「科学の再興」に関する有識者会議(第2回)議事録

1.日時

令和7年9月17日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15階 特別会議室及びWeb会議形式

3.議題

 1.前回の議論を踏まえた「科学の再興」に関する論点について
 2.個別の論点に関する議論
   ・ 新興・融合研究への挑戦を促進する支援の在り方
   ・ AI for Science による科学の再興
 3.その他

4.出席者

 委員   

  大野座長、伊藤委員、川合委員、染谷委員、千葉委員、仲委員、宮園委員、安田委員

 文部科学省

  柿田文部科学審議官、藤吉サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、西條科学技術・学術政策局長、福井大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、井上科学技術・学術総括官、
  奥人材政策課長、神部戦略研究推進室長、淵上研究振興局長、山之内振興企画課長、板倉学術研究推進課長、阿部参事官(情報担当)、嶋崎開発企画課長、
  松浦大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術学術政策連携担当)、赤池科学技術・学術政策研究所総務研究官、廣田大臣官房文教施設企画・防災部計画課長、石川研究開発戦略課長 ほか関係官

 オブザーバー

  小安文部科学大臣科学技術顧問、武田経済産業省イノベーション・環境局イノベーション政策課長

5.議事録

【大野座長】  それでは、定刻になりましたので、ただいまより第2回「科学の再興」に関する有識者会議を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日の会議も対面、そしてオンラインの併用で開催しています。また、冒頭から公開という形で進めさせていただきます。では、本日の議事等について、まず事務局から説明をお願いします。

【石川研究開発戦略課長】  本日の議事及び配付資料につきましては、お手元にございます次第のとおりでございます。資料1-1から2-2までと、参考資料1から参考資料4までございます。過不足等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
本日の委員ですけれども、上田委員と高橋委員が御欠席でございます。仲委員と安田委員がオンラインでの参加でございます。
また、オンラインの方におかれましては、御発言時はマイクをオンにしていただいて、その際にはカメラもオンにしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。

【大野座長】  それでは、議題の1つ目の「前回の議論を踏まえた「科学の再興」に関する論点について」に入ります。事務局より説明をお願いします。

【石川研究開発戦略課長】  それでは、私から資料1-1に基づいて御説明させていただきたいと思います。前回、「科学の再興」に関する論点について御議論いただいた中で、皆様からいただいた御意見を踏まえて、改めて論点を再整理させていただくということで資料を作らせていただきました。
おめくりいただきまして2ページ目ですけれども、前回の御議論において、大きく整理すれば、この3つの論点について御議論いただいたかと思っております。1つ目が基礎研究・学術研究について今日的な意味合いはどのようなものか、なぜ今、改めて基礎研究・学術研究が重要かという点、2つ目は、目指すべき「科学の再興」とはどのような状態が達成されているべきか、目指すべき姿がどういったものかという点、最後、論点3として「科学の再興」に向けて、その目指すべき姿に向けてどのような政策手段をとって達成するかというところが大きな論点でございました。
これらの論点について、御意見いただいたことを踏まえて、再度整理をさせていただいたのが3ページ目以降になります。
まず論点1について、3ページから10ページでございますけれども、4ページ目は、前回の資料でございます。前回、こういった資料で、なぜ今、改めて基礎研究・学術研究が重要かという点を御議論いただきました。
その中で、5ページ目に幾つか主な御意見を並べさせていただいておりますけれども、例えば、経済政策という観点から見ても科学は重要であり、これまでの科学の変遷や発展の要因を踏まえつつ、今後の姿も念頭に議論を行うべきということ、基礎研究・学術研究と応用研究の間に相乗効果があるので、トップダウンの戦略と基礎研究を分離して議論すべきではない、両者の相乗効果を考えることが必要ということ、多様な人材、多様な研究分野の高度な専門家が育っているということが重要であるといったことを御指摘いただきました。
御指摘を踏まえて6ページ目でございますけれども、過去、どういった形で基礎研究、科学技術への投資がなされてきたかというところ、令和7年の白書(科学技術・イノベーション白書)でも少し取り上げておりますので、資料として入れさせていただきました。
戦後の生活再建などから高度経済成長という時代を経て、特に1980年代辺りからは、貿易摩擦や円高などを背景として基礎研究が重視された時代で、当時、「基礎研究ただ乗り論」という他国から批判などがあった中で、我が国でも基礎研究への投資を拡充するという時代がございました。この頃、政府投資だけでなく民間の中央研究所なども多く設置されていたという時代でございます。また、1995年に科学技術基本法が制定されました。このときも、産業の空洞化、社会の活力の喪失、生活水準の低下といった実態を回避するために、独創的、先端的な科学技術を開発して、これによって新産業を創出することが不可欠であるという観点で、科学技術基本法が国会で制定されたというものでございます。
7ページ目に参考で入れさせていただいております。ここでは基礎研究への競争的資金ということで科研費とJSTの戦略創造を参考に挙げておりますけれども、科学技術基本法制定後、最初の第1期基本計画のときには、確かにこれらが伸びていたという時代がございます。ただ、ここのグラフで御覧いただいて分かるように、特にここ10年、20年は横ばいで推移しております。競争的資金だけではなくて、運営費交付金などもここ10年、20年は横ばいで推移しているというのが現状でございます。80年代、90年代や、基本法ができた当時などは、どういった観点で基礎研究、科学技術に投資されていたかということを少し踏まえた上で、では、直近この10年の間に、どういう環境の変化が起きているかということで、今日的な意味合いで基礎研究の重要性というものを捉えるために、ページ8の通り整理してみました。
近年の科学を取り巻くマクロ環境の変化ということで、政治的要因、経済的要因、社会的要因、技術的要因の4つに分けておりますけれども、政治的要因では、世界の不確実性の増大や、諸外国における政府の研究開発投資の増大ということで、欧米だけではなくて、中国や韓国、インド、また、グローバルサウスといった国々も大幅に投資を伸ばしているというところが、明らかに当時と大きく違うところかと思います。
また、経済的要因としては、先ほど申し上げた中央研究所などは、ここ何年かにおいて断続的な閉鎖等がございましたり、経済的要因の一番下に記載の通り、一部海外企業による一人勝ちが出てきたり、集中投資・成果の独占化も起きているということ。社会的要因では、もう皆さん御承知のとおり、気候変動、自然災害や、人口減少。また、技術的要因では科学とビジネスの近接化や、イノベーションモデルの変化によりリニア型からネットワーク型になってきているということ。さらに、一番下にございますように、AIの進展に伴って、そもそも研究の在り方自体が変化しているということがあります。
今まさに、また当時と違う形で世界情勢、国内情勢も変わっているという中で、改めて基礎研究が重要であろうということで、9ページ目ですけれども、前回お示しした資料から、冒頭青字のところ、科学の重要性の変遷と今日的意味合いについては、しっかり前回のご議論を踏まえる形で文章を追加させていただいた上で、前回と同じように大きく2つの観点から今日的な意味合いで基礎研究・学術研究が重要ではないかということを記載しております。我が国の国力、地球規模課題解決等への貢献の観点ということで、前回と繰り返しになりますけれども、産業やエネルギー、食糧を含めた我が国の安全保障、我が国の自律性、不可欠性の確保といった観点や、今申し上げたようにイノベーションのモデルが変わってきている中で、基礎研究とイノベーションは直結するもので密接不可分であるということなどを追記させていただいております。
また、10ページ目、多様性の観点では、前回の御意見の中でも人材の多様性という御指摘もございました。1つ目のチェックのところでは、どちらかというと研究分野の多様性という観点が強いところがございましたので、もう一つチェックを増やしまして、多様な分野の高度人材が育っている状況こそが日本の強みとなる、というような人材の観点も追記させていただきました。論点1につきましては、今申し上げたような形で前回の御指摘を踏まえて、過去、どういった観点で投資されていたかというところも振り返りながら、今日的な意味合いを改めて整理させていただきました。
続いて論点2、11ページからですけれども、論点2につきましては、そもそも目指すべき「科学の再興」はどうあるべきかということで、12ページで前回お示しした資料を掲載しております。13ページで様々前回の御指摘を示させていただいておりますけれども、例えば2つ目のチェックの2行目辺り、世界中から研究者が集まるような研究コミュニティにおけるプレゼンスを発揮するといったビジョンを示すことが大切だ、というご意見をいただいております。次のチェックのところでは国際的な研究ハブとなることが重要であるなど、国際的なプレゼンスという観点などで御指摘を多くいただいたと認識しております。
その上で14ページ目でございますけれども、改めて前回の内容から修正をしながら整理し直しております。2つ目の丸のところで、単に過去に戻るのではなく、「人や資金の好循環とそれを持続的に可能とする環境を確立し、今日的な時代背景や将来を見通した新たな「知」を豊富に生み出し続けることができる」状態と、これにより相対的に失いつつある我が国の科学力、基礎研究力の国際的な優位性を取り戻すということが「科学の再興」と整理できるのではないかということで、改めて記載しております。
その上で、先ほども申し上げたように、では、その国際的な優位性を取り戻した状態とは、具体的にどういう状態なのかという点を少し具体的に書き下してみるということで、一番下の青字の丸のところに、2つポツを書いております。我が国の研究力で国際的な優位性を取り戻した状態、プレゼンスを取り戻した状態ということで、最初のポツは日本の研究機関に所属する研究者が国際的な学術コミュニティはもとより、各国の官民セクターからも常に認識されて、突破口を求めて共に研究に取り組むことへの関心と意欲をかきたてる存在となる状態ということで、何かやろうと思ったときに日本人研究者が思い浮かぶ、これを聞きたいなというときに日本人研究者に聞いてみるというぐらい、日本の研究者が(各国から)見えている形というのが1つの状態ではないかと。もう一つは御指摘にもありましたように、日本がダイナミックな国際頭脳循環の主要なハブになっている状態。日本の研究者も外に出ていき、海外からも日本で研究したい、日本のあの人たちと研究をやりたいというような形で、帰ってきたり、また出て行ったりというようなダイナミックな国際頭脳循環のハブになっている。こういった状態が国際的な優位性を取り戻している、国際的にプレゼンスを取り戻しているという状態と言えるのではないかということで、具体に書き下してみました。
続いて15ページでございます。今申し上げたような状態が達成されるためには、日本の基礎研究・学術研究がどういう状態、どういう要素が満たされている必要があるかということで3つほど大きく挙げております。1つ目が新たな研究分野の開拓・先導が行われているということ。2つ目として、そうした新たな研究分野の開拓・先導が背景にございますけれども、国際的な最新の研究動向をむしろ牽引するという形で、日本人研究者が中心的な役割を担っているということ。最後に3つ目として、そういった先輩や同僚を見ながら、国内外の人材や、次世代が魅力的に感じる研究環境が持続的に発展・整備されるということ。これらの条件がそろっていることで、先ほど申し上げた状態、日本の優位性、プレゼンスを取り戻すという状態が達成されるのではないかということで、改めて整理をしてみました。
その上で論点3でございます。17ページは前回お示しした論点整理の資料でございますけれども、それを今、論点2のところで申し上げた目指すべき姿を踏まえて再整理したものが、資料飛んでいただいて20ページになります。ここでは「科学の再興」という目指すべき姿は、簡潔に書いておりますけれども、新たな「知」を豊富に生み出し続ける状態の実現や、それにより国際的な優位性を取り戻すという状態であり、そのための要素として、新たな研究分野の開拓・先導、国際的な最新の研究動向を牽引、そして国内外の人材や次世代が魅力的に感じる環境の持続的発展・整備という要件が満たされると「科学の再興」の姿が達成されるのではないかという整理をさせていただいております。
そして、それを実現するために必要な取組ということで、前回の内容をよりできるだけシャープにということで書かせていただいております。新たな研究領域の継続的な創造、国際ネットワークへの参画、優秀な人材の継続的育成・輩出、AI for Scienceなどを含めて時代に即した研究環境の構築、そして、これらが持続的に発展するガバナンスと財源を大学等研究機関が備えていること、こういったものを必要な取組として進めていくことで「科学の再興」を達成していくということではないかということで、目指すべき姿に向けての必要な取組までを含めて構造化をするということで、再度論点を整理してみました。
事務局からの説明は以上でございます。

