令和7年10月8日(水曜日)10時00分~12時00分
文部科学省3階3F2特別会議室及びWeb会議形式
1.個別の論点に関する議論
・ 今後の科学技術人材政策の方向性について
・ 科学研究のための基盤の刷新~研究施設・設備、研究資金等の改革~
・ 科学技術・イノベーションにおける国際戦略~頭脳循環や国際連携の戦略的強化に向けて~
・ 日本の高等教育の構造と改革の方向性
・ グローバル・コモンズの持続可能な保全に向けた展開―Society5.0 を目指して―
2.その他
大野座長、上田委員、川合委員、千葉委員、仲委員、宮園委員、安田委員
柿田文部科学審議官、藤吉サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、西條科学技術・学術政策局長、福井大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、井上科学技術・学術総括官、
奥人材政策課長、馬場参事官(研究環境担当)、豊田国際研究開発政策課長、淵上研究振興局長、山之内振興企画課長、中澤基礎・基盤研究課長、清浦大臣官房審議官(研究開発局担当)、
嶋崎開発企画課長、松浦大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術学術政策連携担当)、赤池科学技術・学術政策研究所総務研究官、廣田大臣官房文教施設企画・防災部計画課長、
石川研究開発戦略課長 ほか関係官
小安文部科学大臣科学技術顧問、永澤内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局参事官(統合戦略担当)、武田経済産業省イノベーション・環境局イノベーション政策課長
【大野座長】 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第3回「科学の再興」に関する有識者会議を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日の会議も対面、オンラインの併用で開催しています。また、公開という形で進めさせていただきます。
では、本日の議事等について、まず事務局から御説明をお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 本日の議事及び配付資料でございますけれども、お手元にございます議事次第のとおりでございます。資料につきましては、資料1-1から1-5までと参考資料1から参考資料3までございます。参考資料3は、先月、内閣府の基本計画専門調査会で出されております論点案をつけさせていただいております。資料について、過不足等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
また、本日、伊藤委員、染谷委員、高橋委員が御欠席でございます。また、安田委員はオンラインで御参加いただいております。
オンラインで御参加いただいております安田委員におかれましては、御発言のときはマイクをオン、また、できればカメラもオンにしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、議題1、個別の論点に関する議論に入ります。4つの論点に関して文科省より御説明いただいた後、まとめて意見交換をさせていただきます。
それでは、まず1点目、「今後の科学技術人材政策の方向性について」として、科学技術・学術政策局人材政策課の奥課長より説明をお願いします。
【奥人材政策課長】 ありがとうございます。
資料1-1に基づいて、今後の科学技術人材政策の方向性の概要について御説明をさせていただきます。別途机上に冊子をお配りさせていただいていると思いますが、科学技術・学術審議会の人材委員会におきまして、昨年の10月から半年ほどかけて今後の政策の方向性というのを御議論いただき、中間まとめという形で冊子にまとめさせていただきました。この冊子のほうは御参考までにしていただき、1-1の概要に基づいて、限られた時間ですので、簡潔に御説明させていただきます。
おめくりいただいて、1ページ目、2ページ目、3ページ目、4ページ目あたりは、現状の科学技術人材政策を取り巻く現状と課題を取りまとめているものですので、ここは御参考としていただき、5ページ目をおめくりいただければと思います。
政策の方向性の基本的な考え方として、科学技術政策・イノベーション政策の基盤はやはり人材だということで、科学技術人材を中核に据えた政策の立案が大事だということを書かせていただいています。
その上で、左下、3つの基本方針を今回掲げています。人材に対する投資の抜本的な拡充ということで、研究者・技術者をはじめ、人材育成機能に対する投資を抜本的に強化するということが1つ目、科学技術人材といっても、研究者、技術者、あるいはURAをはじめとする多様な人材がいますので、こうした人材が社会のあらゆる場で活躍できるような環境整備をしていこうというのが2つ目、人材を支えるような組織であるとか機関、いわゆるガバナンスの役割が大事だということを3つ目として挙げています。
右側、今回3つ柱で全体の政策体系を整理しています。多様な科学技術人材の育成・活躍促進ということで、研究者、技術者をはじめとする職種別での人材育成が1つ目、初等中等教育段階から高等教育段階、さらに社会教育に至るまで、各教育段階別での人材育成というのが2つ目、3つ目として、こうした人材を取り巻くような制度・システム改革を進めるということで、この3つの柱に基づいて全体的な政策体系を整理しています。
6ページ目が、1つ目の柱になります。多様な科学技術人材の育成・活躍促進ということで、いわゆる職種別での人材育成になります。
ここは後ほど詳細を御説明しますので、柱だけ御覧いただければと思いますが、1ポツ目で、研究者の育成の育成・活躍促進。研究者に関しては、特に研究費、安定したポストの確保、国内外あるいは産業界における活躍の場の拡大、4つ目として、組織・機関における環境整備、これら4つの小項目で整理しています。
また、右側、2ポツ目で、技術者の育成・確保ということで、(1)で工学系教育の充実、(2)で産学で活躍できるような技術者の育成・確保、それと、技術士制度の活用促進というのを挙げています。
また、右下の3ポツ目のところで、高度専門人材とありますが、この中で、特にURAをはじめとする研究開発マネジメント人材の育成・活躍促進というのを挙げています。いわゆる事務職、教員に次ぐ、第三の職種として、こうした人材の位置づけ・役割を明確化し、育成・確保を図っていくという方向性を提示させていただいています。
続いて、7ページ目をおめくりいただいて、2つ目の柱の教育段階別での人材育成になります。
1つ目が、大学・大学院における教育研究活動の充実ということで、この中では、特に博士の後期課程学生に対する経済支援と、社会の多様な場での活躍促進というのを挙げています。
また、右側、2つ目で、初等中等教育段階での人材育成、ここは特に裾野の拡大というのとトップ層の育成という2つの柱で整理をさせていただいています。
3つ目が、次世代人材育成に向けた科学コミュニケーションの充実ということで、ここは科コミの推進に加えて、こうした科コミを支えるような人材の育成というのも併せて書かせていただいています。
また、6のところが3つ目の柱になります。制度・システム改革の推進ということで、1ポツ目のところは、ダイバーシティの確保、女性研究者であるとか、海外から優れた研究者を登用するという外国人登用の話であるとか、産学官における人材流動を一層促進するということ、右側の2ポツ目のところは、制度・規範の整備で、研究インテグリティ・研究セキュリティ、さらに、ELSIにおける体制整備等々について書かせていただいています。
8ページ目、9ページ目、10ページ目あたりは、これまでの審議経過を書かせていただいていますので、それを飛ばしていただいて、13ページ目からが、1つ目の柱の多様な人材の育成・活躍促進になります。
14ページ目のところで、基本的な考え方、実績評価等々を書かせていただいていますが、この真ん中の下の国立大学法人の経常収益の推移のところ、ちょっと分かりにくいですが、運営費交付金、黄緑色のところですけれども、ここは減少する一方で、右側の濃い青色のところ、外部資金が増えている、国立大学法人の経常収支としては全体として増えている中で、いかにして本務教員等の安定したポストを確保していくのかというのが大事だということを指摘させていただいています。
次、15ページ目の真ん中から、今後の具体的な取組・方向性というのを書かせていただいています。
1つ目として、多様な研究費の充実・確保です。ここは科研費、基盤的経費をはじめとする研究費の質的・量的な充実・確保をやっていくというのはもとより、(1)の丸1の2つ目のポツ、国家的・経済的・社会的に重要な課題、科学技術であるとか産業分野を特定して、研究開発と人材育成を一体的に推進するような新しい資金的枠組みをつくってはどうかということを書かせていただいています。
また、丸2は、競争的研究費制度の改革、特に人的な資本投資を拡大しようということで、直接経費と間接経費の中で、人件費に対する支出の割合を高める。直接経費のうちPI人件費の適用の対象を拡大するであるとか、間接経費について、その割合を高めるであるとか、その使途の明確化を図る等々についても書かせていただいています。
続いて、(2)、これに連動しますが、安定したポストの確保のところで、基盤的経費の充実を図って安定したポストを確保するというのはもとより、16ページ目の(2)、競争的研究費であるとか外部資金を活用して新しい教員のポストをきちんと確保していく、特に無期のポストを確保していくということが大事だということを書かせていただいています。
また、(3)、国際的に活躍する研究者の育成、ここは後ほどまた説明があると思いますので省略します。
