで、できるだけふんだんな環境があればいいわけですが、全てができるわけでありませんので、これをいかにコアファシリティ化しつつ、それから最適な環境で皆様方がアクセスできるようにすると、このシステムをどうつくっていくのかということも併せて検討していかないと、実際にワークしないということになるかと思いますので、こういった面でも、少し知恵が要るかなというふうに思っております。
そのときに御説明を申し上げたときに、染谷先生だったと思いますけども、もともとのデジタル化時代の遅れもあるので併せてやっていく必要があるというふうな御指摘もいただいております。そういうのをパッケージで、全体で進めていく必要があるかと思いますけれども、これは千葉先生じゃありませんけども、デジタル化自体がまだまだ課題であるとすると、そこが課題であるにもかかわらず、現在の我が国の研究力はまだ世界で戦えているレベルにあるということだと思いますので、潜在力としては、そういう環境を整えることでもっともっと高まっていく余地があるのかなというふうに、逆に思ったりもしたところでございます。
そういう形でいろいろ進めていきたいと思っております。いただいた御意見、あと、もう一つ、川合先生から、大学のガバナンスの新しい形というか、自分たちで、より裁量的にやっていけるような仕組みをチャレンジしながら広げていく必要があると、まさにそのとおりだと思います。実は、指定国立大学もそのつもりで、幾つかの分野について規制を緩和して、各大学の独自で裁量でできる部分を増やしてやってきたというところがございますけども、もう少しダイナミックにそこをやりながら、また、これは資金との連動だということもあると思いますので、トータルでしっかりやっていけるように進めたいというふうに思ったところでございます。
私も半分感想みたいになりましたが、以上でございます。
【大野座長】 ありがとうございます。ほかに、委員の方々にも割と短く発言をお願いしていますので、3分ぐらいでいかがですか。
【松浦大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術学術政策連携担当)】 高等教育局は私から。大学のガバナンスのところから、まさに5ページ目のところ、丸5の最初のポツにも書いてございますけども、挑戦を促す期間内の資源配分ができる体制、これはまさに運営費交付金あるいは研発法人の交付金を指しているかなと。昔、ケンブリッジ大学の先生とも、機関評価とか個人評価、意見交換したときに、やはり研究グループとか組織としては、ある程度その一定年数でちゃんと評価をしますけれども、個人の研究は特に挑戦的な研究をしているというのは、やっぱり組織として温かい目で見守りながら、時間かかっても芽が出るのを支援すると。まさにその芽が出るところを支援するというのがこの機関の役割かなと。
萌芽的といっても、その種をつくったりまいたりしないと芽が出ないという意味では、ここのところについては、来年度の要求も含めて頑張りますし、第5期の中長期目標、令和10年度から国立大学法人始まりますけれども、そこに向けてしっかり、この基盤的経費がちゃんと確保できるようなところは、次期基本計画の中にも、現在の我々の立ち位置はしっかり記載できればいいかなというふうに思っています。その上でも、やっぱり大学のガバナンスをきっちり確保した上でないと、砂地に水をまくようなことになりかねないので、そこはしっかり進めていきたいと思います。
【大野座長】 どうもありがとうございます。赤池研究官。
【赤池科学技術・学術政策研究所総務研究官】 科学技術・学術政策研究所でございます。指標についての専門技術的な補足をさせていただきます。指標は、伊藤委員からも御指摘いただいたとおり、あくまでも代理指標というか、現象の一部を取り上げたものでございます。例えば、先ほどありましたアイランド型というもの、これはTop1%の中の区分ということでございますので、先生の御指摘のとおりだと思います。
前提として、本来目指すものがあり、それに対してごく一部の、一定の側面から捉えたものが定量指標であります。また、定量指標につきましても、例えば政策とか経営の効果を示すためのいわゆるKPIと言われるものと、現状を把握するための指標、いわゆるモニタリング指標というものとは明らかに違う目的でありますので、この辺りを整理しながら、政策当局とよく相談しながら、今後、弊所として貢献していきたいと考えております。
以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
それでは、武田課長、永澤参事官、それぞれちょっとだけ御発言をいただいて。