【大野座長】  どうもありがとうございました。
それでは、今の事務局の説明を踏まえて御意見等をお願いしたいと思います。会場で参加の皆様におかれましては、名立てを立てていただいて、オンラインで参加の皆様は、挙手ボタンでお知らせいただきたいと思います。今、論点1、2、3と分けて御説明いただきましたし、非常に整理された状態になってきたと思いますので、論点1、2、3を分けずに皆さんがまずお感じになっていること、あるいは意見をお話しいただければと思います。
それでは、川合委員、お願いいたします。

【川合委員】  整理いただいた内容をもう少し具体的にデータで見せていただかないと、最終的に成果の評価が難しいと思いますので、一言です。例えば研究費の所、円で絶対表記していますが、国際的な比較の中での我が国の知名度を問題として、「科学の再興」を捉えるのであれば、国際的にどれだけの役割を日本が果たしているかを示さないと説得力が薄いと思います。例えば、全世界での官民含めての基礎研究に対する投資額、それに対して日本の投資額がどのくらいの割合にあって、それがどう経年変化して今に至っているかを見せていただきたい。
同様に人の流動性に関する話も、世界から日本に来る留学生の数等の経年変化と他国への留学生の流入の経年変化を比較するデータが欲しい。それから、先ほど御説明があったように80年代から比べると中国、インド、東南アジアの国々は、経済的に興ってきていますので、投資額が多分増えていて、留学生が選ぶ行先も、アジアの中で日本だけが対象ではなくなっている傾向など、そういう相対的な傾向を示すデータをそろえていただきたい。国際的な比較資料があることで、私たちがここで議論する政策提言に向けて,これまでの事実関係に対する評価が可能になるかと思います。ぜひお願いします。
私は、90年代の初めにPIになりましたが、その頃はERATOができるなど、JSTの投資が上がり、ワクワクした記憶があります。この状態が定額で続いていることで私たちは世界的にも優れた研究費の状態にあり続けていると思っていましたが、国際的に比較すると相対的には下がっていると思います。この点を示すことで「科学の再興」の意味合いも明確になると思います。ぜひそういうデータを示していただければと思います。

【石川研究開発戦略課長】  ありがとうございます。今申し上げてよろしいでしょうか。

【大野座長】  はい。直接関係があるようでしたらお願いします。

【石川研究開発戦略課長】  まさに海外の投資額ということで、特に基礎研究という観点では、例えば大学部門の研究開発費というのが、OECDのデータなどでございます。このデータでは、1990年代、2000年辺りから日本は多少の上下はあるにしても、ずっと横ばいです。一方で、海外はずっと伸ばしているという状況なので、海外との投資額との差でいくと、相対的に少し上位から落ちてきているというような傾向にはあり、特に中国などが非常に大きく伸ばしていたり、最近では韓国も大分伸ばしているという中で、日本が横ばいというところ、さらに物価や為替の関係なども考えれば、国内投資というところは今必ずしも十分ではないと我々としても認識しています。

【川合委員】  ぜひこういうところ(資料7ページ)の表にそれを入れていただけますかね。そうじゃないと、感覚論だけでは済まないと思っています。

【石川研究開発戦略課長】  はい。ありがとうございます。次回以降、関連データなどに加えさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

【大野座長】  そうですね。今、7ページのデータが特に平らになっているということですけれども、ここもインフレをアジャストしなければいけない。最後の数年間はインフレをアジャストするとどうなるのかということに加えて、今、国際的な我々の立ち位置をちゃんと再構築することで、それが「科学の再興」だと言っているわけですので、国際的にはどういう投資がされていて、我々はどういう投資をしてきたというところが出発点になるということですので、ぜひお願いします。ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。伊藤委員、お願いします。

【伊藤委員】  実は今の川合委員と似たようなことなのですけれども、全て円建てで表を作っていると、国際比較がしにくいので、やはり国際比較するときはドル建てで比較をしていくと、そのインフレも含めて、ますます見えてくるのではないかというのが1つ。また、実際に研究費といったときに、19ページのところにも出ているのですけれども、人材を育てようと思うと、例えばアメリカの場合は修士、博士に対して給料が支払われます。科学の分野においては特にそうです。研究費というものの中に大学院生の人材の給料とかが入っていますが、それが今まで、日本の場合はなかなか入っていないので、やはりもっと人に投資をしようと思うと、その点についてどれぐらい人に投資をしているのか、していないのか。
ヨーロッパの場合は、大体5年で修士まで取るのが一般的なので、最後の研究のときにアルバイト的にお金が払われることはあるんですけれども、やはり博士課程に行くと必ず給料がもらえるのは、もう当たり前中の当たり前なので、しっかりとした給料を払って、仕事として修士課程、博士課程ができる。それは研究費を取ってきた人がさらにその研究費で雇えるという形を作っていかないと、今までのように研究費として装置は買えますよ、消耗品も買えますよ、でも、あなたたちは学費を払って、頑張って働いてください、という考え方だと世界からも人が来ないと思います。
私は実際にこの間、UCバークレーを卒業して、日本に来たいという大学生2人に会ったんですけれども、給料制度はどうなっていますかといわれたときに、即答できなかったのが現状ですから、やはりこれは世界から人を呼んでくるといっても、この状況ではできないというのが現状だと思います。
以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございます。
また、アメリカなどでは、教員の研究費から大学院生を雇うのですけれども、その教員の研究費が十分ではない場合、教員も常に研究費を取ってこられるわけではないので、そのときにはやはり大学が法人として教育を手伝ってもらうといいますか、教育の役割を与えて給料をその間に支払うなど、そういう補完的な役割も法人がいろいろしているので、そういうところも参考になるのだと思います。いずれにせよ、例えば科研費を取って大学院生を雇用できるかというと、今、できないので、そこをできるぐらいの額にして、人に投資ができるようにするというのは重要なポイントだと私も思います。どうもありがとうございます。

【伊藤委員】  私立の場合は関係ないのですけれども、例えば国立の場合はやはり運営費交付金でティーチングアシスタントの雇用というのがありますが、今の給料では、今、大野座長がおっしゃったことですけれども、例えば50万円ですとかいうのでは安過ぎるわけですよね。ティーチングアシスタントも立派な給料をもらっていますので、そこら辺のところはやはり運営費交付金とかで考えるべきではないかなと思います。

【川合委員】  基盤的経費のところの話ですか。

【伊藤委員】  基盤的経費のところです。

【大野座長】  ガバナンスに関係しますよね、そこは。

【伊藤委員】  はい。

【大野座長】  ありがとうございます。
ほかに。染谷委員、お願いします。

【染谷委員】  ありがとうございます。また私からも似たようなことを発言させていただきたいのですが、今回、前回の委員会での委員からの御発言でも、また今も出てきたように国際やグローバルという言葉が繰り返し出てきていまして、これは研究費の比較も重要なのですけれども、既にたくさん御発言があったように、日本の基礎研究を推進する環境が、いわゆる海外におけるグローバルスタンダードと随分乖離しているところがあります。今回、せっかくグローバル、国際という言葉が繰り返し出てきて、ここを中心にまとめようという機運が高まっていますので、ぜひそこをもう少し深堀しながら課題の中に入れていただけると、今まで議論があったような、例えば国際頭脳循環であっても、これはグローバルなスタンダードとずれている、(海外研究者が)来たくても来れないなど、これは必ずしも給料の問題だけではありませんので、この視点をぜひ論点の整理に盛り込んでいただけるとありがたいと思いました。これが1点目です。
2点目は、これも多くの委員がおっしゃっていて、例えばサイエンスとビジネスの近接化のように、基礎研究が重要なのは、産業競争力などいろいろなところに大きな貢献が期待できるからであるということが論点であるにもかかわらず、基本的に課題の分析などになりますと、基礎研究だけの話になってしまうため、結果的には研究時間の減少など、必ずしも基礎研究だけでなく、全てにおいてこういう問題が発生しているという論点に落ち込んでしまいますので、やはり基礎研究がほかの近接しているところとどのような関係を持って相乗効果を上げられるのかという論点を今回のまとめにもぜひ盛り込んでいただきたいと思います。
その点では、やはり重視すべきは、日本における研究の労働生産性が低いということであって、これをいかに向上させるかということをきちっと解決していかなければ、給与を上げることもできない。給与を上げた結果、やはりそれに見合うような生産力が、生産力と言うとちょっと違和感があるかもしれませんが、研究のアウトプットが出るのかということをぜひ重視していただきたいというように思います。ここにまとめられている論点が間違っているということは全くないのですけれども、まとめる際にはこのグローバルスタンダードとの乖離、それから、ビジネスを含めたサイエンスの周辺のところとの相乗効果を上げる、さらに労働生産性を向上するための視点ということをぜひ盛り込んでいただきたいと思います。
私からは以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございます。
労働生産性という言葉が出ました。いかに投資に対して効果的なアウトプットが出るかということだと思いますので、それを見ていかなければいけないということですね。
ほかにいかがでしょうか。安田委員、お願いします。