また、産学官の連携促進ということで、企業とアカデミアとの間の人材流動を一層促進するような枠組み、先ほど申し上げた新しい資金的な枠組みの下で、こうした取組を一層促進するという辺りを書かせていただいています。
組織における環境整備は、後ほど御説明があると思いますので省略させていただきます。
次、17、18、19あたりは、参考資料としてつけさせていただいています。特に19ページ目のところ、競争的研究費制度の改革のところで、今後の方向性、直接経費・間接経費双方について、人件費の対象を拡大するための取組例というのを書かせていただいています。
続いて、21ページ目からが技術者の育成・確保になります。
22ページ目をおめくりいただいて、ここは3つの柱で全体を整理しています。
1つ目が、大学等における工学系教育の充実ということで、工学系教育に関してJABEE認定の仕組みがありますが、この認定校が減少しているということもありますので、ここの取組をさらに拡大するということ。
(2)、産学で活躍できるような技術者の育成ということで、先端的な設備・機器開発等を通じて、官民で活躍できるような技術者の育成・確保を図っていくということと、丸2、技術職員の育成・確保。長年にわたって大学のほうで技術職員の数が減ってきたということもありますので、技術職員に関して、今回新しくガイドラインを整備するということと、職階の確立、キャリアパスの整備というのを強く打ち出しをさせていただいています。
(3)では、技術士制度の活用促進というのも挙げさせていただいています。
続いて、飛ばして恐縮ですが、28ページ目をおめくりいただいて、高度専門人材の育成・確保になります。ここは高度専門人材とありますが、特にURAをはじめとする研究開発マネジメント人材に関する取組について書かせていただいています。
29ページ目になりますが、まずは、その研究開発マネジメント人材の位置づけ・役割を明確化しようということで、今回初めてガイドラインを整備するとともに、それを踏まえた形で、文科省のほうで当該人材に関する体制整備事業というのを今年度からスタートさせていただいています。これを通じて研修であるとか認定制度を設けることによって、こうした人材がきちんと社会的に認知され、大学におけるキャリアパスをきちんとつくっていくという環境整備を図ってまいりたいと思っています。
さらに、丸3の一番下のところにありますが、将来的に国立大学法人の第5期中期計画で、こうした人材を含む体制整備を求めていくということも検討課題として挙げさせていただいています。
30ページ目では、このガイドラインについて、6月30日付で公表した資料を提示させていただきます。
続いて、32ページ目からが、2つ目の柱の学校教育段階別の人材育成になります。
33ページ目からが、大学・大学院における教育研究活動の充実ということで、特に博士人材における現状と課題というのを整理しています。
その上で、34ページ目ですけれども、今後の具体的な取組の方向性ということで、特に博士人材について、まずは特別研究員(DC)について、単価の引上げを図っていくということ、SPRINGについて、日本人、留学生、それと社会人の対象に応じて戦略的な支援を行うということを書かせていただいています。
それに加えて、丸3のところで、DCもSPRINGの学生もそうですが、社会の多様な場で活躍できるようなキャリア支援を充実・強化していくということであるとか、それに関連して、経産省との間で企業向けのガイドブックであるとか博士人材のロールモデル集というのを策定させていただいて、今ホームページ等で公開させていただいているところです。
36ページ目には、このSPRINGについて、今回見直しをさせていただきましたので、その基本的な考え方というのを書かせていただいています。特に、日本人学生の博士後期課程への進学を支援するということ、本来的な趣旨に基づいて中身を見直すということを挙げさせていただきました。
最後、37ページ目から、初等中等教育段階における人材育成について少し触れさせていただきます。
38ページ目で、今後の初等中等教育段階での人材育成に関して、特に先進的な理数系教育、トップ人材の育成というところと、(2)、小中学校における理数系教育の充実で、いわゆる裾野の拡大という双方を車の両輪として進めていくということを挙げています。
(1)の丸2、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業につきましては、全体の高校5,000校のうちの5%、250校という目標に向けて指定校を拡大してきましたが、今後はより質を重視するということで、SSHについて、3つの類型を設けて、類型に応じて支援金額に差を設けるであるとか、特に意欲的に取り組むような学校について、重点的に支援するということの見直しを提案させていただいています。
それに加えて、トップ層の育成で、コンテストであるとか理数系のチャレンジプログラム等々についても充実・強化を図っていくということを挙げさせていただいています。
あとは参考として御覧いただければと思います。
雑駁ですが、説明は以上となります。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続いて、2点目、「科学研究のための基盤の刷新~研究施設・設備、研究資金等の改革~」として、同じく科学技術・学術政策局の研究環境担当馬場参事官から御説明をお願いします。
【馬場参事官(研究環境担当)】 それでは、資料1-2に基づきまして、科学研究のための基盤の刷新について、現在の議論の状況、また方向性について御説明したいと思います。
ページをおめくりいただいて、はじめにということで、これまでの有識者会議における主な御指摘を幾つかピックアップさせていただいています。
複数の先生方から御指摘ありましたが、新たに雇用された研究者が研究室をセットアップ、立ち上げるときに、外部資金の獲得であるとか、時間がかかるというところが、やはりスピードの面で課題ではないかというような御発言。
また、これは宮園委員だったと思いますが、若手研究者の研究に対するモチベーションを阻害する古い慣習・制度・ヒエラルキー構造を打破し、若手研究者が自らの成果を発表できる環境を整えることが重要。これは論文であるとか、研究設備を借りなければいけない、スペースの問題、そういったところでヒエラルキーが引き続き残っているのではないかというような問題意識だったかと思います。
3点目、これは安田委員からだったと思いますが、日本の科学の自律性は重要であるということで、宮崎大学の経験だったと思いますが、シーケンサーとか、そういった研究設備・機器の他国依存が分野を切り開くことを困難とする。やはり、そういったものを利用しようとすると海外に比べて時間もかかる、コストもかかるというところで、日本が不利な状況に追い込まれているのではないかというようなお話がありました。
こういった中で、本会議においては、下にあるとおり、丸4、時代に即した研究環境の構築ということで、今回議題にさせていただいているとおり、研究基盤の刷新というところで問題提起をさせていただいております。
2ページ目、先生方の御指摘については、実は我々のほうも把握はしているところでございます。NISTEPの調査で、毎年研究者などにアンケート調査を行っている定点調査の中でも、研究施設・設備の状況については、従前から曇りと、決して改善はしていないというところが御指摘されているところです。
左側、十分度が上がった理由については、例えば、JSTの大型予算を獲得したため新たな研究設備が導入されたというような声もありますが、外部資金頼みになってしまっているというところは、多数の方から御指摘があるところです。
一方、右側、十分度を下げた理由としては、多くの記載としては、施設・設備の老朽化に対応できていない、管理する人材が必要であり、その不足が顕著になっているというところが多く指摘されているところでございます。
また、そういった制度的なところについては、同じくNISTEPの日本・イギリス・ドイツの研究環境の比較の中でも、研究機器・施設の在り方等の中でも指摘されています。我が国においては、研究費を獲得した研究者自身が研究機器・設備を購入する傾向にあるというような声であったりとか、テクニシャンが必ずしも十分ではないため、学生が研究機器のメンテナンスに取り組むというような声、これもやはり我々としては、学生の研究時間であったりとか、古い設備の修理をしないといけないとか、そういったような声を現場でも聞いているところでございます。
一方、イギリスやドイツについては、研究機器・設備は、多くの場合、共用であり、それが組織レベルの更新を可能にしているというような声であるとか、ドイツであれば、例えば、マックス・プランクみたいなところだと、研究設備はちゃんと施設として持っていて、テクニシャンがむしろ偉いと、そういったところがちゃんと尊敬されている中で、しっかり最新の設備をいつでも使えるような状況になっているところが、特に海外から帰ってきている研究者からも声が上げられているところでございます。
3ページ目以降に問題意識を書いております。
まず1つ目が、研究開発費の使途です。現状、外部資金に基づいて研究をする例が多いかと思いますが、右側の棒グラフにあるとおり、先ほどの奥課長の説明とも似ているところでありますが、海外と比べて人件費に充てる割合というのが顕著に低い。一方、経常費として設備費等々に日本の場合は使われているというようなのが、海外との比較で指摘されています。
また、右下、国立大学における共用機器の取得年と数というところで見ていただくと分かるとおり、大部分が取得から10年以上経過ということになっております。私も昨日地方の大学へ行ってきましたが、やはり多くの設備が止まってしまっているというような状況というところを何とか打破していかないと、日本の研究基盤というところが各国から見劣りする状況は変わらないというふうに考えています。