【武田経済産業省イノベーション・環境局イノベーション政策課長】 では、3分も使わずに。まず、発言の機会いただきましてありがとうございます。先ほど大野座長からも少しありましたけれども、全政府的に科学の再興をやっていくために何ができるかということだと思っていまして、1回目に申し上げたかもしれませんが、この紙にもありますが、科学の力も国力そのものに直結するという認識の下で、文科省のみならず各省庁、科学の再興にどう貢献できるか考え始めているところだと思っています。
なので、今回まとめられた紙は当然、文科省の方々が文科省の中でできることを中心に書いているのでこういう書きぶりになるのだと思いますけれども、今日のオーディエンスのアカデミアの方々も含めてぜひお考えいただきたいのは、文科省以外のリソースも含めて、どう使えるのかというのは、ぜひ積極的にお考えいただけたらありがたいと思います。
例えばですけれども、この国際性というところは重要なテーマで、政策としてもやるということが書いてあるわけですが、もちろん各国に散らばっている大使館の、文科省から行っていらっしゃるアタッシェが頑張るということだとは思うんですけれども、例えば経産省ならJETROがあるし、外務省ならJICAもあるしということで、それぞれ持っているファンクションや強み弱み、違います。なので、大学だったりとか、研究者の方々が、ニーズに応じて、日本政府当然、対応するということになっていくと思いますので、プロアクティブにお考えいただけたらありがたいと思っています。
もう1点は分野別の話で、例えば、エネルギーに関する科学が弱くなって困るのは、文科省はもちろん困ると思いますが、経産省は非常に困ります。同様に通信に関するものが弱くなって困るのは総務省だったりするということだと思いますので、例えば我々経産省も、NEDOが理研とか東大に量子コンピューターを配するみたいなことも始めているわけですけれども、いろんな文科省を超えた政府全体の使い方というのはあるんだろうと思っていまして、ぜひそういう目線でお考えいただけたらありがたいなと思ってございます。
以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
それでは、受け取る側の事務局の永澤参事官、お願いします。
【永澤内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局参事官(統合戦略担当)】 ありがとうございます。内閣府、CSTIの永澤でございます。様々御議論いただきまして、本当にありがとうございます。基本計画を取りまとめる立場といたしましても、大変御熱心に御議論いただきまして、こうした内容を基本計画に反映すべく、やっていきたいと思っております。
先週、高市新政権が発足しまして、総理からも、科学技術についての言及が国会のほうでございました。少しだけ申し上げたいと思います。「強い経済の基盤となるのは、優れた科学技術力であり、イノベーションを興すことのできる人材です。公教育の強化や大学改革を進めるとともに、科学技術、人材育成に資する戦略的支援を行い、「新技術立国」を目指します。」というふうに言及されております。こうした新政権の方針も踏まえながら、基本計画を策定していきたいと思っております。
その上で2点、今回、科学の再興ということで、科学技術という切り口より少し科学にフォーカス当てて御議論いただきまして、科学は技術、イノベーションのまさに基盤となると思っておりますので、今回の検討を踏まえてしっかりと、技術、また、イノベーションをどうするかということもしっかり基本計画で打ち出していけたらと思います。
また、様々、委員からも御指摘がありましたが、どうやって実現するんだ、どうやって実行していくんだということについては、当然私も一緒に考えていきたいと思いますので、ぜひ引き続き検討のほう、よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
それでは、石川課長、お願いします。
【石川研究開発戦略課長】 3点ほどですけれども、1点目は、染谷先生のほうから「外との接続」という点御指摘いただきました。今回の「科学の再興」については、基礎研究をどうするかとかという点を中心に検討してきましたが、先生方からも御意見いただいていますけれども、どこまで周辺との接続をこの科学の再興という文脈で書くかというのはちょっと悩んでいたところもございます。この点については今後、内閣府で全体として取りまとめていただく基本計画全体の中での位置づけも考えながら、この有識者会議の提言としてどこまで踏み込むべきかいうところは、また、いろいろ御検討、御相談できればと思っています。