【安田委員】  ありがとうございます。まず、目指すべき「科学の再興」がそもそもどういうものなのかというところで、先ほども少しお話がありましたけれども、現時点がどのような状態で、目指すことが何で、最終的にどういうふうに変われたのかというところ、そこを評価するための意識というのが今から必要だなと思っています。そもそも目指すべき姿というところなのですけれども、1つはやはりどうしてもトップジャーナルの話は確実に出てくると思うのですけれども、トップジャーナルを出すということでは、例えばですけれども、中国の例を見ていますと、最近すごく頑張っていて、トップジャーナルのほうにもどんどん踏み込んでいてすばらしい。一方で、内部の人にお話を聞いたりすると、過剰なプレッシャーがかかっていて、研究者の自殺も非常に増えているような状況というのを聞いております。
この辺のバランスを取ろうと思うと、適度なプレッシャーは大事なのかもしれないのですけれども、どちらかというとマイナスに直行してしまうかもしれず、ネガティブなものを増やすと、問題としては必ずしもいい方向には行かないのかなというので、むしろ、インセンティブ的なところでどんどん盛り上げていく必要があるのかなというのが1点です。
もう一つ、ほかの研究者と話していて、この間も気がついたことなのですけれども、日本において、日本国内からの引用も意識する必要があるのかなと。日本の研究者は、結構、自分自身に対して自己批判的で厳しいという面が特徴として挙げられると言われていまして、競争相手のものだと同じ自国の研究者の研究を引用しないなど、そういうところも分野によってはあったりなかったり、ということで、我々、科学者自身のマインドセットなのですけれども、そういったところを変えていくだけでも、研究自体のビジビリティや、被引用回数にフォーカスされたときには、重要な点になってくるかなというところ。日本語のジャーナルに出すと過剰な批判で、トップジャーナルのレビューなのかというぐらい、ものすごく長いレビューが返ってくるなど、科学的な重要な批判は当然重要なのですけれども、何か過剰な攻撃性を秘めたような批判みたいなものよりは、日本全体でお互い助け合って、よりよいものを作っていく、よりよい研究をしていくというようなマインドを醸成する必要があるのかなというところは思っております。
あと、目指すべきところの中で、トップジャーナルと同時に、今、社会課題に対しての科学の重要性というものがフォーカスされていて、地方大学でも地域の研究をしなさいということで、今、一生懸命、研究者も慣れない地域研究などにも多くの人が参入していっている状況だと思います。こうしたときに、この努力や労力をどう評価するかなのですけれども、地域の人たちが感じている科学に対する役割や、信頼、期待など、そういったものもちゃんと今の段階から評価をしておいて、そういったものに日本の科学者がちゃんと頑張って、そこが開いているのかどうかというところを押さえていく必要があるかなと思っています。
例えば地域での研究で言うと、地域のメディアインパクトみたいなものがあると思うんですね。地域の新聞に載ったり、地域のテレビで取り上げられて、地域の人の意識が変わるとか、それによって気候変動など草の根的にみんなが意識していかないと解決できないような問題において、科学者が橋渡しをするなど、こういったところは見えにくいのですけれども、そういった重要な役割をものすごい労力をかけて、1本の論文を書くのに必要な労力ぐらいをかけて普通にやっているという現状が今ありますので、そういったところをきちんと今の段階から、評価のマトリックスからよく考えていって、目指すべき「科学の再興」で、ここは大事ですねということを認識した上で変わってきているのか、結果が伴っているのか、という点もすごく大事だと思うんです。
(評価の方法として)地域での発明、地域での信頼、メディアでの取り上げなどが1つ考えられますし、あと、別に地域、地方でなかったとしても、一般市民が感じている科学への信頼について。日本も科学そのものへの信頼が今落ちているという話がよく取り上げられるのですけれども、そういったところで、科学の信頼が落ちているということは、もうそもそも科学が機能できない状況であるということなので、人文学的なアプローチになるのか分からないですけれども、これからこの「科学の再興」に向けた政策手段をした後に一般市民の意識がどう変わったか、というところもきちんと把握することが必要かなと思っております。
あともう一つ、最後に新たな研究分野、教育とか、あと国際ネットワークとか、優秀な人材の継続的な輩出というところで、これは国際化のところにも関わるのですけれども、1つ、私が考えていたアイディアとして、日本にダイナミックに国際的な異分野融合研究を作るための会議みたいなものの基盤というか、そういうハブになるようなものをバーンとつくってしまって、国際的に優秀な研究者にワッと来てもらって、日本の若手も含む研究者も入って、国際的な異分野融合みたいなもののファシリテーターのようなものをつくっていく、といった新たな試みを何かできたらすごく面白いのではないかなと。やるのは非常に大変なのですけれども、何かこのファシリテーター自体も異分野融合において、すごく重要なので、育成するとともに、日本で何か開催するとすごく日本人がいっぱい集まるというのもあって、活性化につながると思うので、そうしたアプローチとかもあり得るのではないかなと1つアイディアとして考えているところでした。
まず、私からは以上です。ありがとうございます。

【大野座長】  安田委員、どうもありがとうございました。実は途中でちょっと切れてしまいまして、日本の研究者がもう少しおおらかに、皆さんの引用等も含めて、厳し過ぎるところを改善すると違った社会になるのでは、というところ。その次が聞こえたのは、地域的な社会的貢献を考えようと。市民、社会に対してですね。その間に何か御発言があったとしたら、こちらに届いていないので恐縮ですけれども、繰り返していただけますか。

【安田委員】  すみません。ありがとうございます。もう一つ、私、言い忘れたことがあったのですけれども、中国で研究費は、そんなに多くないけれども、今、最近プロダクティビティが上がっている1つの重要な要因かなと思うのが、事務サポートがかなり充実していることと、共通機器へのアクセスが非常によく使えるようになっているということがあったので、今既に政策的にも整えようとしているところだと思うのですけれども、そうした点もすごく重要かなと思います。
あと、地域研究に関して、地域研究の評価という点は、地域での発明や、地域での信頼がどのように変わったか。また、メディアでの取り上げについても、今から評価をしておいて、この「科学の再興」として目指していったところでどう変わるかを評価するといいかなと思いました。地域研究では、研究費の切れ目が地域との関係の切れ目になったりとか、いろいろやはり課題も多いので、ここら辺も含めて、世の中にとってよい科学とは何かをよく考えていったほうがいいかなと思います。
あと、一般市民の科学への信頼というところで、サイエンストラスト自体が国全体で少し低いのではないかという話もあるので、現段階での一般市民の科学への信用度というものと、あとこの「科学の再興」に向けた政策を実施、推進して目指すべき科学を追求していったときに、一般市民の科学への信頼や期待というものが、どのぐらい上がったのかというところも評価するべきかと思いました。
最後に、新たな研究領域、国際ネットワーク、人材のところ、全てに関わると思うのですけれども、国際会議はよく分野ごとの国際会議や、融合研究、会議みたいなものをやっていると思うのですけれども、思い切って例えば日本が国を挙げて優秀な海外の研究者、いろいろな分野の人たちを呼んできて、日本の研究者も呼んできて、ファシリテーターをつけて、その1つの国際会議の中で何か、その場で国際異分野共同研究みたいなものを始めていくような、シーズをつくるような何か会議みたいなもの、私が知る限りでは、今、どこの国もやっていないと思うのですけれども、例えばそういうものを日本が打ち出してみて、先導的にどうにか、そういった国際的な分野融合みたいなものを推進していく拠点にすることなど、何か思い切った政策をやってみるのは面白いのではないかなというところを思っておりました。
以上です。ありがとうございます。

【大野座長】  どうもありがとうございます。非常に建設的な様々な提言と、かつ視点を提供していただきました。ありがとうございます。
それでは、続きまして仲委員、お願いします。

【仲委員】  どうもありがとうございます。安田委員の意見と重なるところもあるのですけれども、3つあります。1つは多様性というところです。適正に、多様な分野の基礎研究を発達させていこうということ、大賛成です。そのときに、これは繰り返しになりますが、津々浦々にある諸大学を支援して、設備などが老朽化しているという辺りも指標として加えて、そういった設備や基盤的なものがどういうふうに刷新されていくかということも評価基準にして支援をしていくことが重要だと思います。
その多様性ですが、津々浦々の、様々な研究者が自分の関心で研究を行えるというのもあるし、また、前回も申したのですけれども、若手の育成において、中高生から文理を分け隔てなく融合させた形での教育を進めていくということが重要であろうと思います。ここで力を入れておけば、5年後、10年後には新しい大学生、院生、そして博士、ポスドク、というふうに育っていくと思いますので、そこに今、力を入れるというのが重要かなと思います。
もう一つ、多様性で言うと、基礎研究のいろいろな芽が出てきたら、今度はそれを多様な目で引き取って社会に還元できるような、アントレプレナーというのでしょうか、こういう方たちの育成、支援というのも重要かなと思います。そこもビジネスとサイエンスの垣根をなくしていく、融合させていくという交流が必要かなと思いました。これが多様性についてです。
次に、AI for Scienceですけれども、AIということになると、今、本当に多様なデータが、交通系を使っても、買物をしても、チャット何がしとか、ディープ何がしを使っても、どんどん私たちは、(データを)入力をしているということになるかなと思います。そういった日本の中で行っているいろいろな情報的な活動が、どこに集約されていくのかというと、現在のところで言うと、国内というよりはグローバル企業になったりもしているかなと思うところです。やはり日本のサイエンスの再興のためには、多様なデータを収集して、それを使える仕組みを強固にしていく必要があるかなと思います。
最後に、先ほど市民の活動、あるいは意識という話が安田委員からありましたけれども、私も大賛成で、そういう意味では、医療機関を受診する、買物をする、日々のごみを捨てるなど、そういう活動全てが、実験や調査、データ収集に関与しているということなのだと認識する、そういう意識を広く私たちが分かち合えるようになるといいかなと思いました。
以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございました。
それでは、千葉委員、お願いします。