4ページ目、問題意識の2番目として、技術技能系職員、URA等の支援人材の少なさの部分です。これも同様に文部科学省の調査で、研究パフォーマンスを高める上で最も制約となっていることとして、例えば、研究補助者・技術者の不足であったり、研究機器の利用可能性が制約になっていると研究者自身が答えておりますし、また、技術技能系職員は40年前の半分以下、また、URAも増えてはいるものの、いまだ少数というようなことも、各国の比較で指摘されています。
5ページ目、問題意識の3、研究設備・機器の多くを海外に依存というところですが、これも左側のグラフ、ちょっと分かりづらいと思いますが、アジア、欧州、ドイツ、アメリカ、日本ということで、各国の企業国籍別の機器のシェア状況などを表しています。御覧になっていただいて分かるとおり、我々としては研究費を増やしていきたいという思いは、先生方の指摘を踏まえて対応していきたいところでありますが、こういった部分について、しっかりエコシステムをつくっていかないと、海外にお金が流れ続けるというような傾向というのは変えられないのではないかなと思っています。
最後、6ページ目、問題意識の4、大型研究施設の整備・高度化についてです。こちらについては、法律に基づいて、特定先端大型研究施設として、特に重要な世界最先端の大型研究施設を位置づけ、施設の整備・高度化、産学官の研究者による共用を促進しています。
他方、一番新しい仙台のNanoTerasuにおいても、我が国初の第4世代放射光施設でありながら、現状、最大28本のビームラインが整備可能であるにもかかわらず、いまだ10本しか運用できていないというような状況になっております。
下に表がありますが、現在、ほかの国に先駆けて日本として整備した設備に対して、各国は現在建設中というような状況になっております。こういった中で、わざわざ相手国が準備するのを待つことなく、日本としてはしっかりとした研究基盤をいち早く整備していかないと、その価値が減ぜられるのではないかと思っています。
こういった中、7ページ目ですが、科学研究のための基盤の刷新として、丸1、研究者が研究に専念できる時間の確保、研究パフォーマンスを最大限にする研究費の在り方、研究設備の充実など、研究環境の改善のための総合的な政策の強化を取り組んでいきたいと思っています。
特に、研究体制を十分に整えることが難しい若手研究者にとって、コアファシリティによる支援は極めて重要であり、各国に対して日本の研究環境の不十分さが指摘される要因となっております。
さらに、前回議論があったAI for Scienceが急速に進展する中、高品質な研究データを創出・活用するため、全国の研究者の研究設備等へのアクセスの確保や分析等の基盤技術の維持は重要であると考えております。
こういった問題意識については、下にあるとおり、日本学術会議や経団連などからも繰り返し指摘されております。
8ページ目に、一例を載せております。これは約5年前に内閣府の依頼に基づいた学術会議の回答になります。この中でも、コアファシリティの整備というところについて、設備・機器の更新の、これが我が国の理系の研究力低下の大きな原因になっているライフラインというふうに位置づけられています。
我々、今回の基本計画においては、一番下にありますが、学術会議が提言されているとおり、研究者は、公的な競争的資金で購入した機器も公共財であるという認識の共有に努めるというところを位置づけていきたいと考えております。
9ページ目、こういった中、次期基本計画中に、我が国の研究基盤を刷新し、魅力的な研究環境を実現するため、全国の研究大学等において、地域性や組織の強み・特色等も踏まえ、技術職員やURA等の人材を含めたコアファシリティを戦略的に整備していきたいと考えております。
そういったことを通じて、10ページ目にあるとおり、若手研究者を含めた研究設備へのアクセスの確保であるとか、海外機器への過度な依存の脱却、また、人材政策とも連動して、競争的研究費の中での使途の変容、データの創出というところに結びつけていきたいと考えております。
11ページ目、これも5年前から議論していますが、今期の基本計画においては、研究人材・研究資金・研究環境の三位一体改革が必要だということが指摘されています。
他方、この5年間を振り返ってみれば、研究人材・研究資金に対して、研究環境が必ずしも十分に改善したということが言えていないというような問題意識を持っております。
我々としては、この12ページにあるとおり、各大学がやること、また、各分野で取り組んでいること、こういったものを網目のように日本全体をカバーすることによって、今の時代に合った研究基盤・研究環境というものを構築していきたいと思っております。
そういったことを通じて、13ページ目、研究現場においても、研究者が集まってくる魅力的な場を形成していきたいと思いますし、14ページ目にあるとおり、日本全体として備えるべき研究基盤を整備し、先端的な機器の開発と併せ、成長・発展し続ける研究基盤を構築していきたいと考えております。
15ページ目以降は、これまでの審議会で議論してきた内容を参考までに添付しているものでございますので、説明は省略したいと思います。
私からは以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続けて3点目、「科学技術・イノベーションにおける国際戦略~頭脳循環や国際連携の戦略的強化に向けて~」、こちらは同じく科政局の国際研究開発政策課、豊田課長より説明をお願いします。
【豊田国際研究開発政策課長】 国際研究開発政策課長の豊田でございます。資料1-3に基づいて、国際戦略について御説明いたします。国際戦略委員会では、今まさに今月中の取りまとめに向けて議論を進めておりまして、その状況について今日は御報告させていただければと思います。
まず2ページ目ですが、ここでは国際戦略を進めていく上でのWhyとWhatをまとめてございます。
まず、Whyのところですが、ピンクのところに書いております通り、我々はツールとして、国際共同研究、ならびに海外研究者の受入れ・日本人研究者の送り出しを据えていて、それによって我が国の研究者が国際的な科学サークルに参画、競争・研さんし、その研究力を高めていくことを目指しています。海外の研究者等とともに最先端の研究活動を進めていくというところを、もう一度Whyのところに定義し直しております。
その上で、Whatのところでございますが、このブルーとイエローのところですけれども、まず一つは、世界的に研究者の流動性とか、不確実性が高まっているという状況を踏まえて、開放性を持った魅力ある研究環境の構築というのを置いてございます。
もう一つは、イエローのところでございますけれども、従前から進めてございます通り、国際連携の戦略的強化ということになります。先ほどの受入れと送り出しのところ両方に関わってくることですが、これは主にブルーのところに置き、国際共同研究の観点をイエローに置いているということでございます。
その上で、もう一つ、研究インテグリティと研究セキュリティの確保というのが大前提になってくると思います。開放性を持った環境の構築を達成する意味でも、研究インテグリティ、これは自らの公正性とか健全性という意味でして、研究セキュリティ、これはここ最近のトレンドとしてある、意図を持った者が情報を盗みに来るというところをしっかり防いでいくというものですが、国際共同研究等を進める上でも、そのお作法として、この辺りが重要だということを一旦まとめてございます。
その上で、Howのところについて順次御説明いたします。3ページをお願いします。
まず、受入れについてのHowの状況ですが、アメリカ等の状況を踏まえて、研究者の流動性が高まっている。その上で、各国とも人材獲得の競争に乗り出してきているという状況がございます。日本政府としても、その状況を踏まえまして、内閣府を中心にJ-RISE Initiative、あるいは、文科省でEXPERT-Jのような取組を進めてきてございます。
次のページをお願いします。4ページでございますが、各国の状況ということで、EUは5月に5億ユーロを投じるということで、これは800億円以上だと思いますが、フランスはそれに加えて1億ユーロ、160億円以上だと思いますけれども、投じてきている。
次のページ、5ページ目の一番下のイギリスも、同じように100億円の投資をしてきているという状況の中で、6ページでございますけれども、日本ではJ-RISE Initiativeということで、海外在住の日本人も含めて、優秀な海外研究者等の戦略的な招聘を、秋の新学期も見据え可能な限り早期に拡大するということで、既存予算をフル活用し、1,000億円程度の関連施策を総動員するということでございました。
この赤囲みのところですけれども、文科省としては、大学ファンドの活用ということで、これはまさに通常の予算プロセスだとtoo lateになってしまうためですが、大学ファンドを活用して、緊急性とか迅速性を重んじ、EXPERT-Jという形で進めてまいりました。
7ページでございますけれども、大学からの手挙げということで、優秀な研究者を招聘する気概のある大学を支援していくということで、大学ファンドで令和7年度から3年間で33億円を助成します。ここでは大学のポテンシャルを重視していて、海外研究者を獲得して定着させて活躍させるための環境を今持っている、あるいはすぐにでも整えられるというポテンシャルを持った大学を公募して選んできております。
それが8ページに書いておりますけれども、11大学をこのような形で選定しておりまして、33億円という限られた予算でございますが、年内の研究者招聘は全て可能ということで40人ぐらいを想定してございます。まだ各大学で交渉中なので、詳細は非公開にしておりますけれども、決まり次第、JSTのホームページで公開していくということを考えております。
チームごと招聘したり、あるいは、ほかのトップ大学と競り勝って獲得したりというケースも見受けられていて、かなり適時を得て、スピード感を持って進めている事業でございます。