2点目としては、指標に関してのところです。4ページ目のところは、中長期的なフォローアップということで書かせていただいていますが、前回、前々回などの御議論にもあった通り、やはり、どうしても論文というのは、(成果は)すぐに出てくるというよりも、研究やって成果が出て、それから論文書いてと遅れが出てきますけれども、それをどのように見ていくかという点と、今日も御意見ありましたが、次の5年間で重点的にトレンドを変えるべきものというので挙げている点が、実際に施策を打って、現場の行動や様々な制度において、トレンドが変わってきているかどうかをどうモニタリングしながら追いかけるかという点も見ていくべきかと考えています。そういう意味では、5ページ目のところは、アンダーバーだけで書いている部分について、重点的にトレンドを変えるにあたり、どういったものを見ながらそのトレンドの変化を追いかけられるかという点も、先生方から御意見いただければありがたいと思っています。
最後に、先生方から「前からも言われているようなことですよね」という御指摘も今日もいただいていますけれども、我々としても、5ページ目、6ページ目などにもあるように、今後どう変わっていけるかという点と、また、これからの次世代の人たちに、アカデミアで研究している先輩たち、同僚を見て「楽しそうだな」、「自分もここに入って研究したいな」というような、そういうわくわく感のあるメッセージをどう打ち出せるかについても検討しておりまして、その辺も、ぜひ先生方からの御意見など御示唆いただければありがたいと思っています。
私から以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。資料5ページの空欄部分には今後数値が入るということでね。5ページの空欄部分に数字がこれから入るということで、どんな数字を入れたらいいのか、どういうことをモニターしてったらいいのかということに関しても意見があればお伺いしたいと。
【石川研究開発戦略課長】 はい。
【大野座長】 そういうことで、それも含めていかがでしょうか。
川合委員、お願いします。
【川合委員】 ありがとうございます。何かいろいろ具体的に悩まれることが出てきたので、少し言いやすくなったかなと思います。先ほど、大学に対して少し機関に任せるシステムをと申し上げて、多分、松浦審議官はそれを受けて運営費交付金の話をされたと思います。ちょっと私、個人かもしれないんですけど頭にあるのは、運営費交付金で全部を育てるというのはもちろん大事なんですけど、強いところのいいアイデアがあるところに瞬時にフィードバックをかけるとすると、国の競争的資金だったらそこにオーバーヘッド(間接経費)をどれだけ加算するかということを新しい視点で考えるというのが、フィードバックが早いかなと思っています。
そのオーバーヘッドは、今までは一律でいろいろやっているんですけど、民間企業との共同研究に対するオーバーヘッドは各機関でこの頃、独自に出せるようになっています。もっと具体的に言うと、自分たちとしてこういう項目をこれからやりたいので、国の施策の中に入っている項目の中に、申請時にそれを宣言して、それに対して何%、この研究費から回しますという宣言をすることが可能になると、少しフレキシビリティーがあるかなと思っています。
もうちょっと具体的に言うと、先ほど武田課長から御指摘があったみたいに、別に文科予算だけじゃないよと、研究者は実は文科予算じゃない予算も取っていますので、大学とか研究所で管理するときには、そこにも機関運営費に対する考え方を入れることができれば、それぞれの項目に対して、これだけここから、パーセンテージしか提示できないかもしれませんけど、やるんですという宣言をする。それで、期間としては、たくさんの項目の中のものをインテグレートすると、こういう項目に総額としてこのぐらい出すという表は簡単に整備できるので、そういう形で、力のあるところにフィードバックがかかるような施策を、私見でございますけど、あったらいいかなとちょっと思っています。
もう一点、淵上局長でしたっけ、その新興領域をどうやって評価するかと。これ、評価できないという評価も大事じゃないかと思っています。新興領域が本当に意味のある領域になったかどうかって結構時間たたないと分からないはずで、いろんなものを生み出している中で、トライアンドエラーの中で淘汰されるものもあれば膨らんでいくものもある。それをうまくコントロールしているかというのを、例えば機関がやるんでしたら、それを少し長期で見るしかやりようがないので、中期計画の6年の中で成果がすぐ出ないものに対しても、評価できない評価をどうするかというのを、やっぱりもう一つつけておかないといけないのかなと思います。