【千葉委員】  非常に分かりやすくまとめていただいて、私は全くそのとおりだと思っております。さらにこれを前に進めていく上では、1つは財政的なところがかなり重要だという話がございますけれども、突き詰めると、日本が全体としてこのサイエンスに対してどれだけ協力的になるか、理解をしていくかというところで、その観点をもっと重点化し、科学に関与する人というのは大体、非常に理路整然と割と難しい表現を使うことが多いのですけれども、もっと国民や、あるいはいろいろな別の世界で大きな判断をするような人たちに理解されるような表現というのがすごく大事だなと思っています。多分、ここにいらっしゃる方はたくさん経験されていると思いますけれども、この話をそのまま別の世界の方に話してもあまり通じないんですね。
一般論としては、科学は大事ですねというふうに、何がどう大事なのかまでは理解されていないことが多いと思います。ここの努力をもっとしないと、私たちのやっていることが大事だというだけで、なかなか前に進みにくいのではないか。いろいろなところに合わせた表現の使用や、あるいは次の世代を担う初等中等教育に関してもそうなんですけれども、そういうところにもっともっと門戸を広げていく努力をするというところが、まさに、この文科省の有識者会議において、やっていくことが大事だと思っています。
以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございます。
それでは、宮園委員、お願いいたします。

【宮園委員】  どうもありがとうございます。まず、細かい話を2点だけお話ししたいのですが、この資料を事前にいただいたときに、5ページの下から3番目のところ、「大学など」の基礎研究と産業界の連携と書いてありまして、ここに(大学だけでなく)国研とか研究所を入れてほしいということをお願いいたしました。私自身、大学と、それから、理化学研究所、両方におりまして、やはり国研ならではの非常に重要なところを経験しまして、大学と国研が連携することがいかに大事かということを痛感いたしました。
具体的にはSPring-8やNanoTerasuを見学して、これはやはり大学と国研が連携していって、大学の方がもっと国研のいろいろな基盤研究とか施設にアクセスできるようにすることが、日本の研究の発展には重要ではないかということ。いろいろなところで「大学など」と言われて、国研はそこに含まれるような感じになっていますけれども、ぜひ国研という言葉を重要なところで入れていただければと感じたのが1つです。
それから、2番目に、これも昨日からいろいろと議論しているのですけれども、自律性と不可欠性という言葉が出てきまして、そのジリツのリツという字が立つほうなのか、自分を律するほうなのか、今混乱しているように思いますので、ぜひ文科省のほうで整理していただければと思います。昨日の別の会議では確か、自律のリツは立つほうを使っていまして、本日の資料は律するほうで、どちらなのかはいまだに私も悩んでいるので、ぜひその辺りの整理をお願いいたします。
その次に、14ページ、15ページについてです。「科学の再興」と考えたときに、私自身が最初に考えたのは、前回から議論になっておりますけれども、Top10%論文を増やすとか、世界に対するビジビリティをもっと向上させるとか、そういった議論になっていて、そのために一番重要なのは、先ほどから話が出ております国際的に活躍する人材、それから、国際頭脳循環を活性化すること、それから、やはり科研費などによる基礎研究の成果というのが論文の引用等にはよく関係しているということを言われますので、そういったことからまず始めることになるのかと思っておりました。今回、14ページ、15ページを拝見して、大分、私も悩みが深まりまして、とにかく「持続的に創出されること」とあります。短期的に上向きにするのではなく継続して、例えば15ページの3のところであれば、魅力的に感じる環境が持続的に発展・整備されることなど、それから、革新的なものが持続的に創出されること、これは一過性ではなくて継続して科学の発展を考えるべきということを言われているのかと思いつつ、どうしたらいいかということを考えておりました。
そうしますと、もちろん重要なことは、先ほど伊藤委員もおっしゃっていたとおり、若い人に興味を持っていただいて研究者として研究をすることで、給料もそうですけれども、安心して研究を続けながら、自由な発想で研究を続けつつ、その自分の研究成果が将来、あるいはすぐにでも社会実装につながるということを考えますと、人材育成、特に若い方、大学に入る前ぐらいの子供たちに対して、科学というのがいかに重要で、いかに魅力的なものであるかということを教育していくということも、この時点でやはり考えておくべきだということを強く考えているところです。
私自身はやはり研究を行うことが非常に楽しくて魅力的であるということでやってきました。私が若い頃は、とにかく日本の免疫学は、全ての新しい発見が日本人と、それから、米国にいる日本人によってなされているという時代でありまして、それくらい日本が世界をリードしている時期がありました。それを何とかして継続的にできるような環境ということをもう1回考えてみたいなと思っております。
具体的な方策という点では、皆様からいろいろと言われていることが、まさにそのとおりだと思いますので、これをもう1回整理して、これからも継続して持続的にこういった成果を上げていくためにということで、繰り返しになりますが、人材育成を含めて、研究者という職業が魅力的であるということをぜひ強く考えて改革を進めていきたいと思っております。それに関しましては、もちろんサラリーもそうですけれども、ガバナンスをしっかり効かせて、社会的にもやはり研究者というのがいい仕事だと思ってもらえるようなことが重要であると思います。
以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。オブザーバーの皆様、何か。

【小安顧問】  ガバナンス、環境、国際に関して1点ずつ意見を述べさせていただきます。
最初は、大学院生の給与の話題についてです。なぜ給与を支給しなくてはいけないかという理由ですが、例えば、研究費から大学院生の給与を出すとなると、研究費をきちんと獲得しているところに大学院生が進学することになります。現状では、大学の中で基幹講座に多くの学生を配属させ、研究所に進学する学生が限られてしまっています。獲得した研究費で給与を支給するとなると、基幹講座があっても研究費が獲得できない研究室には学生は進学しなくなります。そのような観点から、この問題はガバナンス改革の1つのきっかけになるのではないかと思います。
次に、環境に関してです。私自身が30年も前ですけれども、アメリカに行ったときには決してアメリカの機器類などが優れているとは感じませんでした。むしろ、日本のほうが良い機器を有していると思いました。しかし、それを使うシステムの違いが大きく影響します。外国の研究機関では、最先端の機器を大量に導入するのではなくて、人が交わるような環境をつくるようなビルを建てるなどして、工夫して研究室を配備しています。これがやはり1つのキーであり、人が育ち、学際的な研究が発展します。しかも、必然的に機器は共用することになる方法です。
最後に、国際に関してです。日本学術振興会が行なっているフロンティア・オブ・サイエンス・シンポジウムという日本でもいい取組があります。伊藤委員も参加されたことがあると思いますが、このシンポジウムは我が国と、例えばドイツ、アメリカ、フランスなどの相手国の45歳以下のいろいろな分野のトップのサイエンティストを集め、3日ぐらい一緒にいろいろな分野の議論をさせます。その交流から多くの共同研究が生まれて、国際共著論文の発表につながっています。このプログラムの成果、どのような人材育成につながったかを改めて検証していただくことは、ヒントになると思います。

【大野座長】  どうもありがとうございました。
もう私が申し上げることは、ほとんど出ているのだと思いますけれども、純粋にサイエンスをやりたいという人たちもちゃんとやれるような仕組みにしておくのがいいなと思います。何のためにというよりは、サイエンスがやりたくてしようがないので、何かのためということは考えたことすらないという人たちも世の中には存在して、もちろん自分がやりたいということが非常に高度なことかどうかというのは、周りがジャッジしなければいけませんし、そのアウトカムがあれに使えるのではないかということは別な方がやればよく、インパクトを見いだす仕組みが必要なので、それはガバナンスのほうに入ってくるとは思う。全員がそうなる必要はないと思いますけれども、もう本当に楽しくて楽しくてしようがなくてやっている方がものすごい成果を出すということもあるので、そういうところもちゃんと目配りをした仕組みになっているといいなと思います。
みんながみんな好き勝手にやっていいという意味ではなくて、そこは非常に高度な評価が入るので、難しいところではあるとは思いますけれども、それは忘れてはいけない点だと思います。インパクトを見いだすという意味では、やはりガバナンスが必要で、特に日本の今の大学、多くの大学は、自分の大学として、どういうところに研究の特徴を持たせようかという意味でのガバナンスはないのだと思います。それはなぜかというと、大学がお金を持っていないから。そのため、大学がどこに投資をして、こういう分野を育てようという、そのリーダーシップを発揮できていない。それはこれから徐々に国際卓越や、J-PEAKS、あるいはほかの仕組みを含めて醸成されていくと思いますので、そこをちゃんと見ていく必要がありますし、この提言にも入れていく必要があるのではないかと思います。
ということで、以上ですけれども、まず1番目の議題で、何か言い残したこと、あるいは言っておきたいことがありますか。染谷委員。

【染谷委員】  今、大野座長から純粋にサイエンスをやりたい人のための環境というお話がありました。私も全くもってそこに賛同するものですが、先ほどの私の発言の中で労働生産性の話をさせていただきましたけれども、これは誤解がないように申し上げておくと、単に産業競争力を高めるような研究をもって労働生産性と言っているわけではなく、研究者が持っているポテンシャルを最大限に引き出すような環境を整備することが重要であるという点においての労働生産性です。今、大野座長のお話をお伺いして、誤解がないように少し補足させていただきました。

【大野座長】  ありがとうございます。我々としては、サイエンスのアウトプットという意味での労働生産性と捉えるべきだということですね。

【染谷委員】  はい。おっしゃるとおりです。

【大野座長】  ありがとうございます。

【川合委員】  私も一言、いいですか。

【大野座長】  はい。川合委員、お願いします。

【川合委員】  先ほど自立か、自律かという、その言葉遣いの定義の議論があったのですけれども、私自身は基盤的経費をやはりきちっと入れて、先ほど座長がおっしゃったように大学や研究機関が自らの意思で一定の分野を振興することなどに投資できるようにすべきであるというのに大賛成です。一方で、役所の話を聞いていると、昔のことだとは思うのですけれども、国立大学は自らの意思で技官や助手を切って教授の職を増やしたりしていて何をやっているか分からないよねという意見も聞きます。科学を推進する機関の信頼を得るには,自らを律してどうやって科学生産性を向上させるかに真剣に取り組む必要があると思います。自立と自律はやはり両方必要で、その精神をきちっと伝えていくこともとても大事だと思います。