9ページでございますけれども、まだ年内の招聘分しか手当てできていないので、我々も概算要求をして、年明け以降の招聘についても対応していこうとしております。
その上で、10ページですけれども、これは国際戦略委員会から指摘のあった留意すべき事項でございます。
丸1ですけれども、世界的に強みを有する研究分野や産業分野を際立たせる研究領域の設定等で、国が魅力を感じられる環境にすべきであるということ。
丸2で、受入れではかなり事務的に、研究者の負担が増えてくるので、そういったところを解消していくべきということ。
あるいは、丸4で、そういう海外研究者、留学生含めてですけれども、キャリアパスの構築という意味で、企業等とのマッチングを進めていくべきではないか等の御意見をいただいております。
その上で、11ページでございますけれども、更に中長期的に取り組むべき事項ということで、海外研究者の受入れだけではなくて、送り出しのところも充実させるべきであるということ。
あるいは、2つ目のポツですけれども、国際共同研究のところで、G7と戦略的な連携・協力が推進されている中、一過性にとどまらない長期の支援が必要だということや、現在交渉中ですけれども、Horizon Europeへの準参加を実現すべきといったような御意見をいただいております。
12ページからは、国際共同研究、あるいは送り出しのHowについて主な取組を御紹介させていただいております。
これまで国際共同研究について、日本の取組自体がtoo little、too lateということをよく言われていたものに対して、3年前ぐらいに補正予算で500億円程度、トップ研究者による国際共同研究のためのプログラムを立ち上げてございます。
これは基金で対応するということで、まさに機動性を持って対応できるということと、あとは、左下のほうに書いてありますけれども、最大1億円程度をそれぞれのチームに支給できるように予算の規模も拡大して進めていますので、かなりトップ研究者同士のコミュニティができつつあるということでございます。まさに今回やっているEXPERT-Jでトップ研究者を呼んでくるわけですけれども、この予算を活用して、さらに国際共同研究を進めていただくということを考えてございます。
あとは、15ページに飛んでいただいて、これは送り出しの文脈でございますけれども、このASPIRE自体は2年弱ぐらいしか経っていないので、まだ論文という形で主立った成果は出てきておりませんが、このASPIREの中のルールで、若手研究者は1年以上海外に派遣するということを義務化してございます。
その中で、特に右側のところでございますけれども、若手等の派遣数というところで、当初の目標を大幅に上回る形でしっかり派遣ができていまして、その意味でも、このASPIREは有力なツールなのではないかと考えております。
最後のページ、16ページでございます。これは国際戦略委員会からの指摘ということで、アウトバウンドのところについては、若手研究者の海外挑戦へのモチベーションが減ってきていることを認識すること。また、国際の場で研さんすることは重要なのですが、自分が海外へ出た後にポジションを獲得するところで不安を覚えていたりとか、国内の研究チームから抜け出てしまうので、その部分の人手不足みたいなところを気にしたりして、それが海外挑戦を阻害しているのではないか。その辺りをしっかり解消すべきではないかという御意見がありました。
あとは、国際共同研究のところでございますけれども、今日はASPIREを御紹介していますが、そのほかもいろいろ共同研究のプログラムがあるので、その辺りをしっかり整理して進めるべきではないか。産業界としっかり連携してやるべきではないか等の御指摘をいただいております。
説明は以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続けて4点目、「日本の高等教育の構造と改革の方向性」として、高等教育局、松浦審議官より説明をお願いいたします。
【松浦大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)】 それでは、資料1-4を御覧ください。
「科学の再興」を担う若手の人材を育成する上で、大学の役割というのは非常に重要だということは言うまでもありませんが、その大学の人材育成自体も、社会構造の変化に応じて、適切に転換していく必要があると考えております。
2ページ目を御覧ください。まず、その背景・趣旨について御説明します。
少子高齢化、地方の過疎化というものが一層進んでおりますが、2040年がどういうふうになっているかということについて経済産業省が推計を出しておりまして、この右下の囲いを御覧いただけますように、特に職種としてはAI・ロボットのような専門的技術を担う人材が約300万人不足するというふうに推計されています。
それに対して、学歴を見ますと、特に文系、ホワイトカラーのような人材は供給過多になっている一方、理系人材は非常に不足するという、こういう供給と需要のミスマッチを解消していく必要があると考えております。
3ページを御覧ください。これ2022年のCSTIの資料なので、ちょっと古いですが、御覧いただけますように、義務教育段階を終えた段階では、理数系のリテラシーが高い子というのは4割いる。ただ、高校が文理のクラス分けなんかによって、その半分ぐらいしか理系に進んでいない。さらに、大学に行くと、よりその割合の減少が顕著になっていくというところ、こういう構造を転換しないことには、理数系をベースにした「科学の再興」というのが図られないのではないかと考えております。
それも踏まえて、4ページ目を御覧ください。大学の一つの重要な役割としては研究ですが、研究力強化に当たっては、国際卓越研究大学あるいはJ-PEAKSによって強化を図っているところですが、産業構造や社会のニーズを踏まえて、教育・人材育成や地域貢献を重視して、我が国の研究基盤を支える大学の機能強化を進めて教育研究の質の高度化を図る。また、それを支えていく基盤的経費の充実・拡大といったものが非常に重要かと思います。
5ページ目に移っていただければと思います。今後の課題と方向性に向けては、まず、5つあると思っています。成長分野における人材の不足、物価や人件費の上昇の影響による財務基盤の脆弱化、若手研究者の減少、研究時間の減少、そして国際コミュニティでの存在感の低下、こういった5つの課題について、それぞれ方向性を御説明します。
6ページ目を御覧ください。先ほど申し上げましたとおり、理系の人材が、構造的に教育段階が進むほど減っていく。そういった中で、2040年には大学進学者数というのは、今の63万人から46万人に減る。この中で同じように割合を維持したまま減ると、結果として供給する人材というのはどんどん減る。そういう意味では、割合が減るよりは増やす、人材の規模は維持しつつ、割合はきっちり上げていくという必要があると思います。
令和4年(2022年)の第2次補正予算では、成長分野への大学等の学部再編等のための基金3,002億円が措置されておりまして、現在261件が選定されております。これによって2.2万人の理系分野の入学定員が増えている状況ですが、一方で、その定員のボリュームゾーンである大都市圏の大規模大学における理系転換というのが実際あまり進んでいないというところが課題かと考えております。
それを踏まえて、今後、柱の1というのが、ややピンクのところがありますけれども、大規模大学等における理系転換の強力な後押しをしていく必要がある。それに向けて、よりインセンティブを高めたようなメニューをつくり、理系比率を大幅に増加していく。
もう一つ、柱の2としては、文系学部を含めて理数的な素養を身につける教育の質的転換を推進していく。これは大学において、今、数理・データサイエンス・AIのコースの認定を進めておりますが、それをさらに必修化するような方向で、現在、予算要求も進めております。
こういったことを推進しながら、将来の社会構造変化も見据えて、高校段階での文理分断の脱却、あるいは成長分野への転換、そして高等教育機関の機能分化や規模の適正化を進めて、大学の転換を図っていきたいと考えております。
7ページ目を御覧ください。基盤的経費ですが、物価・人件費の上昇の中で、実質的な経費というのは目減りしていく状況にある。これは皆さん実感として感じていると思います。国立大学の運営費交付金は、ここ数年間ずっと同額で維持されておりますが、こういった中で物価が上がることで、大学の人件費、あるいは、支出というのは実際目減りしていく状況というのは非常に苦しいところであります。
これも踏まえて、運営費交付金等の基盤的経費については、物価上昇を踏まえて、まず確保していくこと。特に国立大学法人等については、第5期中期目標期間に向けて、改革を促進しつつミッションや機能強化の方向性に沿った活動を安定的に支援するため、教育研究をベースとした経費について物価等の変動に対応させる観点も含めて、安定的に確保できる仕組みを現在検討しております。
また、大学の附属病院につきましても、病院が担う教育研究やその前提となる経営基盤の強化といった観点も含めて支援をしていきたい。
研究環境の充実に向けて、私学助成の配分も、よりメリハリをつけた形で枠組みの構築を検討しております。
8ページ目を御覧ください。人事給与マネジメントシステム改革ですが、各国立大学法人が取り組む人事給与マネジメントの改革を進める上での基本的なポイント、参考事例などを掲載したガイドラインを平成31年に策定しております。
この中で、今後どうしていくかといったところになりますけれども、教員のみならず、職員やURA等の専門人材を含めた人事給与マネジメントシステムの改革、これは先ほど奥課長からも同様の方向性を示されておりましたが、こういったものをきっちり進めていくためにも、必要に応じてガイドラインの見直しを進めていく必要があると考えています。
また、国立大学法人等の第5期中期目標期間においても、各法人のミッションを踏まえました人事給与マネジメントシステムの見直しや、一層の取組の促進を不断に進めていく必要があると考えております。