この間、某大学で、将来性に対しても評価項目をつくるんですとおっしゃっていて、これは面白いなと思ったんですけど、この将来性ってどうやって数値化するのか分からない方が大半いて、みんな、答えに窮するようですが、何かそういう簡単に数値化できないけど本質的に大事なものという、今の評価軸では書けないものに対する評価、ふわっとするしかないと思うんですけど、それも残していただくことがこの新興領域みたいに、今、評価軸がないものに対する価値観を置くときには大事かなと思います。
すみません、数値として何を入れるかにはならないんですけど、ちょっとそんな印象を持ちました。以上です。
【大野座長】 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【染谷委員】 染谷です。数値を入れる話ではないんですけども、先ほど武田課長から、エネルギーについては最も経済産業省が困るという、これは私の中では非常に納得感があって、今日のエネルギー政策、あしたのエネルギー政策は経済産業省がきちっと考えるというのは今までどおりかもしれませんが、時間が長い部分でそこが本当に困る部分について、やはり経済産業省と文部科学省が一緒にやって、こういう基礎科学を含めてやるというのは、今までにも全然できてなかったわけではないかもしれませんが、こういうところを強化していっていただきたいと思いますし、それはエネルギーだけでなく、電波であれば総務省であったりとか、いろいろそういうところを一緒にやっていくと。
その際に、科学技術を強化しようとすると、必ず人材育成が重要になって、人材育成やろうとすると、やはり教育をきちっとしなきゃいけないということになり、やはり長期軸で見たときに、教育というと、これは文部科学省の本丸なので誰も触ってもらっては困るというふうになると、やはりそのエネルギーを経済産業省とかと一緒にやるというところが多分うまくいかない。
なので、もうここの分野ごとにどんどん省庁間の縦割りを乗り越えて、長期軸のところを、科学技術をプロジェクトだけでなく、人材育成とか教育とか全部一緒にやれるようになったら、私は本当に科学技術というかこの科学というのは再興していくのではないか、現代的に強化されていくし、先ほどの淵上さんからもお話があったように、省庁間を超えた、大学に流れるというか大学に措置される基礎科学の予算も増えていくでしょうし、ぜひこの連携を、大学の分野だけを連携するようにということは我々も宿題としてやるべきですけども、省庁間の連携においてそこを進めるということも、ぜひ皆様方にお願いしたいと思います。
【大野座長】 ありがとうございます。
高橋委員。
【高橋委員】 川合先生が御指摘なさった、財務に関してもう少しフレキシビリティーをということに関して、具体的な一つの提案をさせていただければと思います。
科学研究費補助金が多くの大学にとって非常に重要な財源ですけれども、それをきちんと運用した大学については、例えば、今、基金が多くなっていますが、若干使いにくい補助金に関して、その流用の幅が、2割以下300万円って今キャップがかかっていますけれども、それを10%上げる等の、いわゆる100もらったお金に対して100使い切るような最高効率を出すような学内のルールがきちんとしているという認定し、それを前年3年度分だけちゃんと運用されていればそういう大学には運用の幅を広げる、そういうようなインセンティブをつけるのはどうかと思っています。
これ実は、URAがアメリカで、特にポストアワードが組織に定着し、組織の中でそれなりに見えるようになり、研究者と事務方が一緒にうちの大学のお金を使いやすくするというシステムがうまくいった経緯がアメリカではあります。それの重要点は何だということをずっと調べたときに、最終的に公的競争的資金の間接経費の流用度というのがきちんと組織で管理されていれば、向こう2年なり、そういう組織体制がちゃんとしているところに対しては、その流用度を自ら上げられるというような、ちょっとした運用なんですけれども、それでもやはり、間接経費を自由に使えたり、競争的資金の費目間流用が少し自由になることは研究現場にとってはとてもいいことだと思いますので、そういうところから組織の財務管理体力を見ていくというのは一つあるのではないかと思って、以前、一度、10年前ぐらいにURAの定着という観点から申し上げたことです。ただ、少し、頂いたお金を効率的に使うという面でも使えるのかなと思いまして、今申し上げた次第です。
以上です。
【大野座長】 ありがとうございます。
オンラインで、仲委員、お願いいたします。