【大野座長】  全くそのとおりだと思います。技術職員の方々を減らしていったというのは、全体を見通すガバナンスの力がなかったのだろうなと思いますね。いろいろな解釈ができると思いますけれども、時間の関係で次の議題に入ってよろしいでしょうか。
それでは、個別の論点に関する議論に入りたいと思います。2つの論点について文科省から、まず御説明をいただき、まとめて意見交換をさせていただきたいと思います。1点目は、新興・融合研究への挑戦を促進する支援の在り方として、神部戦略研究推進室長から説明をお願いします。その後、続けて2点目、AI for Scienceによる科学の再興として研究振興局の淵上局長から御説明を続けてお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【神部戦略研究推進室長】  それでは、資料2-1を御覧いただければと思います。第7期に向けて、この新興・融合領域の研究をどういうふうに進めていくのかといったことを今省内でも検討を進めておりますので、本日、委員の皆様から御意見を頂戴し、さらに検討を深めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
スライド2を御覧ください。まず、検討の背景・目的ですが、昨今、社会が直面する課題が複雑化し、複数の分野の知識や技術を組み合わせることが不可欠となっております。また、イノベーションもネットワーク型に変化しまして、複数の組織、個人が連携するアプローチが求められております。このような中で基礎研究においても、基礎研究と社会実装の距離が近くなっているといったことを鑑みましても、やはり新興・融合研究の重要性が高まっていると考えられます。また、この新興・融合研究は、関連する知の総体を理解し、実現しようとする活動とも言えますが、逆に言いますと、この新興・融合研究を通じてほかの分野との関わりを持つことで、その個別の研究の立ち位置や価値を再確認することにもつながると考えております。
一方、この新興・融合研究を進めるに当たっては、評価の難しさや分野間連携など固有の問題もございますので、これらに対応する方策が必要となっております。このような新興・融合研究の重要性や課題を踏まえまして、今後の方策を考えていく必要がございます。
次のスライド3を御覧ください。新興・融合研究に関する現状認識を3枚のスライドでまとめております。まずスライド3でございます。これはサイエンスマップのデータとなりますが、日本は主要国の中で、この参画領域、サイエンスマップの領域が少なくなっております。さらに相対的に、成熟領域と言われるコンチネント型が多く、新興領域が出現する傾向があるスモールアイランド型が少ない状況となっております。
続いてスライド4を御覧ください。同様にサイエンスマップのデータでございますが、この学際的・分野融合的領域の数は、年々大きく増加しておりまして、また、2002年のマップと比べますと、マップ全体にこの学際的・分野融合的領域が幅広く広がっているといった状況になっておりまして、こういった意味でも学際的・分野融合的領域の注目度が年々高まっていると考えられます。一方、この領域への日英独の参加割合を比較しますと、他国に比べて日本の参画が進んでいないといった見方ができるといったこともございます。
スライド5を御覧ください。こちらはイノベーションの観点となりますが、AI、量子、半導体などの革新的技術は個別にそれぞれ進化を遂げているのですが、さらにその技術同士が融合し、大きな価値を生み出すといった流れが加速していまして、今後、そういったことがさらに期待されると考えております。資料の下のほうに世界経済フォーラムが6月に公開しましたレポートを例として挙げてございますが、その中で、23の潜在力の高い技術融合の領域が述べられております。こういったことも参考にしながら、日本としても考えていく必要があると思っております。
スライド6を御覧ください。このような現状認識を踏まえまして、今後、新興・融合研究を進めるに当たって考えられる主な課題を4点挙げております。まず1つ目でございますが、若手研究者の挑戦を促進することです。新興・融合研究は通常の分野研究に比べて、成果の見通しや異分野間の研究者のコミュニケーションの難しさなどの課題もございますので、特に若手研究者にとってはグラントを取ってくるハードルが高いといった現状もございます。一方、若手時代から新たな領域に挑戦することなどは非常に重要でありますので、若手研究者の挑戦を促進し、ポテンシャルを伸ばしていくような、そういった効果的な研究支援が必要だと考えております。
スライド7を御覧ください。2点目、評価の在り方に関してです。新興・融合研究は既存分野に比べますと、その既存分野の枠を超えた新しい概念などを確立していくといったことがございますが、一方で、学際性が高い研究テーマほど審査が難しいといった問題がございます。こういった問題を解決していくための評価、仕組みが今後も必要になってくると考えられます。
スライド8を御覧ください。3点目、チーム形成・人材育成でございます。優れた研究を進めるに当たって、卓越した研究チームやチームを主導する人材が不可欠となりますが、今日、研究時間が減少する中で、なかなか研究者個人の努力でこういった研究者間のコミュニケーション、チーム形成を進めていくことが難しくなってくるということが考えられます。また、先ほど申しましたように、世界的にこの学際的・分野融合的領域が増加していく中で、他国の研究とタイムリーにつながっていくことが非常に重要になってきます。そういった意味で海外とのネットワークを強化することがますます重要になってくると考えております。
スライド9を御覧ください。4点目ですが、技術融合の推進でございます。革新的技術の融合について、海外の例を挙げております。例えば台湾の例でございますが、従来、半導体を中心としたサイエンスパーク、産学官の集積を進めてきましたが、昨今では半導体のみならず、通信やAIといった技術を基盤としまして、さらにバイオなどのアプリケーション側の研究も含めた産学官の集積を進めているといった事例もございます。このように産学官の最先端研究を一体的に行っていくような環境整備を日本においても考えていく必要があると思っております。
スライド10を御覧ください。以上の背景や課題を踏まえまして、今後の方向性を3つ挙げております。1つ目は若手研究者の新興・融合研究への挑戦を促進するための研究支援や評価の在り方についてです。2つ目は、新興・融合研究を促進するための効果的なネットワークの形成を推進すること。3つ目は、重要技術融合領域をしっかり分析し、その領域を推進するための方策を検討することでございます。それぞれの方向性につきまして、もう少し詳細にまとめているものがございますので、次のスライドで御説明いたします。
スライド11でございますが、まず、若手研究者への研究支援や評価についてです。戦略事業やCOI-NEXTといったトップダウン型の研究開発については、これまでもトップ研究者を中心とした卓越した研究チームにより、しっかりとした研究成果を上げてございます。こういった研究開発は引き続き推進することが重要ですが、今後は若手研究者による挑戦を促進するための育成型のアプローチが必要だと思っております。これは成果の見通しや分野間コミュニケーション、そして、そういった固有の問題を解決していくための、その問題に適応したアプローチをさらに強化していくことが重要だと思っております。
また、ボトムアップ型についてでございますが、科研費については、先ほども申しましたように、評価の在り方の検討を行うとともに、若手研究者による挑戦を促進するための研究費の拡充が今後必要であると考えております。創発については、現在、基金で進めておりますが、引き続きこの安定した研究資金を提供できることが重要だと思っております。さらに、科研費、創発につきましては、親和性が高い事業でございますので、両者を一体的に進めていくため、そういった観点での改革も重要になってくると考えております。
続きまして、スライド12を御覧ください。効果的なネットワークの形成、推進についてですが、先ほども申しましたように研究時間の確保が大前提になってございますが、そういったものを前提としつつ、その日々の研究活動を超えて、多様な研究者と交流できる機会の促進や国際的なネットワークの形成などを推進していくことが必要だと思っております。検討事項としまして、下のほうに挙げておりますが、例えば大学共同利用機関などの多様な研究者が集まる環境を活用していくことであったり、また、海外との関係で言いますと、若手研究者の時代に海外のコミュニティに参画することを促進すること。さらに日本が中核的な位置を担える研究領域につきまして、そういったところを活用しながら国際的な研究コミュニティを形成していくといった方策が重要だと考えております。
続きまして、スライド13を御覧ください。技術融合に関しましてですが、我が国として優位性や独自性を発揮できる技術融合の領域として、どういうところがあるのか、といったことをまず分析することが必要だと思っております。その上で、その領域をどのように進めていくかという点について、関連する幅広い分野の基礎研究と分野間連携を効果的に行っていく環境整備を進めるとともに、その人材育成や国際連携などの方策についても併せて進めていくことが重要だと思っております。その際、下の検討事項にいろいろと書いてございますが、特に国研の役割も非常に重要になってくると思っております。もちろんプレイヤーとしてもそうなのですが、技術に関するプラットフォーマーとしての役割もございますので、そういった国研の役割を幅広く捉えながら考えていくことが重要だと考えております。
以上の説明をまとめたものがスライド14になっております。下の部分にございますように、若手研究者の挑戦を促進していくこと、また、国内外のネットワーク形成を進めていくこと、これらが我が国の基盤となっていく部分だと思っております。その基盤を強化しつつ、さらに重要領域や、若手のチームに適応した育成型のアプローチ、トップサイエンティストの研究開発の推進、といったことを効果的に連携させながら進めていくことが大事だと考えております。
最後、スライド15になりますが、戦略性という観点で作ったスライドでございます。スライド14ではこの全体の説明をしましたが、さらに日本が国際的なプレゼンス、研究力を高めていくという観点で言いますと、やはり日本が強い領域を有効活用していくことが大事だと思っております。それは日本が強い領域をしっかり進めていくと同時に、この黎明期の段階から国際的なネットワークを形成して日本のプレゼンスを高めていく、そういった研究開発と国際的なネットワークを、早い段階から相乗効果を発揮できるように進めていく、こういったことによって研究力、国際プレゼンスの両方を高めていくことができるのではないかと考えております。
以上、説明でございます。