9ページ目を御覧ください。博士人材の育成・確保・活躍促進ですが、博士人材というのは、社会にイノベーションをもたらすという意味で非常に重要な存在ですが、諸外国に比べると、日本の博士号取得者というのは非常に少ない。これは非常に課題だと考えております。
引き続き、学内資源の大学院への集約、あるいは社会人学生の受入れ、日本人学生の海外派遣等による大学院教育の充実や、企業における博士人材の活躍・育成促進に向けまして、博士人材時代の受入れ・活用に対するインセンティブの一層の強化といったキャリア形成支援を通じまして、博士課程人材の育成・確保・活躍促進を進めていきたいと考えております。
10ページ目を御覧ください。国際頭脳循環において、大学というのは非常に基盤となるところです。そのため、戦略的な国際頭脳循環とその基盤となる大学の国際化を進めまして、イノベーション創出の環境をつくることが非常に不可欠と考えています。
その一環として、昨今行っておりますが、制度改正として、優秀な外国人留学生を各大学等がより積極的に受け入れられるよう、外国人留学生受入れを含めた国際化のための体制が十分に整備されている大学等の学部を「国際競争力けん引学部等」と認定しまして、認定された学部につきましては、収容定員の超過を一定程度認めるという特例制度を創設しております。収容定員を超えると助成金等でペナルティを受けるというところはありますけれども、こういったところを、外国人留学生を受け入れるための一定程度の緩和といったところで乗り越えようという制度でございます。
こういったことも通じまして、引き続き、我が国の若手研究者や学生の海外への送り出し、優秀な海外研究者や外国人留学生の受入れ推進、また、そのための環境整備を進めるとともに、安全保障貿易管理、研究セキュリティ・インテグリティ対応、あるいは外国人留学生の在籍管理等のマネジメントもしっかりやっていくという方向を考えております。
以上、「科学の再興」に向けた高等教育局の施策の方向性を御説明しました。この内容については、令和8年度の概算要求等にも成長分野の転換基金の活用、国立大学法人運営費交付金や大学病院支援、私学助成等を盛り込んでおりますので、第7期基本計画に向けて、しっかりと取り組んでいきたいと思います。
ありがとうございます。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、5点目です。「グローバル・コモンズの持続可能な保全に向けた展開-Society5.0を目指して-」として、こちらは研究振興局基礎・基盤研究課、中澤課長から御説明をお願いします。
【中澤基礎・基盤研究課長】 資料1-5を用いて説明させていただきます。
グローバル・コモンズの持続可能な保全に向けた展開に関する研究会の報告書ではございますが、もともと本件、省内の関係課長、それから理研の関係部局長メンバーとして、新しいプロジェクト、あるいは横連携の仕組みを検討してきたものではございますが、その過程の中で、人類社会にとってサイエンスがどういった意義を持つのか、そういったところについて議論が波及しております。報告書の中から、そういった点を抜粋して御説明させていただきます。
2ページ目を御覧ください。このイラストでございますが、プラネタリー・バウンダリーという概念を説明したもので、地球のシステムを気候変動あるいは生物多様性といったような9つの項目に分けて、その状況を可視化したものでございますが、重要な点は、この9つの領域はそれぞれ複雑に相関関係があるということと、その9つの中から6つ、あるいは最新のデータでは7つと言われていますけれども、ある種の限界を超えて、ポイント・オブ・ノーリターンを超えている可能性が高いと示唆されております。
また、左下、社会の分断に関する部分でございますが、ダボス会議においては、誤情報・偽情報の流通・再生産といったところが、社会の中では今後2年間最も重視すべきリスクだということで挙げられてございます。
こういった中でございますが、次のページ、3ページ目でございますが、我々は第5期基本計画でSociety5.0を掲げていた状況ではございますが、本来、テクノロジーは、例えば、物理的な距離だとか国籍の壁を越えて人々の共感、コミュニケーションを図るための道具であったはずでございますが、現在、先ほどの社会の分断というところにありますが、デジタル技術が人々をある種、見たいものだけを見るというような形で分断を加速させる道具にさえなっている部分は否めないという部分もあり、様々なバイアス、情報のゆがみ、それから、科学そのものが軽視されている、こういう傾向もあるのかなと思っております。
左下のところでございますが、そういった中で、科学がよりよい世界の礎になっていくためには、一つは、例えば、世界の共感性を取り戻すことを、改めて科学の持つ普遍性をベースに、やっていけないかという提案でございます。
そして、その具体的でかつ最重要の事例としては、このかけがえのない地球、人類・生命の共有財産として、グローバル・コモンズとしてこれを捉えて、将来社会に向けて保全していくべきではないかということでございます。
右側のところは、その処方箋としまして、総合知を実践していこうということを3ページ目では書かせていただきました。
4ページ目です。理念的な話が続きましたが、では、理研で何をするのかというところでございます。黄色い部分の中に3つのボックスがございます。
理化学研究所は基礎研究・計算科学といった強み、ドイツのポツダム気候影響研究所は地球システム科学の強み、それから、東京大学では人文・社会科学といったところの強みをもって3者連携をしていくというところで、具体的には、グローバル・コモンズの保全に向けて、例えば、将来シナリオの設計をしながら、それを計算シミュレーションしていく、さらには、そのシナリオを実現していくための介入技術の研究開発を行っていく。加えて、人類の行動変容も含めた社会システムの検討・研究を複合的に進めていくというようなところは、具体的にこれから進めていきたいというところで考えてございます。
5ページ目はこの報告書の概要でして、参考資料2で報告書本体はつけてございます。
説明は以上になります。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
それでは、今の事務局の説明を踏まえて、御意見がありましたらお願いします。いつものとおり、御意見があるときには、名札を立てていただいて、あるいは、オンラインで参加の安田委員におかれましては、挙手ボタンでお知らせいただければと思います。必ず一度は御発言いただけるようにしたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
それでは、仲委員。
【仲委員】 どうもありがとうございます。
大変大部な御説明、どうもありがとうございました。
大局、全部大賛成なのですけれども、順番に申しますと、まず設備とか施設については、資料1-2について、日本が持っている先鋭化した設備に予算をたくさんつけて、それを強化していくというのは、人を維持し招くためにも大変重要だと思います。
共有についても本当に重要で、それぞれの大学のそれぞれの研究室にある設備を全て刷新という形ではなくて、それを共有化して、人がそこに集まって研究していく、そういった拠点が各地域にあるというのも大賛成でございます。
ただ、そのためには、例えば、院生とか、あるいは、研究者がその設備に来て、例えば、1か月泊まって、その機材を使って実験をしていくとか、あるいは、技官に試料を渡して、そこで実験をしてもらって、その成果をもらうとか、そういうシステムが必要なのかなと思うと、その研究環境の整備にお金がかかるので、そこに予算をつけるべきではないかなと思いました。これが設備に関しての1つ目です。
それから、国際に関してなのですけれども、先ほど資料1-3で、卓越した人物を大学に呼んでとか、日本に呼び寄せてということがありましたけれども、そういうエスタブリッシュされた研究者を呼んで、たくさんのお金をつけて研究していただくというのももちろんあるけれども、もしかしたら、そのお金を使って、そういった卓越した研究者・研究室に所属している大学院生であるとか、また、若手研究者を呼び寄せて、その方たちと共同研究をするというふうにすれば、一人の卓越した研究者の予算で、例えば3人とか5人の、そういったこれから有望な研究者を招くことができるのではないかなと思います。
新しい研究の芽というのは、若いところから発達してくるものだと思いますので、むしろ卓越した研究者の研究というよりは、そこに所属するような若手研究者と日本の研究者の交流を目指していくというのが一つなのではないかなと思います。ですので、トップというよりは、今途上にある人たちを呼ぶということが重要ではないかなと思いました。そういう意味では、留学生の支援も行うということでしたので、そこはすごく重要だなと思います。
あと、日本から国外に行く研究者について、今、科研費でAとかBとかを取ると、1年間とか海外で研究をするというふうなことが可能になっていますけれども、それというのは課題を持って行くので、そこでともかく自分が持っている課題を遂行しなくてはいけないということがあるわけです。それだけではなくて、例えば、かつての在外研究のように、自分の研究を一応行った、学位も取った、これからどうしようかなと思う人たちを外に出して、そこで新しい研究の芽を拾ってくるとか見つけてくるということも重要ではないかなと思いました。ですので、トップからどーんと落とすものと、むしろ途上にあるものを支援するという、バランスが重要かなと思いました。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、川合委員、お願いいたします。
【川合委員】 大部の御説明をいただいたので、とても全部は覚えていないのですが、全体を通して5つのポイントを指摘したいと思います。