【仲委員】 ありがとうございます。その指標を考える際なんですけれども、(1)の新たな研究領域というのはなかなか評価が難しいので、寛容で長期にわたる、小規模の研究基金、競争的基金であるとか、あるいは運営費交付金の配付というのが重要なのかなと。それがどれぐらいなされているかというふうな、今よりも増して、そういう運営費交付金などが配付されているか、みたいなことで測っていくのかなと思いました。
(2)などは、どれぐらい国際交流であるとか派遣ができているかということなので、数値化しやすいのかなと。特に(3)なんですけれども、博士課程に進む人の数というのも、例えばSPRINGなどで効果があるということですが、それだけじゃなくて、先ほど宮園委員のお話もありましたように、若手の本当に大学よりも前の段階からスタートできるといい。それで、学校教育で科学の、科学技術の重要性であるとか、夢をまた持ってもらうというのは、子供だけじゃなくて親御さんなど、国民の多くに影響を及ぼすものではないかなと思うところです。
研究というのは、PIになって、新しい領域を開拓するというのも、そういうわくわくする面白さもあるけれども、例えば計算すること、プレゼンの資料を作ること、論文を書くこと、それをエディティングすることなど、いろんな面白さが詰まっているわけですので、学生さんが大人になって職業を得るときにも、楽しいと思えることが研究の中にいろいろ散らばっているということをキャリアパスなどで伝えていくというのがすごく重要だと思います。それで、そういうことを指標として入れられないかと思います。
(4)は、本当に老朽化がどれぐらい刷新されているのかというようなこととか共有化の程度というのが指標になるかなと思いました。
それで、(5)はもっと考えないといけないんですけど、今思ったことを言いました。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
それでは、千葉委員、お願いします。
【千葉委員】 この5ページのところ、駆動力になるのは、一つの大きな要素は、多くの委員がおっしゃるように財政的なものだと思っています。先ほど大野座長が、大学は原価販売をしているとおっしゃいました。まさにそのとおりだと思っています。私も今、大学経営を担当している人間としては、共同研究はやればやるほど大学は資金がなくなる、実施しない方がむしろ資金力が増すのではないか、簡単に言うとそれぐらいの感じです。
要するに、共同研究何億円、何十億円と言うと聞こえはいいんですけども、経営力に全然結びつかない。私の概算では、間接経費は30%、40%でも全然足りない。100%じゃないかなと。100%、つまり直接経費と同額ということです。これは海外の大学もそうですし、何を意味するかというと、要するに人件費とか、様々な設備の老朽化とか、そういうものを大学経営に必要な基盤も算定していくと、それぐらいの額は最低で必要。
ただし、これを個々の研究者が、例えば企業と交渉できるかというと、極めて難しい。これは、マネジメント人材は要するに経営層として上位に行くべきであるというのがこれです。じゃあ、何をするかというと、ただ交渉したって企業はお金出しません。やはり、次にやるべきことは何か、まだみんなが気づいていない、あるいは企業も気づいてないけども重要なことは何かを提案して実現するのが、私は大学の役目だと思っています。
このまさにインテリジェンスの部分、これがこれまで欠けていた。企業がこの技術開発をしたいんで、お金出しますから何とかなりませんかと、簡単に言うとそういう方向性があったんですけど、そうではなくて、次の時代はこうですよ、やりませんかというようなことを大学が示していく。要するに、大学が価値をつくって、そして、財政的なところも交渉する、こういう姿勢を持っていくと、例えば5ページにあったものが、より継続的に発展的に進むのではないかなということで、これはもう日本全体としての考え方を変えていくということがすごく大事ではないかなと思います。
以上です。
【大野座長】 ありがとうございます。そのとおりだと思います。
じゃあ、安田委員。
【安田委員】 すみません、ありがとうございます。じゃあ、手短にというか、1番の、新たな研究領域への挑戦の抜本的な拡充、これもすごく難しいなと思っていて、短期でもなかなか、結果が出たのかどうかよく分からないですし、先ほどのように評価ができないということを評価するというのも一つ重要だと思うんですけれども、一つ、でもすごくこれをつくるのに重要なことが、以前も議論されていましたが、幅広い視野だとか、俯瞰的な物事を考える研究の専門以外のものに何か持っている人材ということがこれに入っていくことが重要で、そういう人たちの育成だとか、その後の、もうこれ、数で言うんだったら研究費が全体の中でどのぐらい割り当てられたかというところだと思います。ただ、限られた予算を配分するになるので、ここばっかりにお金を費やすわけにもいかないとかというところで、非常に何か悩ましいなと思っていたところでした。