【大野座長】  神部室長、どうもありがとうございました。
それでは、淵上局長、お願いいたします。

【淵上研究振興局長】  資料2-2を御覧いただきたいと思います。先ほど第1部の御議論で、資料1-1にありました今後の必要な取組の1つとして、時代に即した研究環境の構築がございました。その中の1つとしてAI for Scienceが掲げられてございますので、現在の私どもの検討の状況を御報告して御審議の参考にしていただきたいと思います。
それでは、資料2-2の2ページ目、「はじめに」のところでございます。AIは、改めて申し上げるまでもありませんけれども、研究力の生産性の向上のみならず、科学研究の在り方そのものを変革する大きなものともなっております。海外では研究においてこれを促進して、研究の高度化、高速化というのが急速に進展しております。我が国でも本年5月にAI法が成立いたしまして、国全体を挙げてAIをどうしていくのかということで、世界で最もAIを開発・活用しやすい国を目指す方針が示されているという状況でございます。最後から2つ目のポツに記載の通り、日本の強みを活かしたAI for Scienceの先導的実装に取り組むことが喫緊の課題と認識をしておりまして、AIを我が国のこの「科学の再興」の駆動力として、日本の科学力の反転攻勢のチャンスとするためには、ここ数年が勝負で、スピード感を持って取り組む必要があるという基本的な認識を持っているところでございます。
3ページ目は、今少し御紹介しましたAI for Scienceに関する国際的な動向でございますけれども、世界中でAIの研究開発、利活用への投資が進んできておりまして、各国ともにAIを重要技術と位置づけて国家戦略を策定しているという状況でございます。御覧いただきますと、米国、EU、英国、中国はそれぞれ国家戦略を立てた上で、その中にAI for Scienceについての取組も設けられているという状況でございます。
4ページを御覧いただきたいと思います。こうした中で我が国の強みを改めて確認をしておきたいと思いますけれども、まず、日本全国をつなぎます流通基盤(SINET)、また、研究データ基盤、そして世界有数の計算基盤があるということで、世界でも稀な世界最高水準の情報基盤があるということでございます。また、ライフサイエンス、マテリアル、防災、地球環境などの分野において、これまで蓄積していただいております質の高い実験・観測データがございまして、これはAI for Science推進のための極めて重要な資産だと思います。加えて、数理科学をはじめとした基礎科学力の蓄積も国全体として持っているという状況。さらに、現在の様々な状況を考えますと、AIやロボットに対する需要や社会的な受容性も比較的高かろうと。制度的にも環境が整っているということで、最後のポツにございます通り、AI for Scienceの推進で「科学の再興」を目指していくということが、今求められている1つだろうと考えているところでございます。
5ページ目が、こうした日本の強みを活かしながら、どのように進めていくのかという基本的な戦略の考え方を示したものでございます。これをさらに具体化したものが6ページ目になります。今後の方向性として、6点ほどを今考えているところでございます。最初のポツにございますが、今御説明申し上げた国際的な動きの中で、我が国の強みを活かしてプレゼンスを示し、研究力を反転していくためにはAIの利活用を前提に、研究基盤・研究システムを転換して研究活動におけるAI利活用によって研究の効率性・生産性を向上させ、研究者の皆様の創造性を最大限発揮できるようなものにしていく必要があるだろうということでございます。その際、スピード感を持って戦略的な取組を進めていくということで、6つの方向性を考えてはどうかと考えております。
1つ目がAIそのものの研究と、それから、AI利用研究における先駆的・先導的取組の推進。2つ目がAI駆動型研究を支えるデータの創出・活用基盤の整備。3つ目が次世代情報基盤の構築。それから4つ目が人材育成。5つ目が投資資金の確保、また、これを呼び込むための環境の整備。そして6つ目が産業界を含めた全体としての推進体制の構築ということでございます。それぞれ少し見ていきたいと思います。
7ページ目は、AI for Science全体の革新の必要性などを示したものでございますが、中段にございます、政策としてAI for Scienceによる科学研究の革新とはということで、AI技術を科学研究のあらゆる段階に適用して様々な分野で活用するということと併せて、AI研究、環境構築、人材育成、社会実装などを政策的に進めていくということでございます。右下にございます、そのAIを活用した研究の加速のイメージといたしましては、例えば仮説形成の段階でAIとの対話によって仮説を形成したり、また、複数の実験計画をAIが自動生成していく。そして、下に参りまして膨大な実験をAIがノンストップで行って、最後、AIとの対話もしながら解釈、考察をしていく。こうしたことによって非常に効率的な研究が行われることがイメージされるということでございます。
8ページ目は御参考で、AI for Scienceでどのように科学研究が変わるかということでございます。Beforeと現在がありまして、例えば取組内容にございますマルチモーダル化したAI基盤モデルの開発や、データの大規模・高速創出、あるいはAIエージェントの開発、そして計算基盤の更なる展開ということがあり、将来にございますように、今申し上げたようなAIエージェントとの対話によって科学研究がさらに高度に、また、効果的・効率的に進んでいくということがイメージされるわけでございます。
9ページ以降は、それぞれの分野でどのようなイメージかというのを示してございますので、御参考に御覧いただければと思います。9ページがライフ、10ページがマテリアル、11ページが防災、そして12ページがフロンティア領域ということでございます。
13ページは、先ほど申し上げた我が国の強みである研究基盤の状況を示したものでございます。SINETでつながった研究機関がさらに様々な計算基盤を駆使しながら、データを統合、管理していくというイメージでございます。
14ページが先ほど来、御説明しておりますAI for Scienceにより、目指す将来像でございます。下の3から御説明いたしますが、AI for Scienceを支える情報基盤、これは計算基盤、あるいはデータの基盤を強化し、そして右上の2でいろいろな、この計算基盤、あるいはネットワークでつながったそれぞれの研究機関で効果的・効率的な研究データを創出し、そしてそうしたデータをベースにして、左上の1で科学基盤モデルを様々に構築していく、こういったことを進めていけたらということでございます。
15ページは、先ほどの戦略の4の人材育成に関する取組でございます。下にございますAI関連人材の確保・育成ということで、学校教育段階からの人材育成が様々に展開されていき、そして、それがさらに若手研究者の育成として様々なプログラムが現在用意されているという状況で、こうしたものをさらに強めながら人材育成をしていくというイメージでございます。
16ページは飛ばしまして17ページを御覧いただきますと、研究投資の観点でございます。世界全体におけるAI投資額は増加傾向ということで、左上のデータを御覧いただきますと、世界全体のAI投資額でございます。2024年のデータでは1,500億ドルでございますので、全体として22兆円を超える規模の投資が行われているということでございますが、右側、2024年のAI民間投資ということになりますと、例えば米国では1,000億ドルを超えるという状況ですので、先ほどの1,500億ドルの全世界の投資のうちのかなりの多くの部分は民間投資によって成り立っているという状況も見て取れます。他方で政府の投資を見ますと、左下にございます5年間における各国政府のAI関連投資もそれぞれに進んでいるわけですけれども、我が国は他国と比較してまだまだ少ない規模だということでございます。
上の箱に戻りますと、2つ目のポツで、今御覧いただきましたように、米中などの投資規模は日本の数十倍規模で、民間投資も多い。また、最近ではEUで計算基盤等へのインフラに200億ユーロの基金を設立、そして中国でも国家AI基金を設立するなど様々な動きが加速している状況でございます。我が国も官民を挙げて、この分野への投資を促進していく必要があると思いますし、そのための環境整備を様々にしていく必要があるかなと考えております。
18ページが、そのための推進体制の必要性でございます。AI for Scienceの取組を推進するためにリソースが必要になるわけですけれども、その際、それぞればらばらにやるということではなくて、組織や分野を越えて戦略的・統合的な推進をしていく必要があるだろうと考えております。また、AIに係る動向は非常に変革が早く、不確実性を伴うということでございますので、戦略的・統合的な推進と併せて中長期的な視点で柔軟かつ効率的な支援が行えるような仕組みも必要だと考えています。もろもろの資源配分等々を進めていき、産学官が連携をして日本全体のAI for Scienceをスピード感を持って戦略的に推進していくことが必要だということで、例えば米国のNAIRR Pilotが今動いておりますので、こういったものも参考にしながら、各取組を有機的に加速するための仕組みを構築して、全体の最適化・効率化を図りながら研究開発を機動的に推進していく仕組みが必要と考えております。
最後の19ページでございます。全体のまとめでございますけれども、AIの進展が研究開発の在り方を変えていくということで、現時点が歴史的な転換点だと考えております。AI for Scienceが科学の再興の大きな駆動力の1つになると考えておりますし、待ったなしの状況でございまして、切迫感、危機感を持って取り組むことが重要だということで、AIを我が国の科学技術力の反転攻勢に向けた駆動力とし、そして様々なイノベーションを推進しながら、世界で最もAIを開発・活用しやすい国を実現するということだろうと思います。次年度から始まります科学技術・イノベーション基本計画は10年先を見据えた計画となるわけでございますけれども、ここでの御議論は、そのための大きな柱が「科学の再興」ということで御議論いただいているわけでございます。その実現に向けまして、AI for Scienceによる科学研究の革新は極めてスピード感を持って取り組む必要があるということで、そのために強力な政策誘導をしていく必要があるかなと考えているところでございます。
私からの説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【大野座長】  淵上局長、どうもありがとうございました。
それでは、先ほど同様に今の事務局の説明を踏まえて御意見等がありましたら御発言をお願いいたします。早めに中座されるということで、まず伊藤委員から。

【伊藤委員】  分かりました。まず、この新興・融合研究のまとめ、ありがとうございました。この中で例えば5ページでワールドエコノミックフォーラムのTechnology Convergence Reportを引かれているのですけれども、読んでみると、これはもう既に分かっている分野だなと思っていて、ですから、先ほど千葉委員がおっしゃったみたいに、皆に分かりやすく説明するという意味では、これは使いやすいのでしょうけれども、例えば、宮園委員の様々な発見や新興・融合の研究は、皆が知らない頃にできていましたし、私もこのワールドエコノミックフォーラムに出ており、Quantumと書いてありますけれども、これは1998年~2000年から我々がやっていることが初めてみんなに認識されて、急にQuantumと言われるようになっている。これも25年たっていますから、そう考えるとやはりもっとみんなが目をつけていないときに新興をつくってきたということは、結構、今までの日本の強さだったのではないか。
免疫学などとおっしゃいましたけれども、それもみんなが思いもしなかったところで、何か新しいサイトカインを見つけたなどだと思います。それをやるときに昔の「さきがけ」とかでは、あまり重点分野を絞らず、状態と変革など、すごくざっくりとした名前で募集をして、全く違う分野の人たちが結構入ってきて、そこで一緒に話し合いながら、あ、こんな分野があるんだ、こんな新しい考えがあるんだ、こんな面白い発想があるんだという人たちがみんな集まって、合宿もしていた。それが、小安顧問が先ほどおっしゃっていたような、アメリカでもあった違う人同士がいろいろと学び合う環境だと思うんですね。
それが今、余りにも重点分野というのがはっきりしていて、私が総括を務めた「さきがけ」の量子というのも、結局、量子というところですごく絞られていたので、相当限られた分野の中の人しか参加できないような形になっている。そういう意味では新興領域ができないということなので、どうやったら本当の意味での新興領域をつくるような人材育成ができるのか。小安顧問もおっしゃいましたけれども、どうやってみんなが出会って、あと相手の研究に興味を持つか。例えば盛況であっても意外とあなたの研究は最近どうですか、という話題があまりないんですよね。フレキシブルエレクトロニクス、あの後どうなりましたとか、そういう話を意外としないというのは、もっと変えていかなければいけないですし、そういう形を奨励してお互いの新興をどうやってつくるかというところに、もう少し焦点を当てていただいたらいいのかなと思いました。それが1つです。ですから、あまり重点分野を絞り過ぎずに、どうやって目利きの人たちが面白いもの、面白い人を引き上げていくことができるかなのかと思いました。
AI for Scienceに関しては、研究振興局長がおっしゃってくださったとおりなのですけれども、私も先週、ちょうどシリコンバレーに行っていて、xAIも見に行ってきたのですけれども、もうそこでスタンフォードの学生がインターンをしていて、話を聞くと、前日も朝5時までここでひたすらChatGPTに負けないように新しいモデルをつくっていたというふうに言っているわけです。その勢いで恐らく中国もアメリカもやっている中において、「こういう公募をします。なので、こういうことをしてください。」と国主導でやっていることが、本当に最先端の先を行っているのかということが一番の疑問である。もちろんお金を取ってくるためにこういう整理が必要なんですけれども、その後の本当の意味での最先端をやっていくためには、どこまで賭けに出られるかということが必要なので、そういう仕組みをどうやってつくるか。結局、「これをつくってください」という仕様書を作って、「はい、これができました」という納品をして、「はい、よくできました」と言っているときに、世界はその仕様書や納品よりもずっと先に進んでいるということはよくあるので、それをどうやってもっと先に進む仕組みをつくっていくか。それがないとやはり勝ち組にはなれないかなと思っております。
以上でございます。