1番目は、いろいろ聞かせていただいた中で、問題意識は我々と役所のほうで検討されていることとが共有されているというのは、改めて認識させていただきました。それが1点。
2番目のポイントですが、いろいろと施策の提案がありました。いずれも大変重要な提案でありますが、ちょっと細かかったので、全体像があまりちゃんと見えなかったところがございます。そこの全体像という意味では、国が直接主導すべきテーマと、大学や研究機関そのものが主体的に動かすべきことと、これをちゃんとバランスよく分けて実施されることが非常に大事だと思います。国主導になると、やはりどうしても公募して採択するというプロセスが必要になります。それが遅れを今までも生んでいますので、研究所や大学が自らの意思で先んじてことを進めるというところに予算をつけていただく必要があると思います。それが2番目です。
3番目ですが、これは国際戦略のところにも人材のところにも出てきた、国際的な人材をどう考えるかというところなのですが、国際人材が全体の1割ぐらいのところまでは特別な人材として扱っても動くと思いますが、これからの日本、2040年の日本の形を見ると、もっとたくさんの人たちが入ってくると想定されます。要するに、日本人も含めて国際化しなければいけないので、外国籍の国際人材だけを特別視する施策はもう成り立たなくなってくると思います。
すなわち、日本人も外国籍の方もみんな世界的な人材流動の中にあって、その要の機関として日本の幾つかの大学が認定されるかどうか。すなわち、抱え込むだけではなくて、出していった先も大事なので、人材を循環させるということが大事だと思います。日本人も外国籍の方も差分なく、日本人も含めて国際人材市場の中で一定の処遇がされないと、回らなくなります。海外から招く人だけではなく、国内の人に対しても国際的な待遇を維持する施策が必要だと思います。これが入っていたのかどうかがあまり読めなかったので、あえて申し上げます。
どこの国の人かというのではなく、個々人の資質、いわゆるsuperiorityで待遇を考えることが大事。日本人の給与にしても、年齢や経験年数で給料が決まる今の制度はもう続かないというのはみんなが認めるところですが、外国籍の方たちを多く迎え入れていく、このタイミングで日本人の扱い方も一緒に変えていくぐらいのことがないと、何となく後進国的な、お客様いらっしゃい、ありがとうございましたになってしまいそうな気がします。今の機会に全体を変えていくことが大事だと思います。これが国際化に対する部分。
それから、4番目の、松浦審議官の御指摘の数理やデータサイエンスの教育を受けた人がもっと必要になる点なのですが、我が国で一番問題なのは、高校での文理分け、それから、国民の大多数は大学教育を私学で受けていますので、私学における受入れの考え方(入試科目など)は根本から変わらないといけないかなと思います。
ただし、世の中で求められているAIの知識だとかロボットを使うための知識は、必ずしも専門的な数学の知識や数理の知識が必要というわけではないので、教育の仕方によって解決可能だと思います。むしろ高校で文理分けしているところをどうにかして大学に入るところぐらいまで全体に総合的な教育をを施すための施策が必要です。ここから先は私見でございますが、現状なぜ高校で文理分けするかというと、大学入試に有利になるように時間を有効に使うというのが一番の原因ではないかと私は思います。そうすると、2つのやり方があるかと。入試に数理科目を導入する、もしくは、入試をやめてしまう。後ろのほうはなかなか難しいので、小さな変化を考えてみるのも一つかなと思います。
最後は、グローバル・コモンズについての御紹介ですが、確かに46億年の地球の歴史で、ついに人類が地球の健康を考えなければいけない時代が来ておりまして、これは大変大きなことなので、これに関しては、やはりlike-mindedもunlike-mindedも含めて、世界中でサイエンスで底地をつないでいくということを続けないと、どうにもならなくなると思います。
いろんな政治的な状況がございますので、表舞台ではやりにくいことも、科学というキーワードの中では、実は今でも底はつながっておりますので、これを切らないようにするというのも結構大事な施策ではないかと思っております。
【大野座長】 ありがとうございます。
それでは、続きまして、千葉委員、お願いいたします。
【千葉委員】 どうもありがとうございます。
まさに、この5項目、5点を進めることがすごく大事だと思っているのですけど、これを日本全体として意欲的に、非常に力強く進めるには、あと何が必要なのだろうかということをちょっと考えて伺っていたのですけれども、私自身は、日本のありたい姿、あるいはあるべき姿というのをもっと明確にすることがすごく大事だと思っています。それは、例えば、次の時代の経済的な基盤は何にすればいいのかとか、何を輸出して、何を輸入して、どういう国とどういう関係を保つかとか、一つ一つ例を挙げればそういうことなのですけれども、そうすると、そこに必要なサイエンスであり、そこに必要な研究、あるいはそれを推進する人たちというのが見えてくるのですね。
日本は、歴史的に見ても、何かに向かっていくときにはすごく構想力とか団結力とか力が発揮されるのですけど、何でも自由にやってくださいというと、何をやったらいいかよく分からなくなるような、そういう国民性があるのではないかなと。そういう意味では、やはりみんなでここを目指そう、日本は次はこうならなければいけないということをもっと具体的に、もっと戦略的に示した上で、だから、このサイエンス、だから、もっと大学はこういうところでしっかりしなきゃいけない、だから、高校生からこういうふうにしなきゃいけないというふうになると、みんなが同じ方向を見て、そして、みんながもっとよい社会を描きながら力を発揮できるのではないかなと思います。
ですから、このおまとめいただいたものを力強く前に進めるにはという、もう一段幅広のところもぜひ皆さんと一緒に考えて、その結果、これをより高いレベルのものにしていければと思います。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。 ほかにいかがでしょうか。
安田委員、お願いいたします。
【安田委員】 断片的な発言になってしまい恐縮なのですけれども、幾つか気がついた点を述べさせていただきたいと思っております。
国際化とか人材流動の文脈で、国際的な人材を入れて、輩出して、日本からも送り出すということは賛成で、最終的には国際的な共感性を高めるようなことを科学がやっていく必要があるのではないかというところも非常に共感したのですけれども、これをやっていくためには、やっぱり先ほどほかの先生が御指摘されていたのですが、日本人の国際感覚のようなものをもっと若い段階から育成していく必要があって、global citizenみたいな取組をほかの途上国でもやっている国もあるのですけれども、義務教育の中から国際的に他国の人たち、自分たちとは全く違う背景だとか、宗教だとか、そういった人たちとよくやっていくための教育や考え方みたいなものを義務教育の中に入れたほうがいいのではないかというところを感じながら、将来につなげていくことが必要なのではないかと思いました。
あと、話が飛びますけれども、日本における人件費の割合がすごく少ないというお話があったのですが、数字になっているものが何から来ているのかという疑問があります。以前、若手アカデミーのほうで、科研費の中の人件費として使われている割合を出したいということで打診したところ、データが出てこなかったということがありまして、科研費はこの統計から抜け出ているのではないかなというふうに推察しました。
実際の研究室の現場は、高度な機械のコアファシリティというのとは別に、研究室を維持管理していくためのスタッフというのは足りていないので、秘書さんはじめ、研究支援員などを一度外部資金で雇い始めたら、雇い続けないと回らないと。けれども、外部資金というのは競争的資金なので、3年とか長くても5年とかで切れてしまって、一方で、5年間の雇い止めの話などと衝突することによって、現場ではその調整をどうしたらいいのかが、結構大変です。雇い続けたいけれども、不安定なであるというところと、外部資金での不安定さが、先ほどの人件費のところに反映されていないということ。お話としては問題意識はもう共有されていて、安定した資金がないと、そういった人たちが確保できなくて困るということなのですけれども。ただ、今示されている資料の中に、こういった現場の情報というのが全部入り切っていないのかなというところは、気になったところでした。
あと、研究に集中できる時間の確保というのが何よりもすごく重要だなと思っておりまして、資料にも入れてくださっていたからよかったと思うのですけれども、地域貢献とか、そういった話がどんどん入ってくればくるほど、研究に集中できる時間が減ってしまい、トレードオフで地域貢献のようなものや、それ以外のマネジメントだと、アウトリーチ活動みたいなものとのバランスを考えていく必要があるかなと思いました。
後でまた、発言いたします。
【大野座長】 それでは、もうちょっと時間を置いてからお願いしたいと思います。
それでは、上田委員、そして宮園委員、お願いいたします。
【上田委員】 今日の説明内容を聞きまして、我々が持っている課題認識、方向性とほぼ合っているので、方向性としては間違っていないという印象を受けました。
一方で、理想的な状態にするにはこういう課題があるということを明確にすることが重要ですが、今は、現状と理想のギャップがかなり大きいのではないかと思います。ですから、現状はどうなっているかということを、各テーマに関して押さえて、そのギャップ解析が必要と感じます。このギャップ解析をする際に一番大事な目的は、課題解決のためのロードマップをつくることですが、今回、これが一番重要なポイントになると感じました。