3番目の優れた人材の育成に関してのところなんですけれども、今や研究費と教育費って正直分けられないものになっていて、科研費とかもほぼ、博士の学生とか修士の学生とかにしたら、学部生を育てるために結構使われているというか、それを育てつつ研究を行っていくということを考えますと、それをちょっと見える化するということが大事なのかなと思いまして、科学技術人材、これはちょっと2番目とは意味合いが変わるんですけれども、研究費の中から、どのくらい若手の層が育つ、科学を学ぶのにも関わっていたのかみたいなものは、何らかの数字に変えて見える化してもいいのかなというふうに思いました。
あと、博士人材も、今後はまた、できれば民間とかも世の中にもどんどん、アカデミアはどんどん縮小していく中、人が増えるとポジションがない問題というのはよくあると思うんですけど、民間とか省庁とかそういうところでも活躍してくれるのが一番よくて、私1回どこかで見たことがあるんですけど、民間でも博士人材に対する評価みたいなものを行っていて、結構、昔よりも博士人材の印象というか、こういう人たちがいるといいという、印象がよくなっているといったパイグラフを見たことがありまして、そうした、アカデミアの外に出ていった人たちの世の中での活躍ぶりみたいなものも指標に入れるといいのではないかなというふうに思いました。
あと、若手アカデミーのほうの会議では少しお話が出ていたと思うんですけど、割合としてその数字が絶対数だけだとちょっと追えないところもいろいろ出てくるので、割合、パーセンテージとして出してくれるといいんじゃないかという御意見もあったかと思います。
すみません、以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
それでは、伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】 ありがとうございます。皆様の意見を受けて私もフォローアップしたいんですけども、まず、川合委員のおっしゃったような、間接経費というのは私、非常に重要だと思っていて、それを各大学それぞれが交渉するというのは難しいので、もう少しコンセンサスを取って基本計画の中にしっかりと書き込んでいくようなことがあったほうがいい、それはもう数値目標とか数値としてこれを目指すというようなことを書くほうがいいんじゃないかと私は思っています。
ですから、そういう意味では、千葉委員のおっしゃったように、私たちももうあらゆる意味で、例えば法務部をつくって法務的な様々な対応をするときに、慶應の場合は様々な慶應出身の弁護士に相談すると、それなりの値段でやってくれる人たちがいるところはまだいいんですけど、全体の意味でガバナンスをやっていくという意味では物すごくお金がかかって、それをどういうふうにやっていくか。
特に、例えば今、経産省なんかは、これから理工系人材がもっと必要だということを数値で示している中において、もう国立大学での理工系はこれ以上なかなか増やせないので、今、私立大学において理工に転換するプログラムが3,000億円の基金で進んでいるところですけども、じゃあその3,000億円の基金でどんどん私立大学を理工に転換していったときに、どうやって、そこがサステーナブルにガバナンスも含めてやっていけるのかということを考えたときに、ひたすらその文部科学省が補助金を注入していくことはできないので、できることというのは、今、安田委員もおっしゃっていましたけど、教育と研究というのは意外と切離しができなくなってくるので、グッドプラクティスをやっているところの教育の、例えば様々なセンターオブエクセレンスみたいなプログラムに対してもしっかりとした間接経費をつけるということです。
つまり、教育に関しても、実はそのインフラを支えている、基礎的業務をしている人たちがたくさんいるわけですから、そこら辺のところをしっかりとつけていかないといけないので、教育、研究そして産業からの研究費も含めて、最低でもこれぐらいのオーバーヘッドまたは間接経費というのをもう示していかないと、実は大学ごとに、うちは20%、うちは10%と、教員がそれぞれ研究者が異論を唱えるのでできないと。これをやっているともう全くできないんじゃないかというのは私の今の持っている印象です。それは、別に研究者からお金を取るわけじゃなくて、研究者が研究できるようにするために必要なものだということを、もっとみんなが理解していかないといけないんじゃないかなというのは思います。広く薄くただ配るのではなく、やはり、その努力したところに対して、そこら辺のところがしっかりと施設として用意されていくことが必要かなと思っているところです。