【大野座長】  どうもありがとうございました。
それでは、ほかにいかがでしょうか。委員、お願いします。

【川合委員】  今の伊藤委員のご意見、全く同感です。新興・融合分野の研究に関しては、フリーダムを与えて研究予算をどうつけるかというのがキーで、それから、先ほどの議論のときに座長がおっしゃっていたように、大学自身がある一定のギャランティーをして、そこで失敗しても最低限、生き延びられる環境を整えた上でチャレンジしてお金を取りにいくというようにしないと、本当の新興研究は失敗する確率も非常に高いので、その点をどうケアするかが非常に大事だと思います。CRESTはある程度、戦略目標が決まっていないと進まないのかもしれませんが、「さきがけ」に関しては、私自身も1回、領域総括をやったことがあって、このときのテーマは「界面と機能」という設定で、何でも入って来れる設定でした。生命科学分野で細胞膜を研究している人から、半導体分野で電子機能の研究をしている人も入っていました。多彩な分野の中で今でも、もう十数年たっていますが、共同研究が続いています。そのときの笑い話があるのですけれども、デバイス分野で電子の機能に関わっている人には馴染みのある電子の機能なのですが、「二次元電子ガス」とは何かというのがあった。今では、私の領域にいた人は生命科学者でも、理解できているのですが、そのくらい全然違った分野の人たちが出会う場を提供できる「さきがけ」領域のような課題を意図して戦略目標に設定するという考えがあってもいいように思います。それが1点です。伊藤委員のご意見をサポートしているだけです。
AI for Scienceのほうは、日本独特の人海戦術から、AIやロボティクスを入れることによって、研究生産性の向上が期待できるので、私は積極的に進めるべきだと思っています。データに関しては少し問題があると考えています。データそのものが規格化・標準化されていないと、なかなか使いにくいので、データの質の保証をどうするかというのが材料研究の中でも非常に問題だと思っています。材料研究の中で唯一非常に成功している例は、結晶構造解析のケンブリッジ結晶構造データベースがあります。これはいろいろな測定データについて、投稿する形でデータを収集し、その結晶の試料の質も評価した上で公開資料になっているもので国際的に配布されています。私たちが未知試料の回折や結晶解析データを取得したときに、その大きなデータの中から自動的に探せるというのが、もう確立されています。結晶構造のデータと同等のレベルで,他の測定全てについて質の保証をするには,相当の標準化のプロセスが必要ではないかと思います。
AIに関しては、AIが増えてくると電力問題が一緒にくっついてくるということで、エネルギー問題をどうするかということとセットで考えなければいけないのではないかと思っています。莫大な投資をされているアメリカに太刀打ちできるかというと、多分無理ですね。投資額が余りにも違うので。ただ、ひょっとしたら、日本だったらエネルギーを最小化するような最適解を考えることもできるかもしれないので、同じことをやるのではなくて、もう少し日本ならではのやり方を考えてはいかがかなと思います。
先ほど、世界的な投資状況を説明された際に、中国の投資がどんどん増えていますとお答えされたのですけれども、実は90年から今までの間、米国も、EUも2.5倍ぐらいに科学研究費への投資が上がっているので、90年代に比べるとの現在の日本は比較すると半額以下の科学研究費で頑張っていることになります。この投資状況では、むしろ現在の国際的知名度を保っているのは、むしろすごいことかもしれません。投資無くして成長はないので、巨大投資の各国と戦うには、何か違った戦略が必要でしょう。同じことでは叶うわけがありません。私はあまりアイディアがないので、研究作業、人海戦術からの効率化に対してしか価値を見いだしておりません。申し訳ありません。

【大野座長】  ありがとうございました。
それでは、千葉委員、お願いします。

【千葉委員】  伊藤委員と川合委員のお話、全くそのとおりで大変刺激を受けて、今、自分のことを振り返って、このAI for Science、そのとおりなんですけれども、まさにお2人の委員がおっしゃるとおり、さらに先に行く戦略がすごく必要で、戦略というと非常に大げさなのですけれども、実はまだ誰も考えていないようなことを日本の研究者もたくさん考えているんですね。私の拙い経験なんですけれども、20年ぐらい前に、ある研究を始めました。それは要するに世の中では全く注目されていなくて、学会も非常に弱小でありました。それも存続が危ぶまれるぐらい注目されていなかった。結果的に20年たったら、世界中が今どんどんそれをやるようになっている。その20年間、例えば論文を投稿しても通らないんですよ。何をやっているんだ、こんなの役に立たないだろうという感じで、いいジャーナルには通らない。そういう世界を私は歩んできて、まず研究資金が手に入らないわけで、どうしようかと思っていました。
ちょうどその頃、法人化したので、私はスタートアップをつくることができた。それを使って自分の研究費も稼ごうということで、結果的には20年、自分で研究費を稼いで生き延びて、生き延びることによって結果としては、そんなすごい大きな世界ではないですけれども、ある程度、大きな世界に到達できたんです。すごく重要だと思っているのは、基礎研究が大事だからお金を出してくださいとよく言いますが、普通は(重要性が)理解されないから、そんなお金をみんなに渡すなんていうことはできないわけです。でも、自分に信念があったら、よく考えれば、そこに到達する方法はあるのではないか。それもモチベーションにして突破していくということが、実は、世界のトップに行くようなところになるのではないかなと思うので、やはりこういうところもしっかりと日本の研究者は心して、自分の思いを貫いていくということが、このAI for Scienceと同時に存在していることが大事ではないかなと思いました。
以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございます。
それでは、仲委員、お願いします。

【仲委員】  ありがとうございます。私も新興・融合研究に関してなのですけれども、どういう人たちが担っていくかというと、結局、これは人のネットワークであり、アイディアの融合なのだと思うんです。それを推進するためには、やはり、ここも若手の育成支援ではないかなと思います。先ほど座長が、キュリオシティに基づく研究の重要性、とおっしゃいましたけれども、本当にそれが大事で、役に立つかということを考えないで最大限キュリオシティに基づいて研究できるというのも若手ですし、冒険を冒せるのも若手であると思うんです。
これを推進するためには、少なくとも4つぐらい方法があるのではないかなと思うのですけれども、1つは博士論文、学位論文を書いた後の5年~10年ぐらいの間に国際交流の留学、海外で研究を行うというようなことができて、その国の人たちと出会うだけでなく、そこに集まってくるいろいろな人たちと多様な経験ができる。これは日本人も含めてであって、日本人同士もそこで知り合うということができる。また、もう少し年齢が高いところであれば、若手在外など、かつては潤沢にあったと思うのですけれども、そうした取組が再興されるということなどで、国際交流の経験を促すというのが1つ。
それから、大型の共用設備に集まってくる人たちとも交流することができ、同じ機械を使う、設備を使う、それを通じて違う領域の人たちが出会うということが2つ目としてあります。
それから、3つ目は、私も法と人間科学という新学術領域に携わったことがあるのですけれども、学術変革領域研究のような大型のプロジェクトでチームが融合して5年といった期間をかけて交流を続け、新しい分野を切り拓いていくというふうなこと。
あともう一つは、似ているんですけれども、特定の社会課題を設定して、ここにいろいろな知を結びつけるというやり方があるかなと思いました。やはり若手を中心に、支援と枠組みをつくっていくということが重要かなと思ったところです。
あともう一つ、AI for Scienceのほうの話なのですけれども、いろいろな重要な基盤が日本の中にあるんだなということを、さきほどのお話で再認識しました。ただ、これらに私たちが日常的に触れているかというと、ネットでお買物をするときとか、また、この間、隣に座っていた子供たちが「ChatGPTに聞いてみたら、こんなふうに言ってきた」といったことをしゃべっていましたが、私たちが触れるデータ、AIなどにまで、いろいろな日本のサイエンス基盤がある、ということが届いていないのではないかと思うのです。もっとインターフェースを充実させて、実感できる日本のAI、というふうな形になるといいのかなとも思いました。
以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございました。
それでは、続いていかがでしょう。染谷委員。

【染谷委員】  ありがとうございます。新興については、先生方から既に多数のコメントがありましたので、私からはAI for Scienceについて1点だけコメントをさせていただきたいと思います。
ここでまとめていただいた内容は、いずれもすばらしいといいますか、これができるといいなということが本当に文章になっていると思いましたが、情報科学の流れを見ますと、やはり最初にデジタル化があって、その後、DXがあって、AIが出てきて効率化が進み、その後にAIによるトランスフォーメーションがあると思うと、少なくとも私どもの研究環境を見ると、まだデジタル化が十分でない中、そういうものが十分に浸透していないと、こういうものがあってもうまく活用し切れないというように思っております。そういう意味で、ここに書かれたことを本当に実現するに当たっては、そのベースとなるデジタル化がまだ遅れているところ、かなり地味な作業ではあるのですけれども、きちっとインフラ整備に対応しないと、AIによるトランスフォーメーションまで移行し切れませんので、その部分をぜひ軽視せずに、併せてここをフラッグシップにしながら、地味なインフラ整備のところも文科省にお力添えいただけると大変ありがたいと思いましたので発言させていただきました。
私からは以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございます。
それでは、安田委員、お願いいたします。