一方で、今回はテーマと資料が多いため、これらを全部、ここで検討すると時間が足りないので、2点だけお話しします。一つは、コアファシリティに関するもので、資料1-2の、スライド番号で言うと12枚目です。これは日本地図が細かく見えますが、コアファシリティとして、こういうところをこういう視点で整備していこうということがこの前後のスライドでも書かれていて、これ自体は非常に重要だと思います。
ただ、コアファシリティを整備していく場合、例えば、我々企業では2つのパターンがあって、一つは、自社だけでそれぞれの大学とコアファシリティのような共用施設を整備する場合と、もう一つは、競合メーカーとも一緒にコアファシリティを整備していくというもので、2つのパターンがあります。
まず、自社でやっている事例としては大阪大学の事例で、まず、メタボロミクスの共同研究講座という形で立ち上げて、今ではオミクスの協働研究所という形に拡大させています。基本的には、大阪大学と島津の連携という形で、大阪大学の中にラボをつくって、島津の各種分析機器を設置して共同研究開発に活用していただくというもので、プロテオミクス、メタボロミクスを含めた、いわゆるオミクス解析の拠点に進化させているという事例です。これは島津が単独でやっている事例になります。
一方、東京大学の藤田誠先生と一緒にやっている柏の葉のラボでは、島津と日本電子とリガクが共同して、それぞれ自社の強い製品を持ち込んで、いろいろな試料の構造解析を行っています。島津は質量分析計、日本電子はNMR、リガクはX線回折で、それぞれシェアがかなり高い強い製品を持ち込んで、分子構造解析に関するコアファシリティとなっています。
おそらく、日本全体で見るとこういう事例がいろいろなところにたくさんあると思うので、コアファシリティの整備に当たって、これらをうまくネットワーク化していくということが大事ではないかというのが1つ目です。
コアファシリティの整備に関連して、少し細かい話になりますが、同じ資料1-2の、スライド番号で言うと10枚目の真ん中に「機器メーカー退職者等のシニアの活用」と書いてありますが、これは非常にいいアイデアだと思います。我々、分析機器メーカーは、シニアが60歳あるいは65歳で退職して、第二の人生を選択することになりますが、基本的にはやはり技術系の人間が多いので、退職する時点では自分の持っている技術を生かすために延長したいという希望が多いのが実態です。このようなシニアは技術的な基盤はしっかりしているので、こういう人たちをコアファシリティで活用していくというのは、名案だという気がします。これは島津だけではなく、日本電子、リガク等、ほかの会社も同じだと思います。
もう一つは、資料1-4、国際頭脳循環に関わる部分ですが、スライド番号で言うと10枚目のスライドで、この左側の「三位一体」という絵がありますが、これも非常に重要なポイントだと思います。日本から海外に送り出すというパターンがどうしてもよく議論されるのですが、逆に、留学生の受入れも重要で、これらを両方やっていくということが必要だと思います。今から、30年以上前の我々が若い時代は、どちらかというと海外志向の人間が多かったと思います。私もその一人でしたが、一度は海外で生活して、いろんなことを経験してみたいという人間は、昔はたくさんいたと思いますが、今はどちらかというと国内志向の人が多く、結果的に海外に行かない人が増えている気がします。そう考えると、今重要なのは、むしろ海外の優秀な人たちを日本に連れてきて、日本人の学生と交流させることによって、日本人の学生の海外志向を高めることだと思います。
昨日も、大阪大学の先生と話をしていたときに、最近優秀なのは、ベトナムとかインドネシアの学生で、海外に行って講演すると、講演の後に学生が待ち構えていて、あなたの研究室に行きたい、自分はこういう研究をしたいという話をしてくるそうです。要は、自分のキャリアパスをどういうふうにつくっていくかということをしっかり考えている学生が比較的多いのが海外ではないかということです。これはアメリカ、ヨーロッパに限らず、インドネシア、ベトナムでもそういう傾向のある非常に優秀な学生がいて、質問内容も非常に鋭いということを言われていました。一方、国内の学生は、どちらかというと、何をやったらいいでしょうか、言われたことは何でもやりますみたいな感じで、主体性という観点では、海外の人とは大きく違う傾向があるということを言っておられました。
言い方を換えると、自分たちの研究室のアクティビティは海外の留学生によって支えられているというような言い方をされていたのですが、そう考えていくと、やはり海外の優秀な研究者や学生を呼び込んで日本のレベル・主体性を上げていくことが、今、非常に重要な時代になってきていることを感じました。
以上2点が具体的に思ったことです。ありがとうございました。
【大野座長】 ありがとうございます。
それでは、宮園委員、お願いいたします。
【宮園委員】 どうもありがとうございます。
まず、海外との交流の件について引き続き申し上げますと、今日EXPERT-Jの話が出ましたが、私、選考に携わりましたので、簡単に結果を御報告させていただきますと、かなり多くの申請があって、やはり日本に来てラボを持ちたいという方がたくさんいらっしゃる。ここの表に書いてございますとおり、12月までに来てくださる方ということで選考しても、40人近くが日本に来てくださるということで、そういう意味では、かなりの方が日本に来て研究室を開きたいという。それは必ずしも日本人だけに限らず、海外の人も多く、しかも様々な国籍の方が日本に来たいということで、日本に対する関心が非常に高いのだろうなと感じました。今回は第1期ということで、引き続きこのEXPERT-Jで海外の研究者を引き寄せるような取組を続けていただければと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
一方で、では、日本の研究者を海外に送り出すという点ですが、先ほど上田委員からも話がありましたが、こちらのほうは、海外での生活費が高いとか、いろんなことがあるでしょうけれども、なかなか進んでいないと聞きます。ASPIREは非常に評価が高くて、成功例の一つと私は考えておりますけれども、一方で、やはり日本人の若手の研究者が海外に行くということは昔ほど多くなくなっていると思います。
幾つかの方法があるかと考えますが、一つは、やっぱり海外旅行などで海外に行くということと違って、海外で住むということに関しては、分からないことが多い。昨今、お聞きしていますと、大使館に科学アタッシェという方々がいらっしゃって、ネットワークをつくってくださっているという話を聞きますので、そういった方々との連携をこれからも増やすことによって、若い人が安心して海外に行って、ある程度いろいろな情報を持ちながら生活できるような、そういうネットワークをぜひ強化していただければと思います。これは恐らく外務省等、ほかの関係の省との関連が必要かと思いますけれども、ぜひよろしくお願いいたします。
次は、実は昨日、東北大学の国際卓越研究大学の視察をさせていただきまして、もうびっくりするくらいすごく整備されていて驚いたのですが。一つ感じましたのは、東北メディカル・メガバンクを視察させていただきまして、非常に優れた設備がそろっていると。
もう一つ、ずっと気になっておりましたのは、こうしたデータをはじめとした、それから、共用施設もそうですけれども、文科省の設備が、ほかの省庁のいろいろな設備、あるいは、プログラムとうまく合致してくれればいいなというふうに感じておりました。昨日のお話では、東北メディカル・メガバンク、国立がん研究センターのC-CATと連携して、すばらしい成果が出てきているということで、ぜひこういった共用施設、あるいはデータベースを省庁を超えて連携するような仕組みを進めていただければ、大きな成果がこれから出てくるのではないかと思います。
それから、研究者の育成につきまして、資料1-1について、大変丁寧にまとめていただきまして、ありがとうございます。これは大変すばらしいのですが、医学部の学生が将来研究するにあたっては、大学院に行くということはなかなか難しくなっているので、どこかでまた触れていただければと思います。
大学院に行く人は、研修を終えた後、専門医を取った後に行くいという仕組みになっているので、なかなか大学院に行かなくて、各大学が努力しておられますけれども、少しそういった情報をいただきたいということと、これも東北大学の国際卓越研究大学の話を聞いて、行く前からホームページを見て気になっていたのですが、SiRIUSという医学系の若手のPIを育てるというプログラムをつくっておられまして、6年間、臨床を離れて、助教クラスのPIの方を対象に募集したところ、ものすごい数が集まって、最終的には5人だけ採択されたそうですけれども。やはり医学系の若手のPIというのは、なかなか独立することが難しい中で、こういうプログラムには、やはり大きなニーズがあるのだなと思いました。
その中には女性の方が2人含まれていて、多分、大学を超えてやられるのではないかと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
最後は、今年STSフォーラムに行きまして、海外の方と話をしておりますと、やはりAIが今後の研究を大きく変えていくということで、AIとの関連につきましても、今後「科学の再興」という上では、ぜひ継続して議論させていただければと思います。
また、理科学研究所の話が出てきましたけれど、理研はAI×数理ということで、数理解析でいろいろなデータを解析しつつAIを使おうということで、先ほどの教育の話にもありましたけれども、数学教育を継続して、高校はもちろんですけれども、大学教育にも少し数学が充実するようなことも考えていただければと思います。私、医学部出身ですけれど、入学後2年経ったら数学を全く忘れまして、ある先生に「おまえ、数学は要らんやろ、医学研究だと」といつも言われていたのですが、今、数学が分からなくて大変困っていますので、ぜひ数学の教育を大学でも継続できるような形で考えていただければと、反省しつつ、よろしくお願いいたします。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、安田委員、いかがでしょうか。