以上です。
【大野座長】 ありがとうございます。
よろしいですか。
【宮園委員】 私はよろしいです。
【大野座長】 教育はすごく大事で、これからも高度な教育をきちんとやっていかなければいけないわけですし、高等教育としても、そして小・中等も手当てをしていかなければいけないと。一方で、やる人たちというのは、高等教育で大学を考えると、大学の構成員なので、教育に割けば割くほど研究に携わる人は少なくなると思います。
21世紀COE、大分前の話をして、前もここでちょっとしましたけど、すごく象徴的だなと私は思っているのは、やっぱり教育をするというのはすごくいいことなので、そういうプログラムを立てたと。受ける側もそれはいいことだからやろうということで。しかし、そのときの時間的なコストというのは物すごく大きかったんです。なので、研究できなくなる人が結構出ちゃった。それは教訓としてきちんとこなしていかなければいけないなと思います。
政策をつくったのがどうしたとか、受けたのはどうだというだけではなくて、大学自身も、こんなことをやっていたら、あなたたち、研究できなくなるでしょうという声は一つもなかったんです。あのプログラムを幾つ取ったというのがすごく大事な、マネジメントとして大事なことであって、研究の現場がどうなっているかということは一切、関心がなかったわけじゃないのかもしれませんけど、こういうことをやっていたら研究の時間がなくなるだろうということを言った大学のトップの人は聞いたことがないのです。
ですから、やっぱり、研究の現場を理解して、そこを育てる、あるいはちゃんと、いいバランスで研究と教育と様々な活動ができるようにすることが大学に求められていて、少なくともこれまではそれはあんまりなかったと。ですので、ここにガバナンスと書いてあることが非常に重要なことだと私は思います。ガバナンスができないと結局は研究者が全部やらなきゃいけなくなって、時間がなくなって今までの繰り返しということになるので、そこを、世界をリードする研究大学群の実現という意味は、そういうところが非常に大きいんだろうなと私は感じています。
あと、よくある話ですけど、ここは若干愚痴っぽくなるのですけども、結果にコミットして政策を打ってほしい。私が何度か、こういうことはできないのか、ああいうことはできないのかと言ったときの反応として、比較的多かったのは、できるようになっています、あとはあなたたちの努力の問題ですという答えが返ってきて、それで、努力しようと思うと、実は書類をこんなにたくさん作らなきゃいけないとか、その後、財務省の協議もあります、あれもありますといって、非常に困難な道のりであり。やっぱり学内をちゃんと、皆さんの時間をうまく使ってもらおうとすると、そういうことはやらないにこしたことはないなということになっちゃうんです。ですから、そういう、実際に現場はどういうことが行われることになるのかということを理解した上で、結果を出すような政策が求められているなとずっと思ってきました。
ということで、ほぼ時間がなくなりましたけれども、あと何か、柿田文部科学審議官、お願いします。
【柿田文部科学審議官】 遅れて参りましてすみません。前半の先生方の御意見を聞いていない状態での発言で恐縮です。
科学の再興というテーマについて、本日改めてそうだなと思ったことなのですが、ここ20年ぐらいでしょうか、大まかに申し上げて、日本の科学技術政策は、戦略性とか競争とか勝ち筋とか、そういう言葉を並べて、多くの施策が構築され、実行されてきたと思います。
そのこと全てが否定されるというものではなく、重要なことであり、そのような視点をもった施策を進めていくことはこれからも変わらないと思います。他方、今回あえて科学の再興と掲げたときに、今までの政策を振り返り、欠けていたものを見定め、新たな政策に打ち込んでいかなければならないというふうに改めて思いました。