【安田委員】  ありがとうございます。融合研究については、先ほども述べさせていただいたのですけれども、若手の研究、育成というお話が繰り返し出てきた中で思うのは、横に広く、そして自分の専門に縦に深く通じている人材の育成というのが融合研究にはすごく必要だというところで、教育システムの中でも、それを意識してやっていくということが重要なのかなというところと、融合研究をするときに、できたら学位を持っている人がいいと思うのですけれども、ファシリテーターがすごく重要になってくると思います。
私もグローバルヤングアカデミーの活動の中で知ったのですけれども、サイエンスリーダーシップのワークショップの中で、昔から積み重ねられてきているファシリテーターのスキルやツールボックスが幾つかあって、そういうものを使って練習する機会があると、多様なバックグラウンドの人たちの意見を、共通ゴールを見つけてまとめていくといったスキルが訓練できるのだということを知りました。
実際、アフリカの国々では、そのサイエンスリーダーシップのファシリテーターのような人を何人か育成することによって、いろいろな国間での融合研究の造成に成功しているという例も聞いておりまして、日本でもそういったもの、使えるものはどんどん輸入して、国内での共同研究だったら、また日本人なりのバックグラウンドの違いというものを加味しながらファシリテートするなどいろいろあると思うので、そういったファシリテーション技術を学位を持っている人に訓練させるような、そうしたことをやりたい人はできるようにするもの、そうしたシステムも作っていくことによって融合研究をもっと活かしていく場づくりというのがうまくいくのではないかなと思いました。
あと、AI for Scienceのほうなのですけれども、日本人は結構、学生や、自分自身もそんなに英語が得意ではないのですけれども、英語が書けないから論文が書けないといった点や、英語力とのギャップが、日本のガラパゴス化の1つの要因になっているのではないかなというところは感じております。本当は英語をちゃんと勉強して、外国のいろいろな言語を学んで、文化の理解や背景を勉強していくことも置き去りにしてはいけないのですけれども、せっかくAIが出てきたからには、AIを使って、そういったギャップを埋めるということを、これは日本国内じゃないと作れないと思うので、日本人研究者用のものとしてまず整えていくのは、すごく、重要ではないかなと思っています。
日本の学術において、一応、大学では日本語での教科書があって、専門用語を教えている状況で、英語にするとまた違う単語が出てくる。そこら辺の専門用語の整理みたいなところは、私、生物系なので感じるのですけれども、学名とかも(AIに翻訳させると)むちゃくちゃなんですね。学名と英語名と和名は、今のChatGPTでは、むちゃくちゃに出してくる状態なので、そういったものもきちんと整理していくということで、日本地域用の、日本の研究者にとって使いやすいものとして、学術論文を加速していくというツールとしてのAIということを意識して作っていくと、日本の研究力やアウトプットに加え、インプットのときもすごく役に立つのではないかなと考えています。だから、こういうのは別に政府だけが先導する必要もなくて、やはり民間企業などと連携して、いいものを作っていって盛り上げていくというところが重要なのではないかなと思います。
あともう一つは、AI for 科学コミュニケーションという視点も私はすごく重要だと思っておりまして、科学用語も、分かりにくいものをどんどんかみ砕いて小学生レベルでも分かるように説明してくださいというと、一生懸命、AIはやってくれると思うんですけれども、そういうものが何か身近で使えるようなものとしてあるといいのではないかなと個人的には思いました。これは「科学の再興」そのものというよりも、ボトムアップのためのものなのですけれども。あともう一つが、AIは、やはり倫理面での問題がすごく大きく出てくると思うので、AIの倫理面のリテラシーについて、国民全体が認識を高めていくような、そういった基盤は必要かなと。これは事前にお伺いしたところ、そういう動きもちゃんとあるということは確認しているんですけれども、最後、コメントさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

【大野座長】  どうもありがとうございました。
それでは、宮園委員、お願いいたします。

【宮園委員】  AI for Scienceにつきましてコメントさせていただきます。まず、AI for Scienceによる科学の再興ということで資料をまとめていただき、また、今後の重要な領域ということで議論していただきまして、大変ありがとうございます。私、理化学研究所のTRIP-AGIS等の動きをずっと見ておりました。やはりAIの動きはものすごく速くて、TRIP-AGISがスタートして1年ぐらいして小安顧問が理研に来られたとき、「何かガラッと変わったね」というくらい、本当にガラッと変わりました。私が理研から離れて半年たちますが、今この資料を見るだけでも大きく変わっているように思います。ただ、理研の研究者が全員AIを使って研究しているかというと、そんなことはなくて、大体2割以下ぐらいだと思います。AIを使ったAI for Scienceの研究に携わる方々が核となって、このAI for Scienceを推進されているということは非常に重要かと思います。
一方で、理研で話を聞いて驚いたのは、理研にAIPという組織がありますけれども、そのセンターには、若い人は外国人が多く、日本人がなかなか来てくれないといいます。その理由は何なのかなと思うのですけれども、結局はやはり待遇の問題なのかなと。それを今後どういうふうにしていくのか。外国人の方が来てどんどん成果を上げて出て行かれるということでよいのか、あるいは日本として若い人をアカデミアで育てるということについて、待遇の面から考えていく必要があるのではないかと思っているところです。そういう意味では、ムーンショットの2で東大の合原一幸先生がAIの研究をしておられ、あるいはそのほか、理研ではAIだけではなくて『AI×数理』という言葉を使われておりまして、数理学研究といった面から複合的にAIの研究をしていくと。
  合原先生の評価委員会を見ますと、日本人の大学研究者がたくさん参加しておられまして、そういった意味では、もう少し広くカバーすると日本人の研究者もかなりおられるのではないかと。中には、お名前を言って申し訳ありませんが、川上英良先生という方は、千葉大学でAI医学という講義をしておられて引っ張りだこになっているらしいのですけれども、学生に対しても、そういうAIの教育をしておられる方もおられて、教育体制も含めてどのようにやっていくかということを考えていく必要があるかなと思って聞いておりました。いずれにしましても、このAI for Science、このような形でまとめていただいたこと、本当にありがとうございます。
私からは以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございました。
それでは、小安オブザーバー、いかがですか。

【小安顧問】  ありがとうございます。挑戦的融合研究に関しては、本来は基盤的経費が全てではないかと思っています。創発は非常に優れた人をピックアップして、その人たちに基盤的経費を措置するということかと思いますので、創発の研究者の研究成果を、きちんとフォローするべきなのではないかと思っています。
先ほど宮園委員から免疫学の話がありました。私、免疫学者ですので、その当時のことを思い出すと、特にサイトカインで日本は世界を席巻しましたが、谷口維紹先生、長田重一先生はスイスに、本庶佑先生、岸本忠三先生、平野俊夫先生、高津聖志先生、松島綱治先生は、みんな米国NIHにいました。彼らは、研究の素材の多くは外国で見つけましたが、それを開花させたのは日本でした。サイトカインはもともと、あまりにも少量で効くので、活性に注目し、アッセイシステムに応じて100種類以上も報告されていました。そのような中、当時開発されたモレキュラークローニングという技法をいち早く取り入れ、クローニングしたことで成功につながりました。
もう一つ大切なことは、彼らは外国で研究した経験を持っていたので、自分の学生や弟子が自身がいた外国の研究所で研究する機会をつくり、非常に強力なネットワークをつくりました。そのため、命名の際にも、外国からのクレームはつかず、非常に強い分野を作ったということだと思います。これは過去の経緯ですが、日本の研究分野がもう一度強くなるための参考になるかと思います。また、日本でのこれらの研究を最初に支えていたのは科研費などであったということも大事なことです。
次にAIについてですが、理研にAIPを設置した当時は、理研の理事でした。色々な方から、日本のAI研究は2周も3周も世界から遅れていると指摘されましたが、現在でもあまり状況は変化していないのではないかと感じています。AIそのものの研究開発を進めて、本当に世界に追いつけるかどうかについては、慎重になった方がいいかもしれません。むしろ、AIを活用して科学を進めるという取組みを進めることも大切だと思います。
最後に、川合委員からの発言にも関わりますが、本気で取り組むなら、データセンター1つにつき隣に原子力発電所1基が必要となるぐらいのエネルギーが求められると思います。取り組むにあたっては経済産業省・資源エネルギー庁と調整し、連携して進めていかないと難しいのではないでしょうか。
以上です。

【大野座長】  どうもありがとうございます。
最後、私から何点か発言させていただきます。新興・融合研究に関しては、芽をどれだけたくさん出せるか。その芽を育てる仕組みがなければいけない。芽がなければ育てようもない。すごく簡単な話です。例えば、神部室長の説明資料7ページの科研費の図で、挑戦的研究(萌芽)というのがあります。それと基盤研究(C)というのは、どちらかしか選べない。萌芽は採択率10%、基盤(C)は30%。どちらへ出すかというと基盤(C)に出す一択ですよね。ですから、ここは比較的簡単なエフォートで変えられるのではないか。皆さんに挑戦をエンカレッジしていただきたいと思いますし、この重複申請の縛りも外せばいいのだと思います。結果どうなっているかというと、私、ちょっとうろ覚えですけれども、挑戦的研究(萌芽)のほうがやはり変わったことをやっているので、世界に対するインパクトも高いということもあるので、こういう芽をいかにたくさん出していくかという努力を我々はしなければいけないのかなと考えています。
あと、同じ資料の13ページの重要技術融合領域は、これはもう重要だと認定されているので、ここに書いているとおり、大きな大学、あるいは国研に、そういう拠点をいかに上手につくって、そこを回していくかということに尽きるのだと思いますけれども、ぜひ、その中で人材育成等も進めていただければと思います。
AI for Scienceに関して言うと、Science for AIももちろんトップレベルになっていただきたいと思いますけれども、AIを使ったScienceについてトップレベルのところでまずきちんと成果を出すのと同時に、みんなが使えるAI for Scienceも必要で、それはサービスという概念があるが、トップレベルでやっている人たちにサービスもしろというのは、これは無理なんですよね。でも、サービスプラス研究という仕組みで、サービスを提供している組織、具体的には例えばNIIはSINETをやっていますけれども、そういうところはちゃんとサービスも経験のある良い研究者がたくさんいるので、そういうところでバランスをとった形で進めてもらえれば、ありがたいなと思います。
いずれにせよ、データの品質は日本がとてもよろしいということは言説になっていて、それはチェックしなければいけないわけですけれども、そうだという前提で言えば、やはりデータの質が勝負になる領域がたくさんあるので、そこをきちんとすることによって、そういう形の勝ち筋が見えてくるのかなと考えています。以上でございます。
  ということで、ちょうど時間になりましたが、ほかに言い忘れてしまったということはございますでしょうか。よろしいですか。それでは、意見交換を終了いたします。本日の議題は以上となります。事務局から事務連絡をお願いいたします。

【石川研究開発戦略課長】  次回の日程につきましては、また改めて御連絡させていただきたいと思います。本日の議事録につきましても、先生方に確認いただいた上で、ホームページ上に公開させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。

【大野座長】  それでは、以上をもちまして本日の有識者会議を閉会いたします。皆様、御多忙の中、お時間をいただきまして、誠にありがとうございます。また、活発な御議論をいただき、意見交換ができたことを大変うれしく思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

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