【安田委員】 先ほどは大変失礼いたしました。
では、続きでお話しさせていただくのですけれども、「科学の再興」という意味で、一つの重要な指標だと思うのが、博士を取った人材がどのぐらい社会で活躍しているのかという点かと思っておりまして、今、スタートアップだとか、ベンチャーだとか、企業の中に直接行く方もいれば、小中高の教育の中に入っていく人もいると思うのですけれども、こうした人たちの活躍を何か評価できるようできると、政策として、科学人材が増えていること、それを博士まで取ったことが、科学の直接的な再興だけではなくて、社会にとってどれぐらいいい効果をもたらしてくれているかというところを測る上で重要なのかなとお伺いしていて思いました。
最後に、プラネタリー・バウンダリーの件もお話に出していただいておりまして、私、このような議論が出てきて、重要性を御認識されているというのがすごくすばらしいなというか、うれしいなと思っていたところなのですけれども、その中で、このプラネタリー・バウンダリーで、特に生物多様性の文脈でいくと、結構資本主義や、経済システム・社会システムとの折り合いというところがやっぱり一番大きくなってくるかなと思っておりまして、気候変動とか、環境とかというのは、突き詰めていくと、資料にも書かれていますね。経済・社会活動、やっぱりここら辺も大きく議論に上げて、そういった包括的な話も含めた科学リテラシーを世の中で広く広めていかないといけないのかなというところを、お話を聞きながら思ったところでした。
散漫な意見なんですけれども、以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
それでは、私からも何点かコメントさせていただきたいと思います。
今日御説明いただいた施策は大変すばらしいものだと思っています。これが全部実現できたらば、随分科学を取り巻く環境は変わると思います。皆様におかれましては、ぜひ結果にコミットしていただきたい。結果があって初めて施策がよかったということになりますので、そこをぜひお願いしたいと思います。そういう意味で、割と目詰まりしているところというのはどういうところなのかというのを一緒に理解できたらなと思っています。
例えば、一緒に設備を利用しようということがなかなか進まなかった背景の一つは、目的外使用を厳しく責められた時代があって、今それは緩和されたのかどうか、よく分かっていないところもあるのですけれども、プロジェクトが終了した、あるいは、毎年度検査があって、そこで、これはどういうふうに使ったのか、プロジェクトだけに使ったのかというふうに、私、責められた経験もあります。また、会計検査もありますので、なかなか大学の財務担当、あるいは会計検査担当の人たちは、簡単にいいというふうに言いにくい状況がつくられています。
ですから、そこは、大学の現場が何とかできる問題ではないので、ぜひこちらで道筋をつけていただければと思います。会計検査で東北大学と挙がった瞬間にすごいハレーションが起きますので、みんなやりたがらないですね。少し冒険的なことはできるはずだと言われても、なかなかやらないという現実があります。
あと、国際化も、サバティカルというものをどうインプルメントしていくのかということを、今いる方々にいかに外に出ていただくのかと。それは予算的な措置と、あとは、大学の中の様々な、会議が多いとか、研究する時間がないといったことをどう整理していくのかということで、そこもいろんな形で後押しできるのではないかと思います。
私の経験では、学務に関する委員会は結構ヘビーでして、しかも、学生諸君が留学して、海外で単位を取ってきたというときに、それをどうやって読み替えるのかということをみんなが集まって延々と議論するというようなこともあります。ですから、そういうことは、本来はプロがいて、行く前から、こういう形で読み替えられるというふうにすれば、教員が集まって議論する必要なんかないのですけれども、そういう形になっていない。そういう実際のプラクティスもありますし、それらを変えるような後押しをしていただくということが重要かなと思います。
理系転換の話もありましたし、多くの私立大学で理系転換、もちろんその前の中等教育の課題もあるわけですけれども。そのとき、この間、新聞に出ていましたのは、半分ぐらいの受講者は、あまり自分の役に立たなかったような気がするというアンケートの結果になっていると。これは、すごくいい講義をされる先生たちがいるのですけれども、それを共有できないというか、つまり、リモートの講義をどれだけ使って、それをTAというか、学生がちゃんとしみ渡るような格好になっているのかということを現場で見る人たちと分けたらいいと思うのですけれども。
リモートがなかなか進まないのは、我が国は、通学制と通信制が大きく分かれていて、そこで新しいビジネスモデルといいますか、新しいことがやりにくいような状態になっているという現状、それらも含めて、ぜひ御検討いただきたいと思います。
あとは、科学はオープンであるべきなのですけれども、我々のオープンさを当てにしてと言うとちょっとあれですけれども、オープンじゃない人たちが私たちのオープンさを享受するだけというのは、やっぱり避けなければいけないと。同じようにオープンにしていただく必要があるので、そういう意味で、ある種の我々のオープンなサイエンスに対して、どこまでオープンにするのか、誰にオープンにするのかという仕組みも必要なわけですね。それらがこれからリサーチセキュリティとしてインプルメントされていくのだと思いますけれども、そのときに、小さな大学というのは対応できない。一人で山のような多様なことをやっています。大きな大学は、部署をつくって、そこがやるということにすればいい。ですから、そういう実際に実施できるのかというようなところがポイントになっていくと思います。こうやるべきだと言っただけで、言われたほうが全然できない、あるいはやれる体制にない、そういうところは、本当は共通のものをつくったらいいのではないかなと思っています。
あと、ちょっと長くなりましたけど、最後はAIの関係で、やっぱりデータがあってのAIなのですね。ですから、そのデータを、いろんな考え方はあると思いますけど、やっぱり主権が我が国にあるデータである、ということをコントロールできるような形にするべきだと思います。
データというと、ともすれば何のためにやるデータ、何のためのデータということで、先にデータをどういうふうに使うかということからデータが集められるわけですけれども、これからは逆になると思うのです。データ自身が重要であって、そこから何を取り出していくかというのはその後の人たちのやることだということになるので、データをきちんと取って、そこへ集積していくというのが重要な課題になるのだと思っています。
【小安文部科学大臣科学技術顧問】 先ほど上田委員がおっしゃられたギャップという意味だったら、今、一番の彼我のギャップは給与だと思うのですね。私が80年代、90年代、アメリカに行った頃の仲間が、20年ぐらいたったら大体給与が3倍ぐらい違っていました。したがって、呼ぶのが非常に難しいことになった。これはやっぱりどこかに書いておいたほうがいいのではないかと思います。
それに関して言うと、やはり流動性を阻んでいるのは、退職金制度と年金なのですね。ですから、他の組織に移ったときに、損をしないということをきちんと担保するということを考えていただかないといけないと思います。
それから、数学を全ての人にやれというのは、私も全くそうだと思います。高校、大学、やはり全部やるべきだと思います。
技術系人材に関しては、もう少し国研を利用するということを書いていただいたほうがいいのではないかと思います。国研には非常に技術系の人はたくさんいますし、そういう人たちがどこかへ行ったときに、行き先がなかったりすることがある。それなど、大学がきちんと対応するのがいいと思います。
もう一つ、国際交流を活発化したいのであれば、大学のシステムをバイリンガル化しなければ無理です。これもどこかに書いておいていただいたほうがいいのではないかと思います。
最後に、グローバル・コモンズの話がありましたけど、例えば、温暖化であるとか、国際保健とか、多様性とか、こういうのを本格的にやるのだったら、そういう人たちを積極的に日本に呼ぶのか、日本にそういうプログラムをつくるのか、そこまで踏み込んでやるのですかというところをどこかでブレストしないと、言っているだけで終わってしまうのではないかなと思いますので。
以上です。
【大野座長】 どうもありがとうございました。
これまでの御議論の内容を踏まえて、次回の第4回において、本有識者会議として、次期基本計画に向けての提言、その内容を議論していくことができるように、事務局において整理を進めていただければと思います。
本日の議題は以上となります。最後に、事務局から事務連絡をお願いします。
【石川研究開発戦略課長】 次回、第4回ですけれども、10月27日の開催を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
また、本日の議事録につきましても、皆様に御確認いただいた上で、ホームページ上に掲載させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【大野座長】 どうもありがとうございます。
それでは、以上をもちまして本日の有識者会議を閉会いたします。皆様、御多忙の中、お時間いただきまして、誠にありがとうございました。どうもありがとうございます。
―― 了 ――
科学技術・学術政策局研究開発戦略課
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