それはどういうことかといいますと、資料にある5本柱、その中の、新たな研究領域の継続的な創造というところ、ここはとても大事なところだと改めて思いました。産業界等と連携をして社会実装していくとか、優れた技術に基づく製品をいち早く世界に売っていくといったようなことは、当然いろんな政策や施策が既にたくさんありますし、今後とも多くの関係者によって実行されると思います。それと同じくらい大事なこととして、科学の再興という旗印の下で、肥沃な土壌を作り、そこにおいて、今までにない、誰も挑戦したことのないようなことに、若手に限りませんけれども研究者が思い切り取り組んで、新たな芽を生み出していけるという環境を作らねばならないと思います。その環境においては、短期間の評価軸はマッチしませんので、いかに長期の軸をもって評価をしていくか、ある種の寛容性を持たせられるかが課題となります。
例えば、あなたは将来性がありそうだから、じゃあ15年間、自由な研究環境を保証してあげるわ、とか、10年間研究費を補助しますからご自由にどうぞ、失敗しても構いませんから、というようなことは、一見素晴らしいのですが、納税者の理解を得るという観点で責任ある寛容さというものを工夫する必要があると思います。やはり組織としての幅広い戦略性の下で、全体をうまく管理していく、いわばガバナンスにおいて戦略性を高めていく、ということかと思いました。組織としての戦略の中で、将来どうなるか分からないけれども、大事な種として、長期の視点でもって評価し育てていきますよと、そういう仕組みを入れていく。そして、若い人たちどんどんいらっしゃいよ、というような環境を作る。施策レベルで戦略性とか競争とか言って、はたまた、この論文のランキングのデータが最初から出てくるような紙を見せられると、多分若い人、若い人に限らず、政府の政策はこの先もあまり変わらないんじゃないか、というような受け止めになってしまうのではないかと思います。私も事務局の一員ですので、資料の中身を批判する立場にはないのですが。
ともかく、長期的な視点で新しい種を育てていきますよというようなメッセージを、これは数字ではなかなか表せないことですので、定性的なことになるかもしれませんが、メッセージとして入れていくことが大事なのかなと思います。また、若い研究者、現場でもがいている研究者の人たちにも改めて意見を聞いて、多分ここにいらっしゃる先生方は、若くないとは言いませんが、ちょっとこの前まで若かった人、といいますか、先生方のみならず、研究の最前線で、こういう審議会などにもなかなか声を届けられないような状況の中でもがきながら、科研費の少額のものに応募したけど、また採択してもらえなかったという人など、そういう人たちの声も出来るだけ伺い、十分に光を当ててこなかったところにも光を当てられるような政策を、この科学の再興という中で取り上げていくことができれば、できればというか、そうしなきゃいけないというふうに思いました。引き続き、西條局長や淵上局長らとも議論しながら進めてまいりたいと思います。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
今、柿田文部科学審議官がおっしゃられたことは非常に大事で、本来は大学が、あるいはその組織がかなりの部分を引き受けなきゃいけないものだと思うんです。自分の目の前にいる人たちをどう環境を整えて成果が出るようにしていくかと。ただ、現状は、そういう発想がないというよりは、そういう資源がない。ですから、非常に単純に言うと、資金不足によりそのような投資ができず、お金を使えないでいると発想もなくなってくるということなので、やっぱり、そういう大きなエコシステムを新たにこの7期で、再起動と言っていいのか、ちょっと現代的につくり上げるということはすごく重要なテーマであると私自身も思います。
ということで、時間が来ましたので、どうもありがとうございました。これまでの御議論の内容を踏まえて、次回、最終回なんですけれども、第5回において、よりブラッシュアップした提言について議論できるよう、事務局におかれましては整理を進めていただければと思います。
本日の議題は以上となります。最後に、事務局から事務連絡をお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 今、大野座長からありましたように、次回は最終回ということで、今のところ予定しております。11月13日に開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
本日の議事録もまた、皆様に御確認いただいた上で、ホームページに掲載させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
以上をもちまして本日の有識者会議を閉会といたします。御多忙の中、御参加いただきまして、誠にありがとうございました。
―― 了 ――
科学技術・学術政策局研究開発戦略課
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